(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069624
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】熱感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
G08B17/06 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044487
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2020004813の分割
【原出願日】2020-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
(57)【要約】
【課題】感熱素子を有する熱感知器において、組み立て性を向上させるとともに作動表示灯の視認性を向上させる。
【解決手段】本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う本体カバーとからなる筐体の内部に、感熱素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納されている熱感知器において、前記感熱素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の下端から下方へ向かって外側へ広がるすり鉢状のテーパ部を備え光透過材料で形成された素子サポート部材が、前記挿通用円筒部が前記感熱素子の周りに位置するようにして前記回路基板に装着され、前記回路基板に実装された発光素子からの光により前記素子サポート部材のテーパ部の全体が光るようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う本体カバーとからなる筐体の内部に、感熱素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納されている熱感知器において、
前記感熱素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の下端から下方へ向かって外側へ広がるすり鉢状のテーパ部を備え光透過材料で形成された素子サポート部材が、前記挿通用円筒部が前記感熱素子の周りに位置するようにして前記回路基板に装着され、
前記回路基板に実装された発光素子からの光により前記素子サポート部材の前記テーパ部の全体が光ることを特徴とする熱感知器。
【請求項2】
前記本体カバーには前記感熱素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を形成する複数の整流フィンを備え、
前記感熱素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うヘッド部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【請求項3】
前記素子サポート部材は、前記テーパ部の下端から水平方向外側へ延びる鍔部を備え、当該鍔部には、前記回路基板に実装された発光素子からの光を導入可能な光導入部および該光導入部より導入された光を前記テーパ部の方向へ反射する光反射部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【請求項4】
前記素子サポート部材は、前記テーパ部の下端から水平方向外側へ延びる鍔部を備え、
前記素子サポート部材の前記鍔部の周縁部には、周方向に沿って下方へ向かって突出する出光部が形成され、
前記本体カバーには前記出光部が嵌合し前記本体カバーの表面に露出するスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【請求項5】
前記素子サポート部材は、前記テーパ部の下端から水平方向外側へ延びる鍔部を備え、
前記素子サポート部材の前記鍔部には、周方向に沿って複数の凸状部が並んで形成され、前記本体カバーには前記凸状部が嵌合し前記本体カバーの表面に露出する複数の窓が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器に関し、特に感熱素子(センサ)としてサーミスタを使用した熱感知器に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタを使用した熱感知器は、一般に、ドーム型の筐体の中央に感熱素子としてのサーミスタを配設し、サーミスタが下向きとなるように、筐体を建造物の天井面に取り付けて火災の発生を検出するように構成されている。また、火災感知器のカバーには、感知器が火災を検出していることが外部から目視で判別できるように点灯可能な作動表示灯が設けられているものがある。
