(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069610
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】感知システムを有する薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240514BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20240514BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20240514BHJP
A61M 5/20 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
A61M5/24
A61M5/31 520
A61M5/20 510
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044198
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2022137273の分割
【原出願日】2018-08-14
(31)【優先権主張番号】62/547,928
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/676,576
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】バイアリー,ロイ ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ネルセン,ダニエル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス,ラッセル ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】アスコールド,ロバート チャールズ
(57)【要約】
【課題】用量送達感知機能を有する薬剤送達デバイスを提供する。
【解決手段】被感知要素が、デバイスの用量設定部材に取り付けられている。被感知要素は、互いに放射状に離間された表面特徴部を含む。回転センサが、デバイスのアクチュエータに取り付けられている。回転センサは、表面特徴部に対して接触可能な可動要素を含む。回転センサは、回転中の表面特徴部の上での可動要素の動きに応答して、信号を生成するように構成されている。コントローラが、回転センサに動作可能に連結され、生成された信号を受信したことに応答して、コントローラは、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した表面特徴部の数を決定するように構成されている。数は、送達された用量に関連付けることができる。感知は、モジュール内に提供するか、またはデバイス内に統合することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイスのためのエレクトロニックシステムであって、前記エレクトロニックシステムは、
前記薬剤送達デバイスによって送達される用量を設定するための用量設定動作、及び前記設定された用量を送達するための用量送達動作を実行するように構成される、用量設定駆動機構であって、前記用量設定駆動機構は、第1部材及び第2部材から構成され、前記用量送達動作中に、前記第1部材が第2部材に対して回転するように、前記用量設定駆動機構が構成される、用量設定駆動機構と、
前記エレクトロニックシステムの動作を制御するための制御ロジックを実行するように構成される少なくとも1つの処理コアを含む、エレクトロニックコントロールユニットであって、前記エレクトロニックコントロールユニットは、第1状態及び第2状態を有し、前記エレクトロニックコントロールユニットは、前記第1状態に比べて前記第2状態で、増大した電力消費を有する、エレクトロニックコントロールユニットと、
電気的使用検知ユニットであって、前記電気的使用検知ユニットは、前記エレクトロニックコントロールユニットに動作可能に接続され、前記電気的使用検知ユニットは、ユーザが前記用量送達動作を開始することを示す使用信号を生成するように構成される、電気的使用検知ユニットとを備え、
前記エレクトロニックシステムは、前記使用信号に応じて前記エレクトロニックコントロールユニットが、前記第1状態から前記第2状態に切り替えられるように構成され、前記電気的使用検知ユニットは、前記用量送達動作の間に前記第1部材及び前記第2部材の間の相対的な移動に応じて前記使用信号を生成するように構成される、エレクトロニックシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロニックシステムであって、前記エレクトロニックシステムは、移動可能なスイッチを含み、前記スイッチは、前記第2部材と動作可能に接続されて、前記第2部材に対する前記第1部材の回転が前記スイッチの移動を引き起こすように構成され、前記スイッチの移動が前記使用信号の生成を引き起こすことに用いられるように、前記エレクトロニックシステムが構成される、エレクトロニックシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレクトロニックシステムであって、前記スイッチは、回転可能に設けられ、前記スイッチの前記移動は、回転動作である、エレクトロニックシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のエレクトロニックシステムであって、前記第1部材は、円周状に配置された複数の歯を含み、前記スイッチは、前記複数の歯と協同するように配置されている。エレクトロニックシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレクトロニックシステムであって、1つの変形可能なスイッチ特徴部が前記複数の歯と係合することにより、前記第2部材に対する前記第1部材の回転が、前記変形可能なスイッチ特徴部の一部を変位させる、エレクトロニックシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のエレクトロニックシステムであって、前記第1部材は、前記エレクトロニックシステムまたは前記薬剤送達デバイスのハウジングに対して、前記用量送達動作の間に移動するように構成される、エレクトロニックシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のエレクトロニックシステムであって、前記第1部材は用量ダイヤル部材であり、前記第2部材はアクチュエータである、エレクトロニックシステム。
【請求項8】
薬物送達デバイスであって、請求項1に記載のエレクトロニックシステムと、前記薬物送達デバイス内で薬物を有するリザーバとを含む薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤送達デバイスおよび/または薬剤送達デバイスの近位端部分に取り外し可能に取り付けるように適合されたモジュールのためのエレクトロニック用量検出システムに関する。用量送達検出システムは、薬剤送達デバイスによって送達された薬剤の用量を決定するためのデータを検出するように動作可能である。
【背景技術】
【0002】
様々な病気に苦しんでいる患者は、自分自身に薬剤を注射しなければならないことが頻繁にある。ヒトが薬を便利にかつ正確に自己投与することを可能にするために、ペン型注射器または注射ペンとして広く知られている様々な装置が開発されている。一般に、これらのペンには、ピストンを含み、かつ複数用量の液体薬剤を含有するカートリッジが装填されている。駆動部材は、前方に移動可能であり、カートリッジ内のピストンを前進させて、含有された薬剤を遠位カートリッジ端の出口から、典型的には針を介して、分注する。使い捨てまたは事前充填されたペンでは、ペンがカートリッジ内の薬剤の供給を使い果たすように利用された後、ユーザは、ペン全体を廃棄し、新しい代わりのペンを使用し始める。再使用可能なペンでは、ペンがカートリッジ内の薬剤の供給を使い果たすように利用された後、ペンは、分解されて、使用済みのカートリッジを新しいカートリッジに交換することが可能になり、次に、ペンは、その後の使用のために再組み立てされる。
【0003】
多くのペン型注射器および他の薬剤送達装置は、装置の動作によって送達される用量に比例した様態で、部材が互いに対して回転および/または平行移動する機械的システムを利用する。送達された用量を評価するために、薬剤送達デバイスの部材の相対的動きを測定するシステムが開発された。但し、大量生産と、製品のライフサイクルを通して再現性のある精度とを実現するためにデバイスまたはモジュールに統合されるシステムは、設計が困難である。適切な量の薬剤の投与は、薬剤送達装置によって送達される用量が正確であることを必要とする。多くのペン型注射器および他の薬剤送達装置は、注射事象中に装置によって送達される薬剤の量を自動的に検出して記録するための機能を含まない。自動化システムがない場合、患者は各注射の量および時間を手動で追跡しなければならない。したがって、注入イベント中に薬剤送達デバイスによって送達された用量を自動的に検出し、かつ/または従来技術のこれらの欠点および他の欠点のうちの1つ以上を克服するように動作可能なデバイスが必要である。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、デバイス本体と、デバイス本体に取り付けられ、用量送達中に回転軸の周りでデバイス本体に対して回転可能な用量設定部材とを含む薬剤送達デバイスが提供される。用量設定部材は、用量設定部材の回転軸の周りで互いに放射状に離間して配置された表面特徴部を含む被感知要素を含む。アクチュエータまたは用量ボタンが、デバイス本体に取り付けられている。被感知要素は、送達された用量に関連して、用量送達中に用量ボタンに対して回転可能である。回転センサは、被感知要素の表面特徴部に対して接触可能な可動要素を含む。用量ボタンは、回転センサを収容するように構成され得る。可動要素は、用量送達中の用量ボタンに対する被感知要素の回転の間、表面特徴部の上を動くように配置されている。回転センサは、用量設定部材の回転の間、表面特徴部の上での可動要素の動きに応答して、信号を生成するように構成されている。コントローラが、回転センサに動作可能に連結され、用量ボタンまたはモジュールによって収容され得る。生成された信号を回転センサから受信したことに応答して、コントローラは、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した表面特徴部の数を決定するように構成されている。
【0005】
薬剤送達デバイスの別の実施形態では、アクチュエータが、回転センサの可動要素が軸方向延在表面特徴部から係合解除される第1の位置と、回転センサの可動要素が軸方向延在表面特徴部と接触可能である第2の位置とを有する。アクチュエータは、用量ボタンであり得る。アクチュエータが第2の位置にあるとき、コントローラは、軸方向延在表面特徴部のうちの最初の第1の特徴部との接触を示す信号を受信すると、コントローラをフルパワー状態に作動させるように構成され、かつコントローラは、最初の第1の特徴部の後に、軸方向延在表面特徴部のうちの後続の特徴部との接触を示す信号を受信すると、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した軸方向延在表面特徴部の数を決定するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のさらなる実施形態、ならびにその特徴および利点は、添付の図面と併せて本明細書の説明を参照することによってより明らかになるであろう。図中の構成要素は必ずしも縮尺通りではない。さらに、図面において、同様の参照番号は、異なる図を通して対応する部分を示す。
【0007】
【
図1】本開示の用量検出システムが動作可能である例示的な薬剤送達装置の斜視図である。
【
図2】
図1の例示的な薬剤送達装置の断面斜視図である。
【
図3-4】
図3は、
図1の例示的な薬剤送達装置の近位部分の斜視図である。
図4は、用量検出モジュールを示す、
図1の例示的な薬剤送達デバイスの近位部分の部分分解斜視図である。
【
図5-6】
図5は、薬剤送達デバイスの近位部分に取り付けられて示された用量検出システムの例示的な実施形態の概略部分断面側面図である。
図6は、被感知要素を含むフランジの斜視図である。
【
図7-9】
図7は被感知要素の一実施形態の斜視図である。
図8は用量検出システムの他の例示的な実施形態の概略図である。
