(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069713
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】サフラナール濃度が非常に高い植物エキスの獲得方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20240514BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240514BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240514BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240514BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/11 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20240514BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20240514BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20240514BHJP
A61K 36/35 20060101ALI20240514BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20240514BHJP
A61K 36/82 20060101ALI20240514BHJP
A61K 36/88 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240514BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240514BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240514BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K8/35
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K9/107
A61K9/48
A61K31/11
A61K31/353
A61K31/7028
A61K36/23
A61K36/28
A61K36/35
A61K36/752
A61K36/82
A61K36/88
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/36
A61P15/00
A61P15/10
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61Q19/00
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053292
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2022172164の分割
【原出願日】2017-07-28
(31)【優先権主張番号】1657297
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】517094312
【氏名又は名称】アクティバンシド
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ゴドゥ,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ステファン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ルメール,ベノワ
(72)【発明者】
【氏名】モラ,ベンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】デュムラン,マリオン
(57)【要約】
【課題】 経済的で、実施が簡単で、かつHPLC法により測定された場合、エキスの乾燥材料の総重量との関係において少なくとも0.2重量%の濃度のサフラナールを含むサフランエキスを得る方法を提供する。
【解決手段】 サフラナールと担体を含有する植物エキスの獲得方法において、HPLC法により測定された場合、前記植物エキスの乾燥材料の総重量との関係において少なくとも0.2重量%の濃度のサフラナールを含み、該方法が、好ましくは予め乾燥させたサフラナール含有植物性原料を粉砕するステップと、水または水アルコールまたは有機溶媒により抽出するステップと、得られたエキスを担体に含浸させるステップと、噴霧プロセスなしで、30℃~95℃の温度で少なくとも2時間、恒温器内で熱処理するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サフラナールと担体を含有する植物エキスの獲得方法において、HPLC法により測定された場合、前記植物エキスの乾燥材料の総重量との関係において少なくとも0.2重量%の濃度のサフラナールを含み、該方法が、
