(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069687
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】手押部材、運搬台車および保護部材
(51)【国際特許分類】
B62B 5/06 20060101AFI20240514BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B62B5/06 Z
B62B5/06 D
B62B5/06 C
B62B3/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048536
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2023109833の分割
【原出願日】2016-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2016169704
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
(57)【要約】
【課題】使用者の手が運搬台車の周辺の物体等に接触しないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、運搬台車1を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材40であって、前記手押部材40を掴んだ使用者の手を保護する保護部44,45を有する。また、グリップ部43を有し、保護部44,45は、グリップ部43に近接していると共に、グリップ部43の外周面よりも外側に突出している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材であって、
前記手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有することを特徴とする手押部材。
【請求項2】
グリップ部を有し、
前記保護部は、前記グリップ部に近接していると共に、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の手押部材。
【請求項3】
長尺状の本体部を有し、
前記保護部は、前記本体部に設けられ、前記本体部の外周面よりも外側に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載の手押部材。
【請求項4】
前記保護部は、前記本体部の端部から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の手押部材。
【請求項5】
前記保護部は、前記本体部の外径よりも大きい略円形であることを特徴とする請求項3または4に記載の手押部材。
【請求項6】
前記保護部は、前記運搬台車の側方を覆うための側壁が嵌め込まれる溝部を有し、
前記溝部は、前記保護部の外側から中心側に向かって凹んだ形状であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の手押部材。
【請求項7】
前記保護部は、複数の前記手押部材を並列させた状態で積み重ねるときに、隣り合う前記手押部材の本体部を支持する支持部を有することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の手押部材。
【請求項8】
前記本体部は、伸縮可能であることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の手押部材。
【請求項9】
前記保護部は、略90°の間隔で4つの前記溝部を有し、
一つの溝部に注目したときに、注目した溝部の溝幅は隣り合う溝部のうち一方の溝部の溝幅と略同一であり、他方の溝部の溝幅とは異なることを特徴とする請求項6に記載の手押部材。
【請求項10】
運搬物を積載して走行部によって走行する台車本体部と、
前記台車本体部に設けられ、使用者が手で押すための手押部材と、を有する運搬台車であって、
前記手押部材は、前記運搬台車の平面視において、前記台車本体部の外形よりも外側に突出して、前記手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有することを特徴とする運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押部材および運搬台車に関する。特に、使用者の手に運搬台車の周辺の物体等に接触しないようにする保護する手押部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等で使用される運搬台車には、運搬台車の本体の四隅部等に単管を挿入可能な構成を有するものがある。例えば、特許文献1には、手押し棒として単管を挿入可能なコーナ部材が四隅部に設けられた運搬台車が開示されている。このような構成であれば、運搬台車の使用者は、運搬台車の移動の際に、運搬台車の本体に差し込んだ単管を手押し棒として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手押し棒を用いて運搬台車を移動させる際には、手押し棒を掴んでいる(握っている)使用者の手が壁等といった周辺に存在する物体に接触する虞がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、使用者の手が運搬台車の周辺の物体等に接触しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材であって、前記手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有することを特徴とする。
本発明は、運搬物を積載して走行部によって走行する台車本体部と、前記台車本体部に設けられ、使用者が手で押すための手押部材と、を有する運搬台車であって、前記手押部材は、前記運搬台車の平面視において、前記台車本体部の外形よりも外側に突出し、前記手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、使用者の手が運搬台車の周辺の物体等に接触しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の運搬台車および手押部材の構成例を示す図である。
【
図2】保護部材の構成例を模式的に示す外観斜視図である。
【
図3】保護部材の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図6】第2の実施形態の保護部材の構成例を模式的に示す図である。
【
図7】第3の実施形態の運搬台車および手押部材の構成例を示す図である。
【
図8】手押部材および保護部材の構成例を示す図である。
【
