(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069197
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車載型水素発生および排気流中で使用する方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20240514BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240514BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20240514BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20240514BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240514BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F01N3/24 F
F01N3/10 Z
F01N3/20 D
F01N3/22 311Z
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
C01B3/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024018405
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2019554927の分割
【原出願日】2018-04-03
(31)【優先権主張番号】62/481,230
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】スン,シヤン
(72)【発明者】
【氏名】カーナリアン,ガロ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車載型水素発生、貯蔵、および内燃機関の排気ガス流中の還元剤として使用する方法を提供する。
【解決手段】水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入するように構成された、一体化車載型システムであって、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品と、水素を排気ガス流中に導入するように構成された水素吹込物品とを含むシステムは、一酸化炭素および/または炭化水素および/または酸化窒素を除去するのに有効である。水素の導入は、断続的および/またはコールドスタート期間中であってもよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品と、
排気ガス流中に、発生した水素を吹き込む、または放出するように構成された水素吹込物品と
を含む、車載型システム。
【請求項2】
水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品をさらに含み、水収集物品が水分解物品と共にある、請求項1に記載の車載型システム。
【請求項3】
大気水を凝縮するように構成された凝縮器をさらに含み、水収集物品が、凝縮された大気水を収集および/または貯蔵するように構成された、請求項2に記載の車載型システム。
【請求項4】
水分解物品が、電解槽を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の車載型システム。
【請求項5】
水分解物品が、光化学セルを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の車載型システム。
【請求項6】
水分解物品に関連付けられたバッテリーをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の車載型システム。
【請求項7】
水収集物品および水分解物品に関連付けられた加熱物品をさらに含み、加熱物品が、収集および/または貯蔵された水を水蒸気に変換させるように構成された、請求項2から6のいずれか一項に記載の車載型システム。
【請求項8】
水分解物品が、水蒸気を水素および酸素に分解するように構成された、請求項7に記載の車載型システム。
【請求項9】
水素を収集するように構成された水素収集物品をさらに含み、水素収集物品が、水分解物品に関連付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の車載型システム。
【請求項10】
水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された、水素貯蔵物品をさらに含む、請求項9に記載の車載型システム。
【請求項11】
水素吹込物品が、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通し、酸化触媒と流体連通しており、酸化触媒の上流でオンデマンドで断続的に水素を導入するように構成された、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
車両電子管理システムと一体化された、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
温度≦150℃で排気ガス流中に水素を吹き込む、または放出するように構成された、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のシステムを含む車両。
【請求項15】
水素の車載型発生のための方法であって、水分解物品において水を水素および酸素に分解することを含む、方法。
【請求項16】
水を凝縮器で大気から収集し、水を水分解物品に経由させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
電解槽内で電気化学的に水を水素および酸素に分解することを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項18】
水を加熱して水蒸気を形成し、水蒸気を水分解物品に経由させることであって、水分解物品が、水蒸気を水素および酸素に分解するように構成された、経由させること、
水素を収集すること、ならびに任意に、
水素を水素貯蔵物品に貯蔵すること
をさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することをさらに含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
水素の車載型発生のための方法であって、
水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品で、水を収集すること、
水収集物品に関連付けられ、水を水素および酸素に分解するように構成された、水分解物品で、水を分解すること、
水分解物品に関連付けられ、水素を収集するように構成された水素収集物品で水素を収集すること、
水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された水素貯蔵物品で水素を貯蔵すること、および
水素貯蔵物品に関連付けられ、内燃機関の排気ガス流に貯蔵された水素を吹き込む、または放出するように構成された水素吹込物品で、内燃機関の排気ガス流中に貯蔵された水素を導入すること
を含む方法。
【請求項21】
車両電子管理システムからの命令により、水素を発生させる、および/または内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することをさらに含む、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス(exhaust gas)流中の還元剤としての、車載型(on-board vehicle)水素発生および水素の使用のためのシステム、物品、および方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出(emission)に関する環境規制は、世界中で益々厳しくなっている。
【0003】
希薄燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジの動作は、燃料希薄条件下、それらの高い空燃比での動作に起因して、使用者に優れた燃費経済性を提供する。しかしディーゼルエンジンは、粒状物質(PM)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素、および酸化窒素(NOx)を含有する排気ガスの排出も放出し、このNOxは、とりわけ一酸化窒素および二酸化窒素を含む酸化窒素の様々な化学種を表す。排気粒状物質の2種の主な成分は、可溶性有機成分(SOF)および煤成分である。SOFは、煤上で層状に凝縮し、一般には未燃ディーゼル燃料および潤滑油から誘導される。SOFは、排気ガスの温度に応じて、蒸気としてまたはエアロゾル(即ち、液体凝縮物の微細な液滴)としてディーゼル排気中に存在する可能性がある。煤は、主に炭素の粒子から構成される。
【0004】
アルミナなどの耐火金属酸化物支持体(support)上に分散される白金族元素(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒は、炭化水素および一酸化炭素の気状汚染物質の両方を、これらの汚染物質の酸化を触媒して二酸化炭素および水に変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理する際に使用されることが公知である。そのような触媒は、一般に、大気中にベントされる前に排気が処理されるようディーゼル発電システムからの排気流路中に配置される、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるユニット内に含有されている。典型的には、ディーゼル酸化触媒は、セラミックまたは金属基材上に形成され、その表面に1種または複数の触媒コーティング組成物が堆積される。気状HCおよびCO排出ならびに粒状物質(SOF部分)の変換に加え、PGMを含有する酸化触媒はNOからNO2への酸化を促進させる。触媒は、典型的には、それらのライトオフ(light-off)温度、またはT50とも呼ばれる50%の変換が実現される温度によって定められる。
【0005】
内燃機関の排気を処理するのに使用される触媒は、エンジン動作の初期コールドスタート(cold-start)期間など、比較的低い温度での動作期間中はそれほど有効ではないが、それはエンジンの排気が、排気中の有害成分を効率的に触媒変換するのに十分な高い温度ではないからである。このために当技術分野では、気状汚染物質、通常は炭化水素を吸着および/または吸収するために、およびそれらを初期コールドスタート期間中に保持するために、触媒処理システムの一部としてゼオライトであってもよい収着材料を含むことが公知である。排気ガス温度が上昇するにつれ、貯蔵された炭化水素は収着剤から押し出され、より高い温度で触媒処理に供される。
【0006】
