(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069411
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】自動運転車輌用システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20240514BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/16 F
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038275
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2020146081の分割
【原出願日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2019158961
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597106600
【氏名又は名称】有限会社ヴェルク・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敏夫
(57)【要約】
【課題】自動運転車輌におけるヒューマンファクター問題の解決。
【解決手段】地図座標に関連づけられた地図画像データと、地図座標に関連づけられ且つ運転タスクと関連しない付随データとを記憶するように構成された記憶手段と、地図座標における現在の車輌の位置および状態を定めるための測位手段と、車輌の運転手に対して情報を提示するための情報提示手段と、車輌の自動運転の信頼性を計測するための手段とを含み、情報提示手段は、測定される信頼性に基づいて車輌の運行が運転手の操作を必要としていないと判断される状態にあるときに、地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する地図画像データに、地図座標における現在の車輌の位置に関連する付随データを重ね合わせた情報を、運転手に対して提示するように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の自動運転において使用するためのシステムであって、
地図座標に関連づけられた地図画像データと、前記地図座標に関連づけられ且つ運転タスクと関連しない付随データとを記憶するように構成された記憶手段と、
前記地図座標における現在の車輌の位置および状態を定めるための測位手段と、
車輌の運転手に対して情報を提示するための情報提示手段と、
前記車輌の自動運転の信頼性を計測するための手段と
を含み、
前記情報提示手段は、測定される前記信頼性に基づいて前記車輌の運行が前記運転手の操作を必要としていないと判断される状態にあるときに、前記地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する前記地図画像データに、前記地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する前記付随データを重ね合わせた情報を、前記運転手に対して提示するように構成される
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
さらに
前記車輌の外部の風景を撮影するための撮像手段と、
前記撮像手段により撮影した風景の画像および/または動画に基づいて、前記付随データを作成する編集手段と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記付随データが、前記地図座標に関連づけられる、自然地形地質データ、過去の歴史的地図画像データ、工学技術データ、歴史上の人物もしくは文化のデータ、文学・民話のデータ、観光情報データ、生息する動植物のデータ、および災害対策データからなる群から選択される一種以上を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記付随データが音声を含み、前記情報提示手段が音声発信装置を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記音声発信装置が、前記車輌に搭載されるスピーカーまたは前記運転手が装備するスピーカーである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記運転手のreadiness状態を計測するための手段をさらに含み、前記運転手のreadiness状態が所与の閾値を下回ると判断される場合、前記情報提示手段が情報を提供する際に強調を行うことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記地図画像データが、前記情報提示手段において俯瞰地図、平面地図、または立体地図として表示される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車輌において使用するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に代表されるカーナビゲーションの普及により、車輌の運転には大きな変革が訪れた。さらにその後、車輌の自動運転技術の進展は近年目覚ましく、自動運転レベルのうちレベル3の実用化が目前となっている。レベル3(条件付自動運転)とは、システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対してドライバー(運転手)が適切に対応することが必要なものをいう(非特許文献1参照)。なおレベル3の自動運転車輌は、2020年4月1日施行の改正道路交通法により我が国でも運転が認められるようになっている。
【0003】
しかしレベル3では、人間のドライバーにとっては、運転タスクへの介入をいつ求められるかわからない問題がある。レベル3の自動運転中にはドライバーは言ってみれば「やることがない」、いわば手持ち無沙汰の状態になっている。そこで事故につながりかねない事態が発生し、咄嗟に運転することを求められたとしても、人間のドライバーの脳が追随するにはある程度の時間がかかってしまう。
【0004】
つまり、自動運転から手動運転へと戻される事態というのは一般に一刻を争う緊急なこと(自動運転をする機械の能力を超えること)であると考えられるにもかかわらず、人間の脳の働きを運転以外のタスクから運転タスクへと移行させる(運転引継をさせる)のは緊急に行えないという問題が生得的に存在する。
【0005】
こうしたレベル3の抱える問題は、当該技術分野においては「ヒューマンファクター」に関する問題と称されており、さまざまな解決手段が模索されている。例えば、自動運転システムから人間のドライバーへ運転引継の予告を出す、自動運転中にドライバーへ数字当てゲームなどの視覚に刺激を与えるサブタスクをやらせる、自動運転中にドライバーが眠気を催していると判断されると冷気を吹き付ける、といった手法が提案されている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】自動運転のレベル分けについて、国土交通省、2018年3月19日作成 http://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
