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  • 特開-核酸の精製方法 図1
  • 特開-核酸の精製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069329
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】核酸の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/20 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C07H19/20
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024034315
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2022528719の分割
【原出願日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149798
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】リム、ファヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ、チャンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】キム、イル チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギョンワン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ シン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】核酸の精製方法を提供する。
【解決手段】核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶化する第1ステップと、前記結晶化した核酸を温度45℃以上60℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の空気で乾燥させる第2ステップとを含み、前記核酸が、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物又は5’-イノシン酸二ナトリウム7.5水和物を含む、核酸の精製方法とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶化する第1ステップと、
前記結晶化した核酸を温度30℃以上90℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の空気で乾燥させる第2ステップとを含む、核酸の精製方法。
【請求項2】
前記核酸は、5’-グアニル酸二ナトリウム及び5’-イノシン酸二ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の核酸の精製方法。
【請求項3】
前記核酸は、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物又は5’-イノシン酸二ナトリウム7.5水和物を含む、請求項1に記載の核酸の精製方法。
【請求項4】
前記親水性有機溶媒は、メタノール及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の核酸の精製方法。
【請求項5】
前記空気は、温度30℃以上60℃未満、及び相対湿度40%以上90%以下である、請求項1に記載の核酸の精製方法。
【請求項6】
前記空気は、温度70℃以上90℃以下、及び相対湿度70%以上90%以下である、請求項1に記載の核酸の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、核酸の精製方法に関し、具体的には、核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶化する第1ステップと、前記結晶化した核酸を高湿熱風空気で乾燥させる第2ステップとを含む、核酸の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の結晶化方法としては、親水性有機溶媒を用いる方法が主に用いられるが、食品用に用いられる核酸においては、各国の有機溶媒残留量の規制により、最終製品における有機溶媒の除去が非常に重要な問題である。核酸の結晶化の際に一般に用いられる親水性有機溶媒としては、エタノール、メタノールなどが挙げられ、特にメタノールは残留規制が厳格であるので、完全な除去が求められる。それにもかかわらず、核酸の結晶化方法として有機溶媒を用いる方法(特許文献1)が現在も一般的であり、それに関連して、前記特許文献以外に、特許文献2、3、4、5、6なども有機溶媒を用いて核酸を結晶化する方法を開示している。
【0003】