NOxは、内燃機関(例えば、自動車およびトラック)から、燃焼設備(例えば、天然ガス、油、または石炭によって加熱される発電所)から、および硝酸生成プラントからなどの排気ガス中に含有される。様々な処理方法が、NOx含有ガス混合物を処理して大気中の汚染物質を減少させるのに使用されてきた。
【0007】
ガソリン直噴エンジンおよび部分希薄燃焼エンジンなどの希薄燃焼エンジンの排気から、ならびにディーゼルエンジンからのNOxを低減させる、1つの有効な方法は、希薄燃焼エンジン動作条件下でNOxを捕捉し貯蔵すること、および補足されたNOxを、化学量論または過濃エンジン動作条件下でまたは過濃条件が誘発されるよう排気中に噴射された外部燃料による希薄エンジン動作の下で低減させる必要がある。希薄動作サイクルは、典型的には1分から20分の間であり、過濃動作サイクルは典型的には短く(1から10秒)、その結果、可能な限り多くの燃料が保存される。NOx変換効率を増強するには、長いがそれほど頻繁ではない再生よりも、短く頻繁な再生が好ましい。したがって、希薄NOx捕捉触媒は一般に、NOx捕捉機能および三元変換機能を提供しなければならない。
【0008】
いくつかの希薄NOx捕捉(LNT)システムは、アルカリ土類元素を含有する。例えば、NOx収着剤成分は、Mg、Ca、Sr、またはBaの酸化物などのアルカリ土類金属酸化物を含む。その他の希薄LNTシステムは、Ce、La、Pr、またはNdの酸化物などの希土類金属酸化物を含有することができる。NOx収着剤は、触媒NOx酸化還元のためにアルミナ支持体上に分散された白金などの白金族元素触媒と合わせて使用することができる。LNT触媒は、周期的な希薄(捕捉モード)および過濃(再生モード)排気条件下で動作し、その最中にエンジンアウトNOがN2に変換される。
【0009】
希薄燃焼エンジンの排気からNOxを低減させる別の有効な方法は、選択的触媒還元(SCR)触媒の存在下、アンモニアまたは炭化水素などの適切な還元剤による希薄燃焼エンジン動作条件下でのNOxの反応を必要とする。SCRプロセスは、大気酸素の存在下、還元剤(例えば、アンモニア)による酸化窒素の触媒還元を使用し、その結果、主に窒素および水蒸気が形成される:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0010】
SCRプロセスで用いられる現行の触媒は、鉄または銅などの触媒金属とイオン交換されたゼオライトなどのモレキュラーシーブを含む。
【0011】
有用なSCR触媒成分は、600℃よりも低い温度で、NOx排気成分の還元を有効に触媒することができ、したがって還元されたNOxのレベルは、典型的にはより低い排気温度を伴う低負荷の条件下でも実現することができる。
【0012】
益々厳しくなる排出規制は、低いエンジン排気温度でCO、HC、およびNO排出が管理されるよう、CO、HC、およびNO酸化容量が改善された排気ガス処理システムを開発するための必要性を促してきた。さらに、NOx(NOおよびNO2)排出から窒素に還元するための排気ガス処理システムの開発は、益々重要になってきた。さらに、貴金属(そのようなシステムで一般に使用される)は、動作条件下で凝集して荷電粒子を形成する傾向があり、その結果、触媒活性が失われることが観察される。CO、HC、および/またはNOxなどの望ましくない排気ガス成分を除去する、さらなる材料および方法を提供することが有益と考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、車載型水素発生、貯蔵、および内燃機関の排気ガス流中の還元剤として使用する方法を提供する。発生した水素は、排気ガス流中のCOおよび/またはHCおよび/またはNOの酸化を支援する働きをしてもよい。水素還元剤は、例えば貴金属、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)中に存在する貴金属を再生するのに適している。
【0014】
本開示は、水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入(例えば、噴射または放出)するように構成された、車載型システムを提供する。本開示は、水素の車載型発生のための方法であって、水分解(water-splitting)物品(article)において水を水素および酸素に分解する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって一態様では、水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入するように構成された車載型システムであって、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品と、排気ガス流中に、発生した水素を吹き込む(噴射する)、または放出するように構成された水素吹込物品(水素噴射物品)とを含むシステムが提供される。
【0016】
一部の実施形態では、システムはさらに、水を収集および/または貯蔵するよう構成された水収集物品を含み、この水収集物品は、水分解物品に関連付けられる。一部の実施形態では、システムはさらに、大気水(atmospheric water)を凝縮するように構成された凝縮器を含み、水収集物品は、凝縮された大気水を収集および/または貯蔵するように構成される。
【0017】
一部の実施形態では、水分解物品は、電解槽(electrolytic cell)を含む。一部の実施形態では、水分解物品は、光化学セルを含む。一部の実施形態では、システムはさらに、水分解物品に関連付けられたバッテリーを含む。
【0018】
一部の実施形態では、システムはさらに、水収集物品および水分解物品に関連付けられた加熱物品を含み、加熱物品は、収集および/または貯蔵された水を水蒸気に変換するように構成される。一部の実施形態では、水分解物品は、水蒸気を水素および酸素に分解するように構成される。
【0019】
一部の実施形態では、システムはさらに、水素を収集するように構成された水素収集物品を含み、水素収集物品は、水分解物品に関連付けられる。一部の実施形態では、システムはさらに、水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された、水素貯蔵物品を含む。
【0020】
一部の実施形態では、水素吹込物品は、内燃機関の下流にあり、内燃機関および酸化触媒と流体連通しており、酸化触媒の上流で、オンデマンドで断続的に水素を導入するように構成される。一部の実施形態では、システムは、車両電子管理システムと一体化している。一部の実施形態では、システムは、温度≦150℃で排気ガス流中に水素を導入するよう構成される。
【0021】
別の態様では、水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入するように構成された車載型システムであって、水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品、水収集物品に関連付けられ、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品、水分解物品に関連付けられ、水素を収集するように構成された水素収集物品、水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された水素貯蔵物品と、水素貯蔵物品に関連付けられ、内燃機関の排気ガス流中にオンデマンドで貯蔵された水素を導入するように構成された水素吹込物品を含む、車載型システムが提供される。
【0022】
一部の実施形態では、システムは、車両電子管理システムと一体化される。
【0023】
一部の実施形態では、システムは、温度≦150℃で排気ガス流中に水素を導入するように構成される。
【0024】
さらに別の態様では、本明細書に記述される水素の車載型発生のためのシステムを含む車両が提供される。
【0025】
他の態様では、水素の車載型発生のための方法であって、水分解物品で水を水素および酸素に分解することを含む方法が提供される。
【0026】
一部の実施形態では、方法はさらに、凝縮器で水を大気から収集し、水を水分解物品に経由させることを含む。一部の実施形態では、方法は、電解槽内で電気的に水を水素および酸素に分解することを含む。一部の実施形態では、方法は、水を加熱して水蒸気を形成し、水蒸気を水分解物品に経由させることであって、水分解物品が、水蒸気を水素および酸素に分解するように構成された、経由させること、水素を収集すること、ならびに任意に、水素を水素貯蔵物品に貯蔵することをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、方法はさらに、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することを含む。一部の実施形態では、方法はさらに、車両電子管理システムからの命令により、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することを含む。
【0028】
さらに別の態様では、水素の車載型発生のための方法であって、水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品で、水を収集すること、水収集物品に関連付けられ、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品で水を分解すること、水分解物品に関連付けられ、水素を収集するように構成された水素収集物品で水素を収集すること、水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された水素貯蔵物品で水素を貯蔵すること、および水素貯蔵物品に関連付けられ、内燃機関の排気ガス流中に貯蔵された水素を導入するように構成された水素吹込物品で、内燃機関の排気ガス流中に、貯蔵された水素を導入することを含む、方法が提供される。
【0029】
一部の実施形態では、方法はさらに、車両電子管理システムからの命令により、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することを含む。
【0030】
本開示は、限定するものではないが下記の実施形態を含む:
【0031】
実施形態1: 水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入するように構成された、車載型システムであって、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品と、排気ガス流中に、発生した水素を導入するように構成された水素吹込物品とを含む、車載型システム。
【0032】
実施形態2: 水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品をさらに含み、水収集物品が水分解物品に関連付けられる、実施形態1のシステム。
【0033】
実施形態3: 水収集物品が、凝縮された大気水を収集および/または貯蔵するように構成された、実施形態2のシステム。
【0034】
実施形態4: 水収集物品が、凝縮器に関連付けられる、実施形態1から3のいずれかのシステム。
【0035】
実施形態5: 水分解物品が電解槽を含む、実施形態1から4のいずれかのシステム。
【0036】
実施形態6: 水分解物品が光化学セルを含む、実施形態1から5のいずれかのシステム。
