IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧 ▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

特開2024-69185酸グラフトEO-POコポリマーを使用した、シリカスケール阻害の方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069185
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】酸グラフトEO-POコポリマーを使用した、シリカスケール阻害の方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/10 20230101AFI20240514BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20240514BHJP
   C08F 283/06 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C02F5/10 620G
C02F5/00 620C
C08F283/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009789
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020567068の分割
【原出願日】2019-05-17
(31)【優先権主張番号】201841020598
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】デオ、プスパンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】アブラモ、グラハム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、カイリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】メータ、ソミル チャンドラカント
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スケール阻害剤として当技術分野で知られているものを超えるスケール阻害性能を有するポリマーを使用し、シリカスケール形成を阻害する方法を提供する。
【解決手段】方法は、シリカを含む水性系を、約3.0重量%~約35重量%の不飽和グラフト酸およびアルキレンオキシドポリマー骨格を含む有効量の重合性酸グラフトポリマーで処理するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカスケール形成を阻害する方法であって、前記方法は、シリカを含む水性系を、
約3.0重量%~約35重量%の不飽和グラフト酸およびアルキレンオキシドポリマー骨
格を含む有効量の重合性酸グラフトポリマーで処理するステップを含み、前記アルキレン
オキシドポリマー骨格が以下の式を有し、
【化1】
式中、各R’は、独立して水素原子、水素ラジカル、およびアシルラジカルからなる
群から選択され、
R”は、独立して水素原子、水素ラジカル、アミン含有ラジカル、およびアシルラジ
カルからなる群から選択され、
各「n」は、独立して、2~4の値を有し、
各「Z」は、独立して、4~約1800の値を有し、
「a」は、1~4の値を有する、方法。
【請求項2】
前記R’は、脂肪族不飽和を含まないアシルラジカルである、請求項1に記載の方法
【請求項3】
R’およびR”は、どちらも水素原子ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グラフト酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アク
リルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-
メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコー
ルメタクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群か
ら選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
「n」=2または3であり、
「a」は、1の値を有し、
各R’またはR”は、独立して水素原子、水素ラジカル、およびアシルラジカルから
なる群から選択され、
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、エチレンオキシド(「EO」)またはプロ
ピレンオキシド(「PO」)ポリマーのいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、オキシエチレン(「EO」)およびオキシ
プロピレン(「PO」)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約0:100~約100:0のEO:PO
の重量比を有するEOおよびPOポリマーのコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約90:10~約10:90のEO:PO
の重量比を有するEOおよびPOポリマーのコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約75:25~約25:75のEO:PO
の重量比を有するEOおよびPOポリマーのコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーは、約1500ダルトン~約80000ダルトンの数平均分子量を有す
