(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000694
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20231226BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099542
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100216367
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】梅田 卓志
(72)【発明者】
【氏名】王 旭
(72)【発明者】
【氏名】アブロール サティアン
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA02
(57)【要約】
【課題】ユーザに所定のアクションを促すオペレーションのコスト対効果を改善することを課題とする。
【解決手段】情報処理装置に、所定のアクションの実行をユーザに促すためのユーザに対する所定のオペレーションが、ユーザがアクションを実行するか否かに与える効果を推定する効果推定部25と、対象ユーザと互いに関係がある参照ユーザを特定する参照ユーザ特定部22と、対象ユーザについて推定された効果である対象効果、及び参照ユーザについて推定された効果である参照効果を含むデータに基づいて、対象ユーザに対するオペレーションに関する条件を出力する条件出力部28と、を備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のアクションの実行をユーザに促すための該ユーザに対する所定のオペレーションが、該ユーザが前記アクションを実行するか否かに与える効果を推定する効果推定手段と、
対象ユーザと互いに関係がある参照ユーザを特定する参照ユーザ特定手段と、
前記対象ユーザについて推定された前記効果である対象効果、及び前記参照ユーザについて推定された前記効果である参照効果を含むデータに基づいて、前記対象ユーザに対する前記オペレーションに関する条件を出力する条件出力手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記条件出力手段は、前記対象効果がより高いユーザに対する前記オペレーション、及び前記参照効果がより高いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記条件出力手段は、前記対象効果がより低いユーザに対する前記オペレーション、及び前記参照効果がより低いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ユーザが前記アクションを実行しない蓋然性に基づくリスクを推定するリスク推定手段を更に備え、
前記条件出力手段は、推定された前記効果及び前記リスクに基づいて、前記オペレーションに関する条件を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記条件出力手段は、前記対象効果がより高いユーザに対する前記オペレーション、前記参照効果がより高いユーザに対する前記オペレーション、及び推定された前記リスクがより高いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記条件出力手段は、前記対象効果がより低いユーザに対する前記オペレーション、前記参照効果がより低いユーザに対する前記オペレーション、及び推定された前記リスクがより低いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記条件出力手段は、前記参照効果がより高いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、該参照効果を参照しない場合に決定される優先度より高い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記条件出力手段は、前記参照効果が前記対象効果に比べてより高いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、該参照効果を参照しない場合に決定される優先度より高い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記条件出力手段は、前記対象効果が高効果帯及び低効果帯のいずれでもない第一の範囲内であり、且つ推定された前記リスクが高リスク帯及び低リスク帯のいずれでもない第二の範囲内である場合、前記参照効果がより高いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記条件出力手段は、前記対象効果が低効果帯であることを判定するための第三の範囲内であり、且つ推定された前記リスクが高リスク帯及び低リスク帯のいずれでもない第二の範囲内である場合、前記参照効果がより高いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記条件出力手段は、前記参照効果がより低いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、該参照効果を参照しない場合に決定される優先度より低い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記条件出力手段は、前記参照効果が前記対象効果に比べてより低いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、該参照効果を参照しない場合に決定される優先度より低い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記条件出力手段は、前記対象効果が高効果帯及び低効果帯のいずれでもない第一の範囲内であり、且つ推定された前記リスクが高リスク帯及び低リスク帯のいずれでもない第二の範囲内である場合、前記参照効果がより低いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記条件出力手段は、前記対象効果が低効果帯であることを判定するための第三の範囲内であり、且つ推定された前記リスクが高リスク帯及び低リスク帯のいずれでもない第二の範囲内である場合、前記参照効果がより低いユーザに対する前記オペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるような条件を出力する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記効果推定手段は、前記ユーザに係る1又は複数の属性の入力に対して、該ユーザに対する前記オペレーションの効果を示すスコアを出力する効果推定モデルを用いて、前記オペレーションの効果を推定し、
前記効果推定モデルは、所定の属性を有する複数のユーザのうち前記オペレーションを受けたユーザによる前記アクションの実行率に係る統計量と、前記複数のユーザのうち前記オペレーションを受けなかったユーザによる前記アクションの実行率に係る統計量とに基づくスコアを、前記属性を有するユーザに対する前記オペレーションの効果を示すスコアとして定義した教師データに基づいて、作成される、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項16】
ユーザ間の関係性を特定する関係性特定手段と、
前記ユーザ間の関係性に対応する判断基準に従って、該ユーザ間の関係性の強さを示す指標に基づいて、該ユーザ同士の近さを示す関係性強度を決定する関係性強度決定手段と、を更に備え、
前記参照ユーザ特定手段は、前記関係性強度に従って、前記参照ユーザを特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記参照ユーザ特定手段は、前記参照ユーザを、ユーザ間の関係性を示すグラフデータに基づいて特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記オペレーションに関する条件は、前記オペレーションの実行要否、前記オペレーションの実行回数、前記オペレーションの実行順序、前記オペレーションにおけるユーザへのコンタクト方法、及び前記オペレーションにおいてユーザにコンタクトする際の内容の少なくいともいずれかである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項19】
コンピュータが、
所定のアクションの実行をユーザに促すための該ユーザに対する所定のオペレーションが、該ユーザが前記アクションを実行するか否かに与える効果を推定する効果推定ステップと、
対象ユーザと互いに関係がある参照ユーザを特定する参照ユーザ特定ステップと、
前記対象ユーザについて推定された前記効果である対象効果、及び前記参照ユーザについて推定された前記効果である参照効果を含むデータに基づいて、前記対象ユーザに対する前記オペレーションに関する条件を出力する条件出力ステップと、
を実行する方法。
【請求項20】
コンピュータを、
所定のアクションの実行をユーザに促すための該ユーザに対する所定のオペレーションが、該ユーザが前記アクションを実行するか否かに与える効果を推定する効果推定手段と、
対象ユーザと互いに関係がある参照ユーザを特定する参照ユーザ特定手段と、
前記対象ユーザについて推定された前記効果である対象効果、及び前記参照ユーザについて推定された前記効果である参照効果を含むデータに基づいて、前記対象ユーザに対する前記オペレーションに関する条件を出力する条件出力手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザに対するオペレーションを支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカードの支払いの督促、即ち債権の回収を目的として、コールセンターのオペレータによる、顧客に対する架電等のオペレーションが行われている(特許文献1を参照)。また、督促業務を行う時間帯に応じて、オペレータが応対に用いる例文の口調を変更する督促支援技術が知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-282994号公報
【特許文献2】特開2010-224617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ユーザに所定のアクション(例えば、振込や口座への入金等)を実行させることを目的として、当該所定のアクションの実行をユーザに促すためのオペレーション(例えば、顧客に対する架電等)が行われている。しかし、ユーザに対して所定のアクションの実行を促すオペレーションは有効である一方、オペレーションの実行には、オペレーションの量に応じたコストが生じるという問題がある。
【0005】
本開示は、上記した問題に鑑み、ユーザに所定のアクションを促すオペレーションのコスト対効果を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例は、所定のアクションの実行をユーザに促すための該ユーザに対する所定のオペレーションが、該ユーザが前記アクションを実行するか否かに与える効果を推定する効果推定手段と、対象ユーザと互いに関係がある参照ユーザを特定する参照ユーザ特定手段と、前記対象ユーザについて推定された前記効果である対象効果、及び前記参照ユーザについて推定された前記効果である参照効果を含むデータに基づいて、前記対象ユーザに対する前記オペレーションに関する条件を出力する条件出力手段と、を備える情報処理装置である。
【0007】
本開示は、情報処理装置、システム、コンピュータによって実行される方法又はコンピュータに実行させるプログラムとして把握することが可能である。また、本開示は、そのようなプログラムをコンピュータその他の装置、機械等が読み取り可能な記録媒体に記録したものとしても把握できる。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ユーザに所定のアクションを促すオペレーションのコスト対効果を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