【0037】
実施形態7: 光化学セルが発光ダイオードを含む、実施形態1から6のいずれかのシステム。
【0038】
実施形態8: 発光ダイオードが青色光を放出する、実施形態1から7のいずれかのシステム。
【0039】
実施形態9: 光化学セルが光触媒を含む、実施形態1から8のいずれかのシステム。
【0040】
実施形態10: バッテリーをさらに含む、実施形態1から9のいずれかのシステム。
【0041】
実施形態11: バッテリーが、水分解物品に関連付けられる、実施形態1から10のいずれかのシステム。
【0042】
実施形態12: 光化学セルが、バッテリーに関連付けられる、実施形態1から11のいずれかのシステム。
【0043】
実施形態13: バッテリーが、再充電可能なバッテリーである、実施形態1から12のいずれかのシステム。
【0044】
実施形態14: 加熱物品をさらに含む、実施形態1から13のいずれかのシステム。
【0045】
実施形態15: 加熱物品が、水収集物品および水分解物品に関連付けられる、実施形態1から14のいずれかのシステム。
【0046】
実施形態16: 加熱物品が、収集および/または貯蔵された水を水蒸気に変換するように構成された、実施形態1から15のいずれかのシステム。
【0047】
実施形態17: 水分解物品が、水蒸気を水素および酸素に分解するように構成された、実施形態1から16のいずれかのシステム。
【0048】
実施形態18: 水素を収集するように構成された水素収集物品をさらに含み、水素収集物品が、水分解物品に関連付けられる、実施形態1から17のいずれかのシステム。
【0049】
実施形態19: 水素収集物品が水素分離膜を含む、実施形態1から18のいずれかのシステム。
【0050】
実施形態20: 水素分離膜がパラジウムを含む、実施形態1から19のいずれかのシステム。
【0051】
実施形態21: 膜が≦1.0mmの厚さである、実施形態1から20のいずれかのシステム。
【0052】
実施形態22: 膜が約0.001mmの厚さから、約1mmの厚さである、実施形態1から21のいずれかの車載型システム。
【0053】
実施形態23: 膜が、約0.001mmから、約0.01または約0.1mmの厚さから、約0.2、約0.5、または約1mmの厚さである、実施形態1から22のいずれかのシステム。
【0054】
実施形態24: 膜が、穿孔されたステンレス鋼板またはセラミック板で支持される、実施形態1から23のいずれかのシステム。
【0055】
実施形態25: ステンレス鋼またはセラミック板が、約0.25mmの厚さから約1.5mmの厚さである、実施形態1から24のいずれかのシステム。
【0056】
実施形態26: ステンレス鋼またはセラミック板が、約1mmの厚さである、実施形態1から25のいずれかのシステム。
【0057】
実施形態27: 水素を貯蔵するように構成され、水素収集物品に関連付けられた水素貯蔵物品をさらに含む、実施形態1から26のいずれかのシステム。
【0058】
実施形態28: 水素貯蔵物品が、気状水素を貯蔵するように構成された、実施形態1から27のいずれかのシステム。
【0059】
実施形態29: 水素貯蔵物品が、水素貯蔵合金を含む、実施形態1から28のいずれかのシステム。
【0060】
実施形態30: 水素吹込物品が、オンデマンドで断続的に排気ガス流中に水素を導入するように構成された、実施形態1から29のいずれかのシステム。
【0061】
実施形態31: 水素吹込物品が、水素貯蔵物品に関連付けられ、排気ガス流中に貯蔵された水素を導入するよう構成された、実施形態1から30のいずれかのシステム。
【0062】
実施形態32: 水素吹込物品が逆止め弁を含む、実施形態1から31のいずれかのシステム。
【0063】
実施形態33: 水素吹込物品が、酸化触媒と流体連通しており、酸化触媒の上流で水素を導入するように構成された、実施形態1から32のいずれかのシステム。
【0064】
実施形態34: 酸化触媒がディーゼル酸化触媒(DOC)である、実施形態1から33のいずれかのシステム。
【0065】
実施形態35: 水素吹込物品が、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している、実施形態1から34のいずれかのシステム。
【0066】
実施形態36: 水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入するように構成された、車載型システムであって、水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品と、水収集物品に関連付けられ、水を水素および酸素に分解するよう構成された水分解物品と、水分解物品に関連付けられ、水素を収集するように構成された水素収集物品と、水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された水素貯蔵物品と、水素貯蔵物品に関連付けられ、内燃機関の排気ガス流中にオンデマンドで貯蔵された水素を導入するよう構成された水素吹込物品とを含む、車載型システム。
【0067】
実施形態37: システムが車両電子管理システムと一体化された、実施形態1から36のいずれかのシステム。
【0068】
実施形態38: ≦150℃の温度で排気ガス流に水素を導入するように構成された、実施形態1から37のいずれかのシステム。
【0069】
実施形態39: 排気ガス流の温度が約0℃から約150℃である、実施形態37または38のシステム。
【0070】
実施形態40: 排気ガス流の温度が約0℃、約10℃、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃である、実施形態1から39のいずれかのシステム。
【0071】
実施形態41: 実施形態1から40のいずれかのシステムを含む車両。
【0072】
実施形態42: 大気水を凝縮するように適合された凝縮器をさらに含む、実施形態41の車両。
【0073】
実施形態43: ディーゼル酸化触媒をさらに含む、実施形態41または42の車両。
【0074】
実施形態44: 水素の車載型発生のための方法であって、水分解物品において水を水素および酸素に分解することを含む方法。
【0075】
実施形態45: 水を収集し、水を水分解物品に経由させることをさらに含む、実施形態44の方法。
【0076】
実施形態46: 水を大気から収集することをさらに含む、実施形態44または45の方法。
【0077】
実施形態47: 水を凝縮器で大気から収集することを含む、実施形態44から46のいずれかの方法。
【0078】
実施形態48: 電解槽内で電気化学的に水を水素および酸素に分解することを含む、実施形態44から47のいずれかの方法。
【0079】
実施形態49: 電解槽が光電極を含む、実施形態44から48のいずれかの方法。
【0080】
実施形態50: 光電極が発光ダイオードを含む、実施形態44から49のいずれかの方法。
【0081】
実施形態51: 発光ダイオードが青色光を放出する、実施形態44から50のいずれかの方法。
【0082】
実施形態52: 水分解物品が、バッテリーに関連付けられる、実施形態44から51のいずれかの方法。
【0083】
実施形態53: 電解槽が、バッテリーに関連付けられる、実施形態44から52のいずれかの方法。
【0084】
実施形態54: 光電極が、バッテリーに関連付けられる、実施形態44から53のいずれかの方法。
【0085】
実施形態55: バッテリーが、再充電可能なバッテリーである、実施形態44から54のいずれかの方法。
【0086】
実施形態56: 水を収集し、水を加熱し、加熱された水を水分解物品に経由させることを含む、実施形態44から55のいずれかの方法。
【0087】
実施形態57: 水を加熱して水蒸気を形成し、水蒸気を水分解物品に経由させることを含む、実施形態44から56のいずれかの方法。
【0088】
実施形態58: 水分解物品が、水蒸気を水素および酸素に分解するように構成された、実施形態44から57のいずれかの方法。
【0089】
実施形態59: 水素を収集することをさらに含む、実施形態44から58のいずれかの方法。
【0090】
実施形態60: 水素分離膜で水素を収集することを含む、実施形態44から59のいずれかの方法。
【0091】
実施形態61: 水素分離膜がパラジウムを含む、実施形態44から60のいずれかの方法。
【0092】
実施形態62: 膜が、≦0.10mmの厚さである、実施形態44から61のいずれかの方法。
【0093】
実施形態63: 膜が、穿孔されたステンレス鋼板またはセラミック板で支持される、実施形態44から62のいずれかの方法。
【0094】
実施形態64: ステンレス鋼またはセラミック板が、約0.25mmの厚さから約1.5mmの厚さである、実施形態44から63のいずれかの方法。
【0095】
実施形態65: ステンレス鋼またはセラミック板が、約1mmの厚さである、実施形態44から64のいずれかの方法。
【0096】
実施形態66: 水素を水素貯蔵物品に貯蔵することをさらに含む、実施形態44から65のいずれかの方法。
【0097】
実施形態67: 気状水素を貯蔵することを含む、実施形態44から66のいずれかの方法。
【0098】
実施形態68: 水素を固体状態で貯蔵することを含む、実施形態44から67のいずれかの方法。
【0099】
実施形態69: 水素をケイ素または水素貯蔵合金に貯蔵することを含む、実施形態44から68のいずれかの方法。
【0100】
実施形態70: 内燃機関の排気ガス流に水素を導入することをさらに含む、実施形態44から69のいずれかの方法。
【0101】
実施形態71: 排気ガス流中にオンデマンドで断続的に水素を導入することを含む、実施形態44から70のいずれかの方法。
【0102】
実施形態72: 逆止め弁で排気ガス流に水素を導入することを含む、実施形態44から71のいずれかの方法。
【0103】
実施形態73: 酸化触媒の上流で水素を導入することを含む、実施形態44から72のいずれかの方法。
【0104】
実施形態74: 酸化触媒がディーゼル酸化触媒(DOC)である、実施形態44から73のいずれかの方法。
【0105】
実施形態75: 内燃機関の下流で排気ガス流に水素を導入することを含む、実施形態44から74のいずれかの方法。
【0106】
実施形態76: 水素の車載型発生のための方法であって、水を収集および/または貯蔵するように構成された水収集物品で、水を収集すること、水収集物品に関連付けられ、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品で、水を分解すること、水分解物品に関連付けられ、水素を収集するように構成された水素収集物品で、水素を収集すること、水素収集物品に関連付けられ、水素を貯蔵するように構成された水素貯蔵物品で、水素を貯蔵すること、および水素貯蔵物品に関連付けられ、内燃機関の排気ガス流中に貯蔵された水素を噴射または放出するよう構成された水素吹込物品で、内燃機関の排気ガス流中に貯蔵された水素を導入することを含む方法。
【0107】
実施形態77: オンデマンドで断続的に排気ガス流中に水素を導入することを含む、実施形態76の方法。
【0108】
実施形態78: 温度≦150℃で排気ガス流中に水素を導入することを含む、実施形態76または77の方法。
