(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069148
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】万年暦表示を有する時計ムーブメントのためのうるう年表示機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/257 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
G04B19/257 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023182534
(22)【出願日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】22206485.9
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】リエド、 クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロシャト、 ジャン―フィリップ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設計が相対的に簡単であり動力消費を最小限にするうるう年表示機構を提供する。
【解決手段】万年暦表示を有する時計ムーブメントのためのうるう年表示機構10であって、うるう年表示機構10は、・月ごとに1ステップだけ回転される月ホイールセット20に接続される駆動要素21と、・時計ムーブメントの一構造物に取り付けられることが意図される伝動スター30であって、月ホイールセット20が一回の完全回転を完了するときに回転されるように駆動要素21のストロークに沿って配列される伝動スター30と、・減速ギア列32を介して伝動スター30に接続されるうるう年表示部40であって、月ホイールセット20の回転ごとに1ステップだけ回転されるうるう年表示部40とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
万年暦表示を有する時計ムーブメントのためのうるう年の表示機構(10)であって、
・月ごとに1ステップだけ回転される月ホイールセット(20)に接続される駆動要素(21)と、
・前記時計ムーブメントの一構造物に取り付けられることが意図される伝動スター(30)であって、前記月ホイールセット(20)が一回の完全回転を完了するときに回転されるように前記駆動要素(21)のストロークに沿って配列される伝動スター(30)と、
・減速ギア列(32)を介して前記伝動スター(30)に接続されるうるう年表示部(40)であって、前記月ホイールセット(20)の回転ごとに1ステップだけ回転されるうるう年表示部(40)と
を含み、
前記うるう年表示部(40)は、うるう年及び通常の年を含んで現在の年のタイプを表示する指標(41)が示される表示壁(42)を含むローラーの形態をとることを特徴とする、表示機構。
【請求項2】
前記駆動要素(21)は、埋め込みタイプの機械的接続部によって前記月ホイールセット(20)に偏心して取り付けられる、請求項1に記載の表示機構。
【請求項3】
前記伝動スター(30)は4つの歯を有する、請求項1又は2に記載の表示機構。
【請求項4】
前記うるう年表示部(40)は環状支承面(43)を含み、前記環状支承面(43)によって前記減速ギア列(32)に取り付けられ、
前記環状支承面(43)は、前記表示壁(42)に端壁(44)によって接続される、請求項1に記載の表示機構。
【請求項5】
前記うるう年表示部(40)は、自身の角度位置を調整する機構を含み、
前記機構は、前記環状支承面(43)に取り付けられる径方向ラグ(45)によって形成され、前記径方向ラグ(45)によって前記環状支承面(43)は前記端壁(44)に接続され、
前記径方向ラグ(45)は、ねじ(46)と協働するねじ切り孔を含み、前記ねじ(46)は、前記端壁(44)に作られて曲線方向に延びる長孔(47)に係合される、請求項4に記載の表示機構。
【請求項6】
前記減速ギア列(32)は、前記伝動スター(30)に同軸に剛性取り付けされてともに回転する第1ホイール(320)と、前記うるう年表示部(40)に同軸に剛性取り付けされてともに回転する第2ホイール(321)とを含む、請求項1に記載の表示機構。
【請求項7】
前記減速ギア列(32)は、前記うるう年表示部(40)の1ステップが一回転の8分の1に対応するように構成される、請求項1に記載の表示機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計の分野に関し、詳しくは万年暦表示を有する時計に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、万年暦表示を有する時計ムーブメントのためのうるう年表示機構に関する。
【背景技術】
【0003】
万年暦表示機構は、日付の表示を許容するよく知られた時計学的に複雑な要素である。この万年暦表示は、自動的に、すなわち手動の介入を必要とすることなく、特にうるう年を考慮しながら、月の長さに順応することにより日付を表示することを許容する。
【0004】
いくつかの時計において、万年暦表示機構は、現在の年がうるう年か又は通常の年かを示す表示部に接続される。
【0005】
これらの機構は、製造及び組み立てが複雑である。さらに、多くの動力を消費するのが典型的である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、設計が相対的に簡単であり動力消費を最小限にするうるう年表示ソリューションを与えることによって、上述した欠点を克服する。
【0007】
本発明に係る機構は、特にローラー表示部に適している。
【0008】
この目的に向けて、本発明は、