【
図3】実施形態においてIPアドレスデータの値が共通していることの一例を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態に係るグラフデータの一例を示す図である。
【
図5】実施形態において住所データの値が共通していることの一例を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態に係るグラフデータの一例を示す図である。
【
図7】実施形態においてクレジットカード番号データの値が共通していることの一例を模式的に示す図である。
【
図8】実施形態に係るグラフデータの一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係るグラフデータの一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係るクラスタの一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る分類の可視化の一例を示す図である。
【
図12】実施形態に係る機械学習モデルを用いた関係性強度(近さスコア)の決定の一例を示す図である。
【
図13】実施形態において採用される機械学習モデルの決定木の概念を簡略化して示す図である。
【
図14】実施形態において推定される効果及びリスクとオペレーション条件との関係を示す図である。
【
図15】実施形態に係る機械学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】実施形態に係るオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】実施形態に係るオペレーション条件出力処理のバリエーション(1)の流れを示すフローチャートである。
【
図18】実施形態に係るオペレーション条件出力処理のバリエーション(2)の流れを示すフローチャートである。
【
図19】実施形態に係る推定される対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係を示す図である。
【
図20】実施形態に係る推定される対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係を示す図である。
【
図21】実施形態に係る対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係が採用された場合のオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。
【
図22】実施形態に係る対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係が採用された場合のオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る情報処理装置、方法及びプログラムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は、実施形態を例示するものであって、本開示に係る情報処理装置、方法及びプログラムを以下に説明する具体的構成に限定するものではない。実施にあたっては、実施の態様に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。
【0011】
本実施形態では、本開示に係る技術を、支払いが遅延しているクレジットカード利用額の支払いを督促して債権を回収するためのオペレーションセンター管理システムのために実施した場合の実施の形態について説明する。但し、本開示に係る技術を適用可能なシステムは、クレジットカード利用額の支払督促のためのオペレーションセンター管理システムに限定されない。本開示に係る技術は、ユーザに対するオペレーションを支援するための技術について広く用いることが可能であり、本開示の適用対象は、実施形態において示した例に限定されない。
【0012】
通常、クレジットカード利用額の支払いは、毎月の引き落とし日にユーザの口座から引き落とされる、又は指定日までにユーザから入金される、等の方法で行われるが、ユーザの口座の残高が不足していたり、ユーザが指定日までの入金を行わなかったり等の理由でクレジットカード利用額の支払いが規定日までに完了しない場合がある。このため、従来、クレジットカード利用額の支払いをユーザに督促して債権を回収するために、オペレーションセンター(コールセンター)からの顧客に対する架電やメッセージ送信等のオペレーションが行われている。
【0013】
一般的には、デフォルト(債務不履行)を回避するために、ユーザに対するオペレーションは有効であり、オペレーションの量を増やすほど債権の回収率は上がる。しかし一方で、オペレーションの量を増やすほど、オペレーションのための人件費やシステム利用料、システム維持費用等のコストが増大する。そこで、本開示に係るシステムでは、上記した問題に鑑み、債権の回収率を下げることなく、オペレーションに係るコストを抑制するための技術を採用している。なお、本実施形態では、主として所定のオペレーションがユーザへの架電である例について説明するが、所定のオペレーションの内容は限定されず、ユーザに所定のアクションを促すための種々のオペレーションであってよい。
【0014】
<システムの構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。本実施形態に係るシステムでは、情報処理装置1と、オペレーションセンター管理システム3と、クレジットカード管理システム5と、が互いに通信可能に接続されている。オペレーションセンターには、オペレーションセンター管理システム3による指示に従ってオペレーションを行うためのオペレーション端末(図示は省略する)が設置され、オペレータは、オペレーション端末を操作して、ユーザに対するオペレーションを行う。ユーザは、クレジットカードの利用者であり、金融機関等を介してクレジットカード利用額の入金を行い、クレジットカード利用額の支払履歴データは、クレジットカード管理システム5を介してオペレーションセンター管理システム3に通知される。
【0015】
情報処理装置1は、オペレーションセンター管理システム3によるオペレーションを制御するためのデータを出力するための情報処理装置である。情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置14、NIC(Network Interface Card)等の通信ユニット15、等を備えるコンピュータである。但し、情報処理装置1の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の態様に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、情報処理装置1は、単一の筐体からなる装置に限定されない。情報処理装置1は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0016】
オペレーションセンター管理システム3、クレジットカード管理システム5及びオペレーション端末は、いずれも、CPU、ROM、RAM、記憶装置、通信ユニット、入力装置、出力装置等(図示は省略する)を備えるコンピュータである。また、これらのシステム及び端末は、いずれも、単一の筐体からなる装置に限定されない。これらのシステム及び端末は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0017】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成の概略を示す図である。情報処理装置1は、記憶装置14に記録されているプログラムが、RAM13に読み出され、CPU11によって実行されて、情報処理装置1に備えられた各ハードウェアが制御されることで、グラフデータ生成部21、参照ユーザ特定部22、関係性特定部23、関係性強度決定部24、効果推定部25、リスク推定部26、機械学習部27、及び条件出力部28を備える情報処理装置として機能する。なお、本実施形態及び後述する他の実施形態では、情報処理装置1の備える各機能は、汎用プロセッサであるCPU11によって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサによって実行されてもよい。
【0018】
グラフデータ生成部21は、複数のユーザの夫々の属性データ群に基づいて互いに関係があるユーザのペアを特定することで、ユーザ間の関係性を示すグラフデータ(ソーシャルグラフネットワーク)を生成する。より具体的には、グラフデータ生成部21は、例えば、対象ユーザを含む複数のユーザにそれぞれ対応付けられるノードデータ50と、互いに関係があるユーザのペアに対応付けられるリンクデータ52と、を含むグラフデータを生成する(
図4、
図6、
図8、及び、
図9参照)。なお、グラフデータ生成部21は、明示的リンクで接続されたノード(ユーザ)で構成されるユーザ間関係グラフの学習(表現学習、関係学習、埋込学習、知識グラフ埋め込み)を行うことで、ユーザ間の暗示的リンクを予測し作成する。このとき、グラフデータ生成部21は、既知の埋め込みモデル又はその拡張に適宜、基づき、当該学習を行ってよい。
【0019】
例えば、
図3に示すように、電子商取引システム40に、ユーザAの属性データ群が登録されていることとする。また、ゴルフ場予約システム42に、ユーザBの属性データ群が登録されていることとする。また、旅行予約システム44に、ユーザCの属性データが登録されていることとする。そして、電子商取引システム40に登録されているユーザAのIPアドレスデータの値、ゴルフ場予約システム42に登録されているユーザBのIPアドレスデータの値、及び、旅行予約システム44に登録されているユーザCのIPアドレスデータの値が同じであるとする。
【0020】
この場合、グラフデータ生成部21は、
図4に示すように、ユーザAに対応付けられるノードデータ50a、ユーザBに対応付けられるノードデータ50b、ユーザCに対応付けられるノードデータ50c、ユーザAがユーザBと関係があることを示すリンクデータ52a、ユーザAがユーザCと関係があることを示すリンクデータ52b、ユーザBがユーザCと関係があることを示すリンクデータ52c、を含むグラフデータを生成する。IPアドレスが同じであるユーザは同じコンピュータを利用しているか又は同じ住居又は職場においてグローバルアドレスを共有しているものと推察される。そのため、本実施形態ではこのようなユーザは互いに関連付けられるようになっている。
【0021】
また、例えば、
図5に示すように、電子商取引システム40に、ユーザD、ユーザE、及び、ユーザFの属性データ群が登録されていることとする。そして、電子商取引システム40に登録されているユーザDの住所データの値、ユーザEの住所データの値、及び、ユーザFの住所データの値が同じであるとする。
【0022】
この場合、グラフデータ生成部21は、
図6に示すように、ユーザDに対応付けられるノードデータ50d、ユーザEに対応付けられるノードデータ50e、ユーザFに対応付けられるノードデータ50f、ユーザDがユーザEと関係があることを示すリンクデータ52d、ユーザDがユーザFと関係があることを示すリンクデータ52e、ユーザEがユーザFと関係があることを示すリンクデータ52f、を含むグラフデータを生成する。住所が同じであるユーザは同居しているものと推察される。そのため、本実施形態ではこのようなユーザは互いに関連付けられるようになっている。
【0023】
また、例えば、
図7に示すように、電子商取引システム40に、ユーザGの属性データ群が登録されていることとする。また、ゴルフ場予約システム42に、ユーザHの属性データ群が登録されていることとする。また、旅行予約システム44に、ユーザIの属性データ群が登録されていることとする。そして、電子商取引システム40に登録されているユーザGのクレジットカード番号データの値、ゴルフ場予約システム42に登録されているユーザHのクレジットカード番号データの値、及び、旅行予約システム44に登録されているユーザIのクレジットカード番号データの値が同じであるとする。
