(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069431
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ショベル及びショベルの管理装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240514BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/26 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038991
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2020059278の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】呉 春男
(72)【発明者】
【氏名】平沼 一則
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳一
(57)【要約】
【課題】好適にオペレータの技能を評価するショベル及びショベルの管理装置を提供する。
【解決手段】下部走行体と、上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、ショベルの作業工程ごとに、操作者の技能を評価する技能評価部を有する、ショベル。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
ショベルの作業工程ごとに、操作者の技能を評価する技能評価部を有する、
ショベル。
【請求項2】
前記制御装置は、1つの作業を複数の作業工程に区分する作業判定部をさらに有し、
前記技能評価部は、それぞれの前記作業工程ごとに、操作者の技能を評価する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記下部走行体、前記上部旋回体、前記アタッチメントの少なくともいずれかに設けられるセンサを有し、
前記作業判定部は、前記センサの検出値に基づいて、1つの作業を複数の作業工程に区分する、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記センサは、前記アタッチメントに設けられる角度センサ、機体傾斜センサ、旋回状態センサ、のうちいずれか1つ又は複数を含む、
請求項3に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、前記センサの検出値を含む前記ショベルのデータを記憶装置に蓄積させるデータ蓄積部をさらに有し、
前記作業判定部は、前記記憶装置に蓄積された前記ショベルのデータに基づいて、1つの作業を複数の作業工程に区分し、
前記技能評価部は、それぞれの前記作業工程ごとに、前記記憶装置に蓄積された前記ショベルのデータに基づいて、操作者の技能を評価する、
請求項3または請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記技能評価部の評価結果を表示させる表示装置を備え、
前記記憶装置には、前記技能評価部の評価結果と、操作改善案と、の対応を示すマップが格納され、
前記制御装置は、前記技能評価部の評価結果及び前記マップに基づいて、前記技能評価部の評価結果に対応する前記操作改善案を前記表示装置に表示させる、
請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記技能評価部の評価結果を表示させる表示装置を備え、
前記記憶装置には、前記技能評価部の評価結果と、操作改善案及びその効果と、の対応を示すマップが格納され、
前記制御装置は、前記技能評価部の評価結果及び前記マップに基づいて、前記技能評価部の評価結果に対応する前記操作改善案及びその効果を前記表示装置に表示させる、
請求項5に記載のショベル。
【請求項8】
操作者が搭乗するキャビン内に設けられ、操作者によって操作されると、前記データ蓄積部に、前記ショベルのデータを前記記憶装置に蓄積させる処理を開始させる指令を前記制御装置に出力する第1の操作ボタンと、
前記キャビン内に設けられ、操作者によって操作されると、前記技能評価部に、操作者の技能を評価させる処理を開始させる指令を前記制御装置に出力する第2の操作ボタンと、をさらに備える、
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項9】
下部走行体と、
上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
ショベルの作業工程ごとに、操作者の技能を評価する技能評価部を有する、
ショベルの管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベル及びショベルの管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルを操作するオペレータの技能を評価することが求められている。例えば、オペレータに対して燃料消費量の改善を指導する、建設機械の送受信システムにおける運転操作ガイダンス装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料消費量だけを評価しても、オペレータの技能を適切に評価することは困難である。例えば、上部旋回体の旋回動作やアタッチメントの開閉動作において、加減速を繰り返すような操作をする場合、動作が滑らかでないためショベルの振動が多くなる。したがって、位置決め精度も悪くなり、作業性も悪くなる。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、好適にオペレータの技能を評価するショベル及びショベルの管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、下部走行体と、上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、ショベルの作業工程ごとに、操作者の技能を評価する技能評価部を有する、ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、好適にオペレータの技能を評価するショベル及びショベルの管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る掘削機としてのショベルの側面図である。
