(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069113
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの充電方法及び充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240514BHJP
【FI】
H02J7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179930
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】521404989
【氏名又は名称】佐藤 比呂志
(71)【出願人】
【識別番号】503455802
【氏名又は名称】椋田 洋治
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】椋田 洋治
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA08
5G503CC02
5G503HA03
(57)【要約】
【課題】二次電池としての充電モジュールの充電を行う際の利便性を従来に比べて遥かに高めた蓄電モジュールの充電方法及び充電装置を提供する。
【解決手段】それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールの充電方法であって、蓄電モジュールは、各蓄電素子を満充電することによって蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の蓄電素子のうち最低限の許容蓄電容量を有する蓄電素子が複数の蓄電素子の全てを構成していると仮定した場合に満充電に至らない範囲で各蓄電素子を直列に接続した状態で一時に一括して充電する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールの充電方法であって、
前記蓄電モジュールは、前記各蓄電素子を満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の蓄電素子のうち最低限の許容蓄電容量を有する蓄電素子が前記複数の蓄電素子の一部を構成していると仮定した場合でも当該素子が過充電に至らない範囲で各蓄電素子を直列に接続した状態で一時に一括して充電することを可能とすることを特徴とする蓄電モジュールの充電方法。
【請求項2】
請求項1において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記一つ或いは並列接続されている各蓄電素子群に対して各並列接続単位毎にそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴とする請求項1に記載の蓄電モジュールの充電方法。
【請求項3】
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする一つ又はそれ以上の電気二重層コンデンサを並列接続しこれを更に直列接続した蓄電モジュールの充電方法であって、
前記蓄電モジュールは、前記各電気二重層コンデンサを満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の電気二重層コンデンサのうち最小の許容蓄電容量を有する電気二重層コンデンサと共に最大の許容蓄電容量を有する電気二重層コンデンサが前記複数の電気二重層コンデンサ群の一部を構成していると仮定した場合でも過充電に至らない範囲で一つ又はそれ以上を並列接続した電気二重層コンデンサを直列に接続した状態で一時に一括して充電することを可能とすることを特徴とする蓄電モジュールの充電方法。
【請求項4】
請求項3において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記各並列接続した電気二重層コンデンサ群を個別に並列接続単位毎のそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴とする請求項3に記載の蓄電モジュールの充電方法。
【請求項5】
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールの充電装置であって、
前記蓄電モジュールは、前記各蓄電素子を満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の蓄電素子のうち最低限の許容蓄電容量を有する蓄電素子が前記複数の蓄電素子の一部を構成していると仮定した場合にも満充電に至らない範囲で各蓄電素子を直列に接続した状態で一時に一括して充電するようになったことを特徴とする蓄電モジュールの充電装置。
【請求項6】
請求項5において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記各充電素子を並列接続単位毎にそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴とする請求項5に記載の蓄電モジュールの充電装置。
【請求項7】
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする一つ又はそれ以上を並列接続し、更にこれらを直列に接続した電気二重層コンデンサを備えた蓄電モジュールの充電装置であって、
前記蓄電モジュールは、前記各電気二重層コンデンサを満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の電気二重層コンデンサのうち最低限の許容蓄電容量を有する電気二重層コンデンサが前記複数の電気二重層コンデンサの一部を構成していると仮定した場合でも満充電に至らない範囲で各電気二重層コンデンサを直列に接続した状態で一時に一括して充電することを特徴とする蓄電モジュールの充電装置。
【請求項8】
請求項7において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記各電気二重層コンデンサを直列接続された各段毎に個別にそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴とする請求項7に記載の蓄電モジュールの充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が充電を繰り返すことによって長期間使用し続けることができる二次電池の充電装置及び充電方法であって、物理的二次電池としての電気二重層コンデンサに特に優れて利用可能な蓄電モジュールの充電方法及び充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年例えばリチウムイオン電池に代表される化学的二次電池の急速な普及が広まっており、生活のツールとして欠かすことができない携帯電話のバッテリーや電動アシスト式自転車、電動式車いすなどのバッテリーとしては必需品となっている。更には地球規模での温暖化対策防止の一環として内燃機関としてのエンジンの代わりに急速に普及しつつあるモーターを駆動源とするEV(電気自動車)の動力源としても今後の大量生産による市場への大量供給が急務となっている。なお、これに伴い、上述のEV用バッテリーの充電設備についても様々な形態が提案されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電モジュールに充電を急速に行うと、この多数配置した各充電モジュールに上流側と下流側に電流を流し込むことになる。しかしながら、それぞれの充電モジュールには製造過程における品質上のばらつきが生じるため、ばらつきのなるべく少ない充電モジュールを選別してこの充電モジュールを多数例えば直列配置して全体の充電モジュールとして形成することが必要となる。
【0005】
しかしながら、このような方法では、ばらつきの少ない品質の良い充電モジュールのみを選別する必要が生じ、この選別過程においてかなりの割合でばらつきのある充電モジュールが不合格品としてその後に使用されず、充電モジュールごと廃棄処分になる恐れがある。即ち歩留まりが低下して充電モジュールのユニットの製造コストが非常に高く付いてしまう。
【0006】
