(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069465
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】アルブミン結合ペプチド結合体及びその方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240514BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240514BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240514BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240514BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240514BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240514BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P37/02
A61P35/00
A61P31/00
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 A
C07K19/00
C07K16/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039818
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2020506750の分割
【原出願日】2018-08-09
(31)【優先権主張番号】62/543,163
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケリー デア モイニハン
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ リン ホールデン
(72)【発明者】
【氏名】ダレル ジェイ. アーバイン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー レザー ペンテルート
(57)【要約】
【課題】アルブミン結合ペプチド結合体及びその方法の提供。
【解決手段】本発明は、アルブミン結合ペプチドとカーゴを含む結合体、カーゴをリンパ系に向かわせるための組成物、及びワクチンを提供する。本発明の方法は、免疫応答を増加させるために、又はがん若しくは感染性疾患を処置するために使用することができる。一局面において、(a)アルブミン結合ペプチドと(b)免疫調節分子とを含む、結合体が提供され、上記アルブミン結合ペプチドが、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、上記免疫調節分子に作動可能に結合されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連情報のパラグラフ
本願は、2017年8月9日に出願された米国仮出願第62/543,163号の優先日の利益を主張し、その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の資金拠出
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号R01 EB022433の下で政府の支援を得て為された。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
T細胞応答を誘導するためのペプチドワクチンは、がん及びその他の疾患に対する使用に関して大きな潜在性を有するが、その効力は限られている(Hacohen,N.,Fritsch,E.F.,Carter,T.A.,Lander,E.S.&Wu,C.J.Getting personal with neoantigen-based therapeutic cancer vaccines.Cancer Immunol Res 1,11-15,doi:10.1158/2326-6066.CIR-13-0022(2013);Melief,C.J.M.&van der Burg,S.H.Immunotherapy of established(pre)malignant disease by synthetic long peptide vaccines.Nat Rev Cancer 8,351-360(2008))。現行のワクチンの活性を制約する一つの要因は、免疫応答が刺激される場所であるリンパ節への不十分な標的化である。強化されたリンパ節標的化は、PEGスペーサーによって隔てられたジアシル脂質をペプチド抗原に付加することによって達成することができる(Liu,H.ら、Structure-based programming of lymph-node targeting in molecular vaccines.Nature 507,519-522,doi:10.1038/nature12978(2014))。作用機序は、注射の際に内在性アルブミンの結合を伴うと考えられており、これによって、臨床的に使用されるセンチネルリンパ節マッピング色素の作用機序と同様に、ペプチド抗原が流入領域リンパ節まで「ヒッチハイク」できるようになる(Lindner,V.&Heinle,H.Binding properties of circulating evans blue in rabbits as determined by disc electrophoresis.Atherosclerosis 43,417-422,(1982))。しかしながら、ペプチドワクチンの抗原性を増強するための改善された組成物に対する要望がなお存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hacohen,N.ら、Cancer Immunol Res(2013)1,11~15
【非特許文献2】Liu,H.ら、Nature(2014)507,519~522
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、免疫調節分子の抗原性を増強するために免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)に共有結合されたアルブミン結合ペプチドが使用され得るという発見に、少なくとも部分的に基づいている。本開示は、免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)に共有結合されたアルブミン結合ペプチドが内因性免疫応答を刺激し得るという発見にも、少なくとも部分的に基づいている。さらに、本開示は、がん若しくは感染性疾患を処置するための又は被験体中の免疫応答を増加させるための方法において、免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)に共有結合されたアルブミン結合ペプチドが使用され得るという発見に、少なくとも部分的に基づいている。
したがって、一態様において、本開示は、アルブミン結合ペプチドと免疫調節分子とを含む結合体であって、アルブミン結合ペプチドが、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、免疫調節分子に作動可能に結合されている結合体を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、免疫調節分子をリンパ系に向かわせるための組成物であって、組成物がアルブミン結合ペプチドと免疫調節分子とを含む結合体を含み、アルブミン結合ペプチドが、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、免疫調節分子に作動可能に結合されている組成物を提供する。
【0007】
ある実施形態において、アルブミン結合ペプチドは免疫調節分子に作動可能に結合されている。
【0008】
ある実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、リンカードメインを介して、免疫調節分子に作動可能に結合されている。ある実施形態において、リンカードメインは、(Gly4Ser)nリンカーなどのGly-Serリンカーを含む。ある実施形態において、リンカードメインは、PEG2000リンカーなどのポリエチレングリコール(PEG)リンカーを含む。
【0009】
ある実施形態において、免疫調節分子はペプチド抗原又は分子アジュバントである。ある実施形態において、ペプチド抗原はがん抗原である。ある実施形態において、ペプチド抗原は黒色腫抗原である。ある実施形態において、分子アジュバントはCpG DNAである。
【0010】
ある実施形態において、アルブミン結合ペプチドはアミノ酸配列DICLPRWGCLWを含む。
【0011】
ある実施形態において、本発明は、本開示の結合体を含むワクチンを提供する。ある実施形態において、ワクチンは、本開示の結合体と薬学的に許容され得る担体若しくは賦形剤とを含む。ある実施形態において、ワクチンは本開示の結合体とアジュバントとを含む。
【0012】
ある実施形態において、結合体は、抗原単独の投与と比べて、インビボで被験体に投与されたときに、リンパ節中で増加した蓄積を示す。
【0013】
ある実施形態において、本発明は、本開示の結合体を含む免疫原性組成物を提供する。ある実施形態において、本発明は、本開示のワクチンを含む免疫原性組成物を提供する。
【0014】
ある実施形態において、本開示は、がん又は感染性疾患を処置するための方法であって、対照と比べてがん又は感染性疾患の1つ又はそれを超える症状を低減するのに有効な量の本開示の結合体を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0015】
ある実施形態において、本開示は、被験体中の免疫応答を増加させるための方法であって、被験体中の免疫応答を増加させるのに有効な量の本開示の結合体を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
ある実施形態において、被験体はがん又は感染性疾患を有する。
【0017】
ある実施形態において、本発明は、本開示の結合体をコードする核酸分子を提供する。ある実施形態において、本発明は、本開示の結合体をコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。ある実施形態において、本発明は、該組換え発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0018】
ある実施形態において、本発明は、結合体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を提供すること、及び結合体が発現される条件下に宿主細胞を維持することを含む、本開示の結合体を作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本特許又は出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。申し込み及び必要な手数料の支払いを行えば、カラーの図面を有する本特許又は特許出願刊行物の写しが特許庁によって交付される。
【0020】
【
図1】
図1は、例示的なアルブミン結合ペプチド-抗原構築物を図示する模式図である。ABP-PEG2k-EGPロングは、構成:PEG2kリンカーを介してEGPロングペプチド(AVGALEGPRNQDWLGVPRQL)に作動可能に結合されたアルブミン結合ペプチド(環化されたDICLPRWGCLW)を有する。ABP-G4S-EGPロングは、構成:Gly
4Serリンカーを介してEGPロングペプチド(AVGALEGPRNQDWLGVPRQL)に作動可能に連結されたアルブミン結合ペプチド(環化されたDICLPRWGCLW)を有する。
【0021】
【
図2】
図2は、アルブミン結合ペプチドワクチンの合成及び精製を図示する模式図である。構築物は、自動化された固相ペプチド合成を介して単一単位として合成された。次いで、構築物は逆相HPLCを介して精製され、mg量で単離された。
【0022】
【
図3】
図3は、アルブミン結合ペプチドワクチンの環化を図示する模式図である。構築物は、自発的なジスルフィド形成を可能にすることによって環化された。緩衝液は、固相抽出を介して除去した。
【0023】
【
図4】
図4は、アルブミン結合ペプチドワクチンのLC-MS分析及び特徴付けを図示する。
【0024】
【
図5】
図5は、アルブミン結合ペプチドワクチンの免疫化レジメン(immunization regiment)を図示する模式図である。第0日目にマウスに初回刺激を行い、第14日目に追加刺激を行い、末梢血中でのT細胞刺激を評価するために、第21日目に四量体染色を行った。
【0025】
【
図6】
図6は、アルブミン結合ペプチドワクチン免疫化の結果をグラフで図示している。左側のグラフは、全ての生きたCD8+T細胞のうちCD44
hi四量体+の百分率を図示する。右側のグラフは、修飾されていないEGPロングペプチド、ABP-PEG2K-EGPロング構築物及びABP-GGGS-EGPロング構築物についての代表的なフロープロットを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、アルブミン結合ペプチド(ABP)にペプチド抗原を繋留することによってペプチド抗原の抗原性を増強する新規方法を提供する。
【0027】
本発明の発見より以前には、アルブミン結合ペプチドは、ワクチン学の観点ではほぼ調査されていないままであった。アルブミン結合ペプチドは、以前には、数個の前臨床研究においてタンパク質治療薬の薬物動態を延長するために用いられてきた(Dennis,M.S.ら、Albumin Binding as a General Strategy for Improving the Pharmacokinetics of Proteins.Journal of Biological Chemistry 277,35035-35043(2002);Levy,O.E.ら、Novel Exenatide Analogs with Peptidic Albumin Binding Domains:Potent Anti-Diabetic Agents with Extended Duration of Action.PLoS ONE 9,e87704,doi:10.1371/journal.pone.0087704(2014))。
【0028】
本開示は、ペプチドワクチンを生成するためにアルブミン結合ペプチド(ABP)が有用であるという新規発見を提供する。ペプチド抗原に共有結合されたABPは、アルブミンヒッチハイクを介してリンパ系にこれらの抗原を向かわせることができ、十分に活用されていないこれらの配列の新たな適用である。ABPは、「全樹脂上(all on resin)」合成などの脂質性アルブミン結合物質に比べていくつかの技術的利点も提供する。さらに、アルブミン結合ペプチドのライブラリーが特徴付けられており、これはアルブミン結合親和性に対する正確な制御を可能にし得、得られる免疫応答にとって重要であり得る。
【0029】
マウス及びヒトを含む複数の種由来の血清アルブミンへの結合を達成するための最小コア配列として、環化ペプチドDICLPRWGCLWが同定されている(Dennis,M.S.ら、Albumin Binding as a General Strategy for Improving the Pharmacokinetics of Proteins.Journal of Biological Chemistry 277,35035-35043(2002))。アルブミン結合ペプチドとしてこの配列を選択し、本明細書中に記載された実験において使用した。
【0030】
いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体は、カーゴ、例えば、免疫調節分子に作動可能に結合されたアルブミン結合ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、免疫調節分子は、ペプチド抗原、ポリペプチド抗原、抗原性タンパク質などの抗原である。いくつかの実施形態において、免疫調節分子は分子アジュバントである。
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫原性組成物中で使用するためのアルブミン結合ペプチド結合体を提供する。ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、リンパ節を有効に標的化する。アルブミン結合ペプチド結合体は、リンパを通じて、投与の部位からリンパ節へ輸送され得、リンパ節において免疫細胞を蓄積及び活性化し得る。
【0032】
アルブミン結合ペプチド結合体は、典型的には、少なくとも2つのドメイン:(1)アルブミン結合ペプチド、及び(2)カーゴ(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)を含む。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、リンカードメインを介してカーゴに作動可能に結合され得る。したがって、幾つかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は3つのドメインを含む。したがって、いくつかの実施形態において、結合体の一般的な構造はABP-Cであり、ここで、「ABP」はアルブミン結合ペプチドであり、「C」はペプチド抗原又は分子アジュバントなどのカーゴである。いくつの実施形態において、結合体の一般的な構造はABP-L-Cであり、ここで、「ABP」はアルブミン結合ペプチドであり、「L」はリンカードメインであり、及び「C」はペプチド抗原又は分子アジュバントなどのカーゴである。
【0033】
定義
特許請求の範囲及び明細書中で使用される用語は、別段の記載がなければ以下に記載されているように定義される。
【0034】
「アルブミン結合ペプチド結合体」又は「結合体(conjugate)」は、カーゴに結合体化されたアルブミン結合ペプチド(ABP)をいう。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、リンカードメインを介してカーゴに結合体化されている。いくつかの実施形態において、「カーゴ」は免疫調節分子である。「アルブミン結合ペプチド結合体」又は「結合体」という用語は、「アルブミン結合ペプチド-抗原構築物」及び「アルブミン結合ペプチドワクチン」という用語と互換的に使用され得る。
【0035】
「カーゴ」とは、アルブミン結合ペプチドに結合体化されている作用物質をいう。いくつかの実施形態において、カーゴは、リンカードメインを介して、アルブミン結合ペプチドに結合体化されている。いくつかの実施形態において、カーゴは免疫調節分子である。いくつかの実施形態において、カーゴは抗原である。いくつかの実施形態において、カーゴはペプチド抗原である。いくつかの実施形態において、カーゴは分子アジュバントである。いくつかの実施形態において、カーゴは別の作用物質である。
【0036】
「免疫調節分子」とは、免疫応答を調節する(例えば、刺激する、誘導する、増強する、低減する又は減少する)作用物質をいう。いくつかの実施形態において、免疫調節分子は抗原であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、抗原はペプチド抗原であり得る。いくつかの実施形態において、免疫調節分子は分子アジュバントであり得る。
【0037】
「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物(mimetic)をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされているもの及び後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γカルボキシグルタメート及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合した炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似した様式で機能する構造を有する化学的化合物をいう。
【0038】
アミノ酸は、本明細書では、IUPAC-IUB生化学命名法委員会によって推奨される一般的に知られた三文字記号又は一文字記号のいずれかによって表され得る。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け入れられた一文字コードによって表され得る。
【0039】
「アミノ酸置換」は、所定のアミノ酸配列(開始ポリペプチドのアミノ酸配列)中の少なくとも1つの既存のアミノ酸残基の別の異なる「置換」アミノ酸残基での置き換えをいう。「アミノ酸挿入」は、所定のアミノ酸配列中への少なくとも1つの追加のアミノ酸の組み込みをいう。挿入は、通常、1つ又は2つのアミノ酸残基の挿入からなるであろうが、より大きな「ペプチド挿入」、例えば、約3~約5又は最大約10、15又は20のアミノ酸残基の挿入も行うことができる。挿入される残基は、上に開示されているように、天然に存在してもよく、又は天然に存在しなくてもよい。「アミノ酸欠失」は、所定のアミノ酸配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基の除去をいう。
【0040】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーをいうために互換的に使用される。これらの用語は、1つ又はそれを超えるアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0041】
