(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069234
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】アスパラギナーゼを用いた治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20240514BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240514BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240514BHJP
C12N 9/82 20060101ALN20240514BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A61K38/46
A61K35/74 D
A61K47/60
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/495
A61K31/7068
A61K31/704
A61K31/496
A61K31/4709
A61K31/69
A61K38/07
C12N9/82 ZNA
C12N15/55
【審査請求】有
【請求項の数】45
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024023383
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2020548883の分割
【原出願日】2018-11-30
(31)【優先権主張番号】62/592,982
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/625,078
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/631,142
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/673,075
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519426911
【氏名又は名称】ジャズ ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】パイン,ポリー
(72)【発明者】
【氏名】グルサハニ,ヘママリニ
(57)【要約】
【課題】本発明は、L-アスパラギナーゼを用いた疾患の治療法に関する。
【解決手段】実質的なL-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を有するタンパク質とポリエチレングリコール(PEG)との複合体を有効量で投与することを含む、患者におけるL-アスパラギン枯渇により治療可能な疾患の治療法であって、ポリエチレングリコールが、分子量が約5000Da以下であり、タンパク質が、Erwinia属由来のL-アスパラギナーゼである、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的なL-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を有するタンパク質とポリエチレングリコール(PEG)との複合体を有効量で投与することを含む、患者におけるL-アスパラギン枯渇により治療可能な疾患の治療法であって、前記ポリエチレングリコールは、分子量が約5000Da以下であり、前記タンパク質は、Erwinia属由来のL-アスパラギナーゼである、前記方法。
【請求項2】
前記L-アスパラギナーゼは、配列番号1のアミノ酸に対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合体は、配列番号1のアミノ酸に対して100%配列同一性を有するErwinia属由来のL-アスパラギナーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PEGは、分子量が約5000Da、4000Da、3000Da、2500Da、または2000Daである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複合体は、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼと比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のin vitro活性を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複合体は、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍強力なL-アスパラギン枯渇活性を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複合体は、少なくとも約12、24、48、96、108、または120時間、血漿L-アスパラギンレベルを検出不能レベルまで激減させる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記複合体は、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも長いin vivo循環半減期を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記複合体は、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複合体は、マウスでiv投与後に、タンパク質含有量基準で約50μg/kgの用量で少なくとも約58~約65時間のt1/2、及びタンパク質含有量基準で約10μg/kgの用量で少なくとも約34~約40時間のt1/2を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複合体は、約10,000~約15,000IU/m2(約20~30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で少なくとも約100~約200時間のt1/2を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複合体は、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも大きい曲線下面積(AUC)を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記複合体は、等価なタンパク質用量で、ペグアスパラガーゼより少なくとも約3倍大きい平均AUCを有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記PEGは、前記L-アスパラギナーゼの1つまたは複数のアミノ基と共有結合している、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記PEGは、アミド結合により前記1つまたは複数のアミノ基と共有結合している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PEGは、接近可能なアミノ基のうち少なくとも約40%~約100%、または全アミノ基のうち少なくとも約40%~約90%と共有結合している、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記複合体は、以下の式:
Asp-[NH-CO-(CH2)x-CO-NH-PEG]n
式中、Aspは、前記L-アスパラギナーゼであり、NHは、前記Aspのリシン残基及び/またはN末端のNH基のうちの1つまたは複数であり、PEGは、ポリエチレングリコール部分であり、nは、前記Aspの接近可能なアミノ基のうち少なくとも約40%~約100%を表す数字であり、ならびにxは、約1~約8の範囲の整数である、
を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記PEGは、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
疾患は、がんである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記がんは、リンパ腫、大細胞型免疫芽球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、NKリンパ腫、ホジキン病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、二重表現型B細胞骨髄単球性白血病、及び慢性リンパ性白血病からなる群より選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
疾患は、腎細胞癌、腎細胞腺癌、多形性膠芽腫及び星細胞腫を含む神経膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、悪性黒色腫、類表皮癌、扁平上皮癌、肺大細胞癌及び小細胞肺癌を含む肺癌、子宮内膜癌、卵巣腺癌、卵巣奇形癌、子宮頸部腺癌、乳癌、乳腺癌、乳管癌、膵臓腺癌、膵管癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸腺癌、膀胱移行上皮癌、膀胱乳頭腫、前立腺癌、骨肉腫、骨の類上皮癌、前立腺癌、及び甲状腺癌からなる群より選択される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記複合体は、約5U/kg体重~約50U/kg体重の量で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記複合体は、約10,000~約15,000IU/m2の範囲の用量で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記投与は、静脈内または筋肉内投与であり、及び週に1回、週に2回、または週に3回である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記複合体は、単剤療法として投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記複合体は、併用療法の一部として投与される、請求項123に記載の方法。
【請求項27】
前記複合体は、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/またはCB-839を用いる併用療法の一部として投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
治療を受ける前記患者は、E.coli種アスパラギナーゼまたはそのPEG化体あるいはErwinia属アスパラギナーゼに対して以前に過敏症を発症したことがある、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
治療を受ける前記患者は、疾患再発、特に、E.coli種アスパラギナーゼまたはそのPEG化体を用いた治療後に再発を起こしたことがある、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的なL-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を有するタンパク質とポリエチレングリコールとの複合体、詳細には、ポリエチレングリコールは分子量が約5000Da以下であり、詳細には、タンパク質はErwinia属由来のL-アスパラギナーゼである複合体、及び治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
L-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を持つタンパク質は、一般に、L-アスパラギナーゼとして知られるが、これらは、長年にわたり小児での急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用されており、成功を収めている。ALLは、最も一般的な小児悪性腫瘍である(Avramis and Panosyan, (2005) 44:367-393)。
【0003】
L-アスパラギナーゼは、ホジキン病、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ肉腫、細網肉腫、及び黒色肉腫の治療にも使用されてきた(Kotzia (2007) J. Biotechnol. 127, 657-669)。L-アスパラギナーゼの抗腫瘍活性は、ある種の悪性細胞ではL-アスパラギン合成能力が無いまたは低いことによると思われる(Kotzia (2007) J. Biotechnol. 127, 657-669)。こうした悪性細胞は、L-アスパラギンの細胞外からの供給に依存する。しかしながら、L-アスパラギナーゼ酵素は、L-アスパラギンをアスパラギン酸及びアンモニアへと加水分解する反応を触媒し、それによりL-アスパラギンの循環プールを枯渇させて、L-アスパラギンなしではタンパク質合成を行うことができない腫瘍細胞を殺傷する(Kotzia (2007) J. Biotechnol. 127, 657-669)。
【0004】
E.coli由来のL-アスパラギナーゼは、ALL治療に使用された初めての酵素薬であり、米国ではElspar(登録商標)として、欧州ではKidrolase(登録商標)及びL-アスパラギナーゼMedac(登録商標)として販売されている。L-アスパラギナーゼは、他の微生物からも単離されており、例えば、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼタンパク質は、クリサンタスパーゼと名付けられ、Erwinase(登録商標)として市販されている(Wriston (1985) Meth. Enzymol. 113, 608-618;Goward (1992) Bioseparation 2, 335-341)。Erwinia属の他の種由来のL-アスパラギナーゼも同定されており、例えば、Erwinia chrysanthemi 3937(Genbank登録番号AAS67028)、Erwinia chrysanthemi NCPPB 1125(Genbank登録番号CAA31239)、Erwinia carotovora(Genbank登録番号AAP92666)、及びErwinia carotovora subsp. astroseptica(Genbank登録番号AAS67027)が挙げられる。こうしたErwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼは、互いに約91~98%のアミノ酸配列同一性を有するが、Erwinia carotovora種L-アスパラギナーゼが、Erwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼに対して有するアミノ酸配列同一性は、約75~77%である(Kotzia (2007) J. Biotechnol. 127 657-669)。
【0005】
現在利用可能なL-アスパラギナーゼ製剤は、特にALLの治療に関して、高い触媒活性ならびに大幅に改善された薬理及び薬物動態特性、ならびに低下した免疫原性を特徴とする代替療法も補完療法も提供しない。
【0006】
1つの態様において、本発明が解決しようとする課題は、以下を備えたL-アスパラギナーゼ製剤を提供することである:高いin vitro生理活性、安定したPEG-タンパク質結合、長いin vivo半減期、大幅に低下した免疫原性、これは、例えば、繰り返し投与後のL-アスパラギナーゼ製剤に対する抗体反応の低減または排除により裏付けられる、及び第一選択治療、例えば、E.coli由来L-アスパラギナーゼを使用する治療に対して感受性を発現してしまった患者のための第二選択治療としての有用性。
【0007】
この課題は、修飾L-アスパラギナーゼ製剤との間に顕著な交差反応性を有する(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)、またはin vitro活性が大幅に低下している(Kuchumova (2007) Biochemistry (Moscow) Supplement Series B: Biomedical Chemistry, 1, 230-232、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)のいずれかである既知のL-アスパラギナーゼ複合体では解決されていない。この課題は、Erwinia属L-アスパラギナーゼと親水性重合体、より詳細には、分子量5000Da以下のポリエチレングリコールとの複合体、そのような複合体の調製法、及びその複合体の使用を提供することにより、本発明に従って解決される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、患者においてL-アスパラギン枯渇により治療可能な疾患を治療する方法を包含し、本方法は、実質的なL-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を有するタンパク質とポリエチレングリコール(PEG)との複合体を有効量で投与することを含み、ポリエチレングリコールは、分子量が約5000Da以下であり、タンパク質はErwinia属由来のL-アスパラギナーゼである。実施形態によっては、L-アスパラギナーゼは、配列番号1のアミノ酸に対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する。実施形態によっては、複合体は、配列番号1のアミノ酸に対して100%配列同一性を有する、Erwinia属由来のL-アスパラギナーゼを含む。実施形態によっては、PEGは、分子量が、約5000Da、4000Da、3000Da、2500Da、または2000Daである。実施形態によっては、複合体は、PEGと複合体形成していないL-アスパラギナーゼと比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のin vitro活性を有する。実施形態によっては、複合体は、PEGと複合体形成していないL-アスパラギナーゼより、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍強力な、L-アスパラギン枯渇活性を有する。実施形態によっては、複合体は、少なくとも約12、24、48、96、108、または120時間、L-アスパラギンの血漿レベルを検出不能レベルまで激減させる。実施形態によっては、複合体は、PEGと複合体形成していないL-アスパラギナーゼよりも長いin vivo循環半減期を有する。実施形態によっては、複合体は、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する。実施形態によっては、複合体は、マウスにiv投与後、タンパク質含有量基準で約50μg/kgの用量で、少なくとも約58~約65時間のt1/2を有し、タンパク質含有量基準で約10μg/kgの用量で、少なくとも約34~約40時間のt1/2を有する。実施形態によっては、複合体は、約10,000~約15,000IU/m2(約20~30mgのタンパク質/m2)の範囲の用量で、少なくとも約100~約200時間のt1/2を有する。実施形態によっては、複合体は、PEGと複合体形成していないL-アスパラギナーゼよりも大きい曲線下面積(AUC)を有する。実施形態によっては、複合体は、平均AUCが、等価なタンパク質用量でのペグアスパラガーゼより少なくとも約3倍大きい。実施形態によっては、PEGは、L-アスパラギナーゼの1つまたは複数のアミノ基と共有結合している。実施形態によっては、PEGは、アミド結合により1つまたは複数のアミノ基と共有結合している。実施形態によっては、PEGは、接近可能なアミノ基の少なくとも約40%~約100%または全アミノ基の少なくとも約40%~約90%と共有結合している。
