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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069171
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】歯科充填物及び歯髄検査用ライト
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191084
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022179743
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519055939
【氏名又は名称】歯っぴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】小山 昭則
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052LL09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科充填物及び歯髄検査用ライトを提供する。
【解決手段】筒状の本体部100と、本体部の一方側の開口端部110近傍に収納される光源部200と、本体部に収納されると共に電気配線900により光源部と接続される内部基板300と、内部基板と電気配線を介して接続されるスイッチ部400と、本体部の光源部を収納した側の開口端部に嵌入される凸レンズと、凸レンズを保護するために本体部の開口端部に連設されるレンズ蓋体600と、本体部とレンズ蓋体との間に介在する調節用リング700と、本体部のもう一方の開口端部に連設される電池蓋体800と、から構成され、光源部は、歯科充填物の識別を行う充填物用光源と、歯髄の有無を確認する歯髄用光源と、充填物用光源と歯髄用光源とを並べて固定させる土台部230と、からなり、さらに、充填物用光源には、化学的気相成長法により作られる積層フィルタを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科充填物の識別及び歯髄の有無を確認できる検査用ライトであって、
筒状の本体部と、
前記本体部の一方側の開口端部近傍に収納される光源部と、
前記本体部に収納されると共に電気配線により前記光源部と接続される内部基板と、
前記内部基板と電気配線を介して接続されるスイッチ部と、
前記本体部の前記光源部を収納した側の開口端部に嵌入される凸レンズと、
前記凸レンズを保護するために前記本体部の開口端部に連設されるレンズ蓋体と、
前記本体部と前記レンズ蓋体との間に介在する調節用リングと、
前記本体部のもう一方の開口端部に連設される電池蓋体と、
から構成し、
前記光源部は、
歯科充填物の識別を行う充填物用光源と、
歯髄の有無を確認する歯髄用光源と、
前記充填物用光源と前記歯髄用光源とを並べて固定させる土台部と、
からなり、
さらに、前記充填物用光源には、
化学的気相成長法により作られる積層フィルタを備えていることを特徴とする歯科充填物及び歯髄検査用ライト。
【請求項2】
前記調節用リングは、
筒状且つ内周面に螺合用溝を備えた調節部と、
前記調節部に延設される操作部と、
から構成し、
前記調節部に設けられた螺合用溝は、
前記土台部の外周面に設けられる螺合用溝と螺合し、
前記凸レンズと前記土台部との相対的位置を変更することができることを特徴とする請求項1に記載の歯科充填物及び歯髄検査用ライト。
【請求項3】
前記本体部の開口端部と前記電池蓋体とで挟持される取付治具を備え、
前記取付治具は、
円環板状のライト受部と、
前記ライト受部と連設した取付固定部と、
から構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の歯科充填物及び歯髄検査用ライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被せ物や詰め物といった歯科充填物を肉眼で識別すると共に、歯髄(歯の神経)の有無を確認できる歯科充填物及び歯髄検査用ライトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被せ物や詰め物といった歯科治療箇所に用いられる歯科充填物(レジン及びセラミック製)は、近年充填箇所がより自然に見えるように精度が上がっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている歯科用組成物は、天然歯に光が当たると生じる特有の光散乱現象(オパール効果)を再現した優れた審美性を有したものが開示されている。具体的には、光散乱性の高いレジンを含んだ硬化体を生成し、歯科用組成物(歯科充填物)として使用するものである。
