(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069263
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】高精度RF電圧を供給する共振伝送線路
(51)【国際特許分類】
H01J 49/42 20060101AFI20240514BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01J49/42 150
H01J49/42 600
H01J49/02 200
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028255
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2021526663の分割
【原出願日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】16/192,223
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】フレッチャー・ウィリマ・ロジャー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】四重極分析計のRF信号の電圧振幅を制御/分析サブシステムにて遠隔測定する。
【解決手段】システムは、第1の端部および第2の端部を有し第1のサブシステム側の第1の端部から第2のサブシステム側の第2の端部にかけて延在し時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長に対応した物理長を有するように構成され共振するように構成されている、伝送線路と、第1のサブシステム側にあり(i)時変電圧信号を第1の端部に電気結合させて(ii)時変電圧信号の生成部を時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう第1の端部での時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている適応制御設備と、第2のサブシステム側にあり第2の端部に電気的に接続されており時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている少なくとも1つのトランスと、を備える。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムであって、
第1の端部および第2の端部を有し、前記第1のサブシステム側の当該第1の端部から前記第2のサブシステム側の当該第2の端部にかけて延在し、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長に対応した物理長を有するように構成され、共振するように構成されている、伝送線路と、
前記第1のサブシステム側にあり、(i)前記時変電圧信号を前記第1の端部に電気結合させて、(ii)当該時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、当該第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、適応制御設備と、
前記第2のサブシステム側にあり、前記第2の端部に電気的に接続されており、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている、少なくとも1つのトランスと、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
信号生成制御分析電子部品を具備した前記第1のサブシステムと、
四重極分析計を具備した前記第2のサブシステムと、
を備え、前記時変電圧信号が、前記少なくとも1つのトランスを介して前記四重極分析計の四重極部品へと印加されるように構成された、高周波電圧信号である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記適応制御設備が、前記伝送線路の前記第1の端部にて前記時変電圧信号を取り出して当該時変電圧信号からフィードバック信号を生成するように構成された整流器を含む、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記整流器が、半導体ダイオードである、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器に電気的に接続された補償ダイオード、
を備え、前記補償ダイオードは、当該補償ダイオードの導通電圧の温度変化によって前記整流器の導通電圧の温度変化が低減されるように構成されている、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
各種線路長部から選出されて前記伝送線路に追加された、当該伝送線路の物理長を調節することによって当該伝送線路の電気長の粗調節を行うように構成されている少なくとも1つの伝送線路長部、
を備える、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続されており、当該伝送線路を共振状態にするための補償を行うように構成されている調節可能なコンデンサ、
を備える、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
信号生成器から励起信号を受け取り、当該励起信号の周波数で共振して前記時変電圧信号を生成するように構成されているチューニング可能なタンク回路、
を備える、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのトランスが、前記時変電圧信号と電気結合して当該時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とする2つのトランスからなる、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのトランスが、1つの一次巻線部及び2つの二次巻線部を含む単一のトランスからなり、当該2つの二次巻線部が、前記一次巻線部に印加された前記時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とするように構成されている、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記伝送線路が、前記第1のサブシステムと前記第2のサブシステムとの間で情報信号、制御信号及び電力のうちの少なくとも一つを運ぶ1つ以上の通信経路を組み込んだケーブルアセンブリのうちの一構成要素である、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから半波長以上のところに位置している、システム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから30メートル以上のところに位置している、システム。