具体的には、充電モジュールを急速に充電すると、これを例えば直列に配置した充電モジュールユニットに電流を一気に供給することになる。ここで、各充電モジュールに満充電になった際にそれらの充電モジュールの品質にばらつきがあると、品質が劣る一部の充電モジュールにも強制的に電流を供給することになる。
【0007】
そのため、充電モジュール全体の満充電の段階においては、その一部の品質の劣る充電モジュールにその電流を流し込んで満充電にするのに耐えられる能力を超えた電流が供給されることになる。
【0008】
その結果、この一部の品質が劣る充電モジュール自体に過大な負担を及ぼして充電モジュールの劣化や破損を招き、化学変化や温度上昇に伴う反応速度の加速等により充電モジュール自体が発熱したりして最悪の場合、充電モジュールが原因となった火災を招く恐れがある。
【0009】
しかしながら、上述したように全ての厳しい充電精度をクリアするハイスペックの充電モジュールのみを選別してこれを多数組み合わせて充電モジュールユニットとしたのでは、上述したように極めて充電モジュールユニット自体のコストが高く付くと共に、これに使用できない品質の劣る充電モジュールを多数廃棄することになり、生産効率がかなり低下することに加えて、廃棄による環境悪化の問題の深刻化や製造ライン上の作業環境の悪化を招いたりする。
【0010】
従って、充電モジュールとして使用するのには明らかに適さない程度の品質の悪い充電モジュールを除いて、僅かに品質の劣る充電モジュールであって従来のように厳しいスペックの性能をある程度の許容範囲内で満たさないような充電モジュールを、安全性を担保しながら有効利用することができる充電モジュールユニット及び充電モジュールの充電方法を実現すれば、上述のような様々な問題を解決できることに本発明の発明者は着目した。
【0011】
本発明の目的は、利用者が充電を繰り返すことによって長期間使用し続けることができる二次電池の充電装置及び充電方法であって、物理的二次電池としての電気二重層コンデンサに特に優れて利用可能な蓄電モジュールの充電方法及び充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る蓄電モジュールの充電方法は、
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールの充電方法であって、
前記蓄電モジュールは、前記各蓄電素子を満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の蓄電素子のうち最低限の許容蓄電容量を有する蓄電素子が前記複数の蓄電素子の一部を構成していると仮定した場合でも当該素子が過充電に至らない範囲で各蓄電素子を直列に接続した状態で一時に一括して充電することを可能とすることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る蓄電モジュールの充電方法は、請求項1に記載の蓄電モジュールの充電方法において、
請求項1において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記一つ或いは並列接続されている各蓄電素子群に対して各並列接続単位毎にそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る蓄電モジュールの充電方法は、
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする一つ又はそれ以上の電気二重層コンデンサを並列接続しこれを更に直列接続した蓄電モジュールの充電方法であって、
前記蓄電モジュールは、前記各電気二重層コンデンサを満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の電気二重層コンデンサのうち最小の許容蓄電容量を有する電気二重層コンデンサと共に最大の許容蓄電容量を有する電気二重層コンデンサが前記複数の電気二重層コンデンサ群の一部を構成していると仮定した場合でも過充電に至らない範囲で一つ又はそれ以上を並列接続した電気二重層コンデンサを直列に接続した状態で一時に一括して充電することを可能とすることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る蓄電モジュールの充電装置は、請求項3に記載の蓄電モジュールの充電方法において、
請求項3において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記各並列接続した電気二重層コンデンサ群を個別に並列接続単位毎のそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る蓄電モジュールの充電装置は、
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールの充電装置であって、
前記蓄電モジュールは、前記各蓄電素子を満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の蓄電素子のうち最低限の許容蓄電容量を有する蓄電素子が前記複数の蓄電素子の一部を構成していると仮定した場合にも満充電に至らない範囲で各蓄電素子を直列に接続した状態で一時に一括して充電するようになったことを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る蓄電モジュールの充電装置は、請求項5に記載の蓄電モジュールの充電装置において、
請求項5において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記各充電素子を並列接続単位毎にそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項7に係る蓄電モジュールの充電装置は、
それぞれの許容蓄電容量が異なったりバラツキを有していたりする一つ又はそれ以上を並列接続し、更にこれらを直列に接続した電気二重層コンデンサを備えた蓄電モジュールの充電装置であって、
前記蓄電モジュールは、前記各電気二重層コンデンサを満充電することによって当該蓄電モジュールの満充電を行うようになっており、
前記蓄電モジュールを充電するにあたって、最初にこれら複数の電気二重層コンデンサのうち最低限の許容蓄電容量を有する電気二重層コンデンサが前記複数の電気二重層コンデンサの一部を構成していると仮定した場合でも満充電に至らない範囲で各電気二重層コンデンサを直列に接続した状態で一時に一括して充電することを特徴としている。
【0019】
また、本発明の請求項8に係る蓄電モジュールの充電装置は、
請求項7において充電モジュールを充電した状態に続けて、前記各電気二重層コンデンサを直列接続単位毎に個別にそれぞれが満充電になるように充電することで、蓄電モジュールの満充電を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると二次電池としての充電モジュールの充電を行う際の利便性を従来に比べて遥かに高めた蓄電モジュールの充電方法及び充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る蓄電モジュールの充電装置に備わる制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した制御システムの構成に基づき本発明の実施形態に係る蓄電モジュールの充電方法を実施するルーチンを説明するフローチャートである。
【
図3】現状使われている従来の二次電池の概略的イメージ構造を示す説明図(
図3(1))、及び本発明に係る二次電池の概略的イメージ構造を示す説明図(
図3(2))である。
【
図4】
図1に関連する文章説明及びこれに伴う
図2のフローチャートで説明するステップS10に関する急速充電が必要と判断した場合にこの急速充電の過程を説明する図である。
【
図5】
図4に示した状態から更に急速充電を行い、急速充電モードを完了すると共に、その後に各蓄電素子の個別充電を行い始めた状態を示す図である。
【
図6】
図5に示した状態から各蓄電素子の個別充電を進めた状態を示している。
【
図7】
図6に示した状態からまだ充電に余裕のある蓄電素子にそれぞれ電流を流し込んで、全ての蓄電素子が満充電となるまでの過程を示す図である。