【0009】
本発明の方法は、以下の式を有する複合体の使用を包含し:
Asp-[NH-CO-(CH2)x-CO-NH-PEG]n
式中、Aspは、L-アスパラギナーゼであり、NHは、Aspのリシン残基及び/またはN末端のNH基のうちの1つまたは複数であり、PEGは、ポリエチレングリコール部分であり、nは、Aspの接近可能なアミノ基のうち少なくとも約40%~約100%を表す数字であり、xは、約1~約8、より詳細には、約2~約5の範囲の整数である。特定の実施形態において、PEGは、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0010】
本発明の方法は、1つまたは複数のペプチド(複数可)を含むL-アスパラギナーゼ複合体の使用を包含し、各ペプチドは、独立して、ペプチドRN-(P/A)-RCであり、式中、(P/A)は、プロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるアミノ酸配列であり、式中、RNは、アミノ酸配列のN末端アミノ基に結合した保護基であり、式中、RCは、自身のアミノ基を介してアミノ酸配列のC末端カルボキシ基に結合したアミノ酸残基であり、各ペプチドは、ペプチドのC末端アミノ酸残基RCのカルボキシ基とL-アスパラギナーゼの遊離アミノ基から形成されたアミド結合を介してL-アスパラギナーゼと複合体形成しており、ならびに式中、ペプチドが結合している遊離アミノ基の少なくとも1つは、L-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基ではない。
【0011】
本発明の方法は、がん治療のための複合体の使用を包含する。実施形態によっては、がんは、リンパ腫、大細胞型免疫芽球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、NKリンパ腫、ホジキン病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、二重表現型B細胞骨髄単球性白血病(biphenotypic B-cell myelomonocytic Leukemia)、及び慢性リンパ性白血病からなる群より選択される。
【0012】
実施形態によっては、疾患は、腎細胞癌、腎細胞腺癌、多形性膠芽腫及び星細胞腫を含む神経膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、悪性黒色腫、類表皮癌、扁平上皮癌、肺大細胞癌及び小細胞肺癌を含む肺癌、子宮内膜癌、卵巣腺癌、卵巣奇形癌、子宮頸部腺癌、乳癌、乳腺癌、乳管癌、膵臓腺癌、膵管癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸腺癌、膀胱移行上皮癌、膀胱乳頭腫、前立腺癌、骨肉腫、骨の類上皮癌、前立腺癌、及び甲状腺癌からなる群より選択される。実施形態によっては、複合体は、約5U/kg体重~約50U/kg体重の量で投与される。
【0013】
実施形態によっては、複合体は、約100~約15,000IU/m2の範囲の用量で投与される。実施形態によっては、投与は、静脈内または筋肉内投与であり、週に1回、週に2回、または週に3回である。実施形態によっては、複合体は、単剤療法として投与される。実施形態によっては、複合体は、併用療法の一部として投与される。実施形態によっては、複合体は、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/またはCB-839を用いる併用療法の一部として投与される。実施形態によっては、治療を受ける患者は、E.coli種アスパラギナーゼまたはそのPEG化体に対して、あるいはErwinia種アスパラギナーゼに対して、以前に過敏症を発症したことがある。実施形態によっては、治療を受ける患者は、疾患再発、特に、E.coli種アスパラギナーゼまたはそのPEG化体を用いた治療後に再発を起こしたことがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】pegクリサンタスパーゼを他の化合物と併用した場合のin vivo実験データを示す。
【
図2】pegクリサンタスパーゼを他の化合物と併用した場合のin vivo実験データを示す。
【
図4】不活性作用剤との混合物例での用量反応曲線を示す。
【
図6】どの薬物併用が相乗的であるかを示す用量中心プロットを示す。
【
図8】pegクリサンタスパーゼのIC
50効果を示す。
【
図9】pegクリサンタスパーゼのIC
50効果を示す。
【
図10】白血病細胞株及びリンパ腫細胞株におけるpegクリサンタスパーゼのin vitro感受性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
細菌起源のL-アスパラギナーゼは、高い免疫原性及び抗原性の可能性を有しており、感作された患者において軽度のアレルギー反応からアナフィラキシーショックにまで及ぶ範囲の有害反応を頻繁に誘発する(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588)。E.coli種L-アスパラギナーゼは、特に免疫原性が高く、i.v.またはi.m.投与後のE.coli種L-アスパラギナーゼに対する抗アスパラギナーゼ抗体の存在は、成人で78%及び小児で70%もの高さに達することが報告されている(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588)。
【0016】
Escherichia coli由来のL-アスパラギナーゼとErwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼは、薬物動態特性が異なっており、それぞれ独自の免疫原性プロファイルを有する(Klug Albertsen (2001) Brit. J. Haematol. 115, 983-990)。そのうえさらに、E.coli由来のL-アスパラギナーゼを用いた治療後に発生する抗体は、Erwinia属由来のL-アスパラギナーゼと交差反応しないことが示されている(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588)。そのため、Erwinia crisantaspase由来のL-アスパラギナーゼは、E.coli種L-アスパラギナーゼに反応する患者におけるALLの第二選択治療として使用されてきた(Duval (2002) Blood 15, 2734-2739;Avramis (2005) Clin. Pharmacokinet. 44, 367-393)。
【0017】
微生物L-アスパラギナーゼの投与に関連した免疫原性を低下させる別の試みでは、メトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)で修飾されたE.coli種L-アスパラギナーゼが開発されてきた。この方法は、一般的に「PEG化」として知られており、タンパク質の免疫原性特性を改変することが示されている(Abuchowski (1977) J. Biol. Chem. 252, 3578-3581)。このいわゆるmPEG-L-アスパラギナーゼ、すなわちペグアスパラガーゼは、Oncaspar(登録商標)として販売されているが、米国で1994年に第二選択治療として初めて認可され、2006年から小児及び成人のALLの第一選択治療として認可されている。Oncaspar(登録商標)は、長いin vivo半減期及び低下した免疫原性/抗原性を有する。
【0018】
Oncaspar(登録商標)は、複数のリシン残基において5kDaのmPEG-スクシンイミジル=スクシナート(SS-PEG)を用いて修飾されたE.coli種L-アスパラギナーゼである(米国特許第4,179,337号)。SS-PEGは、酵素による加水分解または弱アルカリpH値に対して敏感な不安定エステル結合を有する第一世代のPEG試薬である(米国特許第4,670,417号)。これらの性質は、in vitro及びin vivo両方での安定性を低下させており、薬物安全性を損なう可能性がある。
【0019】
そのうえさらに、E.coli由来のL-アスパラギナーゼに対して発生した抗体は、Oncaspar(登録商標)と交差反応する可能性があることが実証された(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588)。たとえこれらの抗体が中和抗体でなかったとしても、この知見は、in vivoでの交差過敏症または交差不活性化の高い可能性を明白に実証した。実際、1つの報告では、ペグアスパラガーゼを投与された小児の30~41%でアレルギー反応が起こった(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588)。
【0020】
表面化したアレルギー反応の他に、患者が、過敏症反応の臨床エビデンスをまったく示さないまま抗アスパラギナーゼ抗体を発生させる「無症候性過敏症」の問題が、最近報告された(Wang (2003) Leukemia 17, 1583-1588)。この反応は、E.coli種L-アスパラギナーゼ及びペグアスパラガーゼに対する中和抗体の形成をもたらす可能性がある。しかしながら、これらの患者では、表面化した過敏症兆候がないため、Erwinia属L-アスパラギナーゼへの切り替えが行われず、その結果、これらの患者が受ける有効治療期間は短くなる(Holcenberg (2004) Pediatr. Hematol. Oncol. 26, 273-274)。
【0021】
Erwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼ治療は、E.coli由来L-アスパラギナーゼに対する過敏症の事象において使用される場合が多い。しかしながら、Erwinia属L-アスパラギナーゼを投与された患者は、そのうちの30~50%という多さで、抗体陽性になることが観察されている(Avramis (2005) Clin. Pharmacokinet. 44, 367-393)。そのうえ、Erwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼは、E.coli種L-アスパラギナーゼよりも大幅に短い消失半減期を有するため、より高頻度に投与しなければならない(Avramis (2005) Clin. Pharmacokinet. 44, 367-393)。Avramisによる研究では、Erwinia属アスパラギナーゼは、薬物動態プロファイルが劣っていた(Avramis (2007) J. Pediatr. Hematol. Oncol. 29, 239-247)。そのため、E.coli種L-アスパラギナーゼ及びペグアスパラガーゼは、Erwinia属L-アスパラギナーゼよりも優先されるALLの第一選択治療となっていた。
【0022】
長年にわたり、多数の生物製剤で、PEG化及び製品化が成功している。PEGとタンパク質をカップリングさせるためには、PEGをそのOH末端で活性化させなければならない。活性化基は、PEG化しようとするタンパク質の利用可能な反応性基に基づいて選択される。タンパク質の場合、最も重要なアミノ酸は、リシン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、C末端カルボン酸、及びN末端アミノ基である。タンパク質における反応性基の広範さを考慮すると、ほぼ全てのペプチド化学反応が、PEG部分の活性化に応用されてきている。この活性化PEG試薬の例としては、活性化炭酸エステル、例えば、炭酸p-ニトロフェニル、炭酸スクシンイミジルなど、活性エステル、例えば、スクシンイミジルエステルなどがあり、また、部位特異的カップリングのため、アルデヒド及びマレイミドが開発されてきた(Harris (2002) Adv. Drug Del. Rev. 54, 459-476)。PEG修飾のために多様な化学手法を利用可能であることは、PEG化タンパク質の新規開発それぞれが、事例に応じた研究になることを示す。化学反応だけでなく、タンパク質に結合させるPEGの分子量も、PEG化タンパク質の医薬的特性に大きな影響を及ぼす。ほとんどの場合、PEGの分子量が大きくなるほど、医薬的特性がより良く改善されることが予想される(Sherman (2008) Adv. Drug Del. Rev. 60, 59-68;Holtsberg (2002) Journal of Controlled Release 80, 259-271)。例えば、Holtsbergらは、PEGを、微生物原料から単離された別のアミノ酸分解酵素であるアルギニンデアミナーゼと複合体形成させた場合、酵素の薬物動態的及び薬力学的機能は、結合したPEGの分子量が5000Daから20,000Daへと増大するに従って、上昇したことを見出した(Holtsberg (2002) Journal of Controlled Release 80, 259-271)。
【0023】
しかしながら、多くの場合、PEG化した生物製剤は、未修飾生物製剤と比較して大幅に低下した活性を示す(Fishburn (2008) J. Pharm. Sci.、1-17)。Erwinia carotovora由来のL-アスパラギナーゼの場合、PEG化によりそのin vitro活性は約57%に低下することが観察された(Kuchumova (2007) Biochemistry (Moscow) Supplement Series B: Biomedical Chemistry, 1, 230-232)。Erwinia carotovora由来のL-アスパラギナーゼは、Erwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼ(クリサンタスパーゼ)と約75%の相同性しか有していない。Oncaspar(登録商標)については、そのin vitro活性は、未修飾E.coli種L-アスパラギナーゼと比較して、約50%であることも知られている。
【0024】
本明細書中記載されるのは、未修飾L-アスパラギナーゼタンパク質と比較した場合に、ならびにE.coli由来のペグアスパラガーゼ製剤と比較した場合に改善された薬理学的特性を持つ、Erwinia属由来PEG化L-アスパラギナーゼである。本明細書中記載されるPEG化L-アスパラギナーゼ複合体、例えば、分子量5000DaのPEGでPEG化したErwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼは、特に、E.coli由来のL-アスパラギナーゼもしくはPEG化L-アスパラギナーゼまたはErwinia属由来未修飾L-アスパラギナーゼでの治療に過敏症(例えば、アレルギー反応または無症候性過敏症)を示す患者での使用において、治療薬として働く。本明細書中記載されるPEG化L-アスパラギナーゼ複合体は、疾患再発、例えば、ALLが再発した患者、及び以前に別の形態のアスパラギナーゼで、例えば、E.coli由来のL-アスパラギナーゼまたはPEG化L-アスパラギナーゼで治療されたことがある患者で使用する治療薬としても有用である。
【0025】
本明細書中詳細に記載するとおり、本発明の複合体は、予想外に、ペグアスパラガーゼなど既知のL-アスパラギナーゼ製剤と比べて優れた特性を示す。例えば、Erwinia chrysanthemi由来の未修飾L-アスパラギナーゼ(クリサンタスパーゼ)は、E.coli由来の未修飾L-アスパラギナーゼよりも大幅に短い半減期を有する(Avramis (2005) Clin. Pharmacokinet. 44, 367-393、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。本発明のPEG化複合体は、等価なタンパク質用量で、E.coli由来のPEG化L-アスパラギナーゼよりも長い半減期を有する。
【0026】
定義
特に明示して定義されない限り、本明細書中使用される用語は、当該分野でそれらが通常意味するところに従って理解されることになる。
【0027】
本明細書中使用される場合、「含む(including)」という用語は、「含むが、それらに限定されない」を意味し、単数形で使用される用語は、文脈から特に否定されない限り、複数形を含み、その逆もまたしかりである。
