(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069315
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】バイオマス由来炭素を含む電池電極組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240514BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240514BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240514BHJP
H01G 11/44 20130101ALI20240514BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20240514BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/134
H01G11/44
H01G11/24
H01G11/32
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033615
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021513880の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】62/731,771
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513198814
【氏名又は名称】シラ ナノテクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】グレブ ユーシン
(72)【発明者】
【氏名】アダム カイドシ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エネルギー貯蔵デバイスセルにおける使用のための電極組成物を提供する。
【解決手段】電極は、複合粒子を含み、各複合粒子はバイオマス由来の炭素及び活物質を含む。活物質は約400Kにおいて約10
-13torr未満の部分蒸気圧を示し、電極組成物の面積容量負荷は約2mAh/cm
2~約16mAh/cm
2の範囲である。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池負極組成物であって、
複合粒子を含み、各複合粒子は、
細孔及びSi含有活物質を含む多孔質炭素を含み、
前記Si含有活物質は、400Kにおいて10-13torr未満の部分蒸気圧を示し、
少なくとも一部の前記Si含有活物質は、前記細孔に閉じ込められ、
前記複合粒子における前記Si含有活物質の重量分率は、20重量%~87重量%であり、
前記多孔質炭素は、N2ガスで測定した開細孔体積が0.75cm3/g~2.5cm3/gである、リチウムイオン電池負極組成物。
【請求項2】
前記複合粒子のBrunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積(SSA)が、0.2m2/g~100m2/gの範囲である請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項3】
前記Si含有活物質の平均粒子サイズは、2nm~30nmの範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項4】
前記多孔質炭素の前記細孔の体積分率が、0.5nm~10nmの範囲に特徴寸法を示し、
前記体積分率が30体積%~100体積%の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項5】
前記複合粒子が、少なくとも一部の前記Si含有活物質を保護する保護表面層を有する、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項6】
前記保護表面層が炭素を含む、請求項5に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項7】
前記複合粒子の平均サイズは、200nm~20μmの範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項8】
前記複合粒子の前記平均サイズは、600nm~10μmである、請求項7に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項9】
前記多孔質炭素がバイオマス由来である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項10】
バイオマス由来の前記多孔質炭素は、(i)ナッツの殻、(ii)実の核、(iii)木材、(iv)竹、(v)芝、藁若しくは乾燥した葉、(vi)コーン粒、(vii)プラタナスの綿毛、(viii)天然の炭水化物、又は(ix)それらの任意の組合せ、の1以上に由来する、請求項9に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項11】
前記バイオマス由来の前記多孔質炭素は、少なくとも一部が1または複数の天然の炭水化物に由来し、
1または複数の前記炭水化物がセルロース、キチン、アルギン酸、スクロース、グルコース、デンプンまたはこれらの組み合わせである、請求項10に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項12】
前記バイオマス由来の前記多孔質炭素は、少なくとも一部がナッツの殻に由来し、
前記ナッツの殻はココナッツの殻、アプリコットの殻、アーモンドの殻又はこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項13】
前記Si含有活物質の平均粒子サイズは、3nm~100nmの範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項14】
前記Si含有活物質の50重量%~100重量%が、前記細孔内に閉じ込められている、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項15】
前記多孔質炭素のBrunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積(SSA)が、500m2/g~4400m2/gの範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項16】
前記多孔質炭素の前記BET比表面積は、800m2/g~3000m2/gの範囲である、請求項15に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項17】
前記多孔質炭素が、1重量%未満の灰を含有する、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項18】
前記多孔質炭素の純度が少なくとも96重量%である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項19】
前記多孔質炭素が、10重量%未満の水素原子を含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項20】
リチウムイオン電池負極組成物がリチウムイオン電池の一部となっている間、前記細孔の50体積%~100体積%が封止されて電解質に到達可能でないままとなるように構成されている、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【請求項21】
請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物を含有する負極と、
正極と、
前記負極と前記正極との間に介在する電解質と、を備える、リチウムイオン電池。
【請求項22】
前記複合粒子における前記Si含有活物質の重量分率は30重量%~87重量%である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国特許法第119条に基づく優先権の主張
本特許出願は、2018年9月14日出願の米国仮特許出願第62/731771号、発明の名称「SUPERCAPACITOR AND BATTERY ELECTRODES COMPRISING BIOLOGICALLY DERIVABLE CARBON」の利益を主張し、それはその全体において参照によりここに明示的に取り込まれる。
【0002】
本開示は、概略として、エネルギー貯蔵デバイスに関し、より詳細には、電池技術、スーパーキャパシタ技術などに関する。
【背景技術】
【0003】
それらの比較的高いエネルギー密度、比較的高い比エネルギー、比較的高い比電力、比較的速い充電、軽量性、並びに長い寿命及びサイクル寿命の可能性にいくらか起因して、高性能な再充電可能な電池及びスーパーキャパシタが、広範な電子デバイス、電気自動車、グリッド蓄電及び他の重要な用途に対して望まれる。
【0004】
一方で、電気化学エネルギー貯蔵技術が商業的な普及を遂げているにもかかわらず、特に、低排出又は無排出のハイブリッド電気又は全電気自動車、家電製品、エネルギー効率の高い貨物船及び機関車、宇宙空間用途及びパワーグリッドにおける潜在的な用途について、電池及びスーパーキャパシタの更なる開発が必要とされている。特に、更なる改良が、(再充電可能なLi及びLiイオン電池、再充電可能なNa及びNaイオン電池、再充電可能なMg及びMgイオン電池、再充電可能なK及びKイオン電池、再充電可能なCa及びCaイオン電池などのような)再充電可能な金属及び金属イオン電池などの種々の再充電可能な電池に望まれている。以下のエネルギー貯蔵デバイス:幾つか例を挙げると、再充電可能なハロゲンイオン電池(Fイオン及びClイオン電池など)、再充電可能な混合イオン電池、再充電可能な水系電池(例えば、pH中性、酸性又は苛性電解質の再充電可能な電池)、電気化学キャパシタ(例えば、スーパーキャパシタ又は二重層コンデンサ)、ハイブリッドデバイス、再充電可能なポリマー電解質電池及びスーパーキャパシタ、再充電可能なポリマーゲル状電解質電池及びスーパーキャパシタ、再充電可能な固体セラミック又は固体ガラス電解質電池、再充電可能な複合電解質電池は、更なる改良から同様に利益を受けることができる。
【0005】
広範な活性(電荷蓄積)物質、広範なポリマーバインダー、広範な導電性添加物及び種々の混合レシピが、電池電極の構成に利用され得る。一部の設計では、活物質は、複合粒子の形態で利用され得る。ただし、電極性能(低く安定した抵抗、高いサイクル安定性、高速性能、許容可能エネルギー、良好な体積容量など)の向上のために、最適な複合調合物が特定される必要がある。またさらに、バインダー、添加物及び混合プロトコルの選択が、特定の種類、特定の物理的及び化学的特性並びに活性粒子の特定のサイズについて発見される必要がある。多くの場合、複合粒子アーキテクチャ及び組成並びに電極の組成の選択は、自明のものではなく、直感的なものではないことがある。
【0006】
多くの異なる種類の再充電可能な電池及びスーパーキャパシタでは、電荷蓄積材料は導電性炭素を含み得る(ナノ)複合粉体として生成され得る。そのような粒子の部分集合として、導電性炭素が、生物学的に由来し得る。原理的には、そのようなクラスの電荷蓄積(ナノ)複合粒子は、スケーラブル(かつ、場合によっては持続可能な)製造及び良好な電荷蓄積性能特性の実現に対する大きな期待を与え得る。残念ながら、どのような種類でどのような特性の生物学的由来炭素がそのような複合((ナノ)複合)粒子の用途に有利となるのかはほとんど不明なままである。さらに、そのような(ナノ)複合粒子を、大容量、高速充電、高速放電及び長いサイクル安定性を含む良好な性能特性となる電極とする有効な処理をどのように実現するのかは、さらに不明である。同様の(ナノ)複合材からなる電池電極の性能は、電極容量負荷が(電池に対して)中程度(2~4mAh/cm2)となる場合に特に悪化し、それが高くなる場合(例えば、4~16mAh/cm2)に一層悪化し得る。一方で、より高い容量負荷は、電池セルのエネルギー密度を増加させるとともにセル製造コストを低減するためには有利である。同様の(ナノ)複合材からなるスーパーキャパシタ電極の性能は、電極容量負荷が約0.1mAh/cm2を超えると特に悪化し得る。一方で、より高い容量負荷は、スーパーキャパシタのエネルギー密度を増加させるとともにセル製造コストを低減するためには有利である。
【0007】
したがって、電池、構成要素、電極材料及び他の関連の材料並びに製造プロセスの改善に対するニーズが未だにある。
【発明の概要】
【0008】
本態様は、エネルギー貯蔵デバイスセルにおける使用のための電極組成物に向けられる。電極は、複合粒子を含み、各複合粒子はバイオマス由来の炭素及び活物質を含む。活物質は約400Kにおいて約10-13torr未満の部分蒸気圧を示し、電極組成物の面積容量負荷は約2mAh/cm2~約16mAh/cm2の範囲である。
【0009】
添付図面は、本開示の実施形態の説明を補助するために提示され、その限定ではなく専ら実施形態の例示のために与えられる。それ以外のことが文脈に記載又は示唆されない限り、図中の異なるハッチング、シェーディング及び/又は塗りつぶしパターンは、異なる構成要素、要素、特徴などの間の対比を図示することのみを意味するものであり、採用される具体的なパターンについて本開示外で規定され得る特定の材料、色又は他の特性の使用を伝えることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】種々の例示実施形態による、ここに記載される構成要素、材料、方法及び他の技術又はそれらの組合せが適用され得る例示の(例えば、Liイオン)電池を示す。
【
図2A】種々の例示実施形態による、バイオマス由来炭素含有複合粒子の形成のための2つの例示のプロセスを示す。
【
図2B】種々の例示実施形態による、バイオマス由来炭素含有複合粒子の形成のための2つの例示のプロセスを示す。
【
図3】種々の例示実施形態による、電流コレクタ上にキャスティング又は堆積されて電解質で充填されたバイオマス由来炭素含有複合粒子を用いて生成された電極の例を示す。
【
図4】種々の例示実施形態による、電流コレクタ上に堆積されて電解質で充填されたバイオマス由来炭素含有複合粒子を用いて生成された電極の他の例を示す。
【
図5】種々の例示実施形態による、セルの充電中に電流コレクタにキャスティングされた電極(例えば、アノード)のバイオマス由来(又は一部の設計では他の種類の)多孔質炭素含有粒子の(少なくとも部分的に空の)細孔に活物質(例えば、金属電池の場合におけるLi若しくはNa金属又は他の金属)が浸透される実施形態の例を示す。
【
図6】本開示の一部の例示実施形態において利用され得る、ランダムな形状の好適な多孔質バイオマス由来炭素粉体の例を示す。
【
図7】種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得る例示のプロセスを示す。
【
図8】種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得る例示の方法を示す。
【
図9】種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得るさらに他の例示の方法を示す。
【
図10】種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得るさらに他の例示の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の態様が、本発明の具体的実施形態に向けられた以下の説明及び関連の図面において開示される。用語「本発明の実施形態」は本発明の全ての実施形態が記載の特徴、有利な効果、プロセス又は動作のモードを含むことを要件とするものではなく、代替の実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく考案され得る。さらに、本発明の周知の要素は、より関連性の高い他の詳細を不明瞭としないように、詳細には記載されないこともあり、又は省略され得る。また、「少なくとも部分的に」との表現は「部分的に、実質的に又は完全に」との解釈が意図されている。
【0012】
本発明のいずれかの実施形態に関してここに記載したいずれの数値範囲も、関連する数値範囲の上限及び下限を定義するだけでなく、上限及び下限が特徴付けられる精度のレベルに従う単位又は増分のその範囲内の各別個の値の示唆的に開示することを意図するものでもある。例えば、7nm~20nmの距離数値範囲(すなわち、1の単位又は増分での精度レベル)は、1の単位又は増分での介在数8から19が明示的に開示されるかのように、[7、8、9、10、・・・、19、20]の集合を(nmで)包含する。他の例では、約-120℃~約-60℃の温度範囲は、増分範囲において-120℃と-60℃の間の(℃での)介在数が明示的に開示されるかのように、約-120℃~約-119℃、約-119℃~約-118℃、・・・約-61℃~約-60℃の温度範囲の集合を(℃で)包含する。さらに他の例では、30.92%~47.44%のパーセント数値範囲(すなわち、100分の1の単位又は増分での精度のレベル)は、100分の1の単位又は増分での30.92と47.44の間の介在数が明示的に開示されるかのように、[30.92、30.93、30.94、・・・、47.43、47.44]の集合を(%で)包含する。したがって、いずれの開示の数値範囲によって包含される介在数のいずれも、それらの介在数が明示的に開示されたかのように解釈されることが意図され、それにより、そのような介在数は、より広い範囲内に入る小範囲の、それ自体の上限及び/又は下限を構成し得る。それにより、各小範囲(例えば、上限及び/又は下限としてより広い範囲からの少なくとも1つの介在数を含む各範囲)は、当該より広い範囲の明示の開示によって示唆的に開示されているものとして解釈されることが意図される。
【0013】
以下の説明は(簡明化及び説明の便宜のため、及び現在のLi技術の普及のため)Li金属及びLiイオン電池の背景で特定の例を説明し得るものであるが、種々の態様が他の再充電可能及び一次電池(Na金属及びNaイオン、Mg金属及びMgイオン、K金属及びKイオン、Ca金属及びCaイオン、並びに他の金属及び金属イオン電池、OH-イオンを有するアルカリ電池、混合イオン電池など)その他(スーパーキャパシタ又は疑似キャパシタとわれることも多い)電気化学キャパシタ、又は(例えば、一方の電極が電池的なものであり、他方の電極が電気化学キャパシタ的なものである)ハイブリッドデバイスに適用され得ることが理解されるはずである。
【0014】
以下の説明は活性粒子内に含有されている活性イオンの背景で特定の例を説明し得るものであるが、種々の態様が、セルの組立て又は充電若しくは放電のある段階における電解質に存在する活性イオンに適用可能となり得ることが理解されるはずである。
【0015】
また、以下の説明はLi含有状態における活物質調合物の特定の例も説明し得るが、種々の態様がLiフリー電極に適用可能となり得ることが理解されるはずである。
【0016】
また、以下の説明はいわゆるインターカレーション型の活物質に属する活性電極材料の特定の例も説明し得るが、種々の態様が(いわゆる合金化型の活物質、真の変換型の活物質、化学変性型の活物質、金属活物質などを含む)いわゆる変換型の活物質、いわゆる疑似容量性活物質、いわゆる二重層コンデンサ型の活物質、その他2以上のメカニズム(例えば、他の多数の組合せの中でも、セル動作中にインターカレーション型及び変換型の双方の電気化学反応を示す活物質、インターカレーション及び疑似容量の双方を示す活物質、又はインターカレーション及び二重層コンデンサの双方を示す活物質)によって電荷を蓄積し得る混合型の活物質(又は活物質の成分)に適用可能となり得ることが理解されるはずである。
【0017】
また、以下の説明は結晶(又はナノ結晶)材料の形態の((ナノ)複合材の成分として)(可逆的にイオン蓄積する)活物質の特定の例も説明し得るが、種々の態様が非常に無秩序又は無定形な活物質に適用可能となり得ることが理解されるはずである。
【0018】
