(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069637
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】サーファクタントタンパク質D(SP-D)オリゴマーを特徴付けるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240514BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240514BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240514BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K38/16
G01N33/15 Z
A61P11/00
A61P11/06
A61P29/00
A61P31/00 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024045084
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2020552204の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】62/650,138
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520077827
【氏名又は名称】エアウェイ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スーザン・ローゼンバウム
(72)【発明者】
【氏名】マーク・コーネル・マニング
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・アール・マニング
(57)【要約】
【課題】活性オリゴマー形態と不活性凝集形態を区別し、製造プロセスから再現性のある品質を保証するためにオリゴマー形態を定量するために使用することができる方法が必要とされている。
【解決手段】本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、サーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種を同定及び/又は定量する工程を含む。一部の実施形態は、SP-Dに対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーファクタントタンパク質-D(SP-D)を含む医薬組成物の活性を決定する方法であって、
医薬組成物中のSP-Dのオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、
医薬組成物中のSP-D十二量体の相対比率を計算し、それによって医薬組成物の活性を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
活性が、toll様受容体4(TLR4)アッセイ、又は細菌凝集アッセイにおける活性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
より高い相対比率のSP-D十二量体を有する組成物が、より低い相対比率のSP-D十二量体を有する組成物と比較してより高い活性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を計算する工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定する工程が、多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
計算する工程が、棒状形状及び球状形状を含むSP-Dのオリゴマー種のモデルを提供する工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
モデルが、SP-Dのオリゴマー種のZimmモデル及び二次Debyeモデルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
SP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種の相対比率を決定する方法であって、
SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、
AF4-MALLS分析の結果からSP-Dのオリゴマー種の相対比率を決定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程と
を含む、方法。
【請求項10】
試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)の活性オリゴマー種の相対比率を決定する方法であって、
SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、
SP-D試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程と、
SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、
測定した相対比率の各々の間の比を計算する工程と
を含む、方法。
【請求項13】
少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種が、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
AF4-MALLS分析からのフラクトグラムを各ピークに積分する工程を更に含む、請求項5から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-Dオリゴマー種を示す少なくとも1つのピークについてフラクトグラムの相対ピーク面積(RPA)を測定する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
SP-D星状オリゴマーが約6MDa以下のモル質量を有する、請求項8から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
SP-D凝集体が6MDa超のモル質量を有する、請求項8から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
試料中の70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有する試料中のSP-D星状オリゴマー種の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項8から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項8から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
SP-D試料が、リポ多糖-Toll様受容体4(LPS-TLR4)アッセイにおいてアンタゴニスト活性を有すると予測される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
試料中のSP-Dオリゴマー種の35%以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料が、活性を有するSP-D試料を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
試料中の全SP-Dオリゴマー種の5%未満の相対比率の、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を有するSP-D試料が、活性を有するSP-D試料を示す、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
AF4-MALLSが、EDTA及びEGTAからなる群から選択されるキレート剤の非存在下で実施される、請求項5から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
SP-Dが組換えヒトSP-D(rhSP-D)である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
rhSP-Dが、導入遺伝子からrhSP-Dを発現するヒト骨髄性白血病細胞株に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
rhSP-Dが配列番号02のアミノ酸配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
rhSP-Dが、Met11、Thr160、Ser270、及びAla286からなる群から選択される残基に対応する多型位置における残基を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
オリゴマー種の相対比率が質量に関する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
オリゴマー種の相対比率が、AF4-MALLS分析における相対ピーク面積(RPA)又は調整したRPAに関する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
SP-D十二量体が約520kDaの分子量を有する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
サーファクタントタンパク質-D(SP-D)を含む医薬組成物の活性を決定するための電子システムであって、以下の工程:
医薬組成物中のSP-Dのオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、
医薬組成物中のSP-D十二量体の相対比率を計算する工程と、
SP-D十二量体の相対比率に基づいて医薬組成物の活性を決定する工程であって、より高い相対比率のSP-D十二量体は、より低い相対比率のSP-D十二量体を有する組成物の活性と比較してより高いレベルの活性を有する組成物を示す、工程と
を実行するように構成された命令を有するプロセッサを含む、システム。
【請求項32】
活性が、toll様受容体4(TLR4)アッセイ、又は細菌凝集アッセイにおける活性を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
医薬組成物中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を計算する工程を更に含む、請求項31又は32に記載のシステム。
【請求項34】
