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特開2024-69459酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症を治療するための医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069459
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20240514BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240514BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240514BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A61K38/46
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/20
A61P1/00
A61P1/16
A61P7/00
A61P11/00
A61P19/00
A61P25/00
A61P43/00 111
C12N9/16 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/55
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039768
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2020565415の分割
【原出願日】2019-05-24
(31)【優先権主張番号】62/676,525
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・ブサー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド・ペレス-ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】グランド・トリエーウェイラー
(72)【発明者】
【氏名】サンジータ・ベンジャワル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)を治療するための組換えヒトASM(rhASM)の組成物を提供する。
【解決手段】組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ、リン酸ナトリウム、メチオニン、およびスクロースを含む組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ、リン酸ナトリウム、メチオニン、およびスクロースを含む組成物。
【請求項2】
4~7%w/wオリプダーゼアルファ(配列番号2)、
3~7%w/wリン酸ナトリウム、
15~25%w/w L-メチオニン、および
65~75%w/wスクロースを含む凍結乾燥組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
本質的に:
5.5%w/wオリプダーゼアルファ、
2.3%w/wリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.6%w/wリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
20.5%w/w L-メチオニン、および
68.6%w/wスクロースからなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
1~10mg/mLオリプダーゼアルファ、
10~50mMリン酸ナトリウム、
70~150mM L-メチオニン、および
1~10%w/vスクロースを含む水性液体組成物であって、
pH5~8を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
3~5mg/mLオリプダーゼアルファ、
10~30mMリン酸ナトリウム、
80~120mM L-メチオニン、および
4~6%w/vスクロースを含む水性液体組成物であって、
pH6~7を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
本質的に:
4mg/mLオリプダーゼアルファ、
20mMリン酸ナトリウム、
100mM L-メチオニン、および
5%w/vスクロースからなり、
pH6.5を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
0.005%w/vポリソルベート80をさらに含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の水性液体組成物を凍結乾燥することによって得られる、組成物。
【請求項9】
凍結乾燥組成物を製造するための方法であって:
請求項4~7のいずれか1項に記載の水性液体組成物を得ること、および
水性液体組成物を凍結乾燥することを含む、前記方法。
【請求項10】
本質的に:
21.2mgオリプダーゼアルファ、
9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
79mg L-メチオニン、および
265mgスクロースからなる凍結乾燥組成物を含む、バイアル。
【請求項11】
本質的に:
21.2mgオリプダーゼアルファ、
9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
79mg L-メチオニン、および
265mgスクロース
からなる凍結乾燥組成物を、5.1mLの滅菌水中に再構成することによって得られる、水性液体組成物。
【請求項12】
バイアルであって、本質的に:
4.8mgオリプダーゼアルファ、
2.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
17.9mg L-メチオニン、および
60mgスクロースからなる凍結乾燥組成物を含む、前記バイアル。
【請求項13】
水性液体組成物であって、本質的に:
4.8mgオリプダーゼアルファ、
リ2.0mgン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
17.9mg L-メチオニン、および
60mgスクロースからなる凍結乾燥組成物を、1.1mLの滅菌水中に再構成することによって得られる、前記水性液体組成物。
【請求項14】
請求項10または12に記載のバイアルおよび、凍結乾燥組成物を再構成するための滅菌水、0.9%塩化ナトリウム、またはリン酸緩衝生理食塩水を含むバイアルを含む、製造品。
【請求項15】
ヒト患者における酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)を治療する方法であって、請求項1~8、11、および13のいずれか1項に記載の組成物を患者に投与することを含み、組成物は、それが凍結乾燥組成物である場合、投与前に液体形態に再構成される、前記方法。
【請求項16】
ヒト患者におけるASMDの治療に使用するための、請求項1~8、11、および13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
ヒト患者においてASMDを治療するための薬剤を製造するための、請求項1~8、11、および13のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
ASMDはニーマンピック病タイプA/BまたはタイプBである、請求項15に記載の方法、請求項16に記載の使用のための組成物、または請求項17に記載の使用。
【請求項19】
治療はASMDの非神経学的症状のためのものである、請求項18に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)は、生命を脅かすまれなリソソーム蓄積障害である。それは、リソソーム酵素酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)をコードするSMPD1遺伝子の変異に起因する常染色体劣性遺伝病である(非特許文献1)。ASMD患者はスフィンゴミエリンを代謝することができず、その結果、複数の臓器のリソソームに蓄積し、重篤の場合には、内臓疾患と神経変性を引き起こす。ASMD患者は、脾臓、肝臓、肺および骨髄のコレステロールやその他の脂質を増加させる。