【0024】
この場合、グラフデータ生成部21は、
図8に示すように、ユーザGに対応付けられるノードデータ50g、ユーザHに対応付けられるノードデータ50h、ユーザIに対応付けられるノードデータ50i、ユーザGがユーザHと関係があることを示すリンクデータ52g、ユーザGがユーザIと関係があることを示すリンクデータ52h、ユーザHがユーザIと関係があることを示すリンクデータ52i、を含むグラフデータを生成する。クレジットカード番号が同じであるユーザは親子等の家族であるものと推察される。そのため、本実施形態ではこのようなユーザは互いに関連付けられるようになっている。
【0025】
なお、互いに関係があるユーザのペアに該当するか否かの判断基準は、以上で説明したものには限定されない。ユーザのペアは、位置情報の履歴や行動履歴等、様々な基準に基づいて判断することが出来る。
【0026】
また、以上で説明した、互いに関係があると特定されたユーザを関連付けるリンクデータ52が示すリンクを明示的リンクと呼ぶこととする。ここで例えば、第1のユーザと明示的リンクで接続されているユーザと、第2のユーザと明示的リンクで接続されているユーザと、が所定数以上(例えば、3人以上)共通しているとする。この場合、本実施形態では例えば、グラフデータ生成部21は、当該第1のユーザが当該第2のユーザと関係があることを示すリンクデータ52を生成する。このようにして生成されるリンクデータ52が示すリンクを黙示的リンクと呼ぶこととする。
【0027】
例えば、
図9に示すように、明示的リンクを示すリンクデータ52jによって、ユーザJに対応付けられるノードデータ50jとユーザKに対応付けられるノードデータ50kとが接続されていることとする。また、明示的リンクを示すリンクデータ52kによって、ユーザJに対応付けられるノードデータ50jとユーザLに対応付けられるノードデータ50lとが接続されていることとする。また、明示的リンクを示すリンクデータ52lによって、ユーザJに対応付けられるノードデータ50jとユーザMに対応付けられるノードデータ50mとが接続されていることとする。
【0028】
また、明示的リンクを示すリンクデータ52mによって、ユーザKに対応付けられるノードデータ50kとユーザNに対応付けられるノードデータ50nとが接続されていることとする。また、明示的リンクを示すリンクデータ52nによって、ユーザLに対応付けられるノードデータ50lとユーザNに対応付けられるノードデータ50nとが接続されていることとする。また、明示的リンクを示すリンクデータ52oによって、ユーザMに対応付けられるノードデータ50mとユーザNに対応付けられるノードデータ50nとが接続されていることとする。
【0029】
この場合、グラフデータ生成部21は、ユーザJがユーザNと関係があることを示すリンクデータ52p(黙示的リンクを示すリンクデータ52p)を生成する。このようにして、ユーザNが、ユーザJと関係があるユーザとして特定されることとなる。
【0030】
また、例えば、第1のユーザと明示的リンク又は黙示的リンクで接続されているユーザと、第2のユーザと明示的リンク又は黙示的リンクで接続されているユーザと、が所定数以上(例えば、3人以上)共通しているとする。この場合、グラフデータ生成部21が、当該第1のユーザが当該第2のユーザと関係があることを示すリンクデータ52(黙示的リンクを示すリンクデータ52)を生成してもよい。
【0031】
参照ユーザ特定部22は、グラフデータ生成部21によって生成されたグラフデータを参照し、当該グラフデータに含まれるユーザのうち対象ユーザと互いに関係がある少なくとも1の他のユーザを、当該対象ユーザに対する参照ユーザとして特定する。ここで、参照ユーザ特定部22は、後述する関係性強度(ユーザ間の近さスコア)に従って、対象ユーザと互いに関係がある少なくとも1の参照ユーザを特定してよい。具体的には、参照ユーザ特定部22は、対象ユーザとの間の関係性強度が強い(近さスコアが高い)ユーザを優先的に、参照ユーザとして特定することが出来る。例えば、参照ユーザ特定部22は、n人の参照ユーザを特定したい場合には、対象ユーザとの間で関係性強度が強い上位n人のユーザを参照ユーザとして特定する。また、参照ユーザ特定部22は、対象ユーザと関係があるユーザとして特定されるユーザ、及び、関係があるユーザとして特定されるユーザが所定数以上対象ユーザと共通するユーザを、参照ユーザとして特定してもよい。また、参照ユーザ特定部22は、対象ユーザと同じクラスタに分類されるユーザを、参照ユーザとして特定してもよい。
【0032】
また、参照ユーザ特定部22は、対象ユーザの属性と、複数のユーザの属性と、に基づいて、当該複数のユーザのうちから、参照ユーザを特定してもよい。例えば、対象ユーザと住所や電話番号が共通する他のユーザは、対象ユーザと同居している同居ユーザ、又は住所が異なっていたとしても対象ユーザと生活や社会活動を共にする関係にあるユーザであると推定できる。このため、参照ユーザ特定部22は、対象ユーザと住所や電話番号の属性データが共通する他のユーザを、少なくとも1の参照ユーザとして特定することが出来る。また、参照ユーザ特定部22は、対象ユーザと共通するフラグが有効化されている(1となっている)ユーザを、参照ユーザとして特定してもよい。また、参照ユーザ特定部22は、属性データ群に基づいて推定又は決定される各種データが所定の値又は所定の組み合わせ等を示すユーザを、参照ユーザとして特定してもよい。なお、参照ユーザ特定部22は、参照ユーザを特定するための諸条件の少なくとも1つに基づいて、参照ユーザを特定してよい。
【0033】
参照ユーザ特定部22は、例えば、対象ユーザに対応付けられるノードデータ50と、明示的リンク又は黙示的リンクを示すリンクデータ52によって接続されるノードデータ50に対応付けられるユーザを、当該対象ユーザに対する参照ユーザとして特定してもよい。
【0034】
関係性特定部23は、ユーザ間の関係性を特定する。ここで特定されるユーザ間の関係性は、例えば、(1)同一世帯に居住する親子関係又は夫婦関係、(2)友達関係、(3)同じ職場で働く関係、等である。但し、特定される関係性は本開示における例示に限定されない。本実施形態では、関係性特定部23は、ユーザ間の関係に対応付けられる値に基づくクラスタリングの結果に基づいて、ユーザ間の関係性を特定する。ここで、ユーザ間の関係に対応付けられる値として採用可能な値の種類は限定されないが、例えば、ユーザの氏名、IPアドレス、住所、クレジットカード番号、年齢、性別、通学先、勤務先及び滞在場所のうちの少なくとも1つが含まれてよい。
【0035】
関係性特定部23は、ユーザ間の関係性を特定する。ここで、関係性特定部23は、対象ユーザの属性データ群と、参照ユーザの属性データ群と、に基づいて、対象ユーザと参照ユーザとの関係性を特定してもよい。また、対象ユーザの属性データ群が登録されているコンピュータシステムと参照ユーザの属性データ群が登録されているコンピュータシステムとは異なっていてもよい。例えば、電子商取引システム40に登録されている、対象ユーザの属性データ群と、ゴルフ場予約システム42に登録されている、参照ユーザの属性データ群と、に基づいて、対象ユーザと参照ユーザとの関係性を特定してもよい。
【0036】
関係性特定部23は、例えば、リンクデータ52で接続されているノードデータ50のペアを特定する。そして、関係性特定部23は、当該ペアに対応付けられる2人のユーザのユーザ属性データ群に基づいて、当該ペアに対応付けられるペア属性データを生成する。ここで、ペア属性データには、例えば、IP共通フラグ、住所共通フラグ、クレジットカード番号共通フラグ、名字同一フラグ、年齢差データ、ペア性別データ、通学先共通フラグ、勤務先共通フラグ、滞在場所共通フラグ、等が含まれる。
【0037】
IP共通フラグは、例えば、当該ペアのうちの一方の属性データに含まれるIPアドレスデータの値と他方の属性データに含まれるIPアドレスデータの値とが同じであるか否かを示すフラグである。例えば、IPアドレスデータの値が同じである場合はIP共通フラグの値に1が設定され、IPアドレスデータの値が異なる場合はIP共通フラグの値に0が設定されてもよい。
【0038】
住所共通フラグ、通学先共通フラグ、勤務先共通フラグ及び滞在場所共通フラグは、例えば、当該ペアのうちの一方の属性データ群に含まれる住所データ、通学先データ、勤務先データ又は滞在場所データの値と他方の属性データ群に含まれる住所データ、通学先データ、勤務先データ又は滞在場所データの値とが同じであるか否かを示すフラグである。例えば、住所データの値が同じである場合は住所共通フラグの値に1が設定され、住所データの値が異なる場合は住所共通フラグの値に0が設定されてもよい。
【0039】
クレジットカード番号共通フラグは、例えば、当該ペアのうちの一方の属性データ群に含まれるクレジットカード番号データの値と他方の属性データ群に含まれるクレジットカード番号データの値とが同じであるか否かを示すフラグである。例えば、クレジットカード番号データの値が同じである場合はクレジットカード番号共通フラグの値に1が設定され、クレジットカード番号データの値が異なる場合はクレジットカード番号共通フラグの値に0が設定されてもよい。
【0040】
名字同一フラグは、例えば、当該ペアのうちの一方の属性データ群に含まれる氏名データが示す名字と他方の属性データ群に含まれる氏名データが示す名字とが同じであるか否かを示すフラグである。例えば、氏名データが示す名字が同じである場合は名字同一フラグの値に1が設定され、氏名データが示す名字が異なる場合は名字同一フラグの値に0が設定されてもよい。
【0041】
年齢差データは、例えば、当該ペアのうちの一方の属性データ群に含まれる年齢データの値と他方の属性データ群に含まれる年齢データの値との差を示すデータである。
【0042】
ペア性別データは、例えば、当該ペアのうちの一方の属性データ群に含まれる性別データの値と他方の属性データ群に含まれる性別データの値との組合せを示すデータである。
【0043】
そして、関係性特定部23は、複数のペアのそれぞれに対応付けられるペア属性データ群の値に基づいて、一般的なクラスタリング手法を用いたクラスタリングを実行することで、当該複数のペアを、
図10に示すような複数のクラスタ54に分類する。
【0044】
図10は、複数のペアが、5つのクラスタ54(54a、54b、54c、54d、及び、54e)に分類された様子の一例を模式的に示す図である。
図10に示されているバツ印は、ペアに対応付けられる。そして、複数のバツ印のそれぞれは、当該バツ印に対応するペアのペア属性データの値に対応付けられる位置に配置されている。
図10の例では、複数のペアが5つのクラスタ54に分類されているが、複数のペアが分類されるクラスタ54の数は5つには限定されず、例えば、複数のペアが4つのクラスタ54に分類されてもよい。
【0045】
図11は、複数のペアが4つのクラスタ54に分類された場合における、当該分類の可視化の一例を示す図である。
図11に示すように、住所が同じであり、性別が同じであり、年齢差がX歳より大きく、名字が同じペアは、第1クラスタに分類されてもよい。また、住所が同じであり、性別が同じであり、年齢差がX歳以下であり、名字が同じペアは、第2クラスタに分類されてもよい。また、住所が同じであり、性別が異なり、年齢差がY歳より大きく、名字が同じペアは、第3クラスタに分類されてもよい。また、住所が同じであり、性別が異なり、年齢差がY歳以下であり、名字が同じペアは、第4クラスタに分類されてもよい。
【0046】
この場合、第1クラスタは、例えば同性の親子に対応付けられるクラスタ54であるものと推察される。また、第2クラスタは、同性の兄弟に対応付けられるクラスタ54であるものと推察される。また、第3クラスタは、異性の親子に対応付けられるクラスタ54であるものと推察される。また、第4クラスタは、夫婦に対応付けられるクラスタ54であるものと推察される。
【0047】