【
図8】各蓄電素子の個別充電モードを最初から選択した場合の充電過程を説明する図である。
【
図9】
図8に示す示した充電のプロセスを更に進めていく状態を順々に示す図である。
【
図10】
図9に示した状態から充電用電流を更に各蓄電素子にそれぞれ個別に流し込んで、二次電池全体の充電が進んでいる状態を示す図である。
【
図11】
図10に示した状態に続いて、それぞれの蓄電素子に更に個別に電流を流し込んで充電を進めた状態を示す図である。
【
図12】
図11に示した状態から更に充電のプロセスを進めて二次電池を完全に全ての蓄電素子を満充電にする過程を示す図である。
【
図13】
図4乃至
図12に示した急速充電モード、組合せ充電モード、個別充電モードのそれぞれにおける充電所要時間の時間系列を概念的に比較して本発明の更なる理解をより促すための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る蓄電モジュールの充電装置について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る蓄電モジュールの充電装置に備わる制御システムの構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態に係る蓄電モジュール10は、それぞれの許容蓄電容量が予め決められた仕様の範囲内で上下にばらつくことを想定し、許容蓄電容量が異なる蓄電素子を並列接続した蓄電デバイス101,102,103,…100+N(Nは2以上の自然数:以下、
図1に合わせてこれを適宜「蓄電素子群100」又は単に「蓄電素子100」とする)の合計N個を1個からN個まで順番に直列接続して構成された蓄電モジュール10である。
【0024】
そして、この蓄電モジュールは、蓄電素子群1~蓄電素子群Nのそれぞれの陽極側に入出力端子101ta,102ta,103ta,…100+Ntaを備えると共に、同じ蓄電素子群のそれぞれにも陰極側の入出力端子101tb,102tb,103tb,…100+Ntbを備えている。また、蓄電素子群個別充電用入出力端子101ta,102ta,103ta,…100+Ntaのそれぞれには蓄電素子群1~蓄電素子群Nのそれぞれに対応するようにスイッチ(以下、文章及び図面において適宜「SW」とする)H1~スイッチHn(nはNに対応する2以上の自然数)が備わると共に、蓄電素子群個別充電用入力端子101tb,102tb,103tb,…100+NtbのそれぞれにはスイッチL1~スイッチLnが備わっている。なお、ここで蓄電素子群Kの正極と蓄電素子K-1の陰極、蓄電素子K+1の正極と蓄電素子Kの陰極は相互に接続されていることについて留意しておく必要がある。
【0025】
そして、スイッチH1~スイッチHnとスイッチL1~スイッチLnのそれぞれを介して蓄電素子群1~蓄電素子群Nのそれぞれに蓄電素子群個別充電用端子の+側と-側の各々を接続し、これら蓄電素子群個別充電用入出力端子は、スイッチH1~スイッチHnをN個の蓄電素子の各+側に接続する端子群と、スイッチL1~スイッチLnをN個の蓄電素子の各-側に接続する端子群とからなり、これ等の端子群は+側と-側の各々n個のスイッチを用いてただ一組だけが充電装置10の充電用電流電源20と電流検出部30に+側-側の各々が接続されている。
【0026】
充電装置10は、充電用電源部(電流出力部)20と、電圧/電流検出部30と、充電制御部40を備えており、充電用電源部20はスイッチH1~スイッチHnとスイッチL1~スイッチLnの何れか一組を導通させ、かつその他のスイッチは非導通のままになるよう制御するために電圧/電流検出部30に出力信号を伝えると共に、電圧/電流検出部30からの検出信号を受け取る。
【0027】
なお、充電制御部40は、電圧/電流検出部30から検出信号を受けるとこの情報に従いスイッチH1~スイッチHn及びスイッチL1~スイッチLnのそれぞれのオンオフ制御信号を送ってこれらのスイッチを適宜オンオフ制御するようになっているので、必要ならば直列接続された複数の蓄電素子群の+側と-側を充電用電源部に接続して充電等の制御を行うことも可能であるが、ここではその説明は行わない。
【0028】
続いて、上述した
図1に示す回路ブロック図に基づく蓄電モジュールの具体的な充電方法について、その異なる動作モードごとの具体的な制御方法を
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0029】
図2は、
図1に示した制御システムの構成に基づき、本発明の実施形態に係る蓄電モジュールの充電方法を実施するルーチンを説明するフローチャートである。最初に動作モードの選択を行う。この動作モードの選択においては、急速充電が必要か否かについて判断する(ステップS10)。
【0030】
ステップS10で急速充電が必要と判断した場合は、フローチャートの右側の急速充電モードを開始する。この急速充電モードにおいては、充電用電源を起動する(ステップS100)。
【0031】
次いで、SWH1とSWLnを閉じ、他のSWは開いた状態を維持する(ステップS101)。次いで、蓄電モジュールがキャパシタ(電気二重層コンデンサ、以下単に「キャパシタ」とする)であるか否かを判断する(ステップS102)。ステップS102で蓄電モジュールがキャパシタと判断した場合は、SWH1~SWLn間の電圧値を監視する(ステップS103)。
【0032】
なお、このステップS103の監視動作においては、個別キャパシタ仕様と容量偏差情報より最小容量のキャパシタ端子間電圧が設定値を超えないモジュール許容電圧の設定を事前に行っておく。そして電圧値が設定値を超えたか否かを判断する(ステップS104)。ここで電圧値が設定値を超えていない場合は、ステップS103に戻ってステップS103とステップS104のルーチンを繰り返す。
【0033】
一方、ステップS104で電圧値が設定値を超えたと判断した場合は、充電完了として、スイッチSWH1とSWLnを開放すると共に、充電用電源からの充電を停止する(ステップS20)。
【0034】
また、ステップS102で、蓄電モジュールがキャパシタでは無いと判断した場合は、蓄電モジュールに供給する総電荷量を監視する(ステップS105)。そして、充電用電源の電流検出情報から総電荷量を算出する(ステップS106)。このステップにおいては、総電荷量は電流値×継続時間の累積で算出する。なお、このステップ動作にあたって予め個々の電池仕様の容量偏差から最小容量を把握し、充電で当該電池が過充電とならない電荷量を把握して事前に設定しておく。
【0035】
次いで、総電荷量は設定値を超えたか否かについて判断する(ステップS107)。ここで総電流が設定値を超えていないと判断した場合は、ステップS106に戻ってステップS106とステップS107のルーチンを繰り返す。一方、ステップS107で総電流量が設定値を超えた場合は充電完了としてSWを開放し、充電用電源からの充電を停止する(ステップS20)。
【0036】
続いて、ステップS10において急速充電の動作モードを選択しない場合、個別充電の動作モードを選択するか否かを判断する(ステップS11)。このステップS11で個別充電の動作モードを選択した場合、変数X=1とし、全SWを開き充電用電源を起動する(ステップS201)。そしてSWHX及びSWLXを閉じる(ステップS202)。
【0037】
次いで、蓄電モジュールがキャパシタか否か判断する(ステップS203)。ステップS203で蓄電モジュールがキャパシタの場合と判断した場合は、SWHX~SWLX間電圧値を監視する(ステップS204)。なお、このステップを実行するにあたって、この監視動作において蓄電素子群のキャパシタ端子間電圧最大値を事前に設定しておく。
【0038】
そして、電圧値は設定値を超えたか否かを判断する(ステップS205)。このステップで電圧値設定値を超えていないと判断した場合は、ステップS204に戻り、ステップS204とステップS205のルーチンを繰り返す。一方、ステップS205で電圧値が設定値を超えたと判断した場合は、ステップS206で全てのスイッチを一旦開き、変数X=X+1とする。
【0039】