図10】第4の実施形態の運搬台車および手押部材の構成例を示す図である。
【
図11】手押部材および保護部材の構成例を示す図である。
【
図12】側壁を取り付けた運搬台車の構成例を示す斜視図である。
【
図13】手押部材を積み重ねた状態を示す図である。
【
図14】第5の実施形態の手押部材の構成例を示す図である。
【
図15】第6の実施形態の保護部材の構成例を示す斜視図である。
【
図16】側壁を取り付けた運搬台車の構成例を示す図である。
【
図17】側壁を取り付けた運搬台車の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態に係る運搬台車および手押部材について図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、以下の各実施形態で示す手押部材および保護部材の上下方向は、手押部材が台車本体部に装着された状態での方向を基準とする。また、運搬台車の前後方向を運搬台車の長手方向とし、左右方向を運搬台車の短手方向とする。ただし、本実施形態の運搬台車は、前後左右を含め任意の方向に走行することができる。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る運搬台車および手押部材の構成例を示す図である。
運搬台車1は、台車本体部20、走行部30、手押部材40を備えている。
まず、台車本体部20について説明する。
台車本体部20は複数のフレーム部等が連結して構成され、運搬物を積載する。台車本体部20は、平面視において前後方向を長手方向とし、左右方向を短手方向とする矩形状である。台車本体部20は、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、コーナ部材22、補強フレーム部(補強部)25、載置板26等を有している。
【0010】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、例えばアルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。また、コーナ部材22は、例えば押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。コーナ部材22は、上方に開口する挿入孔23と、下方を閉塞するストッパ部24(
図8を参照)とを有する。コーナ部材22の挿入孔23には、手押部材40が挿入される。挿入孔23に挿入された手押部材40の下端はストッパ部24によって支持される。
【0011】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、および、左側フレーム部21dは、コーナ部材22により4つの角部で結合されることで、矩形状の四方のフレーム枠を構成する。フレーム枠内は複数の補強フレーム部25が前後左右方向に付き合わされ、ネジ、リベット、溶接等で接合されることで格子状に構成される。補強フレーム部25は、例えばアルミニウム合金製の角状の中空状パイプや断面凹凸状のプレート等を用いることができる。
載置板26は、運搬物を積載するための平面状の板である。載置板26は、各フレーム部や各補強フレーム部25にリベットやネジを介して結合される。
【0012】
走行部30は、台車本体部20および運搬物の荷重を支持しながら走行面を走行する。走行部30は、複数のキャスター31を有している。本実施形態では、走行部30は、台車本体部20の4隅に配置される4つのキャスター31と、前後方向の中央であって左右に離れて配置される2つのキャスター31との6つのキャスターを有する。キャスター31はそれぞれ取付板を介して台車本体部20に取り付けられる。
【0013】
手押部材40は、運搬台車1を走行させるときに使用者が手で押すための部材である。手押部材40は、長さが1000mm前後の長尺状である。手押部材40は下端をコーナ部材22の挿入孔23に挿入することで、台車本体部20に取り付けられる。本実施形態の運搬台車1は4つの手押部材40を有し、各コーナ部材22の挿入孔23に挿入される。4つの手押部材40は、何れも同一の構成である。だだし、4つの手押部材40を取り付ける場合に限られず、1つ、2つまたは3つの手押部材40を取り付けてもよい。
【0014】
手押部材40は、本体部としての本体部材41と、保護部材42とを有する。
本体部材41は、長尺状かつパイプ状の部材である。本体部材41は、例えば単管(単管パイプ)を適用することができる。単管は、JIS G 3444に規定されている一般構造用炭素鋼鋼管をいい、外径が48.6mmの円管である。ただし、本体部材41は、上述した寸法の単管に限定されるものではなく、各種の棒状や管状の部材が適用できる。
【0015】
保護部材42は、使用者の手を保護する。保護部材42は、本体部材41の上端部に着脱可能に装着される。使用者(建設作業者等)は、本体部材41に装着された保護部材42を掴んで運搬台車1を移動させることができる。
【0016】
図2は、保護部材42の構成例を模式的に示す外観斜視図であり、(a)は斜め上側から見た図、(b)は斜め下側から見た図である。
図3は、保護部材42の構成例を模式的に示す断面図である。
図2と
図3に示すように、保護部材42は、グリップ部43と、第1の保護部44と、第2の保護部45とを有しており、これらが一体に形成されている。また、保護部材42には、内部に本体部材41の上端部を挿入可能で下側(上下方向において第1の保護部44とは反対側)に開口する取付穴46が形成されている。保護部材42は、例えばポリエチレン等の樹脂材料からなり、射出成形によって一体に形成される。
【0017】
グリップ部43は、略円筒状であり、使用者が片手で掴むことができる(握ることができる)寸法を有する。使用者が片手で掴めるように、例えば、長さ(上下方向寸法)は100~200mmの範囲が好適であり、更には120~180mmの範囲が好適である。また、本体部材41に単管を用いる場合には、例えば、外径は50~60mmの範囲が好適である。ただし、具体的な寸法は特に限定されるものではない。また、グリップ部43の表面には、滑り止めのための凹凸パターンが設けられていてもよい。
【0018】
第1の保護部44および第2の保護部45は、グリップ部43に近接して設けられている。具体的には、第1の保護部44はグリップ部43の上下方向(本体部材41の軸線方向)の一方の端部(上側)に設けられ、第2の保護部45はグリップ部43の上下方向の他方の端部(下側)に設けられる。
第1の保護部44および第2の保護部45は、何れもグリップ部43の外周面よりも外側に突出しており、グリップ部43よりも大きい外径を有する。特に、第1の保護部44および第2の保護部45の外径は、平面視において、グリップ部43を掴んでいる使用者の手H(指)が第1の保護部44と第2の保護部45に重畳してはみ出さない(平面視において外形線の内側に収まる)寸法に設定される。具体的には例えば、第1の保護部44および第2の保護部45の外径は、100~140mmの範囲が好適であり、更には110~130mmの範囲が好適である。ただし、具体的な寸法は特に限定されるものではない。
