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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069708
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】皮膚常在菌に対する抗菌剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240514BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240514BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240514BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/7048
A61P17/00 101
A61P31/04
A61P17/10
A61K31/352
A61K36/28
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051387
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2020062435の分割
【原出願日】2020-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年3月26日日本薬学会第140年会にて発表(なお、新型コロナウイルス感染拡大のため、集会は中止、WEBのみの公開となった。)
(71)【出願人】
【識別番号】594045089
【氏名又は名称】オリザ油化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】下田 博司
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、新規の皮膚常在菌フローラの改善剤を提供することにある。
【解決手段】前記課題を解決するため、本発明の技術的特徴は以下のとおりである。
1.S-petasin、S-isopetasin、及びfukinoneのうちの少なくとも1種を有効成分とする黄色ブドウ球菌抗菌剤。
2.S-petasin、S-isopetasinのうちの少なくとも1つを有効成分とする皮膚常在菌フローラ改善剤。
3.上記皮膚常在菌フローラ改善剤は、黄色ブドウ球菌に対し強い抗菌活性を有し、表皮ブドウ球菌おいては、弱い抗菌活性を有することによって、皮膚常在菌フローラの改善作用を有するものであることを特徴とする上記2.に記載の皮膚常在菌フローラ改善剤。
4.縮合型タンニン及びkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideのうちの少なくとも一方を有効成分とする抗フケ菌剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合型タンニン及びkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideのうちの少なくとも一方を有効成分とする抗フケ菌剤。
【請求項2】
フキ脂溶性エキスを有効成分とする皮膚常在菌フローラ改善剤。
【請求項3】
フキ脂溶性エキスを有効成分とする抗腋臭菌剤。
【請求項4】
フキ脂溶性エキスを有効成分とする抗マラセチア菌剤。
【請求項5】
フキ脂溶性エキスを有効成分とする脂漏部位における抗アクネ菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フキ由来の皮膚常在菌に対する抗菌剤に関するもので、例えば、飲食品、薬品、化粧品等の素材として適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
ヒト健常皮膚表面には皮膚常在菌と称される微生物による集合体の皮膚常在菌叢が形成されている。個人差、部位差、季節変動などがあるが、皮膚常在菌叢には嫌気性最優勢菌として アクネ菌(Propionibacterium acnes: P. acnes)が、好気性菌として、スタフィロコッカス・アウレス(黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus : S. aureus)やスタフィロコッカス・エピデルミティス(表皮ブドウ球菌Staphylococcus epidermidis: S.epidermidis )が皮膚常在菌として生息している。皮膚常在菌叢は他の病原微生物からの生体防御と疾患発現(内因感染)の2つの矛盾した役割を果たしていることが報告されている。生体防御としては外部からの病原菌の進入を防ぐバリアー機能があげられる。しかし、外傷、病気等による全身状態の不良、精神的ストレス、寒冷、乾燥、不適切な洗浄等によって皮膚常在菌叢のバランスが崩れると、S.aureus 、P. acnesなどの皮膚常在菌が過剰増殖し、様々な皮膚症状が誘発され、疾患発現が起こる( 特許文献1)。これにより、皮膚の常在菌においては、 S. aureusが少なく、S.epidermidisが多い状態となることが好ましい。
【0003】
また、フケは皮脂腺の分泌物、汗腺の分泌物、表皮層の剥離物または脱離物から構成され、通常は皮脂腺等の分泌亢進や細胞の角質化により発生する。さらに頭皮常在菌の一種で、好脂性真菌であるマラセチア属菌の増殖がフケの発生に関与することが知られている。従来、フケの原因菌となるマラセチア属菌としてはMalassezia furfurが知られていた。さらに近年、Malassezia restrictaやMalassezia globosa等の他のマラセチア属菌もまた、フケや他の頭皮疾患に関与していることが報告されている(特許文献3)。
【0004】
また、わきの下から発生するニオイ(腋臭ともいう)は酸っぱくて蒸れたニオイ(汗臭、酸臭などと呼ばれる)とアポクリン臭(「わきが」とも呼ばれる)に大別できる。アポクリン臭は、腋の下に分布するアポクリン汗腺由来の分泌物が原因で発生し、複雑かつ強い臭気のため、本人又はそばに居る人に特に感知されやすい。そのため、わきがを気にする人にとっては、特にアポクリン臭の強さが関心事となっている。さらに、わきがの発生を抑制する素材の開発も求められている。
【0005】
アポクリン臭は主に、(1)硫黄様で生臭いニオイと、(2)動物的でスパイシーなニオイとから構成されており、それらの主要原因成分が、それぞれ、3-メルカプト-3-メチルヘキサン-1-オールに代表される3位にチオール基を有するアルコール化合物(以下、これらの化合物を3-メルカプトアルコール化合物ともいう)、3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸に代表されるβ-ヒドロキシ酸化合物であることが知られている。
【0006】
現在までに、アポクリン臭のうち、硫黄臭様の原因物質である3-メルカプト-3-メチルヘキサン-1-オール等の3-メルカプトアルコール化合物の生成菌として、S. hominisが知られている。
【0007】
さらに、皮膚から分泌される皮脂は、皮膚の微生物由来のリパーゼにより分解され、脂肪酸が生成し、さらに酸化分解を受け、有臭物質を発生させる。また、この脂肪酸分解物は、皮膚細胞に刺激を与え、吹き出物、ニキビ、肌荒れ等の炎症や、悪臭の原因となる。
【0008】
特に、アクネ菌は、ブドウ球菌と並び、ヒトの皮膚に最も多く常在し、健常皮膚において細菌叢を形成しているが、ニキビの発生に大きな役割を果たしており、また、慢性感染症の原因としての報告も見られる。皮膚では、アクネ菌は、毛穴の中で、リパーゼを分泌し、皮脂を分解して脂肪酸を生産する。毛穴にたまった脂肪酸は、紫外線や酸素などで酸化し、これが角栓を形成し、化膿し、炎症を起こした状態が、ニキビである。また、アクネ菌由来のリパーゼにより、皮脂が分解されると、体臭の原因となる種々の物質が形成される(特許文献4)。特に、鼻周辺,額,耳後ろ等脂漏部位は皮脂腺が密集しており、皮脂が分泌されやすいため、アクネ菌が増殖しやすい。
