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特開2024-69112血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤、及び肌色改善成分のスクリーニング方法
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  • 特開-血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤、及び肌色改善成分のスクリーニング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069112
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤、及び肌色改善成分のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240514BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240514BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 36/739 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K8/9789
C12Q1/06
A61Q19/00
A61K36/739
A61K36/48
A61P43/00 105
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179927
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大葉 椋介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾
【テーマコード(参考)】
4B063
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C083AA111
4C083AA112
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE11
4C088AB51
4C088AB59
4C088AC01
4C088AC11
4C088AC13
4C088CA08
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB21
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】
新規な血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤の提供、及び前記接着関連因子の発現増大成分のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
ワレモコウ(S.officinalis)のエキスを有効成分とする、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤。
及び、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態を指標として、肌色改善成分を選出することを含む、スクリーニング方法。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)エキスを有効成分とする、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤。
【請求項2】
さらに、ルイボス(Aspalathus linearis)のエキスを含む、請求項1に記載の接着関連因子の発現増大剤。
【請求項3】
前記接着関連因子が、血管周皮細胞の血小板由来成長因子受容体(PDGFRβ)及び/又はアンジオポエチン1(ANGPT1)である、請求項1又は2に記載の接着関連因子の発現増大剤。
【請求項4】
低分子ヒアルロン酸に起因する血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着の弱化を抑制するための、請求項1又は2に記載の接着関連因子の発現増大剤。
【請求項5】
血管透過性を抑制するための、請求項1又は2に記載の接着関連因子の発現増大剤。
【請求項6】
血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態を指標として、肌色改善成分を選出することを含む、スクリーニング方法。
【請求項7】
前記接着状態を増大する成分を、肌色改善成分として選出することを含む、請求項6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記接着状態は、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現量である、請求項6又は7に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記接着状態は、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞の数である、請求項6又は7に記載のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記接着関連因子が、血管周皮細胞の血小板由来成長因子受容体(PDGFRβ)及び/又はアンジオポエチン1(ANGPT1)である、請求項8に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記肌色改善成分が、赤み、ムラ及び色素沈着の少なくとも何れかの改善成分である、請求項6又は7に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
前記肌色改善成分が、血管透過性の抑制成分である、請求項6又は7に記載のスクリーニング方法。
【請求項13】
