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特開2024-69505液体燃料合成システム及び液体燃料合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069505
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】液体燃料合成システム及び液体燃料合成方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/00 20060101AFI20240514BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240514BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240514BHJP
   C01B 3/50 20060101ALI20240514BHJP
   C10L 1/02 20060101ALI20240514BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C10L1/00
B01D53/22
C01B32/50
C01B3/50
C10L1/02
C10G2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041321
(22)【出願日】2024-03-15
(62)【分割の表示】P 2023535374の分割
【原出願日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021204940
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022074719
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 淳史
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛佑
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和希
(57)【要約】
【課題】集電層の導電率が低下することを抑制可能な電気化学セル及び集電層材料を提供する。
【解決手段】液体燃料合成システム100は、液体燃料合成部110と掃引ガス供給部120とを備える。液体燃料合成部110は、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応における生成物の一つである水蒸気を透過させる。掃引ガス給部120は、分離膜112を透過した水蒸気を掃引するための掃引ガスを液体燃料合成部110に供給する。掃引ガスは、水素又は二酸化炭素を主成分として含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応が進行する非透過側空間と、前記転化反応における生成物を透過させる分離膜と、前記分離膜を透過した前記生成物が流入する透過側空間とを有する液体燃料合成部と、
前記分離膜を透過した前記生成物を掃引するための掃引ガスを前記透過側空間に供給する掃引ガス供給部と、
を備え、
前記掃引ガスは、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有し、
前記掃引ガスは、水素又は二酸化炭素を主成分として含有し、
前記非透過側空間から排出される残原料ガスの少なくとも一部は、前記原料ガスの一部として利用される、
液体燃料合成システム。
【請求項2】
少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応が進行する非透過側空間と、前記転化反応における生成物を透過させる分離膜と、前記分離膜を透過した前記生成物が流入する透過側空間とを有する液体燃料合成部と、
前記分離膜を透過した前記生成物を掃引するための掃引ガスを前記透過側空間に供給する掃引ガス供給部と、
を備え、
前記掃引ガスは、水素を主成分として含有し、
前記非透過側空間から排出される残原料ガスの少なくとも一部は、前記原料ガスの一部として利用される、
液体燃料合成システム。
【請求項3】
前記掃引ガスは、二酸化炭素を副成分として含有する、
請求項2に記載の液体燃料合成システム。
【請求項4】
少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応が進行する非透過側空間と、前記転化反応における生成物を透過させる分離膜と、前記分離膜を透過した前記生成物が流入する透過側空間とを有する液体燃料合成部と、
