(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069306
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】非造血組織常在性γδ T細胞の増幅および該細胞の使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240514BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240514BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240514BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20240514BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240514BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240514BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240514BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/078
C12Q1/02
C12Q1/6874 Z
A61P31/22
A61P31/18
A61P37/04
A61K35/17
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033438
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021147372の分割
【原出願日】2016-10-31
(31)【優先権主張番号】1519198.4
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1612731.8
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511085460
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513200313
【氏名又は名称】キングス・カレッジ・ロンドン
(71)【出願人】
【識別番号】518151434
【氏名又は名称】ザ フランシス クリック インスティチュート リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイデイ,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヌスバウマー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ウールフ,リチャード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非造血組織常在性γδT細胞の増幅方法、ならびに非造血組織常在性γδT細胞の集団およびその使用を提供する。
【解決手段】本発明は、ヒト又は非ヒト動物の非造血組織から得られたリンパ球を、間質細胞または上皮細胞との直接的接触なしに、インターロイキン-2(IL-2)および/またはインターロイキン-15(IL-15)の存在下にてかつTCR活性化または共刺激シグナルの非存在下にて培養することによる、in vitroでの非造血組織常在性γδT細胞を増幅する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-2(IL-2)および/またはインターロイキン-15(IL-15)の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、in vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を増幅するための方法であって、該リンパ球は、培養中に間質細胞または上皮細胞と直接的に接触しない、上記方法。
【請求項2】
前記リンパ球は、培養中に線維芽細胞と直接的に接触しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IL-2の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
インターロイキン-15(IL-15)の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
IL-2およびIL-15の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で前記リンパ球を培養するステップを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
T細胞受容体経路アゴニストの非存在下で前記リンパ球を培養するステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記リンパ球が、間質細胞または上皮細胞の非存在下で培養される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記間質細胞または上皮細胞が、培養に先立って除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リンパ球が、線維芽細胞の非存在下で培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記線維芽細胞が、培養に先立って除去される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リンパ球が、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記γδ増幅培地が、T細胞受容体を活性化または共刺激しない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いている、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなる、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記リンパ球が、皮膚、消化管(例えば、結腸)、乳腺組織、肺、肝臓、膵臓または前立腺から取得されたものである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記γδ T細胞が非Vδ2細胞である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記γδ T細胞がVδ1細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記γδ T細胞が二重陰性(DN)γδ T細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ヒトまたは非ヒト動物組織からリンパ球を取得するステップを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記リンパ球が、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織のサンプルから取得される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
組織が非造血細胞およびリンパ球を含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織のサンプルを提供するステップ、および該サンプルの非造血細胞からリンパ球を分離して、間質細胞を実質的に含まないリンパ球の集団を作製するステップを含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
以下のステップ:
(i) 非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団を提供するステップ;および
(ii) 該γδ T細胞との間質細胞接触を実質的に伴わない条件下で該γδ T細胞を培養して、γδ T細胞の増幅された集団を作製するステップ
を含む、γδ T細胞を増幅するための方法。
【請求項25】
非造血組織から取得されるγδ T細胞の前記集団が、γδ T細胞の実質的に純粋な集団である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
非造血組織から取得されるγδ T細胞の前記集団が非Vδ2細胞である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
非Vδ2細胞の前記集団がVδ1細胞を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
非Vδ2細胞の前記集団がDN γδ T細胞を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
非造血組織から取得されるγδ T細胞の前記集団が、Vδ1+CLA+CCR8+CD103+ γδ T細胞を含む、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(ii)の前記培養ステップが、γδ T細胞と間質細胞との接触を伴わずに行なわれる、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(ii)の前記γδ T細胞が、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルを実質的に含まない条件下で培養される、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(ii)の前記培養ステップが、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で行なわれる、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(ii)の前記培養ステップが、間質細胞馴化培地中で行なわれる、請求項24~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(ii)の前記γδ T細胞培養ステップが、IL-2、IL-15またはそれらの組み合わせの存在下で行なわれる、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
γδ T細胞の前記集団が、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織のサンプルから取得される、請求項24~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
非造血組織が、非造血細胞およびγδ T細胞を含む、請求項24~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記非造血細胞から前記γδ T細胞を分離して、間質細胞を実質的に含まない、γδ T細胞を含む分離されたリンパ球集団を作製するステップを含む、請求項24~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記γδ T細胞が、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養される、請求項24~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記γδ増幅培地が、T細胞受容体を活性化または共刺激しない、請求項24~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いている、請求項24~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなる、請求項24~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
以下のステップ:
(i) 非造血細胞およびγδ T細胞を含む非造血組織を提供するステップ;
(ii) 該非造血細胞から該γδ T細胞を分離して、間質細胞を実質的に含まない、γδ T細胞を含む分離された集団を作製するステップ;および
(iii) TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で、ステップ(ii)の該分離された集団を培養して、γδ細胞の増幅された集団を作製するステップ
を含む、γδ T細胞を増幅するための方法。
【請求項43】
ステップ(ii)の分離ステップが、αβ T細胞から前記γδ T細胞を分離することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(ii)の前記分離された集団が、γδ T細胞の実質的に純粋な集団である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(ii)の前記分離された集団が非Vδ2細胞である、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記非Vδ2細胞の集団がVδ1細胞を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記非Vδ2細胞の集団がDN γδ T細胞を含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
ステップ(ii)の前記分離された集団がVδ1+CLA+CCR8+CD103+ γδ T細胞の集団を含む、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
ステップ(iii)の前記培養ステップが、間質細胞接触を実質的に伴わずに行なわれる、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(iii)の前記培養ステップが、前記γδ T細胞と間質細胞との接触を伴わずに行なわれる、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(iii)の前記培養ステップが、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルを実質的に含まない、請求項42~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(iii)の前記培養ステップが、TCR活性化シグナルおよび共刺激シグナルの非存在下で行なわれる、請求項42~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(iii)の前記培養ステップが、間質細胞馴化培地中で行なわれる、請求項42~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(iii)の前記培養ステップが、IL-2、IL-15またはそれらの組み合わせの存在下で行なわれる、請求項42~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記分離された集団が、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記γδ増幅培地が、T細胞受容体を活性化または共刺激しない、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いている、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなる、請求項55~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、培養の14日以内に、非造血組織から取得される前記γδ T細胞の少なくとも20倍の個数のγδ T細胞を含む、請求項24~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、培養の7日以内に、非造血組織から取得される前記γδ T細胞の少なくとも2倍の個数のγδ T細胞を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも50%はVδ1+細胞である、請求項24~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも70%はVδ1+細胞である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも90%はVδ1+細胞である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも10%はCCR4、CCR8およびCD103に対して陽性である、請求項24~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも30%はCCR4およびCCR8に対して陽性である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも60%はCCR8に対して陽性である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記γδ T細胞がVδ2-細胞である、請求項24~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
請求項1~67のいずれか1項に記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞。
【請求項69】
以下の特性:
(i) 表現型CD69high、ICOShigh、TIM3highおよびCD28low/absentを示すか、
(ii) CCR3、CD39、CD11b、およびCD9のうちの1種以上をアップレギュレーションするか、
(iii) TCRアゴニストの非存在下でNKG2Dリガンドに対して応答してIFN-γを産生するか、
(iv) TCRアゴニストの非存在下でIL-13を産生するか、
(v) TCR活性化に対して応答してIFN-γ、TNF-αおよびGM-CSFのうちの1種以上を産生するか、
(vi) TCR活性化に対して応答してIL-17を全く産生しないかもしくは実質的に産生しないか、
(vii) 追加の増殖因子を含まずにIL-2を含有する培養培地中で生育するか、
(viii) TCRアゴニストの非存在下で細胞傷害性T細胞応答を示すか、かつ/または
(ix) 正常細胞と比較して腫瘍細胞に対して選択的な細胞傷害性を示す
のうちの1種以上を有する、非造血組織常在性γδ T細胞。
【請求項70】
以下のステップ:
(i) 試験化合物の存在下および非存在下で間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させてin vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養するステップ、あるいは間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させてin vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養するステップであってγδ T細胞および/または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)中での試験遺伝子の発現が変化している上記ステップ;および
(ii) 試験化合物の存在下および非存在下での、または線維芽細胞および/もしくはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下での、非造血組織常在性γδ T細胞の増殖率または活性化率を決定するステップ、あるいは試験化合物の存在下および非存在下での、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下での、間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率を決定するステップであって、このとき、T細胞の増殖率もしくは活性化率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下でより高いか、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下でより高い場合、かつ/あるいは間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下でより高いか、または線維芽細胞および/もしくはγδ T細胞中での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下でより高い場合に、試験化合物がチェックポイント調節因子である可能性があるか、または試験遺伝子が候補チェックポイント遺伝子である可能性がある、上記ステップ
を含む、チェックポイント阻害因子のスクリーニング方法。
【請求項71】
養子T細胞療法によるヒトまたは非ヒト動物の治療方法での使用のための、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞。
【請求項72】
前記ヒトが、ヒト癌患者またはCMV感染患者もしくはHIV感染患者などのウイルス感染患者である、請求項71に記載の使用のための非造血組織常在性γδ T細胞。
【請求項73】
養子T細胞療法により被験体を治療する方法であって、それを必要とする被験体に、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項74】
前記被験体が、ヒト癌患者またはCMV35感染患者もしくはHIV感染患者などのウイルス感染患者である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
キメラ型抗原受容体療法によるヒトまたは非ヒト動物の治療方法での使用のための、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞。
【請求項76】
前記ヒトがヒト癌患者である、請求項75に記載の使用のための非造血組織常在性γδ T細胞。