【0109】
実施形態79: 約0℃から約150℃の温度で排気ガス流中に水素を導入することを含む、実施形態76から78のいずれかの方法。
【0110】
実施形態80: 約0℃、訳10℃、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、または約80℃から、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃の温度で、排気流中に水素を導入することを含む、実施形態76から79のいずれかの方法。
【0111】
実施形態81: 車両電子管理システムからの命令により水素を発生させることをさらに含む、実施形態44から80のいずれかの方法。
【0112】
本開示のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明される添付図面と一緒に、下記の詳細な説明を読むことによって明らかにされよう。本発明は、上述の実施形態の2つ,3つ、4つ、またはそれよりも多くの任意の組合せ、ならびに本開示で述べる任意の2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの特徴または要素の組合せを、それらの特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の記述で明らかに組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示は、開示される発明の任意の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、文脈が他に明示しない限り組合せ可能であるものと見なされるべきであるように、総体的に読まれるものとする。本発明のその他の態様および利点は、下記より明らかになるであろう。
【0113】
本明細書に記述される開示のいくつかは、例として示され、添付される図に限定されるものではない。例示の簡略化および明瞭化のため、図に示される特徴は、必ずしもその縮尺が正しいものではない。例えば、いくつかの特徴の寸法は、明瞭化のために他の特徴に対して誇張されていてもよい。さらに、適切と見なされる場合には、参照符号を図の中で繰り返して、対応するまたは類似する要素を指し示している。
【0114】
本発明の実施形態の理解を得るために添付図面を参照し、その図面において、参照符号は本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は単なる例示であり、本発明を限定すると解釈すべきでない。本明細書に記述される開示は例として示され、添付される図で限定しようとするものではない。例示の簡略化および明瞭化のため、図に示される特徴は必ずしも縮尺に合わせて描かれていない。例えば、いくつかの特徴の寸法は、明瞭化のためにその他の特徴に対して誇張されている可能性がある。さらに、適切であると見なされる場合、対応するまたは類似の要素を示すために図の中で参照標識が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図2A】触媒組成物を含んでいてもよい、ハニカム型基材の斜視図である。
【
図2B】
図2Aよりも拡大され、
図2Aの担体の端面に平行な平面に沿って得られた部分断面図であり、
図2Aに示される複数のガス流通路の拡大図を示す図である。
【
図4A】基材の壁の様々なコーティング構成を示す図である。
【
図4B】基材の壁の様々なコーティング構成を示す図である。
【
図4C】基材の壁の様々なコーティング構成を示す図である。
【
図5】水素噴射が利用されている、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している排出処理システムの、実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
本発明は、車載型水素発生、貯蔵、および内燃機関の排気ガス流中で還元剤として使用するためのシステム、物品、および方法を提供する。発生した水素は、排気ガス流中のCOおよび/またはHCおよび/またはNOxの酸化を増強する。水素還元剤は、例えば貴金属、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)中に存在する貴金属を再生するのに適している。
【0117】
したがって、本開示は、水素を発生させるように、および発生した水素を内燃機関の排気ガス流中に導入するように構成された、車載型システムを提供する。車載型システムは、水を水素および酸素に分解するように構成された水分解物品と、排気ガス流中に、発生した水素を導入するように構成された水素吹込物品とを含む、水素発生器を含む。本明細書に開示されるような、水素発生器、水素吹込物品、酸化触媒、および内燃機関の1種または複数を含む排気ガス処理システムが、さらに提供される。
【0118】
本開示は、水素の車載型発生のための方法であって、水分解物品において水を水素および酸素に分解することを含む方法も提供する。一部の実施形態では、方法はさらに、例えば酸化触媒の上流で、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することを含む。
【0119】
定義
本明細書の冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法上の目的語の1つまたは1つよりも多く(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書で引用される任意の範囲は、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を記述し説明するのに使用される。例えば、「約」は、数値が±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.05%により修飾され得るのを意味してもよい。全ての数値は、明示されてもされていなくても、「約」という用語によって修飾される。「約」という用語によって修飾される数値は、特定の明らかにされた値を含む。例えば「約5.0」は、5.0を含む。
【0120】
本発明は、内燃機関の排気ガス流中で還元剤として使用される車載型水素発生のためのシステム、物品、および方法を対象とする。本発明のシステムは、1個または複数の「機能的物品」または単に「物品」を含む。本発明における「機能性物品」という用語は、表面に機能性コーティング組成物、特に触媒および/または収着剤コーティング組成物が配置されている基材を含む、物品を意味する。機能的物品は、さらなる機能的要素、例えばリザーバー、チュービング、ポンプ、弁、バッテリー、回路、メーター、ノズル、反応器、フィルター、漏斗、および同様のものを含んでいてもよい。
【0121】
「関連付けられた」という用語は、例えば「が備えられた」、「に接続された」、または「と連通」している、例えば「電気的に接続された」または「と流体連通している」、または別に機能を発揮させる手法で接続されたことを意味する。「関連付けられた」という用語は、例えば1個または複数の他の物品または要素を通して、直接関連付けられたまたは間接的に関連付けられたことを意味してもよい。「関連付けられた」という用語は、例えば、が備えられた、と相互接続された、に接続された、と流体連通している、電気的に連通しているなどを意味する。「関連付けられた」という用語は、一体化システムを提供する。接続または連通は、直接的であっても間接的であってもよい。本発明のシステムは、一体化された、即ち相互接続された物品および/または要素を有する。
【0122】
「触媒」という用語は、化学反応を促進させる材料を指す。触媒は、「触媒活性種」と、活性種を担持しまたは支持する「担体」とを含む。例えばゼオライトを含むモレキュラーシーブは、銅活性触媒種用の担体/支持体である。同様に、耐火金属酸化物粒子は、白金族元素触媒種用の担体であってもよい。
【0123】
触媒活性種は、化学反応を促進させるので「促進剤」とも呼ばれる。例えば、本発明の銅または鉄含有モレキュラーシーブは、銅または鉄促進型モレキュラーシーブと呼んでもよい。「促進型モレキュラーシーブ」は、触媒活性種が意図的に添加されたモレキュラーシーブを指す。
【0124】
本発明における「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を含む物品を意味する。
【0125】
本記述および特許請求の範囲で使用される「構成された」という用語は、「含む」または「含有する」という用語と同様に、非限定的な用語であるものとする。「構成された」という用語は、他の可能性ある物品または要素を排除することを意味しない。「構成された」という用語は、「適応された」と等しくてもよい。
【0126】
一般に、「有効な」という用語は、定義された触媒活性または貯蔵/放出活性に関して、質量でまたはモル数で、例えば約35%から100%有効であり、例えば約40%、約45%、約50%、または約55%から、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%有効であることを意味する。
【0127】
「排気流」または「排気ガス流」という用語は、固体または液体粒状物質を含有し得る、流動するガスの任意の組合せを指す。流れは、気状成分を含み、例えば希薄燃焼エンジンの排気であり、液滴、固体微粒子、および同様のものなどの、ある特定の非気状成分を含有し得る。希薄燃焼エンジンの排気流は、一般に、燃焼生成物、不完全燃焼の生成物、窒素の酸化物、可燃性および/または炭素質粒状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および/または窒素をさらに含む。
【0128】
「白金族元素成分」は、白金族元素またはそれらの酸化物の1種を指す。
【0129】
本明細書で使用される「促進された」という用語は、モレキュラーシーブに固有の不純物とは対照的に、典型的にはイオン交換を通して、例えば、モレキュラーシーブ材料に意図的に添加された成分を指す。モレキュラーシーブは、例えば、銅(Cu)および/または(Fe)で促進させてもよいが、マンガン、コバルト、ニッケル、セリウム、白金、パラジウム、ロジウム、またはこれらの組合せなどの他の触媒金属を使用することができる。
【0130】
「希土類金属成分」は、ランタン、セリウム、プラセオジム、およびネオジムを含む、元素の周期表で定義されたランタン系列の1種または複数の酸化物を指す。
【0131】
本明細書で使用される「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して窒素の酸化物を二窒素(N2)に還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用される「酸化窒素」または「NOx」という用語は、窒素の酸化物を指定する。
【0132】
「収着剤」という用語は、所望の物質、本発明ではNOxおよび/またはCOおよび/またはHCおよび/またはNH3を吸着および/または吸収する材料を指す。収着剤は、有利には、ある特定の温度で物質を吸着および/または吸収(貯蔵)し、より高い温度で物質を脱着(放出)する。
【0133】