図9は用量検出システム用の付勢部材の代替形態を示す概略図である。
【
図10-13】
図10は、用量ボタンが近位位置にある、用量検出システムを有する薬剤送達デバイスの別の実施形態の近位部分の概略部分断面側面図である。
図11は、用量ボタンが遠位位置にある、
図10の薬剤送達デバイスの近位部分の概略部分断面側面図である。
図12は、用量ボタンが近位位置にある、
図10の薬剤送達デバイスに設けられた回転センサの例の拡大側面図である。
図13は、用量ボタンが遠位位置にある、
図12の回転センサの拡大側面図である。
【
図14-15】
図14は、表面特徴部の例を示す、用量設定部材の軸方向上面図である。
図15は、用量ボタンが近位位置にある、用量検出システムを有する薬剤送達デバイスの別の実施形態の近位部分の概略部分断面側面図である。
【
図16-17】
図16は、用量ボタンが遠位位置にある、
図15の薬剤送達デバイスの近位部分の概略部分断面側面図である。
図17は、軸方向表面に沿った表面特徴部の別の例を有するフランジの例の斜視図である。
【
図18-19】
図18は、用量検出システムを有する薬剤送達デバイスの別の実施形態の近位部分の斜視図である。
図19は、用量ボタンが近位位置にある、
図18の薬剤送達デバイスの近位部分の概略部分断面側面図である。
【
図20-21】
図20は、回転センサおよび表面特徴部の構成を示す、
図18の薬剤送達デバイスの近位部分の斜視図である。
図21は、回転センサおよび表面特徴部の構成を示す、
図18の薬剤送達デバイスの近位部分の軸方向上面図である。
【
図22-25】
図22は、用量ボタンが近位位置にある、用量検出システムを有する薬剤送達デバイスの別の実施形態の近位部分の概略部分断面側面図である。
図23は、半径方向内側表面に沿った表面特徴部の別の例を有するフランジの別の例の斜視図である。
図24は、表面特徴部の構成を示す、
図22の薬剤送達デバイスの近位部分の軸方向上面図である。
図25は、圧電センサとして示された、回転センサの別の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の原理の理解を促進するために、次に、図面に例示された実施形態を参照し、特定の言語を使用して、これを説明しよう。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるだろう。
【0009】
本開示は、薬剤送達装置用の感知システムに関する。一態様では、感知システムは、薬剤送達デバイスによって送達された用量を決定するために、薬剤送達デバイスの用量設定部材とアクチュエータとの間の相対的回転運動を感知するためのものである。感知された相対回転移動は、送達される用量と相関している。例として、薬剤送達装置は、ペン型注射器の形態で記載されている。しかしながら、薬剤送達デバイスは、ペン型注射器、注入ポンプおよびシリンジなどの、ある薬剤のある用量を設定しかつ送達するために使用される任意のデバイスであり得る。薬剤は、このような薬剤送達装置によって送達され得るタイプのうちのいずれかであり得る。
【0010】
デバイス10、210、410、610または810などの本明細書に記載のデバイスは、例えば、リザーバまたはカートリッジ20内になど、薬剤をさらに含み得る。別の実施形態では、システムは、装置10を含む1つ以上の装置および薬剤を含み得る。「薬剤」(medication)という用語は、限定されないが、インスリン、インスリンリスプロまたはインスリングラルギンなどのインスリンアナログ、インスリン誘導体、ダラグルチドまたはリラグルチドなどのGLP-1受容体アゴニスト、グルカゴン、グルカゴン類似体、グルカゴン誘導体、胃抑制ポリペプチド(GIP)、GIP類似体、GIP誘導体、オキシントモジュリン類似体、オキシントモジュリン誘導体、治療用抗体および上記の装置による送達が可能な任意の治療薬を含む、1つ以上の治療薬を指す。装置で使用されるような薬剤は、1つ以上の賦形剤と共に処方されてもよい。装置は、ヒトに薬剤を送達するために、患者、介護者または医療専門家によって、概して上述のような様態で操作される。
【0011】
例示的な薬剤送達装置10は、針を通して患者に薬剤を注射するように構成されるペン型注射器として
図1~
図4に示されている。デバイス10は、遠位部分14および近位部分16を含む細長いペン形状ハウジング12を備える本体11を含む。遠位部分14は、ペンキャップ18内に受容されている。
図2を参照すると、遠位部分14は、分注動作中にその遠位出口端を通して分注されるべき薬液を保持するように構成されたリザーバまたはカートリッジ20を含む。遠位部分14の出口端には、取り外し可能なカバー25によって囲まれた注射針24を含む取り外し可能な針アセンブリ22が装備されている。ピストン26は、リザーバ20内に配置される。近位部分16内に配置された注射機構は、用量分注動作中にピストン26をリザーバ20の出口に向かって前進させて、含まれる薬剤を強制的に針端に通すように動作可能である。注射機構は、リザーバ20を通してピストン26を前進させるために、例示的にハウジング12に対して軸方向に移動可能なねじの形態である駆動部材28を含む。
【0012】
用量設定部材30は、装置10によって分注されるべき用量を設定するためにハウジング12に連結される。例示された実施形態では、用量設定部材30は、用量設定および用量分注中にハウジング12に対して長手方向回転軸AAの周りで螺旋運動する(すなわち、軸方向にかつ回転的に同時に動く)ように動作するねじ要素の形態である。
図1~
図2は、そのホームまたはゼロ用量位置でハウジング12内に完全にねじ込まれた用量設定部材30を示す。用量設定部材30は、1回の注射で装置10によって送達可能な最大用量に対応する完全に伸張された位置に到達するまで、ハウジング12から近位方向にねじ切るように動作可能である。伸張位置は、ある増分伸張位置(0.5または1単位の用量設定など)に対応する位置から、1回の注射でデバイス10によって送達可能な最大用量に対応する完全伸張位置までの間にあって、1回の注射でデバイス10によって送達可能な最小用量に対応するホームまたはゼロ位置に到達するまで、ハウジング12を遠位方向にねじ込む、任意の位置とすることができる。
【0013】
図2~
図4を参照すると、用量設定部材30がハウジング12に対して螺旋運動することを可能にするように、用量設定部材30は、ハウジング12の対応するねじ山付き内面に係合する螺旋状ねじ山付き外面を有する円筒状用量ダイヤル部材32を含む。用量ダイヤル部材32は、装置10のスリーブ34(
図2)のねじ山付き外面に係合する螺旋状ねじ山付き内面をさらに含む。ダイヤル部材32の外面は、ユーザに設定用量を示すために、投与量窓36を介して視認可能な数字などの用量指標マーキングを含む。用量設定部材30は、ダイヤル部材32の開放近位端に連結され、かつダイヤル部材32の開放41内に受容される戻り止め40によって用量ダイヤル部材32に対して軸方向にかつ回転的に係止される、管状フランジ38をさらに含む。一例では、用量設定部材30は、ダイヤル部材32の近位端の外周に配置された任意選択のカラーまたはスカート42をさらに含む。スカート42は、スロット46に受容されるタブ44によってダイヤル部材32に対して軸方向にかつ回転的に係止される。
【0014】
したがって、用量ダイヤル部材32、フランジ38、およびスカート42が全て、回転的にかつ軸方向に一緒に固定されているため、用量設定部材30はそれらのいずれかまたは全てを含むと見なすことができる。用量ダイヤル部材32は、用量の設定および薬剤の送達の推進に直接関与している。フランジ38が、ダイヤル部材32に取り付けられ、後述するように、クラッチと協働して、ダイヤル部材32を用量ボタンと選択的に連結させる。図示したように、スカート42は、ユーザが用量を設定するために用量ダイヤル部材32を回転させることができるように、本体11の外に表面を提供する。
【0015】
図18に示す実施形態では、例示されたデバイス10の用量ボタンは、
図1~
図4のスカート42および用量ボタン56の両方を組み合わせた一体的構成要素である。この実施形態では、フランジはダイヤル部材に取り付けられ、後述するクラッチと協働して、ダイヤル部材を、ボタン656として示された一体的用量ボタンと選択的に連結させる。一体的用量ボタン656の半径方向外面は、ダイヤル部材を回転させるための、デバイス本体11の外の表面を提供する。
【0016】
スカート42は、例示的に、スカート42の外側表面上に形成された複数の表面輪郭部48および環状隆起部49を含む。表面輪郭部48は、例示的に、スカート42の外側表面の周りに周方向に離間された長手方向延在リブおよび溝であり、ユーザがスカートを把持して回転させることを容易にする。代替的な実施形態では、スカート42は取り外されるか、またはダイヤル部材32と一体化され、ユーザは、用量設定のために、用量ダイヤル部材32を把持して回転させることができる。
【0017】
送達装置10は、用量ダイヤル部材32内に受容されるクラッチ52を有するアクチュエータ50を含む。クラッチ52は、その近位端に軸方向に延在するステム54を含む。アクチュエータ50は、図示したように、用量設定部材30のスカート42の近位側に配置された用量ボタン56をさらに含む。用量ボタン56は、用量ボタン56の遠位面の中央に位置する装着カラー58(
図2)を含む。カラー58は、用量ボタン56とクラッチ52を一緒に軸方向にかつ回転可能に固定するために、締まり嵌めまたは超音波溶接などによりクラッチ52のステム54に取り付けられる。
【0018】
用量ボタン56は、円盤状の近位端表面または面60と、遠位に延在し、かつ面60の外周縁の半径方向内側に離間された環状壁部分62とを含み、その間に環状リップ64を形成する。用量ボタン56の面60は、アクチュエータ50を遠位方向に押すために、手動で、すなわち、ユーザによって直接的に、力が加えられ得る押圧表面として機能する。用量ボタン56は、例示的に、近位面60の中央に位置する凹状部分66を含むが、近位面60は、代替的に平坦な表面であってもよい。付勢部材68、例示的にばねが、ボタン56の遠位表面70と管状フランジ38の近位表面72との間に配置され、アクチュエータ50および用量設定部材30を互いから軸方向に離して付勢する。用量ボタン56は、用量分注動作を開始するようにユーザによって押下可能である。一代替実施形態では、スカート42はデバイスから省略され、用量ボタン56の環状壁部分62は、図に示されたように、ダイヤル部材に対してスカートのほぼ遠位側限界に至る位置まで遠位側に延在する。
【0019】
送達装置10は、用量設定モードおよび用量分注モードの両方で動作可能である。用量設定モードの動作では、装置10によって送達されるべき所望の用量を設定するために、用量設定部材30をハウジング12に対してダイヤルする(回転させる)。近位方向へのダイヤルは、設定用量を増加させるように機能し、遠位方向へのダイヤルは、設定用量を減少させるように機能する。用量設定部材30は、用量設定動作中に設定用量の最小増分増加または減少に対応する回転増分(例えば、クリック)で調節可能である。例えば、1回の増分または「クリック」は、2分の1または1単位の薬剤と等しくなり得る。設定用量は、投与窓36を通して示されるダイヤル指標マーキングを介してユーザに視認可能である。用量ボタン56およびクラッチ52を含むアクチュエータ50は、用量設定モードでのダイヤル中に用量設定部材30と共に軸方向にかつ回転的に移動する。
【0020】
用量ダイヤル部材32、フランジ38およびスカート42(採用される場合)は、全てが互いに回転固定され、用量ダイヤル部材32とハウジング12とのねじ込み接続のために、用量設定中に回転して薬剤送達デバイス10の近位側に伸張する。この用量設定動作中、用量ボタン56は、付勢部材68によって一緒に付勢されるフランジ38およびクラッチ52の相補的スプライン74(
図2)によってスカート42に対して回転固定される。用量設定の過程で、スカート42および用量ボタン56は、ハウジング12に対して「開始」位置から「終了」位置まで螺旋状に移動する。ハウジングに対するこの回転は、薬剤送達装置10の操作によって設定される投与量に比例する。
【0021】
所望の用量が設定されてから、注射針24が、例えばユーザの皮膚を適切に貫通するように装置10を操作される。用量分注モードの動作は、用量ボタン56の近位面60に加えられる軸方向の遠位力に応答して開始される。軸方向の力は、ユーザによって用量ボタン56に直接加えられる。これにより、アクチュエータ50をハウジング12に対して軸方向に遠位に移動させる。
【0022】