【0002】
乳児内臓神経ASMD(ニーマンピック病タイプAまたはNPD Aとしても知られる)は、最も重篤な疾患表現型であり、早期発症および急性神経障害型として特徴付けられる。NPD Aは、成長障害、肝脾腫、および急速に進行する神経変性を引き起こす。患者は幼児期に死亡する(非特許文献2)。
【0003】
慢性内臓ASMD(NPD B)および慢性内臓神経ASMD(NPD A/B)の患者は、乳児期から成人期にわたって発症する(非特許文献3;非特許文献4)。NPD B患者は通常、小児期、典型的には2歳以降に診断される。ほとんどのNPD B患者は成人期まで生きる。NPD A/B患者は、神経変性疾患として発症する可能性のある小児期の神経症状を呈する中間型として分類される。肝臓、肺、および造血系疾患による罹患率は、慢性ASMDの全ての患者に起こり、肝脾腫、肝機能障害、浸潤性肺疾患、および血小板減少症を含む(非特許文献5;非特許文献6)。小児期の成長制限および低骨密度などの骨障害も慢性ASMDの一般的な特徴である(非特許文献7)。これらの患者の主な死因は肺疾患と肝臓疾患である(非特許文献8;非特許文献9)。
【0004】
ASMDの高い罹患率と死亡率の故に、この遺伝病の効果的な治療が緊急に要望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Schuchmanら、Mol. Genet. Metab. 120(1-2):27~33頁(2017)
【非特許文献2】McGovernら、Neurology 66(2):228~232頁(2006)
【非特許文献3】Wassersteinら、Pediatrics 114(6):e672-677(2004)
【非特許文献4】Wassersteinら、J. Pediatr. 149(4):554~559頁(2006)
【非特許文献5】McGovernら、Genet. Med. 15(8):618~623頁(2013)
【非特許文献6】McGovernら、Orphanet J. Rare Dis. 12(1):41(2017)
【非特許文献7】Wassersteinら、J. Pediatr. 142(4):424~428頁(2003)
【非特許文献8】McGovernら、Pediatrics 122(2):e341~349(2008)
【非特許文献9】Cassimanら、Mol. Genet. Metab. 118(3):206~213頁(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ASMDを治療するための組換えヒトASM(rhASM)の組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、rhASM、リン酸ナトリウム、メチオニン、およびスクロース(またはトレハロース)を含む。特定の実施形態では、rhASMはオリプダーゼアルファ(配列番号2)である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、組成物は凍結乾燥される。本発明の凍結乾燥組成物は、例えば:
4~7%w/wオリプダーゼアルファ、
3~7%w/wリン酸ナトリウム、
15~25%w/w L-メチオニン、および
65~75%w/wスクロースを含んでもよい。
【0008】
特定の実施形態では、本発明の凍結乾燥組成物は:
5.5%w/wオリプダーゼアルファ、
2.3%w/wリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.6%w/wリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
20.5%w/w L-メチオニン、および
68.6%w/wスクロースを含んでもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、組成物は水性液体組成物である。水性液体組成物は、例えば:
1~10mg/mLオリプダーゼアルファ、
10~50mMリン酸ナトリウム、
70~150mM L-メチオニン、および
1~10%w/vスクロースを含んでもよく、
ここで、組成物はpH5~8を有する。
【0010】
特定の実施形態では、本発明の水性液体組成物は:
3~5mg/mLオリプダーゼアルファ、
10~30mMリン酸ナトリウム、
80~120mM L-メチオニン、および
4~6%w/vスクロースを含んでもよく、
ここで、組成物は6~7のpHを有する。
【0011】
特定の実施形態では、本発明の水性液体組成物は:
4mg/mLオリプダーゼアルファ、
20mMリン酸ナトリウム、
100mM L-メチオニン、および
5%w/vスクロースを含んでもよく、
ここで、組成物はpH6.5を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の水性液体組成物は、0.005%w/vポリソルベート80をさらに含んでもよい。
【0013】
本発明はさらに、本明細書に記載の水性液体組成物を乾燥(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)することによって得られる組成物を提供する。本発明はまた、本明細書に記載の水性液体組成物を凍結乾燥することを含む、凍結乾燥組成物を製造するための方法を提供
する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の凍結乾燥組成物を含むバイアルを提供する。特定の実施形態では、バイアル中の凍結乾燥組成物は、以下を含むか、または本質的に以下からなる:
21.2mgオリプダーゼアルファ、
9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
79mg L-メチオニン、および
265mgスクロース。
【0015】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物は、水性液体組成物を得るために、5.1mLの滅菌水中に再構成される。
【0016】
特定の実施形態では、バイアル中の凍結乾燥組成物は、以下を含むか、または本質的に以下からなる:
4.8mgオリプダーゼアルファ、
2.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
17.9mg L-メチオニン、および
60mgスクロース。
【0017】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物は、水性液体組成物を得るために、1.1mLの滅菌水中に再構成される。
【0018】
本発明はさらに、1)本明細書に記載の凍結乾燥組成物を含むバイアル、および2)凍結乾燥組成物を再構成するための、例えば、滅菌水、0.9%塩化ナトリウム、またはリン酸緩衝生理食塩水を含むバイアルを含む製造品を提供する。
【0019】
本発明はさらに、本明細書に記載の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者においてASMDを治療する方法を提供し、ここで、組成物は、それが凍結乾燥組成物である場合、投与前に液体形態に再構成される。
【0020】
本発明はさらに、ヒト患者におけるASMDの治療に使用するための本明細書に記載の組成物を提供する。
【0021】
本発明はさらに、ヒト患者においてASMDを治療するための薬剤を製造するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるASMDの治療は、ニーマンピック病タイプA/BもしくはタイプB、またはASMDの非神経学的症状のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1Aは、様々なpHのコハク酸、クエン酸、クエン酸/リン酸、またはリン酸緩衝液中、30℃で2週間保存した後の比(酵素的)活性によって測定されるrhASMの安定性を示す図である。図1Bは、様々なpHのコハク酸、クエン酸、クエン酸/リン酸、またはリン酸緩衝液中、30℃で1週間保存した後の高分子量種のパーセント(%HMWS)によって測定されるrhASMの安定性を示す図である。HMWSはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定された。図1Cは、様々なpHでのクエン酸/リン酸またはリン酸緩衝液中での熱安定性によって測定されたrhASMの安定性を示す図である。熱安定性は、示差走査熱量測定によって決定された。
