(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069552
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】印刷品質管理システムおよび印刷品質管理方法
(51)【国際特許分類】
B41F 15/12 20060101AFI20240514BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20240514BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B41F15/12 A
B41F15/08 303E
H05K3/34 512B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042603
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2022539924の分割
【原出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光昭
(57)【要約】
【課題】印刷状態の不良の発生を低減可能な印刷品質管理システムおよび印刷品質管理方法を開示する。
【解決手段】印刷品質管理システムは、事前処理部を備える。事前処理部は、基板に印刷されたはんだの印刷状態の測定結果を取得し、取得した測定結果が印刷状態の不良を判断する際の検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超え且つ予め設定された実行条件を充足したときに、印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実行させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に印刷されたはんだの印刷状態の測定結果を取得し、取得した前記測定結果が前記印刷状態の不良を判断する際の検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超え且つ予め設定された実行条件を充足したときに、前記印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実行させる事前処理部を備える印刷品質管理システム。
【請求項2】
前記予備閾値と、前記実行条件に含まれるパッド数および基板数とを設定可能な設定部を備え、
前記事前処理部は、前記予備閾値を超えた前記測定結果が、設定された前記パッド数および設定された前記基板数、連続して生じたときに前記対処処理を実行させる請求項1に記載の印刷品質管理システム。
【請求項3】
前記事前処理部は、マスクの開口部を介して前記基板に印刷された前記はんだの前記印刷状態の前記測定結果を取得し、
前記対処処理は、前記測定結果が前記予備閾値を超えた前記開口部のクリーニングを含み、
前記開口部の前記クリーニングは、複数のクリーニング方法のうちの少なくとも一つが含まれる請求項1または請求項2に記載の印刷品質管理システム。
【請求項4】
基板に印刷されたはんだの印刷状態の測定結果を取得し、取得した前記測定結果が前記印刷状態の不良を判断する際の検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超え且つ予め設定された実行条件を充足したときに、前記印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実行させる事前処理工程を備える印刷品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷品質管理システムおよび印刷品質管理方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の印刷検査装置では、マスクプレートを撮像した撮像結果を認識処理することにより、マスクプレートに設けられた各パターン孔の位置と形状を示すマスク開口データを求める処理を行う。マスク開口データは、印刷検査のための検査用データとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷状態の不良が判断される前に、印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実施して、印刷状態の不良の発生を低減したいという要請がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、印刷状態の不良の発生を低減可能な印刷品質管理システムおよび印刷品質管理方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、事前処理部を備える印刷品質管理システムを開示する。前記事前処理部は、基板に印刷されたはんだの印刷状態の測定結果を取得し、取得した前記測定結果が前記印刷状態の不良を判断する際の検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超え且つ予め設定された実行条件を充足したときに、前記印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実行させる。
