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特開2024-69320脳の能力の向上又はストレスの処置に使用するためのナノ粒子
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  • 特開-脳の能力の向上又はストレスの処置に使用するためのナノ粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069320
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】脳の能力の向上又はストレスの処置に使用するためのナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20240514BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 31/745 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 31/787 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 33/242 20190101ALI20240514BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20240514BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20240514BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20240514BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20240514BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P25/18
A61K31/745
A61K31/785
A61K31/787
A61K33/242
B22F1/054
B22F1/05
C01G25/02
C01B33/02 Z
C01G23/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033926
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2020533828の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】17306831.3
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506377178
【氏名又は名称】ナノビオティックス
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOTIX
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ポティエ,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】メイル,マリー-エディット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脳の能力/性能を向上させ、亢進しもしくは改善し又は病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療するための、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を提供する。
【解決手段】ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における学習、記憶及び注意の向上に使用するため、又はシナプスの可塑性及び接続性の変化の起因する病的ストレスの予防もしくは治療に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、ここで、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、3.0eV以上のバンドギャップEgを有し、200以上の誘電率εijkを有する、BaTiOである絶縁体材料、及び3.0eV以上のバンドギャップEgを有し、100以下の誘電率εijkを有する、ZrO及びHfOから選択される絶縁体材料から選択される、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における脳の能力の向上又は病的ストレスの予防もしくは治療に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択され、
i)前記材料が導体材料、半導体材料又は200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料である場合は、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは少なくとも30nmであり、
ii)前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、0.001~0.2Mの電解質濃度、0.01~10g/Lのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度及びpH6~8を有する水溶液中で測定されたとき、中性又は負の表面電荷を与える生体適合性コーティングによりコーティングされている、
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項2】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、0.2超の標準還元電位E°を有する金属及び構造中に隣接するsp2混成炭素中心を有する有機材料から選択される導体材料である、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項3】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、金属元素がIr、Pd、Pt、Auである金属ナノ粒子又はそれらの混合物並びにポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール及び/もしくはポリピレンからなる有機ナノ粒子から選択される、請求項2記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項4】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、3.0eV未満のバンドギャップEgを有する半導体材料である、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項5】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素又はメンデレエフ周期表のIII族及びV族からの元素の混合組成又はメンデレエフ周期表のII族及びVI族からの元素の混合組成からなる、請求項4記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項6】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素からなり、Al、B、Ga、In及びPから選択される電荷キャリアによりドーピングされている、請求項5記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項7】
前記材料が3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料であり、その比誘電率εijkが、20℃~30℃及び10Hzから赤外周波数までの間で測定される、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項8】
前記材料が3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料であり、その比誘電率εijkが200以上であり、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、BaTiO、KTaNbO、KTaO、SrTiO及びBaSrTiOから選択される混合金属酸化物である誘電体材料である、請求項7記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項9】
前記材料が3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料であり、その比誘電率εijkが100以下であり、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、ReO、ZrO及びHfOから選択される金属酸化物である、請求項7記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項10】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、対象者の身体能力の向上又は学習、記憶、知覚、注意及び/もしくは意思決定の向上に使用するためのものである、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物であり、前記組成物は、前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における脳の能力の向上又は病的ストレスの予防もしくは治療に使用するためのものである、組成物。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも2種の別個の、請求項1~9のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、請求項11記載の使用のための組成物。
【請求項13】
少なくとも2種の別個の、請求項1~9のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、キット。
【請求項14】
前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における脳の能力の向上又は病的ストレスの予防もしくは治療に使用するための、請求項13記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、特に、脳の能力の向上及び病的ストレスの処置に関する。より具体的には、本発明は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象における脳の能力の向上又は病的ストレスの予防もしくは治療に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体に関する。更に、本発明は、電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、このようなナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む組成物及びキット並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経科学の理解が進むにつれて、脳は、電気ネットワークと考えることができ、その電線であるニューロンを介して情報をコード化し、伝達する。ニューロン間の結合性は単純であると同時に、複雑である。単純であるとは、ニューロン内部のイオンの流入/流出により、活動電位(又は電気活動の「スパイク」)がもたらされるためである。複雑であるとは、脳ネットワークは、種々の空間的及び時間的スケールで、協調的相互作用を示すノード、ハブ及びモジュールを形成する数千億のニューロンから構成されるためである(Fornito et al., Nature Reviews Neuroscience, 2015, 16, 159-172: The connectomics of brain disorders)。ニューラルコミュニケーションは、個々のニューロンを接続する解剖学的要素(構造)と、情報を伝達するプロセス(機能)に依存する。両側面は、神経系の全体的な能力に影響を及ぼす。神経相互作用は、脳電気活動パターンの振動により変換され、この振動は、典型的には、脳波(EEG)により測定可能である。振動の異なる周波数帯域:デルタ、シータ、アルファ、ベータ、ガンマが観察される(Ward et al., Trends in Cognitive Sciences, 2003, 7(12), 553-559: Synchronous neural oscillations and cognitive processes)。構造的には、脳の最も顕著な神経解剖学的特徴は、ニューロン間の豊富な結合性であり、これは、神経伝達の重要性を反映している。1つの脳領域と別の脳領域との間の振動の同期化(「同期性」)は、空間-時間的協調をもたらすことにより、情報コード化の最後のレベル[第1レベル(ニューロン):活動電位;第2レベル(ニューロンネットワーク):ニューロン振動]を構成すると考えられる(Engel et al., Nature Reviews Neuroscience, 2001, 2, 704-716: Dynamic predictions: oscillations and synchrony in top-down processing)。重要なことに、空間及び時間における同期化及び非同期化の微妙にバランスのとれたパターンが、神経系の機能的性能に根源的であるという証拠が挙がってきている(Schnitzler et al., Nature Reviews Neuroscience, 2005, 6, 285-296: Normal and pathological oscillatory communication in the brain)。
【0003】
特定の人々(他の人々はそうではないが)における特殊なスキル、創造性又は発想力の発達は、非常に不思議なものであり、依然として説明されていない。しかしながら、特定の疾患及びその症状の研究は、「正常」及び「異常」な脳の機能を理解するのに役立つ場合がある。例えば、神経変性疾患、例えば、前頭側頭型認知症を有する個人は、疾患の進行に伴って図画及び描画技術を伸ばすことが観察されている(Miller et al., Neurology, 1998, 978-982: Emergence of artistic talent in frontotemporal dementia)。幾つかの公表では、神経疾患、例えば、双極性症候群、統合失調症又は自閉症を患う傾向は、「非創造的な人」より、創造的な領域(エンジニア、文学、絵画)で働く人(及びその第一度近親者)の方が高いことが実証されている(Andreasen N.C., American Journal of Psychiatry, 1987, 144(10), 1288-1292: Creativity and mental illness: prevalence rates in writers and their first-degree relatives;Baron-Cohen et al., Autism, 1997, 101-109: Is there a link between engineering and autism;Sussman et al., Stanford Journal of Neuroscience, 2007, 1(1), 21-24: Mental illness and creativity: a neurological view of the 「tortured artist」)。幾つかのモデルが、創造及び発想のプロセスを説明するために作られてきた。すなわち、非優性半球が創造活動に特化していることを示唆する半球モデル、又はより最近では、側頭葉の変化により発想が増え、前頭葉の変化によりそれを減ることを示唆する前頭側頭モデルである(Flaherty et al., J Comp Neurol, 2005, 493(1), 147-153: Frontotemporal and dopaminergic control of idea generation and creative drive)。実際に、初歩的算数ができないのに、難解な数値計算を行うことができる学者もいる(Snyder et al., Proceedings of the Royal Society of London B, 1999, 266, 587-592: Is integer arithmetic fundamental to mental processing?: the mind’s secret arithmetic)。興味深いことに、このような異常な能力は、右(非優位)半球促進と共に、左(優位)半球阻害と関連しているという証拠がある(Treffert D.A., Philosophical Transactions of the Royal Society B, 2009, 364, 1351-1357: The savant syndrome: an extraordinary condition. A synopsis: past, present, future)。
【0004】
このように、脳は動的な系であり、大脳機能の特定の状態は、ニューロン集団間の複雑な興奮性及び阻害性相互作用に由来する。そのとき、「異常な」状態は、ニューロン集団間の複雑な興奮性相互作用と阻害性相互作用との間の不均衡を反映している(Kapur et al., Brain, 1996, 119, 1775-1790: Paradoxical functional facilitation in brain-behaviour research, a critical review)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脳の能力/性能を向上させ、亢進しもしくは改善し又は病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療し/これらの予防もしくは治療に使用するための、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体(ナノ粒子の凝集体)を扱う。