図2図2Aは、30℃、pH6.5の10mM、20mM、50mM、または100mMリン酸緩衝液中の経時的なrhASMの比活性を示す図である。図2Bは、30℃、pH6.5の10mM、20mM、50mM、または100mMリン酸緩衝液中の%HMWSによって測定された、経時的なrhASMの物理的安定性を示す図である。
図3図3Aは、凍結乾燥前(液体)および凍結乾燥後(lyo)の4mg/mL rhASMの比(酵素的)活性に対する5%w/vマンニトール、スクロース、またはトレハロースの効果を示す図である。図3Bは、凍結乾燥前(液体)および凍結乾燥後(lyo)の%HMWSにより測定された4mg/mL rhASMの物理的安定性に対する5%w/vマンニトール、スクロース、およびトレハロースの効果を示す図である。
図4図4Aは、5℃での経時的なrhASMの比活性を示す図である。rhASMは、5%マンニトール、5%スクロース、または3%マンニトールおよび2%スクロース(全てw/v濃度)を含む溶液から凍結乾燥された。図4Bは、%HMWSによって測定された5℃での経時的なrhASMの物理的安定性を示す図である。rhASMは、5%マンニトール、5%スクロース、または3%マンニトールおよび2%スクロース(全てw/v濃度)を含む溶液から凍結乾燥された。
図5図5Aは、5℃での経時的なrhASMの比活性を示す図である。rhASMは、100mMメチオニン(全てw/v濃度)を含むかまたは含まない5%スクロースを含む溶液から凍結乾燥された。図5Bは、%HMWSによって測定された5℃での経時的なrhASMの物理的安定性を示す図である。rhASMは、100mMメチオニンを含むかまたは含まない5%w/vスクロースを含む溶液から凍結乾燥された。
図6図6は、2~8℃での液体rhASM組成物における経時的な二量体のパーセンテージに対するpH、タンパク質濃度、メチオニン濃度、およびスクロース濃度の影響を示す図である。
図7図7は、2~8℃での液体組成物における経時的なrhASM比活性に対するpH、タンパク質濃度、メチオニン濃度、およびスクロース濃度の影響を示す図である。
図8図8は、pH、タンパク質濃度、メチオニン濃度、およびスクロース濃度を変化させた液体rhASM組成物における2~8℃での経時的な%HMWSを示す図である。製剤番号をグラフの右側に示す。
図9図9は、様々なpH、タンパク質濃度、メチオニン濃度、およびスクロース濃度での液体rhASM組成物における2~8℃での経時的な凝集%を示す図である。製剤番号をグラフの右側に示す。
図10図10は、様々なpHでの液体rhASM組成物における25℃での二量体%、凝集%、および比活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、組換えヒトASM、例えば、オリプダーゼアルファ、および1つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。本開示の組成物は、他の組成物と比較して、改善された安定性および貯蔵寿命を有する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、医薬組成物、すなわち、そのような形態であるか、または有効成分の生物学的活性が有効である一方で、重大な毒性であるか、さもなければ患者において有効成分とは関係のない望ましくない副作用を引き起こす追加の成分を含まないような形態になるように調製され得る組成物である。「医薬組成物」および「医薬製剤」という用語は、本明細書において互換的に使用される。本発明の医薬組成物は、以下にさらに記載されるように、ASM欠損症の患者を治療するのに有用である。
【0025】
組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ
ASMは、スフィンゴミエリンのセラミドとホスホリルコリンへの分解を触媒する酵素である。「組換えヒトASM」は、組換え手段によって調製される、野生型配列と比較し
て特定のアミノ酸修飾を伴うかまたは伴わないヒトASMを指す。例えば、組換えヒトASMは、培養哺乳動物宿主細胞において(例えば、COS、CHO、HeLa、3T3、293T、NS0、SP2/0、またはHuT 78細胞など)またはヒトASMコーディング配列に対してトランスジェニックな動物において発現される。
【0026】
いくつかの実施形態では、組換えヒトASMは、オリプダーゼアルファである。オリプダーゼアルファは、CHO細胞において生産されるヒトASM(EC-3.1.4.12)のグリコフォームアルファである。成熟オリプダーゼアルファは、天然のヒトタンパク質の酵素的およびリソソーム標的化活性を保持する570アミノ酸のポリペプチドである。リーダー配列(残基1~57)を含むオリプダーゼアルファのアミノ酸配列は、以下に配列番号1として示されており、ここでリーダー配列はイタリック体で太字である。成熟オリプダーゼアルファ配列(配列番号1の残基58~627にかかる配列番号2)には、リーダー配列がない。
【0027】
【化1】
【0028】
他の実施形態では、本発明において有用なヒトASMは、アミノ酸配列がオリプダーゼアルファに対して99%、98%、97%、96%、または95%同一である。例えば、組成物中のヒトASMは、米国特許第6,541,218号に示される配列を有することができ、その開示は、その全体を本明細書に組み入れる。その配列(配列番号3)は、リーダー配列(残基1~59)をイタリック体および太字として以下に示されており、ここで成熟タンパク質(配列番号3の残基60~629にかかる配列番号4)にはリーダー配列がない。
【0029】
【化2】
【0030】
組成物中のヒトASMはまた、アミノ酸配列において、配列P17405-1またはその多型変異体としてUNIPROTデータベースに開示されているヒトASMと同一であってもよい。P17405-1配列は、リーダー配列(残基1~59)をイタリック体および太字として以下に示されており(配列番号5)、ここで成熟タンパク質(配列番号5の60~629の残基にかかる配列番号6)にはリーダー配列がない。
【0031】
【化3】
【0032】
組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ組成物
本発明の組成物は、組換えヒトASMを含み、酵素に関して優れた安定性を示す。「安定」または「安定性」は、保存中、および/または物理的または化学的ストレスに供した際に、その物理的安定性、化学的安定性、および/または生物学的活性を保持する組成物中の有効成分の能力を指す。安定性は、選択された温度、例えば冷蔵条件下(例えば、2~8℃)、または室温(例えば、23~25℃)で、選択された期間、例えば16週間、24週間、36週間、4か月、6か月、1年、2年、3年、またはそれ以上の状況におけるものであり得る。タンパク質の安定性は、より短い期間内に実践されるがその結果が臨床設定における安定性を示すアッセイで、測定される。そのようなアッセイには、タンパク質組成物が1つまたはそれ以上の凍結融解サイクルに供される凍結/解凍アッセイ;または、タンパク質組成物が所定の期間にわたって機械的攪拌処理に供される攪拌アッセイが含まれる。タンパク質の安定性は、タンパク質組成物を指定された保存温度(2~8℃など)で選択された期間保存し、二量体化または凝集の程度(例えば、サイズ排除HPLCまたはタンパク質ゲルで測定された)、タンパク質分解(例えば、サイズ排除HPLCまたはタンパク質ゲルで測定された)、組成物の色の変化、液体組成物の透明度、酵素活性、グリカン含有量および組成、受容体結合親和性、メチオニン残留酸化、および組成物の生物学的活性などのその構造的および機能的属性を分析することによって決定できる。
【0033】