また、以下の説明はバイオマス由来炭素材料の特定の例を説明し得るものでもあるが、種々の態様が、有機前駆体及び無機前駆体の双方から生成されるもの並びに細孔の一部の形成のための(例えば、犠牲)テンプレートを利用するものを含む他の種類の炭素材料に適用可能となり得ることが理解されるはずである。
【0019】
また、以下の説明は(ナノ)複合電極に基づく電気化学セル(電池又は電気化学キャパシタ)の成分として液体有機電解質の特定の例も説明し得るが、種々の態様が、水性電解質、イオン塩電解質、溶融塩電解質、固体セラミック電解質、固体ガラス電解質、(あるイオン(例えば、カチオン)が可動である一方で相対するイオン(例えば、アニオン)がポリマーバックボーンに化学的に結合された単イオン導電固体ポリマー電解質を含む)固体ポリマー電解質、ゲル状電解質、複合材(例えば、ガラス-セラミック、ガラス-ポリマー、セラミック-ポリマー、液体-セラミック、液体-ポリマー、液体-セラミック-ポリマー、液体-ガラス-ポリマー、又は液体-ガラス-セラミック-ポリマー)電解質、及びその他に適用可能となり得ることが理解されるはずである。一部の設計では、2以上の電解質が、単一のセル構成(例えば、電極の表面に浸透/被覆する1つの電解質、電極における残余の細孔を相互貫通し若しくはセパレータ膜の少なくとも一部を構成する活物質及び他の電解質;又は他の説明のための例として、アノードに接触する一方の電解質及びカソードに接触する他方の電解質)において使用され得る。
【0020】
一部の例及び設計では、(デバイス動作温度において)固体の電解質が、上昇した温度において(電解質が液体となる温度において)電極又は活物質内の細孔の少なくとも一部に溶融浸透し得る。一部の例及び設計では、(デバイス動作温度において)固体の電解質が、溶媒に溶解され、電解質(又は活物質)の細孔に浸透し、それに溶媒蒸発(乾燥)が続いてもよい。残余の細孔は、完全に組み立てられたデバイス(Liイオン電池セルなど)において他の電解質によって充填され得る。
【0021】
一部の例及び設計では、ポリマー電解質は、液体状態で電極又は活物質内の細孔の少なくとも一部に浸透し、浸透後(例えば、加熱中又は好適な温度範囲における充分な貯蔵後に)重合し得る。一部の設計では、そのような重合は、セルの使用(適用)前に起こり得る。一部の設計では、そのような重合は、セルの組立て後に起こり得る。一部の設計では、そのような重合は、セルの封止後に起こり得る。
【0022】
電池(Liイオン電池など)の動作中、インターカレーション型活物質は、そのようなインターカレーション化合物の結晶又は無秩序若しくは完全に非晶質(amorphous)な構造に存在する組織内位置(ナノスケール又はナノスケール以下の空隙)へのLiイオンの挿入(インターカレーション)及びそこからのLiイオンの抽出(デインターカレーション)によって動作する。このインターカレーション/デインターカレーションのプロセスは、非Li原子(イオン)(例えば、遷移金属イオンなど)の酸化状態の変化によって達成される。化学結合は、通常はそのようなプロセス中に切断又は再形成することはない。Liイオンは、活物質に/活物質から拡散する。
【0023】
電池(Liイオン電池など)の動作中、変換材料は、ある結晶構造から他の結晶構造に変化する(変換される)(したがって、名称が「変換」型である)。(例えば、Liイオン)電池動作中に、Liイオンは、リチウム合金を形成する合金化型材料に挿入される(したがって、名称が「合金化」型である)。「合金化」型電極材料(一般的には金属及び半金属)は、「変換」型電極材料の下位クラスと考えられることもある。「合金化」型電極材料はまた、合金化材料の機械的又は電気化学的安定性を高め、又は脱リチウム状態におけるそれらの電気伝導性(それらはインターカレーション型材料であり得る)を高めるのに役立ち得る少量(例えば、約0.1%~50重量%)の添加物として他の種類の変換材料(酸化物、水素化物、窒化物など)その他(非常に低い、例えば、約0.01%~30%の合金化材料重量容量を示し得る)少ない活物質を含み得る。Liイオンと合金化又は変換材料との間の電気化学反応プロセスは、当初の化学結合の一部の切断及び新たな化学結合の形成によって達成され得る。一部の設計の理想的な場合において、プロセスは幾らか可逆的であり、電池動作中に活物質(すなわち、Li)のわずかな(例えば、好ましくは電池の寿命中に約30%以下の)消失しか起こらない(又は全く起こらない)。
【0024】
以下の説明は金属イオン電池の背景における特定の例を説明し得るものであるが、本開示の種々の態様から利益を受け得る他の変換型の電極は、アルカリ電池、金属ハイブリッド電池、鉛酸電池などのような広範な水系電池で使用される種々の化学作用を含む。これらは、幾つか例を挙げると、これらに限定されないが、種々の金属(鉄、亜鉛、カドミウム、鉛、インジウムなど)、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物及び金属水素化物を含む。
【0025】
以下の説明は金属イオン(例えば、Liイオン)又は金属(例えば、Li)電池のための金属フッ化物電極の文脈で特定の例を説明し得るが、(フッ素を含むものを含む)他の変換型の電極が本開示の種々の態様から利益を受け得る。そのような変換型の活性電極材料の例は、これらに限定されないが、とりわけ、種々の金属オキシフッ化物、スルホフッ化物、クロロフッ化物、オキシクロロフッ化物、オキシスルホフッ化物、フルオロホスフェート、スルホホスフェート、スルホフルオロホスフェート、金属の混合物(例えば、Fe、Cu、Cu-Fe混合物、他の合金、部分的に酸化された金属及び金属合金など)及び塩((LiFを含む)金属フッ化物、(LiCl)を含む金属塩化物、金属オキシフッ化物、金属酸化物、金属スルホフッ化物、金属フルオロリン酸塩、金属硫化物、金属オキシスルホフッ化物、それらの種々の組合せなど)並びにハロゲン、硫黄、酸素若しくはリン又はそれらの元素の組合せを含む他の塩を含み得る。
【0026】
図1は、種々の実施形態による、ここに開示される構成要素、材料、方法及び他の技術又はそれらの組合せが適用され得る例示の金属又は金属イオン(例えば、Li又はLiイオン)電池を示す。ここでは円筒形電池を例示目的で示すが、角柱又はパウチ(積層タイプ)電池を含む他のタイプの構成も適宜使用され得る。例示の電池100は、負極のアノード102、正極のカソード103、アノード102とカソード103の間に挟まれたセパレータ104、セパレータ104を含浸する(並びにアノード102及びカソード103の双方を含浸する)電解質(不図示)、電池ケース105、及び電池ケース105を封止する封止部材106を含む。固体電解質の場合の一部の設計では、固体電解質膜が、セパレータ104として作用し得る。
【0027】
液体電解質及び固体電解質の双方が、ここでの設計について使用され得る。この種のLi又はNa系電池についての従来の電解質は、一般に有機溶媒の混合物(カーボネートの混合物など)において単一のLi又はNa塩(Liイオン電池に対するLiPF6及びNaイオン電池に対するNaPF6又はNaClO4塩など)で構成される。本開示の1以上の実施形態の文脈において好適となり得る他の一般的な有機溶媒は、ニトリル、エステル、スルホン、スルホキシド、リン系溶媒、シリコン系溶媒、エーテル及びその他を含む。そのような溶媒は、修飾(例えば、スルホン酸化又はフッ素化)され得る。電解質はまた、イオン性液体(一部の設計では中性イオン性液体;他の設計では酸性又は塩基性イオン性液体)を含み得る。電解質はまた、種々の塩の混合物(例えば、再充電可能なLi及びLiイオン電池に対する複数のLi塩の混合物又はLi及び非Li塩の混合物)を含み得る。
【0028】
水性Liイオン(又は水性Naイオン、Kイオン、Caイオンなど)電池の場合では、好適な電解質は、幾つか例を挙げると、無機Li(又はNa、K、Caなど)の塩(Li2SO4、LiNO3、LiCl、LiBr、Li3PO4、H2LiO4P、C2F3LiO2、C2F3LiO3S、Na2O3Se、Na2SO4、Na2O7Si3、Na3O9P3、C2F3NaO2など)の溶液(例えば、水溶液又は混合水性有機溶液)を含み得る。これらの電解質はまた、幾つか例を挙げると、(簡明化のためにLiに関して列挙される)カルボキシル酸の金属塩(HCOOLi、CH3COOLi、CH3CH2COOLi、CH3(CH2)2COOLi、CH3(CH2)3COOLi、CH3(CH2)4COOLi、CH3(CH2)5COOLi、CH3(CH2)6COOLi、CH3(CH2)7COOLi、CH3(CH2)8COOLi、CH3(CH2)9COOLi、CH3(CH2)10COOLi、CH3(CH2)11COOLi、CH3(CH2)12COOLi、CH3(CH2)13COOLi、CH3(CH2)14COOLi、CH3(CH2)15COOLi、CH3(CH2)16COOLi、CH3(CH2)17COOLi、CH3(CH2)18COOLi、及びxが50までの範囲の式CH3(CH2)xCOOLiを有するその他のものなど);スルホン酸の金属塩(例えば、CH3SO3Li、CH3CH2SO3Li、C6H5SO3Li、CH3C6H4SO3Li、CF3SO3Li、[CH2CH(C6H4)SO3Li]n及びその他のものなど、Rを有機ラジカルの金属塩としてRS(=O)2-OH)及び他の種々の有機金属系試薬(種々の有機リチウム試薬など)などの有機Li(又はNa、K、Caなど)の塩の溶液を含み得る。そのような溶液はまた、無機塩及び有機塩の混合物、種々の他の塩混合物(例えば、Li塩並びに非Li金属及び半金属の塩の混合物)、場合によっては水酸化物(LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2など)並びに場合によっては酸(有機酸を含む)を含み得る。一部の設計では、そのような水性電解質は、(電解質の総重量に対して約0.00001重量%~約40重量%の)中性、酸性又は塩基性イオン性液体を含み得る。一部の設計では、そのような「水性」(又は水含有)電解質はまた、水に加えて、(電解質の総重量に対して約0.00001重量%~約40重量%の)有機溶媒を含み得る。好適な有機溶媒の説明のための例は、カーボネート(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート及びその他)、種々のニトリル(例えば、アセトニトリルなど)、種々のエステル、種々のスルホン(例えば、プロパンスルホンなど)、種々のスルトン、種々のスルホキシド、種々のリン系溶媒、種々のシリコン系溶媒、種々のエーテル及びその他を含み得る。
【0029】
ある従来のLiイオン電池の電解質において使用される最も一般的な塩は、例えば、LiPF6であるが、本開示の1以上の実施形態の背景においても好適となり得る、あまり一般的でない塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiB(C2O4)2、ジフルオロ(シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))、種々のリチウムイミド(SO2FN=(Li+)SO2F、CF3SO2N=(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N=(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N=(Li+)SO2CF2CF3、CF3SO2N=(Li+)SO2CF2OCF3、CF3OCF2SO2N=(Li+)SO2CF2OCF3、C6F5SO2N=(Li+)SO2CF3、C6F5SO2N=(Li+)SO2C6F5又はCF3SO2N=(Li+)SO2PhCF3及びその他など)及びその他を含む。Mgイオン、Kイオン、Caイオン及びAlイオン電池に対する電解質は、それらの電池は開発の初期段階にあるので、より新奇なものとなり得る。これらの新奇な電解質は、異なる塩及び溶媒を含み得る(場合によっては、イオン性液体が特定の用途について有機溶媒に代替し得る)。一部の設計では、2以上のLi塩が、電解質において有利に使用され得る。一部の設計では、Liイオン電池のための電解質は、非Li塩を有利に含むこともある。
【0030】
ある水系電池(とりわけ、ニッケル水素電池を含むアルカリ電池など)におけるある電解質は、アルカリ溶液(例えば、KOH溶液及びLiOH溶液の混合物)を含み得る。水系電池(鉛酸電池など)におけるある電解質は、酸性水溶液(例えば、H2SO4水溶液又はHCl水溶液)を含み得る。水系電池におけるある電解質は、有機溶媒を添加物として含み得る。水系電池におけるある電解質は、2以上の有機溶媒、無機液体又は界面活性剤を電解質の添加物又は実質的成分として含み得る。
【0031】
Li又はLiイオン電池において利用される従来の電極は、(i)活物質、導電性添加物、バインダー溶液、及び場合によっては界面活性剤又は他の機能性添加物を含むスラリーを形成すること;(ii)金属箔(例えば、Li又はLiイオン電池において使用されるほとんどのアノードに対するCu箔、Li又はLiイオン電池で使用されるほとんどのカソードに対する、同様にチタン酸リチウムなどのLiイオン電池において使用される高電位アノードに対するAl箔)にスラリーをキャスティングすること;(iii)溶媒を完全に蒸発させるようにキャスティングされたスラリーを乾燥させること;及び(iv)(例えば、圧力カレンダ加工によって)選択的に電極を高密度化することによって生成され得る。そのような電極作製のための溶媒によるプロセスを用いる代わりに、一部の設計では、これに限定されないが、静電コーティングを含む(溶媒を使用しない)乾式電極加工を用いることが有利となり得る。
【0032】
Li及びLiイオン電池において利用される従来のカソード材料は、インターカレーション型のものであり得る。金属イオンは、電池の充電又は放電中にそのような材料の組織内位置にインターカレーションされてそれを占有する。そのようなカソードは、電極において使用される場合に非常に小さな体積変化しか起こさない。そのようなカソードは、通常は高い密度(例えば、約3.8~6g/cm3)も示し、スラリーに混合するのは比較的容易である。ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデン(2フッ化物)(PVDF)は、それらの電極において使用される最も一般的なバインダーの1つである。カーボンブラックは、それらの電極において使用される最も一般的な導電性添加物である。ただし、そのようなカソードは、比較的小さな重量容量及び体積容量(例えば、それぞれ220mAh/g未満及び1000mAh/cm3未満)を示す。
【0033】
多くの用途及び電極設計において、インターカレーション型のカソード及びアノード材料を有する電池は、高い充放電速度(例えば、約10~60分以内での最大容量の約80%までの充電)を示し得る。一方で、(例えば、さらに高速な性能(例えば、1~600秒以内で最大容量の約80%までの充電)のための、又は低温若しくは高温でのより良好な安定性若しくはより良好な性能のための)一部の用途では、そのようなインターカレーション型の活物質を含む複合材を生成し、それらを電池又はハイブリッドデバイスのための電極に使用することが有利となり得る。一部の設計では、純粋なインターカレーション型の活物質に代えて又はそれに加えて、いわゆる疑似容量性材料が利用されてもよい。電極は、100%そのような複合材からなっていてもよいし、あるいは複合材及び「通常の」活物質の混合物からなっていてもよい。そのような「混合された」電極における複合粒子の好適な質量分率は、用途の要件及び要求に応じて(バインダー、導電性及び他の添加物の重量、その他電流コレクタの重量を考慮しない)所与の電極における全活物質粒子の約1~約99重量%の範囲となり得る。一部の設計では、約1重量%未満の分率は、低過ぎて実質的な差異をもたらすことはできない。同様に、一方、一部の設計では、約99重量%より高い分率は、高過ぎて電極混合の複雑さ及びコストの望ましくない増加を招き、電極特性に実質的な犠牲を何ら伴うことなく複合材の約100重量%に置き換えられた方がよいことになる。ただし、一部の用途に対して(約0~約100重量%の)任意の分率が適切となり得る。一部の設計では、炭素の高い電気伝導性、Li及び他のイオンに対する許容可能な移動性並びに良好な化学的及び電気化学的抵抗に起因して、そのような複合材が炭素を含むことがさらに有利となり得る。一部の設計では、(例えば、高い電気伝導性を達成するために、又は他の性能上の利益のために)そのような炭素が大部分(例えば、約90~100%)においてsp2-結合炭素原子を含むことが有利となり得る。一部の設計では、(例えば、より高い速度性能のために)炭素が(例えば、約1S/m~約106S/mの範囲での電気伝導性を有して)充分に電気伝導性を有することが有利となり得る。一部の設計では、(とりわけ、性能、形態、スケーラビリティ及びコスト上の理由のために)炭素が(天然の再生可能バイオマスを含む)バイオマスに由来することが有利となり得る。
【0034】
なお、バイオマス由来炭素は、通常は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)及び他の技術によってミクロン以下のスケールにおいてそれらの形態を観察することによって、合成樹脂、無機炭素源又は他の炭素源に由来する炭素から容易に区別され得る。またさらに、異なるバイオマス源からの炭素は、バイオマス源が通常は(例えば、炭素化、精製、気孔率の向上などの後に)最終炭素生成物に反映される構造的特徴を示すことによっても区別され得る。
【0035】
一部の設計では、そのような炭素含有複合電極の(高速サイクルに対する)速度性能特性及びサイクル安定性は、電極面積容量負荷が約0.1~0.2mAh/cm2を超える場合に、(例えば、1~600秒以内の)超高速充電を必要とする用途に対しては特に不満足なものとなり、電極面積容量が約1~2mAh/cm2を超える場合に一層不満足なものとなり、電極面積容量が約4mAh/cm2を超える場合に、さらに一層不満足なものとなり得る。一方で、より高い負荷は、エネルギー貯蔵デバイスのコストを低減し、それらのエネルギー密度を増加させるのに有利となる。本開示の1以上の実施形態は、0.1~0.2mAh/cm2を超える電極面積負荷に対して、さらには1~2mAh/cm2~約4の範囲の負荷に対して、さらには4mAh/cm2を超える負荷に対して満足な性能を可能とするバイオマス由来炭素含有複合電極の合成プロセス、組成並びに種々の物理的及び化学的特性に向けられる(例えば、一部の設計では、電極組成物の面積容量負荷は約2mAh/cm2~約16mAh/cm2の範囲であってもよい)。
【0036】
一部の設計では、そのようなインターカレーション型(又は疑似容量型)活物質及びバイオマス由来炭素を含む複合材が、好ましくは約20重量%~約98重量%(一部の設計では、約40重量%~約85重量%)といった活物質の有意な重量分率を有することが有利となり得る。一部の設計では、バイオマス由来炭素に対する活性インターカレーション型(又は疑似容量型)材料の重量比は、好ましくは約1:4~約50:1(一部の設計では、約1:3~約9:1)の範囲であってもよい。過小な分率のインターカレーション型(又は疑似容量型)活物質は、低い体積容量(又はスーパーキャパシタの場合には容量)をもたらしてしまう一方で、過大なインターカレーション型(又は疑似容量型)活物質の分率は速度及び安定性の低減をもたらし得る。
【0037】