「核酸」は、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びこれらのポリマーをいう。特に限定されていなければ、本用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、及び天然に存在するヌクレオチドに類似する様式で代謝される天然のヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。別段の表記がなければ、特定の核酸配列は、保存的に修飾されたその改変体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列並びに明示的に記された配列も暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ又はそれを超える選択された(又は全ての)コドンの三番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することによって達成することができる(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081,1991;Ohtsukaら、Biol.Chem.260:2605-2608,1985;及びCassolら、1992;Rossoliniら、Mol.Cell.Probes8:91-98,1994)。アルギニン及びロイシンに関しては、第二の塩基での修飾も保存的であり得る。核酸という用語は、遺伝子、cDNA及び遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に使用される。
【0042】
本明細書で使用されるポリヌクレオチドは、修飾されていないRNA若しくはDNA又は修飾されたRNA若しくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドから構成され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖又はより典型的には二本鎖若しくは一本鎖と二本鎖領域との混合物であり得る、DNA及びRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。さらに、ポリヌクレオチドは、RNA若しくはDNA又はRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。ポリヌクレオチドは、1つ又はそれを超える修飾された塩基又は安定性のために若しくは他の理由のために修飾されたDNA若しくはRNA骨格も含有することができる。「修飾された」塩基には、例えば、トリチル化された塩基及びイノシンなどの通常でない塩基が含まれる。DNA及びRNAに対して様々な修飾を施すことができ、このため、「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的に又は代謝的に修飾された形態を包含する。ポリヌクレオチドは、複数のヌクレオチドサブユニットを含む合成の又は単離された核酸ポリマーであり得る。
【0043】
本明細書において使用される場合、「連結された」、「結合体化された」、「結合された」、「融合された」又は「融合」という用語は、化学的結合体化又は組換え手段を含む何らかの手段による、2つ又はそれを超える要素又は成分又はドメインの連結をいう場合、互換的に使用される。(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤を用いた)化学的結合体化の方法は、本分野において公知である。
【0044】
指定されたポリペプチド又はタンパク質「に由来する」ペプチド、ポリペプチド又はアミノ酸配列は、そのポリペプチドの起源をいう。好ましくは、特定の配列に由来するペプチド、ポリペプチド又はアミノ酸配列は、当該配列またはその一部と本質的に同一であるアミノ酸配列を有し、前記一部は少なくとも5~15のアミノ酸、少なくとも10~20のアミノ酸、少なくとも20~30のアミノ酸、少なくとも30~50のアミノ酸からなり、又はその起源を当該配列中に有するものとして当業者にとって他の点で同定可能なものである。別のペプチドに由来するポリペプチドは、開始ポリペプチドと比較して1つ又はそれを超える変異、例えば、別のアミノ酸残基で置換された又は1つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基の挿入若しくは欠失を有する1つ又はそれを超えるアミノ酸残基を有し得る。
【0045】
ペプチド又はポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を含むことができる。このような改変体は、開始分子と100%未満の配列同一性又は類似性を必ず有する。ある実施形態において、改変体は、例えば改変体分子の長さにわたって、開始ポリペプチドのアミノ酸配列と約75%~100%未満、より好ましくは約80%~100%未満、より好ましくは約85%~100%未満、より好ましくは約90%~100%未満(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)、最も好ましくは約95%~100%未満のアミノ酸配列同一性又は類似性のアミノ酸配列を有するであろう。
【0046】
ある実施形態において、開始ポリペプチド配列とこれに由来する配列間には1つのアミノ酸の相違が存在する。本明細書において、この配列に関する同一性又は類似性は、これらの配列を整列し、必要であれば、最大のパーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後での、開始アミノ酸残基と同一である(すなわち、同一の残基)候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。
【0047】
ある実施形態において、ペプチド又はポリペプチドは、ヌクレオチド配列によってコードされる。本発明のヌクレオチド配列は、クローニング、遺伝子治療、タンパク質発現及び精製、変異導入、DNAワクチン接種を必要としている宿主のDNAワクチン接種、例えば、受動免疫化のための抗体作製、PCR、プライマー及びプローブ作製などを含む多数の適用にとって有用であり得る。
【0048】
「好転させる(ameliorating)」という用語は、疾患状態の予防、重篤度若しくは進行の低減、寛解又は治癒など、疾患状態、例えば、がんの処置におけるあらゆる治療的に有益な結果をいう。
【0049】
「インビボ」という用語は、生きている生物中で起こる過程をいう。
【0050】
本明細書において使用される場合、「哺乳動物」又は「被験体」又は「患者」という用語は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ及びブタを含むが、これらに限定されない。「哺乳動物」、「被験体」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0051】
「哺乳動物」、「被験体」及び「患者」という用語は、本開示の組成物を用いた処置の標的であるあらゆる個体をいう。被験体は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。被験体はヒトであり得る。被験体は症候性又は無症候性であり得る。本用語は、特定の年齢又は性を表さない。雄又は雌であるかどうかを問わず、成体及び新生の被験体が包含されることが意図される。被験体は、対照被験体又は試験被験体を含み得る。
【0052】
2つ又はそれを超える核酸又はポリペプチド配列の文脈における「パーセント同一性」という用語は、最大の一致のために比較され及び整列されたときに、以下に記載されている配列比較アルゴリズムの一つ(例えば、BLASTP及びBLASTN又は当業者に利用可能な他のアルゴリズム)を用いて又は目視検査によって測定された場合、同一であるヌクレオチド又はアミノ酸残基の指定された百分率を有する2つ又はそれを超える配列又はサブ配列をいう。適用に応じて、「パーセント同一性」は、比較されている配列の領域にわたって、例えば、機能的ドメインにわたって存在することができ、又は、代替的に比較される2つの配列の全長にわたって存在することができる。配列比較のために、通例、1つの配列が参照配列として機能し、試験配列がこれと比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験及び参照配列がコンピュータ中に入力され、サブ配列座標が指定され、必要であれば、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較した試験配列に対するパーセント配列同一性を計算する。
【0053】
比較のための配列の最適な整列は、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム(local homology algorithm)によって、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズム(homology alignment algorithm)によって、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性検索法(search for similarity method)によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.中のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、又は目視検査(一般的には、Ausubelら、下記参照)によって実施することができる。
【0054】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適しているアルゴリズムの一例は、Altschulら、J.Mol.Biol.215:403-410(1990)中に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを通じて公開されている。
【0055】
本明細書において使用される場合、「gly-serポリペプチドリンカー」という用語は、グリシン及びセリン残基からなるペプチドをいう。例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)nを含む。ある実施形態において、n=1である。ある実施形態において、n=2である。ある実施形態において、n=3、すなわち、Ser(Gly4Ser)3である。ある実施形態において、n=4、すなわち、Ser(Gly4Ser)4である。ある実施形態において、n=5である。ある実施形態において、n=6である。ある実施形態において、n=7である。ある実施形態において、n=8である。ある実施形態において、n=9である。ある実施形態において、n=10である。別の例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)nを含む。ある実施形態において、n=1である。ある実施形態において、n=2である。ある実施形態において、n=3である。ある実施形態において、n=4である。ある実施形態において、n=5である。ある実施形態において、n=6である。別の例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列(Gly3Ser)nを含む。ある実施形態において、n=1である。ある実施形態において、n=2である。ある実施形態において、n=3である。ある実施形態において、n=4である。ある実施形態において、n=5である。ある実施形態において、n=6である。
【0056】
「治療抗体」は、抗体、抗体の断片又は抗体に由来する構築物であり、標的細胞上の細胞表面抗原に結合して治療効果をもたらすことができる。このような抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体であり得る。このような抗体を製造するための方法は、本分野において公知である。このような抗体には、抗体の一本鎖Fc断片、ミニボディ(minibody)及びダイアボディ(diabody)が含まれる。がん治療のために有用であることが本分野において知られた治療抗体のいずれをも、本明細書中に開示されている方法での使用に適した併用療法において使用することができる。治療抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。好ましい実施形態において、治療抗体はがん抗原を標的化する。
【0057】
本明細書において使用される場合、「がん抗原」は、(i)腫瘍特異的抗原、(ii)腫瘍関連抗原、(iii)腫瘍特異抗原を発現する細胞、(iv)腫瘍関連抗原を発現する細胞、(v)腫瘍上の胚性抗原、(vi)自己腫瘍細胞、(vii)腫瘍特異的膜抗原、(viii)腫瘍関連膜抗原、(ix)増殖因子受容体、(x)増殖因子リガンド及び(xi)あらゆるその他の種類の抗原又は抗原提示細胞又はがんと関連する物質をいう。
【0058】
本明細書において使用される場合、本発明者らは、「がん」(又は「がん性」)、「過剰増殖性」及び「新生物性」という用語を、自律的な増殖能を有する(すなわち、急速に増殖している細胞増殖によって特徴付けられる異常な状態又は状況)細胞をいうために使用することがある。過剰増殖性及び新生物性疾患状態は病的(すなわち、疾患状態を特徴付ける又は構成する)として分類されることがあり、又は非病的として(すなわち、正常から逸脱しているが、疾患状態を伴わないとして)分類されることがある。これらの用語は、病理組織学的な種類又は侵襲性の段階に関わらず、あらゆる種類のがん性増殖又は発がん過程、転移性組織又は悪性に形質転換された細胞、組織又は器官を含むものとする。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性の腫瘍増殖によって特徴付けられる疾患状態で発生する。非病的過剰増殖性細胞の例には、創傷修復と関連する細胞の増殖が含まれる。
【0059】
「がん」又は「新生物」という用語は、肺、乳房、皮膚(例えば、黒色腫)、甲状腺、リンパ腺及びリンパ組織、胃腸器官及び泌尿生殖管を冒すもの並びに大部分の結腸がん(colon cancer)、腎細胞癌腫、前立腺がん及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌腫、小腸のがん及び食道のがんなどの悪性疾患を含むと一般的に考えられている腺癌を含む、様々な器官系の悪性疾患をいうために使用される。
【0060】
「癌腫」という用語は、本分野で認知されており、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、泌尿生殖系癌腫、精巣癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫及び黒色腫を含む上皮又は内分泌組織の悪性疾患をいう。アルブミン結合ペプチド結合体は、腎臓癌腫若しくは黒色腫を含むあらゆる種類のがん又はあらゆるウイルス性疾患を発症した、発症したと疑われる、又は発症する高いリスクがあり得る患者を処置するために使用することができる。例示的な癌腫には、子宮頸部(cervix)、肺、前立腺、乳房、皮膚、頭部及び頸部、結腸及び卵巣の組織から形成している癌腫が含まれる。本用語には、癌性及び肉腫性組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含まれる。「腺癌」は、腺組織に由来する癌腫又はその中において腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成している癌腫をいう。
【0061】
本明細書において使用される場合、2つ又はそれを超える個別の成分によって生じた効果に関する「相乗作用」又は「相乗効果」は、これらの成分によって生じた総効果が、組み合わせて使用されたときに、単独で作用する各成分の個別の効果の合計より大きい現象をいう。
【0062】
「十分な量」又は「に十分な量」という用語は、所望の効果を生じさせるのに十分な量を意味する。例えば、腫瘍の大きさを低下させるのに十分な量。
【0063】
「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、免疫応答を誘導若しくは強化するために、疾患の症状を好転させるために、又は所望の薬理的及び/若しくは生理的効果をその他の点で提供するために、処置されている障害、疾患又は状態に対する処置を与えるのに十分な投与量である。予防は治療と考えることができるので、治療的有効量は、「予防的有効量」であり得る。
【0064】
本明細書において使用される場合、「併用療法」は、組み合わせの有益な効果を与えるレジメンにおける逐次的様式での各作用物質又は治療法の投与と、一定割合のこれらの活性因子を有する単一のカプセルにおいて又は各作用物質に対して複数の別個のカプセルにおいてなど、実質的に同時様式でのこれらの作用物質又は治療法の同時投与とを包含する。異なる時点で及び/又は異なる経路によって、個別の要素が投与され得るが、組み合わせて作用して、共作用(co-action)による有益な効果又は併用療法の各作用物質若しくは腫瘍処置アプローチの薬物動態的及び薬物動力学的効果を与える組み合わせも、併用療法に含まれる。
【0065】
本明細書において使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じて、ある程度、変動し得る。本用語が使用されている文脈が与えられた当業者にとって明確でない本用語の使用が存在する場合、「約」は、特定の値の最大プラス又はマイナス10%を意味するであろう。
【0066】
本明細書において使用される場合、「がんワクチン」は、1つ又はそれを超える腫瘍関連抗原を有する細胞を攻撃するように免疫系を誘導する処置をいう。ワクチンは、既存のがんを処置することができ(例えば、治療的がんワクチン)、又はある個体中でのがんの発症を予防することができる(例えば、予防的がんワクチン)。ワクチンは、抗原を有する腫瘍細胞を認識し得る記憶細胞を作り、したがって、腫瘍増殖を予防する。ある実施形態において、がんワクチンは免疫賦活性オリゴヌクレオチドを含む。ある実施形態において、がんワクチンはアルブミン結合ペプチド結合体を含む。
【0067】
本明細書において使用される場合、「免疫賦活性オリゴヌクレオチド」は、免疫応答を刺激する(例えば、誘導する又は増強する)ことができるオリゴヌクレオチドである。
【0068】
本明細書において使用される場合、「CpG ODN」とも表記される「CGオリゴデオキシヌクレオチド(CG ODN)は、シトシンヌクレオチド(C)の後にグアニンヌクレオチド(G)を含有する短い一本鎖合成DNA分子である。ある実施形態において、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、CG ODNである。
【0069】
本明細書において使用される場合、「免疫細胞」は、免疫応答において役割を果たす造血系起源の細胞である。免疫細胞には、リンパ球(例えば、B細胞及びT細胞)、ナチュラルキラー細胞及び骨髄系細胞(例えば、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球及び顆粒球)が含まれる。
【0070】
「T細胞」という用語は、CD4+T細胞又はCD8+T細胞をいう。T細胞という用語は、TH1細胞、TH2細胞及びTH17細胞を包含する。
【0071】
「T細胞細胞傷害」という用語は、CD8+T細胞活性化によって媒介されるあらゆる免疫応答を含む。例示的な免疫応答には、サイトカイン産生、CD8+T細胞増殖、グランザイム又はパーフォリン産生及び感染性因子のクリアランスが含まれる。
【0072】
本明細書において一般的に使用される場合、「薬学的に許容され得る」は、合理的な便益/リスク比に相応して過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答又はその他の問題若しくは併発症なしに、健全な医学的判断の範疇内で、ヒト及び動物の組織、器官及び/又は体液(bodily fluid)と接触させて使用するのに適している、化合物、材料、組成物及び/又は剤形をいう。
【0073】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に反対の意味を指示しなければ、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0074】
アルブミン結合ペプチド
一態様において、本発明の結合体は、カーゴ(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバントなどの免疫調節分子)に作動可能に結合されたアルブミン結合ペプチド(ABP)を含む。一実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、アルブミンヒッチハイクを介して、カーゴをリンパ系に向かわせ得る。例えば、結合体のアルブミン結合ペプチドドメインは内因性アルブミンを結合し得、内因性アルブミンは、流入領域リンパ節へカーゴを「ヒッチハイク」させることを可能にし得る。いくつかの実施形態において、本開示は、アルブミン結合ペプチド(ABP)にカーゴを繋留することによって、カーゴ(例えば、ペプチド抗原などの免疫調節分子)の抗原性を増強するための新規方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体は、ペプチドワクチンの抗原性を増強させる。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、標的、好ましくは、血清アルブミンなどの血清タンパク質を結合し、直接結合アッセイにおいて又は標的に対する公知のリガンドと標的結合に関して競合する能力によって、同定することができる。いくつかの実施形態において、血清アルブミンを結合するアルブミン結合ペプチドは、以下の式を有する環状ペプチド化合物などの、直鎖及び環状ペプチドを含み、又は特定の哺乳動物種の血清アルブミンへの結合に関して以下の式のペプチドと競合するペプチドである。
【化1】
【0076】