前記分離膜を透過した前記生成物を掃引するための掃引ガスを前記透過側空間に供給する掃引ガス供給部と、
を備え、
前記掃引ガスは、二酸化炭素からなり、
前記非透過側空間から排出される残原料ガスの少なくとも一部は、前記原料ガスの一部として利用される、
液体燃料合成システム。
【請求項5】
前記液体燃料合成部から排出され、前記掃引ガス及び前記生成物を含有する排ガスから水分を除去する水分除去部を備える、
請求項1乃至4のいずれかに記載の液体燃料合成システム。
【請求項6】
前記水分除去部は、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する素材ガスを冷媒として用いる熱交換器を含む、
請求項5に記載の液体燃料合成システム。
【請求項7】
前記水分除去部を通過した前記素材ガスと前記掃引ガスとの混合ガスを増圧して前記液体燃料合成部に供給する増圧部を備える、
請求項6に記載の液体燃料合成システム。
【請求項8】
少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスを分離膜の非透過側空間に供給することによって前記原料ガスから液体燃料への転化反応を進行させながら、前記転化反応によって生成されて前記分離膜を透過する生成物を掃引するための掃引ガスを前記分離膜の透過側空間に供給する工程を備え、
前記掃引ガスは、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有し、
前記掃引ガスは、水素又は二酸化炭素を主成分として含有し、
前記非透過側空間から排出される残原料ガスの少なくとも一部は、前記原料ガスの一部として利用される、
液体燃料合成方法。
【請求項9】
少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスを分離膜の非透過側空間に供給することによって前記原料ガスから液体燃料への転化反応を進行させながら、前記転化反応によって生成されて前記分離膜を透過する生成物を掃引するための掃引ガスを前記分離膜の透過側空間に供給する工程を備え、
前記掃引ガスは、水素を主成分として含有し、
前記非透過側空間から排出される残原料ガスの少なくとも一部は、前記原料ガスの一部として利用される、
液体燃料合成方法。
【請求項10】
少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスを分離膜の非透過側空間に供給することによって前記原料ガスから液体燃料への転化反応を進行させながら、前記転化反応によって生成されて前記分離膜を透過する生成物を掃引するための掃引ガスを前記分離膜の透過側空間に供給する工程を備え、
前記掃引ガスは、二酸化炭素からなり、
前記非透過側空間から排出される残原料ガスの少なくとも一部は、前記原料ガスの一部として利用される、
液体燃料合成方法。
【請求項11】
前記掃引ガス及び前記生成物を含有する排ガスから水分を除去する工程を更に備える、
請求項8乃至10のいずれかに記載の液体燃料合成方法。
【請求項12】
前記排ガスから水分を除去する工程では、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する素材ガスを冷媒として用いる、
請求項11に記載の液体燃料合成方法。
【請求項13】
冷媒として用いられた後の前記素材ガスと前記掃引ガスとの混合ガスを増圧する工程を更に備える、
請求項12に記載の液体燃料合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料合成システム及び液体燃料合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスからメタノールやエタノールなどの液体燃料(具体的には、常温常圧下で液体状態の燃料)への転化反応において、副生成物である水蒸気を分離することによって転化効率を向上させることのできる液体燃料合成システムが開発されている。
【0003】
特許文献1には、メンブレンリアクタ、原料ガス供給部及び掃引ガス供給部を備える液体燃料合成システムが開示されている。メンブレンリアクタは、水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスからメタノールへの転化反応を進行させる触媒と、転化反応の副生成物である水蒸気を透過させる分離膜とを備える。原料ガス供給部は、分離膜の非透過側に原料ガスを供給する。掃引ガス供給部は、分離膜の透過側に掃引ガスを供給する。分離膜を透過した水蒸気は、掃引ガスとともにメンブレンリアクタから排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-8940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、水と水素との分子径が近いため、原料ガスが含有する水素の一部は分離膜を通過して掃引ガスに混入しやすいところ、掃引ガスに混入した水素を再利用できれば原料ガスの利用率を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液体燃料合成システムでは、掃引ガスとして窒素及び空気の少なくとも一方が用いられているため、掃引ガスに混入した水素を再利用するには水素を個別に分離する必要があり煩雑である。