【請求項77】
それを必要とする被験体に、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、キメラ型抗原受容体療法により被験体を治療する方法。
【請求項78】
前記被験体がヒト癌患者である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
養子T細胞療法により被験体を治療する方法であって、請求項69に記載の非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項80】
前記被験体が、ヒト癌患者またはCMV35感染患者もしくはHIV感染患者などのウイルス感染患者である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
請求項69に記載の非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、キメラ型抗原受容体療法により被験体を治療する方法であって、該細胞がキメラ型抗原受容体を発現した、上記方法。
【請求項82】
前記被験体がヒト癌患者である、請求項81に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ex vivoで非造血組織常在性γδ T細胞を増幅するための方法に関する。「非造血組織常在性γδ T細胞」とは、リンパ系器官および血液中ではなく、非造血組織中に常在するTリンパ球のサブセットを意味する。そのような細胞としては、非Vδ2細胞、例えば、Vδ1細胞、Vδ3細胞およびVδ5細胞が挙げられる。本発明はまた、養子T細胞療法およびキメラ型抗原受容体療法でのこれらの細胞の使用、ならびにチェックポイント調節因子のスクリーニング方法でのそれらの使用にも関する。本発明はまた、非造血組織常在性γδ T細胞のex vivo増幅の結果として生成される細胞にも関する。
【背景技術】
【0002】
癌に対するT細胞免疫療法での高まる関心は、特に、PD1(7、8)、CTLA4(9、10)および他の受容体(11)により発揮される阻害経路の臨床的に媒介される拮抗作用により脱抑制される場合に、癌細胞を認識し、かつ宿主保護的な機能的潜在能力を媒介する、CD8+(1~4)およびCD4+αβ(5、6)T細胞のサブセットの明白な能力に焦点を当てられてきた。それにもかかわらず、多くの疑問が残っている。例えば、そのような治療の有効性が乏しいと思われる多数の主要な臨床的状況があるようであり(11);多くの場合に深刻な有害事象(AE)が生じ(12);有効性またはAEを予測する能力が極端に限られており(13);かつ従来の抗原特異的CD8+およびCD4+αβ T細胞応答の活性化に先行しなければならない、宿主が腫瘍細胞を感知することを可能にする相互作用(いわゆる「免疫原性」)についての説明がほとんどない。
【0003】
これらに関して、多数の科学者および臨床家が同様に、αβ T細胞およびB細胞と同じく進化的に強く保存されている、体細胞により生成される受容体を有するリンパ球の第3の系統である、γδ T細胞の潜在能力を再評価し始めている。基本的には、ヒトγδ T細胞には2種類のサブグループがあり;一方は、ヒト末梢血中で優勢であり、大多数がVδ2 T細胞受容体(TCR)を発現し;もう一方は非造血組織中で優勢であり、大多数がVδ1 TCRを発現し、比較的小さな集団がVδ3鎖もしくはVδ5鎖または何らかの他の非Vδ2鎖を含むTCRを発現する(14)。
【0004】
大部分の成人では、Vδ2細胞は、静止期には、血中T細胞のうちの少数の非常に多様な成分(0.01~5%)しか構成しないが、多数の細菌および寄生生物をはじめとする広範囲の物質による感作後には、該細胞は迅速に増幅し、一時的には最大でCD3+細胞のうちの約25%に達する(14)。この応答の主要な基礎は、タンパク質を修飾(例えば、ゲラニル化またはファルネシル化により)するために用いられるコレステロールおよび他の脂質の重要な微生物による合成経路中での中間体である、ヒドロキシル-メチルブタ-2-エニルピロリン酸(HMBPP)(15)をはじめとする、低分子量「ホスホ部分」のVδ2 TCR媒介認識である。霊長類では、この合成は、メバロン酸経路を介して起こり、その1つの中間体であるイソペンテニルピロリン酸(IPP)は、ウイルス感染細胞および形質転換細胞で非常に高レベルに発現され、これもまたVδ2 TCR媒介認識の標的である(16)。
【0005】
加えて、大部分のVδ2 T細胞は、高レベルのNKG2D受容体を発現し、この受容体は、NKG2Dリガンド(例えば、MICA、MICB、およびULBP)にかみ合わさった際に、細胞の細胞溶解能を活性化または共刺激(TCRと共に)することができる。それらのリガンドは、細胞が、酸化ストレスもしくは浸透圧ストレスまたは紫外光などの因子に曝露されるとアップレギュレーションされる宿主タンパク質である。これらの因子は、上皮増殖因子受容体(EGFR)経路の高活性(hyper-active)シグナル伝達を促進し、この経路はまた、一般的には、ヒトの固形腫瘍では調節異常となる(17)。
【0006】
TCRおよび/またはNKG2Dを用いて形質転換細胞を検出するVδ2 T細胞の能力(18~20)は、それらの強力な細胞溶解能、およびCD8+ T細胞に対して抗原を提示する明白な能力(21)と一緒になって、総合的に、Vδ2 T細胞が、癌免疫療法を送達するために臨床的に活用することができるという見解を引き起こしてきた。これは細胞の養子移入により達成することができ、これに関して、γδ T細胞がMHCにより拘束されないことが、顕著かつ有益に、移植片対宿主病(GvHD)を制限する(22)。これを達成するために、サイトカイン(インターロイキン(IL)-2など)を添加することにより、外因性TCR活性化因子(ホスホ部分(例えば、BrHPP)など)と一緒に、または臨床的に承認されたビスホスホネート(例えば、ゾレドロン酸)(メバロン酸経路でのファルネシルピロリン酸シンターゼを阻害し、それによりTCR活性化部分であるIPPの蓄積を誘導する)と一緒に、血液常在性Vγ9Vδ2 γδ T細胞をex vivoで増幅することができる。しかしながら、BrHPPなどの因子を介したVγ9Vδ2細胞の慢性的活性化は、次第に、細胞の疲弊および細胞傷害能の低下へとつながり得る。
【0007】
あるいは、患者自身のγδ T細胞を、薬理学的に修飾された形態のHMBPP、または臨床的に承認されたアミノビスホスホネートを用いて、in situで活性化することができる。これらのアプローチによって、250名超の癌患者が処置されてきており、これらのアプローチは安全であるように見えるが、完全寛解は稀にしか生じなかった。細胞の限定的な臨床的有効性に関する1つの主要な懸念は、慢性的な抗原曝露により、回復不可能に疲弊するそれらの傾向である。第2の主要な懸念は、固形腫瘍およびそれらの腫瘍を保持する組織へとホーミングする効率が高くないように思われることである(23)。
【0008】
キメラ型抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、B細胞悪性腫瘍に関して臨床では期待が持てることが示されてきている。しかしながら、固形腫瘍を治療することに関しては、CAR-T細胞の性能は、現在のところ予測よりも低く、完全な腫瘍応答を生じる効率は高くないことおよび腫瘍以外での細胞傷害性の高い発生率が示されている(24)。末梢血γδ T細胞に関して、固形腫瘍に対するCAR-Tアプローチの成功への主な障害は、悪性腫瘍の部位まで移動して、機能的に有効な状態でそこに常在するために、全身性CAR-T細胞がおそらくは効率的でないことである(25)。加えて、従来のαβ T細胞に基づけば、CAR-T細胞は、腫瘍微小環境での免疫抑制性シグナル(例えば、PD1受容体を介して伝達されるもの)を克服しなければならない。
【0009】
γδ T細胞は、NKG2Dなどの受容体を用いて形質転換細胞を認識するそれらの生来的能力を保持しながら、腫瘍反応性キメラ型抗原特異的TCRを用いて形質導入することができるので、CAR-Tアプローチに対してγδ T細胞を用いることに伴う利点がある可能性がある。つまり、γδ T細胞は、腫瘍適合性(TCR)媒介作用と生来的な(NKG2D)媒介作用とを同時に有するようにすることができる。しかしながら、ヒト血液γδ T細胞が、固形組織内の腫瘍にホーミングし、かつその中で活性型として維持される効率が不十分であり得るという問題が残っている。この考察は、通常、非造血組織中に常在している、γδ T細胞のより詳細な検討を誘発している。
【0010】
そのようなT細胞は、それらの発達の一部分として非造血組織に移動し、それにより、全身性プライミング後に組織に浸潤するT細胞(例えば、組織常在性TCRαβ+メモリーT細胞(いわゆるTRM細胞))とは異なる。組織常在性γδ T細胞はマウスで最もよく研究されており、その中では、当該細胞は、他の部位の中でも、皮膚、腸、および生殖系組織中で一般的であることが示されている。多数のそのような細胞が、それによりNKG2D受容体の活性化を通した感作に応答できる、生来様の機能的能力を保持することが示されている。本発明者らは、近年、ヒト皮膚および腸が、同様に、生来様活性を有する非造血組織常在性γδ T細胞を大きな割合で保持することを実証するデータを取得した。また、悪性腫瘍、炎症、アトピー、アレルギーおよび非造血組織内で形成される他の病的状態の研究が、病変が生じている組織内に常在するこれらの生来様ヒトT細胞の潜在的な影響力をほとんど考慮しそびれていることもまた、印象的である。
【0011】
非造血組織に常在するヒトγδ T細胞は、それらの局在が細胞の採取を困難にするので、かつそれらを培養する確立された手段がないので、ほとんど研究されていない。利用可能な比較的わずかな情報の中では、このサブタイプは、それらがVγ2含有TCRを発現しないので低分子量ホスホ部分に全く反応しない、非MHC拘束型細胞溶解性を有する多様な細胞を含む。そのような細胞については精密なTCR特異性はほとんど知られていないが、利用可能なデータは、細胞が、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞および多数の固形腫瘍により過剰発現される内皮タンパク質C受容体(EPCR)などの自己抗原に対して反応性であることを示唆する(32)。非造血組織関連γδ T細胞はまた、一般的に、NKG2Dを発現する(14)。これらの特性、ならびに皮膚および腸などの非造血組織内での細胞の生理的常在を考慮すると、癌患者へのそのような細胞の養子移入は、固形腫瘍および潜在的には他の免疫病理を標的化する上で、相当に、より有効であり得る。
【0012】
免疫療法に関して非Vδ2細胞を活用するために、該細胞をin situで増幅するための手段、またはそれらを回収し、かつ再注入前にex vivoでそれらを増幅するための手段のいずれかが必要である。多数の非Vδ2細胞をin situで増幅させる能力が証明されている既知のTCR活性化因子がないので、後者のアプローチが採用されている。非造血組織の限定された入手可能性という困難を克服するために、一部の研究者は、これらの細胞が組織常在性非Vδ2細胞と同等であると想定して、Vδ2発現細胞が優勢なサブセットである血液由来の非常に少数の非Vδ2細胞を増幅させようと試みてきた。血中に見出される少数の非Vδ2 γδ T細胞は、活動性CMV感染中にはかなり増幅し、Vδ2 T細胞と比較してCMVに対して優れた反応性を示し、かつ、子宮内CMV感染の症例ではヒト胎児を保護し得るようである。加えて、CMV反応性非Vδ2 γδ T細胞は、免疫抑制中に、形質転換された細胞との交差反応性を介して、CMV再活性化から移植患者を保護し、二次的な悪性腫瘍のリスクを低下させるようである(26)。同様に、γδ T細胞は、HIV感染の制御で有益に作用することを示唆するデータがあり、この例では、非Vδ2 γδ T細胞は、Vδ2 T細胞と比較して血中で増幅される(24)。
【0013】
血液常在性非Vδ2細胞は、直接的にTCRシグナル伝達を活性化させる外因的因子を添加することによるか(例えば、抗CD3抗体、汎γδ-TCR特異的抗体またはフィトヘマグルチニン(PHA)などの物質を用いることにより)、または人工的抗原提示細胞(aAPC)と共に、刺激された非Vδ2 T細胞を共培養することにより(この場合、γδ T細胞とaAPCとの直接的な接触が、ex vivoでの非Vδ2 T細胞増幅に対して必要とされる)、ex vivoで増幅されている(41~44)。あるいは、例えば、上皮癌浸潤性リンパ球(TIL)由来のex vivoでのγδ T細胞培養物の増殖を維持するために用いられるのと同様に、固定化された組み換えMICA(NKG2Dリガンド)を使用してNKG2D受容体シグナル伝達を促進することにより、細胞が増幅されてきた(28)。総合すると、現行でのVδ2発現型血液γδ T細胞または非Vδ2血液γδ T細胞のex vivo増幅方法は、常に、TCRおよび/またはNKG2D受容体の活性化を促進する物質を、インターロイキン-2(IL-2)などの補助的サイトカインと一緒に添加することを必要とする(41~44)。受容体活性化シグナルおよびサイトカインのこの組み合わせは、社会によって広く採用されている、T細胞を培養および増幅するための標準的アプローチを反映する。現在までに、非造血組織中に常在するγδ T細胞を相当に増幅するための方法は記載されていない。そのような方法が、本明細書中に記載される。
【発明の概要】
【0014】
ヒト皮膚T細胞の表現型および機能的特性決定の一部分として、本発明者らは、非造血組織内で正常に常在し、かつαβ T細胞および血液常在性γδ T細胞と比較して固有の特性を有する、異なる大きな集団のγδ T細胞を単離した。本発明者らは、細胞が、NKG2Dリガンドに対して、およびサイトカインに対して、強力なTCR非依存的生来様応答を示すことを見出した。初代αβ T細胞の増幅での努力が、有益な増殖因子の供給源として他の支持細胞との共培養を一般的に用いてきた一方で(29)、本発明者らは、予期せぬことに、皮膚および他の非造血組織に常在するγδ T細胞が、自家皮膚線維芽細胞および潜在的には他の間質成分(ケラチン生成細胞および内皮細胞など)と接触させてこれらの細胞を共培養することにより、大いにかつ特異的に抑制されることを示した。そのような相互作用の除去は、潜在的な臨床応用のために、該細胞を、大量に、迅速に増幅することを可能にする。
【0015】
さらに、血液由来および腫瘍由来γδ T細胞を増幅するための現在までの努力と比較して、本発明者らは、それらのTCRまたはNKG2Dシグナル伝達経路を活性化するいかなる外因的物質の意図的添加も用いずに、そのような非造血組織常在性γδ T細胞を増幅することができることを示した。
【0016】
本明細書中には、皮膚および腸などの、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織から、γδ T細胞を効率的かつ再現可能に単離および増幅するための新規な手段が開示される。増幅は、非造血組織由来非Vδ2 T細胞と、自家線維芽細胞および潜在的には他の間質成分との接触を分断することにより促進され、かつインターロイキン-2(IL-2)および/またはインターロイキン-15(IL-15)中での培養により維持される。
【0017】
αβ T細胞またはVδ2発現T細胞またはNK細胞の増幅は、自家線維芽細胞とのそれらの接触を分断することにより誘導されないので、増幅は非常に選択的である(
図3A、3C、および3D)。線維芽細胞媒介型チェックポイント調節からの解放による非造血組織常在性γδ T細胞のこの増幅はまた、細胞のエフェクター能の「自発的」活性化もまた引き起こし(
図5Aおよび5B)、このことは、抗腫瘍活性の文脈では非常に望ましい。これらの発達は、非造血組織常在性γδ T細胞が、培養中で増幅されかつ患者への「特注品ではない」(off-the-shelf)細胞注入物としての考えられる使用のために活性化されることを可能にする。同時に、線維芽細胞(または他の間質細胞または上皮細胞)による組織常在性γδ T細胞のチェックポイント調節の阻害因子の抗体または他の形態の開発は、非造血組織常在性γδ T細胞が、チェックポイント遮断を介して、in situで(例えば、癌患者体内で)活性化されることを可能にするはずである。
【0018】
非造血組織(例えば、皮膚)からγδ T細胞を取得し、かつそれを生育させる能力は、血液由来Vδ1 T細胞とははっきりと異なることが明らかにされている。例えば、皮膚由来Vδ1 T細胞は、CD69発現、ICOSおよびTIM3陽性などの先行するT細胞活性化のマーカーを示し、古典的共刺激分子であるCD28の発現はほとんどまたはまったく示さない(
図10A)。さらに、それらは、NKG2Dの高発現を示す。対照的に、ヒト血液由来Vδ1 T細胞は、CD69またはTIM3を発現せず、わずかなレベルのICOSしか発現せず、またCD28の発現についてはある程度まで陽性である。さらに、血液由来Vδ1 T細胞によるNKG2D発現は、皮膚由来Vδ1 T細胞によるその発現と比較してはるかに低く、かつ、皮膚由来Vδ1 T細胞は、T細胞受容体の刺激の非存在下で組み換えMICAなどのNKG2Dリガンドに対して生来様の反応性を示すが、血液由来Vδ1 T細胞は反応性を示さない(
図10B)。本明細書中に記載される通り、非造血組織由来のγδ T細胞はまた、血液由来Vδ1 T細胞または他のリンパ球集団と比較して、CCR3、CD39、CD11b、IL-13および/またはCD9の発現上昇を示し得る。
【0019】
第1の態様では、本発明は、IL-2および/またはインターロイキン-15(IL-15)の存在下でヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、in vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を増幅するための方法を提供し、このとき、該リンパ球は、培養中に間質細胞または上皮細胞と直接的に接触しない。
【0020】
好ましくは、該リンパ球は、培養中に線維芽細胞と直接的に接触しない。
【0021】
γδ T細胞は、通常は、in vivoで非造血組織中に常在する。
【0022】
好ましくは、方法は、IL-2およびIL-15の存在下でヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む。
【0023】
一部の実施形態では、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球は、TCR活性化因子またはT細胞活性化を誘導する共刺激因子の非存在下で培養することができる。例えば、リンパ球は、TCR経路アゴニスト(例えば、抗CD3抗体などのCD3活性化因子)の非存在下で、CD28活性化因子の存在下または非存在下で培養することができる。
【0024】
そのようなTCRシグナル伝達の外因的活性化因子の添加は、本発明の方法を用いた非造血組織常在性γδ T細胞の増幅のためには必要でない。そうすると、本発明の方法での使用のための好適なγδ増幅培地は、T細胞活性化活性(例えば、αβ T細胞または血液γδ T細胞活性化活性)を欠いているものであり、かつTCRを活性化または共刺激しないものであり得る。
【0025】
例えば、γδ増幅培地は、外因的に添加されるTCR経路アゴニストをはじめとする、TCR活性化因子または共刺激因子などのT細胞シグナル伝達を活性化する物質もしくは因子を含まないかまたは実質的に含まないことができる。γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15を含有することができる。一部の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15に加えて、サイトカインなどの1種以上の追加の増殖因子を含有することができる。好適な増殖因子は、T細胞活性化活性を示さない。他の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いていることができ;例えば、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなることができる。
【0026】
一実施形態では、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球は、間質細胞または上皮細胞の非存在下で培養することができる。例えば、間質細胞または上皮細胞を、培養に先立って除去することができる。好ましくは、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球は、線維芽細胞の非存在下で培養することができる。例えば、線維芽細胞を、培養に先立って除去することができる。
【0027】
リンパ球は、皮膚、消化管(例えば、結腸または回腸)、乳腺組織、肺、肝臓、膵臓、脂肪組織または前立腺などの、いずれかの好適なヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得することができる。
【0028】
非造血組織常在性γδ T細胞は、好ましくは非Vδ2細胞であり、最も一般的には、Vδ1鎖を含有するTCRを発現し、すなわち、Vδ1細胞である。非造血組織常在性γδ T細胞としてはまた、Vδ1鎖もVδ2鎖も含有しないγδ TCRを発現するものと定義される、いわゆる二重陰性(DN)γδ T細胞も挙げることができる。
【0029】
方法は、任意により、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織からリンパ球を取得するステップを含む。例えば、リンパ球は、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織のサンプルから取得することができる。方法は、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織のサンプルを提供するステップ、および該サンプルの非造血細胞からリンパ球を分離して、間質細胞を実質的に含まないリンパ球集団を作製するステップを含むことができる。
【0030】
第2の態様では、本発明は、以下のステップ:(i) 非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団を提供するステップ;および(ii) 間質細胞接触を実質的に伴わずに該γδ T細胞を培養して、γδ T細胞の増幅された集団を作製するステップを含む、γδ T細胞を増幅するための方法を提供する。
