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特開2024-6933光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006933
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L31/04 240
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020653
(22)【出願日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】202210779014.2
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512083920
【氏名又は名称】晶科能源股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】金井昇
(72)【発明者】
【氏名】張彼克
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA00
5F151CB12
5F151CB18
5F151CB21
5F151DA20
5F151GA01
5F151GA15
5F151HA20
5F151JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】太陽エネルギー分野に関し、光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【解決手段】光起電力セルは、ベースと、ベースの第1面に位置し、ベースの第1面の法線に垂直な方向において、互いに交差して間隔を置いて設置された第1エリアと第2エリアを有するパッシベーション層とを備え、第1エリアと第2エリアには、同じ種類のドーピング元素がドープされ、第2エリアは、ベースから離れた基準面を有し、基準面の中心に沿って第2エリアに隣接する第1エリアに指向する方向、及び、基準面の中心に沿ってベースに指向する方向において、ドーピング元素の第2エリアにおけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、ドーピング元素の第1エリアにおけるドーピング濃度は、第2エリアにおける最小のドーピング濃度以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースの第1面に位置し、前記ベースの第1面の法線に垂直な方向において、互いに交差して間隔を置いて設置された第1エリアと第2エリアを有するパッシベーション層と、を備え、
前記第1エリアと前記第2エリアには、同じ種類のドーピング元素がドープされ、前記第2エリアは、前記ベースから離れた基準面を有し、前記基準面の中心に沿って前記第2エリアに隣接する前記第1エリアに指向する方向、及び、前記基準面の中心に沿って前記ベースに指向する方向において、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、前記ドーピング元素の前記第1エリアにおけるドーピング濃度は、前記第2エリアにおける最小のドーピング濃度以下である、
ことを特徴とする光起電力セル。
【請求項2】
前記第2エリアは、第3エリア、第4エリア及び第5エリアを含み、前記ドーピング元素の前記第3エリアにおけるドーピング濃度は、前記第4エリアにおけるドーピング濃度よりも大きく、前記ドーピング元素の前記第4エリアにおけるドーピング濃度は、前記第5エリアにおけるドーピング濃度よりも大きく、
前記第3エリアは、前記第4エリアよりも前記基準面の中心に近く、前記第4エリアは、前記第5エリアよりも前記基準面の中心に近い、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力セル。
【請求項3】
少なくとも前記基準面の一部領域に位置する電極をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光起電力セル。
【請求項4】
前記ドーピング元素の前記第2エリアにおける最大ドーピング濃度と、前記第1エリアにおける最大ドーピング濃度との比は、3~4の範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力セル。
【請求項5】
前記ドーピング元素の前記第1エリアにおけるドーピング濃度の範囲は、1×1020atom/cm~1.5×1020atom/cmであり、
前記ドーピング元素の前記第2エリアにおける最大ドーピング濃度の範囲は、3×1020atom/cm~4×1020atom/cmであり、且つ、
前記ドーピング元素の前記第2エリアにおける最小ドーピング濃度の範囲は、1×1020atom/cm~1.5×1020atom/cmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の光起電力セル。
【請求項6】
前記第1エリアにおける結晶粒サイズは、前記第2エリアにおける結晶粒サイズよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力セル。
【請求項7】
前記第2エリアにおける結晶粒サイズに対する前記第1エリアにおける結晶粒サイズの比は、10~30の範囲である、
ことを特徴とする請求項6に記載の光起電力セル。
【請求項8】
前記第1エリアにおける結晶粒サイズは、100nm~300nmであり、
前記第2エリアにおける結晶粒サイズは、10nm~30nmである、
ことを特徴とする請求項7に記載の光起電力セル。
【請求項9】
前記第1エリアにおける粒界数は、前記第2エリアにおける粒界数よりも少ない、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力セル。
【請求項10】
前記第1エリアにおける粒界数に対する前記第2エリアにおける粒界数の比は、20~100の範囲である、
ことを特徴とする請求項9に記載の光起電力セル。
【請求項11】
前記第1エリアにおける粒界数は、5~10個/μmであり、
前記第2エリアにおける粒界数は、100~500個/μmである、
ことを特徴とする請求項10に記載の光起電力セル。
【請求項12】
前記第1エリアにおける転位密度は、前記第2エリアにおける転位密度よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力セル。
【請求項13】
ベースを提供することと、
前記ベースの第1面に初期パッシベーション層を形成することと、
