(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069567
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】チューハイ、及び飲みごたえ付与方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20240514BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024042986
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】302026508
【氏名又は名称】宝酒造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼ 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】朝平 晃章
(57)【要約】
【課題】香味の調和がありながらも飲みごたえのあるチューハイを提供する。
【解決手段】シリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有するチューハイが提供される。シリングアルデヒドの濃度が0.001μg/L以上5.0μg/L以下であり、イソブチルアルコールの濃度が0.001mg/L以上50.0mg/L以下であることが好ましい。シリングアルデヒドの濃度が0.01μg/L以上1.0μg/L以下であり、イソブチルアルコールの濃度が0.1mg/L以上10.0mg/L以下であることが好ましい。樽貯蔵熟成焼酎を含有することが好ましい。チューハイにシリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有させる工程を含む、飲みごたえ付与方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有するチューハイ。
【請求項2】
前記シリングアルデヒドの濃度が0.001μg/L以上5.0μg/L以下であり、前記イソブチルアルコールの濃度が0.001mg/L以上50.0mg/L以下である、請求項1に記載のチューハイ。
【請求項3】
前記シリングアルデヒドの濃度が0.01μg/L以上1.0μg/L以下であり、前記イソブチルアルコールの濃度が0.1mg/L以上10.0mg/L以下である、請求項1に記載のチューハイ。
【請求項4】
前記チューハイに含まれる前記シリングアルデヒドの質量をA、前記イソブチルアルコールの質量をBとしたとき、B/Aが0.2以上50000000以下である、請求項1に記載のチューハイ。
【請求項5】
樽貯蔵熟成焼酎を含有する、請求項1~4のいずれかに記載のチューハイ。
【請求項6】
チューハイに対して飲みごたえを付与する方法であって、
前記チューハイにシリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有させる工程を含む、飲みごたえ付与方法。
【請求項7】
チューハイに対して飲みごたえを付与する方法であって、
前記チューハイに樽貯蔵熟成焼酎を含有させる工程を含む、飲みごたえ付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューハイ及び飲みごたえ付与方法に関し、さらに詳細には、シリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有するチューハイ、及びチューハイに対して飲みごたえを付与する方法に関する。本発明のチューハイは、香味の調和がありながらも十分な飲みごたえを有する高品質のものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酒類や醸造アルコールなどのアルコール原料に果実、果汁、糖類、酸味料、香料、水等を加えた果汁含有アルコール飲料が普及しており、特に、チューハイ類に代表される、アルコール濃度が1~9v/v%程度の種々の果汁含有アルコール飲料が開発されている。一般に、現在市場に流通しているチューハイは、各種原料を混合した後、缶、瓶、PETボトルなどの各種容器に充填し、その後、加熱殺菌処理を行うことにより製造されている。
【0003】
