IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツドの特許一覧

特開2024-69172トマトハイブリッドSVTG6217およびその親
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069172
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】トマトハイブリッドSVTG6217およびその親
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/82 20180101AFI20240514BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20240514BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20240514BHJP
   A01H 4/00 20060101ALI20240514BHJP
   A01H 1/02 20060101ALI20240514BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240514BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240514BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20240514BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240514BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALN20240514BHJP
【FI】
A01H6/82
A01H5/10
C12N5/04
A01H4/00
A01H1/02 Z
A01H1/00 A
A01H5/00 A
C12Q1/6869 Z
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
C12Q1/6895 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191164
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】63/423,900
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/490,470
(32)【優先日】2023-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500195035
【氏名又は名称】セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツド
【氏名又は名称原語表記】Seminis Vegetable Seeds,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】キム,イルヨン
【テーマコード(参考)】
2B030
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB02
2B030CA01
2B030CA04
2B030CA05
2B030CA07
2B030CB02
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA12
4B029FA15
4B063QA13
4B065AA88X
4B065AA89X
4B065CA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の種子および植物を提供する。
【解決手段】本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の植物、種子、植物部分および組織培養物、ならびにそのような植物をそれ自体または別の植物、例えば別の遺伝子型のトマト植物と交配することによって生産されるトマト植物を生産するための方法に関する。本発明は、そのような交配によって生産される種子および植物にさらに関する。本発明は、導入された有益または望ましい形質を含むトマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の植物、種子、植物部分および組織培養物にさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト系統FIP-9S18-0174の少なくとも第1の染色体セットを含むトマト植物であって、前記系統の種子の試料がNCMA Accession No.202210019のもとで寄託されている、トマト植物。
【請求項2】
請求項1に記載の植物を生産するトマト種子。
【請求項3】
前記植物が、前記トマト系統FIP-9S18-0174の植物である、請求項1に記載の植物。
【請求項4】
前記植物がトマトハイブリッドSVTG6217の植物であり、前記ハイブリッドの種子の試料がNCMA Accession No.202210004のもとで寄託されている、請求項1に記載の植物。
【請求項5】
前記種子が前記トマト系統FIP-9S18-0174の種子である、請求項2に記載の種子。
【請求項6】
前記種子がトマトハイブリッドSVTG6217の種子であり、前記ハイブリッドの種子の試料がNCMA Accession No.202210004のもとで寄託されている、請求項2に記載の種子。
【請求項7】
前記植物の細胞を含む、請求項1に記載の植物の植物部分。
【請求項8】
請求項1に記載の植物の生理学的および形態学的特徴のすべてを有するトマト植物。
【請求項9】
請求項1に記載の植物の再生可能細胞の組織培養物。
【請求項10】
請求項1に記載の植物を栄養繁殖させる方法であって、
(a)請求項1に記載の植物から繁殖させることができる組織を収集する工程;および
(b)前記組織からトマト植物を繁殖させる工程
を含む、方法。
【請求項11】
トマト系統に形質を導入する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物を、F子孫を生産する形質を含むドナー植物と交配することによって、請求項1に記載の植物を反復親として利用する工程;
(b)前記形質を含むF子孫を選抜する工程;
(c)選抜されたF子孫を、工程(a)で反復親として使用されるのと同じ系統の植物と戻し交配して、戻し交配子孫を生産する工程;
(d)前記形質を含み、そうでない場合に工程(a)で使用される反復親系統の形態学的および生理学的特徴を含む戻し交配子孫を選抜する工程;ならびに
(e)工程(c)および(d)を3回以上繰り返して、選抜された第4世代以上の戻し交配子孫を生産する工程
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって生産されるトマト植物。
【請求項13】
追加された形質を含むトマト植物を生産する方法であって、前記形質を付与する導入遺伝子を請求項1に記載の植物に導入する工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって生産されるトマト植物。
【請求項15】
トマト系統FIP-9S18-0174の少なくとも第1の染色体セットを含むトマト植物であって、前記系統の種子の試料がNCMA Accession No.202210019のもとで寄託されており、導入遺伝子をさらに含む、トマト植物。
【請求項16】
前記導入遺伝子が、雄性不稔性、除草剤耐性、昆虫抵抗性、害虫抵抗性、病気抵抗性、改変脂肪酸代謝、環境ストレス耐性、改変炭水化物代謝および改変タンパク質代謝からなる群から選択される形質を付与する、請求項15に記載の植物。
【請求項17】
トマト系統FIP-9S18-0174の少なくとも第1の染色体セットを含むトマト植物であって、前記系統の種子の試料がNCMA Accession No.202210019のもとで寄託されており、単一遺伝子座変換をさらに含む、トマト植物。
【請求項18】
前記単一遺伝子座変換が、雄性不稔性、除草剤耐性、昆虫抵抗性、害虫抵抗性、病気抵抗性、改変脂肪酸代謝、環境ストレス耐性、改変炭水化物代謝および改変タンパク質代謝からなる群から選択される形質を付与する、請求項17に記載の植物。
【請求項19】
トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の少なくとも1つに由来するトマト植物の種子を生産するための方法であって、
(a)請求項1に記載の植物をそれ自体または異なるトマト植物と交配する工程;および
(b)トマトハイブリッドSVTG6217由来またはトマト系統FIP-9S18-0174由来のトマト植物の種子の形成を可能にする工程
を含む、方法。
【請求項20】
トマトハイブリッドSVTG6217由来またはトマト系統FIP-9S18-0174由来のトマト植物の種子を生産する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物をそれ自体または異なるトマト植物と交配することによって生産された種子からトマトハイブリッドSVTG6217由来またはトマト系統FIP-9S18-0174由来のトマト植物を生産する工程;および
(b)トマトハイブリッドSVTG6217由来またはトマト系統FIP-9S18-0174由来のトマト植物を、それ自体または異なるトマト植物と交配して、さらなるトマトハイブリッドSVTG6217由来またはトマト系統FIP-9S18-0174由来のトマト植物の種子を得る工程
を含む、方法。
【請求項21】