る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記グラフト酸は、アクリル酸(10重量%)であり、前記アルキレンオキシドポリ
マー骨格が、50:50のオキシエチレン(「EO」)対オキシプロピレン(「PO」)
の重量比を有するポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)である、請求項1に記載の
方法。
【請求項12】
前記ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)は、約5000ダルトンの分子量を
有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記グラフトポリマーの前記有効量は、約0.5ppm~約1000ppmである、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記水性系は、約6.0~約10.0のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記水性系は、20℃~250℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記水性系は、冷却水、脱塩、濾過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路、地熱エ
ネルギーシステム、SAGDシステム、およびシリカブラインからなる群から選択される
、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記水性系は、前記シリカブラインであり、前記グラフトポリマーは、沈殿物の形成
が最小限であるシリカスケール形成を阻害する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記水性系の有効量は、5ppm~15ppmであり、
前記水性系は、前記グラフトポリマーで24時間処理した後、50%を超えるシリカ
スケールのパーセント阻害を有し、
前記水性系は、前記グラフトポリマーで24時間処理した後、10NTU未満の濁度
を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この国際特許出願は、2018年6月1日に出願されたインド仮出願第201841
020598号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、スケール阻害に関する。具体的には、本発明は、シリカスケールの形成を
阻害するための酸グラフトEO-POコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
それらの名称が意味するように、「グラフトコポリマー」は、別個の「骨格」上にグ
ラフトされ、当技術分野でよく知られているポリマー「分岐」を表す。例えば、グラフト
コポリマーは、米国特許第5,374,674号、同第5,035,894号、および同
第4,552,901号に開示されている。
【0004】
シリカおよび金属ケイ酸塩のスケールは、水性系を利用する多くの産業で問題がある
。最も影響を受けるセグメントは、工業用水処理、特に逆浸透(RO)、冷却塔、ボイラ
、ならびに石油およびガスの用途、特に地熱エネルギーの取り出しおよび蒸気支援重力排
水(SAGD)の用途である。Bayerプロセスを利用したアルミナ精製などの採掘作
業でも、シリカおよびケイ酸塩のスケールに重大な問題がある。
【0005】
シリカおよびケイ酸塩スケールの形成は、pH、温度、シリカ濃度、およびそのよう
な系で使用される水中に存在する多価金属イオンの存在などの操作条件に依存する。それ
らの条件に基づいて、異なるタイプのシリカまたはケイ酸塩スケールが形成される場合が
ある。例えば、8.5を超えるpH値では、Mg2+、Ca2+、Al3+、またはFe
3+などの多価イオンの存在に応じて、シリカスケールは主に金属ケイ酸塩の形になるが
、コロイダルシリカ(重合シリカ粒子)は、6.5~8.5のpH値でより一般的である
。スケールは、生成装置に堆積し、最終的に流れを制限し、コストのかかるプロセスのダ
ウンタイムにつながる可能性がある。典型的なスケール除去処理は、機械的洗浄、または
フッ化水素酸洗浄などの危険で腐食性の酸洗浄を含む。
【0006】
スケール阻害剤は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第6,166,1
49号は、親水性グラフトポリマーおよびポリエーテル化合物を含み、任意選択的に不飽
和カルボン酸タイプのポリマーをさらに含むスケール阻害剤として好適である親水性グラ
フトポリマー含有組成物を作製するためのプロセスを開示する。同様に、米国特許第5,
378,368号は、工業用水システムにおけるシリカ/ケイ酸塩の堆積を制御するため
のポリエーテルポリアミノメチレンホスホネートの使用を開示する。ポリエーテルポリア
ミノメチレンホスホネートは、単独で、またはポリマー添加剤と組み合わせて使用するこ
とができる。
【0007】
米国特許第4,618,448号は、スケール阻害剤としてのカルボン酸/スルホン
酸/ポリアルキレンオキシドポリマーの使用を開示する一方で、米国特許第4,933,
090号は、シリカ/ケイ酸塩の堆積を制御するための選択されたホスホネートおよび任
意選択的なカルボン酸/スルホン酸/ポリアルキレンオキシドポリマーの使用を開示する
。米国特許第6,051,142号は、冷却およびボイラ水システムにおけるシリカおよ