【0004】
この特許文献1に記載されているような歯科充填物の審美性の高さは、治療を受ける患者にとって治療箇所が判別しにくいという利点となるものの、熟練の歯科医師でさえも肉眼で判別が難しい点がかえって仇となる場合がある。
【0005】
具体的には、歯科治療によって被せ物や詰め物を行った箇所は、菌の温床となりやすく、当該箇所から病変が広がることが多い。そのため、歯科診療時に歯科充填物の位置を把握することは治療方針を決めるうえで大切な要因であるためである。
【0006】
そこで、口腔内にある歯科充填物の箇所を確実に認識する方法として、X線写真を撮る方法がある。歯科充填物は、X線写真において健常な歯と異なって映ることからこの方法が最も見落としのない方法であると云える。
【0007】
しかしながら、この場合には、大掛かりなX線写真の装置を必要とするため、患者が歯科医院に来ることが前提であり、歯科医師が患者のいる場所へ往診する際や外部で行う検診の際にはこの方法を行うことが出来ない。具体的には、介護施設や自宅療養中の患者の元へ往診を行う場合や、学校へ赴きDMFT検査を行う場合等がこれに該当する。
【0008】
特に、病変をある程度把握している往診と異なり、学校へ通う生徒を対象としたDMFT検査では、肉眼で確認しやすいD(decayed、むし歯)やM(missing、抜去された)と比較して肉眼での識別が困難な歯科充填物が見落とされる虞がある。すなわち、DMFTのうちF(filled、充填された)の見落としにより、DMFT指数(1人あたりの虫歯を経験した歯の数)に信頼度が下がってしまう。
【0009】
したがって、患者の歯の状態を把握して治療を行っていくためにDMFT指数を活用していくという目的が果たせなくなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2022-157888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、大掛かりな装置を用いずに、歯科医師の熟練度にかかわらず詰め物や被せ物を見逃すことなく肉眼で確認できる装置が望まれていた。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、特定波長の光を当てることで起こる蛍光反応を利用し、詰め物や被せ物に使用されるレジンやセラミックを肉眼で識別可能に可視化することができ、さらに、歯科治療により歯髄(歯の神経)が抜かれているか否かを確認する歯科充填物及び歯髄検査用ライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、筒状の本体部と、本体部の一方側の開口端部近傍に収納される光源部と、本体部に収納されると共に電気配線により光源部と接続される内部基板と、内部基板と電気配線を介して接続されるスイッチ部と、本体部の光源部を収納した側の開口端部に嵌入される凸レンズと、凸レンズを保護するために本体部の開口端部に連設されるレンズ蓋体と、本体部とレンズ蓋体との間に介在する調節用リングと、本体部のもう一方の開口端部に連設される電池蓋体と、から構成され、光源部は、歯科充填物の識別を行う充填物用光源と、歯髄の有無を確認する歯髄用光源と、充填物用光源と歯髄用光源とを並べて固定させる土台部と、からなり、さらに、充填物用光源には、化学的気相成長法により作られる積層フィルタを備えていることに特徴を有する。
【0014】
また、調節用リングは、筒状且つ内周面に螺合用溝を備えた調節部と、調節部に延設される操作部と、から構成され、調節部に設けられた螺合用溝は、土台部の外周面に設けられる螺合用溝と螺合し、凸レンズと土台部との相対的位置を変更することができることにも特徴を有する。
【0015】
また、本体部の開口端部と電池蓋体とで挟持される取付治具を備え、取付治具は、円環板状のライト受部と、ライト受部と連設した取付固定部と、から構成したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の波長域の光を照射し患者の口腔内を照らすことで、詰め物や被せ物に使用されるレジンやセラミックに蛍光反応を生起させ、歯科用充填物を肉眼で識別することができる。しかも、歯科充填物を肉眼で識別できることにより、DMFT検査での歯科充填物の見落としを可及的に抑制し、DMFT検査の信頼度向上に寄与することができる。
【0017】
また、化学的気相成長法により作られた積層フィルタを二つの光源(充填物用光源と歯髄用光源)のうち充填用光源にのみ備えることで、充填用光源からは特定の波長域の光を照射でき、歯髄用光源からは波長を限定しない白色光を照射可能とすることができる。すなわち、一つのライトで蛍光反応による歯科充填物の肉眼による識別を可能とすると共に、白色光による歯髄の有無を診る(透照診)を行うことができる。