少なくとも1世代にわたって、工程(a)による前記トマト植物を生産するための前記工程(b)からの前記種子を使用して、前記生産の工程(a)および前記交配の工程(b)を繰り返して、さらなるトマトハイブリッドSVTG6217由来またはトマト系統FIP-9S18-0174由来のトマト植物の種子を生産する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
トマト果実を生産する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物を得る工程であって、前記植物が成熟するまで栽培されている、工程;および
(b)前記植物からトマト果実を収集する工程
を含む、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の植物もしくはその子孫植物、またはそれらの一部の遺伝子型を決定する方法であって、前記植物またはその一部からの核酸試料中の少なくとも第1の多型を検出する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記検出する工程が、DNA配列決定または遺伝子マーカー分析を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記検出する工程の結果をコンピュータ可読媒体に記憶する工程、または前記検出する工程の結果を送信する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年11月9日に出願された米国仮特許出願第63/423,900号の利益を主張し、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、植物育種の分野に関し、より具体的には、トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
野菜育種の目標は、様々な望ましい形質を単一の品種に組み合わせることである。そのような望ましい形質には、より大きな収量、昆虫または病気に対する抵抗性、環境ストレスに対する耐性、および栄養価を含む、栽培者または消費者によって有益または望ましいと考えられる任意の形質が含まれ得る。
【0004】
育種技術は、植物の受粉方法を利用する。2つの一般的な受粉方法がある。植物からの花粉が同じ植物の花または同じ遺伝子型の別の植物の花に移入される場合、植物は自家受粉する。花粉が異なる遺伝子型の植物の花から来る場合、植物は他家受粉する。
【0005】
自家受粉され、多くの世代にわたって型について選抜された植物は、ほとんどすべての遺伝子座でホモ接合性になり、真の育種子孫の均一な集団、ホモ接合植物を生産する。異なる遺伝子型の2つのそのようなホモ接合植物間の交配は、多くの遺伝子座についてヘテロ接合性であるハイブリッド植物の均一な集団を生産する。逆に、各々がいくつかの遺伝子座でヘテロ接合性である2つの植物の交配は、遺伝的に異なり、均一ではないハイブリッド植物の集団を生産する。結果として生じる不均一性は、成績を予測不可能にする。
【0006】
均一な品種の開発には、ホモ接合性の近交系植物の開発、これらの近交系植物の交配、および交配の評価が必要である。系統育種および循環選抜は、育種集団から近交系植物を開発するために使用されてきた育種方法の例である。それらの育種方法は、2つ以上の植物または様々な他の広範な起源からの遺伝的背景を組み合わせて育種プールとし、そこから、所望の表現型の自殖および選抜によって、育種プールに由来する新しい系統およびハイブリッドが開発される。新しい系統およびハイブリッドを評価して、それらのうちのどれが商業的可能性を有するかを決定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、ハイブリッドSVTG6217または系統FIP-9S18-0174のトマト植物を提供する。そのような植物のすべての生理学的および形態学的特徴を有するトマト植物も提供される。これらのトマト植物の一部、例えば、植物の花粉、胚珠、胚、種子、穂木、台木、果実および細胞も提供される。
【0008】
本発明の別の態様では、追加された遺伝的形質を含むトマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の植物が提供される。遺伝的形質は、例えば、優性または劣性対立遺伝子である遺伝子座を含み得る。本発明の一実施形態では、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の植物は、単一遺伝子座変換を含むものとして定義される。本発明の特定の実施形態では、追加された遺伝子座は、例えば、除草剤耐性、昆虫抵抗性、病気抵抗性、および改変された炭水化物代謝などの1または複数の形質を付与する。さらなる実施形態では、形質は、戻し交配によって系統のゲノムに導入された天然に存在する遺伝子、天然もしくは誘導突然変異、または遺伝子形質転換技術によって植物もしくはその前世代の祖先に導入された導入遺伝子によって付与され得る。形質転換によって導入される場合、遺伝子座は、単一の染色体位置において統合された1または複数の遺伝子を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、単一遺伝子座変換は、植物ゲノムに対する1または複数の部位特異的変化、例えば、限定されないが、1または複数のヌクレオチド改変、欠失または挿入を含む。単一の遺伝子座は、単一の染色体位置において統合された、または突然変異した1または複数の遺伝子またはヌクレオチドを含み得る。一実施形態では、遺伝子工学技術によって単一遺伝子座変換を導入することができ、その方法には、例えば、操作されたヌクレアーゼ(GEEN)を用いたゲノム編集が含まれる。操作されたヌクレアーゼとしては、限定されないが、Casエンドヌクレアーゼ;ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN);ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られる操作されたメガヌクレアーゼ;および当業者に周知のDNAまたはRNAガイドゲノム編集のための他のエンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0010】
本発明はまた、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の種子に関する。本発明の種子は、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の種子の本質的に均一な集団として提供され得る。種子の本質的に均一な集団は、一般に、実質的な数の他の種子を含まない。したがって、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の種子は、全種子の少なくとも約97%、例えば、全種子の少なくとも約98%、約99%またはそれ以上を形成すると定義され得る。種子集団を別々に成長させて、SVTG6217またはFIP-9S18-0174と呼ばれるトマト植物の本質的に均一な集団を提供することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、ハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174のトマト植物の再生可能細胞の組織培養物が提供される。組織培養物は、好ましくは、出発植物の生理学的および形態学的特徴のすべてを発現することができ、出発植物と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生することができるトマト植物を再生することができる。トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の生理学的および形態学的特徴のいくつかの例としては、本明細書中の表に示される形質が挙げられる。そのような組織培養物中の再生可能細胞は、例えば、胚、分裂組織、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌ずい、花、種子および柄に由来し得る。さらに、本発明は、本発明の組織培養物から再生されたトマト植物であって、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174のすべての生理学的および形態学的特徴を有する植物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、トマト種子、植物、その一部、および果実を生産するための方法が提供され、この方法は、一般に、第1の親トマト植物を第2の親トマト植物と交配することを含み、第1または第2の親植物の少なくとも1つは、トマトハイブリッドSVTG6217の植物、トマト系統FIP-9S18-0174の植物またはそれらの子孫植物である。一実施形態では、本発明は、自殖トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫植物を含む、トマト種子、植物およびその一部を生産するための方法を提供する。別の実施形態では、トマト種子、植物またはその一部を生産するための方法は、ハイブリッドトマト種子または植物を調製するための方法としてさらに例示されてもよく、第1のトマト植物が、異なる別個の遺伝子型の第2のトマト植物と交配されて、その親の1つとしてトマト系統FIP-9S18-0174の植物を有するハイブリッドを提供する。これらの方法において、交配または自殖は、種子の生産をもたらす。種子の生産は、種子が収集されるかどうかにかかわらず行われる。
【0013】
本発明の一実施形態では、「交配」の第1の工程は、例えば昆虫ベクターによって媒介されて受粉が起こるように、第1および第2の親トマト植物の種子を、しばしば近接して植えることを含む。特定の実施形態では、第1および第2の親植物が同じ遺伝子型の植物である場合、第1および第2の親植物の交配は、自殖または自家受粉と呼ばれることがある。代替的に、花粉は、手作業で移入することもできる。植物が自家受粉または自殖する場合、植物栽培以外の直接的な人間の介入を必要とせずに受粉が起こり得る。