従来、作動表示灯は、火災感知器の表面に点発光タイプのLEDを設置したものが多い。その場合、感知器の中心から外れたところに点発光の表示灯を設置している構造が一般的であるが、かかるタイプの作動表示灯は視認の方向性が生ずる。そのため、天井面に設置される火災感知器は、下から見上げて作動表示灯の状態を確認する際に見やすくなるように、例えば入り口ドアを開いたときに見える位置に作動表示灯が入り口側を向くように設置しないと、火災検出時に感知器の作動を確認する作業に手間がかかってしまう。
【0003】
そこで、作動表示灯の方向性なくすために複数の点発光タイプのLEDを感知器のカバーに設けたり、感知器頭頂部に点発光タイプのLEDを設置したり、或いは感知器のカバーの平坦部にリング状に点灯するようにした表示灯を設けたものもある。
一方、一般的な熱感知器の場合、製造工程において、感熱素子を電子基板に半田付けした後、感知器筐体に電子基板を組み付ける際に、筐体に開けられた感熱素子の径ぎりぎりの大きさの開口部に素子を挿通させて組み立てるため、組み立て性が悪いという課題があった。また、電子基板に実装した状態で感熱素子を保護する構造がないため、組み立て時に破損させてしまう可能性を含んでおり、組み立てに熟練を要するという課題もあった。
【0004】
なお、火災検出回路を構成するプリント配線基板上にサーミスタを実装し、基板を覆うカバーの中心にサーミスタが突出する挿通孔を形成したような構造を有する熱感知器としては、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。
また、カバーの平坦部にリング状に点灯するようにした表示灯を設けた感知器としては、例えば特許文献3に記載されているものがある。
さらに、サーミスタの頭部を覆うプロテクタを透光性の樹脂材で形成し、プロテクタの基部に確認灯を配設してプロテクタ全体を光らせるようにした熱感知器が、特許文献4に実施形態2として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-266377号公報
【特許文献2】特開平05-225459号公報
【特許文献3】特開2001-14570号公報
【特許文献4】特開2003-36488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱感知器の場合、感知器の頭頂部は感熱素子が位置するため作動表示灯を設置するのは困難であり、特許文献3に記載されている感知器のように感知器カバーにリング状の表示灯を配置した構成にすると、部品点数の増加によるコストアップや小型化するのが難しいといった課題があった。特に熱感知器は電子部品の小型化により電子基板がより小型になり、その結果感知器筐体も小型化されているため、特許文献3に記載の構造でリング状の作動表示灯を配設するのは困難である。
【0007】
また、熱感知器は感熱素子としてサーミスタを用いることが多いが、サーミスタは細く繊細な構成の素子であり、素子のリード端子2本を電子基板に半田付けすることで支える構造であるため、組み立て作業中に破損させてしまうことがあった。しかも、サーミスタは電子基板に立設し、感知器本体部表面の開口部に感熱素子を挿通させて組み立てるが、開口部が小さいと組み立て性が悪く、開口部を大きくすると感知器内部に埃や湿気が入りやすくなり、電子回路に悪影響を及ぼすおそれがあるといった課題があった。
【0008】
なお、特許文献4には、サーミスタの基部にすり鉢状のサポート部材を設け、サーミスタの頭部をプロテクタで覆うようにした構造を有する熱感知器が記載されているが、この熱感知器は、前述したようにプロテクタを透光性の樹脂材で形成し、プロテクタの基部に確認灯を配設してプロテクタ全体に導光させ、発光させることを意図しているようであるが、光の巡りについての示唆がなく、また、2つの発光素子を用いていることにより、この方法だけでは発光が良好にはならないという課題がある。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、感熱素子としてサーミスタを用いている熱感知器において、組み立て性を向上させるとともに、作動表示灯の視認性を向上させることができるようにすることにある。
本発明の他の目的は、小型化を図るとともに、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができる熱感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、
本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う本体カバーとからなる筐体の内部に、感熱素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納されている熱感知器において、
前記感熱素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の下端から下方へ向かって外側へ広がるすり鉢状のテーパ部を備え光透過材料で形成された素子サポート部材が、前記挿通用円筒部が前記感熱素子の周りに位置するようにして前記回路基板に装着され、