【0031】
非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団は、γδ T細胞の実質的に純粋な集団であり得る。
【0032】
非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団は、好ましくは非Vδ2細胞であり、最も一般的には、Vδ1鎖を含有するTCRを発現し、すなわち、Vδ1細胞である。γδ T細胞の集団はまた、DN γδ T細胞も含むことができる。
【0033】
非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団は、CLA、IL13、CCL1、CD103およびCCR8などの、1種以上の追加の組織常在性γδ T細胞マーカーを発現することができる。一部の実施形態では、非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団は、Vδ1+ CCR8+ γδ T細胞を含むことができる。
【0034】
γδ T細胞は、γδ T細胞の増幅された集団を作製するために、間質細胞との接触の非存在下で培養することができる(すなわち、細胞培養物中ではγδ T細胞と間質細胞との接触がない)。
【0035】
γδ T細胞は、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で培養することができる。一部の実施形態では、培養ステップは、間質細胞馴化培地中で、またはIL-2、IL-15、もしくはそれらの組み合わせの存在下で行なうことができる。例えば、γδ T細胞は、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養することができる。好適なγδ増幅培地は、TCRを活性化または共刺激しないことができる。例えば、γδ増幅培地は、TCR経路アゴニストをはじめとする、TCR活性化因子または共刺激因子などのT細胞シグナル伝達を活性化する物質もしくは因子を含まないかまたは実質的に含まないことができる。γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15を含有することができる。一部の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15に加えて、サイトカインなどの1種以上の追加の増殖因子を含有することができる。好適な増殖因子は、T細胞活性化活性を示さない。他の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いていることができ;例えば、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなることができる。
【0036】
第3の態様では、本発明は、以下のステップ:(i) 非造血細胞およびγδ T細胞を含む非造血組織を提供するステップ;(ii) 非造血細胞からγδ T細胞を分離して、間質細胞を実質的に含有しない、γδ T細胞を含む集団を作製するステップ;および(iii) TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下でステップ(ii)の集団を培養して、γδ T細胞の増幅された集団を作製するステップを含む、γδ T細胞を増幅するための方法を提供する。
【0037】
γδ T細胞は、例えば、αβ T細胞から分離することができる。
【0038】
ステップ(ii)の集団は、γδ T細胞の実質的に純粋な集団であり得る。
【0039】
ステップ(ii)の集団中のγδ T細胞は、非Vδ2 γδ T細胞、最も一般的には、Vδ1鎖を含有するTCRを発現し、すなわち、Vδ1 γδ T細胞を含むことができる。ステップ(ii)の集団中のγδ T細胞はまた、DN γδ T細胞も含むことができる。
【0040】
ステップ(ii)の集団中のγδ T細胞はまた、CLA、CD103およびCCR8などの、1種以上の追加の組織常在性γδ T細胞マーカーを発現するγδ T細胞も含むことができる。一部の実施形態では、ステップ(ii)の集団中のγδ T細胞は、Vδ1+ CCR8+ γδ T細胞を含むことができる。
【0041】
ステップ(iii)の培養ステップは、ステップ(ii)の集団との間質細胞接触を実質的に伴わないことができ、かつ/またはTCR活性化シグナルもしくは共刺激シグナルの非存在下である。例えば、培養ステップは、γδ T細胞と間質細胞との接触を伴わずに行なうことができる。一部の実施形態では、ステップ(iii)の培養ステップは、間質細胞馴化培地中で、またはIL-2、IL-15、もしくはそれらの組み合わせの存在下である。
【0042】
一部の実施形態では、γδ T細胞は、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養することができる。好適なγδ増幅培地は、TCRを活性化または共刺激しないことができる。例えば、γδ増幅培地は、T細胞シグナル伝達を活性化する物質もしくは因子(例えば、TCR経路アゴニストなどの、TCR活性化因子または共刺激因子)を含まないかまたは実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15に加えて、サイトカインなどの1種以上の追加の増殖因子を含有することができる。好適な増殖因子は、T細胞活性化活性を示さない。他の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなることができる。
【0043】
第2または第3の態様に従うγδ T細胞の増幅された集団は、非造血組織から取得されるかまたは非造血細胞から分離されたγδ T細胞よりも、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍または少なくとも10000倍多くのγδ T細胞を含むことができる。増幅された集団は、培養の3日、5日、7日、10日、14日、21日、または28日以内に生成できる。
【0044】
増幅された集団中のγδ T細胞は、好ましくは、Vδ2- T細胞である。γδ T細胞の増幅された集団は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のVδ1+細胞を含むことができる。γδ T細胞の増幅された集団は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が、CCR4、CCR8およびCD103のうちの1種、2種または3種類すべてについて陽性であり得る。例えば、増幅された集団は、CD103について少なくとも10%陽性であり、CCR4について少なくとも30%陽性であり、かつCCR8について少なくとも60%陽性であり得る。
【0045】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1、第2または第3の態様の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞またはその集団を提供する。
【0046】
第5の態様では、本発明は、以下のステップ:
(i) 試験化合物の存在下および非存在下で間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させてin vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養するステップ、あるいは間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させてin vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養するステップであってγδ T細胞および/または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)中での試験遺伝子の発現が変化している上記ステップ;および
(ii) 試験化合物の存在下および非存在下での、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下での、非造血組織常在性γδ T細胞の増殖率または活性化率を決定するステップ、あるいは試験化合物の存在下および非存在下での、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下での、間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率を決定するステップ
を含む、非造血組織常在性γδ T細胞のチェックポイント調節因子のスクリーニング方法であって、このとき、
T細胞の増殖率もしくは活性化率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下でより高いか、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下でより高い場合、かつ/あるいは間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下でより高いか、または線維芽細胞および/もしくはγδ T細胞中での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下でより高い場合に、試験化合物がチェックポイント調節因子である可能性があるか、または試験遺伝子が候補チェックポイント遺伝子またはその調節因子である可能性がある、
上記方法を提供する。
【0047】
γδ T細胞および/または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)中での試験遺伝子の発現は、例えば、小分子干渉RNA(siRNA)もしくは小分子ヘアピンRNA(shRNA)などのRNA標的化物質により、または遺伝子編集(例えば、CRISPR/Casシステムを用いて)により、変化させることができる。
【0048】
第6の態様では、本発明は、養子T細胞療法により被験体を治療する方法であって、それを必要とする被験体に、本発明の第1、第2または第3の態様の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、上記方法を提供する。被験体は、好ましくはヒトである。
【0049】
被験体は、好ましくは、ヒト癌患者またはウイルス感染患者(例えば、CMV感染患者またはHIV感染患者)である。
【0050】
第7の態様では、本発明は、養子T細胞療法によるヒトまたは非ヒト動物の治療方法での使用のための、本発明の第1、第2または第3の態様の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を提供する。非造血組織常在性γδ T細胞は、以下の特性のうちの1種以上を有することができる:
(i) 表現型CD69high、ICOShigh、TIM3highおよびCD28low/absentを示すか、
(ii) CCR3、CD11b、CD9およびCD39のうちの1種以上をアップレギュレーションするか、
(iii) TCRアゴニストの非存在下でNKG2Dリガンドに対して応答してIFN-γを産生するか、
(iv) TCRアゴニストの非存在下でIL-13を産生するか、
(v) TCR活性化に対して応答してIFN-γ、TNF-αおよびGM-CSFのうちの1種以上を産生するか、
(vi) TCR活性化に対して応答してIL-17を全く産生しないかもしくは実質的に産生しないか、
(vii) 追加の増殖因子を含まずにIL-2を含有する培養培地中で生育するか、
(viii) TCRアゴニストの非存在下で細胞傷害性T細胞応答を示すか、かつ/または
(ix) 正常細胞と比較して腫瘍細胞に対して選択的な細胞傷害性を示す。
【0051】
好ましい実施形態では、ヒトは、ヒト癌患者またはウイルス感染患者(例えば、CMV感染患者またはHIV感染患者)であり、このとき、CMVまたはHIV感染はMICA関連感染である。
【0052】
第8の態様では、本発明は、それを必要とする被験体に、本発明の第1、第2または第3の態様の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、キメラ型抗原受容体療法により被験体を治療する方法を提供する。被験体は、好ましくはヒトである。
【0053】
好ましい実施形態では、被験体はヒト癌患者である。
【0054】
第9の態様では、本発明は、キメラ型抗原受容体療法によるヒトまたは非ヒト動物の治療方法での使用のための、本発明の第1、第2または第3の態様の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を提供する。
【0055】
好ましい実施形態では、ヒトはヒト癌患者である。
【0056】
上記の実施形態のそれぞれを、いずれかの他の実施形態のうちのいずれか1種以上と組み合わせることができる。
【0057】
本発明のこれらまたは他の態様を、下記でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1A】ヒト皮膚が常在性γδ T細胞の明らかな集団を含むことを示す図である。
図1A:皮膚常在性リンパ球を、Clarkら(29)により公開されている器官型細胞培養「Clarkプロトコール」を用いて単離した。CD45+細胞のうちで、抗CD3はT細胞を染色するために、抗CD56抗体はNK細胞(CD3- CD56+)を特定するために、それぞれ用いた。CD3+細胞のうちで、汎γδ T細胞受容体に対する抗体は皮膚常在性γδ T細胞を特定するために、抗CD8alphaはCD3+の汎γδ TCRゲート内の従来のCD4およびCD8陽性αβ T細胞の割合を特定するために用いた。
【
図1B】ヒト皮膚が常在性γδ T細胞の明らかな集団を含むことを示す図である。
図1Bは、Clarkプロトコールを用いた7~10名のドナーに関するこれらの実験の概要を示す。このプロトコールを用いると、ヒト皮膚内のリンパ球が皮膚線維芽細胞と接触したままとなり、サイトカインが全く添加されないか、またはインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-15(IL-15)もしくはIL-2およびIL-15が添加され、これにより、IL-15またはIL-2およびIL-15を培養物に添加した場合に若干大きなγδ T細胞集団であったこと以外は、サイトカインの使用が、皮膚常在性リンパ球の組成を変化させないことを示し、Clarkらによるプロトコールの有効性を実証した。3週間の器官型皮膚培養後のリンパ球組成は、4名のドナーに関する概要として、記載されたサイトカインを用いて示す。
【
図1C】ヒト皮膚が常在性γδ T細胞の明らかな集団を含むことを示す図である。
図1C:皮膚常在性γδ細胞は、主にVδ1発現γδ T細胞を含み(76.24%±17.3)、Vδ2発現T細胞の小さな集団(3.06%±6.1)ならびにVδ1およびVδ2に対しての染色が陰性である汎γδ TCR陽性細胞(本明細書中では二重陰性(DN)γδ T細胞とも称される)の集団(20.7%±13.97)を含む。健康なボランティアの血液の対照染色により、血液中ではγδ T細胞の優勢集団はVδ2 TCR鎖を発現したので、ヒトγδ T細胞の強い限局性が示される。
【
図1D】ヒト皮膚が常在性γδ T細胞の明らかな集団を含むことを示す図である。
図1D:皮膚常在性γδ T細胞は、慢性的に活性化されていたT細胞に以前に関連付けられたマーカーを示すが、これらのマーカーは慢性的活性化を必ずしも反映せず、組織常在性の特徴的な指標である。ヒストグラムは、γδ T細胞(塗りつぶしヒストグラム)および各抗体に対する適切なアイソタイプ対照(白色ヒストグラム)に対する記載されたマーカーの染色を示す。
【
図2A-1】Clark プロトコールを介してヒト皮膚から直接的に誘導された皮膚常在性γδ T細胞が、T細胞を活性化するための従来の手段による活性化に際していわゆるTH1偏向性応答を示すこと、および同様にNKG2Dリガンド単独による活性化に際してTH1偏向性応答を示すことを示す図である。
図2A:皮膚常在性γδ T細胞は、活性化(activatory)およびNK細胞関連受容体NKG2D(塗りつぶしヒストグラム;白色ヒストグラムにより表わされるアイソタイプと比較)の強い発現を示す。プレート結合型組み換えMICA(NKG2D受容体に対する公知のリガンドのうちの1種類)を用いた活性化時には、皮膚γδ T細胞は、応答がブロッキングNKG2D抗体の存在下では解消されるので、いずれの他の刺激も用いずに、かつTCRライゲーションとは独立に応答する。細胞は、ブレフェルジンAおよび100単位のIL-2/mLの存在下で6時間刺激し、続いて、CD107aに対する染色により脱顆粒について分析した。TNFαおよびINF-γの産生は、表面染色後の透過化およびそれに続く細胞内サイトカインの染色により分析した。ホルボール12-ミリステート13-アセテート(P)をイオノマイシン(I)と組み合わせて、T細胞の活性化についての陽性対照として用いた。
【
図2B】Clark プロトコールを介してヒト皮膚から直接的に誘導された皮膚常在性γδ T細胞が、T細胞を活性化するための従来の手段による活性化に際していわゆるTH1偏向性応答を示すこと、および同様にNKG2Dリガンド単独による活性化に際してTH1偏向性応答を示すことを示す図である。
図2B:皮膚常在性γδ T細胞は、TH1偏向性応答を示す。γδ T細胞は、Clarkプロトコールを用いて回収し、PMAおよびイオノマイシンを用いて6時間、ブレフェルジンAの存在下で刺激し、細胞内サイトカインに対して染色した。ヒト皮膚から新鮮に単離されたγδ T細胞は、刺激時にTNFαおよびIFN-γを産生するが、TH2またはTH-17細胞と関連付けられるサイトカイン(例えば、IL-4、IL-17A、IL-13、IL-22)は少量または検出不可能な量でしか産生せず、一方で、従来のCD4+ αβ T細胞は、はるかに多様なサイトカイン産生を示す。
【
図2C】Clark プロトコールを介してヒト皮膚から直接的に誘導された皮膚常在性γδ T細胞が、T細胞を活性化するための従来の手段による活性化に際していわゆるTH1偏向性応答を示すこと、および同様にNKG2Dリガンド単独による活性化に際してTH1偏向性応答を示すことを示す図である。
図2C:ヒト皮膚から直接的に誘導されたリンパ球のうち、様々なレベルのNKG2D受容体が、γδ T細胞、CD8a+の従来のαβ T細胞およびNK細胞により発現される。これらの細胞の中で、NK細胞はNKG2Dリガンド単独に対する曝露に応答するが、T細胞の中では、γδ T細胞集団だけが、いかなるTCR刺激も存在しない中でのNKG2Dリガンドを用いた刺激に際してサイトカイン応答を示す(フローサイトメトリードットプロットの上段を参照されたい)。応答は、可溶性のブロッキング抗NKG2D抗体を用いて遮断することができ、このことは、応答が排他的にNKG2D受容体を介していることを示す。
【
図2D】Clark プロトコールを介してヒト皮膚から直接的に誘導された皮膚常在性γδ T細胞が、T細胞を活性化するための従来の手段による活性化に際していわゆるTH1偏向性応答を示すこと、および同様にNKG2Dリガンド単独による活性化に際してTH1偏向性応答を示すことを示す図である。
図2D:皮膚常在性γδ T細胞のうち、Vδ1 γδ T細胞およびDN γδ T細胞のみが、組み換えMICA単独により活性化される生来様の能力を示す(
*により表わされる)。皮膚中に少数が見出されるVδ2発現T細胞は、そのような応答を示さない。
【
図3A-1】皮膚常在性γδ T細胞のみが、強い活性化および増殖を伴って、皮膚間質からの分離に対して応答することを示す図である。
図3A:皮膚常在性リンパ球は、Clarkプロトコールを用いて単離した。3週間の器官型培養後、皮膚リンパ球を回収し、線維芽細胞をはじめとするいかなる残余の皮膚細胞からも分離し、1百万個のリンパ球/mLの密度で組織培養ウェルに移し、100U/mLのIL-2を添加した。さらに3週間後、常在性γδ T細胞は著しく増幅しており、皮膚リンパ球培養物中で富化されていた。この著明な増殖現象は、皮膚常在性γδ T細胞に限定されており、このことは、大多数のVδ1+ T細胞が3週間のうちに平均して127.18倍に増殖し、一方で、従来のαβ T細胞は平均で5.21倍しか増殖しなかった(これは20倍を超えて低いことになる)ことにより表わされる。
【
図3B-1】皮膚常在性γδ T細胞のみが、強い活性化および増殖を伴って、皮膚間質からの分離に対して応答することを示す図である。
図3B:皮膚常在性Vδ1+ T細胞は、マーカーKi-67(細胞周期を示す)を14日間にわたって強くアップレギュレーションすることにより、組織の除去に応答する(アイソタイプ対照は破線で示される白色ヒストグラムにより表わされ;0日目でのKi-67発現は白色ヒストグラムにより表わされ;7日目のKi-67発現は明灰色ヒストグラムにより表わされ;14日目のKi-67発現は濃灰色ヒストグラムにより表わされる)。さらに、皮膚間質と接触している場合にはIL-2受容体アルファ(CD25)に対して大部分が陰性である皮膚常在性Vδ1 T細胞は、組織からの分離後にはCD25をアップレギュレーションする(アイソタイプ対照:破線ヒストグラム、0日目染色:明灰色ヒストグラム、7日目染色:濃灰色ヒストグラム)。
【
図3C】皮膚常在性γδ T細胞のみが、強い活性化および増殖を伴って、皮膚間質からの分離に対して応答することを示す図である。
図3C: Ki-67の蛍光強度中央値(MFI)により示される高速の細胞周期は、Vδ1+ T細胞により代表される皮膚常在性γδ T細胞でのみ見られ、従来のαβ T細胞でもNK細胞でも見られず、これらの細胞ではMFIは実際に14日間の間に減少する。
【
図3D-1】皮膚常在性γδ T細胞のみが、強い活性化および増殖を伴って、皮膚間質からの分離に対して応答することを示す図である。
図3D:間質細胞から分離された皮膚リンパ球は、3週間の培養後に著しく富化された常在性γδ T細胞集団を示す。このγδ T細胞集団は、大多数のVδ1陽性細胞(77.49%±17.04)および汎γδ TCR陽性DN T細胞(21.46%±16.92)を含有する。Clarkプロトコールを用いて新鮮に回収された皮膚リンパ球で見られる当初の小さなVδ2 T細胞集団は減少していき、組織γδ T細胞の3週間の増幅後にはほとんど失われる(0.6%±1.204)。