低分子ヒアルロン酸存在下における前記接着状態を指標とする、請求項6又は7に記載のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤、及び肌色改善成分のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管周皮細胞は毛細血管壁を取り巻くように存在している細胞で、毛細血管の血管径や透過性を調整している。具体的には、血管内皮細胞が分泌する血小板由来成長因子(PDGF)を、血管周皮細胞が受容体(PDGFRβ)で受け取る事で内皮細胞周辺に集積し、血管周皮細胞が分泌するアンジオポエチン1(ANGPT1)を血管内皮細胞が受容体で受け取る事で、血管周皮細胞と血管内皮細胞間の接着が強化され、血管径や透過性が制御される(非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、前記血管周皮細胞に着目した従来技術として、プロスタン酸誘導体を有効成分とする血管周皮細胞保護剤(特許文献1)が知られている。また、血管内皮細胞に着目した従来技術として、線維芽細胞でのLINC00942の発現量から血管内皮細胞の賦活剤をスクリーニングする方法(特許文献2)が知られている。
さらに、血管細胞の接着に着目した従来技術として、血管及び/又はリンパ管における細胞間接着因子(タイトジャンクション関連因子)の発現増大剤(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-119184号公報
【特許文献2】特開2021-185818号公報
【特許文献3】特開2022-077456号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】血管成熟化の分子機構、高倉伸幸、血栓止血誌22(6):343~347,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態の低下を引き起こす原因は、これまで十分に解明されていなかった。さらに、血管周皮細胞に着目し、前記接着状態に関連する因子を増大させる成分等についてもこれまで知られていなかった。
上記の現状を鑑み、本発明は、新規な血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤の提供を課題とする。また、本発明は、肌色改善成分のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、UVや酸化反応を受けて生じる低分子ヒアルロン酸によって、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着が弱化されることを明らかにした。さらにワレモコウ(Sanguisorba officinalis)エキス、又はワレモコウエキスとルイボス(Aspalathus linearis)エキスの複合エキスによって、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子発現量が増加することを明らかにした。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)エキスを有効成分とする、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤である。
本発明によれば、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現を増大させることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記接着関連因子の発現増大剤は、さらに、ルイボス(Aspalathus linearis)エキスを含む。
本発明によれば、ワレモコウエキスとルイボスエキスを組み合わせることで、ワレモコウエキス単独での添加と比較して、接着関連因子の発現をより向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記接着関連因子が、血管周皮細胞の血小板由来成長因子受容体(PDGFRβ)及び/又はアンジオポエチン1(ANGPT1)である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記接着関連因子の発現増大剤は、低分子ヒアルロン酸に起因する血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着の弱化を抑制するためのものである。
本発明によれば、低分子ヒアルロン酸に起因する、前記細胞の接着の弱化を抑制することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記接着関連因子の発現増大剤は、血管透過性を抑制するためのものである。
本発明によれば、血管透過性を抑制することができる。
【0013】
さらに、上記課題を解決する本発明は、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態を指標として、肌色改善成分を選出することを含む、スクリーニング方法である。
従来、血管透過性が炎症物質の漏出に関連すること、これが肌色に影響を与え得ることが知られている。
本発明によれば、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態を指標として、肌色改善成分をスクリーニングすることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記スクリーニング方法は、前記接着状態を増大する成分を、肌色改善成分として選出することを含む。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記接着状態は、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現量である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記接着状態は、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞の数である。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記接着関連因子は、血管周皮細胞の血小板由来成長因子受容体(PDGFRβ)及び/又はアンジオポエチン1(ANGPT1)である。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記肌色改善成分は、赤み、ムラ及び色素沈着の少なくとも何れかの改善成分である。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記肌色改善成分は、血管透過性の抑制成分である。