前記回路基板に実装された発光素子からの光により前記素子サポート部材の前記テーパ部の全体が光るように構成したものである。
【0011】
上記のような構成を有する熱感知器によれば、素子サポート部材が感熱素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部およびすり鉢状のテーパ部を有するため、回路基板に実装されている感熱素子を挿通させやすくなり、組み立て性を向上させることができる。また、素子サポート部材のテーパ部全体を光らせるため、360°いずれの方向からもテーパ部の発光を視認することができ、視認性を向上させることができる。さらに、発光素子を作動表示の光源とする場合、素子サポート部材が作動表示灯を兼ねることとなるため、感知器の小型化を図るとともに、部品点数を減らしコストダウンを図ることができる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記本体カバーには前記感熱素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を形成する複数の整流フィンを備え、
前記感熱素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うヘッド部材が設けられているように構成する。
【0013】
また、望ましくは、前記素子サポート部材は、前記テーパ部の下端から水平方向外側へ延びる鍔部を備え、当該鍔部には、前記回路基板に実装された発光素子からの光を導入可能な光導入部および該光導入部より導入された光を前記テーパ部の方向へ反射する光反射部が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、光透過材料で形成されたすり鉢状のテーパ部の下端に設けられた鍔部に、回路基板に実装された発光素子からの光を導入可能な光導入部および該光導入部より導入された光をテーパ部の方向へ反射する光反射部が設けられているため、テーパ部全体を光らせることができ、視認性を向上させることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記素子サポート部材は、前記テーパ部の下端から水平方向外側へ延びる鍔部を備え、
前記素子サポート部材の前記鍔部の周縁部には、周方向に沿って下方へ向かって突出する出光部が形成され、
前記本体カバーには前記出光部が嵌合し前記本体カバーの表面に露出するスリットが形成されているように構成する。
なお、出光部は例えば環状リブとして形成する。上記のような構成によれば、テーパ部全体および周方向に沿って形成された出光部を光らせることができるため、発光面積を増大させ、視認性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、望ましくは、前記素子サポート部材は、前記テーパ部の下端から水平方向外側へ延びる鍔部を備え、
前記素子サポート部材の前記鍔部には、周方向に沿って複数の凸状部が並んで形成され、前記本体カバーには前記凸状部が嵌合し前記本体カバーの表面に露出する複数の窓が形成されているように構成する。
【0016】
上記のような構成によれば、テーパ部全体および素子サポート部材の鍔部に形成された円周方向に並んだ複数の凸状部を光らせることができるため、発光面積を増大させ、視認性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る熱感知器によれば、感熱素子としてサーミスタを用いている熱感知器において、組み立て性を向上させるとともに、作動表示灯の視認性を向上させることができる。また、本発明によれば、小型化を図るとともに、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができる熱感知器を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る熱感知器の第1の実施例を示す正面断面説明図である。
【
図2】(A)は第1の実施例の熱感知器を構成する素子サポート部材の具体例を示す正面断面説明図、(B)はその底面図である。
【
図3】本発明に係る熱感知器の第2の実施例を示す正面断面説明図である。
【
図4】(A)は第2の実施例の熱感知器を構成する素子サポート部材の具体例を示す正面断面説明図、(B)はその底面図である。
【
図5】変形例の熱感知器を構成する素子サポート部材の構成例を示す正面断面説明図、(B)はその底面図である。
【
図6】素子サポート部材の変形例を示す正面断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る熱感知器の実施形態について説明する。
(第1実施例)
図1には第1実施例の熱感知器の正面断面説明図が、
図2には第1実施例の熱感知器を構成する素子サポートの具体例が示されている。
