(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069128
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法、樹脂成形品及びインサート成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240514BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20240514BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20240514BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/37
B29C45/40
B29C33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068312
(22)【出願日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022179311
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】川島 永嗣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕樹
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA13
4F202AA21
4F202AA24
4F202AA26
4F202AA28
4F202AA40
4F202AD03
4F202AD05
4F202AD08
4F202AD19
4F202AD20
4F202AD27
4F202AE03
4F202AG03
4F202AH34
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK23
4F202CK42
4F202CK52
4F202CQ01
4F202CQ05
4F202CQ07
4F206AA13
4F206AA21
4F206AA24
4F206AA26
4F206AA28
4F206AA40
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD19
4F206AD20
4F206AD27
4F206AE03
4F206AG03
4F206AH34
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JM02
4F206JM06
4F206JN31
4F206JN41
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】露出する部分に続く埋設される部分を樹脂成形体自身の樹脂によって十分に支持するとともに埋設される部分を十分に封止することが容易なインサート成形方法を提供する。
【解決手段】第1型110と第2型120の型締め動作に同期して摺動ピン130を摺動させて摺動ピン130でインサート部材の埋設部40を成形空間にむき出しにしたまま露出部50を包み込むように摺動ピン130を変形させる。摺動ピン130で埋設部40と露出部50の境界に成形空間の壁面の第3表面を形成する。埋設部40を溶融樹脂の中に位置させて第3表面に溶融樹脂が接触するまで溶融樹脂を流し込んで固化する。摺動ピン130を摺動させて摺動ピン130による包み込みから露出部50を開放するように摺動ピン130を変形させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体及びインサート部材がインサート成形により一体化されてなり且つ、前記インサート部材が、前記樹脂成形体にインサートされている本体部と、前記本体部から突出して前記樹脂成形体の中に埋設される埋設部と、前記埋設部から延びていて前記樹脂成形体の外に露出される露出部とを有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記インサート部材を第1型と第2型の間にセットする第1ステップと、
前記第1型と前記第2型を型締めして前記インサート部材を収容した成形空間を形成する第2ステップと、
前記成形空間に溶融樹脂を流し込んで前記溶融樹脂を固化することにより、前記インサート部材がインサートされた前記樹脂成形体を成形する第3ステップと、
前記第1型と前記第2型の型開きを行って前記樹脂成形体を取り出す第4ステップと
を備え、
前記成形空間の壁面は、前記第1型の第1表面と前記第2型の第2表面を含み、
前記第2ステップでは、前記第1型と前記第2型の型締め動作に同期して摺動ピンを摺動させて前記摺動ピンで前記インサート部材の前記埋設部を前記成形空間にむき出しにしたまま前記露出部を包み込むように前記摺動ピンを変化させ、前記摺動ピンで前記埋設部と前記露出部の境界に前記成形空間の前記壁面の第3表面を形成し、
前記第3ステップでは、前記埋設部を前記溶融樹脂の中に位置させて前記第3表面に前記溶融樹脂が接触するまで前記溶融樹脂を流し込んで固化し、
前記第4ステップでは、前記摺動ピンを摺動させて前記摺動ピンによる包み込みから前記露出部を開放するように前記摺動ピンを変化させる、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第2ステップでは、前記型締め動作に同期して、開放状態の前記摺動ピンの収容部の中に前記露出部を収容して前記収容部を閉鎖状態に変形することにより前記露出部を包み込むとともに前記第3表面を形成し、
前記第3ステップでは、前記収容部の内部に前記溶融樹脂を流れ込ませず、
前記第4ステップでは、前記閉鎖状態の前記収容部を前記開放状態に変形させて前記露出部を前記収容部から取り出す、
請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記摺動ピンの前記収容部は、分割されている複数の分割ピースを含み、
前記複数の分割ピースは、前記第2ステップで前記露出部を前記収容部の内部に収容するときに摺動して合体することにより前記閉鎖状態に変形し、前記第4ステップで前記露出部を前記収容部から取り出すときに分離することにより前記開放状態に変形する、
請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記複数の分割ピースは、分離するときに前記樹脂成形体から離れる向きに摺動する、
請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記露出部は、前記溶融樹脂を堰き止める環状に突出したダム部を外周面に有し、
前記収容部は、摺動方向と交差する方向に前記露出部が移動でき且つ前記ダム部と環状に当接できる環状の溝部を有する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体と、
インサート成形により前記樹脂成形体にインサートされているインサート部材と
を備え、
前記インサート部材は、
前記樹脂成形体にインサートされている本体部と、
前記本体部から突出して前記樹脂成形体に埋設されている埋設部と、
前記埋設部から延びていて前記樹脂成形体の外に露出される露出部と
を有し、
前記露出部が、前記樹脂成形体から露出している外周面と、前記外周面から突出している凸部とを含む、樹脂成形品。
【請求項7】
前記露出部は、環状に突出し且つ前記樹脂成形体に接触しているダム部を前記外周面に有する、
請求項6に記載の樹脂成形品。
【請求項8】
前記本体部は、電気回路を有するフィルム基板を含み、
前記露出部は、前記電気回路に電気的に接続されているコネクタまたは接続端子に含まれる、
請求項6または請求項7に記載の樹脂成形品。
【請求項9】
樹脂成形体及びインサート部材がインサート成形により一体化されてなり且つ、前記インサート部材が、前記樹脂成形体にインサートされている本体部と、前記本体部から突出して前記樹脂成形体の中に埋設される埋設部と、前記埋設部から延びていて前記樹脂成形体の外に露出される露出部とを有する樹脂成形品を製造するためのインサート成形用金型であって、
前記樹脂成形体を成形するための成形空間の壁面を形成するための第1表面を有する第1型及び第2表面を有する第2型と、
前記成形空間の前記壁面を形成するための第3表面を有する摺動ピンと
を備え、
前記摺動ピンは、前記露出部を収容する収容部を有し、
前記収容部は、型締めのときに開放状態から閉鎖状態に変化して前記露出部を収容し、前記露出部を取り出せるように型開きのときに前記閉鎖状態から前記開放状態に変化する、インサート成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法、当該製造方法により製造される樹脂成形品及び当該製造方法に用いられるインサート成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型内にインサート部材をセットし、インサート部材の周囲に溶融樹脂を充填することで、インサート部材と樹脂成形体が一体化した樹脂成形品を製造することが、従来から行われている。例えば、特許文献1(特許第5546696号公報)には、インサート成形により、射出成形品にインサートされたベースフィルムの電極パターンに対して電気的に接続された接点ピンを成形樹脂から露出させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている接点ピンのような棒状のインサート部材を樹脂成形体から露出させることは行われているものの、例えばコネクタのような複雑な形状を有する部材をインサート成形により樹脂成形体の外部に露出させるのは困難である。