ドーピングプロセスにより前記初期パッシベーション層の異なる領域に対して異なる処理を行って、パッシベーション層を形成し、かつ、前記ベースの第1面の法線に垂直な方向において、前記パッシベーション層が、互いに交差して間隔を置いて設置された第1エリアと第2エリアを有するようにすることと、を含み、
ここで、前記第1エリアと前記第2エリアには、同じ種類のドーピング元素がドープされ、前記第2エリアは、前記ベースから離れた基準面を有し、前記基準面の中心に沿って前記第2エリアに隣接する前記第1エリアに指向する方向、及び、前記基準面の中心に沿って前記ベースに指向する方向において、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、前記ドーピング元素の前記第1エリアにおけるドーピング濃度は、前記第2エリアにおける最小のドーピング濃度以下である、
ことを特徴とする光起電力セルの製造方法。
【請求項14】
前記パッシベーション層を形成するステップは、
第1ドーピングプロセスで前記初期パッシベーション層を処理することにより、前記ドーピング元素がドーピングされた初期第1エリアを形成することと、
前記初期第1エリアの一部領域が前記第2エリアに変換され、残りの前記初期第1エリアが前記第1エリアとされるように、レーザドーピングプロセスにより前記初期第1エリアの一部領域を処理することと、を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の光起電力セルの製造方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の光起電力セル、または請求項13~14のいずれか1項に記載の製造方法により製造された光起電力セルを接続してなるセルストリングと、
前記セルストリングの表面を覆うためのシーラントフィルムと、
前記シーラントフィルムの前記セルストリングから離れた面を覆うためのカバープレートと、を備える、
ことを特徴とする光起電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽エネルギー分野に関し、特に、光起電力セル(PVセル)及びその製造方法、光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力セルは、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体装置である。表面再結合と金属接触再結合を効果的に低減するために、選択キャリアの原理に基づくトンネル酸化層パッシベーションコンタクト太陽電池技術の適用を開始するメーカーが増えている。電極とベースとの良好なオーミックコンタクトと、太陽光が入射する部位における短波長帯のスペクトルレスポンスの向上とを兼ね備える必要があるため、パッシベーション層における電極に正対する領域は高いドーピング濃度であり、パッシベーション層における光照射される領域は低いドーピング濃度であることが望ましい。
【0003】
しかしながら、ドーピングプロセスの影響により、パッシベーション層におけるドーピング元素の濃度に急変現象が存在し、ドーピング元素濃度の高い領域からドーピング元素濃度の低い領域までの電位差が急変し、パッシベーション層によるベースへのパッシベーション効果に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願実施例は、少なくとも第1エリアの光吸収率を低下させるとともに、、パッシベーション層によるベースへのパッシベーション効果を高めて、光起電力セルの光電変換効率を向上させるのに有利な光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の幾つかの実施例によれば、本願実施例の一態様は光起電力セルが提供され、ベースと、前記ベースの第1面に位置し、前記ベースの第1面の法線に垂直な方向において、隣接する第1エリアと第2エリアを有するパッシベーション層とを備え、前記第1エリアと前記第2エリアには、同じ種類のドーピング元素がドープされ、前記第2エリアは、前記ベースから離れた基準面を有し、前記基準面の中心に沿って前記第2エリアに隣接する前記第1エリアに指向する方向、及び、前記基準面の中心に沿って前記ベースに指向する方向において、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、前記ドーピング元素の前記第1エリアにおけるドーピング濃度は、前記第2エリアにおける最小のドーピング濃度以下である。
【0006】
幾つかの実施例では、前記第2エリアは、第3エリア、第4エリア及び第5エリアを含み、前記ドーピング元素の前記第3エリアにおけるドーピング濃度は、前記第4エリアにおけるドーピング濃度よりも大きく、前記ドーピング元素の前記第4エリアにおけるドーピング濃度は、前記第5エリアにおけるドーピング濃度よりも大きく、前記第3エリアは、前記第4エリアよりも前記基準面の中心に近く、前記第4エリアは、前記第5エリアよりも前記基準面の中心に近い。
【0007】
幾つかの実施例では、前記光起電力セルは、少なくとも前記基準面の一部領域に位置する電極をさらに備える。
【0008】
幾つかの実施例では、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおける最大ドーピング濃度と、前記第1エリアにおける最大ドーピング濃度との比は、3~4の範囲である。
【0009】
幾つかの実施例では、前記ドーピング元素の前記第1エリアにおけるドーピング濃度の範囲は、1×1020atom/cm~1.5×1020atom/cmであり、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおける最大ドーピング濃度の範囲は、3×1020atom/cm~4×1020atom/cmであり、且つ、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおける最小ドーピング濃度の範囲は、1×1020atom/cm~1.5×1020atom/cmである。
【0010】
幾つかの実施例では、前記第1エリアにおける結晶粒サイズは、前記第2エリアにおける結晶粒サイズよりも大きい。
【0011】
幾つかの実施例では、前記第2エリアにおける結晶粒サイズに対する前記第1エリアにおける結晶粒サイズの比は、10~30の範囲である。
【0012】
幾つかの実施例では、前記第1エリアにおける結晶粒サイズは、100nm~300nmであり、前記第2エリアにおける結晶粒サイズは、10nm~30nmである。
【0013】
幾つかの実施例では、前記第1エリアにおける粒界数は、前記第2エリアにおける粒界数よりも少ない。
【0014】
幾つかの実施例では、前記第1エリアにおける粒界数に対する前記第2エリアにおける粒界数の比は、20~100の範囲である。
【0015】