測定する工程が、多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む、請求項31から33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
計算する工程が、棒状形状及び球状形状を含むSP-Dのオリゴマー種のモデルを提供する工程を含む、請求項31から34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
モデルが、SP-Dのオリゴマー種のZimmモデル及び二次Debyeモデルを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
SP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程であって、SP-Dオリゴマー種が、SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を更に含む、請求項31から36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種の相対比率を決定するための電子システムであって、以下の工程:
SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、
AF4-MALLS分析の結果からSP-Dのオリゴマー種の相対比率を決定する工程であって、SP-Dオリゴマー種が、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程と
を実行するように構成された命令を有するプロセッサを含む、システム。
【請求項39】
試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項38又は39に記載のシステム。
【請求項41】
試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)の活性オリゴマー種の相対比率を決定するための電子システムであって、以下の工程:
SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、
SP-D試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程と、
SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、
測定した相対比率の各々の間の比を計算する工程と
を実行するように構成された命令を有するプロセッサを含む、システム。
【請求項42】
少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種が、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
AF4-MALLS分析からのフラクトグラムを各ピークに積分する工程を更に含む、請求項34から42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-Dオリゴマー種を示す少なくとも1つのピークについてフラクトグラムの相対ピーク面積(RPA)を測定する工程を更に含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
SP-D星状オリゴマーが約6MDa以下のモル質量を有する、請求項37から44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
SP-D凝集体が6MDa超のモル質量を有する、請求項37から45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
試料中の70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有する試料中のSP-D星状オリゴマー種の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項37から46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を更に含む、請求項37から47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項49】
SP-D試料が、リポ多糖-Toll様受容体4(LPS-TLR4)アッセイにおいてアンタゴニスト活性を有すると予測される、請求項31から48のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項50】
試料中のSP-Dオリゴマー種の35%以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料が、活性を有するSP-D試料を示す、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
試料中の全SP-Dオリゴマー種の5%未満の相対比率の、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を有するSP-D試料が、活性を有するSP-D試料を示す、請求項49又は50に記載のシステム。
【請求項52】
AF4-MALLSが、EDTA及びEGTAからなる群から選択されるキレート剤の非存在下で実施される、請求項34から51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
SP-Dが組換えヒトSP-D(rhSP-D)である、請求項31から52のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項54】
rhSP-Dが、導入遺伝子からrhSP-Dを発現するヒト骨髄性白血病細胞株に由来する、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
rhSP-Dが配列番号02のアミノ酸配列を含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
rhSP-Dが、Met11、Thr160、Ser270、及びAla286からなる群から選択される残基に対応する多型位置における残基を含む、請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
オリゴマー種の相対比率が質量に関する、請求項31から56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
オリゴマー種の相対比率が、AF4-MALLS分析における相対ピーク面積(RPA)又は調整したRPAに関する、請求項31から56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
SP-D十二量体が約520kDaの分子量を有する、請求項31から58のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「METHODS FOR CHARACTERIZING SURFACTANT PROTEIN D (SP-D) OLIGOMERS」という発明の名称の2018年3月29日に出願された米国仮出願第62/650138号に対する優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、2019年3月20日に作成された、AIRWY013WOSEQLISTと名前を付けられたファイルとして提供され、サイズは約7Kbである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、サーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種を同定及び/又は定量する工程を含む。一部の実施形態は、SP-Dに対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む。
【背景技術】
【0004】
哺乳動物肺サーファクタントは、タンパク質(10%)及び主要脂質成分であるジパルミトイルホスファチジルコリンを含む脂質(90%)の混合物である(Zuo YY等、Biochim Biophys Acta (2008) 1778:1947~77頁)。肺サーファクタントの主要な機能は、呼吸中の虚脱を回避するために肺内の最低限の表面張力を確保することである。更に、吸入された病原体と相互作用することによって、肺サーファクタントはまた、宿主防御にも関与する(Clements JA. Am Rev Respir Dis (1977) 115:67~71頁)。したがって、肺サーファクタント欠乏は、喘息、細気管支炎、呼吸窮迫症候群(RDS)、嚢胞性線維症、及び肺炎等の肺疾患と関連している(Griese M. Eur Respir J (1999) 13:1455~76頁)。サーファクタント製剤は、毎年世界中で約150万人の未熟児に影響を及ぼすRDSの処置に適応されている。呼吸窮迫症候群は、早産児における肺の構造的未熟性によって引き起こされる主要な肺サーファクタント欠乏症であり、呼吸を困難にし、ガス交換を阻害し、肺胞虚脱を促進する(Notter RH. 2000 Lung Surfactants. Basic Science and Clinical Applications. New York、NY: Marcel Dekker社)。しかしながら、現在のサーファクタント調製物はサーファクタントタンパク質D(SP-D)を欠いているので、肺が感染している場合又は炎症性若しくは酸化性の合併症がある場合、処置はより困難になる。したがって、複雑な肺疾患の成功的処置は、その組成が天然の肺サーファクタントと可能な限り密接に一致するサーファクタント製剤の製造を必要とする(Robertson B等、Biochim Biophys Acta (1998) 1408:346~61頁)。
【0005】
SP-Dは、喘息、嚢胞性線維症、及び喫煙誘発性肺気腫等の慢性肺疾患に対処する抗炎症活性及び抗菌活性を提供することによって肺の自然免疫系における役割を有する(Clark H等、Immunobiology (2002) 205:619~31頁)。早生の子羊に基づいたデータは、100mg/kgのSurvanta(登録商標)(米国において利用可能な天然サーファクタント)と組み合わせた約2~3mg/kgの組換えヒトSP-Dの投与が内毒素性ショックの予防及び換気によって引き起こされる肺炎症の減少のためにSurvanta(登録商標)単独より有効であることを示唆している(Ikegami M等、Am J Respir Crit Care Med (2006) 173:1342~7頁;Sato A等、Am J Respir Crit Care Med (2010) 181:1098~105頁)。
【0006】