そこで、従来は、インサート成形後、電気的な接続を行うインサート部材まで貫通した貫通孔を樹脂成形体に設け、その貫通孔を使ってコネクタの電気的接続を行ってから、封止材で貫通孔を埋めるような製造方法がしばしば用いられる。
【0005】
しかしながら、貫通孔を使って例えばコネクタの電気的接続を行ってから封止材などで貫通孔を埋めるのでは、手間がかかるだけでなく、封止材による封止が十分でないと水分などが例えば接続部分に侵入して故障などの不具合が発生する場合もある。
本発明の課題は、樹脂成形体の外部にインサート部材の一部を露出させるインサート成形方法において、露出する部分に続く埋設される部分を樹脂成形体自身の樹脂によって十分に支持するとともに埋設される部分を十分に封止することが容易なインサート成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形体及びインサート部材がインサート成形により一体化されてなり且つ、インサート部材が、樹脂成形体にインサートされている本体部と、本体部から突出して樹脂成形体の中に埋設される埋設部と、埋設部から延びていて樹脂成形体の外に露出される露出部とを有する樹脂成形品の製造方法である。樹脂成形品の製造方法は、インサート部材を第1型と第2型の間にセットする第1ステップと、第1型と第2型を型締めしてインサート部材を収容した成形空間を形成する第2ステップと、成形空間に溶融樹脂を流し込んで溶融樹脂を固化することにより、インサート部材がインサートされた樹脂成形体を成形する第3ステップと、第1型と第2型の型開きを行って樹脂成形体を取り出す第4ステップとを備えている。成形空間の壁面は、第1型の第1表面と第2型の第2表面を含む。第2ステップでは、第1型と第2型の型締め動作に同期して摺動ピンを摺動させて摺動ピンでインサート部材の埋設部を成形空間にむき出しにしたまま露出部を包み込むように摺動ピンを変化させ、摺動ピンで埋設部と露出部の境界に成形空間の壁面の第3表面を形成する。第3ステップでは、埋設部を溶融樹脂の中に位置させて第3表面に溶融樹脂が接触するまで溶融樹脂を流し込んで固化する。第4ステップでは、摺動ピンを摺動させて摺動ピンによる包み込みから露出部を開放するように摺動ピンを変化させる。
このように構成された樹脂成形品の製造方法では、露出部を包み込むように摺動ピンが変化するので、露出部の形状が複雑でも、樹脂成形体の外に露出部を露出させるとともに、樹脂成形体の内部に埋設部を埋設したインサート部材を有する樹脂成形品を容易に製造することができる。このようにして製造された樹脂成形品は、埋設部が樹脂成形体によってしっかりと支持され、また、埋設部と本体部の境界周辺が樹脂成形体によって封止される。
【0007】
上述の樹脂成形品の製造方法は、第2ステップでは、型締め動作に同期して、開放状態の摺動ピンの収容部の中に露出部を収容して収容部を閉鎖状態に変形することにより露出部を包み込むとともに第3表面を形成し、第3ステップでは、収容部の内部に溶融樹脂を流れ込ませず、第4ステップでは、閉鎖状態の収容部を開放状態に変形させて露出部を収容部から取り出す、ように構成できる。このように構成された樹脂成形品の製造方法では、型締め動作に同期して収容部を開放状態から閉鎖状態に変形させることで、型締め動作を活用して摺動ピンを変化させることができ、製造工程及び製造装置を簡素化することができる。
【0008】
上述の樹脂成形品の製造方法は、摺動ピンの収容部は、分割されている複数の分割ピースを含み、複数の分割ピースは、第2ステップで露出部を収容部の内部に収容するときに摺動して合体することにより閉鎖状態に変形し、第4ステップで露出部を収容部から取り出すときに分離することにより開放状態に変形する、ように構成できる。このように構成された樹脂成形品の製造方法では、収容部が複数の分割ピースからなるので、露出部の形状に合わせて収容部を形成し易くなる。
【0009】
上述の樹脂成形品の製造方法は、複数の分割ピースが、分離するときに樹脂成形体から離れる向きに摺動する、ように構成することができる。このように構成された樹脂成形品の製造方法では、摺動ピンが摺動時に樹脂成形品に与える影響を小さくすることができる。
上述の樹脂成形品の製造方法は、露出部が、溶融樹脂を堰き止める環状に突出したダム部を外周面に有し、収容部が、摺動方向と交差する方向に露出部が移動でき且つダム部と環状に当接できる環状の溝部を有する。このように構成された樹脂成形品の製造方法では、インサート部材の寸法誤差についての許容を大きくすることができる。
【0010】
本発明の一見地に係る樹脂成形品は、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体と、インサート成形により樹脂成形体にインサートされているインサート部材とを備える。インサート部材は、樹脂成形体にインサートされている本体部と、本体部から突出して樹脂成形体に埋設されている埋設部と、埋設部から延びていて樹脂成形体の外に露出される露出部とを有する。露出部は、樹脂成形体から露出している外周面と、外周面から突出している凸部とを含む。
上述の樹脂成形品は、インサート部材の露出部に外周面から突出している凸部によって、露出部を複雑な形状にでき、例えば複雑な形状のコネクタとすることができる。
上述の樹脂成形品は、環状に突出し且つ樹脂成形体に接触しているダム部を外周面に有するように構成できる。
上述の樹脂成形品は、本体部が、電気回路を有するフィルム基板を含む。露出部は、電気回路に電気的に接続されているコネクタまたは接続端子に含まれる。このように構成された樹脂成形品では、コネクタまたは接続端子を樹脂成形体によってしっかりと支え、また、樹脂成形体によって電気回路とコネクタまたは接続端子との電気的な接続を保護することができる。
【0011】
本発明の一見地に係るインサート成形用金型は、樹脂成形体及びインサート部材がインサート成形により一体化されてなり且つ、インサート部材が、樹脂成形体にインサートされている本体部と、本体部から突出して樹脂成形体の中に埋設される埋設部と、埋設部から延びていて樹脂成形体の外に露出される露出部とを有する樹脂成形品を製造するためのインサート成形用金型である。樹脂成形体を成形するための成形空間の壁面を形成するための第1表面を有する第1型及び第2表面を有する第2型と、成形空間の壁面を形成するための第3表面を有する摺動ピンとを備える。摺動ピンは、露出部を収容する収容部を有する。収容部は、型締めのときに開放状態から閉鎖状態に変化して露出部を収容し、露出部を取り出せるように型開きのときに閉鎖状態から開放状態に変化する。
このように構成されたインサート成形用金型は、樹脂成形体の外に露出される露出部の形状が複雑であっても適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法、樹脂成形品及びインサート成形用金型は、樹脂成形体の外部に露出する露出部を有するインサート部材を備える樹脂成形品において、露出部に続く埋設部を樹脂成形体自身の樹脂によって十分に支持するとともに埋設部を十分に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1のI-I線に沿って切断した樹脂成形品の断面図である。
【
図3】実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造時の型締めの途中の状態を示す断面図である。
【
図5】
図4に示された分割ピースの周辺の部分拡大斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造時の型締め状態を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る摺動ピンの斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係る摺動ピンの分解斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係る摺動ピンの分解断面図である。
【
図10】
図4に示された分割ピースの周辺の拡大断面図である。
【
図11】第1実施形態に係るコントローラを説明するためのブロック図である。
【
図12】第2実施形態に係る樹脂成形品の製造時の取出し状態を示す部分破断斜視図である。
【
図13】第2実施形態に係る樹脂成形品の製造時の型締めの途中の状態を示す断面図である。
【
図14】第2実施形態に係る樹脂成形品の製造時の型締め状態を示す断面図である。
【
図15】第2実施形態に係る樹脂成形品の製造時の取出し状態を示す断面図である。
【