幾つかの実施例では、前記第1エリアにおける粒界数は、5~10個/μmであり、前記第2エリアにおける粒界数は、100~500個/μmである。
【0016】
幾つかの実施例では、前記第1エリアにおける転位密度は、前記第2エリアにおける転位密度よりも小さい。
【0017】
本願の幾つかの実施例によれば、本願実施例の別の態様は光起電力セルの製造方法が提供され、ベースを提供することと、前記ベースの第1面に初期パッシベーション層を形成することと、ドーピングプロセスにより前記初期パッシベーション層の異なる領域に対して異なる処理を行って、パッシベーション層を形成し、かつ、前記ベースの第1面の法線に垂直な方向において、前記パッシベーション層が、互いに交差して間隔を置いて設置された第1エリアと第2エリアを有するようにすることと、を含み、ここで、前記第1エリアと前記第2エリアには、同じ種類のドーピング元素がドープされ、前記第2エリアは、前記ベースから離れた基準面を有し、前記基準面の中心に沿って前記第2エリアに隣接する前記第1エリアに指向する方向、及び、前記基準面の中心に沿って前記ベースに指向する方向において、前記ドーピング元素の前記第2エリアにおけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、前記ドーピング元素の前記第1エリアにおけるドーピング濃度は、前記第2エリアにおける最小のドーピング濃度以下である。
【0018】
幾つかの実施例では、前記パッシベーション層を形成するステップは、第1ドーピングプロセスで前記初期パッシベーション層を処理することにより、前記ドーピング元素がドーピングされた初期第1エリアを形成することと、前記初期第1エリアの一部領域が前記第2エリアに変換され、残りの前記初期第1エリアが前記第1エリアとされるように、レーザドーピングプロセスにより前記初期第1エリアの一部領域を処理することと、を含む。
【0019】
本願の幾つかの実施例によれば、本願実施例の別の態様は光起電力モジュールが提供され、上記のいずれか1項に記載の光起電力セル、または上記のいずれか1項に記載の製造方法により製造された光起電力セルを複数接続してなるセルストリングと、前記セルストリングの表面を覆うためのシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムの前記セルストリングから離れた面を覆うためのカバープレートとを備える。
【発明の効果】
【0020】
本願実施例により提供される技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0021】
パッシベーション層では、第1エリアに沿って第2エリアに指向する方向において、第2エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度が徐々に高くなる傾向にあり、ドーピング元素の第1エリアにおけるドーピング濃度が第2エリアにおける最小のドーピング濃度よりも小さいということは、第1エリアから第2エリアに至る過程および第2エリアにおいて、キャリア輸送の障壁がいずれも徐々に小さくなることを意味し、急変が無いと、第2エリアにおける空乏化領域の幅がより広くなり、少数キャリアのライフタイムが長くなり、より多くの少数キャリアを第2エリアにより収集することができる。このように、少数キャリアの消費を低減することに有利であり、それにより、第2エリアのベースに対するパッシベーション効果を高めて、電極とベースとの間の再結合電流密度を低減するのに有利となり、光起電力セルの光電変換効率を向上させ、光起電力セルの開放電圧および飽和電流を高める上で有利となる。
【0022】
そして、第2エリアの内部に沿って基準面の中心に指向する方向において、第2エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度も徐々に高くなる傾向にあり、第2エリアから電極に至る過程でキャリア輸送の障壁も徐々に小さくなることを意味し、多数キャリアの輸送抵抗を低減し、第2エリアと電極との間での多数キャリアの輸送効率を高めることに有利であり、これにより光起電力セルの光電変換効率をさらに向上する。
【0023】
また、第2エリアの基準面は、電極と接触するために用いられ、第2エリアの電極との接触箇所におけるドーピング元素の濃度を高く確保しつつ、第1エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度を低く確保している。このように、第2エリアの材料を電極の接触により整合させて、第2エリアと電極との間の接触抵抗を低くすることにより、第2エリアと電極との間の多数キャリアの輸送効率を高めて、光起電力セルの曲線因子(フィルファクター)を向上させるのに有利である。一方、第1エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度を下げて第1エリアにおける光の吸収率を減らし、光起電力セルの光利用率を向上させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明されるが、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、図面における同じ参照符号を付したものは、類似の要素として表され、特に断りのない限り、添付の図面における図は縮尺に制限されない。本願の実施例や従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下では、実施例において使用する必要がある図面を簡単に紹介するが、自明なように、以下の説明における図面は、本願の幾つかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働を伴わずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることも可能である。
図1図1は、本願の一実施例による光起電力セルの構成を示す図である。
図2図2は、本願の一実施例による光起電力セルにおいて、ドーピング元素の第1エリア、第2エリア及びベースにおけるドーピング濃度変化を示すグラフである。
図3図3は、本願の実施例による光起電力セルの製造方法の各ステップに対応する構成を示す図である。
図4図4は、本願の実施例による光起電力セルの製造方法の各ステップに対応する構成を示す図である。
図5図5は、本願の実施例による光起電力モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
背景技術から、パッシベーション層による光への吸収率を低下させると同時に、パッシベーション層によるベースへのパッシベーション効果が高まる必要があり、光起電力セルの光電変換効率が向上する必要があることが分かった。
【0026】