【0014】
第2の工程は、第1および第2の親トマト植物の種子を、花を有する植物に栽培または成長させることを含み得る。いくつかの実施形態では、第1および第2の親植物が異なる遺伝子型の植物である場合、第3の工程は、例えば、花を除雄すること(すなわち、花粉を死滅または除去すること)によって、植物の自家受粉を防止することを含み得る。
【0015】
ハイブリッド交配のための第4の工程は、第1の親トマト植物と第2の親トマト植物との間の他家受粉を含み得る。さらに別の工程は、親トマト植物の少なくとも1つから種子を収穫することを含む。収穫された種子は、トマト植物またはハイブリッドトマト植物を生産するために成長させることができる。
【0016】
本発明はまた、第1の親トマト植物を第2の親トマト植物と交配することを含む方法によって、または第1の親トマト植物もしくは第2の親トマト植物の自家受粉によって生産されるトマト種子および植物であって、第1または第2の親トマト植物の少なくとも1つが、トマトハイブリッドSVTG6217の植物、トマト系統FIP-9S18-0174の植物、トマト系統FIP-9S16-0361の植物またはそれらの子孫植物である、トマト種子および植物を提供する。本発明の一実施形態では、本方法によって生産されるトマト種子および植物は、本発明による植物を別の異なる植物と交配することによって生産される、第1世代(F)ハイブリッドトマト種子および植物である。本発明は、そのようなFハイブリッドトマト植物の植物部分およびその使用方法をさらに企図する。したがって、本発明の特定の例示的な実施形態は、Fハイブリッドトマト植物およびその種子を提供する。
【0017】
さらにまた別の態様では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174に由来する植物を生産する方法であって、以下の工程:(a)トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174に由来する子孫植物を調製する工程であって、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の植物をそれ自体または第2の植物と交配することを含む、調製する工程と、(b)前記子孫植物をそれ自体または第2の植物と交配して、後続世代の子孫植物の種子を生産する工程とを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本方法は、(c)後続世代の子孫植物の前記種子から後続世代の子孫植物を成長させ、後続世代の子孫植物をそれ自体または第2の植物と交配させる工程;および、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174に由来する植物を生産するために、さらに3~10世代にわたって上記工程を繰り返す工程を、追加で含み得る。特定の実施形態では、植物とそれ自体との交配は、自殖または自家受粉と呼ばれることがある。トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫植物に由来する植物は、近交系統であってもよく、上述の繰り返し交配工程は、近交系統を生産するのに十分な同系交配を含むと定義されてもよい。本方法では、工程(b)および(c)による継続的な交配のために、工程(c)から生じる特定の植物を選抜することが望ましい場合がある。1または複数の望ましい形質を有する植物を選抜することによって、トマト系統FIP-9S18-0174/トマトハイブリッドSVTG6217の望ましい形質のいくつか、ならびに潜在的に他の選抜された形質を有する、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174に由来する植物が得られる。
【0018】
特定の実施形態では、本発明は、(a)トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の植物を得る工程であって、前記植物が成熟するまで栽培されている工程、および(b)前記植物から少なくとも1つのトマトを収集する工程を含む、食品または飼料を製造する方法を提供する。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174の遺伝子相補体が提供される。「遺伝子相補体」という語句は、ヌクレオチド配列の凝集体を指すために使用され、その配列の発現は、この場合、トマト植物、またはその植物の細胞もしくは組織の表現型を定義する。したがって、遺伝子相補体は、細胞、組織または植物の遺伝的構成を表し、ハイブリッド遺伝子相補体は、ハイブリッド細胞、組織または植物の遺伝的構成を表す。したがって、本発明は、本明細書に開示されるトマト植物細胞による遺伝子相補体を有するトマト植物細胞、ならびにそのような細胞を含有する種子および植物を提供する。
【0020】
植物の遺伝子相補体は、遺伝子マーカープロファイルによって、および遺伝子相補体の発現に特徴的な表現型形質、例えば、アイソザイムタイピングプロファイルの発現によって評価され得る。トマトハイブリッドSVTG6217またはトマト系統FIP-9S18-0174は、例えば、単純配列長多型(SSLP)(Williams et al.,Nucleic Acids Res.,1 8:6531-6535,1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性化増幅領域(SCAR)、任意プライムドポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(欧州特許第534858号明細書、その全体は参照により本明細書に具体的に組み込まれる)および一塩基多型(SNP)(Wang et al.,Science,280:1077-1082,1998)などの多くの周知の技術のいずれかによって同定され得ることが理解される。
【0021】
さらにまた別の態様では、本発明は、本発明のトマト植物の半数体遺伝子相補体と第2のトマト植物、好ましくは別の異なるトマト植物の半数体遺伝子相補体との組み合わせによって形成されるトマト植物細胞、組織、植物および種子によって表される、ハイブリッド遺伝子相補体を提供する。別の態様では、本発明は、本発明のハイブリッド遺伝子相補体を含む組織培養物から再生されたトマト植物を提供する。
【0022】
さらにまた別の態様では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫植物、またはそれらの一部の少なくとも第1の染色体セットを含む植物の遺伝子型を決定する方法であって、前記植物またはそれらの一部からの核酸試料中の少なくとも第1の多型を検出する工程を含む、方法を提供する。一実施形態では、検出する工程は、DNA配列決定または遺伝子マーカー分析を含む。さらに別の実施形態では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫植物、またはそれらの一部の少なくとも第1の染色体セットを含む植物の遺伝子型を決定する方法であって、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫の染色体セットにおいて少なくとも第1の多型を検出する工程を含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫植物、またはそれらの一部の少なくとも第1の染色体セットを含む植物の遺伝子型を決定する方法であって、植物またはそれらの一部から得られた少なくとも第1のヌクレオチド配列を、参照植物から得られた少なくとも第1の参照ヌクレオチド配列と比較する工程;および、第1のヌクレオチド配列と第1の参照配列との間の少なくとも1つの多型を検出する工程を含む、方法を提供する。本発明の方法は、特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸試料中の複数の多型を検出する工程を含み得る。本方法は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの多型または複数の多型を検出する工程の結果をコンピュータ可読媒体に記憶すること、または少なくとも1つの多型または複数の多型を検出する工程の結果を送信することをさらに含み得る。本発明は、特定の実施形態では、本発明の方法によって製造されたコンピュータ可読媒体をさらに提供する。
【0023】
本発明の一態様に関して本明細書で説明される任意の実施形態は、特に明記しない限り、本発明の他の態様にも適用される。
【0024】
「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用されている装置または方法の平均の標準偏差を含むことを示すために使用される。特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示されていない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用される。「含む」という単語または特許請求の範囲における他のオープンランゲージと共に使用される場合、「a」および「an」という単語は、特に明記しない限り、「1または複数」を示す。「含む(comprise)」、「有する」および「含む(include)」という用語は、オープンエンドの連結動詞である。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」などのこれらの動詞の1または複数の、任意の形態または時制もオープンエンドである。例えば、1または複数の工程を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1または複数の工程のみを有することに限定されず、他の列挙されていない工程も包含する。同様に、1または複数の形質を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の植物は、それらの1または複数の形質のみを有することに限定されず、他の列挙されていない形質を包含する。