【0006】
本発明者らにより本明細書に記載されたナノ粒子及びナノ粒子凝集体は、電流又は電場/刺激の印加/誘引を必要とせず、好ましくは、それらの機能を発揮する(すなわち、効率的である)ために、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源への曝露を必要としない。本明細書に記載されたナノ粒子及びナノ粒子凝集体は、本明細書に記載された用途に関して機能するには、電流又は電場/刺激への曝露を必要とせず、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源への曝露を必要としない。本発明者らは、これらのナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、それらが投与される対象を電流又は電場/刺激、典型的には、例えば、経頭蓋電気刺激(TES)又は経頭蓋磁気刺激(TMS)により前記対象に印可される電流又は電場/刺激へ曝露することなしに、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源へ曝露することなしに、有利かつ驚くべきことに効率的に使用することができることを発見した。このことは、本発明により、処置される対象が電流もしくは電場/刺激又は任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場もしくは超音波源への曝露の負の副作用を被らないであろうことを意味する。
【0007】
当業者に周知のように、ナノ粒子は、高い表面/体積比を有し、30nm超のサイズを有するナノ粒子では20%未満であるのに対し、典型的には、10nmナノ粒子の表面に約35%~40%の原子が局在する。この高い表面/体積比は、サイズに依存する強い表面反応性に関連する。その結果、ナノ粒子(特に、20nm未満のナノ粒子)は、バルク材料と比較して優れた特性を示す場合がある。例えば、金粒子は化学的に不活性であり、巨視的スケールでの酸化に対して抵抗性であることが公知であり、一方、10nm未満のサイズを有する金粒子は化学的に活性な表面を有する。金属ナノ粒子の化学的不安定化に伴う毒性メカニズムは、(i)溶液中での金属の直接放出(溶解プロセス)、(ii)金属ナノ粒子の触媒特性及び(iii)タンパク質を酸化し、反応性酸素種(ROS)を発生させ、酸化ストレスを誘発することができるナノ粒子表面の酸化還元発生であろう(参照.M. Auffan et al., Environmental Pollution 157 (2009) 1127-1133: Chemical Stability of metallic nanoparticles: a parameter controlling their potential cellular toxicity in vitro)。
【0008】
本明細書に上述した触媒特性を示す金ナノ粒子以外に、酸化セリウム(7nm-CeO粒子)又は酸化鉄(20nm-Fe粒子)ナノ粒子は、それらのin vitroにおける酸化ストレスに関連する細胞傷害作用をもたらす表面の酸化還元修飾を示した(参照.M. Auffan et al., Environmental Pollution 157 (2009) 1127-1133: Chemical Stability of metallic nanoparticles: a parameter controlling their potential cellular toxicity in vitro)。同様に、11nmシリカナノ構造は、生物学的媒体により侵食される(参照.S-A Yang et al., Scientific Reports 2018 8:185: Silica nanoparticle stability in biological media revisited)。
【0009】
このため、本発明者らにより以下に説明されるように、30nm未満のサイズを有するナノ粒子は、対象、典型的には、ほ乳類、特に、ヒトにおいてin vivoで使用されるのが意図される場合、注意深く選択されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡単な説明
本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力/性能を向上させ、亢進しもしくは改善し又は対象における病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療し/これらの予防もしくは治療に使用するための、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、初めて有利に記載される。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0011】
本明細書において、本発明者らは、具体的な一態様において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場又は任意の他の外部活性化源に曝すことなく、脳の能力の向上又は対象における病的ストレスの予防もしくは治療に使用するための、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択され、i)前記材料が導体材料、半導体材料又は200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料である場合は、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは少なくとも30nmであり、ii)前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、0.001~0.2Mの電解質濃度、0.01~10g/Lのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度及びpH6~8を有する水溶液中で測定されたとき、中性又は負の表面電荷を与える生体適合性コーティングによりコーティングされている、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を記載する。
【0012】
また、本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力/性能を向上させ、亢進しもしくは改善し又は予防もしくは治療を必要とする対象における病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療するのに使用するための組成物を製造するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の使用も記載される。
【0013】
また、本明細書において、脳の能力の向上又は対象における病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療し/これらの予防もしくは治療に使用するための組成物であって、該組成物が、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と薬学的に許容し得る担体とを含むか又はこれらからなり、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択され、該組成物を介して対象に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力の向上又は病的ストレスの予防もしくは治療が行われる、組成物も記載される。
【0014】
更に、本明細書において、少なくとも2種の別個のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含むか又はこれらからなり、各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から典型的に選択される別個の材料からなる、キット及び、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力の向上又は脳の能力を向上させるための方法又は対象における病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状の予防しもしくは治療におけるその使用が記載される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
ヒト神経系は、およそ80~1200億個の神経細胞からなると推定される(Herculano-Houzel S. Frontier in Human Neuroscience (2009), 3(31): 1-11, The human brain in numbers: a linearly scaled-up primate brain)。ニューロン(又は神経細胞)を定義する特性は、活動電位の形態で電気信号を伝達するその能力である。
【0016】
ニューロン/神経細胞は、脳の基本ノードを構成する。ニューロン/神経細胞の構造は、核を含有し、樹状突起により伸びることができる「神経細胞体」又は「細胞体」と、電気信号を伝達する「軸索」と、シナプス末端からなる軸索末端とからなる。
【0017】
神経細胞は、高度に構造化された様式で互いに伝達して、ニューロンネットワークを形成することができる。ニューロンは、シナプス結合を介して伝達する。ニューロン内では、ナノ回路が、重要なニューロン特性、例えば、学習及び記憶並びにニューロンリズムの発生を媒介するための基礎となる生化学的機構を構成する。
【0018】
マイクロ回路は、ほんの数個の相互接続されたニューロンにより形成することができ、高度なタスク、例えば、媒介反射、プロセス感覚情報、移動の開始並びに学習及び記憶の媒介を行うことができる。マクロ回路は、複数の埋め込みマイクロ回路からなる、より複雑なネットワークである。マクロ回路は、より高い脳機能、例えば、物体認識及び認知を媒介する。したがって、複数のレベルのネットワークが神経系を占めている。
【0019】
ニューラルネットワークの興奮性
ニューロンは、電気化学的にメッセージを送信する(すなわち、化学物質/イオンにより、電気信号が生じる)。神経系における重要なイオンは、ナトリウム及びカリウム、カルシウム及び塩化物である。ニューロンが信号を送信していない時は、「静止状態」である。ニューロンが静止している時は、ニューロンの内部は、外部に対して負である。種々のイオンの濃度により、膜の両側でバランスをとろうと試みられるが、バランスをとることはできない。細胞膜により、一部のイオンのみがチャネル(イオンチャネル)を通過することができるためである。これらの選択的イオンチャネルに加えて、エネルギーを使用して、ニューロンに入った2つのカリウムイオン毎にニューロンから3つのナトリウムイオンを移動させるポンプが存在する。最後に、これらの力が全てバランスされ、ニューロンの内部と外部との間の電圧の差が測定された場合、ニューロンの静止膜電位(また「静止電位」)は、約-70mVである。これは、ニューロンの内部が外部よりも70mV低いことを意味する。静止時には、ニューロンの外部には、比較的多くのナトリウムイオンが存在し、そのニューロンの内部には、より多くのカリウムイオンが存在する。活動電位(「スパイク」又は「インパルス」としても特定される)は、ニューロンが細胞体から離れて軸索を下って情報を送信する時に生じる。これは、何らかのイベント(刺激)が静止電位を0mVに向かって移動させることを意味する。脱分極が約-55mVに達すると、ニューロンは、活動電位を発動させる。脱分極がこの臨界閾値レベルに達しない場合には、活動電位は発動しない(オン/オフ機構)。また、閾値レベルに達すると、固定振幅の活動電位が、常に発動する。したがって、脱分極が閾値に達しないか又は完全な活動電位が生成されるかのいずれかである。
【0020】
活動電位の伝播速度には、大きな変動が見られる。実際に、神経における活動電位の伝播速度は、毎秒100メートルから毎秒10分の1メートル未満まで変化することができる。時間定数は、膜が刺激に対して時間的にどのくらい迅速に応答するであろうかの指標であるが、空間定数(また長さ定数)は、電位が距離の関数としての軸索に沿ってどのくらい良好に広がるであろうかの指標である。
【0021】
大脳皮質の構造
皮質ニューロンには、短距離、局所的結合のみを形成する「阻害性ニューロン」又は「介在ニューロン」と、軸索を離れた皮質内、皮質下及び大脳下のターゲットに伸ばす「興奮性ニューロン」又は「投射性ニューロン」又は「錐体ニューロン」との2つの広いクラスがある。「阻害性ニューロン」又は「介在ニューロン」は、皮質ニューロンの少数(20%)を構成する。大部分は、「錐体ニューロン」に含まれる(Shipp S., Current Biology, 2007, 17(12), R443-449: Structure and function of the cerebral cortex)。投射性ニューロンは、新皮質の異なる領域間及び脳の他の領域に情報を伝達するグルタミン酸作動性ニューロンである(Bikson et al., J Physiol, 2004, 557(1), 175-190: Effects of uniform extracellular DC electric fields on excitability in rat hippocampal slices in vitro)。投射性ニューロン又は錐体ニューロンは、顕著な尖端樹状突起のためにそう呼ばれ、同樹状突起は、典型的には、表層を向いており、錐体形態を提供する。慣例的に、ニューロンは、その細胞体(又は「神経細胞体」)が位置している層に「属し」、仮に尖端樹状突起と基部樹状突起との間にあっても、さらに多くの層にまたがり、より広い範囲の信号を取り込む(Shipp S., Current Biology, 2007, 17(12), R443-449: Structure and function of the cerebral cortex)。
【0022】
大脳皮質の灰白質は、ヒトにおいて厚さ2~3ミリメートルであるが、数百平方センチメートルの表面積を有する回旋状の層状組織シートである(Shipp S., Current Biology, 2007, 17(12), R443-449: Structure and function of the cerebral cortex)。大脳皮質には、6つの主要な層が認められる。
- 分子層である第I層は、散乱ニューロンをほとんど含まず、主に錐体ニューロンの尖端樹状突起房及び水平配向軸索の伸長とグリル細胞とからなる。
- 外顆粒層である第II層は、主に小型及び中型の錐体ニューロンと多数の星状ニューロンを含む。
- 外錐体層である第III層は、主に小型及び中型の錐体ニューロンと垂直配向皮質内軸索を有する非錐体ニューロンを含む。
- 内顆粒層である第IV層は、異なるタイプの星状ニューロンと錐体ニューロンを含む。
- 内錐体層である第V層は、大型の錐体ニューロンを含み、同ニューロンは、軸索を皮質から離れて皮質下構造(例えば、基底核)に向かわせる。前頭葉の一次運動皮質では、第V層は、軸索が随意運動制御の主な経路である皮質脊髄路を形成する内包、脳幹及び脊髄を移動する細胞を含む。
- 多形体又は多形層である第VI層は、大錐体ニューロンをほとんど含まず、小型の紡錘状錐体で多形のニューロンを多く含む。第VI層は、遠心性線維を視床に送り、皮質と視床の間に非常に正確な相互接続を確立している。
【0023】
これらの層は、大脳皮質の種々の領域において異なって発達する。例えば、錐体層は、大脳皮質の運動中枢においてより発達し、顆粒層は、大脳皮質の感覚中枢においてより発達する。
【0024】
ニューロンネットワーク内及びニューロンネットワーク間の接続性
脳内及び脳を横切る伝達を調査するために使用される3つの接続性ネットワークタイプが存在する。構造的接続性は、脳の領域を物理的に接続する繊維トラックの検出に基づいている。これらは、信号が脳内を移動することができる可能性のある経路を示す解剖学的ネットワークマップである。機能的接続性は、相関する活動の類似の周波数、位相及び/又は振幅を有する脳領域における活動を特定する。効果的な接続性は、機能的な接続性情報を使用し、更に1工程進み、1つの神経系が別の神経系に対して有することができる直接的又は間接的な影響、より具体的には脳内の動的な情報フローの方向を決定する(Bowyer et al., Neuropsychiatric Electrophysiology, 2016, 2(1), 1-12: Coherence a measure of the brain networks: past and present)。
【0025】
ニューロンネットワーク内の同期された活動は、脳磁図(MEG)、脳波(EEG)、機能的磁気共鳴撮像(FMRI)又はポジトロン放射断層撮影(PET)、ついで、ネットワーク接続性分析を使用する画像により検出することができる。MEG(脳磁図)又はEEG(脳波)が好ましい。情報の動的なフローを解像するのに高い時間解像能を有するためである。脳の接続性分析は、脳が機能するのに必要な伝達ネットワークをマッピングするために行われる。脳内の特定の領域は、特定のタイプの情報を処理するために特化している。画像化技術は、これらの領域が脳内のネットワークを横切って他の特化した領域と接続され、伝達することを明らかにした。「コヒーレンス」(Bowyer et al.)は、振動する脳活動のニューロンパターンの同期性(同期している状態又は同期された状態)の周波数及び振幅を定量化する数学的技法である。ニューロンの同期活動の検出は、ヒトの脳における機能的接続性の健全性又は完全性を決定するのに使用することができる。機能的接続性マップを構造的接続性画像上に重ね合わせ、有効な接続性から導出された情報フローの方向を使用することにより、脳がどのように機能するかの包括的な理解が提供される。
【0026】