次いで、変数Xが所定値nを超えたか判断する(ステップS207)。このステップで変数Xが所定値nを超えていない場合は、SWHX及びSWLXを閉じるステップS202に戻る。そして、ステップS203において蓄電モジュールがキャパシタか否かであると判断する。このステップで蓄電モジュールがキャパシタであると判断した場合は、上述したようにステップS204に移行して先ほど説明したルーチンを繰り返す。
【0040】
ステップS207において変数Xが所定値nを超えたと判断した場合は充電完了としてSWを開放し、充電用電源からの充電を停止する(ステップS20)。
【0041】
一方、ステップS203において蓄電モジュールがキャパシタでないと判断した場合は、モジュールに供給する総電荷量を監視する(ステップS211)。なお、このステップの監視動作においては、個別電池仕様の容量偏差から最小容量を把握、過充電とならない総電荷量を事前に設定しておく。
【0042】
次いで、総電荷量が設定値を超えたか否かを判断する(ステップS212)。このステップで設定値を超えていないと判断した場合は、ステップS211に戻りこのルーチンを繰り返す。
【0043】
そして、ステップS212で総電荷量が設定値を超えたと判断した場合は、全てのSWを一旦開くと共に、変数X=X+1とする(ステップS213)。次いで、変数Xが所定値nを超えたか判断する(ステップS214)。ここでXがnを超えたと判断した場合は充電完了としてSWを開放し、充電用電源からの充電を停止する(ステップS20)。
【0044】
一方、変数Xが所定値nを超えたと判断していない場合は、SWHX及びSWLXを閉じてステップS202に戻り、ステップS202からステップS214までのルーチンを繰り返す。
【0045】
なお、上述した急速充電か個別充電かの何れかも選択せずにこれを組み合わせて充電する動作を選択することも、本発明においては可能である。この場合、ステップS11で個別充電モードを選択しないことで、組合せ充電動作モードに移行する(ステップS30)。このステップS30規定される組合せ充電動作モードにおいては、先ほどのステップS100に関して一連のルーチンで実行した急速充電動作を行う(ステップS31)。
【0046】
そして、急速充電動作が終了したら(ステップS32)、先ほどのステップS200番台で説明した個別充電動作を実行する(ステップS33)。
【0047】
次いで、個別充電動作が終了したら(ステップS34)、ステップS20において充電完了としてSWを開放し、充電用電源からの充電を停止する。
【0048】
このようにして、蓄電モジュールの本発明に係る蓄電モジュールの充電動作をその充電にあたっての様々な条件、即ち充電時間に余裕がなく、かつ充電後の蓄電モジュールによって負荷対象となるモーター等をそれほど長い時間動作させる必要がない場合、例えばEV(電気自動車)や電動式自転車によって近所の用事を済ませる場合等、急速充電モードを選択してこれに見合う程度の蓄電モジュールの一部充電を行うか(ステップS10)、時間に余裕がある場合は個別充電動作を行って蓄電モジュールを満充電にするか、若しくは両者に必要な時間の中間程度の充電時間で充電したい場合は上述した組合せ充電動作(ステップS30)を行うか、若しくはステップS20で規定される組合せ充電を行うか、二次電池の充電をTPOに合った最適な充電プロセスを適宜選択して実行する。
【0049】
続いて、
図2に示したフローチャートに関連して上述した説明を
図3乃至
図12に示す図に基づいてより概念的に分かり易く説明する。
図3は、現状使われている従来の二次電池の概略的イメージ構造を示す説明図(
図3(1))、及び本発明に係る二次電池の概略的イメージ構造を示す説明図(
図3(2))である。
【0050】
なお、以下の
図3乃至
図12の具体的な表示内容及びこれに関する文章説明については、アナログ回路や電気回路の電流や電圧等の理解を容易にするための概念説明として頻繁に用いられる貯水タンクや水流、開閉バルブなどの等価的説明図に準じて示したものである。即ち、
図3乃至
図12の具体的な表示内容及びこれに関する文章説明はあくまで本発明の理解の容易化を図るための補助的説明であり、これらの内容及び表現自体が本件特許出願の権利範囲を限定するものでないことは言うまでもないことを付言しておく。
【0051】
ここで、
図3以降の図面において、
図3(1)に実線のみで示すと共に、
図3(2)乃至
図12のそれぞれに実線と点線(
図3(2)乃至図(a-3))を組み合わせて示す縦長の区画領域は、二次電池としての蓄電モジュール(以下単に「二次電池」とする)を構成する各蓄電素子を模式的に表したものである。
【0052】
なお、ここで言うそれぞれの「蓄電素子」は、それぞれ
図1に示した「蓄電素子群」又は「蓄電モジュール」に相当するが、説明の簡略化及び発明の理解の容易化のために単に「蓄電素子」の用語を用いるものとする。
【0053】
また、
図3乃至
図5の左下において示す右向きの矢印は、二次電池の急速充電時に二次電池に流し込む電流を表している。そして、この右向きの矢印の大きさは、二次電池に流し込む電流量にも同時に表している。
図3(1)で示す従来の二次電池の充電用を電流iaよりも
図3(2)乃至
図5(a-3)で示す急速充電用の電流Iの方が遥かに大きいことを示している。
【0054】
また、
図3(2)及び
図5(b-1)乃至
図11(c-8)における縦長の蓄電素子のそれぞれの上方に適宜示す下向きの矢印は、この矢印に対応する蓄電素子を個別に満充電にするために別々に流し込む電流iを模式的に表している。
【0055】
即ち、上述した図中左側の右向きの急速充電時の矢印の大きさ(太さ)と、各蓄電素子にそれぞれ別個に流し込む下向きの矢印の電流を示す矢印の太さが互いにかなり異なっている。これは、急速充電時においては右向きの太さの太い横矢印で示すように、大量の電流を二次電池に一気に流し込むことを意味しており、各蓄電素子の上側の太さの細い下向きの矢印は、それぞれの蓄電素子を充電にするのに適切な量の電流を各蓄電素子に流し込むことを意味している。
【0056】
そして、
図3乃至
図12において左側の太さの太い右向き矢印が表示されていない図は、急速充電用の電流を二次電池に流し込むことを停止している状態を表している。また、各蓄電素子の上側の下向きの太さの細い矢印が表示されていない部分は、これに対応する蓄電素子において個別に充電する電流を流し込んで無いことを表している。
【0057】
また、各図面の左側の上下の矢印で挟まれた部分(範囲d(
図3)又はD)は、各蓄電素子の製造工程において生じるバラつき、即ち各蓄電素子がそれぞれ個別に充電できるのを考慮した上で、これらの蓄電素子の組み合わせで構成される二次電池を急速充電する際に、この急速充電を可能とする許容上限値を示している。即ち、各蓄電素子に共通する急速充電可能となる上限値を下側の横向きの点線dmin(
図3)、Dminで示している。
【0058】
一方、この上側の下向きの矢印で示す部分に対応する横線部分dmax(
図3)、Dmaxは、それぞれバラつきの充電許容量にばらつきがある各蓄電素子内、最大量の充電をできる蓄電素子の充電許容量を示している。
【0059】
なお、
図3(2)から
図12まで示す横線Cは、二次電池の充電に際して急速充電モードを選択した場合に各蓄電素子の急速充電許容レベルの目安の一例を示している。つまり、
図2のフローチャートのステップS10で説明した急速充電モードを選択して二次電池の急速充電を行った際に強制的に充電を終了する急速充電許容限界レベルを示しているもので、急速充電モードにおいてこのレベルに達することなくこれよりもかなり少ない充電量でも二次電池をその後に電源として十分に使用できる場合、例えば電気自動車(EV)を使ってすぐ近くの場所まで走行して用事を済ませ、短時間で再び自宅に戻ってくるのに十分なレベルの少ない充電量に達した段階で急速充電を使用者の判断で停止しても可能である。
【0060】
これらの図面から明らかなように、
図3(1)における現状の二次電池は、各蓄電素子の許容充電流の管理を製造工程で手間をかけて厳密に行っているため、これらの幅dが狭くなって各蓄電素子間の許容充電量の偏差が小さくなっている。このような二次電池を現状において作成するにあたっては、各蓄電素子の製造工程におけるバラつきを厳密に管理すると共に、要求される厳しいスペックを満たさない蓄電素子を廃棄しなければならない。その結果、製品の歩留まりが経過すると共に、廃棄する蓄電素子の数の増加により二次電池の全体のコスト高を招いたたり、蓄電素子の廃棄に伴う環境問題の悪化が現状の問題となっている。