びケイ酸塩のスケールを制御するためのエチレンオキシド-プロピレンオキシド(EO-
PO)ブロックコポリマーの使用を開示する。最後に、米国特許第7,316,787号
は、コロイド状シリカスケール阻害剤としての疎水性修飾エチレンオキシドポリマーの使
用を開示する。
【0008】
新しいスケール阻害剤の開発にもかかわらず、シリカスケーリングは、水性系におけ
る主要な課題であり続けており、したがって、当技術分野で知られているものを超えるス
ケール阻害性能を有するポリマーの必要性を示している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様によれば、シリカを含有する水性系を、不飽和グラフト酸(アクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピル
スルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチ
レンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、
またはビニルホスホン酸など)を含み、約3重量%~約35重量%のパーセント酸グラフ
トおよびアルキレンオキシドポリマー骨格を有する有効量の重合性酸グラフトコポリマー
で処理することを介して、シリカスケール形成を阻害する方法が提供され、アルキレンオ
キシドポリマー骨格が以下の式を有し、
【化1】
式中、各R’は、独立して水素原子、水素ラジカル、またはアシルラジカルのいずれか
であり、R”は、独立して水素原子、水素ラジカル、アミン含有ラジカル、またはアシル
ラジカルのいずれかであり、各「n」は、独立して2~4の値を有し、各「Z」は、独立
して4~約1800の値を有し、「a」は、1~4の値を有する。好ましい実施形態では
、「n」=2または3、「a」が1の値を有し、各R’またはR”が独立して水素原子、
水素ラジカル、またはアシルラジカルのいずれかであり、エチレンオキシド(「EO」)
またはプロピレンオキシド(「PO」)ポリマーのいずれかをそれぞれもたらす。ベース
ポリマーは、好ましくは、約200ダルトン~80,000ダルトンの分子量を有する。
【0010】
開示された発明は、逆浸透(RO)、冷却塔、ボイラ、地熱、およびSAGD用途で
使用することができるコロイド状シリカスケール阻害剤としてのアクリル酸グラフトエチ
レンオキシド-プロピレンオキシド(EO-PO)コポリマーの新規使用を対象とする。
好ましい実施形態では、開示された発明で使用するためのコポリマーは、約5000ダル
トンの分子量を有し、アルキレンオキシドポリマー骨格にグラフトされた約10重量%の
アクリル酸を有する、EOとPOとのコポリマーである。このコポリマーの1つの利点は
、上記の用途に悪影響を与え得る沈殿物(フロック)の形成が最小限であるコロイダルシ
リカの形成を阻害することである。
【0011】
発明を実施するための最良の形態
開示された発明は、シリカを含有する水性系を、不飽和グラフト酸(アクリル酸、メ
タクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホ
ン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンス
ルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビニル
ホスホン酸からなる群から選択される酸など)を含み、約3重量%~約35重量%のパー
セント酸グラフト、およびアルキレンオキシドポリマー骨格を有し、アルキレンオキシド
ポリマー骨格が以下の式を有する、有効量の重合性酸グラフトコポリマーで処理すること
を介して、シリカスケール形成を阻害する方法を対象とし、
【化2】
式中、各R’は、独立して水素原子、水素ラジカル、またはアシルラジカルから選択さ
れ、R”は、水素原子、水素ラジカル、アミン含有ラジカル、またはアシルラジカルから
選択され、各「n」は、独立して2~4の値を有し、各「Z」は、独立して4~約180
0の値を有し、「a」は、1~4の値を有する。一実施形態では、R’は、脂肪族不飽和
を含まないアシルラジカルである。別の実施形態では、R’およびR”は、どちらも水素
原子ではない。
【0012】
本明細書に記載された全てのパーセンテージは、特に明記されていない限り、重量パ
ーセント(重量%)である。
【0013】
温度は、摂氏(℃)で表され、「周囲温度」とは、特に指定がない限り、20℃~2
5℃を意味する。
【0014】
「ポリマー」は、同じまたは異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合
することによって調製されたポリマー化合物または「樹脂」を指す。本明細書で使用され
る場合、「ポリマー」という一般用語は、1つ以上のタイプのモノマーから作製されたポ
リマー化合物を含む。本明細書で使用される「コポリマー」は、2つ以上の異なるタイプ
のモノマーから調製されたポリマー化合物である。同様に、「ターポリマー」は、3つの
異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー化合物である。
【0015】
「水性系」とは、一般に、これらに限定されないが、冷却水、ボイラ水、脱塩、ガス
スクラバ、溶鉱炉、下水汚泥熱調節設備、ろ過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路な
どが挙げられる、水を含有する任意の系を指す。
【0016】
「シリカスケール」という用語は、一般に、水処理装置の内面に堆積および蓄積され
るシリカを含有する固体材料を指す。「シリカスケール」は、一般に、コロイド状または
アモルファスシリカ(SiO)およびケイ酸塩(ケイ酸マグネシウムなど)などの複数