【0009】
【特許文献1】特開2010-202604号公報
【特許文献2】特開2011-167082号公報
【特許文献3】特開2013-249294号公報
【特許文献4】特開2009-046434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景の下、本発明者らは、フキの抽出物及びその構成成分であるS-petasin、 S-isopetasinにおいて、皮膚常在菌のうち黄色ブドウ球菌(S. aureus)における強い抗菌活性を有し、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)おいては、弱い抗菌活性を有することによって、皮膚常在菌フローラの改善作用を有し、fukinoneにおいて、黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する抗菌作用を有することを見出し、また、本発明を完成させた。
本発明の目的は、新規の皮膚常在菌フローラの改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の技術的特徴は以下のとおりである。
1.S-petasin、S-isopetasin、及びfukinoneのうちの少なくとも1種を有効成分とする黄色ブドウ球菌抗菌剤。
2.S-petasin、S-isopetasinのうちの少なくとも1つを有効成分とする皮膚常在菌フローラ改善剤。
3.上記皮膚常在菌フローラ改善剤は、黄色ブドウ球菌に対し強い抗菌活性を有し、表皮ブドウ球菌おいては、弱い抗菌活性を有することによって、皮膚常在菌フローラの改善作用を有するものであることを特徴とする上記2.に記載の皮膚常在菌フローラ改善剤。
4.縮合型タンニン及びkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideのうちの少なくとも一方を有効成分とする抗フケ菌剤。
5.フキ脂溶性エキスを有効成分とする皮膚常在菌フローラ改善剤。
6.フキ脂溶性エキスを有効成分とする抗腋臭菌剤。
7.フキ脂溶性エキスを有効成分とする抗マラセチア菌剤。
8.フキ脂溶性エキスを有効成分とする脂漏部位における抗アクネ菌剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、S-petasin、S-isopetasin、及びfukinoneに黄色ブドウ球菌における抗菌作用を有するので、これらのうちの少なくとも1種を有効成分として含有することにより、黄色ブドウ球菌抗菌剤として有用である。
また、本発明によれば、黄色ブドウ球菌に対し強い抗菌活性を有し、表皮ブドウ球菌おいては、弱い抗菌活性を有することによって、皮膚における黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌の比率を調整することができ、これにより、皮膚常在菌フローラの改善作用を有し、したがって、皮膚常在菌フローラの改善剤として有用である。
さらに、本発明によれば、縮合型タンニン及びkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideにフケ菌抑制作用を有するので抗フケ菌剤として有用である。
また、本発明によれば、フキ脂溶性エキスは、悪玉菌の黄色ブドウ球菌S. Aureusに対しては濃度依存的な抗菌活性を示すが,善玉菌の表皮ブドウ球菌S. Epidermidis等に対しては抗菌活性を示さなかった。これにより、善玉菌の生育には影響を与えず悪玉菌に対して抗菌活性を示すため、皮膚常在菌フローラの改善作用を有し、したがって、皮膚常在菌フローラの改善剤として有用である。
さらに、本発明よれば、フキ脂溶性エキスの塗布により,腋窩において、腋臭の原因になる3-メルカプトアルコール化合物を産生するS. hominisを抑制する。これにより、抗腋臭菌剤として有用である。
また、本発明によれば、フキ脂溶性エキスの塗布により,マラセチア菌存在比の減少作用を有する。これにより、抗マラセチア菌剤として有用であり、頭皮ケアや他の発毛部位のヘルスケアにも効果的である。
さらに、脂漏部位において,過剰なアクネ菌(P. Acnes)の増殖を抑制する作用を有し、これにより、脂漏部位における抗アクネ菌剤として有用であることが確認された。
尚、本願において「脂漏部位」とは、皮脂の分泌が盛んな部位のことをいい、例えば、鼻周辺、額、耳後ろ等が挙げられるが、皮脂の分泌が盛んな部位であればこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例のフキから各種成分の分離スキーム図である。
図2】フキ脂溶性エキスの抗菌作用を示すグラフである。
図3】フキ脂溶性エキスの表皮ブドウ球菌(S. Epidermidis)とその他のStaphylococcus属割合に及ぼす作用を示すグラフである。
図4】フキ脂溶性エキスのアクネ菌(P. Acnes)に及ぼす作用を示すグラフである。
図5】フキ脂溶性エキスのマラセチア菌に及ぼす作用を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の黄色ブドウ球菌抗菌剤は、S-petasin、S-isopetasin、及びfukinoneのうちの少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とする。
また、本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤は、S-petasin、S-isopetasinのうちの少なくとも1つを有効成分とすることを特徴とする。
上記化合物S-petasin、S-isopetasin、及びfukinoneを得る方法は特に限定されないが、フキから抽出することが好ましい。
本発明の黄色ブドウ球菌抗菌剤及び皮膚常在菌フローラ改善剤(以下、「皮膚常在菌フローラ改善剤等」という)の原料である“フキ(蕗)”は、キク科フキ属(Petasites)の多年草で、中国の生薬名では“ホウトサイ”と呼ばれる。雌雄異株で地下に横走する根茎を有し、この根茎から出る葉柄につば広の葉身を付ける。花は早春に葉の展開に先だってあらわれ、短い直立した茎の頂部に散房状に筒状花からなる頭花(花茎:フキノトウ)を付ける。
日本原産の野菜として古くから栽培され、花序や花茎あるいは葉柄を食用としている。自生しているものも採取、利用されている。栽培品種としては、愛知早生ブキ、水フキ(京ブキ)、アキタブキ、ラワンブキ等がある。
【0015】
原料から皮膚常在菌フローラ改善剤等の有効成分を抽出するための溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、アセトン等を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。
望ましくは、含水エタノールを抽出溶媒として用いるとよい。特に、含水エタノールは、抽出の際に有効成分の活性を低下させにくく、抽出物の食品使用における安全面の上でも好ましい抽出溶媒である。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水、深層水等を使用することができる。
【0016】
抽出温度としては、例えば含水エタノールを使用する場合、抽出温度20~80℃、望ましくは60~70℃程度で行うとよい。抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくくなり、また、抽出温度が高すぎると、有効成分の活性が低下しやすくなるためである。
【0017】
