(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069203
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】単一ステップの形状記憶合金拡張
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20240514BHJP
A61F 2/915 20130101ALI20240514BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20240514BHJP
【FI】
F03G7/06 F
A61F2/915
A61F2/82
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019524
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2021144651の分割
【原出願日】2012-09-14
(31)【優先権主張番号】13/235,319
(32)【優先日】2011-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル エム.グリーン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー シー.ラスリー
(57)【要約】
【課題】従来技術の欠点を克服するニチノール医療機器形成法を提供する。
【解決手段】歪みが与えられていない状態又は最小限の歪みが与えられている状態で、ニチノールを形状固定温度に晒す。次いでニチノールは、高温にある間に、実質的に形状を変形させられる。変形後、ニチノールは、材料を形状固定するために所定の時間にわたって高温のままに保たれる。次いでニチノールは、例えば水焼き入れ又は空気冷却によってほぼ室温20℃に戻される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金(SMA)物品を形成する方法であって、
(a)初期形状を有するSMA物品を用意すること、ここで、前記SMAは形状固定温度を有する、
(b)前記SMA物品をおよそ前記形状固定温度に加熱すること、
(c)前記SMA物品がおよそその形状固定温度にある間に、前記SMA物品を最終形状に変形させること、及び、
(d)前記SMA物品を拘束した状態で冷却し、これにより前記最終形状を実質的に保持すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(c)において前記SMA物品を変形させた後、前記変形させたSMA物品をおよそその形状固定温度に留まらせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SMAがニチノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記形状固定温度が約300℃~約650℃である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記SMA物品を前記最終形状に変形させることが、内力を加えることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記SMA物品を前記最終形状に変形させることが、外力を加えることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記SMA物品を前記最終形状に変形させることが、テーパ状マンドレルを使用することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記SMA物品が医療機器に成形される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記医療機器が埋め込み可能な医療機器である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記埋め込み可能な医療機器が、ステント、心臓オクルーダ、弁及び管腔内フィルタから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記SMA初期形状が、機械加工によって成形されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記機械加工が、レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び/又は化学エッチングを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステントを形成する方法であって、
(a)機械加工された形状記憶合金(SMA)チューブを用意すること、ここで、前記機械加工されたSMAチューブは、ステント・パターン、第1の(小)直径及び形状固定温度を有する、
(b)前記機械加工されたSMAチューブをおよそ前記形状固定温度に加熱すること、
(c)前記機械加工されたSMAチューブがおよそその形状固定温度にある間に、前記機械加工されたSMAチューブを第2の(大)直径に変形させること、及び、
(d)前記SMA物品を拘束した状態で冷却し、これにより前記第2の直径を実質的に保持すること
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記機械加工が、レーザーカット、ウォータージェット・カット及び/又は化学エッチングを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステント・パターンが、正弦曲線形状、ダイヤモンド形状、U字形状、V字形状又は卵形状を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記SMAチューブが円形断面を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
工程(c)において前記SMAチューブを変形させた後、前記変形させたSMAチューブをおよそ前記形状固定温度に留まらせる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記SMAがニチノールである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記形状固定温度が約300℃~約650℃である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることが、内力を加えることによって達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることが、外力を加えることによって達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることが、テーパ状マンドレルを使用することによって達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比が、約1.25:1よりも大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比が、約1.5:1よりも大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比が、約2:1よりも大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比が、約3:1よりも大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比が、約4:1よりも大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
第1の状態と第2の状態と第3の状態との間を推移するように調整された形状記憶合金(SMA)物品を含む医療機器であって、
前記SMAは、形状固定温度を有し、
(i)前記物品は、第1の状態において、第1の環状周縁を有し、
(ii)前記物品は、第2の状態において、複数の環状周縁を有し、
(iii)前記物品は、第3の状態において、第3の環状周縁を有し、
前記第2の状態における各環状周縁は、前記第1の状態における環状周縁よりも大きく、かつ、前記第3の状態における環状周縁よりも小さく、そして
前記形状記憶合金(SMA)物品は、前記第1の状態と前記第2の状態と前記第3の状態との間を推移する間、前記形状固定温度に維持される、前記医療機器。
【請求項29】
形状記憶合金物品を変形させる装置であって、
(a)スロット付き細長チューブであって、
(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、
(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、
(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、
(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、
(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、
(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブと、
(b)拡張マンドレルであって、
(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、
(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、
(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し;
(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルと、
(c)前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品と
を備える、前記装置。
【請求項30】
前記SMAがニチノールである、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記SMA物品が医療機器である、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記医療機器が、ステント、心臓オクルーダ、弁及び管腔内フィルタから成る群から選択される、請求項29に記載の装置。
【請求項33】
形状記憶合金物品を変形させる装置であって、
(a)前記装置は、スロット付き細長チューブであって、
(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、
(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、
(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、
(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、
(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、
(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブを備え、
(b)前記装置は、拡張マンドレルであって、
(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、
(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、
(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、
(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルを備え、
(c)前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの少なくとも一部を取り囲み、
(d)前記装置は、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品を備える、前記装置。
【請求項34】
前記スロット付き細長チューブが、前記拡張マンドレルの第1の部分の少なくとも一部を取り囲む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記スロット付き細長チューブが、前記拡張マンドレルの第2のテーパ部分の少なくとも一部を取り囲む、請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記拡張マンドレルが、本質的に一定の第2の周縁を有する第3の部分をさらに含む、請求項33に記載の装置。
【請求項37】
前記スロット付き細長チューブが、前記拡張マンドレルの第3の部分の少なくとも一部を取り囲む、請求項33に記載の装置。
【請求項38】
形状記憶合金物品を変形させる装置であって、
(a)スロット付き細長チューブであって、
(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、
(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、
(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、
(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、