【非特許文献2】SIP自動走行システムヒューマンファクター研究開発成果発表シンポジウムにおける講演資料、於ベルサール御成門タワー3Fホール、2019年7月29日開催/公開、国立研究開発法人 産業技術総合研究所主催 https://seminar.tokyotobs-entry.jp/Symposium/ https://web.archive.org/web/20200818144741/https://seminar.tokyotobs-entry.jp/Symposium/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし一般的な人間のドライバーにとっては、上記のような従来の手法で自動運転への介入を強制されるのには不快感を伴う。運転をしないのに運転席に居て手持ち無沙汰になるという不自然な状態に置かれつつも、自身の行動とは関係のない事情によって急に運転タスクへの復帰を求められるというのは、人間のドライバーにとって大きなストレスになりうる。
【0009】
また数字当てゲームのようなサブタスクを強制されるとか、冷気を吹き付けられるとかといった事象は、あくまで自動運転システム側の都合によるものであって、人間のドライバーが抱く心理的不快感を考慮できていない。
【0010】
レベル3自動運転を普及させる上では、上記のヒューマンファクター問題の解決は必須であるにもかかわらず、有力な手立てが見出されていないのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、このような当該技術分野の実情に鑑み、ヒューマンファクター問題を解決できる手段を提案する。すなわち本発明の実施形態では下記態様を提供できる。
【0012】
態様1
車輌の自動運転において使用するためのシステムであって、
地図座標に関連づけられた地図画像データと、前記地図座標に関連づけられ且つ運転タスクと関連しない付随データとを記憶するように構成された記憶手段と、
前記地図座標における現在の車輌の位置および状態を定めるための測位手段と、
車輌の運転手に対して情報を提示するための情報提示手段と、
前記車輌の自動運転の信頼性を計測するための手段と
を含み、
前記情報提示手段は、測定される前記信頼性に基づいて前記車輌の運行が前記運転手の操作を必要としていないと判断される状態にあるときに、前記地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する前記地図画像データに、前記地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する前記付随データを重ね合わせた情報を、前記運転手に対して提示するように構成される
ことを特徴とする、システム。
【0013】
態様2
さらに
前記車輌の外部の風景を撮影するための撮像手段と、
前記撮像手段により撮影した風景の画像および/または動画に基づいて、前記付随データを作成する編集手段と
を含むことを特徴とする、態様1に記載のシステム。
【0014】
態様3
前記付随データが、前記地図座標に関連づけられる、自然地形地質データ、過去の歴史的地図画像データ、工学技術データ、歴史上の人物もしくは文化のデータ、文学・民話のデータ、観光情報データ、生息する動植物のデータ、および災害対策データからなる群から選択される一種以上を含む、態様1または2に記載のシステム。
【0015】
態様4
前記付随データが音声を含み、前記情報提示手段が音声発信装置を含む、態様1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【0016】
態様5
前記音声発信装置が、前記車輌に搭載されるスピーカーまたは前記運転手が装備するスピーカーである、態様4に記載のシステム。
【0017】
態様6
前記運転手のreadiness状態を計測するための手段をさらに含み、前記運転手のreadiness状態が所与の閾値を下回ると判断される場合、前記情報提示手段が情報を提供する際に強調を行うことを特徴とする、態様1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【0018】
態様7
前記地図画像データが、前記情報提示手段において俯瞰地図、平面地図、または立体地図として表示される、態様1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態により、レベル3自動運転のヒューマンファクター問題を解決でき、さらには既存の車輌では実現できなかった新たな運転体験(ユーザーエクスペリエンス)をも提供可能になるという顕著な効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ユニークな包囲光から環境の情報がもたらされる原理を説明する模式図である。
【
図2】観察者の移動により環境の構造の認識が更新されていく原理を説明する模式図である。
【
図3A】本発明のシステムを応用した車両の内部を示す模式図である。
【
図3B】本発明のシステムを応用した別の車両の内部を示す模式図である。
【
図4A】本発明の或る実施形態に係るシステムにおいて用いられる、車輌のフロントガラスを情報提示手段の一部として使う例(ヘッドアップディスプレイとする例)の概要を示す。
【
図4B】本発明の或る実施形態に係るシステムを組み込んだ普通乗用車の運転席付近の構成を示す図である。
【
図4C】本発明の或る実施形態に係るシステムを組み込んだ普通乗用車の車内構成を示す図である。
【
図5】本発明の或る実施形態に係るシステムの概要を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の或る実施形態に係る高次ガイドの原理を説明する概要図である。
【
図7】本発明の或る実施形態に係るシステムにより、実現できるカーナビゲーションの例を示す。
【
図8】本発明の或る実施形態に係るシステムが含む、企画系モジュールの概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
【0022】
(本発明の基本原理とアフォーダンス)
本発明者は、自動運転車輌の利用者と、当該車輌の外部に存在する対象物との空間的な相互関係と、認知に於ける関係とに着目し、本発明を完成させるに至った。
【0023】
アフォーダンス affordanceとは、生態心理学者ジェームズ・J・ギブソンが提唱した概念であり、環境に実在する動物(有機体)がその生活する環境を探索することによって獲得することができる意味/価値であると定義されている。人間などの動物が空間を移動するとき、その周囲の環境の風景はその移動につれて変化していく。これは当たり前のことのように思えるが、そのように変化していく風景とはすなわち、光の刺激を動物の眼が捉えているということに他ならない。それではこの風景に関する情報を与える光はどのように動物の眼にやってくるかを考える。
【0024】
太陽などの光源から放射された光は、大気や水中を通過する際に、微細な塵などに衝突して散乱し、また物体の表面において散乱反射する。この散乱反射光があらゆる方向に大気を満たしていることになる。この状態のことを「照明」と呼び、この照明下の「あらゆるところ」は、これまた「あらゆるところ」からやって来る光に囲まれている。この事実をギブソンは「包囲光」ambient lightと呼んだ。
【0025】
こうした包囲光は、周囲の表面状態(肌理 textureともいう)からの情報を運んでくる。つまり包囲光は、それをとり囲む全方向の表面の状態・レイアウトをぐるりと投影している。したがって地球上のどこの位置であっても、そこにしかない唯一の(ユニークな)光の構造があることになる(
図1参照)。これがつまり、動物が移動するときに、その時々の場所それぞれに対応する別々の風景がその動物の眼に見える理由である。すなわち、動物の移動に伴い、動物が認識する環境の構造も更新されていくのである(
図2参照)。
【0026】
また動物の移動に伴い、その動物は肌理の変化を認識しつづけることになる。移動中に、遠近法の構造の中で遠くのものは近づいてきて拡大されて見え、その近づいてきた肌理は動物の側面・下方を通り抜け、背後へ流れ去る。この間、肌理の中には数多のアフォーダンスが含まれているのである。ここにはアフォーダンスの連鎖がある。この連鎖のうち、奥行方向(動物の進行方向の先)にある環境のアフォーダンスは、一般にはその手前の建物などに遮蔽されて検知できない。しかし移動を続けることで、次々と遮蔽の背後から新たな肌理が出現しアフォーダンスが現れ来たる。