インタクトな(すなわち、「正常」又は「健康」な)脳は、遅いデルタリズム(0.5~4Hz)からシータ(4~8Hz)、アルファ(8~12Hz)、ベータ(15~30Hz)及びガンマ(30~70Hz)振動までの、生物の異なる「状態」に関連する(すなわち、「正常」又は「健康」な)同期活動の複雑なパターンを表わす。興味深いことに、皮質構造の分離された培養物は、緻密に相互接続されたニューロンの集団におけるネットワーク発動(スパイク)及び破裂(スパイクのクラスター)の出現、発生及び広がりを支配する法則を調査するための便利な系を提供する。ネットワーク活動は、非侵襲的な様式で、多電極アレイを使用して有限の時間解像能により、長期間記録することができる。二次元分離培養物は、脳におけるネットワーク活動の形成及び維持を制御する法則を検討するための実行可能な試験系として使用することができ、この系により、インタクトな脳において対処することができない仮説の試験が可能となる(Cohen E. et al., Brain Research, 2008, 1235, 21-30: Determinants of spontaneous activity in networks of cultured hippocampus)。
【0027】
ヒトの精神能力又は脳の能力、例えば、知能は、特に複雑である。これらの能力を機械論的用語で理解することは、それらの向上を容易にする可能性を有する。脳波及びイベント関連電位を使用する研究は、神経伝達の速度及び信頼性が、より高い能力、典型的には、より高い知能に関連することを示す。PETを使用した初期の神経画像研究により、知能が精神活動中の大脳グルコース代謝と負に相関することが見出され、「神経効率」仮説の策定につながった。この仮説によれば、より知的な人々は、与えられたレベルで行うためにより少ないニューロン資源を消費する。推論及び新たな問題解決能力という意味での知能は、外側前頭皮質の統合性、構造及び機能、そしておそらく他の領域のそれらと密接に結びついている。知能の神経基盤についての未解決の疑問には、とりわけ、精神測定学的知能(すなわち、IQ型試験、典型的には、応答の精度(速度ではなく)を評価することにより測定される知能)と、(i)脳波ベースの研究により示されるような作業記憶ネットワークの構成要素間の機能的接続性及び(ii)神経可塑性(すなわち、経験に応じて神経系の主要な接続変化を伴い、ヒトにおいて成熟時に動作しなくなることが観察されるプロセスを指すのに使用される)との間の関係が含まれる。神経接続の発達は、知能の発達と一致することが報告された(Gray J.R. et al., Nature Review Neuroscience, 2004, 5, 471-482: Neurobiology of intelligence: science and ethics;Garlick D., Psychological Review, 2002, 109(1), 116-136: Understanding the nature of general factor of intelligence: the role of individual difference in neural plasticity as an explanatory mechanism.)。
【0028】
ニューロン間の伝達は、実際に、高次脳機能、例えば、知覚、記憶及び運動に必須である(Massobrio P et al. Neural Plasticity, 2015, Article ID 196195, In vitro studies of neuronal networks and synaptic plasticity in invertebrates and in mammals using multi electrode arrays)。接続の形成と発達は、学習プロセスに重要であると推定されているところ、それらの維持は記憶にとって必須であると考えられる。シナプス可塑性は、認知プロセス、例えば、学習及び記憶に長く関与してきた。ネットワークレベルでのシナプス可塑性により、時間的情報をシナプス修飾の空間的に分布したパターンに変換して保存する分布した機構が提供される。何かが学習されるたびに、ネットワークは、新たな接続性を発達させ、新たに学習された事実を組み込む。
【0029】
ニューロン間の有効な接続は、典型的には、当業者に周知の撮像法、例えば、シナプス接続性についての構造情報を提供する電子ベースの撮像法、典型的には、電子顕微鏡法(EM)、例えば、連続ブロック電子顕微鏡法(SBFEM)、連続切片走査型電子顕微鏡法(SSSEM)、自動透過型EM(ATEM)等;光子ベースの撮像法、例えば、「Brainbow」(Lichtman JW et al., Curr Opin Neurobiol, 2008, 22, 144-153: Ome sweet ome: what can the genome tell us about the connectome?;Cai D., et al., Nat Methods, 2013, 10(6), 540-547: Improved tools for the Brainbow toolbox)、「アレイトモグラフィー」(AT)(Micheva KD., et al., 2007, Neuron, 55, 25-36: Array tomography: a new tool for imaging the molecular architecture and ultrastructure of neural circuits;Micheva KD., et al., 2010, Neuron, 68, 639-653: Single-synapse analysis of a diverse synapse population: proteomic imaging methods and markers)、GFP reconstitution across synaptic partners(「GRASP」)、特に、哺乳類GRASPである「mGRASP」(Kim J, et al., 2012, Nat Methods, 9(1), 96-102: mGRASP enables mapping mammalian synaptic connectivity with light microscopy;Feng L, et al., 2012, Bioinformatics, 28, i25-i31: Improved synapse detection for mGRASP-assisted brain connectivity.)、狂犬病ウイルスによるトランスシナプス追跡(Osakada F, et al., 2011, Neuron, 71, 617-631: New rabies virus variants for monitoring and manipulating activity and gene expression in defined neural circuits;Wickersham IR, et al., 2007, Nat Methods, 4(1), 47-49: Retrograde neuronal tracing with a deletion-mitant rabies virus;Wickersham IR, et al., 2007, Neuron, 53(5), 639-647: Monosynaptic restriction of transsynaptic tracing from single, genetically targeted neurons)、蛍光選択的面照明顕微鏡法(fSPIM)(Tomer R, et al., 2012 Nat methods, 9, 755-763: Quantitative high-speed imaging of entire developing embryos with simultaneous Multiview light-sheet microscopy;York AG, et al., 2012, Nat Methods, 9(7), 749-754: Resolution doubling in live, multicellular organisms via multifocal structured illumination microscopy.)(好ましくは、クリアリング法、例えば、「CLARITY」(Chung K, et al., 2013, Nature, 497 (7449), 332-337: Structural and molecular interrogation of intact biological systems.)と組み合わせたもの);並びに光遺伝学的方法、例えば、シナプス強度の測定と共にシナプス接続の空間分布をマッピング可能なチャネル-ロドプシン及び/もしくは2光子顕微鏡カルシウム撮像法(Petreanu L, et al., 2007, Nat Neurosci, 10, 663-668: Channelrhodopsin-2-assisted circuit mapping of long-range callosal projections;Wang H, et al., 2007, Proc Natl Acad Sci USA, 104, 8143-8148: High-speed mapping of synaptic connectivity using photostimulation in channelrhodopsin-2 transgenic mice);並びに異なる入力により神経支配される活性シナプスの検出(Little JP, et al., 2012, J Neurosci: Off J Soc Neurosci, 32(37), 12808-12819: Subcellular synaptic connectivity of layer 2 pyramidal neurons in the medial prefrontal cortex;MacAskill AF, et al., 2012, Nat Neurosci, 15(12), 1624-1626: Subcellular connectivity underlies pathway-specific signaling in the nucleus accumbens);又はこれらの異なる方法の任意の組み合わせ(Yook C. et al., Cellular and Molecular Life Sciences, 2013, 70, 4747-4757: Mapping mammalian synaptic connectivity)を使用して検出することができる。
【0030】
本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力/性能を向上させ、亢進しもしくは改善し又は病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療し/これらの予防もしくは治療に使用するための、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、初めて有利に記載される。(治療的又は診断的)電場及又は任意の他の(治療的又は診断的)外部活性化源、例えば、光源、磁場もしくは超音波源へのこのような曝露は、典型的には、本明細書において、医療スタッフにより、例えば、医師又は看護師により典型的に行われる治療的又は診断的曝露であると理解されなければならない。
【0031】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0032】
典型的な一態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象の身体能力の向上又は認知能力、すなわち、学習、記憶、知覚、注意及び/もしくは意思決定の向上に使用するためのものである。
【0033】
ナノ粒子
本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力を向上させ又は対象における病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を処置するのにおける本発明の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体が記載される。ここで、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0034】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の寸法又はサイズ
本発明の趣旨において、「ナノ粒子」又は「ナノ粒子凝集体」という用語は、ナノメートル範囲、典型的には、1nm~1000nm又は1nm~500nm、例えば、少なくとも10nm~約500nmもしくは約1000nm、少なくとも30nm~約500nmもしくは約1000nm、少なくとも40nm~約500nmもしくは約1000nm、少なくとも45nm~約500nmもしくは約1000nm、好ましくは、500nm未満のサイズを有する生成物、特に、合成生成物をいう。
【0035】
「ナノ粒子凝集体」又は「ナノ粒子凝集体」という用語は、互いに強く結合、典型的には、共有結合したナノ粒子の集合体をいう。
【0036】
電子顕微鏡、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は低温TEMを使用して、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のサイズ、とりわけ、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体のコア、すなわち、その生体適合性コーティングを含まないナノ粒子又はナノ粒子凝集体のサイズを測定することができる。実際に、生体適合性コーティングは、一般的には、主として軽い元素からなる化合物(ポリマー又は有機化合物)から調製され、そのエネルギー電子との弾性相互作用は比較的弱く、その結果、画像コントラストが低くなる。TEMは、電子透過性基板上に堆積した粒子の投影像を測定する。サンプル当たりに約50超、好ましくは、約100、150又は200超のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の記録を、典型的には、サイズ評価のために測定する必要がある。したがって、約50超又は好ましくは約100、150もしくは200超のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の記録により、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアサイズを確立することが可能となる。典型的なアッセイプロトコールは、「NIST - NCL Joint Assay Protocol, PCC-7; Measuring the size of using transmission electron microscopy (TEM); version 1.1 December 2009」に見出すことができる。
【0037】
同様に、動的光散乱(DLS)を使用して、溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の流体力学的直径(すなわち、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のそのコア及びその生体適合性コーティングの両方を含む直径)を測定することができる。流体力学的直径は、分析物と同じ速度で拡散する等価硬質球体の直径である。典型的なアッセイプロトコールは、「NIST - NCL Joint Assay Protocol, PCC-1; Measuring the size of nanoparticles in aqueous media using batch-mode dynamic light scattering; version 1.1 February 2010」に見出すことができる。DLS測定から得られる粒径の結果は、他の技術(例えば、電子顕微鏡法)から得られる結果と一致しない場合がある。これは、実際に測定される物性の違い(例えば、流体力学的拡散対投影面積)による部分がある。更に、DLSは、少量の大粒子又は小粒子のクラスターの存在に敏感である。一方、電子顕微鏡法は、典型的には、一次粒子のサイズ(すなわち、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアサイズ)を反映する(参照.NIST - NCL Joint Assay Protocol, PCC-1; Measuring the size of nanoparticles in aqueous media using batch-mode dynamic light scattering; version 1.1 February 2010)。
【0038】
これらの2つの方法、DLS及び電子顕微鏡法は、更に、サイズ測定値を比較し、前記サイズを確認するために、交代に使用することができる。ナノ粒子及びナノ粒子凝集体のサイズを測定するのに好ましい方法は、DLSである(参照.International Standard ISO22412 Particle Size Analysis- Dynamic Light Scattering, International Organisation for Standardisation (ISO) 2008)。溶液中のDLSにより測定されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の平均流体力学的直径は、強度によるサイズ分布として表わされ(光散乱強度は、粒径に比例する)、室温(約25℃)で測定される。
【0039】
典型的には、最大寸法又はサイズは、丸形もしくは球形のナノ粒子の直径又は卵形もしくは楕円形のナノ粒子の最長の長さである。
【0040】
本明細書で定義されたナノ粒子又は凝集体の最大寸法は、典型的には、約2nm~約250nm又は約500nm、好ましくは、約4nm又は10nm~約100nm又は約200nm、更により好ましくは、約(好ましくは少なくとも)10nm~約150nm、約(好ましくは少なくとも)30nm~約150nm、約(好ましくは少なくとも)40nm~約500nm、約(好ましくは少なくとも)45nm~約500nm、好ましくは、500nm未満である。
【0041】
溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の平均流体力学的直径が測定される場合、DLS技術が、典型的に使用される。DLSを使用すると、溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の平均流体力学的直径は、典型的には、約10nm~約500nm、好ましくは、約10nm又は約30nm~約100nm又は約500nm、更により好ましくは、約10nm又は約30nm~約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm又は約500nmである。