(例えば、より高い充電速度のための)一部の設計では、そのようなインターカレーション型(又は疑似容量型)材料を有するバイオマス由来炭素含有複合材が、細孔を含むことが有利となり得る。一部の設計では、複合材における細孔の体積が約0.01cm3/g~約1.5cm3/g(一部の設計では、約2体積%~約75体積%)の範囲であることが有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくとも一部分(例えば、約10~100体積%、例えば、約20~100体積%;一部の設計では、約50体積%~約100体積%)が相互接続されたままであり、かつ電解質に到達可能であることが有利となり得る一方で、電極組成はエネルギー貯蔵デバイスセルの一部となる。一部の設計では、細孔の少なくとも一部分(例えば、約1~100体積%)が隣接細孔と相互接続され、かつ複合粒子の中心から到達可能であることが有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくとも一部分(例えば、約1~100体積%)が約0.3nm~約600nmの範囲の特徴寸法(例えば、直径又は幅)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともある分率(例えば、約0.1~30体積%)が、約5nm~約50nmの範囲の特徴寸法を示すことが(例えば、高い速度性能を実現しつつ電極の体積容量を最大化するのに)有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともある分率(例えば、約30~100体積%)が、約0.3nm~約10nmの範囲の特徴寸法を示すことが(例えば、電極の体積容量を最大化し、又は安定性を向上するのに)有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともある分率(例えば、約30~100体積%)が、約0.3nm~約5nmの範囲の特徴寸法を示すことが(例えば、電極の体積容量を最大化し、又は安定性を向上するのに)有利となり得る。(例えば、電極の体積容量及び体積エネルギー貯蔵特性を最大化する)一部の設計では、そのような複合材における細孔の体積分率が小さく(例えば、約0.001~5体積%)又は中程度(例えば、約5~20体積%)であることが有利となり得る。(例えば、電力若しくはエネルギー密度又はサイクル安定性などのエネルギー貯蔵特性を最大化し、又はこれら若しくは他の特性間の折衷を実現する)一部の設計では、複合電極材料のいわゆるBrunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積(SSA)又は密度汎関数理論(DFT)SSA(例えば、N2、Ar、CO2又はH2収着技術を用いて測定され、BET又はDFT法を用いて分析されるもの)が約0.5m2/g~約2000m2/g(一部の設計では、約10m2/g~約1000m2/g、一部の設計では、約10m2/g~約2000m2/g)の範囲であることが有利となり得る。より大きなSSAは、より高い充電又は放電の速度性能を可能とし得るが、より高い分率(速度)の何らかの望ましくない(例えば電解質との)副反応ももたらし得る。そのような望ましくない(例えば、自己放電、ガス化、堆積物の形成、電解質の不可逆的消費、又は電極若しくはセルの膨張などをもたらす)反応の速度は、動作電極電位及び電解質組成に依存し得る。許容可能な速度は、特定の用途に依存する。ただし、多数の電解質システムについて、並びにほとんどのセル設計及び用途について、BET SSAが、約5m2/g~約1000m2/gの範囲であることが一般に好適となり得る。一部の設計では、BET SSAが、約10m2/g~約200m2/gの範囲であることが好適となり得る。一部の設計では(特に、より高いBET SSA複合材について)、活性(例えば、インターカレーション型)物質が保護表面(シェル)層によって(電解質との望ましくない相互作用から)保護されることが有利となり得る。一部の設計では、保護表面層の好適な厚さは、約0.3nm~約60nmの範囲であり得る。より小さな厚さでは一部の用途にはあまり影響はないが、より大きな厚さは、一部の用途に対して速度性能の低下又は体積及び重量エネルギー密度の低下をもたらし得る。一部の設計では、保護表面層は、電池の組立て又は動作の少なくともある時間中に電解質にさらされていたことになる活物質/粒子の少なくとも一部分(例えば、外表面積の約1~100%)を直接コーティングし得る。一部の例では、保護表面層は、炭素を含み得る。一部の例では、保護表面層は、酸化物、フッ化物、オキシフッ化物、硫化物、窒化物、酸窒化物(oxynitride)、フッ化窒化物、リン酸塩、フルオロリン酸塩(リン酸フッ化物)又は金属若しくは半金属の原子を含む他の材料を含み得る。一部の設計では、保護表面層材料は、以下の元素:遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)など)、ランタン又はランタノイド(La、Ce、Gd、Nd、Euなど)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In) カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)及び炭素(C)のうちの1つ以上を含み得る。
【0038】
(例えば、電極均一性及び電池安定性を最大化する)一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合電極粒子が、約5ナノメートル(nm)~約150ミクロンの範囲に平均特徴寸法(例えば、直径)を示すことが有利となり得る。過小な粒子サイズは、一部の用途については高い充填密度を実現するのを困難とし得る。同時に、より小さな微粒子は、小さな粒子間細孔サイズをもたらすことにもなり、それは電極における速度性能を低下させ、一部の設計では(特に、電池が高速又は低温で動作している場合に)より速いセル劣化をもたらし得る。一方、過大な平均粒子サイズは、電極容量負荷の局所的なばらつきをもたらし、一部の設計では(特に、電池が低温又は高速で動作している場合に)より速いセル劣化をもたらし得る。複合粒子サイズ、複合材における細孔の相互接続性、並びに複合材料内のイオン及び電子輸送性は、粒子レベルの速度性能に影響を与え得る。一部の設計では、過大な平均粒子サイズはまた、低い(又は所与の用途について充分には良好ではない)充電又は放電速度性能をもたらし得る。種々の電極及び電解質特性、電池セル動作条件(例えば、電流、速度、温度、充電電圧、電極動作電位など)、複合粒子の気孔率及び形状並びに他のパラメータが、最適な複合粒子サイズに影響を与えるが、一部の設計では、そのような複合電極粒子が約300nm~約20~30ミクロン(一部の設計では、約0.5ミクロン~約10ミクロン)の範囲に平均特徴寸法を示すことが有利となる。好適な電極レベルの気孔率(ほとんどの場合、電解質によって充填された電極における空間の体積分率)は、バインダーの体積分率、導電性及び他の添加物の体積分率、並びに活性(複合材)粒子の体積分率(及びそれらの開気孔率)、電解質導電性、電極厚、電池動作及び他の特性によって影響を受けることがある。ただし、約1体積%~約75体積%の範囲の値が、一部の用途に対しては許容可能である。より小さな体積分率は、一部の用途では遅い充電又は放電速度、及び速いセル劣化をもたらし得る。より大きな分率は、一部の用途では、体積エネルギー密度及び速度性能を低下させてしまい、電池コストを増加させてしまうことになる。一部の設計では、好適な電解質で占有(充填)された電極の体積分率は、有利には約1体積%~約75体積%の範囲であってもよい。一部の設計では、好適な電解質で占有(充填)された電極の好適な体積分率は、約5体積%~約60体積%のさらに狭い範囲(又はより狭い範囲、例えば、約10体積%~約40体積%)となり得る。
【0039】
一部の設計では、(バイオマス由来炭素含有複合電極粒子内の)インターカレーション型の粒子又は疑似容量型の粒子の平均サイズは、約0.5nm~約200nm(一部の設計では、好ましくは、約1nm~約60nm;一部の設計では、約2nm~約20nm)の範囲となる。過大なサイズは、一部の設計では、充分に速い電気化学反応を与えない場合がある一方で、過小なサイズは、そのような複合材内のインターカレーション型又は疑似容量型の粒子の望ましくない副反応又は過小な質量負荷をもたらし得るので、一部の設計では、それらの複合粒子で構築されるエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー特性を制限してしまう。
【0040】
一部の設計では、(複合電極粒子の)インターカレーション型粒子又は疑似容量型粒子は、好ましくは、バイオマス由来炭素粒子の細孔の内部に位置し(例えば、それによって閉じ込められ)得る。一部の設計では、そのような細孔の少なくとも有意な部分(例えば、約20~約100%)が開放されたままであると好適となり得る。一部の設計では、複合粒子における活物質の約50~100重量%が、バイオマス由来炭素粒子において画定される細孔内に閉じ込められ得る。
【0041】
一部の設計では、炭素含有複合電極に(セル組立て及び電池動作のために電解質で充填される)2種類の細孔:(i)(「通常の」電池又はスーパーキャパシタ電極におけるような)粒子間又は多孔質複合粒子内の「通常の」種類の細孔;(ii)(平均の)「通常の」細孔よりも大きく、電極の表面から電流コレクタ表面に向かって伝搬する追加の「チャネル」細孔、を生成することが有利となり得る。そのような「チャネル」細孔は、一部の用途では、電極表面からの電解質の浸透を大幅に高め、電池セルレベルの速度性能の強化に役立ち得る。一部の設計では、それらの「チャネル」細孔は直線状であることが(例えば、電極の表面からバルク及び底部へのイオンの移動の屈曲度を最小化するのに)有利となり得る。それらの「チャネル」細孔が電極厚の約25%を超えて伝搬すること(一部の設計では、電流コレクタに達する電極全体を介する経路を含み、電極厚の約50%を超えて;例えば、イオン輸送をより有意に高めること)がさらに有利となり得る。一部の設計では、それらの「チャネル」細孔が規則的に(例えば、六角形、正方形、斜方形又は矩形パターンで)離隔されることが(例えば、電極の単位面積内の所与数のチャネル細孔あたりの、電極における全粒子から「チャネル」細孔の表面までの最小の最大距離を実現するのに)有利となり得る。なお、一部の設計における「通常の」インターカレーション活物質で構成された「通常の」電極は、そのような「チャネル」細孔を有さない。これは、一部の設計における「通常の」電極は超高速充電(例えば、約1~600秒)を必要としないことにある程度起因する。一方、一部の設計では、炭素含有複合電極粒子は、実質的に速く充電及び放電し得る(イオンを挿入及び抽出する)ので、セル速度性能は電極レベルのイオン輸送運動によっては制限されないことが重要となる。そのため、一例として、そのような「チャネル」細孔の存在は、上述の炭素含有複合材において有利となり得る。これは、複合材含有電極の中程度の厚さ(例えば、約25~75ミクロン/コーティング片面)について、そして大きな厚さ(例えば、約75~2000ミクロン/コーティング片面)についてはより一層、特に重要となり得る。またさらに、多数のインターカレーション型(又は疑似容量型)電極材料は、充電及び放電中に少量でも有意な体積変化(例えば、約0.1~12体積%)を示すので、一部の設計では電池動作中に電極内の応力を誘発し得る。「通常の」電極の比較的遅い動作中では、そのような応力は比較的均一に電極内に分散され、機械的故障をもたらすことはない。一方、複合材含有電極が「通常の」電極よりも大幅に速く充電又は放電する場合、応力のレベルはより高くなることがあり、場合によっては電極の機械的故障の一因となり得る。「チャネル」細孔の存在は、そのような応力を、一部の用途について許容可能なレベル以下に低減し得る。本開示の実施形態による複合粒子設計では、複合粒子内の炭素の存在、そして細孔の存在が応力軽減に寄与することができ、「チャネル」細孔の存在も更なる応力軽減及び/又は他の性能獲得に有利となり得る。一部の設計では、「チャネル」細孔の平均幅、直径又は厚さが約1ミクロン~約500ミクロン(より好ましくは約5ミクロン~約200ミクロン)の範囲であることが有利となり得る。電極内の1ミクロン未満のチャネル細孔は、一部の用途については(特に約1ミクロンを超えるサイズの複合粒子については)充分な効果を与えない場合があり、生成が高価なもの又は困難となり得る。約500ミクロン超の細孔は、エネルギー密度を低下させ、アノード及びカソードにおける容量の局所的な不一致をもたらすので、一部の用途では、特にデバイスが急速に充電又は放電する場合に(例えば、1時間よりも速く、10分よりも速い場合により一層)故障の一因となり得る。一部の設計では、電極における「チャネル」細孔間の平均間隔が約10ミクロン~約10,000ミクロン(例えば、より好ましくは約50ミクロン~約1000ミクロン)の範囲であることが有利となり得る。10ミクロン未満の間隔は、一部の設計では生成するのが一層困難となり、最も重要なこととして、デバイスの体積エネルギー密度の低下をもたらし得る。10,000ミクロン超の間隔は、あるとしても限定的な利益しか与えないことになる。「チャネル」細孔の形状は、異なる用途間で異なり得る。一部の例示的な例では、電極内の「チャネル」細孔の形状は、数ある中でもとりわけ、円柱/円筒、スリット状(又はクラック状)、V字状、キャタピラ状であってもよい。一部の設計では、電極内の「チャネル」細孔は、イオン輸送速度をさらに高めるとともに応力を最小化するように複数の分岐を示してもよい(例えば、樹状突起状であってもよい)。「チャネル」細孔の体積分率は、(電極の体積分率として)約0.01体積%~約30体積%の範囲であってもよい。より大きな「チャネル」細孔分率は、一部の用途ではセルの体積エネルギー特性の大幅な低下を招いてしまうことになる。さらに、場合によっては、より大きな「チャネル」細孔分率は、電極の機械特性を低下させ、早期故障の一因となり得る。「チャネル」細孔の形成は、機械的構成要素によって(例えば、圧子のアレイを用いることによって)、犠牲テンプレートを用いることによって、電極乾燥中に「クラック」を形成することによって、レーザ微細加工及び/又は他のメカニズムを用いることによって、誘導され得る。一部の設計では、電極における「チャネル」細孔は、電極カレンダ加工(高密度化)の前又は後に誘導され得る。一部の設計では、より有利な(例えば、より信頼性が高く、安価であり又は速い)「チャネル」細孔形成プロセスを用いつつ好適な電極機械特性、密度及び細孔サイズの有利な組合せを実現するには、部分的なカレンダ加工(高密度化)の後であるが最終カレンダ加工(高密度化)の前に細孔を誘導することが有利となり得る。一部の設計では、電極への「チャネル」細孔の導入中又はその後に(ただし、電極に電解質を充填する前に)(例えば、カレンダ加工中にそれに付加される熱に加えて又はそれとは別に)電極を加熱することが有利となり得る。加熱することによって、一部の設計では、誘発される応力の一部が軽減され、又は電極の機械特性が有利に変化し得る。好適な温度は、異なり得るものであり、複数の要因(例えば、(それがある場合には)使用されるバインダーの種類及び熱特性、電流コレクタの熱安定性、電極の熱安定性、導電性又は他の添加物の熱安定性、電極厚など)に依存し得る。一例では、加熱温度は、約40℃~約200℃(ただし、ある特殊な設計では、より高い温度が使用されることもある-例えば、約600℃まで)の範囲であってもよい。
【0042】
(例えば、速度性能又は電池安定性を最大化する)一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合電極が、電極の表面から電流コレクタに向かった組成の変化を示すことが有利となり得る。例示的な一例では、電極の上部の約20~50%が電極の下部の約50~80%よりも有意に高い(例えば、約10%~約300%高い)(電解質で充填されるべき)気孔率を示すことが(例えば、速度性能を最適化するのに)有利となり得る。ここでいう電極の「下部」はそれぞれの電流コレクタに最も近い電極の部分であり、電極の「上部」はそれぞれの電流コレクタから最も遠い電極の部分である。他の例示的な例では、電極の上部の約20~50%が下部の約50~80%よりも有意に小さい(例えば、約20%未満~約30倍未満の)複合粒子の平均サイズを含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。さらに他の例示的な例では、電極の上部の約20~50%が下部の約50~80%よりも有意に多い細孔複合粒子(例えば、複合粒子内に約20%~約50倍の体積分率の細孔を有する複合粒子)を含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。さらに他の例示的な例では、電極の下部の約20~50%が上部の約50~80%よりも有意に多い導電性添加物(例えば、約10%~約5倍大きい質量分率の導電性添加物)を含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。さらに他の例示的な例では、電極の下部の約10~50%が上部の約50~90%よりも有意に高いバインダー含有量(例えば、単位電極質量又は体積あたり約10%~約50倍多い質量分率又は体積分率のバインダー)を含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。(例えば、速度性能又は電池安定性を最大化する)一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合電極が電流コレクタ(例えば、金属箔、多孔質金属箔、金属メッシュ又は電流コレクタの他の好適な種類)と電極コーティング(例えば、複合粒子、導電性添加物及びバインダーを含むもの)との間に導電性中間層を含むことが有利となり得る。そのような導電性中間層は、接触抵抗を低減し(これは急速充電又は放電を受けるデバイスについて特に重要となり得る)、電極の付着性及び機械的安定性をさらに強化し得る。さらに、そのような中間層によって(例えば、より速いイオン輸送のために)電極のバルクにおけるバインダーの分率を低減することが可能となり得る。一部の設計では、そのような中間層の厚さは、約0.005ミクロン~約5ミクロン(好ましくは、約0.05ミクロン~約0.5ミクロン)の範囲であってもよい。より大きな厚さによって、一部の用途ではエネルギー密度が低下し、最初のサイクル損失がより高くなり得る。ただし、過小な厚さ(例えば、約0.005ミクロン未満)は、一部の用途では、電流コレクタの付着性を向上すること及び界面抵抗を低減することにおいてあまり有効とならない場合もある。中間層は、導電性添加物(カーボンナノチューブ(単層、二層又は多層のいずれか)、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンブラック、膨張化グラファイト、グラフェン、又は他の種類の導電性カーボン、金属ナノワイヤ、炭素若しくは金属被覆ファイバ若しくはナノファイバ、導電性ポリマーなど)又は幾つかの別個の導電性添加物及びバインダー(例えば、ポリマーバインダー又は炭化/黒鉛化ポリマーバインダー)の混合物を含み得る。一部の設計では、中間層は、スプレーコーティングプロセスによって、キャスティングによって、スラリー懸濁液からの蒸着の他のメカニズムによって、又は静電沈着若しくは他のメカニズムによって堆積され得る。一部の設計では、中間層が(例えば、スパッタリングを含む化学蒸着(CVD)又は物理蒸着(PVD)などの蒸着技術によって、溶液成長法によって又は電着によってなど)電流コレクタの表面に成長又は堆積されることが有利となり得る。一部の設計では、(例えば、電池使用前に電解質で充填された)中間層の気孔率は、最小で約0%~最大で約99%の範囲であってもよい。一部の設計では、中間層は、(例えば、電池セルにおける熱暴走を防止する)安全構成として(例えば、例示的な一例では、例えば約80~150℃などの所定温度以上の過熱を受けて)電流コレクタから意図的に分離されるように設計され得る。これは、例えば、所定温度以上において収縮し、及び/又は電流コレクタとの付着性を失うポリマーを用いることによって実現され得る。あるいは、他の例示的な例として、中間層は(例えば、相転移に起因して)所定温度以上で絶縁性となるようにしてもよい。
【0043】