本開示のいくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド化合物には、式中、Xaaがアミノ酸であり、並びにx及びzが0(ゼロ)より大きい又は0に等しい整数、一般的には100未満、好ましくは10未満、より好ましくは0、1、2、3、4又は5、より好ましくは、4又は5であり、並びにXaa1がIle、Phe、Tyr及びValからなる群より選択される、前記一般式のペプチドが含まれる。
【0077】
血清アルブミンを結合するさらなるアルブミン結合ペプチドは、以下の一般式の文脈においてここに記載されているように特定され得る。
【化2】
式中、Xaaはアミノ酸であり、並びにx及びzはゼロより大きい又はゼロに等しい整数、一般的には100未満、好ましくは10未満、より好ましくは0、1、2、3、4又は5、より好ましくは4又は5である。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドには、以下のものが含まれる。
【化3】
【0079】
本開示のいくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチドは、ヒト血清アルブミンを結合し、インビトロアッセイにおいて、以下の一般式を有するペプチドリガンドとヒト血清アルブミンの結合に関して競合する能力によって特定することができる。
【化4】
式中、Xaaはアミノ酸であり、x及びzは好ましくは4又は5であり、並びにXaa
1はIle、Phe、Tyr及びValからなる群より選択される。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明のアルブミン結合ペプチドは、本明細書中に上記されている配列番号8~21で表されるペプチドのいずれとも競合するであろう。
【0081】
先述のことから理解されるように、「競合する」及び「競合する能力」という用語は相対的な用語である。このため、本用語は、本発明のアルブミン結合ペプチドを記載するために使用される場合、本明細書に記載されているような標準的競合アッセイにおいて、50μMで存在するときに、好ましくは1μM、より好ましくは100nMで存在するときに、好ましくは1nM又はそれ未満で存在するときに、参照ペプチドの結合の50%阻害を生じるアルブミン結合ペプチドをいう。しかしながら、約1nM未満、好ましくは約1pM~1nMの血清アルブミンに対する親和性を有するアルブミン結合ペプチドが、同様に、本発明の文脈内のアルブミン結合ペプチドである可能性がある。
【0082】
ペプチド又はその他の化合物が、本明細中に記されているように、血清アルブミンへの結合に関してアルブミン結合ペプチドと競合する「能力」を有するかどうかを決定するためのインビトロアッセイ系に関して、当業者は、多数の標準的な競合アッセイのいずれをも利用することができる。競合的結合アッセイは、限られた量のリガンドとの結合に関して試験試料分析物と競合する標識された標準の能力に依存する。試験試料中の分析物の量は、リガンドに結合するようになる標準の量に反比例する。
【0083】
このため、ほんの数例を挙げると、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、好ましくは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光イムノアッセイ及び免疫電気泳動アッセイなどの技術を用いた競合的アッセイ系を含むがこれらに限定されない手法を用いて、当業者は、アルブミンへの結合に関して、あるペプチド又は他の化合物がアルブミン結合ペプチドと競合する能力を有するかどうかを決定し得る。
【0084】
これらの目的のために、選択されたアルブミン結合ペプチドは、検出可能な部分(以降で「トレーサー」と称される検出可能に標識されたペプチドリガンド)で標識され得、アルブミンを結合するための候補化合物と共に競合アッセイにおいて使用され得る。好ましくは以下のカテゴリーに分類することができる多数の検出可能な標識を利用できる。
(a)35S、14C、125I、3H及び131Iなどの放射性同位体。例えば、Coligenら、1991,eds.,Current Protocols in Immunology,Volumes1及び2,Wiley-Intersience,New York,N.Y.に記載されている技術を用いて、アルブミン結合ペプチドを放射性同位体で標識することができる。放射能は、シンチレーション計数を用いて測定することができる。
(b)希土類キレート(ヨーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン及びテキサスレッドなどの蛍光標識が使用可能である。蛍光標識は、例えば、上記、Current Protocols in immunology中に開示された技術を用いて、アルブミン結合ペプチドに結合体化させることができる。蛍光は、蛍光光度計(fluorimeter)を用いて定量することができる。
(c)様々な酵素-基質標識が使用可能であり、米国特許第4,275,149号がこれらのいくつかの概説を提供している。酵素は、好ましくは、様々な技術を用いて測定することができる発色性基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は、分光光度的に測定することができる基質の色変化を触媒し得る。または、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させ得る。蛍光の変化を定量するための技術は上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、次いで、(例えば、化学発光測定装置を用いて)測定することができる光を発し得、又は蛍光受容体にエネルギーを供与する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。
【0085】
酵素-基質の組み合わせの例には、例えば、以下のものが含まれる。
(i)基質として過酸化水素(hydrogen peroxidase)を用いる西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、過酸化水素(hydrogen peroxidase)は色素前駆体(例えば、ABTS、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)発色性基質としてp-ニトロフェニルホスフェートを用いるアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)発色性基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光原基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼを用いるβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
【0086】
特定のアッセイによれば、トレーサーは、標識されていない候補化合物の変動する濃度の存在下で、固定化された標的と共にインキュベートされる。漸増濃度の成功裏の候補化合物は、固定化された標的へのトレーサーの結合と効果的に競合する。最大限に結合されたトレーサーの50%が置き換えられる標識されていない候補化合物の濃度は、「IC50」と称され、候補化合物のIgG結合親和性を反映する。したがって、1mMのIC50を有する候補化合物は、1μMのIC50を有する候補化合物より標的と大幅に弱い相互作用を示す。
【0087】
したがって、本開示は、記載されているようなインビトロアッセイにおいて、ヒト血清アルブミンなどの標的分子結合に関して「競合する能力を有する」アルブミン結合(biding)ペプチドを提供する。好ましくは、アルブミン結合ペプチドは、ヒト血清アルブミンなどの標的に対して1μM未満のIC50を有する。これらの化合物の中で好ましいのは、約100nM未満、好ましくは約10nM未満、又は約1nM未満のIC50を有する化合物である。本発明のこの態様にしたがうさらに好ましい実施形態において、化合物は、ヒト血清アルブミンなどの標的分子に対して、約100pM未満、より好ましくは約10pM未満のIC50を示す。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態において、例示的なアルブミン結合ペプチドには、以下のものが含まれる。
【化5】
【0089】
アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合ペプチドを同定する方法及びアルブミン結合ペプチドを作製する方法の例は、本分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0001827号を参照されたい。
【0090】
カーゴ分子
いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体のカーゴ分子は免疫調節分子である。いくつかの実施形態において、免疫調節分子は、抗原、例えば、ペプチド抗原、タンパク質抗原、ポリペプチド抗原である。いくつかの実施形態において、免疫調節分子は、分子アジュバント、例えば、免疫賦活性オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、カーゴは、他のオリゴヌクレオチド、ペプチド、トール様受容体アゴニスト又はその他の免疫調節化合物、免疫賦活性分子、色素、MRI造影剤、フルオロフォア又はリンパ節への効率的な輸送を必要とする小分子薬物でもあり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、カーゴは免疫賦活性オリゴヌクレオチドなどのアジュバントであり得、いくつかの実施形態において、カーゴ分子は抗原であり得る。抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖、糖、脂質、核酸又はこれらの組み合わせであり得る。抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、植物、原生動物、真菌、組織又はがん細胞若しくは白血病細胞などの形質転換された細胞に由来し得、全細胞又はその免疫原性成分、例えば細胞壁成分若しくはその分子成分であることができる。
【0092】
適切な抗原は本分野において公知であり、商業的、政府及び科学的供給源から入手することが可能である。一実施形態において、抗原はがん抗原ペプチド又は分子アジュバントである。抗原は、腫瘍に由来する精製された又は部分的に精製されたペプチド又はポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、抗原は、ペプチド抗原又はポリペプチド抗原をコードするDNAを非対応発現系中で発現させることによって作製された組換えペプチド又はポリペプチドである。抗原は、抗原性タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの全部または一部をコードするDNAであり得る。DNAは、プラスミドDNAなどのベクターDNAの形態であり得る。
【0093】
ある実施形態において、抗原は、単一の抗原として与えられ、又は組み合わせて与えられる。いくつかの実施形態において、抗原は、ポリペプチド、ペプチド又は核酸の複合的混合物として与えられる。例示的な抗原が以下に挙げられている。
【0094】
a.ペプチド抗原
ある実施形態において、本明細書に記載されているアルブミン結合ペプチド(ABP)結合体は、腫瘍関連抗原又はその断片などの、ペプチド抗原、抗原性タンパク質又は抗原性ポリペプチドに作動可能に結合されたABPを含み得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は、例えば、5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸又は50アミノ酸など、2~100アミノ酸(aa)であり得る。いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は50アミノ酸超であり得る。いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は、100アミノ酸超であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、タンパク質/ペプチド抗原は、直鎖、分岐又は環状であり得る。ペプチド抗原は、Dアミノ酸、Lアミノ酸又はこれらの組み合わせを含むことができる。ペプチド抗原、ポリペプチド抗原又はタンパク質抗原は、ペプチド抗原、ポリペプチド抗原又はタンパク質抗原のN末端又はC末端においてABPに結合体化することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原、タンパク質抗原又はポリペプチド抗原は、免疫系がペプチド、タンパク質又はポリペプチドに対する抗体及びT細胞応答を生じる能力を誘導又は増加することができる、あらゆるペプチド、タンパク質又はポリペプチドであり得る。
【0098】
i.がん抗原
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原はがん抗原から生成され得る。がん抗原は、通例がん細胞によって優先的に発現される抗原であり(すなわち、がん抗原は、非がん細胞上よりがん細胞中において、より高いレベルで発現される)、いくつかの事例では、専らがん細胞によって発現される。がん抗原は、がん細胞内で又はがん細胞の表面上で発現され得る。
【0099】
例えば、ペプチド抗原は、以下のがん抗原のいずれかから生成され得る。MART-1
/Melan-A、gp100、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、FAP、サイクロフィリンb、結腸直腸(colorectal)関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、がん胎児抗原(CEA)、CAP-1、CAP-2、etv6、AML1、前立腺特異抗原(PSA)、PSA-1、PSA-2、PSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3-ζ鎖及びCD20。がん抗原は、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5)、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、a-フェトプロテイン、E-カドヘリン、a-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn、gp100Pmell 17、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸腺腫性ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネクシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2ガングリオシド、GD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、PI A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1及びCT-7、CD20又はc-erbB-2からなる群より選択され得る。さらなるがん抗原には、本明細書に記載されている腫瘍抗原が含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は黒色腫抗原から生成される。いくつかの実施形態において、黒色腫抗原はgp100である。いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は、EGPと称される、gp100の改変されたペプチドリガンド形態である。EGPのアミノ酸配列はAVGALEGPRNQDWLGVPRQLであり、式中、下線が付された部分は、天然の形態よりも、MHCに対する高い親和性を有することが示されている。
【0101】
いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、腫瘍関連抗原などの特異的な標的に対する免疫応答を刺激する。
【0102】
ある実施形態において、腫瘍関連抗原は、患者の腫瘍細胞を配列決定し、腫瘍中においてのみ見出される変異されたタンパク質を同定することによって決定される。いくつかの実施形態において、腫瘍関連抗原は、患者の腫瘍細胞を分析し、腫瘍中においてのみ見出される修飾されたタンパク質(例えば、グリコシル化、リン酸化)を同定することによって決定される。これらの抗原は、「ネオ抗原」と称される。ネオ抗原が同定されたら、ネオ抗原はアルブミン結合ペプチド結合体用の抗原として、又はアルブミン結合ペプチド結合体用のペプチド抗原を誘導するために使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されたABP結合体は、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、ネオ抗原に作動可能に結合されたABPを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたABP結合体は、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、ネオ抗原に由来するペプチド抗原に作動可能に結合されたABPを含む。
【0103】
ii.ウイルス抗原
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原はウイルス抗原から生成され得る。ウイルス抗原は、以下のウイルス科のいずれかに由来するウイルスを含むが、これに限定されないあらゆるウイルスから単離することができる。アレナウイルス科(Arenaviridae)、アルテリウイルス(Arterivirus)、アストロウイルス科(Astroviridae)、バキュロウイルス科(Baculoviridae)、バドナウイルス(Badnavirus)、バルナウイルス科(Barnaviridae)、ビルナウイルス科(Birnaviridae)、ブロモウイルス科(Bromoviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、カリシウイルス科(Caliciviridae)、カピロウイルス(Capillovirus)、カルラウイルス(Carlavirus)、カリモウイルス(Caulimovirus)、サーコウイルス科(Circoviridae)、クロステロウイルス(Closterovirus)、コモウイルス科(Comoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスなどのコロナウイルス(Coronavirus))、コルチコウイルス科(Corticoviridae)、シストウイルス科(Cystoviridae)、デルタウイルス(Deltavirus)、ダイアンソウイルス(Dianthovirus)、エナモウイルス(Enamovirus)、フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、マールブルグウイルス及びエボラウイルス(例えば、ザイール、レストン、象牙海岸又はスーダン株))、フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus)、デングウイルス1(Dengue virus 1)、デングウイルス2、デングウイルス3及びデングウイルス4)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(例えば、ヒトヘルペスウイルス1、3、4、5及び6並びにサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus))、ハイポウイルス科(Hypoviridae)、イリドウイルス科(Iridoviridae)、レビウイルス科(Leviviridae)、リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)、ミクロウイルス科(Microviridae)、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、A型インフルエンザウイルス(Influenzavirus A)及びB型インフルエンザウイルス及びC型インフルエンザ)、パポバウイルス科(Papovaviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、麻疹、流行性耳下腺炎及びヒト呼吸器多核体ウイルス)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、へパトウイルス及びアフトウイルス)、ポックスウイルス科(Poxviridae)(例えば、ワクシニア及び天然痘ウイルス)、レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1及びHIV2などのレンチウイルス)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルスなど)、トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど)及びトティウイルス科(Totiviridae)。適切なウイルス抗原には、デングタンパク質M、デングタンパク質E、デングD1NS1、デングD1NS2及びデングD1NS3の全部又は一部も含まれる。
【0104】
ウイルス抗原は、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペス1及び2;肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、δD型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)及びG型肝炎ウイルス(HGV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス;パラインフルエンザ、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス(cytomeglavirus)、エプスタイン-バー、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎、日本脳炎、黄熱病、リフトバレー熱及びリンパ球性脈絡髄膜炎などの特定の系統に由来し得る。