【0027】
これを自動運転車輌のドライバーその他の乗員にあてはめて考えると、乗員にとっては運転席等の窓から見える(包囲光のもたらす)景観を検知して自身の動きを感じつつ、車輌が安全に走る空間を示すアフォーダンス信号を動的に受け取っていることになる。
【0028】
一般に自動運転車輌(の乗員)は空間上を移動又は静止し、その座標から周辺座標にある対象(オブジェクト)を認知する。空間と認知の間には次の原理的関係が成立している。
【0029】
第一に、乗員の座標は、対象(オブジェクト)を眺め認知する潜在的に可能性を持つ空間状況の幾何学的座標範囲(ここは、オブジェクトの特定の構図の光像が存在する、広義のアフォーダンス座標)に相当する。
【0030】
第二に、利用者が意思を働かせて、対象を眺めれば、その時対象の網膜像を経由し、その構図の認知が成立する。
【0031】
例えば、或る特定の山を望み得るというアフォーダンスを持つ場所からは、その特定の(実空間にある)山を、特定の構図で臨み得る。例えばセザンヌのサント・ヴィクトワール山の写生位置を考えてみれば理解可能であろう。
【0032】
こうした原理的関係をベースに、空間座標の情報を利用して、本発明は実現できる。例えば、歴史的な回遊庭園の園路からの景観に価値を与えたデザインは、この座標と認知を結びつける代表例であると言える。
【0033】
そして仮想空間(カーナビゲーション上に表現される空間)についても同様に考えることができる。例えばある空間に居る(移動、走行している)自動運転車輌の乗員(ドライバー等)が、ナビ画面上の地図画像で、特定の対象(車輌の外部に存在する自然地形、例えば山岳、丘陵、岬、入江、峠などや、田園、都市、施設、建築物、その他の景観など)が認知可能な位置座標(空間状況)にあるとき、本発明に係るシステムは、そのドライバー等へその特定の対象に関する情報(データ)を逐次提供できる。さらにこうした対象は、車輌の外部に実際に存在する物体だけにはとどまらず、歴史上の空間や文学作品上などの事物についての情報にも応用できる。そうした情報としては例えば、現在は失われている昔の町並みについてのデータや、昔の地図についてのデータ、その土地にゆかりの人物や文学作品についてのデータ、その土地に関する観光案内、地質、生息動植物、および災害対策(ハザードマップ)に関するデータといったものが挙げられるが、これらに限定はされない。また、その地図で示される地域における産業の沿革、産業に関わった/関わる人・企業についての歴史、およびinnovationの歴史に関するデータも、当該情報に含めてよい。
【0034】
このようなデータ(本明細書では「付随データ」とも称する)を自動運転車輌のドライバー等へ、その車輌の運転状況に応じて与えられることにより、ドライバーは常に現在自身が居る位置(車輌が走行途中の位置)に関する情報を、連続的に摂取できることになる。言い換えれば、自動運転車輌が走行している地点に関連する情報である付随データを、ドライバーで提示することにより、ドライバーの脳はドライバー自身が移動している状況と関連のある情報に曝され続けることになる。つまりそうした付随データが表す情報は、ドライバーが自動運転中は関与できない運転タスクそのものとはリアルタイムな直接関係がなく、しかし自動運転車輌に運ばれているドライバーが認識するアフォーダンス信号とは関係していることになる。
【0035】
まとめると、本明細書でいう付随データとは、従来のカーナビが提供するような運転タスクに直接リアルタイムに関係する情報、例えば天気、道路の渋滞、近隣車輌の走行状況といった情報(本明細書では「操縦ガイドナビ」とも称する)とは区別される。つまり付随データは、運転タスクとは直接的に関係しないが自動運転車輌が走行している地点(地図座標)とは関連する情報であると考えてよい。こうした付随データを利用するナビゲーションのことを、本明細書では「高次ガイドナビ」とも称する。
【0036】
こうした本発明の構成によれば、ドライバーのreadiness状態(当該技術分野において、自動運転における意識の"準備完了"の程度を表す用語)を、常に一定以上に保つことができ、しかもドライバーが退屈して眠気を催すこともない。それにもかかわらずドライバーは、必ずしも操縦空間を注視しつづけなくとも、本システムが提示する情報に触れていれば、readiness状態を維持できるのである。すなわち、自動運転システムから運転引継を要請されたとしても、そのようにreadiness状態が高いままであるドライバーは、不快感を覚えることなく滑らかに運転タスクに移行できる。
【0037】
またこのような本発明の効果は、レベル3のみには限定されず、レベル4、5の自動運転の乗員乗客にも応用可能である。すなわち、上述した非特許文献1に記載されているとおり、レベル4とは高速道路上など特定条件下での完全自動運転であり、レベル5とは特定条件のない完全自動運転のことである。
【0038】
これ等の自動運転中にも、本発明に係る高次ガイドナビ機能をフルに活用して趣味、趣向にあわせて多くの領域の時空間劇場効果を享受可能としてもよい。
【0039】
例えば、地域を限定した(すなわち、特定条件下での)レベル4自動運転における本発明の活用も想定できる。既に実用化計画されつつあるような鉄道駅からフェリー乗り場に到るまでの短距離の自動運転バスの走行中において、本発明に係る高次ガイドナビの機能を用い、走行経路の周辺の景観や歴史をその自動バスの乗員へとタイムリーに紹介してもよい。また、離島あるいは山間部などの生活支援用の自動運転バスにおいても、同様に本発明を用いて簡単な郷土の歴史ガイドなどを乗員へ週替わりで提供サービスするようにしてもよい。またそうした自動運転バスを観光用途に供し、本発明に係る高次ガイドナビの機能を活用して、観光案内の質を高める効果も期待できる。このように、自動運転の車輌(バスなどの大型車輌も含む)の乗員・乗客に対して、地図情報と付随データを重ね合わせて提供することで、退屈をすることなく走行中の地域に関する学習を行うことも可能になる。
【0040】
本出願の後、近く発売されることになるレベル3自動運転車輌の実用期間中はとても大切な時期である。この貴重な期間に本発明を活用し、運転手の散漫を回避しつつ高次ナビガイド機能の活用を広めることで、多くの高次ガイドナビ対応車が走ることになろう。そうすればその空間データ検出機能から各地の自動運転車輌の運行データ・車輌内の乗員の行動データなどの実態が蓄積してゆき、それに基づいて機械学習(ディープラーニングなど)を進めることで、更により高度なシステムの開発が促進され、結果的に自動運転なるサービスの魅力を市場に示してゆくシナリオが生まれると考えられる。このように、本出願から数年後に控えるレベル4、さらにその先のレベル5の実用投入に向けて、本発明をより広範に利用していけることが理解できるだろう。
【0041】
図3Aに示す例では、乗用車(この図では一般乗用車を例示しているが、大型車輌その他の特殊車輌にも応用可能である)の運転席の模式図を示す。この例では、高次ガイドナビを効率的に使用できるように、車輌の前部中央に大型のディスプレイを配置し、運転席から助手席にかけて情報を閲覧しやすくなっている。この大型ディスプレイは一体型であってもよいし、複数のディスプレイを並べて配置していてもかまわない。こうした構成により、高次ガイドナビの多様なサービスコンテンツが提供された際に、乗員は情報を取得しやすくなるのでその理解が促され楽しみが増すと共に、乗員のreadiness状態の推移を本発明に係るシステムによって容易に認識可能となる上、上述した改正道路交通法に沿って自動運行装置の状態把握、操作引継が容易にできるようにもなる。
【0042】
このように本発明を活用することで、人と車の協調関係を密にしつつ、運転の楽しみを増し、知識を深化し、やがて新しい移動文明を築くことに繋がる。本発明に係る高次ガイドナビを備えた優れた自動運転車輌は大地形を移動しつつ、その視界を広げ、人の脳内の意識を拡張させることができる。後述する