(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、
(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びており、
(vii)前記チューブは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を有し、
(viii)前記チューブは、第2のテーパ部分を有し、
(ix)前記第2のテーパ部分は、前記チューブの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有する、前記チューブと、
(b)並進器具であって、
(i)前記並進器具は、前記スロット付き細長チューブの貫通ルーメンを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定されたロッドを含み、
(ii)前記ロッドは、前記スロット付き細長チューブの壁を貫通する前記スロットを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定された少なくとも2つのフィンを有する、前記並進器具と、
(c)前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品と
を備える、前記装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
種々の身体血管の疾患を治療するために、経皮送達式の種々の血管内体内プロテーゼを採用することがよく知られている。これらのタイプの体内プロテーゼは一般にステントと呼ばれる。ステントは一般に、生体適合性材料、例えばニチノールから形成されたチューブ状機器である。レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び化学研磨のような方法によってカットされたニチノール・チューブからステントを製作することが一般に知られている。ニチノールは形状記憶合金(SMA)と考えられている。ニチノールはまた形状固定温度を有する。形状固定温度は、形状記憶合金(SMA)物品が、所定の時間にわたって拘束形状で当該温度に晒されると、物品が続いて拘束を解かれたときにその拘束形状を実質的に維持することになる、温度範囲内の任意の温度として定義される。
【0002】
ニチノール・チューブの製造は高価である。ニチノール・チューブの直径が大きくなればなるほど、ニチノール・チューブはより高価になる。大直径ニチノール・チューブのコスト制約の結果、小直径ニチノール・チューブにパターン(例えばステント・パターン)をカットし、次いでこれらのチューブを漸次拡張して形状固定することにより、より大きい直径のニチノール・チューブ(及び/又はニチノール・ステント)が作製されている。
【0003】
1つの一般的なニチノール形状固定法は、室温(通常約20℃)又は室温未満でニチノールを所望の形状に変形させて拘束することを伴う。次いで、例えば炉内で所定の時間(通常約5~20分間)にわたってニチノールを所望の形状で拘束しながら、これを高温(通常約500℃)に晒す。次いで、ニチノールを水焼き入れするか又は空気冷却させておくことによって、ニチノールを室温まで冷却する。この形状固定プロセスは、ニチノールに新しい形状を与える。新しい形状は、カット済チューブを特異的に事前変形させて拘束した結果である。
【0004】
カット済ニチノール・チューブを拡張する場合、一連の漸次的な拡張・形状固定ステップが一般に用いられる。伝統的なニチノール・ステント機器製造法は、Poncin他によって記載されている(SMST-2000 Conference Proceedings, pp 477-486)。この文献には「機器は、熱処理を伴う一連の漸進的な形状固定ステップによってその最終サイズに拡張される」と述べられている。一連の漸次的拡張ステップを用いると、形状固定中のカット済ニチノール・チューブの破砕又は亀裂の発生が低減される。
【0005】
一例において、外径約4mmのニチノール・チューブにステント・パターンをレーザーカットすることができる。この4mmカット済チューブを24mmカット済チューブに拡張するためには、一連の漸次的拡張ステップを採用することになる。例えば、カット済チューブを4mm直径から8mm直径へ拡張し、次いで形状固定する。次にこのカット済チューブを8mm直径から12mm直径へ拡張し、次いで形状固定する。そしてこれを、所望の24mm直径カット済チューブが得られるまで続ける。
【0006】
形状固定プロセス中のステント破砕を回避するために、ステント形成に際しては一連の拡張ステップを利用することが一般的である。上記例は5つの拡張ステップを利用して、直径24mmの所望のステントを得た。これらの拡張ステップのうちの1つ、例えば4mmから12mmまでの拡張・形状固定ステップを省いただけも、形状固定中にステントが破砕するおそれがある。一連の形状固定ステップによってニチノールを漸次形成するこのようなプロセスは、コストが高く多大な時間がかかる。
【0007】
ニチノール・チューブの拡張前にニチノール・ステントを冷却して、熱誘起マルテンサイトを形成することも、当業者には一般的なことである。室温では主としてオーステナイトであるニチノール・チューブは、熱誘起マルテンサイトを形成するために先ず冷却されると、変形して直径方向に拡張するのが容易になる。マルテンサイト・ニチノールはオーステナイト・ニチノールよりも変形しやすいので、ニチノール・チューブの拡張前に熱誘起マルテンサイトを形成すると、ステント内の亀裂形成が最小限に抑えられると考えられている。ニチノール・チューブ拡張前にこのようにマルテンサイトを熱誘起するにもかかわらず、ニチノール・チューブの拡張中のクラック形成は問題である。ニチノール・チューブ拡張前にマルテンサイトを熱誘起しても、ニチノール・チューブを直径方向に拡張して形状固定するための漸次的な拡張ステップの必要性はなくなってはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、従来技術の欠点を克服するニチノール医療機器形成法を有することが必要である。本発明はこのような解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ニチノールを形成する方法が提供される。一実施態様において、ニチノールは、歪みのない状態又は最小限の歪みのある状態において、少なくとも300℃~約650℃の形状固定温度に晒される。次いで、ニチノールの形状は、この高温時に、実質的に変形させられる。変形後、ニチノールは、材料を形状固定するために、所定の時間にわたって所望の形状に拘束されながら、この高温で保持される。別の実施態様において、ニチノールは、この高温時に、1回又は2回以上変形させられてもよい。次いで、ニチノールは、依然として拘束されながら、例えば水焼き入れ又は空気冷却によって、ほぼ室温(約20℃)に戻される。
【0010】
したがって、本発明の一実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を形成する方法であって、初期形状を有するSMA物品を用意すること、ここで、前記SMAは形状固定温度を有する、前記SMA物品をおよそ前記形状固定温度に加熱すること、前記SMA物品がおよそその形状固定温度にある間に、前記SMA物品を最終形状に変形させること、及び、前記SMA物品を拘束した状態で冷却し、これにより前記最終形状を実質的に保持することを含む、前記方法を含む。一実施態様において、前記SMA物品がおよそその形状固定温度にある間に前記SMA物品を変形させた後、前記変形させたSMA物品をおよそその形状固定温度に留まらせる。別の実施態様において、前記形状固定温度は約300℃~約650℃である。別の実施態様において、前記SMAはニチノールである。別の実施態様において、前記SMA物品を前記最終形状に変形させることは、内力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMA物品を前記最終形状に変形させることは、外力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMA物品を前記最終形状に変形させることは、テーパ状マンドレルを使用することによって達成される。別の実施態様において、前記SMA物品は医療機器に成形される。別の実施態様において、前記医療機器は埋め込み可能な医療機器である。別の実施態様において、前記埋め込み可能な医療機器は、ステント、心臓オクルーダ、弁及び管腔内フィルタから成る群から選択される。別の実施態様において、前記SMA初期形状は、機械加工によって成形されたものである。別の実施態様において、前記機械加工は、レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び/又は化学エッチングを含む。
【0011】
本発明の別の実施態様は、ステントを形成する方法であって、機械加工された形状記憶合金(SMA)チューブを用意すること、ここで、前記機械加工されたSMAチューブは、ステント・パターン、第1の(小)直径及び形状固定温度を有する、前記機械加工されたSMAチューブをおよそ前記形状固定温度に加熱すること、前記機械加工されたSMAチューブがおよそその形状固定温度にある間に、前記機械加工されたSMAチューブを第2の(大)直径に変形させること、及び、前記SMA物品を拘束した状態で冷却し、これにより前記第2の直径を実質的に保持することを含む、前記方法を含む。一実施態様において、前記機械加工は、レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び/又は化学エッチングを含む。別の実施態様において、前記ステント・パターンは正弦曲線形状、ダイヤモンド形状、U字形状、V字形状又は卵形状(ovaloid shape)を含む。別の実施態様において、前記SMAチューブは円形断面を有する。別の実施態様において、前記SMAチューブがおよそ前記形状固定温度にある間に前記SMAチューブを変形させた後、前記変形させたSMAチューブをおよそ前記形状固定温度に維持する。別の実施態様において、前記形状固定温度は約300℃~約650℃である。別の実施態様において、前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることは、内力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることは、外力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることは、テーパ状マンドレルを使用することによって達成される。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約1.25:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約1.5:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約2:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約3:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約4:1よりも大きい。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、第1の状態と第2の状態と第3の状態との間を推移するように調整された形状記憶合金(SMA)物品を含む医療機器であって、前記SMAは形状固定温度を有し、前記物品は、第1の状態において、第1の環状周縁(circumferential perimeter)を有し、前記物品は、第2の状態において、複数の環状周縁を有し、前記物品は、第3の状態において、第3の環状周縁を有し、前記第2の状態における各環状周縁は、前記第1の状態における環状周縁よりも大きく、かつ、前記第3の状態における環状周縁よりも小さく、そして、前記形状記憶合金(SMA)物品は、前記第1の状態と前記第2の状態と前記第3の状態との間を推移する間、前記形状固定温度に維持される、前記医療機器を含む。
【0013】
本発明の別の実施態様は、SMA物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブと、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルと、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品とを備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記SMAはニチノールである。別の実施態様において、前記SMA物品は医療機器である。別の実施態様において、前記医療機器は、ステント、心臓オクルーダ、弁及び管腔内フィルタから成る群から選択される。
【0014】
本発明の別の実施態様は、SMA物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブを備え、前記装置は、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルを備え、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの少なくとも一部を取り囲み、前記装置は、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品を備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第1の部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第2のテーパ部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記拡張マンドレルは、本質的に一定の第2の周縁を有する第3の部分をさらに含む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第3の部分の少なくとも一部を取り囲む。
