(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069723
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ハーフプレキャスト構造防潮堤
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20240514BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E02B3/06 301
E02D27/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060082
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2020066871の分割
【原出願日】2020-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 防潮堤建設工事 ハーフプレキャストの検討 旭化成(株)ハイポア日向工場殿向け 令和2年2月12日開催
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】辻井 正人
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
(57)【要約】
【課題】施工現場において基礎杭の施工時に生じる施工誤差を十分に吸収することで、高精度での施工が実現可能なハーフプレキャスト構造防潮堤を提供する。
【解決手段】基礎部は、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる基礎杭と、前記基礎杭を囲む所定範囲の地表面を均す均しコンクリートと、前記均しコンクリートの上方において、前記基礎杭の上端部を内包し、且つ、前記防潮堤パネルを支持するように設けられるフーチング部と、から構成され、前記基礎杭は、互いに平行に二列で構成され、前記防潮堤パネルは、前記均しコンクリート上で前記基礎杭の二列配列中間位置に配列されたプレキャストコンクリート部材であり、前記フーチング部は、前記基礎杭の上端部に固着され上方に向けて突出する鉄筋群と、前記防潮堤パネルの下部側方から突出する鉄筋群と、を含む鉄筋構造を内包する現場打ちコンクリートからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部と、当該基礎部上に配列され壁体を構成する複数の防潮堤パネルと、からなるハーフプレキャスト構造防潮堤であって、
前記基礎部は、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる基礎杭と、
前記基礎杭を囲む所定範囲の地表面を均す均しコンクリートと、
前記均しコンクリートの上方において、前記基礎杭の上端部を内包し、且つ、前記防潮堤パネルを支持するように設けられるフーチング部と、から構成され、
前記基礎杭は、互いに平行に二列で構成され、
前記防潮堤パネルは、前記均しコンクリート上で前記基礎杭の二列配列中間位置に配列されたプレキャストコンクリート部材であり、
前記フーチング部は、前記基礎杭の上端部に固着され上方に向けて突出する鉄筋群と、前記防潮堤パネルの下部側方から突出する鉄筋群と、を含む鉄筋構造を内包する現場打ちコンクリートからなることを特徴とする、ハーフプレキャスト構造防潮堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸線に沿って設置され、地震発生時の津波や台風の来襲時の高波に対する護岸や海水の陸地への浸水を抑制するハーフプレキャスト構造防潮堤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本を含む地震大国と呼ばれる諸国において、大地震に伴う津波の被害を最小限に抑制することは喫緊の課題である。また、近年は地球温暖化に伴う台風の強大化が指摘されており、台風による高波被害も深刻さを増している。これら自然災害に対して海岸に沿って設置される防潮堤が、海岸の浸食や海水の内陸部への浸水を防ぐ手段として期待されている。
【0003】
従来の防潮堤として、例えば特許文献1、2には、プレキャスト部材(プレキャスト壁体)を用いることで、現場打ちコンクリートによる施工を少なくし、施工現場でのコンクリート使用量を低減させることで熟練工を必要とせず強固な堤体を構築する技術が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献3には、プレキャスト部材(プレキャスト堤体本体部)を用いることで、現場での施工量を少なくし、かつ、地盤条件が悪い場所への適用も可能な構造物を構築する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-183453号公報
【特許文献2】特開2015-196983号公報
【特許文献3】特開2019-35259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
周囲を海洋に囲まれた日本の海岸線の延長距離は膨大であり、また、工事は天候にも左右されるため、防潮堤の設置や保全には大きなコストと工期が必要であり、工事の効率化が求められている。工事の効率化、工期の短縮化などのためには、予め工場などで製作された部材(いわゆるプレキャスト部材)を用いることが効果的であるが、一方で、プレキャスト部材を用いる場合、現場で施工する基礎部分(例えば鋼管杭や鋼管矢板杭など)に発生する施工誤差をプレキャスト部材の施工時に吸収し、所定の寸法、所定の配置構成で防潮堤を構築することが求められる。
【0007】
このような点に関し、上記特許文献1、2に記載の堤体は、工場で製作された基礎部(鋼・コンクリート複合フーチング)と、プレキャスト堅壁と、を用いる構成を採っており、実際の施工現場に杭施工された鋼管杭の施工誤差について何ら吸収手段を講じておらず、施工現場における施工誤差が十分に吸収されない恐れがある。
【0008】
また、上記特許文献3に記載の堤体においても、鋼管杭を除き、壁部やフーチング部などをいずれもプレキャスト部材としており、施工現場に直接施工される鋼管杭と、プレキャスト部材との間の施工誤差については言及されていない。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、ハーフプレキャスト構造である防潮堤の構築時に、施工現場において基礎杭の施工時に生じる施工誤差を十分に吸収することで、高精度での施工が実現可能なハーフプレキャスト構造防潮堤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、基礎部と、当該基礎部上に配列され壁体を構成する複数の防潮堤パネルと、からなるハーフプレキャスト構造防潮堤であって、前記基礎部は、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる基礎杭と、前記基礎杭を囲む所定範囲の地表面を均す均しコンクリートと、前記均しコンクリートの上方において、前記基礎杭の上端部を内包し、且つ、前記防潮堤パネルを支持するように設けられるフーチング部と、から構成され、前記基礎杭は、互いに平行に二列で構成され、前記防潮堤パネルは、前記均しコンクリート上で前記基礎杭の二列配列中間位置に配列されたプレキャストコンクリート部材であり、前記フーチング部は、前記基礎杭の上端部に固着され上方に向けて突出する鉄筋群と、前記防潮堤パネルの下部側方から突出する鉄筋群と、を含む鉄筋構造を内包する現場打