図5、
図6の説明と併せて理解されたい。
【0043】
また
図3Bには、本発明の別の実施形態に係る、乗用車車内の模式図を示す。この例では、
図8などに関して後述する「企画系」モジュールを組み込んだ高次ガイドナビシステム(高次企画プロジェクトシステムとも称する)を適用している。この例では、
図3Aの例で得られる効果に加えてさらに、乗用車が移動しているその現地での調査・撮影データを表示したり、企画のシミュレーションを提示したりすることができる。また、乗用車内をリモート会議を行う場としても活用可能である。これにより、いわば時空間スタディーが効率化されるという効果がある。
【0044】
図3Aまたは
図3Bの例を応用して、大型車輌に適用する場合、その大型車輌の運転手に提示されている情報は、乗客にも同様に提示できるのが理解できるだろう。そうした運転手および乗客への情報の提示は、各自の個別ディスプレイを介して行ってもよいし、あるいは車内の天井面・壁面・窓の一部または全体を覆うように設置された大型ディスプレイ(連続ディスプレイ)を使って行ってもよい。
【0045】
一方従来のように、ドライバーが運転タスクそのものと関係する情報だけをカーナビから提供されたとしても、自動運転中のドライバーは運転タスクに関与していない/関与できないのであるから、なにより退屈であるし、readiness状態の維持には却って逆効果である。一般に人間は、自身が関与できないものについて興味を維持しつづけるのは難しい。
【0046】
また従来のように、運転タスクともアフォーダンス信号とも無関係な情報(テレビ番組、ゲームなど)をドライバーが提供されたとしても、やはりreadiness状態を維持できないのは既に述べたとおりである。
【0047】
本発明の実施形態に係るシステムでは、上述した従来技術の欠点を克服でき、さらに優れたユーザーエクスペリエンスをもたらせる効果も奏する。すなわち、自動運転時代に初めて運転から解放されたドライバーは、車外の空間へ自由にアクセスできるようになり、その空間に満ちた素晴らしい価値群を、楽しみつつ学ぶという経験が得られる。このようなユーザーエクスペリエンスは、これまでの自動車分野では未踏のものであり、いわば時空を超えた車の外と内を共通の動く舞台とする新時代の時空間劇場の創造であると言える。
【0048】
(自動運転システムの基本構成)
本発明の実施形態に係るシステムには、記憶手段と、測位手段と、情報提示手段と、車輌の自動運転の信頼性を計測するための手段とが含まれてよい。
【0049】
記憶手段はコンピュータやカーナビゲーションシステム(カーナビ)などが用いるストレージであってよく、地図座標に関連づけられた地図画像データと、付随データとを記憶するように構成される。ここで上述したように付随データとは、地図座標に関連づけられるが、運転タスクとは関連しない情報に関する。
【0050】
地図画像データとしてはカーナビなどのナビゲーションシステムが任意に使用でき、プロセッサにより処理されると例えば俯瞰地図、平面地図、または立体地図などとして表示できるものである。なお立体地図としては、ホログラム、3D表示用ディスプレイ、3Dプリンタなどの手段を使って表示できる立体的な地図が含まれるがこれらに限定はされない。
【0051】
付随データは上記地図座標に関連づけられる情報に関し、例えば自然地形地質データ、過去の歴史的地図画像データ、工学技術データ、歴史上の人物もしくは文化のデータ、文学・民話のデータ、観光情報データ、生息する動植物のデータ、および災害対策データなどが挙げられる。さらに付随データとして、後述する「企画案 innovation simulation」に関するデータが含まれていてもよい。
【0052】
地質情報データとしては、地質学や地理学に関するデータが含まれてよく、例えば地層構造や火山・河川・湖沼といった大地形や中地形の存在についてのデータが挙げられる。例えば、自動運転車輌がフォッサマグナの西縁(糸魚川-静岡構造線)にさしかかったことを本システムが判断して、フォッサマグナに関する情報をドライバーへ提示できる。
【0053】
過去の歴史的地図画像データとしては、いわゆる古地図のほか、文学や美術作品の舞台となった地図についてのデータも含めてよい。例えば、『東海道中膝栗毛』の道程をなぞる地図についてのデータであってもよい。自動運転車輌が走行している地点がそれらの作品の舞台になった地点に該当することを本システムが判断し、ドライバーへそれに関する情報を提示可能である。
【0054】
工学技術データとしては、建築、土木、橋梁、道路などの工学に関するデータが含まれてよい。例えば、自動運転車輌が瀬戸大橋に入ったこと、または瀬戸大橋をドライバーが視認できる位置に自動運転車輌が居ることを本システムが判断し、瀬戸大橋に関する歴史、橋梁構造、関係する自治体などに関する情報をドライバーへ提示してもよい。
【0055】
歴史上の人物もしくは文化のデータとしては、土地に縁の人物や文化に関するデータを含めることができる。例えば、自動運転車輌が桜田門に近づいたことを本システムが判断して、井伊直弼に関するデータをドライバーへ提示するようにしてもよい。
【0056】
文学・民話のデータとしては、土地に縁の文学や民話(またはそれらに関する映画や漫画なども含む)に関するデータを含められる。例えば、自動運転車輌が八甲田山(中地形の例)をドライバーが視認できる位置に自動運転車輌が居ることを本システムが判断し、新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』に関する情報(書誌やレビューなど)をドライバーへ提示するようにできる。
【0057】
観光情報データとしては、その地域の観光、旅行、物産などに関するデータが含まれてよい。例えば自動運転車輌が茨城の五浦六角堂が建つ海岸近くにさしかかったこと、または五浦六角堂をドライバーが視認できる位置に自動運転車輌が居ることを本システムが判断して、その観光案内(入場可能時間や入場料金に関する情報など)をドライバーへ提示するようにしてもよい。あるいは例えば、五浦六角堂を乗員はまだ視認できないがその近傍であるような地点に自動運転車輌が近づいたことを本システムが判断して、岡倉天心に関する情報を乗員へと提示するようにしてもよい。
【0058】
生息する動植物のデータとしては、野生動植物のほか、牧場、農場などの家畜や農作物に関するデータを含めてよい。例えば自動運転車輌が広島県尾道市の漁港付近にさしかかったこと、または漁港をドライバーが視認できる位置に自動運転車輌が居ることを本システムが判断して、その漁港で採れるオコゼなどについての情報をドライバーへ提示するようにしてもよい。
【0059】
災害対策データとしては、その地域に関連する地震、洪水、落石、地滑りなどに関する情報が含まれてよい。例えば過去に歴史的な災害に見舞われた地域の記念碑をドライバーが視認できる位置に自動運転車輌が来たことを本システムが判断して、その災害と記念碑についての情報をドライバーへ提示するようにできる。
【0060】
付随データは視覚的な画像(静止画、動画)には限られず、音声情報を含んでもよい。また、何らかのセンサーや送風手段などを介して、嗅覚、触覚、味覚に関する情報を含めることも可能である。
【0061】
本システムに含まれる測位手段は、地図座標における現在の車輌の位置を定めるものであり、カーナビが使用できるGPSや準天頂衛星(QZS)システムなどであってよいが、これらに限定はされない。
【0062】
本システムに含まれる情報提示手段は、車輌の運転手に対して情報を提示するためのものであればよく、例えばディスプレイ(カーナビのモニター、テレビモニター、携帯端末の画面など)であってもよい。あるいは、自動運転車輌の窓または壁に対して、情報を投影するプロジェクターであってもかまわない。そうしたプロジェクターを窓に対して使う場合、窓の外に見える流れる風景に、情報を直接重ね合わせるようにもできる効果が得られる。この場合、窓の外の風景が地図画像データを反映するデータとして扱われる(地図画像データを兼ねる)と考えてもよい。あるいはそうした場合、地図画像データと窓の外の風景を併用して、付随データを重ね合わせるために本システムが使用してもよい。