【0061】
なお、本発明によると、急速充電許容レベルに関して、各蓄電素子やこれ等を用いて構成する蓄電セルや蓄電素子等を組み合わせて二次電池を構成する場合、各蓄電素子の充電許容レベルのばらつきを考慮した上で十分な安全率を確保することが可能となる。
【0062】
このような事情に鑑みて、本発明においては、
図3(2)から
図12に示すように、各蓄電素子の製造上のばらつきに基づく許容充電量の大小関係を特に厳密に規定することなく(
図3(1)のdの幅と、
図3(2)以降のDの幅の大小関係参照)、二次電池としての機能を妨げるような蓄電素子のみを不合格品として廃棄処分している。その結果、上述した現状の各蓄電素子の製造上の歩留まりの低下や、不合格品となった多数の蓄電素子の廃棄に伴うコストの向上及び廃棄処分に伴う環境破壊を本発明においては回避することができる。
【0063】
各蓄電素子を構成する最小要素となる蓄電セルの製造者、又はこの蓄電セルを組み合わせて蓄電素子や二次電池を組み立てる製造者が、従来のように二次電池自体、又は各蓄電素子やこれを構成する蓄電セルごとに許容充電量を厳密に測定及び検査して、それぞれの蓄電素子の許容蓄電量をレベル分けし、許容充電量毎に分別するような面倒な手間を省くことが可能となる。
【0064】
即ち、許容充電量に関して、ある程度のばらつきがある蓄電素子をそのまま組み合わせて蓄電素子自体やこれを組み合わせた二次電池を面倒な測定及び検査工程を経ることなく一義的に製造できる。これによって、従来のような許容充電量に応じたレベル分けが不要となり、蓄電素子や二次電池を大量かつ低コストで生産して市場に供給することができるようになる。
【0065】
なお、
図3(1)における各蓄電素子においては、縦長の各電池蓄電素子は、全て実線で区分けすると共に、大きさをあえて小さく描いた。この意味合いは以下の通りである。例えばリチウムイオン二次電池のような化学的二次電池の場合、充電時に電流を流し込むことによって二次電池が充電される過程において常に必ず化学反応を伴うものである。
【0066】
この化学反応の速度は、電気的に抵抗として等価的な意味合いを有するため、急速充電の際に一度に大量の電流を流し込むと、抵抗の発熱による温度上昇のために化学反応の速度を促進させてしまう。その結果、二次電池の発熱が更に促進され電池が破損したり発火したりする問題を招く恐れが一般的に知られている。そのため、電気的な抵抗と等価的な意味合いを有するこのような化学反応に伴う二次電池の充電中の抵抗を、
図3(1)において各蓄電素子を実線のみで表すことで、このような化学的二次電池の急速充電において大量の電流を流し込めないことの理解の容易化のために示したものである。
【0067】
一方、
図3(2)から
図5(a-3)に示す縦長の蓄電素子は、それぞれ上側の部分が実線で下側の部分が点線で区画した状態で個別に示している。即ち、点線で示す下側の部分が、各蓄電素子がそれぞれ有する許容充電量のばらつきを考慮した急速充電時の共通許容充電量を示す部分を表しており、それ以上の部分を各蓄電素子は急速充電後に残っている許容充電量をそれぞれ実線の長さに対応させて示している。
【0068】
これに加えて、
図3(2)から
図12に示す二次電池を構成する各蓄電素子は、いわゆる物理的二次電池としての電気二重層コンデンサからなる蓄電素子の集合体で構成されていることを図面上分かり易く示している。
【0069】
この意味合いについて説明する。このような電気二重層コンデンサからなる二次電池は、上述した一般的に使用されているリチウムイオン電池に代表される化学的二次電池とは充電原理とこれに基づく具体的構成自体が全く異なっている。具体的には、急速充電の際において大量に電流を流し込んでも化学的二次電池のような化学反応を伴うことなく、即ちこの化学反応が急速充電の際の電流を流し込みに伴って抵抗として発熱することなく瞬時に充電できる充電できるので、このことを視覚的に理解できるように図面に表している。
【0070】
また、
図4は、以下に記載する実施の形態の内容及びこれに伴う
図2のフローチャートにおいて示すステップS10に関する急速充電が必要と判断した場合にこの急速充電の過程を上下の順に概念的に示す説明図である。より詳細には、
図4(a-1)においては、二次電池の充電量がゼロの状態を示している。
【0071】
図13は、ステップS10による急速充電モード(
図4(a-1)乃至
図5(a-3))、ステップS30による組合せ充電モード(
図5(b-1)乃至
図7(b-5))、ステップS20による個別充電モード(
図8(c-1)乃至
図12(c-9)のそれぞれにおける充電所要時間の時間系列を概念的に比較して本発明の更なる理解をより促すための説明図である。
【0072】
図4(a-1)は、ステップS10による急速充電開始時(t=0)の状態を示している。また、
図4(a-2)は、ステップS10による急速充電開始後の状態を表している。
【0073】
また、
図5は、
図4に示した二次電池の急速充電を更に進めた状態を上下の順に概念的に示す説明図である。より詳細には、
図5(a-3)においては、
図4(a-2)に示した状態から更に急速充電が進み、二次電池の急速充電許容上限レベルまで達したことを示している。なお、この状態においては、各蓄電素子がそれぞれ有する許容蓄電量に対して十分な余裕をもった充電量を残し、
図5(a-3)においては、急速充電モードを一旦完了した状態を示している。なお、本制御法でも直列接続された蓄電素子の複数個所を同時に充電することも可能ではあるが、ここではそれも可能であることを指摘するに留める。
【0074】
そして、
図5(a-3)から
図5(b-1)の過程においては、急速充電モードを完了してステップS20に示す満充電モードに移行して充電が進んだ状態を示している。これは、
図5(b-1)に示すように、充電電流はそれぞれの蓄電素子ごとに下向きの細い矢印で示しており先ほどの急速充電において二次電池に流し込んだ電流とは異なる値の各蓄電素子に見合った充電電流iを蓄電素子(
図5(b-1)では最も左側の蓄電素子)に個別に流し込んでいる状態を表していることから理解できる。
【0075】
ここで、各蓄電素子に流す電流は、急速充電とは関係無く各蓄電素子の許容値以内であれば良いのだが、個々の蓄電素子の印加許容電圧は現状で3~5v程度と低く個別充電時には急速充電時よりも電源側の損失が大きくなることが考えられることで電源側の許容損失の制約故電源の許容電力近傍での温度上昇で、装置寿命から考え温度上昇を抑える事が必要な場合は電源の電力許容値付近の電流を低減し温度上昇を抑える必要が生じる等が考えられ、また蓄電素子を並列で使うことで低電圧・大電流時は高電圧時よりも損失が増加すること等が想定されるため、ここでは急速充電時より少ない電流値で説明してあるが、電流値は各蓄電素子の許容範囲内に留めれば他に制約条件はない。言う迄も無いことだが、蓄電素子の並列使用時は各素子には充電電流を均等に流し、電流値は各素子許容範囲内となるように配慮しておく必要が有る。
【0076】
また、
図5(b-1)は、
図5(a-3)に示した二次電池の急速充電モードを完了した後に
図2のフローチャートのステップS30で説明した組合せ充電を開始した状態を概念的に示す説明図である。なお、
図2のフローチャートでステップS10の急速充電モードを選択したときは、
図5(a-3)の状態で急速充電が完了した時点で、本実施形態の充電動作を止めてその後の充電は行わないようになっている。
【0077】
また、上述したように、
図5(b-1)に示した二次電池の急速充電モードの急速充電許容限界レベルCは、
図2のフローチャートのステップS10で説明した急速充電モードを選択して二次電池の急速充電を行った際に強制的に充電を終了する急速充電許容限界レベルを示しているものである。そのため、本発明において着目すべき特徴としてこの急速充電モードの許容限界レベルCに達する以前に二次電池の使用態様に応じて自由なレベルで急速充電モードを停止させて急速充電を任意の充電量で完了することが可能であることが挙げられる。
【0078】