分析したところ、光起電力セルの光電変換効率を向上させるためには、パッシベーション層における電極と接触していない領域へのドーピング元素のドーピング濃度を低くして、当該領域における光の吸収率を低減する必要がある一方で、パッシベーション層における電極と接する領域へのドーピング元素のドーピング濃度を高くして、パッシベーション層と電極との間にオーミックコンタクトを形成し、パッシベーション層と電極との間のコンタクト抵抗を低下させる必要があることを見出した。
【0027】
しかしながら、電極と接触していない領域と、電極と接触している領域との間のドーピング元素の濃度差が大きいため、ドーピング元素濃度は、電極と接触していない領域と、電極と接触している領域との間で急変が存在し、2つの領域間の電位差が急変するため、2つの領域でキャリアが複合しやすくなるだけでなく、電極と接触していない領域から電極と接触している領域へキャリアが移動する抵抗も大きくなり、パッシベーション層におけるキャリアの輸送効率が低下する。
【0028】
本願実施例は、光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュールを提供し、光起電力セルにおいて、第1エリアに沿って第2エリアに指向する方向において、ドーピング元素のドーピング濃度が徐々に高くなる傾向を示し、且つドーピング元素の第1エリアにおけるドーピング濃度が第2エリアにおける最小ドーピング濃度よりも小さいということは、第1エリアから第2エリアに至る過程及び第2エリアにおいて、キャリア輸送の障壁が徐々に小さくなり、急変がないことを意味し、第2エリアにより広い空乏化領域幅を持たせ、少数キャリアのライフタイムを長くするのに有利であり、より多くの少数キャリアが第2エリアに収集されることができる。このように、少数キャリアの消費を低減することに有利であり、それにより、第2エリアのベースに対するパッシベーション効果を高めて、電極とベースとの間の再結合電流密度を低減するのに有利となり、光起電力セルの光電変換効率を向上させ、光起電力セルの開放電圧および飽和電流を高める上で有利となる。そして、第2エリアの内部に沿って基準面の中心に指向する方向において、第2エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度も徐々に高くなる傾向にあり、第2エリアから電極に至る過程でキャリア輸送の障壁も徐々に小さくなることを意味し、多数キャリアの輸送抵抗を次第に下げて、第2エリアと電極との間での多数キャリアの輸送効率を高めることに有利であり、これにより、光起電力セルの光電変換効率を向上させる。
【0029】
また、第2エリアの基準面は、電極と接触するために用いられ、第2エリアの電極との接触箇所におけるドーピング元素の濃度を高く確保しつつ、第1エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度を低く確保している。このように、第2エリアの材料を電極の接触により整合させて、第2エリアと電極との間の接触抵抗を低くし、第2エリアと電極との間の多数キャリアの輸送効率を高め、光起電力セルの曲線因子(フィルファクター)を向上させるのに有利である一方で、第1エリアにおけるドーピング元素のドーピング濃度を下げて第1エリアにおける光の吸収率を減らし、光起電力セルの光利用率を向上させるのに有利である。
【0030】
以下、本願の各実施例について図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をより良く理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部がなくても、以下の各実施例に基づく種々の変更や修正によっても、本願実施例が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0031】
本願の一実施例は、光起電力セルを提供するものであり、以下、本願の一実施例により提供される光起電力セルについて、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本願の一実施例による光起電力セルの構成を示す図であり、図2は、本願の一実施例による光起電力セルにおいて、ドーピング元素の第1エリア、第2エリア及びベースにおけるドーピング濃度変化を示すグラフである。
【0032】
図1を参照して、光起電力セルは、ベース100と、ベース100の第1面に位置し、ベース100の法線方向Yに垂直な方向Xに沿って、互いに交差して間隔を置いて設置された第1エリア111と第2エリア121を有するパッシベーション層101とを備え、第1エリア111と第2エリア121には、同じ種類のドーピング元素がドープされ、第2エリア121は、ベース100から離れた基準面aを有し、基準面aの中心に沿って第1エリア111に指向する方向、及び、基準面aの中心に沿ってベース100に指向する方向Yにおいて、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、ドーピング元素の第1エリア111におけるドーピング濃度は、第2エリア121における最小のドーピング濃度以下である。
【0033】
一方、第1エリア111に沿って第2エリア121に指向する方向、すなわち方向Xにおいて、第2エリア121におけるドーピング元素のドーピング濃度が徐々に高くなる傾向を示すと、第1エリア111から第2エリア121に至る過程および第2エリア121において、キャリア輸送の障壁がともに徐々に小さくなることが理解される。一方、基準面は後に電極と接触するために用いられ、ベース100内部に沿って基準面aの中心に指向する方向において、第2エリア121におけるドーピング元素のドーピング濃度も徐々に高くなる傾向を示すと、第2エリア121から電極に至る過程において、キャリア輸送の障壁も徐々に小さくなり、多数キャリアの輸送抵抗を低減して、パッシベーション層101と電極との間での多数キャリアの輸送効率を高め、光起電力セルの光電変換効率をさらに向上させるのに有利である。
【0034】
また、第1エリア111に沿って第2エリア121に指向する方向Xにおいて、第2エリア121におけるドーピング元素のドーピング濃度が徐々に高くなる傾向にあり、ドーピング元素の第1エリア111におけるドーピング濃度が、第2エリア121における最小のドーピング濃度よりも小さいと、第1エリア111と第2エリア121との間でドーピング元素のドーピング濃度の急変がなく、少数キャリアのライフタイムを長くするのに有利であり、より多くの少数キャリアが第2エリア121に収集されることができ、第2エリア121によるベース100へのパッシベーション効果を高め、光起電力セルの開放電圧および飽和電流を高めることができる。また、基準面aにおけるドーピング元素の濃度が高いことを確保するとともに、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度が低いことを確保することは、第2エリア121と電極との間の接触抵抗を低下させると同時に、第1エリア111の光に対する吸収率を低減し、光起電力セルの光に対する利用率を向上させるのに有利である。