本明細書で使用される「基材」という用語は、典型的にはウォッシュコートの形態の、触媒組成物、即ち触媒コーティングが表面に配置された、モノリシック材料を指す。1つまたは複数の実施形態では、基材は、流通モノリスおよびモノリシック壁流フィルターである。ウォッシュコートは、液体中に触媒の指定された固形分含量(例えば、30~90質量%)を含有するスラリーを製造し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥してウォッシュコートを得ることにより、形成される。
【0134】
本明細書で使用される「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流を通過させるのに十分に多孔質であるハニカム型担体部材などの基材材料に付着される、触媒または他の材料の、薄い接着コーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の金属促進型モレキュラーシーブを含有するウォッシュコートは、任意に、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、またはこれらの組合せから選択される結合剤を含むことができる。結合剤の負荷量は、ウォッシュコートの質量に対して約0.1から10質量%である。
【0135】
「車両」という用語は、例えば、内燃機関を有する任意の車両を意味し、例えば、乗用車、スポーツ用多目的車、ミニバン、バン、トラック、バス、ゴミ運搬車、貨物輸送トラック、建設車両、重機、軍用車両、農耕用作業車、および同様のものを含む。
【0136】
他に示さない限り、全ての部およびパーセンテージは質量による。「質量パーセント(wt.%)」は、他に示されない限り、いかなる揮発性物質も含まない全組成物に対し、即ち乾燥固形分含量に対するものである。
【0137】
次に本発明について、以下、より十分に記述する。しかし本発明は、多くの異なる形態に具体化されてもよく、本明細書に記述される実施形態を限定するものと解釈されるべきではなく;むしろこれらの実施形態は、本開示が十分および完全になるように、および本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、提供される。
【0138】
水素発生システム
本開示の水素発生システムは、水分解機能性物品(水分解物品)を含んでいてもよい。水分解物品は、いくつかの異なる物品のいずれかを含んでいてもよい。水を、電気化学反応を介して、水素および酸素に分解するように構成された電解槽を含んでいてもよい。例えば、水分解物品は、電気化学反応を開始するように構成された電極を含んでいてもよい。
【0139】
水素発生のためのデバイスは、例えば、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許第8,475,722号ならびに米国特許出願公開第2007/0246351号および第2008/0257751号に開示されている。
【0140】
水分解物品は、内部光源、光への曝露によって水を水素および酸素に分解するように適合された光触媒、循環水、セル内に分散された光散乱材料、ならびに酸素から水素を分離するように適合された膜を含む、光化学セルを含んでいてもよい。有利には、一部の実施形態における光源は、発光ダイオード(LED)、例えば青色発光ダイオードである。
【0141】
光源は、例えば、紫外(IV)光から可視光を経て近赤外(IR)光まで、例えば約270nmまたは約700nmから約2000nmの光を放出するように適合されてもよい。有利には、光源は、約420nmから約470nmの青色波長領域を放出するコンパクトなGaN LEDであってもよい。光源の選択は、光触媒に依存し得る。
【0142】
光源は、有利にはバッテリーに関連付けられることになる。バッテリーは、例えば、主再充電可能車両バッテリーである。
【0143】
水の供給源は、有利には、大気水であってもよい。例えば、水の供給源は、凝縮器によって凝縮された大気水であってもよい。凝縮器は、エアコンシステムの一部である凝縮器であってもよく、または別個の独立型凝縮器であってもよい。したがって本発明のシステムは、水を収集および/または貯蔵するように構成された物品(水収集物品)を含んでいてもよい。水収集物品は、凝縮器に関連付けられてもよい。水の供給源は、例えば、ボトルに詰められた水であってもよい。水の供給源は、収集された雨水であってもよい。水収集物品は、フィルターに関連付けられてもよい。
【0144】
水は、水蒸気の形態で水分解物品に供給されてもよい。水は、内燃機関によって発生した、捕捉された熱を介して、水蒸気に加熱されてもよい。したがってシステムは、水を水蒸気に変換するように構成された加熱物品を含んでいてもよい。加熱物品は、内燃機関または排気ガス流に関連付けられてもよい。
【0145】
水を水素および酸素に分解することが可能な光触媒は、公知である。その例には、限定するものではないが、TiO2、WO3、SrTiO3、ZnO、CdS、ZnS、ニオブ酸塩、およびタンタル酸塩を含む酸化物および硫化物が含まれる。他のある特定の光触媒は、Ni3S2/CdS、NiO/NaTaO2/La、およびNi/NiO/KNbO3/CdSを含む。
【0146】
光化学セルは、有利には、セル全体にわたって光を効率的に分散させる光散乱媒体を含有する。適切な光散乱媒体には、例えばガラスビーズが含まれる。粒状光触媒をガラスビーズと混合させてもよく、またはガラスビーズを光触媒でコーティングしてもよい。
【0147】
発生した水素は、水素収集物品を介して収集してもよい。例えば、水素収集物品は、光化学セル内を延びる円筒状またはチューブの形態をした水素分離膜を含んでいてもよい。膜は、セルからの水素の単離を最適化するように設計された、いくつかのチューブの1本であってもよい。水素分離膜は、パラジウムまたはパラジウム合金を含んでいてもよく、例えば≦1.0mmの厚さであってもよい。水素分離膜は、例えばポリマー、シリカ、セラミック、または多孔質炭素を含んでいてもよい。例えばある特定の非限定的な実施形態では、膜は≦0.1mmの厚さであり、例えば膜は約0.001mmから、約0.01から、または約0.1mmの厚さから、約0.2、約0.5、または約1mmの厚さである。膜は、例えば約1mmの厚さの穿孔されたステンレス鋼板で支持されていてもよい。あるいは、膜は多孔質セラミックチューブまたは棒で支持されていてもよい。膜は、水素の流れおよび酸素からの分離を最大限にするために、加熱要素、例えば電気加熱要素に関連付けられていてもよい。
【0148】
酸素は収集され、望む場合には例えば酸化剤として用いられてもよく、または大気へとベントされてもよい。酸素は、循環水と混合され、外部にベントされてもよい。
【0149】
可能性ある光化学セルの断面を、
図1に示す。セルは円筒形状であり、アダプターの中および外を介して循環水を有するように構成される。水は、液体または水蒸気であってもよい。図示されるセルは、LED光源、ガラスチューブ、ガラスビーズ、粒状光触媒、およびセラミック支持体(support)で支持されている水素分離膜で構成される。
【0150】
収集された水素は、水素貯蔵物品に貯蔵されてもよく、例えばガス貯蔵タンクまたはリザーバーに貯蔵されてもよい。収集された水素は、気状、液体、または固体状態で貯蔵されてもよい。発生した水素は、例えばガス貯蔵タンクまたはリザーバーに貯蔵されてもよい。水素は、例えば固体状態で、例えばケイ素または水素貯蔵合金に貯蔵されてもよい。固体状態の水素の貯蔵は、例えば、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国公開第2004/0241507号、第2008/0003470号、第2008/0274873号、第2010/0024542号、および第2011/0236790号に教示されている。水素貯蔵合金は、水素を可逆的に貯蔵し、例えば、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許第5,407,761号および第6,193,929号、ならびに米国公開第2016/0230255号に開示されている。水素貯蔵合金は、例えば、修飾されたABx型金属水素化物(MH)合金であり、一般にAは、水素化物形成元素であり、Bは弱いまたは非水素化物形成元素である。Aは一般に、4個以下の価電子を持つ、より大きい金属原子であり、Bは一般に、5個以上の価電子を持つ、より小さい金属原子である。適切なABx合金は、xが約0.5から約5であるものを含む。本発明の合金は、水素を可逆的に吸収(充電)し脱着(放電)することが可能である。ABx型合金は、例えば、範疇(単純な例で)、AB(HfNi、TiFe、TiNi)、AB2(ZrMn2、TiFe2)、A2B(Hf2Fe、Mg2Ni)、AB3(NdCo3、GdFe3)、A2B7(Pr2Ni7、Ce2Co7)、およびAB5(LaNi5、CeNi5)のものである。
【0151】
酸化触媒物品
酸化触媒組成物
上述のように、内燃機関の排気を処理するのに使用される触媒は、エンジン動作の初期コールドスタート期間など、比較的低い温度での動作の期間中はそれほど有効ではないが、それはエンジン排気が、排気中の有害な成分の効率的な触媒変換を行うのに十分高い温度にないからである。
【0152】
本発明の方法では、コールドスタート期間(≦150℃)中に、酸化触媒組成物、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)の上流で、水素を排気ガス流中にパルス送出する。水素は、NOおよび/またはCOおよび/またはHC汚染物質の低温酸化を増強する働きをする。
【0153】
DOCなどの酸化触媒は、例えば、排気ガスのNOおよび/またはCOおよび/またはHC成分を酸化するのに適している。適切な酸化触媒は、有利には、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属(PGM)を含む。
【0154】
アルミナなどの耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒は、これらの汚染物質の酸化を触媒することによって炭化水素および一酸化炭素ガス汚染物質を二酸化炭素および水に変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理するのに使用されることが公知である。そのような触媒は、DOC中に一般に含有されており、これは大気へとベントされる前に排気が処理されるよう、ディーゼルエンジンからの排気流路中に配置されている。典型的には、ディーゼル酸化触媒は、セラミックまたは金属基材上に形成され、その表面に1種または複数の触媒コーティング組成物が堆積される。
【0155】
酸化触媒組成物は、PGM成分を、乾燥組成物の質量に対して約0.1質量%(質量パーセント)、約0.5質量%、約1.0質量%、約1.5質量%、または約2.0質量%から、約3質量%、約5質量%、約7質量%、約9質量%、約10質量%、約12質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量パーセント、または約20質量%含んでいてもよい。
【0156】