【0007】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、原料ガスの利用率を向上可能な液体燃料合成システム及び液体燃料合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面に係る液体燃料合成システムは、液体燃料合成部と掃引ガス供給部とを備える。液体燃料合成部は、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応における生成物を透過させる。掃引ガス供給部は、分離膜を透過した生成物を掃引するための掃引ガスを液体燃料合成部に供給する。掃引ガスは、水素又は二酸化炭素を主成分として含有する。
【0009】
本発明の第2の側面に係る液体燃料合成システムは、上記第1の側面に係り、掃引ガスは、水素を主成分として含有する。
【0010】
本発明の第3の側面に係る液体燃料合成システムは、上記第2の側面に係り、掃引ガスは、二酸化炭素を副成分として含有する。
【0011】
本発明の第4の側面に係る液体燃料合成システムは、上記第1乃至第3いずれかの側面に係り、液体燃料合成部から排出され、掃引ガス及び生成物を含有する排ガスから水分を除去する水分除去部を備える。
【0012】
本発明の第5の側面に係る液体燃料合成システムは、上記第4の側面に係り、水分除去部は、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する素材ガスを冷媒として用いる熱交換器を含む。
【0013】
本発明の第6の側面に係る液体燃料合成システムは、上記第5の側面に係り、水分除去部を通過した素材ガスと掃引ガスとの混合ガスを増圧して液体燃料合成部に供給する増圧部を備える。
【0014】
本発明の第7の側面に係る液体燃料合成方法は、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスを分離膜の非透過側に供給することによって原料ガスから液体燃料への転化反応を進行させながら、転化反応によって生成されて分離膜を透過する生成物を掃引するための掃引ガスを分離膜の透過側に供給する工程を備える。掃引ガスは、水素又は二酸化炭素を主成分として含有する。
【0015】
本発明の第8の側面に係る液体燃料合成方法は、上記第7の側面に係り、掃引ガス及び生成物を含有する排ガスから水分を除去する工程を更に備える。
【0016】
本発明の第9の側面に係る液体燃料合成方法は、上記第8の側面に係り、排ガスから水分を除去する工程では、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する素材ガスを冷媒として用いる。
【0017】
本発明の第10の側面に係る液体燃料合成方法は、上記第9の側面に係り、冷媒として用いられた後の素材ガスと掃引ガスとの混合ガスを増圧する工程を更に備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原料ガスの利用率を向上可能な液体燃料合成システム及び液体燃料合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る液体燃料合成システムの構成を示す模式図
図2】変形例2に係る液体燃料合成システムの構成を示す模式図
図3】変形例5に係る液体燃料合成システムの構成を示す模式図
図4】変形例5に係る液体燃料合成システムの構成を示す模式図
図5】変形例5に係る液体燃料合成システムの構成を示す模式図
図6】変形例5に係る液体燃料合成システムの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。
【0021】
(液体燃料合成システム)
図1は、液体燃料合成システム100の構成を示す模式図である。液体燃料合成システム100は、液体燃料合成部110と、掃引ガス供給部120と、原料ガス供給部130と、第1ドレントラップ140とを備える。
【0022】