本発明の組成物は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。「賦形剤」とは、薬物の有効成分の希釈剤、ビヒクル、担体、防腐剤、結合剤、または安定剤として使用される不活性物質を指す。例えば、組成物は、緩衝剤、等張剤、および/または抗酸化剤などの安定剤を含み得る。場合によっては、1つの薬剤がこれらの目的の複数を果たすこともある。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、オリプダーゼアルファなどの組換えヒトASM、リン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムなどの緩衝剤、L-メチオニンなどの安定剤、およびスクロースまたはトレハロースなどの非還元糖を含む。
ヒトASMは、組成物の特定の構成により、安定性が改善している。本発明の組成物は、水溶液または凍結乾燥調製物であり得る。
【0034】
液体組成物
いくつかの実施形態では、組成物は、1~10mg/mL(例えば、3~5mg/mL)rhASM(例えば、オリプダーゼアルファ);10~50mM(例えば、10~30mM)リン酸ナトリウム;70~150mM(例えば、80~120mM)メチオニン(例えば、L-メチオニン);および1~10%(例えば、4~6%)w/vスクロースまたはトレハロースを含む水性液体組成物である。水性液体組成物のpHは、5~8(例えば、6~7)であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、水性液体組成物は、本明細書に記載の水性液体組成物の凍結乾燥中または後にヒトASMの凝集を著しく増加させる可能性があるため、検出可能な量のマンニトール、最も容易に使用される結晶性賦形剤を含まない。
【0036】
いくつかの実施形態では、水性液体組成物は、0.004~0.008%、0.005~0.007%、または0.005%w/vの界面活性剤を含む。例示的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20および80)およびポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。特定の実施形態では、水性液体組成物は、0.005%ポリソルベート80を含む。場合によっては、界面活性剤の存在は、液体組成物の濁度を減少することに役立つ可能性がある。
【0037】
いくつかの実施形態では、水性液体組成物は、0.05、0.01、または0.005mM以下のEDTAおよびEGTAなどのキレート剤を含み;例示的な実施形態では、水性液体組成物は、検出可能な量のキレート剤を含まない。場合によっては、例えば0.05mMまたは0.1mMを超える濃度でのキレート剤の存在は、特には、例えば12~16週間のような長期の保存期間の後、または例えば25℃での非冷蔵条件下で、ヒトASMの凝集を増加させ、その安定性を低下させる可能性がある。
【0038】
いくつかの実施形態では、水性液体組成物は、0~50ppm(例えば、15~30ppm)の亜鉛を含むことができ、これは、例えば、製造プロセスから持ち越されるか、または外部から添加される。
【0039】
特定の実施形態では、水性液体組成物は、4mg/mLオリプダーゼアルファ、20mMリン酸ナトリウム、100mMメチオニン、および5%(w/v)スクロースを含むか、または本質的にそれらからなり、pH6.5を有する。「本質的にからなる」という用語は、組成物が検出可能な量で他の成分を含まないか、またはタンパク質製造プロセスに由来する微量の特定の物質のみを含み、そのような物質が酵素の生物学的活性に影響を及ぼさないか、またはヒト患者の害にならないことを意味する。
【0040】
いくつかの実施形態では、組成物は、1~20mg/mL(例えば、10mg/mL)rhASM(例えば、オリプダーゼアルファ)および10~50mM(例えば、20mM)リン酸ナトリウムを含む水性液体組成物である。特定の実施形態では、水性液体組成物は、メチオニン(例えば、L-メチオニン)およびスクロースまたはトレハロースをさらに含む。特定の実施形態では、水性液体組成物は、80~120mM(例えば、100mM)メチオニンおよび4~6%(例えば、5%)(w/v)スクロースをさらに含む。特定の実施形態では、水性液体組成物は、pH6.5を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、組成物は、1~50mg/mL(例えば、3.8、18、または49mg/mL)rhASM(例えば、オリプダーゼアルファ)および10~50m
M(例えば、20mM)リン酸ナトリウムを含む水性液体組成物である。特定の実施形態では、水性液体組成物は、1~15%(例えば、5%、6%、7%、または8%)スクロースまたはトレハロースをさらに含む。特定の実施形態では、水性液体組成物は、80~120mM(例えば、100mM)メチオニンをさらに含む。特定の実施形態では、水性液体組成物は、pH6.5を有する。組成物は、例えば、3.8mg/mL rhASM、20mMリン酸ナトリウム、および5%スクロース;18mg/mL rhASM、20mMリン酸ナトリウム、および5%スクロース;または49mg/mL rhASM、20mMリン酸塩、および8%スクロースを含んでもよい。
【0042】
水性液体組成物は、組換え技術によって生成され、続いて宿主細胞から精製されたヒトASMを本明細書に記載の賦形剤と水中で混合し、得られた混合物を所望のpHに調整することによって調製することができる。例えば、ヒトASMおよび所望の賦形剤は、所望のリン酸ナトリウム濃度およびpHを有するリン酸ナトリウム緩衝液に、添加または緩衝液交換される。
【0043】
いくつかの実施形態では、水性液体組成物は、以下でさらに詳細に記載される本発明の凍結乾燥組成物を再構成することによって調製することができる。再構成は、滅菌水、生理食塩水(例えば、0.9%塩化ナトリウム)、またはリン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容される液体を用いて行うことができる。
【0044】
凍結乾燥組成物
本発明はまた、凍結乾燥組成物を提供する。そのような組成物は、本明細書に記載の水性液体組成物を凍結乾燥することによって調製することができる。凍結乾燥組成物は、長期間の保存に適する。凍結乾燥は、当該技術分野で知られている方法に従って実行することができる。例えば、液体組成物は、凍結が起きるゼロ以下(摂氏)の温度(例えば、-5℃から-80℃)に冷やされ、次に低圧(部分真空)チャンバー内に設置して昇華を起こさせてもよい(一次乾燥);ここでは必要に応じ、不要な水分子をさらに除去するために、乾燥の第2段階(二次乾燥)で組成物の温度を上昇させてもよい。いくつかの実施形態では、凍結乾燥プロセスの完了後、容器を密封する前に、窒素などの不活性ガスが組成物の容器(例えば、ガラスバイアル)内に導入される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の水性液体組成物を、例えば、噴霧乾燥することによって調製することができる粉末組成物を提供する。噴霧乾燥された組成物は、長期間の保存に適する。噴霧乾燥は、当技術分野で知られている方法に従って実行することができる。例えば、液体組成物は、噴霧器またはスプレーノズルを通して制御されたサイズの小液滴としてチャンバー内の高温ガス流中に強制的に分散させ、その結果、液体組成物を急速に乾燥させて粉末にすることができる。その後、乾燥した粉末を乾燥チャンバーの底に集めることができる。粉末組成物を調製するための他の乾燥方法もまた企図される。
【0046】
本発明者らは、本明細書に記載の量で存在するスクロース(またはトレハロース)およびメチオニンが凍結乾燥中に優れた結果を提供することを予期せずに発見した;凍結乾燥産物は、保存中、ヒトASMの安定性を保ちながら、エレガントケーキ(elegant
cakes)を形成する。本発明の凍結乾燥組成物中のヒトASMは、冷蔵条件下(例えば、0~10℃、2~8℃、または4℃)で、少なくとも4ヶ月(例えば、少なくとも6ヶ月、または少なくとも12ヶ月)、凝集することなく、生物学的活性を維持することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、4~50%オリプダーゼアルファ、3~7%リン酸ナトリウム、および45~90%スクロース(全てw/wパーセント)を含む