【0015】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びており、(vii)前記チューブは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を有し、(viii)前記チューブは、第2のテーパ部分を有し、(ix)前記第2のテーパ部分は、前記チューブの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有する、前記チューブと、並進器具であって、(i)前記並進器具は、前記スロット付き細長チューブの貫通ルーメンを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定されたロッドを含み、(ii)前記ロッドは、前記スロット付き細長チューブの壁を貫通する前記スロットを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定された少なくとも2つのフィンを有する、前記並進器具と、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品とを備える、前記装置を含む。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の方法によれば、ニチノール・チューブ(例えばステント)を著しく大きい直径(例えば6倍以上)に単一処理ステップで拡張することができる。
【0017】
本発明の例示的実施態様を添付の図面との関連において説明する。図面中、必要に応じて、類似の符号が類似のエレメントを示しており、100だけずらされている。添付の図面は、本発明のさらなる理解を可能にするために含まれており、本明細書中に組み込まれ、また本明細書の一部を構成し、本発明の実施態様を図示し、そして本明細書と一緒に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、技術分野において現在知られている複数ステップ熱成形プロセスを示す時間/温度のグラフである。
【0019】
【
図2】
図2は、本発明による単一ステップ熱成形プロセスを示す時間/温度のグラフである。
【0020】
【
図3】
図3A及び3Bは、拡張前及び拡張後のカット済パターン化チューブを示す斜視図である。
【0021】
【
図4】
図4は、スロット付きマンドレル、拡張ダイ及び引張りロッドを示す、本発明の拡張フィクスチャの斜視図である。
【0022】
【
図5A】
図5Aは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及びステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0023】
【
図5B】
図5Bは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及びステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0024】
【
図5C】
図5Cは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及び部分拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0025】
【
図5D】
図5Dは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及び完全拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0026】
【
図5E】
図5Eは、スロット付きマンドレル及び完全拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0027】
【
図6A】
図6Aは、本発明のスロット付きチューブ及び拡張されていないステントの斜視図である。
【0028】
【
図6B】
図6Bは、本発明のテーパ状マンドレルの斜視図である。
【0029】
【
図6C】
図6Cは、スロット付きチューブ、テーパ状マンドレル及び拡張されていないステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の斜視図である。
【0030】
【
図6D】
図6Dは、スロット付きチューブ、テーパ状マンドレル及び拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
技術分野において現在知られているように、種々の直径及び壁厚を有するニチノール・チューブを、所望のパターン、例えば、ステント・パターンを形成するようにカットすることができる。カット済チューブを拡張フィクスチャ上に置き、周囲温度にある間に約20%拡張することができる。カット済チューブ及び拡張フィクスチャを次いで高温に加熱し、そして好適な滞留時間後、カット済チューブ及びフィクスチャを焼き入れすることによって、カット済チューブを周囲温度に戻すことができる。このプロセスを繰り返してよく、各サイクルはチューブをさらに約20%拡張する結果として直径を所望の直径にする(すなわち100%拡張)。
【0032】
図1には、技術分野において広く知られている典型的な拡張プロセスを示す時間/温度のグラフが示される。この例において、5ステップ拡張プロセスが示され、それぞれの拡張は、およそ周囲温度(約20℃)で発生する。5つの拡張ステップのそれぞれは、カット済チューブを、その拡張された直径の約20%拡張させる。それぞれの拡張後、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを約500℃に加熱し、そして好適な滞留の後、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを水焼き入れし、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを周囲温度に戻す。図示されるように、プロセスは4回さらに繰り返され、その結果として所望の直径が得られる(総拡張率は約100%)。
【0033】
図2は(
図1と同じ軸を有する)グラフであり、カット済チューブを単一拡張ステップで所望の直径(すなわち約100%拡張率)に拡張するプロセスを示している。
図2に示されるように、カット済チューブを拡張フィクスチャに載置する。次いで、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを高温に加熱することができ、そして、この高温時に、拡張フィクスチャを活性化させることにより、カット済チューブを単一拡張ステップで約100%拡張することができる。別の実施態様において、前記拡張フィクスチャを活性化させることにより、カット済チューブを約200%、約300%、約400%及び/又は約500%拡張することができる。
図1を
図2と比較することによって、本明細書中で教示される方法が、ニチノール・チューブを拡張するためのステップ数、ひいては時間を低減することが明らかである。
【0034】
図3Aは、初期小直径302を有する典型的なカット済チューブ300aの部分斜視図である。カット済チューブ300aは、埋め込み可能なステントに典型的な、山304と谷306とを含む波状形状を有する。
図3Bは、大直径308に拡張された後の、拡張されたカット済チューブ300bの部分斜視図である。大直径308は、初期小直径302よりも約100%大きい。チューブ300aは任意の所望のパターンを有するようにカットすることができる。例えば、チューブ300aは、個別リング、相互接合リング、オープン及び/又はクローズド・セル、あるいは、正弦曲線形状、ダイヤモンド形状、U字形状、V字形状又は卵形状のような形状、あるいは、所与の用途に合わせて調整された任意の他のパターンを形成するようにカットすることができる。チューブ300aは、ニチノール又は形状固定温度範囲を有する任意の他の同様の金属を含むことができる。ニチノールは、二元ニッケル-チタン二元形状記憶合金、並びに、合金化元素(例えば、これらに限定されるものではないが、鉄、ニオブ、クロム、銅、コバルト、バナジウム、白金及びハフニウム)の三元及び四元添加を含むニッケル-チタン系合金を含む合金群を意味する。形状記憶合金は、ニチノール合金、並びに、可逆結晶相変化し得る他の合金(例えば、これらに限定されるものではないが、AgCd、AuCd、CuAlZn、CuAlNi、CuAlBe、CuSn、NiAl、FePt、FePd,MnCu及びFeMnSi合金系)を含む。
【0035】
チューブ300aは、約0.5mm~約100mmの範囲の直径を有することができ、好ましい範囲は約2mm~約40mmである。チューブ300aは、約0.05mm~約10mmの範囲の壁厚を有することができ、好ましい範囲は約0.1mm~約0.5mmである。チューブ300aの長さは約1mm~約250mmの範囲であることができる。チューブ300aの長さは、任意の具体的な用途に従って形成することができる。
【0036】
図4には、少なくとも1つの拡張フィクスチャ400の斜視図が示される。この例において、拡張フィクスチャ400は、高温金属、例えば、インコネル、ステンレス鋼又は他の好適な材料から製作されたテーパ状の、スロット付きチューブ状マンドレル402を含む。スロット付きマンドレル402は、大直径部分404と、中間テーパ部分406と、小直径部分408と、一連の長手方向スロット410とを有する。長手方向スロット410は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、スロット付きマンドレルの小直径部分及びテーパ部分(408及び406)を通じて延びている。長手方向スロット410は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、
図4に示されるように部分的にのみ大直径部分404に沿って延びている。任意の形態において、長手方向スロットは、らせんを形成することができる。中間テーパ部分は、必要に応じて、一定のテーパ角度の代わりに、変化したテーパ角度又は鋭い部分を有することができる。
【0037】
拡張フィクスチャ400は、さらに、
図4に示されるような一連のフィン414を有する拡張ダイ412を含む。拡張ダイ412のフィン414は、スロット付きマンドレル402のスロット410と係合して、拡張ダイのフィン414が方向矢印416によって示される長手方向軸に沿って、スロット付きマンドレル402の長手方向スロット410を通じてスライドすることを可能にする。
【0038】
図4にさらに示されるように、拡張ダイ412は、引張りロッド418に結合している。引張りロッド418は、チューブ状スロット付きマンドレル402の中心孔を通じて延び、そして、スロット付きマンドレル402のカラー部分422から外へ延びている。引張りロッド418が、方向矢印416,420によって示される長手方向軸に沿って引張られると、拡張ダイ412は、スロット付きマンドレル402の小直径部分408と中間テーパ部分406と大直径部分404とに被さるように強制的にスライドさせられる。
【0039】
スロット付きマンドレル402のカラー部分422は、スロット付きマンドレルを熱源(図示せず)に固定するように構成されている。スロット付きマンドレル402及び拡張ダイ412は、熱源内部に位置決めされる。熱源は、引張りロッド424の端部(拡張ダイの反対側)が熱源から突出することを可能にするように構成されている。
【0040】
したがって、本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブと、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルと、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品とを備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記SMAはニチノールである。別の実施態様において、前記SMA物品は医療機器である。別の実施態様において、前記医療機器は、ステント、心臓オクルーダ及び管腔内フィルタから成る群から選択される。
【0041】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブを備え、前記装置は、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2テーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルを備え、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの少なくとも一部を取り囲み、前記装置は、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品を備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第1の部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第2のテーパ部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記拡張マンドレルは、本質的に一定の第2の周縁を有する第3の部分をさらに含む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第3の部分の少なくとも一部を取り囲む。