- サフラン(Crocus sativus)の柱頭を粉砕するステップと、
- 塩酸を用いて酸性化されたpH3~5の抽出溶液で水抽出するか、またはエタノールで水アルコール抽出するステップと、
- 得られたエキスを担体に含浸させるステップと、
- 噴霧プロセスなしで、30℃~60℃の温度で48~72時間、恒温器内で熱処理するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
担体が、マルトデキストリン、糖、シリカ及びアラビアゴムの中から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、得られたエキスの乳化及び/またはカプセル化ステップも含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
含浸が、抽出溶液中の担体で実施され、得られたエキスのカプセル化が行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
熱処理ステップが、前記方法の開始時、途中または最後に原料に対し実施可能であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
抽出ステップ後に酸性化ステップも含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サフラナールを含有する植物性原料、特にサフランから得られ、現在公知の植物エキスよりも高いサフラナール濃度を有する新規のエキスに関する。
【0002】
本発明は同様に、このようなエキスの獲得を可能にする独自の方法、ならびにこのようなエキスを含む組成物及びその利用をも目的とする。
【背景技術】
【0003】
サフラナールは、サフラン(Crocus sativus)、セントーレア・シブソルピ(Centaurea sibthorpii)、セントーレア・コンサンギネア(Centaurea consanguinea)、セントーレア・アマニコラ(Centaurea amanicola)、オランダフウロ(Erodium cicutarium)、中国茶、ティンタン(Calycopteris floribunda)、クロッカス・ユーフェリアヌス(Crocus heuffelianus)、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、クチナシ(Gardenia jasminoides)、レモン(Citrus limon)、クミン(Cuminum cyminum L.)、アキレア・ディスタンス(Achillea distans)などの複数の植物から抽出され得るが、多くは、サフランとしても知られるCrocus sativusから抽出される。
【0004】
サフランは、基本的にイランで栽培され、特にJavadi Bら、「A survey on saffron in major islamic traditional medicine books」、Iranian journal of basic medical sciences 2013;16(1):1~11の中で提示されているように、気分障害、月経前症候群、勃起障害さらには皮膚の美容などの多くの利用分野で使用されている伝統的な香味料である。詳細には例えばAkhondzadeh Sら、「Comparison of Crocus sativus L.and imipramine in the treatment of mild to moderate depression:a pilot double-blind randomized trial」[ISRCTN45683816].BMC Complement Altern Med 2004;4:12中、あるいはさらに最近ではHausenblas HAら、「Saffron (Crocus sativus L.)and major depressive disorder:a meta-analysis of randomized clinical trials」、Journal of integrative medicine 2013;11(6):377~83中にあるように、うつ障害及び不安障害の緩和に関して、サフランの効能を明らかにしようとする複数の臨床研究が行われてきた。
【0005】
