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特開2024-69162パーム分別油を用いたエステル交換油脂の開発及びこれを用いたチョコレート
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  • 特開-パーム分別油を用いたエステル交換油脂の開発及びこれを用いたチョコレート 図1
  • 特開-パーム分別油を用いたエステル交換油脂の開発及びこれを用いたチョコレート 図2
  • 特開-パーム分別油を用いたエステル交換油脂の開発及びこれを用いたチョコレート 図3A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069162
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】パーム分別油を用いたエステル交換油脂の開発及びこれを用いたチョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240514BHJP
   A23G 1/38 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/38
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190496
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0148554
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】317017461
【氏名又は名称】ロッテ ウェルフード カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭相和
(72)【発明者】
【氏名】李東和
(72)【発明者】
【氏名】朴基鎬
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG06
4B014GK07
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP27
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DH01
4B026DP01
4B026DP03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パーム分別油を用いた化学的エステル化油脂を提供し、口溶性に優れた油脂組成物をマーガリンやココアバター代替脂配合原料として提供する。
【解決手段】パーム核分別油35~55重量%及びパーム分別油35~55重量%を含む、エステル交換反応用油脂組成物であり、パーム核分別油は、IVが8以下であり、パーム分別油は、IVが10~35である第1パーム分別油、及びIVが50~60である第2パーム分別油を含む、エステル交換反応用油脂組成物である。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換反応用油脂組成物であって、前記組成物は、組成物全重量に対して、
パーム核分別油35~55重量%;及び
パーム分別油35~55重量%;を含む、エステル交換反応用油脂組成物。
【請求項2】
前記パーム核分別油は、IVが8以下であり、
前記パーム分別油は、IVが10~35である第1パーム分別油、及びIVが50~60である第2パーム分別油を含む、請求項1に記載のエステル交換反応用油脂組成物。
【請求項3】
前記第1パーム分別油は組成物全重量に対して25~45重量%、
前記第2パーム分別油は組成物全重量に対して5~25重量%で含まれる、請求項2に記載のエステル交換反応用油脂組成物。
【請求項4】
前記パーム核分別油はパーム核ステアリン油であり、
前記第1パーム分別油はパームステアリン油であり、
前記第2パーム分別油はパームオレイン油である、請求項3に記載のエステル交換反応用油脂組成物。
【請求項5】
前記組成物は、硬化工程を経た油脂を含まない、請求項1に記載のエステル交換反応用油脂組成物。
【請求項6】
エステル交換された油脂組成物であって、
前記エステル交換された油脂組成物は、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を化学的方法によってエステル交換反応させて製造されたものであり、
前記エステル交換された油脂組成物全重量に対して飽和脂肪酸の重量比率(wt%)は75~85wt%である、エステル交換された油脂組成物。
【請求項7】
前記エステル交換された油脂組成物は、組成物全体炭素数(Carbon Number,CN)100%のうち、CN36~46の比率(%)は65~75%である、請求項6に記載のエステル交換された油脂組成物。
【請求項8】
前記化学的反応は、ナトリウムメトキシド触媒によって行われる交換反応である、請求項6に記載のエステル交換された油脂組成物。
【請求項9】
前記エステル交換された油脂組成物は、ココアバター代替脂として使用可能である、請求項6に記載のエステル交換された油脂組成物。
【請求項10】
請求項6に記載のエステル交換された油脂組成物をココアバター代替脂として含む食品。
【請求項11】
前記食品は、マーガリン、チョコレート及びショートニングを含む、請求項10に記載の食品。
【請求項12】
前記食品はチョコレートであり、チョコレート全重量に対して前記エステル交換された油脂組成物は20~45重量%で含まれる、請求項10に記載の食品。
【請求項13】
前記チョコレートは、
砂糖35~48重量%;
エステル交換された油脂組成物20~45重量%;
カカオプレパレーション5~15重量%;及び
カカオパウダー5~15重量%;