【0025】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および提供される任意の特定の例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174およびトマト系統FIP-9S16-0361の植物、種子および派生物に関する方法および組成物を提供する。
【0027】
19-9 S-FIP-8230としても知られるトマトハイブリッドSVTG6217は、市場性の高い収量をもたらす強く活力のある植物を発達させる大きなピンク色のトマト品種である。ハイブリッドは早期成熟果実を生産し、早期成熟果実は急速に大きくなる。トマトハイブリッドSVTG6217は、広い葉のキャノピーを有し、これは、良好な被覆率を提供し、暑い時期のひび割れ率の減少をもたらす。
【0028】
A.トマトハイブリッドSVTG6217の起源および育種履歴
トマトハイブリッドSVTG6217の親は、トマト系統FIP-9S18-0174およびトマト系統FIP-9S16-0361である。親系統は均一で安定であり、それらから生産されるハイブリッドである。反復繁殖の過程で、ほとんどすべての特徴について商業的に許容される限界内でわずかな割合の変異体が生じ得る。しかしながら、予想される変異体はない。
【0029】
B.トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の生理学的および形態学的特徴
本発明の一態様によれば、トマトハイブリッドSVTG6217およびその親系統の生理学的および形態学的特徴を有する植物が提供される。そのような植物の生理学的および形態学的特徴の説明を以下の表に提示する。
【表1】
【表2】
C.育種用トマト植物
本発明の一態様は、トマト系統FIP-9S18-0174とトマト系統FIP-9S16-0361とを交配することを含む、トマトハイブリッドSVTG6217の種子を生産するための方法に関する。代替的に、本発明の他の実施形態では、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫植物は、それ自体または任意の第2の植物と交配され得る。一実施形態では、植物とそれ自体との交配は、自殖または自家受粉と呼ばれることがある。そのような方法は、トマトハイブリッドSVTG6217もしくはトマト系統FIP-9S18-0174の繁殖に使用することができるか、またはトマトハイブリッドSVTG6217もしくはトマト系統FIP-9S18-0174に由来する植物を生産するために使用することができる。特定の実施形態では、新しいトマト品種を開発するために、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫に由来する植物が使用され得る。
【0030】
1または複数の出発品種を使用した新しい品種の開発は、当技術分野で周知である。本発明によれば、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174、またはそれらの子孫を交配し、続いてそのような周知の方法に従って複数世代の育種を行うことによって、新規な品種を作出することができる。新しい品種は、任意の第2の植物と交配することによって作出されてもよい。新規な系統を開発する目的で交配する第2の植物を選抜する際に、それ自体が1または複数の選抜された望ましい特徴を示すか、またはハイブリッドの組み合わせの場合に(1または複数の)所望の特徴を示す植物を選択することが望まれ得る。最初の交配が行われると、同系交配および選抜が行われて、新しい品種が生産される。均一な系統の発達のために、多くの場合、5世代以上の自殖および選抜を伴う。
【0031】
新しい品種の均一な系統は、倍加半数体によっても開発することができる。この技術は、複数世代の自殖および選抜を必要とせずに、真の育種系統の作出を可能にする。このようにして、真の育種系統は、わずか1世代で生産することができる。半数体胚は、小胞子、花粉、葯培養物または子房培養物から生産され得る。次いで、半数体胚は、自律的に、または化学的処理(例えば、コルヒチン処理)によって倍加され得る。代替的に、半数体胚は、半数体植物に成長させ、染色体倍加を誘導するように処理されてもよい。いずれの場合も、稔性のホモ接合植物が得られる。本発明によれば、そのような技術のいずれかを、本発明の植物およびその子孫に関連して使用して、ホモ接合性系統を達成することができる。
【0032】
近交系植物を改良するために、戻し交配を使用することもできる。戻し交配は、特定の望ましい形質を、1つの近交系源または非近交系源から、その形質を欠く近交系に移入する。これは、例えば、問題の形質について1または複数の適切な遺伝子座を保有するドナー近交系(非反復親)に対して、上位近交系(A)(反復親)を最初に交配することによって達成することができる。次いで、この交配の子孫は、上位反復親(A)と戻してかけ合わされ、続いて、得られた子孫において、非反復親から移入される所望の形質について選抜される。所望の形質についての選抜を伴う5世代以上の戻し交配の後、子孫は、移入される特徴を有するが、ほとんどまたはほとんどすべての他の遺伝子座について上位親と同様である。最後の戻し交配世代は、移入される形質について純粋な育種子孫を与えるために自殖されるであろう。
【0033】
本発明の植物は、植物の遺伝的背景のエリート性質に基づく新しい系統の開発に特によく適している。新規なトマト系統を開発する目的で、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫と交配する第2の植物を選抜する際に、典型的には、それ自体が1または複数の選抜された望ましい特徴を示すか、またはハイブリッドの組み合わせの場合に(1または複数の)所望の特徴を示す植物を選択することが好ましい。望ましい形質の例としては、特定の実施形態では、高い種子収量、高い種子発芽、実生の活力、高い果実収量、病気耐性または抵抗性、ならびに土壌および気候条件に対する適応性が挙げられ得る。果実の形状、色、質感、および味などの消費者主導の形質は、本発明によって開発されたトマト植物の新しい系統に組み込まれ得る形質の他の例である。
【0034】
果実のライプニング遅延は、果実の貯蔵寿命の増加、果実をより長い距離で輸送する能力、輸送または貯蔵中の果実の腐敗の減少、および収穫時期の柔軟性の増加を含む多くの重要な利点を提供するという点で、トマト生産において特に望ましい形質である。トマト果実は単回収穫で収穫され得るので、収穫を遅延させる能力は、加工産業にとって特に有用である。多くの遺伝子が、トマトにおける果実のライプニングにおいて役割を果たすものとして同定されている。これらの遺伝子のいくつかにおける突然変異は、延長貯蔵寿命表現型と相関することが観察された(Garg et al.,Adv.Hort.Sci.22:54-62,2008)。例えば、国際公開第2010042865号は、非ライプニング(NOR)遺伝子における第2または第3エクソンにおける特定の突然変異が、延長貯蔵寿命表現型をもたらし得ることを開示している。これらの突然変異は、早期停止コドンをもたらすと考えられている。したがって、NOR遺伝子のエクソンにおいて早期停止コドンをもたらす任意の突然変異、特に第3エクソンにおいて早期停止コドンをもたらす突然変異は、トマトにおいてより遅いライプニングまたは延長貯蔵寿命表現型をもたらすことが予想される。育種プログラムにおいて各対立遺伝子の固有の突然変異を選抜し、NOR遺伝子の異なる対立遺伝子間を区別するためのマーカーは、当技術分野で公知の方法によって開発することができる。
【0035】
D.本発明のさらなる実施形態
本発明の特定の態様では、本明細書に記載の植物は、少なくとも第1の所望の遺伝的形質を含むように改変されて提供される。そのような植物は、一実施形態では、戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって開発することができ、この技術では、戻し交配技術を介して植物に移入された遺伝子座に加えて、品種の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてが回復される。本明細書で使用される単一遺伝子座被変換植物という用語は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって、または遺伝子工学技術によって開発されたトマト植物を指し、品種の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべては、それぞれ戻し交配または遺伝子工学技術によって品種に導入された単一遺伝子座に加えて、回復または保存される。形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてとは、植物の特徴が、戻し交配、導入遺伝子の導入、または遺伝子工学技術の適用の間に生じ得る偶発的な変異形質を除いて、同じ環境で比較した場合に存在するように回復または保存されることを意味する。
【0036】
本発明と共に戻し交配法を使用して、本品種の特徴を改良または導入することができる。所望の特徴の遺伝子座に寄与する親トマト植物は、非反復親またはドナー親と呼ばれる。この用語は、非反復親が戻し交配プロトコルで1回使用され、したがって反復されないという事実を指す。非反復親からの1または複数の遺伝子座が移入される親トマト植物は、戻し交配プロトコルで数回使用されるので、反復親として知られている。
【0037】
