(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000697
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】界面強度評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
G01N3/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099547
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】大畑 耕太
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB03
2G061BA04
2G061CA16
2G061CB18
2G061CC20
2G061EA01
(57)【要約】
【課題】金属部材同士の界面強度を適切に評価することができる界面強度評価方法を提供することを課題とする。
【解決手段】互いに接合された第1及び第2金属部材の界面の強度を評価する界面強度評価方法であって、互いに接合され、前記界面以外の表面に硬化したエポキシ樹脂系の補強層が形成されている前記第1金属部材と前記第2金属部材とを準備する準備工程と、前記第1及び第2金属部材を互いに引き離すように前記第1及び第2金属部材に対して引張試験を行う試験工程と、を備えた界面強度評価方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された第1及び第2金属部材の界面の強度を評価する界面強度評価方法であって、
互いに接合され、前記界面以外の表面に硬化したエポキシ樹脂系の補強層が形成されている前記第1金属部材と前記第2金属部材とを準備する準備工程と、
前記第1及び第2金属部材を互いに引き離すように前記第1及び第2金属部材に対して引張試験を行う試験工程と、
を備えた界面強度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面強度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属部材同士の界面強度を評価するために、これらの金属部材に引張試験を行うことが考えられる。しかしながら金属部材自体の強度によっては、引張荷重が増大する過程で金属部材自体が破断してしまい、界面強度を適切に評価することができないおそれがある。
【0005】
金属部材同士の界面強度を適切に評価することができる界面強度評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、互いに接合された第1及び第2金属部材の界面の強度を評価する界面強度評価方法であって、互いに接合され、前記界面以外の表面に硬化したエポキシ樹脂系の補強層が形成されている前記第1金属部材と前記第2金属部材とを準備する準備工程と、前記第1及び第2金属部材を互いに引き離すように前記第1及び第2金属部材に対して引張試験を行う試験工程と、を備えた界面強度評価方法によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属部材同士の界面強度を適切に評価することができる界面強度評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、互いに接合された第1部材及び第2部材の説明図である。
【
図2】
図2は、接着剤の塗布量と引張試験の結果とを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施例での界面強度評価方法は、互いに接合された第1及び第2金属部材の界面の強度を評価する界面強度評価方法である。詳細には、界面強度評価方法は、以下の準備工程及び試験工程を含む。準備工程は、互いに接合され、界面以外の表面に硬化したエポキシ樹脂系の補強層が形成されている第1金属部材と第2金属部材とを準備する工程である。試験工程は、第1及び第2金属部材を互いに引き離すように第1及び第2金属部材に対して引張試験を行う工程である。最初に準備工程について説明する。
【0010】
図1は、互いに接合された第1部材10及び第2部材20の説明図である。
図1では、第1部材10及び第2部材20の断面を示している。第1部材10及び第2部材20は、互いに金属製であり、第1部材10の接合面11と第2部材20の接合面21とで接合されている。接合面11及び21は、互いに平坦に形成されており、界面に相当する。第1部材10及び第2部材20は、同種の金属であってもよいし、異種の金属であってもよい。後述する引張試験で付与される引張荷重の方向の厚みは、第1部材10の方が第2部材20よりも薄い。このため、後述する引張荷重に対する強度は、第1部材10の方が第2部材20よりも弱い。第1部材10は例えば金属箔であり、第2部材20は例えば金属板である。第1部材10は第1金属部材の一例であり、第2部材20は第2金属部材の一例である。第1部材10の接合面11とは反対側の面12には、第1部材10を補強するための補強層30が形成されている。
【0011】
補強層30は、エポキシ樹脂系の接着剤が硬化して形成された層である。補強層30は、面12の全体に均一な厚さで形成されているがこれに限定されない。このように第1部材10に補強層30が形成されていることにより、第1部材10の強度が確保されている。
【0012】
尚、このような補強層は、接合面11及び21から離れた位置に形成されていることが望ましい。例えば接合面11に補強層が形成されており、この補強層が第2部材20の接合面21に接合されていると、第1部材10と第2部材20との接合強度を適切に評価することができないからである。また、例えば、第1部材10及び第2部材20の側面に跨って補強層が形成されている場合、補強層が第1部材10と第2部材20とを接合していることになり、後述する界面強度を適切に評価することができないからである。
【0013】
準備工程では、このような補強層30が形成され互いに接合された第1部材10と第2部材20とを準備する。準備工程では、第1部材10と第2部材20との接合後に、第1部材10の面12に接着剤を塗布して接着剤を硬化させて補強層30を形成してもよい。また、第1部材10と第2部材20との接合前に、第1部材10の面12に接着剤を塗布して接着剤を硬化させて補強層30を形成してもよい。補強層30の形成は、エポキシ2液混合系金属用接着剤を第1部材10の面12に塗布し、この接着剤に超音波振動を印加して硬化させてもよい。また、接着剤が塗布された第1部材10に超音波振動を印加することにより、接着剤を第1部材10の面12に浸透させてもよい。尚、第1部材10と第2部材20との接合方法は限定されず、例えば超音波接合やレーサー溶接、抵抗溶接等であってもよい。
【0014】
次に試験工程について説明する。試験工程では、引張試験機を用いて接合面11及び21に垂直な方向に第1部材10及び第2部材20に引張荷重を印加し、この引張荷重を徐々に増大する。上述したように補強層30により第1部材10の強度が確保されているため、第1部材10の破断を抑制しつつ第1部材10及び第2部材20に引張荷重を印加することができる。更に、引張荷重を増大させていく過程において、接合面11及び21が互いに剥離した際の引張荷重を計測する。これにより、第1部材10が破断することなく第1部材10及び第2部材20の界面強度を評価することができる。
【0015】
図2は、接着剤の塗布量と引張試験の結果とを例示した図である。縦軸は、破断時の引張荷重の大きさを示している。
図2では、接着剤の塗布量が十分な場合と、接着剤の塗布量が少ない場合と、接着剤を塗布しなかった場合とでの、破断時での引張荷重を示している。接着剤の塗布量が十分な場合とは、面12の全面に亘って補強層30が形成されている場合である。接着剤の塗布量が少ない場合とは、面12の一部のみに補強層30が形成されている場合である。また、
図2に例示した〇は、接合面11及び21が互いに剥離する界面破断を示す。△は、第1部材10の一部と界面の一部とが破断した場合を示す。●は、界面が破断する前に第1部材10が破断した場合を示す。
【0016】
図2に示すように、接着剤の塗布量が十分な場合には、第1部材10の強度が十分なものとなり界面破断を実現することができる。接着剤の塗布量が少ない場合や、接着剤を塗布しなかった場合には、第1部材10の強度が不十分であるため、第1部材10の少なくとも一部が破断する。
【0017】
以上のように、第1部材10の面12に十分に接着剤を塗布して補強層30を形成することにより、第1部材10の強度を確保して、引張試験において第1部材10及び第2部材20の界面強度を精度よく評価することができる。
【0018】
上記実施例では、補強層30は第1部材10の面12に全面に亘って形成されているが、これに限定されない。例えば、引張試験において第1部材10が破断しやすい箇所にのみ補強層を形成してもよい。
【0019】
上記実施例では第1部材10にのみ補強層30が形成されている例を説明したがこれに限定されない。例えば、第2部材20にも補強層を形成してもよい。例えば、第1部材10及び第2部材20の何れも強度が低い場合に、双方とも補強層を形成することにより、両者の界面強度を適切に評価することができる。
【0020】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 第1部材(第1金属部材)
20 第2部材(第2金属部材)
11、21 接合面
30 補強層