一部の設計では、結果として生成されたバイオマス由来炭素/インターカレーション型活物質複合粒子は、(例えば、電気伝導性を高めるため、イオン伝導性を高めるため、電解質による湿潤性を高めるため、電解質と活物質との間の望ましくない相互作用を防止するため、又は他の有利な目的のために)機能的シェル化層にさらに(少なくとも部分的に)内包されてもよい。一部の設計では、シェル化材料層は、(例えば、活物質の湿潤性又は核形成時間に対する炭素表面の湿潤性又は核形成時間を異ならせることによって)活物質又は炭素壁のいずれかを優先的にコーティングし得る。一部の設計では、機能的シェル化層の体積分率は、複合粒子の体積の約0.001体積%~約20体積%の範囲であってもよい。一部の設計では、機能的シェル化材料層は、そのイオン蓄積能力の観点で「活」物質としても作用し得る(例えば、単位質量あたりの容量mAh/g又は単位体積あたりの容量mAh/ccの単位で表される場合、活物質のものの約0.1%~約75%の範囲に容量を示し得る)。一部の設計では、そのようなシェル化材料層は、蒸着技術(とりわけ、CVD、ALDなど)、電気化学堆積、電着、無電解堆積、電気泳動堆積、レイヤーバイレイヤー堆積若しくは種々の他の溶液に基づく堆積技術、又は溶液堆積及び蒸着の双方の組合せを用いることによって堆積され得る。一部の設計では、複合材は、シェル化材料堆積の後に、複合材特性を強化するように、好適な気体環境(例えば、とりわけ、N2、Ar又はHeなどの不活性ガス)又は真空において(例えば、約100~約1000℃の温度で)熱処理されてもよい。一部の設計では、シェル化材料層の平均厚は、粒子サイズ、そのような層のイオン伝導性及び電気伝導性並びに/又は他の特性に応じて変わり得る。一部の設計では、シェル化材料層の好適な厚さ(例えば、平均厚)は、約0.2nm~約200nmの範囲であってもよいが、用途によってはより大きな厚さも(ただし、おそらくは電極の体積容量の低下又は電極気孔率の低下という犠牲の下で)許容可能となり得る。一部の設計では、シェル化材料層は、炭素(C)(例えば、一部の設計では、グラファイト若しくはグラファイト状炭素、乱層構造炭素又は最も非晶質な炭素におけるように、大部分が導電性sp2結合の炭素)を含んでいてもよい。一部の設計では、種々の炭素原子含有溶媒又は種々の炭化水素(例えば、C5H12、C5H10、C5H8、C6H6など)の蒸気が、炭素堆積のための前駆体として有利に使用されてもよい。一部の設計では、炭化水素ガス(例えば、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H6、C3H8、C3H4、C4H10、C4H8、C4H6など)又はそれらの組合せが、炭素堆積の前駆体として有利に使用され得る。一部の設計では、(ピッチなどのバイオ由来のものを含む)粘弾性ポリマーが、炭素層形成のための前駆体として使用されてもよい。一部の設計では、ピッチは、石油、コールタール、(木材を含む)植物に由来し得る。一部の設計では、シェル化材料層は、2以上の材料の複合材であってもよい。一部の設計では、シェル化材料は、フレーク形状粒子を含み得る。一部の設計では、シェル化材料は、以下の元素:遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(とりわけ、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)など)、ランタン又はランタノイド(La、Ce、Gd、Nd、Euなど)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In) カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)及び炭素(C)のうちの1つ以上を含み得る。一部の設計では、シェル化材料層は、ポリマーを含み得る。一部の設計では、シェル化材料層で使用されるポリマーは、高い電気及び/又はイオン伝導性を(例えば、約10-7~約10+4S/cmの範囲で)示し得る。一部の設計では、シェル化材料層におけるポリマー層は、少なくとも部分的に炭化されていてもよい。一部の設計では、シェル化材料層は、ガラス又はセラミック層を含み得る。一部の設計では、ガラス又はセラミック層は、高い電気及び/又はイオン伝導性を(例えば、約10-7~約10+4S/cmの範囲で)示し得る。一部の設計では、シェル化材料層は、金属又は金属合金を含んでいてもよい。
【0044】
一部の設計では、バイオマス由来炭素含有複合粒子は、まず多孔質バイオマス由来炭素を生成してからインターカレーション型又は疑似容量型活物質を細孔に浸透させることによって生成され得る。一部の設計では、そのような浸透プロセスは、蒸着技術(とりわけ、CVD、原子層堆積(ALD)など)、溶液浸透技術(とりわけ、ゾルゲル法若しくは水熱法による合成、レイヤーバイレイヤー堆積、電着、無電解堆積、電気泳動堆積、溶媒蒸発及び分解が続く塩浸透、又は制御環境での変換を含む)、溶融浸透(例えば、前駆体又は溶融物からの前駆体の成分を浸透させること)又はそのような技術の2以上の種々の組合せ(例えば、溶液若しくは気相からの前駆体(例えば、無機、金属有機又は有機金属などの)塩の浸透、又は制御気体環境-(例えば、とりわけ、H2又は炭化水素ガスなどの水素含有ガス若しくは蒸気における)還元環境、(例えば、とりわけ、O、F、Cl又はS含有ガスにおける)酸化環境又は(例えば、N2、Ar若しくはHeガス又は真空として)中性環境でのアニーリング若しくは熱処理が続く溶融、ここで、気体環境は、フッ素、水素、酸素、硫黄、リン、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム原子などを含む分子を含み得る)を用いて行われ得る。このように、一部の設計では、まず前駆体が浸透されてから、例えば、好適な気体(又は蒸気)環境下での熱処理によって、好適なインターカレーション型又は疑似容量型の活物質に変換され得る。一部の設計では、前述したように、追加のシェル化材料層が、少なくとも部分的に活物質、炭素又は複合粒子全体を内包(又はコーティング)し得る。複合材形成中のそのようなプロセスの(例えば、制御環境における)最大熱処理温度は、インターカレーション型の活物質の複合材の特性及び組成(例えば、その熱安定性、移動性、炭素との接触における反応性など)に応じて変化し得るが、約100℃~約1100℃(場合によっては、約300~約800℃)の範囲となり得る。一部の設計では、(例えば、炭素細孔内に主に存在する所望の活性粒子サイズを有し、活物質粒子の所望の相及び化学量論性を有する複合材の形成などのために)材料合成を微調整するように、異なる温度(例えば、約50℃~約1100℃)若しくは圧力(例えば、約0.0001Torr~20000Torr;一部の設計では、大気圧付近)において及び/又は異なる時間(例えば、約0.0001秒~約240時間)にわたって異なる気体環境で(例えば、最初にO又はF含有下で、次にAr又はN2下で)2以上の熱処理が実施されてもよい。
【0045】
上述のバイオマス由来炭素含有複合粒子におけるバイオマスは、非常に広範な供給源からのものであり得る。またさらに、そのようなバイオマス由来炭素の特性は、大きく異なり得る。ただし、ある特定種のバイオマス、バイオマスを炭素に変換する特定の態様及び/又はバイオマス由来炭素の特定の特性が、特定の電池設計(Liイオン電池及びその他など)及び他の種類の電気化学エネルギー貯蔵用途には特に魅力的となり得る。
【0046】
以下の前駆体からの再生可能バイオマス由来炭素が、インターカレーション型活性粒子に基づく特定のバイオマス由来炭素含有複合粒子に特に魅力的なものとして見出された:(i)ナッツの殻、とりわけ、特に、ココナッツの殻、アプリコットの殻、アーモンドの殻;(ii)実の核、とりわけ、オリーブの核、サクランボの核、アプリコットの核、モモの核、アボカドの核;(iii)廃材製品を含む木材;(iv)竹;(v)とりわけ、バナナ繊維、籾殻、コーンコブ、昆布を含む芝/藁及び(乾燥)葉;(vi)コーン粒;(vii)プラタナスの綿毛;(viii)とりわけ、セルロース、キチン、アルギン酸、スクロース及びグルコース並びにデンプンなどの(糖質を含む)天然の炭水化物;又は(ix)それらの任意の組合せ。バイオマス由来炭素含有複合粒子の形態は、通常、対応する炭素のバイオマス源(前駆体)を識別するのに充分な見識を与え得る。(例えば、種々の植物源からの)バイオマス由来炭素の細孔の形状及びパターン並びに他の構造的特徴は、進化に影響された自然植物成長の不均一性に従うので、非常に固有なものとなることが多い。
【0047】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素粒子が、(CO2、N2、H2又はArガス収着によって測定される)いわゆる平均BET比表面積(SSA)を(複合材を形成する前に)約400m2/g~約5000m2/gの範囲に示し、細孔体積を約0.4cm3/g~約6cm3/gの範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計では、好適なBET SSAは、約1000m2/g~約3000m2/gの範囲であり得る。BET SSAが5000m2/gよりも大きいと、複合材を取り扱うこと及び生成することが困難となり、一部の設計では劣った性能がもたらされることもあり、場合によっては(電池用途には)高価過ぎて生成して取り扱うことができなくなることがある。BET SSAが400m2/gよりも小さいと、一部の電気化学エネルギー貯蔵用途では、複合材の速度性能及び/若しくは体積容量(若しくは容量)又は他の重要な特性が制限されてしまうことになる。
【0048】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素粒子が、ガス収着(例えば、CO2、N2、H2又はArなど)又は他の好適な測定によって決定される約35体積%~約93体積%の範囲の開気孔率及び約0.3cm3/g~約6cm3/gの範囲の合計開細孔体積(例えば、空隙)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、好適な細孔体積は、約0.6cm3/g~約3.5cm3/g(一部の設計では、約0.75cm3/g~約2.5cm3/g)の範囲となり得る。細孔体積が6cm3/gよりも大きいと、複合材を取り扱うこと及び生成することが困難となり、一部の設計では劣った性能がもたらされることもあり、場合によっては(電池用途には)高価過ぎて生成すること及び取り扱うことができなくなることがある。細孔体積が約0.3m2/gよりも小さいと、複合材の体積容量(及びそれによるセルの体積エネルギー密度)が制限されてしまうため、一部の用途ではその有用性が制限されてしまうことになる。
【0049】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素が、化学組成、エネルギー分散分光法(EDS)、熱重量分析(TGA)、燃焼分析装置、X線光電子分光法(XPS)又は他の好適なメカニズムによって決定される複合材を形成する前に約90重量%超の組成純度(例えば、10重量%未満の非炭素種)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、約96重量%超の純度は、一部の設計ではさらに有利となる。一部の設計では、いわゆる「灰(アッシュ)」含有量は、好ましくは約10重量%未満(例えば、好ましくは約4重量%未満、より好ましくは約2重量%未満、さらにより好ましくは約1重量%未満、最も好ましくは約0.25重量%未満)となるべきである。一部の設計では、種々の不純物(例えば、K、S、Ca、Na、Zn、P、Oなど)のより高い含有量は、副反応を誘発し、(特に高温での)サイクル安定性を大幅に低下させ、早期故障を誘発し、重量及び体積エネルギー貯蔵特性を低下させ、電力密度を低下させ、無用に大きなセル-セル又はバッチ-バッチばらつきをもたらし、おそらくは、電気化学セル(例えば、Liイオン電池)の性能特性を低下させる何らかの他の望ましくない結果を誘発し得る。高純度のバイオマス由来多孔質炭素を達成するためには、化学的精製段階(例えば、酸における処理)及び熱的精製段階(例えば、約800℃~約2000℃の温度での熱処理及び不純物の蒸発)の組合せを用いることが有利となり得る。
【0050】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素が約10重量%未満(例えば、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約0.5重量%未満)の(その構造内に又は官能基の一部として存在する)水素原子を含むことが重要となり得る。一部の設計では、より高い水素含有量(例えば、約10重量%超)は、望ましくないガスの形成及びセルの膨張、容量利用率の低下、サイクル安定性の低下、より高い最初のサイクル損失及び/又は他の望ましくない性能特性の低下をもたらし得る。水素含有量は、水素分析装置、滴定、核反応分析(NRA)、Devanathan-Stachurski法、燃焼CHN分析、ガス成分分析(IGA)、走査型ケルビンプローブフォース顕微鏡法(SKPFM)及び他の好適な特徴化メカニズムを用いて決定され得る。
【0051】
一部の設計では、追加の細孔を誘導してバイオ由来炭素の細孔体積及び表面積を増加させるのに、いわゆる物理的活性化技術(とりわけ、CO2若しくはH2O又はその両方の流れにおける活性化など)を用いることが有利となり得る。一部の設計では、好適な活性化温度は、炭素の種類及び前処理履歴に応じて異なり得る。ただし、一部の設計では、好適な温度は、約700℃~約1300℃(一部の設計では、約800~約1150℃)の範囲となり得る。一部の用途では、温度が約1300℃より高いと、所望の均一性に制御する活性化プロセスが困難となり、さらに炭素内の望ましくない細孔サイズ分布が誘導されてしまう。一部の用途では、温度が約700℃より低いと、活性化プロセスが非常に遅くなり、生成された活性化バイオ由来炭素における所望の細孔サイズ及び表面積特性が実現できなくなる。一部の設計では、いわゆるハイドロチャー(殻、廃材などの種々のバイオ材料を含む炭化水素前駆体の水熱処理によって生成される炭素)の形成が、活性化前に有利となり得る。一部の設計では、バイオ材料前駆体は、活性化前に不活性環境において(例えば、真空又はN2、Ar若しくはHeガスなどにおいて)アニーリングされてもよい。好適な温度は、前駆体及び活性化後の所望の気孔率に応じて約500℃~約2800℃の範囲となり得る。一部の設計では、約500℃より低い温度での熱処理は、活性化にほとんど影響を有さず(例えば、廃液としての)(所望の)量の不純物を除去することができない。一部の設計では、約2800℃より高い温度での熱処理は、高純度材料を得るのに非常に効果的であるが、高いBET SSAを実現すること及び活性化後に(望ましいこともある)小さな細孔を維持することを阻害し得る。一部の設計では、化学的活性化が、物理的活性化に代えて又はそれに加えて(例えば、それと組み合わせて)使用されてもよい。好適な化学活性剤の例は、これに限定されないが、KOH、NaOH、ZnCl2、H3PO4、K2CO3又はH2SO4を含む。一部の設計では、炭化段階は、同時に化学的活性化に進む。他の設計では、バイオ由来前駆体を炭化した後に、得られた炭素が化学活性剤と混合され、活性化のために熱処理されてから精製されてもよい。一部の設計では、化学的活性化は、物理的活性化よりも、材料を活性化するのに必要な温度が低くかつ時間が短いために、そして場合によっては、高い収率で実現可能なBET SSAが高く、かつ大量のより小さな細孔(例えば、約0.4~約4nmの範囲の細孔)が形成されるために好適となり得る。
【0052】
(例えば、速度性能又は電池安定性を最大化する)一部の設計では、(複合電極において使用される)そのようなバイオマス由来炭素が、活性化(及び選択的な精製)プロセスの後に熱処理される(制御環境においてアニーリングされる)ことが有利となり得る。一部の設計では、アニーリングプロセスが、更なる精製を与え、炭素の電気伝導性を高め、炭素の機械特性を高め、(活物質の堆積のための)核形成部位数を減少させ、並びに/又は自己放電の減少及びセルの他の性能上の利益(例えば、より良好な速度、より良好な安定性など)をもたらし得る。一部の設計では、前駆体、ガス組成及び圧力、活性化された炭素粒子の気孔率及び微細構造、活性化後の所望の純度及び所望の気孔率に応じて、アニーリングの好適な温度は、約400℃~約2400℃の範囲となり得る。一部の設計では、アニーリングの温度がより高いと、一般に、核形成部位が減少し、純度が高くなることになる。ただし、一部の設計では、温度が高過ぎると、BET SSA及び細孔体積が減少してしまい、細孔の一部が閉じてしまい、(例えば、アニーリングが不活性環境又は真空で行われる場合には)材料が過度に疎水性となってしまい、及び/又は他の欠点が誘発されてしまう。一部の設計では、アニーリングは、炭素の活性化の前及び後の双方に有利に行われてもよい。
【0053】
一部の設計では、(例えば、製粉された)バイオ由来炭素(これに限定されないが、膨張化炭素、活性化炭素、カーボンブラックなどを含む)とバイオポリマー(とりわけ、デンプン、種々の砂糖、セルロース及びセルロース由来製品、アルギン酸及びアルギン酸由来製品、植物由来ピッチ、アラビアゴム、他の種々の天然多糖類、天然糖タンパク質及びそれらの混合物など)及び活物質(ナノ)粒子又は前駆体(例えば、塩;食塩水を含む)とを(乾燥状態又は溶液/懸濁液のいずれかにおいて)混合し、得られたバイオマス由来炭素含有複合材に炭化することが有利となり得る。一部の設計では、そのような混合物は、(バイオ由来炭素粒子なしで)バイオポリマー及び活物質(又は活物質前駆体)を含むだけでよい。一部の設計では、複合材合成における段階の少なくとも1つとしてスプレー乾燥技術又はスプレー熱分解技術を利用することが有利となり得る。一部の設計では、(例えば、炭素を燃焼/過酸化などすることなく比較的低温で前駆体の酸化又は結晶化を誘導するために)複合材合成における段階の少なくとも1つの間に水熱(又はソルボサーマル)処理を利用することが有利となり得る。一部の設計では、制御環境(例えば、低温(例えば、概ね室温から約350~400℃まで)における酸素含有若しくはフッ素含有、又はより高温(例えば、炭素と接する活物質の特定の化学作用及びその安定性に応じて約400℃から約600℃~1200℃まで)における不活性、及びその双方などの反応環境)において熱処理と組み合わせて水熱処理を利用することが有利となり得る。一部の設計では、再生可能バイオマスではなく非再生可能な炭化水素(例えば、石油ピッチ、コールタールなど)から生成されたポリマー又は炭素が、同様に効果的に使用され得る。一例では、熱分解又は(スプレーの)後続の熱処理の温度は、活物質組成に応じて異なり、約300℃~約1200℃(一部の設計では、約450℃~約1000℃)の範囲となり得る。一部の設計では、温度がより高いと、活物質又は炭素形成カーバイドを有する活物質の望ましくない反応及び他の望ましくない組成物がもたらされ得る。一部の設計では、温度がより低いと、生成される複合材の速度性能及び容量が制限され得る。
【0054】
バイオマス由来炭素含有ナノ複合材での使用のための好適なLi含有Liイオンインターカレーション型活物質の例示的な例は、これらに限定されないが、リチウムチタン酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2、LCO、又はLiCo2O4)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2又はLNO)、リチウムマンガン酸化物(とりわけ、LiMnO2、LMO、Li2MnO3又はLiMn2O4)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNixCoyAlzO2、ここで典型的にはx+y+z≦1、又はNCA)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi0.5Mn0.5O2、LiNixMnyO2、ここで典型的にはx+y≦1、又はNMO)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNixCoyMnzO2、ここで典型的にはx+y+z≦1、NCM又はNMC)、亜硫酸チタンリチウム(LiTiS2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4, LFP)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、リン酸ニッケルリチウム(LiNiPO4)、フルオロリン酸バナジウムリチウム(LiVFPO4)、フルオロ硫酸鉄リチウム(LiFeSO4F)、種々のLi過剰材料(例えば、Li1.211Mo0.467Cr0.3O2、Li1.3Mn0.4Nb0.3O2、Li1.2Mn0.4Ti0.4O2、Li1.2Ni0.333Ti0.333Mo0.133O2、及びその他多数などのリチウム過剰(岩塩)遷移金属酸化物及びオキシフッ化物)、酸素をフッ素若しくはヨウ素に部分的に置換した種々の高容量Liイオン系材料(例えば、とりわけ、岩塩、Li2Mn2/3Nb1/3O2F、Li2Mn1/2Ti1/2O2F、Li1.5Na0.5MnO2.85I0.12)及び多数の他の種類のLi含有無秩序層化タボライト、カンラン石、スピネル型の活物質、又は少なくとも酸素、フッ素若しくは硫黄及び少なくとも1つの遷移金属を含むそれらの混合物を含む。Li系に加えて、インターカレーション型活物質の他の例は、とりわけ(例えば、類似の)Naイオンインターカレーション化合物、Kイオンインターカレーション化合物、Caイオンインターカレーション化合物に基づいていてもよい。Li含有(又はNa含有、K含有、Ca含有など)のインターカレーション化合物に加えて、Liフリー(又はNaフリー、Kフリー、Caフリーなど)のバージョンのそのような又は類似の材料が利用されてもよい(例えば、チタン酸化物又はオキシフッ化物、ニオブ酸化物又はオキシフッ化物、コバルト酸化物又はオキシフッ化物、ニッケル酸化物又はオキシフッ化物、ニッケル-アルミニウム酸化物又はオキシフッ化物、ニッケル-コバルト-マンガン酸化物又はオキシフッ化物、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物又はオキシフッ化物、酸化鉄又はオキシフッ化物、リン酸鉄、その他多数及びそれらの種々の混合物など)。