【0105】
iii.細菌抗原
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は細菌抗原から生成され得る。細菌抗原は、アクチノミセス(Actinomyces)、アナベナ(Anabaena)、バチルス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ブデロビブリオ(Bdellovibrio)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、カンピロバクター(Campylobacter)、カウロバクター(Caulobacter)、クラミジア(Chlamydia)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、サイトファーガ(Cytophaga)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ハロバクテリウム(Halobacterium)、ヘリオバクター(Heliobacter)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘモフィルスインフルエンザB型(Hemophilus influenza type B)(HIB)、ハイフォミクロビウム(Hyphomicrobium)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ症(Leptspirosis)、リステリア(Listeria)、髄膜炎菌(Meningococcus)A、B及びC、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ミオバクテリウム(Myobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ミクソコッカス(Myxococcus)、ナイセリア(Neisseria)、ニトロバクター(Nitrobacter)、オシラトリア(Oscillatoria)、プロクロロン(Prochloron)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、フォドスピリラム(Phodospirillum)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、スピリラム(Spirillum)、スピロヘータ(Spirochaeta)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スルホロブス(Sulfolobus)、サーモプラズマ(Thermoplasma)、チオバチルス(Thiobacillus)及びトレポネーマ(treponema)、ビブリオ(Vibrio)及びエルシニア(Yersinia)を含むがこれらに限定されないあらゆる細菌に起源を有することができる。
【0106】
iv.寄生生物抗原
他の実施形態において、ペプチド抗原は寄生生物抗原から生成され得る。寄生生物抗原は、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia ricketsii)、リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi)、肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジアル・シタッシ(Chlamydial psittaci)、クラミジアル・トラコマチス(Chlamydial trachomatis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)及びマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)に由来する抗原などの、ただしこれらに限定されない寄生生物から取得することができる。これらには、胞子虫類(Sporozoan)の抗原、スポロゾイト周囲タンパク質、スポロゾイト表面タンパク質、肝臓期抗原、頂端膜結合タンパク質(apical membrane associated protein)又はメロゾイト表面タンパク質の全部又は一部などのマラリア原虫(Plasmodian)抗原が含まれる。
【0107】
v.アレルゲン及び環境抗原
いくつかの実施形態において、ペプチド抗原は、アレルゲン又は環境抗原から生成することができる。アレルゲン又は環境抗原は、例えば、花粉アレルゲン(木、草本、雑草(weed)及び草花粉アレルゲン)、昆虫抗原(吸入性、唾液及び毒抗原)、動物の毛髪及びふけアレルゲン及び食物アレルゲンなどの天然に存在するアレルゲンに由来する抗原であり得る。木、草及び草本由来の重要な花粉アレルゲンは、とりわけ、カバノキ(birch)(ベチュラ(Betula))ハンノキ(alder)(アルヌス(Alnus))、ハシバミ(hazel)(コリルス(Corylus))、シデ(hornbeam)(カルピヌス(Carpinus))及びオリーブ(オレア(Olea))、スギ(cedar)(クリプトメリアアンド・ジュニペルス(Cryptomeriaand Juniperus))、スズカケノキ(Plane tree)(プラタナス(Platanus))を含むブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)及びスズカケノキ科(platanaceae)の分類学上の目、例えば、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)の草を含むイネ目(Poales)の目、とりわけ、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)及びヒカゲミズ属(Parietaria)の草本を含むキク目(Asterales)及びイラクサ目(Urticales)の目から生じる。使用され得る他のアレルゲン抗原には、ヒョウヒダニ(Dermatophagoides)及びユーログリファス(Euroglyphus)属のイエダニ(house dust mite)、貯蔵庫ダニ(storage mite)、例えば、レピドグリフィス(Lepidoglyphys)、グリシファガス(Glycyphagus)及びケナガコナダニ属(Tyrophagus)由来のアレルゲン、ゴキブリ、ヌカカ及びノミ、例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ゴキブリ属(Periplaneta)、ユスリカ属(Chironomus)及びイヌノミ属(Ctenocepphalides)由来のアレルゲン、ネコ、イヌ及びウマなどの哺乳動物、鳥に由来するアレルゲン、ハチ(ミツバチ科(Apidae)上科)、カリバチ(スズメバチ科(Vespidea)上科)及びアリ(アリ科(Formicoidae)上科)を含む膜翅目(Hymenoptera)の分類学上の目に由来するものなど、刺す昆虫又は噛む昆虫から生じるものなどを含む毒アレルゲンが含まれる。使用され得るさらに他のアレルゲン抗原には、アルテルナリア属(Alternaria)及びクラドスポリウム属(Cladosporium)などの真菌に由来する吸引アレルゲンが含まれる。
【0108】
b.分子アジュバント
ある実施形態において、本明細書に記載されているアルブミン結合ペプチド(ABP)結合体には、分子アジュバントに作動可能に結合されたABPが含まれ得る。いくつかの実施形態において、分子アジュバントは、CpGを含むオリゴヌクレオチドなどの免疫賦活性オリゴヌクレオチドである。
【0109】
いくつかの実施形態において、分子アジュバントは、パターン認識受容体を結合することができる免疫賦活性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGを含むオリゴヌクレオチド)である。
【0110】
いくつかの実施形態において、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、パターン認識受容体(PRR)に対するリガンドとしての役割を果たすことができる。PRRの例には、先天性免疫応答の開始において役割を果たし、さらに後の、より抗原特異的な適応免疫応答にも影響を与えるシグナル伝達分子のトール様ファミリーが含まれる。したがって、オリゴヌクレオチドは、トール様受容体9(TLR9)などのトール様ファミリーシグナル伝達分子に対するリガンドとしての役割を果たすことができる。
【0111】
例えば、メチル化されていないCpG部位は、ヒトでは、形質細胞様樹状細胞及びB細胞上のTLR9によって検出することができる(Zaidaら、Infection and Immunity,76(5):2123-2129,(2008))。したがって、オリゴヌクレオチドの配列は、1つ又はそれを超えるメチル化されていないシトシン-グアニン(CG又はCpG、互換的に使用される)ジヌクレオチドモチーフを含むことができる。「p」は、以下でさらに詳述されているように、DNAのホスホジエステル骨格を表し、CGを含むいくつかのオリゴヌクレオチドは、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート(PS)骨格を有することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、隣接して又は介在しているヌクレオチドによって隔てられて配置された1を超えるCGジヌクレオチドを含有することができる。CpGモチーフは、オリゴヌクレオチド配列の内部中に存在することができる。CGジヌクレオチドの数及び場所並びにCG二量体に隣接している正確な塩基配列が変動した数多くのヌクレオチド配列がTLR9を刺激する。
【0113】
典型的には、CG ODNは、それらの配列、二次構造及びヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対する効果に基づいて分類される。5つのクラスは、クラスA(タイプD)、クラスB(タイプK)、クラスC、クラスP及びクラスSである(Vollmer,J&Krieg,AM,Advanced drug delivery reviews61(3):195-204(2009),参照により本明細書に組み込まれる)。CG ODNは、I型インターフェロン(例えば、IFNα)の産生を刺激し、樹状細胞(DC)の成熟を誘導する。ODNのいくつかのクラスは、間接的なサイトカインシグナル伝達を通じたナチュラルキラー(NK)細胞の強力な活性化因子でもある。いくつかのクラスは、ヒトB細胞及び単球成熟の強力な刺激因子である(Weiner,GL,PNAS USA94(20):10833-7(1997);Dalpke,AH,Immunology106(1):102-12(2002);Hartmann,G,J of Immun.164(3):1617-2(2000);これらの各々が、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0114】
その他のPRRトール様受容体には、それぞれ、二本鎖RNA、一本鎖及び短い二本鎖RNAを認識し得るTLR3及びTLR7、並びにサイトゾル中のRNA感知受容体として最もよく知られている、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体、すなわち、RIG-I及び黒色腫分化関連遺伝子5(MDA5)が含まれる。したがって、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、TLR3、TLR7若しくはRIG-I様受容体又はこれらの組み合わせに対する機能的リガンドを含有する。
【0115】
免疫賦活性オリゴヌクレオチド及び免疫賦活性オリゴヌクレオチドを作製する方法の例は、本分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bodera,P.Recent Pat Inflamm Allergy Drug Discov.5(1):87-93(2011)を参照されたい。
【0116】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドカーゴは、2つ又はそれを超える免疫賦活性配列を含む。オリゴヌクレオチドは、例えば、5ヌクレオチド塩基の長さ、10ヌクレオチド塩基の長さ、15ヌクレオチド塩基の長さ、20ヌクレオチド塩基の長さ、25ヌクレオチド塩基の長さ、30ヌクレオチド塩基の長さ、35ヌクレオチド塩基の長さ、40ヌクレオチド塩基の長さ、45ヌクレオチド塩基の長さ、50ヌクレオチド塩基の長さ、60ヌクレオチド塩基の長さ、70ヌクレオチド塩基の長さ、80ヌクレオチド塩基の長さ、90ヌクレオチド塩基の長さ、95ヌクレオチド塩基の長さ、98ヌクレオチド塩基の長さ、100ヌクレオチド塩基の長さなど、2~100ヌクレオチド塩基の長さ、又はそれを超えるヌクレオチド塩基の長さであり得る。
【0117】
オリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端は、アルブミン結合ペプチド(ABP)に結合体化することができる。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドの5’末端はABPに連結される。
【0118】
オリゴヌクレオチドは、複素環式塩基(核酸塩基)と、複素環式塩基に付着された糖部分と、糖部分のヒドロキシル(hydroxy 1)官能基をエステル化するホスフェート部分とを典型的に含むDNA又はRNAヌクレオチドであり得る。主な天然に存在するヌクレオチドは、複素環式塩基としてウラシル、チミン、シトシン、アデニン及びグアニンと、ホスホジエステル結合によって連結されたリボース又はデオキシリボース糖とを含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA対応物と比較して、安定性、半減期、又は標的受容体に対する特異性若しくは親和性を改善するために化学的に修飾されたヌクレオチド類似体から構成される。化学的修飾には、核酸塩基、糖部分、ヌクレオチド結合又はこれらの組み合わせの化学的修飾が含まれる。本明細書において使用される場合、「修飾されたヌクレオチド」又は「化学的に修飾されたヌクレオチド」は、複素環式塩基、糖部分又はホスフェート部分構成成分の1つ又はそれより多くの化学的修飾を有するヌクレオチドを定義する。いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオチドの電荷は、同じ核酸塩基配列のDNA又はRNAオリゴヌクレオチドと比較して低減される。例えば、オリゴヌクレオチドは、低い負の電荷、無電荷又は正の電荷を有することができる。
【0120】
典型的には、ヌクレオシド類似体は、標準的なポリヌクレオチド塩基へのワトソンクリック塩基対合によって水素結合をすることが可能な塩基を支持し、類似体骨格は、オリゴヌクレオチド類似体分子と標準的なポリヌクレオチド(例えば、一本鎖RNA又は一本鎖DNA)中の塩基との間に、配列特異的様式でこのような水素結合を許容するように塩基を提示する。いくつかの実施形態において、類似体は、実質的に帯電されていない、リン含有骨格を有する。
【0121】
i.複素環式塩基
主な天然に存在するヌクレオチドは、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン及びグアニンを複素環式塩基として含む。オリゴヌクレオチドは、その核酸塩基構成成分への化学的修飾を含むことができる。複素環式塩基又は複素環式塩基類似体の化学的修飾は、標的配列の結合における結合親和性又は安定性を増加するのに有効であり得る。化学的に修飾された複素環式塩基には、イノシン、5-(1-プロピニル)ウラシル(pU)、5-(1-プロピニル)シトシン(pC)、5-メチルシトシン、8-オキソ-アデニン、シュードシトシン、シュードイソシトシン、5及び2-アンモ-5-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)ピリジン(2-アミノピリジン)並びに様々なピロロ-及びピラゾロピリミジン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。STINGなどのサイトゾル危険センサー(cytosolic danger sensor)を誘発することが知られた環状ジヌクレオチドを使用することができるであろう。
【0122】
ii.糖修飾
オリゴヌクレオチドは、修飾された糖部分又は糖部分類似体を有するヌクレオチドも含有することができる。糖部分修飾には、2’-O-アミノエトキシ、2’-O-アミノエチル(2’-OAE)、2’-O-メトキシ、2’-O-メチル,2-グアニドエチル(2’-OGE)、2’-O,4’-C-メチレン(LNA)、2’-O-(メトキシエチル)(2’-OME)及び2’-O-Wメチル)アセトアミド)(2’-OMA)が含まれるが、これらに限定されない。2’-O-アミノエチル糖部分置換は、中性PHでプロトン化され、このため、TFOと標的二重鎖間の電荷の反発を抑制するので特に好ましい。この修飾は、リボース又はデオキシリボース(dexyribose)のC3’-エンドコンフォメーションを安定化させ、二重鎖のプリン鎖中のi-1ホスフェートと架橋も形成する。
【0123】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチドである。モルホリノオリゴヌクレオチドは、典型的には、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに有効なプリン又はピリミジン塩基対合部分を含有するさらに2つのモルホリノ単量体から構成されており、これらは、1つの単量体のモルホリノ窒素を隣接する単量体の5’環外炭素に連結する1~3原子長のリン含有結合によって結合されている。プリン又はピリミジン塩基対合部分は、典型的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル又はチミンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造及び結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号及び同第5,506,337号に詳述されている。
【0124】
モルホリノに基づくサブユニットの重要な特性には、安定な帯電していない骨格結合によってオリゴマー形態で連結される能力;形成されたポリマーが、10~14塩基という短いオリゴマーを用いた場合でさえ高いTmで、相補的塩基標的核酸(標的RNAを含む)とハイブリッド形成することができるように、ヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシル又はイノシン)を支持する能力;哺乳動物細胞中に能動的に輸送されるオリゴマーの能力:RNAse分解に抵抗するオリゴマー:RNAヘテロ二重鎖の能力が典型的に含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、上記されているように、帯電していない結合によって連結された、塩基対合部分を保有するモルホリノに基づくサブユニットを利用する。
【0126】
iii.ヌクレオチド間結合
2つのヌクレオシド部分間の化学的結合をいうヌクレオチド間結合によって接続されたオリゴヌクレオチド。DNA又はRNAオリゴヌクレオチドのホスフェート骨格への修飾は、オリゴヌクレオチドの結合親和性若しくは安定性を増加させ得、又はオリゴヌクレオチドヌクレアーゼ消化の感受性を低減させ得る。ジエチル-エチレンジアミド(DEED)又はジメチル-アミノプロピルアミン(DMAP)を含むが、これらに限定されない陽イオン性修飾は、オリゴヌクレオチドと標的間の静電的反発を減少するために特に有用であり得る。
【0127】
ホスフェート骨格の修飾は、ホスホジエステル結合中の非架橋酸素の1つの、硫黄原子への置換も含み得る。この置換は、ホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオエートヌクレオシド間結合を作出する。ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドは、インビボにおいてより安定であることが示されている。
【0128】
低下した電荷を有する修飾されたヌクレオチドの例には、上に論述されているような、アキラルな非帯電サブユニット間結合(例えば、Sterchak,E.P.ら、Organic Chem.,52:4202,(1987))を有するホスフェート類似体、及びアキラルなサブユニット間結合を有するモルホリノに基づく非帯電ポリマー(例えば、米国特許第5;034,S06号参照)などの修飾されたヌクレオチド間結合が含まれる。いくつかのヌクレオチド間結合類似体には、モルホリデート、アセタール、及びポリアミド連結された複素環が含まれる。
【0129】
別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ロックド核酸から構成される。ロックド核酸(LNA)は、修飾されたRNAヌクレオチドである(例えば、Braaschら、Chem.Biol.,8(1):1-7(2001)参照)。LNAは、DNA/DNAハイブリッドよりさらに安定なハイブリッドをDNAと形成し、ペプチド核酸(PNA)/DNAハイブリッドの特性と類似した特性である。
【0130】
したがって、LNAは、PNA分子が使用されるのと同じように使用することができる。いくつかの実施形態において、LNA結合効率は、正の電荷をLNAに追加することによって増加させることができる。LNAを作製するために、市販の核酸合成装置及び標準的なホスホルアミダイト化学が使用される。