【
図2】
図1のショベルの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のショベルにおけるオペレータの操作技能評価処理を説明するフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係るショベルの表示装置に表示される表示画面の一例である。
【
図5】ショベルの作業時におけるロール角、ピッチ角の変動を示すグラフである。
【
図6】ショベルの作業時におけるバケットの爪先軌跡を示す模式図である。
【
図7】ショベルのブーム上げ旋回工程時における旋回速度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
[ショベルの概要]
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る掘削機としてのショベル100の側面図である。
【0012】
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業機)を構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10を備える。
【0013】
下部走行体1は、左右一対のクローラが走行油圧モータ1L,1R(後述する
図2参照)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。つまり、一対の走行油圧モータ1L,1R(走行モータの一例)は、被駆動部としての下部走行体1(クローラ)を駆動する。
【0014】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(後述する
図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。つまり、旋回油圧モータ2Aは、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0015】
尚、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aの代わりに、電動機(以下、「旋回用電動機」)により電気駆動されてもよい。つまり、旋回用電動機は、旋回油圧モータ2Aと同様、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0016】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0017】
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
【0018】
キャビン10は、オペレータが搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。また、上部旋回体3には、エンジン11が設けられている。
【0019】
また、キャビン10内には、コントローラ30、表示装置40、入力装置42、音声出力装置43、記憶装置47が設けられている。
【0020】
コントローラ30(制御装置の一例)は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、不揮発性の補助記憶装置と、各種入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、ROMや不揮発性の補助記憶装置に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0021】
表示装置40は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置40は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0022】
入力装置42は、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、各種情報画像を表示する表示装置40のディスプレイに実装されるタッチパネル、操作レバーのレバー部の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、回転ダイヤル等を含む。入力装置42に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0023】
音声出力装置43は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、音声を出力する。音声出力装置43は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力する。
【0024】
記憶装置47は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報を記憶する。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される、或いは、入力装置42等を通じて設定される目標施工面に関するデータを記憶していてもよい。当該目標施工面は、ショベル100のオペレータにより設定(保存)されてもよいし、施工管理者等により設定されてもよい。
【0025】
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよい。また、ブーム角度センサS1は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するシリンダセンサ等を含んでもよい。以下、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0026】
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0027】
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0028】