以上で説明したようにして、関係性特定部23が、ユーザ間の関係に対応付けられる値に基づくクラスタリングの結果に基づいて、対象ユーザと参照ユーザとの関係性を特定してもよい。通学先共通フラグ、勤務先共通フラグ、滞在場所共通フラグに基づくクラスタリングによって友達関係や同じ職場で働く関係のクラスタを作成する場合の具体例については、上記説明した例と概略同様であるため、説明を省略する。また、関係性特定部23が、名字、IPアドレス、住所、クレジットカード番号、年齢差、性別、通学先、勤務先及び滞在場所のうちの少なくとも1つに基づくクラスタリングの結果に基づいて、対象ユーザと参照ユーザとの関係性を特定してもよい。
【0048】
関係性強度決定部24は、ユーザ間の関係性に対応する判断基準に従って、当該ユーザ間の関係の強さを示す指標に基づいて、当該ユーザ同士(例えば、対象ユーザと参照ユーザとの間)の近さを示す関係性強度(以下、「近さスコア」とも称する。)を決定する。本実施形態において、関係性強度決定部24は、対象ユーザと参照ユーザとの関係性に対応する学習済の機械学習モデルに指標を表すデータを入力した際の出力に基づいて、対象ユーザと参照ユーザとの近さを示す関係性強度(近さスコア)を決定する。
【0049】
ここで、関係性強度決定部24は、それぞれ上述のクラスタ54に対応付けられる学習済の機械学習モデルを含んでいてもよい。例えば、複数のペアが5つのクラスタ54に分類される場合には、関係性強度決定部24は、5つの機械学習モデルを含んでいてもよい。そして、関係性強度決定部24は、対象ユーザと参照ユーザとの関係性に対応する学習済の機械学習モデルに、対象ユーザと当該参照ユーザとの関係の強さを示す指標を表すデータを入力した際の出力に基づいて、対象ユーザと参照ユーザとの近さを示す近さスコアを決定してもよい。この場合、学習済の機械学習モデルにおいて実装された入出力関係が、上述の判断基準に相当する。
【0050】
図12に示すように、関係性強度決定部24が、n番目の機械学習モデルである第n機械学習モデルに、第n機械学習モデルに対応付けられるクラスタ54に分類されたペアに対応する入力データを入力してもよい。例えば、関係性強度決定部24が5つの機械学習モデルを含む場合は、上述の値nは、1以上5以下の整数のうちのいずれかとなる。そして、関係性強度決定部24が、当該入力データの入力に応じて第n機械学習モデルから出力される出力データの値を、当該ペアについての近さスコアの値として決定するようにしてもよい。
【0051】
ペアに対応付けられる入力データには、例えば、当該ペアに対応付けられるペア属性データの一部又は全部が含まれるようにしてもよい。また、入力データに、ペア属性データに含まれていないデータが含まれるようにしてもよい。例えば、入力データに、電子商取引システム40の利用履歴を示すデータや、関係性強度決定部24によってSNS等の他の情報源から取得されるデータ等が含まれていてもよい。より具体的には例えば、入力データに、ペア間の単位期間あたりの通話回数やメッセージのやり取りの回数、一方が他方に送ったギフトの数、ペアにおける共通のフレンドの数、等を示すデータが含まれるようにしてもよい。
【0052】
また、ペアに対応付けられる入力データに含まれるデータの種類は、当該ペアが属するクラスタ54によって同じであってもよいし異なっていてもよい。例えば、第1機械学習モデルに入力される入力データに含まれるデータの種類と、第2機械学習モデルに入力される入力データに含まれるデータの種類と、が異なっていてもよい。
【0053】
本実施形態では例えば、関係性強度決定部24による近さスコアの決定に先立って、予め、第n機械学習モデルに対応付けられる所与の複数の教師データを用いた、第n機械学習モデルの学習が実行される。この教師データは、例えば、当該第n機械学習モデルに対応付けられるクラスタ54における近さスコアの決定が妥当なものとなるよう予め準備されたものである。ここで、教師データに設定される近さスコアは、ルールベースで設定された(アノテーションがなされた)近さスコアであってもよい。また、機械学習モデルによって過去に出力された後で、管理者等によって修正された近さスコアであってもよい。
【0054】
ここで、第n機械学習モデルに対して、弱教師あり学習による学習が行われてもよい。例えば、教師データに、第n機械学習モデルに入力される入力データと同じ種類のデータが含まれている学習入力データと、学習入力データの入力に応じて第n機械学習モデルから出力される出力データと比較される教師データと、が含まれていてもよい。
【0055】
ここで例えば、上述の近さスコアが、0又は1のいずれかの値をとるとする。例えば、ペアが近い関係にある場合には、当該ペアの近さスコアの値として1が決定され、そうでない場合に、当該ペアの近さスコアの値として0が決定されるとする。この場合、教師データが、対応する学習入力データにおける妥当な近さスコアの値、及び、この値が妥当である確率を示すデータを含んでいてもよい。そして、例えば、教師データに含まれる学習入力データの入力に応じて第n機械学習モデルから出力される出力データの値と、当該教師データに含まれる教師データの値と、に基づいて、第n機械学習モデルのパラメータの値を更新する弱教師あり学習が実行されてもよい。
【0056】
なお、上述の近さスコアは、0又は1のいずれかの値をとるバイナリデータである必要はない。例えば、上述の近さスコアが、当該ペアが近い関係にあるほど大きな値となる実数値(例えば、0以上10以下の実数値)や、多段階の整数値(例えば、1以上10以下の整数値)であっても構わない。
【0057】
また、機械学習モデルの学習手法は、弱教師あり学習には限定されない。一具体例として、兄弟の関係があるペアについて考察する。この場合、当該ペアに対応付けられる入力データが、兄弟という関係に対応する学習済の機械学習モデルに入力される。そして例えば、このペアについて住所データの値が同じであり、このペアの一方が他方に送ったギフトの数が50であり、このペアの今までの通話回数が1200回である場合には、値が1である出力データが出力されるような学習が実行されてもよい。また例えば、このペアについて住所データの値が異なっており、このペアの一方が他方に送ったギフトの数が2であり、このペアの今までの通話回数が30回である場合には、値が0である出力データが出力されるような学習が実行されてもよい。そして、近さスコアに対応する出力データの値が1となるか0となるかの判断基準(例えば閾値)が、機械学習モデルによって異なっていてもよい。
【0058】
効果推定部25は、所定のアクションの実行をユーザに促すための当該ユーザに対する所定のオペレーションが、当該ユーザがアクションを実行するか否かに与える効果を推定する。本実施形態において、所定のアクションは、支払いが遅延しているクレジットカード利用額の支払いである。なお、具体的な支払手段は限定されず、指定口座への振込や指定窓口での支払等であってよい。また、本実施形態において、所定のオペレーションは、支払いが遅延しているクレジットカード利用額の支払いのための督促の架電である。なお、ユーザに対する架電は、録音又は機械音声を用いた自動架電であってもよいし、オペレータ(人間)がユーザと会話する架電であってもよい。そして、本実施形態において、効果推定部25は、対象ユーザに係る1又は複数のユーザ属性の入力に対して、当該ユーザに対するオペレーションの効果を示す因果スコア(causality score)を出力する機械学習モデル(以下、「効果推定モデル」と称する)を用いて、オペレーションの効果を推定する。
【0059】
しかし、ユーザによっては、オペレーションの効果を推定するためのユーザ属性のデータが不足している場合があり、このようなユーザについては、当該ユーザのユーザ属性のみに基づいてオペレーションの効果を推定することが困難であるという問題がある。このため、本開示に係る効果推定部25は、オペレーションの効果を推定するためのユーザ属性のデータが不足しているユーザについて、当該ユーザ(対象ユーザ)に関係する他のユーザ(参照ユーザ)がアクションを実行するか否かにオペレーションが与える効果を用いて、対象ユーザがアクションを実行するか否かにオペレーションが与える効果を推定することとしている。
【0060】
本開示では、対象ユーザがアクションを実行するか否かにオペレーションが与える効果(対象効果)を「対象因果スコア」と称し、参照ユーザがアクションを実行するか否かにオペレーションが与える効果(参照効果)を「参照因果スコア」と称する。そして、本実施形態において、効果推定部25は、参照ユーザについて推定された効果である参照因果スコアを含むデータに基づいて、対象ユーザについての効果である対象因果スコアを推定する。なお、本開示では、対象因果スコア又は参照因果スコアを単に因果スコアと呼んでよく、単に効果(オペレーションが与える効果)と呼んでよい。
【0061】
これは、対象ユーザに対する架電等のオペレーションを、参照ユーザが対象ユーザに代わって受ける蓋然性が高い場合には、対象ユーザへのオペレーションの効果が、参照ユーザへのオペレーションの効果の影響を受ける可能性があるためである。このため、参照ユーザは、例えば、対象ユーザと所定の関係性を有し対象ユーザと同居する他のユーザであってよい。また、例えば、対象ユーザが成人である場合、その親に相当するユーザは在宅である傾向がある仮定できるため、対象ユーザの親である同居ユーザの因果スコア(参照因果スコア)に更に基づき、対象ユーザの因果スコア(対象因果スコア)を最終的に推定又は決定してよい。但し、参照ユーザは、対象ユーザへのオペレーションの効果が、参照ユーザへのオペレーションの効果の影響を受ける可能性があるユーザであればよく、同居人に限定されない。
【0062】
具体的には、例えば、効果推定部25は、参照因果スコアを、対象因果スコアとして推定することが出来る。すなわち、効果推定部25は、対象ユーザと関係性を有する参照ユーザとして特定された参照ユーザの因果スコアを、対象ユーザの因果スコアとして扱ってよい。また、この際、効果推定部25は、参照因果スコアが対象因果スコアより高い効果を示す因果スコアである場合に、参照因果スコアを対象因果スコアとして推定することとしてもよい。
【0063】
また、効果推定部25は、複数の参照ユーザについて推定された複数の参照因果スコアを含むデータに基づいて、対象因果スコアを推定してもよい。例えば、効果推定部25は、複数の参照ユーザについて推定された複数の参照因果スコアに基づく統計的指標(例えば、平均値、加重平均、中央値、最頻値等)に基づいて、対象因果スコアを推定することが出来る。また、この際、効果推定部25は、複数の参照ユーザについて推定された複数の参照因果スコアの夫々を対象ユーザと該参照ユーザとの近さを示す関係性強度(近さスコア)に従って重み付けした値の平均値(加重平均)を、対象因果スコアとして推定することとしてもよい。なお、加重平均を求める際の重みには、近さスコアがそのまま用いられてもよいし、近さスコアに基づいてその他のスケールに変換された重みが用いられてもよい。
【0064】
リスク推定部26は、ユーザが上記説明した所定のアクションを実行しない蓋然性に基づくリスクを推定する。リスクの表現方法は限定されず、様々な指標が採用されてよいが、例えば、リスクは、債権が回収されずにデフォルトとなる確率を用いて表現することが出来る。そして、本実施形態において、リスク推定部26は、対象ユーザに係る1又は複数のユーザ属性の入力に対して、当該ユーザについて債権が回収されずにデフォルトとなる確率を示すリスク指標を出力する機械学習モデル(以下、「リスク推定モデル」と称する)を用いて、ユーザがアクションを実行しない蓋然性に基づくリスクを推定する。但し、リスクは、機械学習モデルを用いずに、例えば所定のルールに従って推定されてもよい。例えば、リスクは、ユーザ属性又はユーザ属性の組合せ毎に予め対応する値を保持しておき、この値を読み出すことで取得されてもよい。また、リスクを示す指標には、デフォルトとなる確率以外の指標が採用されてよい。例えば、リスクをクラス(ランク)分けし、いずれのクラス(ランク)であるかを指標として用いてもよい。
【0065】