【請求項14】
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する方法であって、
前記時変電圧信号を、前記第1のサブシステム側の第1の端部から前記第2のサブシステム側の第2の端部にかけて延在する伝送線路の当該第1の端部に電気結合させる過程と、
前記伝送線路の物理長を、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長と対応させるように構成する過程と、
前記第1のサブシステム側にある適応制御設備にて、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節する過程と、
前記第2のサブシステム側にあって前記第2の端部に電気的に接続された少なくとも1つのトランスにより、前記時変電圧信号の振幅を増加させる過程と、
を備える、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、さらに、
前記伝送線路の前記第1の端部にて前記時変電圧信号を取り出して当該時変電圧信号からフィードバック信号を生成する過程、
を備える、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、さらに、
各種伝送線路長部から選出された少なくとも1つのバイナリウェイト式伝送線路長部を前記伝送線路に追加して当該伝送線路の物理長を調節することにより、当該伝送線路の電気長の粗調節を行う過程、
を備える、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、さらに、
無終端である前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続された調節可能なコンデンサを調節して、当該伝送線路を共振状態にするための補償を行う過程、
を備える、方法。
【請求項18】
信号生成制御分析用の第1のサブシステムから四重極分析計用の第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムであって、
前記信号生成制御分析用の第1のサブシステムと、
四重極分析計を具備した、前記四重極分析計用の第2のサブシステムであって、前記時変電圧信号は、少なくとも1つのトランスを介して当該四重極分析計のうちの四重極部品へと印加されるように構成された高周波電圧信号である、前記四重極分析計用の第2のサブシステムと、
第1の端部および第2の端部を有し、前記第1のサブシステム側の当該第1の端部から前記第2のサブシステム側の当該第2の端部にかけて延在し、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長を有するように構成された、伝送線路と、
前記第1の端部に結合した前記時変電圧を取り出してフィードバック信号を生成し、当該フィードバック信号を適応制御設備に運ぶように構成された整流器回路であって、前記適応制御設備は、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、整流器回路と、
前記第2のサブシステム側にあり、前記第2の端部に電気的に接続されており、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている、少なくとも1つのトランスと、
を備える、システム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器に電気的に接続された温度補償回路、
を備え、前記温度補償回路が、補償ダイオードの導通電圧の温度変化に応じて前記整流器の導通電圧の温度変化を低減するように構成されている、システム。
【請求項20】
請求項18に記載のシステムにおいて、さらに、
各種線路長部から選出されて前記伝送線路に追加された、当該伝送線路の物理長を調節することによって当該伝送線路の電気長の粗調節を行うように構成されている少なくとも1つの伝送線路長部、
を備える、システム。
【請求項21】
請求項18に記載のシステムにおいて、さらに、
前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続されており、当該伝送線路を共振状態にするための補償を行うように構成されている調節可能なコンデンサ、
を備える、システム。
【請求項22】
信号生成制御分析サブシステムから四重極分析計へと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する方法であって、
前記時変電圧信号を、前記信号生成制御分析サブシステム側の第1の端部から前記四重極分析計側の第2の端部にかけて延在する伝送線路の当該第1の端部に電気結合させる過程と、
前記伝送線路の物理長を、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長と対応させるように構成する過程と、
前記第1の端部に結合した前記時変電圧を整流器回路で取り出してフィードバック信号を生成し、当該フィードバック信号を適応制御設備に運ぶ過程であって、前記適応制御設備は、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、過程と、
前記四重極分析計側にあって前記第2の端部に電気的に接続された少なくとも1つのトランスにより、前記時変電圧信号の振幅を増加させる過程と、
を備える、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、さらに、
補償ダイオードの導通電圧の温度変化に応じて前記整流器の導通電圧の温度変化を低減する過程、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2018年11月15日付出願の米国特許出願第16/192,223号の継続出願である。上記出願の全教示内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【背景技術】
【0002】
残留ガス分析装置(RGA)やその他の質量分析装置で用いられる四重極分析計には、精密に制御された2種類の位相からなるRF供給信号が必要となる。このRF供給信号は、数百ボルト程度のピーク(Vpk)振幅および典型的に数MHzの周波数を有する。実際の電圧振幅および周波数は、四重極分析計に要求される質量範囲や各種特性に左右され得る。四重極分析計用途では、例えば、振幅:187.6Vpkかつ1.8432MHzのRF供給信号が用いられ得るが、特定の分析計や質量範囲に合わせてそれ以外の電圧や周波数が選択されることもある。