従来、SP-Dは気管支肺胞洗浄液又は羊水の上清から単離されているが、SP-Dの親水特性に部分的に起因してほとんどのSP-Dは精製の間に失われる(Dodagatta-Marri E等、Methods Mol Biol (2014) 100:273~90頁)。現在の肺サーファクタント製剤は親水性サーファクタントタンパク質の非存在下で宿主免疫応答を効果的にモジュレートする能力を欠くので、肺サーファクタント製剤を補足するための組換えヒトサーファクタントタンパク質D(rhSP-D)の使用は治療効果を確実にすることができる。内因性サーファクタントタンパク質における高次多量体形成が病原体の表面上の炭水化物リガンドに対するSP-D結合部位の数を増加させ、強力な細菌及びウイルス凝集効果を達成するので、任意の医薬組成物中で維持されなければならない天然SP-Dの特徴は適切なオリゴマー形成状態である(White M等、J Immunol (2008) 181:7936~43頁)。適切なオリゴマー形成状態はまた、宿主免疫応答のモジュレーションのための受容体認識及び受容体媒介シグナル伝達のため(Yamoze M等、J Biol Chem (2008) 283:35878~35888頁)並びにサーファクタントホメオスタシスの維持のため(Zhang L等、J Biol Chem (2001) 276:19214~19219頁)に必要とされる。低いSP-D収率及び変化するオリゴマー形成状態は、医薬SP-Dの製造のために天然源を使用することを困難にする(Strong P等、J Immunol Methods (1998) 220:139~49頁)。これらの制限の一部を克服するために、組換えSP-Dを微生物又は哺乳動物細胞株において産生することができ、均質な組換えSP-D製剤の製造のための大規模なプラットフォームを提供できる可能性がある。しかしながら、組換えSP-Dは変化するオリゴマー形成状態及び/又は不活性凝集形態を示す可能性があり、したがってそのような調製物の潜在的有効性を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0071693号
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0071694号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zuo YY等、Biochim Biophys Acta (2008) 1778:1947~77頁
【非特許文献2】Clements JA. Am Rev Respir Dis (1977) 115:67~71頁
【非特許文献3】Griese M. Eur Respir J (1999) 13:1455~76頁
【非特許文献4】Notter RH. 2000 Lung Surfactants. Basic Science and Clinical Applications. New York、NY: Marcel Dekker社
【非特許文献5】Robertson B等、Biochim Biophys Acta (1998) 1408:346~61頁
【非特許文献6】Clark H等、Immunobiology (2002) 205:619~31頁
【非特許文献7】Ikegami M等、Am J Respir Crit Care Med (2006) 173:1342~7頁
【非特許文献8】Sato A等、Am J Respir Crit Care Med (2010) 181:1098~105頁
【非特許文献9】Dodagatta-Marri E等、Methods Mol Biol (2014) 100:273~90頁
【非特許文献10】White M等、J Immunol (2008) 181:7936~43頁
【非特許文献11】Yamoze M等、J Biol Chem (2008) 283:35878~35888頁
【非特許文献12】Zhang L等、J Biol Chem (2001) 276:19214~19219頁
【非特許文献13】Strong P等、J Immunol Methods (1998) 220:139~49頁
【非特許文献14】Crouch E.等、(1994) J Biol Chem、269:17311~9頁
【非特許文献15】Hakansson K等、Protein Sci (2000) 9:1607~17頁
【非特許文献16】Crouch E. Respir Res (2000) 1:93~108頁
【非特許文献17】Crouch E.等、(2006) J Biol Chem、281:18008~14頁
【非特許文献18】Giddings, J.C.等、Science 193:1244~1245頁(1976)
【非特許文献19】Giddings, J.C.等、Anal. Chem. 48:1126~1132頁(1976)
【非特許文献20】Wagner等、(2014) Anal Chem 86:5201~5210頁
【非特許文献21】Arroyo R等、(2017) Biophysical Journal 112 (3):503a
【非特許文献22】P. Debye、「Molecular-weight determination by light scattering」、J. Phys. Coll. Chem.、vol. 51、18~32頁(1947)
【非特許文献23】B.H. Zimm、J. Chem. Phys.、vol. 16、1093~1099頁(1948)
【非特許文献24】H.C. van de Hulst、Light Scattering by Small Particles、Wiley、New York (1957)
【非特許文献25】Haagsman HP等、(2008) Neonatology 93:288~294頁
【非特許文献26】Yamazoe M.等、(2008) J. Biol Chem. 283:35878~35888頁
【非特許文献27】Vieira F.等、(2017) Ann Anat 211:184~201頁
【非特許文献28】Malash AH等、(2016) Gene 592:23~28頁
【非特許文献29】Katz、M.H. 「Multivariate Analysis: A Practice Guide for Clinicians.」 Cambridge University Press、New York、158~162頁(1999)
【非特許文献30】Stahle, L.等、(1988) 「Multivariate data analysis and experimental design in biomedical research. Prog. Med. Chem. 25: 291~338頁
【非特許文献31】Wold S. (2001) 「PLS-regression: a basic tool of chemometrics.」 Chemom. Intell. Lab. Syst. 58: 109~130頁
【非特許文献32】Martens, H.等、(2001) 「Multivariate Analysis of Quality: An Introduction」 Wiley and Sons、Chichester、UK
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、活性オリゴマー形態と不活性凝集形態を区別し、製造プロセスから再現性のある品質を保証するためにオリゴマー形態を定量するために使用することができる方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、サーファクタントタンパク質-D(SP-D)を含む医薬組成物の活性を決定する方法を含む。一部のこのような実施形態は、医薬組成物中のSP-Dのオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、医薬組成物中のSP-D十二量体の相対比率を計算し、それによって医薬組成物の活性を決定する工程とを含む方法を含む。一部の実施形態はまた、医薬組成物中の70nm超の平均半径又は70nm超の二乗平均平方根(RMS)半径を有するSP-D凝集体の相対比率を計算する工程を含む。一部の実施形態では、測定する工程は、多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む。一部の実施形態では、計算する工程は、棒状形状及び球状形状を含むSP-Dのオリゴマー種のモデルを提供する工程を含む。一部の実施形態では、モデルはSP-Dのオリゴマー種のZimmモデル及び二次Debyeモデルを含む。一部の実施形態はまた、SP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を含む。
【0011】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、AF4-MALLS分析の結果からSP-Dのオリゴマー種の相対比率を決定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を含む、試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種の相対比率を決定することを含む。一部の実施形態はまた、試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程を含む。一部の実施形態はまた、試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を含む。
【0012】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)の活性オリゴマー種の相対比率を決定する方法であって、SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、SP-D試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程と、SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、測定した相対比率の各々の間の比を計算する工程とを含む、方法を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種は、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を含む。一部の実施形態はまた、AF4-MALLS分析からのフラクトグラムを各ピークに積分する工程を含む。一部の実施形態はまた、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-Dオリゴマー種を示す少なくとも1つのピークについてフラクトグラムの相対ピーク面積(RPA)を測定する工程を含む。一部の実施形態では、SP-D星状オリゴマーは約6MDa以下のモル質量を有する。一部の実施形態では、SP-D凝集体は6MDa超のモル質量を有する。
【0013】