機械学習部27は、効果推定部25による効果推定に用いられる効果推定モデル、及びリスク推定部26によるリスク推定に用いられるリスク推定モデルを生成及び/又は更新する。効果推定モデルは、対象ユーザに係る1又は複数のユーザ属性データが入力された場合に、当該ユーザに対するオペレーションの効果の多寡を示す因果スコアを出力する機械学習モデルである。また、リスク推定モデルは、対象ユーザに係る1又は複数のユーザ属性データが入力された場合に、当該ユーザがアクションを実行しない蓋然性に基づくリスクの程度を示すリスク指標を出力する機械学習モデルである。これらの機械学習モデルに入力されるユーザ属性には、例えば、デモグラフィック属性、ビヘイビオラル属性、又はサイコグラフィック属性が含まれてよい。ここで、デモグラフィック属性は、例えば、ユーザの性別(ジェンダー)、家族構成、年齢等であり、ビヘイビオラル属性は、例えば、キャッシング利用有無、リボ払い利用有無、所定の口座に係る入出金履歴、賭博又はくじを含む何らかの商品に係る商取引履歴(オンラインマーケットプレイス等におけるオンライン取引履歴を含んでよい)等であり、サイコグラフィック属性は、例えば、賭博又はくじに係る趣向等である。但し、利用可能なユーザの属性は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、「オペレーション(架電等)に要する時間」、「クレジットカード利用額」も、属性として用いられてよい。
【0066】
効果推定モデルの生成及び/又は更新にあたって、機械学習部27は、ユーザの属性毎に、所定の属性を有する複数のユーザのうちオペレーションを受けたユーザによるアクションの実行率(債権の回収率)に係る統計量と、複数のユーザのうちオペレーションを受けなかったユーザによるアクションの実行率に係る統計量とに基づくスコアを、当該属性を有するユーザに対するオペレーションの効果を示す因果スコアとして定義した教師データ(機械学習用データ)に基づいて、効果推定モデルを作成する。本実施形態では、例として、オペレーションの内容がユーザへの架電であった場合、「(ユーザが架電された場合における債権の回収率)-(ユーザが架電されなかった場合における債権の回収率)」の式により各統計量の差分に基づく因果スコアが算出され、算出された因果スコアが対応するユーザの属性データと組み合わせられて、教師データとして機械学習部27に入力される。なお、本実施形態では、統計量として平均値を用いる例を説明する。但し、統計量としては例えば最頻値や中央値等の統計的指標が用いられてもよい。ここで、アクションの実行率に係る統計量は、各ユーザの所定期間(例えば、所定の月)内の過去の債権回収率に基づいてよい。また、本実施形態では、各統計量の差分に基づく因果スコアを算出することとしているが、当該差分に統計的な有意差が認められない場合には、因果スコアをゼロ又は略ゼロとしてよい。ここで、当該有意差の存否の判定には既存の統計的手法が採用されてよい。例えば、各月のユーザの平均回収率等の集合について標準誤差や信頼区間を考慮し、架電の有無による回収率の変化について統計的有意性を考慮することが出来る。このようにすることで、同一グループ内のユーザによる平均回収率のばらつきを考慮して因果スコアを算出することが可能となる。
【0067】
教師データの作成にあたって、一度架電されたユーザは、以後架電されなかったユーザにはなり得ないため、1のユーザについては、当該ユーザが架電された場合の回収率と架電されなかった場合の回収率とのいずれか一方のみを取得可能である。このため、架電の効果の教師データは、共通の属性を有するユーザ群毎に作成される。即ち、ある共通の属性を有するユーザからなるユーザ群に対する架電の効果を示す因果スコアは、例えば、当該共通の属性を有する複数のユーザを架電される第1サブユーザ群と架電されない第2サブユーザ群とに分け、架電された第1サブユーザ群からの債権の回収率の平均値と架電されなかった第2サブユーザ群からの債権の回収率の平均値とを夫々算出し、これらの回収率の平均値の差分を上述した式に基づいて算出することによって取得される。例えば、架電された第1サブユーザ群からの債権の回収率の平均値が80%であり、架電されなかった第2サブユーザ群からの債権の回収率の平均値が70%である場合、当該ユーザ群に対する架電の効果を示す因果スコアは、「10」である。
【0068】
本開示に係る技術を実装するにあたり採用可能な機械学習モデル生成のフレームワークは、例として、アンサンブル学習アルゴリズムに基づく。当該フレームワークには、例えば、勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree:GBDT)に基づく機械学習フレームワーク(例えば、LightGBM)が採用されてよい。換言すると、当該フレームワークは、前後の弱学習器(弱分類器)間で正解と予測値との誤差を引き継がせるような決定木モデルに基づく機械学習フレームワークが採用されてよい。ここでの予測値とは、例として、因果スコアやリスク指標の予測値を指す。なお、当該フレームワークは、LightGBMの他、XGBoostやCatBoost等のブースティング手法を採用してよい。決定木を用いるフレームワークによれば、ニューラルネットワークを用いるフレームワークと比較して少ないパラメータ調整の手間で、比較的高い性能を有する機械学習モデルを生成することが出来る。但し、本開示に係る技術を実装するにあたり採用可能な機械学習モデル生成のフレームワークは、本実施形態における例示に限定されない。例えば、学習器として勾配ブースティング決定木に代えてランダムフォレスト等の他の学習器が採用されてよいし、ニューラルネットワーク等の所謂弱学習器とは称されない学習器が採用されてもよい。また、特にニューラルネットワーク等の所謂弱学習器とは称されない学習器が採用される場合には、アンサンブル学習が採用されなくてもよい。
【0069】
図13は、本実施形態において採用される機械学習モデルの決定木の概念を簡略化して示す図である。決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークを採用する場合、決定木の各ノードの分岐条件の最適化が行われる。具体的には、決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークでは、一つの親のノードから分岐した二つの子のノードの夫々が示す属性を有するユーザ群について、オペレーションの効果を示す因果スコアを夫々算出し、この因果スコアの差分が大きくなるように(例えば、差分が最大になるように、又は所定の閾値以上になるように)、即ち、二つの子のノードがきれいに分岐するように、親のノードの分岐条件が最適化される。例えば、ノードの分岐条件として示される属性が年齢である場合、分岐の閾値に設定される年齢を変更したり、分岐条件を年齢以外の属性に変更したりしてもよい。このようにして、決定木の全ノードの分岐条件を再帰的に最適化することで、オペレーションの効果の推定精度を向上させることができる。
【0070】
リスク推定モデルの生成及び/又は更新にあたって、機械学習部27は、ユーザの属性毎に、所定の属性を有する複数のユーザのデフォルト発生率に係る統計量(本実施形態では、平均値。但し、例えば最頻値や中央値等の統計的指標が用いられてもよい。)を、当該属性を有するユーザのリスクの程度を示すリスク指標として定義した教師データに基づいて、機械学習モデルを作成する。算出されたリスク指標は、対応するユーザの属性データと組み合わせて、教師データとして機械学習部27に入力される。また、リスク推定モデルの生成又は更新においても、採用可能な機械学習モデル生成のフレームワークは限定されないが、決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークが採用されてよいことは、上記説明した効果推定モデルの生成及び/又は更新と同様である。
【0071】
条件出力部28は、推定された効果及びリスク(本実施形態では、因果スコア及びリスク指標)に基づいて、オペレーションセンターにおいてユーザに対して実行されるオペレーションに関する条件(以下、「オペレーション条件」と称する)を決定し、出力する。本実施形態において、オペレーション条件は、オペレーションの実行要否、オペレーションの実行回数、オペレーションの実行順序、オペレーションにおけるユーザへのコンタクト方法、及びオペレーションにおいてユーザにコンタクトする際の内容の少なくいともいずれかである。ここで、コンタクト方法の例としては、架電やメッセージ送信等が挙げられ、コンタクトする際の内容としては、架電においてユーザに伝える内容やメッセージの記載内容が挙げられる。
【0072】
図14は、本実施形態において推定される効果及びリスクとオペレーション条件との関係を示す図である。基本的に、条件出力部28は、推定された効果がより高いユーザに対するオペレーション、及び推定されたリスクがより高いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。また、条件出力部28は、推定された効果がより低いユーザに対するオペレーション、及び推定されたリスクがより低いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。
【0073】
ここで、優先度とは、ユーザ又は当該ユーザへのオペレーションに対して設定される、オペレーションが優先的に行われる度合いを示す尺度である。優先度が高いユーザほどオペレーションを受ける可能性又は頻度が高くなり、優先度が低いユーザほどオペレーションを受ける可能性又は頻度が低くなる。具体的には、条件出力部28は、より高い優先度が与えられるような条件として、当該オペレーションを実行要に設定する、当該オペレーションの実行回数を多くする、当該オペレーションの実行順序を早くする、又は当該オペレーションにおけるユーザへのコンタクト方法又はコンタクト内容をよりコスト又は効果が高いものとするようなオペレーション条件を出力する。また、条件出力部28は、より低い優先度が与えられるような条件として、当該オペレーションを実行不要に設定する、当該オペレーションの実行回数を少なくする、当該オペレーションの実行順序を遅くする、又は当該オペレーションにおけるユーザへのコンタクト方法又はコンタクト内容をよりコスト又は効果が低いものとするようなオペレーション条件を出力する。
【0074】
本実施形態において、条件出力部28は、推定された因果スコア及びリスク指標と、因果スコア及びリスク指標の夫々について予め設定された閾値とを比較し、比較の結果に応じて、オペレーション条件を決定し、出力する。具体的には、
図14に示す例では、因果スコアについて、閾値C1と閾値C1よりも大きい閾値C2とが設定され、リスク指標について、閾値R1と閾値R1よりも大きい閾値R2とが設定されている。また、リスク指標については、更に、因果スコアに応じたオペレーション条件設定の対象とするかしないかを切り分けるための閾値R3と、因果スコアにかかわらず優先度の高いオペレーション条件が設定される対象とするユーザを判定するための閾値R4が設定されている。なお、本実施形態では、閾値R1と閾値R3に同じ値が採用され、また閾値R2と閾値R4に同じ値が採用される例について説明するが(
図14を参照)、これらの閾値には夫々異なる値が採用されてもよい。
【0075】
ここで、優先度の高いオペレーション条件が出力されるケースについて説明する。
ケース(1):条件出力部28は、因果スコアが閾値C2以上であるユーザの少なくとも一部について、オペレーションの効果が高いため、優先度の高いオペレーション条件を決定し、出力する。
ケース(2):また、条件出力部28は、リスク指標が閾値R2以上であるユーザの少なくとも一部について、リスクが高いため、優先度の高いオペレーション条件を決定し、出力する。
ケース(3):特に、条件出力部28は、因果スコアが閾値C2以上であり且つリスク指標が閾値R2以上であるユーザ(
図14における破線で示された領域URを参照)については、最も優先度の高いオペレーション条件を決定し、出力してよい。
ケース(4):但し、条件出力部28は、推定されたリスク指標が閾値R3より低いユーザについては、そもそもデフォルトとなる可能性が低いため、高い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力しなくてもよい。コストの抑制効果を高めたい場合には、リスク指標が閾値R3より低いユーザについては、因果スコアにかかわらず、優先度の低いオペレーション条件又は優先度が中程度のオペレーション条件を決定し、出力することが好ましい(
