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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006969
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】VI型コラーゲン産生亢進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240110BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 36/88 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20240110BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20240110BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20240110BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 36/746 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/28
A61K36/88
A61K36/06 Z
A61P43/00 105
A61K8/9794
A61K8/9728
A61Q19/00
A61P17/00
A61K36/73
A61K36/746
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075255
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2022105182
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】清野 絢美
(72)【発明者】
【氏名】五味 貴優
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB342
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC662
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD662
4C083BB51
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE17
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC12
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC01
4C087ZC75
4C088AB14
4C088AB26
4C088AB71
4C088BA08
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC01
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】VI型コラーゲン産生を亢進する、新規な組成物を提供すること。
【解決手段】
下記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む、VI型コラーゲン産生亢進剤。
[A群]
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物及びサッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む、VI型コラーゲン産生亢進剤。
[A群]
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物及びサッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌
【請求項2】
さらに、下記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含み、かつ前記B群から選ばれる生物由来抽出物が前記A群から選ばれる生物由来抽出物と異なる、請求項1に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
[B群]
ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物、サッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌、キク科(Asteraceae)ムラサキバレンギク属(Echinacea)に属する植物、バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)に属する植物、アカネ科(Rubiaceae)ヤエヤマアオキ属(Morinda)に属する植物
【請求項3】
前記A群から選ばれる生物由来抽出物が、キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物の抽出物を含む、請求項2に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
【請求項4】
前記B群から選ばれる生物由来抽出物が、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物の抽出物を含む、請求項3に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
【請求項5】
化粧料である、請求項1~4の何れか一項に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
【請求項6】
G0期の細胞におけるVI型コラーゲンを産生亢進するための、請求項1~4の何れか一項に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
【請求項7】
オートファジーを活性化するための、請求項1~4の何れか一項に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
【請求項8】
細胞外マトリックスの産生を亢進するための、請求項1~4の何れか一項に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。
【請求項9】
前記細胞外マトリックスが、ルミカン(lumican;LUM)、エラスチン(elastin;ELN)、EMILIN-1(elastin microfibril interfacer 1)から選択される1種又は2種以上を含む、請求項8に記載のVI型コラーゲン産生亢進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VI型コラーゲン産生亢進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
VI型コラーゲンは、細胞外においてビーズ状のマイクロフィラメントを形成するコラーゲンである。VI型コラーゲンは、細胞マトリックスを構成する成分や細胞表面の受容体と相互作用し、複雑な網目状構造を形成する。
【0003】
皮膚組織において、VI型コラーゲンは、表皮以外の真皮、皮下組織、血管系、神経線維、毛包等に広く分布し、特に表皮と真皮の接合部である基底膜に多く存在する。そして、Col6a1欠損マウスでは、皮膚の引張強度が低下し、コラーゲン線維と基底膜の構造が変化することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
筋肉においては、VI型コラーゲンが欠損すると、筋ジストロフィー等の疾患が引き起こされるとともに、アポトーシスやオートファジーなどの機構に著しい影響を与えることが知られている(非特許文献2)。
また、ColVI欠損マウス(Col6a1-/-)の初代及び不死化線維芽細胞を用いた研究により、VI型コラーゲンの欠損は線維芽細胞においてオートファジーの制御に影響を与えることが示されている(非特許文献3)。
一方で、ヒトの皮膚におけるVI型コラーゲン欠損とオートファジーの関連性については、これまでに報告がない。
【0005】
ここで、オートファジーは、細胞が持っている、細胞内のタンパク質及び細胞小器官を分解するための仕組みの一つである。オートファジーの活性化はアポトーシス、ネクローシス等の細胞死の抑制、そして組織中の幹細胞の減衰の抑止などに繋がることが知られ、オートファジーを活性化する物質には、抗老化作用及び長寿化の作用があることが知られている(非特許文献4)。
【0006】
ところで、カミツレはジャーマンカモミールとも呼ばれ、そのエキスが保湿成分として広く利用されている。例えば、カミツレエキスを含む毛髪洗浄剤組成物(特許文献1)、タンブリッサ・トリコフィラ葉エキス及びカミツレエキスを含む保湿剤(特許文献2)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-219449号公報
【特許文献2】特開2015-229653号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】PLoS One. 2014 Aug 26;9(8)
【非特許文献2】Matrix Biol. 2021 Jun;100-101:162-172.