本発明によれば、血管透過性を抑制する成分として、肌色を改善する成分をスクリーニングすることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記スクリーニング方法は、低分子ヒアルロン酸存在下における前記接着状態を指標とする。
上述の通り、本発明者らは、低分子ヒアルロン酸によって、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態が低下することを明らかにした。
すなわち、本発明によれば、低分子ヒアルロン酸に起因する前記接着状態の低下に有効な成分をスクリーニングすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワレモコウエキス、又はワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキスを有効成分とする、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤を提供することができる。
さらに血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態を指標として、肌色改善成分を選出するスクリーニングする方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】試験例1において、各植物エキス含有培地で培養した血管周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量の結果を表すグラフである。
図2】a)は、試験例2において、ワレモコウエキスと各植物エキス含有培地で培養した血管周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量の結果を表すグラフである。b)は、試験例2において、ワレモコウエキス含有培地と、ワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキス(以下、単に「複合エキス」という。)含有培地で培養した血管周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量の結果を表すグラフである。
図3】試験例3において、低分子ヒアルロン酸含有培地又は、低分子ヒアルロン酸、及び複合エキス含有培地で培養した、血管周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量の結果を表すグラフである。
図4】試験例4において、低分子ヒアルロン酸含有培地における、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞の数と、低分子ヒアルロン酸、及び複合エキス含有培地における、前記接着している血管周皮細胞の数を示す図である。
図5】試験例5において、複合エキスによる血管透過性の抑制効果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を、<1>血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤、及び<2>肌色改善成分のスクリーニング方法に項分けし、詳細に説明する。
【0024】
<1>血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤
本発明に係る接着関連因子の発現増大剤は、ワレモコウエキスを含む。また好ましい形態では、さらにルイボスエキスを含む。
実施例で後述するように、ワレモコウエキス単独で上記接着関連因子の発現を増大させる効果を有するが、ワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキスが、ワレモコウエキス単独の場合と比較して、上記接着関連因子の発現を向上させることができる。
【0025】
ここで、ワレモコウエキスとルイボスエキスは、ワレモコウとルイボス由来の抽出物自体のみならず、これらの抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとする。
また、ワレモコウとルイボス由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
上記エキスを抽出する場合、その抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。
さらに、ワレモコウエキスを抽出する場合、根及び根茎部を使用することが好ましく、ルイボスエキスを抽出する場合、全草を使用することが好ましい。
抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。特に、ワレモコウエキスの抽出溶媒としては50%のエタノールを使用することが好ましく、ルイボスエキスの抽出溶媒としては50%の1,3-ブチレングリコールを使用することが好ましい。
上記エキスの具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられるが、抽出方法はこれに限定されない。
【0026】
本発明の接着関連因子の発現増大剤は、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着に関係する因子の発現を増大する用途で用いられる。好ましい形態では、前記接着関連因子は、血管周皮細胞で発現する因子であり、より好ましくは、PDGFRβ及び/又はANGPT1であり、特に好ましくは、PDGFRβ及びANGPT1の両者である。
【0027】
本発明の接着関連因子の発現増大剤、低分子ヒアルロン酸に起因する血管周皮細胞と血管内皮細胞間の接着状態の弱化を抑制するために用いられることが好ましい。
低分子ヒアルロン酸は、UVや日々のストレスなどによって生じる酸化ストレスによって、体内のヒアルロン酸が分解されることによって発生する。言い換えれば、UVや酸化ストレスに起因する前記接着状態の弱化を抑制するために用いることも好ましい。
【0028】
本発明の接着関連因子の発現増大剤は製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて経口剤や皮膚外用剤の形態をとることができる。