【0018】
また、調節リングを備えることにより、凸レンズと土台部との相対的位置を変更することができることで、照射する光の照射面積を調節可能となる。したがって、口腔内全体を照らす場合と患部を局所的に照らす場合とで使い分けることができる。さらに、歯髄用光源の照射面積を小さくすることで、透照診に適した強い白色光を照射することができる。
【0019】
また、歯科充填物及び歯髄検査用ライトの本体部と電池蓋体とで挟持した取付治具により歯科医師が着用する検査用メガネや鏡等に歯科充填物及び歯髄検査用ライトを取付け可能とすることで検査時に歯科充填物及び歯髄検査用ライトを手に持つことなく作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る歯科充填物及び歯髄検査用ライトの構成を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係るレンズ蓋体、調節用リング、本体部及び電池蓋体の詳細を説明する模式的断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る光源部の構成を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る歯科充填物及び歯髄検査用ライトに取付治具を装着した状態を示す模式的斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る取付治具を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の要旨は、筒状の本体部と、本体部の一方側の開口端部近傍に収納される光源部と、本体部に収納されると共に電気配線により光源部と接続される内部基板と、内部基板と電気配線を介して接続されるスイッチ部と、本体部の光源部を収納した側の開口端部に嵌入される凸レンズと、凸レンズを保護するために本体部の開口端部に連設されるレンズ蓋体と、本体部とレンズ蓋体との間に介在する調節用リングと、本体部のもう一方の開口端部に連設される電池蓋体と、から構成され、光源部は、歯科充填物の識別を行う充填物用光源と、歯髄の有無を確認する歯髄用光源と、充填物用光源と歯髄用光源とを並べて固定させる土台部と、からなり、さらに、充填物用光源には、化学的気相成長法により作られる積層フィルタを備えていることにある。
【0022】
また、調節用リングは、筒状且つ内周面に螺合用溝を備えた調節部と、調節部に延設される操作部と、から構成され、調節部に設けられた螺合用溝は、土台部の外周面に設けられる螺合用溝と螺合し、凸レンズと土台部との相対的位置を変更することができることにも特徴を有する。
【0023】
また、本体部の開口端部と電池蓋体とで挟持される取付治具を備え、取付治具は、円環板状のライト受部と、ライト受部と連設した取付固定部と、から構成したことにも特徴を有する。
【0024】
[1. 歯科充填物及び歯髄検査用ライトの構成について]
以下、本発明の一実施形態に係る歯科充填物及び歯髄検査用ライトMの構成について図面に基づいて説明していく。図1は、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMの構成を示す説明図であり、(a)は正面図を(b)は分解図をそれぞれ示している。図2は、各部の構成を示す模式的断面図であり、(a)はレンズ蓋体を(b)は調節用リングを(c)は本体部を(d)は電池蓋体をそれぞれ示している。図3は、光源部の構成を示す模式的説明図であり、(a)は全体の平面図を(b)は充填物用光源の正面図を(c)は歯髄用光源の正面図をそれぞれ示している。図4は、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMに取付治具1000を装着した状態を示す模式的斜視図である。図5は、取付治具の構成を示す模式的斜視図である。
【0025】
本実施形態に係る歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、図1に示すように、主に筒状の本体部100と、本体部100に収納される光源部200と、本体部100に収納され電気配線900により光源部200と接続される内部基板300と、本体部100に収納され内部基板300と電気配線900を介して接続されるスイッチ部400と、本体部100の開口端部110に嵌入される凸レンズ500と、本体部100の開口端部110に連設されるレンズ蓋体600と、本体部100とレンズ蓋体600との間に介在する調節用リング700と、本体部100の内部且つもう一方側の開口端部110に連設される電池蓋体800と、から構成されている。
【0026】