【非特許文献3】Front Physiol. 2018 Aug 17;9:1129.
【非特許文献4】N Engl J Med. 2013 Feb 14;368(7):651-62.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記先行技術のあるところ、本発明者らは、細胞周期から外れ、休止状態の細胞によっても分泌・活性化される皮膚組織の構成成分を探索したところ、細胞のG0期においてVI型コラーゲンの産生が他の周期と比較して特徴的に亢進することを発見した。また、VI型コラーゲンの発現に着目したスクリーニングを行うことで、G0期で産生亢進したVI型コラーゲンをさらに産生亢進する成分を発見した。
【0010】
すなわち、本発明は、VI型コラーゲン産生を亢進する、新規な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、下記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む、VI型コラーゲン産生亢進剤である。
[A群]
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物及びサッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌
【0012】
前記A群から選ばれる成分を含む本発明は、細胞・組織等におけるVI型コラーゲンの産生を亢進することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、本発明は、さらに、下記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含み、かつ前記B群から選ばれる生物由来抽出物が前記A群から選ばれる生物由来抽出物と異なることを特徴とする。
[B群]
ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物、サッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌、キク科(Asteraceae)ムラサキバレンギク属(Echinacea)に属する植物、バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)に属する植物、アカネ科(Rubiaceae)ヤエヤマアオキ属(Morinda)に属する植物
【0014】
前記B群から選ばれる成分をさらに含むことで、本発明は、VI型コラーゲンの産生亢進作用をより向上させることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記A群から選ばれる生物由来抽出物は、キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物を少なくとも含む。
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物を有効成分として含むことで、本発明は優れたVI型コラーゲン亢進作用を発揮する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記B群から選ばれる生物由来抽出物は、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物由来の抽出物を少なくとも含む。
【0017】
本発明の好ましい形態では、本発明は化粧料である。
【0018】
本発明の好ましい形態では、本発明は、G0期の細胞におけるVI型コラーゲンを産生亢進するためのVI型コラーゲン産生亢進剤である。
【0019】
本発明の好ましい形態では、本発明は、オートファジーを活性化するためのVI型コラーゲン産生亢進剤である。
【0020】
本発明の好ましい形態では、本発明は、細胞外マトリックスの産生を亢進するためのVI型コラーゲン産生亢進剤である。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記細胞外マトリックスが、ルミカン(lumican;LUM)、エラスチン(elastin;ELN)、EMILIN-1(elastin microfibril interfacer 1)から選択される1種又は2種以上を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、VI型コラーゲンの産生を亢進する、新規な組成物を提供することができる。また、本発明によれば、オートファジー活性を向上させる、新規な組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、下記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む。
[A群]
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物及びサッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌
【0024】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物を含むことが好ましい。
【0025】
また、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、さらに、下記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む。
[B群]
ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物、サッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌、キク科(Asteraceae)ムラサキバレンギク属(Echinacea)に属する植物、バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)に属する植物、アカネ科(Rubiaceae)ヤエヤマアオキ属(Morinda)に属する植物