一部の実施形態はまた、試料中の70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有する試料中のSP-D星状オリゴマー種の相対比率を測定する工程を含む。一部の実施形態はまた、試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を含む。
【0014】
一部の実施形態では、SP-D試料は、リポ多糖-Toll様受容体4(LPS-TLR4)アッセイ、又は細菌凝集アッセイにおいて活性を有すると予測される。一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の35%以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示す。一部の実施形態では、試料中の全SP-Dオリゴマー種の5%未満の相対比率の、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示す。
【0015】
一部の実施形態では、AF4-MALLSは、EDTA及びEGTAからなる群から選択されるキレート剤の非存在下で実施される。
【0016】
一部の実施形態では、SP-Dは組換えヒトSP-D(rhSP-D)である。一部の実施形態では、rhSP-Dは、導入遺伝子からrhSP-Dを発現するヒト骨髄性白血病細胞株に由来する。一部の実施形態では、rhSP-Dは配列番号02のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rhSP-Dは、Met11、Thr160、Ser270、及びAla286からなる群から選択される残基に対応する多型位置における残基を含む。
【0017】
一部の実施形態では、オリゴマー種の相対比率は質量に関する。一部の実施形態では、SP-Dのオリゴマー種の相対比率は分子の数に関する。一部の実施形態では、オリゴマー種の相対比率はAF4-MALLS分析における相対ピーク面積(RPA)又は調整したRPAに関する。一部の実施形態では、SP-D十二量体は約520kDaの分子量を有する。
【0018】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、サーファクタントタンパク質-D(SP-D)を含む医薬組成物の活性を決定するための電子システムを含む。一部のこのような実施形態は、以下の工程:医薬組成物中のSP-Dのオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、医薬組成物中のSP-D十二量体の相対比率を計算する工程と、SP-D十二量体の相対比率に基づいて医薬組成物の活性を決定する工程であって、より高い相対比率のSP-D十二量体は、より低い相対比率のSP-D十二量体を有する組成物の活性と比較してより高いレベルの活性を有する組成物を示す、工程とを実行するように構成された命令を有するプロセッサを含むシステムを含むことができる。一部の実施形態では、活性は、toll様受容体4(TLR4)アッセイ、又は細菌凝集アッセイにおける活性を含む。一部の実施形態はまた、医薬組成物中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を計算する工程を含む。一部の実施形態では、測定する工程は、多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む。一部の実施形態では、計算する工程は、棒状形状及び球状形状を含むSP-Dのオリゴマー種のモデルを提供する工程を含む。一部の実施形態では、モデルは、SP-Dのオリゴマー種のZimmモデル及び二次Debyeモデルを含む。一部の実施形態はまた、SP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を含む。
【0019】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種の相対比率を決定するための電子システムを含む。一部のこのような実施形態は、以下の工程:SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、AF4-MALLS分析の結果からSP-Dのオリゴマー種の相対比率を決定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程とを実行するように構成された命令を有するプロセッサを含むシステムを含むことができる。一部の実施形態はまた、試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程を含む。一部の実施形態はまた、試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を含む。
【0020】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)の活性オリゴマー種の相対比率を決定するための電子システムを含む。一部のこのような実施形態は、以下の工程:SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、SP-D試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程と、SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、測定した相対比率の各々の間の比を計算する工程とを実行するように構成された命令を有するプロセッサを含むシステムを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種は、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を含む。一部の実施形態はまた、AF4-MALLS分析からのフラクトグラムを各ピークに積分する工程を含む。一部の実施形態はまた、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-Dオリゴマー種を示す少なくとも1つのピークについてフラクトグラムの相対ピーク面積(RPA)を測定する工程を含む。一部の実施形態では、SP-D星状オリゴマーは約6MDa以下のモル質量を有する。一部の実施形態では、SP-D凝集体は6MDa超のモル質量を有する。一部の実施形態はまた、試料中の70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有する試料中のSP-D星状オリゴマー種の相対比率を測定する工程を含む。一部の実施形態はまた、試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を含む。
【0021】
一部の実施形態では、SP-D試料は、リポ多糖-Toll様受容体4(LPS-TLR4)アッセイ、又は細菌凝集アッセイにおいて活性を有すると予測される。
【0022】
一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の35%以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示す。
【0023】
一部の実施形態では、試料中の全SP-Dオリゴマー種の5%未満の相対比率の、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示す。
【0024】
一部の実施形態では、AF4-MALLSは、EDTA及びEGTAからなる群から選択されるキレート剤の非存在下で実施される。
【0025】
一部の実施形態では、SP-Dは組換えヒトSP-D(rhSP-D)である。一部の実施形態では、rhSP-Dは、導入遺伝子からrhSP-Dを発現するヒト骨髄性白血病細胞株に由来する。一部の実施形態では、rhSP-Dは配列番号02のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rhSP-Dは、Met11、Thr160、Ser270、及びAla286からなる群から選択される残基に対応する多型位置における残基を含む。
【0026】
一部の実施形態では、オリゴマー種の相対比率は質量に関する。一部の実施形態では、オリゴマー種の相対比率は、AF4-MALLS分析における相対ピーク面積(RPA)又は調整したRPAに関する。一部の実施形態では、SP-D十二量体は約520kDaの分子量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】SP-D三量体の形成、及びSP-D三量体の構造的特徴を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
サーファクタントタンパク質D(SP-D)は、4つのドメイン:分子間ジスルフィド結合の形成に必要なシステイン結合N末端領域、三重らせんコラーゲン領域、α-ヘリックスコイルドコイル三量体化ネックペプチド、及びC末端カルシウム依存性糖鎖認識ドメイン(CRD)を含むC型(Ca
2+依存性)レクチンである(Crouch E.等、(1994) J Biol Chem、269:17311~9頁)。単量体は、コラーゲン領域の三重らせんへの折り畳み、及びネック領域におけるα-ヘリックスのコイルドコイル束のアセンブリを介して三量体を形成する(
図1)。これらの三量体は、システインリッチN末端ドメインにおける2つのジスルフィド結合によって安定化される。SP-D三量体は、3つの同一の43kDaポリペプチド鎖を含む129kDaの総分子量を有する。SP-D三量体は、サイズ及び立体構造によって変化する、より高次のオリゴマー形成状態を形成することができる。より高次のオリゴマー形成状態はSP-D機能にとって重要でありうる(Hakansson K等、Protein Sci (2000) 9:1607~17頁;Crouch E. Respir Res (2000) 1:93~108頁;Crouch E.等、(2006) J Biol Chem、281:18008~14頁)。より高次のオリゴマー形成状態へのSP-D三量体の会合は、精製及び保存の間の環境因子及び条件に対して感度が高い。SP-Dの大きなオリゴマーの形成に関与する相互作用の経路及び種類は以前には解明されていない。
【0029】