【0003】
一般的に、四重極分析計は、四重極装置や対応するハードウェアを収めた四重極サブシステム(本明細書では「真空系統」とも称される)と、RF信号生成器や制御分析部品やその他の支援電子部品を収めた信号生成制御分析サブシステムとの、2つの主要サブシステムからなる。
【0004】
四重極サブシステムは、放射線環境に設置される場合がある。すると、制御/分析サブシステムの半導体やその他の部品が劣化する可能性がある。影響を受け易いこれらの部品を保護するため、制御/分析サブシステムは、四重極サブシステムから離れたところに設置されることがある。このような構成では、四重極サブシステムと制御/分析サブシステムとが典型的に数十メートルの距離を空けてケーブルやその他の通信媒体で接続され得る。
【0005】
典型的に、上記RF信号生成器は、固定周波数の水晶式のものであり、RF信号の振幅を制御系統で精密に制御するように構成された振幅調整部を具備している。その制御系統には、四重極サブシステムでの上記RF信号の電圧を測定しこの測定値を当該制御系統のフィードバック信号に利用することで上記RF信号の振幅を要求値に維持する高精度な整流器が含まれる。一般的に、上記RF信号生成器や対応する制御系統は当該技術分野で周知の設計である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記整流器は、四重極分析計サブシステムと一緒に設置することで、四重極に印加されるRF信号の振幅を正確に測定させるのが常套手段である。四重極が放射線環境で使用される場合、上記整流器は熱電子ダイオード型(例えば、真空管)とされ得る。なぜなら、半導体ダイオードにすると、放射線の存在下で劣化及び/又は動作不良を生じるからである。上記整流器の出力信号は、制御/分析サブシステムに送り返さなければならず、ノイズが混入する不都合及びリスクがある。また、熱電子ダイオードは衰退化の一途を辿る懸念があるだけでなく、必要なヒータ電源の実現が複雑になるという懸念もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
記載の実施形態は、RF信号を従来技術のシステムよりも遥かに長い距離(例えば、15m)で供給すると共に、四重極分析計にあるときの当該RF信号の電圧振幅を制御/分析サブシステムにて遠隔測定するための方法およびシステムに向けられている。RF信号が伝播する距離を長くすることで、制御/分析サブシステムのうちの影響を受け易い部品が、放射線環境から安全に遠ざけられることになる。四重極でのRF信号の電圧を制御/分析サブシステムにて遠隔測定するという構成により、整流器を四重極分析計の放射線環境から安全な距離を取って配置することが容易くなり、半導体整流器の使用が可能となって熱電子整流器が不要になる。
【0008】
記載の実施形態は、RF信号の周波数で共振する、四重極分析計サブシステムと信号生成制御分析サブシステムとの間に延設された先端開放伝送線路を備え得る。この共振伝送線路は、動作周波数の半波長(λ/2)又はλ/2の整数倍の電気長(すなわち、実効線路長)を有するように構成されている。本明細書で説明する例示的な実施形態では、動作周波数が1.8432MHzのときに約52メートル(λ/2×1)又は約104メートル(λ/2×2)の伝送線路が用いられ得るが、変形例として、52メートルのそれ以外の整数倍のものが使用されてもよい。
【0009】
前記共振伝送線路は、共振周波数(すなわち、当該伝送線路の電気長がn×(λ/2)(式中、nは整数)であるときの周波数)で駆動されると、当該共振伝送線路への入力電圧と当該共振伝送線路からの出力電圧がほぼ同じになる。つまり、半波長の共振伝送線路を使用することで、四重極分析計サブシステムに生じているRF信号の電圧振幅が、信号生成制御分析サブシステム側の半導体ダイオード型整流器によって正確に遠隔測定されることになり得る。共振時の前記伝送線路のインピーダンスは純粋に抵抗性のものとなるので、複雑なインピーダンスに伴う効率低下が、当該伝送線路の受信側端の整合終端をせずとも解消される。
【0010】
記載の実施形態は、さらに、一対の昇圧トランスを前記半波長の伝送線路のうちの四重極分析計側端に備え得る。当該昇圧トランスにより、四重極での必要電圧よりも低い電圧を前記伝送線路に適用することが容易くなる。例示的な一実施形態では前記昇圧トランスの巻線比が1:5とされるが、代替的な実施形態ではそれ以外の巻線比が用いられてもよい。例示的な同実施形態では、四重極での187Vpkの振幅を有するRF信号が前記伝送線路での約37.4Vpkの振幅を有するRF信号に対応する。前記伝送線路の電圧を低くすることで、伝送線路から四重極へとトランスなしでRF信号を供給する場合に比べて放熱損失が楽に抑えられる。
【0011】
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムが提供される。同システムは、第1の端部および第2の端部を有し前記第1のサブシステム側の当該第1の端部から前記第2のサブシステム側の当該第2の端部にかけて延在する伝送線路を備える。当該伝送線路は、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長に対応した物理長を有するように構成され、共振するように構成されている。前記第1のサブシステム側にある適応制御設備は、(i)前記時変電圧信号を前記第1の端部に電気結合させて、(ii)当該時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、当該第1の端部での当該時変信号の取出し値(サンプリング値)に基づいて調節するように構成されている。前記第2のサブシステム側にある少なくとも1つのトランスは、前記伝送線路の前記第2の端部に電気的に接続されていて、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている。
【0012】
前記第1のサブシステムは信号生成制御分析電子部品を具備したものであり得て、前記第2のサブシステムは四重極分析計を具備したものであり得る。前記時変電圧信号は、前記少なくとも1つのトランスを介して前記四重極分析計の四重極部品へと印加されるように構成された、高周波電圧信号であり得る。
【0013】