図16】第3実施形態に係るコネクタを包み込んでいる摺動ピンの正面図である。
【
図17】
図16のコネクタと摺動ピンの部分拡大斜視図である。
【
図18】第3実施形態に係る摺動ピンの分解斜視図である。
【
図19】第3実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図20】
図16のコネクタと摺動ピンの部分拡大断面図である。
【
図21】第4実施形態に係る樹脂成形品と摺動ピンの正面図である。
【
図22】第4実施形態に係る摺動ピンの分解断面図である。
【
図23】第4実施形態に係る分割ピースの拡大断面図である。
【
図24】
図21の樹脂成形品と摺動ピンの部分拡大断面図である。
【
図25】第5実施形態に係る樹脂成形品の製造時の型締めの途中の状態を示す断面図である。
【
図26】
図25に示された分割ピースの周辺の部分拡大斜視図である。
【
図27】第5実施形態に係る摺動ピンの斜視図である。
【
図28】第5実施形態に係る摺動ピンの正面図である。
【
図29】第5実施形態に係る摺動ピンの平面図である。
【
図30】第5実施形態に係る摺動ピンの部分拡大断面図である。
【
図31】第1または第2実施形態の分割ピース周辺の部分拡大断面図である。
【
図32】変形例Cの分割ピース周辺の部分拡大断面図である。
【
図36】第6実施形態に係る分割ピースを開いた状態の摺動ピンとインサート部材の正面図である。
【
図37】
図36の分割ピースの一方を省いた状態の摺動ピンとインサート部材の斜視図である。
【
図38】摺動ピンにインサート部材が収納されている状態で、
図37とは異なる側の分割ピースを省いた摺動ピンとインサート部材を示す斜視図である。
【
図39A】第6実施形態に係る樹脂成形品の斜視図である。
【
図39B】第3実施形態に係る樹脂成形品の斜視図である。
【
図40】変形例Gに係る分割ピースの一方を省いた状態の摺動ピンとインサート部材の斜視図である。
【
図41】第7実施形態に係る分割ピースを開いた状態の摺動ピンとインサート部材の正面図である。
【
図42】
図41の分割ピースの一方を省いた状態の摺動ピンとインサート部材の斜視図である。
【
図43】摺動ピンにインサート部材が収納されている状態で、
図42とは異なる側の分割ピースを省いた摺動ピンとインサート部材を示す斜視図である。
【
図44】第7実施形態に係る樹脂成形品の断面図である。
【
図45】変形例Iに係る分割ピースの一方を省いた状態の摺動ピンとインサート部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
(1)樹脂成形品の構成
図1及び
図2には、本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の製造方法によって製造される樹脂成形品1の一例が示されている。
図2には、
図1のI-I線に沿って切断した断面が示されている。樹脂成形品1は、樹脂成形体10とインサート部材20とを備える。樹脂成形品1は、樹脂成形体10とインサート部材20とがインサート成形によって一体化されたものである。
インサート部材20は、本体部30と埋設部40と露出部50とを有する。本体部30は、樹脂成形体10にインサートされている。
図1及び
図2に示されている本体部30は、上面視において長方形の形状を呈する厚みの薄い部材である。本体部30は、インサート部材20の一部である。本体部30は、例えば、電気回路(図示せず)を有するフィルム基板である。しかし、本体部30は、フィルム基板に限られるものではなく、他の部材であってもよい。また、本体部30の形状は、フィルム状に限られるものではなく、例えば立方体状または球体状などの他の形状であってもよい。また、本体部30は、樹脂成形体10に一部が埋め込まれ、樹脂成形体10の第1主面11から一部が露出している。しかし、本体部30が配置される場所は、第1主面11に限られるものではない。本体部30は、樹脂成形体10の中に埋め込まれるように配置することもできる。本体部30は、一部が樹脂成形体10の中に埋め込まれ、一部が第1主面11から露出し、一部が第2主面12から露出するように配置することもできる。本体部30は、一部が樹脂成形体10の中に埋め込まれ、一部が樹脂成形体10の側面13から露出するように配置することもできる。
【0015】
埋設部40は、本体部30から突出して樹脂成形体10の中に埋設されている部分である。埋設部40は、インサート部材20の一部である。露出部50は、埋設部40から延びていて樹脂成形体10の外に露出されている部分である。
露出部50も、インサート部材20の一部である。露出部50は、樹脂成形体10から露出している外周面51と、外周面51から突出している2つの凸部52とを含んでいる。外周面51は、断面長円の筒状の露出部50の表面である。2つの凸部52は、筒状の露出部50の中心軸から外周面51までの距離よりも、中心軸から遠い位置に配置されている。そのため、露出部50の外周面51と同じ大きさを持つ穴を第2型120(
図4参照)に形成しても、凸部52が引っかかって、穴の中に収容することはできない。
ここでは、埋設部40と露出部50が1個の部品を構成している。埋設部40と露出部50からなる部品は、例えばコネクタである。埋設部40と露出部50を含むコネクタは、例えば、フィルム基板である本体部30の電気回路に電気的に接続されている。しかし、埋設部40と露出部50を含む部品は、コネクタに限られるものではなく、他の部材であってもよい。ここで、埋設部40と露出部50を含む部品は、筒状であるが、埋設部40と露出部50を含む部品の形状は、筒状に限られるものではない。埋設部40と露出部50を含む部品の形状は、例えば、柱状、錘状または板状などの他の形状であってもよい。
また、ここでは、本体部30と埋設部40及び露出部50を含む部品とが別体の部材である場合について説明しているが、一体の部材であってもよい。ここでは、本体部30と埋設部40と露出部50がそれぞれ一つずつである場合について説明している。しかし、本体部30は複数であってもよい。埋設部40は複数であってもよい。露出部50は複数であってもよい。
【0016】
(2)樹脂成形品の製造方法の概要
図3には、樹脂成形品1の製造方法のフローが示されている。
図4から
図7には、樹脂成形品1の製造方法の工程における金型100とインサート部材20が示されている。インサート部材20と樹脂成形体10とを備える樹脂成形品1の断面は、既に説明した
図2に示されている。インサート部材20が備える、
図4に示された本体部30は、第1型110の第1表面118にセットされている。本体部30の一方主面には、例えば、電気回路を構成するための銅配線(図示せず)と、銅配線に電気的に接続された電極端子(図示せず)が形成されている。金型100は、樹脂成形体10を成形するための成形空間の壁面を形成するための第1表面118を有する第1型110及び第2表面128を有する第2型120を備えている(
図5参照)。また、金型100は、摺動ピン130及びエジェクターピン140を備えている(
図4参照)。さらに、金型100は、エジェクタープレート150及びシリンダー160を備えている。
【0017】
第1ステップS1では、インサート部材20を、第1型110と第2型120の間にセットする。インサート部材20は、成形空間SP(
図6参照)の形成される方に、本体部30の一方主面が向くように、配置される。インサート部材20の埋設部40と露出部50(筒状の部分)は、本体部30から摺動ピン130の摺動する方向に突出している。
【0018】
第2ステップS2では、第1型110と第2型120を型締めして、インサート部材20を収容するための成形空間SP(
図6参照)を形成する。
図4及び
図5には、第1型110と第2型120が型締めしている途中の状態が示されている。そして、
図6には、第1型110と第2型120の型締めが完了した状態が示されている。
図4では、第1型110と第2型120の断面が示されているが、摺動ピン130とエジェクターピン140の側面が示されている。
図5では、埋設部40と露出部50などを見易くするために、本体部30の記載を省いている。例えば、埋設部40には、本体部30の電極端子に接続するための電極端子41が配置されている。
第2ステップS2では、第1型110と第2型120の型締め動作に同期して、摺動ピン130を摺動させる。金型100は、摺動ピン130でインサート部材20の埋設部40を成形空間SPにむき出しにしたまま露出部50を包み込むように摺動ピン130を変形させる。型締めが終了した段階(
図6参照)では、摺動ピン130で埋設部40と露出部50の境界に、成形空間SPの壁面の一部である第3表面138を形成する。ここでは、型締めが終了したときに、摺動ピン130の分割ピース131,132の上面が、第2型120の第2表面128と面一になって、成形空間SPの第3表面138となる。
図6に示されている成形空間SPは、第1表面118、第2表面128及び第3表面138を壁面とする閉じた空間である。
摺動ピン130の収容部133は、分割されている複数の分割ピース131,132を含んでいる。言い換えると、
図4及び