【0019】
第1の保護部44は、平面視において略円形で、上側(グリップ部43とは反対側)に向かうにしたがって外径が小さくなる先細り形状を有する。そして、第1の保護部44の側面47(半径方向外側の面)は、側面視において、半径方向外側かつ斜め上側に向かって膨出する曲面に形成されている。第1の保護部44の上面48(グリップ部43とは反対側の面)は、上側に向かって膨出するドーム状の曲面に形成されている。第1の保護部44の側面47と上面48とは、曲面によって滑らかにつながっている。なお、第1の保護部44の下面49は平面でよい。但し、第1の保護部44の側面47と下面49とは、曲面によって滑らかにつながっている構成であることが好ましい。このように、側面視において、第1の保護部44の側面47および上面48の輪郭線は曲線で形成される。
ただし、第1の保護部44の形状は、上述した形状に限定されない。例えば、第1の保護部44の形状は、円板状であってもよく、上側に向かって膨出する略半球形状であってもよい。
【0020】
第2の保護部45は、第1の保護部44を上下方向に反転させた形状である。ただし、第2の保護部45の形状は、上述した形状に限定されない。例えば、第2の保護部45の形状は、円板状であってもよく、下側に向かって膨出する略半球形状であってもよい。
取付穴46は、本体部材41を挿入可能な穴(凹部)であり、下側(第2の保護部45の側)が開口する。取付穴46の内径は、本体部材41の外径に応じて設定される。例えば、本体部材41を取付穴46に挿入したときに、保護部材42が本体部材41に対して容易に離脱しないような寸法に設定される。また、取付穴46の深さは特に限定されないが、少なくとも使用時に横方向に力を掛けた場合に外れないような深さに設定される。
【0021】
したがって、取付穴46に本体部材41の上端部を挿入することにより、保護部材42を本体部材41に装着することができる(
図1参照)。使用者は、保護部材42を本体部材41に装着した手押部材40を、各コーナ部材22の挿入孔23に挿入することで、手押部材40を台車本体部20に取り付けることができ、使用者は手で手押部材40のグリップ部43を掴んで運搬台車1を移動させることができる。
【0022】
ここで、第1の実施形態に係る手押部材40の効果について、
図4と
図5を参照して説明する。
図4と
図5は、手押部材40の効果を説明する図である。具体的には、
図4は、運搬台車1の移動中において、手押部材40の上端部が壁等の物体Wに接近した状態を模式的に示す図である。
図5は、運搬台車1の運搬物Bである板材が手押部材40の上端部に寄り掛かった状態を模式的に示す図である。
【0023】
図4に示すように、運搬台車1の移動中において、手押部材40の上端部が壁等の物体Wに接近することがある。この際、本体部材41の上端部に保護部材42が装着されておらず、使用者が単に本体部材41の上端部を直接的に掴んでいると、使用者の手H(指や手の甲)が物体Wに接触したり、本体部材41と物体Wとに挟まれたりすることがある。これに対して、
図4に示すように、本体部材41の上端部に保護部材42を装着し、保護部材42のグリップ部43を掴んでいると(握っていると)、手押部材40の上端部が物体Wに接近した際に、第1の保護部44や第2の保護部45が物体Wに接触するため、グリップ部43を掴んでいる使用者の手Hが物体Wに接触することが防止または抑制される。
【0024】
図5に示すように、板状の資材を運搬台車1で運搬する際には、板状の資材を手押部材40の上端部に寄り掛けておくことがある。この際、運搬物Bである板状の資材を保護部材42の第1の保護部44に寄り掛けることによって、使用者が手押部材40を掴むスペースを確保でき、かつ、使用者の手H(特に指)が運搬物Bに接触することを防止または抑制できる。ここで、第1の保護部44の側面47は斜め上側に向かって膨出する曲面であり、上面48は上側に向かって膨出する曲面であり、側面47と上面48とは曲面によって滑らかにつながっている。このため、第1の保護部44の斜め上方に運搬物Bが寄り掛かった場合には、曲面で運搬物Bを受けることになる。したがって、運搬物Bに接触痕が形成されることが防止または抑制される。
【0025】
なお、運搬台車1の運搬物Bが運搬の際に移動して、手押部材40の上端部に接近することがある。この場合にも、移動した運搬物Bが第1の保護部44や第2の保護部45に接触することにより、グリップ部43を掴んでいる使用者の手Hに運搬物Bが接触することが防止または抑制される。この際、第1の保護部44および第2の保護部45には、半径方向外側に向かって尖った部分が設けられないから、第1の保護部44や第2の保護部45に接触した運搬物Bに接触痕が形成されることが防止または抑制される。
【0026】
このように、第1の実施形態に係る手押部材40によれば、運搬台車1の手押部材40を掴んでいる使用者の手Hに、運搬台車1の周辺の物体Wや運搬台車1の運搬物Bが接触することが防止または抑制される。更に、運搬物Bが保護部材42に接触した場合であっても、運搬物Bに接触痕が形成されることが防止または抑制される。
【0027】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る手押部材の構成について
図6を参照して説明する。
図6は、第2の実施形態に係る手押部材のうち保護部材52の構成例を模式的に示す図であり、(a)は上側から見た図、(b)は下側から見た図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
図6に示すように、保護部材52は、挿入部53と、保護部54とを有しており、これらが一体に形成されている。保護部材52は、例えばポリエチレン等の樹脂材料からなり、射出成形によって一体に形成される。
【0029】
挿入部53は、円筒状や円柱状の構成を有する部分であり、本体部材41の上端部の内部に挿入される部分である。挿入部53の外径は、適用対象である本体部材41の内径に応じて設定される。例えば、挿入部53を本体部材41に挿入したときに、保護部材52が本体部材41に対して容易に離脱しないような寸法に設定される。
【0030】
保護部54は、挿入部53の上側に設けられる部分である。保護部54は、適用対象である本体部材41の外周面よりも外側に突出している。保護部54は、例えば平面視で略円形である。保護部54の外径は、平面視において、本体部材41の上端部を掴んでいる使用者の指が、保護部54からはみ出さない(平面視において保護部54の外形線の内側に収まる)寸法に設定される。具体的には、保護部54の外径は、100~140mmの範囲が好適であり、更には110~130mmの範囲が好適である。ただし、具体的な寸法は特に限定されるものではない。