【
図4A-1】皮膚常在性γδ T細胞が、組織の除去に対して応答し、かつ皮膚間質細胞、特に線維芽細胞による接触依存的メカニズムを介して抑制されることを示す図である。
図4A:混合型皮膚リンパ球を、Clarkプロトコールの通りに器官型培養し、3週間後に回収した。次に、混合型リンパ球を自家皮膚線維芽細胞のコンフルエント層の上に、および線維芽細胞から産生される可溶性阻害因子の存在について制御するためにトランスウェル(transwell)中に、播種した。14日後、存在する細胞の絶対数を介して算出される増幅倍率を、γδ T細胞および従来のαβ T細胞について測定した。皮膚常在性γδ T細胞は、組織から分離され、かつ線維芽細胞が存在する場合には著しい増殖を示したが、自家線維芽細胞との直接的な細胞接触がない場合にのみ著しい増殖を示した。従来のαβ T細胞は、試験したいずれの条件でもそのような応答を示さなかった。
【
図4B】皮膚常在性γδ T細胞が、組織の除去に対して応答し、かつ皮膚間質細胞、特に線維芽細胞による接触依存的メカニズムを介して抑制されることを示す図である。
図4B:器官型培養から取得される混合型リンパ球を、自家線維芽細胞の単層上に播種するか(明灰色ヒストグラム)、または空のウェルに播種し(濃灰色ヒストグラム)、IL-2を添加して、7日間培養した。皮膚常在性Vδ1+ T細胞(左側パネル)ならびに汎γδ TCR+のDN T細胞(右側パネル)は、線維芽細胞の直接的存在下では静止状態にとどまったが、CD25、TH関連転写因子T-bet、および細胞周期マーカーKi-67のアップレギュレーションされた発現(MFI)により示される通り、皮膚器官型培養から分離され、かつ線維芽細胞が存在しない場合には、強い活性化を示した(破線の白色ヒストグラムは対応するアイソタイプ対照を表わす)。
【
図5A】増幅中の皮膚γδ T細胞が脱抑制および強力な細胞傷害能の獲得の兆候を提示することを示す図である。
図5A:皮膚常在性γδ T細胞を、器官型細胞培養からの分離後に14日間増幅させた。次に、γδ T細胞を、汎αβ TCRモノクローナル抗体を用いて染色されるすべての従来型T細胞を排除することにより、フローサイトメトリーで負にソーティングした。150,000個のソーティングされたγδ T細胞を、続いて、96ウェル平底培養プレートへと二重反復で播種し、サイトカイン添加およびいかなる活性化リガンドの添加も用いずに、24時間培養した。上清を回収し、Affymetrix LUMINEX(登録商標)に基づくサイトカインアレイを用いて、産生されたサイトカインについて分析した。
【
図5B】増幅中の皮膚γδ T細胞が脱抑制および強力な細胞傷害能の獲得の兆候を提示することを示す図である。
図5B:負にソーティングされたγδ T細胞を、10,000細胞/ウェルの濃度で1日前に播種された癌細胞株の上にも播種した。対照として、負にソーティングされた従来の皮膚αβ T細胞を用いた。T細胞を、100U/mLのIL-2の存在下で、ブロッキングNKG2D抗体の存在下および非存在下にて、記載されるエフェクター:ターゲット比で播種した。皮膚常在性γδ T細胞は、従来のαβ T細胞と比較して、カスパーゼ切断型上皮特異的サイトケラチン18(CK18)放出(ELISAを介して測定される)により示される通りに、悪性細胞株の優れた殺傷性を示した。細胞傷害性は、NKG2D受容体をブロックする抗体を含有する培養物でのその減少により示される通り、少なくとも部分的にはNKG2D受容体を介していた。
【
図6A】ヒト腸内の組織常在性γδ T細胞の分析を示す図である。
図6A:Clarkプロトコールを適応させることにより、腸常在性リンパ球の単離が可能になった。混合型腸リンパ球は、通常は主にVδ1細胞を含むが、Vδ2細胞および二重陰性γδ T細胞もまた含有する組織常在性γδ T細胞の大きな集団を含む。
【
図6B】ヒト腸内の組織常在性γδ T細胞の分析を示す図である。
図6B:腸器官型培養から単離されたγδ T細胞は、それらが腸間質から分離されれば時間と共にKi-67をアップレギュレーションするので、皮膚由来γδ T細胞と類似の応答を示す。
【
図6C】ヒト腸内の組織常在性γδ T細胞の分析を示す図である。
図6C:腸由来γδ T細胞は、CD107aアップレギュレーションにより測定される場合に、IFN-γを産生することにより、および脱顆粒により、組み換えMICAなどの生来様刺激に対して応答する。
【
図6D】ヒト腸内の組織常在性γδ T細胞の分析を示す図である。
図6D:腸器官型培養から単離されたγδ T細胞は、皮膚由来γδ T細胞と類似の応答を示し、かつ、腸間質との接触を有しないリンパ球培養での全体的な富化により分かる通り、細胞培養物中で時間と共に増幅する。
【
図7A】増幅された皮膚由来γδ T細胞の組織表現型を示す図である。
図7A:皮膚由来γδ T細胞は、皮膚リンパ球抗原(CLA)、皮膚ホーミングケモカイン受容体(skin homing chemokine receptor)CCR4およびCCR8について陽性に染色される。
【
図7B】増幅された皮膚由来γδ T細胞の組織表現型を示す図である。
図7B:皮膚または血液からそれぞれ誘導された、増幅されたγδ T細胞についての発現レベルは異なる。
【
図8】TCRのいかなる刺激も用いない皮膚由来γδ T細胞の脱抑制は、自発的TH-1サイトカイン産生、ならびに、興味深いことに、新鮮なTCR活性化γδ T細胞とは対照的に、アトピー性サイトカインIL-13の産生をもたらすことを示す図である。新鮮に誘導されたγδ T細胞と合致して、脱抑制されかつ増幅中のγδ T細胞は、無視できる程度の量のTH-2関連サイトカイン(例えば、IL-4およびIL-5)を産生する。皮膚由来γδ T細胞を、14日間増幅させ、従来のαβ T細胞を排除することにより負にソーティングした。150,000個の混合型γδ T細胞を、いかなる刺激またはサイトカイン添加も伴わずに、4名のドナーについて、1百万個の細胞/mLの密度で96ウェル平底プレート中にて二重反復で培養した。上清を24時間後に回収し、Affymetrix社製のLUMINEX(登録商標)に基づくサイトカインアレイを用いて分析した。
【
図9A】増幅されかつ負にソーティングされた皮膚由来γδ T細胞は、ELISAを用いて標的細胞からのカスパーゼ切断型サイトケラチン18の放出により測定される場合に、それらと共培養されている種々のヒト腫瘍細胞株(
図9A:HCT1954、
図9B:HCT116、
図9C:MD231)に対して強い細胞傷害性を提示することを示す図である。
【
図9B】増幅されかつ負にソーティングされた皮膚由来γδ T細胞は、ELISAを用いて標的細胞からのカスパーゼ切断型サイトケラチン18の放出により測定される場合に、それらと共培養されている種々のヒト腫瘍細胞株(
図9A:HCT1954、
図9B:HCT116、
図9C:MD231)に対して強い細胞傷害性を提示することを示す図である。
【
図9C】増幅されかつ負にソーティングされた皮膚由来γδ T細胞は、ELISAを用いて標的細胞からのカスパーゼ切断型サイトケラチン18の放出により測定される場合に、それらと共培養されている種々のヒト腫瘍細胞株(
図9A:HCT1954、
図9B:HCT116、
図9C:MD231)に対して強い細胞傷害性を提示することを示す図である。
【
図10A】新鮮な増幅されていない皮膚由来Vδ1 T細胞は、以前のT細胞活性化のマーカーを示すことを表わす図である。
図10A:皮膚由来Vδ1 T細胞は、CD69、ICOSおよびTIM3を高発現し、かつCD28を低発現する。さらに、それらは、活性化マーカーNKG2Dの高発現を示す。この表現型は、in vitroでの増幅中に皮膚由来Vδ1 T細胞により維持される。対照的に、ヒト血液から誘導されたVδ1 T細胞は、これらの活性化の兆候を有さず、CD69またはTIM3を発現せず、かつわずかなレベルのICOSしか発現しない。皮膚由来Vδ1 T細胞と比較して、血液由来Vδ1 T細胞でのNKG2D発現ははるかに低く、一方で血液由来Vδ1 T細胞は共刺激性分子CD28を発現する。
【
図10B】新鮮な増幅されていない皮膚由来Vδ1 T細胞は、以前のT細胞活性化のマーカーを示すことを表わす図である。
図10B:皮膚由来Vδ1 T細胞のみが、T細胞受容体に対するリガンドなどのいかなる他の刺激も存在しない中で、組み換えMICAなどの NKG2Dリガンドに対して反応性である。血液由来Vδ1またはVδ2 T細胞は、生来様刺激に対するそのような応答性は示さない。細胞を、記載される通りに、組み換えMICAもしくは抗CD3抗体またはその両方と共に、96ウェルプレート中に播種した。細胞を、6時間にわたって、最後の4時間はIL-2 100U/mLおよびBFA中で培養し、その後に、表面抗原染色、透過化およびIFN-γに対する細胞内染色を行なった。
【
図11】皮膚由来Vδ1 T細胞が、わずかなレベルのCD16を発現するが、高親和性IgG受容体CD64の相当な発現を示すことを表わす図である。したがって、直接的な細胞傷害活性に加えて、組織由来Vδ1 T細胞は、それらが悪性腫瘍および転移の側へと抗体により導かれ、オプソニン化された腫瘍細胞を認識し、かつ抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介してそれらを細胞死させるであろうから、CD20療法またはHer2療法などのモノクローナル抗体療法の有効性を増大させるために用いることもできるであろう。示される結果は、1名の代表的ドナー(4名中)からのものである。
【
図12】IL-2(左側パネル)、IL-15(中央パネル)およびIL-2+IL-5(右側パネル)中でのVδ1 T細胞の増幅を示す図である。新鮮に単離された皮膚由来リンパ球を、10%FCSおよび1%Pen/Strepを含有するRPMI培地中、96ウェル平底プレートで培養し、IL-2、IL-15またはIL-2+IL-15のいずれかをそれぞれ7日間添加した。IL-2およびIL-15の両方ならびに2種類のサイトカインの組み合わせが、間質細胞の非存在下でのアイソタイプ(真の陰性)染色と比較したKi-67染色でのシフトにより示される通り、Vδ1 T細胞の増殖を誘導した。Ki-67は、細胞周期のG0期にとどまっている細胞のみを染色し、一般的に増殖と関連付けられている。
【
図13】21日目の増幅されたVδ1 γδ T細胞の表面での、CD9、CCR3およびCD39の発現を示すフローサイトメトリー結果である。増幅された皮膚由来Vδ1 T細胞は、(濃色ヒストグラム)により、対応するアイソタイプ染色(真の陰性、白色ヒストグラム)と比較して示される通り、高レベルの細胞表面マーカーCCR3、CD39およびCD9を維持した。
【
図14】皮膚由来Vδ1 T細胞(濃色バー)および血液由来Vδ1 T細胞(明色バー)でのCCR3およびCD9のmRNA発現を示す図である。皮膚由来Vδ1 T細胞は、本明細書中に開示される通りに増幅させ、血液由来Vδ1 T細胞は、プレートに結合したVδ T細胞受容体に対する抗体(20μg/mL)を用いて増幅させた。増幅後、Vδ1 T細胞を、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いて単離し、RNAを、両方の群(血液=灰色、皮膚=黒色)について3名のドナーから単離した。全mRNAを配列決定し、記載されたmRNAの発現レベルを正規化およびlog 2変換した。すべての発現レベルを、直接比較、およびGAPDH(ほとんどのヒト細胞中で高レベルに発現される一般的なハウスキーピング遺伝子)に対する比率として示す。
【
図15】皮膚由来Vδ1 T細胞(濃色バー)および血液由来Vδ1 T細胞(明色バー)でのIL-13のmRNA発現を示す図である。皮膚由来Vδ1 T細胞は、本明細書中に開示される通りに増幅させ、血液由来Vδ1 T細胞は、プレートに結合した高用量のVδ T細胞受容体に対する抗体(20μg/mL)を用いて増幅させた。増幅後、Vδ1 T細胞を、FACSを用いて単離し、RNAを、両方の群(血液=灰色、皮膚=黒色)について3名のドナーから単離した。全mRNAを配列決定し、IL-13に対するmRNAの発現レベルを正規化およびlog 2変換した。発現レベルを、直接比較、およびGAPDHに対する比率として示す。
【
図16A】PMA/イオノマイシン(
図16A)または抗CD3(
図16B)を用いたTCR刺激後の皮膚由来Vδ1 T細胞でのサイトカイン産生を示す図である。単離および増幅に続いて、皮膚由来Vδ1 T細胞を、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いて精製した。150,000個のVδ1 T細胞を、3名のドナーに関して二重反復で96ウェル平底プレート中へと播種し、プレートに結合させたCD3(5μg/mL)またはPMA/イオノマイシンのいずれかを用いて24時間刺激した。LUMINEX(登録商標)プラットフォームを用いて、記載されたサイトカインの絶対量に関して、上清を分析した。
【
図16B】PMA/イオノマイシン(
図16A)または抗CD3(
図16B)を用いたTCR刺激後の皮膚由来Vδ1 T細胞でのサイトカイン産生を示す図である。単離および増幅に続いて、皮膚由来Vδ1 T細胞を、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いて精製した。150,000個のVδ1 T細胞を、3名のドナーに関して二重反復で96ウェル平底プレート中へと播種し、プレートに結合させたCD3(5μg/mL)またはPMA/イオノマイシンのいずれかを用いて24時間刺激した。LUMINEX(登録商標)プラットフォームを用いて、記載されたサイトカインの絶対量に関して、上清を分析した。
【発明を実施するための形態】
【0059】
ガンマデルタT細胞(γδ T細胞)とは、特有の特徴的なT細胞受容体(TCR)をその表面上に発現するT細胞の小さなサブセットを表わす。このTCRは、1個のガンマ(γ)鎖および1個のデルタ(δ)鎖からつくられる。
【0060】
ヒトγδ T細胞には2種類の主要なサブタイプがある:1つは末梢血中で優勢であり、1つは非造血組織中で優勢である。
【0061】
2番目のヒトγδ T細胞サブタイプの非造血組織局在化は、採取を困難にし、該細胞を培養するための確立された手段はなかった。この必要性に応えるために、本発明は、非造血組織常在性γδ T細胞(あるいは、本明細書中では、非造血組織固有γδ T細胞と称される)の増幅方法に関する。これらのγδ T細胞は、通常は、非造血組織中に常在している。本明細書中に記載される通りの使用のための非造血組織常在性γδ T細胞は、非造血組織から生じるか、または非造血組織から取得することができる。非造血組織は、非造血細胞およびγδ T細胞を含有し得る。
【0062】
本明細書中に記載される方法は、皮膚、消化管(例えば、結腸)、乳腺組織、肺、前立腺、肝臓、脾臓および膵臓をはじめとする、患者から取り出すことができるいずれかのヒトまたは非ヒト動物非造血組織由来のγδ T細胞を増幅する手段を提供する。γδ T細胞はまた、ヒト癌組織、例えば、乳房および前立腺の腫瘍中にも常在し得る。一部の実施形態では、γδ T細胞は、ヒト癌組織由来であり得る。他の実施形態では、γδ T細胞は、ヒト癌組織以外の非造血組織由来であり得る。
【0063】
血液中で優勢なγδ T細胞は主にVδ2 T細胞であり、その一方で、非造血組織中で優勢なγδ T細胞は主にVδ1 T細胞であり、それにより、Vδ1 T細胞が非造血組織常在性γδ T細胞集団のうちの約70~80%を構成する。しかしながら、幾分かのVδ2 T細胞もまた、非造血組織中に(例えば、腸で)見出され、それらはγδ T細胞のうちの約10~20%を構成し得る(
図6)。非造血組織中に常在する一部のγδ T細胞は、Vδ1 TCRもVδ2 TCRも発現せず、本発明者らは、それらを二重陰性(DN)γδ T細胞と命名した。これらのDN γδ T細胞は、大部分がVδ3発現T細胞であり、少数がVδ5発現T細胞であるようである。
【0064】
したがって、通常は非造血組織中に常在し、かつ本発明の方法により増幅されるγδ T細胞は、好ましくは、比較的少量のDN γδ T細胞を含めた、非Vδ2 T細胞、例えば、Vδ1 T細胞である。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「二重陰性」γδ T細胞(DN γδ T細胞)とは、γδ受容体を発現する(すなわち、汎TCRに関して陽性に染色される)が、Vδ1受容体およびVδ2受容体に関して陰性であるγδ T細胞を意味する。DN γδ T細胞としては、Vδ1およびVδ2以外のVδ受容体(例えば、Vδ3、Vδ4、Vδ5、またはVδ8)を発現するものが挙げられる。細胞は、標準的なFACSゲート法により決定される場合に陰性対照細胞よりもマーカーの発現が高ければ、マーカーに関して陽性である(例えば、Vδ1+)として特性決定されることができる。
【0066】
本明細書中に記載される方法は、in vitroでヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含むことができる。
【0067】
リンパ球は、いずれかの好適なヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得することができる。非造血組織は、血液、骨髄または胸腺組織以外の組織である。一部の実施形態では、γδ T細胞は、血液または滑液などの体液の特定のタイプのサンプルからは取得されない。そのような好適なヒトまたは非ヒト動物非造血組織の例としては、皮膚もしくはその一部分(例えば、真皮、表皮)、消化管(例えば、消化管上皮、結腸、小腸、胃、虫垂、盲腸、または直腸)、乳腺組織、肺(好ましくは、この場合、組織は気管支肺胞洗浄により取得されない)、前立腺、肝臓、脾臓および膵臓が挙げられる。γδ T細胞はまた、ヒト癌組織(例えば、乳癌および前立腺癌)中に常在する場合もある。一部の実施形態では、γδ T細胞はヒト癌組織から取得されない。非造血組織サンプルは、標準的な技術により、例えば、外植片(explant)(例えば、生検)により、取得することができる。
【0068】
リンパ球は、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織からのリンパ球の単離を可能にするいずれかの好適な方法により取得することができる。1つのそのような方法は、Clarkらの文献(29)中に説明されており、該文献は、ヒト皮膚からリンパ球を単離するための三次元皮膚外植片プロトコールを記載している。外植片は、スキャホールド上への外植片からのリンパ球の放出を容易にするために、合成スキャホールドに接着させることができる。合成スキャホールドとは、細胞生育を補助するために好適な非生来型の三次元構造を意味する。合成スキャホールドは、ポリマー(例えば、天然または合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、メチルセルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン)、セラミック(例えば、リン酸三カルシウム、アルミン酸カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト)、または金属(タンタル、チタン、白金および白金と同じ元素族中の金属、ニオブ、ハフニウム、タングステン、およびそれらの合金の組み合わせ)などの材料から構築することができる。細胞接着、移動、生存、または増殖を強化するために、当技術分野で公知の方法に従って、生物学的因子(例えば、コラーゲン(例えば、I型コラーゲンまたはII型コラーゲン)、フィブロネクチン、ラミニン、インテグリン、血管新生因子、抗炎症因子、グリコサミノグリカン、ビトロゲン(vitrogen)、抗体およびその断片、サイトカイン(例えば、インターロイキン-2(IL-2)またはインターロイキン-15(IL-15))、およびそれらの組み合わせ)を、スキャホールド表面にコーティングするか、またはスキャホールド材料中にカプセル封入することができる。この方法および他の方法を、複数の他の非造血組織タイプ(例えば、腸、前立腺および乳房)からリンパ球を単離するための用いることができる。好適な方法の他の例としては、組織の酵素的消化およびCarrascoら(30)により記載されている「クロールアウト」(crawl out)法(組織を細かく刻み、リンパ球が「這い出る」(crawl out)ようにIL-2を添加する)が挙げられる。
【0069】
上記で言及した通り、皮膚、消化管(例えば、結腸)、乳腺組織、肺、前立腺、肝臓、脾臓および膵臓などの、いずれかの好適な非造血組織を用いることができる。
【0070】
非造血組織常在性γδ T細胞は、好ましくは、ヒト組織から取得される。しかしながら、それらを、マウス、ラット、イヌ、ウマおよびブタなどのいずれかの好適な非ヒト動物由来の非造血組織から取得してもよい。
【0071】
重要なステップは、非造血組織常在性T細胞(例えば、αβ T細胞、γδ2 T細胞および非γδ2 T細胞を例えば含むことができる、混合型リンパ球集団内の)を、T細胞が取得された組織の非造血細胞(例えば、間質細胞、特に線維芽細胞)から意図的に分離するステップ(例えば、数日間または数週間の培養後)、および下記で説明される通りのサイトカイン中でのリンパ球としての細胞のその後の培養ステップである。これは、組織由来γδ1 T細胞およびDN γδ T細胞の、引き続く数日間および数週間にわたる選択的かつ著しい増幅を可能にする。
【0072】
本明細書中で用いる場合、「分離」、「分離された」または「分離する」こととは、異なる細胞集団の間の物理的接触を破壊または妨害する動作を意味する。分離は、例えば、膜同士の結合を妨害するために細胞の混合集団を強くピペッティングすることにより、またはCarrascoら(30)により記載される通り、例えば、ケモカインまたはサイトカインと共に培養することにより、例えば、組織マトリックスから細胞の集団の「クロールアウト」を誘導することにより、行なうことができる。分離は、トランスウェル(transwell)培養システムを用いて、または異なる細胞集団同士の物理的接触を妨げる同様の培養法により、培養の間、維持することができる。
【0073】