凍結乾燥医薬組成物である。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、5.5%オリプダーゼアルファ、20.6% L-メチオニン、2.3%リン酸ナトリウム二塩基性七水和物、2.6%リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および69.0%スクロース(全てw/wパーセント)を含む。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、6.6%オリプダーゼアルファ、3.0%リン酸ナトリウム二塩基性七水和物、3.3%リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および87.1%スクロース(全てw/wパーセント)を含む。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、25.2%オリプダーゼアルファ、2.4%リン酸ナトリウム二塩基性七水和物、2.6%リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および69.9%スクロース(全てw/wパーセント)を含む。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、47.8%オリプダーゼアルファ、1.7%リン酸ナトリウム二塩基性七水和物、1.8%リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および48.8%スクロース(全てw/wパーセント)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、4~7%オリプダーゼアルファ、15~25% L-メチオニン、3~7%リン酸ナトリウム、および65~75%スクロース(全てw/wパーセント)を含む凍結乾燥医薬組成物である。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、5.5%オリプダーゼアルファ、20.5% L-メチオニン、2.3%リン酸ナトリウム二塩基性七水和物、2.6%リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および68.6%スクロース(全てw/wパーセント)を含む。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物はまた、例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、または1.0%の水分を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明は、15~25mgオリプダーゼアルファ、75~85mg L-メチオニン、15~25mgリン酸ナトリウム、および250~300mgスクロースを含む、凍結乾燥医薬組成物を含む、バイアルを提供する。使用する前に、組成物を4~6mLの滅菌水で再構成することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、バイアルは、21.2mg、20.1mg、95.4mg、または259.7mgのオリプダーゼアルファ;9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物;10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物;および265mgスクロースを含むか、またはそれらからなる凍結乾燥医薬組成物を含む。凍結乾燥組成物は、場合により、79.1mg L-メチオニンを含んでもよい。凍結乾燥医薬組成物は、場合により、0~0.3mg(例えば、0.08~0.16mg)の亜鉛を含んでもよく、これは、例えば、製造プロセスから持ち越されるか、または外部から添加される。特定の実施形態では、バイアルは、内部が無菌の窒素で満たされた雰囲気を有してもよい。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物を5.1mLの滅菌水で再構成して、それぞれオリプダーゼアルファ約4.0mg/mL、3.8mg/mL、18mg/mL、または49mg/mLの濃度を得ることができる。再構成された組成物は、特定の容量に、投与される用量に基づいて0.9%塩化ナトリウム溶液でさらに希釈される。
【0051】
特定の実施形態では、バイアルは、21.2mgオリプダーゼアルファ、79mg L-メチオニン、9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および265mgスクロースを含むかまたはそれらからなる凍結乾燥医薬組成物を含む。凍結乾燥医薬組成物は、場合により、0~0.3mg(例えば、0.08~0.16mg)の亜鉛を含んでもよく、これは、例えば、製造プロセスから持ち越されるか、または外部から添加される。特定の実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、ケーキまたは凍結乾燥された粉末の形態である。特定の実施形態では、バイアルは、内部が無菌の窒素で満たされた雰囲気を有してもよい。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、5.1mLの滅菌水中に再構成されて、約4.0mg/mLのオリプダーゼアルファ濃度を得ることができる。再構成された組成物は、特定の容量に、投与される用量に
基づいて0.9%塩化ナトリウム溶液でさらに希釈される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明は、3~5mgオリプダーゼアルファ、15~17mg L-メチオニン、3~5mgリン酸ナトリウム、および50~60mgスクロースを含む、凍結乾燥医薬組成物を含む、バイアルを提供する。使用する前に、組成物を0.8~1.2mLの滅菌水中に再構成してもよい。
【0053】
特定の実施形態では、バイアルは、4.8mgオリプダーゼアルファ、17.9mg L-メチオニン、2.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および60mgスクロースを含むか、またはそれらからなる凍結乾燥医薬組成物を含む。特定の実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、ケーキまたは凍結乾燥された粉末の形態である。凍結乾燥組成物は、場合により、0~0.06mgの亜鉛を含んでもよく、これは、例えば、製造プロセスから持ち越されるか、または外部から添加される。特定の実施形態では、バイアルは、内部が無菌の窒素で満たされた雰囲気を有してもよい。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、1.1mLの滅菌水中に再構成されて、約4.0mg/mLのオリプダーゼアルファ濃度を得ることができる。再構成された組成物は、特定の容量に、投与される用量に基づいて0.9%塩化ナトリウム溶液でさらに希釈される。
【0054】
製造品
本発明の組成物は、ASM障害を治療するための使用説明書、および場合により、他の治療薬を含む製造品(例えば、キット)で供給することができる。製品中の医薬的に活性な成分(例えば、rhASM)は、本明細書に記載の投与計画に従って容易に投与することができる量で供給することができる。例えば、「スターターキット」は、用量漸増レジメンで使用するための様々な量のrhASMの複数バイアルを含んでもよい。
【0055】
例えば、製造品は、オ15~25mgリプダーゼアルファ、75~85mg L-メチオニン、15~25mgリン酸ナトリウム、および250~300mgスクロースを含む、バイアルを含んでもよい。特定の実施形態では、製造品は、21.2mgオリプダーゼアルファ、79mgメチオニン、9.0mg、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物、10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および265mスクロース265mgを含む凍結乾燥組成物を提供する。