サフラン(Crocus sativus)は、複数の分子を含み、その中には、上述の利用分野における効能が認知されている、香味料の香りの原因となる揮発性分子であるサフラナールが含まれる。先行技術において使用されてきたエキスは、大部分が、ISO規格3632-2:2010(Spices-Saffron(Crocus sativus L.)-Part2:Test methods ISO International standard;2010:1~42)にしたがった紫外分光測定によりサフラナール2%に標準化されている。この規格は、水中にサフランエキスを溶解させ、撹拌し、濾過し、次に330nmでの分光光度法により読取りを行うことからなる、非常に包括的な分析プロトコルを記述している。しかしながら、この方法は、特定の溶媒及び/または試薬が使用されないためにサフラナール以外の分子の定量化をひき起こし、そのためエキスの実際のサフラナール濃度を全く反映しないことから、大いに批判の余地のあるものである。
【0006】
実際先行技術のエキス中のサフラナールのHPLC(CLHPすなわち高性能液体クロマトグラフィとも呼ばれる)による分析は、ISO規格3632-2にしたがった紫外分光測定による分析によって得られたものより30~1000倍低い実濃度を示し、以下の表1の結果が示すように、2つの方法の相関関係は非常に大きく変動する。
【0007】
【0008】
実際には、先行技術の方法で得られた公知のサフラナールを含有する植物エキス、詳細にはサフランエキスは、サフラナール分量が極めて少ない。したがって、測定方法は、1つの製品中のサフラナール濃度を測定するために系統的に用いられる分光測定による以前の測定方法で得られたものと異なる結果を導くことから、重要である。ISO3632-2:2010という照会番号のこの以前の方法は、本出願中ならびに刊行物Garcia-Rodriguezら、2017「Comparative evaluation of an ISO 3632 method and an HPLC-DAD method for safranal quantity determination in saffron」中で明示されているように、サフラナール含有量を過大評価している。この刊行物では、390点のサフラン試料について研究を行っている。過大評価は20~50倍となり得る。こうして、照会番号ISO3632-2:2010の測定方法によるサフラナール滴定量X%のエキスは、実際には遥かに少ないサフラナールしか含まない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ISO規格3632-2:2010, “Spices-Saffron(Crocus sativus L.)-Part2:Test methods”, ISO International standard;2010:1~42
【非特許文献2】Garcia-Rodriguez et al, “Comparative evaluation of an ISO 3632 method and an HPLC-DAD method for safranal quantity determination in saffron”, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、既存のエキスに比べてサフラナール分量が大きいサフランエキスを提案することで、この諸問題に応えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
詳細には、本発明は、HPLC法により測定された場合、エキスの乾燥材料の総重量との関係において少なくとも0.2重量%の濃度のサフラナールを含む、サフランから得た植物エキスを目的とする。
【0012】
このエキスは特に、熱処理を含む方法、詳細には、
- 場合によって原料を乾燥させるステップ、
- 乾燥させた原料を粉砕するステップ、
- 水または水アルコールまたは有機溶媒により抽出するステップ、
- 得られたエキスを担体に含浸させるステップ、
- エキスを熱処理するステップ、
の実施を含む具体的方法によって得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
この方法は、経済的で、実施が簡単で、かつHPLC法により測定された場合、エキスの乾燥材料の総重量との関係において少なくとも0.2重量%の濃度のサフラナールを含むサフランエキスを得ることを可能にする。
【0014】
有利にも、このようなエキスは、現在知られているエキスのものを上回る実濃度のサフラナールを含有し、こうして、特にうつ病、不安、気分障害、勃起障害及び月経前障害の治療に対してより大きな効能を有する。したがって本発明はまた、これらの用途のためのサフランエキスをも目的とし、同様に、このエキスを含む化粧品、食品、栄養または医薬品用組成物も目的としている。
【0015】
他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、本発明についての以下の詳細な説明から明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】UHPLC方法によって得た、実施例1の本発明に係るエキスのクロマトグラムである。