アクチュエータ50の軸方向への移動動作は、付勢部材68を圧縮し、用量ボタン56と管状フランジ38との間の間隙を縮小するかまたは閉鎖する。この相対的な軸方向への移動は、クラッチ52およびフランジ38上の相補的スプライン74を分離し、それにより、アクチュエータ50、例えば用量ボタン56を、用量設定部材30に回転固定された状態から解放する。具体的には、用量設定部材30は、アクチュエータ50から回転的に連結解除され、アクチュエータ50およびハウジング12に対する用量設定部材30の後方駆動回転を可能にする。また、用量設定部材30およびアクチュエータ50は、自由に相対回転できるため、それを押すことによる用量ボタン56のユーザの係合により、アクチュエータ50は、装置ハウジング12に対して回転しないように保持される。
【0023】
アクチュエータ50がハウジング12に対して回転しない状態で軸方向に押し込まれ続けると、ダイヤル部材32が用量ボタン56に対して回転するにつれて、ダイヤル部材32がハウジング12内にねじ戻される。注射されるべき量がまだ残っていることを示す用量マーキングは、窓36を通して視認可能である。用量設定部材30が遠位にねじ止めされると、駆動部材28は、遠位に前進されて、リザーバ20を通してピストン26を押し込み、かつ針24(
図2)を通して薬剤を放出する。
【0024】
用量分注動作中に、薬剤送達装置から放出される薬剤の量は、ダイヤル部材32がハウジング12内にねじ戻される際のアクチュエータ50に対する用量設定部材30の回転運動の量に比例する。注射は、ダイヤル部材32の雌ねじがスリーブ34の対応する雄ねじの遠位端に到達したときに完了する(
図2)。次に、装置10は、
図2および
図3に示されるような準備状態またはゼロ用量位置に再び配置される。
【0025】
送達される用量は、用量送達中のアクチュエータ50に対する用量設定部材30の回転に基づいて導出され得る。この回転は、用量送達中に用量設定部材が回転するときに「カウント」される用量設定部材の増分運動を検出することにより決定され得る。
【0026】
例示的な送達装置10の設計および動作のさらなる詳細は、Medication Dispensing Apparatus with Triple Screw Threads for Mechanical Advantageと題される米国特許第7,291,132号に見出すことができ、その全体的な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。送達装置の別の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Automatic Injection Device With Delay Mechanism Including Dual Functioning Biasing Member」と題される米国特許第8,734,394号に見出すことができる自動注射装置であり、そのような装置は、薬剤送達装置内の相対回転の感知に基づいて薬剤送達装置から送達された薬剤の量を判定するように、本明細書に記載の1つ以上の様々なセンサシステムを用いて変更される。送達デバイスの別の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Medication Injector Apparatus with Drive Assembly that Facilitates Reset」と題された米国特許第7,195,616号に見出すことができる再使用可能ペン型デバイスであり、そのようなデバイスは、薬剤送達デバイス内の相対的回転の感知に基づいて薬剤送達デバイスから送達された薬剤の量を決定するように、本明細書に記載の1つ以上の様々なセンサシステムを用いて変更される。
【0027】
用量検出システムは、薬剤送達装置の部材に取り付けられた感知構成要素および被感知構成要素を使用する。「取り付けられた」(attached)という用語は、それらが本明細書に記載されるように動作可能であるように、構成要素の位置を薬剤送達装置の別の構成要素または部材に固定する任意の様態を包含する。例えば、感知構成要素は、部材上に直接配置されるか、部材内に受容されるか、部材に一体化されるか、または別様に部材と接続されることによって、薬剤送達装置の部材に取り付けられ得る。接続は、例えば、摩擦係合、スプライン、スナップまたは圧入、音波溶接または接着剤によって形成される接続を含み得る。
【0028】
「直接取り付けられた」(directly attached)という用語は、2つの構成要素、または1つの構成用途と1つの部材が、取り付け構成要素以外の中間部材を用いることなく物理的に一緒に固定される取り付けを説明するために使用される。取り付け構成要素は、取り付けを容易にするために2つの構成要素間に介在する締結具、アダプタ、または締結システムの他の部品(圧縮膜など)を備えることができる。「直接的な取り付け」は、用量ダイヤル部材32が
図2において用量ボタン56にクラッチ52によって連結される方法などの、構成要素/部材が1つ以上の中間機能的部材によって連結される取り付けとは区別される。
【0029】
「固定された」(fixed)という用語は、示される運動が起こってもまたは起こらなくてもよいことを示すために使用される。例えば、2つの部材が回転して一緒に移動することが必要とされる場合、第1の部材は第2の部材と「回転固定」(fixed rotationally)される。一態様では、部材は、構造的にではなく機能的に別の部材に対して「固定」(fixed)されてもよい。例えば、2つの部材間の摩擦係合がそれらを一緒に回転固定するようにある部材が別の部材に対して押圧されてもよいが、2つの部材は第1の部材の押圧がなければ一緒に固定され得ない。
【0030】
様々なセンサシステムが本明細書において企図される。一般に、センサシステムは感知構成要素および被感知構成要素を含む。「感知構成要素」(sensing component)という用語は、被感知構成要素の相対位置または動きを検出することができる任意の構成要素を指す。感知構成要素は、感知要素または「センサ」を、感知要素を操作するための関連する電気構成要素と共に含む。「被感知構成要素」(sensed component)は、感知構成要素が感知構成要素に対する被感知構成要素の位置および/または動きを検出することができる任意の構成要素である。用量検出システムの場合、被感知構成要素は感知構成要素に対して回転し、それによって被感知構成要素の回転運動を検出することができる。感知構成要素は1つ以上の感知素子を含むことができ、被感知構成要素は1つ以上の被感知素子を含むことができる。センサシステムは、被感知構成要素の動きを検出し、被感知構成要素の動きを表す出力を提供する。
【0031】
例示的に、用量検出システムは、本明細書に記載されるようなセンサシステムの動作に好適な電子機器アセンブリを含む。コントローラが、センサシステムに動作可能に接続され、回転センサからの出力を受信する。コントローラは、総角変位を決定するために使用される総カウント数に対して、最初のものから最後のものまでのカウントを示す回転センサからの生成信号を受信し始める。コントローラは、薬剤送達デバイスの動作によって送達された用量を出力から決定するために使用され得る、用量設定部材の角運動を示すデータを受信するように構成され得る。コントローラは、薬剤送達デバイスの動作によって送達された用量を出力から決定するように構成され得る。コントローラは、プロセッサ、電源、メモリ、マイクロコントローラなどの慣用の構成要素を含み得る。代替的に、少なくともいくつかの構成要素は、コンピュータ、スマートフォン、または他の装置等によって、別々に提供され得る。次に、有線または無線接続などによって適切なときに外部コントローラ構成要素をセンサシステムに動作可能に接続するための手段が提供される。
【0032】
例示的な電子機器アセンブリ76が、
図5に示され、複数の電子部品を有するフレキシブルプリント回路基板(FPCB)を含み得る。電子機器アセンブリは、感知された回転を表す信号をセンサから受信するためにプロセッサと動作可能に通信する1つ以上のセンサを含むセンサシステムを備える。電子機器アセンブリ76の回路基板は、少なくとも1つの処理コアおよび内部メモリを備えるコントローラとして、マイクロコントローラユニット(MCU)をさらに含む。このシステムは、構成要素に電力を供給するための電池、例示的にコイン型電池を含む。電子機器アセンブリ76のコントローラは、アクチュエータに対する用量設定部材の検出された回転に基づいて、用量設定および/もしくは用量送達中の用量設定構成要素の角運動を検出すること、ならびに/または薬剤送達デバイス10によって送達された用量を検出すること、を含む、本明細書に記載の動作を実行するように動作する制御ロジックを含む。電子機器アセンブリの構成要素の多くは、用量ボタン56の近位に位置するコンパートメント78に含まれていてもよい。
【0033】
電子機器アセンブリ76のコントローラは、用量送達を決定するために使用された総角運動および/または検出された用量送達をローカルメモリ(例えば、内部フラッシュメモリまたは搭載EEPROM)に格納するように動作する。コントローラはさらに、総カウント、総角運動、および/または検出された用量を表す信号を、ユーザのスマートフォンなどの、対にされた遠隔電子デバイスに無線送信するように動作する。送信は、例えば、Bluetooth低エネルギー(BLE)または他の好適な短距離もしくは長距離無線通信プロトコルを介して行われることができる。例示的に、BLE制御ロジックおよびコントローラは、同じ回路上で一体化されている。
【0034】
用量検出システムは、2つの部材間の相対回転運動を検出することを含む。送達される投与量と既知の関係を有する回転の程度により、センサシステムは、用量注射の開始から用量注射の終了までの角度移動量を検出するように動作する。例えば、ペン型注射器で典型的な関係は、用量設定部材の角変位18°が1単位用量に等しいというものであるが、他の角度関係もまた適切であり、例えば、9、10、15、20、24または36度を1単位または0.5単位に使用し得る。センサシステムは、用量送達中の用量設定部材の全角度変位を判定するように動作可能である。したがって、角度変位が90°であれば、5単位の用量が送達されたことになる。
【0035】
角度変位は、注射が進むにつれて用量の増分をカウントすることによって判定される。例えば、感知システムは、各繰り返しが既定の程度の回転角度の指標となるように、被感知要素の繰り返しパターンを使用することができる。都合のよいことに、パターンは、各繰り返しが薬剤送達装置を用いて設定され得る用量の最小増分に対応するように確立することができる。
【0036】
センサシステム構成要素は、恒久的にまたは取り外し可能に薬剤送達装置に取り付けることができる。例示的な実施形態では、用量検出システムの構成要素の少なくともいくつかは、薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるモジュールの形態で提供される。これは、これらのセンサ構成要素を1つより多くのペン型注射器で使用できるようにするという利点を有する。
【0037】
センサシステムは、用量送達中に、被感知構成要素、したがって用量設定部材の相対回転を検出し、それから薬剤送達装置によって送達される投与量が判定される。例示的な実施形態では、回転センサが、アクチュエータに取り付けられ、回転固定(rotationally fixed)される。アクチュエータは、用量送達中に薬剤送達装置の本体に対して回転しない。この実施形態では、被感知構成要素が、用量送達中にアクチュエータおよび装置本体に対して回転する用量設定部材に取り付けられ、回転固定(rotationally fixed)される。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、被感知構成要素は、互いに対して周方向に配置された複数の近位側延在突起部を有するリング構造を含む。突起部は、回転センサの可動要素を偏向させる形状および大きさとされている。本明細書に記載の実施形態は、送達デバイスの用量ボタンに取り外し可能に取り付け可能であるか、または
図10~
図11に示された実施形態では、送達デバイスの用量ボタン内に統合されるモジュールのために提供され得る。
【0038】
図5を参照すると、装置10等の薬剤送達装置との組み合わせにおいて有用なモジュール82を含む用量送達検出システム80が概略的な形態で示されている。モジュール82は、回転センサ86と、プロセッサ、メモリ、バッテリなどの他の関連構成要素とを含む、全体を84で示されたセンサシステムを担持する。モジュール82は、アクチュエータに取り外し可能に取り付けられ得る別個の構成要素として提供される。
【0039】