【0063】
図4Aには、車輌のフロントガラスを情報提示手段の一部として使う例(ヘッドアップディスプレイとする例)の概要を示した。この実施形態に係るヘッドアップディスプレイは、フロントガラスに対してプロジェクターが情報を投影できるプロジェクターと、ドライバーの位置、視線などを感知するための乗員位置センサと、当該フロントガラスの外の景観を撮影するための撮像手段とを含んでよい。そうした撮像手段(カメラなど)が車外の景観を撮影し、コンピュータ手段によって画像処理を行って、上述したように地図画像データとの対応を取って、景観中の地形等(山など)が地図中のどこの座標に対応するかを定めることができる(景観のアフォード点の景観を得る)。そして地図中の座標と関連づけられたその山等に、その山等に関する付随データ(山の名称など)を関連づけることができる。
【0064】
また乗員位置センサは、ドライバーなどの乗員の視線を、乗員の姿勢や身体的特徴などから計算し、その眼に見えている景観をシミュレートできる。そしてプロジェクターは、乗員が見ているはずの景観に付随データを重ね合わせるように投影できる。好ましくは、車輌の運行や乗員の姿勢変化に応じて、プロジェクターの投影を自動補正してもよい。
【0065】
車輌の自動運転の信頼性を計測するための手段としては、当該技術分野において知られる対人・対物センサー、レーダー、ライダー、V2X(vehicle to X)などの手段が含まれてよい。またさらに当該手段が、操縦制御系を統括したものであってもよい。こうした手段により、自動運転システムは自動運転と手動運転を切り換えるべきタイミングを知ることができる。例えばそうした信頼性の程度を、グラフや数値などを以って上記の情報提示手段に表示させてもよい。
【0066】
そうして測定される信頼性に基づいて、車輌の運行がドライバーの操作を必要としていないと判断される状態(すなわち、自動運転状態)にあるとき、地図座標における現在の車輌の位置に関連する地図画像データに、地図座標における現在の車輌の位置に関連する付随データを重ね合わせた情報が、情報提示手段を介してドライバーへと提示される。
【0067】
或る実施形態では、システムがさらに車輌の外部の風景を撮影するための撮像手段(カメラなど)を有してもよい。またその撮像手段により撮影した風景の画像および/または動画に基づいて、付随データを作成する編集手段(コンピュータソフトウェアなど)を有してもよい。そうした編集手段によって、データベースに蓄積された情報を加工・編集して自動的に付随データを生成できる。
【0068】
例えば撮像手段から得られた風景の画像を、対応する自動運転車輌の位置や航跡に関連づけて、コンピュータプロセッサが行う機械学習を通じて分類し、地図画像データ上に重ね合わせられる付随データを生成するようにしてもよい。そうした撮像手段による風景画像の取得は、連続的であるのが好ましいが、間欠的・非連続的であってもよい。
【0069】
或る実施形態では、自動運転車輌に乗るドライバーが、付随データに関連づけられた特定の風景を視認できるかどうかの判断は、地図画像データに基づいて行ってよい。これは例えば地図画像データ中に、存在する地形や起伏等の標高、形状、またはその他の適切なジオメトリに関するデータを含め、ドライバーの視界をシミュレートするように計算を行うことで可能となる。好ましくは、ドライバーの身体的特徴(身長、眼の位置など)も当該シミュレートの計算に用いる因子としてもよい。
【0070】
別の実施形態では、自動運転車輌に乗るドライバーが、付随データに関連づけられた特定の風景を視認できるかどうかの判断を、上述したような撮像手段により行ってもかまわない。例えばそうした撮像手段をドライバーの眼の近傍に設置し、ドライバー視点からの風景を再現してもよい。あるいは別の手法として、撮像手段とドライバーの眼の位置との相対距離および角度を考慮し、撮像手段(好ましくは複数個の撮像手段)が得る画像を合成して、ドライバー視点からの風景を再現してもよい。
【0071】
或る実施形態では、当該システムがスピーカーなどの音声発信装置を含んでよい。例えば音声データを含む付随データ(の一部)を、そうした音声発信装置から出力するようにしてもよい。スピーカーは、車輌に搭載されるものであってもよいし、ドライバーが装備する携帯型スピーカであってもよい。
【0072】
或る実施形態では、音声発信装置としてスマートスピーカーを採用でき、上記のような音声出力だけでなく、ドライバーその他の乗員からの音声入力を受け付けるようにしてもよい。そうした音声入力により、本システムの操作ができるようにしてもよい。例えばそうしたスマートスピーカーにより、自動運転車輌のナビゲーション先の地点の検索および設定や、表示されるコンテンツの光量や音量の調整などが可能である。さらに、ガイドの専門性のレベルを変更するなどのように、ユーザーの知的レベルに合わせた調整をしてもよい。
【0073】
或る実施形態では、本システムに、ドライバーのreadiness状態を測定する手段が含まれてもよい。そうした手段としては例えば、ドライバーの眼球運動を計測するためのセンサ(カメラなど)、ドライバーの姿勢を計測するためのセンサ、ドライバーの脳波を計測するためのセンサなどが挙げられる。そうした計測の結果から、ドライバーのreadiness状態を評価し、何らかの尺度に基づいて定量化してもよい。そうして定量化されたreadiness状態が、何らかの基準(例えば官公庁や業界団体が定めるであろう基準)に基づいて定められる閾値を下回っていないかを、本システムによって判断できる。また本システムが有する表示手段(上述した情報提示手段であってもよいし別のディスプレイでもよい)に、readiness状態を表示してもよい。そうした表示例としては、数値や、棒グラフ、プログレスバーなどが挙げられるがそれらに限定はされない。
【0074】
或る実施形態では、ドライバーのreadiness状態が所与の閾値を下回ると判断される場合に、情報提示手段が情報を提供する際に強調を付すようにしてもよい。そうした強調としては例えば、情報を視覚的に表示する際のコントラストの強調や光量の増加、または情報を音声で表示する際の音量の増加といったものが挙げられる。
【0075】
図4Bは、本発明の或る実施形態に係るシステムを組み込んだ普通乗用車(普通車)の運転席付近の構成を示す図である。この普通車は任意のレベルの自動運転で運行できるものと考えてよいものとする。(例えばレベル5の自動運転であれば、運転用ハンドルを収納することも可能である旨を、図中に点線で示してある。)
【0076】
図4Bに示す例では、例えば後述する
図5および
図6の*2、*3に対応するように、運転席(コクピット)の周囲の情報提示手段(ディスプレイなど)に情報を提示するようにできる。この例では、右ハンドル車の運転席と助手席とのあいだにまたがるように、複数のディスプレイが並べて配置され、さまざまな情報を運転手(および必要であれば助手席の乗員)へと提示できるようになっている。
【0077】
図4Cは、本発明の或る実施形態に係るシステムを組み込んだ普通乗用車(普通車)の車内構成を示す図である。この普通車は、
図4Bの運転席を備えたものであってもよい。
【0078】
車内の前席(運転席)の周囲には、上記の
図4Aまたは
図4Bで示したような情報提示手段(ディスプレイ)が設置されており、運転手が情報を見ることができる他、所望であれば助手席や後席の乗員(利用者)へも情報を提供可能である。また後席には別途、情報作業デスクが設けられ、そこにも情報提示手段(ディスプレイやモバイルPCなど)を設置できる。前席の情報提示手段と後席の情報提示手段は車内LANや無線通信回線などを用いるネットワークを介して連携して動作でき、運転手含む各乗員が情報共有できる。また、そうしたネットワークには、車外の利用者や、後述する「企画系」の企画者などがリモート接続して情報共有することも可能である。