本体部100は、図1及び図2(c)に示すように、全体を略円筒状とし、その内部には仕切り壁120を備え、内部基板300や光源部200等の各機能部を収納する機能部収納空間S1とDMFT検査及び歯科診療用ライトMの電気供給を行う電池Pを収納する電池収納空間S2とに分かれている。この本体部100は、後述する電池蓋体800に設けられた電池ばねsからの電気を伝えるため電気を通す金属により形成される。なお、本体部100の表面部分には、使用者が触れても感電しないように電気絶縁用のコーティングが施されている。
【0027】
本体部100の開口端部110付近には、それぞれレンズ蓋体600と電池蓋体800とを連設するための螺合用溝dが設けられている。なお、この開口端部110付近に設けられた螺合用溝dのうち、レンズ蓋体600と連設される螺合用溝dと後述するレンズ蓋体600側に設けられた螺合用溝dとを合わせて第一連設部Aと呼び、電池蓋体800と連設される螺合用溝dと後述する電池蓋体800側に設けられた螺合用溝dとを合わせて第二連設部Bと呼ぶ。さらに、機能部収納空間S1側の開口端部110付近には、光源部200が摺動可能に挿入される光源取付け切欠部130が設けられている。また、第二連設部Bとなる螺合用溝dは、電気が通ることができるように一部のコーティング処理を行わないようにしている。
【0028】
本体部100の機能部収納空間S1側の周面には、図1(b)に示すように、後述するスイッチ部400の一部を露出するためのスイッチ開口部140を穿設している。また、本体部100の機能部収納空間S1側の開口端部110付近には、円形状の窪み150を有しており、この円形状の窪み150には、巻きばねwが収納され、巻きばねwの上に巻きばねwの径よりやや大きな径のボール体bが載置される。
【0029】
光源部200は、図1及び図3(a)に示すように、本体部100の機能部収納空間S1内に収納され、被せ物や詰め物といった歯科充填物の識別を行う充填物用光源210と、歯髄(歯の神経)の有無を確認する歯髄用光源220と、充填物用光源210及び歯髄用光源220を固定する土台部230と、からなる。
【0030】
充填物用光源210は、図3(b)に示すように、光源となる発光ダイオード(LED)211と該LED211の表面に薄膜加工された積層フィルタ212とよりなる。
【0031】
積層フィルタ212は、LED211から照射される光を特定の波長域に限定をする、所謂バンドパスフィルタである。積層フィルタ212は、原料となる元素を基板表面で化学反応させて成膜する化学的気相成長(CVD)法を用いて形成される。特に発熱の少ないプラズマCVD法により形成される。
【0032】
積層フィルタ212は、CVD法により形成されることで、物理的な光学フィルタよりも小型かつ薄膜とすることができる。すなわち、積層数を物理的な光学フィルタよりも多く形成することが歯科充填物及び歯髄検査用ライトM全体の設計を左右しない利点がある。
【0033】
また、本実施形態に係る積層フィルタ212は、20層のフィルタからなり、光源から照射される光の波長域をより狭い範囲で限定することができる。具体的に本実施形態に係る歯科充填物及び歯髄検査用ライトMでは、充填物用光源210からの照射光の波長を、405nmを目標値とし前後5nm以内の波長域の光のみを照射することができる。
【0034】
歯髄用光源220は、図3(c)に示すように、青色LED221に黄色蛍光体222により混色された、所謂シングルチップ方式の白色LEDである。この、歯髄用光源220は、充填物用光源210と異なり、バンドパスフィルタ等の光学フィルタを介さず光を照射する。
【0035】
この歯髄用光源220は、白色光を照射できるLEDであれば、青色LED221と黄色蛍光体222から構成されたものである必要はなく、青色LEDと赤及び緑色蛍光体から構成されるものや赤色、緑色及び青色の三色のLEDを組合せて構成されたものであってもよい。
【0036】
土台部230は、本体部100の内径よりも小さな円形又は方形状の板材からなる光源固定部231と光源固定部231の周面から延設される本体挿入部232とからなる。
【0037】
光源固定部231は、図3(a)充填物用光源210及び歯髄用光源220が横並びに固定し、それぞれの光源210、220が内部基板300と電気配線900により接続可能となるように電気配線900を挿通する挿通孔を固定箇所の下部に備えている。
【0038】
本体挿入部232は、図1(b)に示すように、本体部100の光源取付け切欠部130に対応しており、光源取付け切欠部130に摺動可能に挿入される。また、本体挿入部232の先端部には、後述する調節用リング700に設けられた螺合用溝dに対応する螺合用溝dが設けられている。なお、この本体挿入部232に設けられた螺合用溝dと調節用リング700に設けられた螺合用溝dとを合わせて螺合調節部Cと呼ぶ。
【0039】