【0055】
インターカレーション型活物質に加えて又はそれに代えて、バイオマス由来炭素含有ナノ複合材の一部の設計は、いわゆる疑似容量(又は疑似容量-インターカレーション混合型)活物質を含んでいてもよい。疑似容量(又は疑似容量-インターカレーション混合型)活物質の好適な例は、これに限定されないが、(混合金属を含む)種々の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、窒化物、オキシ窒化物、硝酸塩、リン酸塩、(オキシ)リン酸塩、硫化物、硫酸塩水酸化物、並びに他のRu、Fe、Mn、Cu、Ti、Bi、V、Ni、Nb、Ce、Zr、Ta、Co、Sn、Sb、Si、In、Zn、Mo、Pb、La、Yの無機塩並びにそれらの種々の混合物及び誘導体を含む。そのような化合物は、Li、Na、Ca、Cs、Mg及びKを含んでいてもよい。一部の設計では、そのような化合物は、2、3、4又はそれより多い金属を含んでいてもよい。一部の設計では、そのような化合物は、少なくとも1つの遷移金属を含んでいてもよい。
【0056】
再充電可能なLiイオン又はLi電池のための変換型カソード及びアノード材料は、インターカレーション型カソード及びアノード材料と比べて、より高いエネルギー密度、より高い比エネルギー、又はより高い比若しくは体積容量を与え得る。
【0057】
例えば、フッ素系カソードは、場合によっては約300mAh/gを超える(電極レベルで約1200mAh/cm3より大きい)非常に高い容量に起因して顕著な技術的可能性を与え得る。例えば、Liフリーの状態において、FeF3は712mAh/gの理論比容量を与え;FeF2は571mAh/gの理論比容量を与え;MnF3は719mAh/gの理論比容量を与え;CuF3は528mAh/gの理論比容量を与え;NiF2は554mAh/gの理論比容量を与え;PbF2は219mAh/gの理論比容量を与え;BiF3は302mAh/gの理論比容量を与え;BiF5は441mAh/gの理論比容量を与え;SnF2は342mAh/gの理論比容量を与え;SnF4は551mAh/gの理論比容量を与え;SbF3は450mAh/gの理論比容量を与え;SbF5は618mAh/gの理論比容量を与え;CdF2は356mAh/gの理論比容量を与え;ZnF2は519mAh/gの理論比容量を与える。フッ化物の(例えば、合金の形態の)混合物は、混合の規則に従って概算された理論容量を与え得る。混合金属フッ化物の使用が有利なこともある(例えば、より高い速度、より低い抵抗、より高い実用容量又はより長い安定性を与え得る)。完全にリチウム化された状態では、金属フッ化物は、金属及びLiFクラスタ(又はナノ粒子)の混合物を含む複合材に変換する。変換型金属フッ化物カソードの全体的可逆反応の例は、CuF2系カソードについて2Li+CuF2←→2LiF+Cu、又はFeF3系カソードについて3Li+FeF3←→3LiF+Feを含み得る。フッ化金属系カソードは、Liフリーの状態、部分的にリチウム化された状態又は完全にリチウム化された状態のいずれでも調製され得ることが理解されるはずである。
【0058】
一部の設計では、いわゆるLiエアカソード(例えば、それらのリチウム化状態におけるLi2O2、Li2O、LiOHの形態の活物質を有するカソード)又はNa、K、Ca、Al、Fe、Mn、Zn及び他の(Li以外の)金属に基づく類似のメタルエアカソードの使用は、それらの非常に高い容量に起因して同様に有益となり得る。一部の設計では、そのようなカソード活物質は、電気化学セルにおいて酸素又は酸素含有種と理想的には可逆的に反応すべきであり、完全な脱リチウム化(金属除去)に応じて完全に消失し得る。これらは、変換型カソードに属するものとも考えられる。
【0059】
有望なクラスの変換型カソード(又は場合によってはアノード)材料の他の例は、(Liフリー状態における)硫黄(S)、(完全にリチウム化された状態における)硫化リチウム(Li2S)又は他の金属硫化物である。S/Li2S電極のサイクル中の活物質の溶解を減少させ、電気伝導性を向上し、又は機械的安定性を向上するために、特定の設計では、多孔質S、Li2S、多孔質S-C(ナノ)複合材、Li2S-C(ナノ)複合材、Li2S金属酸化物(ナノ)複合材、Li2S-C金属酸化物(ナノ)複合材、Li2S-C金属硫化物(ナノ)複合材、Li2S金属硫化物(ナノ)複合材、Li2S-C混合金属酸化物(ナノ)複合材、Li2S-C混合金属硫化物(ナノ)複合材、多孔質Sポリマー(ナノ)複合材、又はその他S若しくはLi2S又はその両方を含む複合材又は(ナノ)複合材が有利に利用され得る。一部の設計では、そのような(ナノ)複合材は、導電性カーボンを有利に含み得る。一部の設計では、そのような(ナノ)複合材は、金属酸化物又は混合金属酸化物を有利に含み得る。一部の設計では、そのような(ナノ)複合材は、金属硫化物又は混合金属硫化物を有利に含み得る。一部の例では、混合金属酸化物又は混合金属硫化物は、リチウム金属を含み得る。一部の例では、混合金属酸化物は、チタン、バナジウム、マンガン又は鉄の金属を含み得る。一部の例では、リチウム含有金属酸化物は又は金属硫化物は、層構造を示し得る。一部の例では、金属酸化物、混合金属酸化物、金属硫化物又は混合金属硫化物は、有利には(例えば、約10-7~約10+4S/cmの範囲で)イオン伝導性でかつ電気伝導性であり得る。一部の例では、他の種々のインターカレーション型活物質が、金属酸化物又は金属硫化物の代わりに又はそれに加えて利用され得る。一部の設計では、そのようなインターカレーション型活物質は、S又はLi2Sのものに近い電位範囲に(例えば、Li/Li+に対して約1.5~3.8V以内で)電荷蓄積(例えば、Li挿入/抽出容量)を示す。
【0060】
変換型アノードは、Mを金属又は半金属(金属間化合物)として、Xをアニオン(例えば、アノードの場合にはOであるが、N、S、P、Fなどであってもよい)又は水素(H)として、nLi+MaXb←→aM+bLinXによって一般化される反応を通じて、グラファイト状炭素よりも一層高い比容量を与え得る。そのような変換型活性アノード材料の好適な例は、これに限定されないが、種々の酸化物、窒化物、硫化物、リン化物(phosphides)、フッ化物、水素化物などを含む。一部の設計では、とりわけ、完全に又は部分的に酸化された非炭素第IV属元素(例えば、原子番号14、32、50又は82の元素の酸化物、窒化物、硫化物又はリン化物)、Al(原子番号13)、Ga(原子番号31)、In(原子番号49)、Sb(原子番号51)、Pb(原子番号82)、Bi(原子番号83)、Fe(原子番号26)、Ti(原子番号22)、Mn(原子番号25)、Cu(原子番号29)、Ni(原子番号28)、Co(原子番号27)、V(原子番号23)及びZn(原子番号30)の酸化物、窒化物、硫化物又はリン化物を含み得る。
【0061】
残念ながら、Li又はLiイオン電池で使用され得る多くの変換型活性電極材料(上述したものを含む)は、種々の性能の制限を受けてしまう。バイオマス由来炭素含有(ナノ)複合材の形成は、少なくとも部分的に、そのような制限を克服し得る。例えば、バイオマス由来炭素含有(ナノ)複合材は、電圧ヒステリシスの低減、容量利用率の向上、安定性の向上、速度性能の向上、機械的安定性の向上及び場合によっては電気化学的安定性(例えば、より安定的したカソード固体電解質相間界面CEI、又はアノード固体電解質相間界面SEI)の向上、体積変動の低減、及び/又は他の好適な属性を与え得る。
【0062】
Liイオン電池での使用のための合金化型活性アノード材料は、インターカレーション型アノードと比べて高い重量及び体積容量を与える。合金化型活性アノード材料はまた、変換型アノード材料(種々の酸化物、窒化物、硫化物、リン化物又は水素化物など)と比べて低い不可逆的な最初のサイクル損失を与え得る。一方で、そのような材料は、一般的にLi挿入中に非常に大きな体積膨張を受けてしまうので、アノードの厚さ変化又は機械的故障、電流コレクタからのそれらの分離、電流コレクタ(例えば、Cu箔)の損傷を誘発し得る。さらに、そのようなアノード材料の一部は、比較的低い電気伝導性及び比較的低いイオン(Liイオン)伝導性に苛まされる。電気化学サイクルに応じたそのような材料の体積変化は、SEIの損傷、連続的な電解質の分解及び不可逆的なLi損失も誘発し得る。一部の設計では、そのような合金化型活性粒子を含むバイオマス由来炭素系(ナノ)複合粒子(これに限定されないが、とりわけ、非炭素第IV属元素(例えば、原子番号14、32、50又は82の元素)、そしてAl(原子番号13)、B(原子番号5)、P(原子番号15)、Zn(原子番号30)、In(原子番号49)、Ga(原子番号31)、As(原子番号33)、Cd(原子番号48)、In(原子番号49)、Sb(原子番号51)、Pb(原子番号82)、Bi(原子番号83)並びにそれらの種々の混合物及び合金)の形成は、とりわけ、Liイオン挿入及び抽出中の体積変化を減少させ、伝導性を高め、容量利用率を高め、速度性能を向上し、機械的安定性を向上し、場合によっては電気化学的安定性を向上し(例えば、より安定した固体電解質相間界面SEI)、体積変化を減少させ、再充電可能な金属イオン(例えば、Liイオン)セルにおける他の好適な属性を与え得る。
【0063】
一部の設計では、合金化型活物質を有するバイオマス由来炭素含有(ナノ)複合材の形成は、そのような制限を少なくとも部分的に克服し得る。例えば、それらは、電圧ヒステリシスの低減、容量利用率の向上、安定性の向上、速度性能の向上、機械的安定性の向上及び場合によっては電気化学的安定性(例えば、より安定したSEI)の向上、電圧変動の低減、及び/又は他の好適な属性を与え得る。
【0064】
金属電池での使用のための金属アノード(例えば、一次又は再充電可能なLi金属電池のためのLi金属アノード又はLi合金金属アノード)は、インターカレーション型アノードと比較して高い重量及び体積容量を与える。最も一般的には、そのような金属アノードは、セル構成において直接使用され、又はLi含有カソード活物質からの金属イオン(例えば、Liイオン)を用いる(セル構成後の)最初の充電中に電流コレクタに堆積される金属箔の形態で使用される。Li金属電池の金属電流コレクタのための材料の好適な例は、これに限定されないが、とりわけ、Li金属と合金を形成しないNi、Ti、鋼鉄又はCu箔などの種々の金属箔、種々のNi系、Ti系、Fe系又はCu系合金箔を含む。そのようなLi金属箔アノードの重量及び体積容量は非常に高いが、特に、中程度の面積容量(例えば、約2~4mAh/cm2)を有する電極のセル設計、そして高い面積容量(例えば、約4~16mAh/cm2)を有するセル電極の設計ではさらに、そのようなアノードは、種々の不安定性(例えば、粉末化、樹状突起の形成、体積変化、電流コレクタからの分離、不可逆的容量損失及びアノードの膨張をもたらす電解質との望ましくない反応、抵抗成長など)や最大充電・放電速度の遅さに苛まされる。
【0065】
一部の設計では、Li金属(又は金属電池のための他の好適な金属)を有するバイオマス由来炭素含有(ナノ)複合材の形成は、そのような制限を少なくとも部分的に克服し得る。例えば、バイオマス由来炭素リチウム金属複合材は、低減した電圧ヒステリシス、向上した容量利用率、向上した安定性、向上した速度性能、向上した機械的安定性及び場合によっては向上した電気化学的安定性(例えば、より安定したSEI)、低減した電圧変動、及び/又は他の好適な属性を与え得る。一部の設計では、そのような複合材は、バイオマス由来炭素及びリチウム金属(例えば、他の種類の炭素、酸化物、オキシフッ化物、窒化物、ポリマーなど)に加えて、他の材料を有利に含み得る。一部の設計では、そのような複合材は、好適なメカニズム(例えば、スラリーコーティング、乾燥、カレンダ加工及び任意で追加の層でのコーティング、又は乾燥電極コーティング、カレンダ加工及び任意で追加の層でのコーティング)によるバインダーを用いて電極としてキャスティング及び形成される粒子の形態をとり得る。一部の設計では、そのような複合材は、Li含有カソード活物質から金属イオン(例えば、Liイオン)を用いる(セル構成後の)最初の充電中に少なくとも部分的に形成し得る。例えば、Li金属は、最初の充電中にバイオマス由来炭素の細孔内部をメッキ(電着)し得る。一部の設計では、そのような細孔の少なくとも一部分(例えば、細孔の約10~100%)が電解質を有さず、セル動作中にLi金属堆積に利用可能なままであることが有利となり得る。一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素内の細孔は、電極作製の前又は後にシェルを形成することによって閉じられてもよい。一部の設計では、副反応を減少させ、最初のサイクルの容量損失を減少させ、Li樹状突起形成を減少させ、及び/又はセルの安全性を向上するために、固体電解質(例えば、ポリマー、無機又はポリマー無機複合材)が、液体電解質の代わりに有利に利用され得る。
【0066】
一部の設計では、比較的低い性能特性並びに合金化、金属及び変換型電極の制限されたサイクル安定性は、電極容量負荷が中程度(例えば、約2~4mAh/cm2)の場合に特に低く、それが高程度(例えば、約4~16mAh/cm2)である場合に一層低くなり得る。本開示の1以上の実施形態は、合金化、金属及び変換型活物質での中程度(例えば、約2~4mAh/cm2)及び高い容量負荷(例えば、約4~16mAh/cm2)における実質的により安定した電極の形成を介して上述の課題の一部を克服することに向けられている。
【0067】
バイオマス由来炭素含有複合材の構成において、広範な合金化型、金属、変換型活物質(及び、前述した種々のインターカレーション型及び疑似容量型の活物質)の利用が成功しているものの、一部の設計では(例えば、セルへの電極の組立て前に活物質が複合粒子又は電極に充填される場合)、部分蒸気圧を約400Kにおいて約10-10torr未満(好ましくは約400Kにおいて10-13torr未満)で有する活物質を採用することが有利となり得る。例えば、一部の設計では、電極はセルの組立て前に約400Kにおいて乾燥される必要があり、活物質の実質的な蒸発は汚染を誘発して安全上の問題をもたらすだけでなく、電極均一性及び結果として得られるセルの性能を著しく低下させてしまう。一部の設計では、電極は、放電状態中に(複合粒子を含む)電極組成物から組み立てられもよい。
【0068】
多くの用途及び電極設計において(合金化型及び金属型を含む)変換型活性電極材料(カソード及びアノード材料)を有する電池は(少なくとも一部の用途については)許容可能な充放電速度(例えば、約60~1200分以内での最大容量の約80%までの充電)を示し得るが、電極における変換型活物質の量が少ない(例えば、約0.1~5重量%)又は中程度(例えば、約5~20重量%)でなければ、不充分なサイクル安定性(例えば、初期容量の約80%までに約200サイクル未満)、又は電流コレクタ、セパレータ、セル充填の整合性、電極自体のダメージ、セルレベルの不可逆的膨張、若しくは他の望ましくない結果をもたらす高い内部抵抗又は大幅な体積変化を受けてしまう。
【0069】
一部の用途では、そのような(合金化型及び金属型を含む)変換型活物質を含む複合材を形成し、そのような複合材を電池の電極に使用することを介して上述の制限の1以上を克服し、より小さな膨張、より良好な安定性及び/又はより低い抵抗を実現することが有利となり得る。電極は、(バインダー、導電性及び他の添加物、その他電流コレクタを考慮しない)変換型材料を有するそのような複合材から100%構成されてもよいし、その複合材及びインターカレーション型活物質の混合物から構成されていてもよい。一例では、そのような「混合された」電極における複合粒子の好適な質量分率は、用途の要件及び要求に応じて(バインダー、導電性及び他の添加物、その他電流コレクタの重量を考慮しない)所与の電極における全ての活物質粒子の約1~約100重量%の範囲となり得る。一部の設計では、そのような複合材が、炭素の高い電気伝導性、Li及び他のイオンの許容可能な移動性、並びに良好な化学的及び電気化学的抵抗に起因して炭素を含むことがさらに有利となり得る。一部の設計では、そのような炭素が(例えば、高い電気伝導性を達成するために、又は他の性能上の利点のために)大部分(例えば、約90~100%)において、sp2結合炭素原子を含むことが有利となり得る。一部の設計では、炭素が充分に(例えば、約1S/m~約106S/mの範囲の電気伝導性で)電気伝導性を有することが有利となり得る。一部の設計では、炭素が(天然の及び再生可能バイオマスを含む)バイオマスから由来することが(とりわけ、性能、形態、安定性及びコスト上の理由のため)有利となり得る。
【0070】
一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合材が細孔を含むことが(例えば、活物質が非リチウム化状態で使用される場合にリチウム化に応じた体積膨張を収容するのに)有利となり得る。(例えば、アノード及び金属フッ化物カソードのための)一部の設計では、複合材が生成されてセルにおいて使用されると、細孔の全て又は少なくとも大部分(例えば、約50~100体積%;一部の設計では、約75体積%~約100体積%)が封止されて電解質又は電解質の特定の成分によって(例えば、液体電解質の場合には電解質溶媒分子によって、又は固体電解質含有セルの場合には固体電解質によって)直接到達可能でないままとなることが有利となり得る。一部の設計では、この電解質による到達不可性は、電極組立ての前又は後に細孔の一部を封止することによって達成され得る。一部の設計では(例えば、固体電解質の場合には)、この電解質による到達不可性は、電解質浸透中に電解質が内部細孔を湿潤できないことによって達成され得る。一部の設計では、細孔の少なくともある部分(例えば、約1~100体積%)が、約0.3nm~約600nmの範囲で特徴寸法(例えば、直径又は幅)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともある分率(例えば、少なくとも約0.1~30体積%)が約3nm~60nmの範囲に特徴寸法を示すことが(例えば、所望の安定性を達成しつつ、電極の体積容量を最大化するのに)有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともある分率(例えば、約30~100体積%)が約0.4nm~約15nmの範囲に特徴寸法を示すことが(例えば、所望の安定性を達成するのに)有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともある分率(例えば、約30~100体積%)が約0.5nm~約10nmの範囲に特徴寸法を示すことが(例えば、高い容量を達成しつつ、安定性を向上し、体積変化を最小化するのに)有利となり得る。(例えば、電極の体積容量を最大化する)一部の設計では、そのような複合材における細孔の体積分率が、完全なリチウム化に応じた活物質の体積膨張に必要な体積の約5~100%以下であることが有利となり得る。
【0071】