液体燃料合成部110は、原料ガスを液体燃料へ転化させるための所謂メンブレンリアクタである。液体燃料合成部110の形状は特に限られないが、例えばモノリス形状、平板状、管状、円筒状、円柱状、多角柱状などとすることができる。モノリス形状とは、長手方向に貫通した複数のセルを有する形状を意味し、ハニカム形状を含む概念である。
【0023】
原料ガスは、原料ガス供給部130から液体燃料合成部110に供給される。原料ガスは、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する。原料ガスは、一酸化炭素を含有していてもよい。原料ガスは、いわゆる合成ガス(Syngas)であってもよい。液体燃料は、常温常圧で液体状態の燃料、又は、常温加圧状態で液化可能な燃料である。常温常圧で液体状態の燃料としては、例えばメタノール、エタノール、C2(m-2n)(mは90未満の整数、nは30未満の整数)で表される液体燃料、及びこれらの混合物が挙げられる。常温加圧状態で液化可能な燃料としては、例えばプロパン、ブタン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0024】
例えば、二酸化炭素および水素を含む原料ガスを触媒存在下で接触水素化することでメタノールを合成する際の反応式(1)は次の通りである。
【0025】
CO+3H ⇔ CHOH+HO (1)
【0026】
上記反応は平衡反応であり、転化率及び反応速度の両方を高めるには高温高圧下(例えば、180℃以上、2MPa以上)で反応させることが好ましい。液体燃料は、合成された時点では気体状態であり、少なくとも液体燃料合成部110から流出するまでは気体状態のまま維持される。液体燃料合成部110は、所望の液体燃料の合成条件に適した耐熱性及び耐圧性を有することが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る液体燃料合成部110は、触媒層111と、分離膜112と、非透過側空間110Aと、透過側空間110Bとを有する。
【0028】
触媒層111は、非透過側空間110Aに配置される。触媒層111は、では、原料ガスから液体燃料への転化反応が進行する。
【0029】
触媒層111は、多孔質材料と触媒とによって構成される多孔体である。触媒層111の平均細孔径は、5μm以上25μm以下とすることができる。触媒層111の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定することができる。触媒層111の気孔率は、25%以上50%以下とすることができる。触媒層111を構成する多孔質材料の平均粒径は、1μm以上100μm以下とすることができる。本実施形態において、平均粒径とは、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いた断面微構造観察によって測定される30個の測定対象粒子(無作為選択)の最大直径の算術平均値である。
【0030】
多孔質材料としては、セラミック材料、金属材料、樹脂材料などを用いることができ、特にセラミック材料が好適である。セラミック材料の骨材としては、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ムライト(Al・SiO)、セルベン及びコージェライト(MgAlSi18)などを用いることができ、入手容易性、坏土安定性及び耐食性を考慮するとアルミナが好適である。セラミック材料の無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも一つを用いることができる。ただし、セラミック材料は、無機結合材を含んでいなくてもよい。
【0031】
触媒は、原料ガスから液体燃料への転化反応を進行させる。触媒は、多孔質材料の細孔内に配置される。触媒は、細孔の内表面に担持されていてもよい。或いは、触媒を担持する担体が細孔の内表面に付着していてもよい。
【0032】
触媒は、所望の液体燃料への転化反応に適した既知の触媒を用いればよい。具体的には、金属触媒(銅、パラジウムなど)、酸化物触媒(酸化亜鉛、ジルコニア、酸化ガリウムなど)、及び、これらを複合化した触媒(銅-酸化亜鉛、銅-酸化亜鉛-アルミナ、銅-酸化亜鉛-酸化クロム-アルミナ、銅-コバルト-チタニア、及びこれらにパラジウムを修飾した触媒など)を用いることができる。
【0033】
分離膜112は、原料ガスから液体燃料への転化反応の生成物の一つである水蒸気を透過させる。これにより、平衡シフト効果を利用して上記式(1)の反応平衡を生成物側にシフトさせることができる。
【0034】
水の分子径(0.26nm)は、水素の分子径(0.296nm)に近い。そのため、本実施形態では、転化反応の生成物である水蒸気だけでなく、原料ガスに含まれる水素の一部が分離膜112を透過することが想定されている。