内部基板300は、本体部100の機能部収納空間S1内に収納され、上述した光源部200及び後述する仕切り壁120に設けられた電池ばねsと後述するスイッチ部400とにそれぞれ電気配線900を介して接続される。この内部基板300により各光源210、220への電気供給や照射光の切り替え等の制御を行う。
【0040】
スイッチ部400は、内部基板300と電気配線900により接続されると共に、本体部100のスイッチ開口部140より一部を露出している。使用者は、本体部100から露出しているスイッチ部400の一部を押下することで、DMFT検査及び歯科診療用ライトMの電源の入り切りと照射する光の切り替え(充填物用光源210又は歯髄用光源220の電気供給の切り替え)を行う。
【0041】
凸レンズ500は、図1(b)に示すように、片面に凸部を有したドーム型のレンズであり、本体部100の機能部収納空間S1側の開口端部110に凸部を外方へ向けて嵌入される。
【0042】
レンズ蓋体600は、図1及び図2(a)に示すように、後述する調節用リング700の調節部720よりも径の大きな筒状とし、本体部100の凸レンズ600が嵌入されている側の開口端部110に連設される。レンズ蓋体600の内周面且つ一方の開口端部610付近には、本体部100に嵌入された凸レンズ600の脱落防止のためのレンズ押さえ部620を備えている。
【0043】
また、レンズ押さえ部620の後方(開口端部610より筒状のレンズ蓋体600の内部側)に螺合用溝dを形成しており、該螺合用溝dが本体部100の機能部収納空間S1側の開口端部110付近に設けられた螺合用溝dに対応する(第一連設部Aに該当)。
【0044】
調節用リング700は、図1及び図2(b)に示すように、本体部100の外径よりやや大きな内径を有した筒状の調節部720と、調節部720に延設し筒外径を外周方向へ膨出させた操作部730とからなる。調節部720は、筒の内周面に本体挿入部232の螺合用溝dと対応する螺合用溝dを備えており、本体挿入部232の螺合用溝dと合わせて螺合調節部Cを形成している。操作部730の内周面には、調節用リング700を開口端部710側から見て奥行方向に断面山形状に内径全面に連続して設けられた間欠溝部731を備えている。
【0045】
調節用リング700は、本体部100の機能部収納空間S1側の開口端部110側より本体部100の外周面を覆うように挿入され、さらに調節部720の外径を覆うようにレンズ蓋体600が挿入し本体部100と螺合連設する。
【0046】
このとき、本体部100の巻きばねwの上に載置されたボール体bは、本体部100を覆うように挿入された操作部730の内周面に設けられた間欠溝部731の位置と対応するようになっている。したがって、ボール体bを上方から押下する間欠溝部731とボール体bが押下されることで伸縮した巻きばねwとに挟まれるように応力が加わることとなる。使用者は、露出状態の操作部730を回すことで、照射する光の照射面積(照度)を調節することができる。
【0047】
具体的には、調節用リング700の調節部720と光源部200の土台部230とは螺合調節部Cにより螺合しており、使用者が操作部730を回転させることで土台部230が螺合用溝dに沿って移動する。すなわち、土台部230に固定された光源210、220と凸レンズ500との距離を近づけたり離したりすることができ、それによって照射する光の照射面積(照度)を調節することができる。
【0048】
また、操作部730の内周面に設けられた間欠溝部731と本体部100の巻きばねw及びボール体bとは、調節用リング700を回転させた際に、その回転を間欠動作とすることができる。
【0049】
具体的には、ボール体bは、巻きばねwの復元力により間欠溝部731の連続する山形状に対して押さえつけるように構成されている。そのため、ボール体bが間欠溝部731の山一つを登って下るまでを一動作とすることができる。この間欠溝部731、ボール体b及び巻きばねwは、調節用リング700の回転を間欠動作とすることで、照射面積(照度)の変更を細かく行うことができると共に、意図しない接触による調節用リング700の回転を防止することができる。
【0050】
電池収納空間S2は、図2(c)に示すように、本体部100の仕切り壁120により区画分けされた内部空間のうち機能部収納空間S1と別のもう一方の空間であり、電力を供給するための電池Pを収納することができる。また、電池収納空間S2側の仕切り壁120には、内部基板300と接続され電極としても機能する電池ばねsを備えている。
【0051】
電池蓋体800は、図1及び図2(d)に示すように、本体部100の外径よりもやや大きな内径を有した筒状で端部の一方側を閉塞した形状としている。電池蓋体800の開口端部810付近の内周面には、螺合用溝dを備えており、該螺合用溝dに対応する本体部100の電池収納空間S2側の開口端部110付近に設けられた螺合用溝dと合わせて第二連設部Bとしている。