本明細書中で用いる場合、「実質的に純粋な」とは、個数、質量、または体積により90%超の純度を意味する。「実質的に含まない」とは、個数、質量、または体積により5%未満の所定の構成要素を有することを意味する。ヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球は、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間、培養することができる。
【0074】
方法は、IL-2の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む。IL-2の濃度は、好ましくは、少なくとも10国際単位/mL(IU/mL、またはU/mL)、少なくとも20U/mL、少なくとも30U/mL、少なくとも40U/mL、少なくとも50U/mL、少なくとも60U/mL、少なくとも70U/mL、少なくとも80U/mL、少なくとも90U/mLまたは少なくとも100U/mLである。
【0075】
皮膚由来γδ T細胞の増幅を促進するためのIL-2の使用は、該細胞が、CD25として知られる高親和性IL-2受容体を非常に低レベルで発現するので、自明ではない(
図1D)。しかしながら、この受容体は、間質細胞または上皮細胞(例えば、線維芽細胞)などの他の細胞タイプから解離させることにより別個のサブセットのγδ T細胞上でアップレギュレーションされ(
図3Bおよび
図4Bを参照されたい)、これにより、細胞がIL-2に対して高度に感受性になる。
【0076】
本明細書中で用いる場合、「IL-2」とは、野生型IL-2(例えば、生来型または組み換え)または1種以上のIL-2受容体(IL-2R)サブユニットに対するアゴニストとして作用する物質(例えば、IL-2変異タンパク質(mutein)、長期作用型IL-2アナログ、それらのサブユニット、それらの受容体複合体)を意味する。そのような物質は、IL-2依存性細胞株であるCTLL-2(33;American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))TIB 214)の増殖を補助することができる。成熟型ヒトIL-2は、Fujitaらの文献(34)に記載される通り、133アミノ酸の配列として存在する(追加の20個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを欠損)。IL-2変異タンパク質は、米国特許出願公開第2014/0046026号に記載されているものなどの、インターロイキン-2タンパク質に対する特定の置換が行われているが、IL-2Rβに対する結合能を保持しているポリペプチドである。IL-2変異タンパク質は、生来型IL-2ポリペプチド鎖中の1箇所以上または他の残基でのアミノ酸挿入、欠失、置換および修飾により特徴付けることができる。本開示に従えば、いずれかのそのような挿入、欠失、置換および修飾が、IL-2Rβ結合活性を保持するIL-2変異タンパク質を生じる。例示的な変異タンパク質は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のアミノ酸の置換を含むことができる。
【0077】
ヒトIL-2をコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの慣用の手順により取得することができる。ヒトIL-2のアミノ酸配列(Gene ID 3558)は、登録ロケーターNP_000577.2 GI: 28178861の下にGenbank中で見出される。ネズミ科(マウス(Mus musculus))IL-2アミノ酸配列(Gene ID 16183)は、登録ロケーターNP_032392.1 GI: 7110653の下にGenbank中で見出される。
【0078】
IL-2と組み合わせたIL-15の添加が、IL-2単独と比較して増殖性非造血組織常在性γδ T細胞の増幅の強化をもたらすので、リンパ球は、好ましくは、IL-2およびIL-15の存在下で培養される。IL-15の濃度は、好ましくは少なくとも10ng/mLである。
【0079】
IL-15は、IL-2と同様に、IL-2依存性細胞株であるCTLL-2の増殖を補助することができる公知のT細胞増殖因子である。IL-15は、114アミノ酸の成熟型タンパク質として、Grabsteinら(35)により最初に報告された。「IL-15」との用語は、本明細書中で用いる場合、生来型もしくは組み換えIL-15およびその変異タンパク質、アナログ、サブユニット、またはそれらの複合体(例えば、受容体複合体、例えば、国際公開第2007/046006号に記載されている通りのsushiペプチド)を意味し、それらのそれぞれが、CTLL-2細胞の増殖を刺激するであろう。CTLL-2増殖アッセイでは、組み換え的に発現される前駆体およびIL-15の成熟型のインフレーム融合体を用いてトランスフェクションされている細胞の上清が、CTLL-2細胞増殖を誘導することができる。
【0080】
用語IL-15は、本明細書中で用いる場合、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマおよびネズミをはじめとする、様々な哺乳動物種に由来するIL-15もまた意味する。IL-15「変異タンパク質」(mutein)または「変異体」(variant)は、本明細書中で参照される場合、生来型の哺乳動物IL-15の配列に対して実質的に相同なポリペプチドであるが、アミノ酸欠失、挿入または置換によって生来型の哺乳動物IL-15ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変異体は、保存的に置換された配列を含むことができ、このことは、所定のアミノ酸残基が、類似の物理化学的特性を有する残基により置き換えられていることを意味する。保存的置換の例としては、脂肪族残基から別の残基への置換(Ile、Val、Leu、またはAlaを互いに置換することなど)、または極性残基から別の残基への置換(LysおよびArg;GluおよびAsp;またはGlnおよびAsnの間など)が挙げられる。他のそのような保存的置換、例えば、類似の疎水性特性を有する領域全体の置換が周知である。天然に存在するIL-15変異体もまた、本発明により包含される。そのような変異体の例は、IL-15結合特性は保持されている、オルタナティブmRNAスプライシングイベントまたはIL-15タンパク質のタンパク質分解性切断から生じるタンパク質である。mRNAのオルタナティブスプライシングは、切断型であるが生物学的に活性なIL-15タンパク質を生じ得る。タンパク質分解に寄与する変異としては、例えば、IL-15タンパク質からの1個以上の末端アミノ酸(一般的には1~10アミノ酸)のタンパク質分解性除去に起因する、異なるタイプの宿主細胞での発現時のN末端またはC末端での差異が挙げられる。
【0081】
ヒトIL-15は、Grabsteinら(35)により記載される手順に従って、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの慣用の手順により取得することができる。ヒトIL-15 cDNAの寄託は、1993年2月19日にATCC(登録商標)に行なわれ、登録番号69245を割り当てられた。
【0082】
ヒトIL-15のアミノ酸配列(Gene ID 3600)は、登録ロケーターNP000576.1 GI: 10835153(アイソフォーム1)およびNP_751915.1 GI: 26787986(アイソフォーム2)の下にGenbank中に見出される。ネズミ科(マウス(Mus musculus))IL-15アミノ酸配列(Gene ID 16168)は、登録ロケーターNP_001241676.1 GI: 363000984の下にGenbank中に見出される。
【0083】
リンパ球は、IL-6、IL-23およびIL-1Bの非存在下で、または低濃度のこれらのサイトカインの存在下(例えば、20ng/mL未満)で培養することができ、これは、サイトカインのこの組み合わせの添加が、非造血組織常在性γδ T細胞の増殖を減少させるように見えるからである。このことは、これらのサイトカインが増殖を促進することが予期されてきたであろうから、驚くべきことである。
【0084】
非造血組織から取得されるリンパ球は、T細胞シグナル伝達を活性化する物質(例えば、T細胞受容体(TCR)経路アゴニスト)の非存在下で培養することができる。例えば、非造血組織から取得されるリンパ球は、αβ T細胞および血液常在性γδ T細胞の増殖もしくは活性化を補助または誘導しない培地中で培養することができる。好適な培地は、TCRアゴニストまたはT細胞シグナル伝達を活性化する他の物質を含まないかまたは実質的に含まないことができる。対照的に、造血組織由来のγδ T細胞の培養は、ゾレドロネート(41、42)などのT細胞シグナル伝達を活性化する物質、またはOKT3などの抗CD3抗体(43)の存在を必要とする。
【0085】
T細胞シグナル伝達を活性化する物質とは、TCRシグナル伝達または共刺激を通じて、αβ T細胞および/または血液常在性γδ T細胞などのT細胞の増殖または活性化を誘導する化合物を意味する。T細胞シグナル伝達調節因子は、Src関連タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)、LcKおよびFyn、ならびに70kDAのゼータ鎖(TCR)関連タンパク質キナーゼ(ZAP70)の連続的な活性化により機能する。これらのPTKは、T細胞に対するリンカー活性化因子(LAT)をはじめとするポリペプチドのリン酸化を生じさせ、これが、細胞外シグナル調節型キナーゼ(ERK)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、および活性化型T細胞の核因子(NFAT)を通じた下流刺激をもたらす。例えば、CD28およびCD45を通じた共刺激は、リン酸化を増進させ、TCRシグナル伝達経路を強化することができる。つまり、TCRまたは共刺激経路の一部分を標的とするいずれの物質でも、T細胞シグナル伝達を活性化することができる。T細胞シグナル伝達を活性化する物質は、可溶性または膜結合型であり得、例えば、人工的抗原提示細胞(aAPC)などの、細胞上に提示されることができる。T細胞シグナル伝達を活性化するための好適なaAPCは、当技術分野で公知である(44)。
【0086】
一部の実施形態では、リンパ球は、CD3および/もしくはCD28活性化因子(例えば、抗CD3および/または抗CD28モノクローナル抗体);フィトヘマグルチニン(PHA);コンカナバリンA、合成ホスホ抗原(BrHPP(ブロモヒドリンピロリン酸)、2M3B1PP(2-メチル-3-ブテニル-1-ピロリン酸)、HMBPP((E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-2-エニルピロリン酸)、またはIPP(イソペンテニルピロリン酸)など);N-ビスホスホネート(ゾレドロネートなど);組み換えCD70;抗CD2モノクローナル抗体;抗CD27モノクローナル抗体;抗汎TCRγδ抗体:抗CD277モノクローナル抗体;または人工的抗原提示細胞(aAPC)などの、外因的に添加されたT細胞受容体経路アゴニストの非存在下で培養することができる。T細胞シグナル伝達を活性化する物質としては、抗原提示細胞(APC)または人工的APCと結合したMHC複合体またはHLA複合体などの、細胞表面結合型分子も挙げられる。TCR経路アゴニストを外因的に添加することによりT細胞を活性化する好適な方法は、当技術分野で周知であり、かつDenigerらの文献(44)のFigure 1に概要が示されている。
【0087】
例えば、リンパ球は、外因的に添加されたT細胞受容体経路アゴニストを含まないかまたは実質的に含まない培地中で培養することができる。そのようなT細胞受容体シグナル伝達活性化物質の添加は、本発明の方法を用いる非造血組織常在性γδ T細胞の増幅には必要でない。対照的に、造血組織由来γδ T細胞の増幅は、IL-2およびT細胞受容体シグナル伝達活性化物質(ゾレドロネートなど)の両方の存在を必要とする(41、42)。
【0088】
一部の実施形態では、リンパ球は、γδ T細胞生育に対して栄養供給するために、間質細胞培養物由来の馴化された培地中で培養することができる。
【0089】
一部の実施形態では、γδ T細胞は、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養することができる。好適なγδ増幅培地は、T細胞活性化活性(例えば、αβ T細胞または血液γδ T細胞活性化活性)を欠いており、例えば、TCRアゴニストまたは共刺激物質を含まないかまたは実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15に加えて、サイトカインなどの1種以上の追加の増殖因子を含有することができる。好ましい増殖因子は、T細胞活性化活性を示さない。他の実施形態では、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いていることができ;例えば、γδ増幅培地は、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなることができる。
【0090】
γδ T細胞の増幅での使用のために好適な多数の基礎培養培地、特にAIM-V、イスコフ培地(Iscoves medium)およびRPMI-1640(Life Technologies社)などの完全培地が入手可能である。培地には、血清、血清タンパク質および抗生物質などの選択性薬剤などの他の培地要素を添加することができる。例えば、一部の実施形態では、2mMグルタミン、10%FBS、10mM HEPES(pH7.2)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Life Technologies社)、非必須アミノ酸(例えば、100μM Gly、Ala、Asn、Asp、Glu、ProおよびSer;1×MEM非必須アミノ酸;Life Technologies社)、および10μL/L β-メルカプトエタノールを含有するRPMI-1640培地。基礎培地には、慣用の実験技術により当業者が容易に決定できる標準的濃度で、IL-2および/またはIL-15を添加することができる。
【0091】
簡便には、細胞は、好適な培養培地中、5%CO2を含有する加湿雰囲気中で、37℃にて培養される。
【0092】
γδ T細胞は、撹拌槽型培養器(fermenter)、エアリフト培養器、ローラーボトル、培養バッグまたは培養ディッシュ、および他のバイオリアクター、特に中空繊維バイオリアクターをはじめとする、いずれかの好適なシステム中で、本明細書中に記載される通りに培養することができる。そのようなシステムの使用は、当技術分野では周知である。
【0093】
リンパ球の培養のための方法および技術は、当技術分野で周知である(36~39)。
【0094】
培養中、リンパ球は、間質細胞または上皮細胞と直接的に接触しない。これは、リンパ球と間質細胞または上皮細胞との直接的接触が、組織常在性γδ T細胞の増幅を阻害するように見えるからである。
【0095】
間質細胞は、いずれかの器官の非造血性結合組織細胞であり、該器官の実質細胞の機能を補助する。間質細胞の例としては、線維芽細胞、周皮細胞、間葉細胞、ケラチン生成細胞、内皮細胞および非造血系腫瘍細胞が挙げられる。好ましくは、リンパ球は、培養中に線維芽細胞と直接的に接触しない。
【0096】
上皮細胞は、身体中の血管および器官の内腔および表面を覆う非造血細胞である。それらは正常には、扁平状、円柱状または立方体状の形状であり、細胞の単層として、または2個以上の細胞の層として配列することができる。
【0097】
線維芽細胞および/または他の間質細胞もしくは上皮細胞は、これらの細胞により分泌される因子が非造血組織常在性γδ T細胞の増幅を促進し得るので、好ましくは、リンパ球の培養中に存在するが、直接的接触は非造血組織常在性γδ T細胞の増幅を阻害するので、リンパ球と直接的に接触しない。例えば、リンパ球は、リンパ球と線維芽細胞との物理的分離を可能にする、トランスウェル中で培養することができる。用いることができる線維芽細胞株の例としては、ヒト包皮線維芽細胞(例えば、BJ(ATCC(登録商標) CRL-2522TM))、正常皮膚線維芽細胞(例えば、CCD-1059Sk(ATCC(登録商標) CRL-2072TM))および肺線維芽細胞(例えば、HEL 299(ATCC(登録商標) CRL-137TM))が挙げられる。
【0098】
Clarkプロトコールを用いると、非造血組織常在性リンパ球を、例えば、しっかりとピペッティングすることにより、皮膚線維芽細胞などの間質細胞から回収および分離することができる。リンパ球回収物は、プロセス中に結合が緩やかになっている可能性がある線維芽細胞凝集体を保持するために、40μmナイロンメッシュを通してさらに洗浄することができる。例えば、CD45抗体を用いる、蛍光または磁性結合細胞ソーティングを用いてリンパ球を単離することもできる。T細胞の活性化を最小限にするために、その前方および側方散乱特性を基準にして、リンパ球だけをソーティングすることもできる。次に、間質細胞(例えば、線維芽細胞)とは孤立させて、またはその存在下ではあるが直接的に接触させずに、リンパ球を生育させることができる。例えば、直接的接触を許容することなく、線維芽細胞により産生される可溶性増殖因子の交換を可能にするために、下側の細胞培養ウェル中にコンフルエントな単層の線維芽細胞を含むトランスウェルバスケット中で、リンパ球を生育させることができる。あるいは、下側の細胞培養ウェルでリンパ球を生育させながら、トランスウェルバスケット中で線維芽細胞を培養することができる。リンパ球増幅に栄養供給を行なうために、非造血細胞(例えば、線維芽細胞)による馴化培地を用いることもできる。
【0099】
馴化培地は、非造血細胞(例えば、線維芽細胞などの間質細胞)により分泌される可溶性因子を含有する。馴化培地は、該因子を分泌した細胞を含んでいても含んでいなくてもよい。例えば、γδ T細胞培養中に馴化因子を分泌する細胞の存在下で、γδ T細胞を培養することができる。あるいは、γδ T細胞培養に先立って、培地から非造血細胞を除去して、培地中にそれらが分泌した因子を残すことができる。馴化培地としては、従前に調製しておいた非造血細胞因子を添加した(例えば、濃縮液または凍結乾燥粉末として)培地も挙げられる。
【0100】
間質細胞または上皮細胞は、好ましくはリンパ球の培養中に存在する(しかしリンパ球とは直接的に接触しない)が、それらを除去して、リンパ球が、間質細胞または上皮細胞の非存在下で(例えば、線維芽細胞の非存在下で)、培養されるようにすることができる。
【0101】
一部の実施形態では、上記の通り、外因的に添加されたT細胞受容体経路アゴニストなどのT細胞シグナル伝達を活性化する物質の非存在下での非造血組織常在性γδ T細胞の増幅に続いて、増幅されたγδ T細胞を、T細胞シグナル伝達を活性化する1種以上の物質(外因的に添加されたT細胞受容体経路アゴニストなど)、および/または1種以上の増殖因子(サイトカインなど)の存在下でさらに培養することができる。必要な場合、本明細書中に記載される増幅および任意的なさらなる培養後に、非造血組織常在性γδ T細胞を単離するかまたはさらに精製し、保存し、他の試薬(製薬上許容される賦形剤など)と混合し、かつ/または使用することができる。
【0102】
本発明の方法により作製される非造血組織常在性γδ T細胞は、それらが、例えば、TNFα、IFNγ、およびCD107aの産生増大により、いかなるT細胞受容体刺激性リガンドも存在しない中で、悪性腫瘍と強く関連するNKG2Dリガンド(MICA)に対して応答する点で、他の血液由来γδ T細胞とは区別することができる(
図2A~2D、
図10Aおよび
図10B)。それらの細胞はまた、外因的な薬剤によるかまたはリガンドに媒介されるT細胞受容体の活性化を受けることなく細胞傷害性T細胞応答を行ない、かつ、したがって、刺激の非存在下で細胞傷害性である(
図3および
図5)。このことは、他のγδ T細胞、αβ T細胞またはNK細胞と比較して、本発明の方法により作製される非造血組織常在性γδ T細胞が、T細胞受容体シグナル伝達を活性化する外因的な物質の添加の非存在下で応答および増殖するそれらの能力について、独特(unique)であることを意味する(
図3)。本発明の方法により作製される非造血組織常在性γδ T細胞はまた、CD69およびPD-1に関して陽性に染色され、CD28の発現を欠き、かつCD25を低いレベルでしか示さなかった(
図1Dを参照されたい)。このマーカーの組み合わせは、血液由来γδ T細胞により発現されない。さらに、それらの細胞は、血液由来の増幅されたVd2 γδ T細胞と比較して、CCR4およびCCR8などの組織ホーミング受容体の比較的高い発現を示した(
図7B)。本発明の方法により作製される非造血組織常在性γδ T細胞は、TCRアゴニストまたは他の増殖因子を用いずに、IL-2および/またはIL-15の存在下で培養可能であり得る。例えば、非造血組織常在性γδ T細胞は、IL-2を添加されたRPMI 1640培地からなる培地中で生育させることができる。
【0103】
つまり、本発明の方法により作製される非造血組織常在性γδ T細胞は、以下の特性のうちの1種以上を有することができる:
(i) 表現型CD69high、ICOShigh、TIM3highおよびCD28low/absentを示すか、
(ii) CCR3、CD39、CD11b、およびCD9のうちの1種以上をアップレギュレーションするか、
(iii) TCRアゴニストの非存在下でNKG2Dリガンドに対して応答してIFN-γを産生するか、
(iv) TCRアゴニストの非存在下でIL-13を産生するか、
(v) TCR活性化に対して応答してIFN-γ、TNF-αおよびGM-CSFのうちの1種以上を産生するか、
(vi) TCR活性化に対して応答してIL-17を全く産生しないかもしくは実質的に産生しないか、
(vii) 追加の増殖因子を含まずにIL-2を含有する培養培地中で生育するか、
(viii) TCRアゴニストの非存在下で細胞傷害性T細胞応答を示すか、かつ/または
(ix) 正常細胞と比較して腫瘍細胞に対して選択的な細胞傷害性を示す。
【0104】