【0079】
図4Bまた
図4Cに示した例では、車内の各乗員に河段丘群の地質学的特徴に関する情報を提示し共有させられる。すなわち、当該普通車の移動(図中の左から右)に従って、当該普通車に組み込まれている本発明に係る高次ガイドナビシステムが、(地形地質学データベースなどに基づいて)付近の地質学的特徴を付随データとしたナビゲーションを提供できる。そうしたナビゲーションにあたっては例えば
図4Cの下方に示したようなバードビュー映像を提供し、当該普通車の現在位置に重ねて付随データを表示できる。こうすることで、車窓から乗員が直接目視できる景観だけではなく、直接目視できないまたは見えていたとしても知識が無ければ気づけないような地質学的特徴(河成段丘の形成状況など)までもを、情報として提供できるようになる。
【0080】
本発明によってこのような情報提供・共有ができることにより、時空間劇場効果が車内の複数の乗員に適用され、走行中の地域についての分析、計画、企画も可能となるだろう。すなわち、車内スペースそのものが動くリモートオフィスとなり、豊かな自然空間を享受できるテレワーク拠点ともなりえるのである。このような効果は従来技術のカーナビでは為し得なかったものである。
【0081】
また、ある程度の表示面積がある情報提示手段(ディスプレイ)において、情報をどのように表示するかも本発明に係るシステムにより調整可能である。例えば
図4Cの下方に示した映像では、当該普通車が画面の左から右へと動いていることになるので、前席側のディスプレイ群のうち、中央より左側のディスプレイにも車の位置が来るように表示することで、走行空間全体の認識把握をしやすくなる効果が得られる。
【0082】
図5は、本発明の或る実施形態に係るシステムの概要を模式的に示す図である。図の左下に示す操縦空間(*4)は、従来であればドライバーが注視している必要があったものである。自動運転によりその注視は必要でなくなる。本システムによってドライバーが(例えば車輌のフロントガラスを通じて)感知するのは車輌の周囲に広がる全体空間(*1)である。この感知は、ドライバーの視覚系その他の感覚入力(*6a)を介して、ドライバーの脳機能(*6b)により行われる。
【0083】
自動運転を行うシステム(*12)によって車輌が自動運転されるあいだ、その自動運転の信頼性は継続的に測定・評価されつづける(*11)。そして自動運転中には、ドライバーのreadiness状態維持のために、図の左上(*2)に示す高次ガイドナビが機能する。
【0084】
高次ガイドナビは、地図画像データと重ね合わされて表示される。その際、従来技術に係る操縦ガイドナビ(*5)と高次ガイドナビを切り替えて表示するようにしてもよいし、あるいは操縦ガイドナビと高次ガイドナビを重ね合わせてもよい。操縦ガイドナビには上述したようにreadiness状態を定量化したパラメータ(STATUS)を表示してもよいし、自動運転の信頼性を定量化したパラメータを表示してもよい(*5)。
【0085】
また車外の風景(景観)は撮像手段によって連続取得され、高次ガイドナビに使うためのデータの自動生成(*7)にも供される。そうしたデータのすべてが自動編集されてもよいし、あるいはその一部または全部が保存されてオフラインでの編集(*8)に廻されてもよい。そうして作成されたデータを、車輌の現在地点(地図画像データ上の座標)に連動させ(*9)、高次ガイドナビとして表示できる。
【0086】
自動運転をするためのシステムおよび自動運転の信頼性を計測するためのシステム(*13a~13d)からのフィードバックに基づいて、自動運転の信頼性とドライバーのreadiness状態を計測できる(*12b)。自動運転の信頼性が低下した(ドライバーの介入が必要となった)と判断された場合には、運転の引継ぎ要請をドライバーに向けて行い(*11a)、要請が受け入れられると(*11b)、引継ぎを実行できる(*11c)。また、そうしたフィードバック(*12c)に基づいて操縦環境変化を強調し誘導するように(*10)、操縦ガイドナビの出力を調整してもよい。
【0087】
こうした構成は、ドライバーの脳が、高次の思考・行動のプログラムを空間識の上に豊かに形成されていることに基づいて作られている。すなわちドライバーの空間識は、限定された操縦空間識内のダイナミックな操縦プログラムへと容易に遷移できる(*6c)。したがってこの操縦プログラムは、操縦にかかわる基底核ループと連携し、車輌を安全移動空間 safety travel zoneへと導く可能性を高められるのである。
【0088】
図6は、本発明の或る実施形態に係る高次ガイドの原理を説明する概要図である。まず、時間・季節・気象などに基づく包囲光条件(*1)からは、本システムの撮像手段(景観カメラなど)によって、対象物の肌理の情報(アフォーダンス信号)が得られる(*2)。
【0089】
その情報に基づいて、本システムの有するプロセッサは、撮影(*6)された種々の対象物(地形、山、岬、入江など)の画像を(機械学習などにより)分類、認識できる。そうして認識した対象物A、B、…を、空間座標系データベース(地図データベース)から得られる座標データ(*5)に対応させることで、各対象物を幾何学的空間に位置づけたデータを生成できる(*3)。
【0090】
また認識した対象物A、B、…に対し、地図データベースから得られる意味データ(何某の地点には何々山や何々岬がある、というデータ)を関連づける(*4)ことで、それら対象物が何であるのかの認識を行ってもよい。
【0091】
上述のようにしてアフォード空間系(すなわち、車輌からドライバーが見ることができる景観に、意味空間群を配置した空間系を表すデータ)が算出、構築できる(*9)。そうしてアフォード空間系と、車輌の位置を地図上で示すデータ(カーナビゲーションデータ)(*10)とを関連づけて、ドライバーへ提示可能な高次ガイドを作成できる(*8)。
【0092】
アフォード空間系からの出力を高次ガイド自動生成系に渡すと、自動生成系はガイド対象(ドライバーに提示する情報に関する対象)を、車輌の運行に応じて連続的に選択できる(*11a~11b)。ガイド対象は、多層的な時・空間データベース(自然、文化、文学、技術、地形、地質、歴史などに関するデータを対応する地図画像データに重ね合わせたデータベース)から抽出できる(*12)。
【0093】
そうして得られたデータオブジェクトA、B、…をさらに階層化して、存在レベル、知識レベル、感性レベルなどにそれぞれ対応する子オブジェクトを関連づけてもよい。また外部サーバ(*14)から各種のコンテンツ、例えば画像、アイコン、音声、音楽などを受信(*13)して、そうしたデータオブジェクトの編集に用いてもかまわない。
【0094】
そうして得られたデータ、またはそのデータをオフライン編集系(*11c)に渡して得らえた出力データに基づいて、自動再生系は景観の変化(車輌の運行に伴う風景の流れ)に合わせ、高次ガイドの再生(ドライバーへの提示)のタイミングを制御できる(*15)。こうすることで、現実の景観と、ドライバーその他の乗員の意識の流れとを同期できるので、ドライバーのreadiness状態を高く維持しつづけられる。また、ドライバー以外の乗員の知的好奇心も満足させる効果も得られる(*15b)。情報の提示は、ヘッドアップディスプレイ(*16)を介して行ってもよい。
【0095】
車輌の乗員とシステムとのコミュニケーションはインタラクティブ(双方向)なインターフェイス(*7)であってよく、例えばスピーカーやマイクを含んでもよい(*17~19)。
【0096】
図7には、本発明の或る実施形態に係るシステムにより、実現できるカーナビゲーションの例を示した。この例では、東京を出発地点とし、新潟を目的地としている。ルート例は点線で示してある。