【0131】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドはペプチド核酸から構成される。ペプチド核酸(PNA)は、オリゴヌクレオチドのホスフェート骨格の全体が、反復するN-(2-アミノエチル)-グリシン単位によって置き換えられており、ホスホジエステル結合が典型的にはペプチド結合によって置き換えられている合成DNA模倣物である。メチレンカルボニル結合によって、様々な複素環式塩基が骨格に連結される。PNAは、通常のDNAオリゴヌクレオチドと似ているが、アキラルであり中性に帯電した分子である複素環式塩基のスペーシング(spacing)を維持する。ペプチド核酸は、ペプチド核酸単量体から構成される。
【0132】
他の骨格修飾には、ペプチド及びアミノ酸の変異及び修飾が含まれる。このため、PNAなどのオリゴヌクレオチドの骨格構成成分はペプチド結合であり得、又は非ペプチドペプチド結合であり得る。例には、アセチルキャップ、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(本明細書においてO-リンカーと称される)などのアミノスペーサーが含まれ、PNAなどの中に正の電荷が所望される場合、リジンなどのアミノ酸が特に有用である。PNAの化学的組み立てのための方法は周知である。例えば、米国特許第5,539,082号、同第5,527,675号、同第5,623,049号、同第5,714,331号、同第5,736,336号、同第5,773,571号及び同第5,786,571号を参照されたい。
【0133】
オリゴヌクレオチドは、安定性及び/又はその標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増加させるために、一方又は両方の末端に1つ又はそれを超える末端残基又は修飾を必要に応じて含む。一般的に使用される正に帯電された部分には、アミノ酸であるリジン及びアルギニンが含まれるが、その他の正に帯電された部分も有用であり得る。プロピルアミン基を用いて、分解を防ぐために、オリゴヌクレオチドは、さらに、末端にキャップが施されるように修飾され得る。3’又は5’キャッピングオリゴヌクレオチドのための手法は、本分野において周知である。
【0134】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA、一本鎖RNA又は二本鎖RNAである。
【0135】
c.その他のカーゴ
一般的に、ABPに結合体化することができるカーゴは、免疫調節剤、治療剤、予防剤又は診断剤を含むことができる。アルブミンは、EPR効果によって、及び腫瘍中の迅速な代謝によっても腫瘍中に蓄積することが知られているので、例えば、化学療法薬は、腫瘍を標的とするのに興味深い。
【0136】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されたABP結合体は、検出標識、例えば、フルオレセイン又はローダミン、Alexa Fluor色素、DyLight Fluor色素、Quasar及びCal Fluor色素、シアニン色素(Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7)又はその他の蛍光色素などのフルオロフォアを含む。標識はカーゴであることができ、又はカーゴに追加することができる。
【0137】
リンカードメイン
いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、リンカードメインを含む。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、複数のリンカードメインを含む。いくつかの実施形態において、リンカードメインは、ポリペプチドリンカー、エチレングリコールリンカー又はオリゴヌクレオチドリンカーである。ある態様では、アルブミン結合ペプチド又はその改変体若しくは断片を免疫調節分子(例えば、抗原、ペプチド抗原又は分子アジュバント)などの1つ又はそれを超えるカーゴと融合してアルブミン結合ペプチド結合体を形成するためにリンカーを利用することが望ましい。
【0138】
例えば、機能的な免疫調節剤又はその改変体若しくは断片の適切な折り畳み及び形成を確保するためにABPが確実に並置されるようにするために、本発明のリンカーが利用され得る。好ましくは、本発明に適合するリンカーは、比較的非免疫原性であり、結合タンパク質の単量体サブユニット間のいずれの非共有結合的会合も阻害しないであろう。例示的なリンカードメインは、米国特許第6,660,843号に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
いくつかの実施形態において、リンカーは、切断可能でないリンカー又は切断可能なリンカーであり得る。切断可能でないリンカーには、アミド結合又はホスフェート結合が含まれ得、切断可能なリンカーには、ジスルフィド結合、酸切断可能な結合、エステル結合、無水物結合、生分解性結合又は酵素切断可能な結合が含まれ得る。
【0140】
a.ポリペプチドリンカー
ある実施形態において、本発明のアルブミン結合ペプチド結合体は、単一のポリペプチド鎖中に、いずれかの2つ又はそれを超えるドメインをインフレームに連結するためにポリペプチドリンカーを利用する。一実施形態において、2つ又はそれを超えるドメインは、本明細書に論述されている、アルブミン結合ペプチド若しくはその改変体若しくは断片又はカーゴ分子のいずれからも独立に選択され得る。例えば、ある実施形態において、ポリペプチドリンカーは、アルブミン結合ペプチドを免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)を融合するために使用することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドリンカーは合成のものである。本明細書において使用される場合、ポリペプチドリンカーに関する「合成」という用語には、天然にはそこに本来連結されていない(天然に存在してもよく、又は天然に存在しなくてもよい)配列(例えば、ABP配列)に、アミノ酸の直鎖配列で連結されている(天然に存在してもよく、又は天然に存在しなくてもよい)アミノ酸配列を含むペプチド(又はポリペプチド)が含まれる。例えば、ポリペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの修飾された形態(例えば、付加、置換又は欠失などの変異を含む)であり、又は(天然に存在してもよく、又は天然に存在しなくてもよい)第一のアミノ酸配列を含む天然に存在しないポリペプチドを含み得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含む、又はgly-serリンカーからなる。本明細書において使用される場合、「gly-serリンカー」という用語は、グリシン及びセリン残基からなるペプチドをいう。例示的なgly/serリンカーは、式(Gly4Ser)nのアミノ酸配列を含み、式中、nは正の整数(例えば、1、2、3、4又は5)である。ある実施形態において、gly/serリンカーは(Gly4Ser)1である。ある実施形態において、gly/serリンカーは(Gly4Ser)2である。ある実施形態において、gly/serリンカーは(Gly4Ser)3である。ある実施形態において、gly/serリンカーは(Gly4Ser)4である。ある実施形態において、gly/serリンカーは(Gly4Ser)5である。ある実施形態において、gly-serリンカーは、ポリペプチドリンカー(例えば、本明細書に記載されたポリペプチドリンカー配列のいずれか)の2つの他の配列間に挿入され得る。他の実施形態において、gly-serリンカーは、ポリペプチドリンカー(例えば、本明細書に記載されたポリペプチドリンカー配列のいずれか)の別の配列の一端又は両端に付着される。さらに他の実施形態において、2つ又はそれを超えるgly-serリンカーは、ポリペプチドリンカー中に連続して組み込まれている。
【0143】
アルブミン結合ペプチド結合体中で使用するのに適した他のリンカー、例えば、米国特許第5,525,491号に開示されているセリンに富むリンカー、Araiら、Protein Eng 2001;14:529-32中に開示されているヘリックス形成ペプチドリンカー(例えば、A(EAAAK)nA(n=2~5))及びChenら、Mol Pharm 2011;8:457-65中に開示されている安定なリンカー、すなわち、ジペプチドリンカーLE、トロンビン感受性ジスルフィドシクロペプチドリンカー及びαヘリックス形成リンカーLEA(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4ALE(配列番号38)が本分野において公知である。
【0144】
他の例示的なリンカーには、GSリンカー(すなわち、(GS)n)、GGSG(配列番号39)リンカー(すなわち、(GGSG)n)、GSAT(配列番号40)リンカー、SEGリンカー及びGGSリンカー(すなわち、(GGSGGS)n)が含まれ、式中、nは正の整数である(例えば、1、2、3、4又は5)。アルブミン結合ペプチド結合体において使用するための他の適切なリンカーは、Linker Database(ibi.vu.nl/programs/linkerdbwww)などの公に利用可能なデータベースを用いて見出すことができる。Linker Databaseは、新規融合タンパク質において潜在的なリンカーとしての役割を果たす、多機能酵素(multi-functional enzymes)中のドメイン間リンカーのデータベースである(例えば、Georgeら、Protein Engineering 2002;15:871-9を参照されたい)。
【0145】
これらの例示的なポリペプチドリンカーの改変体形態は、1つ又はそれを超えるアミノ酸置換、付加又は欠失がポリペプチドリンカー中に導入されるように、ポリペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列中に1つ又はそれを超えるヌクレオチド置換、付加又は欠失を導入することによって作製することができることが理解されるであろう。変異は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの標準的な技術によって導入され得る。
【0146】
本発明のポリペプチドリンカーは、少なくとも1アミノ酸長であり、様々な長さとすることができる。一実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約1~約50アミノ酸長である。この文脈において使用される場合、「約」という用語は、+/-2つのアミノ酸残基をいう。リンカーの長さは正の整数でなければならないので、約1~約50アミノ酸長の長さは、1から48~52アミノ酸長までの長さを意味する。別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約1~5アミノ酸長である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約5~10アミノ酸長である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約10~20アミノ酸長である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約15~約50アミノ酸長である。
【0147】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約20~約45アミノ酸長である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、約15~約25アミノ酸長である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60又は61又はそれを超えるアミノ酸長である。
【0148】
ポリペプチドリンカーは、本分野において公知の技術を用いてポリペプチド配列中に導入することができる。修飾は、DNA配列分析によって確認することができる。産生されるポリペプチドの安定した産生のため、宿主細胞を形質転換するためにプラスミドDNAを使用することができる。
【0149】
b.エチレングリコールリンカー
いくつかの実施形態において、リンカードメインは、1つ又はそれを超えるエチレングリコール(EG)単位、より好ましくは2つ又はそれを超えるEG単位(すなわち、ポリエチレングリコール(PEG))である。いくつかの実施形態において、リンカードメインは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを含み、又はポリエチレングリコール(PEG)リンカーからなる。ポリエチレングリコール即ちPEGは、反復するエチレングリコール単位から構成される化学的化合物をいう。例示的な「PEGリンカー」は、式:H-(O-CH2-CH2)n-OHの化合物を含み、式中、nは正の整数(例えば、1、10、20、50、100、200、300、400、500、600)である。いくつかの実施形態において、PEGリンカーはPEG1000である。いくつかの実施形態において、PEGリンカーはPEG2000である。いくつかの実施形態において、PEGリンカーはPEG3000である。
【0150】
いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、続いてアルブミン結合ペプチドに連結されているポリエチレングリコール(PEG)分子に連結された免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原)を含む。
【0151】
エチレングリコール(EG)単位の正確な数は、アルブミン結合ペプチド及びカーゴに依存するが、典型的には、エチレングリコールリンカーは、約1~約100、約20~約80、約30~約70又は約40~約60EG単位を有することができる。いくつかの実施形態において、エチレングリコールリンカーは約45~55EG単位を有する。例えば、一実施形態において、エチレングリコールリンカーは45EG単位を有する。例えば、一実施形態において、エチレングリコールリンカーは48EG単位を有する。
【0152】
c.オリゴヌクレオチドリンカー
いくつかの実施形態において、リンカーはオリゴヌクレオチドである。リンカーは任意の配列を有することができ、例えば、オリゴヌクレオチドの配列はランダムな配列又はその分子的若しくは生化学的特性のために特異的に選択された配列であり得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、連続したアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)又はこれらの類似体の1つ又はそれを超えるシリーズを含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、一連の連続したアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)又はこれらの類似体からなる。
【0153】
一実施形態において、リンカーは、1つ又はそれを超えるグアニン、例えば、1~10のグアニンである。いくつかの実施形態において、ABP結合体中のリンカーは、0、1又は2のグアニンを含むことができる。
【0154】
免疫原性組成物
いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体は、免疫原性組成物中で又はワクチン中の成分として使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されている免疫原性組成物は、アルブミン結合ペプチド結合体を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されている免疫原性組成物は、アルブミン結合ペプチド結合体とアジュバントの組み合わせを含む。アジュバントとアルブミン結合ペプチド結合体の組み合わせはワクチンと称することができる。被験体に組み合わせて投与される場合、アジュバントとアルブミン結合ペプチド結合体は別個の薬学的組成物中で投与することができ、又は同じ薬学的組成物中で一緒に投与することができる。
【0155】
免疫原性組成物は、単独で又はアジュバントと組み合わせて投与される免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)に連結されているアルブミン結合ペプチドなどのアルブミン結合ペプチド結合体を含むことができる。
【0156】
アジュバントは、ミョウバン(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム);QS21(HPLC分画で21番目のピーク中に溶出する糖脂質;Antigenics,Inc.,Worcester,Mass.)などのQ.saponariaの木の樹皮から精製されたサポニン;ポリ[ジ(カルボキシラートフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;Virus Research Institute,USA)、Flt3リガンド、リーシュマニア伸長因子(精製されたリーシュマニアタンパク質;Corixa Corporation,Seattle,Wash.)、ISCOMS(混合されたサポニン、脂質を含有し、抗原を保持することができる細孔を有するウイルスの大きさの粒子を形成する免疫賦活複合体;CSL、Melbourne、Australia)、Pam3Cys、SB-AS4(ミョウバンとMPLを含有するSmithKline Beechamアジュバント系#4;SBB、Belgium)、CRL1005などのミセルを形成する非イオン性ブロックコポリマー(これらは、ポリオキシエチレンの鎖によって隣接された疎水性ポリオキシプロピレンの直鎖を含有する(Vaxcel,Inc.,Norcross,Ga))及びMontanide IMS(例えば、IMS1312、可溶性免疫賦活物質と組み合わされた水性ナノ粒子(Seppic))であり得るが、これらに限定されない。
【0157】
アジュバントは、本明細書中に論述されているものなどのTLRリガンドであり得る。TLR3を通じて作用するアジュバントには、二本鎖RNAが含まれるが、これに限定されない。TLR4を通じて作用するアジュバントには、モノホスホリルリピドA(MPL
A;Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,Mont.)及びムラミルジペプチド(MDP;Ribi)及びスレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174(リピドAと関連するグルコサミン二糖;OM Pharma S A,Meyrin,Switzerland)などのリポ多糖の誘導体が含まれるが、これらに限定されない。TLR5を通じて作用するアジュバントには、フラジェリンが含まれるが、これに限定されない。TLR7及び/又はTLR8を通じて作用するアジュバントには、一本鎖RNA、オリゴリボヌクレオチド(ORN)、イミダゾキノリンアミン(例えば、イミキモド(R-837)、レシキモド(R-848))などの合成低分子量化合物が含まれる。TLR9を通じて作用するアジュバントには、ウイルス若しくは細菌起源のDNA又はCpG ODNなどの合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が含まれる。別のアジュバントクラスは、ホスホロチオエートヌクレオチド類似体及びホスホロチオエート骨格結合を含有する核酸などのホスホロチオエート含有分子である。
【0158】
アジュバントは、油エマルジョン(例えば、フロイントのアジュバント);サポニン製剤;ビロソーム及びウイルス様粒子;細菌及び微生物の誘導体;免疫賦活性オリゴヌクレオチド;ADPリボシル化毒素及び解毒された誘導体;ミョウバン;BCG;ミネラル含有組成物(例えば、アルミニウム塩及びカルシウム塩、水酸化物、ホスフェート、サルフェートなどのミネラル塩);生体接着剤(bioadhesive)及び/又は粘膜接着剤(mucoadhesive);微粒子;リポソーム;ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンエステル製剤;ポリホスファゼン;ムラミルペプチド;イミダゾキノロン化合物;及び界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノール)でもあり得る。
【0159】
アジュバントには、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子及び腫瘍壊死因子などの免疫調節因子も含まれ得る。
【0160】
薬学的組成物及び投与の様式
ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、それを必要とする被験体に投与される。
【0161】
いくつかの実施形態において、本開示は、アルブミン結合ペプチド結合体を含む薬学的組成物を提供する。ある実施形態において、本開示は、アルブミン結合ペプチド結合体と薬学的に許容され得る希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/又はアジュバントとを含む薬学的組成物を提供する。
【0162】
薬学的組成物は、投与の非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)又は皮下注射)、経皮(受動的に又はイオン導入若しくは電気穿孔を用いて)又は経粘膜(鼻、膣、直腸又は舌下)経路によって、又は生体内侵食性挿入物を用いて投与するための薬学的組成物とすることができ、投与の各経路に適した剤形で処方することができる。
【0163】
いくつかの実施形態において、組成物は、標的とされる細胞への組成物の送達のために有効な量で、例えば、静脈内又は腹腔内投与によって全身的に投与される。他の可能な経路には、経皮又は経口が含まれる。
【0164】