【0042】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアが測定される場合、電子顕微鏡技術が、典型的に使用される。電子顕微鏡法を使用すると、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ(本明細書において、「中央最大寸法」とも同定される)は、典型的には、約5nm~約250nm又は約500nm、好ましくは、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm又は約45nm~約75nm、約76nm、約77nm、約78nm、約79nm、約80nm、約81nm、約82nm、約83nm、約84nm、約85nm、約86nm、約87nm、約88nm、約89nm、約90nm、約91nm、約92nm、約93nm、約94nm、約95nm、約96nm、約97nm、約98nm、約99nm、約100nm、約101nm、約102nm、約103nm、約104nm、約105nm、約106nm、約107nm、約108nm、約109nm、約110nm、約111nm、約112nm、約113nm、約114nm、約115nm、約116nm、約117nm、約118nm、約119nm、約120nm、約121nm、約122nm、約123nm、約124nm、約125nm、約130nm、約140nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm又は約500nmである。
【0043】
典型的には、電子顕微鏡ツールを使用して、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを測定する場合、ナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズは、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm又は約45nm~約75nm、約76nm、約77nm、約78nm、約79nm、約80nm、約81nm、約82nm、約83nm、約84nm、約85nm、約86nm、約87nm、約88nm、約89nm、約90nm、約91nm、約92nm、約93nm、約94nm、約95nm、約96nm、約97nm、約98nm、約99nm、約100nm、約101nm、約102nm、約103nm、約104nm、約105nm、約106nm、約107nm、約108nm、約109nm、約110nm、約111nm、約112nm、約113nm、約114nm、約115nm、約116nm、約117nm、約118nm、約119nm、約120nm、約121nm、約122nm、約123nm、約124nm、約125nm、約130nm、約140nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm又は約520nmに含まれる。
【0044】
ナノ粒子の組成
導体材料から調製されるナノ粒子
導体材料から調製されるナノ粒子は、有機ナノ粒子又は無機ナノ粒子である。
【0045】
導体材料から調製される無機ナノ粒子は、典型的には、標準水素電極に対して25℃及び圧力1atmで典型的に測定されたとき(「reduction reactions having E° values more positive than that of the standard hydrogen electrode」, 8-25, Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Editionの表2を参照のこと)、約0.01以上、より好ましくは、約0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5以上の標準還元電位E°値を有する金属元素により調製される。ナノ粒子を調製するのに使用される代表的な金属元素は、Tl、Po、Ag、Pd、Ir、Pt、Au及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、ナノ粒子を調製するための導体材料として使用可能な金属元素は、Ir、Pd、Pt、Au及びそれらの混合物から選択され、更により好ましくは、Au、Pt、Pd及びそれらの任意の混合物から選択される。特に好ましい材料は、Au及びPtである。
【0046】
典型的には、金ナノ粒子は、それらのサイズが数nmに小さくなった場合に、触媒活性を示した(参照.M. Auffan et al., Nature Nanotechnology 2009, 4(10), 634-641: Towards a definition of inorganic nanoparticles from an environmental, health and safety perspective)。表面/体積比を小さくすることにより、触媒活性に対する無機ナノ粒子の表面の寄与を最小にするために、少なくとも30nm、典型的には、少なくとも40nm又は少なくとも45nmの、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズが好ましい。
【0047】
導体材料から調製される有機ナノ粒子は、典型的には、その構造中に隣接するsp2混成炭素中心(すなわち、炭素二重結合又は芳香環内もしくは芳香環外に、ヘテロ原子、典型的には、NもしくはSを含む芳香環)を有する有機材料により調製される。好ましい有機材料は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリピレン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及び/又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホナートから選択される。
【0048】
具体的な一態様では、該材料が本明細書に上記された導体材料、特に、金属材料、典型的には、0.2超の標準還元電位E°を有する金属又は有機材料、典型的には、その構造中に隣接するsp2混成炭素中心を有する有機材料、好ましくは、本明細書に上記された金属材料、特に、Au、Pt、Pdのいずれか1つ及びそれらの任意の混合物である場合、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは、本明細書に上記されたように、少なくとも30nm又は少なくとも40nm、好ましくは、500nm未満、例えば、45nmである。
【0049】
半導体材料から調製されるナノ粒子
半導体材料から調製されるナノ粒子は、典型的には、無機ナノ粒子である。
【0050】
無機ナノ粒子は、典型的には、その価電子帯と伝導帯との間に比較的小さいエネルギーバンドギャップ(Eg)を示す半導体材料により調製される。典型的には、半導体材料は、室温(約25℃)で典型的に測定された場合、3.0eV未満のバンドギャップEgを有する(例えば、Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Editionの表12~77、表3を参照のこと)。具体的な一態様では、該材料は、本明細書において以下で更に説明されるように、真性半導体材料又は外因性半導体材料である。
【0051】
真性半導体材料は、典型的には、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素、例えば、ケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)、メンデレエフ周期表のIII族及びV族からの元素の混合組成、例えば、AlSb、AlN、GaP、GaN、InP、InN等又はメンデレエフ周期表のII族及びVI族からの元素の混合組成、例えば、ZnSe、ZnTe、CdTe等からなる。
【0052】
外因性半導体材料は、典型的には、高度の化学純度で調製された真正半導体を含み又はそれからなり、ここで、真正半導体材料は、ドーパントを含む。具体的な一態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の外因性半導体材料が、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素からなる場合、Al、B、Ga、In及びPから選択される電荷キャリアによりドーピングされる。このような外因性半導体材料は、負の電荷キャリアが優勢であるn型又は正の電荷キャリアが優勢であるp型のいずれかとすることができる。典型的な外因性p型半導体材料は、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択される荷電キャリアによりドーピングされたケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)からなる。典型的な外因性p型半導体材料は、リン(P)により典型的にドーピングされたケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)からなる。
【0053】
典型的には、半導体ナノ粒子のバンドギャップエネルギーは、ナノ粒子のサイズが10nm未満に小さくなった場合、大きくなることが示された(参照.M. Auffan et al., Nature Nanotechnology 2009, 4(10), 634-641: Towards a definition of inorganic nanoparticles from an environmental, health and safety perspective)。低い表面/体積比を確保し、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のバルクバンドギャップを3.0eV未満で維持するために、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズが、少なくとも30nm、好ましくは、少なくとも40nmであるのが好ましい。
【0054】
このため、具体的な一態様では、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは、該材料が本明細書に上記された半導体材料、特に、バンドギャップEgが3.0eV未満の半導体材料、典型的には、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素、特に、Al、B、Ga、In及びPから選択される電荷キャリアでドーピングされたメンデレエフ周期表のIVA族からの元素又はメンデレエフ周期表のIII族及びV族からの元素の混合組成もしくはメンデレエフ周期表のII及びVI族からの元素の混合組成からなる材料である場合、少なくとも30nm又は少なくとも40nm、好ましくは、500nm未満である。
【0055】
高い比誘電率(比誘電率(relative permittivity))、すなわち、200以上の比誘電率を有する絶縁体材料から調製されるナノ粒子
高い比誘電率εijk(比誘電率とも呼ばれる)を有する絶縁体材料から調製され又はそれからなるナノ粒子は、典型的には、室温(約25℃)で典型的に測定された場合、3.0eV以上のバンドギャップEgと、20℃~30℃及び10Hzから赤外周波数で典型的に測定された(例えば、「Permittivity (dielectric constant) of inorganic solid」; Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Edition; Compilation of the static dielectric constant of inorganic solid. K.F. Young and H.P.R. Frederikse. J. Phys. Chem. Ref. Data, Vol. 2, No. 2, 1973の表12~45を参照のこと)200以上の比誘電率εijkとを有する材料により調製される。
【0056】
このようなナノ粒子は、典型的には、BaTiO、PbTiO、KTaNbO、KTaO、SrTiO、BaSrTiO等から好ましく選択される混合金属酸化物である誘電体材料により調製される。
【0057】
典型的には、ペロブスカイトベースの構造PbTiOナノ粒子は、20nm~30nm未満のナノ粒子サイズについて、それらの常誘電体から強誘電体への転移温度の変化を示す(参照.M. Auffan et al., Nature Nanotechnology 2009, 4(10), 634-641: Towards a definition of inorganic nanoparticles from an environmental, health and safety perspective)。低い表面/体積比を確保し、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の誘電特性を維持するために、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは、少なくとも30nm、典型的には、少なくとも40nmであるのが好ましい。
【0058】
このため、具体的な一態様では、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは、該材料が200以上の高比誘電率εijkを有する本明細書に上記された絶縁体材料、特に、3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料、好ましくは、BaTiO、KTaNbO、KTaO、SrTiO及びBaSrTiOから選択される混合金属酸化物である場合、少なくとも30nm又は少なくとも40nm、好ましくは、500nm未満である。
【0059】
低い比誘電率(比誘電率)、すなわち、100以下の比誘電率を有する絶縁体材料から調製されるナノ粒子
低い比誘電率を有する絶縁体材料から調製されるか又はそれからなるナノ粒子は、典型的には、室温(25℃)で典型的に測定された場合、3.0eV以上のバンドギャップEgと、20℃~30℃及び10Hzから赤外周波数で典型的に測定された(例えば、「Permittivity (dielectric constant) of inorganic solid」; Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Edition; Compilation of the static dielectric constant of inorganic solid. K.F. Young and H.P.R. Frederikse. J. Phys. Chem. Ref. Data, Vol. 2, No. 2, 1973の表12~45を参照のこと)100以下、好ましくは、50以下又は20以下の比誘電率εijkとを有する材料により調製される。
【0060】
このようなナノ粒子は、典型的には、金属酸化物、金属元素がメンデレエフ周期表の周期3、5もしくは6からのもの又はランタニドである混合金属酸化物及び炭素材料から選択される誘電体材料により調製される。誘電体材料は、好ましくは、Al、LaAlO、La、SiO、SnO、Ta、ReO、ZrO、HfO、Y及びカーボンダイヤモンドから選択される。より好ましくは、誘電体材料は、ReO、ZrO、HfO及びこれらの任意の混合物から選択される金属酸化物である。ZrO及びHfOから選択される誘電体材料が特に好ましい。特定の好ましい態様では、誘電体材料又は金属酸化物は、CeO(酸化セリウム)、Fe(酸化鉄)、SiO(シリカ)又はこれらの任意の混合物ではない。
【0061】
ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の両元素は、4酸化状態にあり、Zr4+及びHf4+の元素は、サイズ及び化学的性質がほぼ同一である。これら2つのイオンが、それらの水性化学を確立する際に共に考慮されるのはこのためである(chapter 8, section 8.2 Zr4+ and Hf4+, p. 147 「The hydrolysis of cations」, Baes C.F. & Mesmer R.E.; John Wiley and Sons, Inc. reprint Edition 1986を参照のこと)
【0062】
具体的な一態様では、母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは、該材料が本明細書に上記されたように、ReO、ZrO、HfO、好ましくは、ZrO及びHfO並びにこれらの任意の混合物から選択される場合、本明細書に上記されたように、少なくとも10nmであり、好ましくは、500nm未満である。
【0063】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の形状
該粒子又は凝集体の形状は、その「生体適合性」に影響を及ぼす場合があるため、極めて均質な形状を有する粒子又は凝集体が好ましい。このため、薬物動態学的理由から、形状が本質的に球形、円形又は卵形であるナノ粒子又は凝集体が好ましい。このような形状は、ナノ粒子もしくは凝集体の細胞との相互作用又は細胞による取り込みにも有利である。球形又は円形が特に好ましい。
【0064】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の形状は、典型的には、電子顕微鏡法、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して評価される。
【0065】
ナノ粒子又はナノ粒子の生体適合性コーティング