用量検出モジュール82は、用量ボタン56に取り付けられた本体88を含む。本体88は、例示的に、円筒状の側壁90と、側壁90にわたって広がりそれを密封する頂壁92とを含む。例として、
図5では、側壁90が、モジュール82を用量ボタン56に取り付ける内方向延在タブ94を有するように概略的に示されている。これにより、モジュール82は、モジュールを押すと設定用量を送達するように、用量ボタン56に取り付けられる。
【0040】
用量検出モジュール82は、代替的に、スナップまたは圧入、ねじインターフェースなどの任意の好適な締結手段を介して用量ボタン56に取り付けられ得るが、但し、一態様では、モジュール82を第1の薬剤送達装置から取り外し、その後、第2の薬剤送達装置に取り付けることができるものとする。取り付けは用量ボタン56上のいずれの位置であってよいが、但し、本明細書で論じるように、用量ボタン56が用量設定部材30に対して軸方向に任意の必要量を移動することができるものとする。
【0041】
用量送達中、用量設定部材30は用量ボタン56およびモジュール82に対して自由に回転できる。例示的な実施形態では、モジュール82は用量ボタン56と回転固定(rotationally fixed)されており、用量送達中は回転しない。これは、例えば、
図5のタブ94を用いて、または、用量ボタン56に対してモジュール82が軸方向に移動したときにモジュール本体88および用量ボタン56上の互いに向かい合うスプラインまたは他の表面特徴部を係合させることによって、構造的に提供され得る。別の実施形態では、モジュールの遠位への押圧が、モジュール82と用量ボタン56との間に十分な摩擦係合をもたらし、用量送達中にモジュール82と用量ボタン56一緒に回転固定されたままにする。
【0042】
頂壁92は、用量ボタン56の面60から離間され、それによって、電子機器アセンブリ76の一部または全てを含むコンパートメント78を提供する。コンパートメント78は、チャンバ96を画定し、底部が開口していてもよいか、または底壁98などによって囲まれていてもよい。底壁98は、用量ボタン56の面60に直接当接するように配置することができる。代替的に、底壁98が存在する場合、それは用量ボタン56から離間されてもよく、モジュール82と用量ボタン56との間の他の接触は、モジュール82に加えられる軸方向力が用量ボタン56に伝達されるように使用され得る。
【0043】
本明細書にさらに開示されているのは、用量設定部材とデバイス本体との間の相対的回転に基づいて、送達された用量を決定するように動作可能な用量検出システムである。用量検出システムは、装置本体に取り付けられ、用量送達中に回転軸の周りで装置本体に対して回転可能な用量設定部材を利用する。被感知要素は、用量設定部材に取り付けられて回転固定される。アクチュエータは、装置本体に取り付けられ、用量送達中に装置本体に対して回転しないように保持される。それにより、被感知要素は、送達される用量の量に関連して用量送達中にアクチュエータに対して回転する。
【0044】
用量検出システムは、アクチュエータに取り付けられた回転センサを含むセンサシステムを備える。被感知要素は、用量設定部材の回転軸の周りに半径方向に離間した表面特徴部を含む。表面特徴部は、1単位の用量の相当物に相関するように構成され得るが、他の角度関係も適切であり、例えば、9、10、15、18、20、24または36度を1単位または0.5単位に使用し得る。回転センサは、アクチュエータに取り付けられ、被感知要素の表面特徴部の方向において休止およびばね付勢し得る接触部分を有する可動要素を含む。これにより、接触面は、用量送達中のアクチュエータに対する被感知要素の回転中に表面特徴部にわたって移動するように位置決めされる。回転センサは、表面特徴部の上での接触部分の動きに応答し、用量設定部材の回転に対応する信号を生成する。コントローラが、回転センサによって生成された信号に応答して、用量送達中のアクチュエータに対する用量設定部材の検出された回転に基づいて、用量送達の量を決定するために、用量カウントを決定する。
【0045】
表面特徴部は、回転センサによって検出可能な任意のものを含み得る。前述したように、センサシステムは、例えば、触覚、光学、電気および磁気特性を含む様々な被感知特性に基づくことができる。一態様では、表面特徴部は、用量設定部材がアクチュエータに対して回転する際の増分運動の検出を可能にする物理的特徴である。
【0046】
接触面は、回転中に接触面と物理的特徴との間の適切な接触を確保するために、物理的特徴に対して付勢される。一実施形態では、可動部材は、接触面から変位した位置においてアクチュエータに取り付けられた1つの部分を有する弾性部材である。一例では、可動部材は、一端でアクチュエータに取り付けられ、他端に接触面を有するビームを備える追従部材である。ビームは、曲げられて接触面を表面特徴部の方向に付勢する。あるいは、可動部材は、様々な他の方法のいずれかで付勢され得る。弾性ビームの使用に加えて、例えば、ばね部品の使用により、付勢が提供されてもよい。そのようなばね構成要素は、例えば、圧縮、引張、またはねじりコイルばねを備えてもよい。さらに他の実施形態では、可動部材は、可動要素を支える別個の弾性部材またはばね構成要素によって、被感知要素の表面特徴部に対して付勢され得る。
【0047】
一実施形態では、表面特徴部は、被感知要素の回転軸の周りに断続的に離間された均一な要素である。特定の態様では、表面特徴部は、介在する凹部によって分離された等半径方向に離間された突起である。可動要素の接触面は、突起部を乗り越えるように、かつ介在凹部に対して内側に動くように配置される。可動要素は、例えば、突起部に沿って外側に曲がる弾性ビーム、または突起部上に乗り上がる並進部材であり得る。
【0048】
一態様では、突起は、用量送達中に被感知要素の回転とは反対の方向に上向きに傾斜して、突起に沿った突起上での接触面の移動を促進する。他の態様では、突起は、アクチュエータに対する被感知要素の回転方向の検出を提供するために、反対の角度方向に異なるプロファイルを備えている。突起部は、可動要素によって検出可能な任意の方向に延在し得る。例えば、突起は、軸方向または半径方向に延びていてもよい。軸方向の突起は、近位または遠位に延びていてもよい。半径方向の突起は、内側または外側に延びていてもよい。
【0049】
被感知要素は、用量設定部材に取り付けられる。薬剤送達装置に応じて、被感知要素は、スカート、フランジまたは用量ダイヤル、または送達された用量に関連して用量送達中に装置本体に対して回転する任意の他の構成要素に取り付けられてもよい。
【0050】
一態様では、用量検出システム80の感知システムは、元々、統合システムとして薬剤送達装置に組み込まれている。他の態様では、モジュール形態の用量検出システムが開示されている。取り外し可能に取り付けられたモジュールの使用は、アクチュエータおよび/または用量設定部材が薬剤装置ハウジングの外部にある部分を含む薬剤送達装置と共に使用するのに特に適している。これらの外部部分は、本明細書に記載されるように、用量ボタンなどのアクチュエータへのモジュールの直接的な取り付け、および/またはスカート、フランジ、または用量ダイヤル部材などの用量設定部材への被感知要素の取り付けを可能にする。あるいは、被感知要素は、薬剤送達装置と一体であり、モジュールは、取り外し可能に取り付けられる。これは、回転センサおよびコントローラを含む、より複雑かつ高価な電子機器が異なる薬剤送達デバイスで再利用され得るという利点を有する。比較すると、被感知要素は、比較的単純な特徴、例えば半径方向に離間された突起を使用してもよく、これは、薬剤送達装置のコストを大幅に増加させない。
【0051】
例示的な用量検出システムを組み込んだ例示的な薬剤送達デバイスを
図5~
図9に示す。デバイスは、用量ダイヤル部材32および/またはフランジ38などの用量設定デバイス30の構成要素のうちの1つ以上から延在する被感知要素の表面特徴部を検出するセンサシステムを含む。特に、用量検出システム80のセンサシステム84は、回転センサ86と、表面特徴部を有する被感知要素99とを含む。表面特徴部の位置および構成の例として、説明例に、フランジの軸方向表面特徴部(例えば、
図6)、用量ダイヤル部材の軸方向表面特徴部(例えば、
図10)、用量ダイヤル部材の半径方向外側表面特徴部(例えば、
図20)、およびフランジの半径方向内側表面特徴部(例えば、
図23)が示されている。
【0052】
図6に示す一例では、被感知要素99は、フランジ38に連結されたリング100を含む。リング100は、フランジ38(図示)または用量ダイヤル部材32に接着剤および/または留め具で永久的に固定され得ること、あるいは、例えば、機械的留め具または担持構成要素を用いてフランジ38または用量ダイヤル部材に取り外し可能に取り付けられるように構成され得ることが理解されよう。リングは省略されてもよく、表面特徴部は、例えば、成形または積層造形によるなど、(例えば
図17または
図23に示された)単一部材としてフランジ38またはダイヤル部材32から一体的に形成されてもよい。
【0053】
図6および
図7に示すように、表面特徴部101は一連の斜面状突起部102を含む。回転センサ86は、1つ以上の可動要素103(
図5)を含み、この例では、用量ボタン56の面60によって画定されたボタン開口部105を通して受容され、フランジ38が用量ボタン56に対して回転するときに、突起部102として示された表面特徴部に休止することができる遠位接触面111を有するように配置された、追従部材ピン104を備える。ピン104は、遠位底壁98によって画定された、ボタン開口部105と同軸整列するモジュール開口部107を通って延在するように示されている。モジュール開口部およびボタン開口部をそれぞれ画定する内側表面は、軸方向運動中に2つの位置に沿ってピンにベアリング支持を提供するように構成され得る。開口部105、107のそのようなサイズおよび構成により、ピンの線形軸方向運動を強化して、採用されたセンサまたはスイッチからの一貫性のない読み取り値を低減し得る。誤った読み取り値を低減するための冗長的感知のために、1つを超えるピンと、それぞれの構成要素によって画定された対応する開口部とを利用し得る。
【0054】
ピン104は、接触面111と用量ボタン56との間に受容されたピンフランジ106を含み得る。コイルばね108が、ピンフランジ106と用量ボタン56との間に配置され、突起部102の遠位方向にピン104を付勢する。用量送達中にフランジ38が回転すると、ピンおよび用量ボタンはそれらの相対位置を維持し、ピン104の接触面111は、コイルばね108の付勢力に抗して突起部102として示された各表面特徴部上に乗り上げる。次いで、ピン104は、隣接する突起部の間の各凹部110内に落ち込む。それによって、ピン104は、突起部および凹部の輪郭に従う追従部材として動作する。
【0055】
回転センサ86は、突起部102を乗り越えて凹部110内に落ち込むときのピン104の動きを検出するように配置された感知要素114をさらに含む。感知要素114は、ピン104の並進運動を検出するように動作可能な様々な形態で提供され得る。例として、感知要素114は、
図5では、ピン104が突起部102を乗り越える都度、近位方向におけるピン104の軸方向運動を検出するように動作するマイクロスイッチを含むものとして示されている。この作動により、リング100の突起部/凹部対を通過する都度、マイクロスイッチのオン/オフまたはオフ/オン設定を連続的に変更することになる。
【0056】
前述した方法で、回転センサ86は、用量送達中に感知要素114をトリガする突起部の数をカウントすることにより、用量設定部材の角運動を検出する。回転センサ86は、この角運動を示す信号を生成し、これらの信号は、コントローラが使用して、用量送達の量を決定するために使用し得る、用量送達中の用量設定部材の総回転を決定する。一例では、回転センサ86は、カウント数を示す信号を生成し、コントローラは生成された信号を受信する。コントローラは、カウント数を内部メモリに保存し得、かつ/またはカウント数を外部デバイスに電子的に送信し得る。コントローラは、カウント数を、カウント数を総角運動、したがって送達された用量に相関させる内部データベースと比較し得る。決定された角運動および/または送達された用量は、電子機器アセンブリの一部としてのローカルディスプレイまたはインジケータシステムに表示され得(数字など)、かつ/または外部デバイスに電子的に送信され得る。
【0057】
図8は、放射状に離間された突起部102と、連続する突起部および凹部に沿って乗り進むピン104を備える可動部材103とを同様に使用する代替用量検出システムを示す。
図8に示すように、各可動部材103は、回転軸の周りに放射状に離間された表面特徴部101、例えば突起部102の上を動く接触面116を含む。ピン104の接触面116は、