前記適応制御設備は、前記伝送線路の前記第1の端部にて前記時変電圧信号を取り出して当該時変電圧信号からフィードバック信号を生成するように構成された整流器を含み得る。前記適応制御設備は、時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されたものであり得る。前記整流器は、半導体ダイオードであり得る。前記整流器には、補償ダイオードが電気的に接続され得る。当該補償ダイオードは、当該補償ダイオードの導通電圧の温度変化によって前記整流器の導通電圧の温度変化が低減されるように構成されたものであり得る。
【0014】
各種線路長部から選出された少なくとも1つの伝送線路長部が、前記伝送線路に追加され得る。当該少なくとも1つの伝送線路長部は、前記伝送線路が微調節の調節範囲内でない場合に当該伝送線路の物理長を調節することによって当該伝送線路の電気長の粗調節を行うように構成されている。微調節は、前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続されて当該伝送線路を共振状態にするための補償を行うように構成された調節可能なコンデンサによって行われ得る。
【0015】
チューニング可能なタンク回路は、信号生成器から励起信号を受け取り当該励起信号の周波数で共振して前記時変電圧信号を生成するように構成されたものであり得る。
【0016】
前記少なくとも1つのトランスは、前記時変電圧信号と電気結合して当該時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とする2つのトランスからなり得る。あるいは、前記少なくとも1つのトランスは、1つの一次巻線部及び2つの二次巻線部を含む単一のトランスからなり得て、当該2つの二次巻線部が、前記一次巻線部に印加された前記時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とするように構成されている。
【0017】
前記伝送線路は、前記第1のサブシステムと前記第2のサブシステムとの間で情報信号、制御信号及び電力のうちの少なくとも一つを運ぶ1つ以上の通信経路を組み込んだケーブルアセンブリのうちの一構成要素であり得る。前記第1のサブシステムは、前記第2のサブシステムから半波長以上のところに位置したものとされ得る。例えば、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから30メートル以上のところや、前記第2のサブシステムから50メートル以上のところに位置したものとされ得る。
【0018】
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する方法において、時変電圧信号は、前記第1のサブシステム側の第1の端部から前記第2のサブシステム側の第2の端部にかけて延在する伝送線路の当該第1の端部に電気結合させられる。前記伝送線路の物理長は、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長と対応するように構成される。前記時変電圧信号の生成部は、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1のサブシステム側にある適応制御設備にて前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節される。前記第2のサブシステム側にあって前記第2の端部に電気的に接続された少なくとも1つのトランスにより、前記時変電圧信号の振幅が増加する。
【0019】
前述の内容は、添付の図面に示す例示的な実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかになる。異なる図をとおして、同一の参照符号は同一の構成/構成要素を指すものとする。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、むしろ、実施形態を図示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明にかかる質量分析装置システムの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Aに示す質量分析装置の一例を示す詳細図である。
【
図2】時変電圧信号を運ぶ本発明にかかるシステムの例示的な一実施形態を示す詳細図である。
【
図3】第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する本発明にかかる方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、例示的な実施形態について説明する。
【0022】
本明細書で引用する全ての特許公報、特許出願公開公報及び刊行物は、参照をもってその教示内容の全体を取り入れたものとする。
【0023】
記載の実施形態は、RF信号を従来技術のシステムよりも遥かに長い距離で供給すると共に、四重極分析計にあるときの当該RF信号の電圧振幅を制御/分析サブシステムにて遠隔測定するという技術に向けられている。一般的に述べると、記載の実施形態では、電気長がRF信号の半波長となるように構成された共振伝送線路が、当該RF信号を前記四重極分析計に運ぶのに用いられる。共振伝送線路には、当該伝送線路の両端で同じRF電圧振幅が現れるという性質がある。
【0024】
図1Aに、記載の実施形態が適用され得る質量分析装置システム100の一例を示す。システム100は、四重極サブシステム102、信号生成制御分析サブシステム104、およびサブシステム102,104を接続するケーブルアセンブリ106を備え得る。四重極サブシステム102は例えば「ホット」な放射線区域等といった過酷な環境に置かれ得るのに対し、信号生成制御分析サブシステム104は当該過酷な環境から離れたところに設定された通常の安全領域に置かれ得る。安全な環境と見なすのに必要な前記過酷な環境からの距離は、当該過酷な環境の性質に依存する。あまり過酷でない環境であれば、5~15メートルの距離(したがって、ケーブル106の長さ)で済み得るが、もっと過酷な環境(例えば、粒子加速器や高密度中性子発生装置などの原子核物理学用途)であれば、50メートル以上の分断が必要となり得る。
【0025】
図1Bは、
図1Aに示す質量分析装置100の一例を示す詳細図である。記載の実施形態のうち、時変電圧信号を運ぶためのシステム108の構成要素については、破線ボックス内に描いたとおりである。以下では、記載の実施形態を内在したシステム全体についての説明の後に、これらの構成要素についての説明を詳細に行う。
【0026】
四重極サブシステム102は、真空系統110を含み得る。真空系統110は、イオン源・レンズアセンブリ112、四重極分析計114、ファラデープレート・電子増倍器アセンブリ116、および一対の昇圧トランス118を有する。四重極サブシステム110は、放射線環境、すなわち、「ホット」な放射線区域120内で動作し得る。