エアカソードとは別に、(例えば、電力若しくはエネルギー密度又はサイクル安定性などのエネルギー貯蔵特性を最大化し、又はこれら若しくは他の特性間の折衷を実現する)一部の設計では、複合電極材料のいわゆるBrunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積(SSA)又は密度汎関数理論(DFT)SSA(例えば、N2、Ar、CO2又はH2収着技術を用いて測定され、BET又はDFT法を用いて分析されるもの)が約0.2m2/g~約100m2/gの範囲であることが有利となり得る。一部の用途では、より大きなSSAは、より速い劣化及びより低い電極密度をもたらし得る。
【0072】
一部の設計では、変換型活性粒子(合金化型粒子、金属粒子、又はバイオマス由来炭素含有複合電極粒子内の層を含む)の平均サイズ(例えば、直径又は厚さ)は、約0.5nmから約200~300nm(一部の設計では、好ましくは約1nmから約60~100nm;一部の設計では、約2nmから約20~30nm)の範囲となる。サイズが大き過ぎると、一部の設計では体積変化中に応力集中を誘発し、サイクル中に複合材の機械的破壊をもたらし得る。さらに、ほとんどの変換型活物質は、電気化学反応をやや遅く受け、より小さな寸法が速度性能を高める。サイズが小さ過ぎると、一部の設計ではそのような複合材内のインターカレーション型又は疑似容量型粒子の望ましくない副反応又は過小な質量負荷をもたらすので、これらの複合粒子で構築されるエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー特性を制限してしまう。
【0073】
一部の設計では、(複合電極粒子の)変換型活性粒子(合金化型粒子、金属粒子又は層を含む)粒子は、好ましくは、バイオマス由来炭素粒子の細孔の内部に位置し得る。一部の設計では、そのような細孔の少なくとも有意な部分(例えば、約20~約100%)が、電解質が変換型活物質と直接接触しないように(例えば、シェル材料層で)封止されたままとなることが好適となり得る。
【0074】
一部の設計では、(例えば、変換型、合金化型又は金属)活物質が保護表面(シェル)層によって(電解質との望ましくない相互作用から)保護されることが有利となり得る。一部の設計では、保護表面層の好適な厚さは、約0.3~約60nmの範囲であり得る。一部の用途では、より小さな厚さではあまり影響はないが、より大きな厚さは速度性能の低下又は体積及び重量エネルギー密度の低下をもたらし得る。一部の例では、保護表面層は、炭素を含み得る。一部の例では、保護表面層は、酸化物、フッ化物、オキシフッ化物、硫化物、窒化物、酸窒化物、フッ化窒化物、リン酸塩、フルオロリン酸塩(リン酸フッ化物)又は金属若しくは半金属の原子を含む他の材料を含み得る。一部の設計では、保護表面層が電池サイクル中に変換反応を示さないことが(例えば、安定性のために)有利となり得る。一部の設計では、保護表面層材料は、以下の元素:遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(とりわけ、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)など)、ランタン又はランタノイド(La、Ce、Gd、Nd、Euなど)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In) カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)及び炭素(C)のうちの1つ以上を含み得る。
【0075】
(例えば、電極均一性、電池安定性及び性能を最大化し、許容速度性能を達成するなどのための)一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合電極粒子が、約5ナノメートル(nm)~約150ミクロンの範囲に平均特徴寸法(例えば、直径)を示すことが有利となり得る。一部の用途では、平均粒子サイズが小さ過ぎると、一般に高い充填密度を実現するのを困難とし得る。同時に、一部の設計では、より小さな微粒子はまた、小さな粒子間細孔サイズをもたらすことになり、それは電極における速度性能を低下させ、(特に、電池が高速又は低温で動作している場合に)より速いセル劣化をもたらし得る。一方、一部の設計では、平均粒子サイズが大き過ぎると、電極容量負荷における局所的なばらつきをもたらし、(特に、電池が低温又は高速で動作している場合に)より速いセル劣化をもたらし得る。複合粒子サイズ、複合材における細孔の相互接続性、並びに複合材料内のイオン及び電子輸送性は、一部の用途では、粒子レベルの速度性能に影響を与え得る。また一部の設計では、平均粒子サイズはが大き過ぎると、低い(又は所与の用途について充分には良好ではない)充電又は放電速度性能をもたらし得る。種々の電極及び電解質特性、電池セル動作条件(電流、速度、温度、充電電圧、電極動作電位など)、複合粒子の気孔率及び形状並びに他のパラメータが、最適な複合粒子サイズに影響を与えるが、一部の用途では、そのような複合電極粒子が約200nm~約20ミクロン(一部の設計では約600nm~約10ミクロン、一部の設計では約600nm~約20ミクロン)の範囲に平均特徴寸法(例えば、平均サイズ)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、好適な電極レベルの気孔率(例えば、電解質によって少なくとも部分的に充填された電極における空間の体積分率)は、バインダーの体積分率、導電性及び他の添加物の体積分率、並びに活性(複合材)粒子の体積分率、電解質導電性、電極厚、電池動作、リチウム化による体積膨張及び他の特性によって影響を受けることがある。ただし、一部の設計では、約7体積%~約70体積%の範囲の値が許容可能である。一部の設計では、より小さな体積分率は、遅い充電又は放電速度及び速いセル劣化をもたらし得る。一部の設計では、より大きな体積分率は、体積エネルギー密度、速度性能を低下させてしまい、電池コストを増加させてしまうことになり得る。一部の設計では、好適な電解質で占有(充填)された電極の体積分率は、有利には約7体積%~約35体積%の範囲であってもよい。一部の設計では、好適な電解質で占有(充填)された電極の好適な体積分率は、約15体積%~約30体積%のさらに狭い範囲となり得る。
【0076】
一部の設計では、そのような変換型(又は合金化型)活物質及びバイオマス由来炭素を含む複合材が、好ましくは約20重量%~約95重量%(一部の設計では、約30重量%~約87重量%)などの有意な重量分率の活物質を有することが有利となり得る。一部の設計では、バイオマス由来炭素に対するそのような活物質の重量比は、好ましくは、約1:4~約20:1(一部の設計では、約1:3~約7:1)の範囲となり得る。活物質の分率が低過ぎると、一部の設計で体積容量が低くなってしまう一方で、活物質の分率が高過ぎると、電極安定性の低減及び過度な体積変化がもたらされることになる。
【0077】
一部の設計では、複合電極に(セル組立て及び電池動作のために電解質で少なくとも部分的に充填される)2種類の細孔:(i)(「通常の」電池又はスーパーキャパシタ電極におけるような)粒子間の「通常の」種類の細孔、(ii)「通常の」細孔よりも平均的に大きく、電極の表面から電流コレクタ表面に向かって伝搬する追加の「チャネル」細孔、を生成することが有利となり得る。一例では、そのような「チャネル」細孔は、サイクル中に体積変化を部分的に収容し、電極安定性を向上し、そして電流コレクタ電極界面における応力を軽減してその機械的安定性を向上し得る。またさらに、一部の用途では、そのようなチャネルによって(特に、3時間~1/4時間以内の充電及び放電としてそれぞれ定義されるC/3~4Cのような中程度及び高速において)電極のバルクのより均一なリチウム化が可能となり、それはサイクル安定性をさらに向上し得る。一部の設計では、それらの「チャネル」細孔は直線状であることが(例えば、電極の表面からバルク及び底部へのイオンの移動の屈曲度を最小化するのに)有利となり得る。一部の設計では、それらの「チャネル」細孔が電極幅の約25%を超えて伝搬すること(一部の設計では、電流コレクタに達する電極全体を介する経路を含み、約50%を超えて;例えば、セル特性を有意に向上すること)がさらに有利となり得る。一部の設計では、それらの「チャネル」細孔が規則的に(例えば、六角形、正方形、斜方形又は矩形パターンで)離隔されることが(例えば、電極の単位面積内の所与数のチャネル細孔あたりの、電極における全粒子から「チャネル」細孔の表面までの最小の最大距離を実現するのに)有利となり得る。一部の設計では、「チャネル」細孔の規則的な間隔は、複合材含有電極の中程度の厚さ(例えば、約25~75ミクロン/コーティング片面)について、そして最大の応力及び最速の劣化を示し得る大きな厚さ(例えば、約75~200ミクロン/コーティング片面)についてはより一層、特に重要となり得る。複合粒子設計、炭素の存在、そして複合粒子内の細孔の存在は電極の体積変化及び対応する応力の低減に寄与し得る一方で、一部の設計では「チャネル」細孔の存在もやはり非常に有利となり得る。一部の設計では、「チャネル」細孔の平均幅(スリット形状の細孔の場合)又は平均径(円筒又は角錐形状の細孔の場合)が約3ミクロン~約600ミクロン(例えば、より好ましくは約10ミクロン~約200ミクロン)の範囲であることが有利となり得る。一部の設計では、電極内の3ミクロン未満のチャネル細孔は充分な効果を与えない場合があり、生成が高価なものとなり又は困難となり得る。一部の設計では、600ミクロン超の細孔は、エネルギー密度を低下させ、アノード及びカソードにおける容量の局所的な不一致をもたらすことがあり(したがって、安定性又はセルエネルギーを低下させることがあり)、一部の用途では、生成が困難となることもある。一部の設計では、電極における「チャネル」細孔間の平均間隔が約10ミクロン~約10,000ミクロン(例えば、より好ましくは約50ミクロン~約1000ミクロン)の範囲であることが有利となり得る。一部の設計では、10ミクロン未満の間隔は、生成するのが一層困難となり、重要なこととして、デバイスの体積エネルギー密度の低下をもたらし得る。一部の設計では、10,000ミクロン超の間隔は、非常に限定的な効果しか与えない。「チャネル」細孔の形状は、用途間又は特定の用途において異なり得る(例えば、特定の粒子において異なる「チャネル」細孔形状となりうる)。一部の例示的な例では、電極内の「チャネル」細孔の形状は、数ある中でもとりわけ、円柱/円筒、スリット状(又はクラック状)、V字状、キャタピラ状であってもよく、又はそれらの任意の組合せであってもよい。一部の設計では、電極内の「チャネル」細孔は、リチウム化の均一性をさらに高めるとともに応力を最小化するように複数の分岐を示してもよい(例えば、樹状突起状であってもよい)。一部の設計では、「チャネル」細孔の体積分率は、(電極の体積分率として)約0.01体積%~約30体積%の範囲であってもよい。一部の設計では、より大きな体積分率の「チャネル」細孔は、セルの体積エネルギー特性の大幅な低下を招いてしまうことになる。さらに、場合によっては、より大きな体積分率の「チャネル」細孔は、電極の機械特性を低下させ、早期故障の一因となり得る。一部の設計では、「チャネル」細孔の形成は、機械的構成要素によって(例えば、圧子のアレイを用いることによって)、犠牲テンプレートを用いることによって、電極乾燥中に「クラック」を形成することによって、レーザ微細加工及び他のメカニズムを用いることによって、誘導され得る。一例では、電極における「チャネル」細孔は、電極カレンダ加工(高密度化)の前又は後に誘導され得る。一部の設計では、より有利な(例えば、より信頼性が高く、安価であり又は速い)「チャネル」細孔形成プロセスを用いつつ好適な電極機械特性、密度及び細孔サイズの有利な組合せを実現するには、部分的なカレンダ加工(高密度化)の後であるが最終カレンダ加工(高密度化)の前に細孔を誘導することが有利となり得る。一部の設計では、電極への「チャネル」細孔の導入中又はその後に(ただし、電極に電解質を充填する前に)電極を加熱することが有利となり得る。一部の用途では、加熱することによって、誘発される応力の一部が軽減され、又は電極の機械特性が有利に変化し得る。一例では、好適な温度は、異なり得るものであり、複数の要因(例えば、(それがある場合には)使用されるバインダーの種類及び熱特性、電流コレクタの熱安定性、電極の熱安定性、導電性又は他の添加物の熱安定性、電極厚など)に依存し得る。ただし、一部の設計については、加熱温度は、約40℃~約200℃(ただし、ある特殊な設計では、より高い温度が使用されることもある-例えば、約600℃まで)の範囲であってもよい。
【0078】
(例えば、セル安定性を最大化する)一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合電極が、電極の表面から電流コレクタに向かう組成の変化を示すことが有利となり得る。例示的な一例では、電極の上部の約20~50%が電極の下部の約50~80%よりも有意に高い(例えば、約10%~約300%高い)(電解質で少なくとも部分的に充填されるべき)気孔率を示すことが(例えば、速度性能を最適化するのに)有利となり得る。他の例示的な例では、電極の上部の約20~50%が下部の約50~80%よりも有意に小さい(例えば、約20%未満~約30倍未満の)複合粒子の平均サイズを含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。さらに他の例示的な例では、電極の下部の約20~50%が上部の約50~80%よりも有意に多い導電性添加物(例えば、約10%~約5倍大きい質量分率の導電性添加物)を含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。さらに他の例示的な例では、電極の下部の約10~50%が上部の約50~90%よりも有意に高いバインダー含有量(例えば、単位電極質量又は体積あたり約10%~約5倍多い質量分率又は体積分率のバインダー)を含むことが(例えば、速度性能及び安定性を最適化するのに)有利となり得る。(例えば、速度性能又は電池安定性を最大化する)一部の設計では、そのようなバイオマス由来炭素含有複合電極が電流コレクタ(例えば、金属箔、多孔質金属箔、金属メッシュ又は電流コレクタの他の好適な種類)と電極コーティング(例えば、複合粒子、導電性添加物及びバインダーを含むもの)との間に導電性中間層を含むことが有利となり得る。一部の設計では、そのような導電性中間層は、電極の付着性及び機械的安定性を強化することができ、それは、変換型(合金化型及び金属型を含む)活物質の実質的体積変化のために特定の変換型電極については特に重要である。さらに、一部の設計では、そのような中間層によって(例えば、より速いイオン輸送のために)電極のバルクにおけるバインダーの分率を低減することが可能となり得る。一例では、そのような中間層の厚さは、約0.005ミクロン~約5ミクロン(例えば、約0.05ミクロン~約0.5ミクロン)の範囲であってもよい。一例では、より大きな中間層厚によって、エネルギー密度が低下し、最初のサイクル損失がより高くなり得る。ただし、一部の用途では、中間層厚(例えば、約0.005ミクロン未満)が小さ過ぎると、電流コレクタの付着性の向上及び界面抵抗の低減においてあまり有効とならない場合もある。一例では、中間層は、導電性添加物(カーボンナノチューブ(単層、二層又は多層のいずれか)、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンブラック、膨張化グラファイト、グラフェン、又は他の種類の導電性カーボン、金属ナノワイヤ、炭素若しくは金属被覆ファイバ若しくはナノファイバ、導電性ポリマーなど)又は幾つかの別個の導電性添加物及びバインダー(例えば、ポリマーバインダー又は炭化/黒鉛化ポリマーバインダー)の混合物を含み得る。一部の設計では、中間層は、スプレーコーティングプロセスによって、キャスティングによって、電気泳動堆積によって、浸漬コーティングによって、又はスラリー懸濁液からの蒸着の他の技術によって堆積され得る。一部の設計では、中間層が(例えば、スパッタリングを含む化学蒸着(CVD)又は物理蒸着(PVD)などの蒸着技術によって、溶液成長法によって又は電着によってなど)電流コレクタの表面に成長又は堆積されることが有利となり得る。一部の設計では、(例えば、電池使用前に電解質で少なくとも部分的に充填された)中間層の気孔率は、最小で約0%~最大で約99%の範囲であってもよい。一部の設計では、中間層は、(例えば、電池セルにおける熱暴走を防止する)安全構成として(例えば、例示的な一例では、例えば約80~150℃などの所定温度以上の過熱を受けて)電流コレクタから意図的に分離されるように設計され得る。これは、例えば、所定温度以上において収縮し、及び/又は電流コレクタとの付着性を失うポリマーを用いることによって実現され得る。あるいは、他の例示的な例として、中間層は(例えば、相転移に起因して)所定温度以上で絶縁性となるようにしてもよい。好適な組成物の例は、パイロ抵抗性挙動を有する種々の導電性ポリマー複合材を含み得る。
【0079】
一部の設計では、結果として生成されたバイオマス由来炭素/変換型活物質複合粒子は、(例えば、電解質と活物質との間の望ましくない相互作用を防止するため、又は他の有利な目的のために)機能的シェル化層にさらに(少なくとも部分的に)内包されてもよい。一部の設計では、機能的シェル化層の体積分率は、複合粒子の体積の約0.001体積%~約20体積%の範囲であってもよい。一部の設計では、機能的シェル化材料層は、そのイオン蓄積能力の観点で「活」物質としても作用し得る(例えば、単位質量あたりの容量mAh/g又は単位体積あたりの容量mAh/ccの単位で表される場合、活物質のものの約0.1%~約75%の範囲に容量を示し得る)。一部の設計では、そのようなシェル化材料層は、蒸着技術(とりわけ、CVD、ALDなど)、電気化学堆積、電着、無電解堆積、電気泳動堆積、レイヤーバイレイヤー堆積若しくは種々の他の溶液に基づく堆積技術、又は溶液堆積及び蒸着の双方の組合せを用いることによって堆積され得る。一部の設計では、複合材は、シェル化材料堆積の後に、複合材特性を強化するように、好適な気体環境又は真空において(例えば、約100~約1000℃の温度で)熱処理されてもよい。一部の設計では、シェル化材料層の平均厚は、粒子サイズ、そのような層のイオン伝導性及び電気伝導性並びに他の特性に応じて変わり得る。一部の設計では、好適な厚さは、約0.2nm~約200nmの範囲であってもよいが、用途によってはより大きな厚さも(ただし、場合によっては電極の体積容量の低下又は電極気孔率の低下という犠牲の下で)許容可能となり得る。一部の設計では、シェル化材料層は、炭素(C)(例えば、一部の設計では、グラファイト若しくはグラファイト状炭素、乱層構造炭素又は最も非晶質な炭素におけるように、大部分が導電性sp2結合の炭素)を含んでいてもよい。一部の設計では、種々の炭素原子含有溶媒又は種々の炭化水素(例えば、C5H12、C5H10、C5H8、C6H6など)の蒸気が、炭素堆積のための前駆体として有利に使用されてもよい。一部の設計では、炭化水素ガス(例えば、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H6、C3H8、C3H4、C4H10、C4H8、C4H6など)又はそれらの組合せが、炭素堆積の前駆体として有利に使用され得る。一部の設計では、(ピッチなどのバイオ由来のものを含む)粘弾性ポリマーが、炭素層形成のための前駆体として使用されてもよい。一部の設計では、ピッチは、石油、コールタール、(木材を含む)植物に由来し得る。一部の設計では、シェル化材料層は、2以上の材料の複合材であってもよい。一部の設計では、シェル化材料は、フレーク形状粒子を含み得る。一部の設計では、シェル化材料は、以下の元素:遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(とりわけ、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)など)、ランタン又はランタノイド(La、Ce、Gd、Nd、Euなど)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In) カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)及び炭素(C)のうちの1つ以上を含み得る。一部の設計では、シェル化材料層は、ポリマーを含み得る。一部の設計では、ポリマーは、高い電気及び/又はイオン伝導性を(例えば、約10-7~約10+4S/cmの範囲で)示し得る。一部の設計では、ポリマー層は、少なくとも部分的に炭化されていてもよい。一部の設計では、シェル化材料層は、ガラス又はセラミック層を含み得る。一部の設計では、ガラス又はセラミック層は、高い電気及び/又はイオン伝導性を(例えば、約10-7~約10+4S/cmの範囲で)示し得る。一部の設計では、シェル化材料層は、金属又は金属合金を含んでいてもよい。一部の設計では、シェル化材料が、反復される電極の充電-放電サイクル中に変換反応を示さないことが有利となり得る。