図8では、ピン104が突起部102を容易に横切って摺動することを可能にする耐久性のある低摩擦材料でできていることが望ましい拡大端部分118を含むものとして示されている。ピンの断面積よりも大きい断面積を有する拡大端部分118。また、
図8に示すように、突起部102は、用量設定部材の、矢印122で示された回転方向と反対の方向に上向きに傾斜する表面120を伴って形成され得る。これにより、突起部の上での追従部材の動きがさらに容易になる。
【0058】
別の態様では、突起部102の反対側を傾斜させて、用量設定部材の反対方向の回転を可能にし得る。さらに、突起部の両側に異なる傾斜角を提供して、用量検出システムが回転方向を検出することを可能にし得る。その一方、突起部の反対側は、より急角度として、他方の方向での回転を防ぐことができる。
【0059】
本明細書に記載されるのは、アクチュエータをデバイス本体に対して遠位側に動かして、用量設定モードまたは休止位置から用量送達モードに移行させる実施形態である。近位側に変位した状態では、被感知要素がアクチュエータに対して用量送達とは反対の方向に回転することを可能にする1つの方法として、追従部材を突起部から分離させ得る。しかしながら、やはり説明したように、特定の実施形態では、アクチュエータは、用量設定中に用量設定部材に回転固定されている。
【0060】
図8には、用量送達中のアクチュエータに対する被感知要素の回転に関連する振動を検出することにより動作する代替用量検出システムが示されている。被感知要素99が可動部材103に対して方向122に回転すると、接触面116は、ピン104を用量設定部材から遠ざけ、付勢部材、例えばバネ108に押し付ける。一旦接触面116が突起部の頂部を通過すると、付勢部材は追従部材を後続の凹部110内に迅速に押し下げる。
図8を参照すると、被感知要素99が方向122にさらに動くと、ばね108はピン104を凹部124内に押し下げ、そこで、次の凹部124の底部との接触により突然停止される。この突然の停止には、回転センサによって検出される振動が伴う。
【0061】
例えば、
図8には、ピン104の近位端に取り付けられ、回転加速度計128を担持する支持体126が示されている。回転加速度計128は、主に、被感知要素の回転を示す振動を検出するために設けられている。システムの動作中、加速度計128は、突起部の頂部を越えて次の凹部に落ち込むピン104の通過に関連する各振動を検出する。加速度計128は、振動を検出することができる任意のタイプのものとすることができ、特定の態様では、3軸加速度計を備える。本明細書で使用される場合、この加速度計は、特定のタイプの加速度計を示唆するのではなく、被感知要素の回転を検出するのに使用される加速度計としてそれを区別するために、「回転加速度計」と称される。回転振動を検出できる他のセンサも使用され得る。
【0062】
また、
図8には、回転加速度計128と併せて有用な第2の支持体130および第2の加速度計132を含む任意選択のセンサ構成要素が示されている。本明細書で使用される場合、第2の加速度計は、特定のタイプの加速度計を示唆するのではなく、バックグラウンド振動を検出するのに使用される加速度計としてそれを区別するために、「バックグラウンド加速度計」と称される。バックグラウンド加速度計132は、主に、薬剤送達デバイス全体の動きによって惹起されるような、バックグラウンド振動を検出するために設けられ、振動は、その被感知要素の回転を示さない。この目的のために、バックグラウンド加速度計132は、ピン104は用量ボタン56の開口部内に摺動可能に受容されているなどして、ピン104から比較的隔離される。
【0063】
用量ボタン56に対するピン104の有意な軸方向動きは、バックグラウンド加速度計132によってよりも回転加速度計128によって、より強く感知される。回転加速度計によって感知された振動が、バックグラウンド加速度計によって感知されたものと実質的に同じである場合、被感知要素の回転は示されない。これに対して、所定の時間に、回転加速度計によって検出された振動の量が、バックグラウンド加速度計によって検出されたものよりも実質的に大きい場合、被感知要素の回転が示される。コントローラは、検出された回転振動とバックグラウンド振動とを比較して、用量送達中のアクチュエータに対する被感知要素の回転を示す振動を識別する。
【0064】
被感知要素の回転中の追従部材の動作は、関係音にも関連付けられ得る。特に、ピン104が凹部124の底部に衝突することにより、独特の音がする。代替用量検出システムは、この音を利用して、用量ボタン56に対する被感知要素99の回転を検出する。例として、
図8には、代替感知システムの構成要素を形成するマイクロホン134も示されている。被感知要素の回転の指標となるように予め決定された音を検出すると、回転センサは、用量送達に関連する被感知要素の回転を識別する信号を生成する。回転音を他の音と区別できるために、追加のバックグラウンド音マイクロホンを使用し得る。
【0065】
図8に示すように、追従部材は、例えば、コイルばねによって付勢され得る。あるいは、追従部材は、他の様々な方法で表面特徴部に対して付勢され得る。例えば、弾性部材を使用して、ピン104を突起部102に対して付勢し得る。
図9に示したように、弾性部材136が、一端で用量ボタン56の下面138に取り付けられる。弾性部材136は、反対側の端部に、ピン104の接触面116の拡大端部分に休止する部分140を含む。突起部の上での接触面116の動きにより、ピンは弾性部材136の下向きに反して上向きに並進し、それによって、接触面116は表面特徴部に対する位置に維持される。例示的に、ピン104の代わりに、追従部材は弾性部材136を備えてもよく、接触面は端部部分140に配置されてもよい。
【0066】
ここで
図1~2を参照すると、デバイスの操作によって設定された投与の量を決定するために使用されるものとしてさらに記載される、感知システムを装備した薬剤送達デバイスが示されている。そのような量は、薬剤送達デバイスの部材間の投与量設定中の相対的な回転移動の感知に基づいて決定され、感知された移動は、設定された投与の量に適用可能であるとして相関する。異なる実施形態では、感知システムは、デバイスの操作によって設定された投与量および送達された投与量のうちの少なくとも一方の量、あるいは代替的に、デバイスの操作によって設定された投与の量および送達された投与の量の両方を決定するように構成されている。
【0067】
図10~
図11は、モジュールではなく、用量ボタン256内に配置され、回転センサ286を含む用量検出センサシステム284を有する、ここでは210として参照されているデバイスの近位部分を示す。デバイス210は、電子機器アセンブリ内の電子部品の少なくとも一部分を含む、デバイス10を参照して説明されたような用量設定および用量分注のために動作する同じ構成要素の多くを含み、そのような構成要素には同じ対応する説明がなされる。デバイス210は、統合用量検出感知システム内のデバイスとして示され、そのような感知システムは、用量ボタンへの取り外し可能な取り付けのためのモジュール内に組み込まれ得る。
【0068】
用量設定部材230は、デバイス210によって分注される用量を設定するためにデバイスハウジング212に連結されている。用量設定部材230は、ハウジング212から近位方向に、1回の注射で装置210によって送達可能な最大用量に対応する完全に延長された位置に到達するまで、ねじ切るように動作可能である。用量設定部材230の円筒形用量ダイヤル部材232は、ハウジング212の対応するねじ山付き内側表面と係合する螺旋形ねじ山付き外側表面を含み、用量設定部材230はハウジング212に対して螺旋運動することが可能となる。用量ダイヤル部材232は、
図2のスリーブ34などの、デバイス210のスリーブのねじ山付き外側表面と係合する螺旋形ねじ山付き内側表面を含む。ダイヤル部材232の外側表面は、ユーザに設定用量を示すために、投与量窓236を通して視認可能な用量指標マーキングを含む。用量設定部材230の管状フランジ238は、ダイヤル部材232の開放近位端内に連結され、例えば、
図2に示すように、ダイヤル部材232の開口部内に受容されている戻り止めによって、用量ダイヤル部材232に軸方向にかつ回転的に係止されている。
【0069】
送達デバイス210のアクチュエータ250は、用量ダイヤル部材232内に受容されているクラッチ252を含む。クラッチ252の近位端は、その近位端から軸方向に延在するステム254を含む。アクチュエータ250の用量ボタン256は、図示したように、用量設定部材230の近位側に配置されている。用量ボタン256の装着カラー258は、締まり嵌めまたは超音波溶接などで、クラッチ252のステム254に取り付けられ、用量ボタン256とクラッチ252とを一緒に軸方向にかつ回転可能に固定する。例示的にばねである付勢部材268は、用量ボタンの装着カラー258の遠位面と用量設定部材の管状フランジ238の近位面との間に配置され、アクチュエータ250および用量設定部材230を軸方向で互いに遠ざける。用量ボタン256は、用量分注動作を開始するようにユーザによって押下可能である。付勢部材268は、用量ボタン256を(
図10に示すような)近位の第1の位置にある付勢し、用量ボタン256は、用量設定動作の間、ユーザが、用量分注動作のために、部材268の付勢力に打ち勝って用量ボタン256を(
図11に示すような)遠位の第2の位置まで動かすのに十分に大きい軸方向力を加えるまで、そこに留まる。
【0070】
用量ボタン256は、ディスク状近位端面260を有する上方近位壁261と、近位壁261から遠位側に延在してボタンハウジング内腔265を画定する環状壁部分262とを含む。用量ボタン256の面260は、アクチュエータ250を遠位方向に押すために力が手動で、すなわち、ユーザによって直接的に加えられ得る、押圧面として機能する。用量ボタン256は、近位壁261から軸方向に離間された遠位壁263を含む。遠位壁263は、内腔265を近位および遠位の2つの内腔部分に少なくとも部分的に分割し得る。用量ボタン256の装着カラー258は、クラッチ252のステム254との取り付けのために、遠位壁263の中間位置から遠位側に延在するように示されている。一例では、表面特徴部301は、内腔265内の、付勢部材268の半径方向外側に配置されている。図示されているように、回転センサおよびコントローラは、内腔265内に配置されている。
【0071】
遠位壁263は、センサシステムの一部分が遠位壁263を超えて遠位側に延在することを可能にするように構成され得る。遠位壁263は、別個の開口部を含んでもよいし、
図10~
図11に示すように、環状壁部分262の一部分から内腔265を横切って部分的に延在し、環状壁部分の反対側の端部の手前で止まって、軸方向開口部269を画定してもよい。軸方向開口部269は、軸AAから外側端部に向かって半径方向で離間し得、開口部269を通って延在する回転センサが回転軸AAの周りに放射状に離間された表面特徴部301の上に配置される。電子機器アセンブリ276は、用量ボタン256内に収容されて示されている。回路基板325は、複数の電子部品を含み、遠位壁263の近位面上に取り付けられて示されている。センサシステム284は、感知された回転を表す信号をセンサから受信するために、回路基板のコントローラのプロセッサと動作可能に通信する回転センサ286を含む。回転センサ286は、回路基板の遠位面に取り付けられて示されている。電子機器アセンブリ276のコントローラは、回転センサ286および内部メモリと電気通信する少なくとも1つの処理コアを含む。アセンブリ276は、電子部品に電力を供給するためのバッテリB、例示的にはコイン電池を含む。コントローラは、アクチュエータに対する用量設定部材の検出された回転に基づいて、薬剤送達デバイスによって送達された用量を検出することを含む、本明細書に記載の動作を実行するように動作する制御ロジックを含む。電子機器アセンブリ276内の構成要素のいくつかは、例示のみを目的として非接続として示されており、実際には、
図10に297で示すように、および他の図面に示すように、当該分野において理解されるように、コネクタ、ワイヤ、またはコンジットなどによって、互いに電気的に接続されている。
【0072】
回転センサ286を有するセンサシステム284は、用量ダイヤル部材232(図示)および/またはフランジ238などの用量設定デバイス230の構成要素のうちの1つ以上から延在する表面特徴部301を検出するように構成されている。例えば、