【0031】
保護部54は、第1の実施形態に係る保護部材42の第1の保護部44と同じ形状が適用できる。すなわち、保護部54は、上側(挿入部53とは反対側)に向かうにしたがって外径が小さくなる先細り形状を有する。そして、保護部54の側面57は、側面視において、半径方向外側でかつ斜め上側に向かって膨出する曲面に形成されている。保護部54の上面58(挿入部53とは反対側の面)は、上側に向かって膨出するドーム状の曲面に形成されている。保護部54の側面57と上面58とは、曲面によって滑らかにつながっている。このように、側面視において、保護部54の側面57および上面58の輪郭線は曲線からなる。また、保護部54の下面59(挿入部53の側を向く面)は、略平面でよい。そして、保護部54の側面57と下面59とは曲面によって滑らかにつながっている。
【0032】
したがって、本体部材41の上端部に挿入部53を挿入することにより、保護部材52を本体部材41に装着することができる。使用者は、保護部材52を本体部材41に装着した手押部材を、コーナ部材22の挿入孔23に挿入することで、手押部材を台車本体部20に取り付けることができ、使用者は手で保護部54に近接する本体部材41をグリップ部として掴んで運搬台車を移動させることができる。第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0033】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る運搬台車および手押部材の構成について説明する。
図7は、第3の実施形態に係る運搬台車および手押部材の構成例を示す図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一符号を付して、その説明を省略する。
運搬台車2は、台車本体部20、走行部30、手押部材60を備えている。
【0034】
手押部材60は、本体部としての本体部材61と、保護部材63と、補強部材70とを有する。
本体部材61は、長尺状かつパイプ状の部材である。本実施形態の本体部材61は、第1の実施形態と異なり、軽量化を図るためにアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成されている。また、本実施形態の本体部材61は、視認性を向上させるために台車本体部20、具体的には前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dと異なる色が付されている。例えば、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dが、シルバー等の金属色の場合には金属色とは異なる色、例えば赤、緑、青等、色の三原色であってもよく、オレンジ色等であってもよい。
また、本実施形態の本体部材61は、使用者が掴みやすいように、外径が例えば42~45mm(ここでは44mm)であり、第1の実施形態よりも小径の円管である。また、本実施形態の本体部材61は、強度を向上させるために内部が十字状に補強されている。ただし、本体部材61は、上述した寸法に限定されるものではなく、各種の棒状や管状の部材、上述した単管等が適用できる。
【0035】
図8は、手押部材60および保護部材63の構成例を示す図であり、(a)は手押部材60の側面図、(b)はI-I線断面図である。
保護部材63は、使用者の手を保護すると共に、運搬物を積載するときの最大積載高さを示す指標となる。保護部材63は、本体部材61の上側であって、上端から所定の距離離れた位置にボルトやリベット等で固定される。本実施形態の保護部材63は、本体部材61の上端から100~200mm離れた位置に固定されるのが好適であり、更には120~180mm離れた位置に固定されるのが好適である。本体部材61のうち、本体部材61の上端から保護部材63の上端までの範囲がグリップ部62として機能する。
保護部材63は、保護部64と、取付部65とを有しており、これらが一体で形成されている。また、保護部材63は、内部に本体部材61を挿入するために上下に開口する取付穴66を有する。保護部材63は、例えばポリエチレン等の樹脂材料からなり、射出成形によって一体に形成される。保護部材63は視認性を向上させるために台車本体部20、具体的には前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dと異なる色が付されている。例えば、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dが、シルバー等の金属色の場合には金属色とは異なる色、例えば赤、緑、青等、色の三原色であってもよく、オレンジ色等であってもよい。なお、保護部材63は、本体部材61と異なる色とするが、同じ色であってもよい。
【0036】
保護部64は、グリップ部62の外周面よりも外側に突出する円板状であり、グリップ部62よりも大きい外径を有する。特に、保護部64の外径は、平面視において、グリップ部62を掴んでいる使用者の手が保護部64に重畳してはみ出さない(平面視において外形線の内側に収まる)寸法に設定される。具体的には、保護部64の外径は、100~140mmの範囲が好適であり、更には110~130mmの範囲が好適である。ただし、具体的な寸法は特に限定されるものではない。
取付部65は、保護部64の下端から下側に延出する円筒状であり、本体部材61よりも大きく、保護部64よりも小さい外径を有する。取付部65の長さ(上下方向寸法)は、特に限定されないが、取付部65をボルトやリベット等で本体部材61に固定できる長さに設定される。
【0037】
取付穴66は、本体部材61を挿入可能な穴である。取付穴66の内径は、本体部材61の外形に応じて設定される。
したがって、取付穴66に本体部材61を挿入して、本体部材61の上端から所定の位置で取付部65をボルトやリベット等で本体部材61に固定することで、保護部材63を本体部材61に固定することができる。
【0038】
補強部材70は、本体部材61の下端、具体的には下端の近接した位置にボルトやリベット等で固定される。補強部材70は、本体部材61の強度を補強すると共に、本体部材61をコーナ部材22の挿入孔23に挿入したときに挿入孔23との間でガタ付きを抑制する。補強部材70は、例えばアルミニウム合金製等である。
図9は、補強部材70の構成例を示す図であり、(a)は
図8(a)に示すII-II線断面図であり、(b)はコーナ部材22の挿入孔23を示す図である。
【0039】
