(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069345
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】トリビニルシクロヘキサンのアルコキシカルボニル化
(51)【国際特許分類】
C07C 29/149 20060101AFI20240514BHJP
C07C 31/27 20060101ALI20240514BHJP
C07C 67/38 20060101ALI20240514BHJP
C07C 69/608 20060101ALI20240514BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20240514BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/27
C07C67/38
C07C69/608
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034883
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2020194198の分割
【原出願日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】19216884.7
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Ru-MACHO
(71)【出願人】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイウ ドン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トリビニルシクロヘキサンをアルコキシカルボニル化する方法を提供する。
【解決手段】トリビニルシクロヘキサン、下式のリガンド(L)、Pdを含む化合物、C1~12アルコール、COを供給、加熱し、トリエステルに転化する工程を有する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリビニルシクロヘキサンをアルコキシカルボニル化する方法であって、
以下の工程:
a)化合物(i)、(ii)、(iii)の1つ、またはこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を導入する工程、
【化1】
b)リガンド(L)とPdを含む化合物とを添加する工程、またはPdを含む錯体と前記リガンド(L)とを添加する工程、
【化2】
c)1~12個の炭素原子を有するアルコールを添加する工程、
d)COを供給する工程、
e)a)~d)の工程を経て得られる反応混合物を加熱し、a)の化合物または混合物をトリエステルに転化する工程、
f)前記トリエステルを精製する工程、
g)前記精製トリエステルをNaOMeおよびH
2と反応させ、トリオールを得る工程、を有する方法。
【請求項2】
前記工程a)において、前記化合物(i)を導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)において、前記化合物(ii)を導入する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記工程c)において、前記アルコールは、酸素以外にさらなるヘテロ原子を含まず、かつ多重結合を有さない、請求項1~3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記工程c)において、前記アルコールは、メタノール、エタノール、nブタノール、メチルプロパノール、nペンタノール、isoペンタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、nヘキサノール、isoヘキサノール、nヘプタノール、isoヘプタノール、nオクタノール、isoオクタノール、2-エチルヘキサノール、nノナノール、isoノナノール、nデカノール、isoデカノール、2-プロピルヘプタノールから選択される、請求項1~4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記工程c)において、前記アルコールはメタノールである、請求項1~5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記工程d)において、前記COは、20バール~60バールの範囲の圧力まで供給される、請求項1~6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記工程e)において、前記加熱は、90~130の範囲の温度で実施される、請求項1~7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記工程g)において、前記反応は、Ru-MACHO-BHで触媒される、請求項1~8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程g)において、前記反応は、30バール~70バールの範囲のH2圧力で実施される、請求項1~9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程g)において、前記反応は、80~120の範囲の温度で実施される、請求項1~10いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリビニルシクロヘキサンをアルコキシカルボニル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和化合物のアルコキシカルボニル化は、重要性を増している方法である。アルコキシカルボニル化は、オレフィンなどのエチレン性不飽和化合物を、金属または金属錯体とリガンドとの存在下で、一酸化炭素およびアルコールと反応させ、対応するエステルを得る反応と理解されている。