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(上部旋回体3或いは下部走行体1)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0029】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含んでよい。旋回状態センサS5による上部旋回体3の旋回角度や旋回角速度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5は姿勢センサに含まれる。姿勢センサによりバケット6の爪先位置だけでなく、ブーム角度、ブーム角速度、ブーム角加速度など検出される。
【0030】
空間認識装置としての撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像する。撮像装置S6は、ショベル100の前方を撮像するカメラS6F、ショベル100の左方を撮像するカメラS6L、ショベル100の右方を撮像するカメラS6R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラS6Bを含む。
【0031】
カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、即ち、キャビン10の内部に取り付けられている。また、カメラS6Fは、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0032】
撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)は、それぞれ、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、撮像装置S6は、ステレオカメラや距離画像カメラ等であってもよい。撮像装置S6による撮像画像は、表示装置40を介してコントローラ30に取り込まれる。
【0033】
空間認識装置としての撮像装置S6は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、撮像装置S6は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知してよい。検知対象の物体には、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、穴等が含まれうる。また、撮像装置S6は、撮像装置S6又はショベル100から認識された物体までの距離を算出してもよい。物体検知装置としての撮像装置S6には、例えば、ステレオカメラ、距離画像センサ等が含まれうる。そして、空間認識装置は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。また、空間認識装置は、空間認識装置又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。また、撮像装置S6に加えて、空間認識装置として、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR、赤外線センサ等の他の物体検知装置が設けられてもよい。空間認識装置としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等を利用する場合には、多数の信号(レーザ光等)を物体に発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を検出してもよい。
【0034】
尚、撮像装置S6は、直接、コントローラ30と通信可能に接続されてもよい。
【0035】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。
【0036】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。
【0037】
測位装置P1は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置P1は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。また、測位装置P1の機能のうちの上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサにより代替されてもよい。
【0038】
通信装置T1は、基地局を末端とする移動体通信網、衛星通信網、インターネット網等を含む所定のネットワークを通じて外部機器と通信を行う。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等である。
【0039】
次に、
図2を参照してショベル100の基本システムについて説明する。ショベル100の基本システムは、主に、エンジン11、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、コントローラ30、及びエンジン制御装置(ECU)74等を含む。
【0040】
エンジン11はショベル100の駆動源であり、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸はメインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に接続される。
【0041】
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する油圧ポンプであり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ14は、斜板の角度(傾転角)を変更することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量、すなわち、ポンプ出力を変化させることができる。メインポンプ14の斜板は、レギュレータ14aにより制御される。レギュレータ14aは、電磁比例弁(不図示)に対する制御電流の変化に対応して、斜板の傾転角を変化させる。例えば、制御電流を増加させることにより、レギュレータ14aは、斜板の傾転角を大きくして、メインポンプ14の吐出流量を多くする。また、制御電流を減少させることにより、レギュレータ14aは、斜板の傾転角を小さくして、メインポンプ14の吐出流量を少なくする。
【0042】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して各種油圧制御機器に作動油を供給するための油圧ポンプであり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0043】