典型的な戻し交配プロトコルでは、元の目的の品種(反復親)が、移入される単一の目的の遺伝子座を有する第2の品種(非反復親)と交配される。次いで、この交配から得られた子孫は、反復親と再び交配され、このプロセスは、反復親の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてが、非反復親からの単一の移入された遺伝子座に加えて、被変換植物において回復されたトマト植物が得られるまで、繰り返される。
【0038】
適切な反復親の選抜は、戻し交配手順を成功させるための重要な工程である。戻し交配プロトコルの目標は、元の品種の単一の形質または特徴を変更または置換することである。これを達成するために、反復品種の単一の遺伝子座が、元の品種の残りの所望の遺伝的構成、したがって所望の生理学的および形態学的構成の本質的にすべてを保持しながら、非反復親からの所望の遺伝子座で改変または置換される。特定の非反復親の選択は、戻し交配の目的に依存し、主な目的の1つは、植物に何らかの商業的に望ましい形質を追加することである。正確な戻し交配プロトコルは、変更される特徴または形質、および反復親と非反復親との間の遺伝的距離に依存する。移入される特徴が優性対立遺伝子である場合、戻し交配法は単純化されるが、劣性対立遺伝子または相加対立遺伝子(additive allele)(劣性と優性との間)も移入され得る。この場合、所望の特徴が首尾よく移入されたかどうかを決定するために子孫の試験を導入することが必要な場合がある。
【0039】
一実施形態では、本明細書に記載の植物が反復親である戻し交配の子孫トマト植物は、(i)非反復親からの所望の形質、ならびに(ii)同じ環境条件において成長させたとき、5%の有意水準で決定されるように、反復親のトマトの生理学的および形態学的特徴のすべてを含む。
【0040】
新しい品種は、2つより多い親からも開発することができる。改変戻し交配として知られるこの技術は、戻し交配中に異なる反復親を使用する。改変戻し交配を使用して、元の反復親を特定のより望ましい特徴を有する品種で置き換えることができるか、または複数の親を使用して、各々から異なる望ましい特徴を得ることができる。
【0041】
特定の形質に関連する分子マーカーの開発により、本明細書に示すような確立された生殖系列に追加の形質を追加することが可能であり、最終的な成果物は、1または複数の新しい形質の追加を伴う実質的に同じ基本生殖質を有する。例えば、Moose and Mumm,2008(Plant Physiol.,147:969-977)および他の場所に記載されているような分子育種は、単一または複数の形質またはQTLをエリート系統に統合するための機構を提供する。1または複数の形質のエリート系統へのこの分子育種促進性の移動は、隣接または関連マーカーアッセイを使用した統合ゲノムフラグメントの同定機構によって、目的の特定の形質に関連する特定のゲノムフラグメントをエリート系統に組み込むことを包含し得る。本明細書に示される実施形態では、例えば、1、2、3または4つのゲノム遺伝子座が、この方法論によってエリート系統に統合され得る。追加の遺伝子座を含むこのエリート系統が別の親エリート系統とさらに交配されてハイブリッド子孫が生産される場合、少なくとも8つの別々の追加の遺伝子座をハイブリッドに組み込むことが可能である。これらの追加の遺伝子座は、例えば、病気抵抗性または果実品質形質などの形質を付与し得る。一実施形態では、各遺伝子座は、別々の形質を付与し得る。別の実施形態では、遺伝子座は、ハイブリッドにおいて形質を付与するために、ホモ接合性であり、各親系統に存在する必要があり得る。さらに別の実施形態では、複数の遺伝子座を組み合わせて、所望の形質の単一の堅牢な表現型を付与することができる。
【0042】
多くの単一遺伝子座形質が同定されており、これらは新しい近交系の発達のために定期的に選抜されているわけではないが、戻し交配技術によって改良することができる。単一遺伝子座形質はトランスジェニックであってもよく、またはトランスジェニックでなくてもよく、これらの形質の例としては、限定されないが、除草剤抵抗性、細菌性、真菌性またはウイルス性の病気に対する抵抗性、昆虫抵抗性、改変された脂肪酸または炭水化物代謝、および栄養品質の変更が挙げられる。これらは、一般に核を介して遺伝される遺伝子を含む。
【0043】
単一の遺伝子座が優性形質として作用する場合、直接選抜が適用され得る。この選抜プロセスのために、最初の交配の子孫は、戻し交配の前にウイルス抵抗性または対応する遺伝子の存在についてアッセイされる。選抜は、所望の遺伝子および抵抗性形質を有さない植物を排除し、上記形質を有する植物のみがその後の戻し交配に使用される。次いで、このプロセスは、すべてのさらなる戻し交配世代について繰り返される。
【0044】
育種のためのトマト植物の選抜は、必ずしも植物の表現型に依存せず、代わりに遺伝子調査に基づくことができる。例えば、目的の形質に遺伝的に密接に関連する適切な遺伝子マーカーを利用することができる。これらのマーカーの1つは、特定の交配の子孫における形質の有無を同定するために使用することができ、継続的な育種のための子孫の選抜に使用することができる。この技術は、一般にマーカー支援選抜と呼ばれる。植物における目的の形質の相対的有無を同定することができる任意の他のタイプの遺伝子マーカーまたは他のアッセイも、育種目的に有用であり得る。マーカー支援選抜のための手順は、当技術分野で周知である。そのような方法は、劣性形質および可変表現型の場合、または従来のアッセイがより高価であり、時間がかかり、もしくは他の点で不利であり得る場合に特に有用である。さらに、マーカー支援選抜を使用して、種子、実生または植物の段階で望ましい遺伝子型を含む植物を同定し、栽培品種の純度を同定または評価し、生殖質コレクションの遺伝的多様性をカタログ化し、確立された栽培品種内の特定の対立遺伝子またはハプロタイプを監視することができる。
【0045】
本発明に従って使用することができる遺伝子マーカーのタイプとしては、限定されないが、単純配列長多型(SSLP)(Williams et al.,Nucleic Acids Res.,1 8:6531-6535,1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性化増幅領域(SCAR)、任意プライムドポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(欧州特許第534858号明細書、その全体は参照により本明細書に具体的に組み込まれる)および一塩基多型(SNP)(Wang et al.,Science,280:1077-1082,1998)が挙げられる。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、所望の形質を含むトマト系統を生産するための戻し交配育種スキームの効率を高めるために、マーカー支援選抜が使用される。この技術は、一般に、マーカー支援戻し交配(MABC)と呼ばれる。この技術は当技術分野で周知であり、例えば、表現型スクリーニングプロトコルを補完または置き換えることができる所望の遺伝子座の存在を同定するための前景選抜(foreground selection)、リンケージドラッグを最小限に抑えるための組換え選抜、および反復親ゲノム回復を最大化するための背景選抜(background selection)を含む、3つ以上の水準の選抜の使用を含み得る。
【0047】
E.遺伝子工学に由来する植物
様々な遺伝子工学または遺伝子編集技術が開発されており、植物に形質を導入するために当業者によって使用され得る。特許請求される発明の特定の態様では、単一の遺伝子座、部位特異的改変、または導入遺伝子を、列挙された品種またはそれらの祖先のゲノムに変更または導入することによって、形質がトマト植物に導入される。遺伝子およびポリヌクレオチドを改変するか、欠失させるか、または植物のゲノムDNAに挿入する遺伝子工学の方法は、当技術分野で周知である。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、植物ゲノムの部位特異的改変によって、改良されたトマト系統が作出され得る。特定の実施形態では、部位特異的改変は、遺伝子編集と呼ばれることがある。部位特異的改変を導入するための遺伝子工学の方法としては、例えば、配列特異的ヌクレアーゼ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(例えば、米国特許出願公開第2011-0203012号明細書を参照);操作または天然メガヌクレアーゼ;TALE-エンドヌクレアーゼ(例えば、米国特許第8,586,363号明細書および米国特許第9,181,535号明細書);ならびにRNAガイドエンドヌクレアーゼ、例えばCRISPR/Cas系のエンドヌクレアーゼ(例えば、米国特許第8,697,359号明細書、米国特許第8,771,945号明細書および米国特許第10,266,850号明細書を参照)を利用することが挙げられる。したがって、本発明の一実施形態は、ヌクレアーゼまたは任意の関連タンパク質を利用してゲノム改変を実行することに関する。このヌクレアーゼは、鋳型ゲノム編集のためにドナー鋳型DNA内に、または別々の分子もしくはベクター内にヘテロ性で提供され得る。組換えDNA構築物はまた、改変される植物ゲノム内の部位にヌクレアーゼを導くための1または複数のガイドRNAをコードする配列を含み得る。単一の遺伝子座を変更または導入するためのさらなる方法は、例えば、一本鎖オリゴヌクレオチドを利用してトマト植物ゲノムに塩基対改変を導入することを含む(例えば、Sauer et al.,Plant Physiol,170(4):1917-1928,2016を参照)。
【0049】