【0007】
また、本明細書は、事前処理工程を備える印刷品質管理方法を開示する。前記事前処理工程は、基板に印刷されたはんだの印刷状態の測定結果を取得し、取得した前記測定結果が前記印刷状態の不良を判断する際の検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超え且つ予め設定された実行条件を充足したときに、前記印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実行させる。
【発明の効果】
【0008】
上記の印刷品質管理システムによれば、印刷状態の不良の発生を低減することができる。印刷品質管理システムについて上述されていることは、印刷品質管理方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】対基板作業ラインの構成例を示す構成図である。
【
図3】印刷品質管理システムの制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図4】印刷品質管理システムによる制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】対象開口部の画像の表示例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.対基板作業ラインWMLの構成例
対基板作業ラインWMLでは、基板90に所定の対基板作業を行う。本実施形態の対基板作業ラインWMLは、印刷機WM1および印刷検査機WM2を備えていれば良く、対基板作業ラインWMLを構成する対基板作業機WMの種類および数は、限定されない。
図1に示すように、本実施形態の対基板作業ラインWMLは、印刷機WM1、印刷検査機WM2、部品装着機WM3、リフロー炉WM4および外観検査機WM5の複数(5つ)の対基板作業機WMを備えており、基板90は、基板搬送装置によって、この順に搬送される。
【0011】
印刷機WM1は、基板90の複数の部品の装着位置に、はんだ80を印刷する。印刷検査機WM2は、印刷機WM1によって印刷されたはんだ80の印刷状態を検査する。部品装着機WM3は、印刷機WM1によってはんだ80が印刷された基板90に複数の部品を装着する。部品装着機WM3は、一つであっても良く、複数であっても良い。部品装着機WM3が複数設けられる場合は、複数の部品装着機WM3が分担して、複数の部品を装着することができる。
【0012】
リフロー炉WM4は、部品装着機WM3によって複数の部品が装着された基板90を加熱し、はんだ80を溶融させて、はんだ付けを行う。外観検査機WM5は、部品装着機WM3によって装着された複数の部品の装着状態などを検査する。このように、対基板作業ラインWMLは、複数(5つ)の対基板作業機WMを用いて、基板90を順に搬送し、検査処理を含む生産処理を実行して基板製品900を生産することができる。なお、対基板作業ラインWMLは、例えば、機能検査機、バッファ装置、基板供給装置、基板反転装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機WMを必要に応じて備えることもできる。
【0013】
対基板作業ラインWMLを構成する複数(5つ)の対基板作業機WMおよび管理装置WMCは、通信部LCによって通信可能に接続されている。通信部LCは、有線によって通信を行っても良く、無線によって通信を行っても良い。また、通信方法は、種々の方法をとり得る。本実施形態では、複数(5つ)の対基板作業機WMおよび管理装置WMCによって、構内情報通信網(LAN:Local Area Network)が構成されている。これにより、複数(5つ)の対基板作業機WMは、通信部LCを介して、互いに通信することができる。また、複数(5つ)の対基板作業機WMは、通信部LCを介して、管理装置WMCと通信することができる。
【0014】
管理装置WMCは、対基板作業ラインWMLを構成する複数(5つ)の対基板作業機WMの制御を行い、対基板作業ラインWMLの動作状況を監視する。管理装置WMCには、複数(5つ)の対基板作業機WMを制御する種々の制御データが記憶されている。管理装置WMCは、複数(5つ)の対基板作業機WMの各々に制御データを送信する。また、複数(5つ)の対基板作業機WMの各々は、管理装置WMCに動作状況および生産状況を送信する。
【0015】