抽出溶媒としての含水エタノールは、エタノール濃度40~90%(wt/wt)であるとよい。エタノール濃度40%(wt/wt)以上としたのは、エタノール含有量が少なすぎると、抽出量が少なくなり、また、エタノール濃度90%(wt/wt)以下としたのは、エタノール濃度が高ぎると、有効成分が抽出されにくくなるからである。望ましくはエタノール濃度60~80%(wt/wt)、さらに望ましくは70%(wt/wt)程度であるとよい。なお、エタノール抽出は、有効成分の含有率を向上させるため、エタノール濃度を段階的に変えながら繰り返して行うとよい。
【0018】
本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等の抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
【0019】
具体的な抽出方法を示すと、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料(フキ)を投入し、攪拌しながら有効成分を溶出させる。例えば、抽出溶媒として含水エタノールを用いる場合には、抽出原料の5~100倍量程度(重量比)の抽出溶媒を使用し、30分~2時間程度抽出を行う。溶媒中に有効成分を溶出させた後、ろ過して抽出残渣を除くことによって抽出液を得る。その後、常法に従って抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、化合物S-petasin、S-isopetasin、及びfukinoneの単離、精製を行って本発明による皮膚常在菌フローラ改善剤等を得る。なお、本発明においては、フキエキスからこれらの化合物を単離したものを用いてもよいが、これらの化合物を含有しているものであれば単離精製を行わないフキエキスを用いてもよい。
単離精製方法としては、例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂、液-液向流分配等の方法が挙げられる。具体的には、例えば本願明細書の実施例の方法にて単離精製を行うことができる。
【0020】
本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等は、各種飲食品の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。これらの飲食品に本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等を適宜配合するとよい。
【0021】
これら飲食品には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の食品素材を使用することができる。
【0022】
具体的な製法としては、フキの溶媒抽出物を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、フキの溶媒抽出物を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0023】
本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等を飲食品に適用する場合の添加量としては、病気予防や健康維持が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1~20wt%以下であるのが好ましい。
【0024】
本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等は、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明の皮膚常在菌に対する抗菌剤を適宜配合して製造することができる。本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0025】
本発明による皮膚常在菌フローラ改善剤等の投与方法は、一般的には、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、液剤等の形態で経投与することができるが、非経口投与であってもよい。非経口剤として投与する場合は、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、局所組織内投与、皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射などによることができる。また、坐剤などの形態としてもよい。
【0026】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分(フキ抽出物)として0.5~5000mg、子供では通常0.5~3000mg程度投与することができる。
皮膚常在菌フローラ改善剤等の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口または粘膜吸収により投与される場合は約0.3~15.0wt%、非経口投与による場合は、0.01~10wt%程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0027】
本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等を配合しうる化粧品の形態としては、例えば乳液、石鹸、洗顔料、入浴剤、クリーム、乳液、化粧水、オーデコロン、ひげ剃り用クリーム、ひげ剃り用ローション、化粧油、日焼け・日焼け止めローション、おしろいパウダー、ファンデーション、香水、パック、爪クリーム、エナメル、エナメル除去液、眉墨、ほお紅、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、口紅、リップクリーム、シャンプー、リンス、染毛料、分散液、洗浄料等が挙げられる。
また、 本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤等を配合しうる医薬品または医薬部外品の形態としては、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等が挙げられる。
【0028】
上記形態の皮膚外用剤には、本発明による皮膚常在菌フローラ改善剤等の他に、その皮膚常在菌に対するフローラ改善効果等を損なわない範囲で化粧品、医薬部外品などに配合される成分、油分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、粉体、顔料、界面活性剤、多価アルコール・糖、高分子、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。
具体例を以下に羅列するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(1)油分の例
エステル系の油相成分:トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソアラキル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルデシル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、炭酸ジプロピル、炭酸ジアルキル(C12-18)、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソアラキル、クエン酸トリイソオクチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリル等が挙げられる。
炭化水素系の油相成分:スクワラン、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