図9(a)に示すように、補強部材70は、円筒状であって、本体部材61の外径よりも大きい外径を有する。補強部材70は、外周面のうち一部が径方向に向かって膨らむ複数(ここでは2つ)の膨出部71a、71bを有する。膨出部71a、71bは緩やかな傾斜部72を経て径方向に突出する。また、補強部材70の下端は、下側に向かうにしたがって外径が小さくなる先細り形状を有する。補強部材70の長さ(上下方向寸法)は、特に限定されないが、コーナ部材22の挿入孔23の深さと略同程度の長さに設定される。また、補強部材70は、内部に本体部材61を挿入するために上下に開口する取付穴73を有する。
したがって、取付穴73に本体部材61を挿入して、本体部材61の下端から所定の位置で補強部材70をボルトやリベット等で本体部材61に固定することで、補強部材70を本体部材61に固定することができる。
【0040】
一方、
図9(b)に示すように、補強部材70が挿入される挿入孔23は、平面75a、75b、75cと、補強部材70の円形の曲率半径と略同一の円弧面75dとにより囲まれている。また、挿入孔23には、補強部材70の膨出部71a、71bの挿入を許容する凹部としての空間76a、76bを有する。したがって、膨出部71a、71bを空間76a、76bに合わせて、本体部材61に固定された補強部材70を挿入孔23に挿入することで、手押部材60が所定の位置に位置決めされる。
【0041】
使用者は、保護部材63および補強部材70を本体部材61に固定した手押部材60を、コーナ部材22の各挿入孔23に挿入することで、手押部材60を台車本体部20に取り付けることができる。使用者は手で手押部材60のグリップ部62を掴んで運搬台車2を移動させることができる。第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0042】
また、本実施形態では、単管よりも小径な本体部材61を使用しているために、使用者は本体部材61のグリップ部62を容易に掴むことができる。一方、小径にしたことによる強度の低下を補強するために、本体部材61の下端には補強部材70を固定している。したがって、手押部材60の強度を向上させることができる。ただし、本体部材61に単管あるいは単管以外の部材を用いる場合であっても本体部材61の下端に補強部材70を固定してもよい。
また、本実施形態では、補強部材70が挿入孔23に挿入された状態では、補強部材70の傾斜部72が平面75b、75cおよび円弧面75dに接する。したがって、単に円形の本体部材61を挿入する場合に比べて補強部材70を介在させることで挿入孔23との間の接触面積が増えるために、コーナ部材22の挿入孔23との間でガタ付きをより少なくすることができる。
【0043】
また、
図8(b)に示す平面視において、保護部64の一部は台車本体部20(二点鎖線を参照)と重畳する。したがって、台車本体部20に運搬物を積載するときに運搬物と保護部64とが干渉するために、運搬物を保護部64よりも高く積載されることを防止できる。すなわち、保護部64は最大積載高さを示す指標となる。したがって、使用者は運搬物を積載した運搬台車2の重心位置が高くなることが抑制でき、使用者は運搬台車2を安定して走行させることができる。なお、使用者に保護部64が最大積載高さを示す指標であることを報知するために、保護部64を超えて運搬物を積載してはいけない旨がシール等で手押部材60あるいは台車本体部20等に付されている。
なお、保護部材63は本体部材61の上端から所定の距離離れた位置で、取付穴66の軸線を中心にして本体部材61に対して回動自在に配置してもよい。この場合、保護部材63の保護部64が壁等の物体Wに接触したときに保護部材63が回動して、接触したときの衝撃を抑制することができる。
【0044】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る運搬台車および手押部材の構成について説明する。
図10は、第4の実施形態に係る運搬台車および手押部材の構成例を示す図である。なお、第3の実施形態と同様の構成は同一符号を付して、その説明を省略する。
運搬台車3は、台車本体部20、走行部30、手押部材80(80a~80d)を備えている。
【0045】
手押部材80は、本体部としての本体部材61と、保護部材83と、補強部材70とを有する。なお、本体部材61と補強部材70とは、第3の実施形態と同一の部材を用いることができる。
図11は、手押部材80および保護部材83の構成例を示す図であり、(a)は手押部材80の側面図、(b)はIII-III線断面図である。
保護部材83は、使用者の手を保護すると共に、側壁を取り付けるための側壁取付部として機能する。保護部材83は、本体部材61の上下に離れた複数(ここでは、2箇所)の位置にボルトやリベット等で固定される。具体的には、一つ目の保護部材83は、上側であって、上端から所定の距離、離れた位置にボルトやリベット等で固定される。この位置は、グリップ部62に近接した位置である。一方、二つ目の保護部材83は、下側であって、下端から所定の距離、離れた位置にボルトやリベット等で固定される。この位置は、補強部材70に近接した位置である。
【0046】
保護部材83は、保護部84と、取付部65とを有しており、これらが一体で形成されている。また、保護部材83は、内部に本体部材61を挿入するために上下に開口する取付穴66を有する。保護部材83は、例えばポリエチレン等の樹脂材料からなり、射出成形によって一体に形成される。保護部材83は視認性を向上させるために、第3の実施形態の保護部材63と同様な色が付されている。
【0047】
保護部84は、グリップ部62の外周面よりも外側に突出する複数(ここでは4つ)の突出部85a~85dを有する。突出部85a~85dは、取付穴66の上下方向に沿った軸線(中心軸線)を中心として90°の等間隔であって、取付穴66の軸線側から径方向に放射状に延びている。また、突出部85a~85dは、外側の外形線が略円形(以下、突出部85a~85dの円形という)の一部をなしている。突出部85a~85dの円形は、グリップ部62よりも大きい外径を有する。特に、突出部85a~85dの外径は、平面視において、グリップ部62を掴んでいる使用者の手が保護部84に重畳してはみ出さない(平面視において外形線の内側に収まる)寸法に設定される。具体的には、突出部85a~85dの円形の外径は、100~140mmの範囲が好適であり、更には110~130mmの範囲が好適である。ただし、具体的な寸法は特に限定されるものではない。
【0048】
また、保護部84は、隣接する突出部85a~85dの間に、外側から保護部84の中心側、すなわち内側に向かって凹む溝部86a~86dを有する。溝部86a~86dは、取付穴66の軸線(中心軸線)を中心として90°の等間隔に形成される。溝部86a~86dは保護部84を上下に貫通する。また、溝部86a~86dの溝幅(
図11(b)に示すW)は、後述する側壁を嵌め込むことができる寸法に設定される。更に、溝部86a~86dには、外側に向かうほど溝幅が広がるように開拡する傾斜状あるいは円弧状の支持部87a~87dを有する。
【0049】