単一の遺伝子座の部位指向的変更または導入のための方法は、当技術分野で周知であり、上述のような配列特異的ヌクレアーゼ、またはゲノムDNAを切断して二本鎖切断(DSB)もしくはニックを遺伝子座に生成するタンパク質とガイドRNAとの複合体を利用する方法を含む。特定の実施形態では、部位指向的変更を生成するための方法は、遺伝子編集と呼ばれることがある。当技術分野でよく理解されているように、ヌクレアーゼ酵素によって導入されたDSBまたはニックを修復するプロセス中に、ドナー鋳型、導入遺伝子または発現カセットポリヌクレオチドが、DSBまたはニックの部位でゲノムに統合され得る。統合されるDNA中の相同アームの存在は、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)による修復プロセス中の植物ゲノムへの挿入配列の採用および標的化を促進し得る。
【0050】
本発明の別の実施形態では、遺伝子形質転換は、選抜された導入遺伝子を本発明の植物に挿入するために使用されてもよく、または代替的に、戻し交配によって導入され得る導入遺伝子の調製のために使用されてもよい。当業者に周知であり、多くの作物種に適用可能な植物の形質転換のための方法には、限定されないが、エレクトロポレーション、マイクロプロジェクタイル衝撃、アグロバクテリウム媒介形質転換、およびプロトプラストによる直接的DNA取り込みが含まれる。
【0051】
エレクトロポレーションによる形質転換を行うために、脆弱な組織、例えば細胞の懸濁培養物または胚形成性カルスのいずれかを使用してもよく、または代替的に、未熟胚もしくは他の組織化された組織を直接形質転換してもよい。この技術では、選択された細胞を制御された様式でペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)または機械的に創傷した組織に曝露することによって、選択された細胞の細胞壁を部分的に分解する。
【0052】
形質転換DNAセグメントを植物細胞に送達するための効率的な方法は、マイクロプロジェクタイル衝撃である。この方法では、粒子が核酸で被覆され、推進力によって細胞に送達される。例示的な粒子としては、タングステン、白金、および好ましくは金から構成される粒子が挙げられる。衝撃のために、懸濁物中の細胞は、フィルターまたは固体培養培地上で濃縮される。代替的に、未熟胚または他の標的細胞が固体培養培地上に配置されてもよい。衝撃が与えられる細胞は、マクロプロジェクタイル停止プレートの下に適切な距離で配置される。
【0053】
加速によって植物細胞にDNAを送達するための方法の例示的な実施形態は、バイオリスティックス粒子送達システムであり、これは、ステンレス鋼またはNytexスクリーンなどのスクリーンを通して、DNAまたは細胞で被覆された粒子を標的細胞で覆われた表面上に推進するために使用することができる。スクリーンは、粒子が大きな凝集体でレシピエント細胞に送達されないように粒子を分散させる。マイクロプロジェクタイル衝撃技術は広く適用可能であり、任意の植物種を実質的に形質転換するために使用することができる。
【0054】
アグロバクテリウム媒介移入は、遺伝子座を植物細胞に導入するための別の広く適用可能なシステムである。この技術の利点は、DNAを植物組織全体に導入することができ、それによってプロトプラストからの無傷植物の再生の必要性を回避することである。現代のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、大腸菌(E.coli)ならびにアグロバクテリウムで複製することができ、便利な操作を可能にする(Klee et al.,Nat.Biotechnol.,3(7):637-642,1985)。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子移入のためのベクターにおける最近の技術的進歩は、様々なポリペプチドコード遺伝子を発現することができるベクターの構築を容易にするために、ベクターにおける遺伝子および制限部位の配置を改良している。記載のベクターは、挿入されたポリペプチドコード遺伝子の直接発現のためのプロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接する便利なマルチリンカー領域を有する。さらに、アームのあるTi遺伝子およびアームのないTi遺伝子の両方を含有するアグロバクテリウムが形質転換に使用され得る。
【0055】
アグロバクテリウム媒介形質転換が効率的である植物株では、遺伝子座移入の容易で定義された性質を理由として、アグロバクテリウム媒介形質転換が選択される方法である。DNAを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム媒介植物統合ベクターの使用は、当技術分野で周知である(Fraley et al.,Nat.Biotechnol.,3:629-635,1985;米国特許第5,563,055号明細書)。
【0056】
植物プロトプラストの形質転換はまた、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組み合わせに基づく方法を使用して達成することができる(例えば、Potrykus et al.,Mol.Gen.Genet.,199:183-188,1985;Omirulleh et al.,Plant Mol.Biol.,21(3):415-428,1993;Fromm et al.,Nature,312:791-793,1986;Uchimiya et al.,Mol.Gen.Genet.,204:204,1986;Marcotte et al.,Nature,335:454,1988を参照)。植物の形質転換および外来遺伝要素の発現は、Choiら(Plant Cell Rep.,13:344-348,1994)およびEllulら(Theor.Appl.Genet.,107:462-469,2003)に例示されている。
【0057】
多くのプロモーターが、選抜マーカー、スコア可能マーカー、害虫耐性、病気抵抗性、栄養強化のための遺伝子、および農学的目的の任意の他の遺伝子を含むがこれらに限定されない、目的の任意の遺伝子の植物遺伝子発現のための有用性を有する。植物遺伝子発現に有用な構成的プロモーターの例としては、限定されないが、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)P-35Sプロモーター、これは、単子葉植物(例えば、Dekeyser et al.,Plant Cell,2:591,1990;Terada and Shimamoto,Mol.Gen.Genet.,220:389,1990を参照)を含む大部分の植物組織において構成的な高レベル発現を付与する(例えば、Odel et al.,Nature,313:810,1985を参照);CaMV 35Sプロモーターのタンデム複製バージョンである強化型35Sプロモーター(P-e35S);ノパリンシンターゼプロモーター(An et al.,Plant Physiol.,88:547,1988);オクトピンシンターゼプロモーター(Fromm et al.,Plant Cell,1:977,1989);米国特許第5,378,619号明細書に記載されているようなフィグワート(figwort)モザイクウイルス(P-FMV)プロモーター;P-FMVのプロモーター配列がタンデムに複製されている、FMVプロモーターの強化バージョン(P-eFMV);カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター;サトウキビ桿状ウイルスプロモーター;ツユクサ(commelina)黄斑ウイルスプロモーター;および植物細胞で発現することが知られている他の植物ウイルスプロモーターが挙げられる。
【0058】
環境シグナル、ホルモンシグナル、化学シグナルまたは発達シグナルに応答して調節される種々の植物遺伝子プロモーターも、例えば、(1)熱(Callis et al.,Plant Physiol.,88:965,1988)、(2)光(例えば、pea rbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeier et al.,Plant Cell,1:471,1989;maize rbcS promoter,Schaffner and Sheen,Plant Cell,3:997,1991;またはchlorophyll a/b-binding protein promoter,Simpson et al.,EMBO J.,4:2723,1985)、(3)ホルモン、例えば、アブシジン酸(Marcotte et al.,Plant Cell,1:969,1989)、(4)創傷(例えば、wunl,Siebertz et al.,Plant Cell,1:961,1989);または(5)ジャスモン酸メチル、サリチル酸、または毒性緩和剤(Safener)などの化学物質によって調節されるプロモーターを含めて、植物細胞における機能的に連結された遺伝子の発現のために使用することができる。器官特異的プロモーター(例えば、Roshal et al.,EMBO J.,6:1155,1987;Schernthaner et al.,EMBO J.,7:1249,1988;Bustos et al.,Plant Cell,1:839,1989)を使用することも有利であり得る。
【0059】
本発明の植物に導入され得る例示的な核酸には、例えば、別の種からのDNA配列もしくは遺伝子、またはさらには、同じ種に由来するもしくは同じ種に存在するが、古典的な生殖または育種技術ではなく遺伝子工学的方法によってレシピエント細胞に組み込まれる遺伝子もしくは配列が含まれる。しかしながら、「外因性」という用語はまた、形質転換される細胞中に通常は存在しない遺伝子、または形質転換DNAセグメントもしくは遺伝子に見られるような、形態、構造などにおそらく単に存在しない遺伝子、または通常は存在し、天然の発現パターンとは異なる様式で発現すること、例えば過剰発現することが望まれる遺伝子を指すことが意図される。したがって、「外因性」遺伝子またはDNAという用語は、類似の遺伝子がレシピエント細胞に既に存在し得るかどうかにかかわらず、レシピエント細胞に導入される任意の遺伝子またはDNAセグメントを指すことが意図される。外因性DNAに含まれるDNAのタイプには、植物細胞内に既に存在するDNA、別の植物からのDNA、異なる生物からのDNA、または外部で生成されたDNA、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA配列、または遺伝子の合成もしくは改変バージョンをコードするDNA配列が含まれ得る。