本実施例の熱感知器10は、感熱素子としてサーミスタ11を用い火災に伴い発生した熱によって熱せられた空気がサーミスタ11に接触することで生じる電気抵抗の変化を検出して火災を検知可能な感知器であり、サーミスタ11の先端が下向きとなる姿勢で建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。
【0020】
本実施例の熱感知器10は、
図1に示すように、熱を感知する部品を収容するための収容凹部を有し建造物の天井面に設けられている取付け用開口に挿入可能な有底円筒形の本体ケース12と、中央部にサーミスタ11の先端部を覆うプロテクタ部13Aを備え前記本体ケース12の下側の開口部を覆うように本体ケース12に結合される本体カバー13とを備え、本体ケース12と本体カバー13とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。図示しないが、本体ケース12の上部には、天井裏面に配設された配線と内部の回路基板とを電気的に接続するための端子台が設けられる。
【0021】
また、熱感知器10は、前記本体ケース12の収容凹部内に収容され図示しないネジによって本体ケース12底部のボス部に固定される回路基板14を備え、該回路基板14のほぼ中央に前記サーミスタ11が実装され、該サーミスタ11が挿通可能な円筒部15aを有し上記回路基板14の表面にサーミスタ11の基部を挿通した状態にて接合された逆すり鉢状の素子サポート部材15が設けられている。なお、サーミスタ11は回路基板14に実装されているとともに、サーミスタ11の基部が挿通される素子サポート部材15の上部の円筒部15a内に樹脂16が充填、固化されることでサーミスタ11の基部を支えるように構成されている。
【0022】
本体カバー13は、全体としてほぼ平坦な円板状をなす本体部を有し、この本体部の中央に開口部が形成され、この開口部を下側から覆うようにプロテクタ部13Aが設けられている。
上記回路基板14は、上面や下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、回路基板14のほぼ中央にサーミスタ11の2本のリード端子の先端が回路基板14を貫通して上面より突出し、半田付け等によって回路基板14に接続されている。
また、回路基板14の所定部位には、LED(発光ダイオード)のような発光素子17が面実装されている。
【0023】
上記素子サポート部材15は、ポリカーボネート樹脂等の透光性材料で形成されており、
図2(A)に示すように、サーミスタ11を挿通するための円筒部15aと、該円筒部15aから斜め下方へ向かって広がるテーパ部15bと、テーパ部15bの下端から水平方向外側へ延びる鍔部15cと、テーパ部15bの外周面から上方へ向かって立設され先端に外向きの爪を有する複数本(例えば3本)の取付け用の係止片15dとが設けられている。そして、回路基板14の対応する部位には、前記係止片15dの爪が挿通可能な係合穴が、係止片15dの数に対応した数だけ形成されおり、係止片15dによって素子サポート部材15が回路基板14に装着されるようになっている。なお、
図1および
図2においては、図示の都合で、複数本(3本)の係止片15dのうち1本のみ示している。ただし、係止片15dは1本のみでも良い。
【0024】
上記のように、素子サポート部材15は、すり鉢状のテーパ部15bを有するため、サーミスタ11が実装された回路基板14に対して素子サポート部材15を装着する際の組み立て性が良好であるとともに、円筒部15aにサーミスタ11を挿通させるようにして素子サポート部材15を回路基板14に装着した後、テーパ部15bの内側へディスペンサーのノズルを臨ませることでサーミスタの挿通用円筒部15a内へ容易に樹脂を充填することができる。
【0025】
さらに、本体カバー13の円板状本体部の開口縁部の上面には段差部(凹み)13bが設けられ、この段差部13bに素子サポート部材15の鍔部15cの下面が接合されるように構成されている。鍔部15cが接合される本体カバー13の段差部13bの内面には、アルミなどの光反射率の良い膜もしくは層を形成しておいても良い。
また、素子サポート部材15の鍔部15cには、回路基板14に実装された前記発光素子17の位置に対応して、円柱状の導光部15eが設けられているとともに、導光部15eに対応する表面部(図では下面部)に光反射部15fが設けられている。導光部15eの端面すなわち発光素子17と対向する面は、発光素子17からの光を充分に導入できるように凹面状に形成されている。
【0026】
上記光反射部15fは、
図2(A)に示すように、鉛直方向に切断したときにテーパ部15bと直交する向きの傾斜面を有するとともに、
図2(B)において矢印C方向から見たときに断面がV字をなす凹部(溝)であり、導光部15eから誘導されて来た光を、
図2(A)に示すテーパ部15bの傾斜方向および
図2(B)に示す鍔部15cの円周方向へ反射するように形成されている。素子サポート部材15の回路基板側の面には、多数の細い線状の溝からなる微細加工を施すことによって、溝に当たった光が反射することでテーパ部15bの内周面全体がより明るく発光するように構成しても良い。また、素子サポート部材15に微細加工を施すことで、曇りガラス状となり、外部から感知器内部が見透かせなくなる効果もある。また、素子サポート部材15の形成材料内に光を乱反射させる微粒子を混入しておくようにしても良い。