【0042】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びており、(vii)前記チューブは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を有し、(viii)前記チューブは、第2のテーパ部分を有し、(ix)前記第2のテーパ部分は、前記チューブの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有する、前記チューブと、並進器具であって、(i)前記並進器具は、前記スロット付き細長チューブの貫通ルーメンを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定されたロッドを含み、(ii)前記ロッドは、前記スロット付き細長チューブの壁を貫通する前記スロットを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定された少なくとも2つのフィンを有する、前記並進器具と、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲むSMA物品とを備える、前記装置を含む。
【0043】
拡張フィクスチャ400を加熱するためには、任意の好適な熱源を使用することができる。この熱源は、流動浴、塩浴、高温液体、高温ガス、放射加熱、誘導加熱、対流加熱、電気抵抗加熱、ラジオ周波数加熱、伝導加熱又は種々異なるエネルギー源の組み合わせを含む。
【0044】
したがって、本発明の一実施態様は、カット済チューブを拡張する方法であって、金属チューブをカットすることにより所望のカット・パターンを形成する工程、前記カット済金属チューブをスロット付きテーパ状マンドレルの小直径部分上に置く工程、前記スロット付きテーパ状マンドレルの中心孔に、拡張ダイが取り付けられた引張りロッドを挿入する工程、前記スロット付きテーパ状マンドレルのスロット内に(前記拡張ダイと一体的な)一連のフィンを係合させる工程、前記引張りロッドの端部が前記熱源の外へ延びるように、前記カット済チューブ、前記スロット付きテーパ状マンドレル及び前記拡張ダイを熱源内に入れる工程、前記カット済チューブ、前記スロット付きテーパ状マンドレル及び前記拡張ダイを高温(形状固定温度)に加熱する工程、前記引張りロッドを(前記カット済チューブ、前記スロット付きテーパ状マンドレル及び前記拡張ダイの形状固定温度を維持しながら)並進させることによって、前記スロット付きテーパ状マンドレルの小直径部分とテーパ部分と大直径部分とに被さるように前記拡張ダイを強制的にスライドさせる工程を含み、前記引張りロッドが並進させられるのに伴って、前記拡張ダイのフィンは、前記カット済SMAチューブに係合するとともに、前記スロット付きテーパ状マンドレルの小直径部分とテーパ部分と大直径部分とに被さるように前記カット済SMAチューブを強制的にスライドさせられる、前記方法を含む。
【0045】
本発明によるカット済SMAチューブの1つの拡張プロセスを
図5A~5Eに示す。
図5Aには、拡張フィクスチャ500が示される。拡張フィクスチャ500は、テーパ状の、スロット付きチューブ状マンドレル502を含む。スロット付きマンドレル502は大直径部分504と、中間テーパ部分506と、小直径部分508と、一連の長手方向スロット510とを有する。長手方向スロット510は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、スロット付きマンドレルの小直径部分及びテーパ部分(508及び506)を通って延びている。長手方向スロット510は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、
図5Aに示されるように部分的にのみ大直径部分504に沿って延びている。
【0046】
初期小直径を有するカット済チューブ524aは、スロット付きマンドレル502の小直径部分508に被せられる。
【0047】
スロット付きマンドレル502のスロット510と係合するように形成された一連のフィン(
図4の414)を有する拡張ダイ512が、引張りロッド518に結合されている。引張りロッド518は、チューブ状スロット付きマンドレル502の中心孔を通って延び、そして拡張ダイとは反対側のスロット付きマンドレル端部から出て延びている。
【0048】
図5Bに示されるように、引張りロッド518を矢印520によって示された方向に並進させ、拡張ダイ512を前進させ、そして拡張ダイのフィン(
図4の414)がスロット付きマンドレル502のスロット510と係合することを可能にする。
【0049】
次いで、カット済チューブの拡張フィクスチャを加熱チャンバ上に置き、これにより、カラー部分522及び突出する引張りロッド518は加熱されたチャンバの外側(方向矢印525によって示される)に位置する一方、スロット付きマンドレル502の残りの部分、拡張ダイ512及びカット済チューブ524aは加熱チャンバの加熱された領域(方向矢印526によって示される)に晒される。次いで、加熱チャンバの温度を所望の温度に上昇させる。塩浴又は同様の熱移動媒体を使用する場合、媒体は予熱するか、又は所望の高温に完全加熱することができる。
【0050】
図5Cに示されるように、加熱されたチャンバ内部に適切に滞留させた後、引張りロッド518を方向520に沿ってさらに前進させて、拡張ダイ512が、スロット付きマンドレル502のテーパ部分506にカット済チューブ524bを強制的に被せるようにする。
【0051】
図5Dに示されるように、引張りロッド518を方向520に沿ってさらに前進させて、拡張ダイ512が、スロット付きマンドレル502の大直径部分504にカット済チューブ524cを強制的に被せるようにする。引張りロッド518の並進運動は、連続運動、間欠運動又は可変速度運動を含むことができる。
【0052】
完全拡張されたカット済チューブ524cを有する拡張フィクスチャ500を次いで加熱チャンバから取り出す。引張りロッド518及び拡張ダイ512をスロット付きマンドレル522から引き出す。スロット付きマンドレル502及び完全拡張されたカット済チューブ524cを次いで数位温度水浴内で焼き入れする。周囲温度に達した後、完全拡張されたカット済チューブ524cをスロット付きマンドレル502から取り出すことができる。
【0053】
図5A~5Eには短い長さのチューブが記載されているが、いかなる長さのチューブも上記プロセスを用いて拡張することができる。スロット付きマンドレル402,502の大直径部分404,504は、任意の長さのチューブを適応させるようにいかなるサイズを有することもできる。
【0054】
図5A~5Eに示されるプロセスは、SMAチューブを拡張するために内力(拡張されるべきチューブに対して内側の力)を使用する1つの方法であるが、他の方法を用いることもできる。これらは、前記マンドレルに被さるチューブを拡張する拡張マンドレルを含む。
【0055】
別の実施態様において、カット済SMAチューブの拡張は、チューブを引き開く外力を加えることによって達成される。チューブの特定領域を把持するフック又はクランプがチューブを引き開くことにより、チューブを拡張することができる。
【0056】
本発明の特定の実施態様が本明細書中に示され説明されているが、本発明はこのような例示及び記述に限定されるべきではない。以下の請求項の範囲内で変更及び改変が本発明の一部として組み込まれ具体化され得る。下記例は本発明を例示するためにさらに提供される。
【0057】
例
例1:スロット付きマンドレル上のカット済ニチノール・チューブのローディング及び拡張
図5A及び5Bに示されるニチノール・ステント・リング524aを得た。ステント・リング524aは、内径(ID)が約4mm、壁厚が約0.5mmのニチノール・チューブからレーザーカットした。ステント・リング524aの長さは約10mmであった。
【0058】
図4に示されるように、好適な高温鋼から成るテーパ状スロット付きマンドレル402を特別に製作した。スロット付きマンドレル420の大直径404は約26mmであった。スロット付きマンドレル402の小直径は約8mmであった。スロット付きマンドレル402の長さは約11cmであった。好適な高温鋼から成る拡張ダイ412を特別に製作した。
【0059】
ダイのフィン414がスロット付きマンドレル402のスロット410と係合して、拡張ダイ412がスロット付きマンドレル402を通ってスライドするのを可能にするように、拡張ダイ412を設計した。
【0060】
拡張ダイ142は例えばレーザー溶接によって引張りロッド418に取り付けられる。引張りロッド418は直径が約2mm、長さが約60cmであり、好適な高温鋼から製作される。熱処理部分のために使用される流動浴(Techne Fluidized Bath Model FB-08)を入手した。
【0061】
図5Aに示されるように、ステント・リング524aをスロット付きマンドレル502の小直径508上にローディングした。IDが約4mmのステント・リング524aを、スロット付きマンドレル502の約8mmの小直径端部508上にローディングするために、一方の端部の直径が約4mmであり、反対側の端部の直径が約8mmであるテーパ状マンドレルを使用して、ステント・リング524aを先ず約8mmまで拡張した(室温)。この時点で、ステントは最小限に拘束されている(又は実質的に拘束されていない)。テーパ状マンドレルの約8mmの端部を次いで、スロット付きマンドレル502の約8mmの小直径端部508に当接させ、そして、ステント・リング524aをテーパ状マンドレルからスロット付きマンドレル502へ室温で移した。
図5Aに示されるように、拡張ダイ512が取り付けられている引張りロッド518をスロット付きマンドレルに挿入した。拡張ダイ512のフィン414(
図4)を、
図5Bに示されるように、スロット付きマンドレル502のスロット510と係合させた。
【0062】
スロット付きマンドレル502と、ステント・リング524aと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を、次いで約550℃の温度まで予熱された流動浴内に浸し、そして約3分間にわたって滞留させておいた。約3分後に、引張りロッド518を
図5Bに示される位置から、
図5Dに示される位置へ引き上げた。
図5Bに示される位置から
図5Dに示される位置へ引張りロッド518を引き上げるのに約2秒かかった。上向きの力が引張りロッド518に加えられるのに伴って、取り付けられた拡張ダイ512のフィン414(
図4)は、ステント・リング524bに力を加え、これを
図5Cに示されるようにスロット付きマンドレル502に沿って引き上げる。スロット510及びフィン414(
図4)の配向はまた、
図5Dに示されるようにステント・リング524cの均一な直径方向の拡張を維持するのに役立つ。次いで、予熱された流動浴内の約15分間の滞留時間後、スロット付きマンドレル502と、拡張されたステント・リング524cと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を流動浴から取り出し、水焼き入れした。次いで、引張りロッド518及び取り付けられた拡張ダイ512をスロット付きマンドレル502から取り出した。流動浴内の熱処理及び形状固定に続く、拡張されたニチノール・ステント・リング524c及びスロット付きマンドレル502は
図5Eに示される。得られたニチノール・ステント・リング524cは、直径約26mmに拡張され、形状固定された。
【0063】
図4を参照すると、付加的なフィクスチャを使用して、ステントを拡張するスロット付きマンドレル402を流動浴と連動させる(interface)ことができることは、当業者に明らかである。このようなフィクスチャを適応させるために、スロット付きマンドレル402を切削することによってカラー422を形成することができる。カラー422は、流動浴の加熱された媒体中にマンドレルを安全に浸すのを可能にする付加的なフィクスチャを取り付けるために使用することができる。
【0064】
当業者には明らかなように、本発明に種々の改変を加えることができる。例えば、
図4に示されるようなスロット付きマンドレル402は、8つのスロット410の代わりに、4つのスロット410を有することもできる。加えて、拡張ダイ412は、8つのフィン414の代わりに、4つのフィン414を有することもできる。加えて、スロット付きマンドレルの長さ及びその結果としてのテーパ角度を改変することもできる。例えば、スロット付きマンドレル402の長さを約11cmの代わりに20cmまで増大することもできる。このことは、ステント拡張中に必要とされる力を低減する場合がある。
【0065】
例2:カット済ニチノール・チューブの加熱なしの拡張
図5A~5Eを参照して、例1の方法及び材料を用いて、スロット付きマンドレル502上にニチノール・ステント・リング524aをローディングした。次いで、
図5Bに示される位置から
図5Dに示される位置へ引張りロッド518を引き上げることによって、ステント・リング524aをおよそ室温(約20℃)で拡張した。
図5Dに示されるような、スロット付きマンドレル502と、ステント・リング524cと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を次いで、約550℃の温度まで予熱された流動浴内に浸し、そして約15分間にわたって滞留させておいた。