のタイプのシリカスケールを含む。蓄積されたシリカスケールは、シリカおよびケイ酸塩
タイプのスケールの組み合わせである場合があり、場合によっては、どちらか一方のタイ
プのスケールが優勢であることが多い。コロイド状/アモルファスシリカスケールは、以
下、主にコロイド状/アモルファスケイ酸塩タイプであるシリカスケール堆積物を一般的
に指すために使用される用語である。金属の種類に応じて、炭酸カルシウム、硫酸カルシ
ウム、リン酸カルシウム、ホスホン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸バリウム、
シリカ、沖積堆積物、金属酸化物、および金属水酸化物など、シリカタイプ以外の他の種
類のスケールが存在し得、他のイオンは水性系に存在する。
【0017】
コロイド状/アモルファスシリカスケールを形成するための化学反応機構は、一般に
、水酸化物イオンによって触媒されるケイ酸のポリケイ酸塩への縮合重合を伴う。この反
応機構は、一般に、以下のように進行する。
Si(OH)+OH→(OH)SiO+H2O (I)
Si(OH) +Si(OH)4+OH→(OH)Si-O-Si(OH)
二量体)+OH(II)
(OH)Si-O-Si(OH)(二量体)→環状→コロイダル→アモルファスシ
リカ(スケール)(III)
【0018】
反応機構は、水酸化物イオンによって触媒されるため、低pHではゆっくりと進行す
るが、pHが約7を超えると、大幅に増加する。したがって、6.5~8.5などの「中
性」pHを有する水性系におけるシリカスケール形成の防止が特に懸念される。
【0019】
本発明の方法は、20℃~250℃の範囲の温度で、6.5~10.0のpHを有す
る水性系におけるコロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を制御するのに好適で
ある。本方法は、有効量のアクリル酸グラフトエチレンオキシド-プロピレンオキシド(
EO-PO)コポリマーを水性系に添加することを含む。
【0020】
グラフトポリマー
グラフトポリマーは、(1)線形骨格ポリマー、および(2)別のポリマーのランダ
ムに分布した分岐を含むセグメント化されたコポリマーである。
【0021】
骨格ポリマー
グラフトコポリマーを作製するために使用されるポリ(アルキレンオキシド)化合物
は、一般に、アルキレンオキシドまたはアルキレンオキシドの混合物を、連続してまたは
組み合わせてアルコールと反応させることによって生成される。そのようなアルコールは
、一価または多価であり得、式R”(OH)に対応し、式中、R”は、水素原子、水素
ラジカル、アミン含有ラジカル、およびアシルラジカルからなる群から選択され、「a」
は、1~4の値を有する。そのようなアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノ
ール、ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、グリセロールのモノエチルエー
テル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオー
ル、トリメチロールプロパンなどを含む。
【0022】
一般に、本発明で使用されるポリ(オキシアルキレン)化合物は、約200ダルトン
~約80,000ダルトン、好ましくは約1500ダルトン~約20,000ダルトンの
範囲の分子量(数平均)を有する。
【0023】
重合性酸のポリ(オキシアルキレン)化合物へのグラフト化は、フリーラジカル重合
によって実行することができ、約3~約35(好ましくは約5~約25)のグラフト化酸
含量を与える。
【0024】
有用なグラフト酸は、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン
酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリル
アミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチ
レングリコールメタクリレートホスフェート、およびビニルホスホン酸を含み、アクリル
酸、マレイン酸、およびビニルホスホン酸がより好ましく、アクリル酸が最も好ましい。
【0025】
本発明において有用なポリ(オキシアルキレン)化合物は、以下の式を有する式を有
し、
【化3】
式中、各R’は、独立して水素原子、水素ラジカル、またはアシルラジカルのいずれか
であり、R”は、独立して水素原子、水素ラジカル、アミン含有ラジカル、またはアシル
ラジカルのいずれかであり、各「n」は、独立して2~4の値を有し、各「Z」は、独立
して4~約1800の値を有し、「a」は、1~4の値を有する。好ましい実施形態では
、ポリ(オキシアルキレン)化合物は、「n」=2または3、「a」が1の値を有し、各
R’またはR”が独立して水素原子、水素ラジカル、またはアシルラジカルのいずれかで
あり、エチレンオキシド(「EO」)またはプロピレンオキシド(「PO」)ポリマーの
いずれかをそれぞれもたらすような、ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)ポリマ
ーである。
【0026】
ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)ポリマーは、0:100~100:0の
オキシエチレン(「EO」)対オキシプロピレン(「PO」)の重量比を有する。EO-
POコポリマーは、シリカスケールの形成を阻害することができるので、本発明のグラフ
トポリマーの骨格として特に適している。EO-POコポリマーは、エトキシ基およびプ