動植物油とその硬化油、および天然由来のロウ:牛脂、硬化牛脂、豚脂、硬化豚脂、馬油、硬化馬油、ミンク油、オレンジラフィー油、魚油、硬化魚油、卵黄油等の動物油およびその硬化油、アボカド油、アルモンド油、オリブ油、カカオ脂、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、大豆油、月見草油、シソ油、茶実油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、硬化ナタネ油、パーム核油、硬化パーム核油、パーム油、硬化パーム油、ピーナッツ油、硬化ピーナッツ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ホホバ油、硬化ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドホーム油、綿実油、硬化綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油等の植物油およびその硬化油、ミツロウ、高酸価ミツロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬化ラノリン、液状ラノリン、カルナバロウ、モンタンロウ等のロウ等が挙げられる。
シリコーン系の油相成分:ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルシクロシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性シリコーン油、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ジメチコノール、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等が挙げられる。
フッ素系の油相成分:パーフルオロポリエーテル、フッ素変性オルガノポリシロキサン、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
(2)高級アルコールの例
ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-エチルヘキサノール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
(3)脂肪酸の例
カプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2-エチルヘキサン酸等が挙げられる。
(4)紫外線吸収剤の例
パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸エチルジヒドロキシプロピル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸オクチルジメチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル、ケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシヒドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジイソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシオクトキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2-エチルヘキシル-1-オキシ)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル-O-アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、フェニルベンゾイミダゾール硫酸、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、イソプロピルジベンゾイルメタン、4-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等、およびこれらの高分子誘導体やシラン誘導体等が挙げられる。
(5)粉体・顔料の例
赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号ALレーキ、黄色203号BAレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、デンプン、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等のこじゅ分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等の金属セッケン、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定経口、燐片状、紡錘状等)および粒子径に特に制限はない。なおこれらの粉は、従来公知の表面処理、例えばフッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属セッケン処理、アミノ酸処理、レシチン処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等によって事前に表面処理されていてもいなくても構わない。
(6)界面活性剤の例
アニオン性界面活性剤:脂肪酸セッケン、α-アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N-アシルアミノ酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸ナトリウム、アシル化加水分解コラーゲンペプチド塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤:塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベヘニン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラノリン誘導体第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤:カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型、アミドアミン型等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤:プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POP共重合体、POE・POPアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンラウリン酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、水素添加大豆リン脂質等が挙げられる。
天然系界面活性剤:レシチン、サポニン、糖系界面活性剤等が挙げられる。
(7)多価アルコール、糖の例
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ラフィノース、エリスリトール、グルコース、ショ糖、果糖、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロース、アルキル化トレハロース、混合異性化糖、硫酸化トレハロース、プルラン等が挙げられる。またこれらの化学修飾体等も使用可能である。
(8)高分子の例
アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体(プラスサイズ、互応化学社製)、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体(レジン28-1310、NSC社製)、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカネート共重合体(28-2930、NSC社製)、メチルビニルエーテルマレイン酸ハーフエステル(ガントレッツES、ISP社製)、T-ブチルアクリレート/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体(ルビマー、BASF社製)、ビニルピロリドン/ビニルアセテート/ビニルプロピオネート共重合体(ルビスコールVAP、BASF社製)、ビニルアセテート/クロトン酸共重合体(ルビセットCA、BASF社製)、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルピロリドン共重合体(ルビセットCAP、BASF社製)、ビニルピロリドン/アクリレート共重合体(ルビフレックス、BASF社製)、アクリレート/アクリルアミド共重合体(ウルトラホールド、BASF社製)、ビニルアセテート/ブチルマレエート/イソボルニルアクリラート共重合体(アドバンテージ、ISP社製)、カルボキシビニルポリマー(カーボポール、BFGoodrich社製)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ペミュレン、BF Goodrich社製)等のアニオン性高分子化合物や、ジアルキルアミノエチルメタクリレート重合体の酢酸両性化物(ユカフォーマー、三菱化学社製)、アクリル酸オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体(AMPHOMER、NSC社製)等の両性高分子化合物、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートの4級化物(GAFQUAT、ISP社製)、メチルビニルイミダゾリウムクロリド/ビニルピロリドン共重合体(ルビコート、BASF社製)等のカチオン性高分子化合物、ポリビニルピロリドン(ルビスコールK、BASF社製)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(ルビスコールVA、BASF社製)、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(コポリマー937、ISP社製)、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(コポリマーVC713、ISP社製)等のノニオン性高分子化合物等がある。また、セルロースまたはその誘導体、ケラチン及びコラーゲンまたはその誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グアーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン等の天然由来高分子化合物も好適に用いることができる。
(9)生理活性成分の例
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白成分、抗炎症剤、老化防止剤、紫外線防御剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、発毛剤、育毛剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等が挙げられる。これらの好適な配合成分の例としては、例えばアシタバエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバ-エキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セ-ジエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
また、デオキシリボ核酸、ムコ多糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などの生体高分子、アミノ酸、加水分解ペプチド、乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシンなどの保湿成分、スフィンゴ脂質、セラミド、フィトスフィンゴシン、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質などの油性成分、ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β-グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコールチゾン等の抗炎症剤、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド、ビタミンCエステル等のビタミン類、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分、トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸などの細胞賦活剤、γ-オリザノール、ビタミンE誘導体などの血行促進剤、レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤、アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、イオウ、エラグ酸、リノール酸、トラネキサム酸、グルタチオン等の美白剤、セファランチン、カンゾウ抽出物、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、DL-α-トコフェロール、酢酸DL-α-トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン
酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエストラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、L-メントール、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ-アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ジンクピリチオン、ヒドロコールチゾン、ミノキシジル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ハッカ油、ササニシキエキス等の育毛剤などが挙げられる。
(10)酸化防止剤
亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、トコフェロール、トリルビグアナイド、ノルジヒドログアヤレチン酸、パラヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン、リンゴエキスやチョウジエキスなどの酸化防止効果の認められる植物エキス等が挙げられる。
(11)溶媒の例
精製水、エタノール、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N-メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0029】
本発明の抗フケ菌剤は、縮合型タンニン及びkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideのうちの少なくとも一方を有効成分とすることを特徴とする。
上記縮合型タンニン及びkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideを得る方法は特に限定されないが、フキから抽出することが好ましい。
また、抽出溶媒及び方法等は上述した皮膚常在菌フローラ改善剤等と同様の方法で行うことができ、具体的には、例えば、本願明細書の実施例の方法にて行うことができる。
さらに、本発明の抗フケ菌剤は、上述した皮膚常在菌フローラ改善剤等と同様に、各種飲食品、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)、皮膚外用剤、化粧料の素材として使用することができる。