【0026】
前記A群から選ばれる生物由来抽出物と共に、前記B群から選ばれる生物由来抽出物を含むことで、VI型コラーゲンの産生亢進作用をより向上させることができる。
ここで、前記B群から選ばれる生物由来抽出物は、前記A群から選ばれる生物由来抽出物と異なることが好ましい。
【0027】
また、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤にかかる有効成分は、前記A群から選ばれる生物由来抽出物としてキク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物と、B群から選ばれる生物由来抽出物としてガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)、キク科(Asteraceae)ムラサキバレンギク属(Echinacea)及びバラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)に属する植物由来の抽出物から選択する1種または2種以上を組み合わせることが好ましい。
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物と、上述したB群の植物由来の抽出物を組み合わせることで、キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物の有するVI型コラーゲンの産生亢進作用をより向上させることができる。
【0028】
より好ましい形態では、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤に含まれる前記A群から選ばれる生物由来抽出物は、キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物を少なくとも含み、前記B群から選ばれる生物由来抽出物は、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物由来の抽出物を少なくとも含む。
【0029】
本発明に係る、キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物、ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物、キク科(Asteraceae)ムラサキバレンギク属(Echinacea)に属する植物、バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)に属する植物、アカネ科(Rubiaceae)ヤエヤマアオキ属(Morinda)に属する植物としては、其々、カミツレ(Matricaria chamomilla L.)、ホソバヒメガマ(Typha angustifolia L.)、ホソババレンギク(Echinacea angustifolia)、テンヨウケンコウシ(Rubus suavissimus S. Lee)、ヤエヤマアオキ(Morinda citriforia)であることが好ましい。
【0030】
本発明で使用する植物由来の抽出物について、前記植物から抽出物を得る場合、その抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。抽出溶媒としては、水、アルコール類又は水及びアルコール類の混合物を採用することが好ましい。
【0031】
具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられるが、抽出方法はこれに限定されない。
【0032】
次いで、本発明で使用する抽出物について、詳述する。
【0033】
キク科(Asteraceae)シカギク属(Matricaria)に属する植物由来の抽出物は、カミツレ(Matricaria chamomilla L.)の花から、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、又はこれらの混液、もしくは1%尿素含有エタノール溶液、又は1%尿素含有1,3-ブチレングリコール溶液により抽出して得ることが好ましい。
また、市販のものを用いることができ、例えば、「カモミラエキス(1)(一丸ファルコス株式会社、香栄興業株式会社、丸善製薬株式会社など)」を用いることができる。
【0034】
ガマ科(Typhaceae)ガマ属(Typha)に属する植物由来の抽出物は、ホソバヒメガマ(Typha angustifolia L.)、又はその他同属植物の花穂から水、1,3-ブチレングリコール、又はこれらの混液により抽出して得ることが好ましい。
また、市販のものを用いることができ、例えば、「ガマエキス(香栄興業株式会社など)」を用いることができる。
【0035】
キク科(Asteraceae)ムラサキバレンギク属(Echinacea)に属する植物由来の抽出物は、ホソババレンギク(Echinacea angustifolia)の葉からエタノール溶液により抽出して得ることが好ましい。
また、市販のものを用いることができ、例えば、「エチナシ葉エキス(一丸ファルコス株式会社、鈴木ハーブ研究所など)」を用いることができる。
【0036】
バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)に属する植物由来の抽出物は、テンヨウケンコウシ(Rubus suavissimus S.K.Lee)の葉を熱湯に浸漬した後、葉を乾燥し、さらに加熱したものを熱湯により抽出して得ることが好ましい。
また、市販のものを用いることができ、例えば、「テンチャエキス(丸善製薬株式会社など)」を用いることができる。
【0037】