【
図2】UHPLC方法によって得た、実施例2の本発明に係るエキスのクロマトグラムである。
【
図3A】UHPLC方法によって得た、実施例3Aに係る(熱処理無しで得られた)先行技術のエキスのクロマトグラムである。
【
図3B】UHPLC方法によって得た、実施例3Bに係る(熱処理無しで得られた)先行技術のエキスのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的は、サフラナールを含有する植物(または植物性原料)から得た植物エキスにおいて、HPLC法により測定された場合、乾燥材料の総重量との関係において少なくとも0.2重量%の濃度のサフラナールを含むことを特徴とする植物エキスを目的とする。
【0018】
「サフラナールを含有する植物から得た植物エキス」または、「サフラナールを含有する植物性原料から得た植物エキス」とは、サフラナールを含有する植物の全体または一部に由来する少なくとも1つの分子または複数の分子の集合体を意味する。これは、植物内に存在する天然の分子または前記天然分子からあらゆるタイプの転換によって得られる分子の特異的選択物であり得る。エキスを得るために使用される原料は、サフラナールを含有する植物の全体または一部で構成され得る。サフラナールを含有する植物がサフランである場合、本発明に係る植物エキスは、詳細にはサフランの柱頭及び/または花弁及び/または球根から得ることができる。
【0019】
本発明に係るエキスは、それ自体が原料ではない。これは、植物、植物の一部、乾燥植物、乾燥植物の一部または植物試料または乾燥植物試料ではない。また、エッセンシャルオイルでもない。
【0020】
「サフラナールを含有する植物」または「サフラナールを含有する原料」(本発明の意味合いにおいて、植物及び植物性原料なる用語は無差別に使用されてよい)とは、サフラナールを含有するあらゆる植物、詳細にはサフラン(Crocus sativus)、セントーレア・シブソルピ(Centaurea sibthorpii)、セントーレア・コンサンギネア(Centaurea consanguinea)、セントーレア・アマニコラ(Centaurea amanicola)、オランダフウロ(Erodium cicutarium)、中国茶、ティンタン(Calycopteris floribunda)、クロッカス・ユーフェリアヌス(Crocus heuffelianus)、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、クチナシ(Gardenia jasminoides)、レモン(Citrus limon)、クミン(Cuminum cyminum L.)、アキレア・ディスタンス(Achillea distans).を意味する。好ましくは、本発明に係るエキスを提供するサフラナールを含有する植物は、サフラン(Crocus sativus)である。
【0021】
本発明に係るエキスは少なくともサフラナールを含み、サフラナールは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)方法で測定された場合、乾燥材料の少なくとも0.2重量%の濃度で存在する。他の測定方法、特に紫外分光測定(ISO規格3632-2)によると、この方法が非特異的であるために得られる結果がサフラナールの実濃度に対応しないことから、測定方法は極めて重要である。
【0022】
分子のHPLCによる分析方法は、当業者にとって公知の方法である。これにより、単位分子を精確に同定し定量化することができる。
【0023】
好ましくは、本発明に係るエキスが含有する分子、詳細にはサフラナール、を秤量するために使用される分析方法は、UHPLC(超高性能液体クロマトグラフィ)方法である。この方法によると、化合物の解像度及び分離をさらに増大させ、唯一の試料から同じクロマトグラム上で複数の化合物を検出することができる。
【0024】
適応性の極めて高い一実施形態によると、分析方法HPLCまたはUHPLCは、以下のステップを含む予備的な試料調製ステップを含む:
- 水アルコール溶液中に秤量すべきサフランエキスを導入するステップ、
- 少なくとも1時間、磁気撹拌するステップ、
- 少なくとも5分間、超音波浴を行うステップ、
- 膜濾過しその後注入するステップ。
【0025】
試料の調製後の分析方法は従来、調製の後に溶出を行い次に検出するステップを含む。
【0026】
溶出は好ましくは、バイナリグラジェントを用いて行われる。第1の溶媒は、例えば有機溶媒及び酸であってよい。好ましくは、これは、アセトニトリル中のギ酸である。第2の溶媒は、例えば酸性化された水溶媒であってよい。好ましくは、これは水中のギ酸である。
【0027】
サフラナールに加えて、本発明に係るエキスは、他の分子、詳細には、特にサフランエキスの場合において、ケンフェロールから誘導されたクロシン及び/またはフラボノイド及び/またはピクロクロシンの誘導体を含むことができる。