【0056】
別の例として、製造品は、3~5mgオリプダーゼアルファ、15~17mg L-メチオニン、3~5mgリン酸ナトリウム、およびス50~60mgクロースを含む、バイアルを含んでもよい。特定の実施形態では、製造品は、4.8mgオリプダーゼアルファ、17.9mg L-メチオニン、リ2.0mgン酸ナトリウム二塩基性七水和物、2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、および60mgスクロースを含む凍結乾燥組成物を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、製造品は、凍結乾燥組成物を再構成するための、および/または患者に投与する前に再構成された組成物をさらに希釈するための溶液(例えば、滅菌水、0.9%塩化ナトリウム、および/またはリン酸緩衝生理食塩水)をさらに含んでもよい。
【0058】
酸性スフィンゴミエリナーゼ組成物の使用
本発明の医薬組成物は、酵素代替療法としてそれを必要とする患者に非経口的に投与することができる。「非経口投与」とは、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与手段を指す。非経口投与には、静脈内注入または注射、ならびに筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下注射が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、医薬組成
物は、静脈内注入を介して投与される。
【0059】
本明細書に記載の医薬組成物の適切な投与量レベルは、患者の年齢、体重、病状、一般的な健康状態、および病歴、ならびに薬物投与の経路および頻度、薬剤、および患者が同時に服用している可能性のある任意の他の薬剤中のASM有効成分の薬力学と薬物動態を含む様々な要因に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、米国特許第9,655,954号(Schuchmanら)に記載されている投与量レジメンに従って投与することができる。例えば、患者は、患者の年齢および状態に依存して、例えば、0.1mg/kg以下で始まり、3mg/kg(維持用量)以下で終わる用量強度で、漸増用量のヒトASMを受けることができる。いくつかの実施形態では、最初の1回または2回の用量は、小児患者については0.03mg/kgまたは0.1mg/kg、または成人患者については0.1mg/kgの用量強度で与えられてもよい;患者が0.03および/または0.1mg/kgで1回または2回の用量を受けた後、患者はその後、0.3mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、および3.0mg/kgの連続用量を与えられる。特定の実施形態では、前記用量のいずれかを繰り返すことができる(例えば、1.0mg/kgおよび2.0mg/kgでの用量)。一部の患者については、3.0mg/kgの用量強度が維持用量として適しているが、他の患者については、より低い用量強度が維持に十分である場合がある。連続用量の間隔は、臨床医によって適切であると決定された場合、2週間、または2週間より短くても長くてもよい。
【0060】
本発明は、それを必要とする患者においてASMDを治療するために本明細書に記載の医薬組成物を使用する方法、それを必要とする患者のASMDの治療における使用のための本明細書に記載の医薬組成物、およびそれを必要とする患者においてASMDを治療するための薬剤の製造のための本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥組成物であってもよく、これは、滅菌水、0.9%塩化ナトリウム溶液、またはリン酸緩衝生理食塩水などの医薬的に許容される液体中で再構成される。
【0061】
患者は成人(例えば、65歳以上の老人患者を含む18歳以上の患者)であってもよい。患者は小児患者(18歳未満である患者、例えば、新生児から6歳、6歳から12歳、または12歳から18歳である患者)であってもよい。いくつかの実施形態では、患者はNPD A/BまたはNPD Bを有する場合がある。いくつかの実施形態では、患者はNPD Aを有する場合がある。特定の実施形態では、医薬組成物は、慢性内臓ASMD(NPD B)を有する成人または小児患者を治療するためのものである。特定の実施形態では、医薬組成物は、成人または小児患者におけるASMDの非神経学的症状を治療するためのものである。
【0062】
例示的な実施形態
本発明のさらなる特定の実施形態を以下に記載する。
1.組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ、リン酸ナトリウム、メチオニン、およびスクロースを含む組成物。
2.組成物は:
4~7%w/wオリプダーゼアルファ(配列番号2)、
3~7%w/wリン酸ナトリウム、
15~25%w/w L-メチオニン、および
65~75%w/wスクロースを含む凍結乾燥組成物である、実施形態1に記載の組成物。
3.本質的に:
5.5%w/wオリプダーゼアルファ、
2.3%w/wリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.6%w/wリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
20.5%w/w L-メチオニン、および
68.6%w/wスクロースからなる、実施形態2の組成物。
4.組成物は:
1~10mg/mLオリプダーゼアルファ、
10~50mMリン酸ナトリウム、
70~150mM L-メチオニン、および
1~10%w/vスクロースを含む水性液体組成物であって、
組成物はpH5~8を有する、実施形態1の組成物。
5.組成物は:
3~5mg/mLオリプダーゼアルファ、
10~30mMリン酸ナトリウム、
80~120mM L-メチオニン、および
4~6%w/vスクロースを含む水性液体組成物であって、
組成物はpH6~7を有する、実施形態4の組成物。
6.本質的に:
4mg/mLオリプダーゼアルファ、
20mMリン酸ナトリウム、
100mM L-メチオニン、および
5%w/vスクロースからなる、実施形態4の組成物であって、
pH6.5を有する、組成物。
7.0.005%w/vポリソルベート80をさらに含む、実施形態4~6のいずれか1つの組成物。
8.実施形態4~7のいずれか1つの水性液体組成物を凍結乾燥することによって得られる組成物。
9.凍結乾燥組成物を製造するための方法であって:
実施形態4~7のいずれか1つの水性液体組成物を得ること、および
水性液体組成物を凍結乾燥することを含む、方法。
10.本質的に:
21.2mgオリプダーゼアルファ、
9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
79mg L-メチオニン、および
265mgスクロースからなる凍結乾燥組成物を含む、バイアル。
11.本質的に:
21.2mgオリプダーゼアルファ、
9.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
10.0mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
79mg L-メチオニン、および
265mスクロース
からなる凍結乾燥組成物を、5.1mLの滅菌水中に再構成することによって得られる、水性液体組成物。
12.本質的に:
4.8mgオリプダーゼアルファ、
2.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
17.9mg L-メチオニン、および
60mgスクロースからなる凍結乾燥組成物を含む、バイアル。
13.本質的に:
4.8mgオリプダーゼアルファ、
2.0mgリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、
2.3mgリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、