【0060】
数千ではないにしても数百の異なる遺伝子が知られており、本発明によるトマト植物に導入される可能性がある。トマト植物に導入するために選択することができる特定の遺伝子および対応する表現型の非限定的な例としては、昆虫耐性のための1または複数の遺伝子、例えばバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(B.t.)遺伝子、害虫耐性のための1または複数の遺伝子、例えば真菌性病気防除のための遺伝子、除草剤耐性のための1または複数の遺伝子、例えばグリホサート耐性を付与する遺伝子、および品質改良、例えば収量、栄養強化、環境もしくはストレス耐性、または植物生理学、成長、発達、形態もしくは(1または複数の)植物産物の任意の望ましい変化のための遺伝子が挙げられる。例えば、構造遺伝子としては、限定されないが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第99/31248号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,689,052号明細書、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,500,365号明細書および米国特許第5,880,275号明細書に記載のバチルス(Bacillus)昆虫防除タンパク質遺伝子を含む、昆虫耐性を付与する任意の遺伝子が含まれる。別の実施形態では、構造遺伝子は、限定されないが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,633,435号明細書に記載のアグロバクテリウム株CP4グリホサート抵抗性EPSPS遺伝子(aroA:CP4)、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,463,175号明細書に記載のグリホサート酸化還元酵素(GOX)を含む遺伝子によって付与されるような、除草剤グリホサートに対する耐性を付与することができる。
【0061】
代替的に、DNAコード配列は、内因性遺伝子の発現の標的化された阻害を引き起こす非翻訳可能RNA分子をコードすることによって、例えば、アンチセンスまたは共抑制媒介機構を介して、これらの表現型に影響を及ぼすことができる(例えば、Bird et al.,Biotech.Gen.Engin.Rev.,9:207,1991を参照)。RNAはまた、所望の内因性mRNA産物を切断するように操作された触媒RNA分子(すなわち、リボザイム)であり得る(例えば、Gibson and Shillito,Mol.Biotech.,7:125,1997を参照)。したがって、目的の表現型変化または形態変化を発現するタンパク質またはmRNAを生産する任意の遺伝子は、本発明の実施に有用である。
【0062】
F.遺伝子型決定
本発明の特定の態様では、植物の遺伝子型または遺伝子フィンガープリントが検査され得る。植物の遺伝子型または遺伝子フィンガープリントの決定、分析、比較および特性評価のために当業者が利用可能な多くの実験室ベースの技術がある。そのような技術の非限定的な例としては、アイソザイム電気泳動、制限断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、任意プライムドポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性化増幅領域(SCAR)、増幅断片長多型(AFLP)、単純反復配列(SSR)および一塩基多型(SNP)が挙げられる。特定の実施形態では、配列ベースの方法は、遺伝子型決定ツールとして、特定の植物種のゲノムにわたってランダムに分布するSNPを利用することができる(Elshire et al.,PloS One,6(5):e19379,2011;Poland et al.,PloS One,7(2):e32253,2012;Truong et al.,PloS One 7(5):e37565,2012)。ハイスループット配列決定プラットフォームは、当技術分野で公知であり、任意のそのようなハイスループット配列決定プラットフォームが、本発明の方法に従って使用され得る。その非限定的な例としては、次世代配列決定、単一分子配列決定、およびナノポア配列決定が挙げられる。特定の実施形態では、遺伝子型を決定する方法は、種子、植物または植物部分の遺伝子フィンガープリンティングを含み得る。遺伝子フィンガープリンティングの方法は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、次いで、フィンガープリンティングから得られたデータを使用して、遺伝子マーカーを選択することができ、遺伝子マーカーは、単独でおよび/または組み合わせて使用される場合、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫の特定の形質または多型を同定または選抜することができる。いくつかの実施形態では、DNAフィンガープリンティングは、遺伝子型に固有であり得るDNAの特定の領域のヌクレオチド配列に基づいて植物遺伝子型の可能性のある同一性を決定するために使用され得る、当技術分野で公知の任意の実験室技術を指し得る。いくつかの実施形態では、目的の植物の遺伝子型または配列が1または複数の参照植物の遺伝子型または配列と比較される場合、1または複数の多型が検出され得る。特定の実施形態では、参照植物は、目的の植物の遺伝子型または配列と比較して異なる遺伝子型または配列を有する任意の植物であり得る。参照植物として利用され得る植物の非限定的な例としては、親系統の植物および関連する品種または種の植物が挙げられる。特定の実施形態では、参照植物の遺伝子型または配列は、限定されないが、親系統のゲノム配列もしくはその一部、関連する植物品種もしくは種のゲノム配列もしくはその一部、デノボアセンブルゲノム配列もしくは親系統のその一部、または関連する植物品種もしくは種のデノボアセンブルゲノム配列もしくはその一部を含み得る。
【0063】
特定の態様では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫、またはそれらの一部の少なくとも第1の染色体セットを含む植物の遺伝子型を決定する方法であって、前記植物またはそれらの一部からの核酸試料中の少なくとも第1の多型を検出する工程を含む、方法を提供する。一実施形態では、検出する工程は、DNA配列決定または遺伝子マーカー分析を含む。いくつかの態様では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫、またはそれらの一部の少なくとも第1の染色体セットを含む植物の遺伝子型を決定する方法であって、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫の染色体セットにおいて少なくとも第1の多型を検出する工程を含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174もしくはそれらの子孫、またはそれらの一部の少なくとも第1の染色体セットを含む植物の遺伝子型を決定する方法であって、植物またはそれらの一部から得られた少なくとも第1のヌクレオチド配列を、参照植物から得られた少なくとも第1の参照ヌクレオチド配列と比較する工程;および、第1のヌクレオチド配列と第1の参照配列との間の少なくとも1つの多型を検出する工程を含む、方法を提供する。本発明の方法は、特定の実施形態では、本明細書に記載の複数の多型を検出する工程を含み得る。本方法は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの多型または複数の多型を検出する工程の結果をコンピュータ可読媒体に記憶すること、または少なくとも1つの多型または複数の多型を検出する工程の結果を送信することをさらに含み得る。本発明は、特定の実施形態では、本発明の方法によって製造されたコンピュータ可読媒体をさらに提供する。いくつかの実施形態では、検出された1または複数の多型は、トマトハイブリッドSVTG6217、トマト系統FIP-9S18-0174またはそれらの子孫の形態学的および生理学的特徴の発現を示し得るか、またはその発現をもたらし得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「多型」は、1または複数の個体の集団中の1または複数の遺伝子座における核酸配列の1または複数の変異の存在を指す。変異は、限定されないが、1または複数の塩基変化、1または複数のヌクレオチドの挿入または1または複数のヌクレオチドの欠失を含み得る。多型は、核酸複製のランダムなプロセスから、突然変異誘発によって、可動性ゲノム要素の結果として、コピー数変異から、ならびに不等交差、ゲノム重複および染色体切断および融合などの減数分裂のプロセスの間に生じ得る。変異は一般に見出され得るか、または集団内で低頻度で存在する可能性があり、前者は一般的な植物育種においてより大きな有用性を有し、後者はまれであるが重要な表現型変異に関連し得る。有用な多型としては、一塩基多型(SNP)、DNA配列における挿入または欠失(Indel)、DNA配列の単純反復配列(SSR)、制限断片長多型およびタグSNPが挙げられ得る。遺伝子マーカー、遺伝子、DNA由来配列、ハプロタイプ、RNA由来配列、プロモーター、遺伝子の5’非翻訳領域、遺伝子の3’非翻訳領域、マイクロRNA、siRNA、QTL、サテライトマーカー、導入遺伝子、mRNA、ds mRNA、転写プロファイルおよびメチル化パターンは、多型を含み得る。