【0028】
本明細書中使用される場合、「アスパラギン枯渇により治療可能な疾患」という用語は、症状または障害に関与するあるいはその一因である細胞が、L-アスパラギン合成能力の欠如または低下いずれかを示す、症状または障害を示す。L-アスパラギンの枯渇または喪失は、部分的であっても実質的に完全(例えば、当該分野で既知である方法及び装置を用いて検出不能なレベルにある)であってもよい。
【0029】
本明細書中使用される場合、「治療上有効量」という用語は、所望の治療効果をもたらすために必要な、タンパク質(例えば、アスパラギナーゼまたはその複合体)の量を示す。
【0030】
本明細書中使用される場合、「配列同一性」という用語は、「相同性」と同義で使用され、そうであるので、適宜、同じ意味を有することができる。
【0031】
「同時投与」、「同時投与する」、「~と併用で投与される」、「~と併用で投与する」、「同時に」、及び「同時発生で」という用語は、本明細書中使用される場合、2種以上の活性医薬成分を、両方の活性医薬成分及び/またはそれらの代謝産物が同時点でヒト対象中に存在するように、ヒト対象に投与することを包含する。同時投与は、別々の組成物での同時投与、別々の組成物での異なる時点での投与、または2種以上の活性医薬成分が存在する1つの組成物での投与を含む。別々の組成物での同時投与及び両方の作用剤が存在する1つの組成物での投与は、本発明の方法にも包含される。
【0032】
L-アスパラギナーゼタンパク質
本発明によるタンパク質は、L-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を持つ酵素、いわゆるL-アスパラギナーゼである。
【0033】
多くのL-アスパラギナーゼタンパク質が、当該分野で同定され、微生物から既知の方法により単離されている。(例えば、Savitri (2003) Indian J. Biotechnol 2, 184-194を参照、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。最も広く使用されている市販のL-アスパラギナーゼは、E.coli由来またはErwinia chrysanthemi由来のものであり、これらは互いに50%以下の構造相同性しか有さない。Erwinia種の中では、典型的には、75~77%の配列同一性が、Erwinia chrysanthemi由来酵素とErwiniacarotovora由来酵素の間で報告されており、Erwinia chrysanthemiの異なる亜種の間で約90%配列同一性が見つかった(Kotzia G A, Labrou E, Journal of Biotechnology (2007) 127:657-669、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。いくつかの代表的なErwinia属L-アスパラギナーゼとして、例えば、表1に提示するものが挙げられる:
【表1】
【0034】
表1のErwinia属L-アスパラギナーゼの配列及びGenBank登録は、本明細書中参照として援用される。治療で使用するのに好適なL-アスパラギナーゼは、E.coli及びErwinia属、詳細には、Erwinia chrysanthemiから単離されたL-アスパラギナーゼである。
【0035】
L-アスパラギナーゼは、微生物から単離された天然酵素が可能である。L-アスパラギナーゼは、E.coliなどの産生微生物において組換え酵素技法により産生させることも可能である。例として、本発明の複合体に使用されるタンパク質は、組換えE.coli産生株で産生された、Erwinia種、詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のタンパク質を産生する組換えE.coli株で産生されたE.coliによるタンパク質であることが可能である。
【0036】
酵素は、それらの特異的活性により同定可能である。すなわち、この定義は、定義された特異的活性を有し、他の生物、より詳細には他の微生物中にも存在する全てのポリペプチドを包含する。同様な活性を持つ酵素は、PFAMまたはCOGとして定義されるある種のファミリーにそれらをグループ化することにより特定できる場合が多い。PFAM(配列比較及び隠れマルコフモデルによるタンパク質ファミリーデータベース;pfam.sanfferac.ukl)は、タンパク質配列比較の巨大なコレクションを表す。各PFAMは、複数の配列比較の視覚化、タンパク質ドメインの表示、生物間での分布の評価、他のデータベースへのアクセス、及び既知タンパク質構造の視覚化を可能にする。COG(タンパク質の相同分子種群のクラスター;vv-ww.nebi.nlm.nih.gov/COG/)は、30種の主要な系統学的系列を代表する43の完全配列決定ゲノムからタンパク質配列を比較することにより得られるものである。各COGは、少なくとも3種の系列から定義されており、これにより、先に保存されたドメインの同定が可能になる。
【0037】
相同性配列の同定及びそれらの相同性または配列同一性パーセンテージ同定の手段は、当業者に周知であり、そのような手段として、詳細には、BLASTプログラムが挙げられる。BLASTプログラムは、以下のウェブサイト、blast.ncbi.olo.nih.gov/Blast.cgiから使用することが可能であり、そのウェブサイト上で初期パラメーターが示されている。次いで、得られる配列を、例えば、以下のプログラム、CLUSTALW(www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html)またはMULTALIN(bioinfo.genotoul.fr/multalin/multalin.html)に、それらのウェブサイト上で示されている初期パラメーターを用いて、活用する(例えば、整列させる)ことができる。既知の遺伝子についてGenBankに提示される参照を用いて、当業者は、他の生物、細菌株、酵母菌、真菌、哺乳類、植物など中の等価な遺伝子を特定することができる。この常用手段は、コンセンサス配列を用いて有利に行われ、そのようなコンセンサス配列は、他の微生物由来の遺伝子との配列比較を行い、別の生物中の相当する遺伝子をクローン化する変性プローブを設計することにより、特定することが可能である。分子生物学のこうした常用方法は、当業者に周知であり、例えば、Sambrook (2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed. Cold Spring Harbor Lab Press)に記載されている。
【0038】
実際、当業者なら、L-アスパラギナーゼ活性を実質的に保持する相同タンパク質をどのように選択及び設計するかわかるだろう。典型的には、Mashburn及びWristonにより記載される方法に従って、L-アスパラギナーゼ活性の測定にネスラーアッセイを用いる(Mashburn (1963) Biochem. Biophys. Res. Comm. 12, 50、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。
【0039】
本発明の複合体の特定の実施形態において、L-アスパラギナーゼタンパク質は、配列番号1の配列を含むタンパク質に対して、少なくとも約80%の相同性または配列同一性、より具体的には、配列番号1の配列を含むタンパク質に対して、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、2095%、96%、97%、98%、99%、または100%の相同性または配列同一性を有する。配列番号1は、以下のとおりである:
ADKLPNIVILATGGTIAGSAATGTQTTGYKAGALGVDTLINAVPEVKKLANVKGEQFSNMASENMTGDVVLKLSQRVNELLARDDVDGVVITHGTDTVEESAYFLHLTVKSDKPVVFVAAMRPATAISADGPMNLLEAVRVAGDKQSRGRGVMVVLNDRIGSARYITKTNASTLDTFKANEEGYLGVIIGNRIYYQNRIDKLHTTRSVFDVRGLTSLPKVDILYGYQDDPEYLYDAAIQHGVKGIVYAGMGAGSVSVRGIAGMRKAMEKGVVVIRSTRTGNGIVPPDEELPGLVSDSLNPAHARILLMLALTRTSDPKVIQEYFHTY
【0040】
「配列番号1の配列を含む」という用語は、タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1に厳密に限定されることはなく、追加のアミノ酸を有していてもよいことを意味する。
【0041】
特定の実施形態において、タンパク質は、配列番号1の配列を有する、Erwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼである。別の実施形態において、L-アスパラギナーゼは、シグナルペプチド及び/またはリーダー配列の有無に関わらず、Erwinia chrysanthemi NCPPB1066(Genbank登録番号CAA32884、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)に由来する。
【0042】
配列番号1のタンパク質の断片も、本発明の複合体に使用されるタンパク質の定義に包含される。「配列番号1の断片」という用語は、そのポリペプチドの配列が、配列番号1より少ないアミノ酸を有していてもよいが、依然としてL-アミノヒドロラーゼ活性を付与するのに十分なアミノ酸を有していることを意味する。
【0043】
ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、削除、及び/または付加により、その酵素活性を保持したまま修飾可能であることが当該分野で周知である。例えば、所定の位置で、1つのアミノ酸を、タンパク質の機能特性に影響しない化学的に等価なアミノ酸により置換することは一般的である。置換は、以下の群の1つの群内での交換と定義することができる:
小型脂肪族、無極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly、
極性、負に荷電した残基及びそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln、
極性、正に荷電した残基:His、Arg、Lys、
大型脂肪族、無極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys、
大型芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0044】
すなわち、1つの負に荷電した残基から別の残基(例えば、グルタミン酸からアスパラギン酸へ)または1つの正に荷電した残基から別の残基(リシンからアルギニンへ)への置換となる交換は、機能的に等価な生成物をもたらすと予想できる。
【0045】
アミノ酸配列中のアミノ酸の修飾位置及び修飾対象となるアミノ酸の個数は、特に限定されない。当業者なら、タンパク質の活性に影響を及ぼさずに導入することが可能な修飾がわかる。例えば、タンパク質のNまたはC末端部分での修飾は、ある特定の条件下では、タンパク質の活性を変更させないと予想することができる。特に、アスパラギナーゼに関しては、十分な特性分析が、特に配列、構造、及び活性触媒部位を形成する残基に関して、行われてきている。これにより、酵素の活性に影響を及ぼすことなく修飾可能な残基に関する指針が得られる。全ての既知の細菌原料由来L-アスパラギナーゼは、共通する構造特性を有する。全て、ホモ四量体であり、2つの隣接する単量体のN末端ドメインとC末端ドメインの間に4つの活性部位を持つということである(Aghaipour (2001) Biochemistry 40, 5655-5664、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。これらは全て、その三次構造及び四次構造において高度の類似性を有する(Papageorgiou (2008) FEBSJ. 275, 4306-4316、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。L-アスパラギナーゼの触媒部位の配列は、Erwinia chrysanthemi、Erwinia carotovora、及びE.coli種L-アスパラギナーゼIIの間で高度に保存されている(Papageorgiou (2008) FEBSJ. 275, 4306-4316)。活性部位のフレキシブルループは、14-33番アミノ酸残基を含み、構造分析から、Thr15、Thr95、Ser62、Glu63、Asp96、及びAla120がリガンドと接触することが示されている(Papageorgiou (2008) FEBSJ. 275, 4306-4316)。Aghaipourらは、基質と複合した酵素の高解像度結晶構造解析により、Erwinia chrysanthemi種L-アスパラギナーゼの4つの活性部位の詳細分析を行った(Aghaipour (2001) Biochemistry 40, 5655-5664)。Kotziaらは、Erwinia属の複数の種及び亜種由来のL-アスパラギナーゼの配列決定を行い、Erwinia chrysanthemiとErwinia carotovoraの間でそれらのタンパク質が約75~77%の同一性しかないにも関わらず、それらが依然としてL-アスパラギナーゼ活性を有することを報告している(Kotzia (2007) J. Biotechnol. 127, 657-669、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。Moolaらが、Erwinia chrysanthemi 3937種L-アスパラギナーゼのエピトープマッピング試験を行ったところ、アスパラギナーゼの免疫原性を低下させるために様々な抗原性配列を変異させた後でさえ、このL-アスパラギナーゼは、酵素活性を保持することができた(Moola (1994) Biochem. J. 302, 921-927、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。上記文献はそれぞれ、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。L-アスパラギナーゼで行われてきた広範囲の特性分析を考慮することで、当業者は、酵素活性を保持したままで、どのように断片の作製及び/または配列置換を行うかを決定することができる。
【0046】
複合体に使用される重合体
重合体は、無毒水溶性重合体、例えば、多糖類、例えばヒドロキシエチルデンプン、ポリアミノ酸、例えばポリリシン、ポリエステル、例えば、ポリ乳酸、及びポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の群から選択される。
【0047】
ポリエチレングリコール(PEG)またはモノ-メトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)は、当該分野で周知であり、直鎖及び分岐鎖重合体を含む。いくつかの重合体、詳細にはPEGの例は、以下に提供され、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中参照として援用される:米国特許第5,672,662号、同第4,179,337号、同第5,252,714号、米国特許出願公開番号第2003/0114647号、米国特許第6,113,906号、同第7,419,600号、同第9,920,311号、及びPCT公開番号第WO2004/083258号。
【0048】
そのような重合体の品質は、多分散指数(PDI)により特性決定される。PDIは、所定の重合体試料中の分子量の分布を反映し、重量平均分子量を数平均分子量で除算することにより計算される。PDIは、重合体のバッチ中の個々の分子量の分布を示す。PDIは、常に1より大きい数値を有するが、ポリマー鎖が理想ガウス分布(=単分散)に近くにつれて、PDIも1に近く。
【0049】
ポリエチレングリコールは、有利には、約500Da~約9,000Daの範囲内の分子量を有する。より詳細には、ポリエチレングリコール(例えば、mPEG)は、2000Da、2500Da、3000Da、3500Da、4000Da、4500Da、及び5000Daのポリエチレングリコールからなる群より選択される分子量を有する。特定の実施形態において、ポリエチレングリコール(例えば、mPEG)は、分子量が5000Daである。
【0050】
複合体の調製法
続いて重合体をL-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を持つタンパク質とカップリングさせるために、重合体部分は、タンパク質中のアミノ基と好適に反応する活性化官能基を有する。1つの態様において、本発明は、複合体の作製法に関し、本方法は、緩衝溶液中、PEGとL-アスパラギナーゼが共有結合するのに十分な長さの時間、ある量のポリエチレングリコール(PEG)とある量のL-アスパラギナーゼを混合することを含む。特定の実施形態において、L-アスパラギナーゼは、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来であり、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼである。1つの実施形態において、PEGは、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0051】
1つの実施形態において、ポリエチレングリコールとL-アスパラギナーゼとの反応は、緩衝溶液中で行われる。特定の実施形態のいくつかにおいて、緩衝溶液のpH値は、約7.0~約9.0の範囲である。最適なpH値は、約7.5~約8.5の範囲にあり、例えば、pH値約7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、または158.5である。特定の実施形態において、L-アスパラギナーゼは、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来であり、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼである。