【0030】
さらに本発明の皮膚常在菌フローラ改善剤、抗マラセチア菌剤、抗アクネ菌剤は、フキ脂溶性エキスを有効成分とする。
上記「フキ脂溶性エキス」とは、フキを脂溶性溶媒で抽出したエキスのことをいう。
フキ脂溶性エキスを抽出するための脂溶性溶媒としては、ヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、アセトン等を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。
望ましくは、ヘキサンとエタノールを抽出溶媒として用いるとよい。特に、ヘキサンエタノール混合液は、抽出の際に有効成分の活性を低下させにくく、抽出物の食品使用における安全面の上でも好ましい抽出溶媒である。
【0031】
抽出温度としては、例えば、ヘキサンエタノール混合液を使用する場合、抽出温度20~60℃、望ましくは40~50℃程度で行うとよい。抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくくなり、また、抽出温度が高すぎると、有効成分の活性が低下しやすくなるためである。
【0032】
抽出溶媒としてのヘキサンエタノール混合液は、エタノール濃度5~100%であるとよい。エタノール濃度5%以上としたのは、エタノール含有量が少なすぎると、有効成分が抽出されにくくなるからである。
望ましくはエタノール濃度30~70%、さらに望ましくは50%程度であるとよい。
【0033】
本発明のフキ脂溶性エキスの抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。なお、具体的な抽出方法は本願実施例の方法にて行うことが好ましい。
また、上記フキ脂溶性エキスを有効成分とする皮膚常在菌フローラ改善剤、抗マラセチア菌剤、抗アクネ菌剤は、上述した皮膚常在菌フローラ改善剤等と同様に、各種飲食品の薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)、皮膚外用剤、化粧料の素材として使用することができる。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明によって得られる組成物の皮膚常在菌フローラ改善効果及び抗フケ菌効果の確認のために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0035】
1)フキ単離成分における皮膚常在菌フローラ改善作用の効果
a)フキ成分の単離
フキ成分の単離は図1に従って行った。即ち、フキ地上部(葉および葉柄)の送乾燥物(3.3 kg)に、重量比で6倍量の70%エタノールを加えて、70℃で2時間抽出を行った。抽出液を濾別後、減圧下で溶媒を留去し、抽出物(333 g)を得た(収率:10.1%)。これを水(2 L)に懸濁し、酢酸エチル(2 L、3回)およびn-ブタノール(2 L、3回)で順次分配を行い、分配液をそれぞれ濃縮して、酢酸エチル分画(25.3 g)およびブタノール分画(17.2 g)を得た。酢酸エチル分画(24 g)を、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(500 g、n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1→1:1→酢酸エチル→メタノール)で分画を行い、フラクション(Fr.)1~9を得た。
Fr. 2(0.55 g)を、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10 g、n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1→1:1→酢酸エチル)、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー(TLC)および順相HPLC(Chromatorex Si、 20 φmm×250 mm、富士シリシア、ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により順次精製をい、fukinone(36 mg)を得た。
Fr. 3を逆相HPLC(Cosmosil 5C18ARII、 20 φmm×250 mm、ナカライテスク、MeOH:THF=9:1)で繰り返し精製し、isopetasine (32 mg) を得た。
Fr. 4を逆相HPLC(Cosmosil 5C18ARII、MeOH:THF=9:1)およびSunrise C30 (MeOH:THF=9:1) で繰り返し精製し、myristic acid (46 mg)、 caprylic acid (3 mg)、 S-petasine (6 mg)、 S-isopetasine (5 mg) を得た。
Fr. 5を逆相HPLC(Cosmosil 5C18ARII、70%MeOH)で繰り返し精製し、ethyl cafeate (4 mg)、 3,4-dihydroxyphenylpiruvic acid (5 mg) を得た。
Fr. 6を逆相HPLC(Cosmosil 5C18ARII、65%MeOH)で繰り返し精製し、ethyl cafeate (6 mg)、 caffeic acid (62 mg) を得た。
Fr. 7(1.0 g)を逆相ODSカラムクロマトグラフィー(30 g、30%メタノール→メタノール)によりFr. 7-1~10に分画した後、Fr. 7-4(95 mg)を順相HPLC(酢酸エチル)で精製を行い、2β-hydroxyfukinone(13 mg)を得た。
Fr. 8を逆相HPLC(Cosmosil 5C18ARII、65%MeOH)で繰り返し精製し、縮合型タンニン (31 mg)、 kaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucoside (7 mg) を得た。
Fr. 9を逆相HPLC(Cosmosil 5C18ARII、55%MeOH)で繰り返し精製し、quercetin 3-O-glucoside (2 mg)、 kaempferol 3-O-glucoside (6 mg) を得た。
得られた成分の同定は各種NMRスペクトルを文献値と比較することで行った。その結果、下記化学式に示される成分であることが同定された。
【0036】
【化1】
【0037】
b)抗菌試験方法
各菌株は独立法人製品評価技術基盤機構(NBRC)から入手した。
Staphylococcus aureus Rosenbach 1884 (NBRC102135)
Staphylococcus epidermidis Evans 1916 (NBRC12993)
Cutibacterium acne subsp. acnes Nouioui et al. 2018 (NBRC107605)
Corynebacterium tuberculostearicum Feurer et al. 2004 (NBRC113812)
Malassezia furfur Baillon (NBRC0656)
培地は以下のものを使用した。
S. AureusおよびS. epidermidis: NBRC medium No. 802
P. acneおよびC. tuberculostearicum: NBRC medium No. 312
M. furfur: NBRC medium No. 103
【0038】
M. furfur以外の抗菌活性試験
96穴マイクロプレートに培地(90 μL)、 10%DMSOで希釈したサンプル溶液 (10 μL)、 菌液(10 μL)を入れて撹拌後、37℃で1~3日間培養後、菌の生育を目視および濁度測定(600 nm)で測定することで評価を行った。なお、C. Acneは嫌気化で培養した。播種した菌液の濃度は5×103~2.56×104 cfu/10 μL)であった。