図5に示されている構成では、2つの分割ピース131,132が収容部133である。先の説明を収容部133について見ると、第2ステップS2では、型締め動作に同期して、開放状態の摺動ピン130の収容部133の内部に露出部50を収容して、収容部133を閉鎖状態に変形する。その結果、収容部133が、露出部50を包み込むとともに第3表面138を形成する。
2つの分割ピース131,132は、第2ステップS2で、露出部50を収容部133の内部に収容するときに移動して合体することにより閉鎖状態に変形する。
【0019】
第3ステップS3では、成形空間SPに溶融樹脂を流し込んで溶融樹脂を固化することにより、インサート部材20がインサートされた樹脂成形体10(
図1参照)を成形する。第3ステップS3では、成形空間SPへの溶融樹脂の射出と、溶融樹脂を固化するための冷却が行われる。第3ステップS3では、埋設部40を溶融樹脂の中に位置させて第3表面138に溶融樹脂が接触するまで溶融樹脂を流し込んで固化する。
【0020】
第4ステップS4では、第1型110と第2型120の型開きを行って、インサート部材20がインサートされた樹脂成形体10を取り出す。取り出された樹脂成形体10は、例えば、
図1に示されているような露出部50が樹脂成形体10から露出したものである。他方、埋設部40は、樹脂成形体10の中に埋設されている。
第4ステップS4では、2つの分割ピース131,132は、露出部50を収容部133から取り出すときに分離することにより開放状態に変形する。
通常のインサート成形では、第1ステップS1から第4ステップS4までの一連のステップが繰り返し行われて、複数の樹脂成形品1が製造される。
【0021】
(3)樹脂成形品の製造に用いられる材料
(3-1)インサート部材
インサート部材20として、本体部30は、例えばフィルム状または板状のプリント基板である。例えば、フィルム状のプリント基板が本体部30であるとすると、プリント基板の主材であるフィルム基材は絶縁性である。絶縁性のフィルム基材には、例えば、樹脂フィルム、エラストマーフィルムを用いることができる。樹脂フィルムの材料には、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂がある。樹脂フィルムの材料には、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンがある。
本体部30に用いる基材には、フィルム基材以外に、例えば、三次元形状を有する立体的な基材を用いることもできる。本体部30には、例えば、MID(Molded Interconnect Device)を用いることができ、三次元形状を有する部材の表面にLDS(Laser Direct Structuring)により配線を形成したものであってもよい。
【0022】
(3-2)樹脂成形体の材料
溶融樹脂の材料となる熱可塑性樹脂には、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、スチレン樹脂、ABS樹脂がある。
【0023】
(4)金型の説明
(4-1)第1型と第2型
第1実施形態では、第1型110がキャビティであり、第2型120がコアである。第1型110と第2型120は金属製であり、金属材料として例えば鉄、鋼またはステンレスがある。第1型110の第1表面118と第2型の第2表面128に、摺動ピン130の第3表面138を加えて、溶融樹脂が流し込まれる成形空間SPが形成される。
【0024】
(4-2)摺動ピン
摺動ピン130は、分割ピース131,132と摺動部135を含む。摺動ピン130は例えば金属製であり、金属材料として例えば鉄、鋼またはステンレスがある。
図7、
図8、
図9及び
図10に摺動ピン130が示されている。2つの分割ピース131,132が、収容部133を構成している。摺動部135は、エジェクタープレート150に固定されている。摺動部135は、エジェクタープレート150の移動にともなって摺動する。ここでは、摺動部135が、第1型110の移動方向と同じ向きに摺動する。
摺動部135は、分割ピース131,132を摺動可能に支持するためのT溝171を有する。このT溝171に嵌る断面T字形のスライダー172を、各分割ピース131,132が有している。分割ピース131,132は、スライダー172がT溝171を滑ることで、摺動部135の摺動方向に対して直交する方向に移動する。各分割ピース131,132は、摺動部135の摺動方向に対して傾斜する方向に延びるガイドリブ173を有する。第2型120には、ガイドリブ173が嵌るガイド溝174(
図4参照)が形成されている。ガイド溝174も、ガイドリブ173と同様に、摺動部135の摺動方向に対して傾斜する方向に延びている。ガイドリブ173がガイド溝174の中を滑るため、摺動部135が摺動することにより収容部133が変形する。具体的には、摺動部135が第1型110に近づくように摺動すると、分割ピース131,132が互いに離れる方向にスライドする。逆に、摺動部135が第1型110から遠ざかるように摺動すると、分割ピース131,132が互いに近づく方向にスライドする。
合体した分割ピース131,132では、露出部50を内部に収納するための内部空間IS(
図7参照)が形成される。そのために、分割ピース131には、露出部50の外周面51に合わせた凹部181が形成されており、分割ピース132には、露出部50の外形に合わせた凹部182が形成されている。
図10に示されているように、凹部181,182には、露出部50の凸部52が入る窪み184が設けられている。
図10には、
図5の状態の摺動方向に直交する平面における摺動ピン130と露出部50の断面が示されている。合体した分割ピース131,132の長円185の形状は、埋設部40と露出部50の境界の形状に一致する。そのため、埋設部40及び露出部50と合体した分割ピース131,132との間には実質的に隙間が生じないので、合体した分割ピース131,132の内部空間ISの中には、溶融樹脂が侵入しない。
【0025】
(4-3)シリンダー
シリンダー160は、摺動ピン130とエジェクターピン140が固定されているエジェクタープレート150を駆動するアクチュエータである。
図11に示されているように、コントローラC1が、第1型110及び第2型120を駆動する駆動装置D1と、シリンダー160とを制御する。エジェクタープレート150は、
図6に示されているエジェクターストロークStをシリンダー16により変化させる。コントローラC1は、例えば、コンピュータ(図示せず)で構成できる。コンピュータには、例えばMPUまたはCPUと、メモリーとを用いることができる。
第1型110と第2型120が開いた状態から、コントローラC1から駆動装置D1への指示により、第1型110と第2型120の型締め動作が開始される。なお、型締め動作において第2型120は移動しない。第1型110と第2型120が開いた状態では、分割ピース131,132も開いている。分割ピース131,132が開いたままで、第1型110が第2型120に向けて移動を開始する。このとき、エジェクタープレート150が移動を開始しないようにコントローラC1がシリンダー160を制御する。次に、露出部50が収容部133に入ったタイミングで、コントローラC1は、エジェクタープレート150の移動を開始させるようにシリンダー160を制御し、そのまま第1型110の移動を続けさせるように駆動装置D1を制御する。分割ピース131,132の上面(第3表面138)が埋設部40と露出部50の境界に達するタイミングで、コントローラC1は、第1型110及びエジェクタープレート150の移動を停止させるように、駆動装置D1及びシリンダー160を制御する。それにより、第2型120とエジェクタープレート150の間のエジェクターストロークStが大きくなる。エジェクターストロークStが大きくなっていくと、ガイド溝174に沿ってガイドリブ173が移動することにより、分割ピース131,132の間隔が狭まっていく。それにより、分割ピース131,132が合体し、第1表面118と第2表面128と第3表面138で囲まれた成形空間SPが形成され、型締めが終了する。上述のように、型締め動作では、コントローラC1の制御により、シリンダー160と駆動装置D1の動作が同期している。
【0026】
溶融樹脂が成形空間SPに充填されて溶融樹脂が固化された後に型開きが開始される。第1型110と第2型120が閉じた状態から、コントローラC1からの指示により、第1型110と第2型120の型開き動作が開始される。第1型110と第2型120が閉じた状態では、分割ピース131,132も閉じている。第1型110と第2型120が開き終わるまでシリンダー160は、型締め動作が完了したときの状態を維持する。第1型110と第2型120が開き終わると、シリンダー160は、第2型120とエジェクタープレート150の間のエジェクターストロークStを小さくする。エジェクターストロークStが小さくなるとき、ガイド溝174に沿ってガイドリブ173が移動することにより、分割ピース131,132の間隔が広がっていく。エジェクターストロークStが小さくなることにより、エジェクターピン140も樹脂成形品1を突き出す。分割ピース131,132が開いてエジェクターピン140が突き出されることにより、第1型110と第2型120の型開きが完了する。