・月ごとに1ステップだけ回転される月ホイールセットに接続される駆動要素と、
・時計ムーブメントの一構造物に取り付けられることが意図される伝動スターであって、月ホイールセットが一回の完全回転を完了するときに回転されるように駆動要素のストロークに沿って配列されるトランスミッションスターと、
・月ホイールセットの各回転にともなって1ステップだけ回転されるように減速ギア列を介して伝動スターに接続されるうるう年表示部と
を含む万年暦表示を有する時計ムーブメントのためのうるう年表示機構に関する。
【0009】
特定の実施形態において、本発明はさらに、以下の特徴の一以上を含み得る。これらの特徴は、単独で、又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って、考慮する必要がある。
【0010】
特定の実施形態において、駆動要素は、埋め込みタイプの機械的接続部によって月ホイールセットに偏心して取り付けられる一指の形態をとる。
【0011】
特定の実施形態において、伝動スターは4つの歯を有する。
【0012】
特定の実施形態において、うるう年表示部は、うるう年及び通常の年を含む現在の年タイプを表す指標を含む。
【0013】
特定の実施形態において、うるう年表示部は、現在の年タイプを表す指標が示される表示壁を含むローラーの形態をとる。
【0014】
特定の実施形態において、うるう年表示部は環状支承面を含む。この環状支承面を介してうるう年表示部が減速ギア列に取り付けられ、当該環状支承面は表示壁に端壁によって接続される。
【0015】
特定の実施形態において、うるう年表示部は、自身の角度位置を調整する機構を含む。この機構は、環状支承面に取り付けられる径方向ラグによって形成される。これによって当該環状支承面が端壁に接続される。当該径方向ラグは、ねじと協働するねじ切り孔を含む。このねじは、端壁に作られて曲線方向に延びる長孔に係合される。
【0016】
特定の実施形態において、減速ギア列は、伝動スターに同軸に剛性取り付けされてともに回転する第1ホイールと、うるう年表示部に同軸に剛性取り付けされてともに回転する第2ホイールとを含む。
【0017】
特定の実施形態において、減速ギア列は、うるう年表示部の1ステップがその回転の8分の1に対応するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のさらなる特徴及び利点が、非限定的な例を介して添付図面を参照して与えられる以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。
【0019】
【
図1】本発明の好ましい実施例に係る万年暦表示を有する時計ムーブメントのうるう年表示機構の部分分解斜視図を示す。
【
図2】
図1における表示機構の特徴部の断面図を示す。
【
図3】
図2における切断面A-Aに沿った断面図を示す。
【
図4】
図2における切断面B-Bに沿った断面図を示す。
【0020】
明確性を目的として図面が必ずしも縮尺どおりには描かれないことに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1の分解図に見えるように、本発明は、万年暦表示を有する時計ムーブメントのためのうるう年表示機構10に関する。
【0022】
うるう年表示機構10は、月ごとに1ステップだけ回転する月ホイールセット20を含む。月ホイールセット20には駆動要素21が接続される。本発明の好ましい実施形態において、駆動要素21は有利なことに、一指の形態をとり、埋め込みタイプの、すなわち自由度がまったくない状態の、機械的接続部によって月ホイールセット20に取り付けられる。
【0023】
駆動要素21は有利なことに、
図1に示されるように月ホイールセット20の回転軸に対して偏心して取り付けられ、月ホイールセット20がなす回転ごとに1ステップだけ伝動スター30を回転させることが意図される。詳しくは、伝動スター30は、時計ムーブメント(図面に示さない)の、プレート又はブリッジのような一構造物に対して、好ましくは
図2及び
図3に示される支持構造物31によって、回転させることができるように取り付けられる。
【0024】
伝動スター30は、減速ギア列32を介してうるう年表示部40に接続される。月ホイールセット20の回転ごとに、うるう年表示部40が1ステップだけ回転される。
【0025】
図面に示される実施例において、本発明は有利なことに、ローラータイプの日付表示部に適用される。代替的に、本発明は、当業者にとってなんら設計的な困難をともなうことなく、任意のタイプの日付表示部に適応させることができる。詳しくは、本発明は、ディスクタイプの日付表示部に適応させることができる。
【0026】
図1及び
図2に見えるように、月ホイールセット20は、複数月の名称を表示する複数のフラップ22を含むローラーの形態をとる。これらのフラップ22は、支持構造物31に対して回転することができるフレームによって支持されるように配列される。このフレームは、本発明の好ましい実施例においては、当該可動構造物に対して回転することができる。詳しくは、月ホイールセット20は、6つのフラップ22を含む。各フラップは、2つの異なる月を表示し、フレームの完全回転ごとに半回転するように配列される。フレームは、当業者にとってそれ自体周知の日付機構によって、6か月に一回の完全回転を完了するように回転させられる。かかる月ホイールセット20は、欧州特許第3267266号明細書に記載されている。
【0027】
フレームは、例えば心棒23によって形成される。その両端はそれぞれ、
図1における分解図又は
図2における断面図に見えるように、フランジ24に剛性接続されてともに回転する。詳しくは、心棒23の両端はそれぞれ、時計ムーブメントの構造物に取り付けられることが意図される支持構造物31の中で枢動するように配列される。駆動要素21は好ましくは、月ホイールセット20が回転しているときに心棒23の長手軸まわりに枢動するように、これらのフランジ24の一方に取り付けられる。