ある実施形態において、組成物は、局所的に、例えば、処置される部位中に直接に、注射によって投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ又はそれを超える腫瘍に直接注射又はその他の方法で投与される。典型的には、局所注射は、全身投与によって達成することができるものよりも高い組成物の増加した局所濃度をもたらす。いくつかの実施形態において、組成物は、カテーテル又は注射器を使用することによって、適切な細胞に局所的に送達される。このような組成物を細胞へ局所的に送達する他の手段には、注入ポンプ(例えば、Alza Corporation、Palo Alto、Calif.から得られる)を用いること又は、インプラントの近接領域へのナノリポゲルの持続的放出を実施することができるポリマー性インプラント中に組成物を組み込むこと(例えば、P.Johnson and J.G.Lloyd-Jones,eds.,Drug Delivery Systems(Chichester,England:Ellis Horwood Ltd.,1987を参照されたい)が含まれる。
【0165】
ある実施形態において、許容され得る製剤材料は、好ましくは、利用される投与量及び濃度においてレシピエントに対して非毒性である。ある実施形態において、製剤材料は、皮下及び/又は静脈内投与用である。ある実施形態において、薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、質量オスモル濃度、粘度、清澄性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解若しくは放出の速度、吸着又は浸透を修飾し、維持し又は保つための製剤材料を含有することができる。ある実施形態において、適切な製剤材料には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ボレート、バイカーボネート、Tris-HCl、シトレート、ホスフェート又はその他の有機酸など);増量剤(bulking agent)(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);充填剤(filler);単糖;二糖;及びその他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色、矯味矯臭及び希釈剤;乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤若しくは湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール(tyloxapal)など);安定性増強剤(スクロース又はソルビトールなど);張度増強剤(アルキル金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又はカリウム、マンニトールソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤並びに/又は薬学的アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company(1995)。ある実施形態において、製剤は、PBS;20mM NaOAc、pH5.2、50mM
NaCl;及び/又は10mM NAOAC、pH5.2、9%スクロースを含む。ある実施形態において、最適な薬学的組成物は、例えば、意図される投与の経路、送達形式及び所望される投与量に応じて、当業者によって決定されるであろう。例えば、上記Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。ある実施形態において、このような組成物は、アルブミン結合ペプチド結合体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度及びインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0166】
ある実施形態において、薬学的組成物中の主要なビヒクル又は担体は、水性又は非水性の性質とすることができる。例えば、ある実施形態において、適切なビヒクル又は担体は、非経口投与用組成物において一般的な他の材料が場合により補充され得る、注射用水、生理的食塩溶液又は人工脳脊髄液とすることができる。ある実施形態において、食塩水は等張のリン酸緩衝化食塩水を含む。ある実施形態において、中性の緩衝化された食塩水又は血清アルブミンが混合された食塩水はさらなる例示的なビヒクルである。ある実施形態において、薬学的組成物は、約pH7.0~8.5のTris緩衝液又は約4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトール又はソルビトールに対する適切な代替物をさらに含むことができる。ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体を含む組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を凍結乾燥されたケーキ又は水溶液の形態の必要に応じて加えられる製剤作用物質(Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記)と混合することによって、保存のために調製することができる。さらに、ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体を含む組成物は、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として調合することができる。
【0167】
ある実施形態において、薬学的組成物は、非経口送達のために選択されることができる。ある実施形態において、組成物は、吸入のために、又は経口など消化管を通じた送達のために選択されることができる。このような薬学的に許容され得る組成物の調製は、当業者の能力の範疇に属する。
【0168】
ある実施形態において、製剤成分は、投与の部位に許容され得る濃度で存在する。ある実施形態において、緩衝液は、生理的pHに又はわずかにより低いpHに、典型的には約5~約8のpH範囲内に組成物を維持するために使用される。
【0169】
いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体は、非経口注射によって、水溶液中で投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、アルブミン又は他の血清タンパク質を含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、製剤は、懸濁物又はエマルジョンの形態とすることができる。一般に、有効量のアルブミン結合ペプチド結合体を含む薬学的組成物が提供され、これは、薬学的に許容され得る、希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体を必要に応じて含む。このような組成物は、希釈剤無菌水、様々な緩衝液含有物(例えば、Tris-HCl、アセテート、ホスフェート)、pH及びイオン強度の緩衝化された食塩水を含むことができ、界面活性剤と可溶化剤などの添加物(例えば、ポリソルベート20又は80とも称されるTWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80)、抗酸化物(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、並びに防腐剤(例えば、チメルソル(Thimersol)、ベンジルアルコール)及び増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を必要に応じて含むことができる。非水性溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油及びトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。製剤は、凍結乾燥され得、使用直前に再溶解/再懸濁され得る。製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通じたろ過によって、組成物中に滅菌剤を組み込むことによって、組成物を照射することによって、又は組成物を加熱することによって滅菌され得る。
【0171】
ある実施形態において、非経口投与が想定される場合、治療的組成物は、薬学的に許容され得るビヒクル中にアルブミン結合ペプチド結合体を含む非経口的に許容され得る発熱物質不含水溶液の形態とすることができる。ある実施形態において、非経口注射用ビヒクルは無菌蒸留水であり、アルブミン結合ペプチド結合体は、適切に保存される無菌等張溶液として調合される。ある実施形態において、調製は、生成物の調節された又は持続された放出を供し、次いでデポ注射を介してこれを送達することのできる、注射可能なマイクロスフェア、生体内侵食性粒子、ポリマー性化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸など)、ビーズ又はリポソームなどの作用物質と共に所望の分子を調合することを含むことができる。ある実施形態において、ヒアルロン酸も使用することができ、循環中での持続性の期間を促進するという効果を有することができる。ある実施形態において、所望の分子を導入するために、植込み可能な薬物送達デバイスを使用することができる。
【0172】
いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体は局所的に適用することができる。局所投与には、肺(経肺(pulmonary))、鼻、経口(舌下、頬側)、膣、又は直腸粘膜への適用が含まれ得る。いくつかの事例において、結合体は、粘膜の障壁を横切って、アルブミン上で経細胞輸送され得る。
【0173】
ある実施形態において、薬学的組成物は、吸入のために調合することができる。ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、吸入のための乾燥粉末として調合することができる。ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体を含む吸入溶液は、エアロゾル送達のために噴霧体と共に調合することができる。ある実施形態において、溶液は噴霧することができる。経肺投与は、化学的に修飾されたタンパク質の経肺送達を記載するPCT出願第PCT/US94/001875号にさらに記載されている。
【0174】
ある実施形態において、約5ミクロン未満の空気力学的直径を有するエアロゾル又は噴霧乾燥された粒子のいずれかとして送達されると、組成物は、吸引されながら肺に送達され、肺上皮内層を血流まで横切ることができる。
【0175】
ネブライザ、定量吸入器及び粉末吸入器を含むがこれらに限定されない、治療的生成物の経肺送達のために設計された多岐にわたる機械的デバイスを使用することができ、これらは全て当業者によく知られている。市販のデバイスの幾つかの具体例は、Ultravent(登録商標)ネブライザ(Mallinckrodt Inc.,St.Louis,Mo.);Acorn(登録商標)IIネブライザ(Marquest Medical Products,Englewood,Colo.);Ventolin(登録商標)定量吸入器(Glaxo Inc.,Research Triangle Park,N.C.);及びSpinhaler(登録商標)粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedford,Mass.)である。Nektar、Alkermes及びMannkindは全て、その技術が本明細書中に記載されている製剤に適用され得る承認された又は臨床試験中の吸入可能なインスリン粉末調製物を有する。
【0176】
ある実施形態において、製剤は経口的に投与されることができることが想定される。ある実施形態において、この様式で投与されるアルブミン結合ペプチド結合体は、錠剤及びカプセルなどの固体剤形の配合において慣用される担体を用いて又は用いずに調合することができる。ある実施形態において、カプセルは、生物学的利用率が最大化され、前全身的分解が最小化されるときに、胃腸管中の点で製剤の活性部分を放出するように設計することができる。ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体の吸収を促進するために、少なくとも1つの追加の作用物質を含めることができる。ある実施形態において、希釈剤、矯味矯臭薬、低融点蝋、植物油、滑沢剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤及び結合剤も利用することができる。
【0177】
いくつかの実施形態において、粘膜への投与用の製剤は、典型的には、錠剤、ゲル、カプセル、懸濁物又はエマルジョン中に組み込まれ得る噴霧乾燥された薬物粒子であろう。標準的な薬学的賦形剤は、いずれの調合者(formulator)からも入手可能である。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤、カプセル又はロゼンジの形態であり得る。
【0178】
いくつかの実施形態において、経皮製剤も調製され得る。これらは、典型的には、軟膏、ローション、スプレー又はパッチであり、これらの全ては標準的な技術を用いて調製することができる。経皮製剤は浸透増強剤を含むことができる。
【0179】
ある実施形態において、薬学的組成物は、錠剤の製造に適した非毒性賦形剤との混合物中に、有効量のアルブミン結合ペプチド結合体を含むことができる。ある実施形態において、無菌水又は別の適切なビヒクル中に錠剤を溶解することによって、溶液は単位用量形態で調製することができる。ある実施形態において、適切な賦形剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム若しくは重炭酸ナトリウム、ラクトース若しくはリン酸カルシウムなどの不活性な希釈剤;又はデンプン、ゼラチン若しくはアラビアゴムなどの結合剤;又はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸若しくは滑石などの滑沢剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
持続された又は制御された送達製剤中にアルブミン結合ペプチド結合体を含む製剤など、さらなる薬学的組成物が当業者に明らかであろう。ある実施形態において、リポソーム担体、生体内侵食性微粒子又は多孔性ビーズ及びデポ注射など様々なその他の持続された又は制御された送達手段を調合するための技術も当業者に知られている。例えば、薬学的組成物の送達のための多孔性ポリマー性微粒子の制御された放出を記載するPCT出願第PCT/US93/00829号を参照されたい。ある実施形態において、持続放出調製物は、成形された物品の形態の半透性ポリマーマトリックス、例えば、フィルム又はマイクロカプセルを含むことができる。持続放出マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号及び欧州特許第058,481号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers,22:547-556(1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981)及びLanger,Chem.Tech.,12:98-105(1982))、エチレン酢酸ビニル(Langerら、上記)又はポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)を含むことができる。ある実施形態において、持続放出組成物は、本分野において公知のいくつかの方法のいずれによっても調製することができるリポソームも含むことができる。例えば、Eppsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688-3692(1985);欧州特許036,676号;欧州特許第088,046号及び欧州特許第143,949号を参照されたい。
【0181】
インビボ投与のために使用される薬学的組成物は、典型的には無菌である。ある実施形態において、これは、無菌ろ過膜を通したろ過によって達成することができる。ある実施形態において、組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥及び再構成の前又は後のいずれかに、この方法を用いた滅菌を実施することができる。ある実施形態において、非経口投与のための組成物は、凍結乾燥された形態で又は溶液中に保存することができる。ある実施形態において、非経口組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアル中に配置される。
【0182】
ある実施形態において、薬学的組成物が調合されたら、溶液、懸濁物、ゲル、エマルジョン、固体として、又は脱水された若しくは凍結乾燥された粉末として無菌のバイアル中で保存することができる。ある実施形態において、このような製剤は、即時使用形態で又は投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥されている)のいずれかで保存することができる。
【0183】
ある実施形態において、単回用量投与単位を作製するためのキットが提供される。ある実施形態において、キットは、乾燥された化合物を有する第一の容器と水性製剤を有する第二の容器の両方を含有することができる。ある実施形態において、単室及び複室の事前充填式注射器(例えば、液体注射器(liquid syringe)及び凍結乾燥シリンジ(lyosyringe))を含有するキットが含まれる。
【0184】
ある実施形態において、治療的に利用されるアルブミン結合ペプチド結合体を含む薬学的組成物の有効量は、例えば、治療の状況及び目的に依存するであろう。当業者は、ある実施形態によれば、処置のための適切な投与量レベルは、このため、送達される分子、アルブミン結合ペプチド結合体が使用されている適応症、投与の経路、並びに患者の大きさ(体重、体表面積又は器官の大きさ)及び/又は状態(年齢及び全般的な健康)に部分的に応じて変動し得ることを理解するであろう。ある実施形態において、最適な治療効果を得るために、臨床医は投与量を滴定し、投与の経路を修正することができる。ある実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体に対する典型的な投与量は、上記要因に応じて、約0.1μg/kg~最大約10mg/kg又はそれを超える範囲とすることができる。ある実施形態において、投与量は、0.1μg/kg~最大約10mg/kg、又は0.1μg/kg~最大約1mg/kg、又は0.1μg/kg~最大約0.1mg/kg、又は0.1μg/kg~最大約0.05mg/kg;又は0.1μg/kg~最大約0.01mg/kgの範囲とすることができる。
【0185】
ある実施形態において、投薬の頻度は、使用される製剤中のアルブミン結合ペプチド結合体の薬物動態的パラメータを考慮に入れるであろう。ある実施形態において、臨床医は、所望される効果を達成する投与量に到達するまで組成物を投与するであろう。ある実施形態において、したがって、組成物は、単回用量として、又は時間をわたって2つ若しくはそれを超える用量として(所望の分子の同一量を含有してもよく、含有しなくてもよい)、又は植込みデバイス若しくはカテーテルを介した連続的注入として投与することができる。適切な投与量のさらなる緻密化は当業者によって日常的に為され、当業者によって日常的に行われる作業の範疇に属する。ある実施形態において、適切な投与量は適切な用量応答データの使用を通じて確認することができる。
【0186】
ある実施形態において、薬学的組成物の投与の経路は、公知の方法に従う、例えば、経口的に、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、皮下、眼内、動脈内、門脈内又は病変内経路による注射を通じて;持続放出系による又は植込みデバイスによる。ある実施形態において、組成物は、ボーラス注射によって又は注入により連続的に、又は植込みデバイスによって投与することができる。ある実施形態において、併用療法の個別の要素は、異なる経路によって投与され得る。
【0187】
ある実施形態において、組成物は、所望の分子がその上に吸収又は被包された、膜、スポンジ又は別の適切な材料の植込みを介して局所的に投与することができる。ある実施形態において、植込みデバイスが使用される場合、デバイスは、いずれの適切な組織又は器官中にも植え込むことができ、所望の分子の送達は、拡散、時限ボーラス又は連続的投与を介することができる。ある実施形態においては、アルブミン結合ペプチド結合体を含む薬学的組成物をエキソビボ様式で使用することが望ましいことがあり得る。このような事例では、患者から取り出された細胞、組織及び/又は器官がアルブミン結合ペプチド結合体を含む薬学的組成物に曝され、続いて、その後、細胞、組織及び/又は器官が患者中に戻されて植え込まれる。
【0188】
ある実施形態において、ポリペプチドを発現及び分泌するために、本明細書に記載されている方法などの方法を用いて、遺伝子操作されたある細胞を植え込むことによって、アルブミン結合ペプチド結合体を送達することができる。ある実施形態において、このような細胞は動物細胞又はヒト細胞とすることができ、自家、非対応(heterologous)又は異種(xenogeneic)とすることができる。ある実施形態において、細胞は不死化することができる。ある実施形態において、免疫学的応答の確率を減少させるために、細胞は、周囲の組織の浸潤を避けるために被包されることができる。ある実施形態において、被包材料は、典型的には、アルブミン結合ペプチド結合体の放出を可能にするが、患者の免疫系による又は周囲の組織に由来する他の有害な因子による細胞の破壊を防ぐ、生体適合性半透性ポリマー性の囲い又は膜である。
【0189】
アルブミン結合ペプチド結合体を作製する方法