ロポキシ基を含む有機化合物であり、好適なEO-POコポリマーとしては、EO/PO
のランダムコポリマー、EOのホモポリマー、POのホモポリマー、EO/POのブロッ
クコポリマー、およびEO/POの逆ブロックコポリマーが含まれ得る。EO:POの重
量比は、約100:0~約0:100であり得、好ましくは約90:10~約10:90
であり、より好ましくは約75:25~約25:75であり、および最も好ましくは約5
0:50である。本発明のグラフトポリマーは、好ましくは、65重量%~97重量%の
骨格ポリマーを含む。
【0027】
使用方法
「有効量」は、処理される水性系におけるコロイド状/アモルファスシリカスケール
の堆積を阻害するために必要なグラフトコポリマーの量である。「阻害する」とは、コロ
イド状/アモルファスシリカスケールの堆積を遅らせて、機器の最大効率の期間を延長す
ることを意味する。水性系に添加されるグラフトコポリマーの有効量は、水性系に存在す
るシリカ、塩、および多価金属イオンの濃度とともに、水性系の温度およびpHに応じて
変化し得る。ほとんどの用途では、グラフトコポリマーの有効量は、約0.5ppm~約
1,000ppm、およびより好ましくは約1ppm~100ppmの範囲である。本発
明のグラフトコポリマーによって処理される水性系は、通常、30ppm、50ppm、
あるいは100ppmを超えるシリカ含量を有する。
【0028】
堆積を制御するための本発明の方法において有用なグラフトポリマーを調製するため
に使用される重合方法は、特に限定されず、現在または将来、当業者に知られている任意
の方法であり得、これらに限定されないが、米国特許第4,146,488号、同第4,
392,972号、同第5,952,432号、および同第6,143,243号に開示
された方法を含む、エマルジョン、溶液、添加およびフリーラジカル重合技術を含み、こ
れらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
本発明の使用、用途、および利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の考察および
説明によって明らかにされるであろう。
【実施例0030】
以下の実施例は、本明細書に開示および特許請求される本発明の様々な非限定的な実
施形態、ならびにその特定の属性を示す。
【0031】
コポリマーへの酸のグラフト
酸グラフトコポリマーを、アクリル酸と、分子量770、粘度170セーボルト秒を
有するブタノール開始ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)コポリマーからなるベ
ースポリマーと、を37.8℃で使用して、次のように調製した。
水凝縮器、熱電対、撹拌機、およびアクリル酸および触媒を導入する手段を備えた5リ
ットルの3つ口丸底フラスコに、2,700gのベースポリマーを入れた。加熱マントル
を用いて、フラスコを150℃の温度に加熱し、続いて35gの過安息香酸第三級ブチル
および312gのアクリル酸を添加した。酸供給を開始する10分前に過酸化物供給を開
始し、両方の成分を90分間にわたって供給し、その後、生成物を室温まで冷却させた。
【0032】
静的ボトル試験
静的ボトル試験を使用して、シリカ重合を阻害する様々なポリマーの有効性を評価し
た。溶液中に残っている遊離シリカ(反応性シリカ)を、HACHケイモリブデン酸塩比
色法を使用して追跡した。コロイダルシリカの形成を阻害する効果が高いポリマーは、溶
液中の遊離シリカのレベルを長期間維持した。過飽和シリカ溶液を、SiOとして40
0ppmの初期シリカ濃度を得るために脱イオン水にケイ酸ナトリウム塩を溶解すること
によって調製した。
【0033】
静的ボトル試験の第1の組では、5、15、および25ppm(活性物質として)の
本発明の阻害剤を過飽和シリカ溶液の中に投与し、pHを7.5に調整した。次いで、試
料を20℃で24時間静置した。24時間後、シリカ溶液をよく混合し、濁度計で濁度に
ついて分析して、不溶性フロックの存在をチェックした。次いで、シリカ試料を0.45
μmフィルタでろ過し、HACH比色法を使用してろ液を分析した。試料Aは、アクリル
酸(AA)グラフトエチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーである。試料Bは
、グラフトされていないエチレンオキシド-プロピレンオキシドのコポリマーである。
【0034】
阻害剤を含有する溶液および阻害剤を含まない溶液の最終可溶性シリカ濃度を測定し
た後、パーセントスケール阻害を以下の式に従って計算した。
【数1】
濁度およびシリカ阻害試験の結果を表1にまとめている。
【表1】
【0035】
試料Aは、不溶性の沈殿物またはフロックを形成することなく、溶液中で高レベルの
反応性シリカを維持すると決定した。比較すると、試料Bは、コロイダルシリカの阻害を
示したが、不溶性フロックをもたらし、シリカブラインの濁度が大幅に上昇した。
【0036】
静的ボトル試験の第2の組では、塩化カルシウム二水和物として添加した100pp
mのCa2+、および塩化マグネシウム六水和物として添加した40ppmのMg2+
、ケイ酸ナトリウムとして添加した400ppmのSiOに加えて添加して、硬度イオ
ンの影響を評価した。5、15、および25ppm(活性物質として)で阻害剤を添加し
た後、ブラインのpHを7.5に調整した。次いで、試料を20℃で24時間静置した。
24時間後、シリカ溶液をよく混合し、濁度計で濁度について分析して、不溶性フロック
の存在をチェックした。次いで、シリカ試料を0.45μmフィルタでろ過し、HACH
比色法を使用してろ液を分析した。試料Aは、アクリル酸(AA)グラフトエチレンオキ