経口剤におけるワレモコウエキスの含有量は、剤形に応じて1回あたりの摂取量が抽出物の乾燥質量として、通常、0.1mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上である。また、通常、2000mg以下、好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下である。なお、複合エキス含む経口剤である場合、ワレモコウエキスの含有量は上記の通りが好ましく、ルイボスエキスの含有量は、剤形に応じて1回あたりの摂取量が抽出物の乾燥質量として、通常、0.1mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上である。また、通常、2000mg以下、好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下である。
【0029】
本発明の接着関連因子の発現増大剤を、皮膚外用剤とする場合、例えば化粧料、医薬部外品、皮膚外用医薬等の形態を例示することができる。また、それらの剤形は特に限定されない。具体的には、洗顔料、クレンジング剤、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態が好ましい。また、フェイスパックのような形態とすることも好ましい。
【0030】
皮膚外用剤における、ワレモコウエキスの含有量(乾燥重量)は、通常、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。また、通常1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下、さらに好ましくは0.0001質量%以下であり、特に好ましくは0.00005質量%以下である。なお、複合エキス含む経口剤である場合、ワレモコウエキスの含有量は上記の通りが好ましく、ルイボスエキスの含有量は、剤形に応じて1回あたりの摂取量が抽出物の乾燥質量として、通常、0.0000001質量%以上、好ましくは0.0000005質量%以上、より好ましくは0.000001質量%以上、さらに好ましくは0.00001質量%以上である。また、通常1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下、さらに好ましくは0.0001質量%以下、さらに好ましくは0.00001質量%以下であり、特に好ましくは0.000005質量%以下である。
【0031】
本発明の好ましい形態では、接着関連因子の発現増大剤に含まれる、ワレモコウエキスとルイボスエキスの好ましい比率(乾燥質量)は1:0.1~1:1である。より好ましくは1:0.2~1:1である。
【0032】
ワレモコウエキス、又はワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキスを化粧料に配合する場合、これらのエキスの接着関連因子の発現増大効果を損ねない範囲で、その他美白成分、しわ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物、有効成分以外に通常化粧料で使用される成分を、任意成分として配合してもよい。これらの任意成分は、市販されているものを入手して配合してもよく、公知の方法で合成したものを配合してもよい。また、各任意成分は、2以上の効果(例えば、美白効果としわ改善効果)を有していてもよい。
【0033】
美白成分としては、一般的に化粧料で用いられている成分を、特に制限なく使用することができる。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリンメチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリンエチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリンメチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン、デクスパンテノールW、ナイアシンアミド等が挙げられる。
【0034】
化粧料における美白成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
しわ改善成分としては、一般的に化粧料で用いられている成分を、特に制限なく使用することができる。例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが挙げられる。また、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステル、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム、ナイアシンアミド等が挙げられる。
【0035】
化粧料におけるしわ改善成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0036】
抗炎症成分としては、例えば、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール、ナイアシンアミド、トラネキサム酸等が挙げられ、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩が好ましく挙げられる。化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0037】
動植物由来の抽出物としては、例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クルミエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タンポポエキス、チョウジエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レイシエキス、レタスエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0038】
化粧料中における前記任意の動植物由来抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