チューハイは、アルコール飲料にカーボネーションを施すことにより炭酸ガスを含有させた「発泡性アルコール飲料」の代表例でもある。缶入りチューハイは、一般に、所定量の原料用アルコール、水、果汁、糖類、および食品添加物等を調合した後、カーボネーションを行って炭酸ガスを含有させ、容器に充填、密封後に加熱殺菌処理することにより製造されている。
【0004】
近年、チューハイのアルコール原料には、多岐に渡る酒類が用いられている。それらには、ニュートラルスピリッツ、甲類焼酎、乙類焼酎、ウイスキーなどがある。
【0005】
チューハイにおいて、アルコール原料となる酒類について検討した技術については、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、米焼酎または米スピリッツを用いて、果汁含有量が5~35w/w%である柑橘類果汁含有アルコール飲料であっても、果汁に由来する刺激感を低減することができ、飲みやすい柑橘類果汁含有アルコール飲料が記載されている。特許文献2には、味のまろやかさを増強しつつ、酸味刺激を抑制することが可能なアルコール飲料を提供する目的で5-ヒドロキシメチルフルフラールと、炭素数3~5のアルコールとを含有するアルコール飲料が開示され、用いる単式蒸留アルコール飲料液が焼酎やウイスキーであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-146825号公報
【特許文献2】特開2020-80768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、「飲みごたえ」といった特徴を持つチューハイについては、知見が十分あるとは言い難く、その課題の解決も十分にできているとは言い難い。そこで本発明は、前記した従来技術が抱える問題点を踏まえ、「飲みごたえ」といった特徴を十分に持つアルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した課題を解決するために、「飲みごたえ」のあるチューハイを開発すべく検討を重ねた。その結果、チューハイに、シリングアルデヒドとイソブチルアルコールを含有させることにより、香味の調和がありながらも飲みごたえのあるチューハイが得られることを見出した。上記した課題を解決するために提供される本発明は、以下のとおりである。
【0009】
本発明の1つの様相は、シリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有するチューハイである。
【0010】
本様相は、シリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有するチューハイに係るものである。本様相によれば、香味の調和がありながらも飲みごたえが十分にあるチューハイを提供することができる。
【0011】
好ましくは、前記シリングアルデヒドの濃度が0.001μg/L以上5.0μg/L以下であり、前記イソブチルアルコールの濃度が0.001mg/L以上50.0mg/L以下である。
【0012】
好ましくは、前記シリングアルデヒドの濃度が0.01μg/L以上1.0μg/L以下であり、前記イソブチルアルコールの濃度が0.1mg/L以上10.0mg/L以下である。
【0013】
好ましくは、前記チューハイに含まれる前記シリングアルデヒドの質量をA、前記イソブチルアルコールの質量をBとしたとき、B/Aが0.2以上50000000以下である。
【0014】
好ましくは、樽貯蔵熟成焼酎を含有する。
【0015】
本発明の他の様相は、チューハイに対して飲みごたえを付与する方法であって、前記チューハイにシリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有させる工程を含む、飲みごたえ付与方法である。
【0016】
本様相はチューハイに対する飲みごたえを付与する方法に係るものであり、チューハイにシリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有させる工程を含む。本様相によれば、香味の調和がありながらも飲みごたえが十分にあるチューハイを提供することができる。
【0017】
本発明の他の様相は、チューハイに対して飲みごたえを付与する方法であって、前記チューハイに樽貯蔵熟成焼酎を含有させる工程を含む、飲みごたえ付与方法である。
【0018】