【0052】
また、閉塞された端部の内側面には、電極としても機能する電池ばねsを備えている。さらに、電池蓋体800の内側面(螺合用溝dを含む)は、電気絶縁用のコーティングを施さないことで、電池に接触した電池ばねsを電極とし、電池蓋体800及び本体部100を経由する内部基板300までの電気の経路としている。
【0053】
また、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、図4に示すように、取付治具1000を備えることで、歯科医師が診療の際に着用する診察用メガネ等の他の物品への取付けを可能とすることができる。
【0054】
取付治具1000は、図5に示すように、円環板状のライト受部1010と、自在継手からなる連設部1020と、連設部1020を介してライト受部1010に接続する取付固定部1030とからなる。
【0055】
取付治具1000は、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMの第二連設部Bに取付けることができる。具体的には、ライト受部1010の中心にある円形開口1011を本体部100の開口端部110(電池蓋体800と連設する側)に挿入する。ライト受部1010を開口端部110に挿入した状態で電池蓋体800を開口端部110に螺合連設する。すなわち、取付治具1000は、図4に示すように、本体部100と電池蓋体800とでライト受部1010を挟持することにより歯科充填物及び歯髄検査用ライトMへの取付けを可能としている。
【0056】
取付固定部1030は、図5に示すように、方形状の土台部1031と土台部1031の下部に設けた脚部1032からなる。取付固定部1030の脚部1032は、土台部1031に固着した基部から四本の脚体を下方に向けて延出している。脚体は、それぞれ樹脂により被覆している。それぞれの脚体は、先端が基部の中心に向かうように傾斜している。
【0057】
取付治具1000は、取付固定部1030により、例えば歯科医師が診察時に着用する診察用メガネや鏡等に取付けることができる。具体的には、取付固定部1030の脚部1032に形成した四本の脚体によりメガネのフレームや鏡の枠部を挟み込むことで取付けを可能としている。この取付固定部1030は、脚部1032に形成した脚体で挟み込むことで取付け可能な構成としているが、この構成に限らずメガネ等の他の物品への取付けが可能な構成であればどのような構成であってもよい。そのため、取付固定部1030は、ばねの張力を用いたクリップのような形状であってもよい。
【0058】
連設部1020は、ライト受部1010と取付固定部1030とを連設するための物である。連設部1020は、ライト受部1010と取付固定部1030とを連設可能にとするものであればどのようなものであってもよいが、本実施形態ではライト受部1010の下部と取付固定部1030の上部とに設けたボール体とボール体を挿入可能とした筒体とからなる、所謂、自在継手としている。連設部1020は、自在継手としていることで使用時に歯科充填物及び歯髄検査用ライトMの照射向きを容易に変更することができ、作業効率の向上に寄与することができる。
【0059】
[2.歯科充填物及び歯髄検査用ライトの使用方法及び効果]
次に、歯科充填物及び歯髄検査用ライトの使用方法及び効果について説明する。
【0060】
従来DMFT検査や歯科往診時には、歯科医師が照明装置で患者の口腔内を照らしながら肉眼で被せ物や詰め物といった歯科充填物の箇所を確認していた。しかし、歯科充填物は、近年審美性が高くなり(実際の歯と遜色ない見た目となってきている)熟練の歯科医師であっても見落とす虞があった。
【0061】
そのため、DMFT指数(一人あたりの虫歯を経験した歯の数)を調べる検査において、F識別精度が落ちる虞があり、信頼度に欠けるのではと疑問視され始めている。また、一般診療時には、詰め物や被せ物が菌の温床となりやすいことから把握することが大切であるにもかかわらず肉眼で見落とし、放射線画像等を使用して初めてすべてを把握する場合もあった。
【0062】
そこで、小中学校へ歯科医師が出張して行うDMFT検査時や介護施設等の往診時等において肉眼での診察を行う際に、本発明の歯科充填物及び歯髄検査用ライトMで看者の口腔内を照らすことで歯科充填物を可視化し肉眼で識別することができる。
【0063】
具体的に充填物用光源210は、上述した積層フィルタ212により、照射する光の波長を405nm(前後5nm以下、以下単に405nmと記載する)に限定するようにしている。本発明のDMFT検査及び歯科診察用ライトMの照射光405nmに調節された青色光は、歯科用充填物の素材となるレジンやセラミックに対して強い蛍光反応を生起させることができる。
【0064】