【0027】
信号生成制御分析サブシステム104は、電源・電子部品制御系統アセンブリ122と伝送線路ドライバ・整流器アセンブリ124とを有し得る適応制御設備である。
【0028】
ケーブルアセンブリ106は、図示のケーブル類や信号線類を同じケーブルシース内に含有したものであるのが好ましく、電源・電子部品制御系統アセンブリ122からイオン源・レンズアセンブリ112へと電力を運ぶ主電源ケーブル126を含み得る。ケーブルアセンブリ106は、さらに、ファラデープレート・電子増倍器アセンブリ116から電源・電子部品制御アセンブリ122へと検出信号を運ぶ返送信号ケーブル128を含み得る。ケーブルアセンブリ106は、さらに、同軸伝送線路130および少なくとも1つのバイナリウェイト式線路長部132を含み得る。
【0029】
図2は、時変電圧信号を運ぶ本発明にかかるシステム108の例示的な一実施形態を示す詳細図である。例示的な同実施形態は、チューニング用のタンク回路202、整流器回路204、温度補償回路206、実効線路長調節部品208、半波長の伝送線路130、およびトランス212を備える。
【0030】
チューニング回路202は、電源・電子部品制御アセンブリ122内の水晶式RF生成器からRF信号214を受け取る。部品L1,L2,C1の値は、調整器由来の高調波が抑えられつつ共振周波数の振幅が最大化されるようにRF信号214の周波数で共振するタンク回路を形成するよう選択されている。可変コンデンサC2は、共振周波数を調節してRF信号214の周波数と合わせるのに用いられ得る。チューニング回路202は、直流絶縁を行うコンデンサC3および駆動インピーダンスR2を介して前記RF信号を伝送線路130へと駆動する。駆動インピーダンスR2は、共振部品が未だチューニング前であり得るシステム電源投入最中のバッファを行う。このような最中には、予測不能な反射波が伝送経路に沿って流れ込み得て、構成部品にダメージを与える可能性がある。駆動インピーダンスR2は、このような反射波を緩和し得る。前記共振部品がチューニングされた定常状態では、R2が伝送線路130に対する整合インピーダンスとなる。
【0031】
整流器回路204は、伝送線路130の入力部での前記RF電圧信号の象徴的な取出し値を、半導体ダイオードD1を用いて整流する。整流後の取出し値がR4を通過することでフィードバック電流が生成され、当該フィードバック電流が電源・電子部品制御アセンブリ122に運ばれる。当該フィードバック電流は、電源・電子部品制御アセンブリ122の制御系統で前記RF信号の振幅を要求値に適応的に維持するのに利用される。
【0032】
ダイオードD1は、温度係数の影響を受ける。つまり、ダイオードD1の温度が上がると、D1の順方向導通電圧が数ミリボルト/℃程度減少する。四重極分析計の用途では、RF信号の電圧に精密な制御が求められる。このときのRF信号は電圧のダイナミックレンジが比較的広くなるため、システム動作温度範囲内で前記温度係数による誤差が発生すると、そのダイナミックレンジの下端域の動作に悪影響が生じる可能性がある。
【0033】
温度補償回路206は、D1の温度係数の影響を打ち消すように動作する。温度補償回路206は、ダイオードD1と向かい合うようにして電気的に接続されて且つダイオードD1と実質同じ周囲温度を経験するようにD1の十分近くに配置された、ダイオードD2を含む。ダイオードD2には、-15V電源でR18を介してバイアス電圧がかけられている。ダイオードD2の温度係数は、共通の周囲温度の変化によるD2のバイアス点の変化によってD1のバイアス点も同量だけ移動するようにダイオードD1とほぼ同じに選択されている。
【0034】
伝送線路130は、チューニング回路202からのRF信号をコンデンサC3および駆動インピーダンスR2を介して受け取る。伝送線路130は、そのRF信号の波長(λ)の1/2の電気長(本明細書では実効長とも称される)とおおよそ等しい物理長を有するように構成されている。伝送線路130は、この電気長又は当該長さの整数倍であるとき、そのRF信号の周波数で共振する。伝送線路での信号の波長は:
【0035】
【0036】
により与えられる(式中、fはRF信号の周波数であり、vは伝播媒体の速度係数である)。例示的な一実施形態では、伝送線路130が、仕様速度係数v:0.66を有するRG58同軸ケーブルとされる。RF信号の周波数が1.8432MHzであるときのRG58ケーブルのλ/2電気長は、その仕様速度係数を用いると、53.71mになるはずである。しかし、実際には、伝送線路長が51.79mのときに共振が発生することから、実際の速度係数は約0.6364であると示唆される。
【0037】
伝送線路130は、RF信号の周波数で共振する適切な電気長となるように、2種類の調節リソースの少なくとも一方によって調節又は「チューニング(調整)」され得る。前記伝送線路が後述のコンデンサC6の微調節範囲内でない場合にのみ必要となる調節として、粗調節が、
図1Bに示す少なくとも1つの線路長部132の挿入によって達成され得る。これらの線路長部132は、伝送線路130の電気長の調節を、当該伝送線路130の物理長を単に変化させることによって行い得る。
図1Bに示す例示的な実施形態では2m、1m及び0.5mのバイナリウェイト式線路長部132が描かれているが、表記された値に加えて又は当該値に代えて、バイナリウェイト式又は別のウェイト式による別の値の線路長部132が用いられてもよい。
【0038】
伝送線路130の駆動側の可変コンデンサC6を操作することにより、微調節が達成され得る。可変コンデンサC6は、伝送線路130のリアクタンス性負荷として動作する。C6の値は、当該可変コンデンサC6と前記伝送線路との組合せが前記RF信号の周波数で共振するように調節され得る。
【0039】
伝送線路130を調整する手順の一例は、RF信号を伝送線路130に印加し、当該伝送線路の入力部での当該RF信号の電圧を観測することであり得る。RF信号の電圧の最大値が観測されるまで、伝送線路130に伝送線路長部132が選択的に追加され得る。次に、RF信号の電圧の最大値が観測されるまで、可変コンデンサC6が調節され得る。あるいは、当該技術分野で知られる別の調整手順が用いられてもよい。
【0040】
伝送線路130を伝播したRF信号がトランス212で受け取られて、当該トランス212によってRF信号の電圧が四重極分析計114用に昇圧される。これらのトランスは、RF信号を互いに反対の極性で受け取る。つまり、これらのトランスは、昇圧済みのRF信号の電圧を、一方のトランスの出力が他方のトランスの出力に対して180°ずれるようにして相異なる位相で生成する。
【0041】