【0027】
<第2実施形態>
(5)全体構成
上記第1実施形態では、摺動ピン130がエジェクタープレート150に固定されている場合について説明した。しかし、摺動ピン130を摺動させるための専用プレート155を、エジェクタープレート150以外に設けてもよい。
第2実施形態において、専用プレート155と、エジェクタープレート駆動部164と、エジェクター戻しスプリング165と、専用プレート戻しスプリング166以外の主な構成は、第1実施形態と同様であるので、第1型110、第2型120及び摺動ピン130の構成についての説明は省略する。
第2実施形態において、シリンダー160は、摺動ピン130が固定されている専用プレート155(
図12参照)を駆動するアクチュエータである。
図12には、第1型110及び第2型120を部分的に破断して斜め上方から見た専用プレート155などが示されている。エジェクタープレート150は、エジェクタープレート駆動部164によって駆動される。第2実施形態においては、コントローラC1が、第1型110及び第2型120を駆動する駆動装置D1と、エジェクタープレート駆動部164と、シリンダー160とを制御する。エジェクタープレート150は、
図14に示されているエジェクターストロークStをエジェクタープレート駆動部164とエジェクター戻しスプリング165とにより変化させる。専用プレート155は、
図13に示されている摺動ストロークDiをシリンダー16と専用プレート戻しスプリング166により変化させる。
図12から
図15では、第1型110と第2型120の断面が示されているが、摺動ピン130とエジェクターピン140の側面が示されている。
【0028】
第1型110と第2型120が開いた状態から、コントローラC1から駆動装置D1への指示により、第1型110と第2型120の型締め動作が開始される。なお、型締め動作において第2型120は移動しない。第1型110と第2型120が開いた状態では、分割ピース131,132も開いている。まず、第1型110が第2型120に向けて移動を開始する。このとき、エジェクタープレート150が移動を開始しないようにコントローラC1がシリンダー160を制御する。分割ピース131,132が開いたままで、第1型110が第2型120に向けて移動する。このときエジェクタープレート150がエジェクター戻しスプリング165により第2型120から離れる方向に移動する。しかし、専用プレート155は、シリンダー160により支持されて移動せず、第2型120に対して静止している。つまり、コントローラC1が駆動装置D1とシリンダー160を制御することにより、第1型110及びエジェクタープレート150が移動し且つ専用プレート155が静止する動作が行われる。
次に、露出部50が収容部133に入ったタイミングで、コントローラC1は、専用プレート155の移動を開始させるようにシリンダー160を制御し、そのまま第1型110の移動を続けさせるように駆動装置D1を制御する。分割ピース131,132の上面(第3表面138)が埋設部40と露出部50の境界に達するタイミングで、コントローラC1は、第1型110及び専用プレート155の移動を停止させるように、駆動装置D1及びシリンダー160を制御する。それにより、第2型120と専用プレート155の間の摺動ストロークDiが小さくなる。このとき、専用プレート戻しスプリング166が伸ばされる。摺動ストロークDiが小さくなっていくとき、ガイド溝174に沿ってガイドリブ173が移動することにより、分割ピース131,132の間隔が狭まっていく。分割ピース131,132が合体し、第1表面118と第2表面128と第3表面138で囲まれた成形空間SPが形成され、型締めが終了する。上述のように、型締め動作では、コントローラC1の制御により、シリンダー160と駆動装置D1の動作が同期している。
【0029】
溶融樹脂が成形空間SPに充填されて溶融樹脂が固化された後に型開きが開始される。第1型110と第2型120が閉じた状態から、コントローラC1からの指示により、第1型110と第2型120の型開き動作が開始される。第1型110と第2型120が閉じた状態では、分割ピース131,132も閉じている。型開き動作が開始されると、コントローラC1によって制御された駆動装置D1により、第1型110が開くと同時に、エジェクタープレート150が移動する。エジェクタープレート150の移動にともなって、エジェクター戻しスプリング165が縮められる。このエジェクタープレート150に押されて、エジェクターピン140が突出し、専用プレート155が第2型120に向かって移動する。エジェクタープレート150が第2型120に近づくに連れて、エジェクターストロークStが小さくなる。そして、第1型110と第2型120が開き終わるときには、エジェクターストロークStが0になる。
エジェクターストロークStが小さくなるとき、ガイド溝174に沿ってガイドリブ173が移動することにより、分割ピース131,132の間隔が広がっていく。エジェクターストロークStが小さくなることにより、
図15に示されているように、エジェクターピン140も樹脂成形品1を突き出す。分割ピース131,132が開いてエジェクターピン140が突き出されることにより、第1型110と第2型120の型開きが完了する。
【0030】
<第3実施形態>
(6)全体構成
上記第1実施形態では、摺動ピン130が形成する第3表面138と埋設部40と露出部50の境界の間の隙間を実質的になくすことで溶融樹脂の侵入を防ぐ場合について説明した。第3実施形態で説明するように、第3表面138よりも収容部133の内部空間ISで溶融樹脂の侵入を防ぐように構成してもよい。
第3実施形態において、摺動ピン130とインサート部材20以外の主な構成は、第1実施形態と同じように構成できるので、第1型110及び第2型120並びにエジェクタープレート150及びシリンダー160の構成についての説明は省略する。
図16、
図17、
図18、
図19及び
図20には、摺動ピン130とインサート部材20の埋設部40と露出部50を含むコネクタ200が示されている。第3実施形態の摺動ピン130は、4つの分割ピース231,232,233,234と摺動部235を含む。4つの分割ピース231,232,233,234が、収容部133を構成している。第3実施形態の摺動部235は、第1実施形態と同様にエジェクタープレート150または第2実施形態と同様に専用プレート155に固定される。摺動部235は、エジェクタープレート150または専用プレート155の移動にともなって摺動する。
【0031】
摺動部235は、4つの分割ピース231~234を摺動可能に支持するための、平面視で十字に延びるT溝171を有する。このT溝171に嵌る断面T字形のスライダー172を、各分割ピース231~234が有している。各分割ピース231~234は、スライダー172が、平面視十字のT溝171を滑ることで、四方から摺動部235の摺動方向に対して直交する方向に移動して合体する。各分割ピース231~234は、摺動部235の摺動方向に対して傾斜する方向に延びるガイドリブ173を有する。
合体した分割ピース231~234では、露出部50を内部に収納するための内部空間IS(
図20参照)が形成される。そのために、
図18に示されているように、分割ピース231~234には、露出部50の外周面210に合わせた凹部281~284が形成されている。凹部281~284には、露出部50の凸部52が入る窪み285が設けられている。
インサート部材20のコネクタ200は、露出部50の外周面210にダム部220を有する。ダム部220は、溶融樹脂を堰き止めるために環状に突出している。分割ピース231~234(収容部133)は、摺動方向と交差する方向に露出部50が移動でき且つダム部220と環状に当接できる環状の溝部250を有する。
図20に示されているように、溝部250の上壁251が、ダム部220の上面221に当接している。そのため、露出部50と合体した分割ピース231~234との間には実質的に隙間が生じないので、合体した分割ピース231~234(収容部133)の内部空間ISの中には、溶融樹脂が侵入しない。環状のダム部220の幅L1が環状の溝部250の幅L2よりも小さくなっているので、コネクタ200の製造誤差を許容し易くなる。このような製造方法においては、ダム部220の上面221から第3表面138までの領域が露出部50と埋設部40の境界になる。埋設部40には、電極端子222が配置されている。
【0032】
<第4実施形態>
(7)全体構成
上記第1実施形態では、摺動ピン130のT溝171が摺動方向に対して直交する方向に延びるように形成されている場合について説明した。しかし、摺動ピン130のT溝171が摺動方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されていてもよい。
第4実施形態において、摺動ピン130以外の主な構成は、第1実施形態と同様であるので、第1型110及び第2型120の構成についての説明は省略する。
【0033】
図21、
図22、
図23及び