アカネ科(Rubiaceae)ヤエヤマアオキ属(Morinda)に属する植物由来の抽出物は、ヤエヤマアオキ(Morinda citriforia)の果実を自然発酵させて得られるノニ果汁を、1,3-ブチレングリコールにより調整して得ることが好ましい。なお、使用する1,3-ブチレングリコールは、植物由来であることが好ましい。
また、市販のものを用いることができ、例えば、「ノニ果汁(丸善製薬株式会社など)」を用いることができる。
【0038】
サッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌由来の抽出物は、サッカロミケス属(Saccharomyces)に属する菌を自己消化、又は酸加水分解によって得られた液をろ過した後、濃縮又は乾燥して得ることができる。
また、市販のものを用いることができ、例えば、「酵母エキス(1)(一丸ファルコス株式会社、丸善製薬株式会社など)」を用いることができる。
【0039】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤に対し、前記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物の含有量は、乾燥質量を基準として、通常0.00001質量%以上であり、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上である。また、乾燥質量を基準として、0.0001質量%以上であることも好ましく、0.0003質量%以上であることも好ましい。
また、乾燥質量を基準として、通常80質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以下である。
【0040】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤に対し、前記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物の含有量は、乾燥質量を基準として、通常0.00001質量%以上であり、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上である。また、乾燥質量を基準として、0.0001質量%以上であることも好ましく、0.0003質量%以上であることも好ましい。
また、乾燥質量を基準として、通常80質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以下である。
【0041】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤において、前記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物と、前記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物の含有質量比は、乾燥質量を基準として、好ましくは5:1~1:5であり、より好ましくは3:1~1:3であり、さらに好ましくは2:1~1:2である。
【0042】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、皮膚外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。皮膚外用剤又は経口剤は、適宜公知の方法及び機器を使用して製造することができる。
【0043】
皮膚外用剤としては、化粧料、医薬部外品、医薬品などが好適に例示でき、日常的に使用できることから、化粧料、医薬部外品がより好ましい。
本願発明の化粧料としては、ローション剤、乳化剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等の形態に加工することができる。具体的には、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、パック、ヘアクリーム、スプレー、サンケア品等が挙げられ、特に化粧水、乳液及びクリームが好適に例示できる。
【0044】
皮膚外用剤における、生物由来抽出物の含有量は、乾燥質量を基準として、通常0.00001質量%以上であり、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上である。また、乾燥質量を基準として、0.0001質量%以上であることも好ましく、0.0003質量%以上であることも好ましい。
また、乾燥質量を基準として、通常80質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以下である。
なお、前記A群から選ばれる2種以上の生物由来抽出物、及び/又は前記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を含む場合、各生物由来抽出物の合計が、前記数値範囲内にあればよい。
【0045】
本発明を化粧料の形態とする場合、VI型コラーゲン産生の亢進効果を損ねない範囲で、美白成分、しわ改善成分、抗炎症成分、前記A群及びB群に属する生物由来抽出物以外の動植物由来の抽出物、有効成分以外に通常化粧料で使用される成分を、任意成分として配合してもよい。
これらの任意成分は、市販されているものを入手して配合してもよく、公知の方法で合成したものを配合してもよい。また、各任意成分は、2以上の効果(例えば、美白効果としわ改善効果)を有していてもよい。
【0046】
美白成分としては、一般的に化粧料で用いられている成分を、特に制限なく使用することができる。
例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリンメチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリンエチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリンメチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン、デクスパンテノールW、ナイアシンアミド等が挙げられる。