具体的には、急速充電モードにおいてこのレベルに達することなくこれよりもかなり少ない充電量でも二次電池をその後に電源として十分に使用できる場合、例えば電気自動車(EV)を使ってすぐ近くの場所まで走行して用事を済ませ、短時間で再び自宅に戻ってくるのに十分なレベルの少ない充電量に達した段階で急速充電を使用者の判断で停止することも可能である。
【0079】
これによって、急速充電モードを選択した際に、充電時間と二次電池に充電して消費する電力との関係のバランスを考えながら上述した急速充電許容限界レベルに達する範囲内で適宜使用者の目的に合わせて急速充電を途中で止めることが可能である。
【0080】
そのため、電気自動車に使用する二次電池に限らず、電動自転車や電動車椅子を使用する際の移動エリアに合わせて急速充電の時間をより短くして、充電を素早く終わらせて例えば時間的に切羽詰まった用事を近所で済ませるような場合に、これに間に合うように必要最低限の急速充電動作だけ済ませて目的を達成することが可能となる。
【0081】
同じく今後普及が急速に広まるであろう受付ロボット、案内ロボット、介助ロボットなどを早急に短時間だけ使用しなければならないような事態が生じても、最低限必要な充電量だけ急速充電モードで二次電池に極めて短時間で電力供給すれば、これらのロボットを臨機応変に使用することができるようになり、使い勝手がかなり向上する。
【0082】
図6(b-2)は、
図5(b-1)に示した状態から各蓄電素子の個別充電を進めた結果、全ての蓄電素子の急速充電許容蓄電レベルを超えて蓄電が進んでいる状態を示している。
図6(b-2)に示された内容は、
図6(b-1)の個別充電を終えて更に左側から2番目の蓄電素子を満充電にした後、左から3番目の蓄電素子の個別充電を開始するにあたり、この蓄電素子に電流iを流し始めていることが理解できる。
【0083】
また、
図6(b-3)は、
図6(b-2)よりも各蓄電素子の個別充電が進んだ状態を示しており、同図においては、図中左側から5番目までの蓄電素子が個別充電で順次満充電となって、その後に左側から6番目の蓄電素子の充電を開始するためにこの蓄電素子に下側の矢印で示す充電用の電流iの流し込みを開始することを示している。
【0084】
図7は、
図6に示した二次電池の組合せ充電を更に進めた状態を上下の順に概念的に示す説明図である。より詳細には、
図7(b-4)は、
図6(b-3)に示した状態からまだ充電に余裕のある蓄電素子蓄電素子、即ち右から2番目の蓄電素子を満充電にする状態を示す図である。
【0085】
また、
図7(b-5)においては、
図7(b-4)の状態から右端の蓄電素子に電流iを流し込んで全ての蓄電素子を満充電にして二次電池の充電を完了した状態を示している。即ち、この状態においては、全ての蓄電素子が満充電となって二次電池の充電が完了しているので、各蓄電素子に流し込む下向きの電流iを表さないでいる。
【0086】
また、
図8は、以下に記載する実施の形態の内容及びこれに伴う
図2のフローチャートにおいて示すステップS20に関する二次電池の充電初期からの各蓄電素子の個別充電モードを選択した場合に、二次電池の充電過程を上下の順に概念的に示す説明図である。即ち、
図8は、上述した急速充電急速充電モードを選択することなく、最初から
図2のS20に示す各蓄電素子の個別充電モードを選んで二次電池を満充電にする過程を上下の順に概念的に示す説明図である。この個別に充電による二次電池の充電方法は、急速充電では任意の途中での中断が可能であることとは異なり、基本的には充電完了までの間中断はできないため、充電時間に十分な余裕のある場合に有効に行うことができる充電方法である。
【0087】
より詳細には、
図8(c-1)においては、二次電池自体の充電量がほぼゼロの状態を示している。また、同図においては、上述した急速充電の場合と異なり、最初に満充電とすべき最も左側の蓄電素子に下向きの矢印iで示す電流、即ち各蓄電素子を充電するのに必要かつ十分な電流をこの蓄電素子に流し込んでいる状態を表している。
【0088】
そして、
図8(c-2)においては、
図8(c-1)の状態から最も左側の蓄電素子を満充電した後に左側から2番目の蓄電素子の個別充電を開始する状態を示している。即ち、この個別充電の初期段階においては、最も左側の蓄電素子の充電が完了して満充電となっている。
【0089】
また、
図9は、
図8に示した二次電池の個別充電を更に続けた状態を上下の順に概念的に示す説明図である。具体的には、
図9(c-3)においては、
図8(c-2)における左側から1番目と2番目の蓄電素子が順番に満充電になったことを示している。
【0090】
また、
図9(c-4)においては、図(c-3)よりも更に個別充電のプロセスを進めて、左側から1番目乃至3番目の蓄電素子が順番に満充電となった後に、左から4番目の蓄電素子の個別充電を開始する状態を示している。
【0091】
また、
図10は、
図9に示した二次電池の個別充電を更に続けた状態を上下の順に概念的に示す説明図である。具体的には、
図10(c-5)においては、
図9に示した状態から蓄電素子の個別充電を更に進めて、左から1番目乃至5番目の蓄電素子までを順次満充電にした後、左から6番目の蓄電素子の個別充電を開始する状態を示している。
【0092】
また、
図10(c-6)においては、
図10(c-5)を示す状態から蓄電素子の個別充電を更に進めて、右から7番目までの蓄電素子まで満充電にした後に、右から6番目の蓄電素子の個別充電を開始する状態を示している。
【0093】
また、
図11は、
図10に示した状態に続いて、蓄電素子の蓄電素子の個別充電を更に進める過程を上下の順に概念的に示す説明図である。具体的には、
図11(c-7)においては、
図10(c-6)に示した右から5番目の充電蓄電素子を満充電に開いた後、右から4番目の蓄電素子の個別充電を開始する状態を示している。
【0094】
そして、この充電プロセスを更に進めることによって、
図11(c-8)に示すように、二次電池の合計充電量が全体的に増加して満充電に近づき、最後の充電すべき蓄電素子である右端の蓄電素子のみの充電を開始する状態を示している。
【0095】
また、
図12(c-9)は、
図11に示した状態から更に充電のプロセスを進めて二次電池を完全に全ての蓄電素子を満充電にすることによって二次電池の全体の充電を完了した状態を上下の順に概念的に示す説明図である。具体的には、
図11に示した状態から更に充電のプロセスを進めて二次電池を完全に全ての蓄電素子を満充電にすることによって二次電池の全体の充電を完了した状態を示している。この状態においては、それぞれの蓄電素子に流し込む電流を示す下向きの矢印が全てなくなっていることで二次電池は満充電となったことが理解できる。
【0096】
図13は、ステップS10による急速充電モード(
図4(a-1)乃至
図5(a-3))、ステップS30による組合せ充電モード(
図5(b-1)乃至
図7(b-5))、ステップS20による個別充電モード(
図8(c-1)乃至
図12(c-9)のそれぞれにおける充電所要時間の時間系列を概念的に比較して本発明の更なる理解をより促すための説明図である。
【0097】
図13(a)は、<ステップS10による急速充電を選択>モードであり、同図に示すようにT=0の充電開始から充電時間TA経過後に急速充電が完了して、二次電池の部分充電完了が完了している。なお、この急速充電モードにおいては、時間TA経過前でも急速充電を停止することが可能であることに留意すべきである。即ち、例えば
図13(a)の矢印の途中における任意の時点で急速充電の停止が可能となっている。
【0098】
また、
図13(b)は、<ステップS30による組合せ充電を選択>モードであり、時系列的に急速充電完了→個別充電に移行となっている。即ち、
T=0の急速充電開始からTA経過急速充電が完了した後、別充電に移行して充電時間TB後に個別充電が完了して二次電池の満充電が完了している。なお、図中においてTB=(tb1+tb2+…tb(n-1)+tbn)となっている。
【0099】
また、
図13(c)は、<ステップS20による個別充電を選択>モードであり、T=0の個別充電開始から充電時間TC経過後に個別充電が完了して二次電池の満充電が完了している。なお、図中においてTC=(tc1+tc2+tc3+…tc(n-2)+tc(n-1)+tcn)となっている。
【0100】