【0066】
次いで、スロット付きマンドレル502と、ステント・リング524cと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を流動浴から取り出し、水焼き入れした。得られたニチノール・ステント・リングは破砕され、ステント・リング内に完全な不連続性を有した。
【0067】
例3:拡張可能なマンドレルを使用したカット済ニチノール・チューブの拡張
図6A~6Dには別の拡張フィクスチャが示される。
図6A及び6Cに示されるスロット付きチューブ610を好適な高温鋼から形成した。その長さは約15cmである。スロット付きチューブは、内径が4.2mmであり、壁厚が約0.25mmである。チューブ内に切り抜かれたスロット604及び得られたチューブ・セグメント606は、それぞれ、長さが約12cmである。
【0068】
図6Bに示されるように、テーパ状マンドレル618を好適な高温鋼から形成した。その長さは約40cmである。大直径区分612は、直径が約8mmであり、長さが約8cmである。小直径区分616は、直径が約4mmであり、長さが約28cmである。テーパ状マンドレル618のテーパ区分614は、約8mmの直径から約4mmの直径へ推移し、その長さは約4cmである。
【0069】
図6Aに示されるニチノール・ステント624を得た。ステント・リング624は、内径(ID)が約4.1mm、壁厚が約0.25mmのニチノール・チューブからレーザーカットした。ステントの長さは約60mmであった。ステント624をスロット付きチューブ610上に、スロット付きチューブ610のスロット付き端部602に近づけてローディングした。次いで、テーパ状マンドレル618の小直径端部616をスロット付きチューブ610のスロット付き端部602内に挿入した。
【0070】
熱処理部分のために使用される流動浴(Techne Fluidized Bath Model FB-08)を入手した。
【0071】
図6Cに示されるような、スロット付きチューブ610と、ステント624と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を、次いで約550℃の温度まで加熱された流動浴内に浸し、そして約3分間にわたって滞留させておいた。この約3分後に、テーパ状マンドレル618を
図6Cに示される方向620で、
図6Dに示される位置へ引いた。
図6Cに示される位置から
図6Dに示される位置へテーパ状マンドレル618を引くのに約3秒かかった。
【0072】
予熱された流動浴内の約15分間の滞留後、
図6Dに示される、拡張されたスロット付きチューブ628と、拡張されたステント626と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を、次いで流動浴から取り出し、そして水焼き入れした。次いで、熱処理及び形状固定に続いて、拡張されたステント626を、拡張されたスロット付きチューブ628から取り出した。結果としてのニチノール・ステントは、直径約8.5mmに拡張され形状固定された。
【0073】
図6A及び6Bに示されるステント拡張ハードウェアを流動浴と連動させるために、付加的なフィクスチャを使用することができることは当業者に明らかである。加えて、ステント拡張ハードウェアと流動浴との連動を改善するために、
図6A及び6Bに示されるハードウェアの寸法を改変し得ることも当業者に明らかである。例えば、流動浴の加熱された媒体のレベルを十分に超えて延びるように、テーパ状マンドレル618の小直径端部616の長さを必要に応じてさらに延ばすことができる。加えて、流動浴の加熱された媒体のレベルを超えて十分に延びるように、スロット付きチューブ610の切り込まれていない端部608の長さをさらに延ばすこともできる。
【0074】
当業者に明らかなように、本発明に種々の改変を加えることができる。例えば、
図6Aに示されるようなスロット付きチューブ610は4つのスロット604の代わりに8つのスロット604を有することもできる。加えて、テーパ状マンドレル618は、スロット付きチューブ610のセグメント606との連動を可能にする長手方向溝を有することもできる。これらの溝は、セグメントがテーパ状マンドレル618のテーパ614に移動するのに伴って、セグメント606の拡張を制御することになる。
【0075】
例4:拡張可能なマンドレルを使用したカット済ニチノール・チューブの熱処理なしの拡張
例3の方法及び材料を用いて、スロット付きマンドレル610上にニチノール・ステント624をローディングした。次いで
図6Cに示される方向で
図6Dに示される位置へテーパ状マンドレル618を引くことによって、ステント624をおよそ室温(約20℃)で拡張した。
図6Cに示されるような、スロット付きチューブ610と、ステント624と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を、次いで、約550℃の温度まで予熱された流動浴内に浸し、そして約15分間にわたって滞留させておいた。次いで、拡張されたスロット付きチューブ628と、拡張されたステント626と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を流動浴から取り出し、水焼き入れした。得られたニチノール・ステント626は多数の破砕個所を有した。
【0076】
上記実施態様及び下記請求項に関するのに加えて、本発明はさらに、上記特許及び下記請求項の種々異なる組み合わせを有する実施態様に関する。このようなものとして、本発明はまた、下記請求項に記載された独立した特徴の任意の他の考えられ得る組み合わせを有する他の実施態様に関する。
【0077】
本発明の構造及び機能の詳細とともに好ましい実施態様及び代替実施態様を含めて、本発明の数多くの特徴及び利点が前記説明中に示される。本開示は一例を示すものとして意図されたに過ぎず、そのようなものとして包括的であることを意図するものではない。当業者には明らかであるように、添付の請求項が表現される用語の広い一般的な意味によって示される十分な範囲まで、本開示の原理の中で特に構造、材料、エレメント、成分、形状、サイズ及び部分の配置関係に関して種々の改変を加えることができる。これらの種々の改変は添付の請求項の思想及び範囲を逸脱することがない範囲まで、本開示に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
種々の身体血管の疾患を治療するために、経皮送達式の種々の血管内体内プロテーゼを採用することがよく知られている。これらのタイプの体内プロテーゼは一般にステントと呼ばれる。ステントは一般に、生体適合性材料、例えばニチノールから形成されたチューブ状機器である。レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び化学研磨のような方法によってカットされたニチノール・チューブからステントを製作することが一般に知られている。ニチノールは形状記憶合金(SMA)と考えられている。ニチノールはまた形状固定温度を有する。形状固定温度は、形状記憶合金(SMA)物品が、所定の時間にわたって拘束形状で当該温度に晒されると、物品が続いて拘束を解かれたときにその拘束形状を実質的に維持することになる、温度範囲内の任意の温度として定義される。
【0002】
ニチノール・チューブの製造は高価である。ニチノール・チューブの直径が大きくなればなるほど、ニチノール・チューブはより高価になる。大直径ニチノール・チューブのコスト制約の結果、小直径ニチノール・チューブにパターン(例えばステント・パターン)をカットし、次いでこれらのチューブを漸次拡張して形状固定することにより、より大きい直径のニチノール・チューブ(及び/又はニチノール・ステント)が作製されている。
【0003】
1つの一般的なニチノール形状固定法は、室温(通常約20℃)又は室温未満でニチノールを所望の形状に変形させて拘束することを伴う。次いで、例えば炉内で所定の時間(通常約5~20分間)にわたってニチノールを所望の形状で拘束しながら、これを高温(通常約500℃)に晒す。次いで、ニチノールを水焼き入れするか又は空気冷却させておくことによって、ニチノールを室温まで冷却する。この形状固定プロセスは、ニチノールに新しい形状を与える。新しい形状は、カット済チューブを特異的に事前変形させて拘束した結果である。
【0004】
カット済ニチノール・チューブを拡張する場合、一連の漸次的な拡張・形状固定ステップが一般に用いられる。伝統的なニチノール・ステント機器製造法は、Poncin他によって記載されている(SMST-2000 Conference Proceedings, pp 477-486)。この文献には「機器は、熱処理を伴う一連の漸進的な形状固定ステップによってその最終サイズに拡張される」と述べられている。一連の漸次的拡張ステップを用いると、形状固定中のカット済ニチノール・チューブの破砕又は亀裂の発生が低減される。
【0005】
一例において、外径約4mmのニチノール・チューブにステント・パターンをレーザーカットすることができる。この4mmカット済チューブを24mmカット済チューブに拡張するためには、一連の漸次的拡張ステップを採用することになる。例えば、カット済チューブを4mm直径から8mm直径へ拡張し、次いで形状固定する。次にこのカット済チューブを8mm直径から12mm直径へ拡張し、次いで形状固定する。そしてこれを、所望の24mm直径カット済チューブが得られるまで続ける。
【0006】
形状固定プロセス中のステント破砕を回避するために、ステント形成に際しては一連の拡張ステップを利用することが一般的である。上記例は5つの拡張ステップを利用して、直径24mmの所望のステントを得た。これらの拡張ステップのうちの1つ、例えば4mmから12mmまでの拡張・形状固定ステップを省いただけも、形状固定中にステントが破砕するおそれがある。一連の形状固定ステップによってニチノールを漸次形成するこのようなプロセスは、コストが高く多大な時間がかかる。
【0007】
ニチノール・チューブの拡張前にニチノール・ステントを冷却して、熱誘起マルテンサイトを形成することも、当業者には一般的なことである。室温では主としてオーステナイトであるニチノール・チューブは、熱誘起マルテンサイトを形成するために先ず冷却されると、変形して直径方向に拡張するのが容易になる。マルテンサイト・ニチノールはオーステナイト・ニチノールよりも変形しやすいので、ニチノール・チューブの拡張前に熱誘起マルテンサイトを形成すると、ステント内の亀裂形成が最小限に抑えられると考えられている。ニチノール・チューブ拡張前にこのようにマルテンサイトを熱誘起するにもかかわらず、ニチノール・チューブの拡張中のクラック形成は問題である。ニチノール・チューブ拡張前にマルテンサイトを熱誘起しても、ニチノール・チューブを直径方向に拡張して形状固定するための漸次的な拡張ステップの必要性はなくなってはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、従来技術の欠点を克服するニチノール医療機器形成法を有することが必要である。本発明はこのような解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ニチノールを形成する方法が提供される。一実施態様において、ニチノールは、歪みのない状態又は最小限の歪みのある状態において、少なくとも300℃~約650℃の形状固定温度に晒される。次いで、ニチノールの形状は、この高温時に、実質的に変形させられる。変形後、ニチノールは、材料を形状固定するために、所定の時間にわたって所望の形状に拘束されながら、この高温で保持される。別の実施態様において、ニチノールは、この高温時に、1回又は2回以上変形させられてもよい。次いで、ニチノールは、依然として拘束されながら、例えば水焼き入れ又は空気冷却によって、ほぼ室温(約20℃)に戻される。
【0010】
したがって、本発明の一実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を形成する方法であって、初期形状を有するSMA物品を用意すること、ここで、前記SMAは形状固定温度を有する、前記SMA物品をおよそ前記形状固定温度に加熱すること、前記SMA物品がおよそその形状固定温度にある間に、前記SMA物品を最終形状に変形させること、及び、前記SMA物品を拘束した状態で冷却し、これにより前記最終形状を実質的に保持することを含む、前記方法を含む。一実施態様において、前記SMA物品がおよそその形状固定温度にある間に前記SMA物品を変形させた後、前記変形させたSMA物品をおよそその形状固定温度に留まらせる。別の実施態様において、前記形状固定温度は約300℃~約650℃である。別の実施態様において、前記SMAはニチノールである。別の実施態様において、前記SMA物品を前記最終形状に変形させることは、内力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMA物品を前記最終形状に変形させることは、外力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMA物品を前記最終形状に変形させることは、テーパ状マンドレルを使用することによって達成される。別の実施態様において、前記SMA物品は医療機器に成形される。別の実施態様において、前記医療機器は埋め込み可能な医療機器である。別の実施態様において、前記埋め込み可能な医療機器は、ステント、心臓オクルーダ、弁及び管腔内フィルタから成る群から選択される。別の実施態様において、前記SMA初期形状は、機械加工によって成形されたものである。別の実施態様において、前記機械加工は、レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び/又は化学エッチングを含む。