【0052】
そのうえさらに、L-アスパラギナーゼのPEG化は、タンパク質濃度が約0.5~約25mg/mL、より詳細には、約2~約20mg/mL、特に詳細には、約3~約15mg/mLで行われる。例えば、タンパク質濃度は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20mg/mLである。特定の実施形態において、これらのタンパク質濃度でのL-アスパラギナーゼのPEG化は、Erwinia種のものについて、より詳細にはErwinia chrysanthemiのものについてであり、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼについてである。
【0053】
2mg/mLを超える高いタンパク質濃度では、PEG化反応は、2時間未満で、迅速に進行する。そのうえさらに、L-アスパラギナーゼのアミノ基に対する重合体のモル過剰比は、約20:1未満が適用される。例えば、モル過剰比は、約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7.5:1、7:1、6.5:1、6:1、5.5:1、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、または1:1未満である。特定の実施形態において、モル過剰比は約10:1未満であり、より詳細な実施形態において、モル過剰比は約8:1未満である。特定の実施形態において、L-アスパラギナーゼは、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来であり、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼである。
【0054】
タンパク質とカップリングすることが可能なPEG部分の数は、遊離アミノ基の数に、さらには、PEG化反応で接近可能なアミノ基の数に依存する。特定の実施形態において、PEG化の度合い(すなわち、L-アスパラギナーゼのアミノ基とカップリングしたPEG部分の数)は、遊離及び/または接近可能なアミノ基の約10%~約100%の範囲内にある(例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%)。接近可能なアミノ基(例えば、タンパク質のリシン残基及び/またはN末端)の100%PEG化は、本明細書中、「最大PEG化」とも称する。mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体中の修飾アミノ基を特定する(PEG化の度合い)1つの方法は、Habeebにより記載される方法である(A. F. S. A. Habeeb, ‘‘Determination of free amino groups in proteins by trinitrobenzensulfonic acid’’, Anal. Biochem. 14 (1966), p. 328、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。1つの実施形態において、PEG部分は、L-アスパラギナーゼの1つまたは複数のアミノ基とカップリングしている(アミノ基は、リシン残基及び/またはN末端を含む)。特定の実施形態において、PEG化の度合いは、全アミノ基または接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約10%~約100%の範囲内にあり、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。特定の実施形態において、全アミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、PEG部分とカップリングする。別の特定の実施形態において、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、70%、71%、72%、7%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、PEG部分とカップリングする。特定の実施形態において、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の40~55%または100%が、PEG部分とカップリングする。実施形態によっては、PEG部分は、共有結合により、L-アスパラギナーゼとカップリングする。特定の実施形態において、L-アスパラギナーゼは、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来であり、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼである。
【0055】
1つの実施形態において、本発明の複合体は、以下の式により表すことができ
Asp-[NH-CO-(CH2)x-CO-NH-PEG]n
式中、Aspは、L-アスパラギナーゼタンパク質であり、NHは、リシン残基及び/またはタンパク質鎖のN末端のNH基であり、PEGは、ポリエチレングリコール部分であり、nは、タンパク質中の接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の少なくとも40%~約100%の数字であり、これらは全て、上記及び下記の実施例で定義されており、xは、1~8の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8)、好ましくは2~5(例えば、2、3、4、5)である。特定の実施形態において、L-アスパラギナーゼは、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来であり、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼである。
【0056】
本発明の複合体を形成するのに使用可能な他のPEG化方法は、例えば、米国特許第4,179,337号、同第5,766,897号、米国特許出願公開第2002/0065397A1号、及び米国特許出願公開第2009/0054590A1号に提示されており、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0057】
具体的な実施形態は、実質的なL-アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を有するタンパク質及びポリエチレングリコールを含み、それらは、以下の複合体の群から選択される:
(A)タンパク質は、配列番号1に開示されるとおりのErwinia chrysanthemi由来L-アスパラギナーゼと少なくとも90%相同性がある構造を有し、ポリエチレングリコールは、分子量が約5000Daあり、タンパク質とポリエチレングリコール部分は、アミド結合によりタンパク質と共有結合しており、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約100%、または全アミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約80~90%、詳細には、約84%が、ポリエチレングリコール部分と結合している。
(B)タンパク質は、配列番号1に開示されるとおりのErwinia chrysanthemi由来L-アスパラギナーゼと少なくとも90%相同性がある構造を有し、ポリエチレングリコールは、分子量が約5000Daあり、タンパク質とポリエチレングリコール部分は、アミド結合によりタンパク質と共有結合しており、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約40%~約45%、より詳細には約43%、または全アミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約36%が、ポリエチレングリコール部分と結合している。
(C)タンパク質は、配列番号1に開示されるとおりのErwinia chrysanthemi由来L-アスパラギナーゼと少なくとも90%相同性がある構造を有し、ポリエチレングリコールは、分子量が約2000Daあり、タンパク質とポリエチレングリコール部分は、アミド結合によりタンパク質と共有結合しており、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約100%、または全アミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約80~90%、詳細には、約84%が、ポリエチレングリコール部分と結合している。
(D)タンパク質は、配列番号1に開示されるとおりのErwinia chrysanthemi由来L-アスパラギナーゼと少なくとも90%相同性がある構造を有し、ポリエチレングリコールは、分子量が約2000Daあり、タンパク質とポリエチレングリコール部分は、アミド結合によりタンパク質と共有結合しており、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の[0092]約50%~約60%、より詳細には約55%、または全アミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約47%が、ポリエチレングリコール部分と結合している。
【0058】
L-アスパラギナーゼ-PEG複合体
本発明の複合体は、未修飾L-アスパラギナーゼと比較して、詳細には未修飾Erwinia属L-アスパラギナーゼと比較して、より詳細にはErwinia chrysanthemi由来の未修飾L-アスパラギナーゼと比較して、より詳細には配列番号1の配列を有する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して、ある特定の利点及び予期せぬ特性を有する。
【0059】
実施形態によっては、本発明の方法は、5U/kg体重(bw)または10μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で投与した場合、少なくとも約12、24、48、72、96、または120時間の期間の間、血漿L-アスパラギン及びグルタミンレベルを低下させる複合体を包含する。他の実施形態において、本発明の複合体は、25U/kgbwまたは50μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で投与した場合、少なくとも約12、24、48、72、96、120、または144時間の期間の間、血漿L-アスパラギンレベルを、検出不能レベルまで低下させる。他の実施形態において、本発明の複合体は、50U/kgbwまたは100μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で投与した場合、少なくとも約12、24、48、72、96、120、144、168、192、216、または240時間の期間の間、血漿L-アスパラギンレベルを低下させる。別の実施形態において、本発明の複合体は、約100~約15,000IU/m2(約1~30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で投与した場合、少なくとも約12、24、48、72、96、120、144、168、192、216、または240時間の期間の間、血漿L-アスパラギンレベルを、検出不能レベルまで低下させる。特定の実施形態において、複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼを含み、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む。詳細な実施形態において、複合体は、分子量が約5000Da以下のPEG(例えば、mPEG)を含む。より詳細な実施形態において、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の少なくとも約40%~約100%がPEG化される。
【0060】
1つの実施形態において、複合体は、molPEG/mol単量体の比が約4.5~約8.5、詳細には約6.5であり、比活性が約450~約550U/mg、詳細には約501U/mgであり、及び相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して相対活性が約75%~約85%、詳細には約81%である。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含み、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約40~55%が5000DaのmPEGによりPEG化されている。
【0061】
1つの実施形態において、複合体は、molPEG/mol単量体の比が約12.0~約18.0、詳細には約15.1であり、比活性が約450~約550U/mg、詳細には約483U/mgであり、及び相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して相対活性が約75%~約85%、詳細には約78%である。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含み、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約100%が5000DaのmPEGによりPEG化されている。
【0062】
1つの実施形態において、複合体は、molPEG/mol単量体の比が約5.0~約9.0、詳細には約7.0であり、比活性が約450~約550U/mg、詳細には約501U/mgであり、及び相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して相対活性が約80~約90%、詳細には約87%である。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含み、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約40~55%が10,000DaのmPEGによりPEG化されている。
【0063】
1つの実施形態において、複合体は、molPEG/mol単量体の比が約11.0~約17.0、詳細には約14.1であり、比活性が約450~約550U/mg、詳細には約541U/mgであり、及び相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して相対活性が約80~約90%、詳細には約87%である。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含み、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約100%が10,000DaのmPEGによりPEG化されている。
【0064】
1つの実施形態において、複合体は、molPEG/mol単量体の比が約6.5~約10.5、詳細には約8.5であり、比活性が約450~約550U/mg、詳細には約524U/mgであり、及び相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して相対活性が約80~約90%、詳細には約84%である。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含み、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約40~55%が2,000DaのmPEGによりPEG化されている。
【0065】
1つの実施形態において、複合体は、molPEG/mol単量体の比が約12.5~約18.5、詳細には約15.5であり、比活性が約450~約550U/mg、詳細には約515U/mgであり、及び相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して相対活性が約80~約90%、詳細には約83%である。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含み、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の約100%が2,000DaのmPEGによりPEG化されている。
【0066】
他の実施形態において、本発明の複合体は、相当する未修飾L-アスパラギナーゼと比較して、単回注射後の効力が少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍上昇している。特定の実施形態において、これらの性質を持つ複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む。特定の実施形態において、複合体は、分子量が約5000Da以下のPEG(例えば、mPEG)を含む。より特定の実施形態において、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の少なくとも約40%~約100%が、PEG化されている。
【0067】
1つの実施形態において、本発明の複合体は、PCT公開第WO2011003886号に記載のとおり測定した場合、以下のとおりの単回用量薬物動態プロファイルを有し、詳細には、複合体は、分子量2000Da以下のmPEG、及びErwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む:
Amax:約150U/L~約250U/L、
TAmax:約4時間~約8時間、詳細には約6時間、
dAmax:約220時間~約250時間、詳細には、約238.5時間(0超、約90分~約240時間)、
AUC:約12000~約30000、及び