本様相はチューハイに対する飲みごたえを付与する方法に係るものであり、チューハイに樽貯蔵熟成焼酎を含有させる工程を含む。本様相によれば、香味の調和がありながらも飲みごたえが十分にあるチューハイを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、香味の調和がありながらも飲みごたえが十分にあるチューハイを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。なお、本明細書においては、「アルコール濃度」とはエチルアルコール(エタノール)の濃度をいう。すなわち、本明細書において「アルコール」と記載した場合は、特に断らない限りエチルアルコール(エタノール)を指す。
【0021】
本発明における「チューハイ」とは、アルコール原料に、必要に応じて果汁、水、香料、糖類、甘味料、酸味料等の食品添加物、その他の原料を混合して、炭酸による発泡性を付与したアルコール飲料をいう。果汁を含有する果汁入りのチューハイや、果汁を含有しない無果汁のチューハイも包含される。発泡性は、例えば原料の混合液を炭酸水で割ることにより付与することができる。その他、アルコール原料に必要な原料を混合して炭酸ガスを溶解させることにより、発泡性を付与することができる。
【0022】
本発明のチューハイは、シリングアルデヒドとイソブチルアルコールを含有するものである。ここで、シリングアルデヒドは、CAS番号「134-96-3」の物質であり、アルコール飲料を木製の樽容器に貯蔵した際に、木製の樽材から溶出される成分である。イソブチルアルコールは、CAS番号「78-83-1」の物質であり、発酵物や発酵物の蒸留液に含有される成分である。
【0023】
本発明のチューハイにおけるシリングアルデヒド濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは0.001μg/L以上5.0μg/L以下(0.001~5.0μg/L)であり、より好ましくは0.01~1.0μg/Lである。シリングアルデヒド濃度が0.001μg/L未満であると、その効果が感じられないおそれがある。一方、シリングアルデヒド濃度が5.0μg/L超であると、苦くなり香味がくどくなるおそれがある。
【0024】
本発明のチューハイにおけるイソブチルアルコール濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは0.001mg/L以上50.0mg/L以下(0.001~50.0mg/L)であり、より好ましくは0.1~10.0mg/Lである。イソブチルアルコール濃度が0.001mg/L未満であると、その効果が感じられないおそれがある。一方、イソブチルアルコール濃度が50.0mg/L超であると、油っぽくなりチューハイの香味のバランスが悪くなるおそれがある。
【0025】
シリングアルデヒド濃度とイソブチルアルコール濃度の好ましい組み合わせとしては、シリングアルデヒド濃度が0.001~5.0μg/Lで、かつイソブチルアルコール濃度が0.001~50.0mg/L、0.1~10.0mg/Lであることが挙げられる。また、シリングアルデヒド濃度が0.01~1.0μg/Lで、かつイソブチルアルコール濃度が0.001~50.0mg/L、0.1~10.0mg/Lであることが挙げられる。
【0026】
本発明のチューハイに含まれるシリングアルデヒドとイソブチルアルコールの量比については特に限定はないが、チューハイに含まれるシリングアルデヒドの質量をA、イソブチルアルコールの質量をBとしたとき、B/A(BをAで除した値)が0.2以上50000000以下(0.2~50000000)であることが好ましい。B/Aの他の例としては、「100~1000000」、「20~10000000」、「1~5000000」を挙げることができる。
【0027】
本発明のチューハイのアルコール原料としては特に限定はないが、その一部又は全部に樽貯蔵熟成焼酎を用いることが好ましい。樽貯蔵熟成焼酎とは、アルコールや焼酎(連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう等)を、木製の容器(樽)にて貯蔵・熟成したものをいう。樽の木材の種類、貯蔵期間、貯蔵時のアルコール度数については、特に限定はなく、所望の酒質のチューハイとなるように適宜、採用すればよい。チューハイのアルコール原料として樽貯蔵熟成焼酎以外の酒類を用いることも可能である。例えば、醸造アルコール、スピリッツ類(ラム、ウオッカ、ジン等)、リキュール類、ウイスキー又はブランデー等が挙げられ、さらには清酒、ワイン、ビール等の醸造酒類でもよい。これらのアルコール原料については、それぞれ単独又は併用して用いることができるが、その香味を生かすようなアルコール原料を選択することが好ましい。