【0027】
本体カバー13と一体に形成された
図1示すプロテクタ部13Aは、平面視で放射状に広がる複数(例えば6枚)の整流フィン13cと、これらの整流フィン13cの先端(
図1では下端)同士を結合する円板状のヘッドカバー13dとを備え、上記複数の整流フィン13cとヘッドカバー13dとに囲まれた空間にサーミスタ11の先端部が位置し、各整流フィン13c間を気流が通過するように構成されている。なお、ヘッドカバー13dは、その径がプロテクタ部13Aの基部(図では上部)の径よりも小さくされ、感知器を側方から見た際に逆台形状をなすように形成されている。また、
図1では整流フィン13cが垂直に配置されているが、水平(図示しない)に配置されていても良い。
【0028】
上記のような構成を有する本実施例の熱感知器においては、建造物の天井面に設置された状態で発光素子17が点灯されると、素子サポート部材15のテーパ部15b全体が発光し、その光が複数の整流フィン13c間すなわち360°いずれの方向からも見える状態になるため視認の方向性がない。そのため、天井面への設置の際に角度を気にする必要がなくなり、短時間に設置作業を完了することができる。しかも、発光面積が、従来の点発光の表示灯を備えた感知器に比べて大きくなるとともに、テーパ部15bから出た光が整流フィン13cの表面にも当たって反射することで見かけ上の発光面が大きくなるため、視認性が向上する。
【0029】
また、本実施例の熱感知器10は、素子サポート部材15が作動表示灯を兼用することとなるため、特許文献3に記載されている感知器のように、サーミスタ11の収納空間を形成する部材(素子サポート)とは別個の部材でリング状の作動表示灯を形成して本体カバーに装着する構成に比べて感知器全体を小型化することができるとともに、特許文献4に記載されている感知器のように、素子サポートと表示灯としてのプロテクタと本体カバーとを別個の部材で構成する構成に比べて部品点数を減らすことができ、それによってコストダウンを達成することができる。
【0030】
さらに、本実施例の熱感知器10は、比較的大きな開口を有するすり鉢状の素子サポート部材15を設けてサーミスタ11を挿通させる構成であるため、組み立て作業性が向上するとともに、素子サポート部材15の円筒部15aの内壁とサーミスタ11の基部との隙間に樹脂を充填しているため、サーミスタ11を安定な状態で支持できるとともに、回路基板の収容空間内に埃や湿気が入りにくくなり、埃や湿気が回路基板に悪影響を及ぼすのを抑止することができる。
【0031】
(第2実施例)
図3には第2実施例の熱感知器の正面断面説明図が、
図4には第2実施例の熱感知器を構成する素子サポート部材15の具体例が示されている。
第2実施例の熱感知器10は、第1実施例の熱感知器と同様に、感熱素子としてのサーミスタ11と、回路基板14を収容する本体ケース12と、サーミスタ11の先端部を覆うプロテクタ部13Aを有する本体カバー13と、回路基板14の表面に接合された逆すり鉢状の素子サポート部材15とを備えている。第1実施例の熱感知器との差異は、素子サポート部材15の形状が異なる点と、素子サポート部材15の形状を変更したのに伴い本体カバー13の形状を変えている点である。以下、その差異を重点にして第2実施例について説明する。
【0032】
本実施例の熱感知器10における素子サポート部材15は、
図4(A)に示すように、円筒部15aとテーパ部15bと鍔部15cと係止片15dと導光部15eを備え、そのうち鍔部15cの外周縁に沿って下向きに突出するリブ状の出光部15gが設けられている点で、第1実施例の素子サポート部材15と相異している。
また、出光部15gを設けたのに伴い、導光部15eに対応して鍔部15cの表面部に形成されている光反射部15fが、導光部15eからの光を外側すなわち出光部15gへも反射するように、鉛直方向に断面した場合にもV字をなすように形成されている点でも第1実施例の素子サポート部材15と相異している。
上記出光部15gは、下方から見た場合、
図4(B)に示すように、リング状をなしている。なお、光反射部15fは、第1実施例と同様、
図4(B)において矢印C方向から見たときにも断面がV字をなす溝として形成されている。
【0033】
さらに、鍔部15cの外周縁に沿って下向きに突出するリブ状の出光部15gを設けたのに伴い、本体カバー13には、
図3に示すように、スリット13eが形成され、このスリット13eに上記出光部15gが嵌合され、その頭部が本体カバー13の表面に臨むように構成されている。スリット13eは、出光部15gに対応して、平面視でリング状をなす。
また、出光部15gの頭部は、