例示的な一実施形態において、トランス212は、別個の、但し、密に結合した2つのトランスからなり得て、当該トランスの出力部でのRF信号の電圧が当該トランスの入力部でのRF信号の電圧の5倍になるように各々1:5の巻線比を有している。しかしながら、変形例として、それ以外の巻線比が用いられてもよいことを理解されたい。これらのトランスは、さらに、四重極の静電容量を調整するように調節可能なものとされる。例示的な他の実施形態において、トランス212は、1つの一次巻線部及び2つの二次巻線部を含む単一のトランスからなり得る。これらのような昇圧トランスにより、前記伝送線路で伝送される電圧信号を小さくし、RF信号の電圧の二乗に比例する損失を許容可能なレベルにまで抑えることが可能となる。一実施形態では、一方又は両方のトランスが、一次巻線部の入力電圧に対する二次巻線部の出力電圧の調節を簡単に行うための調節可能なタップを有し得る。
【0042】
図3に、第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する本発明にかかる方法300の一例を示す。同方法は、前記時変電圧信号を、前記第1のサブシステム側の第1の端部から前記第2のサブシステム側の第2の端部にかけて延在する伝送線路の当該第1の端部に電気結合させる過程302を備え得る。同方法は、さらに、前記伝送線路を:(i)前記時変電圧信号の半波長(λ/2)の正の整数倍にほぼ等しい電気長を有するように;かつ、(ii)無終端となるように;構成する過程304を備え得る。同方法は、さらに、前記時変電圧信号の生成部を、前記第1のサブシステム側にある適応制御設備によって前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節する過程306を備え得る。同方法は、さらに、前記第2のサブシステム側にあって前記第2の端部に電気的に接続された少なくとも1つのトランスにより、前記時変電圧信号の振幅を増加させる過程308を備え得る。
【0043】
例示的な実施形態を詳細に図示・説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲を逸脱しない範疇で形態や細部に様々な変更が施されてもよいことを理解するであろう。
なお、本発明は、態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムであって、
第1の端部および第2の端部を有し、前記第1のサブシステム側の当該第1の端部から前記第2のサブシステム側の当該第2の端部にかけて延在し、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長に対応した物理長を有するように構成され、共振するように構成されている、伝送線路と、
前記第1のサブシステム側にあり、(i)前記時変電圧信号を前記第1の端部に電気結合させて、(ii)当該時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、当該第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、適応制御設備と、
前記第2のサブシステム側にあり、前記第2の端部に電気的に接続されており、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている、少なくとも1つのトランスと、
を備える、システム。
〔態様2〕
態様1に記載のシステムにおいて、さらに、
信号生成制御分析電子部品を具備した前記第1のサブシステムと、
四重極分析計を具備した前記第2のサブシステムと、
を備え、前記時変電圧信号が、前記少なくとも1つのトランスを介して前記四重極分析計の四重極部品へと印加されるように構成された、高周波電圧信号である、システム。
〔態様3〕
態様1に記載のシステムにおいて、前記適応制御設備が、前記伝送線路の前記第1の端部にて前記時変電圧信号を取り出して当該時変電圧信号からフィードバック信号を生成するように構成された整流器を含む、システム。
〔態様4〕
態様3に記載のシステムにおいて、前記整流器が、半導体ダイオードである、システム。
〔態様5〕
態様4に記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器に電気的に接続された補償ダイオード、
を備え、前記補償ダイオードは、当該補償ダイオードの導通電圧の温度変化によって前記整流器の導通電圧の温度変化が低減されるように構成されている、システム。
〔態様6〕
態様1に記載のシステムにおいて、さらに、
各種線路長部から選出されて前記伝送線路に追加された、当該伝送線路の物理長を調節することによって当該伝送線路の電気長の粗調節を行うように構成されている少なくとも1つの伝送線路長部、
を備える、システム。
〔態様7〕
態様1に記載のシステムにおいて、さらに、
前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続されており、当該伝送線路を共振状態にするための補償を行うように構成されている調節可能なコンデンサ、
を備える、システム。
〔態様8〕
態様1に記載のシステムにおいて、さらに、
信号生成器から励起信号を受け取り、当該励起信号の周波数で共振して前記時変電圧信号を生成するように構成されているチューニング可能なタンク回路、
を備える、システム。
〔態様9〕
態様1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのトランスが、前記時変電圧信号と電気結合して当該時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とする2つのトランスからなる、システム。
〔態様10〕
態様1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのトランスが、1つの一次巻線部及び2つの二次巻線部を含む単一のトランスからなり、当該2つの二次巻線部が、前記一次巻線部に印加された前記時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とするように構成されている、システム。
〔態様11〕
態様1に記載のシステムにおいて、前記伝送線路が、前記第1のサブシステムと前記第2のサブシステムとの間で情報信号、制御信号及び電力のうちの少なくとも一つを運ぶ1つ以上の通信経路を組み込んだケーブルアセンブリのうちの一構成要素である、システム。
〔態様12〕
態様11に記載のシステムにおいて、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから半波長以上のところに位置している、システム。
〔態様13〕