を含む、請求項12に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、エステル交換油脂組成物、前記エステル交換油脂を使用したマーガリン又はチョコレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートに使われる油脂の代表にはココアバターがある。これは、カカオマスからとれる油脂で、対称形のトリアシルグリセリドのテンパー型チョコ用油脂である。しかし、ココアバターは高価であり、学界や産業ではココアバター代替脂が研究及び開発されている。その代表にはCBE(cocoa butter equivalent)、CBR(cocoa butter replacer)、CBS(cocoa butter substitute)があり、近年、全世界的な気温の上昇に伴ってCBI(cocoa butter improver)が開発された。
【0003】
CBEは、ココアバターに類似するもので、トリアシルグリセリド組成が同一であり、テンパリング工程が必要な油脂である。しかし、CBRは、テンパリング工程が要求されず、CBEよりは安価である。CBRは、過去、部分硬化油を使用したが、トランス脂肪の安全上の問題から現在は使用量が減っており、ラウリン系の油脂やパーム分別油を用いたCBR開発がされている。
【0004】
油脂分別産業は、代表としてパーム油を用いた分別産業が発展しており、パーム分別油を用いた様々な製品がある。分別は、大きく、溶媒分別と乾式分別があるが、特に、乾式分別は、既存の油脂加工方法と違い、環境にやさしく、いかなる触媒や反応もなく、物理的方法で用途に合うパーム分別油を生産することができる。パーム分別は1次から3次までに分けることができる。パーム1次分別油はパームオレインとパームステアリン油、2次はソフトパーム中部油(Soft Palm-Middle-Fraction:ソフトパーム中融点画分)、スーパーパームオレイン油、スーパーパームステアリン油、そして3次分別油はハードパーム中部油(Hard Palm-Middle-Fraction:ハードパーム中融点画分)に区分される。各分別油は使用用途に応じて使われる。パーム核油も分別してパーム核ステアリン油を得ることができ、ココアバター代替脂、CBSとしても使用されている。
【0005】
油脂のエステル化反応は、代表的な加工油脂工法であり、これは、油脂のトリアシルグリセリド脂肪酸の位置を並べ替えて油脂の物性を変化させる加工方法であり、化学的方法と酵素的方法とに大別される。化学的方法は、ナトリウムメトキシドを触媒にして油脂のトリアシルグリセリド脂肪酸の位置をランダムに並べ替え、産業において最も多用されているエステル化反応方法である。酵素的方法は、酵素を用いて油脂のトリアシルグリセリド脂肪酸を選択的に並べ替え、代表的にCBEを作る一方法である。酵素的方法は、酵素の再使用と費用上の問題から産業的に大きく成長してはいない方法である。
【0006】
このようにパーム分別油を用いてエステル反応をする研究は、学界の他に産業的にも多様に研究されている。したがって、上記のような問題点を改善したエンロービングチョコレートの確保によって商業的に消費者に満足してもらえるレベルの製品が要求されている現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2017-0118063号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2020-0130814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記のような問題点を研究し、本発明に至った。
したがって、本発明の一側面は、パーム分別油を用いた化学的エステル化油脂を提供し、口溶性に優れた油脂組成物をマーガリンやココアバター代替脂配合原料として提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、以上に言及した目的に限定されない。本発明の目的は、以下の説明からより明確になるはずであり、特許請求の範囲に記載される手段及びその組合せによって実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、エステル交換反応用油脂組成物であって、前記組成物は、組成物全重量に対して、パーム核分別油35~55重量%;及び、パーム分別油35~55重量%;を含む、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0011】
本発明の一側面において、前記パーム核分別油は、IVが8以下であり、前記パーム分別油は、IVが10~35である第1パーム分別油、及びIVが50~60である第2パーム分別油を含む、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の一側面において、前記第1パーム分別油は組成物全重量に対して25~45重量%、前記第2パーム分別油は組成物全重量に対して5~25重量%で含まれる、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0013】
本発明の一側面において、前記パーム核分別油はパーム核ステアリン油であり、前記第1パーム分別油はパームステアリン油であり、前記第2パーム分別油はパームオレイン油である、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0014】
本発明の一側面において、前記組成物は、硬化工程を経た油脂を含まない、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の側面は、エステル交換された油脂組成物であって、前記エステル交換された油脂組成物は、本発明の一側面のうちいずれか一つによる組成物を化学的方法によってエステル交換反応させて製造されたものであり、前記エステル交換された油脂組成物全重量に対して飽和脂肪酸の重量比率(wt%)は75~85wt%である、エステル交換された油脂組成物を提供する。