核酸結晶、特に7水和物の形態で存在する5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物結晶は、常温程度の低温でも結晶水の損失が発生し、常温から80℃まで約30分かけて昇温させると、7水和物から2.5水和物にその量が約70%損失する(図1)。このような5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物結晶における水和物の損失は前記結晶の結晶性を低下させ、結晶の劣化や結晶形の変化を発生させるので、乾燥させる際に7水和物レベルに結晶水を維持することが非常に重要である。また、表面水が多量に存在すると無定形の形態に結晶が変形して凝集が発生するので、精製過程中の凝集現象による損失も発生する。
【0004】
このような核酸の特徴により、結晶化した核酸内の残留有機溶媒を除去する方法として常温程度の低温での乾燥を行っていたが、低温での乾燥は結晶内の残留有機溶媒を完全には除去できないという問題がある。それに対して、結晶内の残留有機溶媒を完全に除去するために高温で乾燥を行うと、有機溶媒の除去には有利であるが、結晶水の蒸発により核酸結晶の製品性が低下するという問題があるので、それに代わる代案が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0051324号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-0083595号公報
【特許文献3】中国特許第100395256号明細書
【特許文献4】中国特許第101863943号明細書
【特許文献5】韓国登録特許第10-0025552号公報
【特許文献6】韓国登録特許第10-0117428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶化する第1ステップと、前記結晶化した核酸を温度30℃以上90℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の空気で乾燥させる第2ステップとを含む、核酸の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本出願の一態様は、核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶
化する第1ステップと、前記結晶化した核酸を温度30℃以上90℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の空気で乾燥させる第2ステップとを含む、核酸の精製方法を提供する。
【0008】
本出願の核酸精製方法は、核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶化する第1ステップを含む。本出願における結晶化方法は、親水性有機溶媒含有溶液を用いる方法であればいかなるものでもよい。
【0009】
本出願における「核酸(nucleic acid)」とは、塩基と、糖と、リン酸とからなる化合物を意味する。具体的には、本出願における前記核酸は、5’-グアニル酸(5'-GMP)及び5’-イノシン酸(5'-IMP)からなる群から選択される少なくとも1つであり、より具体的には、前記核酸は、5’-グアニル酸(5'-GMP)であるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本出願における前記核酸は、核酸化合物の塩(salt)、前記塩の水和物(hydrate)の
形態が全て含まれるものである。
【0011】
本出願における「塩(salt)」とは、陽イオンと陰イオンが静電気的引力により結合している形態を意味し、通常は金属塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などである。例えば、金属塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)、アルミニウム塩などが挙げられ、有機塩基との塩としては、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられ、無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられ、有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられ、塩基性アミノ酸との塩としては、アルギニン、リシン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
【0012】
本出願における「水和物(hydrate)」とは、水が化合物に結合している形態を意味し
、前記水和物が結晶である場合は含まれる水を結晶水という。
【0013】
すなわち、本出願における前記核酸とは、核酸化合物、その塩又は前記塩の水和物をまとめて指すものであり、具体的には、前記核酸は、5’-グアニル酸(5'-GMP)及び5’-イノシン酸(5'-IMP)の塩である5’-グアニル酸二ナトリウム(5'-GMP 2Na)及び5’-イノシン酸二ナトリウム(5'-IMP 2Na)からなる群から選択される少なくとも1つであり、より具体的には、5’-グアニル酸二ナトリウム(5'-GMP 2Na)であるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
また、具体的には、前記核酸は、5’-グアニル酸二ナトリウム(5'-GMP 2Na)及び5’-イノシン酸二ナトリウム(5'-IMP 2Na)の水和物である。より具体的には、前記核酸は、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物(5'-GMP 2Na 7H2O)又は5’-イノシン酸