図4(A)に示すように、下方へ向かって膨らむ形状をなすように形成されており、レンズ効果で出光部15gから光が広がりつつ出射されるようになっている。なお、出光部15gの裏面には、テーパ部15bの裏面と同様に、多数の細い線状の溝からなる微細加工を施すようにしても良い。また、素子サポート部材15の形成素材内に光を乱反射させる微粒子を混入しても良い。
【0034】
このように第2実施例においては、本体カバー13にリング状のスリット13eを形成したことにより、本体カバー13は外側プレートと内側プレートとに分割されるが、プロテクタ部13Aの整流フィン13cを第1実施例よりも大きくして、整流フィン13cの基部が外側プレートと内側プレートに跨るように形成している。これにより、本体カバー13は外側プレートと内側プレートは、整流フィン13cによって互いに連結されており、分離することはないようになっている。
【0035】
上記のように構成された第2実施例の熱感知器においては、建造物の天井面に設置された状態で発光素子17が点灯されると、素子サポート部材15のテーパ部15b全体およびリング状の出光部15gが発光し、その光が複数の整流フィン13c間すなわち360°いずれの方向からも見える状態になるため視認の方向性がないとともに、トータルの発光面積が第1実施例の熱感知器よりも大きくなる。また、出光部15gから出た光が整流フィン13cの側面を照らすため、一層視認性が向上することとなる。
また、第1実施例の熱感知器と比べて整流フィン13cの大きさが若干大きくなるものの、本体カバー13の大きさは第1実施例の熱感知器の本体カバーとほぼ同じ大きさにすることができ、従来の感知器に比べて小型化が可能であるとともに、第1実施例と同様に部品点数を減らすことができる。
【0036】
(変形例1)
図5(A),(B)には第2実施例の熱感知器の変形例が示されている。このうち、
図5(A)は素子サポート部材15の断面説明図、
図5(B)は本体カバー13の中央部分(プロテクタ部)を下から見た状態を示す図である。因みに、
図5(A)は、
図5(B)におけるA-A線に沿った断面を示している。
【0037】
この変形例の熱感知器は、
図5(A)に示すように、素子サポート部材15の鍔部15cが外側へ張り出すように形成されているとともに、鍔部15cの表面(図では下面)に長方形に近い台形状の凸状部15hが所定のピッチで円周方向に並んで形成されている。また、本体カバー13には、
図5(B)に示すように、上記凸状部15hと嵌合可能な複数の窓13fが円周方向に並んで形成されている。凸状部15hの裏面には、多数の細い線状の溝からなる微細加工を施すようにしてもよい。なお、凸状部15hの形状は台形(疑似長方形)に限定されず、菱形、円形、楕円形など任意の形状を採用することができる。
本変形例の熱感知器も第2実施例の熱感知器とほぼ同様な効果を奏することができる上、意匠的な効果を高めることができる。
【0038】
(変形例2)
図6には上記実施例に共通の他の変形例が示されている。
図6の変形例は、素子サポート部材15の鍔部15cに円柱状の導光部15eを設ける代わりに、鍔部15cの裏面に、凹部からなる導光部15e’を設けるとともに、回路基板14の導光部15e’と対向する部位に、砲弾型の発光素子17を設けるようにしたものである。この発光素子17は、リード端子が上記回路基板14に半田付けされることで実装されている。また、鍔部15cには、導光部15e’に対応する部位の表面(図では下面)に光反射部15fが設けられている。
図6の変形例においては、光反射部15fが鉛直方向に断面した際に長方形をなしているが、
図2と同様に三角形をなすように形成しても良い。なお、光反射部15fは、前実施例および変形例と同様に、矢印C方向から見たときに断面がV字をなす凹部(溝)で構成される。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、素子サポート部材15の鍔部15cに導光部15eまたは15e’を1つだけ設けたものを示したが、複数箇所に導光部15eまたは15e’を設けるとともに、これらに対応して発光素子17を複数個設けるようにしても良い。また、上記実施形態においては、素子サポート部材15のテーパ部15bに、回路基板14へ素子サポート部材15を装着するための係止片15dを設けているが、係止片15dは鍔部15cに設けられていても良い。
さらに、上記実施形態の熱感知器10においては、素子サポート部材15の円筒部15aの内側へのみ樹脂を充填しているが、回路基板14の裏面側および表面側全体を樹脂で覆うことで防水性を高めるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0040】
10 熱感知器
11 サーミスタ(感熱素子)
12 本体ケース
13 本体カバー
13A プロテクタ部
13b 段差部
13c 整流フィン
13d ヘッドカバー
13e スリット
14 回路基板
15 素子サポート部材
15a 円筒部
15b テーパ部
15c 鍔部
15d 係止片
15e,15e’ 導光部
15f 光反射部
15g 出光部
15h 凸状部
16 絶縁性樹脂(充填材)
17 発光素子