そのため、歯科医師は、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMの充填物用光源210からの照射光で患者の口腔内を照らす診察を行うことで、肉眼で識別が困難であった詰め物や被せ物を肉眼で視認することができる。しかもこれは、歯科医師の熟練度に関係なく、誰にでも識別できるようになるため、DMFT指数も、検査する歯科医師による違いが現れずより信頼度の高いデータを得ることが可能となる。
【0065】
また、本発明の歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、調節用リング700により照射光の照射面積を調節することができる。歯科医師は、広く患者の口腔内を見たいときには照射面積を広くし、患部を詳しく検査したいときには照射面積を小さくすることで利点が生まれる。
【0066】
照射面積を広くしたときの利点とは、広い面(口腔内全体)を確認でき、患者の口腔内の環境を確認することに効果を発揮する。しかし、その反面、照射面積が広くなればその分充填物用光源210からの光が拡散し、自然光(日の光や蛍光灯の光)と混ざることで特定波長の光の照度が低くなる。すなわち、蛍光反応がやや確認しづらくなる。
【0067】
それに対して、照射面積を狭くした場合には、狭い箇所しか照らすことが出来ない代わりに、波長405nmの光に自然光がほとんど混ざることが無いため、特定波長の光の照度が高くなり、その分患部が生起する蛍光反応が強く現れることとなる。すなわち、診断の確定を得られやすくなる効果がある。
【0068】
そのため、この調節用リング700の使用方法の一例としては、まず広い照射面積で患者の口腔内全体を観察し、蛍光反応が微弱であったり識別が一目でわかりにくかったりした箇所を、続けて照射面積を狭くして強い蛍光反応でもって確実な識別を行うことように用いられるとよい。
【0069】
また、光源部200に設けられた歯髄用光源220は、透照診に用いることができ、歯髄(歯の神経)の有無を確認することができる。透照診とは、歯に照度の高い白色光を照射し、その光の透過度や屈折状態から歯髄の有無や歯のう蝕、亀裂、破折等の病変の検出を行うものである。
【0070】
歯髄用光源220は、照射面積の広い白色光により口腔内を照らし、口腔内の検診を行うことができる。また、発見した病変のある個所には、調節用リング700により照射面積を小さくして照度を高めて患部にピンポイントに照射することにより、透照診を行い該当箇所の状態を確認することができる。
【0071】
この効果は、歯髄用光源220が白色光を照射できることと、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMが調節リング700を有し、照射光の照度を調節できる機能が備わっていることにより実現が可能となっている。ただし、透照診を行う際には、従来用いられてきた漏斗状のスペキュラと呼ばれる器具を合わせて使用することも考えられる。
【0072】
したがって、本発明の歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、二つの光源(充填物用光源210と歯髄用光源220)を備え、充填物用光源210にのみ積層フィルタ212を設けることにより、405nmの波長域の照射光と白色光とを切り換え可能とすることができる。さらに、充填物用光源210に設けられる積層フィルタ212をCVD法により形成することで、小型かつ薄型でありながら、20層もの薄膜を形成させ405nm前後5nm以下という精度の高い照射光の波長限定を行うことができる。
【0073】
また、本発明の歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、調節用リング700を備えることにより、照射光の照度を調節し、精度の高い歯科用充填物の検出や透照診を一台の装置で行うことができる。
【0074】
また、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、歯科充填物の素材であるレジンに対して蛍光反応を生起させ目視を容易とすることができる。そのため、歯科充填物のみならずレジンにより下に固着させるアライメント矯正(マウスピース矯正)に使用されるアタッチメントの目視も容易にする効果がある。
【0075】
アライメント矯正は、歯列矯正を段階ごとに分け各段階に合わせて製造した矯正用マウスピースを看者に装着することで行う矯正方法である。歯科医師は、マウスピースによる矯正力を正しく患者の歯に伝えるために、レジンを山型に盛ったアタッチメントと呼ばれる部材を患者の歯の表面に固着させる。アタッチメントは、歯の矯正力に大きく影響を及ぼすため、歯列矯正の段階ごとに微調整が必要なる。すなわち、アタッチメントの位置を変えたり微妙な形状の変更を行ったりする必要がある。