二ナトリウム(5'-IMP 2Na)7.5水和物であるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0015】
本出願における「親水性有機溶媒(hydropholic organic solvent)」とは、親水性性
質を示す有機溶媒を意味し、具体的には、前記有機溶媒は、メタノール及びエタノールか
らなる群から選択される少なくとも1つであり、より具体的にはメタノールであるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本出願の第1ステップは、具体的には、(i)核酸濃縮液に親水性有機溶媒含有溶液を添加するステップと、(ii)前記溶液を添加した核酸濃縮液を冷却するステップと、(iii)生成された核酸結晶スラリーを遠心分離により分離するステップと、(iv)前記分離した核酸結晶を洗浄するステップとを含むが、これに限定されるものではない。
【0017】
本出願において、前記親水性有機溶媒は、核酸濃縮液に対して1.0RV以上1.5RV以下で添加し、具体的には1.0RV以上1.5RV以下、1.1RV以上1.4RV以下、1.1RV以上1.3RV以下、1.15RV以上1.25RV以下で添加するが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本出願において、前記冷却は、1時間以上3時間以下で行い、具体的には1時間以上3時間以下、1.5時間以上2.5時間以下で行うが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本出願において、前記冷却は、20℃以上30℃以下で行い、具体的には20℃以上30℃以下、22℃以上28℃以下、23℃以上27℃以下、24℃以上26℃以下で行うが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本出願において、前記遠心分離は、2000rpm以上3000rpm以下で行うが、これに限定されるものではない。
【0021】
本出願の核酸精製方法は、結晶化した核酸を温度30℃以上90℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の空気で乾燥させる第2ステップを含む。
【0022】
本出願の第2ステップは、具体的には、(a)空気の温度及び湿度を調節するステップと、(b)温度及び湿度を調節した空気により、前記第1ステップで得られた核酸結晶を乾燥させるステップとを含むが、これに限定されるものではない。
【0023】
本出願において、前記空気は、温度30℃以上60℃未満、及び相対湿度40%以上90%以下であってもよい。具体的には、前記温度は、30℃以上60℃未満、30℃以上55℃以下、35℃以上55℃以下、35℃以上50℃以下、40℃以上55℃以下、45℃以上55℃以下、45℃超55℃以下、45℃以上60℃未満、又は50℃以上60℃未満であり、前記相対湿度は、40%以上90%以下、55%以上85%以下、50%以上80%以下、40%以上60%以下、45%以上55%以下、80%以上90%以下であるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本出願において、前記空気は、温度60℃以上90℃以下、及び相対湿度70%以上90%以下であってもよい。具体的には、前記温度は、60℃以上90℃以下、60℃以上85℃以下、60℃以上80℃以下、65℃以上90℃以下、65℃以上80℃以下、65℃以上75℃以下であり、前記相対湿度は、70%以上90%以下、75%以上90%以下、80%以上90%以下であるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本出願において、前記乾燥は、2時間以上7時間以下の時間をかけて行う。具体的には、2時間以上7時間以下、2.5時間以上6.5時間以下、3時間以上6時間以下であるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本出願において、乾燥方法は、高湿熱風、すなわち温度及び相対湿度が調節された空気を用いる方法であればいかなるものでもよい。具体的には、前記乾燥は、空気の湿度調節
が可能な乾燥機を用いて行うが、これに限定されるものではない。
【0027】
本出願に用いる乾燥機は、温・湿度調節装置と、乾燥機チャンバとからなり(図2)、前記温・湿度調節装置により温度と湿度が調節された高湿熱風空気を乾燥機チャンバに供給し、その後湿錠を注入すると、核酸結晶内の有機溶媒及び表面水が除去される。図2は本出願に用いられる乾燥機の一例を示す概略図である。
【発明の効果】
【0028】
本出願の核酸精製方法は、親水性有機溶媒を用いる核酸結晶化の後に残留する有機溶媒を高湿熱風乾燥により完全に除去することができる。また、乾燥中も核酸の結晶水が維持され、水和物の構造が維持されるので、結晶の凝集が発生せず、優れた収率を示す。
【0029】
さらに、高湿熱風乾燥ステップだけで上記効果が得られるので、コスト低減効果もあり、より経済的に核酸の精製を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】温度による核酸結晶の結晶水の損失を示すグラフである。
図2】本出願に用いられる乾燥機の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0032】