【0039】
有効成分以外に通常化粧料で使用される成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等のポリオール、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類が挙げられる。
【0040】
<2>スクリーニング方法について
以下、本発明に係るスクリーニング方法について詳細に説明する。
本発明に係るスクリーニング方法は、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着状態を指標として肌色改善成分を選出することを含む、スクリーニング方法である。肌色改善成分は、赤み、ムラ及び色素沈着の少なくとも何れかの改善成分を含み、好ましくはムラ及び色素沈着の少なくとも何れかの改善成分を含む。また、選出の対象は、血管透過性の抑制成分であることが好ましい。すなわち、血管透過性の抑制を通じて肌色を改善する肌色改善成分を選出することが好ましい。
ここで、「選出」又は「スクリーニング」の語句は、肌色改善成分又はその候補を探索することを含む概念である。
【0041】
本発明のスクリーニング方法が被験対象とする物質は、純物質、生物由来の抽出物、又はそれらの混合物等のいずれであってもよい。
生物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。
具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0042】
本発明のスクリーニング方法において、使用する細胞種は、正常なヒトの血管内皮細胞及び/又は血管周皮細胞であることが好ましい。好ましくは、前記細胞は正常なヒト由来の細胞である。また、市販の細胞を用いてもよい。
前記細胞を培養するための培地は、当業者であれば一般に用いられるものを使用することができる。
さらに、前記細胞を培養するための培養条件は、使用する細胞等に応じて適宜設定することが可能である。
【0043】
本発明では、好ましくは、前記指標である接着状態として、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現量を用いることができる。細胞の培養系に被験物質を添加し、接着関連因子の発現量を測定し、これを指標とする。好ましくは、前記細胞は血管周皮細胞であり、より好ましくは、前記接着関連因子はPDGFRβ及び/又はANGPT1であり、特に好ましくは、PDGFRβ及びANGPT1の両者である。
【0044】
具体的には、被験物質を添加して培養した細胞における、PDGFRβ及び/又はANGPT1の発現量が、被験物質を添加しないで培養した細胞における前記発現量と比較して大きい場合に、当該被験物質を、肌色改善成分として選出することが可能である。
より具体的には、被験物質を添加して培養した細胞における、PDGFRβ及び/又はANGPT1の発現量が、被験物質を添加しないで培養した細胞における前記発現量と比較して1.2倍より大きい場合、さらに好ましくは1.5倍より大きい場合、肌色改善成分の候補として、選出することが好ましい。
【0045】
上記、接着関連因子の発現量は、mRNA測定、免疫組織化学的解析等の常法により測定することができる。
例えば、PDGFRβ及び/又はANGPT1の発現量は、当該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行う。
なお、血管周皮細胞のPDGFRβ及び/又はANGPT1をコードする遺伝子配列は、公開されているので、当業者は適宜プライマーを設計することが可能である。また、プライマーは市販の物を用いてもよい。
【0046】
本発明の好ましい形態では、細胞の培養系に低分子ヒアルロン酸及び被験物質を添加する工程を含む。そして、低分子ヒアルロン酸の存在下で、被験物質と共に血管周皮細胞を培養して、前記因子の発現量を評価する。
上記の工程を含むことによって、低分子ヒアルロン酸に起因する肌色の状態の悪化を防ぐ、あるいは、前記肌色の状態を改善する肌色改善成分を選出することが可能である。
【0047】
また、本発明では、前記指標である接着状態として、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞の数を用いることができる。すなわち、本発明の好ましい形態では、細胞の培養系に被験物質を添加し、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞の数を測定することを含む。
具体的には、染色した血管周皮細胞を被験物質含有培地で培養し、前記培養した血管周皮細胞を血管内皮細胞の上から播種し、リン酸緩衝液等で複数回洗浄した後に蛍光顕微鏡にて接着している血管周皮細胞の数を数える工程を含む。
【0048】
そして、被験物質を添加して培養した細胞における、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞の数が、被験物質を添加しないで培養した細胞における前記接着している血管周皮細胞の数と比較して大きい場合に、当該被験物質を、肌色改善成分の候補として選出することが可能である。
【実施例0049】
以下、実施例を参照して本願発明を詳細に説明するが、本願発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0050】
<試験例1>
各種エキスについて、血管周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量への影響を測定した。
本実施例で用いた各有効成分エキスの抽出溶媒は以下の通りである。
【0051】
【表1】
なお、上記エキスについて、これ以降の試験例も同様の抽出溶媒のエキスを用いた。
【0052】
(方法)
1)ヒト胎盤由来血管周皮細胞(Promo cell社製)を24wellプレートに3.0×10Cells/wellで播種し、37℃、5%CO環境下で24時間培養した。
なお細胞培養の試薬・培地として以下を用いた。
・Pericyte Growth Medium 2(Promo cell社製、C-28041)
・ダルベッコPBS(-)生化学用(富士フイルム和光純薬株式会社製、045-29795)
・0.05%トリプシン-EDTA(GIBCOTM製、25300-062)