表面に触媒活性PGMが堆積される支持体材料は、例えば、ガソリンまたはディーゼルエンジン排気に関連した温度などの高温で化学的および物理的安定性を示す、耐火金属酸化物を含む。例示的な耐火金属酸化物には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジミア(praseodymia)、酸化スズ、および同様のもの、ならびにこれらの物理的混合物または化学的組合せが含まれ、それらには原子ドープされた組合せが含まれ、高表面積または活性化化合物、例えば活性化アルミナが含まれる。
【0157】
シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、プラセオジミア-セリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、およびアルミナ-セリアなどの、金属酸化物の組合せが含まれる。例示的なアルミナには、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナが含まれる。耐火金属酸化物支持体として使用される有用な商用のアルミナには、活性化アルミナ、例えば高嵩密度ガンマ-アルミナ、低または中嵩密度大細孔ガンマ-アルミナ、ならびに低嵩密度大細孔ベーマイトおよびガンマ-アルミナが含まれる。
【0158】
「ガンマアルミナ」または「活性化アルミナ」とも呼ばれるアルミナ支持体材料などの高表面積金属酸化物支持体は、典型的には、60m2/gを超える、しばしば最大約200m2/gまたはそれよりも広いBET表面積を示す。例示的な耐火金属酸化物は、約50から約300m2/gの比表面積を有する高表面積γ-アルミナを含む。そのような活性化アルミナは、通常、アルミナのガンマおよびデルタ相の混合物であるが、かなりの量のイータ、カッパ、およびシータアルミナ相を含有していてもよい。「BET表面積」は、N2吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Teller法を指す、その通常の意味を有する。活性アルミナは、約60から約350m2/g、例えば約90から約250m2/gの比表面積を有することが望ましい。
【0159】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物で有用な金属酸化物支持体は、ドープされたアルミナ材料、例えばSiドープアルミナ材料(限定するものではないが1~10%のSiO2-Al2O3を含む)、ドープされたチタニア材料、例えばSiドープチタニア材料(限定するものではないが1~10%のSiO2-TiO2を含む)、またはドープされたジルコニア材料、例えばSiドープZrO2(限定するものではないが5~30%のSiO2-ZrO2を含む)である。
【0160】
有利には、耐火金属酸化物には、酸化ランタン、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、またはこれらの組合せなど、1種または複数の追加の塩基性金属酸化物がドープされてもよい。金属酸化物ドーパントは、典型的には、触媒組成物の質量に対して約1から約20質量%の量で存在する。ドーパント酸化物材料は、耐火金属酸化物支持体の高温安定性、またはNO2、SO2、もしくはSO3などの酸性ガス用の収着剤としての機能を改善する働きをしてもよい。
【0161】
ドーパント金属酸化物は、初期湿潤含浸技法を使用して、またはコロイド状混合酸化物粒子を添加することによって、導入することができる。好ましい、ドープされた金属酸化物には、バリア-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、および同様もものが含まれる。
【0162】
したがって、触媒組成物中の耐火金属酸化物(耐火混合金属酸化物を含む)は、典型的には、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、例えばバルクセリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。塩基性金属酸化物によるさらなるドーピングは、バリア-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、および同様のものを含むがこれらに限定されない追加の有用な耐火酸化物支持体を提供する。
【0163】
酸化触媒組成物は、上述の耐火金属酸化物のいずれか1種または複数を、任意の量で含んでいてもよい。例えば、触媒組成物中の耐火金属酸化物は、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、または少なくとも約35質量%(質量パーセント)のアルミナを含んでいてもよく、この質量%は触媒組成物の総乾燥質量に対する。触媒組成物は、例えば、約10から約99質量%のアルミナ、約15から約95質量%のアルミナ、または約20から約85質量%のアルミナを含んでいてもよい。酸化触媒組成物は、例えば、触媒組成物の質量に対して、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、または約35質量%から、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、または約70質量%のアルミナを含む。有利には、酸化触媒組成物は、セリア、アルミナ、およびジルコニアを含んでいてもよく、またはこれらのドープされた組成物であってもよい。
【0164】
酸化触媒組成物は、耐火金属酸化物支持体および触媒活性金属に加え、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、または銅の酸化物のいずれか1種または組合せをさらに含んでいてもよい。
【0165】
触媒組成物は、結合剤、例えば酢酸ジルコニルなどの適切な前駆体または硝酸ジルコニルなどの任意の他の適切なジルコニウム前駆体から誘導された、ZrO2結合剤を使用して、製造されてもよい。酢酸ジルコニル結合剤は、熱老化後、例えば触媒が少なくとも約600℃の高温に、例えば約800℃およびそれよりも高い温度、および約5%以上の水蒸気環境に曝された場合、均質で無傷のままのコーティングを提供する。他の潜在的に適切な結合剤には、限定するものではないがアルミナおよびシリカが含まれる。アルミナ結合剤は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムを含む。アルミニウム塩、およびアルミナのコロイド状形態を、使用してもよい。シリカ結合剤は、シリケートおよびコロイド状シリカを含む様々な形態のSiO2を含む。結合剤組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0166】
本明細書に記述される酸化触媒組成物は、基材上にコーティングされてもよい。コーティングは、「触媒コーティング組成物」または「触媒コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒コーティング組成物」は、同義である。
【0167】
酸化触媒基材
本発明の基材は、円筒形に類似した、長さおよび直径および体積を有する三次元である。形状は、必ずしも円筒形に順応する必要はない。長さは、入口端および出口端によって定められた軸長である。直径は、最大断面長であり、例えば、形状が円筒形に正確に順応しない場合の最大断面である。
【0168】
一般に、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。セラミック基材は、任意の適切な耐火材料、例えばコージエライト、コージエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケート、および同様のもので作製されてもよい。
【0169】
基材は、1種または複数の金属または金属合金を含む、金属性であってもよい。金属性基材は、ペレット、波形板、またはモノリシックフォームなどの様々な形状で用いられてもよい。金属基材の特定の例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的なまたは主要な成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムの1種または複数を含有していてもよく、これらの金属の全体は、有利には合金の少なくとも約15質量%(質量パーセント)を構成してもよく、例えば約10から約25質量%のクロム、約1から約8質量%のアルミニウム、および0から約20質量%のニッケルを含む。
【0170】
1つまたは複数の実施形では、酸化触媒組成物が配置されている基材は、流通(flow-through)モノリスまたは壁流(wall-flow)フィルターである。
【0171】
流通モノリスは、基材の入口端から出口端に延びる微細な平行ガス流路を有し、流路が流体流に対して開かれるようになされている。それらの流体入口からそれらの流体出口まで本質的に真っ直ぐな経路である流路は、触媒コーティングが配置されている壁によって定められ、したがって通路内を流れるガスは、触媒材料に接触するようになされている。流通モノリスの流路は、薄壁チャネルであり、任意の適切な断面形状およびサイズのもの、例えば台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などとすることができる。流通モノリスは、上述のようにセラミックまたは金属性である。
【0172】
例えば流通モノリスは、約50in3から約1200in3の体積、平方インチ当たり約60セル(cpsi)から約500cpsiまたは最大約900cpsi、例えば約200から約400cpsiのセル密度(入口開口)、および約50から約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚を有する。
【0173】
図2Aおよび2Bは、本明細書に記述される触媒組成物でコーティングされた流通基材の形態の、例示的な基材2を示す。
図2Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状を有し、円筒状外面4、上流端面6、および端面6と同一の、対応する下流端面8を有する。基材2は、その内部に形成された複数の微細な平行ガス流路10を有する。
図2Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、担体2内を上流端面6から下流端面8まで延び、流路10は、流体の流れ、例えばガス流がそのガス流路10を介して担体2内を縦方向に流れるように、遮られていない。
図2Bでより容易にわかるように、壁12は、そのように寸法決めされ構成されているので、ガス流路10は実質的に正多角形を有する。図示されるように、触媒組成物は、望みに応じて多数の異なる層として付着させることができる。例示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された個別の底層14と、底層14上にコーティングされた第2の個別の上層16との両方からなる。本発明は、1層または複数(例えば、2、3、または4層)の触媒層で実施することができ、
図2Bに例示される2層の実施形態に限定されない。
【0174】