【0065】
特定の実施形態では、本発明の1または複数の多型に関する情報が、様々な媒体に記憶または提供され得る。そのような媒体の非限定的な例には、データベースおよびコンピュータ可読媒体が含まれる。いくつかの実施形態では、媒体はまた、当業者が1または複数の多型を検査または照会し、有用な情報を得ることを可能にする形態の記述注釈を含み得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、「データベース」は、テキストファイル、データベースファイル、スプレッドシートファイルおよび画像ファイルなどのコンピュータファイル、印刷された表およびグラフ表示、ならびにデジタルおよび画像データコレクションの組み合わせを含む、検索可能な収集データの任意の表現を指す。本発明の一態様では、データベースは、コンピュータ検索可能な情報を記憶することができるメモリシステムを指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータによって直接読み取られ得る、および/またはアクセスされ得る任意の媒体を指す。コンピュータ可読媒体の非限定的な例としては、磁気記憶媒体、例えばフロッピーディスク、ハードディスク、記憶媒体および磁気テープ;光記憶媒体、例えばCD-ROM、電気記憶媒体、例えばRAM、DRAM、SRAM、SDRAM、ROM;およびPROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、ならびにこれらの任意のハイブリッド、例えば磁気/光記憶媒体が挙げられる。当技術分野で公知の任意のコンピュータ可読媒体を使用して、本発明の1または複数の多型に関する情報を含むコンピュータ可読媒体を作成することができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「記録された」という用語は、データベースまたはコンピュータ可読媒体に情報を記憶するためのプロセスの結果を指す。当業者は、本発明の1または複数の多型に関する情報を含むコンピュータ可読媒体を生成するために、コンピュータ可読媒体に情報を記録するための現在知られている方法のいずれかを容易に採用することができる。様々なデータ記憶構造が当技術分野で公知であり、そのようなコンピュータ可読媒体を作成するために当業者には利用可能である。データ記憶構造の選択は、一般に、記憶された情報にアクセスするために選択された手段に基づく。さらに、様々なデータプロセッサプログラムおよびフォーマットを使用して、本発明の1または複数の多型に関する情報をコンピュータ可読媒体に記憶することができる。
【0069】
本発明は、特定の態様では、本発明の1または複数の多型に関する情報を含むシステム、特にコンピュータベースのシステムをさらに提供する。そのようなコンピュータベースのシステムは、特定の実施形態では、本発明の多型を同定するように設計される。本明細書で使用される場合、「コンピュータベースのシステム」は、1または複数の多型を分析するために使用されるハードウェア、ソフトウェアおよびメモリを指す。当技術分野で公知の任意のコンピュータベースのシステムは、本発明による使用に適し得る。
【0070】
G.定義
本明細書の説明および表では、いくつかの用語が使用されている。明細書および特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0071】
対立遺伝子:遺伝子座の1または複数の代替形態のいずれかであって、対立遺伝子のすべては、1つの形質または特徴に関連する。二倍体細胞または生物において、所与の遺伝子の2つの対立遺伝子は、相同染色体対上の対応する遺伝子座を占める。
【0072】
戻し交配:育種家が、ハイブリッド子孫を繰り返し交配する、例えば、第1世代ハイブリッド(F)をハイブリッド子孫の親の1つに戻って交配するプロセス。戻し交配を使用して、1または複数の単一遺伝子座変換または導入遺伝子を、1つの遺伝的背景から別の遺伝的背景に導入することができる。
【0073】
交配:2つの親植物のかけ合わせ。
【0074】
他家受粉:異なる植物からの2つの配偶子の結合による受精。
【0075】
二倍体:2セットの染色体を有する細胞または生物。
【0076】
除雄:植物雄性器官の除去、または雄性不稔性を付与する細胞質もしくは核の遺伝因子もしくは化学薬剤による器官の不活性化。
【0077】
酵素:生物学的反応において触媒として作用することができる分子。
【0078】
ハイブリッド:2つの非同質遺伝子植物の交配の第1世代子孫。
【0079】
遺伝子型:細胞または生物の遺伝的構成。
【0080】
半数体:二倍体における2セットの染色体のうちの1セットを有する細胞または生物。
【0081】
リンケージ:同じ染色体上の対立遺伝子が、それらの伝達が独立していた場合に偶然によって予想されるよりも頻繁に一緒に分離する傾向がある現象。
【0082】
マーカー:容易に検出可能な表現型、好ましくは共優性様式で遺伝し(二倍体ヘテロ接合体中の遺伝子座の両方の対立遺伝子が容易に検出可能である)、環境分散成分がない、すなわち、1の遺伝率。
【0083】
表現型:遺伝子発現の現れである、細胞または生物の検出可能な特徴。
【0084】
子孫:2つの個々の植物の育種の結果として、または自殖から発達した、植物の1または複数の後代。育種に使用される2つの個々の植物は、同じ遺伝子型の植物であってもよく、または2つの別個の遺伝子型の植物であってもよい。自殖の間、いくつかの実施形態では、同じ植物が雄性および雌性両方の配偶子のドナーとして作用し得る。後代は、例えば、F世代、F世代、もしくは任意の後続世代の種子もしくは植物、またはそれらの一部であり得る。
【0085】
量的形質遺伝子座(QTL):量的形質遺伝子座(QTL)は、通常連続的に分布する数値的に表現可能な形質をある程度制御する遺伝子座を指す。
【0086】
再生:組織培養物からの植物の発達。
【0087】
抵抗性:本明細書で使用される場合、「抵抗性」および「耐性」という用語は、特定の生物学的害虫、病原体、非生物的影響または環境条件に対して症状を示さない植物を表すために交換可能に使用される。これらの用語はまた、いくつかの症状を示すが、依然として許容可能な収量で市場性のある製品を生産することができる植物を説明するために使用される。抵抗性または耐性と呼ばれるいくつかの植物は、植物が発育を阻止され、収量が減少したとしても、作物を依然として生産することができるという意味でのみ抵抗性または耐性である。
【0088】
王立園芸協会(RHS)カラーチャート値:RHSカラーチャートは、任意の色の正確な識別を可能にする標準化された基準である。チャート上の色の指定は、その色相、輝度、および彩度を記述する。色は、グループ名、シート番号および文字を識別することによって、例えばYellow-Orange Group 19AまたはRed Group 41Bなど、RHSカラーチャートによって正確に命名される。
【0089】
自家受粉(自殖):植物の葯から同じ植物の柱頭または同じ遺伝子型の別の植物の柱頭への花粉の移入。
【0090】
単一遺伝子座被変換(変換)植物:トマト品種の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてが、単一遺伝子座の特徴に加えて回復される、遺伝子座の戻し交配または遺伝子工学と呼ばれる植物育種技術によって開発された植物。
【0091】
実質的に等価:比較した場合に、平均から統計学的に有意な差を示さない(例えば、p=0.05)特徴。
【0092】
組織培養物:同じもしくは異なるタイプの単離された細胞または植物の一部に組織化されたそのような細胞の集合を含む組成物。
【0093】
導入遺伝子:形質転換または部位特異的改変によってトマト植物のゲノムに導入された配列を含む遺伝子座。
【0094】
H.寄託情報
上記で開示され、特許請求の範囲に列挙されたトマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の少なくとも625個の種子の寄託は、Provasoli-Guillard National Center for Marine Algae and Microbiota(NCMA)、60 Bigelow Drive,East Boothbay,Maine,04544 USAで行われた。トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の寄託された種子の寄託日は、それぞれ2022年10月6日および2022年10月19日である。トマトハイブリッドSVTG6217およびトマト系統FIP-9S18-0174の寄託された種子の受託番号は、それぞれNCMA Accession No.202210004およびNCMA Accession No.202210019である。特許が発行されると、寄託物に対するすべての制限が取り除かれ、寄託物は、37 C.F.R.§1.801-1.809の要件のすべてを満たすことが意図される。寄託物はブダペスト条約のもとで受託されており、30年間にわたって、最後の請求後5年間または特許の有効期間のうち長い方の期間にわたって、寄託機関に維持され、その期間中に必要に応じて交換される。
【0095】
上記の発明は、明確さおよび理解のために例示および例としてある程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるように、本発明の範囲内で特定の変更および修正が実施され得ることは明らかであろう。
【0096】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【外国語明細書】