【0028】
支持構造物31は、中心が心棒23の回転軸に整列される円をなして延びる溝310を含み得る。駆動要素21は、そのストローク全体にわたって当該溝310の内側に収容され得る。この特徴により、本発明に係る表示機構の寸法を低減することができる。
【0029】
有利なことに、
図1に示されるように、減速ギア列32は、伝動スター30に同軸に剛性取り付けされてともに回転する第1ホイール320と、うるう年表示部40に剛性取り付けされてともに回転する第2ホイール321とを含む。
図2の断面図に見えるように、第2ホイール321は管状部分323を含む。管状部分323によって第2ホイール321は、支持構造物31に回転可能に配列される。本発明の好ましい実施例において、うるう年表示部40は、第2ホイール321の管状部分323と協働することによって、支持構造物31に対するある程度の回転移動度を有するようになる。これについては以下に詳述する。
【0030】
それゆえ、
図1、
図2及び
図4に示されるように、減速ギア列32は2つのみのホイールを有するのが好ましい。
【0031】
さらに、駆動要素21の回転軸と、伝動スター30の回転軸と、減速ギア列32の第1ホイール320及び第2ホイール321の回転軸と、うるう年表示部40の回転軸とは互いに平行である。
【0032】
有利なことに、減速ギア列32は、第2ホイール321に剛性接続されてともに回転する保持スター322を含む。保持スター322は、第2ホイール321を、ひいてはうるう年表示部40を、所定の離散的な角度位置に保持するべくジャンパー33と協働するように構成される。
【0033】
好ましくは、
図1の分解図及び
図4の断面図に示されるように、ジャンパー33は、ジャンパーばね34によって保持スター322に当接した状態に保持されるように構成される。
【0034】
代替的に、ジャンパー33はそれ自体が弾性ストリップにより形成されてよく、当該弾性ストリップの変形によって保持スター322に当接した状態に配列されてよい。かかる場合は、うるう年表示機構10は、別個のジャンパーばねを含まない。
【0035】
本発明の好ましい実施例において、減速ギア列32は、うるう年表示部40の1ステップが一回転の8分の1に対応するように構成される。詳しくは、駆動要素21が伝動スター30を一回転の4分の1だけ回転させるので、減速ギア列32は、8歯を含む保持スター322によって2分の1の減速率を生じさせるような寸法とされる。月ホイールセット20は一年に2回の完全回転を行うので、うるう年表示部40の回転は、4年ごとに一回の完全回転をする割合となる。
【0036】
うるう年表示部40は、現在の年を表す指標41を担持する。指標41は、うるう年及び通常の年を含む。詳しくは、うるう年表示部40の指標41は、年ごとに2つの連続する文字が表示される割合で次々に可視となるように意図された一連の8つの文字を表す。好ましい実施例において、これらの文字は、1、1、2、2、3、3、B、Bの連なりによって形成される。
【0037】
指標41は、うるう年表示部40を覆う外部部品(図面に示さない)に作られた窓を通して可視となり得る。
【0038】
好ましくは、うるう年表示部40は、円筒表示壁42を含むローラーの形態をとる。円筒表示壁42には、現在の年のタイプを表す指標41が示される。さらに、うるう年表示部40は環状支承面43を含む。
図2に示されるように、環状支承面43によってうるう年表示部40は、自由度がまったくない状態で、減速ギア列32の第2ホイール321に、詳しくは管状部分323に、取り付けられる。さらに詳しくは、環状支承面43は、管状部分323に押し込められ、又は管状部分323に接合される。有利なことに、管状部分323は、回転を止めるための丸溝ひだ、又はキー等のような任意の他の要素を含み得る。環状支承面43は、
図2において可視の実施例に示されるように、端壁44によって表示壁42に接続される。
【0039】
有利なことに、うるう年表示部40は、自身の角度位置を調整する機構を含み得る。さらに詳しくは、
図2に図式的に示されるように、この調整機構は、環状支承面43に取り付けられる径方向ラグ45によって形成することができる。当該環状支承面43は、この径方向ラグ45によって端壁44に、ひいては表示壁42に接続される。詳しくは、径方向ラグ45は、ねじ46と協働することが意図されるねじ切り孔を含む。ねじ46は、端壁44に作られた曲線方向に延びる長孔47に係合される。この曲線方向は、中心がうるう年表示部40の回転軸に整列する円の円弧によって画定される。
【0040】
すなわち、ねじ46が緩められると表示壁42が、環状支承面43に対して動き得る。この動きは、長孔47の両端間のねじ46の進行によって画定される角度変位に対応する。ねじ46が締められると、うるう年表示部40は定位置に保持される。
【0041】
上述したもの、すなわち
図1に示される複数の径方向ラグ45、ねじ46、及び長孔47、に対応するいくつかの調整機構が想定される。
【0042】
有利なことに、環状支承面43、ひいては第2ホイール321及びうるう年表示部40は、中心ねじ48によって支持構造物31に対する並進移動が防止される。中心ねじ48は、当該支持構造物31に作られたねじ切りと協働することが意図される。詳しくは、
図2の断面図に見えるように、管状部分323が、中心ねじ48のねじ頭と支持構造物31とによって形成される2つの軸方向バンキング間に挿入されることにより、第2ホイール321及びうるう年表示部40の任意の並進移動性が排除される。
【0043】
一般に、以上で考慮された実装例及び実施形態は、非限定的な例として説明されていること、それゆえ他の代替的な実装例及び実施形態が想定され得ることに留意すべきである。
【外国語明細書】