【0028】
クロシンが存在する場合、それは好ましくは、HPLC方法により測定された場合エキスの乾燥材料の少なくとも1重量%に相当する。
【0029】
ケンフェロールから誘導されたフラボノイドが存在する場合、それは、好ましくはHPLC方法により測定された場合、エキスの乾燥材料の重量の少なくとも500ppmに相当する。
【0030】
ピクロクロシンが存在する場合、それは、好ましくはHPLC方法により測定された場合エキスの乾燥材料の少なくとも0.5重量%に相当する。
【0031】
本発明に係るエキスは好ましくは担体に含浸される。本発明の意味合いでの「担体」または「充填剤」なる用語は、本発明のエキスの含浸ひいては希釈を可能にする食品成分または添加物として使用される植物、鉱物または化学由来のあらゆる食品物質を意味している。
【0032】
担体は特に、マルトデキストリン、糖、シリカ、アラビアゴムという構成成分の中から選ばれてよく好ましくはマルトデキストリンである。
【0033】
エキスが担体に含浸されている場合、エキス中に存在する分子の百分率は、担体を含むエキスの乾燥材料の重量で示される。
【0034】
本発明に係るエキスは、このエキスの乾燥材料の重量で少なくとも0.2%のサフラナールを得ることを可能にするあらゆる手段によって得ることができる。好ましくは、本発明に係るエキスは、熱処理ステップを含む方法によって得られる。このステップは、エキスの獲得方法の開始時、途中または最後に原料に対し実施可能である。
【0035】
本発明の意味合いでの熱処理とは、周囲温度より高い温度で加熱することを意味する。好ましくは、熱処理ステップは、30℃~95℃、好ましくは30℃~60℃の温度で少なくとも2時間、好ましくは少なくとも24時間行われる熱処理である。
【0036】
熱処理は、公知のあらゆる手段によって、特に恒温器内で、炉内で、か焼により、低温殺菌法により、または加熱殺菌法により行うことができる。好ましくは、熱処理は恒温器内で行われる。
【0037】
適応性の極めて高い一実施形態によると、本発明に係る植物エキスは、サフラン原料から行われる以下のステップの実施を含む:
- 場合によって乾燥させるステップ、
- 好ましくは50~500μmに粉砕するステップ、
- 水または水アルコールまたは有機溶媒により抽出するステップ、
- 得られたエキスを担体に含浸させるステップ、
- 熱処理するステップ。
【0038】
水または水アルコールまたは有機溶媒により抽出するステップ及び得られたエキスを担体に含浸させるステップは、Tech’Care Extraction(登録商標)と呼ばれる公知の抽出方法を構成する。
【0039】
熱処理ステップは、この方法のあらゆる時点、好ましくは方法の終了時点で、サフラン原料に対し行うことができ、Tech’Care Extraction(登録商標)方法を補完する。
【0040】
適応性の極めて高い一実施形態によると、この方法の実施における熱処理ステップは、30℃~95℃の温度、さらに一層好ましくは30℃~60℃の温度で少なくとも2時間、さらに一層好ましくは少なくとも24時間、恒温器内で熱処理するステップである。
【0041】
粉砕は、公知の適応されたあらゆる手段によって、特にナイフミル、スピンドルミル、またはハンマミル、好ましくはスピンドルミルにより行ってよい。
【0042】
抽出ステップは、公知の適応されたあらゆる手段により行ってよい。
【0043】
水抽出の場合には、粉砕された材料は、50g/Lの割合で水中に導入される。
【0044】
水アルコール抽出の場合には、溶媒は特に、エタノール、好ましくは60%v/vのエタノールであってよい。粉砕された材料は、50g/Lの割合で水アルコール溶液中に導入される。
【0045】
有機溶媒での抽出の場合には、溶媒は特にメタノールまたは酢酸エチル、好ましくは30%v/vのメタノールであってよい。粉砕された材料は、100g/Lの割合で有機溶媒中に導入される。
【0046】
抽出後、方法は同様に、酸性化ステップを含むこともできる。このステップは、水溶媒または水アルコール溶媒中に酸を付加することからなる。これにより、抽出溶液のpHを3~5の間に下げることができる。このステップは特に、pHを4に調整するために水アルコール溶媒中へクエン酸または塩化水素酸を添加するという条件下で行うことができる。
【0047】
担体への含浸ステップは、抽出溶液中への充填剤の添加からなる。担体または充填剤は、特に、マルトデキストリン、糖、シリカ、アラビアゴムという構成成分の中から選択され、好ましくはマルトデキストリンである。
【0048】
この含浸ステップの後、方法は、同様に、得られたエキスの乳化及び/またはカプセル化ステップも含むことができる。このステップは、充填剤そして場合によっては補助物質を含有する抽出溶液を高速撹拌することからなる。このステップは、特に、アラビアゴム、シクロデキストリンまたは脂質などの補助物質を用いて行うことができる。
【0049】