【0035】
以下、図面を参照して本願の実施例をより詳細に説明する。
【0036】
幾つかの実施例では、ベース100はシリコンベースであってもよく、シリコンベースの材料は、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、または微結晶シリコンの一種または複数種を含み得る。幾つかの実施例では、ベースの材料は炭素単体、有機材料、または多価化合物であってもよい。多価化合物は、ペロブスカイト、ガリウム砒素、カドミウムテルル、銅インジウムセレン等を含み得るが、これらに限定されない。また、前面の光反射を低減し、光の吸収利用率を高め、太陽電池の変換効率を向上させるために、ベース100の前面をピラミッドパイル面としてもよい。
【0037】
なお、ベース100は、対向する前面と裏面とを有し、片面電池にとっては、前面が受光面で、裏面がバックライト面であってもよく、両面電池にとっては、前面と裏面の両方が受光面であってもよい。幾つかの実施例では、ベース100におけるパッシベーション層101と接触する表面は、裏面である。
【0038】
幾つかの実施例では、パッシベーション層101の材料は、ドープドポリシリコンであってもよい。第1エリア111と第2エリア121の材料は、いずれもドープドポリシリコンであってもよく、両者がドープしたドーピング元素の濃度が異なると、第1エリア111と第2エリア121は、半導体元素で構成された同一の膜層構造を利用して形成することができ、第1エリア111と第2エリア121とが一体構造であることにより、第1エリア111と第2エリア121との界面準位欠陥の改善に有利であり、第1エリア111と第2エリア121との間でキャリアが移動する際に、界面での欠陥によるキャリアの再結合が生じる確率を低減するのに有利である。
【0039】
幾つかの実施例では、ドーピング元素は、P型ドーピング元素またはN型ドーピング元素であってもよい。そのうち、P型ドーピング元素は、ホウ素元素、アルミニウム元素、ガリウム元素、インジウム元素、またはタリウム元素の少なくとも一つを含んでもよく、N型ドーピング元素は、リン元素、砒素元素、アンチモン元素、またはビスマス元素の少なくとも一つを含んでもよい。幾つかの実施例では、パッシベーション層101におけるドーピング元素は、ベース100におけるドーピング元素と同じタイプであることが好ましい。パッシベーション層101は、フィールドパッシベーション層としてフィールドパッシベーション効果を実現する。
【0040】
幾つかの実施例では、基準面aの中心に沿ってベース100に指向する方向Y(すなわち、ベース100の第1面の法線方向)において、パッシベーション層101の厚さは、30nm~150nmの範囲である。
【0041】
幾つかの実施例では、パッシベーション層101は、ベース100と直接接触しており、パッシベーション層101の少なくとも一部の領域は、ベース100の表面を覆っている。
【0042】
他の幾つかの実施例では、パッシベーション層101とベース100との間には、トンネル層である薄い誘電体層(図1に図示せず)が設けられ、キャリアがトンネル効果でパッシベーション層101に輸送されることを実現し、薄い誘電体層は、ベース100の表面を化学的にパッシベーションしてベース100の界面準位欠陥を低減することに有利である。幾つかの実施例では、基準面aの中心に沿ってベース100に指向する方向Yにおいて、薄い誘電体層の厚さは0.5nm~2.5nmである。幾つかの実施例では、薄い誘電体層の材料は酸化シリコンである。
【0043】
幾つかの実施例では、図1を参照して、光起電力セルは、基準面aの少なくとも一部の領域に位置する電極102をさらに備えてもよい。
【0044】
なお、図1では、電極102が基準面aの一部領域に接触接続され、電極102が第2エリア121に埋め込まれていないことを例に挙げているが、実用上では、電極102は基準面aの全体を覆っていてもよく、あるいは、電極102は第2エリア121に埋め込まれていてもよい。
【0045】
幾つかの実施例では、図1および図2を参照して、第2エリア121は、第3エリア131、第4エリア141、および第5エリア151を含んでもよい。ドーピング元素の第3エリア131におけるドーピング濃度は、第4エリア141におけるドーピング濃度よりも大きく、ドーピング元素の第4エリア141におけるドーピング濃度は、第5エリア151におけるドーピング濃度よりも大きい。つまり、ドーピング元素の第3エリア131におけるドーピング濃度、第4エリア141におけるドーピング濃度、および第5エリア151におけるドーピング濃度は、順次減少している。ここで、第3エリア131は、第4エリア141よりも基準面aの中心に近く、第4エリア141は、第5エリア151よりも基準面aの中心に近い。第3エリア131は、基準面aの中央領域を含み、第2エリア121の内部に向けて突出してもよい。第4エリア141は、基準面aの残り領域の一部領域(基準面aの残り領域とは、基準面aにおける中央領域を除く領域である。)を含み、第3エリア131における基準面aの中央領域を除く他の表面を覆っている。残りの第2エリア121(第2エリアの、第3エリアと第4エリアを除いた残りの部分を指す。)は、第5エリア151とされる。
【0046】
第3エリア131、第4エリア141、および第5エリア151は、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度に勾配分布をもたせており、第3エリア131から第5エリア151までドーピング濃度が徐々に低下し、第5エリア151の第1エリア111との接触箇所におけるドーピング濃度に急変がなく、すなわち第5エリア151におけるドーピング濃度が第1エリア111におけるドーピング濃度と一致するまで徐々に低下していることが理解される。
【0047】