好ましい実施態様では、目的の組成物を調製するために本発明の文脈において使用されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、ステルス特性を示す薬剤から選択される生体適合性材料によりコーティングすることができる。ステルス特性を示す薬剤は、立体基を示す薬剤とすることができる。このような基は、例えば、ポリアクリラート;ポリアクリルアミド(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド));ポリカルバミド;生体高分子;多糖類、例えば、デキストラン又はキシラン;及びコラーゲンから選択することができる。別の好ましい実施態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、生物学的ターゲットとの相互作用を可能にする薬剤から選択される生体適合性材料によりコーティングすることができる。このような薬剤は、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面上に正又は負の電荷をもたらすことができる。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面上に正電荷を形成する薬剤は、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン又はポリリシンとすることができる。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面上に負電荷を形成する薬剤は、例えば、ホスファート(例えば、ポリホスファート、メタホスファート、ピロホスファート等)、カルボキシラート(例えば、クエン酸塩又はジカルボン酸、特に、コハク酸)又はスルファートとすることができる。
【0066】
好ましい実施態様では、本発明の文脈において使用されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、親水性中性表面電荷を呈し、又はナノ粒子に中性表面電荷を付与する親水性剤から選択される生体適合性材料(すなわち、コーティング剤)によりコーティングされる。実際に、本発明のナノ粒子が対象に投与される場合、親水性中性表面電荷を呈するナノ粒子又はナノ粒子に中性表面電荷を付与する親水性剤から選択される生体適合性剤によりコーティングされたナノ粒子のコアは、本明細書に記載されたナノ粒子の使用を最適化するのに特に有利である。
【0067】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、アルコール(R-OH)、アルデヒド(R-COH)、ケトン(R-CO-R)、エステル(R-COOR)、酸(R-COOH)、チオール(R-SH)、糖(例えば、グルコース、フルクトース、リボース)、酸無水物(RCOOOC-R)及びピロールから選択される官能基で修飾された薬剤とすることができる。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー又はコポリマーとすることができる。該薬剤がオリゴマーである場合、オリゴマーは、オリゴ糖、例えば、シクロデキストリンとすることができる。該薬剤がポリマーである場合、ポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ(乳酸)又はポリヒドロキシアルカン酸)、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、多糖類、例えば、セルロース、ポリピロール等とすることができる。
【0068】
加えて、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面と相互作用可能な特定の基(R-)で修飾された薬剤とすることができる。Rは、典型的には、チオール、シラン、カルボン酸及びリン酸基から選択される。
【0069】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアが導体又は半導体及び金属ナノ粒子である場合、Rは、好ましくは、チオール、チオエーテル、チオエステル、ジチオラン又はカルボン酸基である。好ましくは、親水性中性コーティング剤は、チオグルコース、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、チオジグリコール及びヒドロキシ酪酸から選択される。
【0070】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアが絶縁体及び酸化物又は混合酸化物ナノ粒子である場合、Rは、好ましくは、シラン又はリン酸基である。好ましくは、親水性中性コーティング剤は、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、フルクトース 6-ホスファート又はグルコース 6-ホスファート化合物である。
【0071】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、双性イオン化合物、例えば、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ビタミン又はリン脂質とすることができる。
【0072】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、当業者に周知のように、0.01~10g/Lのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度、pH6~8及び典型的には、0.001~0.2M、例えば、0.01M又は0.15Mの電解質濃度(水中)を有する水(水溶液)中で典型的にゼータ電位測定により決定される。本明細書において上記定義された条件下で、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、-10mV~+10mV(中性表面電荷に対応する)、-20mV~+20mV又は-35mV~+35mVに含まれる。中性の場合、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、-10mV、-9mV、-8mV、-7mV、-6mV、-5mV、-4mV、-3mV、-2mV又は-1mV~1mV、2mV、3mV、4mV、5mV、6mV、7mV、8mV、9mV又は10mVに含まれる。負の場合、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、-11mV、-12mV、-13mV、-14mV、-15mV、-16mV、-17mV、-18mV、-19mV、-20mV、-21mV、-22mV、-23mV、-24mV、-25mV、-26mV、-27mV、-28mV、-29mV、-30mV、-31mV、-32mV、-33mV、-34mV又は-35mV未満である。
【0073】
ナノ粒子又は凝集体の完全な生体適合性コーティングは、ナノ粒子が親水性中性表面電荷を提示する場合、ナノ粒子の表面上のいかなる電荷をも回避するために、本発明の文脈において有利であることができる。「完全なコーティング」は、粒子の表面上に少なくとも完全な単層を形成可能な生体適合性分子の非常に高い密度/緊密さの存在を意味する。
【0074】
生体適合性コーティングにより、特に、生理学的流体(血液、血漿、血清等)等の流体又は医薬品投与に必要な任意の等張性媒体もしくは生理学的媒体中でのナノ粒子の安定性が可能となる。
【0075】
安定性は、乾燥オーブンを使用する乾燥抽出物定量化により確認することができ、典型的には、0.45μmフィルターでのろ過前後のナノ粒子懸濁液において測定することができる。
【0076】
有利には、コーティングにより、in vivoでの粒子の完全性が保存され、その生体適合性が確実なものとなり又は改善され、その任意の機能化(例えば、スペーサー分子、生体適合性ポリマー、ターゲット化剤、タンパク質等による)が容易になる。
【0077】
本発明の生体適合性ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、in vivo投与後(すなわち、生理学的pH)に、毒性種を溶解し、放出してはならず、酸化還元挙動を示してもならない。典型的には、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、生体適合性である、すなわち、対象、特に、ほ乳類、好ましくは、ヒトに安全に使用されると考えられる。
【0078】
本明細書に記載された別の特定の目的は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体又は媒体と共に、上記定義されたナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む組成物、特に、医薬組成物に関する。
【0079】
特に、本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力を向上させ又は対象における本明細書に記載された病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を予防しもしくは治療し/これらの予防もしくは治療における使用のための組成物が記載される。ここで、該組成物は、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る担体とを含み又はこれらからなり、ここで、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、典型的には、本明細書で上記され、説明された、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0080】
好ましい一態様では、該組成物は、少なくとも2種の別個のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含み又はこれらからなり、別個の材料からなる各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0081】
本発明の典型的な一態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、(活性)治療化合物又は薬剤の担体として使用されない。
【0082】
該組成物は、固体、液体(懸濁液中の粒子)、エアロゾル、ゲル、ペースト等の形態にあることができる。好ましい組成物は、液体又はゲルの形態にある。特に好ましい組成物は、液体形態にある。
【0083】
利用される薬学的に許容し得る担体又は担体は、当業者に任意の古典的な担体、例えば、生理食塩水、等張性で、無菌で、緩衝された溶液、非水性媒体溶液等とすることができる。
【0084】
また、該組成物は、安定剤、甘味料、界面活性剤、ポリマー等も含むことができる。
【0085】
該組成物は、例えば、アンプル、エアロゾル、ボトル、錠剤、カプセル剤として、当業者に公知の医薬製剤の技術を使用して製剤化することができる。
【0086】
本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、異なった可能性のある経路、例えば、頭蓋内、静脈内(IV)、気道(吸入)、髄腔内、眼内又は経口経路(経口)、脳室内(ICV)を使用し、好ましくは、頭蓋内又は髄腔内を使用して、対象に投与することができる。
【0087】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の反復注射又は投与を、必要に応じて行うことができる。好ましくは、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、1回投与されるべきである。
【0088】
ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体が投与されると、典型的には、ニューロンの対象と相互作用する。好ましい態様では、この相互作用は、延長された相互作用、すなわち、数時間、数日、数週間又は数か月の相互作用である。具体的な一態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、対象内に残る。
【0089】
本明細書に記載されたナノ粒子、ナノ粒子凝集体及びこのようなナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む組成物は、対象において、典型的には、動物において、好ましくは、ほ乳類において、更により好ましくは、ヒトにおいて、その年齢又は性別にかかわらず、使用するためのものである。
【0090】
対象の大脳皮質、海馬又は偏桃体に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、10~1017個、10~1016個又は10~1015個、好ましくは、10~1014個、より好ましくは、10~1012個である。また、対象の大脳皮質、海馬及又は偏桃体に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、1cmあたりに10~1012個のナノ粒子又はナノ粒子凝集体でもある。
【0091】
対象の脳深部に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、10~1017個、10~1016個、10~1015個又は10~1014個、好ましくは、10~1012個、より好ましくは、10~1011個である。また、対象の脳深部に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、1cmあたりに10~1011個のナノ粒子又はナノ粒子凝集体でもある。
【0092】
また、本明細書において、対象における脳の能力を向上させるための方法又は対象における病的ストレスもしくはその少なくとも1つの症状を処置するための方法であって、各方法は、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体のいずれか1つを対象に投与する工程を含む、方法が記載される。この方法は、典型的には、対象、より正確には、前記対象に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場に曝す工程を何ら含まず、好ましくは、対象、より正確には、前記対象に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝す工程も何ら含まない。
【0093】
本明細書に記載された更なる目的は、本明細書に記載された少なくとも2種の別個のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含み、別個の材料からなる各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が典型的には、本明細書に記載された、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される、キットに関する。
【0094】
具体的な一実施態様では、キットは、別個の容器内に、本明細書に記載された別個のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体(これらは、接触する、典型的には、in situ、すなわち、ターゲット部位又はターゲット部位への混合物の付着前にin vitroもしくはex vivoのいずれかで混合されることが意図されている)を含む。
【0095】
また、本明細書において、対象に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳の能力/性能を向上させ、典型的には、対象におけるシナプス可塑性、シナプス接続性及び/もしくはニューロンネットワークの記憶性能を向上させるための本明細書に記載された方法又は病的ストレスもしくは少なくとも1つのその症状の予防もしくは治療を必要とする対象におけるこれらの予防もしくは処置方法のための、このようなキットのin vivo、in vitro又はex vivoでの使用が記載される。また、本明細書において、対象に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象における病的ストレス又は少なくとも1つのその症状の予防又は治療における使用のための、本明細書に記載されたキットが開示される。
【0096】
具体的な一態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、身体能力を向上させ又は学習、記憶、知覚、注意及び/もしくは意思決定を向上させるためのこのような処置を必要とする対象のこれらの処置法に使用するためのものである。
【0097】
げっ歯類において、典型的には、マウスにおいて、精神測定的知能の確たる証拠を、異なる課題を含む試験群から得ることができる。これらの試験は、典型的には、学習課題、例えば、臭気識別又は空間ナビゲーションを含む。学習試験は、動物に課される感覚、運動又は動機づけ要件に関連する。例えば、マウスにおける推論を評価するために、「高速マッピング」(Carey S, et al., Proceedings of the Standford Child Language Conference., 1978, 15, 17-29: Acquiring a single new word)の概念に基づく試験を、マウスにおける注意課題を評価するのに使用することができ、「マウスストロープ試験」を、マウスにおける作業記憶又は作業記憶能力の有効性を評価するのに使用することができ、「放射状アーム迷路」アッセイを使用することができる(Matzel L.D et al. Current Directions in Psychological Science, 2013, 22(5), 342-348: The architecture of intelligence. Converging evidence from studies of humans and animals)。
【0098】
IQ試験を使用して、人間の記憶能力を評価することができる。IQ試験、例えば、Raven’s Matrix又はWechsler Adult Intelligenceスケールが、当業者に周知であり、典型的には、人間の作業記憶能力を評価するのに使用される。また、Stroop Color-Word Interference試験(Stroop JR, Journal of Experimental Psychology, 1935, 18, 643-652: Studies of interference in serial verbal reactions)も、一般的な知能(Huang L, et al., Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 2012, 38, 414-428: Measuring the interrelations among multiple paradigms of visual attention: an individual differences approach)を予測するのに、人間に使用することができる。