【0047】
化粧料中における美白成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0048】
しわ改善成分としては、一般的に化粧料で用いられている成分を、特に制限なく使用することができる。
例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが挙げられる。また、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステル、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム、ナイアシンアミド等が挙げられる。
【0049】
化粧料中におけるしわ改善成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、好ましくは0.001~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%である(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0050】
抗炎症成分としては、例えば、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール、ナイアシンアミド、トラネキサム酸等が挙げられ、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩が好ましく挙げられる。
【0051】
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0052】
動植物由来の抽出物としては、例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クマザサエキス、クルミエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タンポポエキス、チョウジエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0053】
化粧料中における前記任意の動植物由来の抽出物の含有量は、乾燥質量を基準として、通常0.01~30質量%であり、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.3~3質量%である。
【0054】
有効成分以外に通常化粧料で使用される成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等のポリオール、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類が挙げられる。
【0055】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤を、経口剤とする場合、前記A群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む、飲食品の形態とすることが好ましい。前記有効成分に加え、前記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を有効成分として含む、飲食品の形態とすることがより好ましい。
【0056】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤を、経口剤とする場合、生物由来抽出物の含有量は剤形に応じて、1回あたりの摂取量が、抽出物の乾燥質量として、通常、0.1mg以上であり、好ましくは1mg以上であり、より好ましくは10mg以上である。
また、通常、2000mg以下、好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下である。
なお、前記A群から選ばれる2種以上の生物由来抽出物、及び/又は前記B群から選ばれる1種又は2種以上の生物由来抽出物を含む場合、各生物由来抽出物の合計が、前記数値範囲内にあればよい。
【0057】
また、本発明を皮膚外用剤、経口剤の形態とする場合、本発明は「VI型コラーゲン産生亢進のため」の用途の表示が付された形態とすることも好ましい。
【0058】
前記「表示」は、需要者に対して前記用途を知らしめる機能を有する全ての表示を含む。すなわち、前記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て前記「表示」に該当する。
また、前記「表示が付された」とは、前記表示と、皮膚外用剤等(製品)を関連付けて認識させようとする表示行為が存在していることをいう。
【0059】
表示行為は、需要者が前記用途を直接的に認識できるものであることが好ましい。具体的には、本発明に係る商品又は商品の包装への前記用途の記載行為、商品に関する広告、価格表もしくは取引書類(電磁的方法により提供されるものを含む)への前記用途の記載行為が例示できる。
【0060】
また、上述の通り、細胞のG0期において、VI型コラーゲンの産生が亢進されることが、本発明者らによって明らかにされた。
すなわち、本発明の好ましい実施形態では、本発明は、G0期の細胞におけるVI型コラーゲンを産生亢進するために用いることができる。
【0061】
さらに、本発明者らにより、VI型コラーゲンの存在下で、オートファジーの活性が促進されることが明らかになった。すなわち、VI型コラーゲンの発現が亢進されることで、オートファジー活性が向上するものといえる。
よって、本発明の好ましい実施形態では、本発明は、オートファジーを活性するために用いることができる。
【0062】
また、上述した通り、生体内のオートファジーを活性化させることで、抗老化作用、長寿化作用、自然免疫の強化作用、抗炎症作用、そして凝集したタンパク質の分解作用が得られることが知られている。