実験例1.
実験例1-1.核酸の結晶化
5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物が250g/Lレベルで存在する濃縮液を準備した。濃縮液の体積に対して1.2RV(Relative Volume; 相対体積)に相当する親水
性有機溶媒を0.2RV/hrの流速、38℃で6時間かけて投入した。投入が終了した時点から2時間かけて25℃に冷却し、結晶スラリーを遠心分離機により分離した。ここで、遠心分離は2000rpm~3000rpmレベルの速度で行い、洗浄液は親水性有機溶媒が50%含まれる水溶液を用い、2000rpmで噴霧処理により結晶を洗浄した。洗浄終了後に、水分含有量30%レベルの5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠が得られた。
【0033】
実験例1-2.結晶化した核酸の乾燥
結晶乾燥に用いる高湿熱風空気は、乾燥機の下段に設置した湿度調節装置を用いて調節した(図2)。低温の空気を高温に加温し、その後湿度を調節して用いた。湿度調節装置により安定化させてから、乾燥機チャンバに高湿熱風空気を供給した。その後、実験例1-1で得られた湿錠を注入し、核酸結晶内の有機溶媒及び表面水を除去した。乾燥機内の温・湿度は、チャンバの内部に設置した恒温・恒湿計を用いて観測した。
【0034】
実験例2.結晶の分析
実験例2-1.有機溶媒含有量変化の分析
装置:Hewlett 5890 parkard series 2
カラム:Porapak q(waters associates, 6FT 1/8 in 80/100 packed column supelco)
キャリアガス:水素,窒素
検出器の種類:FLD
オーブンの温度:140℃
試料注入部の温度:150℃
検出器の温度:175℃
試料注入量:1μL
【0035】
結晶の有機溶媒含有量を分析するために、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物結晶1.0000gを秤量して体積0.01Lのフラスコに入れ、超純水で希釈して100g/Lのサンプルを作製した。その後、50mg/Lのメタノール(又はエタノール)標準試薬(J.T.baker >99.0%)を作製し、前記標準試薬を外部標準物として前記サンプルをガスクロマトグラフィー(gas chromatography; GC)で分析した。
【0036】
実験例2-2.残留水和物の測定による結晶水変化の分析
残留水和物含有量を分析するために、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物結晶20mgを秤量して熱重量分析器パンに入れた。その後、熱分析器の温度を初期温度の25℃から300℃まで2℃/minの速度で昇温し、重量の変化を観察した。ここで、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物結晶には、約200℃の区間で23.6%の重量変化が発生した。これは7水和物の蒸発による重量変化とみなすことができる。このようにして残留水和物含有量を分析した。
【0037】
実験例2-3.収率変化の分析
乾燥後の収率を分析するために、乾燥終了後に、乾燥機の上段に装着したバックフィルター内に捕集された微粉の重量を測定することにより、乾燥中に発生した損失を測定した。
【0038】
実験例3.温・湿度条件による結晶水変化の観察
乾燥機の下段に設置した湿度調節装置により乾燥機チャンバ内の温・湿度条件を変化させ、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠内の結晶水変化を観察した。
【0039】
その結果、表1に示すように、温度30℃以上90℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の条件で乾燥させると、残留水和物は12.7%~25.2%であった。
【0040】
特に、温度30℃以上60℃未満、相対湿度40%以上の条件、又は温度60℃以上90℃以下、相対湿度80%以上の条件で乾燥させると、残留水和物は21.4%~25.2%であり、上記範囲では著しく残留水和物が多いことが確認された。
【0041】
【表1】
【0042】
これらの結果から、上記温・湿度条件では乾燥機の内部で長時間処理しても結晶水が維
持されることが分かった。また、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物結晶の理論上の結晶水量である23.6%(±2%)レベルであり、乾燥過程中に水和物構造が変形しないので、結晶の凝集現象が発生せず、凝集による収率損失が生じないことが確認された。さらに、過乾燥過程がないので、結晶性にも優れることが確認された。
【0043】
よって、上記温度及び相対湿度の範囲内であれば、段階的に結晶水が維持され、有機溶媒を完全に除去することができ、また乾燥過程中に水和物構造が変形しないので、結晶の凝集現象が発生せず、凝集による収率損失が生じないことが確認された。
【実施例0044】
核酸の精製I
乾燥機の下段に設置した湿度調節装置により乾燥機チャンバ内の温・湿度を35℃、50%に一定に保持し、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠を継続して注入した。ここで、前記湿錠内の水分は、表面水と結晶水を合わせて約30%レベルであった。