好ましくは、本発明の方法により作製される非造血組織常在性γδ T細胞は、TCRアゴニストの非存在下でIL-13を産生し、かつ/またはTCRアゴニストの非存在下でNKG2Dリガンドに対して応答してIFN-γを産生する。
【0105】
本発明の方法により取得されるγδ T細胞は、非造血組織常在性γδ T細胞のチェックポイント調節因子のスクリーニング方法中で用いることができる。そのようなチェックポイント調節因子の特定は、チェックポイント調節因子が癌療法に対する可能性ある標的であるので、癌免疫療法を開発するために有用であり得る。
【0106】
試験化合物がチェックポイント調節因子であるか否かを決定するために、試験化合物の存在下または非存在下で、間質細胞または上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させて、in vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養することができる。非造血組織常在性γδ T細胞の増殖率または活性化度を、試験化合物の存在下および非存在下で決定する。増殖率または活性化度が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下で高い場合には、試験化合物は候補チェックポイント調節因子である可能性がある。これは、試験化合物が、間質細胞または上皮細胞(例えば、線維芽細胞)による接触阻害を解消できるからである。
【0107】
試験化合物は、組織常在性T細胞に関してチェックポイントを調節するその能力に基づいて選択される。
【0108】
非造血組織常在性γδ T細胞増殖の明らかな増大はまた、細胞死の阻害に起因するものでもあり得、T細胞カウントまたはそのマーカーの増加により、およびプログラムされた細胞死のマーカーの発現減少により、測定することができる。活性化の増大は、活性化された組織常在性γδ T細胞により分泌されるサイトカイン(IFN-γなど)の放出を測定することにより、評価することができる。
【0109】
あるいは、非造血組織常在性γδ T細胞を、間質細胞または上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させて、in vitroで培養することができ、このとき、γδ T細胞および/または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)あるいは両方の細胞タイプでの、試験遺伝子の発現が変化している。γδ T細胞および/または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)での試験遺伝子の発現は、例えば、小分子干渉RNA(siRNA)もしくは小分子ヘアピンRNA(shRNA)などのRNA標的化物質により、または遺伝子編集(例えば、CRISPR/Casシステムを用いて)により、変化させることができる。非造血組織常在性γδ T細胞の増殖率または活性化度を、間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下で決定する。増殖率または活性化度が、間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞での試験遺伝子の発現の変化の存在下で高い場合には、試験遺伝子は候補チェックポイント遺伝子である可能性がある。
【0110】
あるいは、間質細胞または上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下で高いか、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞での試験遺伝子の発現の変化の存在下で高い場合には、試験化合物はチェックポイント調節因子である可能性があるか、または試験遺伝子は候補チェックポイント遺伝子である可能性がある。死滅率は、例えば、死亡する細胞により放出される分子の定量により、測定することができる。試験化合物の存在下または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞での試験遺伝子の発現の変化の存在下での、より高い細胞死滅率は、細胞殺傷を抑制していたチェックポイントが解放されていることを示し、したがって、試験化合物はチェックポイント調節因子である可能性があるか、または試験遺伝子は候補チェックポイント遺伝子である可能性があると結論付けることができる。
【0111】
各実施形態で用いることができる線維芽細胞株の例としては、ヒト包皮線維芽細胞(例えば、BJ(ATCC(登録商標) CRL-2522TM))、正常皮膚線維芽細胞(例えば、CCD-1059Sk(ATCC(登録商標) CRL-2072TM))および肺線維芽細胞(例えば、HEL 299(ATCC(登録商標) CRL-137TM))が挙げられる。
【0112】
試験化合物が候補チェックポイント調節因子であると特定するか、または試験遺伝子が候補チェックポイント遺伝子であると特定するためには、試験化合物の存在下または試験遺伝子の変化の存在下でのγδ T細胞の増殖率および/または活性化率が、試験化合物の非存在下または試験遺伝子の変化の非存在下よりも、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍または少なくとも5倍高いことができる。細胞周期は、0日目および7日目での細胞絶対数、Ki-67およびCD25発現のレベル(これらは細胞周期マーカーである)および細胞培養色素(CFSEまたはCELLTRACETMバイオレットなど)を用いるなどの、多数の手段により測定することができる。細胞活性化は、IFN-γなどのエフェクタータンパク質の産生により測定することができる。非造血組織常在性γδ T細胞増殖の明らかな増大はまた、細胞死の阻害に起因するものでもあり得、T細胞カウントまたはそのマーカーの増加により、およびプログラムされた細胞死のマーカーの発現減少により、測定することができる。
【0113】
本発明の方法により取得されるγδ T細胞は、例えば、養子T細胞療法のための、医薬品として用いることができる。これには、本発明の方法により取得されるγδ T細胞を患者へと移入することを含む。療法は自家的であり得、すなわち、γδ T細胞を、それらが取得されたのと同じ患者へと移入し戻すことができ、または療法は同種性であり得、すなわち、ある人物に由来するγδ T細胞を、異なる患者へと移入することができる。治療方法は、以下のステップを含むことができる:
ドナー個体から取得される非造血組織のサンプルを提供するステップ、
増幅された集団を作製するために、上記の通りに、該サンプル由来のγδ T細胞を培養するステップ;および
γδ T細胞の該増幅された集団をレシピエント個体へと投与するステップ。
【0114】
ドナー個体とレシピエント個体とは、同じであるかまたは異なり得る。
【0115】
γδ T細胞は、いずれかの好適な方法により、それを必要とする患者または被験体に投与することができる。例えば、γδ T細胞は、静脈内または腫瘍内経路で、治療を必要とする患者または被験体に投与することができる。
【0116】
治療対象である患者または被験体は、好ましくは、ヒト癌患者またはウイルス感染患者(例えば、CMV感染患者またはHIV感染患者)である。
【0117】
γδ T細胞はMHC非拘束性であるので、それらは、それらが移入される宿主を外来性であると認識することはなく、これは、それらが、移植片対宿主病を引き起こしにくいことを意味する。このことは、それらが「特注品ではなく」(off the shelf)用いることができるか、または、例えば、同種養子T細胞療法のために、いかなるレシピエントにも移入できることを意味する。
【0118】
それらは正常には非造血組織中に常在するので、組織常在性Vδ1 T細胞およびDN γδ T細胞はまた、それらの全身性血液常在性対応物よりも、腫瘍塊へとホーミングして、その中にとどまる可能性も高く、これらの細胞の養子移入は、固形腫瘍および潜在的には他の非造血組織関連免疫病変を標的化するにはより有効であり得る。
【0119】
一部の実施形態では、非造血組織中に腫瘍を有する個体の治療方法は、以下のステップを含むことができる:
ドナー個体から取得される前記非造血組織のサンプルを提供するステップ、
上記の通りに、該サンプル由来のγδ T細胞を培養して、増幅された集団を作製するステップ;および
γδ T細胞の該増幅された集団を、腫瘍を有する個体へと投与するステップ。
【0120】
本発明の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞は、NKG2Dを発現し、悪性腫瘍と強く関連するNKG2Dリガンド(例えば、MICA)に対して応答する。それらはまた、活性化の非存在下で細胞傷害性プロフィールを示し、したがって、腫瘍細胞を死滅させる上で有効である可能性がある。例えば、本明細書中に記載される通りに取得される非造血組織常在性γδ T細胞は、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF、CCL4、IL-13、グラニュライシン(Granulysin)、グランザイムAおよびB、およびパーフォリンのうちの1種以上、好ましくはすべてを、活性化の非存在下で発現することができる。IL-17Aは発現されない場合がある。
【0121】
したがって、本明細書中に報告される知見は、「特注品ではない」(off-the-shelf)免疫療法試薬としての、発明の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞の臨床応用に対する実用性および好適性に関する説得力のある証拠を提供する。これらの細胞は、生来様の殺傷能力を保持し、MHC拘束性を有さず、かつ他のT細胞か行なうよりも改善された腫瘍へのホーミングおよび/またはその中での残留を示す。
【0122】
本発明の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞はまた、CAR-T療法のためにも用いることができる。これは、新たな特異性(例えば、モノクローナル抗体の特異性)を用いてT細胞を再プログラムするための、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)の生成を含む。遺伝子操作されたTCRは、T細胞を悪性腫瘍細胞に対して特異的にすることができ、したがって、癌免疫療法のために有用にすることができる。例えば、T細胞は、被験体組織由来の正常な体細胞により発現されない、腫瘍関連抗原(TAA)などの腫瘍抗原を発現する癌細胞を認識することができる。つまり、CAR改変型T細胞は、例えば、癌患者の、養子T細胞療法のために用いることができる。
【0123】
CARのための血液常在性γδ T細胞の使用は、記載されてきている。しかしながら、本発明の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞は、形質転換細胞を認識するそれらの生来様の能力を保持しながら、キメラ型抗原特異的TCRを用いて形質導入することができるので、CAR-Tアプローチのための特に良好なビヒクルである可能性があり、かつ、血液常在性γδ T細胞または従来の全身性αβ T細胞のいずれかよりも良好な腫瘍浸透能および残留能を有する可能性がある。さらに、この細胞のMHC依存性抗原提示の欠損は、移植片対宿主病に関する可能性を低減させ、かつ低レベルのMHCを発現する腫瘍を標的化することを自身に可能にする。同様に、この細胞の従来型共刺激(例えば、CD28とのかみ合わせを介する)に対する非依存性は、共刺激受容体に対するリガンドを低レベルで発現する腫瘍の標的化を容易にする。
【0124】
癌は、悪性癌細胞の異常な増殖により特徴付けることができ、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)など)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫など)、および固形癌(肉腫、皮膚癌、黒色腫、膀胱癌、脳腫瘍(brain cancer)、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝臓癌、頭頚部癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、胃癌、精巣癌、胆嚢および胆管の癌、甲状腺癌、胸腺癌、骨癌、および脳腫瘍(cerebral cancer)など)が挙げられる。
【0125】
癌患者体内の癌細胞は、該個体の正常な体細胞とは免疫学的に異なる場合がある(すなわち、癌性腫瘍は免疫原性であり得る)。例えば、癌細胞は、癌細胞により発現される1種以上の抗原に対して、癌患者体内での全身性免疫応答を生起することができる場合がある。免疫応答を生起する抗原は腫瘍抗原であり得、または正常細胞により共有されている可能性がある。癌を有する患者は、当技術分野で公知の臨床的基準に従って癌の診断を行なうために十分な、少なくとも1種の特定可能な徴候、症状、または検査結果を示し得る。そのような臨床的基準の例は、Harrison’s Principles of Internal Medicine(40)などの医学の教科書に見出すことができる。一部の例では、個体での癌の診断は、該個体から取得される体液または組織のサンプル中での特定の細胞タイプ(例えば、癌細胞)の特定を含み得る。
【0126】
上記の通りの治療に対して好適な患者、被験体、または個体は、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科(例えば、マウス)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、霊長類、サル(simian)(例えば、小型サル(monkey)または類人猿(ape))、小型サル(monkey)(例えば、マーモセットまたはヒヒ)、類人猿(ape)(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンまたはテナガザル)、またはヒトなどの哺乳動物であり得る。
【0127】
一部の好ましい実施形態では、患者、被験体、または個体はヒトである。他の好ましい実施形態では、非ヒト哺乳動物、特に、ヒトでの治療有効性を実証するためのモデルとして慣用的に用いられる哺乳動物(例えば、ネズミ科、霊長類、ブタ、イヌ科、またはウサギ)を用いることができる。
【0128】
一部の実施形態では、患者、被験体、または個体は、最初の癌治療後に微小残存病変(MRD)を有する場合がある。
【0129】
治療は、ヒトかまたは動物かにかかわらず(例えば、獣医学的応用での)、幾分かの所望の治療効果が達成される(例えば、病状の進行の阻害または遅延)、いずれかの治療および療法であり得、かつ、治療の非存在下で予測されるものを超える、病状の進行速度の低減、病状の進行速度の停止、病状の改善、病状の治癒または寛解(部分寛解かまたは完全寛解かにかかわらず)、病状の1種以上の症状および/もしくは徴候を予防、遅延、減弱または停止すること、あるいは被験体もしくは患者の生存の延長を含む。
【0130】
予防的手段としての治療(すなわち、予防)もまた含まれる。例えば、癌に罹患し易いか、または発症もしくは再発のリスクがある患者、被験体、または個体を、本明細書中に記載される通りに治療することができる。そのような治療は、患者、被験体、もしくは個体での癌の発症または再発を予防または遅延させることができる。
【0131】
特に、治療は、癌の完全寛解をはじめとする癌生長の阻害、および/または癌の転移の阻害を含むことができる。癌生長とは、一般的に、より発達した形態への、癌内での変化を示す多数の指標のうちのいずれか1つを意味する。つまり、癌生長の阻害を測定するための指標としては、癌細胞生存率の低下、腫瘍体積または形態の減少(例えば、コンピューター断層撮影(CT)、超音波検査、または他のイメージング法を用いて決定される場合)、腫瘍生長の遅延、腫瘍血管系の破壊、遅延型過敏反応皮膚テストでの成績の改善、細胞溶解性Tリンパ球の活性増大、および腫瘍特異的抗原のレベルの低下が挙げられる。個体での癌性腫瘍での免疫抑制の低下は、癌生長、特に既に被験体体内に存在する癌の生長に抵抗し、かつ/または個体体内での癌生長の傾向を減少させる、個体の能力を改善し得る。
【0132】
本発明の他の態様および実施形態は、用語「含む」を用語「からなる」により置き換えた上記の態様および実施形態ならびに用語「含む」を用語「実質的にからなる」により置き換えた上記の態様および実施形態を提供する。
【0133】
本出願は、文脈によりそうでないことが要求されない限り、上記の態様および実施形態のうちのいずれかの相互のすべての組み合わせを開示すると理解されるべきである。同様に、本出願は、文脈によりそうでないことが要求されない限り、単独で、または他の態様のうちのいずれかと一緒に、好ましくかつ/または任意的な特徴のすべての組み合わせを開示する。
【0134】
上記の実施形態の変更、さらなる実施形態およびその変更は、本開示を読めば当業者には明らかになるであろうし、実際、それらは本発明の範囲内に入る。
【0135】
本明細書中で言及されたすべての文献および配列データベースエントリーは、すべての目的に関してその全体で参照により本明細書中に組み入れられる。
【0136】
本明細書中で用いる場合、「および/または」とは、他方のものと一緒にするかまたは一緒にされない、2種類の明記された特徴または構成要素のうちのそれぞれの具体的な開示として理解されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」とは、(i) A、(ii) Bならびに(iii) AおよびBのそれぞれの具体的開示として、あたかもそれぞれが本明細書中に個別に説明されているかの如く、理解されるべきである。
【0137】
本発明は以下の実施形態を包含する:
1.インターロイキン-2(IL-2)および/またはインターロイキン-15(IL-15)の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、in vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を増幅するための方法であって、該リンパ球は、培養中に間質細胞または上皮細胞と直接的に接触しない、上記方法。
2.前記リンパ球は、培養中に線維芽細胞と直接的に接触しない、実施形態1に記載の方法。
3.IL-2の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、実施形態1または2に記載の方法。
4.インターロイキン-15(IL-15)の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、実施形態1または2に記載の方法。
5.IL-2およびIL-15の存在下で、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織から取得されるリンパ球を培養するステップを含む、実施形態1または2に記載の方法。
6.TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で前記リンパ球を培養するステップを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
7.T細胞受容体経路アゴニストの非存在下で前記リンパ球を培養するステップを含む、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
8.前記リンパ球が、間質細胞または上皮細胞の非存在下で培養される、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
9.前記間質細胞または上皮細胞が、培養に先立って除去される、実施形態8に記載の方法。
10.前記リンパ球が、線維芽細胞の非存在下で培養される、実施形態8に記載の方法。
11.前記線維芽細胞が、培養に先立って除去される、実施形態10に記載の方法。
12.前記リンパ球が、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養される、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
13.前記γδ増幅培地が、T細胞受容体を活性化または共刺激しない、実施形態12に記載の方法。
14.前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いている、実施形態12または13に記載の方法。
15.前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなる、実施形態12~14のいずれかに記載の方法。
16.前記リンパ球が、皮膚、消化管(例えば、結腸)、乳腺組織、肺、肝臓、膵臓または前立腺から取得されたものである、実施形態1~15のいずれかに記載の方法。
17.前記γδ T細胞が非Vδ2細胞である、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
18.前記γδ T細胞がVδ1細胞である、実施形態17に記載の方法。
19.前記γδ T細胞が二重陰性(DN)γδ T細胞である、実施形態17に記載の方法。
20.ヒトまたは非ヒト動物組織からリンパ球を取得するステップを含む、実施形態1~19のいずれかに記載の方法。
21.前記リンパ球が、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織のサンプルから取得される、実施形態20に記載の方法。
22.組織が非造血細胞およびリンパ球を含む、実施形態20または21に記載の方法。
23.ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織のサンプルを提供するステップ、および該サンプルの非造血細胞からリンパ球を分離して、間質細胞を実質的に含まないリンパ球の集団を作製するステップを含む、実施形態20~22のいずれかに記載の方法。
24.以下のステップ:
(i) 非造血組織から取得されるγδ T細胞の集団を提供するステップ;および
(ii) 該γδ T細胞との間質細胞接触を実質的に伴わない条件下で該γδ T細胞を培養して、γδ T細胞の増幅された集団を作製するステップ
を含む、γδ T細胞を増幅するための方法。