いくつかの態様において、本明細書に記載されているアルブミン結合ペプチド結合体は、組換えDNA技術を用いて、形質転換された宿主細胞中で作製され得る。そのようにするために、アルブミン結合ペプチド結合体をコードする組換えDNA分子が調製される。このようなDNA分子を調製する方法は、本分野において周知である。例えば、アルブミン結合ペプチド結合体をコードする配列は、適切な制限酵素を用いてDNAから切り取ることができるであろう。または、DNA分子は、ホスホルアミデート法など、化学的合成技術を用いて合成することができるであろう。また、これらの技術の組み合わせを使用することができるであろう。
【0190】
アルブミン結合ペプチド結合体を作製する方法は、適切な宿主中でアルブミン結合ペプチド結合体を発現することが可能なベクターも含む。ベクターは、適切な発現調節配列に作動可能に連結されたアルブミン結合ペプチド結合体をコードするDNA分子を含む。DNA分子がベクター中に挿入される前又は後のいずれに、この作動可能な連結に影響を与える方法は周知である。発現調節配列には、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソームヌクレアーゼドメイン、開始シグナル(start signal)、停止シグナル(stop signal)、キャップシグナル(cap signal)、ポリアデニル化シグナル及び転写又は翻訳の調節に関わるその他のシグナルが含まれる。
【0191】
その上にDNA分子を有する得られたベクターは、適切な宿主を形質転換するために使用される。この形質転換は、本分野において周知の方法を用いて実施され得る。
【0192】
多数の利用可能な周知の宿主細胞のいずれもが、本明細書中に開示されている方法において使用するのに適切であり得る。具体的な宿主の選択は、本分野によって認知される多数の要因に依存する。これらには、例えば、選択された発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされるペプチドの毒性、形質転換の比率、ペプチドの回収の容易さ、発現の特徴、バイオセイフティー及び費用が含まれる。全ての宿主が特定のDNA配列の発現に等しく有効であり得るわけではないことを理解しながら、これらの要因のバランスをとらなければならない。これらの一般的な指針の中で、有用な微生物の宿主には、細菌(大腸菌種など)、酵母(サッカロミセス種など)及び他の真菌、昆虫、植物、培養中の哺乳動物(ヒトを含む)細胞又は本分野において公知のその他の宿主が含まれる。
【0193】
次に、形質転換された宿主が培養され、精製される。所望の化合物が発現されるように、宿主細胞は従来の発酵条件下で培養され得る。このような発酵条件は、本分野において周知である。最後に、ペプチドは、本分野において周知の方法によって培養物から精製される。
【0194】
化合物は、合成方法によっても作製され得る。例えば、固相合成技術が使用され得る。適切な技術は本分野において周知であり、Merrifield(1973),Chem.Polypeptides,pp.335-61(Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifield(1963),J.Am.Chem.Soc.85:2149;Davisら、(1985),Biochem.Intl.10:394-414;Stewart and Young(1969),Solid Phase Peptide Synthesis;米国特許第3,941,763号;Finnら、(1976),The Proteins(3rd ed.)2:105-253;及びEricksonら、(1976),The Proteins(3rd ed.)2:257-527に記載されているものを含む。いくつかの実施形態において、固相合成はアルブミン結合ペプチド結合体を作製するための技術である。誘導体化されたペプチドを含有する又は非ペプチド基を含有する化合物は、周知の有機化学技術によって合成され得る。
【0195】
いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は固相ペプチド合成を介して生成され得る。いくつかの実施形態において、ABP結合体を合成するために、自動化された合成装置又は手動固相ペプチド合成技術が使用される。ある実施形態において、ABP結合体を合成するために、溶液ペプチド合成が使用され得る。
【0196】
いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体のドメインは、別々の単位又はドメインとして合成される。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体のドメインは、単一単位として合成される。
【0197】
例えば、いくつかの実施形態において、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、分子アジュバントに連結されたアルブミン結合ペプチドを含むアルブミン結合ペプチド結合体は、ABPに対して自動化された固相ペプチド合成を、及び分子アジュバント(例えば、CpG抗原)に対してDNA合成を用いて、2つの別個の単位で合成され得る。次いで、2つの成分は、Cu(I)によって触媒されるクリックケミストリーを介して、溶液中で結合され得る。固相ペプチド合成技術のための本分野で一般的に知られた他の方法が、ABP成分を合成するために利用され得る。アジュバント分子を合成するために、本分野において一般的に知られたその他の合成技術を使用することができるであろう(例えば、CpGドメイン及び他のDNAアジュバントに対して本分野において一般的に知られ、その他分子抗原の性質と共に変動するDNA合成の変法)。ABP結合体の2つの成分を連結するために、本分野において一般的に知られた生物結合体化(bioconjugation)戦略(例えば、(アミド/NHSエステル、スルフヒドリル/マレイミド、アジ化物/DBCO及びその他)を使用することができるであろう。
【0198】
いくつかの実施形態において、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、抗原(例えば、ペプチド抗原)に連結されたアルブミン結合ペプチドを含むアルブミン結合ペプチド結合体は、単一単位として合成され得る。
【0199】
分子発現/合成のその他の方法が、本分野において当業者に一般的に知られている。
【0200】
ポリペプチドの発現
上記核酸分子は、例えば、ベクターで形質導入された細胞中において核酸分子の発現を誘導することができるベクター内に含有されることができる。したがって、アルブミン結合ペプチド結合体をコードする核酸分子を含有する発現ベクター及びこれらのベクターでトランスフェクトされた細胞は、ある実施形態の中のものである。
【0201】
使用に適したベクターには、細菌中で使用するためのT7をベースとするベクター(例えば、Rosenbergら、Gene56:125,1987を参照されたい)、哺乳動物細胞中で使用するためのpMSXND発現ベクター(Lee and Nathans,J.Biol.Chem.263:3521,1988)及び昆虫細胞中で使用するためのバキュロウイルス由来ベクター(例えば、Clontech,Palo Alto,Calif.から得られる発現ベクターpBacPAKS)が含まれる。このようなベクター中に目的のポリペプチドをコードする核酸挿入物は、例えば、その中で発現が求められている細胞の種類に基づいて選択されるプロモーターに作動可能に連結することができる。例えば、細菌中でT7プロモーターを使用することができ、昆虫細胞中でポリヘドリンプロモーターを使用することができ、哺乳動物中でサイトメガロウイルス又はメタロチオネインプロモーターを使用することができる。また、より高等な真核生物の場合には、組織特異的及び細胞種特異的プロモーターが広く利用可能である。体内の所定の組織又は細胞種中で核酸分子の発現を誘導する能力のために、これらのプロモーターはこのように命名されている。当業者は、核酸の発現を誘導するために使用することができる多数のプロモーター及びその他の制御エレメントをよく認識している。
【0202】
挿入された核酸分子の転写を促進する配列に加えて、ベクターは、複製起点及び選択可能なマーカーをコードする他の遺伝子を含有することができる。例えば、ネオマイシン耐性(neor)遺伝子は、その中で該遺伝子が発現されている細胞にG418耐性を付与し、このため、トランスフェクトされた細胞の表現型選択を可能にする。当業者は、所定の制御エレメント又は選択可能なマーカーが具体的な実験の状況において使用するのに適切であるかどうかを容易に決定することができる。
【0203】
使用に適したウイルスベクターには、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ベクター、ヘルペスウイルス、サルウイルス40(SV40)及びウシパピローマウイルスベクターが含まれる(例えば、Gluzman(Ed.),Eukaryotic Viral Vectors,CSH Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。
【0204】
アルブミン結合ペプチド結合体をコードする核酸分子を含有し、発現する原核又は真核細胞も使用に適している。細胞は、トランスフェクトされた細胞、すなわち、組換えDNA技術によって、核酸分子、例えば、アルブミン結合ペプチド結合体をコードする核酸分子がその中に導入されている細胞である。このような細胞の子孫も、本明細書中に開示されている方法において使用するのに適していると考えられる。
【0205】
発現系の正確な成分は決定的ではない。例えば、アルブミン結合ペプチド結合体は、細菌大腸菌などの原核生物の宿主中で、又は昆虫細胞(例えば、Sf21細胞)又は哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、NIH3T3細胞又はHela細胞)などの真核生物の宿主中で作製され得る。これらの細胞は、American Type Culture Collection(Manassas,Va)を含む多くの供給源から入手可能である。発現系を選択する際には、成分が互いに適合的であることのみが重要である。当業者は、このような決定を下すことができる。さらに、発現系を選択する際に指針が必要とされる場合には、当業者は、Ausubelら(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,New York,N.Y.,1993)及びPouwelsら(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 Suppl.1987)を参考にし得る。
【0206】
発現されたアルブミン結合ペプチド結合体は、慣用的な生化学的手法を用いて発現系から精製することができ、例えば、本明細書に記載されているような、治療剤として使用することができる。
【0207】
使用の方法
a.アルブミン結合ペプチド結合体を送達する方法
i.リンパ節標的化
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫調節分子(例えば、抗原性ペプチド)などのカーゴをアルブミン結合ペプチド(ABP)に結合体化することがリンパ節へのカーゴの送達及び蓄積を増加させ得ることを提供する。リンパ節は、腋窩及び胃を含む身体全体に広く分布した、リンパ管によってつながっている免疫系の楕円形器官である。リンパ節は、B、T及びその他の免疫細胞の拠点である。リンパ節は、外来粒子に対するフィルター又はトラップとして作用し、免疫系の適切な機能において重要である。リンパ節には、リンパ球及びマクロファージと呼ばれる白血球が密に詰まっている。
【0208】
リンパ節を標的とする結合体は、注射部位からリンパ系の二次器官(例えば、リンパ節)へ輸送され得、そこで、免疫細胞と相互作用する。ABP結合体のアルブミン結合は、ABP結合体が血流中に素早く流れるのを防ぎ、ABP結合体をリンパ管及び流入領域リンパ節に再度標的化させ、ここで、ABP結合体は、ろ過され、蓄積し、そのカーゴ(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバントなどの免疫調節分子)を免疫細胞に提示すると考えられる。
【0209】
上で論述されているように、アルブミン結合ペプチドは、例えば、免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)に結合体化され得、これは、結合体化されていない免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)を投与することと比べて、免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)の免疫賦活効果を増加させる。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドへのカーゴ(例えば、免疫調節分子)の結合体化は、結合体化されていないカーゴと比べて、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍又はそれを超えて、カーゴの蓄積を増加する。
【0210】
ii.組織特異的標的化
アルブミン結合ペプチド結合体は、投与の部位における又は投与の部位の近くの組織へのカーゴ(例えば、抗原性ペプチド、分子アジュバント)の送達及び蓄積を増加させるために使用することができる。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は注射の部位に蓄積することができる。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、例えば、粘膜組織に標的化され得る。
【0211】
b.免疫応答を増加させる方法
免疫調節分子(例えば、ペプチド抗原又は分子アジュバント)を含むアルブミン結合ペプチド結合体は、免疫応答を誘導し、増加し、又は強化するのに有効な量で投与され得る。「免疫応答」は、先天性免疫又は適応免疫の活性化又は効率を誘導し、増加し、誘導し、又は永続化する応答をいう。さらに、例えば、アレルゲン又は自己免疫抗原への免疫よりもむしろ寛容を促進するために、他のアジュバントの不在下で投与されるアルブミン結合ペプチド結合体が使用され得る。
【0212】
ABP結合体は、リンパ管を通じて非経口的に(皮下、皮内又は筋肉内注射によって)、又は循環系を通じた全身投与によって送達することができる。リンパ節は、アルブミンに結合された結合体をろ過し得る。したがって、幾つかの実施形態においては、ABP結合体が最も近いリンパ節によって優先的にろ過され得るので、非経口投与は全身的な分布をもたらさない。この傾向は、脾臓の腫脹などの全身毒性も低減する。
【0213】
したがって、いくつかの実施形態において、ABP結合体は、免疫応答を必要とする部位の近くに(すなわち、腫瘍又は感染の部位の近くに)ある1つ又はそれを超えるリンパ節に隣接する部位又は至る部位に投与される。いくつかの実施形態において、ABP結合体は、身体全体にわたる様々な位置において、複数用量で投与される。いくつかの実施形態において、ABP結合体は、免疫応答を必要とする部位(例えば、腫瘍又は感染の部位)に直接投与することもできる。
【0214】
免疫応答は、対照と比較して、ABP結合体によって誘導、増加又は強化され得、例えば、被験体中の免疫応答は、カーゴ単独によって、又はリポソームなどの別の送達戦略を用いて送達されたカーゴによって、誘導され、増加され、又は強化される。いくつかの実施形態において、ABP結合体は、T細胞の不活性化を低減し、及び/又はT細胞の活性化を延長し(すなわち、T細胞の抗原特異的増殖を増加し、T細胞によるサイトカイン産生を増強し、T細胞の分化及びエフェクター機能を刺激し、並びに/又はT細胞の生存を促進し)又はT細胞疲弊及び/若しくはアネルギーを克服する。
【0215】
ABP結合体は、例えば、カーゴのみ又は別の送達系と組み合わせたカーゴを投与することが無効であるときに、免疫応答を誘導するために使用され得る。ABP結合体は、カーゴのみを投与することと比較して、免疫応答を強化又は改善するためにも使用され得る。いくつかの実施形態において、ABP結合体は、免疫応答を誘導し、増加し、若しくは強化するために必要とされる投与量を低減し得、又は免疫系が投与後に応答するために必要とされる時間を短縮し得る。
【0216】
ABP結合体は、感染性因子へのその後の曝露に対して被験体中に耐性を付与する、予防的ワクチン若しくは免疫原性組成物の一部として、又はウイルスに感染した若しくはがんを有する被験体中のウイルス抗原などの既存の抗原に対する被験体の免疫応答を開始若しくは強化するために使用することができる治療的ワクチンの一部として投与され得る。
【0217】
予防的又は治療的免疫応答の所望される転帰は、処置される疾患若しくは状態にしたがって、又は本分野で周知の原理にしたがって変化し得る。例えば、感染性因子に対する免疫応答は、感染性因子の定着及び複製を完全に防ぎ得、「無菌免疫(sterile immunity)」及びあらゆる疾患症状の不在に影響を与える。しかしながら、症状の数、重篤度又は期間を低減すれば、集団中の症状を有する個体の数を減少させれば、又は感染性因子の伝染を低減すれば、感染性因子に対するワクチンは有効と考えられ得る。
【0218】
同様に、がん、アレルゲン又は感染性因子に対する免疫応答は、疾患を完全に処置し得、症状を緩和し得、又は疾患に対する全体的な治療的介入中の1つの面であり得る。
【0219】
ABP結合体は、ABP結合体なしの対応する組成物を用いて得られたエフェクター細胞応答と比較して、成分抗原又は抗原性組成物の少なくとも1つに対して、CD4 T細胞免疫応答などの改善されたエフェクター細胞応答を誘導し得る。「改善されたエフェクター細胞応答」という用語は、ABP結合体なしに同じカーゴを投与した後に得られるものより高い、ABP結合体の投与後にヒト患者において得られるCD8又はCD4応答などのエフェクター細胞応答をいう。
【0220】
改善されたエフェクター細胞応答は、免疫学的に刺激されていない患者、すなわち、抗原に対して血清陰性である患者中で取得することができる。この血清陰性は、患者が抗原に直面したことが全くないことの(いわゆる、「ナイーブの(naive)」患者)又は一度遭遇した抗原に対して応答することができなかったことの結果であり得る。いくつかの実施形態において、改善されたエフェクター細胞応答は、免疫無防備状態の被験体中で得られる。
【0221】
改善されたエフェクター細胞応答は、以下のサイトカインのいずれかを産生する細胞の数を測定することによって評価することができる。(1)少なくとも2つの異なるサイトカイン(CD40L、IL-2、IFN-γ、TNF-α)を産生する細胞;(2)少なくともCD40Lと別のサイトカイン(IL-2、TNF-α、IFN-γ)とを産生する細胞;(3)少なくともIL-2と別のサイトカイン(CD40L、TNF-α、IFN-γ)とを産生する細胞;(4)少なくともIFN-γと別のサイトカイン(IL-2、TNF-α、CD40L)とを産生する細胞;(5)及び少なくともTNF-αと別のサイトカイン(IL-2、CD40L、IFN-γ)とを産生する細胞。上記サイトカインのいずれかを産生する細胞が、上で論述した対照と比較して、ABP結合体組成物の投与後により高い量であるときに、改善されたエフェクター細胞応答が存在する。
【0222】
いくつかの実施形態において、ABP結合体は、IFN-γ、TNF-α若しくはこれらの組み合わせを産生するT細胞の数を増加させ、又は既存のT細胞中でのIFN-γ、TNF-α若しくはこれらの組み合わせの産生を増加させる。
【0223】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の投与は、これに代えて又はこれに加えて、対照と比べて、ABP結合体を投与された患者中に改善されたB記憶細胞応答を誘導する。改善されたB記憶細胞応答は、インビトロ分化の刺激によって測定された場合に、抗原に遭遇した時に抗体分泌形質細胞に分化することができる末梢血Bリンパ球の増加した頻度を意味するものとする。
【0224】
他の実施形態において、免疫原性組成物は、一次免疫応答及びCD8応答を増加させる。ABP結合体の投与は、対照と比較して、特異的な抗原に対する改善されたCD4 T細胞又はCD8T細胞免疫応答を誘導する。この方法は、時間的により持続するCD4 T細胞応答を誘導することを可能にし得る。
【0225】
いくつかの実施形態において、刺激されていない被験体中で得られる改善されたCD4
T細胞免疫応答などのCD4 T細胞免疫応答は、交差反応性CD4 Tヘルパー応答の誘導を伴う。特に、交差反応性CD4 T細胞の量が増加される。「交差反応性」CD4応答という用語は、例えば、インフルエンザ株間で共有されるエピトープを標的とするCD4 T細胞をいう。
【0226】
免疫応答を刺激し又は強化するのに十分であるアルブミン結合ペプチド結合体の量、すなわち治療的有効量は、選択した具体的な化合物又は組成物のみならず、投与の経路、処置されている状態の性質並びに患者の年齢及び状態と共に変動し、最終的には患者の医師又は薬剤師の判断によることが当業者によって理解されるであろう。本方法において使用される化合物が与えられる時間の長さは、個別に変動する。
【0227】
c.処置される疾患
i.がん
本開示のアルブミン結合ペプチド(ABP)結合体は、がんを処置する上で、免疫応答を刺激又は強化するのに有用である。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は抗がんワクチンとして使用され得る。したがって、例えば、アルブミン結合ペプチド結合体を含む、本明細書において使用される組成物は、がんを有する患者に投与することができる。
【0228】
提供される組成物及び方法を用いて処置され得るがんの種類には、以下のもの:膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚(例えば、黒色腫)、胃、子宮、卵巣、精巣及び血液が含まれるが、これらに限定されない。本開示の組成物及び方法を用いた処置に適したがんの他の非限定的な例は、本明細書中に記載されている。
【0229】