図24には、摺動ピン130と樹脂成形体10が示されている。第4実施形態の摺動ピン130は、2つの分割ピース131,132と摺動部135を含む。2つの分割ピース131,132が、収容部133を構成している。第4実施形態の摺動部135は、第1実施形態と同様にエジェクタープレート150または第2実施形態と同様に専用プレート155に固定される。摺動部135は、エジェクタープレート150または専用プレート155の移動にともなって摺動する。
図21の矢印AR1は摺動方向のうちの型開きときの方向であり、矢印AR2は、分割ピース131,132の移動方向のうち型開きのときの方向である。型開きのとき、分割ピース131,132は、樹脂成形体10から離れるように移動する。言い換えると、分割ピース131,132は、摺動方向に直交する方向に対して傾斜した向きに移動する。
そのため、摺動部135は、分割ピース131,132を摺動可能に支持するための、側面視で、摺動方向に直交する方向に対して傾斜した向きに延びるT溝171を有する。
図22に示されているように、摺動方向に直交する方向に対してT溝171の延びる方向は、角度An1だけ傾いている。また、
図23に示されているように、摺動方向に直交する方向に対してスライダー172の延びる方向は、角度An1だけ傾いている。
分割ピース131,132が傾斜した向き(矢印AR2の向き)に移動することで、
図21に示されているように、樹脂成形体10が折れ曲がっているような場合でも、樹脂成形体10に分割ピース131,132が当たることなく移動することができる。そのような場合以外に、例えば、樹脂成形体10に第3表面138より突出した凸部がある場合、または樹脂成形体10から露出部50以外の突出部が突出している場合に適用することができる。
【0034】
<第5実施形態>
(8)全体構成
上記第1実施形態から第4実施形態では、分割ピース131,132または分割ピース231~234が摺動部135,235から分離可能な部品で構成されている場合について説明した。第1実施形態から第4実施形態では、分割ピース131,132または分割ピース231~234のスライダー172がT溝171を滑ることで収容部133が変形するように、摺動ピン130が形成されている。しかし、分割ピースが摺動部から分離可能でなくてもよく、分割ピースが摺動部に繋がっていてもよい。
図25、
図26、
図27、
図28、
図29及び
図30には、第5実施形態に係る第1型110と第2型120と、2つの分割ピース331,332に摺動部335が繋がっている摺動ピン330が示されている。言い換えると、第5実施形態の摺動ピン330は、その先端が2股に割れていて先端に分割ピース331,332を有している(
図27及び
図28参照)。分割ピース331,332に力が加わらなければ、分割ピース331,332は互いに離れた状態になる。摺動ピン330は、金属でできている。分割ピース331,332が近づく向きに力が加わると、分割ピース331,332が合体して内部空間ISを形成する(
図30参照)。
【0035】
型開きの状態から型締めの途中までは、
図25及び
図26に示されているように、分割ピース331,332が開いている。そのため、凸部52を有する露出部50を分割ピース331,332の間に挿入することができる。さらに型締めが進むと、各分割ピース331,332の傾斜背面341,342(
図28参照)が、第2型120の開口縁125に当たる。開口縁125の大きさが合体した分割ピース331,332の大きさに実質的に等しいため、型締めが進んで摺動ピン330が第2型120の中に引き込まれるに従って、開口縁125に押された分割ピース331,332が互いに近づいていく。そして、型締めが完了するときには、分割ピース331,332が合体して、摺動ピン330の上面が第3表面138になる(
図29参照)。
第1型110と第2型120が開き終わると、エジェクタープレート150を第2型120に近づけて、エジェクターピン140と摺動ピン330を第2型120から突き出す。このとき、摺動ピン330の摺動部335の弾性変形が解除されるように摺動部335の先端が変形し、分割ピース331,332が開く。
摺動ピン330が有する凹部381,382及び窪み384は、第1実施形態の摺動ピン130が有する凹部181,182及び窪み184と同様の構成である。なお、第5実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付してその構成部分についての説明を省略する。また、
図25では、第1型110と第2型120の断面が示されているが、摺動ピン330とエジェクターピン140の側面が示されている。
【0036】
(9)変形例
(9-1)変形例A
上記第1実施形態から第5実施形態では、摺動ピン130,330が第2型120に一つ設けられる例について説明した。しかし、1つの樹脂成形品1に、複数の露出部50を設けることが可能である。そのため、摺動ピン130,330は、第2型120に複数設けられる場合がある。また、摺動ピン130,330を第1型110に設けることもできる。例えば、第1型110に、専用プレート155とシリンダー160を設けることもできる。
【0037】
(9-2)変形例B
上記第1実施形態から第5実施形態では、摺動ピン130,330が、第1型110と第2型120の相対的な移動方向と同じ方向に摺動する場合について説明した。しかし、摺動ピン130,330は、第1型110と第2型120の相対的な移動方向に対して傾斜する方向に摺動させることもできる。
(9-3)変形例C
上記第1実施形態から第5実施形態では、例えば、
図31に示されているように、露出部50の外周面51の一部51aと、凹部181,182の接触面181a,182aとが接触する場合について説明した。この場合、弧状の接触面181aと弧状の接触面182aとを合わせてリング状の外周面51の一部51aの全体に接触することで、露出部50を樹脂成形体10から露出させることができる。
しかし、
図32に示されているように、露出部50の外周面51の一部51aと、凹部181,182の接触面181a,182aとの間に、封止部材400を介在させてもよい。封止部材400として、例えば、耐熱ゴム、耐熱樹脂フィルム、金属フィルムを露出部50に巻き付けることもできる。成形後は、封止部材400を取り外すように構成する。この場合も、摺動ピン130が第3表面138を形成する位置に変化し、摺動ピン130でインサート部材20の埋設部40を成形空間SPにむき出しにしたまま露出部50を包み込んでいる。しかしながら、この場合は、摺動ピン130のみでは、収容部133を閉鎖状態にして収容部133の内部空間に溶融樹脂が流れ込まないように封鎖することはできず、収容部133と封止部材400が協働して、収容部133の内部空間が封鎖される。
【0038】
(9-4)変形例D
上記第1実施形態から第5実施形態では、摺動ピン130,330は、一部が分割ピース131,132、分割ピース231,232,233,234、または分割ピース331,332である場合について説明した。これら摺動ピン130,330では、1本の摺動部135,335が摺動することにより、分割ピース131,132、231~234、331,332が変形する。
しかし、
図33及び
図34に示されている摺動ピン530のように、2本の摺動部535a,535bを有するように構成することもできる。摺動ピン530では、分割部531が摺動部535aと一体に構成され、分割部532が摺動部535bと一体に構成されている。収容部533は、2つの分割部531,532から構成されている。摺動ピン530の摺動部535a,535bは、互いに異なる方向に摺動する。摺動部535aが矢印AR3の方向に摺動することにより、分割部531が矢印AR5の方向に向かって移動する。摺動部535bが矢印AR4の方向に摺動することにより、分割部532が矢印AR6の方向に向かって移動する。言い換えると、摺動部535a,535bが、それぞれ分割部531,532の方に向かって摺動することで、2つの分割部531,532は互いに離れる方向に変化する。
図33及び
図34に示されている状態は、2つの分割部531,532が合体している状態であり、分割部531,532の上面が第3表面138を形成している状態である。分割部531,532が合体することで、凹部181,182が合わさって、露出部50(
図31参照)を収容する空間を形成することができる。
(9-5)変形例E
図35には、変形例Eに係るコネクタ200が示されている。変形例Eに係るコネクタが上記第3実施形態のコネクタ200(
図19参照)と異なる点は、樹脂成形体との密着面である埋設部40の一部に凹凸形状223を有し、引っ掛かりが増している点である。
図35に示されているコネクタ200では、凹凸形状223が電極端子222の形成されている平坦部224に形成されている。しかし、凹凸形状223が形成される箇所は、平坦部224には限られず、埋設部40の何れの場所であってもよい。埋設部40が凹凸形状223を有することにより、樹脂成形体10への埋設部40の引っ掛かりが増加し、コネクタ200の樹脂成形体10への固定強度を向上させることができる。
【0039】
(10)特徴