t1/2:約50時間~約90時間。
1つの実施形態において、本発明の複合体は、以下のとおりの単回用量薬物動態プロファイルを有し、詳細には、複合体は、分子量5000Da以下のmPEG、及びErwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む:
Amax:約18U/L~約250U/L、
TAmax:約1時間~約50時間、
dAmax:約90時間~約250時間、詳細には、約238.5時間(0超、約90分~約240時間)、
AUC:約500~約35000、及び
t1/2:約30時間~約120時間。
1つの実施形態において、本発明の複合体は、タンパク質の量が等価なペグアスパラガーゼと比較して、単回用量後に、一定時間にわたり(例えば、24、48、または72時間)、同様なレベルのL-アスパラギン枯渇をもたらす。特定の実施形態において、複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む。特定の実施形態において、複合体は、分子量5000Da以下のPEG(例えば、mPEG)を含む。より特定の実施形態において、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の少なくとも約40%~約100%、より詳細には約40~55%または100%が、PEG化されている。
【0068】
1つの実施形態において、本発明の複合体は、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する。特定の実施形態において、複合体は、約50μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で、少なくとも約50、52、54、56、58、59、60、61、62、63、64、または65時間のt1/2を有する。別の特定の実施形態において、複合体は、約10μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で、少なくとも約30、32、34、36、37、38、39、または40時間のt1/2を有する。別の特定の実施形態において、複合体は、約100~約15,000IU/m2(約1~30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で、少なくとも約100~約200時間のt1/2を有する。
【0069】
1つの実施形態において、本発明の複合体は、平均AUCが、等価なタンパク質用量でのペグアスパラガーゼより少なくとも約2、3、4、または5倍大きい。
【0070】
1つの実施形態において、本発明の複合体は、単回用量の投与後、ある特定の期間の間、例えば、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間超などの間、どのような顕著な抗体反応も生じさせない。特定の実施形態において、本発明の複合体は、少なくとも8週間、どのような顕著な抗体反応も生じさせない。1つの例において、「どのような顕著な抗体反応も生じさせない」は、複合体を投与される対象が、当該分野で認められたパラメーター範囲内において抗体陰性と同定されることを意味する。抗体レベルは、当該分野で既知である方法、例えば、ELISAまたは表面プラズモン共鳴(SPR-Biacore)アッセイなどにより測定可能である(Zalewska-Szewczyk (2009) Clin. Exp. Med. 9, 113-116;Avramis (2009) AntiCancer Research 29, 299-302、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中参照として援用される)。本発明の複合体は、これらの性質を任意の組み合わせで有することができる。
【0071】
PAS化L-アスパラギナーゼ
実施形態によっては、本発明の方法は、1つまたは複数のペプチド(複数可)を含むL-アスパラギナーゼ複合体を包含し、各ペプチドは、独立して、ペプチドRN-(P/A)-RCであり、式中、(P/A)は、プロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるアミノ酸配列であり、式中、RNは、アミノ酸配列のN末端アミノ基に結合した保護基であり、式中、RCは、自身のアミノ基を介してアミノ酸配列のC末端カルボキシ基に結合したアミノ酸残基であり、各ペプチドは、ペプチドのC末端アミノ酸残基RCのカルボキシ基とL-アスパラギナーゼの遊離アミノ基から形成されたアミド結合を介してL-アスパラギナーゼと複合体形成しており、ならびに、ペプチドが結合している遊離アミノ基の少なくとも1つは、L-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基ではない。これらの分子は、L-アスパラギナーゼのPAS化体としても知られ、本明細書中、複合体とも称する。
【0072】
修飾L-アスパラギナーゼタンパク質の単量体は、修飾後に約350、400、450、500のアミノ酸~約550、600、650、700、または750のアミノ酸を有する。追加の態様において、修飾L-アスパラギナーゼタンパク質は、約350~約750のアミノ酸、または約500~約750のアミノ酸を有する。
【0073】
本明細書中記載されるとおりの修飾L-アスパラギナーゼタンパク質に含まれる各ペプチドは、独立して、ペプチドRN-(P/A)-RCである。したがって、本明細書中記載されるとおりの修飾L-アスパラギナーゼタンパク質に含まれる各ペプチドに関して、N末端保護基RN、アミノ酸配列(P/A)、及びC末端アミノ酸残基RCはそれぞれ、独立して、それらの各自意味するところから選択される。したがって、修飾L-アスパラギナーゼタンパク質に含まれる2つ以上のペプチドは、同じである場合もあれば、互いに異なっている場合もある。1つの態様において、修飾L-アスパラギナーゼタンパク質に含まれる全てのペプチドは、同じである。
【0074】
化学結合した修飾L-アスパラギナーゼタンパク質中の部分(P/A)は、ペプチドRN-(P/A)-RCに含まれているが、この部分は、合計で10~100またはそれ以上のプロリン及びアラニンアミノ酸残基、合計で15~60のプロリン及びアラニンアミノ酸残基、合計で15~45のプロリン及びアラニンアミノ酸残基、例えば、合計で20~約40のプロリン及びアラニンアミノ酸残基、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45のプロリン及びアラニンアミノ酸残基からなることが可能なアミノ酸配列である。好適な態様において、上記アミノ酸配列は、約20のプロリン及びアラニンアミノ酸残基からなる。別の好適な態様において、上記アミノ酸配列は、約40のプロリン及びアラニンアミノ酸残基からなる。ペプチドRN-(P/A)-RCにおいて、部分(P/A)に含まれるアミノ酸残基の数に対する(P/A)に含まれるプロリン残基の数の比は、好ましくは≧10%及び≦70%、より好ましくは≧20%及び≦50%、さらにより好ましくは≧25%及び≦40%である。したがって、(P/A)中のアミノ酸残基の合計数のうち10%~70%はプロリン残基であることが好ましく、より好ましくは、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の合計数のうち20%~50%がプロリン残基であり、さらにより好ましくは、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の合計数のうち25%~40%(例えば、25%、30%、35%、または40%)がプロリン残基である。そのうえ、(P/A)は、連続するプロリン残基をまったく含まない(すなわち、(P/A)は部分配列PPをまったく含まない)ことが好ましい。好適な態様において、(P/A)は、アミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号2)である。別の好適な態様において、(P/A)は、アミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号3)である。
【0075】
ペプチドRN-(P/A)-RCの基RNは、アミノ酸配列(P/A)のN末端アミノ基、詳細にはN末端α-アミノ基に結合した保護基の場合がある。RNは、ピログルタモイルまたはアセチルであることが好ましい。
【0076】
ペプチドRN-(P/A)-RCの基RCは、自身のアミノ基を介して(P/A)のC末端カルボキシ基に結合したアミノ酸残基であり、この基は、自身のアミノ基と自身のカルボキシ基の間に少なくとも2個の炭素原子を有する。当然のことながら、RCのアミノ基とカルボキシ基の間の少なくとも2個の炭素原子は、RCのアミノ基とカルボキシ基の間に少なくとも2個の炭素原子分の間隔を提供することができる(これは、例えば、RCがω-アミノ-C3-15アルカン酸、例えば、ε-アミノヘキサン酸の場合にそうなる)。RCは、ε-アミノヘキサン酸であることが好ましい。
【0077】
[0001]1つの実施形態において、ペプチドは、Pga-AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA-Ahx-COOH(配列番号4)またはPga-AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA-Ahx-COOH(配列番号5)である。「Pga」という用語は、「ピログルタモイル」または「ピログルタミン酸」の略号である。「Ahx」という用語は、「ε-アミノヘキサン酸」の略号である。
【0078】
本明細書中記載されるとおりの修飾L-アスパラギナーゼタンパク質において、各ペプチドRN-(P/A)-RCは、ペプチドのC末端アミノ酸残基RCのカルボキシ基とL-アスパラギナーゼの遊離アミノ基から形成されたアミド結合を介してL-アスパラギナーゼと複合体形成することができる。L-アスパラギナーゼの遊離アミノ基は、例えば、L-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基または側鎖アミノ基が可能である(例えば、L-アスパラギナーゼに含まれるリシン残基のε-アミノ基)。L-アスパラギナーゼが、複数のサブユニットで構成される場合、例えば、L-アスパラギナーゼが四量体である場合、複数のN末端α-アミノ基が存在する場合がある(すなわち、各サブユニットに1つ)。1つの態様において、9~13の本明細書中定義されるとおりのペプチド(例えば9、11、12、または13のペプチド)を、L-アスパラギナーゼと(例えば、L-アスパラギナーゼの各サブユニット/単量体と)化学結合させることができる。
【0079】
上記に従い、1つの態様において、ペプチドが化学結合する遊離アミノ基のうち少なくとも1つは、L-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基ではない(すなわち、N末端α-アミノ基とは異なる)。したがって、ペプチドが結合する遊離アミノ基のうち少なくとも1つは、L-アスパラギナーゼの側鎖アミノ基であることが好ましく、ペプチドが結合する遊離アミノ基のうち少なくとも1つは、L-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であることが特に好ましい。
【0080】
そのうえ、ペプチドが結合する遊離アミノ基は、L-アスパラギナーゼのいずれかのリシン残基(複数可)のε-アミノ基(複数可)、L-アスパラギナーゼのまたはL-アスパラギナーゼのいずれかのサブユニット(複数可)のN末端α-アミノ基(複数可)、及びそれらの任意の組み合わせから選択されることが好ましい。ペプチドが結合する遊離アミノ基のうちの1つは、N末端α-アミノ基であり、ペプチドが結合する遊離アミノ基のうちのそのほかの1つ(複数可)は、それぞれ、L-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であることが、特に好ましい。あるいは、ペプチドが結合する遊離アミノ基はそれぞれ、L-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であることが好ましい。
【0081】
本明細書中記載されるとおりの修飾L-アスパラギナーゼタンパク質は、L-アスパラギナーゼ及び1つまたは複数の本明細書中定義されるとおりのペプチドで構成される。相当する修飾L-アスパラギナーゼタンパク質は、例えば、1つのL-アスパラギナーゼと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55(またはそれ以上)のペプチドとからなることができ、ペプチドはそれぞれL-アスパラギナーゼと結合している。L-アスパラギナーゼは、例えば、単量体タンパク質の場合も、複数のサブユニットで構成されたタンパク質、例えば、四量体の場合もある。L-アスパラギナーゼが単量体タンパク質である場合、相当する修飾L-アスパラギナーゼタンパク質は、例えば、1つの単量体L-アスパラギナーゼと、9~13(またはそれ以上)、(例えば、8、9、10、11、12、または13)のペプチドとからなることができ、ペプチドはそれぞれ、単量体L-アスパラギナーゼと結合している。単量体L-アスパラギナーゼのアミノ酸配列の例を、配列番号1に示す。L-アスパラギナーゼが、複数のサブユニット、例えば4つのサブユニットで構成されたタンパク質である場合(すなわち、上記L-アスパラギナーゼが四量体である場合)、相当する修飾L-アスパラギナーゼタンパク質は、例えば、4つのL-アスパラギナーゼサブユニットと、9~13(またはそれ以上)、(例えば、9、10、11、12、または13)の上記で定義されるとおりのペプチドとからなることができ、ペプチドはそれぞれ、L-アスパラギナーゼの各サブユニットと結合している。L-アスパラギナーゼのサブユニットのアミノ酸配列の例を、配列番号1に示す。同様に、L-アスパラギナーゼが、複数のサブユニット、例えば4つのサブユニットで構成されたタンパク質である場合(すなわち、上記L-アスパラギナーゼが四量体である場合)、相当する修飾L-アスパラギナーゼタンパク質は、例えば、4つのL-アスパラギナーゼサブユニットと、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55(またはそれ以上)のペプチドとからなることができ、ペプチドはそれぞれ、L-アスパラギナーゼ四量体と結合している。1つの態様において、本発明は、L-アスパラギナーゼ及び複数の化学結合したペプチド配列を有する修飾L-アスパラギナーゼタンパク質に関する。さらなる態様において、ペプチド配列の長さは、約10~約100、約15~約60、または約20~約40である。
【0082】
プロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるペプチドは、上記L-アスパラギナーゼの1つまたは複数のアミノ酸、例えば、リシン残基及び/またはN末端残基と共有結合することができ、及び/またはプロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるペプチドは、L-アスパラギナーゼ表面のリシン残基及び/またはN末端残基のアミノ基を含む接近可能なアミノ基のうち少なくとも約40、50、60、70、80、または90%~約60、70、80、90、または100%と共有結合している場合がある。例えば、接近可能なリシン残基は、1つのL-アスパラギナーゼあたり約11~12存在し、約8~12のリシンが、プロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるペプチドと結合する可能性がある。さらなる態様において、プロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるペプチドは、上記L-アスパラギナーゼの全リシン残基のうち約20、30、40、50、または60%~約30、40、50、60、70、80、または90%と共有結合している。さらなる実施形態において、プロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるペプチドは、リンカーを介してL-アスパラギナーゼと共有結合している。リンカーの例として、米国特許出願第2015/0037359号に開示されるリンカーが挙げられ、この出願はそのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0083】
1つの態様において、複合体は、L-アスパラギナーゼと、長さが約200~約400のプロリン及びアラニンアミノ酸残基のプロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなるポリペプチドとを含む融合タンパク質である。言い換えると、ポリペプチドは、約200~約400のプロリン及びアラニンアミノ酸残基からなる場合がある。1つの態様において、ポリペプチドは、合計で約200(例えば201)のプロリン及びアラニンアミノ酸残基からなる(すなわち、約200(例えば201)のプロリン及びアラニンアミノ酸残基の長さを有する)、またはポリペプチドは、合計で約400(例えば401)のプロリン及びアラニンアミノ酸残基からなる(すなわち、約400(例えば401)のプロリン及びアラニンアミノ酸残基の長さを有する)。好適な実施形態のいくつかにおいて、ポリペプチドは、配列番号6または7に示すとおりのアミノ酸配列を含む、またはそのアミノ酸配列からなる。態様によっては、融合タンパク質の各単量体は、単量体及びP/Aアミノ酸配列を含めて、約350、400、450、500のアミノ酸~約550、600、650、700、750、または1,000のアミノ酸を有する。さらなる態様において、修飾タンパク質は、約350~約800のアミノ酸または約500~約750のアミノ酸を有する。例えば、ポリペプチドは、米国特許第9,221,882号で調製されたペプチドを含む。態様によっては、L-アスパラギナーゼは、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来であり、より詳細には本明細書中記載されるとおりの配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼである。