17.9mg L-メチオニン、および
60mgスクロースからなる凍結乾燥組成物を、1.1mLの滅菌水中に再構成することによって得られる、水性液体組成物。
14.実施形態10または12のバイアルおよび、凍結乾燥組成物を再構成するための滅菌水、0.9%塩化ナトリウム、またはリン酸緩衝生理食塩水を含むバイアルを含む、製造品。
15.ヒト患者における酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)を治療する方法であって、実施形態1~8、11、および13のいずれか1つの組成物を患者に投与することを含み、組成物は、それが凍結乾燥組成物である場合、投与前に液体形態に再構成される、方法。
16.ヒト患者におけるASMDの治療に使用するための、実施形態1~8、11、および13のいずれか1つの組成物。
17.ヒト患者においてASMDを治療するための薬剤を製造するための、実施形態1~8、11、および13のいずれか1つの組成物の使用。
18.ASMDはニーマンピック病タイプA/BまたはタイプBである、実施形態15の方法、実施形態16の使用のための組成物、または実施形態17の使用。
19.治療はASMDの非神経学的症状のためのものである、実施形態18の方法、使用のための組成物、または使用。
【0063】
本明細書で言及される全ての刊行物および他の参考文献は、その全体を参照によって組み入れる。多くの文献が本明細書で引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではない。本明細書に別段の定義が無い限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例示的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料もまた、本発明の実行または試験に使用することができる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配する。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬化学、ならびにタンパク質および核酸化学に関連して使用される命名法およびそれらの技術は、当該技術分野でよく知られており、一般的に使用されている。酵素反応および精製技術は、当該技術分野で一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように、製造業者の仕様に従って実行される。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。本明細書および実施形態を通して、「有する」および「含む」という単語、または「有する」、「有している」、「含む」、または「含まれる」などの変形は、記載された整数または整数のグループを含むことを意味するが、他の整数または整数のグループを除外することを意味しないことは理解されるであろう。
【実施例0064】
本発明をより良く理解するために、以下の実施例を示す。これらの例は、例示のみを目的としており、いかなる様式でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0065】
組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ製剤
この例では、様々なオリプダーゼアルファ水性液体および凍結乾燥組成物の安定性を評価した研究を記載する。
【0066】
材料および方法
溶液の濁度
溶液の乳白光は、分光学的濁度アッセイによって評価された。特定のNTU値でのヨーロッパ薬局方参照懸濁液に基づき、以前に確立された乳白色のカテゴリの範囲を設定するために、340~360nmの範囲の光学密度を使用した。SpectraMax Plus 384マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices社、Sunnyvale、CA)で分析を行った。
【0067】
凝集
SECによって、凝集および二量体分析を行った。HPLCバイアルにロードする前に、各サンプルを5回の穏やかなピペット循環により混合した。SEC分析は、TSKゲルG3000SWXL(東ソーバイオサイエンス社、東京、日本)分析カラムおよび対応するガードカラムを備えた1100/1200シリーズHPLC(Agilent社、Santa Clara、CA)で行った。使用した移動相は、pH6の20mMリン酸ナトリウム、0.5mL min-1の流速で35分間に設定した200mM塩化ナトリウムであった。各サンプルに対して3回のおよそ80μgの注入を行った。検出は、280nmでのUV吸光度によって実行した。
【0068】
オリプダーゼアルファ関連高分子量種(HMWS)のレベルは、非還元条件下でSDS-PAGEを使用し、続いてクマシーブルーで染色することにより決定した。オリプダーゼアルファ参照標準は、各ゲルに含まれる。オリプダーゼアルファサンプルをサンプル緩衝液と混合し、分子量マーカーとともに4~20%Tris-Glycine勾配ゲルにロードした。125Vの標的でおよそ2時間電気泳動した後、ゲルをクマシーブルーで染色し、メタノール、酢酸およびHPLCグレードの水で脱色した。デンシトメトリー分析を行い、観察された全てのバンドに対してHMWSバンドのパーセンテージについての定量的結果を提供した。
【0069】
酵素活性
rhASMサンプルを1.2mLライブラリーチューブ中で2000:1に希釈した。この手順では、rhASMによって触媒される37℃での2-(N-ヘキサデカノイルアミノ)-4-ニトロフェニルホスホリルコリン(HDA-PC)の加水分解速度を測定した。放出された発色団は、SpectraMax Plus 384マイクロプレート分光光度計を使用して415nmでの吸光度によって測定された。rhASM活性の1単位は、指定されたアッセイ条件下でHDA-PCから1分あたり1μmolの2-(N-ヘキサデカノイルアミノ)-4-ニトロフェノールを生成する酵素の量として定義される。
【0070】
タンパク質濃度
rhASMサンプルのタンパク質濃度は、280nmでの吸光度によって決定された。対応する緩衝液を使用して、サンプルを1:10および1:20に重複して希釈した。280nmでの吸光度は、SpectraMax Plus 384マイクロプレート分光光度計で測定した。
【0071】
pH
サンプルのpH分析は、Thermo Electron Microprobe pHメーター(Thermo Scientific社、Beverly、MA)で行った。Thermo Orion 8203BN PerHecT Rossセミマイクロガラスプローブ(Thermo Scientific社)を使用した。
【0072】
示差走査熱量計
示差走査熱量計(DSC)分析は、CAP-VP-DSCマイクロカロリメーター(M
icroCal-GE Healthcare社、Northampton、MA)を使用して行った。サンプルは、対応する緩衝液で0.4mg/mLに希釈された。サンプルは、15~100℃で200℃/時のスキャン速度で行われた。データ分析は、DSC分析アドオン(MicroCal-GE Healthcare社)を備えたOrigin
7.0(OriginLab社、Northampton、MA)で行われた。
【0073】
結果
緩衝液およびpH評価
rhASMの安定性に対する影響について、様々な緩衝液のpHおよび緩衝液の種類を評価した。アッセイは、4mg/mlオリプダーゼアルファを20mM緩衝液中、30℃で2週間インキュベートし、酵素の物理的および機能的安定性を評価することにより行った(図1A~1C)。
【0074】
物理的および機能的の両方で重大な不安定性がpH6.0未満のオリプダーゼアルファにおいて観察された。酵素活性は、pH6.0未満では急激に減少したが、pH6.0以上では比較的一定のままであった(図1A)。凝集傾向は、pH5.5から6.5の間で最低であった。pH5.5未満で凝集の急激な増加が観察され、pH6.5を超えると凝集の緩やかな増加が観察された(図1B)。同等のpH値では、クエン酸/リン酸緩衝液と比較するとリン酸緩衝液の方が安定性は高かった。これらの安定性の傾向は冷蔵温度で保存されたサンプルから得られたデータと一致していた。pH6.5を超えて観察された緩やかに増加する凝集速度は、DSC分析によって裏付けられ、これは、リン酸緩衝液中のより高いpHで熱安定性の低下を示した(図1C)。これらのデータに基づいて、rhASM製剤に適した緩衝システムとしてpH約6.5のリン酸ナトリウム緩衝液が特定された。