【0035】
分離膜112は、100nmol/(s・Pa・m)以上の水蒸気透過係数を有することが好ましい。水蒸気透過係数は、既知の方法(Ind.Eng.Chem.Res.,40,163-175(2001)参照)で求めることができる。
【0036】
分離膜112は、100以上の分離係数を有することが好ましい。分離係数が大きいほど、水蒸気を透過しやすく、かつ水蒸気以外の成分(水素、二酸化炭素及び液体燃料など)を透過させにくい。分離係数は、既知の方法(「Separation and Purification Technology 239 (2020) 116533」のFig.1参照)で求めることができる。
【0037】
分離膜112としては、無機膜を用いることができる。無機膜は、耐熱性、耐圧性、耐水蒸気性を有するため好ましい。無機膜としては、ゼオライト膜、シリカ膜、アルミナ膜、これらの複合膜などが挙げられる。例えば、シリコン元素(Si)とアルミニウム元素(Al)とのモル比(Si/Al)が1.0以上3.0以下であるLTA型のゼオライト膜は、水蒸気透過性に優れているため好適である。
【0038】
なお、分離膜112は、多孔質基材によって支持されていてもよい。
【0039】
非透過側空間110Aは、分離膜112の非透過側の空間である。非透過側空間110Aには、原料ガス供給部130から原料ガスが供給される。原料ガスは、流入口a1を通って非透過側空間110Aに流入する。触媒層111において合成された液体燃料は、流出口a2を通って非透過側空間110Aから流出する。流出口a2から流出する液体燃料には、未反応の残原料ガスが混入していてもよい。液体燃料に混入した残原料ガスは、第1ドレントラップ140において液体燃料から分離される。分離された残原料ガスは、原料ガス供給部130(具体的には、後述する第2昇圧ポンプ133b)に戻される。残原料ガスは、水素及び二酸化炭素のうち少なくとも一方を含有する。
【0040】
透過側空間110Bは、分離膜112の透過側の空間である。透過側空間110Bには、分離膜112を透過した水蒸気及び水素が流入する。また、透過側空間110Bには、掃引ガス供給部120から掃引ガスが供給される。掃引ガスは、流入口b1を通って透過側空間110Bに流入する。掃引ガス及び水蒸気を含有する排ガスは、流出口b2を通って透過側空間110Bから流出する。
【0041】
掃引ガス供給部120は、透過側空間110Bの上流側に配置される。掃引ガス供給部120は、貯留部121、流量調整機構122及び加熱部123を有する。
【0042】
貯留部121は、掃引ガスを貯留する。掃引ガスは、水素又は二酸化炭素を主成分として含有する。このように、掃引ガスが水素又は二酸化炭素を主成分として含有することによって、分離膜112を透過する水素を掃引ガスから分離することなく原料ガスの一部として再利用することができる。その結果、原料ガスの利用率を簡便に向上させることができる。なお、水素又は二酸化炭素を主成分として含有するとは、掃引ガスが含有する気体のうち水素又は二酸化炭素の含有率が最も高いことを意味する。
【0043】
掃引ガスは、水素及び二酸化炭素の一方のみを含有していてもよいが、水素及び二酸化炭素の両方を含有していても良い。掃引ガスが水素及び二酸化炭素の両方を含有する場合には、掃引ガスが水素及び二酸化炭素の一方のみを含有する場合に比べて掃引ガスの比熱を大きくできるため、液体燃料の合成に伴って生じる熱の除去効率を向上させることができる。
【0044】
掃引ガスは、水素を主成分として含有することが好ましい。これによって、非透過側空間110Aにおける水素分圧と透過側空間110Bにおける水素分圧との差を小さくすることができるため、分離膜112を透過する水素量を抑制することができる。水掃引ガスにおける水素の含有率は特に限られないが、例えば60mol%以上100mol%以下とすることができる。
【0045】
掃引ガスは、二酸化炭素を副成分として含有することが好ましい。これによって、排ガスにおける水分量に対する排ガス量の比率が過剰に小さくなって排ガスの露点(すなわち、湿度)が低くなることを抑制できる。その結果、後述する熱交換器132aの負荷を低減させることができる。二酸化炭素を副成分として含有するとは、掃引ガスが含有する気体のうち二酸化炭素の含有率が水素の次(すなわち、2番目)に高いことを意味する。掃引ガスにおける二酸化炭素の含有率は特に限られないが、例えば5mol%以上40mol%以下とすることができる。
【0046】
流量調整機構122は、貯留部121から供給される掃引ガスの流量を調整する。流量調整機構122としては、ポンプやブロワなどを用いることができる。ただし、掃引ガスが加圧された状態で貯留部121に貯留されている場合には、流量調整機構122を省略することができる。