態様11に記載のシステムにおいて、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから30メートル以上のところに位置している、システム。
〔態様14〕
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する方法であって、
前記時変電圧信号を、前記第1のサブシステム側の第1の端部から前記第2のサブシステム側の第2の端部にかけて延在する伝送線路の当該第1の端部に電気結合させる過程と、
前記伝送線路の物理長を、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長と対応させるように構成する過程と、
前記第1のサブシステム側にある適応制御設備にて、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節する過程と、
前記第2のサブシステム側にあって前記第2の端部に電気的に接続された少なくとも1つのトランスにより、前記時変電圧信号の振幅を増加させる過程と、
を備える、方法。
〔態様15〕
態様14に記載の方法において、さらに、
前記伝送線路の前記第1の端部にて前記時変電圧信号を取り出して当該時変電圧信号からフィードバック信号を生成する過程、
を備える、方法。
〔態様16〕
態様14に記載の方法において、さらに、
各種伝送線路長部から選出された少なくとも1つのバイナリウェイト式伝送線路長部を前記伝送線路に追加して当該伝送線路の物理長を調節することにより、当該伝送線路の電気長の粗調節を行う過程、
を備える、方法。
〔態様17〕
態様14に記載の方法において、さらに、
無終端である前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続された調節可能なコンデンサを調節して、当該伝送線路を共振状態にするための補償を行う過程、
を備える、方法。
〔態様18〕
信号生成制御分析用の第1のサブシステムから四重極分析計用の第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムであって、
前記信号生成制御分析用の第1のサブシステムと、
四重極分析計を具備した、前記四重極分析計用の第2のサブシステムであって、前記時変電圧信号は、少なくとも1つのトランスを介して当該四重極分析計のうちの四重極部品へと印加されるように構成された高周波電圧信号である、前記四重極分析計用の第2のサブシステムと、
第1の端部および第2の端部を有し、前記第1のサブシステム側の当該第1の端部から前記第2のサブシステム側の当該第2の端部にかけて延在し、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長を有するように構成された、伝送線路と、
前記第1の端部に結合した前記時変電圧を取り出してフィードバック信号を生成し、当該フィードバック信号を適応制御設備に運ぶように構成された整流器回路であって、前記適応制御設備は、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、整流器回路と、
前記第2のサブシステム側にあり、前記第2の端部に電気的に接続されており、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている、少なくとも1つのトランスと、
を備える、システム。
〔態様19〕
態様18に記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器に電気的に接続された温度補償回路、
を備え、前記温度補償回路が、補償ダイオードの導通電圧の温度変化に応じて前記整流器の導通電圧の温度変化を低減するように構成されている、システム。
〔態様20〕
態様18に記載のシステムにおいて、さらに、
各種線路長部から選出されて前記伝送線路に追加された、当該伝送線路の物理長を調節することによって当該伝送線路の電気長の粗調節を行うように構成されている少なくとも1つの伝送線路長部、
を備える、システム。
〔態様21〕
態様18に記載のシステムにおいて、さらに、
前記伝送線路の前記第1の端部と並列に接続されており、当該伝送線路を共振状態にするための補償を行うように構成されている調節可能なコンデンサ、
を備える、システム。
〔態様22〕
信号生成制御分析サブシステムから四重極分析計へと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御する方法であって、
前記時変電圧信号を、前記信号生成制御分析サブシステム側の第1の端部から前記四重極分析計側の第2の端部にかけて延在する伝送線路の当該第1の端部に電気結合させる過程と、
前記伝送線路の物理長を、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長と対応させるように構成する過程と、
前記第1の端部に結合した前記時変電圧を整流器回路で取り出してフィードバック信号を生成し、当該フィードバック信号を適応制御設備に運ぶ過程であって、前記適応制御設備は、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、過程と、
前記第2のサブシステム側にあって前記第2の端部に電気的に接続された少なくとも1つのトランスにより、前記時変電圧信号の振幅を増加させる過程と、
を備える、方法。
〔態様23〕
態様22に記載の方法において、さらに、
補償ダイオードの導通電圧の温度変化に応じて前記整流器の導通電圧の温度変化を低減する過程、
を備える、方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブシステムから第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムであって、
単一の伝送線路または互いに直列に電気的に接続された複数の伝送線路のいずれか一方からなり、前記第1のサブシステムを前記第2のサブシステムに電気的に接続する、少なくとも1つの伝送線路であって、前記少なくとも1つの伝送線路が、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長を有し、
前記第1のサブシステム側にあり、(i)前記時変電圧信号を前記第1の端部に電気結合させて、(ii)当該時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、当該第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、適応制御設備と、