【0080】
一部の設計では、バイオマス由来炭素含有複合粒子は、まず多孔質バイオマス由来炭素を生成してから変換型(又は合金化型)活物質を細孔に浸透させることによって生成され得る。そのような浸透プロセスは、蒸着技術(とりわけ、CVD、原子層堆積(ALD)など)、溶液浸透技術(とりわけ、ゾルゲル法若しくは水熱法による合成、レイヤーバイレイヤー堆積、電着、無電解堆積、電気泳動堆積、又は溶媒蒸発が続く塩浸透を含む)、溶融浸透(例えば、前駆体又は溶融物からの前駆体の成分を浸透させること)又はそのような技術の2以上の種々の組合せ(例えば、溶液若しくは気相からの前駆体塩の浸透、又は制御気体環境-(例えば、とりわけ、H2又は炭化水素ガスなどの水素含有ガス若しくは蒸気における)還元環境、(例えば、とりわけ、O、F、Cl又はS含有ガスにおける)酸化環境又は(例えば、N2、Ar若しくはHeガス又は真空として)中性環境でのアニーリング若しくは熱処理が続く溶融、ここで、気体環境は、フッ素、水素、酸素、硫黄、リン、リチウム原子などを含む分子を含み得る)を用いて行われ得る。このように、一部の設計では、まず前駆体が浸透されてから、例えば、好適な気体(又は蒸気)環境下での熱処理によって、好適な変換型の活物質に変換され得る。一部の設計では、前述したように、追加のシェル化材料層が、少なくとも部分的に活物質、炭素又は複合粒子全体を内包(又はコーティング)し得る。複合材形成中のそのようなプロセスの(例えば、制御環境における)最大熱処理温度は、インターカレーション型の活物質の複合材の特性及び組成(例えば、その熱安定性、移動性、炭素との接触における反応性など)に応じて変化し得るが、一例では約80℃~約1000℃(例えば、約200~約700℃)の範囲となり得る。一部の設計では、(例えば、炭素細孔内に主に存在する所望の活性粒子サイズを有し、活物質粒子の所望の相及び化学量論性を有する複合材の形成などのために)最適材料合成を微調整するように、異なる温度(例えば、約50℃~約1000℃)若しくは圧力(例えば、約0.0001Torr~20000Torr;一部の設計では、大気圧付近)において及び/又は異なる時間(例えば、約0.0001秒~約240時間)にわたって異なる気体環境で(例えば、最初にO若しくはF含有、S含有、P含有又はN元素含有ガス組成物下で、次にAr又はN2下で)2以上の熱処理が実施されてもよい。
【0081】
上述のバイオマス由来炭素含有複合粒子におけるバイオマスは、非常に広範な供給源からのものであり得る。またさらに、そのようなバイオマス由来炭素の特性は、用途間で大きく異なり得る。ただし、ある特定種のバイオマス、並びにバイオマスを炭素に変換する特定の態様及びバイオマス由来炭素の特定の特性が、特定の電池種(Liイオン電池及びその他など)及び/又は他の種類の電気化学エネルギー貯蔵用途には特に魅力的となり得る。
【0082】
一部の設計では、以下の前駆体からの再生可能バイオマス由来炭素が、インターカレーション型活性粒子に基づくバイオマス由来炭素含有複合粒子に特に魅力的なものとして見出された:(i)ナッツの殻、とりわけ、特に、ココナッツの殻、アプリコットの殻、アーモンドの殻;(ii)廃材製品を含む木材;(iii)とりわけ、セルロース、キチン、アルギン酸、スクロース及びグルコース、アラビアゴム並びにデンプンなどの(糖質及び糖質含有天然化合物を含む)天然の炭水化物。
【0083】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素粒子が、(CO2、N2、H2又はArガス収着によって測定される)いわゆるBET比表面積(SSA)を(複合材を形成する前に)約500m2/g~約4400m2/gの範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計では、好適なBET SSAは、約800m2/g~約3000m2/gの範囲であり得る。BET SSAが4400m2/gよりも大きいと、複合材を、変換材料の体積変化を収容するように充分に高い機械的安定性をもって生成することが困難となり得る。BET SSAが500m2/gよりも小いと、一部の電気化学エネルギー貯蔵用途では、複合材の体積容量(若しくは容量)又は他の重要な特性が制限されてしまうことになる。
【0084】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素粒子が、ガス収着(例えば、CO2、N2、H2又はArなど)又は他の好適な測定によって決定される約30体積%~約89体積%の範囲の開気孔率(例えば、空隙)及び約0.2cm3/g~約3.7cm3/gの範囲の合計開細孔体積を示すことが有利となり得る。一部の設計では、好適な細孔体積は、約0.6cm3/g~約3.0cm3/g(一部の設計では、約0.75cm3/g~約2.5cm3/g)の範囲となり得る。一部の設計では、細孔体積が3.7cm3/gよりも大きいと、複合材は、望ましくない欠陥及びクラックの形成なしに体積変化を受けるには充分に強靭とはならない。一部の設計では、細孔体積が約0.2m2/gよりも小さいと、複合材の体積容量(及びそれによるセルの体積エネルギー密度)が制限されてしまうため、上記用途ではその有用性が制限されてしまうことになる。
【0085】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素が、化学組成、エネルギー分散分光法(EDS)及び熱重量分析(TGA)によって決定される複合材を形成する前に約90重量%超の組成純度(例えば、約10重量%未満の非炭素種)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、約96重量%超の純度がさらに有利となる。一部の設計では、いわゆる「灰(アッシュ)」含有量は、約10重量%未満(例えば、好ましくは約4重量%未満、より好ましくは約2重量%未満、さらにより好ましくは約1重量%未満、さらに好ましくは約0.25重量%未満)である。一部の用途では、種々の不純物(例えば、K、S、Ca、Na、Zn、P、Oなど)のより高い含有量は、副反応を誘発し、(特に高温での)サイクル安定性を大幅に低下させ、早期故障を誘発し、重量及び体積エネルギー貯蔵特性を低下させ、電力密度を低下させ、無用に大きなセル-セル又はバッチ-バッチばらつきをもたらし、及び/又はおそらくは、電気化学セル(例えば、Li又はLiイオン電池)の性能特性を低下させる何らかの他の望ましくない結果を誘発し得る。高純度のバイオマス由来多孔質炭素を達成するためには、一部の設計では、化学的精製段階及び熱的精製段階の組合せを用いることが有利となり得る。
【0086】
一部の設計では、バイオマス由来多孔質炭素が約10重量%未満(例えば、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約0.5重量%未満)の(その構造内に又は官能基の一部として存在する)水素原子を含むことが重要となり得る。一部の設計では、より高い水素含有量は、望ましくないガスの形成及びセルの膨張、容量利用率の低下、サイクル安定性の低下、より高い最初のサイクル損失及び/又は他の望ましくない性能特性の低下をもたらし得る。一例では、水素含有量は、水素分析装置、滴定、核反応分析(NRA)、Devanathan-Stachurski法、走査型ケルビンプローブフォース顕微鏡法(SKPFM)又は他の好適な特徴化メカニズムを用いて決定され得る。
【0087】
一部の設計では、追加の細孔を誘導してバイオ由来炭素の細孔体積及び表面積を増加させるのに、いわゆる物理的活性化技術(とりわけ、CO2若しくはH2O又はその両方の流れにおける活性化など)を用いることが有利となり得る。好適な活性化温度は、炭素の種類及び前処理履歴に応じて異なり得る。ただし、一例として、好適な温度は、約700℃~約1300℃(一部の設計では、約800~約1150℃)の範囲となり得る。一例では、温度が約1300℃より高いと、所望の均一性に制御する活性化プロセスが非常に困難となり、さらに炭素内の望ましくない細孔サイズ分布が誘導されてしまう。他の例では、温度が約700℃より低いと、活性化プロセスが非常に遅くなり、生成された活性化バイオ由来炭素における所望の細孔サイズ及び表面積特性が実現できなくなる。一部の設計では、いわゆるハイドロチャー(殻、廃材などの種々のバイオ材料を含む炭化水素前駆体の水熱処理によって生成される炭素)の形成が、活性化前に有利となり得る。一部の設計では、バイオ材料前駆体は、活性化前に不活性環境において(例えば、真空又はN2、Ar若しくはHeガスなどにおいて)アニーリングされてもよい。一部の設計では、好適な温度は、前駆体及び活性化後の所望の気孔率に応じて約500℃~約2800℃の範囲となり得る。一部の設計では、約500℃より低い温度での熱処理は、活性化に非常に小さな影響しか有さず(例えば、廃液としての)(場合によっては所望の)量の不純物を除去することができない。一部の設計では、約2800℃より高い温度での熱処理は、高純度材料を得るのに非常に効果的であるが、高いBET SSAを実現すること及び活性化後に(望ましいこともある)小さな細孔を形成することを阻害し得る。一部の設計では、化学的活性化が、物理的活性化に代えて又はそれに加えて使用されてもよい。好適な化学活性剤の例は、これに限定されないが、KOH、NaOH、ZnCl2、H3PO4、K2CO3又はH2SO4を含む。一部の設計では、炭化段階は、同時に化学的活性化に進む。他の設計では、バイオ由来前駆体を炭化した後に、得られた炭素が化学活性剤と混合され、活性化のために熱処理されてから精製されてもよい。
【0088】
(例えば、速度性能又は電池安定性を最大化する)一部の設計では、(複合電極において使用される)そのようなバイオマス由来炭素が、活性化(及び任意で精製)プロセスの後に熱処理される(制御環境においてアニーリングされる)ことが有利となり得る。アニーリングプロセスが、更なる精製を与え、炭素の電気伝導性を高め、炭素の機械特性を高め、(活物質の堆積のための)核形成部位数を減少させ、並びに自己放電の減少及びセルの他の性能上の利益(例えば、より良好な速度、より良好な安定性など)をもたらし得る。一部の設計では、前駆体、ガス組成及び圧力、活性化された炭素粒子の気孔率及び微細構造、活性化後の所望の純度及び所望の気孔率に応じて、好適な温度は、約400℃~約2400℃の範囲となり得る。一部の設計では、温度がより高いと、一般に、核形成部位が減少し、純度が高くなることになる。ただし、温度が高過ぎると、BET SSA及び細孔体積が減少してしまい、細孔の一部が閉じてしまい、(例えば、アニーリングが不活性環境又は真空で行われる場合には)材料が過度に疎水性となってしまい、及び/又は他の欠点が誘発されてしまう。一部の設計では、アニーリングは、炭素の活性化の前及び後の双方に有利に行われてもよい。
【0089】
一部の設計では、(例えば、製粉された)バイオ由来炭素(これに限定されないが、膨張化炭素を含む)とバイオポリマー(とりわけ、デンプン、砂糖、セルロース及びセルロース由来製品、アルギン酸及びアルギン酸由来製品、植物由来ピッチなど)及び活物質(ナノ)粒子又は前駆体(例えば、塩)とを混合し、得られたバイオマス由来炭素含有複合材に炭化することが有利となり得る。一部の設計では、そのような混合物は、(バイオ由来炭素粒子なしで)バイオポリマー及び活物質(又は活物質前駆体)を含むだけでよい。一部の設計では、複合材合成における段階の少なくとも1つとしてスプレー乾燥技術又はスプレー熱分解技術を利用することが有利となり得る。一部の設計では、(例えば、炭素を燃焼/過酸化などすることなく比較的低温で前駆体の酸化又は結晶化を誘導するために)複合材合成における段階の少なくとも1つの間に水熱(又はソルボサーマル)処理を利用することが有利となり得る。一部の設計では、制御環境(例えば、低温(例えば、約350~400℃未満)における酸素含有、フッ素含有若しくは硫黄含有環境などの反応性のもの、又はより高温(例えば、活物質と反応し又は活物質を還元する特定の化学作用及び炭素の耐性に応じて約400℃から約600~1200℃まで)における不活性のもの、又はその双方)において熱処理と組み合わせて水熱処理を利用することが有利となり得る。一部の設計では、複合材合成における段階の少なくとも1つとしてスプレー乾燥技術又はスプレー熱分解法を利用することが有利となり得る。一部の設計では、再生可能バイオマスではなく非再生可能な炭化水素(例えば、石油ピッチ、コールタールなど)から生成されたポリマー又は炭素が、同様に効果的に使用され得る。熱分解又は(スプレーの)後続の熱処理の温度は、活物質組成に応じて異なるが、一例として約300℃~約1200℃(一部の設計では、約450℃~約1000℃)の範囲となり得る。一部の設計では、温度がより高いと、活物質又は炭素形成カーバイドを有する活物質の望ましくない反応及び他の望ましくない組成物がもたらされ得る。一部の設計では、温度がより低いと、生成される複合材の速度性能及び容量が制限され得る。
【0090】
一部の設計では、変換型(合金化型又は金属型を含む)活物質を含む電極がさらにポリマー電解質を含むことが有利となり得る。一部の設計では、そのような電解質は、液体電解質におけるセル性能を劣化させ得る、活物質と電解質の間の望ましくない副反応(例えば、電極溶解)を低減又は防止し得る。そのような複合材における炭素の使用は、液体電解質を伴う電極と比較して適合することを一層困難なものとし得る体積変化の低減の観点から有利となり得る。一部の設計では、複合材電極を含む変換型活物質を有するセルは、液体溶媒を含まない固体電解質(例えば、ポリマー電解質又はセラミック電解質)を主成分とし得る。
【0091】
一部の設計では、変換型(合金化型又は金属型を含む)活物質又はインターカレーション型若しくは疑似容量型活物質を含む電極が、特定の態様で調製され、又は特定のバインダー又は特定の導電性若しくは他の添加物を含むことが有利となり得る。
【0092】
例えば、一部の設計では、炭素含有電極の混合段階の少なくとも1つに対して水がスラリー溶媒(又はスラリー共溶媒)として使用される場合、中性pHから外れることが有利となり得る。一例では、pH調整は、より均一な分散を実現するためにスラリーにおける活性(ナノ)複合電極粒子又は他の粒子の表面に正又は負の電荷を誘導するのに有利となり得る。他の例では、pH調整は、活性(ナノ)複合電極粒子の表面におけるバインダー成分の少なくとも1つの制御された吸着を誘発させるために有利に使用され得る。スラリーにおける粒子の組成及び界面化学作用並びにバインダー組成に応じて、最適なpH値は、一部の設計では約3~約12の範囲となり得る。一部の用途では、極端なpH値(例えば、スラリーの組成に応じて、3未満又は12超)は、粒子、バインダー又は(それがある場合には)他の共溶媒への望ましくないダメージを誘発し得る。
【0093】
一部の設計では、炭素含有(ナノ)複合電極材料を含む電極において、一次元(1D)導電性添加物(単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボン(ナノ)ファイバ、適合金属ナノファイバ、ナノチューブ及びナノワイヤ(例えば、銅、ニッケル、チタン、鉄ナノワイヤ/ナノファイバ、アルミニウムナノワイヤ/ナノファイバ、ニッケルナノワイヤ/ナノファイバなど)を用いることが有利となり得る。一部の設計では、金属ナノワイヤ又はナノファイバが導電性添加物として使用される場合、それら(例えば、Cu、Ni、Ti又はその他)の一部が導電性炭素又はポリマーの薄層(例えば、約0.2~10nm)(その表面に任意で官能基を有するもの)又は他の機能的表面層でコーティングされて(i)スラリーの調製又は取扱い中のそれらの腐食を防止し、(ii)スラリーにおける分散性を向上し、又は(iii)電極におけるそれらの付着性を向上することが有利となり得る。
【0094】
一部の設計では、(ナノ)複合粒子の表面は、炭素を含み得る。本開示の1以上の実施形態の文脈において、対象となる電極粒子の炭素(又は炭素含有)表面の、炭素に対する化学的部位の付加又は官能化は、多くの有利な効果を与え得る。一例では、炭素界面化学作用の変化は、電極スラリー調製中の向上した分散性を与え得る。またさらに、他の例では、界面化学作用の変化は、活性粒子、導電性添加物、バインダー、電解質及び/又はSEIとの界面相互作用の有利な変化をもたらし得る。更なる例では、炭素の官能化は、種々の炭素含有材料(それらの表面に炭素又は導電性添加物を含む活性電極粒子)同士の間及び(場合によっては)炭素含有材料とバインダーの間に強い共有結合の形成のためのきっかけを導入し得る。場合によっては、電極粒子の表面が炭素を含まない場合であっても、同様の官能基(又は電極粒子表面に化学的に結合した、例えば、約80個未満の原子の短い分子鎖又は小さな樹状突起構造)も有利となり得る。
【0095】
一部の設計では、(炭素)表面への極性基の導入は、水、N-メチルピロリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、アルコールなどの極性溶媒における向上した分散性を与えることができ、それは、より均一なスラリーの混合物及びそれゆえより均一な電極を可能とする。一部の設計では、アルキル鎖などの非極性基の導入は、脂肪族炭化水素などの非極性溶媒における向上した分散性を与え得る。
【0096】
一部の設計では、導電性添加物を他のメカニズムによって(ナノ)複合電極粒子に付着させることが有利となり得る。一例では、導電性添加物(例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属ナノ粒子又は金属ナノワイヤ)が(例えば、CVDによって又は溶液化学ルートによって)直接に電極粒子の表面上にあってもよい。他の例では、(種々の形状及びサイズの)導電性粒子は、各(又はほとんどの)粒子の表面を帯電させることによって、及び導電性添加物粒子に対する電極粒子の逆電荷を用いることによって、電極粒子の表面に強固に付着され得る。さらに他の例では、導電性粒子は、有機(例えば、ポリマー)バインダーを用いて、及び導電性添加物と電極粒子との間に(例えば、導電性接着剤として有効に作用する)導電性炭素中間層を形成するバインダーを炭化することによって、電極粒子の表面に付着され得る。さらに他の例では、炭素層を導電性添加物粒子及び活性電極粒子の混合物にCVD蒸着することにより、電極粒子と導電性添加物との間の接点に炭素を優先的に堆積させてもよい。一例では、CVD炭素層は、導電性接着剤として同様に作用して導電性添加物を電極粒子に強固に付着させることができる。
【0097】
一部の設計では、(ナノ)複合活性電極粒子の外表面積に対する非活性成分の質量の比で与えられるスラリー成分の最適な重量%は、非活性成分gあたり約1~約5000m2の活性(例えば、非活性成分gあたり約5~約200m2の活性)の範囲の値を示し得る。一部の設計では、特定の電極組成物に対するスラリー成分の最適な重量%は、活性粒子のサイズ、導電性添加物の種類、導電性添加物の界面化学作用、活性粒子の界面化学作用、粒子の密度、サイクル中の体積変化、バインダーの種類及び分子量、電極の厚さ、電極の密度並びに/又は他のパラメータに依存し得る。
【0098】
一部の用途では、導電性添加物及び(複合)電極粒子の表面に逆の電荷を誘導することは、それらの接触面積及び接触強度を高めるとともにより均一な混合を実現するために有利となり得る。例えば、正の電荷が複合粒子の表面に導入され、負の電荷が導電性添加物の表面に導入され得る。他の例では、負の電荷が複合粒子の表面に導入され、正の電荷が導電性添加物の表面に導入され得る。一部の用途では、電極乾燥の間又はその後に導電性添加物と電極粒子との間に化学反応を誘発させることが有利となり得る。
【0099】