図14における破線で示された領域ULは、因果スコアがC2以上であるが、リスク指標がR3未満であるため、優先度の高いオペレーション条件とはならない)。このため、効果推定部25は、リスク指標が閾値R3以上であると推定されたユーザについて、オペレーションの効果を推定し、リスク指標が閾値R3未満であると推定されたユーザについて、オペレーションの効果を推定しない(推定処理をオミットする)こととしてよい。
【0076】
また、優先度の低いオペレーション条件が出力されるケースについて説明する。
ケース(5):条件出力部28は、因果スコアが閾値C1未満であるユーザの少なくとも一部について、オペレーションの効果が低いため、優先度の低いオペレーション条件を決定し、出力する。
ケース(6):また、条件出力部28は、リスク指標が閾値R1未満であるユーザの少なくとも一部について、リスクが低いため、優先度の低いオペレーション条件を決定し、出力する。
ケース(7):特に、条件出力部28は、因果スコアが閾値C1未満であり且つリスク指標が閾値R1未満であるユーザ(
図14における破線で示された領域LLを参照)については、最も優先度の低いオペレーション条件を決定し、出力してよい。
ケース(8):但し、条件出力部28は、推定されたリスク指標が閾値R4以上であるユーザについては、そもそもデフォルトとなる可能性が高いため、低い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力しなくてもよい。むしろ、リスク指標が閾値R4以上であるユーザについては、因果スコアにかかわらず、優先度の高いオペレーション条件を決定し、出力することが好ましい(
図14における破線で示された領域LRは、因果スコアがC1未満であるが、リスク指標がR4以上であるため、優先度の低いオペレーション条件とはならない)。
【0077】
以上より、
図14に示された例では、高リスクユーザ、及び中リスク且つ高効果ユーザについてのオペレーション優先度を上げ、低リスクユーザ、及び中リスク且つ低効果ユーザについてのオペレーション優先度を下げることとなる。なお、上記説明した例では閾値に基づいて領域を区切り、1の領域に属するユーザに対して共通のオペレーション条件が決定される例について説明したが、1の領域においてユーザ毎又はユーザ毎に異なるオペレーション条件が設定されてもよい。例えば、同一の領域内であっても、因果スコア及び/又はリスク指標の高低に応じてグラデーションを持たせるようにオペレーション条件を異ならせることとしてもよい。
【0078】
なお、オペレーションセンター管理システム3によるオペレーションの量(オペレーションの総数やオペレーションの対象となるユーザ数)は、上記説明した閾値を調整することで変更することが可能である。例えば、閾値C1、閾値C2、閾値R1及び閾値R2の少なくとも1つ以上を下げることでオペレーションの量を増やすことが可能であり、また、閾値C1、閾値C2、閾値R1及び閾値R2の少なくとも1つ以上を上げることでオペレーションの量を減らすことが可能である。
【0079】
<処理の流れ>
次に、本実施形態に係る情報処理システムによって実行される処理の流れを説明する。なお、以下に説明する処理の具体的な内容及び処理順序は、本開示を実施するための一例である。具体的な処理内容及び処理順序は、本開示の実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0080】
図15は、本実施形態に係る機械学習処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、オペレーションセンター管理システム3の管理者によって指定されたタイミングで実行される。
【0081】
ステップS101及びステップS102では、効果推定モデルが生成及び/又は更新される。機械学習部27は、オペレーションセンター管理システム3又はクレジットカード管理システム5において過去に蓄積された、ユーザの属性データ、オペレーション履歴データ、及びクレジットカード利用額の支払履歴データに基づいて、複数のユーザ属性の夫々について因果スコアを算出し、ユーザ属性と因果スコアとの組み合わせを含む教師データを作成する(ステップS101)。ここで、オペレーション履歴データは、ユーザ毎に、当該ユーザに対してオペレーションが行われたか否かを把握することが可能なデータを含み、支払履歴データは、ユーザ毎に、当該ユーザのクレジットカード利用額の支払有無(デフォルトの有無)を把握することが可能なデータを含む。そして、機械学習部27は、作成された教師データを機械学習モデルに入力し、効果推定部25による効果推定に用いられる機械学習モデル(効果推定モデル)を生成又は更新する(ステップS102)。その後、処理はステップS103へ進む。
【0082】
ステップS103及びステップS104では、リスク推定モデルが生成及び/又は更新される。機械学習部27は、オペレーションセンター管理システム3又はクレジットカード管理システム5において過去に蓄積された、ユーザの属性データ、オペレーション履歴データ、及びクレジットカード利用額の支払履歴データに基づいて、複数のユーザの属性の夫々についてリスク指標を算出し、ユーザ属性とリスク指標との組み合わせを含む教師データを作成する(ステップS103)。そして、機械学習部27は、作成された教師データを機械学習モデルに入力し、リスク推定部26によるリスク推定に用いられる機械学習モデル(リスク推定モデル)を生成又は更新する(ステップS104)。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0083】
図16は、本実施形態に係るオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、毎月の予め設定されたタイミングで実行される。より具体的には、処理の実行タイミングには、クレジットカード利用額の支払い規定日より後で、且つ未払いユーザへのオペレーション実行予定日より前のタイミングが設定される。なお、ここでは対象ユーザを含む複数のユーザについてのグラフデータが既に生成されており、また、各機械学習モデルが既に学習済であることとする。
【0084】
ステップS201では、ユーザがアクションを実行しない蓋然性に基づくリスクが推定される。リスク推定部26は、複数のユーザの夫々について、ステップS104で生成及び/又は更新されたリスク推定モデルに対して対象ユーザに係る1又は複数のユーザ属性データを入力し、出力として、対象ユーザに対応するリスク指標を取得する。その後、処理はステップS202へ進む。
【0085】
ステップS202では、属性データに基づいて因果スコアを取得可能か否かが判定される。情報処理装置1は、対象ユーザについて、当該対象ユーザに対応する因果スコアを効果推定モデルから取得することが可能な程度のユーザ属性データがシステムから取得可能か否かを判定する。当該判定は、単純に属性データの数に基づいて判定されてもよいし、因果スコアの取得のために重要な所定の1又は複数の種類の属性データの有無に基づいて判定されてもよい。また、因果スコアの取得のために重要な所定の1又は複数の種類の属性データは、効果推定モデルを用いた過去の効果推定の結果の精度に基づいて決定されてもよい。因果スコアの推定に十分な属性データをシステムから取得可能であると判定された場合、処理はステップS203へ進む。
【0086】
ステップS203では、対象ユーザに対するオペレーションの効果が推定される。効果推定部25は、複数のユーザの夫々について、ステップS102で生成及び/又は更新された効果推定モデルに対して対象ユーザに係る1又は複数のユーザ属性データを入力し、出力として、当該対象ユーザに対応する因果スコアを取得する。その後、処理はステップS207へ進む。
【0087】
一方、ステップS202において、因果スコアの推定に十分な属性データをシステムから取得出来ないと判定された場合、処理はステップS204へ進む。
【0088】
ステップS204及びステップS205では、参照ユーザが特定され、参照ユーザに対するオペレーションの効果が推定される。参照ユーザ特定部22は、グラフデータを参照し、対象ユーザに対応するノードデータ50と明示的リンク又は黙示的リンクで接続されているノードデータ50に対応する1又は複数の他のユーザを、参照ユーザとして特定する。ここでは、例えば、対象ユーザと同一世帯に居住する親子関係、夫婦関係又は友達関係を有するユーザが、参照ユーザとして特定される(ステップS204)。参照ユーザが特定されると、効果推定部25は、参照ユーザについて、ステップS102で生成及び/又は更新された効果推定モデルに対して参照ユーザに係る1又は複数のユーザ属性データを入力し、出力として、当該参照ユーザに対応する因果スコア(参照因果スコア)を取得する(ステップS205)。その後、処理はステップS206へ進む。
【0089】
ステップS206では、参照ユーザに対するオペレーションの効果に基づいて、対象ユーザに対するオペレーションの効果が推定される。効果推定部25は、対象ユーザについて、ステップS205で取得された参照因果スコアを含むデータに基づいて、当該対象ユーザに対応する因果スコアを取得する。ここで、効果推定部25が、参照因果スコアを対象因果スコアとして推定してもよいし、複数の参照ユーザについて推定された複数の参照因果スコアを含むデータに基づいて対象因果スコアを推定してもよいことは、上記説明した通りである。その後、処理はステップS207へ進む。
【0090】
ステップS207では、オペレーション条件が決定され、出力される。条件出力部28は、ステップS203又はステップS206で取得された対象ユーザの因果スコアと、ステップS201で取得された対象ユーザのリスク指標とに基づいて、オペレーション条件を決定し、オペレーションセンター管理システム3に対して出力する。本実施形態において、条件出力部28は、因果スコア及びリスク指標に対して予めマッピングされたオペレーション条件を特定し、出力する。但し、オペレーション条件の決定方法は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、オペレーション条件は、因果スコア及びリスク指標を所定の関数に入力して算出された値を含むものであってもよい。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0091】
オペレーション条件が出力されると、オペレーションセンター管理システム3は、オペレーション条件に従って対象ユーザへのオペレーションを管理し、オペレーション端末は、オペレーションセンター管理システム3によって出力された指示に従ってオペレーションを実行する。
【0092】
<効果>
本実施形態によれば、ユーザ毎のオペレーションの効果及びリスクに応じたオペレーション条件の優先度を設定し、効果やリスクの低いユーザへのオペレーションを抑制することで、債権の回収率を下げることなく、オペレーションに係るコストを抑制することが可能となる。即ち、本開示によれば、ユーザに所定のアクションを促すオペレーションの効果を減じさせることなく、オペレーションのためのコストを抑制することが可能となる。また、本実施形態によれば、効果やリスクの高いユーザへのオペレーションを増やすことで、コストを抑制しつつ債権の回収率を上げることも期待出来る。
【0093】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(1)>
上記説明した実施形態では、オペレーション条件出力処理の流れを、
図16を参照して概略的に説明したが、より具体的には、オペレーション条件出力処理は、以下のように処理されてよい。
【0094】
図17は、本実施形態において、
図14を参照して説明したケース(1)から(4)の判定手法が採用された場合のオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。
図17に示す例によれば、ある属性を有するユーザについてリスク推定部26によって算出(ステップS301)されたリスク指標が閾値R3未満である場合に(ステップS302のNO)、効果推定部25による因果スコアの算出が省略され、優先度が低い(又は、中程度の)オペレーション条件が決定され、出力されることがわかる(ステップS303)。