本発明に係るエキスは、組成物の乾燥材料の0.1~100重量%の割合で、化粧品、食品、栄養または医薬品組成物中に組込まれるかまたは単独で使用され得る。好ましくは、本発明に係るエキスは、一日に体重1kgあたり本発明に係るエキス少なくとも0.07mg、さらに一層好ましくは一日に体重1kgあたり本発明に係るエキス1.4~4.2mgを人間または動物に投与できるようにする数量で、組成物中に存在する。
【0050】
したがって、本発明は、このような組成物、好ましくはゼラチン嚢、圧縮錠、ソフトカプセル、スティック、サシェ、調理済食品、オイル、ローション、クリーム、乳液の形を呈する組成物を目的とする。
【0051】
本発明に係るエキスを含む組成物は、公知の適応された他の構成成分、例えば組成物の企図された形態及び用途に応じて選択される賦形剤、または他の有効成分または活性分子を含有することができる。
【0052】
本発明に係るエキス及びそれを含む組成物は、多くの利用分野において、詳細には、うつ病及び不安を予防または治療するため、さらには、気分障害(病的な気分障害)、勃起障害、月経前障害を予防または治療するために使用され得る。
【0053】
また本発明は同様に、
- 人間または動物のうつ病の予防または治療、
- 人間または動物の不安の予防または治療、
- 人間の気分障害の予防または治療、
- 人間(男性)の勃起障害の予防または治療
- 人間(女性)の月経前障害の予防または治療、
において使用するためのエキスをも目的としている。
【0054】
有利にも、本発明に係るエキスは、既存のあらゆるエキスに比べ高いその大きなサフラナール数量のため、これらの利用分野において高い効能を示す。その上、本発明に係るエキスは、活性分子がもはや花の植物基質内で絡み合っておらず生体に対するアクセス性がより大きいことから、これらの活性分子の生物学的利用能を増大させることができるため、原料そのまま(乾燥状態または未乾燥状態の全体または部分的植物)を使用するのではなくエキスを使用することが重要である。エキス中に担体が存在することによって、同様に、有利な分子のより良い均質性を最終製品中に獲得することもできる。
【実施例0055】
ここで、本発明に係るエキス及び方法の実施例(実施例1及び2)、先行技術のエキスの比較例(実施例3A及び3B)及び組成物によって、本発明を例示する。
【0056】
実施例全体について、エキス中の分子、詳細にはサフラナールの秤量方法は、以下の特性を有するUHPLC方法である:
1.試料の調製
水アルコール溶液による試料の抽出。少なくとも1時間の磁気撹拌及びその後の少なくとも5分間の超音波浴。膜濾過及びその後の注入。
2.HPLC溶出
バイナリグラジェント:
溶媒A(MeCN中のギ酸)
溶媒B(水中のギ酸)
3.検出
クロシン 440nm
ピクロクロシン誘導体 250nm
フラボノイド 350nm
サフラナール 310nm
4.標準
トランス-クロシン-4-ゲンチオビオーズ-ゲントビオーズ
トランス-クロシン-3-ゲンチオビオーズ-グルコース
ベータ-シクロシトラール
ケンプフェロールグルコシド
サフラナール
【0057】
実施例1:本発明に係るエキス
エキスの第1の実施例は、以下のステップの実施からなる方法を実施することによって得られるエキスである:
- サフラン(Crocus sativus)の柱頭を使用するステップ、
- スピンドルミルを用いて250μmのサイズに粉砕するステップ、
- 水アルコール溶液1リットルあたり50gのサフランの割合で、60%v/vのエタノールで水アルコール抽出するステップ、
- 水アルコール溶液中に導入されたマルトデキストリンに含浸させるステップ、
- 40℃で48時間、恒温器で熱処理するステップ。
【0058】
得られたエキスは、実施例に関する部分の序文に記載のUHPLC方法を用いて、複数の分子について秤量される。
【0059】
【0060】
エキスは、以下の特徴を有する:
- サフラナール濃度 0.238%
- クロシン濃度 3.96%
- ピクロクロシン誘導体濃度 1.08%、及び
- フラボノイド濃度 0.25%
【0061】
実施例2:本発明に係るエキス
エキスの第2の実施例は、以下のステップの実施からなる方法を実施することによって得られるエキスである:
- サフラン(Crocus sativus)の柱頭を使用するステップ、
- スピンドルミルを用いて250μmのサイズに粉砕するステップ、
- pH4の塩酸を用いて酸性化された水抽出ステップ、
- 水溶液中に導入されたアラビアゴムに含浸させるステップ、
- 40℃で72時間、恒温器で熱処理するステップ。
【0062】
得られたエキスは、実施例に関する部分の序文に記載のUHPLC方法を用いて、複数の分子について秤量される。
【0063】
【0064】
エキスは、以下の特徴を有する:
- サフラナール濃度 0.73%
- クロシン濃度 1.0%
- ピクロクロシン誘導体濃度 2.93%、及び
- フラボノイド濃度 0.57%
【0065】