一部の実施形態は、非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーション(AF4)技術のバリエーションを使用してSP-Dのオリゴマー種を分解するシステム及び方法を含む。一部のこのような実施形態は、より高次のSP-D種(十二量体及びそれより大きい)からより低次のSP-D種(六量体及びそれより小さい)に分解するために開発された。これらの実施形態は、多角度レーザー光散乱(MALLS)を使用して複雑なフラクトグラムエンベロープ内でSP-Dの十二量体形態を明確に描出することを可能にする。MALLSを組み込んでいるAF4技術のこのバリエーションを使用して、十二量体のモル質量を、多数(n=102)の試料の分析にわたって521.8±3.6kDで一貫して決定することができた。本明細書で使用される場合、「AF4-MALLS」という用語は、非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施し、続いて多角度レーザー光散乱を使用して、分析される混合物中のオリゴマー種を同定する方法を意味する。AF4-MALLS法の精度は約5%であると計算された。SP-Dのフラクトグラムもまた、十二量体より大きな種に関連するピークを示し、このピークは、半径70nmより大きい凝集体と同様に原子間力顕微鏡(atomic force microcopy)(AFM)によって十二量体及び/又は六量体アセンブリから生じる星状種として現れた。したがって、AF4-MALLS技術を使用する実施形態は、SP-Dの様々なより高次のオリゴマー会合状態の詳細なプロファイルを提供することが見出され、これは正確かつ精密に決定されることが見出された。
【0030】
SP-Dのオリゴマー種の同定
SP-Dの試料は、三量体、六量体、十二量体、並びにより高次のオリゴマー、例えば、約70nmの平均二乗平均平方根(RMS)半径を有する星状オリゴマー種、及び70nm超の半径を有しうる凝集体を含む、SP-Dタンパク質のいくつかのオリゴマー種を含むことができる。本明細書に記載されるように、SP-Dの特定のオリゴマー種は特定の有用な活性と関連している。例えば、SP-D十二量体は、Toll様受容体4(TLR4)アッセイにおけるアンタゴニスト活性と関連している。TLR4アッセイは、LPSがTLR4複合体に結合すること/TLR4複合体を活性化することを阻止することによってリポ多糖(LPS)誘導性炎症細胞応答を阻害するrhSP-Dの活性を測定することができる。TLR4アッセイ等のアッセイにおけるSP-Dの活性は、特定の処置方法におけるSP-Dの予測される有効性のための有用な指標でありうる。更に、SP-Dの異なる試料はSP-Dオリゴマー種の異なる相対分布を含有することができる。
【0031】
試料中の組換えヒトSP-D(rhSP-D)のオリゴマー形態の分布は種々の技術によって決定されうる。一部の実施形態は、AFMを実施することによってrhSP-Dのオリゴマー種を同定する工程を含むことができる。一部の実施形態は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等のサイズ排除クロマトグラフィーを実施することによってrhSP-Dのオリゴマー種を同定する工程を含むことができる。一部の実施形態は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を実施することによってrhSP-Dのオリゴマー種を同定する工程を含むことができる。一部のこのような方法では、rhSP-Dの試料をSDSのようなアニオン性洗浄剤と接触させ、続いてその試料を1%グルタルジアルデヒド等の架橋試薬と接触させることができる。次いで架橋タンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動等の技術を使用してサイズによって分離することができる。一部の方法はまた、ウェスタンブロットを実施すること等の、rhSP-Dの異なるオリゴマー種を同定する工程を含むことができる。
【0032】
一部の実施形態は、SP-D試料に対してAF4-MALLS分析を実施する工程を含む。AF4は、生体分子を含む種々の粒子の迅速なフラクショネーション及び高分解能特徴付けが可能な非対称フィールドフローフラクショネーションの一種である。例えば、各々の全体が参照により組み込まれる、Giddings, J.C.等、Science 193:1244~1245頁(1976);Giddings, J.C.等、Anal. Chem. 48:1126~1132頁(1976);及びWagner等、(2014) Anal Chem 86:5201~5210頁を参照のこと。AF4は数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の粒子を分離することができる。フィールドフローフラクショネーション分離はクロマトグラフィー分離カラムに匹敵する薄いフローチャネルにおいて起こる。水性又は有機溶媒はこのチャネルを通して試料を運ぶ。チャネルを通る流れは低いチャネルの高さに起因して層流であり、試料に与えられる第1の力である。第2の力はチャネルの流れに対して垂直に発生する。AF4では、フローチャネルの一方の側は膜であり、第2の力は膜を通るチャネルを横切る流体の流れである。これらの2つの力のためにこのシステムでは粒子分離が起こる。第1に、チャネル内の層流に起因する速度勾配は、チャネルの中心における粒子を、チャネルに沿ってより迅速に移動させ、チャネルの側面により近い粒子から分離させる。第2に、第2の力は試料を膜の方へ推し進める。サイズ分離は、より小さな分子がより大きな粒子よりも速くチャネルの中心の方へ拡散して戻り、したがってチャネルの中心に向かう、より速い溶媒の流れに起因してより大きな粒子から分離するために生じる。一部の実施形態では、AF4-MALLSは、EDTA及びEGTA等のキレート剤の非存在下で実施される。
【0033】
一部の実施形態は、SP-D試料中の活性オリゴマー種の相対比率を決定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又はRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を含む。一部の実施形態では、SP-D星状オリゴマーは約6MDa以下のモル質量を有することができる。一部の実施形態では、SP-D凝集体は6MDa超のモル質量を有する。
【0034】
一部の実施形態はまた、AF4-MALLS分析からのフラクトグラムを各ピークに積分する工程を含む。フラクトグラムにおける第1のピーク(ピーク1)は、SP-D三量体及び六量体を含むことができる。フラクトグラムにおける第2のピーク(ピーク2)は、SP-D十二量体を含むことができる。フラクトグラムにおける第3のピーク(ピーク3)は、SP-D十二量体とSP-D星状オリゴマーとの間の中間種を含むことができる。フラクトグラムにおける第4のピーク(ピーク4)は、星状オリゴマー種についてAFM測定によって観察されたものと一致する約70nmの一定のRMS半径を有する不均一な質量のrhSP-Dオリゴマー、及び70nm超の半径を有する、より大きなSP-D凝集体種を含むことができる。
【0035】
一部の実施形態はまた、上記で同定した4つのピーク等の、測定したピークの総ピーク面積のパーセンテージとしてピークについての相対ピーク面積(RPA)を決定する工程、又は測定する工程を含む。一部のこのような実施形態は、SP-D三量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体等の、SP-Dオリゴマー種を示す少なくとも1つのピークについてのフラクトグラムの相対ピーク面積(RPA)を測定する工程を含む。
【0036】
一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の特定のパーセンテージ以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示し、そのパーセンテージは、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、及び前述のパーセンテージのうちのいずれか2つの間の任意のパーセンテージでありうる。
【0037】
一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の特定のパーセンテージ未満の相対比率のSP-D凝集体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示し、そのパーセンテージは、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、3%、2%、1%、及び前述のパーセンテージのうちのいずれか2つの間の任意のパーセンテージでありうる。
【0038】
一部の実施形態では、SP-Dオリゴマー種の相対比率は、質量、SP-Dの異なるオリゴマー種の集団における分子/凝集体の数、又はAF4-MALLS分析における相対ピーク面積(RPA)に関してでありうる。
【0039】
一部の実施形態では、SP-Dは野生型ヒトSP-Dポリペプチドを含む。一部の実施形態では、SP-DはヒトSP-Dポリペプチドの多型を含む。例示のSP-Dポリペプチド配列はTABLE 1(表1)に提供される。ヒトSP-Dポリペプチドにおける多型には、残基11、ATG(Met)->ACG(Thr);残基25、AGT(Ser)->AGC(Ser);残基160、ACA(Thr)->GCA(Ala);残基270、TCT(Ser)->ACT(Thr);及び残基286、GCT(Ala)->GCC(Ala)を含むことができ、それらの位置は例示の配列番号02のポリペプチド等の成熟SP-Dポリペプチドにおける位置に関する。一部の実施形態では、rhSP-Dは多型位置において特定の残基を含み、その残基は、Met11/31、Thr160/180、Ser270/290、及びAla286/306から選択され、残基の位置は、例示の配列番号02等の成熟SP-Dポリペプチドにおける位置、及び例示の配列番号01等の、そのリーダーポリペプチドを有するSP-Dポリペプチドにおける位置に関する。一部の実施形態では、SP-DはMet11/31を含む。一部の実施形態では、rhSP-Dは、Met11/31、Thr160/180、Ser270/290、及びAla286/306を含む。一部の実施形態では、SP-Dポリペプチドは、ポリヌクレオチドの全長にわたって配列番号02のポリペプチドと少なくとも80%、90%、95%、99%及び100%、又は前述のパーセンテージのうちのいずれかの間の範囲における任意のパーセンテージの同一性を有する。
【0040】
【0041】
一部の実施形態では、SP-Dは組換えヒトSP-D(rhSP-D)である。一部の実施形態では、rhSP-Dは、組み込まれた導入遺伝子からrhSP-Dを発現するヒト骨髄性白血病細胞株に由来する。例示の発現ベクター、rhSP-Dポリペプチド、細胞株、及びこのような細胞からrhSP-Dを精製する方法は、米国特許出願公開第2019/0071693号;及び米国特許出願公開第2019/0071694号に提供されており、それらの各々は全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0042】
特定のシステム