【0097】
自動運転車輌に乗ったドライバーは、目的地・ルート設定を通常のカーナビのように行える。本システムからは、ルート全系の紹介を(簡単に)行ってもよい。以下では主に大地形・中地形を対象とする例を考えてある。
【0098】
車輌が出発し、関東平野を通過しドライバーが関東平野を視認できることを本システムが判断すると、関東平野についての特徴(地質学的な特徴など)を高次ガイドとして出力でき、例えば沖積低地の形成史に関する情報を提示できる。
【0099】
浅間山、榛名山、赤城山をドライバーが視認できる地点に車輌が来たことを本システムが判断すると、例えばそれらの山々の火山フロントの構成原理に関する情報を提示できる。
【0100】
そして利根川河段丘群をドライバーが視認できる地点に車輌が来たことを本システムが判断すると、例えばそれら河段丘群の地質学的特徴に関する情報を提示できる。
【0101】
車輌が谷川山地を貫通するトンネル地帯(群馬県付近)に入る/入ったことを本システムが判断すると、例えばトンネル掘削技術に関する情報や、関越トンネルの工事史に関する情報を提示できる。
【0102】
そして越後湯沢や八海山をドライバーが視認できる地点に車輌が来たことを本システムが判断すると、それぞれに関する情報(例えばその地域にまつわる民話に関する情報など)を提示できる。
【0103】
魚沼層と河成段丘群をドライバーが視認できる地点に車輌が来たことを本システムが判断すると、それぞれに関する情報(歴史や地質に関する情報など)を提示できる。
【0104】
そして新潟の沖積低地をドライバーが視認できる地点に車輌が来たことを本システムが判断すると、例えばラクーンの形成に関する情報などを提示できる。
【0105】
本発明の別の実施形態に係るシステムでは、さらに「企画系(innovation simulation)」の情報を提供するモジュール(サブシステム)が含まれていてもよい。本明細書において「企画系」の情報とは、或る地域の都市計画または産業発展に関する情報を指し、いわゆるイノベーションの出自・歴史を解説できる情報のことをいう。
【0106】
図8には、そうした企画系モジュールの概要を示す。こうしたモジュールは例えば、
図6の時・空間データベース(*12)と協働するように併置してよい。
図8では一例として、企画系モジュールがイノベーションにおける命題を大規模系、中規模系、小規模系の三階層に分けて捉えている。なお
図8では成功例を例示しているが、それには限定されず失敗例を含めてもかまわないことは言うまでもない。
【0107】
大規模系の命題とは、地域全体に関わる、高度なイノベーション型地域開発、スマートシティ開発などを指す。
【0108】
高度なイノベーション型地域開発という命題に関する情報とは例えば、或る地域にまつわる時空間におけるイノベーションについてのデータ(例えば、シリコンバレーにおける半導体とコンピュータハードウェア・ソフトウェアのイノベーションの歴史に関する情報)であってよい。すなわち、或る地域の社会的・文化的基盤(どのような人々がその地域に移り住みどのように起業したのか、など)と、経済的基盤(起業に対してどのような人々からどのように援助されたのか、など)と、地形構造(川や山がどのように配置されていて、それに対してどのような施設がどこに築かれたのか、など)とに基づいて、産業の発展がどのようになされてきたのかについての情報を、企画系モジュールは「大規模系の命題に関するデータ」として保存できる。
【0109】
スマートシティ開発という命題に関する情報としては例えば、電力や水素エネルギーなどの供給網、情報通信網、セキュリティシステム、もしくは自動移動システムの配置とその制御方法が、その地域の都市開発全体とどう関わっているかについての情報が含まれてよい。
【0110】
中規模系の命題とは、地域の一部(地区)の構成に関わる、テレワーク地区開発、河川洪水地区移転計画などを指す。
【0111】
テレワーク地区開発という命題に関する情報としては例えば、テレワークに適した地区をどこにどのように設営したかについての情報が挙げられる。例えば、夏季にも快適なテレワークができるように冷涼な高原にそうした地区を、或る企業または自治体が設営したという情報があってよい。
【0112】
河川洪水地域移転計画という命題に関する情報としては例えば、ハザードマップに基づいて災害リスクが高いと判断される地区の機能を、災害リスクが低いと判断される別の地区へと移転した歴史または移転する計画についての情報が挙げられる。
【0113】
小規模系の命題とは、地域の小さい一部(区画)の構成に関わる、防災対策、自然環境復元計画、ライフライン計画などを指す。それらに関する情報としては例えば、或る高原、住宅地においてどのように上下水道が配置されたか、植林が行われたかなどについての情報が挙げられる。
【0114】
上述したような情報は、
図8でいう「リファランス系」に係る保存手段(サーバ、ストレージなど)に格納できる。これらの情報は特定の地域のものだけに限らず、世界各地の地域に関するデータを体系的に含んでいるものであってよい。
【0115】
「リファランス系」が有するデータと、
図6の時・空間データベース(*12)が有するデータとに基づき、高次ガイドの提供対象となる或る地域(必ずしも「リファランス系」が保存しているデータに関する地域と一致していなくてもかまわないことに留意されたい)に対して、どのように開発を進めることができるかのシミュレーションを提供できる。これを本明細書では「企画案」と称する。例えば、高次ガイドの提供対象となる地域Aにおける河川・山地の配置をデータ化し、「リファランス系」が有する別の地域Bでのデータと統計的に比較することで、地域Bにおいて実際に行われた都市計画を、この地域Aにおいて実現するのであれば、どのようにカスタマイズするべきかをシミュレートできる。このシミュレーションは、現地を、この高次ガイドナビを活用して縦横に移動し評価を加えることで複合的な企画効果を発揮できる。
【0116】
(大型、中型、準中型車輌への応用例)
図3Aおよび
図3Bに示したような構成は、バスなどの大型車輌、マイクロバスなどの中型車輌、バンなどの準中型車輌についても応用可能である。一般にバスなどの大型車輌の運転手はプロであり、将来レベル3自動運転が適応されても、運転手はまず自車の自動走行状態、走行路状態、readiness状態などを監視する職務がある。このため本発明に係るシステムを使用することにより、乗客に提供される高次ガイドナビのサービス状況を全般的に管理し調整などを行うことで、運転手の意識の散漫化を効率的に防ぐことが可能となる。即ち、一般乗用車の運転手が自動運転時に高次ガイドナビを活用しつつ、readiness状態を維持する状況とはやや異なるが、本発明の効果がやはり得られることが理解できるだろう。
【0117】
例えば、バスの運転席の近傍に高次ガイドナビ統合ディスプレイ(またはその複数の集合体)を設置し、情報の統合および管理のために活用されるようにできる。その管理のための操作は運転手が行ってもよいし、遠隔から別の管理者やナビゲーターが行ってもよい。しかも、本発明に係るシステムを活用して、乗客にもコンテンツの提供ができる。乗客席の近傍にそれぞれ、高次ガイドナビ個別ディスプレイおよび音声発信装置を設置して、乗客ごとにパーソナライズされた情報を出力できる。そうしたパーソナライゼーションは例えば、乗客に入力させた情報に基づいて、その乗客の知識、興味、嗜好を解析することで行ってもよいし、あるいはその乗客に関する何らかのデータベースからの入力に基づいて行ってもよい。
【0118】
また、大型車輌の天井面・壁面・窓の一部または全体が大型ディスプレイを構成して、複数の乗客に対してまとめて情報を提供できるようにしてもよい。こうすることで、乗客に劇場で情報を見せられているかのような臨場感(「時空間劇場効果」とも称する)を与えることができる。
【0119】