【0075】
次に、リン酸ナトリウム濃度を10mMから100mMまで変化させることにより、安定性に対するイオン強度または緩衝液濃度の影響を調査した。図2Aおよび2Bにおいて示されるように、低緩衝液濃度(10mM、20mM、または50mM)でのイオン強度は、オリプダーゼアルファの酵素活性および物理的安定性にほとんど影響を及ぼさなかった。リン酸ナトリウム、pH6.5でのオリプダーゼアルファの安定性は、50mM以下の緩衝液濃度で比較的一致していた。しかしながら、リン酸ナトリウムの濃度を100mMに増加すると、安定性の著しい低下があった。そのような濃度は、凝集種の急速な増加および付随する活性の低下をもたらした(図2Aおよび2B)。30℃でのデータは、冷蔵条件下でのオリプダーゼアルファの保存中に見られるデータと一致していた。緩衝液濃度として20mMのリン酸ナトリウム濃度を選択したが、これは低いものの、十分な緩衝能を確保していた。
【0076】
賦形剤の評価
様々な薬学的に許容される賦形剤を、液体および凍結乾燥組成物中のオリプダーゼアルファの安定性に対するそれらの影響について評価した。液体の安定性においての優先的排除メカニズムを介して作用する既知の安定剤の影響をまず調査した(例えば、Timasheff, Proc Nat Acad Sci USA. 99: 9721~9726頁(2002);およびLeeら, J. Biol. Chem. 256:7193~7201頁(1981))。スクロース、トレハロース、およびプロピレングリコールを20mMリン酸ナトリウム、0.005%PS80、pH6.5の基本製剤に添加し、4mg/mLオリプダーゼアルファの酵素活性および物理的安定性に対する影響を評価した。データは、これらの優先的排除安定剤のいずれの存在も、5℃または30℃での液体状態のオリプダーゼアルファの安定性を増強しなかったことを示した(データは示さず)。研究した全ての条件下で酵素活性および物理的安定性の損失があったが、スクロースはトレハロースやプロピレングリコールよりもわずかに好ましいようであった。
【0077】
次に、凍結乾燥中のオリプダーゼアルファの安定性に対するスクロースおよびトレハロースの影響を調査した。マンニトールは、凍結乾燥で一般的に使用される増量剤であるため、調査された(図3Aおよび3B)。3つのポリオールは、液体組成物に5%w/vで含まれ、その後、凍結乾燥された。図3Aのデータは、マンニトールの添加が凍結乾燥後のオリプダーゼアルファの酵素活性を減少させたことを示す。図3Bのデータは、マンニトールの添加が、凍結乾燥後のタンパク質凝集の大幅な増加をもたらしたことを示す。スクロースおよびトレハロースの存在下での凝集の増加は最小限であった。凍結防止剤として、スクロースを、液体組成物中、5%w/vの濃度で選択し、これはその後凍結乾燥することができた。
【0078】
マンニトールの存在下での経時的な凍結乾燥オリプダーゼアルファ製剤の安定性も調べた。オリプダーゼアルファは、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、0.005%PS80、ならびに(i)5%w/vマンニトール、(ii)5%w/vスクロース、または(iii)3%マンニトールおよび2%スクロースを含む液体組成物から凍結乾燥した。データは、マンニトールは、単独で使用した場合、凍結乾燥中のタンパク質凝集の即時ならびに継続的な増加をもたらしただけでなく、6ヶ月間スクロースと組み合わせて使用された場合にもそのような結果をもたらしたことを示す(図3Bおよび4B)。6ヶ月目での酵素活性もまた、マンニトールの非存在下よりもマンニトールの存在下で低かった(図4B)。したがって、マンニトールは、凍結乾燥rhASM製剤には不適切な増量剤と見なされた。
【0079】
マンニトールは凍結乾燥中のrhASMの安定性に有害であることが判明したため、メチオニンを潜在的な増量剤として評価した。L-メチオニンの存在下でのオリプダーゼアルファの液体保存中の酵素活性および物理的安定性を評価したところ、100mM L-メチオニンの添加は、5℃におけるオリプダーゼアルファの液体安定性を改善することも悪影響も与えることもないことがわかった。図5Aおよび5Bに示されるように、100mML-メチオニンを含む液体組成物から調製された凍結乾燥組成物は、オリプダーゼアルファの安定した凍結乾燥構成物をもたらした。5℃で6ヶ月の保存の間、活性や凝集の変化は観察されなかった。さらに、メチオニンおよびスクロースの存在下での凍結乾燥オリプダーゼアルファから得られたケーキは、スクロースのみで凍結乾燥されたものに対して外観が改善されていた。
【0080】
凍結乾燥について適切な量のメチオニンの同定は、20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)、5%w/vスクロース、および増加する量のL-メチオニンを含む液体組成物から凍結乾燥したオリプダーゼアルファケーキのX線回折(XRD)によって行った(データは示さず)。メチオニンを含まないサンプルは完全にアモルファスであった。33mMメチオニンを含むサンプルには結晶化の証拠がいくつかあり、66mMおよび100mMメチオニンを含むサンプルにはさらなる結晶化の証拠があった。100mM未満のメチオニンレベル(例えば、10mMおよび33mM)でのオリプダーゼアルファの凍結乾燥は、窪んで崩壊した(収縮した)ように見えるバイアルをもたらした。したがって、100mMメチオニンを凍結乾燥rhASM製剤の増量剤として選択した。
【実施例0081】
オリプダーゼアルファ組成物の堅牢性
オリプダーゼアルファ、スクロース、およびL-メチオニンを含む組成物の堅牢性を評価するために、各々のこれらの成分を、20mMリン酸ナトリウム緩衝液中、対照と比較した5つの異なるレベル(低、中低、中央(対照)、中高、および高)に設定した(表1)。
【0082】
【表1】
【0083】
合計26の液体製剤変種を生成した(表2)。製剤2および7は、対照製剤または中心点を表す。残りの24の配合変種は、中心点周辺の様々な条件を表す。全ての26変種を2~8℃(24週間または最大12ヶ月)および25℃(16週間)で保存し、それらの安定性をモニターした。
【0084】
【表2】
【0085】
試験期間の終了時には、以下のパラメーターが組成物の安定性を示すであろう:(1)透明無色の外観;(2)pH6.0~7.0;(3)凝集3.0%以下;(4)3.5~4.5mg/mLタンパク質;(5)HMWS 15%以下;および(6)比活性11~42U/mg。図6~8は、2~8℃で24週間保存した後の、それぞれ26の製剤変種
における%二量体、比活性、および%HMWSに対する異なる要因の効果を示す。データは、%二量体、比活性、または%HMWSに関して変種間に有意な差はなく、したがって、24の変種全てが2つの対照製剤とともに2~8℃で24週間安定であったことを示している。
【0086】
いくつかの変種では、36週間を通して、%二量体および比活性に対する様々なpHおよび成分濃度の有意な影響がなかったことも観察された。図9は、36週間目で全ての変種が同様な凝集であったことを示している。
【0087】
25℃の加速温度では、16週間にわたる安定性に対する賦形剤の影響も試験した範囲でほとんどなかった。最も顕著な影響は、異なるpHを有する変種で観察された(図10)。より高いpH(6.8から7.0)でオリプダーゼアルファの安定性が高く、より低いpH(6.5以下)ではより多くの凝集および二量体があった。
【0088】
本研究は、2~8℃での変種製剤が、選択された成分範囲で堅牢かつ安定であることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024069459000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ、リン酸ナトリウム、メチオニン、およびスクロースを含む組成物。
【外国語明細書】