【0028】
本発明のチューハイにおけるアルコール原料としての樽貯蔵熟成焼酎の含有量(チューハイへの添加量)は、特に限定はないが、樽貯蔵熟成焼酎がアルコール度数60v/v%であれば、チューハイ1000容量部に対して、1~100容量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1~50容量部である。
【0029】
本発明のチューハイは、無果汁であってもよいし、果汁を含有させたものであってもよい。果汁を含有させる場合には、果汁の原料果実となる果実の種類には特に限定はなく、また、果実は1種又は2種以上でもよい。例えば、柑橘類果実(レモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジ、温州ミカン、シークァーサー(ヒラミレモン)、マンダリン、ユズ、タンジェリン、タンジェロ、カラマンシー等)、リンゴ、モモ、ウメ、メロン、イチゴ、バナナ、ブドウ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツ、グアバ、アセロラ、ナシ、アンズ、ライチ、カシス、西洋ナシ、スモモ類等が使用できる。これらの果実の混濁果汁や、果実を皮ごと全果摩砕して得た果汁(全果摩砕果汁)を使用してもよい。
【0030】
本発明のチューハイのアルコール濃度としては、3v/v%以上9v/v%以下(3~9v/v%)であることが好ましい。その他、アルコール濃度を4~7v/v%等にすることもできる。
【0031】
本発明のチューハイは炭酸由来の発泡性を有する。好ましい実施形態では、チューハイのガスボリュームが1.3~3.8である。ガスボリュームが1.3未満であると香り立ちが悪くなるおそれがあり、3.8超であると炭酸由来の刺激強くなりすぎるそれがある。
【0032】
本発明のチューハイ飲料は、例えば、所定量のアルコール原料、水、果汁、糖類、香料等を調合することにより製造することができる。缶入りチューハイとする場合には、調合後、カーボネーションを行って炭酸ガスを含有させ、容器に充填、密封後に加熱殺菌処理を行うことにより製造することができる。
【0033】
本発明は、チューハイにシリングアルデヒドとイソブチルアルコールとを含有させる工程を含む、チューハイに対する飲みごたえ付与方法を包含する。また本発明は、チューハイに樽貯蔵熟成焼酎を含有させる工程を含む、チューハイに対する飲みごたえ付与方法を包含する。
【0034】
前述の通り、本発明のチューハイは、シリングアルデヒドとイソブチルアルコールを含有するものであり、シリングアルデヒドは木製の容器(樽)から溶出される成分(以下、「樽貯蔵熟成由来成分」と定義する)であり、イソブチルアルコールは、アルコール発酵原料の酵母の代謝により生成される成分(以下、「アルコール発酵由来成分」と定義する)である。本発明のチューハイには、必要に応じて他の「樽貯蔵熟成由来成分」、他の「アルコール発酵由来成分」を含有させてもよい。
【0035】
上記「樽貯蔵熟成由来成分」および「アルコール発酵由来成分」としては、シリングアルデヒドやイソブチルアルコールの他に、アセタール(1,1-ジエトキシエタン)、アセトアルデヒド、イソアミルアルコール、cis-ウイスキーラクトン、trans-ウイスキーラクトン、4-エチルグアヤコール、4-エチルフェノール、オイゲノール、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、カプロン酸エチル、コニフェリルアルデヒド、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸βフェネチル、シナピルアルデヒド、シリンガ酸、ノルマルプロピルアルコール、バニリン、バニリン酸、5-ヒドロキシメチル-フルフラール、β-フェネチルアルコール、フェニル酢酸エチル、フェノール、フルフリルエチルエーテル、2-メチルフルフラール、5-メチルフルフラールが挙げられる。
【0036】
本発明のチューハイにおける上記した他の「樽貯蔵熟成由来成分」および他の「アルコール発酵由来成分」の濃度(含量)の例を、物質名とともに挙げる。
【0037】
・アセタール(1,1-ジエトキシエタン):1~15000μg/L、好ましくは10~1500μg/L