コントロールバルブ17は、油圧制御バルブである。コントロールバルブ17は、後述するレバー又はペダル26A~26Cの操作方向及び操作量に応じた圧力変化に応じて、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行油圧モータ1L(左用)、走行油圧モータ1R(右用)、及び旋回油圧モータ2Aのうちの一又は複数のものに対し、メインポンプ14から高圧油圧ライン16を通じて供給された作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行油圧モータ1L(左用)、走行油圧モータ1R(右用)、及び旋回油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0044】
ブームシリンダ7のロッド側の油室には、圧力センサ51が接続されている。圧力センサ51は、ブームシリンダ7のロッド側の圧力を検出する。アームシリンダ8のボトム側の油室には、圧力センサ52が接続されている。圧力センサ52は、アームシリンダ8のボトム側の圧力を検出する。バケットシリンダ9のボトム側の油室には、圧力センサ53が接続されている。圧力センサ53は、バケットシリンダ9のボトム側の圧力を検出する。
【0045】
旋回油圧モータ2Aの左右には、圧力センサ54と圧力センサ55が接続されている。
【0046】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、パイロットライン25を介してパイロットポンプ15から供給された作動油をパイロットライン25aを通じて、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。なお、パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応するレバー又はペダル26A~26Cの操作方向及び操作量に応じた圧力とされる。なお本実施形態では、操作レバー26Aは、ブーム4とバケット6を操作する運転席の右側に配置される操作レバーである。操作レバー26Bは、アーム5と上部旋回体3を操作する運転席の左側に配置される操作レバーである。
【0047】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。コントローラ30のCPUは、ショベル100の動作や機能に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードしながらプログラムを実行することで、それらプログラムのそれぞれに対応する処理を実行させる。
【0048】
コントローラ30は、メインポンプ14の吐出流量の制御を行う。例えば、ネガコン弁(不図示)のネガコン圧に応じて上記制御電流を変化させ、レギュレータ14aを介してメインポンプ14の吐出流量を制御する。
【0049】
エンジン制御装置(ECU)74は、エンジン11を制御する装置である。例えば、コントローラ30からの指令に基づき、後述するエンジン回転数調整ダイヤル75により操作者が設定したエンジン回転数(モード)に応じてエンジン11の回転数を制御するための燃料噴射量等をエンジン11に出力する。
【0050】
エンジン回転数調整ダイヤル75は、キャビン10内に設けられるエンジンの回転数を調整するためのダイヤルであり、本実施形態ではエンジン回転数を4段階で切り換えできるようにする。即ち、エンジン回転数調整ダイヤル75により、SPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えることができるようにする。なお、
図2は、エンジン回転数調整ダイヤル75でSPモードが選択された状態を示す。
【0051】
SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベル100を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジンをアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードのエンジン回転数で一定回転数に制御される。なお、ここでは、エンジン回転数調整ダイヤル75による4段階でのエンジン回転数調整の事例を示したが、4段階には限られず何段階であってもよい。
【0052】
また、ショベル100には、運転者による運転を補助するために表示装置40をキャビン10の運転席の近傍に配置する。運転者は表示装置40の入力部420を利用して情報や指令をコントローラ30に入力できる。また、ショベル100の運転状況や制御情報、操作解析情報を表示装置40の画像表示部41に表示させることで、運転者に情報を提供できる。
【0053】
表示装置40は、画像表示部41及び入力部420(
図1に示す入力装置42の一例)を含む。表示装置40は、運転席内のコンソールに固定される。なお、一般的に、運転席に着座した運転者からみて右側にブーム4が配置されており、運転者はブーム4の先端に取り付けられたアーム5、バケット6を視認しながらショベル100を運転することが多い。キャビン10の右側前方のフレームは運転者の視界の妨げとなる部分であるが、本実施形態では、この部分を利用して表示装置40を設けている。これにより、もともと視界の妨げとなっていた部分に表示装置40が配置されるので、表示装置40自体が運転者の視界を大きく妨げることは無い。フレームの幅にもよるが、表示装置40全体がフレームの幅に入るように、表示装置40は、画像表示部41が縦長となるように構成されてもよい。
【0054】
本実施形態の表示装置40は、画像表示部41上に、ショベル100のデータを蓄積するデータ蓄積ボタンを有する。また、表示装置40は、画像表示部41上に、蓄積したショベル100のデータを解析してオペレータの操作技能評価を実行し、その解析結果を表示させる評価開始ボタンを有している。なお、データ蓄積ボタン及び評価開始ボタンは、画像表示部41上に設けられる場合に限られず、入力装置42のいずれかに実装されていてもよい。
【0055】
本実施形態では、表示装置40は、CAN、LIN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続される。なお、表示装置40は、専用線を介してコントローラ30に接続されてもよい。
【0056】