従って、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、オートファジーが関連する疾患を治療する目的で使用することができる。例えば、本発明は、抗老化、長寿化、自然免疫の強化、抗炎症、そして凝集したタンパク質の蓄積を原因とする疾患の予防又は治療を目的とする成分として使用することができる。
より具体的には、癌、神経障害疾患、感染症、免疫異常等の治療の目的で、本発明を使用することができる。神経障害疾患としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病等が挙げられる。
【0063】
また、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、オートファジー活性の低下によって引き起こされる、肌状態の予防及び/又は改善に用いることができる。
【0064】
本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、VI型コラーゲンの発現低下により生じるケロイドおよび乾燥肌、紅斑線条、及び毛孔性苔癬の改善や、その他の皮膚に関する症状、例えば日光弾力線維症による真皮の弾力性低下、Ehles-Danlos症候群による真皮の弾力性低下、Marfan症候群による真皮の弾力性低下、弾性線維仮性黄色腫による真皮の弾力性低下、皮膚形成異常症による真皮の弾力性低下、早老症による真皮の弾力性低下などの皮膚異常の改善のために用いることができる。
【0065】
また、後述の実施例で示す通り、VI型コラーゲンは、加齢に伴い真皮下層の真皮網状層において発現が低下する。すなわち、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、加齢に伴うVI型コラーゲンの産生低下による皮膚異常や肌状態の悪化に対し好適に適用することができる。
【0066】
さらに、本発明者らは、VI型コラーゲンの存在下において、ヒト皮膚線維芽細胞において細胞外マトリックス関連遺伝子の発現が活性化されることを発見した。この結果より、皮膚組織のVI型コラーゲンにより、真皮組織における細胞外マトリックスの産生を亢進させることができることを見出した。
すなわち、本発明の好ましい実施形態では、本発明は、細胞外マトリックスの産生を亢進するために用いることができる。
【0067】
VI型コラーゲンの発現に伴い産生が亢進される細胞外マトリックスとしては、ルミカン(lumican;LUM)、エラスチン(elastin;ELN)、EMILIN-1(elastin microfibril interfacer 1)が好適に挙げられる。
【実施例0068】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0069】
<試験例1>G0期に誘導された細胞におけるVI型コラーゲンの発現亢進
培地(10%FBS+DMEM)を用いて、培養プレートに正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDFs)をセミコンフルエントになるよう播種した。細胞の接着後、培地(10%FBS+DMEM、血清枯渇なし(コントロール))あるいは培地(0%FBS+DMEM、血清枯渇あり)の条件で細胞を培養後、細胞からRNAを回収した。
【0070】
回収したRNAを、リアルタイムPCR法を用いて分析し、VI型コラーゲンの遺伝子(COL6A1及びCOL6A3)の発現を評価した。同時に、細胞がG0期に誘導されていることを確認する目的でMKI67の遺伝子発現低下を確認した。さらに、比較例としてI型コラーゲンの遺伝子発現を評価した。
【0071】
表1に示すように、血清枯渇なしの条件に対し、血清枯渇ありの条件においてMKI67遺伝子発現の顕著な減少が確認されたことから、血清枯渇ありの条件において細胞がG0期に誘導されたといえる。そして、G0期への誘導が確認された血清枯渇ありの条件において、VI型コラーゲン(COL6A1、COL6A3)の発現が亢進することが確認された。
一方で、同条件においてI型コラーゲン(COL1A1)の発現への影響は認められなかった。
【0072】
【表1】
【0073】
以上より、G0期の細胞において、VI型コラーゲンの発現が上昇するが、この作用機序にはI型コラーゲンの発現は関与しないことが明らかとなった。
【0074】
<試験例2>VI型コラーゲンの発現を亢進するエキスのスクリーニング
培地(10%FBS+DMEM)を用いて、培養プレートに正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDFs)を、セミコンフルエントになるよう播種した。細胞の接着後、培地(10%FBS+DMEM)あるいは培地(0%FBS+DMEM)に下記表2に記載のエキス(生物由来抽出物)を、各々最終濃度0.2%(乾燥質量で0.0008~0.002質量%)となるように添加してエキス含有培地とし、当該培地にて細胞を培養後、細胞からRNAを回収した。
コントロール(NC)としては、エキスを未添加の培地(10%FBS+DMEM)を用いて、同様の条件で培養したものを用いた。
【0075】
回収したRNAを、リアルタイムPCR法を用いて分析し、VI型コラーゲン(COL6A1)の遺伝子発現を評価した。具体的には、血清枯渇ありかつエキス未添加の細胞における遺伝子発現量を基準とし、血清枯渇ありの細胞におけるエキス添加後の遺伝子発現量を算出した。表2は、血清枯渇ありかつエキス未添加の細胞における遺伝子発現量を基準値(100%)とした場合における、エキス添加後の遺伝子発現の上昇率(%)を示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示すように、0.2%カモミラエキス(1)、0.2%ガマエキス又は0.2%酵母エキス(1)を添加した場合に、VI型コラーゲン発現が上昇することが明らかとなった。本試験例2では、G0期に誘導され、VI型コラーゲンの発現が上昇した細胞を用いてスクリーニングを行っている。よって、上述の3種類のエキスは、G0期に誘導された細胞において、VI型コラーゲン発現を更に亢進する作用があることが示された。