【0095】
当該ユーザについて算出されたリスク指標が閾値R3以上である場合(ステップS302のYES)、因果スコアが算出され(ステップS304)、因果スコアが閾値C2以上且つリスク指標が閾値R2以上である場合(ステップS305のYES)には優先度が最も高いオペレーション条件が決定、出力され(ステップS306)、因果スコアが閾値C2以上又はリスク指標が閾値R2以上である場合(ステップS307のYES)には優先度が高いオペレーション条件が決定、出力される(ステップS308)。なお、因果スコアが閾値C2未満且つ閾値R2未満である場合、優先度が中程度のオペレーション条件が決定、出力される(ステップS309)。
【0096】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(2)>
図18は、本実施形態において、
図14を参照して説明したケース(5)から(8)の判定手法が採用された場合のオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。
図18に示す例によれば、ある属性を有するユーザについてリスク推定部26によって算出(ステップS401)されたリスク指標が閾値R4以上である場合に(ステップS402のNO)、効果推定部25による因果スコアの算出が省略され、優先度が高い(又は、中程度の)オペレーション条件が決定され、出力されることがわかる(ステップS403)。
【0097】
当該ユーザについて算出されたリスク指標が閾値R4未満である場合(ステップS402のYES)、因果スコアが算出され(ステップS404)、因果スコアが閾値C1未満且つリスク指標が閾値R1未満である場合(ステップS405のYES)には優先度が最も低いオペレーション条件が決定、出力され(ステップS406)、因果スコアが閾値C1未満又はリスク指標が閾値R1未満である場合(ステップS407のYES)には優先度が低いオペレーション条件が決定、出力される(ステップS408)。なお、因果スコアが閾値C1以上且つ閾値R1以上である場合(ステップS407のNO)、優先度が中程度のオペレーション条件が決定、出力される(ステップS409)。
【0098】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(3)>
上記説明した実施形態では、オペレーション条件を決定するための評価軸として、オペレーションの効果を示す因果スコアとリスクを示すリスク指標の2つの軸を用いる例について説明したが、本開示に係る技術において、オペレーション条件を決定するための評価軸には少なくともオペレーションの効果が含まれていればよく、その他の評価軸が採用されてもよいし、また、3以上の評価軸が採用されてもよい。例えば、(1)因果スコアと組み合わせられる指標にリスク指標以外の第三の指標が採用されてもよいし、(2)因果スコア及びリスク指標に加えて第三の指標が採用されてもよいし、(3)架電の因果スコア、メッセージ送信の因果スコア、及びリスク指標の3つの軸が採用されてもよい。
【0099】
例えば、オペレーション条件は、対象因果スコア及び参照因果スコアを参照して(リスク指標を参照せずに)設定されてもよい。この場合、条件出力部28は、対象因果スコアがより高いユーザに対するオペレーション、及び参照因果スコアがより高いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。また、条件出力部28は、対象因果スコアがより低いユーザに対するオペレーション、及び参照因果スコアがより低いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。
【0100】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(4)>
上述の通り、本開示に係る技術において、オペレーション条件を決定するための評価軸には3以上の評価軸が採用されてもよい。本バリエーションにおいて、条件出力部28は、効果(因果スコア)として、対象ユーザについて推定された効果(対象因果スコア)及びリスク指標に加えて、参照ユーザについて推定された効果(参照因果スコア)についても参照して、対象ユーザに対するオペレーションに関する条件を出力する点で、上記説明した実施形態に係る条件出力部28と異なる。即ち、本バリエーションに係る条件出力部28は、条件出力部28は、対象因果スコア及び参照因果スコアを含むデータに基づいて、対象ユーザに対するオペレーション条件を出力する。
【0101】
本バリエーションにおいても、条件出力部28は、上記説明した実施形態と同様、原則として推定された効果がより高いユーザに対するオペレーション、及び推定されたリスクがより高いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力し、推定された効果がより低いユーザに対するオペレーション、及び推定されたリスクがより低いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。
【0102】
本バリエーションにおいて、基本的に、条件出力部28は、対象因果スコアがより高いユーザに対するオペレーション、参照因果スコアがより高いユーザに対するオペレーション、及び推定されたリスクがより高いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。また、条件出力部28は、対象因果スコアがより低いユーザに対するオペレーション、参照因果スコアがより低いユーザに対するオペレーション、及び推定されたリスクがより低いユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い優先度が与えられるようなオペレーション条件を出力する。
【0103】
その上で、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、参照ユーザについて推定された効果(参照因果スコア)がより高い対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、当該参照因果スコアを参照しない場合に決定される優先度より高い優先度が与えられるような条件を出力する。この際、条件出力部28は、参照因果スコアがより高いか否かを判定するために、参照因果スコアと対象因果スコアとを比較し、参照因果スコアが対象因果スコアに比べてより高い場合に、当該対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、参照因果スコアを参照しない場合に決定される優先度より高い優先度が与えられるような条件を出力することとしてもよい。
【0104】
更に、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、上記オペレーション条件の設定方法に代えて、又は上記オペレーション条件の設定方法に加えて、参照ユーザについて推定された効果(参照因果スコア)がより低い対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、当該参照因果スコアを参照しない場合に決定される優先度より低い優先度が与えられるような条件を出力してもよい。この際、条件出力部28は、参照因果スコアがより低いか否かを判定するために、参照因果スコアと対象因果スコアとを比較し、参照因果スコアが対象因果スコアに比べてより低い場合に、当該対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、参照因果スコアを参照しない場合に決定される優先度より低い優先度が与えられるような条件を出力することとしてもよい。
【0105】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(5)>
上記オペレーション条件出力処理のバリエーション(4)において説明した、対象因果スコアに加えて参照因果スコアについても参照するオペレーション条件の設定は、より具体的には、例えば以下に説明する態様で実装されてよい。但し、本バリエーションは、バリエーション(4)の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0106】
図19は、本バリエーションにおいて推定される対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係を示す図である。本バリエーションにおいて、条件出力部28は、推定された対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標の夫々について予め設定された閾値とを比較し、比較の結果に応じて、オペレーション条件を決定し、出力する。
図19に示す例においても、上記説明した実施形態と同様、閾値C1、C2、R1、R2、R3及びR4が設定されており、これらの閾値の役割は上記説明した実施形態と同様である。
【0107】
上記説明した実施形態との相違として、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象因果スコアが高効果帯(閾値C2以上)及び低効果帯(閾値C1未満)のいずれでもない第一の範囲内(即ち、閾値C1以上C2未満の中効果帯の範囲内)であり、且つ推定されたリスク指標が高リスク帯(閾値R2以上)及び低リスク帯(閾値R1未満)のいずれでもない第二の範囲内(即ち、閾値R1以上R2未満の中リスク帯の範囲内)である場合(図中の破線矩形で囲われた範囲A1を参照。)、参照因果スコアがより高い(例えば、予め設定された閾値RC2以上)ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるような条件を出力する。換言すれば、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象ユーザの対象因果スコアが中効果帯であると推定された場合であっても、参照ユーザの因果スコアがより高く、対象ユーザのリスク指標が中程度以上に推定されていれば、対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度のオペレーション条件を出力することとしている。
【0108】
また、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象因果スコアが低効果帯であることを判定するための第三の範囲内(閾値C1未満)であり、且つ推定されたリスク指標が高リスク帯(閾値R2以上)及び低リスク帯(閾値R1未満)のいずれでもない第二の範囲内(即ち、閾値R1以上R2未満の中リスク帯の範囲内)である場合(図中の破線矩形で囲われた範囲A2を参照。)、参照因果スコアがより高い(例えば、予め設定された閾値RC2以上)ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度が与えられるような条件を出力する。換言すれば、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象ユーザの対象因果スコアが低効果帯であると推定された場合であっても、参照ユーザの因果スコアがより高く、対象ユーザのリスク指標が中程度以上に推定されていれば、対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より高い優先度のオペレーション条件を出力することとしている。
【0109】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(6)>
上記オペレーション条件出力処理のバリエーション(5)において説明したオペレーション条件の設定方法に代えて、又は上記オペレーション条件出力処理のバリエーション(5)において説明したオペレーション条件の設定方法に加えて、以下に説明するオペレーション条件の設定が行われてもよい。但し、本バリエーションは、バリエーション(4)の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0110】