図14を参照すると、リング形状の用量設定デバイス230の用量ダイヤル部材232の軸方向端面233は、軸方向端面に沿って互いに放射状に離間された突起部302として示された表面特徴部301を画定し、突起部は、介在凹部310によって分離されている。図示の例では、18個の突起部があり、各々は、隣接するものから20度離間されている。
【0073】
用量ボタン256は、2つの位置の間でデバイスハウジング212に対して可能である。
図10では、用量ボタン256は近位位置にあり、そこでは、デバイスは、用量ボタンを使用して用量を設定することができる第1の動作の用量設定モードにある。
図11では、用量ボタン256は遠位位置にあり、そこでは、デバイスは、用量ボタンを使用して用量を送達することができる第2の動作の用量送達モードにある。特定の実施形態では、用量ボタン256は、用量設定モードでは用量設定部材に回転固定され、用量ボタン256を回転させて用量を設定することができる。この位置では、回転センサ286は、表面特徴部301から軸方向に変位されている。用量設定モードでは、回転センサ286は動作不能のままであり得、電子機器アセンブリは、電源オフまたは低電力状態のままであり得る。
【0074】
近位壁261を押すと、用量ボタン256は、
図11に示すように、ハウジング212に対して遠位側に前進し、ばね268を圧縮する。用量ボタン256を遠位側に押し続けると、用量ダイヤル232をハウジング212に対して螺旋方向に逆駆動することになる。その結果、用量ダイヤル232およびフランジ238が、軸方向に動く用量ボタンによって駆動されて回転する。用量検出システムは、用量ボタンが押されているときにカウントするためにのみ動作可能であり得る。電子機器アセンブリは、被感知要素の表面特徴部による回転センサのトリガによって惹起されるカウント間の経過時間を決定するために、クロックまたはタイマを含み得る。一定期間、トリガアームが作動されないとき、つまり、コントローラによってカウントが検出されないとき、これを使用して、用量が完了したことを示すことができる。
【0075】
表面特徴部301のうちの最初の1つを感知すると、コントローラは、電子機器アセンブリ276を起動またはより強力な状態もしくはフルパワー状態に作動させるように構成されている。起動トリガ特性は、用量分注イベントが起こっていないときの不用意な電力損失または使用を最小化するために、用量感知用の電子部品の電源を入れるための電源(バッテリとして図示)からの電力伝送を可能にするように構成されている。他の実施形態では、別個の起動スイッチが用量ボタンハウジング内に設置および構成され、用量ボタン256がその遠位位置にあるときにトリガされ得る。この場合、起動スイッチは、例えば、フランジの上端に沿って配置され得る。電子機器アセンブリの作動後、コントローラは、総角度変位、したがって送達された用量を決定するのに使用される総カウント数の最初から最後のものまでのカウントを示す、生成された信号を回転センサから受信し始める。
【0076】
図12~
図13は、デバイス210に設けられた回転センサ286の一例を示す。例えば、回転センサ286は、センサ本体320と、1対の接触部324、326を備える可動要素とを含む。接触部324、326は、弾性である、つまり1つの状態において自然な構成を有し、力がかかると別の状態に動くまたは撓み、力が取り除かれると自然な構成に戻ることができ得る。センサ本体320は、回路基板325に取り付けられて示され、電子機器アセンブリのコントローラに動作可能に連結され、接触部324、326の接触または分離によって規定される電子特性(電圧、抵抗、電流信号)のセンサ信号をコントローラへ送信するように構成されている。接触部324、326は、表面特徴部301との係合中に接触部の少なくとも一方(接触部326として図示)が撓むことにより、動作状態で互いに接触するまで、自然状態で離間したままであり得る。あるいは、接触部324、326の両方は、表面特徴部との係合時に撓み、撓みにより互いに接触するように構成され得る。接触部326が表面特徴部301と係合した後、接触部326は、接触部324と離間した関係にある自然状態に戻り得る。あるいは、接触部324、326は、自然状態で互いに接触したままであり、表面特徴部301との係合により接触関係から分離し、表面特徴部の通過後に接触関係にある自然状態に戻るように構成され得る。
図12によれば、デバイスがその第1の動作の用量設定モードにある近位位置に用量ボタン256があるとき、回転センサ286は近位位置にある。
図13によれば、デバイスがその第2の動作の用量送達モードにある遠位位置に用量ボタン256があるとき、回転センサ286は遠位位置にある。
【0077】
図12~
図13は、接触部324、326の例示的な構成を示しているが、接触部の他の構成を利用し得る。第1の接触部324は、センサ本体320から軸方向に延在して示されている。第1の接触部324は、センサ本体320に連結された第1のセグメント330と、第1のセグメント330から延在する第2のセグメント332とを含む。第1のセグメント330は、センサ本体320から軸方向に延在して示され、第2のセグメント332は、エルボ接続部で第1のセグメント330から半径方向に延在して示されている。第2の接触部326は、センサ本体320に連結された第1のセグメント340と、第1のセグメント340から延在する第2のセグメント342とを含む。第1のセグメント340は、センサ本体320から軸方向に延在して示されている。第2のセグメント342は、エルボ接続部で第1のセグメント340からほぼ半径方向に延在して示されている。第2のセグメント342は、第1のセグメント340から順番に連結された、アーム部分344、移行係合部分346、および先端接触部分348を含む。アーム部分344は、先端接触部分348を第1の接触部の第2のセグメント332の下に配置するような大きさおよび形状とされている。アーム部分344は、第1のセグメント342から軸方向および半径方向に傾斜して延在して示されている。移行係合部分346は、表面特徴部301に直接係合するように構成されている。移行係合部分346は、第2のセグメント342を遠位方向から近位方向に移行させるために、U字形、V字形、または傾斜形状を有し得る。先端接触部分348は、半径方向に延在し、自然状態では、第1の接触部324の第2のセグメント332に対してほぼ平行でかつ離間し得る。移行係合部分346の形状は、回転する用量ダイヤル部材をつかえさせることなく、表面特徴部301に沿って接触部を摺動させることを可能にし得る。移行係合部分346の形状の深さは、その遠位面が表面特徴部301と係合すると、第2の接触部326が、第1のセグメントとのエルボで近位方向に撓み、先端接触部分348の近位面を第1の接触部324の第2のセグメント332の遠位面と接触させるような大きさとされている。このよう接触部は、ある電子特性のセンサ信号を生成するのに十分である。あるいは、接触部326など、接触部のうちの一方を採用することができ、表面特徴部は、金属材料で被覆されるなどの導電性を有し、本明細書に記載したように、接触部と表面特徴部との係合時に回転センサが信号を生成できるようにすることができる。
【0078】
図15~
図16は、ここでは410として参照されているデバイスの近位部分を示す。デバイス410は、用量検出システム用の電子機器アセンブリ内の電子部品のうちの少なくとも一部分を含む、デバイス10または210を参照して説明したような用量設定および用量分注のために動作する同じ構成要素の多くを含み、そのような構成要素には同じ対応する説明がなされる。デバイス410は、統合感知システム内のデバイスとして示されているが、そのような感知システムは、用量ボタンへの取り外し可能な取り付けのためのモジュールに組み込まれてもよい。デバイス410は、例えば、デバイスハウジング412、用量ダイヤル部材432、フランジ438、および電子機器アセンブリ476など、デバイス210と同じデバイス構成要素を有し得るが、但し、後述するように、感知に使用される回転センサ構成および表面特徴部を有する用量設定部材については異なる。図示したように、回転センサおよびコントローラはボタンの内腔内に配置されている。
【0079】
本明細書に記載のいずれかのモジュールおよび/またはデバイスと共に使用し得る用量検出センサシステム484の、全体を486として参照される回転センサの別の例。例えば、回転センサ486は、センサ本体490と、トリガアーム492を備える可動要素とを含むマイクロスイッチである。前の図を参照すると、回転軸AAの周りに放射状に離間された表面特徴部501の上に配置するために、回転センサ486のトリガアーム492が貫通するために、用量ボタンハウジングは、軸AAから外側端部に向かって半径方向で離間された軸方向開口部を含むように構成されている。トリガアーム492は、トリガアーム492を自然状態位置から離れた位置で動作状態になるまで押しやる力に克服されるまで、内部ばねによって自然状態に付勢されている。センサ本体490は、回路基板525に取り付けられ、電子機器アセンブリのコントローラに動作可能に連結され、トリガアームの動きによって規定される電子特性(電圧、抵抗、電流信号)のセンサ信号をコントローラへ送信するように構成されている。トリガアーム492は、表面特徴部501と係合するまで自然状態のままであり得る。トリガアーム492が表面特徴部501と係合した後、トリガアーム492は自然状態に戻り得る。
図15によれば、デバイス410がその第1の動作の用量設定モードにある近位位置に用量ボタン456が付勢され得るとき、回転センサ486は近位位置にある。付勢部材(図示せず)は、用量ボタンと用量設定部材との間に軸方向に配置することができ、表面特徴部501は、
図10~
図11に示すように、付勢部材の半径方向外側に配置されている。
図16によれば、デバイスがその第2の動作の用量送達モードにある遠位位置に用量ボタン456があるとき、回転センサ486は遠位位置にある。
【0080】
図17は、表面特徴部501を有する用量設定部材の一例を示す。一例では、フランジ438の近位端の軸方向表面437は、成形部品または積層造形で作られた部品など、介在凹部510を伴う突起部502として示されている表面特徴部と一体的に画定され得る。別の例では、その表面の1つに沿って画定された表面特徴部を有するリング構成要素が、フランジの軸方向表面に連結され得る。リングは、接着剤および/または留め具でフランジに永久的または一時的に固定され得ることが理解されよう。別の例では、表面特徴部は、用量ダイヤル部材に形成されるか、またはそこに別様に連結される。
【0081】
図15~
図17に示すように、表面特徴部501は、各々が斜面状形状を有する一連の突起部502を含む。突起部502は、フランジ438の、矢印511で示された回転方向とは反対の方向に上向きに傾斜する表面で形成され得る。これにより、突起部502の上でのトリガアーム492の動きがさらに容易になる。別の態様では、突起部502の反対側を傾斜させて、用量設定部材を反対方向に回転させることを可能とする。さらに、突起部502の両側に異なる傾斜角を設けて、用量検出システムが回転方向を検出することを可能にし得る。その一方、突起部502の反対側は、より急角度として、他方の方向への回転を防ぐことができる。
【0082】
以下の実施形態は、回転センサおよび半径方向に沿った表面特徴部の異なる構成を示す。
図18~
図21は、半径方向外側に延在する表面特徴部に対して半径方向外側に配置された用量検出システムの回転センサを示す、ここでは610として参照されるデバイスの近位部分を示す。デバイス610は、用量検出システム用の電子機器アセンブリ内の電子部品の少なくとも一部分を含む、デバイス10、210、または410を参照して説明したような用量設定および用量分注のために動作する同じ構成要素の多くを含み、そのような構成要素には同じ対応する説明がなされる。デバイス610は、統合感知システム内のデバイスとして示されているが、そのような感知システムは、用量ボタンへの取り外し可能な取り付けのためのモジュール内に組み込まれ得る。回転センサは、
図15に示されているものと同様のマイクロスイッチとして示されているが、回転センサは、本明細書に記載のセンサのいずれかであり得る。デバイス610は、例えば、デバイスハウジング612、用量ダイヤル部材632、フランジ638、および電子機器アセンブリ676など、デバイス210と同じデバイス構成要素を有し得るが、但し、後述するように、感知に使用される回転センサ構成および表面特徴部を有する用量設定部材については異なる。
【0083】