【0047】
加熱部123は、掃引ガスを所望の温度に加熱する。加熱部123は、掃引ガスを加熱できるものであればよく特に制限されない。加熱部123は、後述する熱交換器132aとの熱交換を利用した再生熱交換器を用いて加熱するものでもよい。
【0048】
原料ガス供給部130は、非透過側空間110Aの下流側に配置される。原料ガス供給部130は、素材ガス源131と、水分除去部132と、増圧部133とを有する。
【0049】
素材ガス源131は、素材ガスを貯留する。素材ガスは、少なくとも水素及び二酸化炭素を含有する。素材ガスは、一酸化炭素を含有していてもよい。素材ガスは、いわゆる合成ガス(Syngas)であってもよい。素材ガス源131に貯留された素材ガスは、水分除去部132に供給される。
【0050】
水分除去部132は、液体燃料合成部から排出され、掃引ガスと水蒸気とを含有する排ガスから水分を除去する。これによって、排ガスから掃引ガスが分離される。水分除去部132は、熱交換器132aと、第2ドレントラップ132bとを含む。
【0051】
熱交換器132aは、素材ガス源131から供給される素材ガスが流れる第1流路c1と、液体燃料合成部110から排出される排ガスが流れる第2流路c2とを有する。熱交換器132aは、素材ガスを冷媒として用いることによって、排ガス中の水蒸気を水に凝縮させる。これによって、素材ガスの加熱と排ガスの冷却とを同時に行うことができるため、液体燃料合成システム100における熱効率を向上させることができる。
【0052】
第2ドレントラップ132bは、熱交換器132aの下流側に配置される。第2ドレントラップ132bは、熱交換器132aにおいて凝縮された水を掃引ガスから分離する。第2ドレントラップ132bによって分離された掃引ガスは、第2ドレントラップ132bの下流側において、熱交換器132aを通過した素材ガスと混合される。これによって、掃引ガスと素材ガスとが混合した混合ガスが生成される。
【0053】
混合ガスは、増圧部133に供給される。増圧部133は、第2ドレントラップ132bの下流側かつ液体燃料合成部110の上流側に配置される。増圧部133は、水分除去部132を通過した素材ガス及び掃引ガスを増圧して液体燃料合成部110に供給する。増圧部133は、第1昇圧ポンプ133aと、第2昇圧ポンプ133bとを含む。
【0054】
第1昇圧ポンプ133aは、混合ガスを所定の第1圧力まで昇圧させる。第1昇圧ポンプ133aによって昇圧された混合ガスは、第1ドレントラップ140において液体燃料から分離された残原料ガスと混合される。これによって、混合ガスと残原料ガスとが混合した原料ガスが生成される。
【0055】
第2昇圧ポンプ133bは、原料ガスを所定の第2圧力まで昇圧させる。第2圧力は、原料ガスから液体燃料への転化反応に適した圧力であり、第1圧力よりも高い。第2昇圧ポンプ133bによって昇圧された原料ガスは、液体燃料合成部110の非透過側空間110Aに供給される。
【0056】
(液体燃料合成方法)
次に、液体燃料合成システム100を用いた液体燃料合成方法について説明する。
【0057】
液体燃料合成方法は、原料ガスを分離膜112の非透過側に供給するとともに、水素又は二酸化炭素を主成分として含有する掃引ガスを分離膜112の透過側に供給する工程を備える。分離膜112の非透過側では、原料ガスから液体燃料への転化反応が進行する。分離膜112の透過側では、分離膜112を透過してくる水蒸気が掃引ガスに取り込まれる。
【0058】
液体燃料合成方法は、掃引ガス及び水蒸気を含有する排ガスから水分を除去する工程を更に備える。本実施形態では、本工程において、素材ガスが冷媒として用いられる。これによって、素材ガスの加熱と排ガスの冷却とを同時に行うことができるため、液体燃料合成システム100における熱効率を向上させることができる。
【0059】
液体燃料合成方法は、冷媒として用いられた後の素材ガスと掃引ガスとの混合ガスを増圧する工程を更に備える。本工程では、液体燃料から分離された残原料ガスを混合ガスに混合することによって原料ガスを生成することが好ましい。これによって、原料ガスの利用効率を向上させることができる。
【0060】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
(変形例1)
上記実施形態では、触媒層111が分離膜112上に配置されることとしたが、これに限られない。例えば、非透過側空間110Aに粒子状の触媒が充填されていてもよい。粒子状の触媒の粒子径(直径)は特に制限されないが、例えば0.5mm以上10mm以下とすることができる。