図20は、本バリエーションにおいて推定される対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係を示す図である。本バリエーションにおいて、条件出力部28は、推定された対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標の夫々について予め設定された閾値とを比較し、比較の結果に応じて、オペレーション条件を決定し、出力する。
図20に示す例においても、上記説明した実施形態と同様、閾値C1、C2、R1、R2、R3及びR4が設定されており、これらの閾値の役割は上記説明した実施形態と同様である。
【0111】
本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象因果スコアが高効果帯(閾値C2以上)及び低効果帯(閾値C1未満)のいずれでもない第一の範囲内(即ち、閾値C1以上C2未満の中効果帯の範囲内)であり、且つ推定されたリスク指標が高リスク帯(閾値R2以上)及び低リスク帯(閾値R1未満)のいずれでもない第二の範囲内(即ち、閾値R1以上R2未満の中リスク帯の範囲内)である場合(図中の破線矩形で囲われた範囲A1を参照。)、参照因果スコアがより低い(例えば、予め設定された閾値RC1未満)ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い(又は中程度の)優先度が与えられるような条件を出力する。換言すれば、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象ユーザの対象因果スコアが中効果帯であると推定された場合であっても、参照ユーザの因果スコアがより低く、対象ユーザのリスク指標が中程度以上に推定されていれば、対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い(又は中程度の)優先度のオペレーション条件を出力することとしている。
【0112】
また、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象因果スコアが低効果帯であることを判定するための第三の範囲内(閾値C1未満)であり、且つ推定されたリスク指標が高リスク帯(閾値R2以上)及び低リスク帯(閾値R1未満)のいずれでもない第二の範囲内(即ち、閾値R1以上R2未満の中リスク帯の範囲内)である場合(図中の破線矩形で囲われた範囲A2を参照。)、参照因果スコアがより低い(例えば、予め設定された閾値RC1未満)ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い(又は中程度の)優先度が与えられるような条件を出力する。換言すれば、本バリエーションにおいて、条件出力部28は、対象ユーザの対象因果スコアが低効果帯であると推定された場合であって、参照ユーザの因果スコアがより低く、対象ユーザのリスク指標が中程度以上に推定されていれば、対象ユーザに対するオペレーションの少なくとも一部について、より低い(又は中程度の)優先度のオペレーション条件を出力することとしている。
【0113】
<オペレーション条件出力処理のバリエーション(7)>
図21及び
図22は、本実施形態において、
図19及び
図20を参照して説明した対象因果スコア、参照因果スコア及びリスク指標と、オペレーション条件との関係が採用された場合のオペレーション条件出力処理の流れを示すフローチャートである。
【0114】
本フローチャートに示す例によれば、ある属性を有するユーザについてリスク推定部26によって算出(ステップS501)されたリスク指標が閾値R3未満である場合に(ステップS501のNO)、効果推定部25による因果スコアの算出が省略され、優先度が低いオペレーション条件が決定され、出力されることがわかる(ステップS503)。また、当該ユーザについて算出されたリスク指標が閾値R4以上である場合に(ステップS504のNO)、効果推定部25による因果スコアの算出が省略され、優先度が高いオペレーション条件が決定され、出力されることがわかる(ステップS505)。オペレーション条件が決定され、出力されると、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0115】
当該ユーザについて算出されたリスク指標が閾値R3以上且つ閾値R4未満である場合(即ち、中程度のリスクである場合)、対象因果スコア及び参照因果スコアが算出される(ステップS506)。そして、算出された参照因果スコアが低効果帯(例えば、閾値RC1未満)であると判定された場合(ステップS507のYES)、優先度が低いオペレーション条件が決定され、出力される(ステップS508)。また、算出された参照因果スコアが高効果帯(例えば、閾値RC2以上)であると判定された場合(ステップS509のYES)、優先度が高いオペレーション条件が決定され、出力される(ステップS510)。
【0116】
当該ユーザについて算出された参照因果スコアが低効果帯及び高効果帯のいずれでもない(換言すれば、中効果帯である)と判定された場合、
図14を参照して説明したものと同様の方法で対象因果スコアに応じたオペレーション条件が決定され、出力される(ステップS511)。即ち、対象因果スコアが閾値C1未満である場合には優先度が低いオペレーション条件が決定、出力され、対象因果スコアが閾値C1以上且つ閾値C2未満である場合には優先度が中程度のオペレーション条件が決定、出力され、対象因果スコアが閾値C2以上である場合には優先度が高いオペレーション条件が決定、出力される。
【0117】
なお、上記説明した例では閾値に基づいて領域を区切ってオペレーション条件が決定される例について説明したが、
図14の説明で上述の通り、同一の領域内においてもユーザ毎又はユーザ毎に異なるオペレーション条件が設定されてもよい。例えば、同一の領域内であっても、因果スコア及び/又はリスク指標の高低に応じてグラデーションを持たせるようにオペレーション条件を異ならせることとしてもよい。
【0118】
<その他のバリエーション>
上記説明した実施形態では、ユーザに対するオペレーションが架電である例について説明したが、ユーザに対するオペレーションの種類は、架電に限定されない。例えば、ユーザに対するオペレーションの種類として、メッセージ送信が採用されてもよい。なお、ここでメッセージ送信のための手段は限定されず、電子メールシステム、ショートメッセージサービス(SMS)、又はソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のメッセージ送受信サービス等が利用されてよい。
【0119】
また、上記説明した実施形態では、1種類のオペレーション(架電)について推定された効果に基づいてオペレーション条件が決定される例について説明したが、オペレーション条件は、複数種類のオペレーション(例えば、架電及びメッセージ送信)の夫々について推定された効果に基づいて決定されてもよい。この場合、効果推定部25は、所定のアクションの実行をユーザに促すための当該ユーザに対する第一のオペレーション(例えば、架電)が、当該ユーザがアクションを実行するか否かに与える第一の効果、及び、所定のアクションの実行をユーザに促すための当該ユーザに対する第二のオペレーション(例えば、メッセージ送信)が、当該ユーザがアクションを実行するか否かに与える第二の効果を推定し、条件出力部28は、推定された第一の効果及び第二の効果に基づいて、ユーザに対するオペレーション条件を出力する。
【0120】
この場合、オペレーションの効果を推定するための機械学習モデルも、オペレーションの種類毎に生成及び更新される。例えば、第一のオペレーションが架電であり第二のオペレーションがメッセージ送信である場合、架電の効果推定用機械学習モデル、及びメッセージ送信の効果推定用機械学習モデルが生成及び更新されてよい。
【0121】
更に、複数種類のオペレーションの夫々について推定された効果に基づいてオペレーション条件が決定される場合、複数種類のオペレーションから、ユーザに対して効果の高い種類のオペレーションが選択されてよい。この場合、条件出力部28は、推定された第一の効果及び第二の効果に基づいて、ユーザに対して第一のオペレーションを行うか又は第二のオペレーションを行うかを含むオペレーション条件を出力する。より具体的には、対象ユーザについて得られた第一の効果(第一のオペレーションに係る因果スコア)及び第二の効果(第二のオペレーションに係る因果スコア)を比較して、因果スコアが高い方の種類のオペレーションを、当該ユーザに対して効果の高い種類のオペレーションとして選択することが出来る。
【0122】
また、上記説明した実施形態では、オペレーションを受けたサブユーザ群のアクション実行率と、オペレーションを受けなかったサブユーザ群のアクション実行率との差分を因果スコアとして用いる例について説明したが、因果スコアには、その他の方法で算出されたものが用いられてもよい。例えば、効果推定モデルの生成及び/又は更新にあたって、機械学習部27は、ユーザの属性毎に、所定の属性を有する複数のユーザのうちオペレーションに対する所定のリアクションを行なったユーザによるアクションの実行率に係る統計量と、複数のユーザのうち所定のリアクションを行わなかったユーザによるアクションの実行率に係る統計量とに基づくスコアを、当該属性を有するユーザに係る因果スコアとして定義した教師データに基づいて、機械学習モデルを作成してもよい。例として、本バリエーションでは、「(ユーザが所定のリアクションを行った場合における債権の回収率)-(ユーザが所定のリアクションを行わなかった場合における債権の回収率)」の式により、因果スコアが算出される。この場合、条件出力部28は、ユーザによるリアクションの有無やその内容等と、リアクションに応じた因果スコアと、に基づきオペレーションに関する条件を出力してよい。このとき、条件出力部28によって出力されるオペレーション条件の優先度の調整は、
図14を参照して説明した因果スコアと優先度との関係を用いて行われてよい。
【0123】
ここで、所定のリアクションは、例えば、架電に対するダイヤルプッシュ等によるユーザの応答、又は架電に対するユーザからの折り返し電話に伴うオペレータとの通話、メッセージに対する返信、メッセージの既読化等である。更に、リアクションの内容として、支払いに対する肯定的な回答や、支払予定日の回答の有無等が考慮されてよい。ユーザによるリアクションが音声によるリアクションであった場合には、ユーザの音声に基づいてユーザの感情等を判定し、リアクションが肯定的であったか否かを判定することも可能である。また、音声に基づいて判定されたユーザの感情等から、次回のオペレーション条件の優先度を調整してもよい。
【0124】
また、オペレーション条件の優先度は、上記以外の要素に基づいて調整されてもよい。例えば、クレジットカード利用の支払い設定がリボ払いや分割払いであるユーザについては、一括払いのユーザに比べてオペレーション条件の優先度を上げてよいし、クレジットカード利用にキャッシングが含まれるユーザについては、キャッシングが含まれないユーザに比べてオペレーション条件の優先度を上げてよい。また、対象ユーザの、クレジットカード以外の取引データ(例えば、クレジットカード利用額引落口座の残高データや、系列銀行における取引履歴データ等)に応じて、オペレーション条件の優先度を調整することも可能である。ここで、条件出力部28は、例えば、クレジットカードの利用条件に基づき、
図14に示される各種スコアと対応する各種閾値を調整してよい。
【0125】
また、上記説明した実施形態では、グラフデータ生成部21、参照ユーザ特定部22、関係性特定部23、関係性強度決定部24、効果推定部25、リスク推定部26、機械学習部27、及び条件出力部28を備える情報処理装置の例について説明したが、これらの機能部は、本開示に係る発明を実施可能な範囲で、その一部が省略されてもよい。
【0126】
例えば、上記説明した実施形態では、参照ユーザの特定又は対象因果スコアの算出にあたってユーザ間の関係性強度(近さスコア)が生成され、また参照されたが、参照ユーザの特定又は対象因果スコアの算出にあたり、近さスコアの生成及び参照は省略されてもよい。この場合、
図2を参照して説明した情報処理装置1の各機能部のうち、関係性強度決定部24は省略されてよい。
【0127】
1 情報処理装置