センサシステム684の回転センサ686は、用量ボタン656の環状壁部分662に沿って配置されて示されている。回転センサ686のセンサ本体690は、環状壁部分662によって画定された開口部695内にあってもよいし、代替実施形態では、センサ本体690は、壁部分662の内側表面に沿って配置されてもよい。可動要素は、長手方向軸AAに向かって半径方向内側に延在するトリガアーム692を備える。図示されていないが、回転センサ686は、センサ686と用量ボタンハウジングの内面に沿って延在する回路基板との間に接続された導電体介するなど、電子機器アセンブリのコントローラへ動作可能に連結されている。回転センサ686は、回転センサ686のトリガアームの動きによって規定される電子特性(電圧、抵抗、電流信号)のセンサ信号をコントローラに送信するように構成されている。
【0084】
図19~
図21は、表面特徴部を有するフランジを示す。一例では、フランジ638の近位環状端641の半径方向外側表面639は、成形部品または積層造形で作られた部品など、介在凹部710を伴う半径方向突起部702として示されている、回転軸の周りに放射状に離間された表面特徴部701と一体的に画定され得る。別の例では、半径方向外側表面に沿って画定された表面特徴部701を有するリング構成要素が、フランジの軸方向表面に連結され得る。リングは、接着剤および/または留め具でフランジに永久的または一時的に固定され得ることが理解されよう。別の例では、表面特徴部701は、用量ダイヤル部材に形成されるか、またはそこに別様に連結される。表面特徴部は、前述したように一連の斜面状突起部を含み得る。半径方向突起部702は、近位端と遠位端との間に延在して、軸方向隆起部を画定し得る。
【0085】
図18~
図19は、デバイス610がその第1の動作の用量設定モードにある近位位置に用量ボタン656があるときの、近位位置にある回転センサを示す。用量ボタン656は、(
図20~
図21を参照すると)その遠位位置に動くことができ、回転センサを、デバイスがその第2の動作の用量送達モードにある遠位位置に置く。一例では、トリガアーム692は、用量ボタンがその遠位位置に動かされていて、トリガアームが表面特徴部と係合可能であるときに、近位端から凹部710のうちの1つに進入し得る。コントローラは、トリガアームが最初のトリガと最後のトリガとの間で動いた回数をカウントすることができ、そのようなデータは、用量送達を決定するために使用される。
【0086】
図22は、半径方向内側に延在する表面特徴部に対して半径方向内側に配置された回転センサを示す、ここでは810として参照されるデバイスの近位部分を示す。デバイス810は、用量検出システム844用の電子機器アセンブリ内の電子部品の少なくとも一部分を含む、デバイス10、210、410、または610を参照して説明したような用量設定および用量分注のために動作する同じ構成要素の多くの含み、そのような構成要素には同じ対応する説明がなされる。デバイス810は、統合感知システム内のデバイスとして示されているが、そのような感知システムは、用量ボタンへの取り外し可能な取り付けのためのモジュール内に組み込まれ得る。デバイス810は、例えば、デバイスハウジング812、用量ダイヤル部材832、フランジ838、用量ボタン856、および電子機器アセンブリ876など、デバイス210と同じデバイス構成要素を有し得るが、但し、後述するように、感知に使用される回転センサ構成および表面特徴部を有する用量設定部材については異なる。
【0087】
回転センサ286の構成と同様に、回転センサ886は、回路基板の遠位面から軸方向開口部869を通って延在するように示されている。回転センサ886のセンサ本体は、回路基板に取り付けられ、電子機器アセンブリ876のコントローラに動作可能に連結され、回転センサ886のトリガアームからなる可動要素の動きによって規定される電子特性(電圧、抵抗、電流信号)のセンサ信号をコントローラへ送信するように構成されている。回転センサ886の取り付けは、そのトリガアームを、フランジ838の近位環状端841の周囲内に、表面特徴部901と係合するために半径方向外側に向けて配置するように構成される。
【0088】
図23~
図24は、表面特徴部を有するフランジ838を示す。一例では、フランジ838の近位環状端841の半径方向内側表面839は、成形部品または積層造形で作られた部品など、介在凹部910を伴う突起部902と示されている、回転軸の周りに放射状に離間された表面特徴部901と一体的に画定され得る。別の例では、半径方向外側表面に沿って画定された表面特徴部を有するリング構成要素を、フランジの軸方向表面に連結し得る。リングは、接着剤および/または留め具でフランジに永久的または一時的に固定され得ることが理解されよう。別の例では、表面特徴部901は、用量ダイヤル部材に形成されるか、またはそこに別様に連結される。表面特徴部901は、一連の斜面状突起部を含み得る。表面特徴部は、近位端と遠位端との間に延在して、軸方向隆起部を画定し得る。
【0089】
図25は、デバイス10、210、410、610または810のいずれかと使用できる圧電センサ1000としての回転センサを示す。圧電センサ1000は、軸方向、半径方向外向きまたは半径方向内向きなど、上述の回転センサと同様に配向し得る。一例では、圧電センサ1000のトリガアーム1002は、屈曲可能な圧電材料のフィルムとして画定される。フィルムは、センサ本体1004から延在し、センサ本体1004は、第1の電極1006および第2の電極1008を含む。センサ本体は、例えば、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン)またはポリウレタンなどのポリマー注型ハウジングを含み得る。圧電センサ1000は、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換するトランスデューサである。より具体的には、圧電センサ1000は、トリガアーム1002の機械的変形を比例電気信号(電荷または電圧)に変換する。したがって、圧電センサのトリガアーム1002が機械的力を受けて変形または歪みを被ると、圧電センサ1000は、電子機器アセンブリのアナログ電圧検出器による検出のために、第1の電極1006と第2の電極1008との間に比例電気信号を生成するように構成されている。圧電センサ1000のトリガアーム1002の機械的変形は弾性的であって、トリガアーム1002は、力が取り除かれると、元の自然な形状に戻ることができる。
【0090】
電子機器アセンブリのコントローラは、各圧電センサ1000の電圧検出器から、実質的にリング形状の信号であり得るアナログ圧電信号を受信するように構成され得る。電子機器アセンブリのコントローラは、アナログ圧電信号を、例えば、「クリック」または変形イベントの時間を表す高周波信号であり得る中間デジタル信号などのデジタル信号に変換するようにプログラムされ得る。電子機器アセンブリのコントローラは、以下でさらに説明するように、中間デジタル信号を、所定の時間を表す所定の幅Wを有する単一ステップ/方形波であり得る調整済みデジタル信号に変換するようにさらにプログラムされ得る。
【0091】
制御システムが使用する信号処理ロジック。ロジックは、アナログ圧電信号に、抵抗器を使用した直流(DC)電圧オフセットステップ、次いで増幅器を使用した増幅ステップ、次いで比較器を使用したアナログ-デジタル変換ステップを実行して、中間デジタル信号を生成する。信号は、入力電圧が所定の電圧(例えば、1.3V)以上のときに生成され得る。代わりに、入力電圧が所定の電圧よりも低いとき、信号は無視され得る。中間デジタル信号は、タイマ開始ステップでタイマを開始するときに信号を「オン」にし、タイマ満了ステップでタイマが所定の時間後に満了したときに信号を「オフ」にすることにより、調整済みデジタル信号に変換され得る。計時ステップは、抵抗-容量(RC)計時ループを使用して実行され得る。計時ステップに関連付けられた所定の時間は、調整済デジタル信号の幅Wを制御し、各回転および変形イベントの時間を整合させて誤差を最小化するように調整され得る。ロジックは、一定時間にわたってカウントされたデジタル信号の数に対応する数字を出力してもよい。
【0092】
例えば、デバイス210、410、610または810などの本明細書に記載のデバイスは、2つの部材間の相対的回転運動を検出することを含む用量検出システムを含み得る。送達された用量と既知の関係を有する回転の度合いにより、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおけるセンサシステムは、用量注入の開始から用量注入の終了までの角運動量を検出するように動作する。角度変位は、注射が進むにつれて用量の増分をカウントすることによって判定される。例えば、感知システムは、各繰り返しが既定の程度の回転角度の指標となるように、被感知要素の繰り返しパターンを使用することができる。都合のよいことに、パターンは、各繰り返しが薬剤送達装置を用いて設定され得る用量の最小増分に対応するように確立することができる。コントローラは、生成された信号の数をカウントするように構成されている。カウントは、外部デバイスに電子的に送信され得る。本明細書に記載の外部デバイスは、サーバー、携帯電話、または他の周知のコンピューターシステムを指し得る。カウントは、絶対回転角と相関し得、この絶対回転角は、次いで、送達された用量を決定するために外部デバイスのプロセッサによって使用される。接触部のうちの最初の接触部によって生成された信号は、前述したように、コントローラを起動または作動させるように動作可能であり得る。
【0093】
前述の方法では、回転センサ286、486、686、886など、本明細書に記載の回転センサのいずれも、用量送達中にトリガアームの作動をトリガする表面特徴部の数をカウントすることにより、用量設定部材の角運動を検出する。各回転センサは、この角運動を示す信号を生成し、それらの生成された信号は、カウントまたは単位の総数を決定するために電子機器アセンブリのコントローラによって使用される。そのような総カウント数は、用量送達中の用量設定部材の対応する合計回転を有し、それによって、用量送達の量を有する。一例では、各回転センサは、カウント数を示す信号を生成し、コントローラは生成された信号を受信する。コントローラは、カウント数を基板上で内部メモリに保存したり、かつ/またはカウント数を外部デバイスに送信することができる。コントローラは、カウント数を、カウント数を総角運動と相関させる搭載データベースと比較し得る。決定された角運動は、ローカルディスプレイに表示されたり、かつ/または外部デバイスに送信され得る。
【0094】
例えば、デバイス210、410、610または810など、本明細書に記載のデバイスは、本明細書に記載の起動特性を含み得、最初の用量送達中に用量ボタンをその遠位位置まで押すことにより、コントローラを起動させることができる。例えば、表面特徴部のうちの最初の特徴部を感知すると、電子機器アセンブリのコントローラは、電子機器アセンブリを起動またはフルパワー状態に作動させるように構成されている。起動トリガ特性は、用量分注イベントが起こっていないときの不用意な電力損失または使用を最小化するために、用量感知用の電子部品の電源を入れるための電源(バッテリとして図示)からの電力伝送を可能にするように構成されている。他の実施形態では、別個の起動スイッチが、本明細書に記載のデバイスのうちのいずれか1つの用量ボタンハウジング内に設置および構成され、用量ボタンがその遠位位置にあるときにトリガされ得る。この場合、起動スイッチは、例えば、フランジの上端に沿って配置され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、単一の感知システムが、用量検出感知および起動作動の両方に使用され得る。例えば、デバイス210、410、610または810など、本明細書に記載のデバイスは、最初の第1の表面特徴部を感知すると、電子機器アセンブリの起動またはフルパワー状態への作動を可能にするように構成されたコントローラを有し得る。続いて、コントローラは、最初の第1の表面特徴部の後の最初の表面特徴部(または順番で2番目)を感知すると、用量分注段階の完了時に用量設定部材の回転が停止されるまで、表面特徴部の総数をカウントするように構成されている。この豊富な機能を備えた単一のシステムの利点の1つは、デバイス内の電子部品の数と、追加センサを含む製造の複雑性とを低減し得ることである。
【0096】
図示されたデバイスは、ユーザが手動で取り扱って選択的に用量を設定し、次いでその設定された用量を注射する、一般に称されるところでは、再使用可能ペン型薬剤注射デバイスである。このタイプの注射デバイスはよく知られており、感知システムは、別様に構築されたペン型薬剤注射デバイス、別の形状とされた注射デバイス、および輸液ポンプデバイスを含む、様々に構成された薬剤送達デバイスに使用するように適合され得るので、デバイスの記載は単に例示的なものである。薬剤は、このような薬剤送達装置によって送達され得るタイプのうちのいずれかであり得る。以下にさらに記載される感知システムは、他の別様に構成されたデバイスに使用され得るので、デバイスは例示的であり、限定的ではないと意図される。