【0011】
本発明の別の実施態様は、ステントを形成する方法であって、機械加工された形状記憶合金(SMA)チューブを用意すること、ここで、前記機械加工されたSMAチューブは、ステント・パターン、第1の(小)直径及び形状固定温度を有する、前記機械加工されたSMAチューブをおよそ前記形状固定温度に加熱すること、前記機械加工されたSMAチューブがおよそその形状固定温度にある間に、前記機械加工されたSMAチューブを第2の(大)直径に変形させること、及び、前記SMA物品を拘束した状態で冷却し、これにより前記第2の直径を実質的に保持することを含む、前記方法を含む。一実施態様において、前記機械加工は、レーザーカット、ウォータージェット・カット、放電機械加工及び/又は化学エッチングを含む。別の実施態様において、前記ステント・パターンは正弦曲線形状、ダイヤモンド形状、U字形状、V字形状又は卵形状(ovaloid shape)を含む。別の実施態様において、前記SMAチューブは円形断面を有する。別の実施態様において、前記SMAチューブがおよそ前記形状固定温度にある間に前記SMAチューブを変形させた後、前記変形させたSMAチューブをおよそ前記形状固定温度に維持する。別の実施態様において、前記形状固定温度は約300℃~約650℃である。別の実施態様において、前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることは、内力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることは、外力を加えることによって達成される。別の実施態様において、前記SMAチューブを前記第2の形状に変形させることは、テーパ状マンドレルを使用することによって達成される。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約1.25:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約1.5:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約2:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約3:1よりも大きい。別の実施態様において、前記第2の(大)直径形状の、前記第1の(小)直径形状に対する比は、約4:1よりも大きい。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、第1の状態と第2の状態と第3の状態との間を推移するように調整された形状記憶合金(SMA)物品を含む医療機器であって、前記SMAは形状固定温度を有し、前記物品は、第1の状態において、第1の環状周縁(circumferential perimeter)を有し、前記物品は、第2の状態において、複数の環状周縁を有し、前記物品は、第3の状態において、第3の環状周縁を有し、前記第2の状態における各環状周縁は、前記第1の状態における環状周縁よりも大きく、かつ、前記第3の状態における環状周縁よりも小さく、そして、前記形状記憶合金(SMA)物品は、前記第1の状態と前記第2の状態と前記第3の状態との間を推移する間、前記形状固定温度に維持される、前記医療機器を含む。
【0013】
本発明の別の実施態様は、SMA物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブと、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルと、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品とを備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記SMAはニチノールである。別の実施態様において、前記SMA物品は医療機器である。別の実施態様において、前記医療機器は、ステント、心臓オクルーダ、弁及び管腔内フィルタから成る群から選択される。
【0014】
本発明の別の実施態様は、SMA物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブを備え、前記装置は、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルを備え、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの少なくとも一部を取り囲み、前記装置は、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品を備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第1の部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第2のテーパ部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記拡張マンドレルは、本質的に一定の第2の周縁を有する第3の部分をさらに含む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第3の部分の少なくとも一部を取り囲む。
【0015】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びており、(vii)前記チューブは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を有し、(viii)前記チューブは、第2のテーパ部分を有し、(ix)前記第2のテーパ部分は、前記チューブの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有する、前記チューブと、並進器具であって、(i)前記並進器具は、前記スロット付き細長チューブの貫通ルーメンを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定されたロッドを含み、(ii)前記ロッドは、前記スロット付き細長チューブの壁を貫通する前記スロットを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定された少なくとも2つのフィンを有する、前記並進器具と、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品とを備える、前記装置を含む。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の方法によれば、ニチノール・チューブ(例えばステント)を著しく大きい直径(例えば6倍以上)に単一処理ステップで拡張することができる。
【0017】
本発明の例示的実施態様を添付の図面との関連において説明する。図面中、必要に応じて、類似の符号が類似のエレメントを示しており、100だけずらされている。添付の図面は、本発明のさらなる理解を可能にするために含まれており、本明細書中に組み込まれ、また本明細書の一部を構成し、本発明の実施態様を図示し、そして本明細書と一緒に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、技術分野において現在知られている複数ステップ熱成形プロセスを示す時間/温度のグラフである。
【0019】
【
図2】
図2は、本発明による単一ステップ熱成形プロセスを示す時間/温度のグラフである。
【0020】
【
図3】
図3A及び3Bは、拡張前及び拡張後のカット済パターン化チューブを示す斜視図である。
【0021】
【
図4】
図4は、スロット付きマンドレル、拡張ダイ及び引張りロッドを示す、本発明の拡張フィクスチャの斜視図である。
【0022】
【
図5A】
図5Aは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及びステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0023】
【
図5B】
図5Bは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及びステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0024】
【
図5C】
図5Cは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及び部分拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0025】
【
図5D】
図5Dは、スロット付きマンドレル、拡張ダイ、引張りロッド及び完全拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0026】
【
図5E】
図5Eは、スロット付きマンドレル及び完全拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の側面図である。
【0027】
【
図6A】
図6Aは、本発明のスロット付きチューブ及び拡張されていないステントの斜視図である。
【0028】
【
図6B】
図6Bは、本発明のテーパ状マンドレルの斜視図である。
【0029】
【
図6C】
図6Cは、スロット付きチューブ、テーパ状マンドレル及び拡張されていないステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の斜視図である。
【0030】
【
図6D】
図6Dは、スロット付きチューブ、テーパ状マンドレル及び拡張されたステントを示す、本発明のステント拡張マンドレル集成体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
技術分野において現在知られているように、種々の直径及び壁厚を有するニチノール・チューブを、所望のパターン、例えば、ステント・パターンを形成するようにカットすることができる。カット済チューブを拡張フィクスチャ上に置き、周囲温度にある間に約20%拡張することができる。カット済チューブ及び拡張フィクスチャを次いで高温に加熱し、そして好適な滞留時間後、カット済チューブ及びフィクスチャを焼き入れすることによって、カット済チューブを周囲温度に戻すことができる。このプロセスを繰り返してよく、各サイクルはチューブをさらに約20%拡張する結果として直径を所望の直径にする(すなわち100%拡張)。
【0032】
図1には、技術分野において広く知られている典型的な拡張プロセスを示す時間/温度のグラフが示される。この例において、5ステップ拡張プロセスが示され、それぞれの拡張は、およそ周囲温度(約20℃)で発生する。5つの拡張ステップのそれぞれは、カット済チューブを、その拡張された直径の約20%拡張させる。それぞれの拡張後、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを約500℃に加熱し、そして好適な滞留の後、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを水焼き入れし、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを周囲温度に戻す。図示されるように、プロセスは4回さらに繰り返され、その結果として所望の直径が得られる(総拡張率は約100%)。
【0033】
図2は(
図1と同じ軸を有する)グラフであり、カット済チューブを単一拡張ステップで所望の直径(すなわち約100%拡張率)に拡張するプロセスを示している。
図2に示されるように、カット済チューブを拡張フィクスチャに載置する。次いで、カット済チューブ及び拡張フィクスチャを高温に加熱することができ、そして、この高温時に、拡張フィクスチャを活性化させることにより、カット済チューブを単一拡張ステップで約100%拡張することができる。別の実施態様において、前記拡張フィクスチャを活性化させることにより、カット済チューブを約200%、約300%、約400%及び/又は約500%拡張することができる。
図1を
図2と比較することによって、本明細書中で教示される方法が、ニチノール・チューブを拡張するためのステップ数、ひいては時間を低減することが明らかである。
【0034】
図3Aは、初期小直径302を有する典型的なカット済チューブ300aの部分斜視図である。カット済チューブ300aは、埋め込み可能なステントに典型的な、山304と谷306とを含む波状形状を有する。
図3Bは、大直径308に拡張された後の、拡張されたカット済チューブ300bの部分斜視図である。大直径308は、初期小直径302よりも約100%大きい。チューブ300aは任意の所望のパターンを有するようにカットすることができる。例えば、チューブ300aは、個別リング、相互接合リング、オープン及び/又はクローズド・セル、あるいは、正弦曲線形状、ダイヤモンド形状、U字形状、V字形状又は卵形状のような形状、あるいは、所与の用途に合わせて調整された任意の他のパターンを形成するようにカットすることができる。チューブ300aは、ニチノール又は形状固定温度範囲を有する任意の他の同様の金属を含むことができる。ニチノールは、二元ニッケル-チタン二元形状記憶合金、並びに、合金化元素(例えば、これらに限定されるものではないが、鉄、ニオブ、クロム、銅、コバルト、バナジウム、白金及びハフニウム)の三元及び四元添加を含むニッケル-チタン系合金を含む合金群を意味する。形状記憶合金は、ニチノール合金、並びに、可逆結晶相変化し得る他の合金(例えば、これらに限定されるものではないが、AgCd、AuCd、CuAlZn、CuAlNi、CuAlBe、CuSn、NiAl、FePt、FePd,MnCu及びFeMnSi合金系)を含む。