管理装置WMCには、データサーバDSVを設けることができる。データサーバDSVは、例えば、対基板作業機WMが対基板作業に関して取得した取得データを保存することができる。例えば、対基板作業機WMによって撮像された種々の画像データなどは、取得データに含まれる。対基板作業機WMによって取得された稼働状況の記録(ログデータ)などは、取得データに含まれる。
【0016】
また、データサーバDSVは、基板90の生産に関する種々の生産情報を保存することもできる。例えば、部品の種類ごとの形状に関する情報、電気的特性に関する情報、部品の取り扱い方法に関する情報などの部品データは、生産情報に含まれる。また、印刷検査機WM2、外観検査機WM5などの検査機による検査結果は、生産情報に含まれる。
【0017】
1-2.印刷機WM1の構成例
本実施形態の印刷機WM1は、スキージ34がマスク70を摺動してマスク70の開口部71を介して基板90にはんだ80を印刷する。
図2に示すように、印刷機WM1は、基板搬送装置10と、マスク支持装置20と、スキージ移動装置30と、制御装置40と、表示装置41とを備えている。なお、本明細書では、基板90の搬送方向(
図2の紙面に垂直な方向)をX軸方向とする。また、水平面においてX軸方向に直交する印刷機WM1の前後方向(
図2の左右方向)をY軸方向とする。さらに、X軸方向およびY軸方向に直交する鉛直方向(
図2の上下方向)をZ軸方向とする。
【0018】
基板搬送装置10は、印刷対象の基板90を搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路、電気回路、磁気回路などが形成される。基板搬送装置10は、印刷機WM1の基台BS1に設けられる。基板搬送装置10は、例えば、X軸方向に延びるベルトコンベアによって、基板90を搬送する。
【0019】
基板搬送装置10は、印刷機WM1に搬入された基板90を保持する基板保持部11を備えている。基板保持部11は、マスク70の下方に設けられており、例えば、送りねじ機構などの直動機構によってZ軸方向に昇降可能に構成されている。具体的には、基板保持部11は、基板90の搬送時に下降しており、基板90が所定位置に搬送されると、基板90と共に上昇して、マスク70の下面に基板90の上面を密着させた状態で、基板90を保持する。
【0020】
マスク支持装置20は、基板搬送装置10の上方に設けられている。マスク支持装置20は、一対の支持台によってマスク70を支持する。一対の支持台は、正面方向視の印刷機WM1の左側(
図2の紙面奥側であり図示されている。)および右側(
図2の紙面手前側であり同図において図示されいない。)に配置され、Y軸方向に沿って延びるように形成されている。
【0021】
なお、
図2は、印刷機WM1をY軸方向に沿って切断した一部断面図であり、側面方向視の印刷機WM1の内部と、マスク70および基板90の断面とが模式的に示されている。マスク70には、基板90の配線パターン上の所定位置において貫通する開口部71が形成されている。マスク70は、例えば、外周縁に設けられる枠部材を介して、マスク支持装置20に支持される。
【0022】
スキージ移動装置30は、スキージ34をマスク70に垂直な方向(Z軸方向)に昇降させるとともに、スキージ34をマスク70の上面においてY軸方向に移動させる。スキージ移動装置30は、ヘッド駆動装置31と、スキージヘッド32と、一対の昇降装置33,33と、一対のスキージ34,34とを備えている。ヘッド駆動装置31は、印刷機WM1の上部側に配置されている。ヘッド駆動装置31は、例えば、送りねじ機構などの直動機構によって、スキージヘッド32をY軸方向に移動させることができる。
【0023】
スキージヘッド32は、ヘッド駆動装置31の直動機構を構成する移動体にクランプして固定される。スキージヘッド32は、一対の昇降装置33,33を保持する。一対の昇降装置33,33の各々は、スキージ34を保持し、互いに独立して駆動することができる。一対の昇降装置33,33の各々は、例えば、エアーシリンダなどのアクチュエータを駆動させて、保持するスキージ34を昇降させる。
【0024】
スキージ34は、マスク70の上面を摺動して、マスク70の上面に供給されたはんだ80をマスク70に沿って移動させる。はんだ80は、クリームはんだ(はんだペースト)を用いることができる。はんだ80がマスク70の開口部71から基板90に刷り込まれて、マスク70の下面側に配置された基板90に、はんだ80が印刷される。本実施形態では、一対のスキージ34,34の各々は、印刷方向(Y軸方向)に直交するX軸方向に沿って延びるように形成されている板状部材である。
【0025】
一対のスキージ34,34のうちの前側(
図2の左側)のスキージ34は、前側から後側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、印刷機WM1の前側から後側に向かう方向を進行方向とする。一対のスキージ34,34のうちの後側(