【0099】
別の具体的な一態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、脳における神経/ニューロン接続、機能的接続性及び/又はシナプス可塑性を向上させるこのような処置を必要とする対象のこれらにおける使用するためのものである。
【0100】
典型的な一態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、変化した脳の機能的活動を患う対象を予防しもしくは治療し/この予防もしくは治療における使用のためのものである。
【0101】
別の具体的な一態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場及び好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、病的ストレス又は少なくとも1つのその症状、特に、慢性ストレスを患う対象を予防しもしくは治療し/この予防もしくは治療における使用のためのものである。
【0102】
全ての生物は、ホメオスタシスと呼ばれる動的平衡に向かって努めている。この平衡は、特定の身体的及び心理的なイベントにより脅かされる。入ってくる感覚情報と評価過程との間のインターフェースは、海馬、扁桃体、前頭前皮質を含む辺縁系の脳構造により形成される。種々の状況により、ストレス、例えば、初見、不確実さ、フラストレーション、衝突、恐怖、疼痛等が引き起こされる場合がある。騒音、汚染、対人衝突等の刺激を含む有害な環境への絶え間ない曝露によっても、ストレスが引き起こされる場合がある。
【0103】
このような累積的及び/又は反復的状況から生じる病的ストレスにより、脳細胞の構造(形態)及び/もしくは接続並びに/又は脳細胞の機能特性が変化してしまう。その結果、病的ストレスは、健康に重大な影響を与え、人間の生活の質を制限してしまう。
【0104】
制御不可能なストレスは、重度の有害な影響を及ぼす場合があり、学習及び記憶能力の悪化を含む症状を誘発する。軽度のストレスでは、特定の神経化学系(例えば、カテコールアミン、グルココルチコイド)が、学習に影響を及ぼす場合がある。ストレスのレベルが(持続時間及び/又は強度において)上昇するのにつれて、シナプス可塑性の修飾、細胞形態学的変化、成体神経新生のサプレッション及び/又はニューロン破壊もしくは萎縮(これらの変化は、本明細書において、病的ストレスの症状として記載されている)を含む、幾つかの一過性及び永続的変化が海馬において観察される。脳におけるこれらのストレス関連変化は、学習及び記憶プロセスに影響を及ぼす。実際に、海馬、扁桃体及び前頭前皮質は、行動及び生理学的反応を変化させるストレス誘発構造的リモデリングを受ける。慢性ストレスにより、海馬及び前頭前皮質、記憶、選択的注意、遂行機能に関与する脳領域のニューロンの萎縮が引き起こされ、恐怖及び攻撃性に関与する脳領域である扁桃体のニューロンの肥大が引き起こされる。学習し、記憶し、意思決定するための能力が低下し、典型的には、慢性ストレスにより低下し、攻撃性の向上を伴う場合がある。
【0105】
in vitro及びin vivo電気生理学的研究からの広範な観察は、ストレス及びストレスホルモンが長期増強(LTP)(すなわち、脳における可塑性の細胞機構であり、特に、学習及び記憶に関与すると考えられている、シナプスの天然又は人工的刺激に続くシナプスでの神経伝達の長期にわたる促進)を損なうことを示す点で一貫している。
【0106】
病的ストレスに曝されることに関連する一部の問題に対抗する多くの薬剤、例えば、睡眠剤、抗不安剤、ベータ遮断剤が存在している。同様に、酸化ストレス又は炎症を減少させ、コレステロール合成又は吸収を遮断し、インスリン抵抗性又は慢性疼痛を処置する薬剤は、「病的にストレスに曝される」ことによる代謝的及び神経学的結果に対処するのに役立つ。これらの薬剤は全て、ある程度価値があるが、残念ながら、各薬剤は、その副作用及び制限を有する(Kim J.J. et al. Nature Reviews Neuroscience, 2002, 3, 453-462: The stressed hippocampus, synaptic plasticity and lost memories;McEwen B.X. Physiological Review, 2007, 87, 873-904: Physiology and neurobiology of stress and adaptation: central role of the brain)。ここで、本明細書に記載されたナノ粒子は、このような病的ストレス、特に、慢性ストレスを患う対象、典型的には、本明細書に記載のストレス関連変化が脳に検出された対象を処置するのに有利に使用することができる。
【0107】
「処置」という用語は、本明細書において上記された病的ストレス又はその症状、特に、慢性ストレスを予防し、軽減し又は治癒することができる治療的処置又は手段をいう。このような処置は、同処置を必要とするほ乳類の対象、好ましくは、ヒトの対象に対して意図される。このように、本明細書に記載された病的ストレスを患っていると既に特定されている(診断されている)対象又は処置が予防的(preventive)又は予防的(prophylactic)処置であるこのような病的ストレスに「進行するリスクがある」と考えられる対象が考えられる。病的ストレスを患う特定の対象は、睡眠剤、抗不安剤及びβ遮断剤から選択された薬剤を処方されている対象である。
【0108】
病的ストレスは、酸化ストレスとは異なる。M. Auffan et al.(参照.M. Auffan et al., Environmental Pollution 157 (2009) 1127-1133: Chemical Stability of metallic nanoparticles: a parameter controlling their potential cellular toxicity in vitro)によれば、酸化ストレスは、(細胞又はナノ粒子自体による)ROS(反応性酸素種)産生が細胞の抗酸化防御能力を圧倒し、それにより、有害な生物学的結果:過剰な細胞増殖、アポトーシス、脂質過酸化又は突然変異誘発をもたらす高分子、脂質、DNA又はタンパク質の損傷をもたらす、酸化還元不平衡状態である。細胞において、ROS産生は、例えば、蛍光染料、例えば、ジクロロフルオレセインジアセタートにより追跡することができる。
【0109】
下記実施例及びそれらの対応する図面は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】電気活動記録から抽出することができる幾つかのパラメータを概説する2つの単純化されたバーストのスキーム。全体的な活動(スパイク、バースト、バースト間隔(IBI)及びバースト周期)及びバースト構造(バースト持続時間、バーストプラトー、バースト振幅、バースト間スパイク間隔(ISI)及びバースト面積)を説明するパラメータを示す。これらのパラメータの標準偏差(SD)はそれぞれ、全体的な活動及びバースト構造の規則性の尺度である。時間の変動係数(CVtime)は、各単位の活動パターンの時間的規則性を反映する。CVtimeは、パラメータの標準偏差と平均との比により計算される。ネットワーク間の変動係数(CVnet)は、ネットワーク内のニューロン間の同期を反映する。CVnetは、ネットワークにわたる平均によるパラメータの標準偏差の比により計算される。大きなCVnet値は、ネットワーク全体にわたる活動の広範囲の変動を意味し、より少ない同期化並びにより高いシナプス可塑性及びシナプス接続性を意味する。
図2】前頭皮質ネットワーク活動における「対象」群に使用された水と比較した<<ナノ粒子>>群で観察された実施例1からのナノ粒子の機能的効果。その結果から、ナノ粒子の存在下において、細胞レベルでのより高いシナプス可塑性及びシナプス接続性が示される。
図3】前頭皮質ネットワーク活動における「対象」群に使用された水と比較した<<ナノ粒子>>群で観察された実施例2からのナノ粒子の機能的効果。その結果から、ナノ粒子の存在下において、細胞レベルでのより高いシナプス可塑性及びシナプス接続性が示される。
図4】前頭皮質ネットワーク活動における「対象」群に使用された水と比較した<<ナノ粒子>>群で観察された実施例3からのナノ粒子の機能的効果。その結果から、ナノ粒子の存在下において、細胞レベルでのより高いシナプス可塑性及びシナプス接続性が示される。
図5】前頭皮質ネットワーク活動における「対象」群に使用された水と比較した<<ナノ粒子>>群で観察された実施例5からのナノ粒子の機能的効果。その結果から、ナノ粒子の存在下において、細胞レベルでのより高いシナプス可塑性及びシナプス接続性が示される。
【実施例0111】
実施例
ニューロンのin vitro研究
ニューロンレベルでは、パッチクランプ技術が、ニューロンの膜電位の同時直接測定及び制御が可能であるため、活動電位を検出するのに非常に有用である。
【0112】
この技術を使用して、単一のニューロンにおけるナノ粒子の効果を評価する。
【0113】
ニューロンネットワークのin vitro研究
多電極アレイ(MEA)に結合した分離されたニューロン培養物は、脳ネットワークの複雑さをより良く理解するために広く使用されている。加えて、分離されたニューロンアセンブリの使用により、ネットワークの接続性の操作及び制御が可能となる(Poli D. et al, Frontiers in Neural Circuits, 2015, 9 (article 57), 1-14: Functional connectivity in in vitro neuronal assemblies)。
【0114】
MEAシステムにより、リアルタイムでのニューロンネットワークにおける複数の部位からの非侵襲的で、長期間持続する同時の細胞外記録が可能となり、空間解像能が向上することにより、ネットワーク活動の堅牢な測定が提供される。長期間にわたる活動電位及び電場電位データの同時収集により、時空間パターン生成を担う全ての細胞機構の相互作用から生じるネットワーク機能のモニタリングが可能となる(Johnstone A. F. M. et al., Neurotoxicology (2010), 31: 331-350, Microelectrode arrays: a physiologically based neurotoxicity testing platform for the 21st century)。パッチクランプ及び他の単一電極記録技術と比較して、MEAにより、ネットワーク全体の応答が測定され、ネットワークに存在する全てのレセプター、シナプス及びニューロン型の相互作用に関する全体的な情報が統合される(Novellino A. et al., Frontiers in Neuroengineering. (2011), 4(4), 1-14, Development of micro-electrode array based tests for neurotoxicity: assessment of interlaboratory reproducibility with neuroactive chemicals.)。したがって、MEA記録は、ニューロン培養におけるニューロン伝達、情報符号化、伝播及び処理を理解するのに利用されてきた(Taketani,M.,et al.(2006). Advances in Network Electrophysiology. New York, NY: Springer;Obien et al., Frontiers in Neurosciences, 2015, 8(423): Revealing neuronal functions through microelectrode array recordings)。MEA技術は、電気的に活性な細胞培養におけるネットワーク活動の機能的変化を特徴付けるための高度な表現型ハイコンテンツスクリーニング法であり、神経発生並びに神経再生及び神経変性の局面に対して非常に感受性である。更に、MEA上で成長したニューロンネットワークは、インタクトなほ乳類の神経系の機能を変化させるのとほぼ同じ濃度範囲で、神経活性化合物又は神経毒性化合物に応答可能であることが公知である(Xia et al., Alcohol, 2003, 30, 167-174: Histiotypic electrophysiological responses of cultured neuronal networks to ethanol;Gramowski et al., European Journal of Neuroscience, 2006, 24, 455-465: Functional screening of traditional antidepressants with primary cortical neuronal networks grown on multielectrode neurochips;Gramowski et al., Frontiers in Neurology, 2015, 6(158): Enhancement of cortical network activity in vitro and promotion of GABAergic neurogenesis by stimulation with an electromagnetic field with 150MHz carrier wave pulsed with an alternating 10 and 16 Hz modulation)。
【0115】
この技術を使用して、ニューロンネットワークにおけるナノ粒子の効果を評価する。
【0116】
ニューロンネットワークのin vivo研究
本発明のナノ粒子の動物のニューロンネットワークにおける効果を評価するのに適した動物モデルが検討される。
【0117】
例えば、迷路が、ラット又はマウスにおける空間学習及び記憶を研究するのに使用される。迷路を使用する研究は、ヒトを含む多くの種に適用することができる学習に関する一般的な原理を明らかにするのに役立つ。今日、迷路は、典型的には、異なる処置又は条件がラットにおける学習及び記憶に影響を及ぼすかどうかを決定するのに使用される。
【0118】
実施例1.導体材料により調製されたナノ粒子:中性表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた金ナノ粒子の合成
金ナノ粒子を、塩化金塩(HAuCl)をキャップ剤(クエン酸ナトリウム)で還元することにより合成した(プロトコールは、G. Frens Nature Physical Science 241 (1973) 21から採用した)。典型的な実験では、HAuCl溶液を加熱して沸騰させた。続けて、クエン酸ナトリウム溶液を加えた。得られた溶液を沸騰下で更に5分間維持した。ナノ粒子懸濁液の0.22μmろ過(フィルターメンブレン:ポリ(エーテルスルホン)(PES))を行い、懸濁液中での金濃度を530nmでのUV-可視分光分析アッセイにより求めた。
【0119】
表面コーティングを、α-メトキシ-ω-メルカプトポリ(エチレングリコール)20kDa(「チオール-PEG 20kDa」)を使用して行った。金ナノ粒子表面上の単層被覆の少なくとも半分に達するよう(2.5分子/nm)、十分な量の「チオール-PEG 20kDa」をナノ粒子懸濁液に加えた。pHを7~7.2に調節し、ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌した。
【0120】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(最終濃度:[Au]=0.1g/L)ことにより、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。このようにして得られた生体適合性金ナノ粒子の懸濁液中での流体力学的直径は、118nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.13であることが見出された。
【0121】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[Au]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-1mVに等しいことが見出された。
【0122】
実施例2.導体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた金ナノ粒子の合成
金ナノ粒子を実施例1に記載されたように調製した(同じ金無機コア)。
【0123】
PESメンブレンフィルターでの0.22μmろ過を行い、懸濁液中での金濃度を530nmでのUV-可視分光分析アッセイにより求めた。
【0124】
生体適合性表面コーティングを、メソ-2、3-ジメルカプトコハク酸(DMSA)を使用して行った。表面上の単層被覆の少なくとも半分に達するよう(2.5分子/nm)、十分な量のDMSAをナノ粒子懸濁液に加えた。pHを7~7.2に調節し、ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌した。
【0125】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(最終濃度:[Au]=0.1g/L)ことにより、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。このようにして得られたナノ粒子の懸濁液中での流体力学的直径は、76nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.46であった。
【0126】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[Au]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-23mVに等しいことが見出された。
【0127】