(10-1)
上記第1実施形態から第5実施形態で説明した樹脂成形品1の製造方法では、露出部50を包み込むように摺動ピン130,330が変形する。そのため、例えば凸部52を有するように露出部50の形状が複雑でも、樹脂成形体10の外に露出部50を露出させるとともに、樹脂成形体10の内部に埋設部40を埋設することができる。このような露出部50と埋設部40とを含むインサート部材20を有する樹脂成形品1を容易に製造することができる。このようにして製造された樹脂成形品1は、埋設部40と露出部50が樹脂成形体10によってしっかりと支持され、また、埋設部40と本体部30の境界周辺が樹脂成形体10によって封止される。
【0040】
(10-2)
上述の樹脂成形品1の製造方法においては、第2ステップS2で、型締め動作に同期して、開放状態の摺動ピン130,330の収容部133,333の中に露出部50を収容して収容部133,333を閉鎖状態に変形することにより露出部50を包み込む。そして、収容部133,333を閉鎖状態に変形することにより第3表面138を形成し、第3ステップS3で、収容部133,333の内部に溶融樹脂を流れ込ませずに第3表面138によって樹脂成形体10の外面の一部を形成する。さらに、第4ステップS4で、閉鎖状態の収容部133,333を開放状態に変形させて、露出部50を収容部133,333から取り出す。このように樹脂成形品1の製造方法を構成すると、型締め動作に同期して収容部を開放状態から閉鎖状態に変形させることで、第1型110と第2型120の型締め動作を活用して摺動ピン130,330を変化させることができ、製造工程及び製造装置を簡素化することができる。
【0041】
(10-3)
上述の樹脂成形品1の製造方法において、摺動ピン130の収容部133は、分割されている複数の分割ピース131,132または分割ピース231~234を含む。そして、複数の分割ピース131,132または分割ピース231~234は、第2ステップS2で露出部50を収容部133の内部に収容するときに摺動して合体することにより閉鎖状態に変形する。複数の分割ピース131,132または分割ピース231~234は、第4ステップS4で露出部50を収容部133から取り出すときに分離することにより開放状態に変形する。このような樹脂成形品1の製造方法では、収容部133が複数の分割ピース131,132または分割ピース231~234からなるので、露出部50の形状に合わせて収容部133を形成し易くなっている。
【0042】
(10-4)
図21から
図24を用いて説明した樹脂成形品1の製造方法においては、複数の分割ピース131,132または分割ピース231~234が、分離するときに樹脂成形体10から離れる向きに摺動する構成とすることができる。このように構成された樹脂成形品1の製造方法では、摺動ピン130が摺動時に樹脂成形品1に与える影響を小さくすることができる。例えば、摺動ピン130が摺動時に樹脂成形体10と擦れ難くなったり、樹脂成形体10の第3表面138よりも摺動部135の側に突出する部分を形成し易くなったりする。
【0043】
(10-5)
図16から
図20を用いて説明した樹脂成形品1の製造方法では、露出部50が、溶融樹脂を堰き止める環状に突出したダム部220を外周面210に有している。そして、収容部133が、摺動方向と交差する方向に露出部50が移動でき且つダム部220と環状に当接できる環状の溝部250を有している。このような構成の樹脂成形品1の製造方法では、例えば、ダム部220の幅L1と環状の溝部250の幅L2の差分動いても樹脂の侵入を防げるので、例えば、インサート部材20の寸法誤差についての許容を大きくすることができる。
ダム部220を有する樹脂成形品1は、樹脂成形体10がダム部220に接触している。
【0044】
<第6実施形態>
(11)全体構成
上記第3実施形態では、インサート部材20が本体部30とコネクタ200から構成され、埋設部40と露出部50がコネクタ200に含まれている場合について説明した。しかし、埋設部40と露出部50が含まれる部材は、
図36、
図37、
図38及び
図39Aに示されている板状の接続端子600であってもよい(第6実施形態)。
図36から
図39Aに示されている接続端子600は、例えば、金属板を折り曲げて形成される端子である。板の材料の金属としては、例えば、銅、真鍮、リン青銅、鉄、ステンレスがある。接続端子600は、折り曲げ部603を挟んで互いに交差する接続部601と立上部602とを有する。
図36には、直角に折り曲げられた接続端子600が示されているが、折り曲げる角度は、鈍角でもよく、また鋭角でもよい。
本体部30が、電気回路を有するフィルム基板である場合、接続端子600の接続部601が、電気回路と接続される部分である。この接続部601が本体部30に固定されている。例えば、接続部601はハンダで本体部30に固定され、電気的に接続される。接続端子600の立上部602は、フィルム基板外の例えば電気機器に接続するため部分である。立上部602は、接続部601が固定されている本体部30の面に対して交差する方向に立ち上がっている。
図36に示されている接続端子600は、接続部601と立上部602が直交している。立上部602が延びる方向は、例えば、摺動ピン130の摺動する方向に一致している。
第6実施形態の接続端子600では、接続部601と立上部602の一部が埋設部40になり、立上部602の他部が露出部50になる。第6実施形態では、露出部50は、接続端子600に含まれている。
立上部602の先端部604に、凸部52が設けられている(
図37参照)。凸部52は、立上部602の主部605よりも幅方向(方向DR3)に突出している部分である。主部605は、立上部602のうちの凸部52が設けられている部分を除く部分であって、主部605の一部が埋設部40に含まれ、主部605の他部が露出部50に含まれる。ここでは、幅方向(方向DR3)は、立上部602の厚み方向(方向DR2)に対して直交する方向であって、折り曲げ部603から先端部604に向かっている起立方向(方向DR1)に対して直交する方向である。
【0045】
第6実施形態においては、摺動ピン130を備える第1実施形態の金型100と同様の金型で、
図39Aに示されている接続端子600を有する樹脂成形品1を製造できる。なお、
図39Bには、比較のために、第3実施形態に係るコネクタ200を有する樹脂成形品1が示されている。
図1、
図39A及び
図39Bに示されているように、第6実施形態の樹脂成形品1は、第1実施形態及び第3実施形態の樹脂成形品1と同様に、樹脂成形体10とインサート部材20とを備える。第6実施形態では、説明を簡素化するため主に、第1実施形態及び第3実施形態の樹脂成形品1とは形状が異なるインサート部材20の構成について説明した。樹脂成形品1について、第1実施形態及び第3実施形態と第6実施形態とで、同一の符号を付した同一構成部分については、同じ説明の繰り返しを避けるため説明を省いている部分がある。
【0046】
また、第6実施形態の金型は、第1実施形態の金型100と同様に、第1型110、第2型120、摺動ピン130及びエジェクターピン140を備えているように構成できる(
図4参照)。さらに、第6実施形態金型は、エジェクタープレート150及びシリンダー160を備えるように構成することができる。第6実施形態では、説明を簡素化するため主に、第1実施形態の金型100の摺動ピン130とは形状が異なる摺動ピン130の構成について説明する。摺動ピン130について、第1実施形態と第6実施形態で、同一の符号を付した同一構成部分については、同じ説明の繰り返しを避けるため説明を省いている部分がある。
第6実施形態において、露出部50を収容する収容部133は、第1実施形態と同様に、分割ピース131,132を含んでいる。各分割ピース131,132には、凹部181,182が形成されている。第1実施形態の露出部50の形状と、第6実施形態の露出部50の形状が異なるので、第1実施形態の凹部181,182の形状と第6実施形態の凹部181,182の形状が異なる。第6実施形態の凹部181,182の形状は、主部605に対応する普通幅部181m,182mと、普通幅部181m,182mよりも幅の広い幅広部181n,182nからなる形状である(
図37及び
図38参照)。幅広部181n,182nの幅は、凸部52が形成されている部分の幅以上の幅になっている。幅広部181n,182nが、第1実施形態の窪み184に相当する部分である。
第6実施形態の樹脂成形品1は、第1実施形態の樹脂成形品1の製造方法と同様の製造方法を適用して製造することができる。凸部52があるため、分割ピース131,132が合わさった状態では、普通幅部181m,182mが合わさって形成される穴から接続端子600を引き抜くことができない。しかし、第1実施形態で説明したように、分割ピース131,132のスライダー172が、摺動部135のT溝171を滑って分離することで、凹部181,182から接続端子600を取り出すことができる。