【0016】
本発明の他の側面において、前記エステル交換された油脂組成物は、組成物全カ-ボン数(Carbon Number,CN)100%のうちCN 36~46の比率(%)は65~75%である、エステル交換された油脂組成物を提供する。
【0017】
本発明の他の側面において、前記化学的反応は、ナトリウムメトキシド触媒によって行われる交換反応である、エステル交換された油脂組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の側面において、前記エステル交換された油脂組成物はココアバター代替脂として使用可能である、エステル交換された油脂組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の側面は、前記本発明の他の側面によるエステル交換された油脂組成物をココアバター代替脂として含む食品を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の側面において、前記食品は、マーガリン、チョコレート、ショートニング、及びその他加工油脂を含む食品を提供する。
【0021】
本発明のさらに他の側面において、前記食品はチョコレートであり、チョコレート全重量に対して前記エステル交換された油脂組成物は20~45重量%で含まれる食品を提供する。
【0022】
本発明のさらに他の側面において、前記チョコレートは、砂糖35~48重量%;エステル交換された油脂組成物20~45重量%;カカオプレパレーション5~15重量%;及び、カカオパウダー5~15重量%;を含む、食品を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る油脂組成物は、硬化油を使用しなく、シャープな食感のココアバター代用脂として使用可能であり、既存のココアバター代用脂よりも優れた固体脂含量を有する。
【0024】
本発明に係る油脂組成物及びこれを含むチョコレートは、優れた口溶性(口溶性は、口中で溶ける食感)を有する。通常、口中で一瞬に溶ける感じを口溶性が良いと表現し、口中でも多く残留して溶けないと、口溶性が悪いと表現する。
【0025】
本発明に係る油脂組成物及びこれを含むチョコレートは、品質安定性に優れる。
【0026】
本発明の効果は、以上に言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明から推論可能な全ての効果を含むものと理解されるべきであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】通常のパーム油の分別過程であり、organic chemistry to fat and oil chemistry-Scientific Figure on ResearchGate.Available from:https://www.researchgate.net/figure/Multi-steps-fractions-from-palm-oil-dry-fractionation_fig5_270843179[accessed 3 Oct,2022]を参考した。
図2】通常のパーム核油の分別過程であり、Gibon,Vιronique."Palm oil and palm kernel oil refining and fractionation technology." Palm oil.AOCS Press,2012.329-375.を参考した。
図3A図3Aは、本願発明の一側面によって製造されたエステル交換油脂組成物である。
図3B図3Bは、前記エステル交換油脂組成物を含んで製造されたチョコレートの写真である。
図3C図3Cは、油脂溶出テスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
別に断りのない限り、本明細書で使われる成分、反応条件、成分の含有量を表す全ての数字、値及び/又は表現は、これらの数字が本質的に異なる物からこのような値を得る上で発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値である点で、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解されるべきである。また、本記載において数値範囲が開示される場合に、このような範囲は連続的であり、特記しない限り、このような範囲の最小値から最大値を含む該最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を示す場合に、特記しない限り、最小値から最大値を含む該最大値までの全ての整数が含まれる。
【0029】
本明細書において、範囲が変数に対して記載される場合に、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む記載範囲内の全ての値を含むものとして理解されよう。例えば、「5~10」の範囲、5、6、7、8、9、及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲も含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などのような、記載範囲の範疇に妥当な整数同士の間の任意の値も含むものと理解されよう。また、例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけでなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲も含み、10.5%、15.5%、25.5%などのような、記載範囲の範疇内の妥当な整数同士の間の任意の値も含むものと理解されよう。
【0030】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0031】