有用な壁流フィルター基材は、基材の縦軸に沿って延びる複数の微細な、実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各流路は基材本体の一端で遮断され、代替の流路は反対側の端面が遮断されている。そのようなモノリス基材は、断面の平方インチ当たり最大で約700本以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、はるかに少ないものを使用してもよい。例えば、典型的な担体は通常、平方インチ当たり約100から約300セル(「cpsi」)を有する。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形状である断面を有することができる。壁流フィルター基材は、上記にて本明細書に開示される、コージエライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、チタン酸ケイ素、金属、または金属フォームなどの材料で作製することができる。
【0175】
壁流フィルターセクションの断面図を
図3に示すが、栓をされた通路と開放された通路(セル)とが交互に配された状態が示されている。遮断されまたは栓をされた端部400は、開放通路401と交互になっており、それぞれの反対側の端部は、それぞれ開放され遮断されている。フィルターは、入口端部402および出口端部403を有する。多孔質セル壁404と交差する矢印は、開放セル端部に進入し、多孔質セル壁404内を拡散し、開放出口セル端部から出て行く排気ガス流を表す。栓をされた端部400は、ガス流を妨げ、セル壁内の拡散を誘起させる。各セル壁は、入口側404aおよび出口側404bを有することになる。通路は、セル壁によって封じられる。
図3における暗色四角形は、栓をされた端部400であり、白色四角形は、開放端部401である。
【0176】
壁流フィルター基材は、典型的には、約50ミクロンから約500ミクロン、例えば約150ミクロンから約400ミクロンの壁厚を有する。有用な壁流フィルター基材は高い多孔度を有し、動作中に過剰な背圧なしに触媒組成物の高負荷が可能になる。壁流フィルターは一般に、触媒コーティングを配置する前に、少なくとも40%の壁多孔度を少なくとも10ミクロンの平均孔径で有することになる。例えば壁流フィルターは、触媒コーティングの配置前に、約50から約75%の壁多孔度と、約10から約30ミクロンの平均孔径とを有することになる。
【0177】
壁流フィルターは、例えば約50cm3、約100cm3、約200cm3、約300cm3、約400cm3、約500cm3、約600cm3、約700cm3、約800cm3、約900cm3、または約1000cm3から、約1500cm3、約2000cm3、約2500cm3、約3000cm3、約3500cm3、約4000cm3、約4500cm3、または約5000cm3の体積を有していてもよい。
【0178】
壁流フィルターは、任意に、高アスペクト比を有し、エンジンに近い密結合位置に適合可能になる。このため、触媒の高速加熱が可能になり;排気ガスは、床下位置にある場合よりも速く、触媒を動作(触媒)温度まで加熱することになる。金属基材は、密結合位置で有利に用いられ、高速加熱を可能にする。
【0179】
酸化触媒基材のコーティング
触媒壁流フィルターは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,229,597号に開示される。この参考文献は、コーティングが多孔質壁に浸透するように、即ち壁の全体を通して分散するように、触媒コーティングを付着させる方法を教示する。流通および壁流基材も、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2016/070090に教示される。
【0180】
壁流基材上の触媒コーティングの負荷は、多孔度および壁厚などの基材の性質に依存することになり、典型的には、流通基材上の触媒負荷よりも低くなる。酸化触媒組成物のPGM成分は、例えば、基材の体積に対して約5g/ft3、10g/ft3、約15g/ft3、約20g/ft3、約40g/ft3、または約50g/ft3から、約70g/ft3、約90g/ft3、約100g/ft3、約120g/ft3、約130g/ft3、約140g/ft3、約150g/ft3、約160g/ft3、約170g/ft3、約180g/ft3、約190g/ft3、約200g/ft3、約210g/ft3、約220g/ft3、約230g/ft3、約240g/ft3、または約250g/ft3で存在する。
【0181】
ディーゼル酸化触媒(DOC)物品の酸化触媒組成物コーティングは、一般に、触媒活性材料を表面に有する支持体を含有するウォッシュコートとして、基材(例えば、流通ハニカムモノリスまたは壁流フィルター)に付着される。ウォッシュコートは、液体ビヒクル(vehicle)中に指定された固形分含量(例えば、約10から約60質量%)の支持体を含有するスラリーを製造することによって形成され、次いでこれを基材に付着させ、乾燥し、か焼して、コーティング層を提供する。多数のコーティング層が付着される場合、基材は、各層が付着された後および/または所望の多数の層の数が付着された後に、乾燥し、か焼されてもよい。結合剤も、本明細書に上述のように用いられてもよい。
【0182】
DOC物品の酸化触媒組成物を提供する触媒コーティングは、複数の薄い接着層を含んでいてもよく、これらの層は互いに接着しており、コーティングは基材に接着している。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。触媒コーティングは、有利には「ゾーン化」されてもよく、ゾーン化された触媒層を含む。これを「横方向にゾーン化」されたと記述してもよい。例えば、層は、入口端から出口端に向かって延びていてもよく、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%延びる。別の層は、出口端から入口端に向かって延びていてもよく、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%を延びる。種々のコーティング層は、互いに隣接していてもよく、互いに重ならなくてもよい。あるいは、種々の層は、互いの一部の上に重なり合っていてもよく、第3の「中間」ゾーンを提供する。中間ゾーンは、例えば基材の長さの約5%から約80%を延びてもよく、例えば基材の長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%を延びてもよい。
【0183】
種々の層は、それぞれ、基材の全長を延びてもよく、またはそれぞれ基材の長さの一部を延びてもよく、互いの上にまたは下に、部分的または全体的のいずれかで重なってもよい。種々の層のそれぞれは、入口端または出口端のいずれかから延びてもよい。
【0184】
種々の触媒組成物は、個別のコーティング層のそれぞれに在ってもよい。例えば、1つのコーティング層は、いかなる任意の収着剤組成物もなしに、酸化触媒組成物を含むことができ、第2の層は、1種または複数の任意の収着剤組成物を含む(または、から全体がなる)ことができる。したがって、種々の層に関する考察は、これらの層のいずれかに該当し得る。触媒コーティングは、1、2、もしくは3層、またはそれよりも多くの層を含んでいてもよい。1層または複数のコーティング層は一緒に、3種の触媒組成物を含む。
【0185】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって定められる。種々のコーティング層に関して、いくつかの可能性あるゾーン化構成がある。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンがあってもよく、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンがあってもよく、4つの異なるゾーンがあってもよく、以下同様である。2層が隣接しかつ重なり合っていない場合、上流および下流ゾーンがある。2層が、ある程度まで重なり合う場合、上流、下流、および中間ゾーンがある。例えばコーティング層が基材の全長を延び、かつ異なるコーティング層が出口端からある長さを延びかつ第1のコーティング層の一部に重なる場合、上流および下流ゾーンがある。
【0186】
種々のコーティング層を、基材に直接接触させてもよい。あるいは、1つまたは複数の「アンダーコート」が存在してもよく、したがって1層の触媒コーティング層または複数の触媒コーティング層の少なくとも一部は基材に直接接触しなくなる(むしろアンダーコートに接触する)。1層または複数の「オーバーコート」が存在していてもよく、したがって1層または複数の機能性コーティング層の少なくとも一部は、気状流または大気に直接曝されなくなる(むしろオーバーコートに接触する)。
【0187】
種々のコーティング層は、「中間」重なりゾーンなしに、互いに直接接触してもよい。あるいは種々のコーティング層は、2つのゾーンの間に「隙間」を持たせて、直接接触させなくてもよい。「アンダーコート」または「オーバーコート」の場合、種々の層の間の隙間を「中間層」と呼ぶ。
【0188】
アンダーコートは、コーティング層の「下」にある層であり、オーバーコートは、コーティング層の「上」にある層であり、中間層は、2つのコーティング層の「間」にある層である。
【0189】
中間層、アンダーコート、およびオーバーコートは、1種もしくは複数の機能性組成物を含有していてもよく、または機能性組成物がなくてもよい。
【0190】
本発明の触媒コーティングは、複数の同一層を含んでいてもよい。
【0191】
一部の実施形態では、基材は、例えば2層のコーティング層、例えば本明細書に記述される1種の酸化触媒材料と、第2の触媒材料(酸化触媒材料とすることができる、または別のタイプの触媒材料とすることができる)とを有していてもよい。
図4A、4B、および4Cは、2層のそのようなコーティング層を含有する基材に関する、いくつかの可能性あるコーティング層構成を示す。基材壁500が示されており、その上にはコーティング層501および502が配置されている。これは単純化した図であり、多孔質壁流基材の場合、細孔および細孔壁に接着しているコーティングは示されておらず、栓がされた端部も示されていない。
図4Aにおいて、コーティング層501(例えば、酸化触媒材料)は、入口402から出口403まで、基材長の約50%を延び;コーティング層502(例えば、第2の触媒材料)は、出口から入口まで、基材長の約50%を延び、コーティング層は互いに隣接し、入口上流ゾーン503および出口下流ゾーン504を提供する。
図4Bにおいて、コーティング層502(例えば、第2の触媒材料)は、出口から、基材の長さの約50%を延び、層501(例えば、酸化触媒材料)は、入口から、長さの50%を超えて延び、層502の一部に重なり、上流ゾーン503、中間ゾーン505、および下流ゾーン504を提供する。
図4Cにおいて、コーティング層501および502はそれぞれ、基材の長さ全体を延び、層501は層502上に重なっている。
図4Cの基材は、ゾーン化コーティング構成を含有しない。
図4A、4B、および4Cは、酸化触媒物品の壁流基材または流通基材上のコーティング組成を例示するのに有用であってもよい。
【0192】
排気ガス処理システム