【0076】
しかしながら、歯科用レジンは、上述したように、日々審美性が向上しており肉眼での確認が困難である。特にアタッチメントの調整は、既に患者の歯に固着しているアタッチメントを見つけ、そのうえで角度や位置、形状を調整するため熟練の歯科医師であっても非常に神経をすり減らすような作業となる。
【0077】
そこで、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、アタッチメントのレジンに反応し患者の歯と肉眼による区別をつけることでアタッチメントを確実に見つけ、微調整を行う際にも歯との混同を防ぎアタッチメントの調整作業を容易にすることができる。
【0078】
また、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、インプラント治療に使用する接着剤にも蛍光反応を生起させることができる。具体的には、インプラント治療は、人工歯根を患者の顎の骨に埋設し、その人工歯根にアバットメントと呼ばれる連結部分を取付ける。最後にアバットメントに人工歯を被せる方法である。
【0079】
このときアバットメントと人口歯との接着にチタンボンド接着剤やセラミックボンド接着剤が主に用いられる。チタンボンド接着剤は、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMで照射した際に青色の蛍光反応を示す。また、セラミックボンド接着剤は、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMで照射した際に緑色の蛍光反応を示す。
【0080】
そのため、人工歯の接着時にはみ出した余剰接着剤を拭い取る際に歯科充填物及び歯髄検査用ライトMで照射しながら行うことにより、拭き残しが行いようにすることができる。
【0081】
上述したように、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、レジンやセラミックといった歯科充填物やアライメント矯正のアタッチメントやインプラント治療に使用する接着剤を蛍光反応により肉眼で確認でき、歯科治療や診察に大きな補助効果を奏することができる。
【0082】
また、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、白色の光も照射可能としているため、通常診察でライトを当てることで行っていた歯髄検査も同時に行うことができる。
【0083】
歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、以上の効果をコンパクトな照明器具一つで行うことができ、歯科医院内部での使用のみならず、医院外での検査等にも容易に持ち運び使用することができる。さらに、歯科医師のみではなく自身の口内のメンテナンスとして一般的な使用も行い易くすることができる。
【0084】
また、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMは、取付治具1000を備えることで診察用メガネに装着することができ、歯科充填物及び歯髄検査用ライトMを手に持つ必要がなくなるため、より歯科医師の治療や診察時で作業を容易とする効果を奏することができる。さらに、一般的なメンテナンスでの使用に際しても、手鏡等に取付けが行えるため、使用が容易となる効果がある。
【0085】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、本発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
M 歯科充填物及び歯髄検査用ライト
100 本体部
110 開口端部(本体部)
120 仕切り壁
130 切欠部
140 スイッチ開口部
150 窪み
w 巻きばね
b ボール体
200 光源部
210 充填物用光源
211 発光ダイオード(LED)
212 積層フィルタ
220 歯髄用光源
221 青色LED
222 黄色蛍光体
230 土台部
231 光源固定部
232 本体挿入部
300 内部基板
400 スイッチ部
500 凸レンズ
600 レンズ蓋体
610 開口端部(レンズ蓋体)
620 レンズ押さえ部
700 調節リング
710 開口端部(調節リング)
720 調節部
730 操作部
731 間欠溝部
800 電池蓋体
810 開口端部(電池蓋体)
900 電気配線
1000 取付治具
1010 ライト受部
1011 円形開口
1020 連設部
1030 取付固定部
1031 土台部
1032 脚部
S1 機能部収納空間
S2 電池収納空間
s 電池ばね
P 電池
d 螺合用溝
A 第一連設部
B 第二連設部
C 螺合調節部
図1
図2
図3
図4
図5