こうした大型車輌内では、各乗客席を個室(または半個室)にしてもよい。そうすることで、各乗客が集中しやすくなったり、乗客のプライバシー保護に資したり、あるいは感染症予防を図ったりできる。そうした個室(または半個室)の構成にあたっては、防疫用のシールドや空調を用いてもよい。
【0120】
本明細書の開示によれば、以上述べた例以外にも、さまざまな運行ルートや、付随データの組み合わせが考えられることが理解できるだろう。
【0121】
本発明の実施形態では、当該システムを実施できる装置(ハードウェア)、プログラム、および当該プログラムの一部または全部をユーザーが実行可能な形式で格納する製品(任意の媒体、搬送波、モジュールなど)も提供できる。本発明の実施形態に係るシステムは、一体型であってもよいし分散型であってもよい。分散型である場合、システム外のリモートリソース(サーバなど)と通信することで計算処理を行うようにしてもよい。
【0122】
以上述べてきたとおり、本発明では種々のデータベースを活用できる。特に国土基盤地図情報などの地形、高度、空中写真、地質分布などが体系化された貴重なデータベースを使用できることは、本発明の優れた点である。従来はこうしたデータベースは机上で用いるものであったが、本発明では実際に現地・現場において、移動する車内や移動車オフィス内にて使用できる。本発明に係るシステムによって、検出される景観などの種々の表現と併せて、そうしたデータベースに基づいて体験を空間軸、時代軸とともに提供可能である。したがって本発明によってユーザーは、より複合的な知識体系を取得でき、あらたな愉しみや感動、創造を生み出すと思考する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の自動運転において使用するためのシステムであって、
地図座標に関連づけられた地図画像データと、前記地図座標に関連づけられ且つ運転タスクと関連しない付随データとを記憶するように構成された記憶手段と、
前記地図座標における現在の車輌の位置および状態を定めるための測位手段と、
車輌の運転手に対して情報を提示するための第一の情報提示手段と、
車輌の乗員に対して情報を提示するための第二の情報提示手段と、
前記第一の情報提示手段と前記第二の情報提示手段とに動作可能に接続するネットワーク手段と、
前記車輌の自動運転の信頼性を計測するための手段と
を含み、
前記第一の情報提示手段は、測定される前記信頼性に基づいて前記車輌の運行が前記運転手の操作を必要としていないと判断される状態にあるときに、前記地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する前記地図画像データに、前記地図座標における現在の前記車輌の位置に関連する前記付随データを重畳した情報を、前記運転手に対して提示するように構成され、かつ、
前記第二の情報提示手段は、前記ネットワーク手段を介して前記第一の情報提示手段と連携して動作可能なように構成される
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
さらに
前記車輌の外部の風景を撮影するための撮像手段
を含み、
前記撮像手段から得られたデータに基づき、前記車輌の外部の風景中の一種以上のオブジェクトがそれぞれ、前記地図座標とどのように対応するかを決定する
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記地図座標および/または前記オブジェクトに対して、複数種の前記付随データを関連付けできるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記地図座標および/または前記オブジェクトに対する複数種の前記付随データの関連付けが、データの階層化により行われる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第一の情報提示手段および/または前記第二の情報提示手段において提示される情報が、複数種の前記付随データのうちのいずれを含むかを、前記運転手および/または前記乗員ごとにパーソナライズすることに基づいて決定するように構成される、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記付随データが、前記地図座標に関連づけられる、当該地域の都市計画もしくは産業発展に関するデータ、自然地形地質データ、過去の歴史的地図画像データ、工学技術データ、歴史上の人物もしくは文化のデータ、文学・民話のデータ、観光情報データ、生息する動植物のデータ、および災害対策データからなる群から選択される一種以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記付随データに基づいた車輌のナビゲーション情報を、前記第一の情報提示手段および/または前記第二の情報提示手段により提供するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ナビゲーション情報が、自然地形地質データを含んだ前記付随データに基づいて提供される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ナビゲーション情報が、前記車輌の周囲の地形に関する、地形学、地質学、もしくは地理学に基づいた形成情報または俯瞰地図、平面地図、もしくは立体地図またはそれらの組み合わせに基づいて提供される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ネットワーク手段が、前記車輌の外部との通信をする機能を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記付随データが音声を含み、前記第一の情報提示手段および/または前記第二の情報提示手段が音声発信装置を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記音声発信装置が、前記車輌に搭載されるスピーカーまたは前記運転手が装備するスピーカーである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記運転手のreadiness状態を計測するための手段をさらに含み、前記運転手のreadiness状態が所与の閾値を下回ると判断される場合、前記第一の情報提示手段および/または前記第二の情報提示手段が情報を提供する際に強調を行うことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記地図画像データが、前記第一の情報提示手段および/または前記第二の情報提示手段において俯瞰地図、平面地図、または立体地図として表示される、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第一の情報提示手段および/または前記第二の情報提示手段が、前記車輌の天井面、壁面、および窓の、一部もしくは全体から構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記付随データに関連づけられた風景を、前記運転手が視認できるかどうかの判断を、前記地図画像データに基づいて行うように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記撮像手段がさらに、前記付随データに関連づけられた風景を、前記運転手が視認できるかどうかの判断を行うように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項18】
前記付随データに関連づけられた風景を、前記運転手が視認できると判断した場合において、前記第一の情報提示手段が情報の提示を行うように構成される、請求項16または17に記載のシステム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のシステムを含む、車輌。