上述のように、内燃機関の排気を処理するのに使用される触媒は、比較的低い温度での動作期間中、例えばエンジン動作の初期コールドスタート期間中は、それほど有効ではないが、それはエンジンの排気が、排気中の有害成分の効率的な触媒変換に十分な、高温にないからである。したがって本発明の態様は、排気ガス処理システムおよび方法を対象とする。
【0193】
したがって本開示は、本明細書に開示される水素発生器、水素吹込物品、酸化触媒、および内燃機関の1種または複数を含む、排気ガス処理システムを提供する。システムはさらに、例えば選択的触媒還元(SCR)物品、触媒化煤フィルター(CSF)、およびアンモニア酸化(AMOx)触媒物品を含んでいてもよい。
【0194】
本開示は、水分解物品において水を水素および酸素に分解することを含む、水素の車載型発生のための方法も提供する。一部の実施形態では、方法はさらに、例えば酸化触媒の上流で、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入することを含む。
【0195】
本発明のシステムは、1個または複数の触媒物品に加え、排気ガス流中に水素を導入するように構成された1個または複数の水素吹込物品を適切に含有していてもよく、例えば、この噴射物品は逆止め弁を含む。水素吹込物品は、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入してもよく、ある特定の触媒プロセスおよび/または触媒再生プロセスにおいて還元剤として適切に機能することになる。水素吹込物品は、酸化触媒と流体連通していてもよく、酸化触媒、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)の上流で、水素を導入するように構成されていてもよい。水素吹込物品は、典型的には、内燃機関の下流になってもよく、内燃機関と流体連通していてもよい。水素は、有利には排気ガス流中に「パルス送出」されまたは断続的に放出されて、所望の還元機能を要求に応じて(オンデマンド)で行うようにされてもよい。
【0196】
本発明の排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流を、上流端に進入させて下流端から出すことによって、触媒物品または処理システムを通過させる。物品の入口端は、「上流」端または「前」端と同義である。出口端は、「下流」端または「後」端と同義である。処理システムは、一般に、内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の下流にあり、内燃機関と流体連通している。
【0197】
システムは、有利には、例えばSCR機能に関する尿素噴射で行われるように、エンジン電子管理アルゴリズム(電子管理システム)と一体化されてもよい。
【0198】
1つの例示的な排出処理システムを
図5に例示するが、この図は、内燃機関34の下流にあり、内燃機関34と流体連通している排出処理システム32の概略図である。図示されるように、気状汚染物質および粒状物質を含有する排気ガス流は、排気管36を介してエンジン34から、ディーゼル酸化触媒(DOC)38に搬送される。したがって、図示しない他の物品は、リザーバー、ポンプ、弁、混合ボックスなどを含んでいてもよい。
【0199】
排気ガス処理システムは、酸化触媒ユニット38の上流で水素を吹き込む、または放出するように構成された水素吹込物品を含んでいてもよい。例えば水素吹込物品は、貯蔵された水素の排気ガス流中への断続的な導入に向けて構成することができる。システムは、例えば、コールドスタート期間中に貯蔵された水素を導入するように構成されてもよい。一部の実施形態では、水素吹込物品は、逆止め弁を含む。水素は、水素貯蔵物品に搭載状態で運ばれてもよく、または水分解(water-splitting)からもしくはアンモニア分解(ammonia decomposition)から搭載状態で発生させてもよい。水分解に適切なシステムの実施形態について、本明細書で記述し、
図1に示す。
【0200】
排気流は、次に排気管40を介して、例えば図示されない触媒化煤フィルター(CSF)および/または選択的触媒還元(SCR)物品などの、任意の下流構成要素に搬送される。例示的なCSFおよびSCR構成要素は、例えば参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許第9,757,717号、第9,517,456号、および第7,704,475号に開示されている。
【0201】
DOC38の酸化触媒組成物は、例えば排気ガスのNOおよび/またはCOおよび/またはHC成分を酸化するのに適している。任意のDOC38では、非燃焼気状および不揮発性炭化水素および一酸化炭素が大量に燃焼して、二酸化炭素および水を形成する。さらに、NOx成分の、ある割合のNOが、酸化されて、DOC中でNO2になる。適切な酸化触媒組成物は、有利には、本明細書に開示されるように、耐火金属酸化物支持体上に分散される白金族元素(PGM)を含む。DOC38の酸化触媒組成物を、本明細書に記述される流通モノリス基材または壁流フィルター基材上にコーティングしてもよい。
【0202】
DOCユニットは、有利には、密結合位置にある。密結合位置は、例えば、排気マニホールド(即ち、個々のシリンダ排気管が一緒に接合される場所)から約12インチ(in)以内にある。一部の実施形態では、排気マニホールドからDOCユニットの上流端までの距離が、約0.5inから約12インチである。一部の実施形態では、距離は、約0.5in、約1in、約2in、約3in、約4in、約5in、約6in、約7in、約8in、約9in、約10in、約11in、または約12inである。一部の実施形態では、距離は、約0.5inから、約1inから、約2inから、約3inから、約4inから、または約5inから、約6inまで、約7inまで、約8inまで、約9inまで、約10inまで、約11inまで、または約12inまでであり、下端点と上端点との各組合せは、本発明の実施形態として企図される範囲を明確に定める。
【0203】
排気ガス処理方法
一態様では、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するための方法であって、内燃機関の下流でおよび触媒物品の上流で排気流中に貯蔵された水素を導入することを含む、方法が提供される。
【0204】
一部の実施形態では、水素は、コールドスタート期間中(即ち、排気ガス流温度は、≦150℃にある)、酸化触媒組成物、例えば本明細書に上述されるディーゼル酸化触媒(DOC)の上流で排気ガス流中にパルス送出される。水素は、NOおよび/またはCOおよび/またはHC汚染物質の低温酸化を増強するように働く。一部の実施形態では、方法は、貯蔵された水素の噴射または放出の非存在下での変換率%に対して、CO、HC、およびNOxの1種または複数の変換率%の増大をもたらすのに有効である。一部の実施形態では、変換率%の増大は、≧10%、≧15%、≧20%、≧25%、≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、または≧60%である。一部の実施形態では、方法はさらに、車載状態で水素を発生させることを含む。一部の実施形態では、方法はさらに、車両電子管理システムからの命令によって、車載状態で水素を発生させることを含む。一部の実施形態では、方法は、水分解物品またはアンモニア分解(ammonia decomosition)物品において、車載状態で水素を発生させることを含む。
【0205】
一部の実施形態では、水素を発生させることは、水を収集および/または貯蔵し、水を水素および酸素に分解し、水素を収集し、水素を貯蔵することを含む。一部の実施形態では、方法は、水素吹込物品を介して、貯蔵された水素を導入することを含む。一部の実施形態では、水素吹込物品は、逆止め弁を含む。
【0206】
本発明の物品、システム、および方法は、トラックおよび自動車などの可動排出源からの排気ガス流を処理するのに適している。物品、システム、および方法は、発電所などの固定発生源からの排気流を処理するのにも適している。
【0207】
本明細書に記述される組成物、方法、および適用例に対する適切な修正および適用を、任意の実施形態またはその態様の範囲から逸脱することなく行うことができることが、関連分野の当業者に容易に理解されよう。提供される組成物および方法は、例示的なものであり、特許請求の範囲内の実施形態を限定するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および選択肢の全ては、全ての変形例で組み合わせることができる。本明細書に記述される組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲は、本明細書の実施形態、態様、選択肢、実施例、および選択物の全ての実際のまたは潜在的な組合せを含む。本明細書に引用される全ての特許および刊行物は、組込みに関するその他特定の主張が特に提供されない限り、記述されるようなそれらの特定の教示のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0208】
本発明の態様を、本発明のある特定の態様を例示するために示され、それに限定すると解釈するものではない下記の実施例によって、より十分に示す。
【0209】
[実施例1]
基材上の2層触媒コーティング(DOC物品)。
【0210】
Pd(0.5質量%)、Ba(0.8質量%)、およびPt(0.3質量%)を含浸させた、ミリングされたアルミナ粉末を含有する底部コート触媒スラリーを製造し、硝酸でpHを4.5から5.0に調節した。底部コートスラリーは、38質量%の固体含量を有していた。底部コートスラリーを、全コア長1”×3”、400cpsi(平方インチ当たりのセル)ハニカム基材に、ウォッシュコート技法を介して付着させた。コーティングされた基材を、120℃で空気乾燥し、500℃で1時間か焼して、1.6g/in3のコーティング負荷量を得た。
【0211】
アルミナ/5質量%MnおよびPt-アミン(3.3質量%)を含有するトップコートスラリーを製造し、ミリングし、硝酸でpHを4.5から5.0に調節した。トップコートスラリーは、固体濃度37質量%を有していた。次いでゼオライトベータ(0.35g/in3)をトップコートスラリーに添加した。トップコートスラリーを、底部コート全体に付着させ、乾燥し、底部コートとしてか焼して、合計コーティング負荷量2.5g/in3および合計PGM負荷量50g/ft3を、Pt/Pd質量比3/1で得た。
【0212】
[実施例2]
排気ガス処理。
【0213】
コート付きコアを、チューブ炉内で800℃で16時間、10% H2O、10% O2、残分N2の供給ガス組成物を用いて熱水作用により老化させた。老化させた実施例1のコート付き基材を、供給組成物が1500ppmのCO、100ppmのNO、10%のH2O、4.6%のCO2、14%のO2、40ppmのC3H6、30ppmのCH4、および294ppmのCl(液体HC、モル比が64/36のデカン/トルエンを有する)を有する、定常状態ライトオフ試験の下で評価した。温度ランプは、約80℃から380℃まで、20℃/分であった。ライトオフ結果(℃)は、下記の通りであった:
【0214】
【0215】
データは、排気ガス流中の汚染物質を除去するのに、水素噴射が非常に有効であることを実証する。