ここで、一つ目の保護部材83および二つ目の保護部材83の各取付穴66に本体部材61を挿入して、本体部材61の上端から所定の位置および下端から所定の位置で各取付部65をボルトやリベット等で本体部材61に固定することで、2つの保護部材83を本体部材61に固定することができる。このとき、手押部材80の平面視において、2つの保護部材83はそれぞれの溝部86a~86dが重畳する状態で本体部材61に固定される。
【0050】
使用者は、保護部材83および補強部材70を本体部材61に固定した手押部材80を、コーナ部材22の各挿入孔23に挿入することで、手押部材80を台車本体部20に取り付けることができる。このとき、各手押部材80における溝部86a~86dがそれぞれ運搬台車3の前後方向および左右方向を指向するように、補強部材70によって位置決めされる。また、
図11(b)に示す平面視において、手押部材80bを一例にすると、溝部86a~86dのうち溝部86a、86bが台車本体部20(二点鎖線を参照)と重畳する。
【0051】
図12は、側壁90A~90Dを取り付けた運搬台車3の構成例を示す斜視図である。
側壁90A~90Dは、矩形の板状であって、それぞれ前後左右から運搬台車3の側方を覆う。側壁90A~90Dは、例えばプラスチックダンボールが用いられる。プラスチックダンボールは、プラスチックを素材とし、中空の領域を備える板状の部材であり、軽量であって剛性に優れている。ただし、側壁90A~90Dは、木材の合板や単板等を用いてもよい。
【0052】
ここで、側壁90A~90Dの板厚は、溝部86a~86dに嵌め込むことができる寸法に設定される。また、側壁90A~90Dの高さは、載置板26から上側に位置する保護部材83の保護部84までの距離と略同一である。また、側壁90A,90Bの長さ(左右方向の長さ)は、前側フレーム部21aあるいは後側フレーム部21bの長さと略同一である。また、側壁90C,90Dの長さ(前後方向の長さ)は、右側フレーム部21cあるいは左側フレーム部21dの長さと略同一である。
【0053】
次に、側壁90A~90Dを運搬台車3に取り付ける場合について説明する。説明の便宜上、側壁90A~90Dが運搬台車3に取り付けられた状態において、側壁90A~90Dの矩形の4辺のうち上側に位置する辺を上辺、下側に位置する辺を底辺、鉛直方向の2つの辺を側辺という。
まず、使用者は側壁90A~90Dの面がそれぞれ鉛直になるように維持する。次に、使用者は、手押部材80dと手押部材80aとの間、手押部材80aと手押部材80bとの間、手押部材80bと手押部材80cとの間、および、手押部材80cと手押部材80dとの間に、上側から各側壁90A~90Dを挿入する。このとき、側壁90A~90Dの両側の側辺を手押部材80a~80dの溝部86a~86dに嵌め込みながら挿入する。側壁90A~90Dを挿入することで、側壁90A~90Dの各底辺が載置板26(あるいはフレーム部)の上面によって支持される。
【0054】
側壁90A~90Dが載置板26上に支持された状態では、側壁90A~90Dの各側辺は手押部材80a~80dの上側に位置する保護部材83の溝部86a~86d、および、下側に位置する保護部材83の溝部86a~86dに嵌め込まれる。
図11(b)に示すように手押部材80bを一例にすると、上側および下側の保護部材83の何れについても、保護部84の溝部86aに側壁90Dの一方側の側辺が嵌め込まれ、保護部84の溝部86dに側壁90Bの一方側の側辺が嵌め込まれる。同様に、手押部材80a、80b、80dについても、上下の位置で側辺がそれぞれ2つの溝部86a~86dに嵌め込まれる。したがって、側壁90A~90Dは、手押部材80a~80dの保護部84によって運搬台車3に取り付けられる。
【0055】
側壁90A~90Dが取り付けられた運搬台車3は、側壁90A~90Dによって囲まれた空間内に運搬物を収容することができる。運搬台車3の側方を覆うように側壁90A~90Dを取り付けることで、運搬物を落下させることなく運搬台車3を走行させることができる。すなわち、使用者は手で手押部材80のグリップ部62を掴んで運搬台車3を移動させることができる。このとき、運搬台車3の手押部材40を掴んでいる使用者の手Hに物体Wに接近した場合であっても、上側の保護部材83の保護部84が物体Wに接触するため、グリップ部62を掴んでいる使用者の手Hが物体Wに接触することが防止または抑制される。
【0056】
また、本実施形態の手押部材80は、手押部材80を保管したり搬送したりする場合に、複数の手押部材80を積み重ねた状態に支持することができる。
図13は手押部材80を積み重ねた状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)に示す矢印A方向から見た図である。
図13(a)に示すように、手押部材80を積み重ねるには、各手押部材80の長手方向を水平にした状態で並列になるように複数段に重ねる。このとき、並列で隣り合う手押部材80同士は、保護部材83が鉛直方向に重ならないように手押部材80の長手方向に互い違いにずらして重ねる。
【0057】
図13(b)に示すように、1段目の手押部材80は、保護部材83の保護部84の2つの突出部(ここでは、突出部85b、85c)が床面に接地する。したがって、1段目の手押部材80は床面に安定した状態で接地される。次に、積み重ねた2段目の手押部材80は、保護部84の2つの突出部(ここでは、突出部85b、85c)の間に形成されている支持部(ここでは、支持部87c)が、1段目の手押部材80の本体部材61の外周面に接する。また、1段目の手押部材80は、保護部84の2つの突出部(ここでは、突出部85a、85d)の間に形成されている支持部(ここでは、支持部87a)が、2段目の手押部材80の本体部材61の外周面、正確には取付部65の外周面に接する。このように、複数の手押部材80を積み重ねるときに、手押部材80の保護部84は、並列で隣り合う手押部材80を支持するための支持部87a~87dを有する。したがって、複数の手押部材80を安定して積み重ねることができる。
【0058】
なお、手押部材80を2段で積み重ねる場合に限られず、
図13の二点鎖線で示すように3段で積み重ねてもよく、4段以上に積み重ねてもよい。また、支持部87a~87dは、外側に向かうほど溝幅が広がるように開拡する傾斜状あるいは円弧状である場合に限られず、隣り合う手押部材80の本体部材61を支持可能な形状であればよい。
【0059】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態に係る手押部材の構成について説明する。
図14は、第5の実施形態に係る手押部材の構成例を示す図である。本実施形態の手押部材100は、第3の実施形態で説明した手押部材60を改良したものであり、手押部材60と同様の構成は同一符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