このように、一方で、ドーピング元素の濃度が低濃度界面から高濃度界面にかけて徐々に高くなる傾向を示すと、キャリア輸送の障壁が徐々に小さくなり、パッシベーション層において階段接合(abrupt junction)が現れないようにして、少数キャリアが階段接合で消費されるのを回避し、すなわち、パッシベーション層101における空乏領域の幅を広くして少数キャリアのライフタイムを長くすることに有利であり、第2エリア121によるベース100へのパッシベーション効果を増強し、電極102とベース100との間の再結合電流密度をさらに低減して、光起電力セルの開放電圧および飽和電流を高め、光起電力セルの光電変換効率を向上させることに有利となる。一方、第2エリア121におけるドーピング元素のドーピング濃度を台形分布とすることで、電極102の第2エリア121との接触箇所におけるドーピング元素のドーピング濃度をさらに向上させるとともに、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度を低くすることに有利であり、これにより、第2エリア121と電極との接触抵抗を低くしつつ、第1エリア111の光に対する吸収率を低くして、第2エリア121と電極との間での多数キャリアの輸送効率を高めつつ、光起電力セルの光利用効率を高めて、光起電力セルの光電変換効率を向上させることに有利である。
【0048】
なお、図2は、基準面aの中心に沿ってベース100の内部に指向する方向Yにおいて、第1エリア111および第1エリア111に正対するベース100の部分におけるドーピング元素のドーピング濃度分布グラフ、および、第2エリア121および第2エリア121に正対するベース100の部分におけるドーピング元素のドーピング濃度分布グラフを示した。ここで、第1エリア111に正対するベース100の部分とは、第1エリア111のベース100上への正射影と重なるベース100の部分を指し、第2エリア121に正対するベース100の部分とは、第2エリア121のベース100上への正射影と重なるベース100の部分を指す。
【0049】
幾つかの実施例では、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最大値と、第1エリア111におけるドーピング濃度の最大値との比は、3~4の範囲であってもよい。例えば、3.1、3.21、3.3、3.45、3.5、3.64、3.75、3.82、3.9である。
【0050】
ドーピングプロセスの制限により、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度にも微細なばらつきが存在することが理解される。また、第1エリア111におけるドーピング濃度の最大値に対する、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最大値の比が3未満であると、第1エリア111のドーピング濃度を小さく保った際に、ドーピング元素の第2エリア121における最大のドーピング濃度、すなわち基準面aにおけるドーピング濃度が十分に大きくならず、第2エリア121と電極102との間の接触抵抗が依然として大きく、第2エリア121と電極102との間における多数キャリアの輸送効率を高めるのに不利である。第1エリア111におけるドーピング濃度の最大値に対する、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最大値の比が4よりも大きいと、ドーピング元素のドーピング濃度を基準面aにおけるドーピング濃度から、第2エリア121と第1エリア111との接触箇所におけるドーピング濃度まで徐々に低下させる必要があるため、ドーピング濃度を徐々に低下させるための、第3エリア131、第4エリア141および第5エリア151のレイアウト体積を増大させる必要があり、基準面aの中心に沿ってベース100に指向する方向Yにおけるパッシベーション層101の厚さが増大し、光起電力セルの小型化に不利である。したがって、第2エリア121におけるドーピング元素の高いドーピング濃度とパッシベーシヨン層のサイズとを総合的に考慮して、第1エリア111におけるドーピング濃度の最大値に対するドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最大値の比を3~4の範囲に設計することで、第2エリア121と電極102との間の接触抵抗を低減しつつ、光起電力セルの小型化を図る上で有利となる。
【0051】
図2を参照して、幾つかの実施例では、ドーピング元素の第1エリア111におけるドーピング濃度の範囲は、1×1020atom/cm~1.5×1020atom/cmであってもよい。一例では、ドーピング元素の第1エリア111におけるドーピング濃度は、1.1×1020atom/cmであってもよい。
【0052】
幾つかの実施例では、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最大値の範囲は、3×1020atom/cm~4×1020atom/cmであってもよい。一例では、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最大値は、3.5×1020atom/cmであってもよい。
【0053】
幾つかの実施例では、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最小値の範囲は、1×1020atom/cm~1.5×1020atom/cmであってもよい。一例では、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度の最小値は、1.1×1020atom/cmであってもよい。
【0054】
幾つかの実施例では、第1エリア111における結晶粒サイズは、第2エリア121における結晶粒サイズよりも大きくてもよい。
【0055】
結晶粒サイズが小さいほど、同じサイズでの膜層中の粒界数が多くなり、粒界は、構造が同じであって配向が異なる異なる結晶粒同士の界面であると理解できる。一方、粒界が電子導通の経路として、第2エリア121における結晶粒サイズが小さいほど、粒界数が多くなるため、第2エリア121はより多くの光生成キャリアを横方向に収集することができ、光起電力セルの飽和電流を高めて、光起電力セルの光電変換効率を向上させることができる。一方、結晶粒サイズは、通常、膜層の物性に影響を及ぼし、一定体積の中で膜層の結晶粒が多いほど、膜層の変形抵抗力が大きくなり、例えば、マイクロクラックが粒界を通過するにはより多くのエネルギーを消費する必要があるため、結晶粒サイズがより小さい第2エリア121は、より強い引張強度を有し、ブリスターし難い。
【0056】
幾つかの実施例では、第2エリア121における結晶粒サイズに対する、第1エリア111における結晶粒サイズの比は、10~30の範囲であってもよい。例えば、11.8、12.6、13.1、14.5、15.3、16、17.4、18.2、19、19.5、22、24、26.3、27、29.1などである。
【0057】