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明により対処される課題は、トリビニルシクロヘキサンをアルコキシカルボニル化する方法を提供することであった。この方法を使用すれば、3つのビニル基すべてをエステルに転化することができる。
さらに、プラスチック、特にポリ塩化ビニル(PVC)用の速やかにゲル化する可塑剤を提供することを目的としており、これは低い処理温度を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1記載の方法により達成される。
以下の工程:
a)化合物(i)、(ii)、(iii)の1つ、またはこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を最初に導入する工程、
【化2】
b)リガンド(L)とPdを含む化合物とを添加する工程、またはPdを含む錯体と前記
リガンド(L)とを添加する工程、
【化3】
c)1~12個の炭素原子を有するアルコールを添加する工程、
d)COを供給する工程、
e)a)~d)の反応混合物を加熱し、a)の化合物または混合物をトリエステルに転化する工程
を有する方法。
【0005】
本方法の1つの変形例では、前記工程a)において、前記化合物(i)を最初に導入する。
【0006】
本方法の1つの変形例では、前記工程a)において、前記化合物(ii)を最初に導入する。
【0007】
本方法の1つの変形例では、前記工程c)において、前記アルコールは、酸素以外にさらなるヘテロ原子を含まず、かつ多重結合を有さない。
【0008】
本方法の1つの変形例では、前記工程c)において、前記アルコールは、メタノール、エタノール、nブタノール、メチルプロパノール、nペンタノール、isoペンタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、nヘキサノール、isoヘキサノール、nヘプタノール、isoヘプタノール、nオクタノール、isoオクタノール、2-エチルヘキサノール、nノナノール、isoノナノール、nデカノール、isoデカノール、2-プロピルヘプタノールから選択される。
【0009】
本方法の1つの変形例では、前記工程c)において、前記アルコールはメタノールである。
【0010】
本方法の1つの変形例では、前記工程d)において、前記COは、20バール~60バールの範囲の圧力まで供給される。
【0011】
本方法の1つの変形例では、前記工程d)において、前記COは、30バール~50バールの範囲の圧力まで供給される。
【0012】
本方法の1つの変形例では、前記工程e)において、前記加熱は、90℃~130℃の範囲の温度で実施される。
【0013】
本方法の1つの変形例では、前記工程e)において、前記加熱は、100℃~120℃の範囲の温度で実施される。
【0014】
本方法の1つの変形例では、この方法は、追加工程:
f)前記トリエステルを精製する工程
を有する。
【0015】
本方法の1つの変形例では、この方法は、追加工程:
g)前記精製トリエステルをNaOMeおよびH2と反応させ、トリオールを得る工程
を有する。
【0016】
本方法の1つの変形例では、前記工程g)において、前記反応は、Ru-MACHO-BHで触媒される。
【0017】
本方法の1つの変形例では、前記工程g)において、前記反応は、30バール~70バールの範囲のH2圧力で実施される。
【0018】
本方法の1つの変形例では、前記工程g)において、前記反応は、40バール~60バールの範囲のH2圧力で実施される。
【0019】
本方法の1つの変形例では、前記工程g)において、前記反応は、80℃~120℃の範囲の温度で実施される。
【0020】
本方法の1つの変形例では、前記工程g)において、前記反応は、90℃~110℃の範囲の温度で実施される。
【0021】
この方法に加えて、化合物についても特許を請求する。
式(1)による化合物。
【化4】
前記化合物は、好ましくは、本明細書に記載の方法に従って調製される。
上記の方法により調製された化合物。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
トリメチル3,3’,3’ ’-(シクロヘキサン-1,2,4-トリイル)トリプロピ
オネート(1)(「トリエステル」)の合成
【化5】
[Pd(acac)
2](15.2mg、0.1mol%)、リガンド(L)(103
mg、0.4mol%)、およびパラトルエンスルホン酸(PTSA、143mg、1.5mol%)をアルゴン雰囲気下で100mLスチールオートクレーブに入れた。次に、MeOH(30mL)、およびトリビニルシクロヘキサン(i)(8.1g、50mmol)を注入器で注入した。前記オートクレーブをCOで3回フラッシュし、次に、40バールのCO圧力で加圧した。反応を110℃で10時間超かけて行った。続いて、前記オートクレーブを室温まで冷却し、減圧した。所望の生成物を蒸留(165℃、10
-3バール)により精製し、
1H-NMR、
13C-NMRおよびHR-MSで特性を示した(15.6g、91%収率)。
1H-NMR(300MHz,C
6D
6)δ=3.39-3.37(m,9H), 2.24-1.86(m,7H),1.48-0.27(m,14H)
13C-NMR(75MHz,C
6D
6)δ=173.68-173.54(m),51.04,40.60-40.47(m),38.24,38.14,37.51,37.07,36.54,36.10,35.52,35.14,33.87,32.70,32.55,32.51,32.38,32.29,32.23,32.08,31.97,31.86,31.76,31.68,31.63,31.43,30.98,30.79,30.75,29.31,28.52,28.47,28.34,28.13,2
8.11,27.13,26.58,25.12,20.79,19.74.