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、サーファクタントタンパク質-D(SP-D)を含む医薬組成物の活性を決定するための電子システムを含む。一部のこのような実施形態は、以下の工程:医薬組成物中のSP-Dのオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、医薬組成物中のSP-D十二量体の相対比率を計算する工程と、SP-D十二量体の相対比率に基づいて医薬組成物の活性を決定する工程であって、より高い相対比率のSP-D十二量体は、より低い相対比率のSP-D十二量体を有する組成物の活性と比較してより高いレベルの活性を有する組成物を示す、工程とを実行するように構成された命令を有するプロセッサを含むシステムを含むことができる。一部の実施形態では、活性はtoll様受容体4(TLR4)アッセイにおけるアンタゴニスト活性を含む。一部の実施形態はまた、医薬組成物中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を計算する工程を含む。一部の実施形態では、測定する工程は、多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程を含む。一部の実施形態では、計算する工程は、棒状形状及び球状形状を含むSP-Dのオリゴマー種のモデルを提供する工程を含む。一部の実施形態では、モデルは、SP-Dのオリゴマー種のZimmモデル及び二次Debyeモデルを含む。一部の実施形態はまた、SP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程を含む。
【0043】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)のオリゴマー種の相対比率を決定するための電子システムを含む。一部のこのような実施形態は、以下の工程:SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、AF4-MALLS分析の結果からSP-Dのオリゴマー種の相対比率を決定する工程であって、SP-Dオリゴマー種は、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択される、工程とを実行するように構成された命令を有するプロセッサを含むシステムを含むことができる。一部の実施形態はまた、試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程を含む。一部の実施形態はまた、試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を含む。
【0044】
本明細書で提供される方法及び組成物の一部の実施形態は、試料中のサーファクタントタンパク質-D(SP-D)の活性オリゴマー種の相対比率を決定するための電子システムを含む。一部のこのような実施形態は、以下の工程:SP-D試料に対する多角度レーザー光散乱(AF4-MALLS)分析を用いて非対称フロー式フィールド-フローフラクショネーションを実施する工程と、SP-D試料中のSP-D十二量体の相対比率を測定する工程と、SP-D三量体、SP-D六量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-D試料中の少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種の相対比率を測定する工程と、測定した相対比率の各々の間の比を計算する工程とを実行するように構成された命令を有するプロセッサを含むシステムを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのSP-Dオリゴマー種は、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を含む。一部の実施形態はまた、AF4-MALLS分析からのフラクトグラムを各ピークに積分する工程を含む。一部の実施形態はまた、SP-D三量体、SP-D六量体、SP-D十二量体、70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有するSP-D星状オリゴマー、及び70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体からなる群から選択されるSP-Dオリゴマー種を示す少なくとも1つのピークについてフラクトグラムの相対ピーク面積(RPA)を測定する工程を含む。一部の実施形態では、SP-D星状オリゴマーは約6MDa以下のモル質量を有する。一部の実施形態では、SP-D凝集体は6MDa超のモル質量を有する。一部の実施形態はまた、試料中の70nmの平均半径又は70nmのRMS半径を有する試料中のSP-D星状オリゴマー種の相対比率を測定する工程を含む。一部の実施形態はまた、試料中の70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体の相対比率を測定する工程を含む。
【0045】
一部の実施形態では、SP-D試料は、リポ多糖-Toll様受容体4(LPS-TLR4)アッセイにおいてアンタゴニスト活性を有すると予測される。
【0046】
一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の35%以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示す。一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の特定のパーセンテージ以上の相対比率のSP-D十二量体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示し、そのパーセンテージは、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、及び前述のパーセンテージのうちのいずれか2つの間の任意のパーセンテージでありうる。
【0047】
一部の実施形態では、試料中の全SP-Dオリゴマー種の5%未満の相対比率の、70nm超の平均半径又は70nm超のRMS半径を有するSP-D凝集体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示す。一部の実施形態では、試料中のSP-Dオリゴマー種の特定のパーセンテージ未満の相対比率のSP-D凝集体を有するSP-D試料は、活性を有するSP-D試料を示し、そのパーセンテージは、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、3%、2%、1%、及び前述のパーセンテージのうちのいずれか2つの間の任意のパーセンテージでありうる。
【0048】
一部の実施形態では、AF4-MALLSは、EDTA及びEGTAからなる群から選択されるキレート剤の非存在下で実施される。
【0049】
一部の実施形態では、SP-Dは組換えヒトSP-D(rhSP-D)である。一部の実施形態では、rhSP-Dは、導入遺伝子からrhSP-Dを発現するヒト骨髄性白血病細胞株に由来する。一部の実施形態では、rhSP-Dは配列番号02のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rhSP-Dは、Met11、Thr160、Ser270、及びAla286からなる群から選択される残基に対応する多型位置における残基を含む。
【0050】
一部の実施形態では、オリゴマー種の相対比率は質量に関する。一部の実施形態では、オリゴマー種の相対比率は、AF4-MALLS分析における相対ピーク面積(RPA)又は調整したRPAに関する。
【実施例0051】
(実施例1 - rhSP-Dの原子間力顕微鏡分析)
組換えヒトSP-D(rhSP-D)のオリゴマー種を原子間力顕微鏡(AFM)によって特徴付けた。例えば、その全体が参照により組み込まれる、Arroyo R等、(2017) Biophysical Journal 112 (3):503aを参照のこと。希釈緩衝液(200mM NaCl、20mM Tris(pH7.4)、1mM EDTA)中の0.85ng/μLのrhSP-Dを含む溶液を、新たに切断した雲母基板上に置いた。試料を、Nanotec(Nanotec Electronica社、Madrid、スペイン)製の原子間力顕微鏡及びPointProbePlusチップ、PPP-NCH型(Nanosensors社、Neuchatel、スイス)を用いて画像化した。定量研究のための画像サイズは512ピクセルで1μm×1μmであり、1ライン/秒の速度で得た。原画像を、一般的な面減算、バックグラウンド減算による平坦化、及びアーチファクトライン除去に供した。
【0052】
得られた画像において同定されたオリゴマー種は、三量体、六量体、十二量体及び星状オリゴマーを含んでいた。三量体は棒状の外観を有し、一部の三量体は約65nm(±8.6nm)の平均長さを有すると測定した。十二量体はX形状の外観を有し、一部の十二量体は約136nm(±8.1nm)の先端から反対側の先端までの長さを有すると測定した。星状種は6~20個の三量体から構成される星形状の外観を有するメンバーを含み、各三量体は中心ハブを介してこの種の特定のメンバーに結合した。一部の星状種は、測定した十二量体の直径と同様に、約140nmの直径を有すると測定した。TABLE 2(表2)は観察したオリゴマー種の分布及び頻度をまとめている。
【0053】
【0054】
(実施例2 - rhSP-DのAF4-MALLS分析)
rhSP-Dの異なるオリゴマー種の分布をAF4-MALLS分析によって決定した。AF4-MALLS分析のために、rhSP-D試料を、AF4システム(Eclipse Dual Tec、Wyatt Technology社、Santa Barbara、CA)、続いてUV(Ultimate 3000可変波長検出器、Dionex社、Sunnyvale、CA)及びMALS分析(Dawn Heleos II検出器、Wyatt Technology社、Santa Barbara、CA)によって分離した。Dionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Dionex社、Sunnyvale、CA)を使用して試料を注入し、移動相をAF4システムに送達した。AF4構成は、350μm厚のスペーサー(Wyatt Technology社、Santa Barbara、CA)を有する短いチャネルを使用した。データの分析及び計算を、Chromeleon(Dionex社、Sunnyvale、CA)及びASTRA(Wyatt Technology社、Santa Barbara、CA)ソフトウェアを使用して実施した。AF4-MALLS分析からの結果はいくつかのピークを有するフラクトグラムを含んだ。
【0055】
ASTRAソフトウェア(バージョン6.1.1.17)により以下を計算した:各々の選択したピークについてのモル質量及び二乗平均平方根(RMS)半径モーメント。モーメントは多くのピークを含むことができる試料全体にわたる平均を基準とした。式(1)は数平均モル質量に関する:
【0056】
【0057】