実施例3.100以下の低い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子:中性表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
酸化ジルコニウム(ZrO)ナノ粒子を、塩基性pHにおいて、塩化ジルコニウム(ZrCl)を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)と共に沈殿させることにより合成した。得られた懸濁液をオートクレーブに移し、110℃超の温度で加熱した。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄し、酸性にした。
【0128】
母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価し、それぞれ10nm及び8nm~12nmに等しいことが見出された。446個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0129】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(ZrO)ナノ粒子濃度を、水溶液を粉末に乾燥させ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。生体適合性コーティングをシラン-ポリ(エチレン)グリコール 2kDa(「Si-PEG 2kDa」)を使用して調製した。表面上の単層被覆の少なくとも半分に達するよう(2.5分子/nm)、十分な量の「Si-PEG 2kDa」をナノ粒子懸濁液に加えた。ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌し、続けて、pHを7に調節した。
【0130】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(ナノ粒子のコアを構成するZrOの最終濃度:[ZrO]=0.1g/L)ことによって、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。ナノ粒子の流体力学的直径は、55nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.1であることが見出された。
【0131】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[ZrO]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-1mVに等しいことが見出された。
【0132】
実施例4.100以下の低い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
酸化ジルコニウムナノ粒子を実施例3に記載されたように調製した(同じ無機コア)。
【0133】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(ZrO)ナノ粒子濃度を、水性懸濁液を粉末に乾燥させ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。
【0134】
表面官能化を、ヘキサメタリン酸ナトリウムを使用して行った。表面上の単層被覆の少なくとも半分に達するよう(2.5分子/nm)、十分な量のヘキサメタリン酸ナトリウムをナノ粒子懸濁液に加えた。ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌し、続けて、pHを7に調節した。
【0135】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(ナノ粒子のコアを構成するZrOの最終濃度:[ZrO]=0.1g/L)ことにより、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。ナノ粒子の流体力学的直径は、70nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.11であることが見出された。
【0136】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[ZrO]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-33mVに等しいことが見出された。
【0137】
実施例5.半導体材料により調製されたナノ粒子:中性表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされたケイ素ナノ粒子
【0138】
ケイ素(Si)ナノ粒子(粉末)をUS Research Nanomaterials Inc.から入手した。それらを、表面上に0.1分子/nm未満に相当するようPVP(1重量%)によりコーティングした。
【0139】
母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を代表するナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価したところ、それぞれ53nm及び45nm~61nmに等しいことが見出された。71個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0140】
その後、単層被覆の少なくとも半分(2.5分子/nm)を得るのに十分な量を加え、そのコーティングされた溶液を塩基性pHで一晩インキュベーションすることにより、それらをシラン-ポリ(エチレングリコール)20kDa(Si-PEG 20kDa)でコーティングした。その後、それらを(プローブによる)超音波処理下、30g/Lで水中に分散させた。
【0141】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(Si)ナノ粒子濃度を、水性懸濁液を粉末に乾燥させ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。
【0142】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(ナノ粒子のコアを構成するSiの最終濃度:[Si]=0.1g/L)ことにより、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。ナノ粒子の流体力学的直径は、195nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.10であることが見出された。
【0143】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[Si]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-3mVに等しいことが見出された。
【0144】
実施例6.半導体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされたケイ素ナノ粒子
【0145】
ケイ素(Si)ナノ粒子(粉末)をUS Research Nanomaterials Inc.から入手した。それらを、表面上に0.1分子/nm未満に相当するようPVP(1重量%)によりコーティングした。
【0146】
それらを(プローブによる)超音波処理下、30g/Lで水中に分散させた。
【0147】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(Si)ナノ粒子濃度を、懸濁液を粉末に乾燥させ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。
【0148】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(ナノ粒子のコアを構成するSiの最終濃度:[Si]=0.1g/L)ことにより、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。ナノ粒子の流体力学的直径は、164nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.16であることが見出された。
【0149】
母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を代表するナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価し、それぞれ53nm及び45nm~61nmに等しいことが見出された。71個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0150】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[Si]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-19mVに等しいことが見出された。
【0151】
実施例7.200以上の高い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされたチタン酸バリウムナノ粒子
チタン酸バリウム(BaTiO)ナノ粒子の懸濁液(水中の20重量%)をUS Reseach Materials Inc.(US3835)から入手した。
【0152】
表面官能化を、シラン-ポリ(エチレン)グリコール 10kDa(「Si-PEG 10kDa」)を使用して行った。要するに、まず、「Si-PEG 10kDa」をエタノール/水溶液(1/3v/v)に溶解させ、ナノ粒子の表面上に完全な単層被覆を達成するよう、BaTiO懸濁液(水中の20重量%)に加えた。この懸濁液を超音波処理し、続けて、一晩撹拌した。0.22μmろ過(フィルターメンブレン:ポリ(エーテルスルホン))後、未反応の「Si-PEG 10kDa」ポリマーを除去するために、洗浄工程を行った。
【0153】
流体力学的直径(強度の尺度)を、ナノ粒子懸濁液を水中で希釈する(ナノ粒子のコアを構成するBaTiOの最終濃度:[BaTiO]=0.1g/L)ことにより、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により室温(約25℃)で求めた。ナノ粒子の流体力学的直径は、164nmに等しく、多分散性指数(サイズにおけるナノ粒子の母集団の分散)は、0.16であることが見出された。
【0154】
ゼータ電位を、pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終濃度:[BaTiO]=0.1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7でのゼータ電位は、-11mVであることが見出された。
【0155】
母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を代表するナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価し、それぞれ67nm及び60~77nmに等しいことが見出された。51個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0156】
実施例8.多電極アレイ(MEA)を使用する前頭皮質ニューロン培養物での本発明のナノ粒子(実施例1及び2からのナノ粒子)の機能評価
材料及び方法
Microelectrode Array Neurochips
48ウェルのmicroelectrode array neurochipsをAxion Biosystems Inc.から購入した。これらのチップは、ウェルあたりに16個の受動電極を有する。表面をポリエチレンイミン(PEI、ホウ酸バッファー中の50%)により1時間コーティングし、洗浄し、風乾した。
【0157】
初代細胞培養、処理条件
前頭皮質組織を胚性15/16日目のchr:NMRIマウス(Charles River)から採取した。マウスを頸椎脱臼により殺処分した。組織を酵素消化(133,3Kunitz単位/ml DNase;10単位/ml パパイン)及び機械的粉砕により解離し、計数し、生命力を制御し、ラミニン(10μg/ml)、10% ウシ胎児血清及び10% ウマ血清を含有するDMEMの20μl滴中において、MEA上に播種した。MEA上での培養物を使用の準備ができるまで、10% CO雰囲気中、37℃でインキュベーションした。10% ウマ血清を含有するDMEMを培養培地に週2回補充した。発生中の共培養物を播種後5日目に有糸分裂阻害剤である5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(25μM)及びウリジン(63μM)により処理して、更なるグリア増殖を防止した。
【0158】
その前頭皮質を26日間(培養期間、「ネイティブ期」とも特定される)培養した。アクティブウェルの数を定量し、ナノ粒子懸濁液([Au]=800μM)(「ナノ粒子」群)又は水(「対象」群)をこのアクティブウェルに加えた。2日(48時間)のインキュベーション後、活動を2時間記録した(値を30分のスパンから得られた60秒のビンデータから得た)。
【0159】
マルチチャネル記録及びマルチパラメトリックデータ分析
記録には、Axion Biosystems(USA)製のマルチチャネルMAESTRO記録システムを使用した。細胞外記録には、48ウェルのMEAをMAESTRO記録ステーションに入れ、37℃に維持した。記録をDMEM/10% 熱不活化ウマ血清中で行った。10% COを含むろ過され、加湿された気流の継続的な流れにより、pHを7.4に維持した。
【0160】
各単位は、1つの電極において記録された1つのニューロンから生じる活動を表わす。単位を記録の開始時に分離する。各単位について、活動電位(すなわち、スパイク)をスパイク列として記録し、いわゆる、「バースト」に分類した。バーストを、プログラムSpike WrangLer及びNPWaveX(両方ともNeuroProof GmbH, Rostock, Germany)を使用する直接スパイク列分析により定量的に記述した。バーストを短いスパイクイベントの開始及び終了により定義した(参照.図1)。
【0161】
ネットワーク活動パターンのマルチパラメトリックハイコンテンツ分析により、204の活動記述スパイク列パラメータを抽出した。これらのパラメータにより、以下の4つのカテゴリー:全体的な活動、バースト構造、振動挙動及び同期性における活動変化の正確な記述を得ることが可能となる。
・「全体的な活動パラメータ」の変化は、活動電位発動速度(スパイク速度)、バースト速度及びバースト間の時間としてのバースト周期における効果を記述する。
・「バースト構造パラメータ」は、高周波スパイク位相(「バースト」)内のスパイクの内部構造、例えば、バースト内のスパイク頻度、バースト内のスパイク速度及びバーストスパイク密度だけでなく、バーストの全体構造、例えば、持続時間、面積及びプラトーも定義する。
・「振動パラメータ」は、バーストの発生又は構造の規則性を定量化し、この規則性は、実験エピソード内のパラメータ(全体的な活動、バースト構造)の変動性を記述する主要な活動パラメータの変動係数により計算される(Gramowski A. et al., Eur. J. Neurosci., 2004, 19, 2815-2825: Substance identification by quantitative characterization of oscillator activity inmurine spinal cord networks onmicroelectrode arrays)。より高い値は、より規則的でないバースト構造又はより規則的でない全体的な活動(例えば、スパイク、バースト)を示す。
・スパイク列における同期性の尺度として、「CVnetパラメータ」は、ネットワーク内のニューロン間の「同期化」を反映する(Gramowski A. et al., Eur. J. Neurosci., 2004, 19, 2815-2825: Substance identification by quantitative characterization of oscillator activity inmurine spinal cord networks onmicroelectrode arrays)。CVnetは、ネットワークにわたる変動係数である。大きなCVnet値は、ネットワーク全体にわたる活動の広範囲の変動を意味し、より少ない同期化、より高いシナプス可塑性及びシナプス接続性を意味する(Gramowski A. et al., Frontiers in Neurology, 2015, 6(158): Enhancement of cortical network activity in vitro and promotion of GABAergic neurogenesis by stimulation with an electromAgnetic field with 150MHz carrier wave pulsed with an alternating 10 and 16 Hz modulation)。
【0162】
CVtimeは、単一単位(単一ニューロン)活動パターンの周期的挙動を反映する。一方、CVnetは、特定の時間枠における異なるニューロン間の整合を示し、同期性の尺度である。ニューロンの集団(ネットワーク)が同期しているが、その時間的パターンで変動する場合、低いCVnet及び高いCVtimeが観測される。逆に、複数の周期的パターンを有する非同期ネットワークは、高いCVnet及び低いCVtimeを生じさせる。シナプス結合性(ニューロン間の化学的及び電気的結合の集合体をいう)が最大になった時、通常、高いCVnet値が、ネイティブ条件下(すなわち、健康な条件下及び何らかの処置が行われていない状態)で得られる。
【0163】
ニューロンネットワークに対する本発明のナノ粒子により誘発される機能的効果を、上記されたパラメータにより評価した(また、それらのいくつかについて、以下の表1にまとめた)。
【0164】
【表1】
【0165】