・アセトアルデヒド:0.01~50mg/L、好ましくは0.1~5mg/L
・イソアミルアルコール:0.005~250mg/L、好ましくは0.5~50mg/L
・cis-ウイスキーラクトン:0.03~350μg/L、好ましくは0.3~35μg/L
・trans-ウイスキーラクトン:0.01~150μg/L、好ましくは0.1~15μg/L
・4-エチルグアヤコール:0.0015~20μg/L、好ましくは0.015~2μg/L
・4-エチルフェノール:0.0015~20μg/L、好ましくは0.015~2μg/L
・オイゲノール:0.0025~25μg/L、好ましくは0.025~2.5μg/L
・カプリル酸エチル:0.001~50mg/L、好ましくは0.005~10mg/L
・カプリン酸エチル:0.0001~50mg/L、好ましくは0.001~10mg/L
・カプロン酸エチル:0.0001~50mg/L、好ましくは0.001~10mg/L
・コニフェリルアルデヒド:0.0015~20μg/L、好ましくは0.015~2μg/L
・酢酸イソアミル:0.001~50mg/L、好ましくは0.005~10mg/L
・酢酸エチル:0.001~50mg/L、好ましくは0.1~10mg/L
・酢酸βフェネチル:0.0001~0.1mg/L、好ましくは0.001~0.01mg/L
・シナピルアルデヒド:0.0015~20μg/L、好ましくは0.015~2μg/L
・シリンガ酸:0.02~300μg/L、好ましくは0.2~30μg/L
・ノルマルプロピルアルコール:0.001~50mg/L、好ましくは0.1~10mg/L
・バニリン:0.01~100μg/L、好ましくは0.01~10μg/L
・バニリン酸:0.03~350μg/L、好ましくは0.3~35μg/L
・5-ヒドロキシメチル-フルフラール:0.025~300μg/L、好ましくは0.25~30μg/L
・フェニル酢酸エチル:0.0001~0.1mg/L、好ましくは0.0005~0.01mg/L
・β-フェネチルアルコール:0.001~1mg/L、好ましくは0.005~0.5mg/L
・フェノール:0.004~50μg/L、好ましくは0.04~5μg/L
・フルフリルエチルエーテル:0.1~1000μg/L、好ましくは1~100μg/L
・2-メチルフェノール:0.003~50μg/L、好ましくは0.03~5μg/L
・5-メチルフルフラール:0.001~15μg/L、好ましくは0.01~1.5μg/L
【0038】
上記「樽貯蔵熟成由来成分」および「アルコール発酵由来成分」を適宜、組み合わせることにより、チューハイに、香味の調和がありながらも十分な飲みごたえを付与することができる。さらには、目的とする酒質に応じて、上記「樽貯蔵熟成由来成分」および「アルコール発酵由来成分」を組み合わせて、下記に示す効果を得ることができる。
【0039】
果実感、爽快感、のど越し、クセ、酒感(アルコール感)、味の厚み、ボディー感、複雑味、熟成感、辛味抑制、ピリピリ感抑制、油脂感低減、苦味低減、焦げ感、ねっとり感、えぐみ低減、アルコー感低減、エタノールの雑味低減、アルコールの苦味低減、甘さ低減(甘味の低減)、苦味低減、渋味低減、雑味低減、酸味低減、生臭さ低減、塩味の低減、エグ味低減、複雑味低減、酸味の質の改善、刺激低減、収斂味の低減、コク感、コクのある旨味、味の丸み、まろやかさ、味の滑らかさ、酸味物質の渋味の低減、味のギスギス感が低減、炭酸の刺激低減、炭酸感の増強、甘味の付与、油脂様感付与、水っぽさ改善、ジューシー感(果汁感)、余韻感、甘味の質の向上刺激感の付与、果実味の厚み、口当たり改善、後味のシャープ、キレ向上、甘味の増強、後味の甘味の改善、後に残る甘さ抑制、後口の向上(後口の良い、後味改善)、後味の引き締まり(後味のしまり)、柑橘の未熟果皮香味、果皮感(ピール感)、パンチの効いた味、芳醇さ、カドの低減、薬草的な苦味の低減、複雑な香り、フレッシュ感(新鮮感)、香り立ちの向上、香味を引き立たせる、重厚感、貯蔵感、アルコールの戻り香低減、薬品感低減、メタリックな香り低減、メタリックな香り付与、グリーン感、ウッディー感、発酵感、フローラルな香り、華やかさ、エステリー、柑橘香味の増強、苦味増強、甘味料の苦味抑制、甘い香りの増強、果肉感、果実の完熟感、調和(バランス)のある、ベルガモット風味、吟醸酒の香味付与、生食用果実風味の低減、甘味料の香味改善、飲みづらさ改善(ドリンカビリティー向上)、劣化抑制、異臭味抑制、不快味・不快臭のマスキング、もったり感低減、ぬめり感低減、口内への付着感改善、ねっとりとした舌触り向上、粉っぽさの改善、樹脂的な匂いの改善、加熱臭緩和、ファーストインパクトのある、油キレ、食事に合う、等である。