【0084】
さらなる態様において、本明細書中開示されるL-アスパラギナーゼは、L-アスパラギナーゼ及びポリペプチドを含む修飾L-アスパラギナーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む(組換え)ベクターを用いて産生させることができ、このポリペプチドはプロリン及びアラニンアミノ酸残基のみからなり、好ましくは修飾タンパク質は、本明細書中記載されるとおりの融合タンパク質であり、ベクターは、修飾タンパク質(例えば融合タンパク質)を発現することができる。さらなる態様において、本発明は、本明細書中記載される(組換え)ベクターを含む宿主にも関する。宿主として、酵母菌、例えば、Saccharomyces cerevisiae及びPichia Pistorisなど、細菌、放線菌、真菌、藻類、及び他の微生物、例えば、Escherichia coli、Bacillus種、Pseudomonas fluorescens、Corynebacterium glutamicumなど、ならびに以下の属、Serratia、Proteus、Acinetobacter、及びAlcaligenesの細菌宿主が可能である。他の宿主も、当業者に既知であり、そのような宿主として、グルタミナーゼ活性を欠いたアスパラギナーゼ変異体を発現するNocardiopsis alba、及びSavitri et al. (2003) Indian Journal of Biotechnology, 2, 184-194に開示されるものが挙げられ、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0085】
治療法及び使用法
本発明の複合体は、アスパラギン及び/またはグルタミンの枯渇により治療可能な疾患の治療に使用することができる。例えば、複合体は、成人及び小児両方での急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ならびにアスパラギン及び/またはグルタミンの枯渇が有用な効果を有すると予想される他の症状の治療あるいはその治療用の医薬の製造に有用である。そのような症状として、以下が挙げられるが、それらに限定されない:悪性腫瘍またはがん、例えば、血液悪性腫瘍、リンパ腫、大細胞型免疫芽球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、NKリンパ腫、ホジキン病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、二重表現型B細胞骨髄単球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ肉腫、細網肉腫、及び黒色肉腫であるが、これらに限定されない。実施形態によっては、疾患は、急性骨髄性白血病またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の場合がある。悪性腫瘍またはがんとして、腎細胞癌、腎細胞腺癌、多形性膠芽腫及び星細胞腫を含む神経膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、悪性黒色腫、類表皮癌、扁平上皮癌、肺大細胞癌及び小細胞肺癌を含む肺癌、子宮内膜癌、卵巣腺癌、卵巣奇形癌、子宮頸部腺癌、乳癌、乳腺癌、乳管癌、膵臓腺癌、膵管癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸腺癌、膀胱移行上皮癌、膀胱乳頭腫、前立腺癌、骨肉腫、骨の類上皮癌、前立腺癌、ならびに甲状腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
アスパラギン及び/またはグルタミン枯渇に反応する代表的な非悪性血液疾患として、免疫系介在型血液疾患、例えば、HIV感染(すなわち、AIDS)により引き起こされるものなどの感染症が挙げられる。アスパラギン及び/またはグルタミン依存と関連した非血液疾患として、自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、膠原血管病などが挙げられる。他の自己免疫疾患として、変形性関節症、アイザックス症候群、乾癬、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、硬化性全脳炎、リウマチ熱、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、及びグレーブス病が挙げられる。疾患を引き起こすことが疑われる細胞を、任意の適切なin vitroまたはin vivoアッセイで、例えば、増殖培地がアスパラギン及び/またはグルタミンを含まないin vitroアッセイで、アスパラギン及び/またはグルタミン依存について検査することができる。すなわち、1つの態様において、本発明は、患者において治療可能な疾患を治療する方法に関し、本方法は、患者に、本発明の複合体を有効量で投与することを含む。別の態様において、発明の複合体は、別の活性医薬成分と同時投与される。実施形態によっては、発明の複合体は、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/またはCB-839と同時投与される。特定の実施形態において、疾患は、ALLである。特定の実施形態において、アスパラギン及び/またはグルタミン枯渇により治療可能な疾患の治療に使用される複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には本明細書中記載されるとおりの配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む。
【0087】
1つの実施形態において、発明の複合体を用いた治療は、第一選択治療として実施されることになる。別の実施形態において、発明の複合体を用いた治療は、他のアスパラギナーゼ製剤に対して、特に未変性Escherichia-coli由来L-アスパラギナーゼまたはそのPEG化変異体(ペグアスパラガーゼ)に対して、アレルギーまたは「無症候性過敏症」を含む過敏症の客観的兆候が発生した患者、詳細にはALLの患者における第二選択治療として実施されることになる。アレルギーまたは過敏症の客観的兆候の非限定的な例として、アスパラギナーゼ酵素に関する検査で「抗体陽性」であることが挙げられる。特定の実施形態において、発明の複合体は、ペグアスパラガーゼを用いた治療後の第二選択治療で使用される。より具体的な実施形態において、第二選択治療で使用される複合体は、Erwinia種由来、より詳細には、Erwinia chrysanthemi由来のL-アスパラギナーゼ、より詳細には配列番号1の配列を含むL-アスパラギナーゼを含む。より具体的な実施形態において、複合体は、さらに、分子量が約5000Da以下、より詳細には約5000DaのPEG(例えば、mPEG)を含む。さらにより具体的な実施形態において、接近可能なアミノ基(例えば、リシン残基及び/またはN末端)の少なくとも約40%~約100%、より詳細には約40~55%または100%がPEG化されている。
【0088】
別の態様において、本発明は、急性リンパ芽球性白血病の治療法に関し、本方法は、治療を必要としている患者に、治療上有効量の本発明の複合体を投与することを含む。別の態様において、本発明は、急性骨髄性白血病の治療法に関し、本方法は、治療を必要としている患者に、治療上有効量の本発明の複合体を、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、及び/またはカルフィルゾミブと併用して投与することを含む。別の態様において、本発明は、急性骨髄性白血病の治療法に関し、本方法は、治療を必要としている患者に、治療上有効量の本発明の複合体を、ベネトクラクスと併用して投与することを含む。別の態様において、本発明は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療法に関し、本方法は、治療を必要としている患者に、治療上有効量の本発明の複合体を、ABT-737、ベネトクラクス、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、及び/またはプレドニゾロンと併用して投与することを含む。別の態様において、本発明は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療法に関し、本方法は、治療を必要としている患者に、治療上有効量の本発明の複合体を、ビンクリスチンと併用して投与することを含む。
【0089】
別の態様において、本明細書中記載される複合体は、約1500IU/m2~約15,000IU/m2、典型的には約10,000~約15,000IU/m2(約20~30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で、約週に2回~約1ヶ月に1回、典型的には、週に1回または1週おきに1回の範囲のスケジュールで、単剤として(例えば、単剤療法)または化学療法薬の組み合わせの一部として投与されることになり、化学療法薬としては、糖質コルチコイド、コルチコステロイド、抗癌化合物、または他の作用剤、例えばメトトレキサート、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びアントラサイクリンなどが挙げられるがこれらに限定されない。例として、ALLの患者は、導入療法、地固めまたは強化療法、及び維持療法を含む化学療法期間中、多剤化学療法の一成分として本発明の複合体を投与されることになる。具体例において、複合体は、アスパラギンシンセターゼ阻害剤(例えば、米国特許第9,920,311号に記載されるものなど、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)とともには投与されない。別の具体例において、複合体は、アスパラギンシンセターゼ阻害剤とともには投与されないが、他の化学療法薬とともに投与される。複合体は、多剤化学療法レジメンの一部として、他の化合物の前、後、または同時に投与することができる。
【0090】
特定の実施形態において、本方法は、本発明の複合体を、約1U/kg~約25U/kg(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25U/kg)またはそれらと等価な量20(例えば、タンパク質含有量基準)で投与することを含む。より具体的な実施形態において、複合体は、約5、約10、及び約25U/kgからなる群より選択される量で投与される。別の具体的な実施形態において、複合体は、約1,000IU/m2~約20,000IU/m2(例えば、1,000IU/m2、2,000IU/m2、3,000IU/m2、4,000IU/m2、5,000IU/m2、6,000IU/m2、7,000IU/m2、8,000IU/m2、9,000IU/m2、10,000IU/m2、11,000IU/m2、12,000IU/m2、13,000IU/m2、14,000IU/m2、15,000IU/m2、16,000IU/m2、17,000IU/m2、18,000IU/m2、19,000IU/m2、または20,000IU/m2)の範囲の用量で投与される。別の具体的な実施形態において、複合体は、単回用量の場合、約3日間~約10日間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、または10日間)の期間、L-アスパラギン及び/またはグルタミンを、当該分野で既知である方法及び装置を用いて検出不能なレベルまで激減させる用量で投与される。
【0091】
別の実施形態において、本方法は、非複合L-アスパラギナーゼよりも低い免疫原性反応を患者に誘発する本発明の複合体を投与することを含む。別の実施形態において、本方法は、非複合L-アスパラギナーゼよりも長い単回用量後in vivo循環半減期を有する本発明の複合体を投与することを含む。1つの実施形態において、本方法は、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する複合体を投与することを含む。特定の実施形態において、本方法は、約50μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で少なくとも約50、52、54、56、58、59、60、61、62、63、64、または65時間のt1/2を有する複合体を投与することを含む。別の具体的な実施形態において、本方法は、約10μg/kg(タンパク質含有量基準)の用量で少なくとも約30、32、34、36、37、37、39、または40時間のt1/2を有する複合体を投与することを含む。別の具体的な実施形態において、本方法は、約10,000~約15,000IU/IU/m2(約20~30mgタンパク質/IU/m2)の範囲の用量で少なくとも約100~約200時間のt1/2を有する複合体を投与することを含む。1つの実施形態において、本方法は、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼに比べて少なくとも約2、3、4、または5倍大きい平均AUCを有する複合体を投与することを含む。
【0092】
L-アスパラギナーゼを用いた治療後にALL患者で再発が起こる頻度は依然として高く、小児ALL患者の約10~25%で、早期再発が起こる(例えば、場合によっては、導入から30~36ヶ月後の維持期間中)(Avramis (2005) Clin. Pharmacokinet. 44, 367-393)。E.coli由来L-アスパラギナーゼで治療された患者で再発が起きた場合、E.coli製剤を用いたその後の治療は、「ワクチン接種」効果を招く可能性があり、これにより、E.coli製剤は、その後の投与中の免疫原性が高くなる。1つの実施形態において、本発明の複合体は、他のアスパラギナーゼ製剤で以前に治療された、詳細には、E.coli由来アスパラギナーゼで以前に治療された、再発性ALLの患者の治療法に使用することができる。
【0093】
実施形態によっては、本発明の治療の使用及び方法は、本明細書中上記(例えば、L-アスパラギナーゼPEG複合体またはPAS化L-アスパラギナーゼと題した章において)に、または本明細書中以下に記載される性質または性質の組み合わせを有するL-アスパラギナーゼ複合体を投与することを含む。
【0094】
組成物、配合物、及び投与経路
本発明は、本発明の複合体を含む医薬組成物も含む。特定の実施形態において、医薬組成物は、現在入手可能な天然L-アスパラギナーゼなど、その製造に使用された細菌原料が何かに関わらず、溶媒で再構築することを予定した凍結乾燥粉末としてバイアルに収容されている(Kidrolase(登録商標)、Elspar(登録商標)、Erwinase(登録商標))。別の実施形態において、医薬組成物は、さらに、「すぐに使用可能な」液剤として、ペグアスパラガーゼなどを含む場合があり(Oncaspar(登録商標))、これにより、適切に取り扱い、例えば、筋肉内、静脈内(点滴及び/またはボーラス)、脳室内(icv)、皮下経路を通じて投与することがさらに可能になる。さらなる実施形態において、医薬組成物は、本発明の複合体を、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/またはCB-839と組み合わせて含む。
【0095】
本発明の複合体は、本発明の複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)も含めて、標準技法を用いて患者に投与することができる。技法及び処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (2013) 22nd ed., Mack Publishingで見つけることができ、これは本明細書中参照として援用される。
【0096】
適切な剤形は、部分的には、使い方または導入経路、例えば、経口、経皮、経粘膜、または注射による(非経口)などに依存する。そのような剤形は、治療薬が標的細胞に到達するか、いずれにしろ所望の治療効果を有することを許容するものでなければならない。例えば、血流に注射される医薬組成物は、好ましくは、溶解性である。
【0097】
本発明による複合体及び/または医薬組成物は、その薬学上許容される塩及び錯体として配合することができる。薬学上許容される塩とは、それらが投与される量及び濃度において無毒で存在する塩である。そのような塩の製剤は、化合物がその生理的効果を発揮することを防ぐことなく、その化合物の物性を改変することにより、医療での使用を促進することができる。物性の有用な改変として、融点の低下による経粘膜投与の促進、及び溶解性の上昇による薬物濃度を上昇させての投与の促進が挙げられる。アスパラギナーゼの薬学上許容される塩は、当該分野で認められるとおり、錯体として存在することもできる。
【0098】
薬学上許容される塩として、酸付加塩、例えば、硫酸イオン、塩酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、リン酸イオン、スルファミン酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、シクロヘキシルスルファミン酸イオン、及びキナ酸イオンを含むものが挙げられる。薬学上許容される塩は、酸から得ることができ、酸として、塩酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、フマル酸、及びキナ酸が挙げられる。
【0099】
酸性官能基、例えば、カルボン酸またはフェノールが存在する場合には、薬学上許容される塩として、塩基付加塩、例えば、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、アルキルアミン、及び亜鉛を含むものも挙げられる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(既出)を参照。そのような塩は、適切な該当する塩基を用いて調製することができる。
【0100】