ASTRA測定は典型的に、独立した濃度決定を必要とした。濃度(mg/mL)と数密度(数/ml)との関係はnM=cであったので、式(2)からの結果を決定することができた。式(2)は質量平均モル質量に関する:
【0058】
【0059】
多分散指数値はρ=Mw/Mnであった。典型的に、1.2より大きい値は多分散であるとみなし、一方、1.1未満の値は低い多分散性を有すると指定した。
【0060】
モル質量を決定するために、混合数学モデルを選択して、光散乱データを使用したrhSP-Dの分析において分子のサイズ及びMWを計算した。本明細書に示されるように、AFM画像により、rhSP-Dオリゴマー種が、単量体、二量体、三量体、六量体、十二量体、及びより高次のオリゴマー構造を含むことが実証された。AFM画像により、棒形状、X形状及び星状である構造が実証された。星状構造はAFMによって測定し、約70nmの半径を有すると計算し、二次Debyeモデル(その全体が参照により組み込まれる、P. Debye、「Molecular-weight determination by light scattering」、J. Phys. Coll. Chem.、vol. 51、18~32頁(1947))によって最適に特徴付けられた。DebyeモデルはRθ/K*c形式を使用し、非常に大きな質量(約106ダルトン超又は約100nmのRMS半径)を含む、広範囲のモル質量にわたって良好な結果を提供した。Debyeモデルを本明細書に記載されるピーク4の分析に適用した。棒形状構造をAFMによって測定し、約65nmの長さを有すると計算した。X形状構造をAFMによって測定し、約135nmの長さを有すると計算した。棒形状及びX形状の両方の構造は棒モデルによって最適に特徴付けされた。Zimm式をRθ/K*cvs.sin(θ/2)に適合した。その全体が参照により組み込まれる、B.H. Zimm、J. Chem. Phys.、vol. 16、1093~1099頁(1948)。所望のモデルについての理論形状因子P(θ)は、球状、コーティングされた球状、及び棒について導き出されており、van de Hulstによる文書(その全体が参照により組み込まれる、H.C. van de Hulst、Light Scattering by Small Particles、Wiley、New York (1957))に含まれている。球状及びコーティングされた球状モデルは幾何学的半径を生じるが、棒モデルは長さを生じた。棒モデルを本明細書に記載されるピーク1、2及び3の分析に適用した。得られた棒モデルは以下の式によって記載される:
【0061】
【0062】
式中、u=[(2πno/λo)L sin(θ/2)]であり、Lは棒の長さであり、その無視できるほどの直径よりはるかに大きいと仮定される。
【0063】
SP-D構造の多様性は単一のモデルによって適応させることはできなかった。典型的に、Zimmモデルは複数の形状に適応するのに十分に柔軟でありうるが、SP-Dの場合、二次Debyeモデルの使用を棒モデルと組み合わせた混合様式の分析を使用した。二次Debyeモデルを、70nm超の半径を有する凝集体を含むSP-Dオリゴマー種(ピーク4)に適用した。棒モデルを、単量体、二量体、三量体、六量体、及び十二量体を含む棒状SP-D構造(ピーク1及び2)に適用した。十二量体と星状構造(ピーク3)の形成との間に遷移があり、このために棒モデルをMWの最適な特徴付けに適用した。混合モデルはAF4-MALLSデータに良好に適合し、AFMによって得られた幾何学的測定と一致した。
【0064】
UVシグナルの分析と、光散乱によって決定されたモル質量の分析との組合せを使用して、試料を4つのピーク部分、ピーク1~4に積分した。選択した点でのドロップダウン積分(drop-down integration)を使用して全ての相対面積を計算した。ピーク2はrhSP-D十二量体ピークに対応し、その限界を、モル質量及び多分散指数を分析することによって決定した。中心点、通常はUVトレースの最高点、及び境界を、その点から等距離に設定した。その部分の多分散性は、本明細書に記載されるように、Mw/Mnによって測定する。典型的に、1.2より大きい値は多分散であるとみなし、一方、1.1未満の値は低い多分散性を有すると指定した。多分散指数が約1.05になるまで境界を移動させた。指数は1.008から1.090の間で変化した。ピーク境界のわずかな移動が指数の変化を引き起こしうることが観察された。UVトレースにおける低下が36.5分に見出されるまでピーク3の境界をピーク2の後の境界から設定した。ピーク4の外側境界を45分に設定した。45分でクロスフローを停止させた。チャネル内に残っているいずれかの物質はその時点で溶出し始め、分離は実質的に起こらなかった。ピーク1はrhSP-D十二量体より低い全ての種を含んだ。一部の場合、より低い分子量の種を分解し、別の積分を実施した。UVトレース上にMWトレースを重ね合わせることが可能であり、積分点が、六量体(258kDa)、三量体(129kDa)、二量体(86kDa)及び単量体(42kDa)について見出された。ピークは非常に狭く、確実に決定することができた。
【0065】
最初の一連の研究において、クロスフローパラメーターを、元の移動相の組成(20mM Tris緩衝液、pH7.4、200mM NaCl、1mM EDTA)を使用して調査した。クロスフロープログラムを確立してから、一連の実験により移動相の組成の効果を調査し、20mM Tris、200mM NaCl、pH7.4から構成される移動相からのEDTAの除去がもたらされた。最終調整を、フォーカス工程に対して行い、59.2分のランタイムを有する最終的な方法が得られた。TABLE 3(表3)はAF4について使用したパラメーターを記載している。
【0066】
【0067】
別の一連の研究では、組み込まれた導入遺伝子からrhSP-Dを発現する17個の異なる細胞株から得たrhSP-Dの102個の凍結乾燥製剤を分析した。これらには、細胞株:S888、S990、S991、S1010、S2099、及び2428~2439の番号が付けられた12個の細胞株が含まれる。AF4法の再現性は、4つの異なる測定基準:(i)精度を示すフラクトグラム下の総面積、(ii)十二量体の相対面積、(iii)MALLSデータからの十二量体の計算したモル質量、及び(iv)十二量体ピークエンベロープ内のモル質量の多分散性を使用して評価した。相対標準偏差(rsd)を、全ての試料にわたる各測定基準について計算した。平均で、精度を示すフラクトグラム下の総面積は4.3%~5.3%の範囲のrsd値を示した。言い換えれば、これらの複合フラクトグラムについての総面積は、所与の試料について実施ごとに約5%以内で再現可能であった。しかしながら、これらの試料中のrhSP-D十二量体の相対面積は約25%~65%まで広範に変化し、これらの相対量は再現性があり、rsd値は約5%~6.5%の範囲であった。MALLSデータから計算したモル質量についての平均rsdは0.86%で非常に低かった。最後に、MALLSデータから計算した多分散指数(PDI)値は約1.5%の平均rsd値を示した。
【0068】
AF4-MALLSを使用したデータを分析して、溶出の間の特定の時間におけるrhSP-Dの絶対モル質量及びサイズを決定した。サイズ対質量比はrhSP-Dの形状を示した。サイズ対質量比から、溶出の初期段階(0~34分)において、rhSP-D分子は直線又は棒形状を有したことを決定した。棒モデルの計算のために、ソフトウェアにより、棒形状粒子の厚さはその長さと比較して有意ではない(0.0nm)と仮定した。棒の長さは136±8.1nm(N=50の個々の分子)のAFM測定と一致すると決定した。rhSP-Dについての溶出の後の段階(34~45分)により、より小型の構造が観察されることが示された。二次Debyeモデルを溶出のこれらの段階の分析のために使用した。二次Debyeモデルは、非常に大型(約106ダルトン超又は約50nmのRMS半径)を含む、広範囲のモル質量にわたって良好な結果を提供した。rhSP-Dの十二量体に関して、分子量は520.09+/-4.61kDaであると決定した(N=72の決定)。
【0069】
フラクトグラムにおける第1のピーク(ピーク1)は、棒モデルに従った質量計算に基づいてrhSP-D三量体及び六量体を含有した。フラクトグラムにおける第2のピーク(ピーク2)は、rhSP-D十二量体を含有した。フラクトグラムにおける第3のピーク(ピーク3)は、棒モデルによって決定した中間分子量に基づいてrhSP-D十二量体からrhSP-D星状オリゴマーの間の中間種を含有した。フラクトグラムにおける第4のピーク(ピーク4)は、星状オリゴマー種についてのAFM測定によって観測されたものと一致する約70nmの一定のRMS半径を有する不均一の質量のrhSP-Dオリゴマー、及び70nm超の半径を有する、より大型の種を含有した。フラクトグラムにおいて36分を超えると、RMS半径は更に増加し、更なる凝集体の種を示した。各ピークについての相対ピーク面積(RPA)を、4つのピークの総ピーク面積のパーセンテージとして決定した。
【0070】
より高い分解能でAF4-MALLS分析を使用して溶液中のオリゴマー種の分布を決定するために、ピーク4の種を更に分析した。星状rhSP-Dオリゴマーについての最大分子量を、AFM分析からの画像に基づいて約6MDaであると仮定した。最大分子量を、より大きな凝集体から星状rhSP-Dオリゴマーを識別するための公称カットオフ値として使用した。しかしながら、6MDaを分析におけるカットオフ値として使用した場合、ピーク3に関連するrhSP-Dオリゴマー種を凝集体決定に含めた。これは、34分付近の新しいピークの溶出の明確な開始と一致しなかった。70nmのサイズに基づいたカットオフ値を分析において使用した。70nmのカットオフ値は、UVトレース又は全体のLSトレースのいずれかによって見られるように、ピーク4の開始とほぼ正確に一致した。したがって、70nmのカットオフ値を使用することは、rhSP-Dオリゴマー凝集体の存在を識別するためのより正確な測定であった。
【0071】
調整したRPAをピーク3及び4の各々について決定した。具体的には、約70nmの一定のRMS半径を有する星状オリゴマー種に対応するピーク4のRPAの態様を決定し、これらの態様をピーク4のRPAから除去し、ピーク3のRPAに付加して、ピーク4及びピーク3について調整したRPAを提供した。したがって、ピーク1のRPA、ピーク2のRPA、ピーク3の調整したRPA、及びピーク4の調整したRPAは、それぞれ、(1)三量体及び六量体;(2)十二量体;(3)約70nmのRMS半径を有する星状オリゴマー種;並びに(4)70nm超のRMS半径を有する凝集体についてのAF4-MALLS分析におけるrhSP-Dオリゴマー種の相対分布に対応した。
【0072】
AF4-MALLS分析を、組み込まれた導入遺伝子からrhSP-Dを発現する異なるヒト骨髄性白血病細胞株から得た3つのrhSP-D試料に対して実施した。TABLE 4(表4)に結果をまとめる。
【0073】
【0074】