【0040】
また本発明においては、上記した各効果を得るために、下記文献1-2に記載されている、蒸留酒類で検出された各成分を採用することも可能である。
(文献1)「醸造物の成分」(編集・発行 財団法人日本醸造協会,平成11年12月10日発行)
(文献2)L. Nykaenen and H. Suomalainen, "Aroma of Beer, Wine and Distilled Alcoholic Beverages", D. REIDEL PUBLISHING COMPANY, 1983年5月31日発行
【0041】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0042】
本実施例では、シリングアルデヒド濃度(含量)の好適な範囲について検討した。
濃度1.0mg/Lのシリングアルデヒド水溶液を作製した。また濃度1000mg/Lのイソブチルアルコール水溶液を作製した。表1に示す配合となるように、果糖ぶどう糖液糖、シリングアルデヒド水溶液(濃度:1.0mg/L)、イソブチルアルコール水溶液(濃度:1000mg/L)、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した。
【0043】
【0044】
シリングアルデヒド水溶液の配合量は、下記の7種とした。括弧書きで、各調合液におけるシリングアルデヒド濃度を示した。
【0045】
・実験例1-1:0.0001mL(濃度:0.0001μg/L)
・実験例1-2:0.001mL(濃度:0.001μg/L)
・実験例1-3:0.01mL(濃度:0.01μg/L)
・実験例1-4:0.1mL(濃度:0.1μg/L)
・実験例1-5:1mL(濃度:1.0μg/L)
・実験例1-6:5mL(濃度:5μg/L)
・実験例1-7:10mL(濃度:10μg/L)
【0046】
これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、7種のチューハイを調製した。
【0047】
得られたチューハイ(実験例1-1~実験例1-7)について、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は下記の3段階で行った。
A:香味の調和がありながらも、飲みごたえが顕著にある
B:香味の調和がありながらも、飲みごたえがある
C:香味の調和も、飲みごたえも感じられない、又は、苦く香味の調和がなく、美味しくない
【0048】
結果を表2に示す。すなわち、イソブチルアルコール濃度が10mg/Lであるとき、シリングアルデヒド濃度が0.001~5.0μg/Lである実験例1-2、実験例1-3、実験例1-4、実験例1-5、実験例1-6において、「香味の調和がありながらも、飲みごたえがある」という高い評価であった(評価A、B)。特に、シリングアルデヒド濃度が0.01~1.0μg/Lである実験例1-3、実験例1-4、実験例1-5の評価が高かった(評価A)。一方、シリングアルデヒド濃度が0.0001μg/Lである実験例1-1では、「香味の調和も、飲みごたえも感じられない」、という評価であった(評価C)。また、シリングアルデヒド濃度が10μg/Lである実験例1-7では「苦く香味の調和がなく、美味しくない」という評価であった(評価C)。
【0049】
結果を表4に示す。すなわち、シリングアルデヒド濃度が1.0μg/Lであるとき、イソブチルアルコール濃度が0.001~50.0mg/Lである実験例2-2、実験例2-3、実験例2-4、実験例2-5、実験例2-6、実験例2-7において、「香味の調和がありながらも、飲みごたえがある」という高い評価であった(評価A、B)。特に、イソブチルアルコール濃度が0.1~10.0mg/Lである実験例2-4、実験例2-5、実験例2-6の評価が高かった(評価A)。一方、イソブチルアルコール濃度が0.0001mg/Lである実験例2-1では、「香味の調和も、飲みごたえも感じられない」、という評価であった(評価C)。また、イソブチルアルコール濃度が100.0mg/Lである実験例2-8では「油っぽく香味の調和がなく、美味しくない」という評価であった(評価C)。