また、表示装置40は、画像表示部41上に表示する画像を生成する変換処理部40aを含む。変換処理部40aは、コントローラ30の出力に基づいて画像表示部41上に表示する画像を生成する。
【0057】
なお、変換処理部40aは、表示装置40が有する機能としてではなく、コントローラ30が有する機能として実現されてもよい。
【0058】
また、表示装置40は、入力部420としてのスイッチパネルを含む。スイッチパネルは、各種ハードウェアスイッチを含むパネルである。本実施形態では、スイッチパネルは、ハードウェアボタンとしてのライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウインドウォッシャスイッチ42c、画面切替えボタン42d、カーソル移動ボタン42eを含む。ライトスイッチ42aは、キャビン10の外部に取り付けられるライトの点灯・消灯を切り換えるためのスイッチである。ワイパースイッチ42bは、ワイパーの作動・停止を切り換えるためのスイッチである。また、ウインドウォッシャスイッチ42cは、ウインドウォッシャ液を噴射するためのスイッチである。画面切替えボタン42dは、表示装置40の画像表示部41上に表示される画面を切替えるためのボタンである。カーソル移動ボタン42eは、表示装置40の画像表示部41上に表示される選択領域(カーソル領域)を移動させて各種設定項目などを選択・決定するボタンである。
【0059】
また、表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。なお、蓄電池70はエンジン11のオルタネータ11a(発電機)で発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置40以外のショベル100の電装品72等にも供給される。また、エンジン11のスタータ11bは、蓄電池70からの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
【0060】
エンジン11は、上述のとおり、エンジン制御装置(ECU)74により制御される。ECU74からは、エンジン11の状態を示す各種データ(例えば、水温センサ11cで検出される冷却水温(物理量)を示すデータ)がコントローラ30に常時送信される。
【0061】
また、コントローラ30には以下のように各種のデータが供給される。
【0062】
可変容量式油圧ポンプであるメインポンプ14のレギュレータ14aから斜板の傾転角を示すデータがコントローラ30に供給される。また、メインポンプ14の吐出圧力を示すデータが、吐出圧力センサ14bからコントローラ30に送られる。また、メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路には、油温センサ14cが設けられており、その管路を流れる作動油の温度を表すデータが、油温センサ14cからコントローラ30に供給される。
【0063】
また、レバー又はペダル26A~26Cを操作した際に、パイロットライン25aを通じてコントロールバルブ17に送られるパイロット圧が、油圧センサ15a、15bで検出され、検出したパイロット圧を示すデータがコントローラ30に供給される。更に、圧力センサ51~55からの各圧力値がコントローラ30に供給される。
【0064】
エンジン回転数調整ダイヤル75からは、エンジン回転数の設定状態を示すデータがコントローラ30に常時送信される。
【0065】
また、前述するように、姿勢センサ(ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5)の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。撮像装置S6による撮像画像は、表示装置40を介してコントローラ30に取り込まれる。シリンダ圧センサ(ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、バケットボトム圧センサS9B)の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0066】
また、コントローラ30は、ショベル100のデータを記憶装置47に蓄積させるデータ蓄積部31と、オペレータの操作技能を評価する技能評価部32と、ショベル100の作業工程を判定する作業判定部33と、を備えている。
【0067】
データ蓄積部31は、ショベル100のデータを記憶装置47に蓄積させる。例えば、姿勢センサ(ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5)の検出値を記憶装置47に蓄積させる。
【0068】
技能評価部32は、記憶装置47に蓄積されたショベル100のデータに基づいて、オペレータの操作技能を評価する。なお、評価方法は後述する。
【0069】
作業判定部33は、記憶装置47に蓄積されたショベル100のデータに基づいて、ショベル100の作業工程(例えば、掘削工程、ブーム上げ旋回工程、排土工程、ブーム下げ旋回工程)を判定する。
【0070】
次に、
図3を参照しながら、本実施形態のショベル100におけるオペレータの操作技能を評価する一連の作業流れについて具体的に説明する。
図3は、本実施形態のショベル100におけるオペレータの操作技能評価処理を説明するフローチャートである。
【0071】
ステップS101において、コントローラ30は、オペレータの操作技能評価に用いられるショベル100のデータ蓄積を開始するためのデータ蓄積ボタンが操作されたか否かを判定する。データ蓄積ボタンが操作された場合(S101・Yes)、コントローラ30の処理はステップS102に進む。データ蓄積ボタンが操作されていない場合(S101・No)、コントローラ30の処理はステップS101を繰り返す。
【0072】
ステップS102において、コントローラ30のデータ蓄積部31は、ショベル100のデータを記憶装置47に蓄積させる。
【0073】
ステップS103において、コントローラ30は、オペレータの操作技能を評価する評価開始ボタンが操作されたか否かを判定する。評価開始ボタンが操作された場合(S103・Yes)、コントローラ30の処理はステップS104に進む。評価開始ボタンが操作されていない場合(S103・No)、コントローラ30の処理はステップS103を繰り返す。
【0074】
ステップS104において、コントローラ30の技能評価部32は、記憶装置47に蓄積されたショベル100のデータに基づいて、オペレータの操作技能を評価する。