・0.4%トリパンブルー水溶液(GIBCOTM製、15250-061)
2)培地を除去し、各wellに各エキス含有培地(終濃度0.1%)に交換した。
3)24時間後に周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量をqRT-PCRにて測定し、Control群と遺伝子発現量を比較した。
なお、mRNA発現の解析には、以下の物を用いた。
ANGPT1プライマー(Hs_ANGPT1_1_SG QuantiTect Primer Assay1、株式会社キアゲン製、QT00046865)、PDGFRプライマー(Hs_PDGFR_1_SG QuantiTect Primer Assay、株式会社キアゲン製、QT00082327)、ACTBプライマー(Hs_ACTB_2_SG QuantiTect Primer Assay、株式会社キアゲン製、QT01680476)、Superscript VILO cDNA Synthesis kit 250T(インビトロジェン株式会社製、11754-250)、RNeasy Mini Kit-8 (250)(株式会社キアゲン製、74106)、Fast SYBR(登録商標) Green Master Mix(アプライドバイオシステムズ株式会社製、4385617)
【0053】
(結果)
試験例1のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量の結果を図1に示す。
図1の結果より、ワレモコウエキスを含有した培地では、他のエキスを含有した培地と比較して、前記遺伝子の発現向上効果を示した。
【0054】
<試験例2>
試験例1の方法を用いて、ワレモコウエキスと他の各植物エキスを組み合わせ、血管周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量を測定し、前記遺伝子発現量の比較を行った。
本実施例でエキスとして用いた、各植物エキスの抽出溶媒は以下の通りである。
【0055】
【表2】
なお、上記エキスについて、これ以降の試験例も同様の抽出溶媒のエキスを用いた。
【0056】
(結果)
図2a)に、ワレモコウエキスと各植物エキスとの複合エキスについての遺伝子の発現量の結果を示す。各植物エキスとの組み合わせのうち、ワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキスにおいて、Control群と比較して前記遺伝子の発現量が増加した。
また、前記で得られた結果を確認するため、ワレモコウ単体の場合と、ワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキスの場合とで、前記遺伝子の発現量を上記に記載した条件で測定した。結果を図2b)に示す。
図2b)に示すとおり、ワレモコウエキスとルイボスエキスの複合エキスの場合において、ワレモコウエキス単体の場合より、前記遺伝子の発現量が増加したことを確認した。
以上の結果から、ワレモコウエキスとルイボスエキスを組み合わせると、単独での添加と比較して、接着関連因子の発現を向上させる効果を有することを確認した。
【0057】
<試験例3>
次に、低分子ヒアルロン酸が周皮細胞及び内皮細胞の接着に与える影響を明らかにし、これに対する前記試験例で効果が確認された複合エキス(以下、単に「複合エキス」という。)の前記低分子ヒアルロン酸による影響に対する効果を明らかにするため、以下の試験を行った。
【0058】
(方法)
1)試験例1に記載の試薬・培地を用いて、ヒト胎盤由来血管周皮細胞を培養した。
2)培地を低分子ヒアルロン酸と、複合エキスを含有した培地に交換し、24時間培養した。終濃度は低分子ヒアルロン酸0.2mg/mL、各エキス0.1%であった。
なお、低分子ヒアルロン酸試薬としてHyaluronan Ultra-Low Molecular Weight(富士フイルム和光純薬株式会社製、513-69521)を用いた。
3)試験例1と同様に、周皮細胞のANGPT1とPDGFRβの遺伝子発現量を測定した。
なお、mRNA発現の解析には、試験例1と同様の試薬を用いた。
【0059】
(結果)
試験例3の結果を図3に示す。
結果から、低分子ヒアルロン酸の存在下では、Control群と比較して、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着因子である、ANGPT1及びPDGFRβ遺伝子の有意な発現低下が確認された。また、複合エキスを添加したところ、両因子の発現低下が抑制された。
【0060】
<試験例4>
次に、低分子ヒアルロン酸が血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着に与える影響と、該影響に対する複合エキスの効果を明らかにするため以下の試験を行った。
【0061】
(方法)
低分子ヒアルロン酸存在下で、複合エキスの有無で、PBS(-)による洗浄後に血管内皮細胞に接着している血管周皮細胞の数に違いがあるかを測定し、比較する試験を行った。
1)正常ヒト胎盤由来血管周皮細胞(Promo cell社製)を核染色後、75mLフラスコに2.5×10cells播種し、複合エキスを添加した培地にて37℃、5%CO環境下で48時間培養した。
なお、細胞培養には以下の試薬・培地を用いた。
・Pericyte Growth Medium 2(Promo cell社製、C-28041)
・ダルベッコPBS(-)生化学用(富士フイルム和光純薬株式会社製、045-29795)
・0.05%トリプシン-EDTA(GIBCOTM製、25300-062)
・0.4%トリパンブルー水溶液(GIBCOTM製、15250-061)
なお、核染色にはHoechest33342(Thermofisher Scientific社製)を用いた。
2)正常ヒト由来血管内皮細胞(KURABO株式会社製)を4wellチャンバースライドに1.0×10cells播種し、24時間培養した。
なお、細胞培養には以下の培地を用いた。
・Humedia EG2(KURABO株式会社製、KE-2150S)
3)1)の血管周皮細胞を血管内皮細胞の上から1.0×10cells播種し、24時間培養した。
4)低分子ヒアルロン酸及び複合エキス含有培地(終濃度:低分子ヒアルロン酸0.2mg/mL、各エキス0.1%)に交換し72時間培養した。
5)培地を除去し、PBS(-)1mLで洗浄後、蛍光顕微鏡にて血管周皮細胞の数を観察した。