TABLE 4(表4)に示すように、rhSP-D試料8B11は44.37%のピーク2についてのRPAを有し、これにより、この試料が3つの試験した試料の中で最も高い相対量の十二量体を有することが示された。rhSP-D試料8B11は1.04%のピーク4についての調整したRPAを有し、これにより、この試料が3つの試験した試料の中で70nm超のRMS半径を有する最も低い相対量の凝集体を有することが示された。
【0075】
(実施例3 - TLR4アッセイにおけるrhSP-Dの活性)
Toll様受容体(TLR)は自然免疫系及び適応免疫系の両方において役割を有し、SP-Dは、Toll様受容体2(TLR2)及びToll様受容体4(TLR4)等のTLRを介してシグナル伝達をモジュレートする活性を有する。例えば、各々の全体が参照により組み込まれる、Haagsman HP等、(2008) Neonatology 93:288~294頁;Yamazoe M.等、(2008) J. Biol Chem. 283:35878~35888頁;及びVieira F.等、(2017) Ann Anat 211:184~201頁を参照のこと。TLR4活性はまた、気管支肺異形成症(BPD)等の状態の重症度をモジュレートすることができる(その全体が参照により組み込まれる、Malash AH等、(2016) Gene 592:23~28頁)。したがって、TLR4活性をモジュレートするためのrhSP-Dの活性を宿主免疫応答に対するrhSP-Dの効果の指標として測定した。rhSP-Dを含有する再構成した製剤の活性をLPS-TLR4アッセイにおいて試験した。LPS-TLR4アッセイにおいて、再構成したrhSP-Dは、LPSがToll様受容体4(TLR4)に結合すること/Toll様受容体4(TLR4)を活性化することを阻止することによってリポ多糖(LPS)誘導性炎症細胞応答を阻害することができる。例えば、Yamazoe M.等、(2008) J. Biol Chem. 283:35878~35888頁を参照のこと。
【0076】
LPS-TLR4アッセイにおける再構成したrhSP-Dの活性を、以下の方法と実質的に同様の方法において試験した。HEK-Blue(商標)hTLR4細胞(InvivoGen社、San Diego、CA、U.S.A.)を384ウェルプレートにおいて約20000細胞/ウェルの密度で播種し、37℃、5%CO2にて2時間、種々の濃度のSP-Dとインキュベートした。EC80濃度でLPS(大腸菌(E.coli)O26:B6、L5543 Sigma Aldrich社)を各ウェルに加え、細胞を37℃、5%CO2にて更に22時間インキュベートした。ウェルから細胞を分離し、懸濁した細胞を洗浄し、細胞をPBSに再懸濁し、穏やかなピペッティングによって全ての凝集塊を除去することによってTLR4活性を測定した。洗浄した細胞を、5mM CaCl2及び1%(v/v)BSAを含有する、エンドトキシンを含まない水中で構成したHEKブルー検出培地(InvivoGen社、San Diego、CA、U.S.A.)を含有する20e103細胞/ウェルの密度で384ウェルプレートに移した。細胞を5%CO2中で37℃にて24時間インキュベートし、655nmにて分光光度計を使用して分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の活性を測定することによってTLR4の活性を決定した。データを4パラメーターロジスティック方程式に適合することによって非線形回帰分析を使用してSP-DについてのIC50値を決定した。IC50値の対数のみが正規分布しているので、一連の実験からの数値を平均化する目的のために、pIC50値を使用して、-Log10(IC50)として定義した。適合最大応答(Emax)と適合最小応答(Emin)との差異から曲線スパンを決定し、この曲線スパンは用量応答曲線の振幅、又は応答の有効性に対応する。rhSP-D試料を用いたLPS-TLR4アッセイの結果をTABLE 5(表5)にまとめる。
【0077】
【0078】
TABLE 5(表5)に示すように、rhSP-D試料8B11はTLR4アッセイにおいて活性を有する唯一の試験した細胞クローン試料であった。特に、rhSP-D試料8B11は35%超のピーク2についてのRPAを有する唯一の試験した試料であった。
【0079】
(実施例4 - 細菌凝集アッセイにおけるrhSP-Dの活性)
rhSP-D試料の活性を細菌凝集アッセイにおいて試験した。細菌凝集アッセイにおいて、活性rhSP-Dは細菌細胞を凝集させ、吸光度を低下させ/細菌懸濁液を通る透過を増加させる。細菌凝集アッセイを、以下の方法と実質的に同様の方法によって実施した。簡潔に述べると、指数関数的大腸菌(ATCC:Y1088)培養物を調製し、アリコートを1mL緩衝液(150mM HEPES、20mM NaCl pH7.4)に再懸濁した。細菌懸濁液の吸光度を700nmにて分光計で測定し、細菌懸濁液を調整して1.0000~1.1000の範囲の吸光度を得た。1M CaCl2を懸濁液に加え、5mM CaCl2の最終濃度を得た。プラセボ緩衝液(各希釈について15μlの全体積)中のrhSP-D試料を以下の濃度:5、1、0.5、0.25、0.1、0μg/mlで作製し、各々20μLのHepes-NaCl緩衝液を含有するキュベットに加えた。次いで600μLの細菌懸濁液をキュベットに加え、合計120分間、700nmにて各キュベットについて2.5分ごとに吸光度を測定した。rhSP-Dの試験濃度には、0μg/ml、0.1μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、1.0μg/ml、及び5.0μg/mlが含まれた。60分での平均凝集パーセンテージを、以下の式に従って、各試験濃度における60分での吸光度値から計算した:
(1-abs)*100=凝集%
式中、1=rhSP-Dを含まない大腸菌懸濁液の測定した吸光度。
Abs=60分での大腸菌懸濁液+rhSP-Dの吸光度値。
【0080】
凝集値のパーセンテージ(%)を3回の反復から平均し、標準偏差と共に、GraphPad Prism v7.0c(GraphPad社、La Jolla、CA 92037)にインポートした。4パラメーターロジスティック曲線を使用して平均値を適合した。EC50について得られた値、及びスパンを、各々の再構成したrhSP-D試料について決定した。pEC50はEC50の-Log10である。
【0081】
rhSP-D試料7H8、1C4及び8B11の各々は、細菌凝集アッセイにおいて活性を有した。
【0082】
(実施例5 - rhSP-Dオリゴマー種の多変量解析)
多変量統計解析を実施して、rhSP-Dの種々の製剤についてのAF4-MALLS分析におけるフラクトグラムで観察されたピークと、細菌凝集アッセイ又はTLR4アッセイのいずれかにおけるrhSP-D試料の活性との間の任意の相関関係を決定した。40個より多い異なる試料から得たデジタル化したフラクトグラムをデータマトリクスとして使用し、TLR4アッセイからの測定したpIC50値との相関関係、又は細菌凝集活性アッセイからのpEC50結果を、PLSを使用して決定した。
【0083】
標準的な技術を使用して全てのキャリブレーションモデルに対して完全な交差検証を実施した。例えば、各々の全体が参照により組み込まれる、Katz、M.H. 「Multivariate Analysis: A Practice Guide for Clinicians.」 Cambridge University Press、New York、158~162頁(1999);Stahle, L.等、(1988) 「Multivariate data analysis and experimental design in biomedical research. Prog. Med. Chem. 25: 291~338頁;Wold S. (2001) 「PLS-regression: a basic tool of chemometrics.」 Chemom. Intell. Lab. Syst. 58: 109~130頁を参照のこと。簡潔に述べると、1つの試料を1回で取り除き、データセットを再較正し、新しいモデルを構築した。このプロセスを、全ての較正試料が一度に取り除かれ、検証モデルとして定量されるまで繰り返した。したがって、全ての試料を含有する第1のセットを較正セットと称し、交差検証後のセットを検証セットと称した。ジャックナイフアルゴリズム(jack-knife algorithm)を使用して、部分最小二乗(PLS)モデルを構築する際に使用した任意の因子についての統計的有意性を決定した(Martens, H.等、(2001) 「Multivariate Analysis of Quality: An Introduction」 Wiley and Sons、Chichester、UK)。
【0084】
AF4-MALLS分析において観察された特定のピークと、rhSP-Dの種々の製剤についての細菌凝集アッセイにおける活性との間の相関関係に関して、活性の大部分はピーク1及び2に存在し、一部はピーク3全体にわたって存続することが見出された。ピーク4と細菌凝集アッセイにおける活性との間に負の相関関係が見出された。AF4-MALLS分析において観察された特定のピークと、rhSP-Dの種々の製剤についてのTLR4アッセイにおける活性との相関関係に関して、活性はほとんどピーク2にのみ局在することが見出された。したがって、TLR4アッセイにおけるrhSP-Dの活性はrhSP-Dの十二量体の種と直接関連した。したがって、AF4-MALLSは、TLR4アッセイにおいて活性である十二量体を含む試料の割合を決定する方法を提供する。特に、補正したピーク4において見出された70nm超の半径を有する凝集体の種は、細菌凝集アッセイにおいてもTLR4アッセイにおいても活性と関連せず、これらの種がrhSP-Dの不活性形態を表すことを確認した。
【0085】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、列挙されていない更なる要素又は方法の工程を排除しない。
【0086】
上記の説明は本発明のいくつかの方法及び材料を開示している。本発明は、方法及び材料の修飾、並びに製造方法及び装置の変更が可能である。このような修飾は本明細書に開示された本発明の開示又は実施を考慮することにより、当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、本発明の真の範囲及び精神内に入る全ての修飾及び代替を包含することを意図する。
【0087】
公開された及び公開されていない出願、特許、並びに文献の参考文献を含むが、これらに限定されない、本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部とされる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する範囲では、本明細書は、任意のそのような矛盾する材料に取って代わる及び/又は優先することが意図される。