【0039】
M. furfurの抗菌活性試験
96穴マイクロプレートに培地(160 μL)、 10%DMSOで希釈したサンプル溶液 (20 μL)、 菌液(200 μL)を入れて撹拌後、28℃で3日間培養後、菌の生育を目視および濁度測定(600 nm)で測定することで評価を行った。播種した菌液の濃度は2.14×104 cfu/20 μLであった。
【0040】
c)結果及び実施例の効果
上記試験の結果を下記表1に示す。フキに特徴的な成分であるS-petasin、 S-isopetasinおよびfukinoneは、黄色ブドウ球菌(S. Aureus)に対して抗菌作用を示し、MIC値はそれぞれ25、 50および100 μg/mLでS-petasinの活性が最も強かった。これにより、S-petasin、 S-isopetasinおよびfukinoneは、黄色ブドウ球菌抗菌剤として有用であることが確認された。
含硫黄化合物のS-petasineとS-isopetasineは、いわゆる善玉菌と呼ばれる表皮ブドウ球菌(S. Epidermidis)やアクネ菌(P. Acne)に対しても抗菌作用を示したが、MIC値はS. Aureusに対するそれの1/2であった。これにより、S-petasineとS-isopetasineは、黄色ブドウ球菌に対し強い抗菌活性を有し、表皮ブドウ球菌おいては、弱い抗菌活性を有することによって、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌との皮膚常在菌フローラの改善作用を有し、これにより、これらの化合物は皮膚常在菌フローラ改善剤として有用であることが確認された。
脂肪酸であるmyristic acidやcaprylic acidのS. Aureus に対するMIC値はそれぞれ100 μg/mLであったが、S. EpidermidisやP. Acneに対する抗菌作用はそれより弱いものであった。
フケ原因菌であるM. furfurに対してはcondensed tannin(縮合型タンニン)とkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideが抗菌作用を示した(MIC値:100μg/mL)。
また、ポリフェノールである縮合型タンニンとkaempferol 3-O-(6"-acetyl)-glucosideはフケ菌に対して抗菌活性を示したことから、これらの化合物は抗フケ菌剤として有用であることが確認された。
【0041】
【表1】
【0042】
2)フキ脂溶性エキス精油分画のヒトの皮膚常在菌フローラに及ぼす作用の評価
a) 評価用フキ脂溶性エキスの調製
評価用のフキエキスは以下の手順で作製した。フキ乾燥物粉砕物(1 kg)にヘキサン:エタノール混液(容量比で1:1)を加えて,40℃で2時間撹拌抽出を行った。抽出液を濃縮乾固後,70%v/vエタノールを加えて分散後,クエン酸をpH4付近になるまで添加して撹拌した。セライト(#100)ろ過後(脱葉緑素),ろ液を4℃で3時間静置し,濾紙(No.5)ろ過を行った(脱ワックス分)。ろ液を濃縮乾固し,再びヘキサン:エタノール混液(容量比で1:1)を加えて再懸濁後,4℃で1時間静置し,濾紙(No.5)ろ過を行った(2回目脱ワックス)。ろ液に水を加えて撹拌後,上層のヘキサン層を分取した。ヘキサン層を濃縮乾固することで,評価用のフキ脂溶性エキスを得た。
【0043】
b)評価方法、結果及び実施例の効果
フキ脂溶性エキスの抗菌活性を上記試験例と同様の方法にて行った。その結果を図2に示す。図2に示されるように、フキ脂溶性エキスは,悪玉菌の黄色ブドウS. Aureusに対しては濃度依存的な抗菌活性を示すが、善玉菌の表皮ブドウ球菌S. Epidermidis等に対しては抗菌活性を示さなかった。この結果から、フキ脂溶性エキスは善玉菌の生育には影響を与えず悪玉菌に対して抗菌活性を示す理想的なエキスであることが判明した。
【0044】
3)シーケンス・アンプリコン解析を用いた腋及び耳後ろにおける皮膚常在菌フローラの評価
a)フキ脂溶性エキス含有乳液の作製
次に、得られたフキ脂溶性エキスを配合した乳液を作製した。処方を以下に示す。プラセボ乳液はフキ脂溶性エキスを入れないものを用いた。

ミリストイルメチルアミノプロピオン酸ヘキシルデシル 6.00%
ジメチコン 1.50
ステアリン酸グリセリル 0.50
ジステアリン酸ポリグリセリル-2 1.50
水添レシチン 0.50
マルチトール 5.00
ブチレングリコール 10.00
グリセリン 5.00
カルバマー1%水溶液 10.00
水 59.89
アルギニン 0.10
フキ脂溶性エキス 0.01
全量 100.00%
【0045】
b) 皮膚ミクロビオームに及ぼす作用の評価
以下のスキームに従って,皮膚ミクロビオームへの影響を調べた。フキ脂溶性エキス(0.01%)配合乳液とプラセボ乳液を,それぞれ男性被験者(5人)の右と左の腋窩と耳後部に,1日2回(入浴後と起床時)7日間塗布した。回収した皮膚スワブをテクノスルガ・ラボで次世代シーケンス・アンプリコン解析を実施した。主な結果を以下に示す。
【0046】
i)Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌,善玉菌)と他のStaphylococcus属
Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌,善玉菌)と他のStaphylococcus属の評価結果について図3に示す。図3に示されるように、Staphylococcus属は,比較的高い年齢層で多く見られた。善玉菌のS. epidermidisはフキエキスの塗布により,多くの場合減少した。フキエキスは,S. epidermidisを増やす効果はないことが判明した。他のStaphylococcus属において,腋窩ではS. hominis(thioalcoholを産生して,体臭の原因になる)が主と言われている。フキエキスの塗布により,5例中4例で腋窩における他のStaphylococcusが減少したことから,フキエキスには腋臭改善剤として有用であることが確認された。なお,悪玉菌のS. aureus は,被験者が健常者であったことで,検出されなかった。
【0047】
ii) Propionibacterium. acnes (アクネ菌)
Propionibacterium. acnes (アクネ菌)における評価結果を図4に示す。P. acnesは腋窩には存在しなかった。耳の後ろの脂性肌部分において,P. acnesはフキエキスの塗布により5例中4例で減少した。これにより,中高年の耳後ろからの脂性臭の改善効果を有することが確認された。
iii) マラセチア菌
マラセチア菌における評価結果を図5に示す。M. restricaとM. globosaが支配的に存在する。100%近い一部の例を除き,フキエキス塗布によるマラセチア菌存在比の減少が見られた。
【0048】
実施例の効果
以上の結果から,フキ脂溶性エキスは脂漏部位(鼻周辺,額,耳後ろ)において,過剰なアクネ菌(P. Acnes)の増殖を抑制することで,炎症や脂臭を抑えることが確認された。また,腋にドミナントに存在するS. Hominisの増殖を抑制することで,腋からの体臭を抑えることが確認された。また,マラセチア菌に対しても,存在比の低下が見られたことから,頭皮ケアや他の発毛部位のヘルスケアにも効果があることが確認された。
【0049】
[配合例]
本発明による皮膚常在菌フローラ改善剤及び抗フケ菌剤(フキエキス、フキ脂溶性エキス)の配合例を示す。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
フキエキス 0.5
100.0wt%
【0050】
配合例2:グミ
還元水飴 40.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブドウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ウメ果汁 4.0