手押部材100は、本体部材110と、保護部材63と、補強部材70とを有し、長手方向に伸縮可能である。
本体部材110は、第1の本体部111aと、第2の本体部111bとを有する。第1の本体部111aおよび第2の本体部111bは、長尺状かつパイプ状の部材であり、例えばアルミニウム合金製である。第1の本体部111aは本体部材110の上側を構成し、第2の本体部111bは本体部材110の下側を構成する。
【0061】
第1の本体部111aは、上端から所定の位置に保護部材63が固定される。また、第1の本体部111aの上端から保護部材63の上端までの範囲がグリップ部62として機能する。一方、第2の本体部111bは、下端の近接した位置にボルトやリベット等で補強部材70が固定される。
ここで、第1の本体部111aは第2の本体部111bの内径よりも小さい外径を有し、第2の本体部111bは第1の本体部111aの外径よりも大きい内径を有する。すなわち、第1の本体部111aの下端は、第2の本体部111bの上端側から第2の本体部111b内に挿入可能である。したがって、第2の本体部111bに対して第1の本体部111aを挿入する長さ、すなわち重なり合う長さを変えることで本体部材110の長手方向の長さを伸縮できる。
【0062】
また、本体部材110は、第1の本体部111aと第2の本体部111bとが重なり合う位置に、本体部材110を伸縮した長さに保持する保持機構112を有する。保持機構112は、第1の本体部111aの外周面に形成された複数の調整孔113と、第2の本体部111bの外周面に形成された一つの挿通孔114と、調整孔113および挿通孔114に挿通させる挿通ピン115とを有する。本体部材110を所望の長さで保持する場合には、本体部材110を伸縮した上で、挿通ピン115を挿通孔114と調整孔113に挿通させることで、本体部材110を伸縮した長さに保持することができる。
【0063】
このように、手押部材100は、本体部材110によって長手方向の長さが伸縮可能である。本体部材110の長さを伸縮させることで、保護部材63の保護部64の位置を上下方向に調整することができる。したがって、保護部64を最大積載高さの指標として用いる場合には、必要に応じて保護部64の位置を上下に調整することができる。例えば、台車本体部20のサイズに応じて安定して走行できる最大積載高さが異なるために、取り付ける台車本体部20のサイズに応じて、手押部材100を伸縮させて最大積載高さの指標である保護部64を上下に変更することができる。また、例えば、使用者が属する団体(あるいは建設現場)毎に最大積載高さの基準が異なる場合があることから、製造者は団体(あるいは建設現場)毎に最大積載高さの指標である保護部64を上下に変更して手押部材100を製造することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、保持機構112が、挿通ピン115を挿通孔114と調整孔113に挿通させることで、本体部材110を伸縮した長さに保持する場合について説明したが、この場合に限られず、不用意に長さが変更されないように保持できれば、どのような保持機構であってもよい。
また、本実施形態では、第3の実施形態で説明した手押部材60を伸縮可能にした手押部材100について説明したが、この場合に限られず、他の実施形態の手押部材を伸縮可能にしてもよい。第1の実施形態の手押部材40を伸縮可能にした場合には、グリップ部43の高さを調整することができる。また、第4の実施形態の手押部材80を伸縮可能にした場合には、上述した側壁90A~90Dの高さとは異なる高さの側壁を取り付けることができる。
【0065】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態に係る手押部材の構成について説明する。
本実施形態の手押部材120は、第4の実施形態で説明した手押部材80を改良したものである。ここでは、改良した点を中心に説明し、手押部材80と同様の構成は同一符号を付す等して説明を適宜、省略する。
【0066】
手押部材120は、本体部としての本体部材61と、保護部材123と、補強部材70とを有する。なお、本体部材61と補強部材70とは、第3の実施形態と同一の部材を用いることができる。
図15は、保護部材123の構成例を示す斜視図である。
保護部材123は、使用者の手を保護すると共に、側壁を取り付けるための側壁取付部として機能する。保護部材123は、保護部124を有している。
【0067】
保護部124は、グリップ部62の外周面よりも外側に突出する複数(ここでは4つ)の突出部85a~85dを有する。
また、保護部124は、隣接する突出部85a~85dの間に、外側から保護部84の中心側、すなわち内側に向かって凹む溝部126a~126dを有する。溝部126a~126dは、取付穴66の軸線(中心軸線)を中心にして略90°の間隔に形成される。溝部126a~126dは保護部124を上下に貫通する。
【0068】
本実施形態の溝部126a~126dは、板厚の異なる2種類の側壁を取り付けることができるように設定される。具体的には、溝部126a、126bの溝幅は板厚の厚い側壁を嵌め込むことができる寸法W1に設定される。また、溝部126c、126dの溝幅は板厚の薄い側壁を嵌め込むことができる寸法W2に設定される。寸法W1と寸法W2との関係は、W1>W2である。ここで、一つの溝部に注目したとき、注目した溝部の溝幅は、隣り合う溝部のうち一方の溝部の溝幅と略同一であり、他方の溝部の溝幅とは異なる。
なお、各溝部126a~126dと保護部124の上面との境界には、側壁を上側から容易に嵌め込むことができるように、上側に向かうほど溝幅が広がるように傾斜部127を有する。
【0069】
ここで、2つの保護部材123を本体部材61に固定する場合、手押部材120の平面視において、それぞれの溝部126a~126dが重畳する状態で本体部材61に固定される。
使用者は、保護部材123および補強部材70を本体部材61に固定した手押部材120を、コーナ部材22の各挿入孔23に挿入することで、手押部材120を台車本体部20に取り付けることができる。このとき、運搬台車3に取り付ける側壁の板厚に応じて、各手押部材120における溝部126a~126dがそれぞれ運搬台車3の前後方向および左右方向を指向するように、補強部材70によって位置決めされる。
【0070】
図16は、運搬台車3に板厚が厚い側壁91A~91Dを取り付ける場合に、手押部材120を位置決めする向きを説明するための平面図である。ここで、板厚が厚い側壁91A~91Dとして、例えばプラスチックダンボール等が用いられる。
板厚が厚い側壁91A~91Dを取り付ける場合には、保護部124の溝部126a、126bが台車本体部20と重畳するように手押部材120をそれぞれコーナ部材22に位置決めする。したがって、平面視において4隅に位置する保護部124のうち、隣り合う保護部124同士では、溝幅が寸法W1である溝部126aと溝幅が寸法W1である溝部126bとが対向する。