第2エリア121における結晶粒サイズに対する第1エリア111における結晶粒サイズの比の範囲が10よりも小さいと、第1エリア111における結晶粒サイズと第2エリア121における結晶粒サイズとの差が十分に大きくならず、第2エリア121に横方向により多くの光生成キャリアを収集させて、光起電力セルの飽和電流を高めるのに不利であることが理解される。第2エリア121における結晶粒サイズに対する第1エリア111における結晶粒サイズの比の範囲が40よりも大きいと、第2エリア121の結晶粒サイズが要請に応えることを確保した際に、第1エリア111の結晶粒サイズが大きすぎて、第1エリア111の引張強度が低くなりすぎて、パッシベーション層101全体の引張強度が低下する。したがって、第2エリア121の結晶粒サイズ及びパッシベーション層101全体の引張強度を総合的に考慮して、第2エリア121における結晶粒サイズに対する第1エリア111における結晶粒サイズの比の範囲を10~30に設計することは、光起電力セルの飽和電流を高めるとともに、パッシベーション層101全体の引張強度を高めるのに有利である。
【0058】
幾つかの実施例では、第1エリア111における結晶粒サイズは、100nm~300nmであってもよい。幾つかの実施例では、第2エリア121における結晶粒サイズは、10nm~30nmであってもよい。
【0059】
幾つかの実施例では、第1エリア111における粒界数は、第2エリア121における粒界数よりも小さくてもよい。
【0060】
以上の分析から、第2エリア121の粒界数はより多く、第2エリア121が横方向により多くの光生成キャリアを収集することを促して光起電力セルの飽和電流を高めるのに有利であることがわかる。
【0061】
幾つかの実施例では、第1エリア111における粒界数に対する第2エリア121における粒界数の比は、20~100の範囲である。上記の分析から、第1エリア111における結晶粒界数に対する第2エリア121における結晶粒界数の比の範囲が20未満であると、第1エリア111における結晶粒サイズと第2エリア121における結晶粒サイズとの差が十分に大きくなく、光起電力セルの飽和電流を高めるように第2エリア121が横方向により多くの光生成キャリアを収集することを促進するのに不利となる。第1エリア111における粒界数に対する第2エリア121における粒界数の比の範囲が100よりも大きいと、第2エリア121の結晶粒サイズが要請に応えることを確保した際に、第1エリア111の結晶粒サイズが大き過ぎて、第1エリア111の引張強度が低くなり過ぎて、パッシベーション層101全体の引張強度が低下する。このため、第1エリア111における粒界数に対する第2エリア121における粒界数の比の範囲を20~100とすることは、光起電力セルの飽和電流を高めるとともに、パッシベーション層101全体の引張強度を高めるのに有利である。
【0062】
幾つかの実施例では、第1エリア111における粒界数は、5~10個/μmである。幾つかの実施例では、第2エリア121における粒界数は、100~500個/μmである。
【0063】
幾つかの実施例では、第1エリア111における転位密度は、第2エリア121における転位密度よりも小さい。
【0064】
幾つかの実施例では、第1エリア111における転位密度に対する第2エリア121における転位密度の比は、2~4の範囲である。例えば、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.1、3.3、3.5、3.7、3.9などである。
【0065】
幾つかの実施例では、第1エリア111における転位密度は、5~10個/μmである。幾つかの実施例では、第2エリア121における転位密度は、10~20個/μmである。
【0066】
以上のように、第1エリア111に沿って第2エリア121に指向する方向Xにおいて、ドーピング元素のドーピング濃度が徐々に高くなる傾向を示し、キャリア輸送の障壁が徐々に小さくなり、少数キャリアのライフタイムを長くするのに有利となり、第2エリア121によるベース100へのパッシベーション効果を増強し、電極102とベース100との間の再結合電流密度を低減するのに有利となり、光起電力セルの光電変換効率を向上させて、光起電力セルの開放電圧および飽和電流を高めるのに有利となる。そして、ベース100に沿って基準面aの中心に指向する方向において、第2エリア121におけるドーピング元素のドーピング濃度も徐々に高くなる傾向にあり、第2エリア121から電極102に至る過程においてキャリア輸送の障壁も徐々に小さくなることを意味し、多数キャリアの輸送抵抗を次第に下げて、第2エリア121と電極102との間の多数キャリアの輸送効率を高めるのに有利となる。また、一方で、第2エリア121の電極102との接触箇所におけるドーピング元素濃度を高く確保することで、第2エリア121と電極102との間の接触抵抗を低下させて、光起電力セルの曲線因子を高めるのに有利となる。一方、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度を低く確保することは、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度を低くして、第1エリア111の光吸収率を減らし、光起電力セルの光利用率を高めることに有利である。
【0067】
本願の実施例は、前記実施例に係る光起電力セルを製造するための光起電力セルの製造方法をさらに提供する。以下、図面を参照して本願の別の実施例による光起電力セルの製造方法について詳細に説明する。図3図4は、本願の別の実施例に係る光起電力セルの製造方法の各ステップに対応する構成を示す図である。なお、前記実施例と同一または対応する部分については説明を省略する。
【0068】
図3図4及び図1を参照して、光起電力セルの製造方法は、以下のステップを含む。
【0069】
図3を参照して、ベース100が提供される。幾つかの実施例では、ベース100の第1面をピラミッドパイル面とすることができる。ピラミッドパイル面とされるベース100を形成するステップは、初期ベースを提供し、初期ベースに対して洗浄を行い、湿式化学的エッチングによって初期ベースの第1面にピラミッドパイル面を作製し、ベース100を形成することを含む。
【0070】
引き続き図3を参照して、ベース100の第1面に初期パッシベーション層161を形成する。
【0071】
幾つかの実施例では、初期パッシベーシヨン層161の材料は、ポリシリコンである。幾つかの実施例では、低圧化学気相成長法を用いてベース100の第1面に初期パッシベーシヨン層161を形成してもよい。
【0072】
図3図4及び図1を参照して、ドーピングプロセスにより初期パッシベーション層161の異なる領域に対して異なる処理を行って、パッシベーション層101を形成し、かつ、ベース100の第1面の法線に垂直な方向Xにおいて、パッシベーション層101は、互いに交差して間隔を置いて設置された第1エリア111と第2エリア121を含む。ここで、第1エリア111と第2エリア121には、同じ種類のドーピング元素がドープされており、第2エリア121は、ベース100から離れた基準面aを有し、基準面aの中心に沿って第1エリア111に指向する方向、および、基準面aの中心に沿ってベース100に指向する方向Yにおいて、ドーピング元素の第2エリア121におけるドーピング濃度は、いずれも徐々に低下する傾向にあり、ドーピング元素の第1エリア111におけるドーピング濃度は、第2エリア121における最小のドーピング濃度以下である。