試験されたナノ粒子の存在下又はその不存在下でのネットワーク活動における機能的効果を記録した。絶対活動値(パラメータ値)を独立したネットワークの平均±SEMとして表わした。各「ナノ粒子」群又は「対照」群については、少なくとも8個のアクティブウェル(「アクティブ」は、電気活動を測定するのに十分な数の電極を有するウェルを意味する)を分析に含めた。絶対パラメータ分布を正規性について試験し、群間の統計的有意差を一方向ANOVAにより評価した。
【0166】
図2(実施例1からのナノ粒子)及び図3(実施例2からのナノ粒子)に、「ナノ粒子」群及び「対照」群において観察された機能的効果を特徴付ける、幾つかの代表的なパラメータ(全体的な活動及び同期性)を示す。水(「対照」群で使用)と比較して、ナノ粒子により、ネットワーク伝達の変動が大きくなる(CVnetパラメータの値が上昇する)。これは、シナプス可塑性及びシナプス接続性の向上、したがって、ネットワークの記憶能力の向上と関連付けることができる。
【0167】
実施例9.多電極アレイ(MEA)を使用する前頭皮質ニューロン培養物での本発明のナノ粒子(実施例3及び5からのナノ粒子)の機能評価
材料及び方法
Microelectrode Array Neurochips
48ウェルのmicroelectrode array neurochipsをAxion Biosystems Inc.から購入した。これらのチップは、ウェルあたりに16個の受動電極を有する。表面をポリエチレンイミン(PEI、ホウ酸バッファー中の50%)により1時間コーティングし、洗浄し、風乾した。
【0168】
初代細胞培養、処理条件
前頭皮質組織を胚性15/16日目のchr:NMRIマウス(Charles River)から採取した。マウスを頸椎脱臼により殺処分した。組織を酵素消化(133,3Kunitz単位/ml DNase;10単位/ml パパイン)及び機械的粉砕により解離し、計数し、生命力を制御し、10% ウシ胎児血清及び10% ウマ血清を含有するDMEM中において、ポリ-D-リシン及びラミニンコーティングされたMEA上に播種した。MEA上での培養物を使用の準備ができるまで、10% CO雰囲気中、37℃でインキュベーションした。10% ウマ血清を含有するDMEMを培養培地に週2回補充した。発生中の共培養物を播種後5日目に有糸分裂阻害剤である5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(25μM)及びウリジン(63μM)により処理して、更なるグリア増殖を防止した。
【0169】
その前頭皮質を少なくとも4週間(培養期間、「ネイティブ期」とも特定される)培養した。アクティブウェルの数を定量し、ナノ粒子懸濁液(実施例5からのナノ粒子懸濁液については、[Si]=800μM、及び実施例3からのナノ粒子懸濁液については、[ZrO]=400μM)(「ナノ粒子」群)又は水(「対象」群)をこのアクティブウェルに加えた。4日(96時間)のインキュベーション後、活動を2時間記録した(値を30分のスパンから得られた60秒のビンデータから得た)。
【0170】
マルチチャネル記録及びマルチパラメトリックデータ分析
記録には、Axion Biosystems(USA)製のマルチチャネルMAESTRO記録システムを使用した。細胞外記録には、48ウェルのMEAをMAESTRO記録ステーションに入れ、37℃に維持した。記録をDMEM/10% 熱不活化ウマ血清中で行った。10% COを含む、ろ過され、加湿された気流の継続的な流れにより、pHを7.4に維持した。
【0171】
各単位は、1つの電極において記録された1つのニューロンから生じる活動を表わす。単位を記録の開始時に分離する。各単位について、活動電位(すなわち、スパイク)をスパイク列として記録した。同スパイク列は、いわゆる、「バースト」に分類される。バーストを、プログラムSpike WrangLer及びNPWaveX(両方ともNeuroProof GmbH, Rostock, Germany)を使用する直接スパイク列分析により定量的に記述した。バーストを短いスパイクイベントの開始及び終了により定義した(図1参照)。
【0172】
ネットワーク活動パターンのマルチパラメトリックハイコンテンツ分析により、204の活動記述スパイク列パラメータを抽出した。これらのパラメータにより、以下の4つのカテゴリー:全体的な活動、バースト構造、振動挙動及び同期性における活動変化の正確な記述を得ることが可能となる。
・「全体的な活動パラメータ」の変化は、活動電位発動速度(スパイク速度)、バースト速度及びバースト間の時間としてのバースト周期における効果を記述する。
・「バースト構造パラメータ」は、高周波スパイク位相(「バースト」)内のスパイクの内部構造、例えば、バースト内のスパイク頻度、バースト内のスパイク速度及びバーストスパイク密度だけでなく、バーストの全体構造、例えば、持続時間、面積及びプラトーも定義する。
・「振動パラメータ」は、バーストの発生又は構造の規則性を定量化し、この規則性は、実験エピソード内のパラメータ(全体的な活動、バースト構造)の変動性を記述する主要な活動パラメータの変動係数により計算される(Gramowski A. et al., Eur. J. Neurosci., 2004, 19, 2815-2825: Substance identification by quantitative characterization of oscillator activity inmurine spinal cord networks onmicroelectrode arrays)。より高い値は、より規則的でないバースト構造又はより規則的でない全体的な活動(例えば、スパイク、バースト)を示す。
・スパイク列における同期性の尺度として、「CVnetパラメータ」は、ネットワーク内のニューロン間の「同期化」を反映する(Gramowski A. et al., Eur. J. Neurosci., 2004, 19, 2815-2825: Substance identification by quantitative characterization of oscillator activity inmurine spinal cord networks onmicroelectrode arrays)。CVnetは、ネットワークにわたる変動係数である。大きなCVnet値は、ネットワーク全体にわたる活動の広範囲の変動を意味し、より少ない同期化を意味する(Gramowski A. et al., Frontiers in Neurology, 2015, 6(158): Enhancement of cortical network activity in vitro and promotion of GABAergic neurogenesis by stimulation with an electromAgnetic field with 150MHz carrier wave pulsed with an alternating 10 and 16 Hz modulation)。
【0173】
CVtimeは、単一単位(単一ニューロン)活動パターンの周期的挙動を反映する。一方、CVnetは、特定の時間枠における異なるニューロン間の整合を明らかにし、同期性の尺度である。ニューロンの集団(ネットワーク)が同期しているが、その時間的パターンで変動する場合、低いCVnet及び高いCVtimeが観察される。逆に、複数の周期的パターンを有する非同期ネットワークにより、高いCVnet及び低いCVtimeが生じる。シナプス結合性(ニューロン間の化学的及び電気的結合の集合体をいう)が最大になった時、通常、高いCVnet値が、ネイティブ条件下(すなわち、健康な条件下及び何らかの処置が行われていない状態)で得られる。
【0174】
ニューロンネットワークに対する本発明のナノ粒子により誘発される機能的効果を、上記されたパラメータにより評価した(また、それらのいくつかについて、以下の表2にまとめた)。
【0175】
【表2】
【0176】
試験されたナノ粒子の存在下又はその不存在下でのネットワーク活動における機能的効果を記録した。活動値(パラメータ値)を各実験について100%に設定された関連するネイティブ活動に正規化した(ネイティブ活動についての値を30分の安定化活動後の30分のスパンから得られた60秒のビンデータから得た)。相対活動値を独立したネットワークの平均±SEMとして表わした。各「ナノ粒子」群又は「対照」群については、少なくとも8個のアクティブウェル(「アクティブ」は、電気活動を測定するのに十分な数の電極を有するウェルを意味する)を分析に含めた。絶対パラメータ分布を正規性について試験し、群間の統計的有意差を一方向ANOVAにより評価した。
【0177】
図4(実施例3からのナノ粒子)及び図5(実施例5からのナノ粒子)に、「ナノ粒子」群及び「対照」群において観察された機能的効果を特徴付ける、幾つかの代表的なパラメータ(全体的な活動及び同期性)を示す。水(「対照」群で使用)と比較して、ナノ粒子により、ネットワーク伝達の変動が大きくなる(CVnetパラメータの値が上昇する)。これは、シナプス可塑性及びシナプス接続性の向上、したがって、ネットワークの記憶能力の向上と関連付けることができる。
【0178】
これらの結果は、ニューロンネットワークにおける機能的効果(ニューロンネットワーク内でのシナプス可塑性及びシナプス接続性)を向上させる際の、本願に記載されたナノ粒子の有利な性能を明示するものである。
【0179】
実施例10:中性表面電荷を有する異なるサイズの金ナノ粒子の合成及び物理化学的特性決定
金ナノ粒子を水溶液中でのクエン酸ナトリウムによる塩化金の還元により得る。プロトコールは、G. Frens Nature Physical Science 241(1973)21から採用した。
【0180】
典型的な実験では、HAuCl溶液を加熱して沸騰させる。続けて、クエン酸ナトリウム溶液を加える。得られた懸濁液を沸騰下にさらに5分間維持する。
【0181】
ナノ粒子サイズは、クエン酸塩対金前駆体比を注意深く変更することにより、約15nm~約110nmで調整する(表3参照)。
【0182】
ついで、調製したままの金ナノ粒子懸濁液を、適切な分子量カットオフ(MWCO)を有するセルロースメンブレンを有する限外ろ過装置(Millipore製のAmicon撹拌セルモデル8400)を使用して濃縮し、層流フード下で0.22μmカットオフメンブレンフィルター(Millipore製のPESメンブレン)を通してろ過する。
【0183】
表面コーティングを、α-メトキシ-ω-メルカプトポリ(エチレングリコール)20kDa(「チオール-PEG 20kDa」)を使用して行った。十分な量の「チオール-PEG 20kDa」をナノ粒子懸濁液に加えて、金ナノ粒子表面上の単層被覆を得る。pHを6.8~7.4に調節し、ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌する。過剰のチオール-PEG 20kDaを、適切なMWCOメンブレンを有する限外ろ過遠心分離フィルター(Sartorius製のVivaspin又はMerck Millipore製のAmicon Ultra)を使用して、層流フード下で除去し、最終懸濁液を4℃で保存する。
【0184】
透過型電子顕微鏡を使用して、少なくとも200個のナノ粒子を計数し、サイズ測定のために最大のナノ粒子寸法をとることにより、粒径を測定する。母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を代表するナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、誘導結合発光分光法(ICP-OES)により測定された金([Au])の濃度、及びナノ粒子の懸濁液を1mM NaCl溶液中で、金濃度([Au])0.01~0.05g/L及びpH約7で希釈することによりナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求められたゼータ電位と共に、表3に報告する。
【0185】
【表3】
【0186】
実施例11.導体材料により調製されたナノ粒子の合成:負の表面電荷を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ナノ粒子(PEDOTナノ粒子)
水中のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ナノ粒子(PEDOTナノ粒子)分散液(1.1重量%)をSigma(Sigma675288)から入手し、そのまま使用した。
【0187】
ゼータ電位を、pH7.3において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈する(最終PEDOT濃度:1g/L)ことによって、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより求めた。pH7.3でのゼータ電位は、-53mVに等しいことが見出された。
【0188】
母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズ、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の母集団の30%~70%を代表するナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用して評価したところ、それぞれ408nm及び311nm~518nmに等しかった(56個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した)。
【0189】
実施例12.100以下の低い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子の合成:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた酸化ハフニウムナノ粒子の合成
酸化ハフニウム(HfO)ナノ粒子を、塩基性pHにおいて、塩化ハフニウム(HfCl)を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)と共に沈殿させることにより合成した。得られた懸濁液をオートクレーブに移し、110℃超の温度で加熱した。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄し、酸性にした。
【0190】
表面官能化を、ヘキサメタリン酸ナトリウムを使用して行った。表面上の単層被覆の少なくとも半分に達するよう(2.5分子/nm)、十分な量のヘキサメタリン酸ナトリウムをナノ粒子懸濁液に加えた。ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌し、続けて、pHを7に調節した。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における学習、記憶及び注意の向上に使用するため、又はシナプスの可塑性及び接続性の変化の起因する病的ストレスの予防もしくは治療に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、ここで
i) 前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、
3.0eV以上のバンドギャップEgを有し、そして200以上の誘電率εijkを有する、BaTiO である絶縁体材料、及び
3.0eV以上のバンドギャップEgを有し、そして100以下の誘電率εijk有する、ZrO 及びHfO から選択される絶縁体材料
から選択され、
ii) 母集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの中央最大サイズは少なくとも30nmであり、
ii)前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、0.001~0.2Mの電解質濃度、0.01~10g/Lのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度及びpH6~8を有する水溶液中で測定されたとき、中性又は負の表面電荷を与える生体適合性コーティングによりコーティングされており、
iv) 前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、治療化合物又は薬剤の担体としては使用されず、そして
v) 前記負の表面電荷を提供する生体適合性コーティングは、ホスフェート、クエン酸塩、ジカルボン酸、コハク酸又はサルフェートを提供する薬剤から選択され、そして前記中性の表面電荷を提供する生体適合性コーティングは、ポリアクリルアミド、ポリカルバミド、生体高分子、多糖類、コラーゲン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン及びポリピロールから選択されるポリマーである、
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項2】
前記材料が、ZrO 又はHfO である、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体
【請求項3】
請求項1又は2記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物であり、前記組成物は、前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における学習、記憶及び注意の向上に使用するため、又はシナプスの可塑性及び接続性の変化の起因する病的ストレスの予防もしくは治療に使用するためのものである、組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも2種の別個の、請求項1又は2記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、請求項記載の使用のための組成物。
【請求項5】
少なくとも2種の別個の、請求項1又は2に記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、キットであって、
前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を電場にもそれ以外の外部活性化源にも曝すことなく、対象者における学習、記憶及び注意の向上に使用するため、又はシナプスの可塑性及び接続性の変化の起因する病的ストレスの予防もしくは治療に使用するための、キット。
【外国語明細書】