図2の右側)のスキージ34は、後側から前側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、印刷機WM1の後側から前側に向かう方向を進行方向とする。また、いずれのスキージ34においても、進行方向と反対の方向を後退方向とする。
【0026】
一対のスキージ34,34の各々は、進行方向側に位置する前面部が下方を向くように傾斜して昇降装置33に保持されている。換言すれば、一対のスキージ34,34の各々は、後退方向側に位置する背面部が上方を向くように傾斜して昇降装置33に保持されている。一対のスキージ34,34の各々の傾斜角度は、昇降装置33の下部に設けられている調整機構によって調整される。
【0027】
制御装置40は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている。制御装置40は、
図1に示す通信部LCを介して、管理装置WMCと通信可能に接続されており、各種データを送受信することができる。制御装置40は、生産プログラム、各種センサの検出結果などに基づいて、基板搬送装置10、マスク支持装置20、スキージ移動装置30および表示装置41を駆動制御することができる。
【0028】
図3に示すように、制御装置40には、記憶装置60が設けられている。記憶装置60は、例えば、ハードディスク装置などの磁気記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体素子を使用した記憶装置などを用いることができる。記憶装置60には、印刷機WM1を駆動させる生産プログラムなどが記憶される。制御装置40は、記憶装置60に記憶されている各種情報および印刷機WM1に設けられている各種センサの検出結果を取得する。
【0029】
制御装置40は、例えば、スキージ移動装置30を駆動制御する。制御装置40は、上記の各種情報および検出結果などに基づいて、スキージ移動装置30に制御信号を送出する。これにより、スキージヘッド32に保持されている一対のスキージ34,34のY軸方向の位置およびZ軸方向の位置(高さ)、並びに、移動速度および傾斜角度が制御される。そして、既述したように一対のスキージ34,34が駆動制御されて、マスク70の下面側に配置された基板90に、はんだ80が印刷される。
【0030】
図2および
図3に示すように、制御装置40には、表示装置41が設けられている。表示装置41は、印刷機WM1の作業状況を表示することができる。また、表示装置41は、タッチパネルにより構成されており、作業者による種々の操作を受け付ける入力装置としても機能する。作業者は、表示装置41を介して、印刷機WM1の作業状況を知得することができる。また、作業者は、表示装置41を介して、印刷機WM1の設定、印刷機WM1に対する指示などを行うことができる。
【0031】
1-3.印刷品質管理システム50の構成例
印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断されると、作業者は、種々の対応を行う。例えば、作業者は、マスク70の開口部71の状態に応じて、開口部71のクリーニング、はんだ80の供給などを行う。そのため、作業者は、印刷状態の不良が判断されたマスク70の開口部71の状態を確認する必要がある。
【0032】
そこで、本実施形態の対基板作業ラインWMLには、印刷品質管理システム50が設けられている。印刷品質管理システム50は、制御ブロックとして捉えると、撮像部51と、表示部52とを備えている。印刷品質管理システム50は、事前処理部53を備えることもできる。
図3に示すように、本実施形態の印刷品質管理システム50は、撮像部51と、表示部52と、事前処理部53とを備えている。
【0033】
印刷品質管理システム50は、印刷機WM1、印刷機WM1以外の対基板作業機WM、管理装置WMCなどの種々の制御装置、種々の演算装置に設けることができる。開口部71の状態を確認した後の作業者による作業を考慮して、印刷品質管理システム50は、印刷機WM1に設けられると良い。
図3に示すように、本実施形態の印刷品質管理システム50は、印刷機WM1の制御装置40に設けられている。
【0034】
また、印刷品質管理システム50は、
図4に示すフローチャートに従って、制御を実行する。撮像部51は、ステップS13に示す判断およびステップS14に示す処理を行う。表示部52は、ステップS15およびステップS16に示す処理を行う。事前処理部53は、ステップS11に示す判断およびステップS12に示す処理を行う。
【0035】
1-3-1.撮像部51
撮像部51は、印刷検査機WM2が印刷状態の不良を判断したときに、印刷状態の不良が判断された開口部71である対象開口部71tを撮像装置FC1に撮像させる(
図4に示すステップS13およびステップS14)。
【0036】