【0062】
(変形例2)
上記実施形態において、液体燃料合成システム100は、メンブレンリアクタである液体燃料合成部110を備えることとしたが、これに限られない。
【0063】
例えば、液体燃料合成システム100は、図2に示すように、触媒部161及び分離部162を有する液体燃料合成部160を備えていてもよい。
【0064】
触媒部161には、原料ガス供給部130から原料ガスが供給される。触媒部161には、上記実施形態にて説明した触媒が配置される。触媒部161は、原料ガスを液体燃料へと転化させる。
【0065】
分離部162は、分離膜112、非透過側空間160A及び透過側空間160Bを有する。
【0066】
非透過側空間160Aには、液体燃料、水蒸気及び残燃料ガスが流入する。水蒸気は、分離膜112を透過する。また、残燃料ガスに含まれる水素の一部は、分離膜112を透過する。液体燃料は、分離膜112を透過せずに非透過側空間160Aから流出する。
【0067】
透過側空間160Bには、分離膜112を透過した水蒸気が流入する。掃引ガス供給部120から供給される掃引ガスは、透過側空間160Bに流入する。掃引ガス、水蒸気及び水素を含む排ガスは、透過側空間160Bから流出する。
【0068】
本変形例においても、掃引ガスが水素又は二酸化炭素を主成分として含有することによって、分離膜112を透過する水素を掃引ガスから分離することなく原料ガスの一部として再利用することができる。その結果、原料ガスの利用率を簡便に向上させることができる。
【0069】
(変形例3)
図1及び図2では、分離膜112の側面視において、原料ガスと掃引ガスとが逆向き(すなわち、対向する向き)に流れることとしたが、互いに同じ向き(すなわち、平行な向き)に流れてもよい。
【0070】
(変形例4)
上記実施形態では、素材ガス源131から供給される素材ガスを熱交換器132aの冷媒として用いることとしたが、これに限られない。熱交換器132aの冷媒としては、水などを用いてもよい。この場合、素材ガスは、熱交換器132aを通過することなく、第2ドレントラップ132bから流出する掃引ガスに直接混合させてよい。
【0071】
(変形例5)
上記実施形態では、第1ドレントラップ140において液体燃料から分離された残原料ガスは、原料ガス供給部130に全て戻されることとしたが、これに限られない。
【0072】
例えば、図3に示すように、残原料ガスの一部は貯留部121から流出する掃引ガスに混合されて流量調整機構122に供給されてもよい。この場合、残原料ガスの一部は、掃引ガスの一部として用いられる。残原料ガスの混合量は、流量調整機構124によって調整することができる。
【0073】
また、図4に示すように、残原料ガスの全部が貯留部121から流出する掃引ガスに混合されて流量調整機構122に供給されてもよい。残原料ガスは、逆止弁125によって貯留部121側へ流れることが規制されているため流量調整機構122側へ流れる。この場合、残原料ガスの全部が、掃引ガスの一部として用いられる。
【0074】
また、図5に示すように、掃引ガス供給部120が貯留部121を有しておらず、かつ、残原料ガスの一部が流量調整機構122に供給されてもよい。この場合、残原料ガスの一部は、そのまま掃引ガスとして用いられる。掃引ガス(残原料ガス)の供給量は、流量調整機構122によって調整することができる。
【0075】
また、図6に示すように、掃引ガス供給部120が貯留部121を有しておらず、かつ、残原料ガスの全部が流量調整機構122に供給されてもよい。この場合、残原料ガスの全部が、そのまま掃引ガスとして用いられる。
【0076】
(変形例6)
上記実施形態において、分離膜112は、原料ガスから液体燃料への転化反応の生成物の一つである水蒸気を透過させることとしたが、これに限られない。分離膜112は、原料ガスから液体燃料への転化反応によって生成される液体燃料自体を透過させてもよい。この場合においても、上記式(1)の反応平衡を生成物側にシフトさせることができる。
【0077】
また、分離膜112が液体燃料を透過させる場合には、水蒸気が生成されない反応(例えば、2H+CO ⇔ CHOH)によって液体燃料を生成するときにおいても、反応平衡を生成物側にシフトさせることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 メンブレンリアクタ
100 液体燃料合成システム
110 液体燃料合成部
111 触媒層
112 分離膜
110A 非透過側空間
110B 透過側空間
120 掃引ガス供給部
130 原料ガス供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6