MS(EI):311(13.40),293(3.65),269(75.76),237(60.40),219(25.13),205(100),191(17.62),177(14.83),145(24.59)
HR-MS(ESI):計算値C
18H
30O
6[M+H]
+:343.21152、実測値:343.21113
【0023】
3,3’,3’ ’-(シクロヘキサン-1,2,4-トリイル)トリス(プロパン-
1-オール)(2)(「トリオール」)の合成
【化6】
Ru-MACHO-BH(59mg、2mol%)およびNaOMe(27mg、10mol%)をアルゴン雰囲気下で25mLスチールオートクレーブに入れた。次に、MeOH(8mL)および前記トリエステル(1)(1.93g、5.67mmol)を注入器で注入した。前記オートクレーブをH
2で3回フラッシュし、次に50バールのH
2圧力で加圧した。反応を100℃で10時間超かけて行った。次に、前記オートクレーブを室温まで冷却し、減圧した。所望の生成物をシリカゲルでのろ過により精製し、
1H-NMR、
13C-NMRおよびHR-MS(1.4g、96%収率)で特性を示した。
1H-NMR(400MHz,CD
3OD)δ=3.32-3.30(m,6H),1.85-1.77(m,2H),1.63-0.62(m,19H)
13C-NMR(100MHz,CD
3OD)δ=63.53-63.29(m),42.69,42.53,42.39,42.31,40.34,40.24,39.28,38.89,38.12,38.02,37.58,37.27,35.89,34.78,34.72,34.53,34.37,33.17,31.52,31.50,31.40,31.38,31.05,30.60,30.48,30.41,30.32,
30.24,30.17,28.77,28.22,26.61,22.53,21.45
MS(EI):222(1.06),194(1.14),181(2.96),163(11.54),135(9.81),121(17.04),107(15.25),93(32.69)
HR-MS(ESI):計算値C
15H
30O
3[M+H]
+:259.22677、 実測値:259.2269
【0024】
プラスチゾルの作製
床材用トップコートフィルムの製造などに使用されるようなPVCプラスチゾルを作製した。プラスチゾル配合物の数値は、それぞれ質量部である。ポリマー組成物の配合を表1に示す。
【表1】
【0025】
最初に液体成分、次に粉末成分を計量してPEビーカーに入れる。前記混合物を、濡れていない粉末が存在しないように、軟膏スパチュラを用いて手動で攪拌する。次に、前記混合ビーカーをディゾルバースターラーのクランプ装置にクランプする。前記スターラーのスイッチを入れた後、速度をゆっくりと約2,000rpmに上げる。その間、前記プラスチゾルを慎重に脱気し、圧力を20ミリバール未満に保つ。
前記プラスチゾルが約30℃の温度に達するとすぐに、速度を約350rpmに下げる。次いで、前記プラスチゾルを、前記速度かつ20ミリバール未満の圧力で9分間脱気する。これにより、確実に、前記プラスチゾルを規定のエネルギー投入で均質化する。その後、さらなる研究のために、前記プラスチゾルを温度管理されたキャビネット内で直ちに25.0℃に平衡化する。
【0026】
プラスチゾルのゲル化特性
ペーストのゲル化特性を、平行板分析システム(PP25)を使用した振動モードの、せん断応力制御下で動作するPhysica MCR 101で調べた。均一な熱分布と均一なサンプル温度を実現するために、追加の加熱フードを前記システムに接続した。
次のパラメータを設定した。
モード:温度勾配
開始温度 25℃
終了温度 180℃
加熱/冷却速度 5℃/分
振動数 4-0.1Hz対数ランプ
周期周波数ω:10 1/s
測定ポイント数:63
測定ポイントの継続時間:0.5分
自動ギャップ調整F:0N
定数測定ポイントの継続時間
ギャップ幅 0.5mm
【0027】
分析手順
分析対象のペースト数グラムを、気泡がない状態で、前記分析システムの下部プレートに塗布するのにスパチュラを使用する。そうすることで、前記分析システムを組み立てた後、一部のペーストが前記分析システムから均一に(どの方向にも6mm以下)染み出すことができる。続いて、前記加熱フードを前記サンプルの上に配置し、分析を開始する。前記ペーストの複素粘度を24時間後(Memmert社製の温度制御キャビネットに25℃で前記ペーストを保管)に温度の関数として測定する。
複素粘度のはっきりとした上昇は、ゲル化の尺度とみなされる。したがって、使用される比較値は、ペースト粘度1,000Pa・sに達したときの温度である。
それぞれ別の可塑剤が使用された3つの比較プラスチゾルで実験を繰り返した。
【表2】
【0028】
目標値1,000Pa・sは、65℃で本発明の化合物(1)により達成することができた。そのような低ゲル化温度は、処理手順において有利である。それらは、より低温でのプラスチゾル処理を可能にする。