【0073】
幾つかの実施例では、パッシベーション層101を形成するステップは、図3および図4を参照して、第1ドーピングプロセスで初期パッシベーション層161を処理することにより、ドーピング元素がドーピングされた初期第1エリア171を形成することと、図4および図1を参照して、初期第1エリア171の一部領域が第2エリア121に変換され、残りの初期第1エリア171が第1エリア111とされるように、レーザドーピングプロセスにより初期第1エリア171の一部領域を処理することと、を含む。
【0074】
幾つかの実施例では、製造方法は、ベース100を形成した後、パッシベーション層101を形成する前に、ベース100とパッシベーション層101との間に位置するトンネル層(図示せず)を形成することをさらに含んでもよく、トンネル層は、ベース100の表面を化学的にパッシベーションしてベース100の界面準位欠陥を低減するのに有利である。
【0075】
幾つかの実施例では、図1を引き続き参照して、製造方法は、パッシベーション層101を形成した後、少なくとも基準面aの一部領域に位置する電極102を形成することをさらに含んでもよい。
【0076】
以上のように、本願の上記実施例による光起電力セルの製造方法により形成される光起電力セルでは、第1エリア111に沿って第2エリア121に指向する方向Xにおいて、ドーピング元素のドーピング濃度が徐々に高くなる傾向を示し、キャリア輸送の障壁が徐々に小さくなり、少数キャリアのライフタイムを長くするのに有利となり、第2エリア121によるベース100へのパッシベーション効果を増強し、電極102とベース100との間の再結合電流密度を低減するのに有利となり、光起電力セルの光電変換効率を向上させて、光起電力セルの開放電圧および飽和電流を高めるのに有利となる。そして、ベース100に沿って基準面aの中心に指向する方向において、第2エリア121におけるドーピング元素のドーピング濃度も徐々に高くなる傾向にあり、第2エリア121から電極102に至る過程においてキャリア輸送の障壁も徐々に小さくなることを意味し、多数キャリアの輸送抵抗を次第に下げて、第2エリア121と電極102との間の多数キャリアの輸送効率を高めるのに有利となる。また、一方で、第2エリア121の電極102との接触箇所におけるドーピング元素濃度を高く確保することで、第2エリア121と電極102との間の接触抵抗を低下させて、光起電力セルの曲線因子を高めるのに有利となる。一方、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度を低く確保することは、第1エリア111におけるドーピング元素のドーピング濃度を低くして、第1エリア111の光吸収率を減らし、光起電力セルの光利用率を高めることに有利である。
【0077】
本願の実施例は、受けた光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光起電力モジュールをさらに提供する。図5は、本願のさらに別の実施例による光起電力モジュールの構成を示す図である。
【0078】
図5を参照して、光起電力モジュールは、セルストリング(図示せず)と、シーラントフィルム140と、カバーシート150とを備える。ここで、セルストリングは、複数の光起電力セル130が接続されて形成され、光起電力セル130は、前述したいずれかの光起電力セル(図1に示す光起電力セルを含むが、これらに限定されない)であってもよく、または、前述したいずれかの光起電力セルの製造方法によって製造された光起電力セルであってもよく、隣接する光起電力セル130間は、伝導バンド(図示せず)により電気的に接続されているとともに、隣接する光起電力セル130間の位置関係は、部分的に積層されていてもよいし、互いに接合されていてもよい。シーラントフィルム140は、セルストリングの表面を覆って封止するためのものであり、シーラントフィルム140は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、ethylene-vinyl acetate copolymer)接着フィルム、ポリエチレンオクテン・エラストマー(POE、polyolefin thermoplastic elastomer)接着フィルム、またはポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene glycol terephthalate)接着フィルム等の有機封止フィルムであってもよい。カバープレート150は、シーラントフィルム140のセルストリングから離れた面を覆っており、カバープレート150は、ガラスカバープレートやプラスチックカバープレートなどの透明または半透明カバープレートであってもよい。
【0079】
幾つかの実施例では、カバープレート150には、入射光の利用率を高めるためのトラップ構造が設けられており、異なるカバープレート150のトラップ構造は異なっていてもよい。光起電力モジュールは、高い電流収集能力と低いキャリア再結合率を有し、高い光電変換効率を実現することができる。幾つかの実施例では、光起電力モジュールは、前面が暗い青色または黒色を呈し、より多くのシーンに応用することができる。
【0080】
幾つかの実施例では、シーラントフィルム140及びカバープレート150は、光起電力セル130の前面にのみ位置し、裏面に位置するシーラントフィルム140及びカバープレート150が弱い光線に対してさらに遮断及び弱化することを回避する。同時に、光起電力モジュールは、その側辺をシーラントフィルム140で完全に被覆する側辺フルパッケージを採用することもでき、これによって、積層過程における光起電力モジュールの積層ずれを防止し、外部環境が光起電力モジュールの側辺を介して光起電力セルの性能に影響を及ぼすこと、例えば水蒸気の侵入を回避する。
【0081】
以上のように、光起電力モジュールにおける光起電力セルにおいて、第1エリア111および第2エリア121におけるドーピング元素の濃度分布傾向は、光起電力セル130の光電変換効率を向上させるのに有利であるため、複数の光起電力セル130が接続されて構成されるセルストリングの光電変換効率の向上、およびセルストリングを備える光起電力モジュールの光電変換効率の向上に有利である。
【0082】
当業者であれば、前記各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者は、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5