撮像装置FC1は、対象開口部71tを撮像することができれば良く、種々の形態をとり得る。撮像装置FC1は、対象開口部71tを撮像するカメラを別途設けても良く、他の撮像に使用されるカメラを用いても良い。本実施形態の撮像装置FC1は、マスク70および基板90の各々に設けられる位置決め基準部を撮像するマークカメラが用いられる。マークカメラである撮像装置FC1は、例えば、XYテーブルによってX軸方向およびY軸方向に移動することができる。
【0037】
具体的には、
図2に示す基板保持部11が下降した状態のときに基板90が搬送されると、撮像装置FC1は、基板90に設けられる位置決め基準部に移動して、位置決め基準部を含む基板90の所定領域を撮像する。同様にして、撮像装置FC1は、マスク70の位置決め基準部を含む所定領域を撮像する。制御装置40は、撮像された画像を画像処理して、基板90の位置決め基準部と、マスク70の位置決め基準部を認識する。制御装置40は、両者の位置ずれを補正するように、マスク70および基板90のうちの少なくとも一方の位置を調整する。これにより、マスク70および基板90の位置決めが行われる。
【0038】
図1に示すように、印刷機WM1、印刷検査機WM2および管理装置WMCは、通信部LCによって互いに通信可能に接続されている。印刷機WM1によって基板90にはんだ80が印刷されると、はんだ80が印刷された基板90は、印刷検査機WM2に搬送される。印刷検査機WM2は、搬送された基板90のはんだ80の印刷状態を順次検査する。印刷検査機WM2は、印刷状態の不良を判断すると、印刷機WM1に通知する。通知には、印刷状態の不良が判断された開口部71である対象開口部71tの位置を特定する情報が含まれる。印刷機WM1が上記通知を受けると、撮像部51は、基板保持部11が下降してマスク70と基板90が離間しているときに、対象開口部71tと対向する位置に撮像装置FC1を移動させる。そして、撮像部51は、撮像装置FC1に対象開口部71tを撮像させる。
【0039】
なお、本実施形態では、印刷検査機WM2によって検査された検査結果は、データサーバDSVに記憶される。印刷状態の不良を示す検査結果には、はんだ80の印刷ずれ、にじみ、欠け、かすれ、ブリッジなどが含まれる。はんだ80の印刷ずれは、基板90に印刷されたはんだ80の目標印刷位置に対する偏差が許容範囲を超えている状態をいう。はんだ80のにじみは、基板90に印刷されたはんだ80の面積が許容上限値よりも大きい状態をいう。はんだ80の欠けは、基板90に印刷されたはんだ80の面積が許容下限値よりも小さい状態をいう。はんだ80のかすれは、基板90に印刷されたはんだ80の高さが許容下限値よりも低い状態をいう。はんだ80のブリッジは、基板90の異なる位置に印刷されたはんだ80がつながっている状態をいう。
【0040】
また、本実施形態の印刷検査機WM2は、基板90に印刷されたはんだ80の印刷状態を測定することができる。本実施形態では、印刷検査機WM2によって測定された測定結果は、データサーバDSVに記憶される。印刷状態の測定結果には、基板90に印刷されたはんだ80の目標印刷位置に対する偏差、基板90に印刷されたはんだ80の面積および体積のうちの少なくとも一つが含まれる。
【0041】
印刷品質管理システム50は、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断されると、印刷検査機WM2によって検査された検査結果および印刷検査機WM2によって測定された測定結果をデータサーバDSVから取得することができる。また、印刷品質管理システム50は、印刷検査機WM2から直接、上記の検査結果および測定結果を取得することもできる。さらに、印刷検査機WM2は、上記の検査結果および測定結果を印刷品質管理システム50に直接送信することもできる。いずれの場合も、印刷品質管理システム50は、上記の検査結果および測定結果を
図3に示す記憶装置60に記憶させることができる。
【0042】
1-3-2.表示部52
表示部52は、撮像装置FC1によって撮像された対象開口部71tの画像PT0を表示装置41に表示させる(
図4に示すステップS15)。
【0043】
表示装置41は、対象開口部71tの画像PT0を表示することができれば良く、種々の形態をとり得る。表示装置41は、対象開口部71tの画像PT0を表示する表示装置を別途設けても良く、他の表示に使用される表示装置を用いても良い。既述したように、本実施形態の表示装置41は、印刷機WM1の作業状況などを表示することができる。
【0044】
図5に示すように、本実施形態の印刷品質管理システム50は、印刷検査機WM2によって判断された印刷状態の不良の内容に応じて、その後の処理を予め設定しておくことができる。既述したように、表示装置41は、タッチパネルにより構成されており、作業者による種々の操作を受け付ける入力装置としても機能する。例えば、作業者は、
図5の破線BL1で囲まれる操作部BP11~操作部BP41を操作することにより、表示装置41に作業フェーズを表示させることができる。
【0045】