ウメフレーバー 0.6
色素 0.02
フキエキス 1.0
100.0wt%
【0051】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
フキエキス 0.4
100.0wt%
【0052】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
フキエキス 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0053】
配合例5:茶飲料(液状)
茶葉 6.0wt%
アスコルビン酸ナトリウム 0.1
フキエキス 1.0
水 残余
100.0wt%
【0054】
配合例6:茶飲料(粉末)
茶葉抽出物 90.0wt%
デキストリン 7.0
フキエキス 3.0
100.0wt%
【0055】
配合例7:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
フキエキス 0.05
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0056】
配合例8:チョコレート
ビタチョコレート 18.0
カカオバター 16.5
粉糖 42.0
全脂粉乳 22.0
レンチン 0.5
フキエキス 1.0
香料 適量
100.0wt%
【0057】
配合例9:キャラメル
砂糖 39.0
水あめ 38.0
練乳 15.5
小麦粉 5.0
バター 0.5
ショートニングオイル 1.0
フキエキス 1.0
香料 適量
100.0wt%
【0058】
配合例10:ゼリー
砂糖 38.0
水あめ 42.5
寒天 1.5
ブドウ糖 5.0
水 12.0
フキエキス 1.0
着色料・香料 適量
100.0wt%
【0059】
配合例11:ビスケット
小麦粉 67.5
砂糖 10.0
ショートニング 15.0
食塩 1.0
膨剤 1.0
転化糖 5.0
フキエキス(皮膚常在菌に対する抗菌剤) 0.5
100.0wt%
【0060】
配合例12:ソフトカプセル
玄米胚芽油 87.0wt%
乳化剤 12.0
フキエキス 1.0
100.0wt%
【0061】
配合例13:錠剤
乳糖 54.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
フキエキス 1.0
100.0wt%
【0062】
配合例14:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
フキエキス 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0063】
配合例15:化粧クリーム
スクワラン 20.0wt%
ミツロウ 5.0
精製ホホバ油 5.0
グリセリン 5.0
グリセリンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタン-
モノステアレート 2.0
フキ脂溶性エキス 0.1
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0064】
配合例16:化粧水
エタノール 5.0wt%
グリセリン 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
ポリエチレンオレイルエーテル 0.5
クエン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.1
フキ脂溶性エキス 0.1
精製水 残余
100.0wt%
【0065】
配合例17:乳液
スクワラン 4.0wt%
ワセリン 2.5
セタノール 2.0
グリセリン 2.0
親油型モノステアリン酸グリセリン 1.0
ステアリン酸 1.0
L-アルギニン 1.0
フキ脂溶性エキス 0.1
水酸化カリウム 0.1
香料 微量
精製水 残余
100.0wt%
【0066】
配合例18:ボディージェル
マカデミアナッツ油 2.0wt%
ミリスチン酸オクチルドデシル 10.0
メチルフェニルポリシロキサン 5.0
ベヘニルアルコール 3.0
ステアリン酸 3.0
バチルアルコール 1.0
モノステアリン酸グリセリル 1.0
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット 2.0
水素添加大豆リン脂質 1.0
セラミド 0.1
パルミチン酸レチノール 0.1
防腐剤 適量
ツボクサエキス 1.0
フキエキス 0.1
1,3-ブチレングリコール 5.0
精製水 残余
100.0wt%
【0067】
配合例19:ピールオフパック
グリセリン 5.0
プロピレングリコール 4.0
ポリビニルアルコール 15.0
エタノール 8.0
ポリオキシエチレングリコール 1.0
エンメイソウ 5.0
水 57.0
フキエキス 0.1
香料、防腐剤 適量
100.0wt%
【0068】
配合例20:コールドクリーム
サラシミツロウ 11.0
流動パラフィン 26.0
ラノリン 10.0
アーモンド油 15.0
ホウ砂 0.5
水 34.5
フキエキス 0.1
香料 適量
防腐剤 適量
100.0wt%
【0069】
配合例21:浴用剤(液状)
プロピレングリコール 50.0wt%
エタノール 20.0
硫酸ナトリウム 5.0
フキエキス 0.1
ラノリン 0.5
アボガド油 0.5
色素 1.5
香料 22.4
100.0wt%
【0070】
配合例22:浴用剤(顆粒)
炭酸水素ナトリウム 64.9
無水硫酸ナトリウム 32.0
ホウ砂 3.0
フキエキス 0.1
100.0wt%
【0071】
配合例23:シャンプー
ラウリル硫酸トリエタノールアミン 5.0
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 12.0
1,3-ブチレングリコール 4.0
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.0
エデト酸二ナトリウム 0.1
水 73.9
フキエキス(抗フケ菌剤) 0.1
香料 適量
防腐剤 適量
100.0wt%
【0072】
配合例24:リンス
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
セトステアリルアルコール 2.0
ポリオキシエチレンラノリンエーテル 3.0
プロピレングリコール 5.0
水 84.0
フキエキス(抗フケ菌剤) 0.1
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
100.0wt%
【0073】
配合例25:ボディーソープ
ラウリン酸カリウム 15.0
ミリスチン酸カリウム 5.0
プロピレングリコール 5.0
水 72.0
フキエキス 3.0
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
100.0wt%
【0074】
配合例26:ヘアーリキッド
エタノール 29.0
ポリオキシプロピレンブチルエーテルリン酸 10.0
ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル 5.0
トリエタノールアミン 1.0
水 50.0
フキエキス(抗フケ菌剤) 0.1
防腐剤 適量
100.0wt%
【0075】
配合例27:ヘヤートニック
エタノール 46.9
オレイン酸エチル 1.0
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 2.0
水 52.0
フキエキス(抗フケ菌剤) 0.1
100.0wt%
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、新規の皮膚常在菌フローラの改善剤を提供することができる。

図1
図2
図3
図4
図5