処置され得る悪性腫瘍は、腫瘍が由来する組織の胚起源にしたがって、本明細書において分類される。癌腫は、皮膚又は内臓及び腺の上皮内層などの、内胚葉又は外胚葉性組織から発生する腫瘍である。より低い頻度で発生する肉腫は、骨、脂肪及び軟骨などの中胚葉性結合組織に由来する。白血病及びリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は単一の細胞として増殖するのに対して、リンパ腫は腫瘍塊として増殖する傾向がある。悪性腫瘍は、がんを確立するために、身体の多数の器官又は組織に出現し得る。
【0230】
ABP結合体は、がんを有する被験体中の腫瘍抗原などの既存の抗原に対する被験体の免疫応答を開始又は強化するために使用することができる、免疫原性組成物として、又は予防的ワクチン若しくは治療的ワクチンなどのワクチンの一部として投与することができる。
【0231】
予防的又は治療的免疫応答の所望される転帰は、疾患にしたがって、本分野で周知の原理にしたがって変化し得る。同様に、がんに対する免疫応答は、症状を緩和し得、又は疾患に対する全体的な治療的介入中の1つの面であり得る。例えば、ABP結合体の投与は、対照と比較して、腫瘍の大きさを縮小させ得又は腫瘍増殖を遅らせ得る。がんに対する免疫応答の刺激は、処置に影響を及ぼすために、外科的、化学療法的、放射線的、ホルモン的及びその他の免疫的アプローチと併用され得る。
【0232】
ii.感染性疾患
いくつかの実施形態において、本開示のABP結合体は、急性又は慢性感染性疾患を処置するのに有用である。ウイルス感染は主としてT細胞によって除去されるので、T細胞活性の増加は、感染性ウイルス因子のより急速な又は完全なクリアランスが動物又はヒト被験体にとって有益であり得る状況において治療的に有用である。このため、ABP結合体アンタゴニストは、免疫不全(例えば、HIV)、パピローマ(例えば、HPV)、ヘルペス(例えば、HSV)、脳炎、インフルエンザ(例えば、ヒトA型インフルエンザウイルス)及び感冒(例えば、ヒトライノウイルス)ウイルス感染症などの、ただしこれらに限定されない局所又は全身的ウイルス感染症の処置のために投与することができる。例えば、ヘルペス病変又は帯状疱疹又は性器疣贅などのウイルス性皮膚疾患を処置するために、ABP結合体を含む薬学的製剤は局所的に投与することができる。ABP結合体は、AIDS、インフルエンザ、感冒又は脳炎を含むが、これらに限定されない全身性ウイルス性疾患を処置するためにも投与することができる。
【0233】
処置することができる代表的な感染症には、アクチノミセス(Actinomyces)、アナベナ(Anabaena)、バチルス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ブデロビブリオ(Bdellovibrio)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、カンピロバクター(Campylobacter)、カウロバクター(Caulobacter)、クラミジア(Chlamydia)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、サイトファーガ(Cytophaga)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ハロバクテリウム(Halobacterium)、ヘリオバクター(Heliobacter)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘモフィルスインフルエンザB型(Hemophilus influenza type B)(HIB)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、ハイフォミクロビウム(Hyphomicrobium)、レジオネラ(Legionella)、リーシュマニア(Leishmania)、レプトスピラ症(Leptspirosis)、リステリア(Listeria)、髄膜炎菌(Meningococcus)A、B及びC型、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ミオバクテリウム(Myobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ミクソコッカス(Myxococcus)、ナイセリア(Neisseria)、ニトロバクター(Nitrobacter)、オシラトリア(Oscillatoria)、プロクロロン(Prochloron)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、フォドスピリラム(Phodospirillum)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、スピリラム(Spirillum)、スピロヘータ(Spirochaeta)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スルホロブス(Sulfolobus)、サーモプラズマ(Thermoplasma)、チオバチルス(Thiobacillus)及びトレポネーマ(treponema)、ビブリオ(Vibrio)及びエルシニア(Yersinia)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia ricketsii)、リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi)、肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジアル・シッタシ(Chlamydial psittaci)、クラミジアル・トラコマチス(Chlamydial trachomatis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、プラスモジウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)及びマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)を含むがこれらに限定されない微生物によって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0234】
いくつかの実施形態において、処置又は予防される疾患の種類は、細菌、ウイルス、原生動物、蠕虫又は細胞内に入り、例えば、細胞傷害性Tリンパ球によって攻撃されるその他の微生物病原体によって引き起こされる慢性感染性疾患である。
【0235】
いくつかの実施形態において、処置される感染症は、肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス又はヒトパピローマウイルスによって引き起こされる慢性感染症である。
【0236】
併用療法
いくつかの実施形態において、本開示のアルブミン結合ペプチド結合体は、1つ又はそれを超えるさらなる治療剤と組み合わせて投与される。治療剤は、アルブミン結合ペプチド結合体と同じ薬学的組成物中で投与することができ、又はアルブミン結合ペプチド結合体とさらなる治療剤は別個の薬学的組成物中で投与することができる。
【0237】
いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチド結合体は、処置されている疾患又は状態の処置のために使用される従来の治療剤と組み合わせて投与される。従来の治療剤は本分野において公知であり、処置される疾患又は障害に基づいて当業者によって決定することができる。例えば、疾患若しくは状態ががんである場合、アルブミン結合ペプチド結合体は、化学療法薬と共に同時投与することができ、又は疾患若しくは状態が細菌性感染症である場合、アルブミン結合ペプチド結合体は抗生物質と共に同時投与することができる。アルブミン結合ペプチド結合体と共に同時投与され得る治療剤の他の例には、抗腫瘍抗体及びチェックポイント阻害剤が含まれる。
【0238】
キット
キットは、本明細書に開示されているアルブミン結合ペプチド(ABP)結合体及び使用についての指示を含むことができる。キットは、アルブミン結合ペプチド結合体と、1つ又はそれを超える対照と、並びに様々な緩衝液、試薬、酵素及び本分野において周知の他の標準的な成分とを適切な容器中に含み得る。
【0239】
容器は、アルブミン結合ペプチド結合体がその中に配置され得る、いくつかの事例では、適切にアリコートに分けられ得る少なくとも1つの、バイアル、ウェル、試験管、フラスコ、瓶、注射器又はその他の容器手段を含むことができる。さらなる成分が提供される場合には、キットは、この成分がその中に配置され得るさらなる容器を含有することができる。キットは、アルブミン結合ペプチド結合体を含有するための手段、及び商業的販売のために密閉されたいずれの他の試薬容器も含むことができる。このような容器には、所望のバイアルがその中に保持されている射出成形又はブロー成形されたプラスチック容器が含まれ得る。容器及び/又はキットは、使用及び/又は注意のための指示を有するラベルを含むことができる。
【実施例0240】
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は、例示の目的でのみ提示されており、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。使用された数字(例えば、量、温度など)に関して精度を確保するために努力が為されたが、もちろん、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。
【0241】
別段の記述がなければ、本発明の実施は、本分野の技術に属する、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の従来の方法を利用するであろう。このような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced
Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(l992)を参照されたい。
【0242】
(実施例1)
例示的なABP-抗原構築物
本開示は、ペプチドワクチンの抗原性を強化するためにアルブミン結合ペプチドが使用され得るという証拠を提供する。アルブミン結合ペプチドは、ワクチン学の文脈において大部分が調査されないままであった。アルブミン結合ペプチドは、以前には、いくつかの前臨床研究においてタンパク質治療薬の薬物動態を延長するために使用されてきた。本開示は、ペプチドワクチンの調製においてアルブミン結合ペプチドが使用され得るという新規発見を提供する。ペプチド抗原に共有結合されたABPがこれらの抗原をリンパ系に向かわせることができるかどうかを調べるために、例示的なABP-抗原構築物を設計、合成、精製及び特徴付けした。
【0243】
本開示のABP-抗原構築物の様々な実施形態が
図1に示されている。
【0244】
ABP-PEG2k-EGPロングは、構成:PEG2kリンカーを介してEGPロングペプチド(AVGALEGPRNQDWLGVPRQL)に作動可能に結合されたアルブミン結合ペプチド(環化されたDICLPRWGCLW)を有する。
【0245】
ABP-G4S-EGPロングは、構成:Gly4Serリンカーを介してEGPロングペプチド(AVGALEGPRNQDWLGVPRQL)に作動可能に連結されたアルブミン結合ペプチド(環化されたDICLPRWGCLW)を有する。
【0246】
(実施例2)
ABP-抗原構築物の合成及び精製
ABP-抗原構築物は、自動化された固相ペプチド合成を介して単一単位として合成された。等しい容量の保護されたアミノ酸単量体(DMF中0.4M、Chem Impex)及びHATU(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート、Chem
Impex)又はPyAOP((7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、P3Bio)(DMF中0.34M)を、90℃のジイソプロピルエチルアミン(ニート、最終濃度1M;Sigma)と合わせて、活性エステルを形成し、90℃で流動するRINK-アミドPEG(PCS Biomatrix)樹脂上に結合させた。DMF洗浄後に、結合された単量体のN末端をピペリジン(最終濃度DMF中1M;Sigma)で脱保護し、DMFでペプチド樹脂(peptiodresin)を洗浄し、このサイクルを繰り返した。これらの反復する結合反応(各1分未満)は、記載されているとおりに、自動化された合成装置中で行われ(Mijalis,A.J.ら、A fully automated flow-based approach for accelerated peptide synthesis.Nat Chem Biol advance online publication,doi:10.1038/nchembio.2318(2017))、ABP-抗原構築物を得た。保護されたアミン及び反対側末端のカルボン酸基と共に購入されたPEG
2000リンカー(Creative PEGworks)を、自動的に合成された抗原ペプチドを含有するペプチド樹脂上に、室温で、バッチで、手動にて同様に結合させた。次いで、自動化された合成装置に樹脂を戻して、構築物を完成させた。室温で一晩、粗製ペプチドを切断し(容量で、82.5%トリフルオロ酢酸、5%水、5%チオアニソール、5%フェノール及び2.5%エタンジチオール;それぞれSigmaから)、粉砕し、逆相HPLCを介して精製した。(
図1及び2)。
【0247】
(実施例3)
ABP部分の環化及びABP-抗原構築物の特徴付け
ジスルフィド形成を促進するために、精製された構築物(0.1mg/mL)を0.1M NaHCO
3(Sigma)、pH8.0中で24時間インキュベートすることによって、ABP部分を環化した。固相抽出を用いて、環化された構築物を脱塩し、正体と純度を確認するためにLC-MSを用いて分析した。(
図3及び4)。
【0248】
(実施例4)
ABP-抗原構築物を用いた免疫化
これらのアルブミン結合ペプチドがワクチン接種を強化することができるかどうかを試験するために、gp100と呼ばれるモデル黒色腫抗原を使用した。gp100に対するワクチン接種は著しい前臨床活性を示しており(van Stipdonk,M.J.B.ら、Design of agonistic altered peptides for the robust induction of CTL directed
towards H-2Db in complex with the melanoma-associated epitope gp100.Cancer research 69,7784-7792,doi:10.1158/0008-5472.CAN-09-1724(2009))、臨床的にも使用されてきた(Schwartzentruber,D.J.ら、gp100 Peptide Vaccine and
Interleukin-2 in Patients with Advanced
Melanoma.New England Journal of Medicine 364,2119-2127,doi:10.1056/NEJMoa1012863(2011))。EGPと呼ばれる改変されたペプチドリガンド形態のgp100(配列AVGALEGPRNQDWLGVPRQL,H2-Dbエピトープに下線が付されている)は、MHCに対して、天然の形態(EGSと呼ばれる)を上回る増強された親和性を有することが示された(van Stipdonk,M.J.B.ら、Design of agonistic altered peptides for the robust induction of CTL directed towards H-2Db in complex with the melanoma-associated epitope gp100.Cancer research 69,7784-7792,doi:10.1158/0008-5472.CAN-09-1724(2009))。インビボで免疫化のための検査をするために、この抗原を使用した。
【0249】
ABP修飾されたペプチドの免疫原性を検査するために、5nmolの、ABP-G
4S-EGP、ABP-PEG
2000-EGP又は修飾されていないEGPペプチドのいずれかで、C57BL6/Jマウス(Jackson Laboratories)を免疫化した。(希釈剤として無菌食塩水を含む)100μLの総容量中に、アジュバント用の25μgのc-di-GMP(Invivogen)とともにワクチンを調合した。第0日目にマウスに初回刺激を行い、第14日目に追加刺激を行い、末梢血中でのT細胞刺激を評価するために、第21日目に四量体染色を行った。(
図5)。要約すると、後眼窩から血液を単離し、赤血球を除去するために溶解に供し、室温で30分間、四量体(H-2Db gp100、MBL)と共にインキュベートした後、CD8及びCD44に対して表面染色した。生存度マーカーとしてDAPIを含め、細胞をLSR Fortessa(BD Biosciences)にかけた。全ての生きたCD8+T細胞のうちCD44
hi四量体+の百分率として、応答を定量化した。修飾されていないペプチドに対する応答は1.45%であり、これは、免疫化されていないマウス中のバックグラウンド0.82%と統計的に異ならなかった。ABP-G
4S-EGP構築物は、5.56%の平均応答、すなわち、修飾されていないペプチドより約4倍高い応答を刺激した。ABP-PEG
2000-EGP構築物は、8.58%の応答、すなわち、修飾されていないペプチドより約6倍高い応答を刺激した。(
図6)。
【0250】
まとめると、G
4S又はPEG
2000スペーサーのいずれかを介してペプチド抗原に連結されたアルブミン結合ペプチドの添加は、臨床的に関連のある腫瘍配列に対して、修飾されていないペプチドと比較して、T細胞刺激の強化を示した。これは、ABP-抗原構築物が、免疫原性の乏しいペプチドの免疫原性を強化するための適用の広い基盤となり得るという証拠を提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0251】
【0252】
均等物
当業者は、慣用的な実験作業のみを用いて、本明細書に記載された具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、又は確かめることができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)アルブミン結合ペプチドと、
(b)免疫調節分子と、
を含む、結合体であって、
前記アルブミン結合ペプチドが、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、前記免疫調節分子に作動可能に結合されている、結合体。
(項目2)
前記アルブミン結合ペプチドが前記免疫調節分子に共有結合されている、項目1に記載の結合体。
(項目3)
前記アルブミン結合ペプチドが、リンカードメインを介して、前記免疫調節分子に作動可能に結合されている、項目1に記載の結合体。
(項目4)
前記リンカードメインが、Gly-Serリンカー又はポリエチレングリコール(PEG)リンカーを含む、項目3に記載の結合体。
(項目5)
前記Gly-Serリンカーが(Gly4Ser)nリンカーである、項目4に記載の結合体。
(項目6)
前記PEGリンカーがPEG2000リンカーである、項目4に記載の結合体。
(項目7)
前記免疫調節分子がペプチド抗原又は分子アジュバントである、項目1に記載の結合体。
(項目8)
前記ペプチド抗原ががん抗原である、項目7に記載の結合体。
(項目9)
前記ペプチド抗原が黒色腫抗原である、項目7に記載の結合体。
(項目10)
前記分子アジュバントがCpG DNAである、項目7に記載の結合体。
(項目11)
前記アルブミン結合ペプチドがアミノ酸配列DICLPRWGCLWを含む、項目1に記載の結合体。
(項目12)
上記項目のいずれかに記載の結合体と薬学的に許容され得る担体又は賦形剤とを含むワクチン。
(項目13)
アジュバントをさらに含む、項目12に記載のワクチン。
(項目14)
免疫調節分子をリンパ系に向かわせるための組成物であって、前記組成物は、以下:
(a)アルブミン結合ペプチドと、
(b)免疫調節分子と、
を含む結合体を含み、
前記アルブミン結合ペプチドは、リンカードメインを伴ってまたは伴わずに、前記免疫調節分子に作動可能に結合されている、組成物。
(項目15)
前記結合体が、抗原単独の投与と比べて、インビボで被験体に投与されたときに、リンパ節中で増加した蓄積を示す、項目14に記載の組成物。
(項目16)
項目1に記載の結合体を含む免疫原性組成物。
(項目17)
項目12に記載のワクチンを含む免疫原性組成物。
(項目18)
がん又は感染性疾患を処置するための方法であって、対照と比べて前記がん又は前記感染性疾患の1つ又はそれを超える症状を低減するのに有効な量の項目14~17のいずれかに記載の組成物を被験体に投与することを含む、方法。
(項目19)
被験体中の免疫応答を増加させるための方法であって、前記被験体中の免疫応答を増加させるのに有効な量の項目14~17のいずれかに記載の組成物を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目20)
前記被験体ががん又は感染性疾患を有する、項目19に記載の方法。
(項目21)
項目1に記載の結合体をコードする核酸分子。
(項目22)
項目21に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
(項目23)
項目22に記載の組換え発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞。
(項目24)
項目1に記載の結合体を作製する方法であって、前記結合体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を提供すること、及び前記結合体が発現される条件下に前記宿主細胞を維持することを含む、方法。