実施例3:本発明に係るエキス
エキスの第3の実施例は、以下のステップの実施からなる方法を実施することによって得られるエキスである:
- サフラン(Crocus sativus)の柱頭を使用するステップ、
- スピンドルミルを用いて250μmのサイズに粉砕するステップ、
- 105℃で2時間~6時間、恒温器で熱処理する第1のステップ、
- 140℃で2時間~6時間、恒温器で熱処理する第2のステップ、
- 水アルコール溶液1リットルあたり50gのサフランの割合で、60%v/vのエタノールで水アルコール抽出するステップ、
- 水アルコール溶液中に導入されたマルトデキストリンに含浸させるステップ、
- 液体エキスを凍結乾燥により乾燥させるステップ。
【0066】
エキスは、以下の特徴を有する:
- サフラナール濃度 0.39%
- クロシン濃度 2.31%
- ピクロクロシン誘導体濃度 1.37%、及び
- フラボノイド濃度 0.24%
【0067】
実施例3A:噴霧により得られるエキス(発明外)
エキスの第1の反例は、以下のステップの実施からなる方法を実施することによって得られるエキスである:
- サフラン(Crocus sativus)の柱頭を使用するステップ、
- スピンドルミルを用いて250μmのサイズに粉砕するステップ、
- 水アルコール溶液1リットルあたり50gのサフランの割合で、60%v/vのエタノールで水アルコール抽出するステップ、
- 水アルコール溶液中に導入されたマルトデキストリンに含浸させるステップ、
- 液体エキスを噴霧により乾燥させるステップ。
【0068】
【0069】
得られたエキスは、以下の特徴を有する:
- サフラナール濃度 0.028%
- クロシン濃度 4.98%
- ピクロクロシン誘導体濃度 1.26%、及び
- フラボノイド濃度 0.24%
【0070】
実施例3B:凍結乾燥により得られるエキス(発明外)
エキスの第1の反例は、以下のステップの実施からなる方法を実施することによって得られるエキスである:
- サフラン(Crocus sativus)の柱頭を使用するステップ、
- スピンドルミルを用いて250μmのサイズに粉砕するステップ、
- 水アルコール溶液1リットルあたり50gのサフランの割合で、60%v/vのエタノールで水アルコール抽出するステップ、
- 水アルコール溶液中に導入されたマルトデキストリンに含浸させるステップ
- 液体エキスを凍結乾燥により乾燥させるステップ。
【0071】
【0072】
エキスは、以下の特徴を有する:
- サフラナール濃度 0.038%
- クロシン濃度 4.40%
- ピクロクロシン誘導体濃度 1.15%、及び
- フラボノイド濃度 0.22%
【0073】
実施例4:男性向けの栄養組成物の実施例
実施例4は以下のものからなる150mgのゼラチン嚢である:
- 実施例1の本発明に係るエキス:15mg
- マルトデキストリン:135mg
【0074】
組成物は、同業者にとって公知の従来の条件下で成分を混合することによって得られ同じく従来の条件下でゼラチン嚢内に入れられる。
【0075】
推奨される薬量は一日あたりゼラチン嚢2個である。
【0076】
実施例5:男性向けの医薬品の実施例
実施例5は以下のものからなる1500mgの圧縮錠である:
- 実施例2の本発明に係るエキス:20mg
- ソルビトール:1430mg、
- ステアリン酸マグネシウム:27mg、
- ブリリアントブルー色素FCF、laque E133:20mg
- アセスルファムK(E950):1.5mg
- サッカリン酸ナトリウム(E954):1.5mg。
【0077】
組成物は、同業者にとって公知の従来の条件下で成分を混合することによって得られ、同じく従来の条件にしたがって圧縮される。
【0078】
推奨される薬量は一日あたり圧縮錠1個である。
【0079】
実施例6:動物向けの栄養組成物の実施例
実施例6は、以下のものからなる、300mgの圧縮錠である:
- 実施例1のサフランエキス:6mg
- 微結晶性セルロース:135mg
- ステアリン酸マグネシウム:10mg
【0080】
組成物は、同業者にとって公知の従来の条件下で成分を混合することによって得られ、同じく従来の条件にしたがって圧縮される。
【0081】
推奨される薬量は一日あたり圧縮錠1個である。
【0082】
実施例7:デイクリームの形をした局所施用の化粧品用組成物
これは、皮膚に塗布するためのクリームの形をした組成物である。
【0083】
この組成物は以下のものからなる:
- 実施例1の本発明に係るエキス:10mg
- 保存料:0.5%
- 香料:0.6%
- 脂肪相+水相:97.4%
【0084】
脂肪相は、乳化剤及びトリグリセリドで構成されている。水相は、ピロリドンカルボン酸に結び付けられた水で構成される。
【0085】
組成物は、10分間水相に対して、保存料及び香料との同時撹拌下で実施例1のサフランエキスを添加することによって得られる。その後、水相自体を、30分間の混合中に脂肪相に添加する。