なお、第6実施形態の分割ピース131,132には、分割ピース131,132が合わさったときの互いの相対的な位置ずれを抑制するために、分割ピース131に嵌合溝186が設けられ、分割ピース132に嵌合突起部187が設けられている。嵌合溝186に嵌合突起部187が嵌って当接することにより、分割ピース131,132が合わさったときに相互に位置がずれるのを抑制することができる。
【0047】
(12)変形例F
第6実施形態では、凸部52が接続端子600の先端部604に配置されている場合について説明した。しかし、凸部52が配置される個所は、露出部50の先端部604以外の箇所であってもよい。例えば、立上部602における露出部50の中間に凸部52が配置されてもよい。また、1つの凸部52が1つの立上部602の一方側部に設けられる場合について説明したが、凸部52は、1つの立上部602の両側部に設けてもよい。また、第6実施形態では、凸部52は、主部605から突出している幅が何れの場所でも一定である場合について説明した。しかし、凸部52の形状は、例えばサインカーブのように、凸部52の場所によって突出幅が異なる形状であってもよい。
また、第6実施形態では、凸部52が板状の接続端子600の幅方向に突出する場合について説明した。しかし、凸部は、図示を省略するが、板状の接続端子600の厚み方向に突出するものであってもよい。例えば、凸部は、板状の接続端子600の先端部604を折り曲げて形成することができる。
【0048】
(13)変形例G
第6実施形態では、凸部52を有する接続端子600を用いて樹脂成形品1を形成する場合について説明した。しかし、
図40に示されている凸部52を有さない接続端子690を用いる樹脂成形品及びその製造に、同様の技術的特徴を有する金型及び同様の技術的特徴を有する製造方法を適用することができる。
図40に示されている接続端子690は、接続部601と立上部602を有する点が、
図37に示されている接続端子600と同じである。しかし、
図40の立上部602は、幅が一定で、凸部52を有していない。
従って、
図40の摺動ピン130の分割ピース131,132は、凸部52を有していない接続端子690の露出部50を収納するため、
図37及び
図38に示されている幅広部181n,182nを有していない。
【0049】
<第7実施形態>
(14)全体構成
上記第6実施形態では、接続端子600を例えば金属製の板を折り曲げて形成する場合について説明した。しかし、
図41から
図44に示されているように、接続端子700の形状は、例えば、凸部52を有するピン形状であってもよい。接続端子700は、例えば、金属製である。金属製の接続端子700の材料としては、例えば、銅、真鍮、リン青銅、鉄、ステンレスがある。
図41から
図44に示されている第7実施形態の接続端子700は、円盤状の接続部701と立上部702と有する。立上部702の先端部704は、円盤状に加工されており、凸部52が形成されている。立上部702のうち円盤状の先端部704を除く部分が円柱状の主部705である。埋設部40は、円盤状の接続部701と円柱状の主部705の一部とを含み、露出部50は、円柱状の主部705の他部を含む。凸部52は、露出部50に含まれる。
本体部30が、電気回路を有するフィルム基板である場合、接続端子700の接続部701は、電気回路と接続される部分である。この接続部701が本体部30に固定されている。例えば、接続部701はハンダで本体部30に固定され、電気的に接続される。接続端子700の立上部702は、フィルム基板外の例えば電気機器に接続するため部分である。立上部702は、接続部701が固定されている本体部30の面に対して交差する方向に立ち上がっている。
図41に示されている接続端子700は、円盤状の接続部701と円柱状の主部705の中心軸が互いに一致するように配置されている。立上部702が延びる方向は、例えば、摺動ピン130の摺動する方向に一致している。
【0050】
第7実施形態においては、摺動ピン130を備える第1実施形態の金型100と同様の金型で、
図44に示されている接続端子700を有する樹脂成形品1が製造できる。
図1及び
図44に示されているように、第7実施形態の樹脂成形品1は、第1実施形態の樹脂成形品1と同様に、樹脂成形体10とインサート部材20とを備える。第7実施形態では、説明を簡素化するため主に、第1実施形態の樹脂成形品1とは形状が異なるインサート部材20の構成について説明した。樹脂成形品1について、第1実施形態と第7実施形態とで、同一の符号を付した同一構成部分については、同じ説明の繰り返しを避けるため説明を省いている部分がある。
また、
図42に示されている方向DR1は、立上部702の起立方向であって、立上部702の中心軸が延びる方向である。方向DR2,DR3は、立上部702の径方向である。方向DR2は分割ピース131,132の移動方向であり、方向DR3は方向DR2と直交する方向である。
【0051】
第7実施形態の金型は、第1実施形態の金型100と同様に、第1型110、第2型120、摺動ピン130及びエジェクターピン140を備えているように構成できる(
図4参照)。さらに、第7実施形態金型は、エジェクタープレート150及びシリンダー160を備えるように構成することができる。第7実施形態では、説明を簡素化するため主に、第1実施形態の金型100の摺動ピン130とは形状が異なる摺動ピン130の構成について説明する。摺動ピン130について、第1実施形態と第7実施形態で、同一の符号を付した同一構成部分については、同じ説明の繰り返しを避けるため説明を省いている部分がある。
第7実施形態において、露出部50を収容する収容部133は、第1実施形態と同様に、分割ピース131,132を含んでいる。各分割ピース131,132には、凹部181,182が形成されている。第1実施形態の露出部50の形状と、第7実施形態の露出部50の形状が異なるので、第1実施形態の凹部181,182の形状と第7実施形態の凹部181,182の形状が異なる。第7実施形態の凹部181,182の形状は、主部705に対応する半円柱状の第1部分181p,182pと、半円柱状の第1部分181p,182pよりも径が大きい円盤を、中心軸を通る平面で半分に割った形状の第2部分181q,182qを含む形状である。第2部分181q,182qの半径は、円盤状の先端部704の半径以上の半径になっている。第2部分181q,182qが、第1実施形態の窪み184に相当する部分である。なお、第7実施形態では、凹部181,182に、接続端子700が入らない第3部分181r,182rが設けられているが、これら第3部分181r,182rは設けない構成としてもよい。
第7実施形態の樹脂成形品1は、第1実施形態の樹脂成形品1の製造方法と同様の製造方法を適用して製造することができる。凸部52があるため、分割ピース131,132が合わさった状態では、第1部分181p,182pが合わさって形成される穴から接続端子700を引き抜くことができない。しかし、第1実施形態で説明したように、分割ピース131,132のスライダー172が、摺動部135のT溝171を滑って分離することで、凹部181,182から接続端子700を取り出すことができる。
なお、第7実施形態の分割ピース131,132にも、第6実施形態と同様の嵌合溝186と嵌合突起部187が設けられている。
【0052】
(15)変形例H
第7実施形態では、凸部52が接続端子700の先端部704に配置されている場合について説明した。しかし、凸部52が配置される個所は、露出部50の先端部704以外の箇所であってもよい。例えば、立上部702における露出部50の中間に凸部52が配置されてもよい。また、第7実施形態では、凸部52の半径が、いずれの場所でも一定である場合について説明した。しかし、凸部52を伴う露出部50の形状は、例えば中央部に行くに従って徐々に膨らむ樽形状であってもよい。
【0053】
(16)変形例I
第7実施形態では、凸部52を有する接続端子700を用いて樹脂成形品1を形成する場合について説明した。しかし、
図45に示されている凸部52を有さない接続端子790を用いる樹脂成形品及びその製造に、同様の技術的特徴を有する金型及び同様の技術的特徴を有する製造方法を適用することができる。
図45に示されている接続端子790は、接続部701と立上部702を有する点が、
図41に示されている接続端子700と同じである。しかし、
図44の立上部702は、半径が一定の円柱状で、凸部52を有していない。
従って、
図44の摺動ピン130の分割ピース131,132は、凸部52を有していない接続端子790の露出部50を収納するため、
図42及び
図43に示されている第2部分181q,182qを有していない。
以上、本発明の第1実施形態から第7実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 樹脂成形品
10 樹脂成形体
20 インサート部材
30 本体部
40 埋設部
50 露出部
52 凸部
100 金型
110 第1型
118 第1表面
120 第2型
128 第2表面
130 摺動ピン
131,132,231~234 分割ピース
133,333 収容部
135,235,335 摺動部
138 第3表面
181,182,281,282,283,284 凹部
181n,182n 幅広部
181q,182q 第2部分
184,285 窪み
SP 成形空間