シド-プロピレンオキシドコポリマーである。試料Bは、グラフトされていないエチレン
オキシド-プロピレンオキシドのコポリマーである。濁度およびシリカ阻害試験の結果を
表2にまとめている。
【表2】
【0037】
試料Aは、最小限の濁度で、不溶性の沈殿物またはフロックの量がかなり少ない溶液
中で高レベルの反応性シリカを維持すると決定した。比較すると、試料Bは、コロイダル
シリカの阻害を示したが、多量の不溶性フロックをもたらし、シリカブラインの濁度が大
幅に上昇した。
【0038】
本発明は、上記の明細書および図面に開示されたその好ましい実施形態を参照して説
明されてきたが、本発明から逸脱することなく、本発明のさらに多くの実施形態が可能で
ある。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべき
である。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
本発明は、上記の明細書および図面に開示されたその好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明から逸脱することなく、本発明のさらに多くの実施形態が可能である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
シリカスケール形成を阻害する方法であって、前記方法は、シリカを含む水性系を、約3.0重量%~約35重量%の不飽和グラフト酸およびアルキレンオキシドポリマー骨格を含む有効量の重合性酸グラフトポリマーで処理するステップを含み、前記アルキレンオキシドポリマー骨格が以下の式を有し、
【化1】
式中、各R’は、独立して水素原子、水素ラジカル、およびアシルラジカルからなる群から選択され、
R”は、独立して水素原子、水素ラジカル、アミン含有ラジカル、およびアシルラジカルからなる群から選択され、
各「n」は、独立して、2~4の値を有し、
各「Z」は、独立して、4~約1800の値を有し、
「a」は、1~4の値を有する、方法。
[2]
前記R’は、脂肪族不飽和を含まないアシルラジカルである、[1]に記載の方法。
[3]
R’およびR”は、どちらも水素原子ではない、[1]に記載の方法。
[4]
前記グラフト酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[5]
「n」=2または3であり、
「a」は、1の値を有し、
各R’またはR”は、独立して水素原子、水素ラジカル、およびアシルラジカルからなる群から選択され、
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、エチレンオキシド(「EO」)またはプロピレンオキシド(「PO」)ポリマーのいずれかである、[1]に記載の方法。
[6]
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、オキシエチレン(「EO」)およびオキシプロピレン(「PO」)からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[7]
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約0:100~約100:0のEO:POの重量比を有するEOおよびPOポリマーのコポリマーである、[1]に記載の方法。
[8]
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約90:10~約10:90のEO:POの重量比を有するEOおよびPOポリマーのコポリマーである、[1]に記載の方法。
[9]
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約75:25~約25:75のEO:POの重量比を有するEOおよびPOポリマーのコポリマーである、[1]に記載の方法。
[10]
前記ポリマーは、約1500ダルトン~約80000ダルトンの数平均分子量を有する、[1]に記載の方法。
[11]
前記グラフト酸は、アクリル酸(10重量%)であり、前記アルキレンオキシドポリマー骨格が、50:50のオキシエチレン(「EO」)対オキシプロピレン(「PO」)の重量比を有するポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)である、[1]に記載の方法。
[12]
前記ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)は、約5000ダルトンの分子量を有する、[1]0に記載の方法。
[13]
前記グラフトポリマーの前記有効量は、約0.5ppm~約1000ppmである、[1]に記載の方法。
[14]
前記水性系は、約6.0~約10.0のpHを有する、[1]に記載の方法。
[15]
前記水性系は、20℃~250℃の温度を有する、[1]に記載の方法。
[16]
前記水性系は、冷却水、脱塩、濾過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路、地熱エネルギーシステム、SAGDシステム、およびシリカブラインからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[17]
前記水性系は、前記シリカブラインであり、前記グラフトポリマーは、沈殿物の形成が最小限であるシリカスケール形成を阻害する、[10]に記載の方法。
[18]
前記水性系の有効量は、5ppm~15ppmであり、
前記水性系は、前記グラフトポリマーで24時間処理した後、50%を超えるシリカスケールのパーセント阻害を有し、
前記水性系は、前記グラフトポリマーで24時間処理した後、10NTU未満の濁度を有する、[1]に記載の方法。