【0035】
チューブ300aは、約0.5mm~約100mmの範囲の直径を有することができ、好ましい範囲は約2mm~約40mmである。チューブ300aは、約0.05mm~約10mmの範囲の壁厚を有することができ、好ましい範囲は約0.1mm~約0.5mmである。チューブ300aの長さは約1mm~約250mmの範囲であることができる。チューブ300aの長さは、任意の具体的な用途に従って形成することができる。
【0036】
図4には、少なくとも1つの拡張フィクスチャ400の斜視図が示される。この例において、拡張フィクスチャ400は、高温金属、例えば、インコネル、ステンレス鋼又は他の好適な材料から製作されたテーパ状の、スロット付きチューブ状マンドレル402を含む。スロット付きマンドレル402は、大直径部分404と、中間テーパ部分406と、小直径部分408と、一連の長手方向スロット410とを有する。長手方向スロット410は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、スロット付きマンドレルの小直径部分及びテーパ部分(408及び406)を通じて延びている。長手方向スロット410は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、
図4に示されるように部分的にのみ大直径部分404に沿って延びている。任意の形態において、長手方向スロットは、らせんを形成することができる。中間テーパ部分は、必要に応じて、一定のテーパ角度の代わりに、変化したテーパ角度又は鋭い部分を有することができる。
【0037】
拡張フィクスチャ400は、さらに、
図4に示されるような一連のフィン414を有する拡張ダイ412を含む。拡張ダイ412のフィン414は、スロット付きマンドレル402のスロット410と係合して、拡張ダイのフィン414が方向矢印416によって示される長手方向軸に沿って、スロット付きマンドレル402の長手方向スロット410を通じてスライドすることを可能にする。
【0038】
図4にさらに示されるように、拡張ダイ412は、引張りロッド418に結合している。引張りロッド418は、チューブ状スロット付きマンドレル402の中心孔を通じて延び、そして、スロット付きマンドレル402のカラー部分422から外へ延びている。引張りロッド418が、方向矢印416,420によって示される長手方向軸に沿って引張られると、拡張ダイ412は、スロット付きマンドレル402の小直径部分408と中間テーパ部分406と大直径部分404とに被さるように強制的にスライドさせられる。
【0039】
スロット付きマンドレル402のカラー部分422は、スロット付きマンドレルを熱源(図示せず)に固定するように構成されている。スロット付きマンドレル402及び拡張ダイ412は、熱源内部に位置決めされる。熱源は、引張りロッド418の端部424(拡張ダイの反対側)が熱源から突出することを可能にするように構成されている。
【0040】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブと、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2のテーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルと、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品とを備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記SMAはニチノールである。別の実施態様において、前記SMA物品は医療機器である。別の実施態様において、前記医療機器は、ステント、心臓オクルーダ及び管腔内フィルタから成る群から選択される。
【0041】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びている、前記チューブを備え、前記装置は、拡張マンドレルであって、(i)前記マンドレルは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を含み、(ii)前記マンドレルは、第2のテーパ部分を含み、(iii)前記第2テーパ部分は、前記マンドレルの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有し、(iv)前記マンドレルの第1の部分の周縁は、前記スロット付き細長チューブの前記ルーメンの第1の内周内に挿入されるように寸法設定されている、前記マンドレルを備え、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの少なくとも一部を取り囲み、前記装置は、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲む形状記憶合金物品を備える、前記装置を含む。一実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第1の部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第2のテーパ部分の少なくとも一部を取り囲む。別の実施態様において、前記拡張マンドレルは、本質的に一定の第2の周縁を有する第3の部分をさらに含む。別の実施態様において、前記スロット付き細長チューブは、前記拡張マンドレルの第3の部分の少なくとも一部を取り囲む。
【0042】
本発明の別の実施態様は、形状記憶合金(SMA)物品を変形させる装置であって、前記装置は、スロット付き細長チューブであって、(i)前記チューブは、長手方向軸及び第1の外周を有し、(ii)前記チューブは、長さ、貫通ルーメン及び壁を有し、(iii)前記ルーメンは、第1の内周を画定し、(iv)前記チューブは、前記壁を貫通する少なくとも2つのスロットを有し、(v)前記スロットは、前記チューブの長手方向軸に対して本質的に平行に配向されており、(vi)前記スロットは、前記チューブの長さに沿って部分的に延びており、(vii)前記チューブは、本質的に一定の第1の周縁を有する第1の部分を有し、(viii)前記チューブは、第2のテーパ部分を有し、(ix)前記第2のテーパ部分は、前記チューブの第1の周縁から、より大きい第2の周縁へ推移する、変化する周縁を有する、前記チューブと、並進器具であって、(i)前記並進器具は、前記スロット付き細長チューブの貫通ルーメンを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定されたロッドを含み、(ii)前記ロッドは、前記スロット付き細長チューブの壁を貫通する前記スロットを通じて延びるとともにスライドするようにサイズ設定された少なくとも2つのフィンを有する、前記並進器具と、前記スロット付き細長チューブの少なくとも一部を取り囲むSMA物品とを備える、前記装置を含む。
【0043】
拡張フィクスチャ400を加熱するためには、任意の好適な熱源を使用することができる。この熱源は、流動浴、塩浴、高温液体、高温ガス、放射加熱、誘導加熱、対流加熱、電気抵抗加熱、ラジオ周波数加熱、伝導加熱又は種々異なるエネルギー源の組み合わせを含む。
【0044】
したがって、本発明の一実施態様は、カット済チューブを拡張する方法であって、金属チューブをカットすることにより所望のカット・パターンを形成する工程、前記カット済金属チューブをスロット付きテーパ状マンドレルの小直径部分上に置く工程、前記スロット付きテーパ状マンドレルの中心孔に、拡張ダイが取り付けられた引張りロッドを挿入する工程、前記スロット付きテーパ状マンドレルのスロット内に(前記拡張ダイと一体的な)一連のフィンを係合させる工程、前記引張りロッドの端部が前記熱源の外へ延びるように、前記カット済チューブ、前記スロット付きテーパ状マンドレル及び前記拡張ダイを熱源内に入れる工程、前記カット済チューブ、前記スロット付きテーパ状マンドレル及び前記拡張ダイを高温(形状固定温度)に加熱する工程、前記引張りロッドを(前記カット済チューブ、前記スロット付きテーパ状マンドレル及び前記拡張ダイの形状固定温度を維持しながら)並進させることによって、前記スロット付きテーパ状マンドレルの小直径部分とテーパ部分と大直径部分とに被さるように前記拡張ダイを強制的にスライドさせる工程を含み、前記引張りロッドが並進させられるのに伴って、前記拡張ダイのフィンは、前記カット済SMAチューブに係合するとともに、前記スロット付きテーパ状マンドレルの小直径部分とテーパ部分と大直径部分とに被さるように前記カット済SMAチューブを強制的にスライドさせられる、前記方法を含む。
【0045】
本発明によるカット済SMAチューブの1つの拡張プロセスを
図5A~5Eに示す。
図5Aには、拡張フィクスチャ500が示される。拡張フィクスチャ500は、テーパ状の、スロット付きチューブ状マンドレル502を含む。スロット付きマンドレル502は大直径部分504と、中間テーパ部分506と、小直径部分508と、一連の長手方向スロット510とを有する。長手方向スロット510は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、スロット付きマンドレルの小直径部分及びテーパ部分(508及び506)を通って延びている。長手方向スロット510は、マンドレル壁を貫通して切り抜かれており、
図5Aに示されるように部分的にのみ大直径部分504に沿って延びている。
【0046】
初期小直径を有するカット済チューブ524aは、スロット付きマンドレル502の小直径部分508に被せられる。
【0047】
スロット付きマンドレル502のスロット510と係合するように形成された一連のフィン(
図4の414)を有する拡張ダイ512が、引張りロッド518に結合されている。引張りロッド518は、チューブ状スロット付きマンドレル502の中心孔を通って延び、そして拡張ダイとは反対側のスロット付きマンドレル端部から出て延びている。
【0048】
図5Bに示されるように、引張りロッド518を矢印520によって示された方向に並進させ、拡張ダイ512を前進させ、そして拡張ダイのフィン(
図4の414)がスロット付きマンドレル502のスロット510と係合することを可能にする。
【0049】
次いで、カット済チューブの拡張フィクスチャを加熱チャンバ上に置き、これにより、カラー部分522及び突出する引張りロッド518は加熱されたチャンバの外側(方向矢印526によって示される)に位置する一方、スロット付きマンドレル502の残りの部分、拡張ダイ512及びカット済チューブ524aは加熱チャンバの加熱された領域(方向矢印525によって示される)に晒される。次いで、加熱チャンバの温度を所望の温度に上昇させる。塩浴又は同様の熱移動媒体を使用する場合、媒体は予熱するか、又は所望の高温に完全加熱することができる。
【0050】
図5Cに示されるように、加熱されたチャンバ内部に適切に滞留させた後、引張りロッド518を方向520に沿ってさらに前進させて、拡張ダイ512が、スロット付きマンドレル502のテーパ部分506にカット済チューブ524bを強制的に被せるようにする。
【0051】
図5Dに示されるように、引張りロッド518を方向520に沿ってさらに前進させて、拡張ダイ512が、スロット付きマンドレル502の大直径部分504にカット済チューブ524cを強制的に被せるようにする。引張りロッド518の並進運動は、連続運動、間欠運動又は可変速度運動を含むことができる。
【0052】
完全拡張されたカット済チューブ524cを有する拡張フィクスチャ500を次いで加熱チャンバから取り出す。引張りロッド518及び拡張ダイ512をスロット付きマンドレル502から引き出す。スロット付きマンドレル502及び完全拡張されたカット済チューブ524cを次いで数位温度水浴内で焼き入れする。周囲温度に達した後、完全拡張されたカット済チューブ524cをスロット付きマンドレル502から取り出すことができる。
【0053】
図5A~5Eには短い長さのチューブが記載されているが、いかなる長さのチューブも上記プロセスを用いて拡張することができる。スロット付きマンドレル402,502の大直径部分404,504は、任意の長さのチューブを適応させるようにいかなるサイズを有することもできる。
【0054】
図5A~5Eに示されるプロセスは、SMAチューブを拡張するために内力(拡張されるべきチューブに対して内側の力)を使用する1つの方法であるが、他の方法を用いることもできる。これらは、前記マンドレルに被さるチューブを拡張する拡張マンドレルを含む。
【0055】
別の実施態様において、カット済SMAチューブの拡張は、チューブを引き開く外力を加えることによって達成される。チューブの特定領域を把持するフック又はクランプがチューブを引き開くことにより、チューブを拡張することができる。
【0056】
本発明の特定の実施態様が本明細書中に示され説明されているが、本発明はこのような例示及び記述に限定されるべきではない。以下の請求項の範囲内で変更及び改変が本発明の一部として組み込まれ具体化され得る。下記例は本発明を例示するためにさらに提供される。
【0057】
例
例1:スロット付きマンドレル上のカット済ニチノール・チューブのローディング及び拡張
図5A及び5Bに示されるニチノール・ステント・リング524aを得た。ステント・リング524aは、内径(ID)が約4mm、壁厚が約0.5mmのニチノール・チューブからレーザーカットした。ステント・リング524aの長さは約10mmであった。