使用者は、手押部材120dの溝部126aと手押部材120aの溝部126bとの間、手押部材120aの溝部126aと手押部材120bの溝部126bとの間、手押部材120bの溝部126aと手押部材120cの溝部126bとの間、および、手押部材120cの溝部126aと手押部材120dの溝部126bとの間に、上側から各側壁91A~91Dを挿入する。したがって、板厚の厚い側壁91A~91Dは、手押部材120a~120dの保護部123によって運搬台車3に取り付けられる。
【0071】
図17は、運搬台車3に板厚が薄い側壁92A~92Dを取り付ける場合に、手押部材120を位置決めする向きを説明するための平面図である。ここで、板厚が薄い側壁92A~92Dとして、例えば木材の合板や単板等が用いられる。
板厚が薄い側壁92A~92Dを取り付ける場合には、保護部124の溝部126c、126dが台車本体部20と重畳するように手押部材120をそれぞれコーナ部材22に位置決めする。したがって、平面視において4隅に位置する保護部124のうち、隣り合う保護部124同士では、溝幅が寸法W2である溝部126cと溝幅が寸法W2である溝部126dとが対向する。
使用者は、手押部材120dの溝部126cと手押部材120aの溝部126dとの間、手押部材120aの溝部126cと手押部材120bの溝部126dとの間、手押部材120bの溝部126cと手押部材120cの溝部126dとの間、および、手押部材120cの溝部126cと手押部材120dの溝部126dとの間に、上側から各側壁92A~92Dを挿入する。したがって、板厚の薄い側壁92A~92Dは、手押部材120a~120dの保護部123によって運搬台車3に取り付けられる。
【0072】
このように、手押部材120の保護部材123の溝部126a~126dは板厚の異なる側壁を取り付けることができるので、側壁の板厚に合った溝部126a~126dに側壁を嵌め込むことで、側壁と溝部126a~126dのガタツキを抑制することができる。
【0073】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合せてもよい。例えば、第3の実施形態の手押部材60や第5の実施形態の手押部材100等の上端に、第2の実施形態の保護部材52を取り付けて構成してもよい。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
上述した第1の実施形態では、保護部材が第1の保護部44と第2の保護部45とを有する場合について説明したが、第1の保護部44または第2の保護部45が設けられない構成であってもよい。また、第1~第6の実施形態では、保護部が平面視で略円形である場合について説明したが、保護部の平面視の形状は円形に限定されない。例えば、角部が丸み付けられた多角形であってもよい。
上述した第4および第6の実施形態では、保護部の溝部に側壁を嵌め込む場合について説明したが、溝部と溝部に嵌め込まれる部位の関係を反対にしてもよい。すなわち、例えば、側壁の側辺に沿って板厚の中心に溝部を形成し、側壁の溝に嵌め込まれる突起を保護部に形成してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1~3:運搬台車 20:台車本体部 30:走行部 40:手押部材 41:本体部材 42:保護部材 43:グリップ部 44:第1の保護部 45:第2の保護部 52:保護部材 54:保護部 60:手押部材 61:本体部材 62:グリップ部 63:保護部材 64:保護部 70:補強部材 80:手押部材 83:保護部材 85a~85d:突出部 86a~86c:溝部 87a~87d:支持部 90A~90D:側壁 100:手押部材 110:本体部材 111a:第1の本体部 111b:第2の本体部 112:保持機構 120:手押部材 123:保護部材 124:保護部 126a~126d:溝部
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬台車の矩形状の台車本体部の4隅に設けられた上方に開口する挿入孔に挿入することで前記台車本体部に取り付けられ、前記運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材であって、
下端から上端までが直線状である上下方向に沿ったパイプ状の本体部材と、
前記本体部材の外周面よりも外側に向かって突出して、該手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有する保護部材とを、備えることを特徴とする手押部材。
【請求項2】
請求項1に記載の手押部材と、
前記台車本体部と、を備えることを特徴とする運搬台車。
【請求項3】
運搬台車の矩形状の台車本体部の4隅に設けられた上方に開口する挿入孔に挿入される手押部材のうち下端から上端までが直線状である上下方向に沿ったパイプ状の棒状部材に装着する保護部材であって、
前記棒状部材に装着されることにより前記棒状部材の外周面よりも外側に向かって突出して、該手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有することを特徴とする保護部材。
【請求項4】
請求項3に記載の保護部材と、
前記棒状部材と、
前記台車本体部と、を備えることを特徴とする運搬台車。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、手押部材、運搬台車および保護部材に関する。特に、使用者の手を保護する手押部材等に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
ところで、手押し棒を用いて運搬台車を移動させる際には、手押し棒を掴んでいる(握っている)使用者の手が壁等といった周辺に存在する物体に接触する虞がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、使用者の手を保護することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、運搬台車の矩形状の台車本体部の4隅に設けられた上方に開口する挿入孔に挿入することで前記台車本体部に取り付けられ、前記運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材であって、下端から上端までが直線状である上下方向に沿ったパイプ状の本体部材と、前記本体部材の外周面よりも外側に向かって突出して、該手押部材を掴んだ使用者の手を保護する保護部を有する保護部材とを、備えることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明によれば、使用者の手を保護することができる。