作業者が操作部BP11を操作すると、表示装置41は、生産プログラムの作成段階における作業を表示する。作業者が操作部BP21を操作すると、表示装置41は、生産段階における作業を表示する。作業者が操作部BP31を操作すると、表示装置41は、片付け段階における作業を表示する。作業者が操作部BP41を操作すると、表示装置41は、エラー発生段階における作業を表示する。また、作業者は、例えば、破線BL2で囲まれる操作部BP22~操作部BP24を操作することにより、各作業フェーズにおける作業状況、設定画面などを表示させることもできる。
【0046】
図5は、設定画面の一例を示している。作業者は、操作領域BP51を操作することにより、印刷状態の不良の内容と、当該不良が生じたパッド数および基板数と、その後の処理を設定することができる。例えば、
図5の最上段の設定は、不良1で示す印刷状態の不良が、パッド数PD1および基板数BD1、連続して生じたときに、処理1で示す処理を実行することを示している。条件および処理内容が異なるが、上述したことは、不良2~不良4で示す印刷状態の不良についても同様に言える。
【0047】
印刷状態の不良の内容には、既述した検査結果(はんだ80の印刷ずれ、にじみ、欠け、かすれ、ブリッジなど)が含まれる。作業者は、複数種類の検査結果の中から少なくとも一つを選択することができる。また、作業者は、任意のパッド数および基板数を入力することができる。さらに、その後の処理には、印刷機WM1の停止、対象開口部71tの画像PT0の表示、対象開口部71tの手動クリーニング、手動クリーニングの際のマスク70のアンクランプ、対象開口部71tの自動クリーニング、はんだ80の手動供給、はんだ80の自動供給などが含まれる。作業者は、対象開口部71tの画像PT0の表示を少なくとも含む任意の処理を選択することができる。
【0048】
例えば、処理1で示す処理が、印刷機WM1の停止および対象開口部71tの画像PT0の表示である場合を想定する。この場合、不良1で示す印刷状態の不良が、パッド数PD1および基板数BD1、連続して生じると、制御装置40は、印刷機WM1を停止させる。そして、表示部52は、対象開口部71tの画像PT0を表示装置41に表示させる。
【0049】
図6は、表示装置41の出力例を示している。表示部52が対象開口部71tの画像PT0を表示装置41に表示させることにより、例えば、作業者は、対象開口部71tの状態を容易に確認することができる。
図7は、画像PT0に含まれる一部の対象開口部71tの拡大図である。例えば、
図7の上段の対象開口部71tは、対象開口部71tの外縁部にはんだ80が付着している。この状態を放置すると、はんだ80のにじみ、ブリッジなどが生じ易くなる。
【0050】
逆に、下段の対象開口部71tは、対象開口部71tの内縁部にはんだ80が付着している。この状態を放置すると、はんだ80の欠け、かすれなどが生じ易くなる。このように、印刷品質管理システム50は、例えば、作業者に対象開口部71tの状態を確認させることにより、作業者に注意喚起を行い、作業者に対処(例えば、対象開口部71tのクリーニングなど)を促すことができる。
【0051】
表示部52は、対象開口部71tの画像PT0と共に、マスク70における対象開口部71tの位置を特定可能な位置関連情報を表示装置41に表示させると良い。これにより、作業者は、対象開口部71tの位置を容易に知得することができ、対処が容易になる。位置関連情報は、マスク70における対象開口部71tの位置を特定可能な情報であれば良く、限定されない。例えば、回路を構成する素子(部品)を特定する記号および番号である回路符号、座標(X軸方向の座標およびY軸方向の座標)などは、位置関連情報に含まれる。
図6に示す例では、表示部52は、例えば、表示領域BP61に回路符号を表示させることができる。
【0052】
また、撮像部51は、対象開口部71tと対向する位置に撮像装置FC1を保持させることもできる。これにより、作業者は、撮像装置FC1の位置に基づいて、対象開口部71tの位置を容易に知得することができ、対処が容易になる。なお、この場合、表示部52は、
図6に示す画面において、対象開口部71tと対向する位置に撮像装置FC1が保持されていることを案内すると良い。
【0053】
さらに、表示部52は、模式的に表されるマスク70および対象開口部71tを表示装置41に表示させて、マスク70における対象開口部71tの位置を案内することもできる。これにより、作業者は、対象開口部71tの位置を容易に知得することができ、対処が容易になる。マスク70および対象開口部71tの表示方法は、限定されない。
図6に示すように、例えば、表示部52は、マスク70における複数の開口部71の配置イメージ
図IM0を表示装置41に表示させて、対象開口部71tの表示色を他の開口部71と異ならせることができる。同図では、図示の便宜上、対象開口部71tが黒色で図示されているが、対象開口部71tの表示色は、例えば、赤色、黄色などの注意喚起を促すものが好ましい。
【0054】