【0062】
(結果)
試験例4の結果を図4に示す。図中白く見える点が、血管内皮細胞と接着状態にある、染色された血管周皮細胞である。
Control群と比較すると、低分子ヒアルロン酸の添加により、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞数の減少が確認された(図4、中央図、低分子ヒアルロン酸)。
また、低分子ヒアルロン酸と複合エキスを併せて添加したところ、血管内皮細胞と接着している血管周皮細胞数の減少が抑制されたことが確認された(図4、右図、低分子ヒアルロン酸+エキス)。
【0063】
<試験例5>
ANGPT1を内皮細胞が受容すると、内皮細胞同士の密着結合関連遺伝子の発現が誘導され、血管透過性が抑制されることが知られている。
複合エキスが、血管透過性の抑制に有効であるか確認するため、以下の試験を行った。
【0064】
(方法)
以下に、試験例5で使用した細胞腫を示す。
・正常ヒト胎盤由来血管周皮細胞(hPC-PL)(Promo cell社製)
・正常ヒト由来血管内皮細胞(KURABO株式会社製)
また、本試験例で使用した細胞培養の試薬・培地は以下の通りである。
・Pericyte Growth Medium 2(Promo cell社製、C-28041)
・ダルベッコPBS(-)生化学用(富士フイルム和光純薬株式会社製、045-29795)
・0.05%トリプシン-EDTA(GIBCOTM製、25300-062)
・0.4%トリパンブルー水溶液(GIBCOTM製、15250-061)
・HumediaEG2(KURABO株式会社製、KE-2150S)
・コラーゲン酸性溶液(Atelocell(登録商標)、IPC-30)
・塩酸(富士フィルム株式会社製、:083-01095)
【0065】
[コラーゲンコート工程]
1)塩酸で10倍希釈したコラーゲン溶液を、トランズウェルのインサート外側に200μLずつ添加し、余分な溶液をピペットマンで除去した。
2)インサートを12wellプレートに設置し、インサート内側にコラーゲン溶液を300μLずつ添加し、余分なコラーゲン溶液をピペットマンで除去した。
3)37℃、5%CO環境下で30分以上静置した。
4)インサート外側に1mL、内側に300μLのPBSを添加した。
5)アスピレーターでPBSを除去した。
6)上記4)5)を再度行い、PBSを除去した状態で静置した。
【0066】
[血管周皮細胞播種-複合エキス添加工程]
1)6.7×10cells/mLとなるよう細胞懸濁液を調製した。
2)12wellプレートの上蓋にインサートを裏返して設置し余分なPBSを除去し、インサート上に150μLずつ細胞懸濁液を加えた。
3)新たな12wellプレートの上蓋をかぶせ、37℃、5%COで4時間培養を行った。
4)12ウェルにそれぞれ1mLの血管周皮細胞培地を添加した。
5)インサート上の培地をピペットマンで除去したのち、12wellにセットした。
6)インサートに300μLの培地を加え、37℃、5%COでO/N培養をおこなった。
7)培地を除去し、複合エキス含有培地をインサート内側に300μL、プレートに1mL加え、37℃、5%COで24h培養をおこなった。
【0067】
[内皮細胞播種工程]
1)培地を除去し、インサート及びプレートをそれぞれ300μL、1mLのPBS(-)で洗浄した。
2)周皮細胞培地:内皮細胞培地=1:1で培地(以下共培養培地)を作成し、インサート外側に1mL加えた。
3)2×10cells/mLとなるよう、共培養培地で細胞懸濁液を調製後、インサートに500μLの内皮細胞懸濁液を加え、37℃、5%CO環境下で96h培養を行った。
【0068】
[透過性試験]
1)溶液調製工程:下記に記載の手順によって試薬を作成した。
(i)Basolateral Bufferの作成
1.45mM、CaCl(添加量40.2mg)と、10mM、glucose(添加量450mg)をPBS(-)(250mL)に混和しBasolateral Bufferを作成した。
なお、試薬は以下の物を使用した。
・塩化カルシウム(CaCl)(富士フイルム和光純薬株式会社製、038-24985)
・D(+)-グルコース(富士フイルム和光純薬株式会社製、049-31165)

(ii)Apical Bufferの作成
1mg/mL、FITC-Dextran(添加量10mg)を Basolateral Buffer(-)(10mL)に混和し、遮光して4℃保存した。
なお、試薬は以下の物を使用した。
・FITC-Dextran(Sigma Aldrich社製、FD40-100MG)
2)培地を除去し、インサート及びプレートをそれぞれ500μL、下層1mLのPBSで洗浄した。
3)測定用に準備した12wellプレートに1.5mLのBasolateral Bufferを加え、セットしたインサートに500μLのApical Bufferを加えた。
4)37℃、5%CO環境下で3時間インキュベートした。
5)インサートを静かに除去し、プレートのBasolateral Bufferを振とう後ピペッティングを行った。
6)96wellのplateにApical Bufferで標準曲線用のスタンダードシリーズを作製した。
FITC-Dextranの濃度250μg/ml-0μg/mlの範囲で、公比2、8濃度の溶液を作成した。希釈はBasolateral Bufferを用いて行った。
7)回収したBasolateral Bufferを96wellに200mlずつ添加した。
8)分光光度計にてn=3(スタンダードはn=2)で測定を行った。(励起は485/535nmであった。)
【0069】
(結果)
試験例5の結果を図5に示す。
図5より、複合エキス無しの場合(グラフ中左、エキスなし)のインサートからプレートに透過したFITC-Dextran量と比較すると、複合エキスを添加した場合、透過したFITC-Dextran量の有意な低下が確認された(グラフ中右、エキスあり)。よって、本発明の有効成分であるエキスが、血管透過性を抑制することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、血管周皮細胞と血管内皮細胞の接着関連因子の発現増大剤を提供することができる。さらに血管透過性の抑制に基づいて肌色改善成分をスクリーニングする方法を提供することができる。

図1
図2
図3
図4
図5