本発明のエステル化油脂組成物において、パーム核分別油(パーム核ステアリン油)を組成物全重量に対して30~60%で含み、パーム分別油1(パームステアリン油又はスーパーパームステアリン油)を組成物全重量に対して30~40%で含み、パーム分別油2(パーム油又はパームオレイン油又はスーパーパームオレイン油)を組成物全重量に対して5~20%で含み、ただし、硬化工程を経た油脂を含まないことを特徴とする、エステル化油脂組成物を提供する。
【0032】
分別工程は、大きく、溶媒分別と乾式分別とがある。溶媒分別は、アセトンやヘキサンなどの有機溶媒を用いて温度による液状油と固体脂を分画(分別)する工程であり、乾式分別は、特定温度で結晶化された油脂を物理的な力によって分画する工程である。パーム油分別油は、たいてい、乾式分別によって分画して作られる。パーム核油を乾式分別し、固体脂である30~40% IV約7以下のパーム核ステアリン油と、液状油である60~70% IV約25以下のパーム核オレイン油が分画される。
【0033】
パームステアリン油は、パーム油から分画された20% IV 32~36パームステアリン油を分画して得ることができる。
【0034】
パームステアリン油を乾式分別し、30% IV 12~14のスーパーパームステアリン油と、70% IV 41~43のソフトパームステアリン油を得ることができる。
【0035】
パームオレイン油は、パーム油を分別して得ることができ、パーム油を分別すると、80% IV 56~57のパームオレイン油と20% IV 32~36のパームステアリン油が分画できる。
【0036】
スーパーパームオレイン油は、パームオレイン油を分別して得ることができ、パームオレイン油の55%であり、IVは64~66である。
【0037】
通常のパーム油とパーム核油の分別過程は、図1及び図2の通りである。
【0038】
(1)本発明の一具現例は、以下の条件a~cを満たすエステル化交換油脂組成物を提供する。
a.前記パーム核分別油は、パーム核油が乾式分別を経た生成物であり、IVが8以下である、パーム核分別油を提供する。
b.前記パーム分別油1は、パーム油が乾式分別を経た生成物であり、IVが10以上35以下である、パーム分別油を提供する。
c.前記パーム分別油2は、パーム油が乾式分別を経た生成物であり、IVが50以上60以下である、パーム分別油を提供する。
【0039】
(2)本発明の一具現例は、前記(1)に加えて、下記条件dを満たすエステル化交換油脂組成物を提供する。
d.全カーボン数(Carbon Number,CN)100%中のCN 36~46の比率(%)は65~75%である。
【0040】
(3)本発明の一具現例は、前記(1)又は(2)に加えて、以下の条件eをさらに満たすエステル化交換油脂組成物を提供する。
e.組成物全重量に対して飽和脂肪酸の重量比率(wt%)が75~85wt%である。
前記e.の質量比率は、GC分析でそれぞれの脂肪酸を分析したとき、全脂肪酸ピーク面積(Peak area)(%)を100とし、そのうち、飽和脂肪酸のピーク面積(%)の和で計算できる。
【0041】
本願発明において、「IV」とは、Iodine Vauleの略字で、ヨード価で油脂の不飽和度を示す尺度である。ヨード価は、油脂を構成している脂肪酸の二重結合の数を示す指標であり、IVが高いと、二重結合の数が多いため不飽和度が高く、IVが低いと、二重結合の数が少ないため不飽和度が低いことを意味する。ヨード価が高い油は、融点が低く、二重結合が多いため反応性に富み、酸化しやすい。ヨード価が低い油は、融点が高く、酸化安定性が良い。油脂を高温で長時間加熱したり自動酸化が進行したりすれば、不飽和脂肪酸が分解されるため、ヨード価は低くなる。また、水素添加によってもヨード価は低下する。
【0042】
以下では、本発明の様々な側面を説明する。
【0043】
本発明の一側面は、エステル交換反応用油脂組成物であって、前記組成物は、組成物全重量に対してパーム核分別油35~55重量%;及び、パーム分別油35~55重量%;を含む、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。前記数値範囲を満たす場合にココアバター代替脂としての性能が高く、食品に使用された時に官能的効果に優れる。
【0044】
本発明の一側面において、前記パーム核分別油はIVが8以下であり、前記パーム分別油は、IVが10~35である第1パーム分別油及びIVが50~60である第2パーム分別油を含む、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。前記数値範囲を満たす場合にココアバター代替脂としての性能が高く、食品に使用された時に官能的効果に優れる。
【0045】
本発明の一側面において、前記第1パーム分別油は組成物全重量に対して25~45重量%、前記第2パーム分別油は組成物全重量に対して5~25重量%で含まれる、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。前記数値範囲を満たす場合にココアバター代替脂としての性能が高く、食品に使用された時に官能的効果に優れる。
【0046】
本発明の一側面において、前記パーム核分別油はパーム核ステアリン油であり、前記第1パーム分別油はパームステアリン油であり、前記第2パーム分別油はパームオレイン油である、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0047】
本発明の一側面において、前記組成物は硬化工程を経た油脂を含まない、エステル交換反応用油脂組成物を提供する。
【0048】
本発明の他の側面は、エステル交換された油脂組成物であって、前記エステル交換された油脂組成物は、本発明の一側面のうちいずれか一つによる組成物を化学的方法によってエステル交換反応させて製造されたものであり、前記エステル交換された油脂組成物全重量に対して飽和脂肪酸の重量比率(wt%)は75~85wt%である、エステル交換された油脂組成物を提供する。前記数値範囲を満たす場合にココアバター代替脂としての性能が高く、食品に使用された時に官能的効果に優れる。