以上説明した通り、これらの3種類の充電モードの違いに基づき、充電時間に余裕があるかないかを考慮しながら、二次電池の充電量をどの程度充電する必要があるかを考えながら、毎回の充電ごとに異なる状況(TPO)に合わせて二次電池の適切な充電を行うことができるという本発明の特有の特徴をこの
図13からも視覚的に容易に理解できる。
【0101】
続いて、上述した本実施形態に係る充電モジュールの充電装置及び充電方法に関する作用について、具体例を交えて説明する。なお、この具体例は、あくまで一例を示したものに過ぎないことを付言しておく。
【0102】
例えば現状使用されている従来の二次電池では
図3(1)において図中の左側から充電電流i(A)を流し込んで充電していることからも分かるように、二次電池を構成する各蓄電セルの内、蓄電容量の一番小さい蓄電セルの蓄電容量に合わせてこの蓄電セルが満充電に至らないように安全率を考慮した上で二次電池を充電し、これを満充電と称していた。
【0103】
即ち、従来の二次電池の構造及びこれに基づく充電方法によると、上述した「満充電」と称するも各蓄電セルを全て満充電にすることは非常に困難であった。
【0104】
一方、本発明によると、上述した実施形態における文章の説明及び例示的に示した本発明のブロック図、充電方法に関するフローチャート、及び充電過程を時系列的に示す説明図から明らかなように、上述した従来の二次電池の充電方法とは異なる。
【0105】
本発明独自の充電方法により、たとえ二次電池を構成する各蓄電セルの許容充電量に従来の各蓄電セルと比較してより大きなばらつきがあっても、各蓄電セルを全て満充電にすることで「二次電池の満充電」を可能とする。
【0106】
即ち、従来の方法で二次電池を満充電した場合に比べて、仮に各蓄電セルの充電容量のばらつきが大きくても全ての蓄電セルを満充電にすることにより、同じ蓄電素子を用いながらより蓄電量を大きくすることが出来、結果的に二次電池の使用可能な蓄電量を顕著に向上させることができるという際立った優位点を従来技術に対して実現した。
【0107】
また、電動自転車で近くまで買い物に行こうとしたときに、充電モジュールの充電量が少なくなって近くまでの買い物の用事にも使えなくなってしまったような場合において、僅かな時間で済むような用事にも関わらず、電動自転車に備わった充電モジュールを満充電になるまで充電させて長時間待っていなければならず、その日の生活リズムが崩れてしまって、例えば夕食までの食材の購入に間に合わなくなってしまい、夕食の時間が大幅に遅れてしまうというような問題が生じてしまう。しかしながら、本発明によるとこのような問題を一気に解決することができる。
【0108】
同じく、電気自動車を運転して近くの買い物や病院に行く用事がある場合に、充電モジュールの充電量が殆どなくなってしまっていると、その目的地に行く前に電気自動車の充電モジュールを充電する必要が生じる。この際、充電モジュールでは一般的にはある程度の走行距離を確保するため、60%程度迄を充電し、その後必要に応じて充電量を追加するようにしていることが多いが、それでも充電装置の最初の設定まで充電させると、たとえ充電待ちの時間が無くともかなりの時間がかかってしまい、目的地に行って用事をスケジュール通りに済ませることが不可能になってしまい、生活のリズムを乱してしまう。
【0109】
例えば、病院の診察予約をしていた場合にその予約時間に間に合わず再度予約をし直さなければならないなどの面倒な手続きを行わなければいけなくなったり、高齢の家族をデイサービスに送迎するのにも時間がかかったりしてしまう等の問題が生じてしまうことがある。
【0110】
また、家族の体調が、救急車を呼ぶまでではないが急に悪くなったときに充電モジュールの充電がタイミング悪く必要となった場合等、充電のために病院での診察までにかなりの時間がかかってしまい、更なる体調悪化を招いてしまうきっかけとなる恐れがある。しかしながら、本発明によるとこのような問題を一気に解決することができる。
【0111】
なお、本実施形態は、あくまで本発明の一例を示したものに過ぎず、本発明がこの形態に限定されるものでは無い。即ち、本発明の作用を発揮し得る範囲内であれば、その各構成要素の形状、個数、各構成要素同士の相関関係を適宜変更可能であり、かつ本実施形態の作用を説明したフローチャートについても、本発明の作用を発揮し得る範囲内でそのルーチンを変更可能であることは言うまでもない。
【0112】
また、上述の実施形態においては、蓄電デバイスとして充電素子の一例であるキャパシタを並列に接続した大容量キャパシタを更に直列接続直列して構成された蓄電モジュールや、他の形態の例えばリチウムイオン電池などの化学的二次電池をこのキャパシタと等価的構成で組み合わせた蓄電池モジュールの充電方法について説明したが、物理的二次電池としてのキャパシタの代わりに他の等価的な物理的二次電池を備えた蓄電デバイスを充電する場合や、化学的二次電池としてのリチウムイオン電池の代わりに他の等価的な化学的二次電池を備えた蓄電デバイスを充電する場合であっても、本発明を適用可能である。
【0113】
同様に、上述の実施形態では蓄電素子としてのキャパシタを並列に接続した蓄電素子群1乃至蓄電素子群Nからなる蓄電モジュールを用いたが、これら蓄電素子群の代わりに単独の蓄電素子1乃至蓄電素子Nからなる蓄電モジュールを用いても本発明の適用の範囲内となる。
【0114】
続いて、本発明の優位性を裏付ける発明者の知見について紹介する。現在各種蓄電素子-電池やキャパシタ-の充電は、蓄電素子を直列に接続、所定の電圧としたモジュールを並列接続したものに対して行っている。しかし、この方法は、特に自己放電や漏洩電流等の各電池等構成品の個々のばらつきが大きくなることに起因して問題が生じる。
【0115】
具体的には、事前に評価・測定を行うことで、モジュール内の各構成品の特性上のバラツキを把握しモジュールを組み合わせることは出来ても、特に漏洩電流や電池内部の自己消費などの把握が困難となり得る。これに加えて、個々の蓄電素子の経年劣化に伴う容量や漏洩電流、内部抵抗の増加や変動・自己消費の変化量を予測してモジュールを組み合わせるような手法の実現は困難となっている。そのため、基礎となる素子やモジュールの劣化モデルの構築や予測は、未だ進展は無きに等しく、今後の課題となっている。
【0116】
また、各モジュール構成品の漏洩電流や容量の偏差測定についても、正確に素早く多数を測定する技術の開発も上述と同様の状態であり、従来からの課題の解消には未だ程遠い状況にある。
【0117】
そのための対策として、大容量キャパシタモジュールでは、定期的にモジュールを完全に放電することでモジュール内の全キャパシタの蓄積電荷を一旦空(エンプティ)にし、漏洩電流やキャパシタ容量の変動等によって生じる蓄積電荷の偏りを一旦解消し、その後モジュールを再充電することで、各キャパシタ蓄積電荷の偏りを補正する方法が今も用いられている。
【0118】
また、別の方法として、漏洩電流や内部損失の影響を少なくするために、蓄電素子に並列に抵抗を接続し、抵抗に流れる電流値を漏洩電流や内部損失よりも大きくして、上述の損失が無視できるようにする方法も一部では用いられている。
【0119】
しかしながら、これらの方策は、蓄電素子本来の能力を減じると共に損失を増大させるという根本的な問題を包含する方法のため、これらの課題を解決する新しい方法が必要となっているのが現状である。そして、本発明の発明者は、このような事情に鑑みてこれらの諸問題を一気に解決することができる今回の発明を提案することとした。
【0120】
このような提案に際して、本発明の発明者が着想した極めて利便性の高い各種蓄電素子や電池やキャパシタの充電装置や充電方法、特に大容量キャパシタモジュールの充電装置や充電方法を実現するにあたり、必要不可欠な充電制御機能としては以下の(1)~(4)の4項目が挙げられる。
(1)急速充電が可能なこと。
(2)急速充電中に、任意の時点で急速充電を中止し装置を稼働することが可能なこと。
(3)急速充電と別に、個別モジュール毎の充電を全モジュールに対して行い全モジュールの満充電迄が可能なこと。
(4)個別モジュールへの充電時には、基本として満充電まで充電動作の中断は行わない。
但し、やむを得ず中止した場合は、中断後の装置再稼働と、その後の個別モジュールへの充電再開が可能なことが必要であると考えた。
【0121】