【0045】
その結果、表2に示すように、温度34℃、相対湿度48%の条件で6時間乾燥させると、残留水和物は22.3%、メタノール含有量は0ppmであった。
【0046】
【表2】
【0047】
これらの結果から、上記温・湿度条件では乾燥を行う際に段階的に結晶水が維持され、メタノールを完全に除去できることが分かった。また、乾燥過程中に水和物構造が変形しないので、結晶の凝集現象が発生せず、凝集による収率損失が生じないことが確認された。
【実施例0048】
核酸の精製II
乾燥機の下段に設置した湿度調節装置により乾燥機チャンバ内の温・湿度を55℃、60%に一定に保持し、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠を継続して注入した。ここで、前記湿錠内の水分は、表面水と結晶水を合わせて約30%レベルであった。
【0049】
その結果、表3に示すように、温度55℃、相対湿度60%の条件で3時間乾燥させると、残留水和物は23%、メタノール含有量は0ppmであった。
【0050】
【表3】
【0051】
これらの結果から、上記温・湿度条件では乾燥を行う際に段階的に結晶水が維持され、メタノールを完全に除去できることが分かった。また、乾燥過程中に水和物構造が変形しないので、結晶の凝集現象が発生せず、凝集による収率損失が生じないことが確認された。
【実施例0052】
核酸の精製III
乾燥機の下段に設置した湿度調節装置により乾燥機チャンバ内の温・湿度を70℃、80%に一定に保持し、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠を継続して注入した。ここで、前記湿錠内の水分は、表面水と結晶水を合わせて約30%レベルであった。
【0053】
その結果、表4に示すように、温度70℃、相対湿度80%の条件で3時間乾燥させると、残留水和物は23%、メタノール含有量は0ppmであった。
【0054】
【表4】
【0055】
これらの結果から、上記温・湿度条件では乾燥を行う際に段階的に結晶水が維持され、メタノールを完全に除去できることが分かった。また、乾燥過程中に水和物構造が変形しないので、結晶の凝集現象が発生せず、凝集による収率損失が生じないことが確認された。
【0056】
比較例1.核酸の精製IV
乾燥機の下段に設置した湿度調節装置により乾燥機チャンバ内の温度を37℃で一定に保持し(相対湿度未調整,乾燥空気:湿度13%レベル)、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠を継続して注入した。ここで、前記湿錠内の水分は、表面水と結晶水を合わせて約30%レベルであった。
【0057】
その結果、表5に示すように、温度37℃、相対湿度未調整(13%レベル)の条件で3時間乾燥させると、残留水和物は13%、メタノール含有量は9ppmであった。
【0058】
【表5】
【0059】
これらの結果から、上記温・湿度条件ではメタノールを完全には除去できないことが分
かった。また、結晶水が13%レベルであり、理論結晶水量に対して45%程度の損失が発生するので、結晶性が低下し、水和物量の不足により品質が達成されないことが確認された。
【0060】
比較例2.核酸の精製V
乾燥機の下段に設置した湿度調節装置により乾燥機チャンバ内の温・湿度を70℃、50%に一定に保持し、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物湿錠を継続して注入した。ここで、前記湿錠内の水分は、表面水と結晶水を合わせて約30%レベルであった。
【0061】
その結果、表6に示すように、温度37℃、相対湿度50%の条件で3時間乾燥させると、残留水和物は13%、メタノール含有量は0ppmであった。
【0062】
【表6】
【0063】
これらの結果から、上記温・湿度条件ではメタノールを完全に除去できることが分かった。しかし、結晶水が13%レベルであり、理論結晶水量に対して45%程度の損失が発生するので、結晶性が低下し、水和物量の不足により品質が達成されないことが確認された。
【0064】
これらの結果から、本出願の温・湿度範囲、すなわち温度30℃以上90℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の条件、具体的には、30℃以上60℃未満の温度では40%以上90%以下の湿度、60℃以上90℃以下の温度では70%以上90%以下の湿度を保持すると、結晶水が維持され、メタノールを完全に除去することができ、結晶の凝集による収率損失が生じないことが分かった。また、上記範囲を逸脱すると、湿度の低下により結晶水が蒸発し、有機溶媒が完全に除去されないことが分かった。
【0065】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を親水性有機溶媒含有溶液で結晶化する第1ステップと、
前記結晶化した核酸を温度45℃以上60℃以下、及び相対湿度40%以上90%以下の空気で乾燥させる第2ステップとを含み、
前記核酸が、5’-グアニル酸二ナトリウム7水和物又は5’-イノシン酸二ナトリウム7.5水和物を含む、核酸の精製方法。
【請求項2】
前記親水性有機溶媒は、メタノール及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の核酸の精製方法。
【外国語明細書】