【0075】
ステップS105において、コントローラ30は、ステップS104の評価結果を表示装置40に表示させる。
【0076】
図4は、本実施形態に係るショベル100の表示装置40に表示される表示画面の一例である。
【0077】
図4に示すように、メイン画面410は、日時表示領域41a、走行モード表示領域41b、エンドアタッチメント表示領域41c、エンジン制御状態表示領域41e、エンジン作動時間表示領域41f、冷却水温表示領域41g、燃料残量表示領域41h、回転数モード表示領域41i、作動油温表示領域41k、カメラ画像表示領域41m、向き表示アイコン41x、評価結果表示領域41r、改善案表示領域41sを含む。
【0078】
日時表示領域41aは、現在の日時を画像表示する領域である。
【0079】
走行モード表示領域41bは、現在の走行モードを画像表示する領域である。走行モードは、可変容量ポンプを用いた走行用油圧モータの設定状態を表す。具体的には、走行モードは、低速モード及び高速モードを有する。低速モードは、「亀」を象ったマークで表示され、高速モードは「兎」を象ったマークで表示される。
【0080】
エンドアタッチメント表示領域41cは、現在装着されているエンドアタッチメントを表す画像を画像表示する領域である。
図4に示す実施形態では、バケットを象ったマークが表示されている。
【0081】
エンジン制御状態表示領域41eは、エンジン11の制御状態を画像表示する領域である。
図4に示す実施形態では、運転者は、エンジン11の制御状態として「自動減速・自動停止モード」が選択されていることを認識できる。その他、エンジン11の制御状態には、「自動減速モード」、「自動停止モード」、「手動減速モード」等がある。
【0082】
エンジン作動時間表示領域41fは、エンジン11の累積作動時間を画像表示する領域である。
図4に示す実施形態では、単位「hr(時)」を用いた値が表示される。
【0083】
冷却水温表示領域41gは、現在のエンジン冷却水の温度状態を画像表示する領域である。
【0084】
燃料残量表示領域41hは、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を画像表示する領域である。
【0085】
回転数モード表示領域41iは、現在の回転数モードを画像表示する領域である。回転数モードは、例えば、上述のSPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードの4つを含む。
図4に示す実施形態では、SPモードを表す記号「SP」が表示されている。
【0086】
作動油温表示領域41kは、作動油タンク内の作動油の温度状態を画像表示する領域である。
【0087】
カメラ画像表示領域41mは、カメラ画像を画像表示する領域である。本実施形態では、ショベルは、運転者の視界以外の部分を撮像するための撮像装置S6(
図1参照。)を備える。撮像装置S6は、撮像したカメラ画像を表示装置40の変換処理部40aに送る。これにより、運転者は撮像装置S6が撮像したカメラ画像を表示装置40のメイン画面410で視認できる。
【0088】
向き表示アイコン41xは、表示画面に表示される撮像画像を撮像した撮像装置S6の向きとショベル100(上部旋回体3のアタッチメント)の向きとの相対的関係を表すアイコンである。
【0089】
評価結果表示領域41rは、技能評価部32の評価結果が表示される。例えば、評価結果表示領域41rには、「下げ旋回の振れが大きいです。」のように、評価結果を示すメッセージが表示される。
【0090】
改善案表示領域41sは、技能評価部32の評価結果に対する操作改善案とその効果が表示される。例えば、改善案表示領域41sには、「振れを小さくすれば、位置決めがよくなります。疲れが低減されます。」のように、操作改善案とその効果を示すメッセージが表示される。なお、例えば、記憶装置47には、評価結果と、操作改善案及びその効果と、の対応を示すマップが格納されている。技能評価部32は、評価結果と、記憶装置47に格納されたマップと、に基づいて、操作改善案及びその効果を決定することができる。
【0091】
次に、技能評価部32におけるオペレータの操作技能を評価する方法について、
図5から
図7を例に説明する。
【0092】
図5は、ショベル100の作業時におけるロール角、ピッチ角の変動を示すグラフである。
図5(a)は、オペレータがベテラン(技能評価の高いオペレータ)の場合の例を示す。
図5(b)は、オペレータが初心者(技能評価の低いオペレータ)の場合の例を示す。横軸は、時間を示し、縦軸は角度を示す。また、実線はロール角(101,103)を示し、破線はピッチ角(102,104)を示す。なお、ロール角及びピッチ角は、姿勢センサ(例えば、機体傾斜センサS4)によって検出される。
【0093】
まず、作業判定部33は、記憶装置47に蓄積されたショベル100のデータに基づいて、ショベル100の作業工程(例えば、掘削工程、ブーム上げ旋回工程、排土工程、ブーム下げ旋回工程)を判定する。技能評価部32は、ショベル100の各動作工程ごとにオペレータの操作技能を評価する。
【0094】
図5(a)に示すように、ベテランオペレータのブーム上げ旋回工程において、上部旋回体3が旋回することにより、上部旋回体3の左右方向の傾きであるロール角101が上昇する。また、ブーム上げ動作により、上部旋回体3の前後方向の傾きであるピッチ角102が減少する。
【0095】
また、ベテランオペレータの排土工程において、スムーズに排土位置へと旋回させることで左右の揺れ(ロール角101の変動)も低減する。また、排土動作により前後方向の揺れ(ピッチ角102の変動)が発生する。
【0096】
また、ベテランオペレータのブーム下げ旋回工程において、旋回動作により、ロール角101がブーム上げ旋回工程とは逆方向に減少する。また、ブーム下げ操作では、ピッチ角102方向の変動はほとんど生じない。
【0097】
これに対し、
図5(b)に示すように、初心者オペレータのブーム上げ旋回工程において、旋回操作量がわからないため、操作レバーの戻し操作回数が多く、ロール角103は小刻みに振れる。また、ブーム上げ量がわからないため、操作レバーの戻し操作回数が多く、ピッチ角104は小刻みに振れる。
【0098】
また、初心者オペレータの排土工程において、バケット6を排土位置へと移動させる際、位置が定まらず、ピッチ角104は小刻みに振れる。また、アーム5及びバケット6を開いて排土操作を行う際、レバー操作がぎこちなく、ピッチ角104は小刻みに振れる。