また、表示部52は、マスク70における複数の開口部71の配置イメージ
図IM0を表示装置41に表示させて、対象開口部71tを点滅表示させることもできる。さらに、表示部52は、マスク70における複数の開口部71の配置イメージ
図IM0を表示装置41に表示させて、対象開口部71tの近傍にアイコンを表示させることもできる。アイコンは、例えば、感嘆符などの注意喚起を促す形態が好ましい。
【0055】
また、表示部52は、対象開口部71tが複数存在するときに、作業者によって選択された対象開口部71tの画像PT0を表示装置41に表示させることもできる。これにより、作業者は、所望の対象開口部71tの画像PT0を容易に確認することができる。
図6に示す例では、例えば、作業者が操作部BP71を操作することにより、複数の対象開口部71tのうちの一部の対象開口部71tが撮像された画像PT0が所定の順序で表示される。なお、例えば、作業者が既述した位置関連情報などを入力することにより、表示部52は、特定の対象開口部71tの画像PT0を表示装置41に直接表示させることもできる。
【0056】
表示部52は、印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を作業者が選択可能に表示装置41に表示させることもできる(
図4に示すステップS16)。これにより、作業者は、対処処理が表示されない場合と比べて、対処が容易になる。対処処理は、限定されない。例えば、対処処理には、対象開口部71tのクリーニングおよびはんだ80の供給のうちの少なくとも一つが含まれる。
【0057】
図6に示す例では、例えば、作業者が操作部BP81を操作することにより、複数の対処処理の中から少なくとも一つの対処処理を選択することができる。具体的には、対象開口部71tの手動クリーニング、手動クリーニングの際のマスク70のアンクランプ、対象開口部71tの自動クリーニング、はんだ80の手動供給、はんだ80の自動供給などの対処処理が選択可能になっている。なお、作業者は、クリーニング方法を指定することもできる。クリーニング方法には、例えば、乾式、湿式(例えば、アルコールなどを塗布して清掃する方法)、乾式および湿式の併用、吸引式(対象開口部71tに残留する残留物を吸引して清掃する方法)などが含まれる。
【0058】
また、対処処理に対象開口部71tのクリーニングが含まれる場合、
図6に示すように、表示部52は、クリーニング前の対象開口部71tの画像PT0と対比可能にクリーニング後の対象開口部71tの画像PT1を表示装置41に表示させることもできる。これにより、例えば、作業者は、対象開口部71tのクリーニングの効果を容易に確認することができる。また、印刷品質管理システム50は、対象開口部71tのクリーニングが不十分な場合に、クリーニングのやり直しを作業者に促すこともできる。
【0059】
1-3-3.事前処理部53
事前処理部53は、印刷検査機WM2によって測定された印刷状態の測定結果が、印刷検査機WM2が印刷状態の不良を判断する際の検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超えたときに、印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実行させる(
図4に示すステップS11およびステップS12)。
【0060】
印刷検査機WM2によって測定される測定内容および対処処理は、限定されない。例えば、印刷状態の測定結果には、基板90に印刷されたはんだ80の目標印刷位置に対する偏差、基板90に印刷されたはんだ80の面積および体積のうちの少なくとも一つが含まれる。また、対処処理には、印刷状態の測定結果が予備閾値を超えた開口部71のクリーニングおよびはんだ80の供給のうちの少なくとも一つが含まれる。
【0061】
図8は、設定画面(設定部に相当)の一例を示している。作業者は、操作領域BP52を操作することにより、予備閾値と、パッド数および基板数と、その後の処理を設定することができる。例えば、
図8の最上段の設定は、基板90に印刷されたはんだ80の面積が目標値(100%)に対して割合S1(%)以上になった状態が、パッド数PD5および基板数BD5、連続して生じたときに、処理5で示す対処処理を実行することを示している。割合S1は、予備閾値に相当し、この場合、割合S1は、基板90に印刷されたはんだ80の面積の検査閾値の上限値(割合)よりも小さく設定される。
【0062】
上から二段目の設定は、基板90に印刷されたはんだ80の面積が目標値(100%)に対して割合S2(%)以下になった状態が、パッド数PD6および基板数BD6、連続して生じたときに、処理6で示す対処処理を実行することを示している。割合S2は、予備閾値に相当し、この場合、割合S2は、基板90に印刷されたはんだ80の面積の検査閾値の下限値(割合)よりも大きく設定される。
【0063】