一部の設計では、最適な性能のために(例えば、異なる寸法、アスペクト比又は形態を有する)2種類以上の導電性添加物を用いることが有利となり得る。一部の設計では、1種類の導電性添加物を電極粒子の表面に化学的に結合することがさらに有利となり得る。この場合、一例として、電極粒子/導電性添加物界面の安定性を維持するための膨張無きことについての要件は、実質的に軽減され、完全に回避されることもある。一例では、短い(例えば、約0.01~10ミクロンの)カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、又はグラフェン/グラファイトリボンは、(例えば、触媒による化学蒸着、CVD又は他のメカニズムを用いることによって)電極粒子の表面から成長され得る。他の例では、一方の電荷を有する導電性炭素添加物粒子(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)及び逆の電荷を有する電極粒子の混合物が、少量の犠牲バインダーに混合されてから炭化されてもよい。一部の設計では、炭化されたバインダーは、炭素添加物の一部を電極粒子の表面に強固にかつ永続的に付着させ得る。一例では、そのような電極粒子/炭素添加物複合材は、(例えば、本開示の文脈において適用可能であるように)サイクル中に適度な体積変化を受ける一層安定した電極を形成(又はキャスティング)するのに、種々の好適なバインダー及び追加の導電性添加物とともにスラリーにおいて使用され得る。
【0100】
一部の用途では、異なる表面電荷又は異なる界面化学作用を有する2以上の導電性添加物を用いることが有利となり得る。特に、一部の設計では、1種類の添加物が電極粒子に対する高い親和性を示す場合、そのような添加物が、電極粒子周辺の均一なコーティングを形成するのに選択されてもよい。一部の設計では、そのような添加物はまた、電極組立て又はスラリー調製のいずれかの段階において電極粒子との化学結合を形成するのに選択されてもよい。一例として、第2の添加物が第1の添加物よりも大幅に高い分率でバインダーに含まれ、それにより、安定した電極をもたらす強靭かつ均一なバインダー/添加物(ナノ)複合材を形成するために最適化されてもよい。
【0101】
一部の用途では、2以上の導電性添加物が、異なる機能を実現するように選択されてもよい。一例では、1種類の添加物(例えば、カーボンナノファイバ、他の導電性ナノファイバ、長い(例えば、長さ約10ミクロン超の)カーボンナノチューブ、約5~10ミクロン超の線形寸法を有するグラファイト又はグラフェンフレーク、他の導電性フレーク、金属ナノワイヤなどの、より大きな寸法又はより高い導電性を有するもの)が全体として電極内により高い電気伝導性を与えるのに選択され得るが、2種目の導電性添加物(例えば、カーボンブラック及び他の導電性ナノ粒子、より短い(例えば、平均長約0.25~10ミクロンの)カーボンナノチューブ、導電性ナノワイヤ又は(例えば、切断された)導電性ナノファイバ、より小さなグラフェン又はグラファイトフレーク、より短いグラファイトリボンなど)が、各個々の電極粒子が複数の隣接電極粒子及び1種目の添加物に効果的に電気的に接続され、それにより電極材料の高容量利用率をもたらす効率的な導電網を形成することを確実にするように選択されてもよい。他の例では、1種類の添加物が、(例えば、電極の電気伝導性及び機械的安定性の双方を高め、又は電極の電気伝導性を高めて速いイオン経路を(例えば、それが多孔性であり又はそれが電極細孔の閉塞を防止する場合に)与えるような)複数の機能を実行するように選択されてもよい。一部の設計では、1種類目の導電性添加物が、スラリーの混合中に2種類目をより良好に分散させるのに役立つこともある。特に、一部の設計では、同じスラリーにおける以下の種類の導電性添加物のうちの2つの混合物を用いることが有利となり得る:数例を挙げると、(i)種々の種類の(表面コーティングを有し又は有さない)単層カーボンナノチューブ(SWCNT);(ii)種々の種類の(表面コーティングを有し又は有さない)二層(DWCNT)、三層(TWCNT)及び他の種類の多層カーボンナノチューブ(MWCNT);(iii)種々の種類のカーボンブラック(不活性環境において1000℃超でアニーリングされるものを含む);(iv)種々の種類のカーボンファイバ(不活性環境において1000℃超でアニーリングされるものを含む);(v)種々の種類のカーボンナノファイバ;(vi)種々の種類の(保護又は機能的表面コーティング層を有し又は有さない)金属ナノワイヤ(例えば、Si含有アノードなどのLiイオン電池における低電位アノードのためのCu、Fe、Ti若しくはNiナノワイヤ、Liイオン電池におけるカソード若しくは高電圧アノードのためのAlナノワイヤ、又は種々の水系電池のための他のナノワイヤ(例えば、Ni又はTiナノワイヤ)など);(vii)種々の種類の炭素被覆又は金属(例えば、Cu、Fe、Ni、Ti又はAlなど)被覆セラミックナノワイヤ又はファイバ(例えば、Al2O3ナノワイヤ又はファイバ);(viii)種々の種類のカーボンオニオン;(ix)種々の種類のグラファイトリボン(金属被覆グラファイトリボンを含む);(x)種々の種類の(保護又は機能的表面層によるコーティングを有し又は有さない)金属(例えば、Cu、Fe、Ni、Ti又はAlなど)ナノ粒子;及び(xi)種々の種類の(保護又は機能的表面層によるコーティングを有し又は有さない)金属(例えば、Cu、Fe、Ni、Ti又はAlなど)の(ナノ)フレーク。一部の設計では、各種のそのような添加物の界面化学作用は、セルにおける最適な性能のために個々に最適化され得る。
【0102】
一部の用途では、電極内の全ての導電性添加物粒子の全体体積分率を約5体積%(より一層好ましくは約2体積%以下)に制限することが有利となり得る。一部の設計では、質量により、電極内の全ての導電性添加物粒子の分率は、炭素材料のみが導電性添加物として用いられる場合には好ましくは約7重量%未満(例えば、より一層好ましくは約3重量%未満)であり、導電性添加物の一部が好適な金属を含む場合には約10重量%未満(例えば、より一層好ましくは約5重量%以下)となり得る。一例では、導電性添加物の体積分率が高いと、電極のイオン輸送及び体積容量が減少し、望ましくない副反応の程度が増加し得る。更なる例では、導電性添加物の重量(質量)分率が高いと、電極の比容量が減少し得る。
【0103】
図2A~2Bは、バイオマス由来炭素含有複合粒子の形成のための2つの例示のプロセスを示す。これらの例示実施形態によると、小さな(例えば、約0.3~20nmの)細孔202及び大きな(例えば、約20~200nmの)細孔203を有する多孔質バイオマス由来炭素粒子201が、(例えば、種々の熱処理又は水熱処理及びそれらの組合せも伴い得る蒸着メカニズム又は湿式化学作用によって)(例えば、ナノ粒子204の形態の)適切な活物質204で浸透され、小細孔202の(一部の設計では、大細孔203も)体積分率を減少させる。
図2Aの例によると、複合粒子201は(本開示に記載されるような)適切な厚さ及び組成のシェル205に少なくとも部分的に内包され、そのシェル205は小細孔202(例えば、内部の細孔又は内包された細孔)への電解質の到達を防止することができ、これらの複合粒子が電池電極(Li金属、Liイオン、Na金属若しくはNaイオン電池のための電極、又は他のエネルギー貯蔵デバイスのための電極など)となるように処理される際に活物質204と電解質の間の直接の接触を大部分で防止し得るものである。
図2Bの例によると、活物質ナノ粒子201は、保護表面コーティング206に被覆される。
図2Bにおける残余の細孔202の実質的な(例えば、約20~100体積%の)部分は、開放されたままであってもよく、一部の設計では、これらの複合粒子が電池電極(又はスーパーキャパシタ若しくはハイブリッドデバイスなどの他のエネルギー貯蔵デバイスのための電極)となるように処理される際に電解質に到達可能なままであってもよい。
【0104】
図3は、電流コレクタ302上にキャスティング又は堆積されて電解質303で充填されたバイオマス由来炭素含有複合粒子301を用いて生成された電極300の例を示す。本例では、バイオマス由来炭素含有複合粒子301は(例えば、ナノ粒子の形態の)活物質304で少なくとも部分的に(例えば、約30~100%だけ)充填された小さな(例えば、約20nm未満の)細孔305を含み、複合粒子(又は複数の粒子)301の全体が、活物質304及び残余の小細孔305を少なくとも部分的に封止するシェル306で被覆される。一部の設計では、シェル306は、適切なメカニズムによって電極組立ての前に粒子301上に予め堆積され得る。他の設計では、シェル306は、(例えば、ALD、CVDなどの適切な蒸着技術を用いることによって気相から、又は液相から)適切なメカニズムによって電極組立ての後に粒子301上に堆積され得る。一部の設計では、シェル306の一部分が電極組立て前に堆積され、他の部分が電極組立て後に堆積されてもよい。この例示的な例では、電解質303は、小細孔305の大部分に浸透せず、活物質体積の大部分と直接の接触を有さない。一部の設計では(例えば、活物質がLi金属、Liイオン、Na金属、Naイオン及び他の種類の電池のための、いわゆる変換型、合金化型又は金属型活物質に属する場合)、電解質303が活物質ナノ粒子の約0~10体積%と直接の接触を有することが好適となり得る。一部の設計では、電解質303は、液体有機電解質、ポリマーの(固体ポリマー又はゲル型の)電解質、固体無機電解質、液体無機電解質又はハイブリッド(又は複合材/混合型の)電解質を含み得る。
【0105】
図4は、電流コレクタ402上に堆積されて電解質403で充填されたバイオマス由来炭素含有複合粒子401を用いて生成された電極400の他の例を示す。本例では、バイオマス由来炭素含有複合粒子401は、(例えば、ナノ粒子の形態の)活物質404で少なくとも部分的に(例えば、約30~100%だけ)充填された小さな(例えば、約20nm未満の)細孔405を含む。この例示的な例では、電解質403は、活物質体積の大部分と直接の接触を有するようにするために、残余の細孔405の大部分(例えば、約50~100%)に浸透し得る。一部の設計では(例えば、活物質が、いわゆるインターカレーション型、疑似容量型又は混合型の活物質に属する場合)、電解質403が活物質ナノ粒子の約50~100体積%と直接の接触を有することが好適となり得る。一部の設計では、電解質403は、水性電解質、液体有機電解質、ポリマー(固体ポリマー又はゲル型の)電解質、液体無機又はハイブリッド(又は複合材/混合型の)電解質であり得る。
【0106】
図5は、セルの充電中に電流コレクタ501にキャスティングされた電極(例えば、アノード)のバイオマス由来(又は場合によっては他の種類の)多孔質炭素含有粒子503の(少なくとも部分的に空の)細孔502に活物質504(例えば、金属電池の場合におけるLi若しくはNa金属又は他の金属)が浸透される実施形態の例を示す。この例示的な例では、そのような電極は、一部の設計では、活物質なしで組み立てられ得る。放電中、活物質(例えば、Li又はNa金属)の実質的部分(例えば、約50~100%、好ましくは約70~100%)が多孔質粒子の細孔を離れる。バイオマス由来炭素含有粒子503の細孔の少なくとも一部分(例えば、約50~100体積%)は、好ましくはセル組立て中に電解質505に到達不可なままであり、したがって金属(例えば、Li又はNaなど)の堆積のための空間を与えることができる。一部の設計では、電解質505が固体(例えば、固体ポリマー電解質、ポリマーセラミック複合電解質又は無機固体電解質など)であり、充分に硬く、金属が細孔の内部に堆積されて歪エネルギーを最小化することがエネルギー的に好適となることが(例えば、粒子の外表面上の金属堆積、及び副反応又は電解質へのダメージを誘発することを防止するために)好適となり得る。一部の設計では、多孔質炭素含有粒子503は、必ずしもバイオマスではなく他の炭素源(例えば、とりわけ、無機若しくは炭化水素ガス又は合成若しくは天然のポリマーを含む)から生成されてもよく、1つ以上の閉じた細孔を含み得る。一部の設計では、これらの細孔は、(他の多数の実施形態に対するものよりも大きな)約0.3nm~約800nmの範囲となり得る。
【0107】
図6は、本開示の一部の例示実施形態において利用され得る、ランダムな形状の好適な多孔質バイオマス由来炭素粉体の例を示す。本例では、廃材製品に由来する活性化炭素についてSEM画像が撮影される。粒子サイズ分布は、やや広く-例えば、ある粒子は約0.5ミクロン未満であり、ある粒子は約20ミクロンよりも大きい(例えば、線形寸法で約70ミクロンまで)。ただし、
図6における平均粒子サイズは、約10ミクロンである。
【0108】
図7は、種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得る例示のプロセスを示す。本例によると、まず、適切なバイオマスが、炭素源として提供される(ブロック701)。そして、バイオマスは、バイオマス由来炭素を生成するように(例えば、熱処理若しくは水熱処理又はその両方によって、又は他のメカニズムによって)炭化される(ブロック702)。そして、生成された炭素は、充分に低いレベルの不純物(低いアッシュ含有量)を達成するように精製される(ブロック703)。そして、生成された炭素は、適切な粒子サイズを(例えば、約0.3ミクロン~約30ミクロンの範囲の平均サイズで)達成するように製粉される(ブロック704)。そして、製粉された炭素は、適切な比表面積(例えば、約400~600m
2/gから約2000~5000m
2/g)及び細孔体積(例えば、約0.2~0.4cm
3/gから約4~6cm
3/g)を達成するように(例えば、物理的又は化学的活性化によって)活性化され得る(ブロック705)。そして、生成された適切な気孔率の炭素は、適切なメカニズムによって(例えば、気体環境から、化学蒸着、化学蒸気浸透、原子層堆積及び/若しくは他のメカニズムによって又は溶液若しくは溶融浸透を用いることによって;適切な活物質形成/浸透に伴うサブプロセスは、とりわけ、不活性又は反応性気体又は液体環境における加熱、水熱処理、ソルボサーマル処理及びそれらの組合せを含み得る)活物質粒子で浸透される(ブロック706)。そして、(例えば、ナノ粒子の形態の)活物質は、適切な厚さ(例えば、約0.25~50nm)の保護表面層で(任意で)コーティングされてもよい(ブロック707)。最終段階は、(例えば、細孔及び活物質を封止するために)複合粒子の周囲にシェルを形成することを(任意で)含み得る(ブロック708)。
図8は、種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得る例示の方法を示す。本例によると、まず、適切なサイズ、気孔率及び純度の適切なバイオマス由来炭素が、提供される(ブロック801)。そして、生成された適切な気孔率の炭素は、適切なメカニズムによって(例えば、溶液浸透、蒸気浸透、化学蒸着、溶融浸透などを用いることによって)活物質前駆体で浸透される(ブロック802)。そして、生成された複合材は第1の適切な(反応性又は不活性)気体又は液体環境において処理され(ブロック803)、その後に(一部の設計では任意で)適切な組成の活物質を達成するように第2の適切な(反応性又は不活性)気体又は液体環境において処理される(ブロック804)。第1の処理(ブロック803)は、前駆体材料の分解又は前駆体材料の酸化/変換を誘導し得る。第2の処理(ブロック804)は、活物質の所望の組成を達成するように粒子の更なる変換又は結晶化を誘導し得る。したがって、生成された複合材は(例えば、活物質粒子のサイズを増加させる、活物質の結晶化を誘導する、又は望ましくない副生成物若しくは汚染物を除去するなどのために)その後に(選択的に)熱処理されてもよい(ブロック805)。そして、(例えば、ナノ粒子の形態の)活物質は適切な厚さ(例えば、約0.25~50nm)の保護表面層で(任意で)コーティングされてもよく(ブロック806)、複合粒子は(例えば、細孔及び活物質を封止するために)適切な特性のシェルに(任意で)内包されてもよい(ブロック807)。
【0109】
図9は、種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得るさらに他の例示の方法を示す。本例によると、まず、適切なサイズ、気孔率及び純度の適切なバイオマス由来炭素が、提供される(ブロック901)。そして、生成された適切な気孔率の炭素は、適切なメカニズムによって(例えば、溶液浸透、蒸気浸透、化学蒸着、溶融浸透などを用いることによって)活物質前駆体で浸透される(ブロック902)。したがって、生成された複合材は(例えば、活物質粒子のサイズを増加する、活物質の結晶化を誘導する、又は望ましくない合成副産物若しくは汚染物を除去するなどのために)その後に(任意で)熱処理されてもよい(ブロック903)。そして、活物質又は炭素は適切な厚さ(例えば、約0.25~50nm)の保護表面層で(任意で)コーティングされてもよく(ブロック904)、複合粒子は(例えば、細孔及び活物質を封止するために)適切な特性のシェルに(任意で)内包されてもよい(ブロック905)。
【0110】
図10は、種々の例示実施形態による、活物質及びバイオマス由来炭素を含む好適な複合材の形成に利用され得るさらに他の例示の方法を示す。本例によると、まず、適切なバイオマス(又はバイオマス由来炭素含有天然ポリマー又は他のバイオマス由来炭素含有天然物質)が提供され(ブロック1001)、その後に適切な活物質前駆体と細かく混合される(ブロック1002)。混合段階は、室温若しくは高温(例えば、概ね室温から約400℃)での乾燥混合(若しくは製粉)若しくは溶液混合(若しくは製粉)又はその両方を含み、バイオマス(又はバイオマス由来炭素含有製品)のマトリクスにおける前駆体材料の微粒子(200nm以下)を含む均一な複合材を達成することを目的とし得る。そして、混合物は、第1の制御環境において(例えば、反応性又は不活性気体環境又は液体環境において、そのような水熱処理又はソルボサーマル処理で)熱処理され(ブロック1003)、第2の制御環境において(例えば、反応性又は不活性気体環境又は液体環境において、そのような水熱処理又はソルボサーマル処理で)熱処理され(ブロック1004)、第3の制御環境において(例えば、反応性又は不活性気体環境又は液体環境において、そのような水熱処理又はソルボサーマル処理で)熱処理されて(ブロック1005)、活物質及びバイオマス由来炭素の所望の形態及び組成を達成する。生成された複合材は、所望の粒子サイズ分布に製粉され得る(ブロック1006)。なお、一部の設計では、製粉段階は、より早くに(例えば、第1又は第2の処理段階の後-ブロック1004又は1005の後に)行われてもよい。そして、活物質又は炭素は適切な厚さの保護表面層で(任意で)コーティングされてもよく(ブロック1006)、複合粒子は(例えば、細孔及び活物質を封止するために)適切な特性のシェルに(任意で)内包されてもよい(ブロック1007)。
【0111】
ナノ複合粒子は、一般に任意の形状(例えば、略球状、円筒形、板状、ランダムな形状を有するものなど)のものであり、任意のサイズのものであり得る。粒子の最大サイズは、速度性能要件、部分的に充填された粒子へのイオン分散の速度、及び他のパラメータに依存し得る。
【0112】
一例では、ナノ複合粒子の「サイズ」は、種々の態様のいずれかにおいて決定され得る。一例では、粒子が球状又は略球状である場合には、個々の粒子のサイズは粒子の直径をいうことがある。他の例では、粒子が非球状(例えば、楕円球、長円球など)である場合には、個々の粒子のサイズは粒子の同等体積の球体(例えば、粒子の代表的な同体積のサイズの球体)の直径をいうことがある。同等体積球体のアプローチが用いられる場合、粒子からの総細孔体積が粒子の同等体積球体に保持される。さらに他の例では、不規則な形状の粒子(例えば、長円粒子)については、個々の粒子のサイズは粒子の最小寸法(例えば、幅)又は粒子の長さ(例えば、全長)をいうことがある。したがって、本開示の実施形態に関して記載した種々の粒子サイズ範囲は、それぞれの粒子の形状及び/又は他の特徴に基づいて、上記の方法のいずれかに応じて決定されるサイズをいうことがある。
【0113】
本説明は、いずれの当業者も本発明の実施形態を製造又は使用することができるように提供されている。ただし、それらの実施形態に対する種々の変形例が当業者に直ちに明らかとなるので、本発明はここに開示される特定の製法、プロセス段階及び材料に限定されないことが理解される。すなわち、ここに規定される一般的原理は、本発明の主旨又は範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。