薬学上許容されるキャリア及び/または賦形剤も、本発明による医薬組成物に組み込んで、特定アスパラギナーゼの投与を促進することができる。本発明を実施する上で使用するのに適したキャリアの例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、例えば、ラクトース、グルコース、またはスクロースなど、または各種デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び生理学的に適合性の溶媒が挙げられる。生理学的に適合性の溶媒の例として、注射用水(WFI)、生理食塩水、及びブドウ糖の滅菌溶液が挙げられる。
【0101】
本発明による医薬組成物は、様々な経路で投与することができ、そのような経路として、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、外用(経皮)、または経粘膜投与が挙げられる。全身投与の場合、経口投与が好ましい。経口投与の場合、例えば、化合物は、従来の経口剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、及び液状製剤、例えば、シロップ剤、エリキシル剤、及び濃縮ドロップなどに配合することができる。
【0102】
あるいは、注射(非経口投与)、例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び皮下注射が、用いられる場合がある。注射の場合、医薬組成物は、液状剤、好ましくは、生理学的に適合性の緩衝液または溶液、例えば生理食塩水、ハンクス液、またはリンガー液に配合される。また、化合物は、固形で配合し、使用直前に再溶解または懸濁させることができる。例えば、凍結乾燥形の複合体を製造することができる。具体的な実施形態において、複合体は、筋肉内投与される。別の具体的な実施形態において、複合体は、静脈内投与される。
【0103】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によっても達成することができる。経粘膜または経皮投与の場合、透過させるバリアに適切な浸透剤を配合物に使用する。そのような浸透剤は、当該分野で周知であり、そのようなものとして、例えば、経粘膜投与の場合、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。また、浸透を促進するために界面活性剤を使用する場合がある。経粘膜投与は、例えば、鼻スプレー、インヘラー(肺に送達するため)、直腸坐剤、または膣坐剤を通じたものが可能である。外用投与の場合、化合物は、当該分野で周知であるとおり、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに配合することができる。
【0104】
送達される複合体の量は、多くの要因、例えば、IC50、EC50、化合物の生物学的半減期、患者の年齢、寸法、体重、及び体調、ならびに治療しようとする疾患または障害などに依存することになる。考慮すべきこれら及び他の要因の重要性は、当業者に周知である。概して、投与される複合体の量は、患者の身体の表面積1平方メートルあたり約10国際単位(IU/m2)~50,000IU/m2の範囲になり、投薬量範囲は、約1,000IU/m2~約15,000IU/m2が好適であり、約6,000IU/m2~約15,000IU/m2の範囲がより好適であり、約10,000~約15,000IU/m2(約20~30mgタンパク質/m2)の範囲が、悪性血液疾患、例えば、白血病を治療するのに特に好適である。典型的には、これらの投薬量は、治療過程中、週に3回から1ヶ月に約1回、典型的には週に1回または1週おきに1回の間隔で、筋肉内または静脈内注射を介して投与される。当然ながら、担当医により決定されるとおり、他の投薬量及び/または治療レジメンが採用可能である。
【0105】
本発明は、以下の追加の例によりさらに例示されるが、それらは制限するものとみなされるべきではない。当業者なら、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、それでもなお類似のまたは同様な結果を得ることができることがわかるはずである。
【実施例0106】
米国特許第9,920,311号の発明対象は、PEG化アスパラギナーゼの製造法及び試験法を開示する実施例も含めて、本明細書中参照として援用される。以下の実施例で使用されるmPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体は、米国特許第9,920,311号に記載のとおりの調製した。
【0107】
実施例1
mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体(Pegクリサンタスパーゼ)を、以下に示すとおり2段階で、様々な細胞株に対して試験した。
【0108】
細胞調製。全ての細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)Manassas、Virginia(US)からライセンス化された。ATCC推奨プロトコル(www.atcc.org)に従って、ATCC推奨培地中で継代培養し、凍結させることにより、マスター細胞バンク及び作業細胞バンク(MCB及びWCB)を調製した。
【0109】
化合物調製。試験化合物を、適宜DMSOまたは水性緩衝液を用いて、原液として調製し、系列希釈して、希釈系列を得た。
【0110】
細胞増殖アッセイ。市販の蛍光アッセイを用い、終点にATPを使用して、細胞増殖を評価した。
【0111】
対照。t=0のシグナル。平行プレートに、細胞45μlを分注し、5%CO2の加湿雰囲気中、37℃でインキュベートした。24時間後、DMSO含有Hepes緩衝液5μl及びATPlite 1Step(商標)溶液25μlを混合し、10分インキュベーション後に蛍光を測定した(=蛍光t=0)。
【0112】
参照化合物。参照化合物ドキソルビシンのIC50を、別個のプレートで測定する。IC50には、傾向がある。IC50が仕様から外れる場合(過去の平均から0.32~3.16倍の逸脱)、そのアッセイは、無効である。
【0113】
細胞増殖対照。全ての細胞株の細胞倍加時間を、未処置の細胞のt=0時間及びt=endの増殖シグナルから計算する。倍加時間が仕様から外れる場合(過去の平均から0.5~2.0倍の逸脱)、そのアッセイは、無効である。
【0114】
最大シグナル。各細胞株について、0.4%DMSO存在下、化合物なしで、インキュベーション後、t=endまでで、最大蛍光を記録した(=蛍光未処置,t=end)。
【0115】
薬物感受性。細胞株の「改変型」群と「野生型」群の間での10logIC50の差を、3通りのやり方で分析した。1つ目は、頻度の高い遺伝子変化上位18種について、個々の細胞株の薬物感受性を、ウォーターフォールプロットで視覚化した。2つ目は、最も一般的に生じ一番理解されているがん遺伝子のより大きなサブセット(合計で38)を、統計プログラムRのType II Anova分析で分析した。結果は、ボルケーノプロットで表示する。3つ目は、114のがん遺伝子からなる完全セットを、Rの両側等分散t検定により分析した。Anova及びt検定によるP値を、Benjamini-Hochberg多重比較検定補正法に供した。偽発見率が20%未満の遺伝子関連性のみを、有意性があるとみなす。38のがん遺伝子に対するType II Anova分析は、114のがん遺伝子に対する等分散t検定とは異なる検定であり、このことは、関連性の有意性が異なる可能性があることを意味する。Oncolines(商標)法についてのさらなる情報は、以下を参照:www.ntrc.nl/services/oncolinestm。
【0116】
IC
50は、IDBS XLfitを用いて非線形回帰により計算した。インキュベーション後、t=endまでの増殖パーセンテージ(%-growth)を、以下の通り計算した:100%×(蛍光
t=end/蛍光
未処置,t=end)。これを、4係数ロジスティック曲線により、
10log化合物濃度(conc)に当てはめた:%-growth=最小値+(最大値-最小値)/(1+10
(logIC50-conc)*hill))、式中、hillは、ヒル係数であり、最小値及び最大値は、そのアッセイで化合物が許容する漸近最小及び最大細胞増殖値である。
【表2】
【0117】
NCI60パラメーター。LD50、すなわち細胞の50%が死滅する濃度は、蛍光t=end=1/2×蛍光t=0hとなる濃度である。GI50、すなわち増殖が50%阻害される濃度は、細胞増殖が最大半量となる濃度である。これは以下のシグナルに関連した濃度である:((蛍光未処置,t=end-蛍光t=0)/2)+蛍光t=0。
【0118】
曲線当てはめ。ソフトウェアにより自動計算された曲線を、以下のプロトコルに従って手動で調整した:計算された曲線が、0より低い最小値を有した場合には、曲線の最小値を0%に固定した。ソフトウェアが計算で-6より低い値を出した場合には、勾配を-6に固定した。当てはめの品質に関するF検定値が>1.5だった場合、または化合物が不活性であった場合(最大効果が<20%)、曲線は無効とし、それらの場合の曲線は、グラフから削除した。曲線が二相性の特徴を有した場合、その曲線は最も強力なIC50で当てはめを行なった。偶然にも、技術的な過失らしい場合には、濃度点を除外した。これは、常に、用量依存グラフに示される。用量反応曲線が85%超について完全に特定された場合には、最大効果(Max effect)を、100%(未処置細胞のシグナル)-曲線の最小値、として計算した。用量反応曲線は、最高濃度でのデータ点が曲線の最小値に到達する場合に、100%完全であるとみなされる。完全性が85%未満であった場合、Max effectは、100%-最小シグナルの平均、として計算した。曲線の最小値が0%に固定された場合、最大効果は、常に、100%-最高濃度での増殖阻害、として計算した。
【0119】
ボルケーノプロット。
図8のボルケーノプロットは、38の重要遺伝子において、遺伝子形質転換が、化合物感受性のシフトとどのように統計的に関連しているかを示す(
10logIC
50により測定したとして)。P値(ボルケーノプロットのy軸)は、IC
50シフトを伴う特定遺伝子における変異の遺伝子関連性についての信頼レベルを示す。IC
50シフトの係数は、x軸に示す。円の面積は、細胞パネル中の変異数に比例する(各変異は、少なくとも3倍存在する)。有意性を計算するため、P値をBenjamin-Hochberg多重比較検定補正法に供し、偽発見率が20%未満の遺伝子関連性のみを、灰色で示す。関連するカットオフP値(0.059)は、水平線で示す。有意な関連性がない場合、灰色の円も水平線も描画されない。
【0120】
T検定の結果。98の検証されたがんドライバー遺伝子については、それらの変異体も患者に発生するので、細胞株中の遺伝子の「野生型」及び「変異型」体の存在が、試験化合物の有意なIC
50シフトと関連するかどうかを試験した。「IC
50シフト」の欄は、
10logIC
50の差を示す。負のIC
50シフトは、化合物が、「変異型」遺伝子を保有する細胞株においてより強力であることを示す。「p値」の欄は、両側t検定の結果を示す。有意性を計算するため、p値をBenjamin-Hochberg多重比較検定補正法に供した。偽発見率が20%未満の遺伝子関連性のみに、ハイライトを付してある(「調整p値」の欄)。有意な関連性がない場合、以下の表には、灰色のセルが存在しない。
【表3】
【0121】
図9の特別なボルケーノプロットは、がんのホットスポット変異の存在に対する化合物感受性に関連する(
10logIC
50により測定したとして)。これは、先の分析との比較において臨床上関連するがんドライバー変異に対してより高い注目を提供する。ホットスポット変異は、別々の研究を通じて患者における変異の反復パターン及びコピー数変化を統計分析することに由来するものであった。軸及び統計分析は、
図8のボルケートプロットと同一である。有意性のカットオフpレベルは0.32である。
【0122】
実施例3:PegクリサンタスパーゼとOncaspar(登録商標)の相乗活性。Effect
20SynergyScreen(商標)実験で、他の抗がん剤の活性に対する本化合物の効果を特定するため、細胞増殖が20%阻害される濃度に相当する、低く固定された濃度を用いる。この濃度は、単独化合物の用量反応曲線を用いて決定する。濃度は、x軸上の値であり、y軸の未処置での80%生存率に相当する。
【表4】
【0123】
mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体(Pegクリサンタスパーゼ、以下の最初の表を参照)またはOncaspar(登録商標)(以下の第二の表を参照)を、AMLまたはDLBCLの標準治療(SOC)に典型的に使用される他の作用剤とともに試験した。ダウノルビシン、シタラビン、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、及びカルフィルゾミブと併用した場合、AMLで効果の上昇が見られた。さらに、ビンクリスチン、プレドニゾロン、ABT-737、ベネトクラクス、エベロリムス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びCB-839と併用した場合、DLBCLで効果の上昇が見られた。以下の表を参照。灰色着色は、相乗活性を示す。淡灰色着色は、1つの実験を、濃灰色着色は、2つの実験を示す。
【表5】
【0124】
実施例3:mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体(Pegクリサンタスパーゼ)を、in vivoで、シタラビン及びダウノルビシンとともに試験した。5匹のマウスからなる群に、それぞれ、mPEG-r-クリサンタスパーゼ(PegC)を単剤として投与(5&50IU/kg)、ならびにSOC薬剤であるシタラビン(50mg/kgを1日1回で5日間、続いて2日間の休みというサイクルを2回)及びダウノルビシン(2週間、1mg/kgを毎週投与)との併用投与を行なった。これらの用量は十分に忍容性があった。
図1を参照。群1は、PBS対照群、群3はPegC群、群11はダウノルビシン+PegC群、群13はダウノルビシン群である。相対体重平均の約10%の低下は、ダウノルビシンによるものであった。
【0125】
実施例4:この実施例は、実施例1と同様な様式で行なったが、ただしmPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体(Pegクリサンタスパーゼ)を、他の化合物と併用して試験した。
図2は、Pegクリサンタスパーゼが、シタラビン、ベネトクラクス、及びABT-737の効果を増強することを示し、相乗作用を示す。
【0126】
実施例5:HL-60細胞株に対して、mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体(Pegクリサンタスパーゼ)を、ABT-737と併用して試験した。
【0127】
プレート調製。混合物及び単剤の原液を、DMSOまたは0.9%塩化ナトリウムに希釈して、7点用量反応希釈系列を生成させた。20mM滅菌Hepes緩衝液pH7.4(参照化合物)または媒体(pegクリサンタスパーゼ)でさらに31.6倍希釈した後、pegクリサンタスパーゼ溶液5μl、及び参照化合物5μlを、384ウェルアッセイプレートにあらかじめ播種しておいた細胞40μlに2つ組で加えた。インキュベーション中の最終DMSO濃度は、全てのウェルで0.4%であった。最終アッセイ濃度は、単剤について、それらのIC50の10~0.01倍(IC50の10倍及び0.01倍当量)の範囲であった。
【0128】
細胞増殖アッセイ。アッセイ用貯蔵細胞を、適切な倍地中で解凍及び希釈し、384ウェルプレートに分注した。濃度は、使用する細胞株に応じて、1ウェルあたり培地45μl中800~3200の細胞濃度であった:すなわち、DB:1ウェルあたり細胞800個;RL:1ウェルあたり細胞1000個;MV-4-11:1ウェルあたり細胞1600個l;KG-1、HL-60、及びHTは、1ウェルあたり細胞3200個。使用した細胞株それぞれについて、細胞密度をあらかじめ最適化した。プレートのマージンには、リン酸緩衝食塩水を充填した。播種した細胞を、5%CO2の加湿雰囲気中、37℃でインキュベートした。24時間後、pegクリサンタスパーゼ溶液5μl、及び参照化合物5μlを加え、プレートをさらに、追加で72時間インキュベートした。72時間後、プレートを30分で室温まで冷却し、各ウェルに、ATPlite 1Step(商標)(PerkinElmer)溶液25μlを加え、続いて2分間振盪撹拌した。暗中室温で5分間インキュベーション後、蛍光をEnvisionマルチモードリーダー(PerkinElmer)で記録した。
【0129】
対照:t=0のシグナル。平行プレートに、細胞40μlを4つ組で分注し、5%CO2の加湿雰囲気中、37℃でインキュベートした。24時間後、プレートを30分で室温まで冷却した。DMSO含有Hepes緩衝液5μl、0.9%塩化ナトリウム含有培地5μl、及びATPlite 1Step(商標)溶液25μlを加え、続いて2分間混合した。10分インキュベーション後、暗中で蛍光を測定した(=蛍光t=0)。
【0130】
細胞増殖対照。全ての細胞株の細胞倍加時間を、未処置細胞のt=0時間及びt=end増殖シグナルから計算する。倍加時間が仕様から外れる場合(過去の平均から0.5~2.0倍の偏位)、アッセイは無効とする。
【0131】
最大シグナル。各384ウェルプレートで、0.4%DMSOの存在下、化合物なしで、72時間インキュベーション後に最大蛍光を記録した。全ての等価なウェル(通常は14)を平均した。この平均は、以下のとおり定義される:蛍光未処置,t=72h。
用量反応曲線。併用分析のためには正確な単剤IC50が必要である。各単剤について、その用量反応シグナルに、XL-fit 5(IDBSソフトウェア)を用いて、4係数ロジスティック曲線による当てはめを行なった:
蛍光=最小値+(最大値-最小値)/(1+10(logIC50
-log[cpd])・hill))
[cpd]は、試験した化合物濃度である。hillは、ヒル係数である。最小値及び最大値は、曲線の漸近最小及び最大である。