上から三段目の設定および四段目の設定は、基板90に印刷されたはんだ80の体積についての条件および処理の設定であり、基板90に印刷されたはんだ80の面積と同様にして、設定されている。上述したことは、他の印刷状態の測定内容(例えば、基板90に印刷されたはんだ80の目標印刷位置に対する偏差)についても同様に言える。
【0064】
なお、作業者は、任意のパッド数および基板数を入力することができる。また、処理5~処理8で入力可能な処理(対処処理)には、印刷状態の測定結果が予備閾値を超えた開口部71の手動クリーニング、手動クリーニングの際のマスク70のアンクランプ、当該開口部71の自動クリーニング、はんだ80の手動供給、はんだ80の自動供給などが含まれる。処理5~処理8で入力可能な処理(対処処理)には、印刷機WM1の停止、当該開口部71の画像の表示などを含めることもできる。
【0065】
例えば、処理5および処理6で示す処理が、印刷状態の測定結果が予備閾値を超えた開口部71の自動クリーニングの場合を想定する。この場合、基板90に印刷されたはんだ80の面積について、印刷検査機WM2によって不良とは判断されないが、検査閾値よりも厳しく設定される予備閾値を超えた状態が、所定パッド数および所定基板数、連続して生じると、事前処理部53は、印刷機WM1に自動クリーニングを実施させる。
【0066】
このように、本実施形態の印刷品質管理システム50は、事前処理部53を備えているので、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断される前に対処処理を実行することができる。よって、印刷品質管理システム50は、事前の対処処理を行わない場合と比べて、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断される不良発生件数を低減することができる。なお、事前の対処処理が不十分な場合は、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断され、既述した撮像部51および表示部52による制御が行われる。
【0067】
1-4.第二の印刷品質管理システム500の構成例
既述した実施形態の印刷品質管理システム50(以下、第一の印刷品質管理システム50という。)では、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断された後に、撮像部51が撮像装置FC1に対象開口部71tを撮像させて、表示部52が表示装置41に対象開口部71tの画像PT0を表示させる。
【0068】
しかしながら、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断される前に、印刷状態の不良が生じたときに実行すべき対処処理を事前に実施して、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断される不良発生件数を低減したいという要請がある。そこで、第二の印刷品質管理システム500は、必須の構成要素として、既述した事前処理部53を備える。これにより、第二の印刷品質管理システム500は、印刷検査機WM2によって印刷状態の不良が判断される前に、対処処理を実行することができ、対処処理を行わない場合と比べて、不良発生件数を低減することができる。
【0069】
なお、第二の印刷品質管理システム500においても、印刷検査機WM2によって測定される測定内容および対処処理は、限定されない。例えば、印刷状態の測定結果には、基板90に印刷されたはんだ80の目標印刷位置に対する偏差、基板90に印刷されたはんだ80の面積および体積のうちの少なくとも一つが含まれる。また、対処処理には、印刷状態の測定結果が予備閾値を超えた開口部71のクリーニングおよびはんだ80の供給のうちの少なくとも一つが含まれる。また、第二の印刷品質管理システム500は、既述した撮像部51および表示部52を備えることもできる。撮像部51および表示部52は、既述したいずれの形態であっても良い。本明細書では、重複する説明が省略されている。
【0070】
2.印刷品質管理方法
印刷品質管理システムについて既述されていることは、印刷品質管理方法についても同様に言える。具体的には、印刷品質管理方法は、事前処理工程を備える。事前処理工程は、事前処理部53が行う制御に相当する。印刷品質管理方法は、撮像工程と、表示工程とを備えることもできる。撮像工程は、撮像部51が行う制御に相当する。表示工程は、表示部52が行う制御に相当する。
【0071】
3.実施形態の効果の一例
印刷品質管理システムによれば、印刷状態の不良の発生を低減することができる。印刷品質管理システムについて上述されていることは、印刷品質管理方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0072】
50,500:印刷品質管理システム、53:事前処理部、70:マスク、
71:開口部、80:はんだ、90:基板。