そして、これらの項目を全てクリアするために本発明装置及び本発明方法は、蓄電素子・電池、キャパシタのそれぞれを単独又は並列に接続することを必須の構成とした。そして、これらを直列に接続した蓄電モジュールの充電制御装置・方法に関して、
図1に示す本充電装置・方法の概略機能図と、
図2に示す蓄電モジュールの充電制御概略動作フロー図を本発明の実現すべき一例として着想した。
【0122】
より詳細には、充電動作の種別として、充電制御部は、蓄電素子群1~N各々の正極側に接続したスイッチ群SWH1~SWHnと負極側に接続したSWL1~Lnの必要なスイッチを閉じ、充電用電源を起動し充電を開始するようにした。また、充電用電源は、電流出力で、電源能力範囲内で充電用の電力を出力するようにした。
【0123】
また、本充電装置・方法では(a)急速充電、(b)個別充電、(c)(a)と(b)の複合充電、の3通りの方法で動作するようにした。このようにして、従来の二次電池の充電装置・方法には見られない極めて優位性を備えた斬新な各種蓄電素子や電池やキャパシタの充電装置や充電方法を実現して提案した次第である。
【0124】
最後に本発明における蓄電モジュールの充電方法及び充電装置を電気二重層コンデンサからなる物理的二次電池と組み合わせて様々な分野に普及させることで次世代型のエネルギー供給体制をグローバルに進めることができる内容について説明する。
【0125】
現在様々な分野で主流として使われているリチウムイオンバッテリーの場合、その二次電池としての特性を一定に保つために正極活物質や負極活物質、その間に介在する電解液等を厳密なスペックで管理して製造することが必要となっている。これはできあがった電池では、容量のバラツキ、即ち偏差のために容量の少ない電池ユニットが蓄電装置全体の蓄電容量を決定してしまうためである。従って、例えば電気自動車(EV)などの大容量の二次電池して使用するためにはリチウムイオン二次電池の構造をかなり大掛かりなものにしなければならず、その製造コストが高く嵩んでいる。
【0126】
一方、このような化学電池においては、上述したような正極活物質や負極活物質、その間に介在する電解液等のスペック上の管理を厳しくし電池の内部抵抗を低減しなければ二次電池を短時間で満充電した場合に電池自体が内部抵抗に拠る発熱のために内部の温度が上昇したり、製造工程での種々なバラツキのためにバッテリー間でもバッテリー内でも温度上昇がパラついたりすることで、温度上昇の激しい電池の一部が破損して化学反応速度の加速度的な増加とそれに伴う自己発熱のために破損や火災の原因になってしまう危険性がある。
【0127】
一方、電気二重層コンデンサは、いわゆる上述したリチウムイオンバッテリーのような化学電池にみられる化学反応やリチウムイオンの移動(これらは、電気的な抵抗と等価的なものとみなされる)を伴わず、電解質イオンの電解液中での移動と電極への吸着や脱離のみが生じ、物質の変化や電極間のイオンの移動を伴わないことによるメリット、つまり電気抵抗が少なく反応時間が短いなどの優れた特徴を有している。
【0128】
具体的には、充放電を繰り返しても性能劣化が殆ど起こらずサイクル寿命として百万回にも達する上、充電速度も化学電池に比べて非常に早く済むという特徴を有している。
【0129】
従って、このような二次電池も今後急速に普及する可能性を十分に有している。電気二重層コンデンサの利点は、電極間を電解液中のイオンが移動することで蓄電するため内部抵抗が少なく、電流を流しても発熱が非常に少ないこと、化学反応では無いので充放電に伴う劣化が生じないため特性劣化が少ないこと、コンデンサの物理的な構造に拠る最大許容電流まで電流を瞬時に流せることである。
【0130】
更にリチウムイオン二次電池を安価にかつ大量に生産するにあたって立ちはだかる特別な事情について述べる。この特別な事情の1つとして、リチウムイオン電池のような原材料としてのリチウムをそれが大量に産出される生産国から入手するにあたって、現状においては産出地域を有する産出国との外交上の親密度合いや経済関係、国家間のパワーバランスなどの複雑な要因に起因した複雑な種々の制約条件が存在していることが挙げられる。これは、他の化学的二次電池の原料となるレアメタルとしてのニッケルやコバルトなどと同様で安価で簡単かつ大量に入手することが難しいからである。
【0131】
一方、周囲は海に囲まれた海洋国家であるわが国にとって、海水からリチウムを効率的に抽出できれば、上述のような制約を受けずにリチウムを海水から無尽蔵に可能となる。しかし、残念ながらこのような海水に極めて僅かに含まれるリチウムを効率的に回収する技術が近い将来実現できるめどは立っていない。
【0132】
他方、リチウムの入手に伴う困難性の話とは異なっているが、近年の地球環境の急激な変化(悪化)に対して全世界レベルでこの問題解決を図ることが喫緊の課題となっている。具体的には、以下の通りとなる。
【0133】
近年においては、地球温暖化による気候変動などが地球規模での深刻な問題となっており、このような問題を解決するために世界的規模で電気自動車の普及が進められている。また、電気自動車の普及に伴って、各電気自動車の一回の充電ごとの航続距離をより長くしたりより多くの車両に搭載して多くの物流を担う大型の車両の電気自動車を普及させたり、バスなどの公共交通機関に電気自動車を普及させたりすることがいかに早くかつ広範囲に普及させることが喫緊の課題となっている。
【0134】
また、従来における電力供給の基本的考え方としては、原子力発電所や火力発電所、水力発電所、その他風力発電や潮力発電などの大規模な発電プラントを都市部からある程度離れた場所に設置して、同じく大掛かりな送電システムで都市部にこれらの発電所から電力を供給しているのが従来からの考え方であった。
【0135】
一方、このような大規模なインフラ設備を全て問題なく稼働させた場合にのみ電力を安定的に供給できる既存のシステムに対して、今日では様々な問題点が生じつつある。例えば、我が国は、ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートなどの様々なプレート上に国土全体が及びその周囲海域が位置しており、いつ何時大地震や火山の大規模噴火、大地震及び大地震に伴う津波の到来や火災の発生が生じるか予測できない状態にある。そして、一旦このような災害が起こると、上述した発電インフラ設備が機能不全に陥って、都市部への電力供給能力が一気に低下したり、供給不能になったりする恐れが否定できない状況にある。
【0136】
これは、このような自然現象だけでなく、地球温暖化に伴う巨大台風の到来や規模の大きい低気圧による線状降水帯などの発生に基づく河川の氾濫等によって電力供給の特に送電システムのインフラ設備が破損することによっても引き起こされる。
【0137】
同じく、予測不可能な国家間の突発的紛争の勃発、パワーインフラ設備に対するテロ行為等によって生じる人為的災害についても同様である。
【0138】
なお、上述したような大きな災害や異常気象に伴って発生する災害時に被災者が避難する場所を各地に設置すると共に被災者の内、急病人やけが人を守るための救済システムもこのような被災設備に設けておくことが必須である。
【0139】
以上の説明から明らかな通り、本発明の要旨の一部として説明した充電対象としての大容量電気二重層コンデンサを二次電池として今後広く普及させていくことが重要であると共に、本発明に係る電気二重層コンデンサを用いた蓄電装置の充電装置及び充電方法を合わせて利用することで、物理的二次電池としての大容量電気二重層コンデンサの化学的二次電池とは異なる様々な優位点を十二分に発揮することが可能である。
【0140】
なお、上述の各実施形態で示した回路ブロック図、フローチャート、及びその他の説明図面はあくまで一例を示したものに過ぎず、本発明の作用効果を発揮し得る範囲内でその構造や材質、回路構成などを適宜設計変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0141】
10 蓄電モジュール(充電装置)
20 充電用電流電源(充電用電源部)
30 電圧/電流検出部
40 充電制御部
101,102,103,…100+N 蓄電デバイス
101ta,102ta,103ta,…100+Nta 蓄電素子群個別充電用入出力端子
101tb,102tb,103tb,…100+Ntb 蓄電素子群個別充電用入力端子
H1~Hn スイッチ
L1~Ln スイッチ