【0078】
また、2種の抽出物を組み合わせて配合した場合、0.2%カモミラエキス(1)と0.2%エチナシ葉エキス、0.2%カモミラエキス(1)と0.2%ガマエキス、0.2%カモミラエキス(1)と0.2%テンチャエキスの組み合わせにおいて、0.2%カモミラエキス(1)を単独で添加した場合よりも、G0期におけるVI型コラーゲン発現の更なる亢進作用が認められた。
【0079】
<試験例3>VI型コラーゲンのコーティングによるオートファジーの促進作用
VI型コラーゲン(COL6A1、COL6A3)で培養プレートの底面を一晩コーティングした後、培地(10%FBS+DMEM)に正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDFs)をセミコンフルエントになるよう播種した。また、コントロール(NC)として、VI型コラーゲンをコーティングしていない培養プレートに細胞を播種した。細胞の接着後、24時間培養し、細胞からRNAを回収した。
【0080】
回収したRNAを、リアルタイムPCR法を用いて分析し、オートファジー関連の遺伝子(MTOR、ATG3、ATG5、ATG7、ATG12)の発現を評価した。
【0081】
表3に示すように、VI型コラーゲン(COL6A1、COL6A3)をコーティングした条件において、上述のオートファジー関連遺伝子の発現が亢進した。
この結果より、VI型コラーゲンの発現が上昇することで、オートファジー活性が上昇することが推認される。すなわち、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、オートファジー活性を促進するために用いることができることを示している。また、VI型コラーゲンの発現がG0期に亢進され、VI型コラーゲンが産生されることにより、活動期(G1期、S期、G2期、又はM期)におけるオートファジー活性が促進されると推認される。
【0082】
【表3】
【0083】
<試験例4>VI型コラーゲンのコーティングによる細胞マトリックスの促進作用
VI型コラーゲン(COL6A1、COL6A3)で培養プレートの底面を一晩コーティングした後、培地(10%FBS+DMEM)に正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDFs)をセミコンフルエントになるよう播種した。また、コントロール(NC)として、VI型コラーゲンをコーティングしていない培養プレートに細胞を播種した。細胞の接着後、24時間培養し、細胞からRNAを回収した。
【0084】
回収したRNAについて、DNA array法(ClariomTM S アッセイ)を用いて遺伝子発現を評価した。そして、遺伝子発現が向上した細胞外マトリックス関連遺伝子を選択した。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
表4に示すように、VI型コラーゲン(COL6A1、COL6A3)をコーティングした条件において、細胞外マトリックス関連遺伝子(LUM、ELN及びEMILIN-1)の発現が亢進した。これにより、VI型コラーゲンの発現を亢進させることにより、真皮の細胞外マトリックスの産生を亢進させることが可能であるといえる。すなわち、この結果は、本発明のVI型コラーゲン産生亢進剤は、細胞外マトリックスの産生を亢進するために用いることができることを示している。
【0087】
<試験例5>加齢に伴うVI型コラーゲンの発現量の変化
20代、30代、50代、60代の女性を各年代から2名ずつ選出し、頬部組織を採取した。得られたヒト頬部組織を用いてパラフィンブロックを作製し、当該パラフィンブロックを薄切して組織片を得た。
【0088】
次いで、取得した組織片について、免疫組織化学染色法によりCOL6A1を染色し、蛍光顕微鏡を用いて染色画像を取得した。得られた染色画像について、同一ピクセル当たりCOL6A1由来の平均輝度値を算出し、各検体のCOL6A1発現量とした。COL6A1発現量は、20~30代と50~60代の2群に分け、各群n=4として群ごとの平均を算出した。
結果を、表5に示す。
【0089】
【表5】
【0090】
表5に記載の通り、50~60代の被検者では、20~30代の被検者と比して、真皮網状層(下層)においてVI型コラーゲン発現量が低いことが確認された。すなわち、真皮網状層(下層)において、加齢によりVI型コラーゲンの発現が低下することが明らかとなった。
【0091】
以下、本発明のVI型コラーゲン発現亢進剤の一実施形態である、化粧料の処方例を挙げるが、本発明の技術的範囲はこれらの処方例に限定されない。
【0092】
<処方例1及び2 化粧水>
下記の処方例1、2に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧水を調製した。まず、Bの成分を60℃に加温して、それぞれ混合し均一溶解させた。その後、35℃に冷却後、BにAを添加し、攪拌冷却することで化粧水を得た。
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
<処方例3 乳液>
下記の処方例3に従って、乳液を調製した。すなわち、A及びBの成分を80℃でそれぞれ加温して混合し、攪拌下でAにBを徐々に加え、攪拌冷却後、Cを添加しさらに撹拌冷却することで乳液を得た。
【0096】
【表8】
【0097】
<処方例4 O/W型UVクリーム>
下記の処方例4に従って、本発明の皮膚外用剤であるO/W型UVクリームを調製した。まず、A及びBの成分を80℃に加温して、それぞれ混合した。その後、攪拌下でAにBを徐々に加え、攪拌冷却後、Cを添加しさらに撹拌冷却することでO/W型UVクリームを得た。
【0098】
【表9】
【0099】
処方例1~4の化粧料を肌に塗布することにより、VI型コラーゲンの産生亢進作用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、VI型コラーゲン産生を亢進できる組成物を提供することができる。