25.非造血組織から取得されるγδ T細胞の前記集団が、γδ T細胞の実質的に純粋な集団である、実施形態24に記載の方法。
26.非造血組織から取得されるγδ T細胞の前記集団が非Vδ2細胞である、実施形態24または25に記載の方法。
27.非Vδ2細胞の前記集団がVδ1細胞を含む、実施形態26に記載の方法。
28.非Vδ2細胞の前記集団がDN γδ T細胞を含む、実施形態26または27に記載の方法。
29.非造血組織から取得されるγδ T細胞の前記集団が、Vδ1+CLA+CCR8+CD103+ γδ T細胞を含む、実施形態24~27のいずれかに記載の方法。
30.ステップ(ii)の前記培養ステップが、γδ T細胞と間質細胞との接触を伴わずに行なわれる、実施形態24~29のいずれかに記載の方法。
31.ステップ(ii)の前記γδ T細胞が、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルを実質的に含まない条件下で培養される、実施形態24~30のいずれかに記載の方法。
32.ステップ(ii)の前記培養ステップが、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で行なわれる、実施形態24~31のいずれかに記載の方法。
33.ステップ(ii)の前記培養ステップが、間質細胞馴化培地中で行なわれる、実施形態24~32のいずれかに記載の方法。
34.ステップ(ii)の前記γδ T細胞培養ステップが、IL-2、IL-15またはそれらの組み合わせの存在下で行なわれる、実施形態24~33のいずれかに記載の方法。
35.γδ T細胞の前記集団が、ヒトまたは非ヒト動物の非造血組織のサンプルから取得される、実施形態24~34のいずれかに記載の方法。
36.非造血組織が、非造血細胞およびγδ T細胞を含む、実施形態24~35のいずれかに記載の方法。
37.前記非造血細胞から前記γδ T細胞を分離して、間質細胞を実質的に含まない、γδ T細胞を含む分離されたリンパ球集団を作製するステップを含む、実施形態24~36のいずれかに記載の方法。
38.前記γδ T細胞が、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養される、実施形態24~37のいずれかに記載の方法。
39.前記γδ増幅培地が、T細胞受容体を活性化または共刺激しない、実施形態24~38のいずれかに記載の方法。
40.前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いている、実施形態24~39のいずれかに記載の方法。
41.前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなる、実施形態24~40のいずれかに記載の方法。
42.以下のステップ:
(i) 非造血細胞およびγδ T細胞を含む非造血組織を提供するステップ;
(ii) 該非造血細胞から該γδ T細胞を分離して、間質細胞を実質的に含まない、γδ T細胞を含む分離された集団を作製するステップ;および
(iii) TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルの非存在下で、ステップ(ii)の該分離された集団を培養して、γδ細胞の増幅された集団を作製するステップ
を含む、γδ T細胞を増幅するための方法。
43.ステップ(ii)の分離ステップが、αβ T細胞から前記γδ T細胞を分離することを含む、実施形態42に記載の方法。
44.ステップ(ii)の前記分離された集団が、γδ T細胞の実質的に純粋な集団である、実施形態42または43に記載の方法。
45.ステップ(ii)の前記分離された集団が非Vδ2細胞である、実施形態42~44のいずれかに記載の方法。
46.前記非Vδ2細胞の集団がVδ1細胞を含む、実施形態45に記載の方法。
47.前記非Vδ2細胞の集団がDN γδ T細胞を含む、実施形態45または46に記載の方法。
48.ステップ(ii)の前記分離された集団がVδ1+CLA+CCR8+CD103+ γδ T細胞の集団を含む、実施形態42~47のいずれかに記載の方法。
49.ステップ(iii)の前記培養ステップが、間質細胞接触を実質的に伴わずに行なわれる、実施形態42~48のいずれかに記載の方法。
50.ステップ(iii)の前記培養ステップが、前記γδ T細胞と間質細胞との接触を伴わずに行なわれる、実施形態42~48のいずれかに記載の方法。
51.ステップ(iii)の前記培養ステップが、TCR活性化シグナルまたは共刺激シグナルを実質的に含まない、実施形態42~50のいずれかに記載の方法。
52.ステップ(iii)の前記培養ステップが、TCR活性化シグナルおよび共刺激シグナルの非存在下で行なわれる、実施形態42~51のいずれかに記載の方法。
53.ステップ(iii)の前記培養ステップが、間質細胞馴化培地中で行なわれる、実施形態42~52のいずれかに記載の方法。
54.ステップ(iii)の前記培養ステップが、IL-2、IL-15またはそれらの組み合わせの存在下で行なわれる、実施形態42~53のいずれかに記載の方法。
55.前記分離された集団が、IL-2および/またはIL-15を含有するγδ増幅培地中で培養される、実施形態54に記載の方法。
56.前記γδ増幅培地が、T細胞受容体を活性化または共刺激しない、実施形態55に記載の方法。
57.前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15以外の増殖因子を欠いている、実施形態55または56に記載の方法。
58.前記γδ増幅培地が、IL-2および/またはIL-15を添加された基礎培地からなる、実施形態55~57のいずれかに記載の方法。
59.γδ T細胞の前記増幅された集団が、培養の14日以内に、非造血組織から取得される前記γδ T細胞の少なくとも20倍の個数のγδ T細胞を含む、実施形態24~58のいずれかに記載の方法。
60.γδ T細胞の前記増幅された集団が、培養の7日以内に、非造血組織から取得される前記γδ T細胞の少なくとも2倍の個数のγδ T細胞を含む、実施形態59に記載の方法。
61.γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも50%はVδ1+細胞である、実施形態24~60のいずれかに記載の方法。
62.γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも70%はVδ1+細胞である、実施形態61に記載の方法。
63.γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも90%はVδ1+細胞である、実施形態62に記載の方法。
64.γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも10%はCCR4、CCR8およびCD103に対して陽性である、実施形態24~63のいずれかに記載の方法。
65.γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも30%はCCR4およびCCR8に対して陽性である、実施形態63に記載の方法。
66.γδ T細胞の前記増幅された集団が、少なくとも60%はCCR8に対して陽性である、実施形態65に記載の方法。
67.前記γδ T細胞がVδ2-細胞である、実施形態24~66のいずれかに記載の方法。
68.実施形態1~67のいずれかに記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞。
69.以下の特性:
(i) 表現型CD69high、ICOShigh、TIM3highおよびCD28low/absentを示すか、
(ii) CCR3、CD39、CD11b、およびCD9のうちの1種以上をアップレギュレーションするか、
(iii) TCRアゴニストの非存在下でNKG2Dリガンドに対して応答してIFN-γを産生するか、
(iv) TCRアゴニストの非存在下でIL-13を産生するか、
(v) TCR活性化に対して応答してIFN-γ、TNF-αおよびGM-CSFのうちの1種以上を産生するか、
(vi) TCR活性化に対して応答してIL-17を全く産生しないかもしくは実質的に産生しないか、
(vii) 追加の増殖因子を含まずにIL-2を含有する培養培地中で生育するか、
(viii) TCRアゴニストの非存在下で細胞傷害性T細胞応答を示すか、かつ/または
(ix) 正常細胞と比較して腫瘍細胞に対して選択的な細胞傷害性を示す
のうちの1種以上を有する、非造血組織常在性γδ T細胞。
70.以下のステップ:
(i) 試験化合物の存在下および非存在下で間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させてin vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養するステップ、あるいは間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)と直接的に接触させてin vitroで非造血組織常在性γδ T細胞を培養するステップであってγδ T細胞および/または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)中での試験遺伝子の発現が変化している上記ステップ;および
(ii) 試験化合物の存在下および非存在下での、または線維芽細胞および/もしくはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下での、非造血組織常在性γδ T細胞の増殖率または活性化率を決定するステップ、あるいは試験化合物の存在下および非存在下での、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下および非存在下での、間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率を決定するステップであって、このとき、T細胞の増殖率もしくは活性化率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下でより高いか、または間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下でより高い場合、かつ/あるいは間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)の死滅率が、試験化合物の非存在下よりも試験化合物の存在下でより高いか、または線維芽細胞および/もしくはγδ T細胞中での試験遺伝子の変化の非存在下よりも間質細胞もしくは上皮細胞(例えば、線維芽細胞)および/またはγδ T細胞中での試験遺伝子の発現の変化の存在下でより高い場合に、試験化合物がチェックポイント調節因子である可能性があるか、または試験遺伝子が候補チェックポイント遺伝子である可能性がある、上記ステップ
を含む、チェックポイント阻害因子のスクリーニング方法。
71.養子T細胞療法によるヒトまたは非ヒト動物の治療方法での使用のための、実施形態1~67のいずれかに記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞。
72.前記ヒトが、ヒト癌患者またはCMV感染患者もしくはHIV感染患者などのウイルス感染患者である、実施形態71に記載の使用のための非造血組織常在性γδ T細胞。
73.養子T細胞療法により被験体を治療する方法であって、それを必要とする被験体に、実施形態1~67のいずれかに記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、上記方法。
74.前記被験体が、ヒト癌患者またはCMV35感染患者もしくはHIV感染患者などのウイルス感染患者である、実施形態73に記載の方法。
75.キメラ型抗原受容体療法によるヒトまたは非ヒト動物の治療方法での使用のための、実施形態1~67のいずれかに記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞。
76.前記ヒトがヒト癌患者である、実施形態75に記載の使用のための非造血組織常在性γδ T細胞。
77.それを必要とする被験体に、実施形態1~67のいずれかに記載の方法により取得される非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、キメラ型抗原受容体療法により被験体を治療する方法。
78.前記被験体がヒト癌患者である、実施形態77に記載の方法。
79.養子T細胞療法により被験体を治療する方法であって、実施形態69に記載の非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、上記方法。
80.前記被験体が、ヒト癌患者またはCMV35感染患者もしくはHIV感染患者などのウイルス感染患者である、実施形態79に記載の方法。
81.実施形態69に記載の非造血組織常在性γδ T細胞を投与するステップを含む、キメラ型抗原受容体療法により被験体を治療する方法であって、該細胞がキメラ型抗原受容体を発現した、上記方法。
82.前記被験体がヒト癌患者である、実施形態81に記載の方法。
本発明の一部の態様および実施形態を、ここで、例として、かつ上記で説明された図面を参照して例示する。
【実施例0138】
方法
三次元外植片培養によるヒト皮膚由来リンパ球の単離
三次元皮膚外植片プロトコールは、他の文献で記載されている通りに(29)、確立された。9mm×9mm×1.5mm Cellfoamマトリックス(Cytomatrix Pty Ltd, Victoria, Australia)をオートクレーブし、続いて100mg/mLラット尾I型コラーゲン(BD Biosciences社)溶液(PBS中)中で室温にて30分間インキュベートし、その後、PBS中で1回リンスした。成人ヒト皮膚のサンプルは、皮膚手術から3~6時間以内に取得した。皮下脂肪を除去し、残りの皮膚組織を、約1mm×1mmの大きさの断片へと切り刻んだ。約5個の皮膚断片/外植片を配置し、各マトリックスの表面へと押し当てた。各マトリックスを、2mLの「Skin-T」培地(10%加熱不活性化胎児ウシ血清(Life Technologies社)、L-グルタミン(292μg/mL;Life Technologies社)、ペニシリン(100単位/mL;Life Technologies社)、ストレプトマイシン(100μg/mL;Life Technologies社)、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸(HEPES;0.01M;Life Technologies社)、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Life Technologies社)、最小必須培地(MEM)非必須アミノ酸(1×;Life Technologies社)および3.5μL/L 2-メルカプトエタノール(Life Technologies社)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Life Technologies社))が入った24ウェルプレート(Corning社)の別々のウェル中に配置した。培養の最初の7日間、アンホテリシン(2.5μg/mL;Life Technologies社)を培地に加えた。培地は、週3回交換した。栄養供給のために、上部の1mLの培地を各ウェルから吸引除去し、新鮮な培地と置き換えた。IL-2およびIL-15は、培養の開始時から、21日目でのリンパ球の単離までの各培地交換時に添加した。ヒト組み換えIL-2(Proleukin;Novartis Pharmaceutical UK Ltd)を100IU/mLで加えた。ヒト組み換えIL-15(Biolegend社)を20ng/mLで加えた。最大で96ウェル(4枚の24ウェルプレート)を、各ドナーについて培養中に設置した。
【0139】
リンパ球を単離するために、マトリックスを、0.01mM HEPES含有10mLハンクス平衡塩溶液(HBSS;Life Technologies社)が入った50mL遠沈管(Corning社)へと移した(最大12個のマトリックス/遠沈管)。マトリックスを、10mLピペットを用いて細胞懸濁液でリンスし、細胞懸濁液を70μmフィルター(BD Biosciences社)を通して新しい50mL遠沈管(Corning社)へと入れた。このマトリックスの「洗浄」をさらに2回繰り返した。培養ウェルからの培地も吸引し、70μmフィルター(BD Biosciences社)を通して新しい50mL遠沈管(Corning社)へと入れた。ウェルを、1mLの0.01mM HEPES/HBSSを用いてさらに2回洗浄し、70μmフィルター(BD Biosciences社)に通した。続いて、遠心分離(1600rpm、15分間)により細胞を単離した。ペレットを、「Skin-T」培地中に再懸濁した。最終的な細胞ペレットを、引き続くフローサイトメトリー分析または機能性研究のために、「Skin-T」培地中に再懸濁した。細胞カウント数が必要な場合には、以下のいずれかにより、この段階で白血球を係数した:(1) トリパンブルー染色(0.4%)(Life Technologies社)および血球計算盤、または(2) CASY(登録商標) Model TTセルカウンターおよびアナライザー(Roche社)。
【0140】
リンパ球を単離するために、マトリックスを、0.01mM HEPES含有10mLハンクス平衡塩溶液(HBSS;Life Technologies社)が入った50mL遠沈管(Corning社)へと移した(最大12個のマトリックス/遠沈管)。マトリックスを、10mLピペットを用いて細胞懸濁液でリンスし、細胞懸濁液を70μmフィルター(BD Biosciences社)を通して新しい50mL遠沈管(Corning社)へと入れた。このマトリックスの「洗浄」をさらに2回繰り返した。培養ウェルからの培地も吸引し、70μmフィルター(BD Biosciences社)を通して新しい50mL遠沈管(Corning社)へと入れた。ウェルを、1mLの0.01mM HEPES/HBSSを用いてさらに2回洗浄し、70μmフィルター(BD Biosciences社)に通した。続いて、遠心分離(1600rpm、15分間)により細胞を単離した。ペレットを、「Skin-T」培地中に再懸濁した。最終的な細胞ペレットを、引き続くフローサイトメトリー分析または機能性研究のために、「Skin-T」培地中に再懸濁した。細胞カウント数が必要な場合には、以下のいずれかにより、この段階で白血球を係数した:(1) トリパンブルー染色(0.4%)(Life Technologies社)および血球計算盤、または(2) CASY(登録商標) Model TTセルカウンターおよびアナライザー(Roche社)。
【0141】
初代腸サンプルは汚染し易いので、取得された生検サンプルは、10%FCS、ペニシリン500U/mL、ストレプトマイシン500μg/mL、ゲンタマイシン100μg/mL、アンホテリシンB 12.5μg/mLおよびメトロニダゾール5μg/mLを含有するIMDM中で最初に洗浄し、切り刻んでグリッド上に配置する前に2回洗浄した。腸グリッド培養は、Gut-T培地(IMDM、10%FCS、ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、ゲンタマイシン20μg/mL、メトロニダゾール1μg/mL)中で生育させた。生育の最初の1週間、本発明者らは、皮膚と同様にアンホテリシンB 2.5μg/mLも用いた。培地は、IL-2(100IU/mL)およびIL-15(20ng/mL)を含有し、週3回交換した。腸の構造は皮膚よりも緩やかであったので、1週間後にリンパ球を回収できた。
【0142】
組織γδ T細胞の増幅
ヒト皮膚由来γδ T細胞の増幅のために、グリッド培養の3~4週間後に回収された混合型リンパ球を、PBS中で洗浄し、遠沈し、10%加熱不活性化胎児ウシ血清(Life Technologies社)、L-グルタミン(292μg/mL;Life Technologies社)、ペニシリン(100単位/mL;Life Technologies社)、ストレプトマイシン(100μg/mL;Life Technologies社)、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸(HEPES;0.01M;Life Technologies社)、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Life Technologies社)、最小必須培地(MEM)非必須アミノ酸(1×;Life Technologies社)および10μL/L 2-メルカプトエタノール(Life Technologies社)を含有するRoswell Park Memorial Institute 1640培地(RPMI-1640;Life Technologies社)中に、1×106/mLの密度で再懸濁し、IL-2(100IU/mL)単独またはIL-2+IL-15(20ng/mL)を添加した。細胞を、2×105/ウェルで96ウェル平底プレート(Corning社)または2×106/ウェルで12ウェルプレート(Corning社)中(増幅用)に播種した。細胞は、顕微鏡観察により毎日モニタリングし、新鮮な培地を用いて栄養供給し、かつサイトカインを週3回添加した。フルコンフルエンスに達するか、細胞凝集体が見え始めた時点で、細胞を、追加のウェルおよびプレートへとそれぞれ1:1に分けた。細胞を回収し、フローサイトメトリーを用いて分析するか、または、アッセイに応じて7日間、14日間もしくは21日間後に機能性アッセイのために用いた。純粋なγδ T細胞が必要な場合には、細胞を、1mL FACSバッファー(PBS、2%加熱不活性化胎児ウシ血清および0.01M EDTA含有)中に再懸濁し、αβ T細胞受容体に関して(Biolegend、クローンIP26、1:50)、暗所にて氷上で30分間染色し、すべての陰性細胞を、DIVAを実行するAriaソーター(BD Biosciences社)を用いてソーティングした。
【0143】
線維芽細胞との共培養