【0099】
また、初心者オペレータのブーム下げ旋回工程において、バケット6を次の掘削位置へと移動させる際、位置が定まらず、ピッチ角104は小刻みに振れる。また、ブーム下げ操作と旋回操作がとの同時操作ができないため、操作レバーの戻し操作回数が多く、ピッチ角104は小刻みに振れる。
【0100】
図6は、ショベル100の作業時におけるバケット6の爪先軌跡を示す模式図である。
図6(a)は平面視した図、
図6(b)は側面視した図である。また、ベテランオペレータの軌跡105を実線で示し、初心者オペレータの軌跡106を破線で示す。なお、バケット6の爪先軌跡は、姿勢センサ(例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、旋回状態センサS5)によって検出される。
【0101】
初心者オペレータの軌跡106について、ベテランオペレータの軌跡105と対比しつつ説明する。初心者オペレータの軌跡106では、掘削位置P1からブーム上げ旋回工程の際、旋回レバーを入れ過ぎたため、ベテランオペレータの軌跡105よりも低い位置で旋回する。このため、旋回を止めて急激にブーム上げ動作を行うため、排土位置の高さよりもオーバーシュートする。そして、初心者オペレータの軌跡106では、ブーム4を上げ過ぎた状態で、ダンプDTの方向へ旋回する。この際、土砂等を積載したバケット6の重心が高くなることにより、ショベル100の振動も大きくなる。また、初心者オペレータの軌跡106では、旋回においても排土位置で停止することができず、戻し操作が発生する。
【0102】
図7は、ショベル100のブーム上げ旋回工程時における旋回速度の時間変化を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は旋回角度を示す。また、ベテランオペレータの軌跡107を実線で示し、初心者オペレータの軌跡108を破線で示す。
【0103】
初心者オペレータの軌跡108について、ベテランオペレータの軌跡107と対比しつつ説明する。初心者オペレータの軌跡108では、旋回を排土位置で適切に止めることができないため、逆向きの旋回動作が発生する。即ち、旋回速度ωが負の値となる。また、戻し操作が発生することにより、排土位置まで移動するのに要する時間t2がベテランオペレータの時間t1よりも長くなる。
【0104】
図5から
図7に示すように、コントローラ30の作業判定部33は、作業工程(例えば、掘削工程、ブーム上げ旋回工程、排土工程、ブーム下げ旋回工程)を判定する。そして、コントローラ30の技能評価部32は、ショベル100の姿勢センサ(S1~S5)の検出信号に基づいて、オペレータの操作技能を評価することができる。ここで、技能評価は、ショベル100の作業工程ごとに行われる。
【0105】
例えば、
図5に示す例において、技能評価部32は、機体傾斜センサS4のデータに基づいて、ピッチ角、ロール角の振動を検出する。技能評価部32は、ピッチ角、ロール角が閾値111,112を超えた回数をカウントし、カウント数に基づいてオペレータの技能を評価する。また、ピッチ角、ロール角の時間微分値を求め、時間微分値が閾値を超えた回数で技能を評価してもよい。また、時間微分値の絶対値の最大値に基づいて技能を評価してもよい。
【0106】
また、例えば、
図6及び
図7に示す例において、技能評価部32は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、旋回状態センサS5のデータに基づいて、戻し動作が発生したか否か、戻し操作の回数、戻し操作の戻し量等を検出する。技能評価部32は、戻し動作が発生したか否か、戻し操作の回数、戻し操作の戻し量等に基づいてオペレータの技能を評価する。また、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、旋回状態センサS5の検出値の時間微分に基づいて、操作レバーの入れ直しを検出し、オペレータの技能を評価してもよい。
【0107】
また、図示は省略するが、床掘の水平引き動作(仕上げ工程)において、技能評価部32は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、旋回状態センサS5のデータに基づいて、バケット6の爪先軌跡を検出する。技能評価部32は、検出したバケット6の爪先軌跡の水平度に基づいて、オペレータの技能を評価してもよい。
【0108】
以上、本実施形態に係るショベル100によれば、オペレータの技能を好適に評価することができる。また、評価結果は表示装置40に表示される。これにより、オペレータは操作技能の状態を確認することができる。また、表示装置40には、評価結果と合わせて、改善案が表示される。これにより、オペレータは、操作の改善方法を確認することができ、操作技能の向上に役立てることができる。
【0109】
以上、ショベル100の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0110】
技能評価部32及び作業判定部33は、ショベル100のコントローラ30に設けられるものとして説明したが、これに限られるものではない。ショベル100の管理装置に技能評価部32及び作業判定部33が設けられる構成であってもよい。即ち、ショベル100のデータ蓄積部31は、ショベル100のデータを記憶装置47に蓄積させる。そして、蓄積されたショベル100のデータは、例えば通信装置T1を介して、ショベル100の管理装置に出力する。ショベル100の管理装置の技能評価部32は、入力されたショベル100のデータに基づいて、オペレータの操作技能を評価してもよい。また、ショベル100の管理装置の作業判定部33は、入力されたショベル100のデータに基づいて、ショベル100の作業工程を判定してもよい。
【符号の説明】
【0111】
100 ショベル
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
30 コントローラ
31 データ蓄積部
32 技能評価部
33 作業判定部
40 表示装置
47 記憶装置
S1 ブーム角度センサ(加速度センサ)
S2 アーム角度センサ(加速度センサ)
S3 バケット角度センサ(加速度センサ)
S4 機体傾斜センサ(加速度センサ)
S5 旋回状態センサ(加速度センサ)