【0097】
その使用法を明確にし、本明細書によって公衆に通知するために、「<A>、<B>、...および<N>のうちの少なくとも1つ」あるいは「「<A>、<B>、...<N>のうちの少なくとも1つ、またはその組み合わせ」あるいは「<A>、<B>、...および/または<N>」は、本出願人によって最も広い意味で定義され、本出願人によって明示的に断りがない限り、上記または以下の他のいかなる暗黙の定義にも優先して、A、B、...およびNを含むグループから選択される1つ以上の要素を意味する。言い換えると、表現は、任意の1つの要素のみ、または列挙されていない追加の要素を組み合わせて含み得る他の要素のうちの1つ以上と組み合わせた、その1つの要素を含む、要素A、B、...またはNのうちの1つ以上の任意の組み合わせを意味する。
【0098】
様々な実施形態を説明してきたが、さらに多くの実施形態および実装が可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に記載の実施形態は例であり、唯一の可能な実施形態および実装ではない。さらに、上述の利点は必ずしも唯一の利点ではなく、記載された利点の全てが各実施形態で達成されるとは必ずしも予想されない。
【0099】
以下の態様を含むがこれらに限定されない様々な態様が、この開示に記載されている。
1.薬剤送達デバイスであって、デバイス本体と、デバイス本体に取り付けられ、用量送達中に回転軸の周りでデバイス本体に対して回転可能な用量設定部材と、用量設定部材に取り付けられて回転固定(rotationally fixed)された被感知要素であって、用量設定部材の回転軸の周りに放射状に互いに離間された軸方向延在表面特徴部(axially extending surface features)を含む、被感知要素と、デバイス本体に取り付けられたアクチュエータであって、被感知要素は、送達された用量に関連して、用量送達中にアクチュエータに対して回転可能である、アクチュエータと、アクチュエータに取り付けられた回転センサであって、用量送達中のアクチュエータに対する被感知要素の回転の間、軸方向延在表面特徴部に摺動可能に接触するように配置可能な可動要素を含み、用量設定部材の回転の間、軸方向延在表面特徴部の上での可動要素のトリガに応答して、信号を生成するように構成されている、回転センサと、回転センサに動作可能に連結されたコントローラであって、回転センサからの生成信号を受信したことに応答して、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した軸方向延在表面特徴部の数を決定するように構成されている、コントローラと、を備える薬剤送達デバイス。
2.軸方向延在表面特徴部は、交互の突起部および凹部を含み、可動要素は、用量送達中のアクチュエータに対する被感知要素の回転の間、突起部および凹部を乗り越える、態様1に記載の薬剤送達デバイス。
3.突起部は、用量設定部材から近位側に延在している、態様2に記載の薬剤送達デバイス。
4.用量設定部材は、フランジまたは用量ダイヤル部材である、態様1~3のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
5.回転センサは、スイッチを含み、軸方向延在表面特徴部に交互に係合または係合解除する可動要素は、スイッチをトリガして信号を生成するように動作可能である、態様1~4のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
6.アクチュエータは、回転センサの可動要素が軸方向延在表面特徴部から係合解除される第1の位置を有する、態様1~5のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
7.アクチュエータは、回転センサの可動要素が軸方向延在表面特徴部と接触可能である第2の位置を有する、態様6に記載の薬剤送達デバイス。
8.アクチュエータが第2の位置にあるとき、コントローラは、軸方向延在表面特徴部のうちの最初の第1の特徴部との接触を示す信号を受信すると、コントローラをフルパワー状態に作動するように構成され、かつコントローラは、最初の第1の特徴部の後に、軸方向延在表面特徴部のうちの後続の特徴部との接触を示す信号を受信すると、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した軸方向延在表面特徴部の数を決定するように構成されている、態様7に記載の薬剤送達デバイス。
9.可動要素は、軸方向延在表面特徴部との係合時に、信号を生成するように動作可能な、少なくとも1つの接触部を含む、態様1~8のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
10.少なくとも1つの接触部は1対の接触部を含み、接触部対のうちの一方が軸方向延在表面と係合すると、接触部対のうちの他方と接触するように動いて、信号を生成するように構成されている、態様9に記載の薬剤送達デバイス。
11.軸方向延在表面特徴部に対する可動要素の動きは、回転振動を生成するように構成され、回転センサは、回転振動の検出に応答して、信号を生成するように構成されている、態様1~8のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
12.回転センサは、回転振動を検出するように動作可能な回転加速度計を含む、態様11に記載の薬剤送達デバイス。
13.回転センサは、グラウンド振動を検出するように動作可能なグラウンド加速度計をさらに含み、コントローラは、回転振動およびグラウンド振動を比較するように構成され、比較から、用量送達中のアクチュエータに対する被感知要素の回転を示す振動を決定するように構成されている、態様12に記載の薬剤送達デバイス。
14.軸方向延在表面特徴部に対する可動要素の動きは、回転音を生成するように構成され、回転センサは、回転音の検出に応答して、信号を生成するように構成されている、態様1~8のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
15.アクチュエータに取り外し可能に取り付けられたモジュールをさらに含み、モジュールは、モジュールの外側にあるデバイス本体の用量設定部材の被感知要素と係合するための可動要素を含む、態様1~14のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
16.回転センサは、圧電センサを含む、態様1~8のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
17.薬剤送達デバイスであって、デバイス本体と、デバイス本体に取り付けられ、用量送達中に回転軸の周りでデバイス本体に対して回転可能な用量設定部材であって、被感知要素を含み、被感知要素は、用量設定部材の回転軸の周りに互いに放射状に離間された表面特徴部を含む、用量設定部材と、デバイス本体に取り付けられた用量ボタンであって、被感知要素は、送達された用量に関連して、用量送達中に用量ボタンに対して回転可能であり、用量ボタンは、回転センサを収容し、回転センサは、用量送達中の用量ボタンに対する被感知要素の回転の間、表面特徴部に摺動可能に接触するように配置可能な可動要素を含み、回転センサは、用量設定部材の回転中に表面特徴部の上での可動要素の動きに応答して、信号を生成するように構成され、用量ボタンは、回転センサの可動要素が表面特徴部から係合解除される第1の位置と、回転センサの可動要素が表面特徴部と接触可能である第2の位置とを有する、用量ボタンと、回転センサに動作可能に連結され、用量ボタンによって収容されたコントローラであって、回転センサから生成信号を受信したことに応答して、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した表面特徴部の数を決定するように構成され、用量ボタンが第2の位置にあるとき、表面特徴部のうちの最初の第1の特徴部との接触を示す信号を受信すると、コントローラをフルパワー状態に作動させるように構成され、かつ最初の第1の特徴部の後に、表面特徴部のうちの後続の特徴部との接触を示す信号を受信すると、用量送達中に回転センサの可動要素を通過した軸方向延在表面特徴部の数を決定するように構成されている、コントローラと、を備える、薬剤送達デバイス。
18.回転センサは、スイッチを含む、態様17に記載の薬剤送達デバイス。
19.回転センサは、少なくとも1つの接触部を含む、態様17に記載の薬剤送達デバイス。
20.回転センサは、圧電センサを含む、態様17に記載の薬剤送達デバイス。
21.表面特徴部は、用量設定部材から軸方向に延在している、態様17に記載の薬剤送達デバイス。
22.用量ボタンと用量設定部材との間に軸方向に配置された付勢部材をさらに備え、回転センサおよびコントローラは、用量ボタンの内腔内に配置され、表面特徴部は、内腔内の、付勢部材の半径方向外側に配置されている、態様1~21のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
23.デバイス本体は、薬剤を有するリザーバを含む、態様1~22のいずれか1つに記載の薬剤送達デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスの操作を検出する装置であって、
追従部品に対して回転可能に構成された被感知要素と、
前記追従部品に対する前記被感知要素の回転が前記追従部品の往復運動を生じさせるように、前記被感知要素に接触するよう前記追従部品を付勢するよう配置された弾性部材と、
前記追従部品の往復運動を示す振動を検出するよう構成された加速度計と、
前記装置全体の動きにより生じるバックグラウンド振動を検出するよう構成されたバックグラウンド加速度計と、
前記加速度計により検出された振動と、前記バックグラウンド加速度計により検出されたバックグラウンド振動とを比較し、前記被感知要素の回転を示す振動を識別するよう構成されたコントローラと、を備えた前記装置。
【請求項2】
前記追従部品は、前記注射デバイスの軸方向に往復運動するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記被感知要素は、前記追従部品に隣接するように配置され、前記追従部品の往復運動を生じさせるように構成された軸方向に変化するプロファイルを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記軸方向に変化するプロファイルは、のこぎり歯状のプロファイルである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記のこぎり状のプロファイルは、複数の歯を備え、各歯は、前記注射デバイスの固定の投与量に対応する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記注射デバイスの軸方向に平行な方向に沿って伸縮するよう構成された線状のコイルばねを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記加速度計が前記バックグラウンド加速度計よりも実質的に大きな振動を検出するときに、前記コントローラは、前記被感知要素の回転を示す振動を識別するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記加速度計が前記バックグラウンド加速度計よりも実質的に大きな振動を検出しないときに、前記コントローラは、前記被感知要素の回転を示す振動を識別しないように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記バックグラウンド加速度計は、振動的に前記追従部品から分離されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記追従部品はピンである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ピンは、前記ピンが前記被感知要素にわたり容易に摺動することを可能にする耐久性のある低摩擦材料でできた拡大端部分を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記加速度計は、前記追従部品に取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置と、
薬剤を含む前記注射デバイスとを有するシステム。