各グリッド培養設定に関して、本発明者らは、外科用メスを用いて数箇所を擦った2枚のペトリ皿(100×25mm、Corning社)を準備した。切り刻んだ皮膚片を、擦り跡に配置した。空気中で5~10分間乾燥させた後、皮膚片をディッシュに正常に貼り付かせ、10mLのSkin-T培地を加えた。培地を週1回交換し、3週間の生育後に、ACCUTASE(登録商標)(Life Technologies社)を用いた処理に続いて、初代線維芽細胞を回収した。線維芽細胞を1×104で48ウェルプレートに、またはトランスウェル実験の場合には2×104で24ウェルプレートのボトムチャンバー中に播種した。2~3日間後、線維芽細胞はコンフルエンスに達し、RPMIおよび記載されたサイトカインを用いて、48ウェルプレートの場合には2×105個の混合型皮膚リンパ球、または24ウェルプレート、ボトムウェルならびにトランスウェルの場合には3×105個のリンパ球を加えて、共培養実験を開始させた。
【0144】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーは、以下の抗体を、記載された蛍光色素と組み合わせて用いて行なった:Ki-67-BV421、CD3-BV510、Vδ1-PeVio770、TIM-3-PE、CD9-PE、CCR3-BV421、CD39-BV421。すべてのサンプルを、eFluor770NIRを用いて生存率に関しても常に染色した。市販の抗体は、Biolegend社またはMiltenyi社から購入した。生存率色素(近赤外)は、eBioscience社から入手した。Ki-67染色は、Foxp3染色バッファーセット(eBioscience社)を用いて固定および透過化した細胞に対して行なった。各実験が完了した時点で、細胞集団をPBS中で洗浄し、半分に分けた。細胞を、生存率に関してeFluor770 NIRを用いて染色し、洗浄し、染色抗体の非特異的結合を避けるためにTrueStain(Biolegend社)を続けた。サンプルの半分を、記載された表面マーカーについて染色し、一方で、他方の半分は細胞系統マーカーのみ(CD3、Vδ1)について、および用いた表面マーカーに相当するアイソタイプ対照と共に染色した。これは、同じ蛍光色素にコンジュゲート化した適合するマウスアイソタイプ抗体を、同じ濃度で用いたことを意味する。アイソタイプ対照は、既知のヒト抗原には結合せず、したがって非特異的結合または偽陽性を示す。これは、真の陰性としても知られる。各ヒストグラム(濃色)は、その対応するアイソタイプ対照(白色、破線)と比較して示される。データのまとめは、比較された記載のマーカーについて陽性で、つまりアイソタイプよりも高いレベルで染色された細胞の割合(%)を示す。フローサイトメトリーデータ分析は、FlowJo(バージョン10.1)を用いて行なった。
【0145】
RNA配列決定
ヒト皮膚由来のVδ1 T細胞およびヒト血液Vδ1 T細胞(T細胞受容体誘導型増幅後)をソーティングし(FACS)、遠心分離し、細胞ペレットをRLTバッファー中に再懸濁した。RNAは、RNA-Micro-plus kit(QIAGEN社)を用いて調製した。RNAライブラリーを、KAPA Stranded RNA-seq Kit with RiboErase(HMR)(KAPA BIOSYSTEMS社)を用いて作製した。HiSeq 2500(illumina社)でのペアエンドシーケンシングには、迅速ラン化学(リード長:100bp)を用いた。101塩基対のペアエンドリードをアライメントし、RSEM(v1.2.11)をBowtie2と共に用いて定量化した。リードを、ヒトトランスクリプトームに対してアライメントし、カウント値はlog2変換およびquantile正規化されている。
【0146】
サイトカイン定量
ヒト皮膚由来のVδ1 T細胞を、PMAおよびイオノマイシンまたはプレート結合型抗CD3 mAb(OKT3、5μg/mL)を用いて24時間刺激した。その後に、上清を取得し、ProcartaPlex Human Cytokine & Chemokine Panel 1A(34 plex)(eBioscience社)を用いて分析した。アッセイは、Luminex FlexMap3D(Luminex社)を用いて分析した。データを、Microsoft Excelで分析し、3名のドナー(二重反復実験)の平均を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。
【0147】
血液由来γδ T細胞の増幅
PBMC内の血液由来γδ T細胞は、TCRリガンド(Vδ2の場合、例えば、IPP、HMBPP、ビスホスホネート)(41、42)またはTCR受容体(mAb)もしくはTCR関連キナーゼCD3を架橋するための抗体添加(43)を用いて刺激された場合にのみ、増幅することができる。TCR架橋の同じ効果は、PHAなどのレクチンを用いても達成することができる。そのようなTCR刺激物質の添加の非存在下では、PBMC中のγδ T細胞は、数日間は生存するが、増幅できず、わずかな多様性を有するT細胞サブセットの当初の組成にとどまる。
【0148】
PBMCを単離するために、健康なボランティア由来の血液を用い、全血をFicoll上に積層し、続いて、赤血球、血漿および白血リンパ球(white lymohocyte)/単球を分離するために400gで20分間遠心分離した。ストリペット(stripett)を通して白血球を慎重に回収し、冷PBS中で4回洗浄した。細胞を、10%加熱不活性化胎児ウシ血清(Life Technologies社)、L-グルタミン(292μg/mL;Life Technologies社)、ペニシリン(100単位/mL;Life Technologies社)、ストレプトマイシン(100μg/mL;Life Technologies社)、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸(HEPES;0.01M;Life Technologies社)、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Life Technologies社)、最小必須培地(MEM)非必須アミノ酸(1×;Life Technologies社)を含有するRPMI-1640培地(Life Technologies社)中に、1×106/mLの密度で再懸濁し、IL-2(100IU/mL)を添加した。細胞移動の90分間前に汎γδ TCRモノクローナル抗体(20μg/mL、クローンB1、Biolegend社)を用いてコーティングされた24ウェルプレートへと、細胞を移した。細胞を14日間生育させ、2~3日間毎に培地を交換し、新鮮なサイトカインを加えた。コンフルエンスに達した時点で、細胞を1:1に分けた。これらの条件下で、14日間後に、γδ T細胞の元々の少数集団は、正常にはそれらのTCRを通じて高度に活性化され(CD69およびCD25のアップレギュレーションにより示される通り)、かつ主にVδ2 T細胞からなるが、Vδ1 T細胞も含んで(すべてのγδ T細胞のうちの最大30%)、大幅に富化される。Vδ1 T細胞は、機能性分析、表現型分析または遺伝学的分析のために、FACSを用いてその後に単離することができる。
【0149】
結果
ヒトγδ T細胞は皮膚に豊富に存在し、非Vδ2 TCRを発現し、ヒトリンパ系ストレス監視応答に従事する
Clarkプロトコール(29)を用いて、本発明者らは、3週間の期間にわたって、組織常在性リンパ球の増殖を可能にするためにIL-2およびIL-15を添加されたヒト余剰皮膚サンプルを用いて、1グリッド当たり平均で240,000細胞のリンパ球集団を得た。以前の報告(29)と合致して、本発明者らは、大部分が組織常在性「TRM」タイプの、従来のαβ TCRを発現する大多数の細胞と共に、明らかに異なる皮膚常在性リンパ球サブセットを特定することができた。全体では、CD45+細胞のうちの59.9%(±8.6)はCD4+であり、かつ18.3%(±2.8)がCD8+ αβ T細胞であり、8.7%(±3.6)のNK細胞画分が含まれた。加えて、本発明者らは、γδ T細胞の相当な集団(CD45+細胞のうちの平均8.513%、±6.564%)を、本発明者らのドナーで見出した(
図1Aおよび
図3D)。器官型培養後のリンパ球のこのサブセット表示は、約100名のドナーで高度に再現可能であり、かつ新鮮消化皮膚サンプルと同等であり、γδ集団のわずかな増大でのみ異なったが、実用的に有用であり、標準的な組織消化プロトコールと比較して、はるかに大きくかつ純粋なリンパ球集団を提供した。それらのTCRデルタ鎖に基づくヒトγδ T細胞の組織限局化に関する文献に従えば、大多数のヒト皮膚γδ T細胞は、フローサイトメトリーにより特定される、種々のγ鎖と対になったVδ1 TCR鎖を発現した。このことは、Vγ9に連結されたVδ2鎖の単一特異的TCRヘテロ二量体を示し、ヒト皮膚サンプル中にはほとんど存在しなかった、末梢血γδ T細胞のうちの大部分とは対照的であった。しかしながら、相当なサブセットがVδ1 TCRまたはVδ2 TCRのいずれも発現していなかったことに留意することが重要であり、このことは、「二重陰性」γδ T細胞という呼称を想起させた(
図1C)。
【0150】
この様式で生育された皮膚常在性γδ T細胞は、非最終分化型メモリー表現型を示し、CD45RAを発現せず、かつ様々なレベルの共刺激分子CCR7を発現した。従来の全身性T細胞と比較して、表面タンパク質CD69の強発現およびそれと一緒にプログラムされた細胞死受容体1(PD-1)の発現;低レベル~非存在レベルのIL-2受容体α(CD25);および共刺激分子CD28の欠如が、予め活性化されたかまたは慢性的に活性化されたT細胞という状況を描き出す(
図1D)。それらの組織局在と合致して、Vδ1細胞およびDN細胞は、CLA、CCR4、CCR8およびインテグリンαE(CD103)などの皮膚および組織ホーミングマーカーの発現を示す(
図7を参照されたい)。この組織ホーミングマーカーの組み合わせは、免疫療法設定で有益であることを実証すると考えられる。加えて、皮膚常在性γδ T細胞は、活性化受容体であるNKG2Dに関する高レベルの発現を示し(
図2A)、このことは、これらの細胞のリンパ系ストレス監視応答での考えられる役割を暗示する。MICA、MICBおよびULBPなどのNKG2Dリガンドはそれぞれ、DNA損傷、EGF受容体活性化および酸化ストレスに応答して細胞によりアップレギュレーションされ、かつ、したがって、NKG2Dを発現するT細胞が、ストレスを受けたかまたは形質転換された細胞を特定および全滅させ、それにより組織ホメオスタシスを維持することを可能にし得る。この原理に沿って、本発明者らは、本発明の方法により増幅された皮膚常在性γδ T細胞が、NKG2D受容体に対する組み換えリガンド(MICA、ULBP2)への曝露に際して活性化されることを見出し、このことは、リソソーム関連膜タンパク質CD107aのアップレギュレーションにより測定される場合の脱顆粒を実証した(
図2A)。この生来様の特徴は、他の組織常在性T細胞(
図2C)および全身性γδ T細胞はこの応答を欠損していたので、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞だけに限定されていた(
図10B)。
【0151】
全体として、活性化された皮膚常在性Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は、PMA/イオノマイシンまたはNKG2Dリガンド(例えば、組み換えMICAタンパク質)により活性化された場合に、炎症促進性TH1偏向性サイトカインプログラムを実行し(IFN-γ、TNF-αおよびGM-CSFに関して陽性に染色される)(
図2Aおよび
図2B)、それにより、細胞の生来様応答が明らかになった。実際に、MICAに対する応答は、抗体を用いてNKG2D受容体をブロックすることによりほぼ完全に無効化された(
図2Bおよび
図2C)。
【0152】
γδ T細胞は、乾癬などの特定の疾患状況および一部のタイプの腫瘍内でIL-17を分泌することが知られている。本発明の方法により増幅されたγδ T細胞は、徹底的な活性化に際してさえも、低レベルのIL-17を産生するかまたはIL-17を産生しない(
図2Bおよび
図8)。逆に、組織常在性CD4発現αβ T細胞は、TCR活性化に際してIL-17を産生した(
図2B)。全体的には、αβ T細胞は、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞(宿主保護に関連するTH1偏向性プログラムに限定されていた)と比較して、PMA/イオノマイシンに対して応答して、はるかに多様なサイトカインのレパートリーを示した。
【0153】
組織からの分離は、ヒト組織γδ T細胞の活性化および大幅な増幅を引き起こす
ヒト組織、γδ T細胞およびそれらの生物学をさらに研究するために、本発明者らは、混合型皮膚リンパ球を細胞培養ウェルへと移し、長時間の生存率を維持するために、それらにIL-2を添加した。興味深いことに、器官型培養中に存在する間質細胞および上皮細胞から分離することにより、Vδ1 T細胞が独特に、いかなる他の刺激も加えることなく、活性化および増殖の兆候を示したことを、本発明者らはすぐに見出した。7日間未満の間に、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は独特かつ大幅に、核因子Ki-67をアップレギュレーションし、かつIL-2受容体α(CD25)の表面発現を増加させた(
図3Bおよび
図4B)。際立ったことに、3週間の期間にわたって、およびIL-2のみの存在下で、組織由来Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は、すべての他のT細胞サブセットよりも増殖し、それにより全皮膚リンパ球のうちの最大65%となり、個数は平均で127.18倍まで増加したが、一方で、αβ T細胞は、細胞絶対数により測定した場合に、5.21倍(p=0.0124)しか増えなかった(
図3A)。細胞周期関連核因子Ki-67のMFIは、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞では14日間で2664.5(±1876.1)から8457.7(±4574.2)まで増加し、一方で、αβ T細胞では、MFIは592.8(±390.5)から284.7(±140.1)へと同じ期間で減少した(
図3C)。選択的な皮膚常在性γδ T細胞増殖のこの現象はさらに、追加の組み換えIL-15を用いて補助することができ、組み換えIL-15は、リンパ球の生存率および総数を増加させた。
【0154】
皮膚γδ T細胞は、接触依存的様式で、線維芽細胞により著しく抑制される
前段落に記載されるVδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞の際立った増幅は、多量の線維芽細胞増殖が存在する器官型培養システム中では一切生じなかった。したがって、本発明者らは、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞とのそれらの共培養がT細胞の増幅を阻害するか否かを直接的に調べるために、自家線維芽細胞を生育させた。3週間のグリッド培養後、本発明者らは、空であるかまたは事前に達成された線維芽細胞のコンフルエントな単層を含有するウェルへと混合型皮膚リンパ球を播種し、それぞれの場合で、培地に外因的にIL-2を添加して、T細胞生育を維持させた。加えて、本発明者らは、同じウェル中でTリンパ球が線維芽細胞と直接的に接触することを防止するが、線維芽細胞により生成されるいずれかの可溶性因子によりTリンパ球が影響を受けることを可能にする、トランスウェル(transwell)を用いた。14日間の共培養中に、線維芽細胞がないウェル中およびT細胞が線維芽細胞と直接的に接触することを妨げられたウェル中では、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は増殖し始めた。以前の通り、αβ T細胞増殖は、すべての条件下で低かった。目立ったことに、T細胞が線維芽細胞と直接接触させられた場合、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞の2週間にわたる生育率は、線維芽細胞接触のないウェルの22.6(SEM 8.07)倍から3.3(SEM 0.17)倍へと著しく低下した(
図4A)。この接触媒介型阻害は、単独で生育させたリンパ球と比較した場合の、7日間の期間にわたるVδ1でのCD25、Ki-67および転写因子T-betのアップレギュレーションの非存在によりさらに確認された(
図4B)。免疫系の組織媒介型制御の一部の形態が、組織ホメオスタシスの維持に対して基本的なものであることが明らかであろうが、これは、この制御なしでは、永続的な炎症の可能性が生じるであろうからである。間質線維芽細胞によるVδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞の抑制的調節は、そのような制御の一例であると思われる。
【0155】
総合すると、皮膚常在性Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞の表現型ならびにそれらの際立った機能的潜在能力は、これから特性決定される接触依存性メカニズムを介して、隣接する皮膚線維芽細胞により通常は抑制されている、活性化前のT細胞を反映している。T細胞を線維芽細胞との接触から解放することによりこのメカニズムを不活性化することによって、Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞の際立った増幅が選択的に可能になり、一方で、皮膚中の他のT細胞は影響されない。
【0156】
接触媒介型阻害の解除は、皮膚Vδ1 T細胞による細胞傷害性TH1偏向性サイトカイン応答を促進する
混合型皮膚由来リンパ球を14日間増幅させ、γδ T細胞からαβ T細胞を除去するために、蛍光結合型細胞ソーティング(fluorescence associated cell sorting)を用い、それにより最大90%の純度でγδ T細胞を取得することができた。それらの非常に富化された細胞を、10%FCSを含有するRPMI培地中に150,000細胞/ウェルの濃度で細胞培養ウェルへと配置し、その後、24時間後に上清を回収し、LUMINEX(登録商標)に基づくアレイを用いて、広範囲のエフェクターサイトカインに関して評価した。完全に予期せぬことに、増幅中のγδ T細胞(線維芽細胞からのその分離のみによって誘発された)は、多量のIFN-γ(12,383.46±16,618.90pg/mL)、GM-CSF(4,316.73±4,534.96pg/mL)などのTH1関連サイトカインならびに炎症性ケモカインCCL4(14,877.34±10,935.64pg/mL)およびCCL3(1,303.07±757.23pg/mL)を自発的に産生した(
図5A)。
【0157】
さらに、細胞は、増幅中に、かつ新鮮に単離された皮膚由来TCR活性化型γδ T細胞とは対照的に、アトピー性応答に関連するIL-13を自発的に多量に産生し;他のサイトカイン(例えば、IL-17A)は、はるかに低いレベルで産生されるか、または全く産生されなかった(
図8)。該細胞の高いエフェクター能は、組み換えMICA(NKG2Dリガンド)、抗CD3架橋、またはPMA/イオノマイシンを用いる刺激後に、さらに増大させることができた。悪性標的細胞に対する増幅されたγδ T細胞の細胞傷害能を評価するために、本発明者らは、24時間の共培養実験中で、確立された形質転換細胞株を用いた。Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は、Hela細胞(子宮頸癌)およびCaco2細胞(結腸癌)に対して、用量依存的な様式で、従来の組織αβ T細胞よりもはるかに上回って、非常に高い細胞傷害活性を示した(
図5B)。さらに、γδ細胞媒介性細胞傷害は、可溶性モノクローナル抗体を用いてNKG2D受容体をブロックすることにより強く阻害することができ、このことは、この受容体が、ヒト皮膚由来γδ T細胞を脱抑制することによる腫瘍監視に、少なくとも部分的に関与することを示した。本発明者らは、さらに、他の標的:HCT1954細胞、MDAMB231細胞(両方とも乳癌)およびHCT116細胞(結腸癌)を用いてこれらの細胞の細胞傷害能を確認した(
図9)。
【0158】
ヒト腸内の組織常在性γδ T細胞
本発明者らは、ヒト結腸由来のグリッド培養中でも、Vδ1 T細胞受容体を発現するγδ T細胞の非造血組織常在性集団を特定している(
図6)。3名のドナーで、本発明者らは、4~5週間の期間にわたって、皮膚細胞に関して用いたのと同じ方法を用いて(15)、これらの細胞を増幅することができた。増幅中、結腸由来Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は、線維芽細胞豊富な器官型細胞培養からのそれらの単離後に、類似のKi-67アップレギュレーションパターンを示した。同様に、結腸常在性Vδ1+ T細胞およびDN γδ T細胞は、NKG2D受容体に対するリガンドの供給により、強く刺激された。血液由来γδ T細胞は、CD16発現を介して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を実行する能力を十分に備えていることが以前に報告されており、このことは、リツキシマブと組み合わせた場合の、CD20陽性B細胞系統リンパ腫に対して標的化された強化された細胞傷害性を証明する。同様に、慢性リンパ性白血病(CLL)およびHER2陽性乳癌細胞が、モノクローナル抗体を用いて標的化された場合に、より効果的に殺傷された(31)。皮膚由来Vδ1 T細胞が抗体オプソニン化型標的細胞を標的化する能力を評価するために、本発明者らは、3種類のIgG1関連Fc受容体CD16、CD32およびCD64の発現レベルをチェックした。皮膚由来Vδ1 T細胞は、わずかなレベルのFc受容体CD16を発現するが、高親和性IgG受容体CD64に関して良好な発現レベルを示す(
図11)。したがって、組織由来Vδ1 T細胞は、それらが抗体により悪性腫瘍および転移の側に誘導され、オプソニン化された腫瘍細胞を認識し、かつADCCを介して標的を殺傷するであろうから、CD20療法またはHer2療法などのモノクローナル抗体療法に対するアジュバントとして用いられる能力を十分に備えている可能性がある。
【0159】