前記第2のサブシステム側にあり、前記第2の端部に電気的に接続されており、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている、少なくとも1つのトランスと、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記システムが、さらに、第1のサブシステムおよび第2のサブシステムを備え、
前記第1のサブシステムが信号生成制御分析電子部品を具備し、
前記第2のサブシステムが四重極分析計を具備し、
前記時変電圧信号が、前記少なくとも1つのトランスを介して前記四重極分析計の四重極部品へと印加されるように構成された、高周波電圧信号である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記適応制御設備が、前記伝送線路の前記第1の端部にて前記時変電圧信号を取り出して当該時変電圧信号からフィードバック信号を生成するように構成された整流器を含む、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記整流器が、半導体ダイオードである、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器に電気的に接続された補償ダイオード、
を備え、前記補償ダイオードは、当該補償ダイオードの導通電圧の温度変化によって前記整流器の導通電圧の温度変化が低減されるように構成されている、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの伝送線路が、複数の伝送線路を備える、システム
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
前記生成部と前記少なくとも1つの伝送線路との間に電気的に接続された調節可能なコンデンサを備え、
前記調節可能なコンデンサが、前記伝送線路と並列に接続されている、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
信号生成器から励起信号を受け取り、当該励起信号の周波数で共振して前記時変電圧信号を生成するように構成されているチューニング可能なタンク回路、
を備える、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのトランスが、前記時変電圧信号と電気結合して当該時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とする2つのトランスからなる、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのトランスが、1つの一次巻線部及び2つの二次巻線部を含む単一のトランスからなり、当該2つの二次巻線部が、前記一次巻線部に印加された前記時変電圧信号を2種類の位相の時変電圧信号とするように構成されている、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの伝送線路が、前記第1のサブシステムと前記第2のサブシステムとの間で、情報信号、制御信号及び電力からなるグループから選択されるうちの少なくとも一つを運ぶ1つ以上の通信経路を組み込んだケーブルアセンブリのうちの一構成要素である、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから半波長以上のところに位置している、システム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記第1のサブシステムが、前記第2のサブシステムから30メートル以上のところに位置している、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの伝送線路が、単一の伝送線路のみを備える、システム。
【請求項15】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記調節可能なコンデンサが、前記少なくとも1つの伝送線路を、前記時変電圧信号と共振状態にするように構成されている、システム。
【請求項16】
信号生成制御分析用の第1のサブシステムから四重極分析計用の第2のサブシステムへと時変電圧信号を運び、当該時変電圧信号の振幅を監視かつ適応制御するシステムであって、
前記信号生成制御分析用の第1のサブシステムと、
四重極分析計を具備した、前記四重極分析計用の第2のサブシステムであって、前記時変電圧信号は、少なくとも1つのトランスを介して当該四重極分析計のうちの四重極部品へと印加されるように構成された高周波電圧信号である、前記四重極分析計用の第2のサブシステムと、
単一の伝送線路または互いに電気的に直列に接続された複数の伝送線路からなる、少なくとも1つの伝送線路であって、前記第1のサブシステムを前記第2のサブシステムに電気的に接続し、前記時変電圧信号の半波長の正の整数倍にほぼ等しい電気長を有する、少なくとも1つの伝送線路と、
前記第1の端部に結合した前記時変電圧を取り出してフィードバック信号を生成し、当該フィードバック信号を適応制御設備に運ぶように構成された整流器回路であって、前記適応制御設備は、前記時変電圧信号の生成部を、当該時変電圧信号の振幅が要求レベルに維持されるよう、前記第1の端部での当該時変電圧信号の取出し値に基づいて調節するように構成されている、整流器回路と、
前記第2のサブシステム側にあり、前記第2の端部に電気的に接続されており、前記時変電圧信号の振幅を増加させるように構成されている、少なくとも1つのトランスと、
を備える、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器に電気的に接続された温度補償回路、
を備え、前記温度補償回路が、補償ダイオードの導通電圧の温度変化に応じて前記整流器の導通電圧の温度変化を低減するように構成されている、システム。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの伝送線路が、複数の伝送線路を備える、システム。
【請求項19】
請求項16に記載のシステムにおいて、さらに、
前記生成部と前記少なくとも1つの伝送線路との間に電気的に接続された、調節可能なコンデンサを具備し、
前記調節可能なコンデンサが、前記少なくとも1つの伝送線路と並列に接続されている、システム。
【請求項20】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの伝送線路が、単一の伝送線路のみを備える、システム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記調節可能なコンデンサが、前記少なくとも1つの伝送線路を、前記時変電圧信号と共振状態にするように構成されている、システム。