【0049】
本発明の他の側面において、前記エステル交換された油脂組成物は、組成物全カーボン数(Carbon Number,CN)100%中のCN 36~46の比率(%)は65~75%である、エステル交換された油脂組成物を提供する。前記数値範囲を満たす場合にココアバター代替脂としての性能が高く、食品に使用された時に官能的効果に優れる。
【0050】
本発明の他の側面において、前記化学的反応は、ナトリウムメトキシド触媒によって行われる交換反応である、エステル交換された油脂組成物を提供する。
【0051】
本発明の他の側面において、前記エステル交換された油脂組成物は、ココアバター代替脂として使用可能である、エステル交換された油脂組成物を提供する。
【0052】
本発明のさらに他の側面は、前記本発明の他の側面によるエステル交換された油脂組成物をココアバター代替脂として含む食品を提供する。
【0053】
本発明のさらに他の側面において、前記食品は、マーガリン、チョコレート、ショートニング、及びその他加工油脂を含む食品を提供する。
【0054】
本発明のさらに他の側面において、前記食品はチョコレートであり、チョコレート全重量に対して前記エステル交換された油脂組成物は20~45重量%で含まれる食品を提供する。
【0055】
本発明のさらに他の側面において、前記チョコレートは、砂糖35~48重量%;エステル交換された油脂組成物20~45重量%;カカオプレパレーション5~15重量%;及びカカオパウダー5~15重量%;を含む、食品を提供する。前記数値範囲を満たす場合に、食品に使用された時に官能的効果に優れる。
【0056】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0057】
実施例1.エステル油脂組成物の製造
エステル反応をする前に、乾式分別を用いてそれぞれの分別油を得る。
【0058】
(1)パーム油及びパーム核油の乾式分別
パーム核油を使用して固体脂と液状油として乾式分別し、固体脂は、IV 8以下のパーム核分別油を得た。
また、パーム分別油を得るために、パーム油を乾式分別して得た固体脂と液状油のうち固体脂を使用し、IVは10以上35以下の固体脂を得、液状油は、IV 50~60の液状油を得て行う。
パーム核分別油は45重量%、パーム分別油は55重量%で行った。
具体的な配合組成は、表1の通りである。
【0059】
(2)エステル化反応
エステル化反応方法は、十分に脱気させた配合油脂に、反応触媒であるナトリウムメトキシドを1~3%で添加した後、真空減圧後に100~120℃で30分反応させた。
反応が終わると、水洗で触媒を除去後に油脂精製過程を経て反応物を得た。
【0060】
【表1】
【0061】
実験例1.脂肪酸/トリアシルグリセリド分析
実施例1で得られた反応物の特性を調べるために、GCを用いて脂肪酸とトリアシルグリセリド分析を行った。
実験結果は、表2の通りである。
【0062】
実験例2.固体脂含量分析
実施例1で得られた反応物の特性を調べるために、NMRを用いて各反応物の固体脂含量(Solid Fat Content,S.F.C,%)を分析した。
実験結果は、表2の通りである
【0063】
【表2】
【0064】
エステル反応をした後脂肪酸組成を比較し、また、固体脂含量を比較した。
固体脂含量は、各温度での油脂がどれだけの固体脂を有しているかを意味する。5~20℃までは高い固体脂含量を有し、20~35℃では固体脂含量が急激に下がることを確認し、35~40℃では0になることが確認できる。これは、ココアバター代替脂のパターンから確認できる。
【0065】
実験例3.固化度分析
実施例1で得られた反応物の最大応力を調べるために、80℃、10分静置後に、25℃、20時間後にレオメーター(Rheometer)を測定した。
最大応力は、それぞれの反応物をそれぞれのビーカーに同一含量を入れ、25℃、20時間放置後に測定した。最大応力は、レオメーターのプローブ(probe)が、固まった反応物の表面から下方に5秒間押した時の必要な最大の力を意味する。
実験結果は、表3の通りである。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例2.チョコレート製造
反応物を用いてチョコレートを製造した。表4の含量のように、原料混合、粉末化、コンチングなどを経て、テンパリングをせずに、T1~T8の油脂を用いてノーテンパー型チョコレートを製造した。
【0068】
【表4】
【0069】
実験例4.口溶性評価
実施例2で製造されたチョコレートの口溶性を確認するために、専門パネル10人が総合的に評価した。評価基準は下記のようにし、評価結果は表5の通りであった。
1:良好
2:口中で引きずられる食感がある
3:口中で残余食感がある
【0070】
実験例5.衝撃テスト
実施例2で製造されたチョコレートの保形性を確認するために、40℃で放置後に1m垂直落下させて評価した。評価基準は下記のようにし、評価結果は表5の通りであった。
1:保形性維持
2:やや崩れている
3:完全に崩れている
【0071】
実験例6.油脂溶出テスト
実施例2で製造されたチョコレートの保形性を確認するために、40℃で放置後に油脂溶出評価をした。評価基準は下記のようにし、評価結果は表5の通りであった。
1:とても少ない
2:少ない
3:普通
4:多い
5:とても多い
【0072】
【表5】
【0073】
本発明により、口溶性の良いエステル交換油脂を、マーガリン、チョコレートなどの食品に用いることができる。
【0074】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることが理解できよう。したがって、以上に述べた実施例はいかなる面においても例示的なもので、限定的でないものと理解すべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C