【0058】
図4に示されるように、好適な高温鋼から成るテーパ状スロット付きマンドレル402を特別に製作した。スロット付きマンドレル
402の大直径
部分404は約26mmであった。スロット付きマンドレル402の小直径は約8mmであった。スロット付きマンドレル402の長さは約11cmであった。好適な高温鋼から成る拡張ダイ412を特別に製作した。
【0059】
ダイのフィン414がスロット付きマンドレル402のスロット410と係合して、拡張ダイ412がスロット付きマンドレル402を通ってスライドするのを可能にするように、拡張ダイ412を設計した。
【0060】
拡張ダイ142は例えばレーザー溶接によって引張りロッド418に取り付けられる。引張りロッド418は直径が約2mm、長さが約60cmであり、好適な高温鋼から製作される。熱処理部分のために使用される流動浴(Techne Fluidized Bath Model FB-08)を入手した。
【0061】
図5Aに示されるように、ステント・リング524aをスロット付きマンドレル502の小直径
部分508上にローディングした。IDが約4mmのステント・リング524aを、スロット付きマンドレル502の約8mmの小直径端部508上にローディングするために、一方の端部の直径が約4mmであり、反対側の端部の直径が約8mmであるテーパ状マンドレルを使用して、ステント・リング524aを先ず約8mmまで拡張した(室温)。この時点で、ステントは最小限に拘束されている(又は実質的に拘束されていない)。テーパ状マンドレルの約8mmの端部を次いで、スロット付きマンドレル502の約8mmの小直径端部508に当接させ、そして、ステント・リング524aをテーパ状マンドレルからスロット付きマンドレル502へ室温で移した。
図5Aに示されるように、拡張ダイ512が取り付けられている引張りロッド518をスロット付きマンドレルに挿入した。拡張ダイ512のフィン414(
図4)を、
図5Bに示されるように、スロット付きマンドレル502のスロット510と係合させた。
【0062】
スロット付きマンドレル502と、ステント・リング524aと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を、次いで約550℃の温度まで予熱された流動浴内に浸し、そして約3分間にわたって滞留させておいた。約3分後に、引張りロッド518を
図5Bに示される位置から、
図5Dに示される位置へ引き上げた。
図5Bに示される位置から
図5Dに示される位置へ引張りロッド518を引き上げるのに約2秒かかった。上向きの力が引張りロッド518に加えられるのに伴って、取り付けられた拡張ダイ512のフィン414(
図4)は、ステント・リング524bに力を加え、これを
図5Cに示されるようにスロット付きマンドレル502に沿って引き上げる。スロット510及びフィン414(
図4)の配向はまた、
図5Dに示されるようにステント・リング524cの均一な直径方向の拡張を維持するのに役立つ。次いで、予熱された流動浴内の約15分間の滞留時間後、スロット付きマンドレル502と、拡張されたステント・リング524cと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を流動浴から取り出し、水焼き入れした。次いで、引張りロッド518及び取り付けられた拡張ダイ512をスロット付きマンドレル502から取り出した。流動浴内の熱処理及び形状固定に続く、拡張されたニチノール・ステント・リング524c及びスロット付きマンドレル502は
図5Eに示される。得られたニチノール・ステント・リング524cは、直径約26mmに拡張され、形状固定された。
【0063】
図4を参照すると、付加的なフィクスチャを使用して、ステントを拡張するスロット付きマンドレル402を流動浴と連動させる(interface)ことができることは、当業者に明らかである。このようなフィクスチャを適応させるために、スロット付きマンドレル402を切削することによってカラー422を形成することができる。カラー422は、流動浴の加熱された媒体中にマンドレルを安全に浸すのを可能にする付加的なフィクスチャを取り付けるために使用することができる。
【0064】
当業者には明らかなように、本発明に種々の改変を加えることができる。例えば、
図4に示されるようなスロット付きマンドレル402は、8つのスロット410の代わりに、4つのスロット410を有することもできる。加えて、拡張ダイ412は、8つのフィン414の代わりに、4つのフィン414を有することもできる。加えて、スロット付きマンドレルの長さ及びその結果としてのテーパ角度を改変することもできる。例えば、スロット付きマンドレル402の長さを約11cmの代わりに20cmまで増大することもできる。このことは、ステント拡張中に必要とされる力を低減する場合がある。
【0065】
例2:カット済ニチノール・チューブの加熱なしの拡張
図5A~5Eを参照して、例1の方法及び材料を用いて、スロット付きマンドレル502上にニチノール・ステント・リング524aをローディングした。次いで、
図5Bに示される位置から
図5Dに示される位置へ引張りロッド518を引き上げることによって、ステント・リング524aをおよそ室温(約20℃)で拡張した。
図5Dに示されるような、スロット付きマンドレル502と、ステント・リング524cと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を次いで、約550℃の温度まで予熱された流動浴内に浸し、そして約15分間にわたって滞留させておいた。
【0066】
次いで、スロット付きマンドレル502と、ステント・リング524cと、拡張ダイ512と、引張りロッド518とから成る集成体を流動浴から取り出し、水焼き入れした。得られたニチノール・ステント・リングは破砕され、ステント・リング内に完全な不連続性を有した。
【0067】
例3:拡張可能なマンドレルを使用したカット済ニチノール・チューブの拡張
図6A~6Dには別の拡張フィクスチャが示される。
図6A及び6Cに示されるスロット付きチューブ610を好適な高温鋼から形成した。その長さは約15cmである。スロット付きチューブは、内径が4.2mmであり、壁厚が約0.25mmである。チューブ内に切り抜かれたスロット604及び得られたチューブ・セグメント606は、それぞれ、長さが約12cmである。
【0068】
図6Bに示されるように、テーパ状マンドレル618を好適な高温鋼から形成した。その長さは約40cmである。大直径区分612は、直径が約8mmであり、長さが約8cmである。小直径区分616は、直径が約4mmであり、長さが約28cmである。テーパ状マンドレル618のテーパ区分614は、約8mmの直径から約4mmの直径へ推移し、その長さは約4cmである。
【0069】
図6Aに示されるニチノール・ステント624を得た。ステント・リング624は、内径(ID)が約4.1mm、壁厚が約0.25mmのニチノール・チューブからレーザーカットした。ステントの長さは約60mmであった。ステント624をスロット付きチューブ610上に、スロット付きチューブ610のスロット付き端部602に近づけてローディングした。次いで、テーパ状マンドレル618の小直径端部616をスロット付きチューブ610のスロット付き端部602内に挿入した。
【0070】
熱処理部分のために使用される流動浴(Techne Fluidized Bath Model FB-08)を入手した。
【0071】
図6Cに拡張フィクスチャ600を示す。図6Cに示されるような、スロット付きチューブ610と、ステント624と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を、次いで約550℃の温度まで加熱された流動浴内に浸し、そして約3分間にわたって滞留させておいた。この約3分後に、テーパ状マンドレル618を
図6Cに示される方向620で、
図6Dに示される位置へ引いた。
図6Cに示される位置から
図6Dに示される位置へテーパ状マンドレル618を引くのに約3秒かかった。
【0072】
予熱された流動浴内の約15分間の滞留後、
図6Dに示される、拡張されたスロット付きチューブ628と、拡張されたステント626と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を、次いで流動浴から取り出し、そして水焼き入れした。次いで、熱処理及び形状固定に続いて、拡張されたステント626を、拡張されたスロット付きチューブ628から取り出した。結果としてのニチノール・ステントは、直径約8.5mmに拡張され形状固定された。
【0073】
図6A及び6Bに示されるステント拡張ハードウェアを流動浴と連動させるために、付加的なフィクスチャを使用することができることは当業者に明らかである。加えて、ステント拡張ハードウェアと流動浴との連動を改善するために、
図6A及び6Bに示されるハードウェアの寸法を改変し得ることも当業者に明らかである。例えば、流動浴の加熱された媒体のレベルを十分に超えて延びるように、テーパ状マンドレル618の小直径端部616の長さを必要に応じてさらに延ばすことができる。加えて、流動浴の加熱された媒体のレベルを超えて十分に延びるように、スロット付きチューブ610の切り込まれていない端部608の長さをさらに延ばすこともできる。
【0074】
当業者に明らかなように、本発明に種々の改変を加えることができる。例えば、
図6Aに示されるようなスロット付きチューブ610は4つのスロット604の代わりに8つのスロット604を有することもできる。加えて、テーパ状マンドレル618は、スロット付きチューブ610のセグメント606との連動を可能にする長手方向溝を有することもできる。これらの溝は、セグメントがテーパ状マンドレル618のテーパ
区分614に移動するのに伴って、セグメント606の拡張を制御することになる。
【0075】
例4:拡張可能なマンドレルを使用したカット済ニチノール・チューブの熱処理なしの拡張
例3の方法及び材料を用いて、スロット付きマンドレル610上にニチノール・ステント624をローディングした。次いで
図6Cに示される方向で
図6Dに示される位置へテーパ状マンドレル618を引くことによって、ステント624をおよそ室温(約20℃)で拡張した。
図6Cに示されるような、スロット付きチューブ610と、ステント624と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を、次いで、約550℃の温度まで予熱された流動浴内に浸し、そして約15分間にわたって滞留させておいた。次いで、拡張されたスロット付きチューブ628と、拡張されたステント626と、テーパ状マンドレル618とから成る集成体を流動浴から取り出し、水焼き入れした。得られたニチノール・ステント626は多数の破砕個所を有した。
【0076】
上記実施態様及び下記請求項に関するのに加えて、本発明はさらに、上記特許及び下記請求項の種々異なる組み合わせを有する実施態様に関する。このようなものとして、本発明はまた、下記請求項に記載された独立した特徴の任意の他の考えられ得る組み合わせを有する他の実施態様に関する。
【0077】
本発明の構造及び機能の詳細とともに好ましい実施態様及び代替実施態様を含めて、本発明の数多くの特徴及び利点が前記説明中に示される。本開示は一例を示すものとして意図されたに過ぎず、そのようなものとして包括的であることを意図するものではない。当業者には明らかであるように、添付の請求項が表現される用語の広い一般的な意味によって示される十分な範囲まで、本開示の原理の中で特に構造、材料、エレメント、成分、形状、サイズ及び部分の配置関係に関して種々の改変を加えることができる。これらの種々の改変は添付の請求項の思想及び範囲を逸脱することがない範囲まで、本開示に含まれるものとする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金(SMA)物品を形成する方法であって、
初期寸法を有するSMA物品を拡張フィクスチャに載置し、集成体を形成すること;
集成体を高温に加熱すること;
拡張フィクスチャを活性化させることにより、SMA物品を第1の拡張寸法に拡張すること、ここで前記第1の拡張寸法は初期寸法より100%大きい;並びに、
第1の拡張寸法を保持するように集成体を冷却すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記拡張フィクスチャを活性化させることにより、前記SMA物品を前記第1の拡張寸法から第2の拡張寸法に拡張することを更に含み、前記第2の拡張寸法は前記初期寸法より200%大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記拡張フィクスチャを活性化させることにより、前記SMA物品を前記第2の拡張寸法から第3の拡張寸法に拡張することを更に含み、前記第3の拡張寸法は前記初期寸法より300%大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記拡張フィクスチャを活性化させることにより、前記SMA物品を前記第3の拡張寸法から第4の拡張寸法に拡張することを更に含み、前記第4の拡張寸法は前記初期寸法より400%大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記拡張フィクスチャを活性化させることにより、前記SMA物品を前記第4の拡張寸法から第5の拡張寸法に拡張することを更に含み、前記第5の拡張寸法は前記初期寸法より500%大きい、請求項4に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】