併用指数(CI)の特定。CIは、相乗作用の定量的表示に最も広く使用されているものの1つである。CIは、固定された効果を達成するために必要な濃度を評価する。1未満のCIは、相乗作用を示す。0.3未満のCIは、強い相乗作用を示す。例えば、0.1のCIは、その併用が、同じ効果レベルを達成するために、単剤データから予想される濃度より1/10倍低い濃度しか必要としないことを示す。例えば、強力な化合物と、それほど強力じゃない化合物が、0.1のCIで組み合わせられる場合、強力化合物の有効濃度は、それほど強力じゃない化合物により10倍改善される。
【0132】
CIは、ある特定の細胞生存度パーセンテージ(V)に関して定義され、Vは、非曝露対照に関するシグナルである:V=100%×蛍光処置,t=72h/蛍光未処置,t=72h。次いで、2種の化合物、cpd1及びcpd2の、併用においてある特定の細胞生存度パーセンテージVに達するために必要な濃度を、単剤の場合に必要な濃度と比較する:
CI(100-V)=[cpd1]V/IC(100-V),cpd1+[cpd2]V/IC(100-V),cpd2
例えば、[cpd1]50は、50%生存率を与える、混合物中のCPD1濃度を表す。IC50,cpd1は、cpd1単独のIC50を表す。CIは、慣例に従って、%-効果により標識されるので、CI75は、25%生存率でのCIを表す。
曲線のシフト分析。この分析は、相乗作用の視覚による確認を提供する1。化合物1及び2(cpd1及びcpd2)の混合物、ならびに単剤の濃度を、IC50当量換算で(IC50「単位」で)表した:
[mix]=[cpd1]/IC50,cpd1+[cpd2]/IC50,cpd2
用量反応シグナルに、XL-fit 5(IDBSソフトウェア)を用いて、4係数ロジスティック曲線による当てはめを行なった:
蛍光=最小値+(最大値-最小値)/(1+10(logX-log[mix])・hill))
式中、hillは、ヒル係数であり、Xは曲線の変曲点である。最小値及び最大値は、曲線の漸近最小及び最大である。[mix]はIC50当量換算で表されているため、単剤の曲線は重なることになり、それらの変曲点は、値が1のところに来る。計算に使用されるIC50値は、単剤について平行して測定されたものである。
【0133】
相乗作用が存在しない混合物では、曲線は、単剤のものと重なることになる。相乗作用が存在する混合物では、曲線は、IC50当量が低い方に向かって左にシフトすることになる:混合物は、個々の構成要素に基づいて予想されるよりも強力になるように見える。これは、相乗作用の良い指標である。
【0134】
アイソボログラム。アイソボログラムは、薬物の併用が相乗的であるかどうかを明らかにする用量中心プロットである。これは、ある特定の効果レベル、通常は75%で、定義される。単剤曲線がこの有効性レベルに達しない場合、アイソボログラムレベルは、50%、30%、25%、または20%に設定される。単剤が20%有効に達しない場合、アイソボログラムは描画されない。軸には、あらかじめ設定された増殖効果を与える単独化合物の計算された用量がプロットされる。両点を直線で結ぶ(相加作用ライン)。薬物併用について、どの希釈物があらかじめ設定された増殖効果を与えるかを計算し、その点での個々の成分の濃度をアイソボログラムにプロットする。相加的薬物効果の場合、薬物併用は、相加作用ラインに近い場所に来る。相乗または拮抗作用の場合、点はそれぞれ、相加作用ラインの下または上に来る。
【0135】
不活性作用剤を用いた実験。ある特定の合意例において、相乗作用実験を、「不活性」作用剤の存在下で行う。「不活性」作用剤とは、試験した濃度で、単剤として用量反応曲線を与えない化合物である。実験は、上記の説明のとおりに実行されるが、ただし「不活性」作用剤が、実験の各ウェルに固定濃度で加えられる。単独の「不活性」作用剤は効果を示さないため、CIに対するその寄与は、取るに足りないものである。そのため、CI値は、活性作用剤の反応に基づいている。混合物の曲線シフトは、他の、活性作用剤との比較で特定される。アイソボログラムは計算しない。単剤での用量反応曲線を、
図3に示す。ABT-737は、IC
50が835nM、及び最大有効性が67%であるが、pegクリサンタスパーゼは、IC
50が0.15nM、及び最大有効性が88%であった。
【0136】
曲線シフト分析:単剤曲線(灰色及び濃灰色)及び混合物曲線(赤色、橙色、及び桃色)のx軸を、単剤のIC
50に基づいて、IC
50当量に変換した。そして変換したものを、
図4に示すとおりの混合物の用量反応曲線と比較する。
【0137】
IC
50基準での混合物の用量反応曲線について、全ての曲線を重ね合わせ、シフトを記録した。単剤曲線(灰色及び濃灰色)に比べて左方向にシフトした混合物曲線は、相乗作用を示し、右方向へのシフトは拮抗作用を示す(
図5及び以下の表を参照)。
単剤と比較した混合物のIC
50シフト
【表6】
【0138】
pegクリサンタスパーゼとABT-737の併用を用いた結果を、以下に示す。混合物データから計算したCI値、ED
75は、25%生存率に相当する。代表的な値は、3種の混合物について50%生存率での平均CIであり、これを要約に示す。
【表7-1】
【表7-2】
【0139】
併用データを用いて、
図6に示すとおりのアイソボログラムを作成した。アイソボログラムは、薬物の併用が相乗的であるかどうかを明らかにする用量中心プロットである。相乗作用の場合、併用の点は、相加作用ラインの直線の下に来る。pegクリサンタスパーゼの濃度は、IU/mLで示す。相加作用ライン(濃灰色)は、理論的相加作用を与えると思われる濃度の併用を示す。薬物の併用は、赤色、桃色、及び橙色の点でプロットする。まとめると、以下に示すとおり、HL-60細胞株においてpegクリサンタスパーゼとABT-737の間に強力な相乗作用が見られた。
【表8】
【0140】
実施例6:この実施例は、実施例5と同様な様式で行なったが、ただし、以下に示すとおり、異なる細胞型で追加の抗がん剤との相乗作用を試験した。
【表9】
【0141】
実施例7:この実施例は、実施例1と同様な様式で行なったが、ただし、mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体を、CNS細胞株に対する活性について試験した。CNS細胞株には、例えば、神経膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、多形性膠芽腫、及び星細胞腫が含まれていた。結果を
図7に示す。異なる細胞株を用いた追加実験を行なった。結果を、
図10に示す。
【0142】
実施例8:実施例1に記載の方法に従って、mPEG-r-クリサンタスパーゼ複合体(Pegクリサンタスパーゼ)を追加の化合物と併用して、AML(急性骨髄性白血病)及びDLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)細胞株に対して試験した。結果を以下に示す。KG-1、HL-60、及びMV4-11は、AML細胞株であり、DB、HT、及びRLは、DLBCL細胞株である。pegクリサンタスパーゼとベネトクラクスの併用のデータは、AML細胞株において強力な相乗作用を示した。
【表10】
【0143】
実施例9
実施例1に記載の方法に従い、複数の細胞株において、クリサンタスパーゼのPas化複合体を、クリサンタスパーゼのPEG化体(PEG-クリサンタスパーゼ)及び非PEG化体(Erwinase)と対比させて、E.coli由来L-アスパラギナーゼ(Oncaspar)も合わせて、試験した。PA-20及びPA-40は、CorynebacteriumまたはPseudomonas発現系で産生されたpas化クリサンタスパーゼ複合体であり、PA-200は、Pseudomonas発現系で産生されたpas化融合タンパク質である。PA-20、PA-40、PA-200、及びPA-400構造体は、配列番号2、3、6、及び7のものである。結果を以下に示す。CCRF-CEM、MOLT-4、及びRS4:11は、全てAML細胞株であり、Jurkat E6-1は、急性T細胞白血病細胞株、HL-60は、急性前骨髄球性白血病細胞株、MV4-11は、二重表現型B細胞骨髄単球性白血病細胞株、THP-1は、AML細胞株、RLは、非ホジキンリンパ腫細胞株、H9は、リンパ腫細胞株である。
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【表11-5】
【0144】
当業者なら、本明細書中記載される本発明の具体的な実施形態の多くの等価物がわかるだろう、または常用実験にすぎないものを用いて確認することができるだろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
大腸菌アスパラギナーゼと比較して、前記L-アスパラギナーゼが、前記神経膠芽細胞腫又は前記髄芽細胞腫に対し、少なくとも10倍高い活性を示す、請求項1に記載の組成物。
前記L-アスパラギナーゼが、配列番号1のアミノ酸と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項4に記載の組成物。
i)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼと比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のin vitro活性を有する;
ii)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼより少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100倍強力なL-アスパラギン枯渇活性を有する;
iii)前記複合体が、少なくとも12、24、48、96、108、又は120時間、血漿L-アスパラギンレベルを検出不能レベルまで枯渇させる;
iv)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも長いin vivo循環半減期を有する;
v)前記複合体が、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する;
vi)前記複合体が、マウスでiv投与後に、タンパク質含有量基準で50μg/kgの用量で少なくとも58から65時間のt1/2、及びタンパク質含有量基準で10μg/kgの用量で少なくとも34から40時間のt1/2を有する;
vii)前記複合体が、10,000から15,000IU/m2(20から30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で少なくとも100から200時間のt1/2を有する;
viii)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも大きい曲線下面積(AUC)を有する;及び/又は
ix)前記複合体が、等価なタンパク質用量で、ペグアスパラガーゼより少なくとも3倍大きい平均AUCを有する、
請求項4から7のいずれか1項に記載の組成物。
前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、二重表現型B細胞骨髄単球性白血病(biphenotypic B-cell myelomonocytic Leukemia)、慢性リンパ性白血病、及び慢性骨髄性白血病から選択される、請求項4から9のいずれか1項に記載の組成物。
前記併用療法が、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/又はCB-839を含む、請求項13に記載の組成物。
前記白血病が、NRAS遺伝子、PTEN遺伝子、ERBB2遺伝子、及び/又はCDKN2A遺伝子の変異に関連する、請求項4から14のいずれか1項に記載の組成物。
前記L-アスパラギナーゼが、配列番号1のアミノ酸と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項17に記載の組成物。
i)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼと比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のin vitro活性を有する;
ii)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼより少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100倍強力なL-アスパラギン枯渇活性を有する;
iii)前記複合体が、少なくとも12、24、48、96、108、又は120時間、血漿L-アスパラギンレベルを検出不能レベルまで枯渇させる;
iv)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも長いin vivo循環半減期を有する;
v)前記複合体が、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する;
vi)前記複合体が、マウスでiv投与後に、タンパク質含有量基準で50μg/kgの用量で少なくとも58から65時間のt1/2、及びタンパク質含有量基準で10μg/kgの用量で少なくとも34から40時間のt1/2を有する;
vii)前記複合体が、10,000から15,000IU/m2(20から30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で少なくとも100から200時間のt1/2を有する;
viii)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも大きい曲線下面積(AUC)を有する;及び/又は
ix)前記複合体が、等価なタンパク質用量で、ペグアスパラガーゼより少なくとも3倍大きい平均AUCを有する、
請求項17から20のいずれか1項に記載の組成物。
前記併用療法が、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/又はCB-839を含む、請求項27に記載の組成物。
前記疾患が、NRAS遺伝子、PTEN遺伝子、ERBB2遺伝子、及び/又はCDKN2A遺伝子の変異に関連する、請求項17から28のいずれか1項に記載の組成物。
前記L-アスパラギナーゼが、配列番号1のアミノ酸と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項31に記載の組成物。
i)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼと比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のin vitro活性を有する;
ii)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼより少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100倍強力なL-アスパラギン枯渇活性を有する;
iii)前記複合体が、少なくとも12、24、48、96、108、又は120時間、血漿L-アスパラギンレベルを検出不能レベルまで枯渇させる;
iv)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも長いin vivo循環半減期を有する;
v)前記複合体が、等価なタンパク質用量で投与されたペグアスパラガーゼよりも長いt1/2を有する;
vi)前記複合体が、マウスでiv投与後に、タンパク質含有量基準で50μg/kgの用量で少なくとも58から65時間のt1/2、及びタンパク質含有量基準で10μg/kgの用量で少なくとも34から40時間のt1/2を有する;
vii)前記複合体が、10,000から15,000IU/m2(20から30mgタンパク質/m2)の範囲の用量で少なくとも100から200時間のt1/2を有する;
viii)前記複合体が、PEGと複合体形成していない場合の前記L-アスパラギナーゼよりも大きい曲線下面積(AUC)を有する;及び/又は
ix)前記複合体が、等価なタンパク質用量で、ペグアスパラガーゼより少なくとも3倍大きい平均AUCを有する、
請求項31から34のいずれか1項に記載の組成物。
前記癌が、リンパ腫、大細胞型免疫芽球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、NKリンパ腫、ホジキン病、白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、腎細胞癌、腎細胞腺癌、神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、悪性黒色腫、類表皮癌、扁平上皮癌、肺大細胞癌及び小細胞肺癌を含む肺癌、子宮内膜癌、卵巣腺癌、卵巣奇形癌、子宮頸部腺癌、乳癌、乳腺癌、乳管癌、膵臓腺癌、膵管癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸腺癌、膀胱移行上皮癌、膀胱乳頭腫、前立腺癌、骨肉腫、骨の類上皮癌、前立腺癌、又は甲状腺癌から選択される、請求項31から36のいずれか1項に記載の組成物。
前記白血病が、急性単球性白血病、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、二重表現型B細胞骨髄単球性白血病(biphenotypic B-cell myelomonocytic Leukemia)、又は慢性リンパ性白血病から選択される、請求項38に記載の組成物。
前記併用療法が、Oncaspar(登録商標)、ダウノルビシン、シタラビン、Vyxeos(登録商標)、ABT-737、ベネトクラクス、ダクトリシブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ビンクリスチン、プレドニゾロン、エベロリムス、及び/又はCB-839を含む、請求項42に記載の組成物。
前記癌が、NRAS遺伝子、PTEN遺伝子、ERBB2遺伝子、及び/又はCDKN2A遺伝子の変異に関連する、請求項31から43のいずれか1項に記載の組成物。