ちコンクリートからなることを特徴とする、ハーフプレキャスト構造防潮堤が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハーフプレキャスト構造である防潮堤の構築時に、施工現場において基礎杭の施工時に生じる施工誤差を十分に吸収することで、高精度での施工が実現可能なハーフプレキャスト構造防潮堤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の概略説明図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図5】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図6】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図7】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図8】第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の概略説明図である。
【
図10】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図11】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図12】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図13】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図14】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図15】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図16】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図17】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図18】第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図19】本発明の第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の概略説明図である。
【
図20】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図21】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図22】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図23】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図24】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図25】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図26】第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図27】本発明の第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の概略説明図である。
【
図28】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図29】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図30】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図31】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図32】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図33】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図34】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【
図35】第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤の構築方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。即ち、以下の本明細書において、各実施の形態において共通する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。また、説明のため、地盤や地表面などは図示せず、地中に打ち込まれた状態の鋼管杭などを図示している。
【0014】
<第1の実施の形態>
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1aの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1aの概略説明図である。
図1に示すように、ハーフプレキャスト構造防潮堤1aは、海岸線に沿って設置される基礎部としての複数の鋼管杭2、均しコンクリート3、及び、均しコンクリート3の上方に設けられるフーチング部5と、を備えている。また、フーチング部5の上方には、複数配列される防潮堤パネル10が備えられている。なお、ここでの「海岸線」とは、海水が入り込む河川岸も含まれる。
【0015】
ハーフプレキャスト構造防潮堤1aの基礎部20を構成するにあたり、基礎杭としての複数の鋼管が地中に打ち込まれることで複数の鋼管杭2として所定の間隔(例えば等間隔)で略直線状(略一列)に配置される。鋼管杭2の地中への打ち込み方法は特に限定されない。鋼管杭2は、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる。また、鋼管杭2の周辺においては、複数の鋼管杭2を囲む所定範囲の地表面を均すように均しコンクリート3が設けられている。均しコンクリート3は、ハーフプレキャスト構造防潮堤1aを構築する場所の地表面の凹凸などを均すために施工される。
【0016】
均しコンクリート3の上方には、現場打ちコンクリートからなるフーチング部5が設けられている。フーチング部5の形状や構成は任意であるが、例えば、図示のように、所定の高さを有し、矩形断面である略直方体に構成されても良い。また、後述するように、フーチング部5の内部には、上記鋼管杭2の上端部や、配力筋としての複数の鉄筋(鉄筋群)が内包され、フーチング部の上面からは複数の鉄筋が上方に向かって突出している。
【0017】
これら、鋼管杭2、均しコンクリート3、フーチング部5の施工により、ハーフプレキャスト構造防潮堤1aの基礎部20が構築される。これらの構造体は、いずれも現場施工によって構築される。
【0018】
また、フーチング部5の上部には、プレキャストコンクリート部材(以下、プレキャスト部材とも記載)である複数(
図1では4つ)の防潮堤パネル10が支持され、配列されている。防潮堤パネル10の配列される位置は、上記鋼管杭2の直上であることが好ましい。また、防潮堤パネル10は略直方体形状を有しており、その下部の厚さd1が上部の厚さd2よりも厚く構成されている。本発明における防潮堤パネル10の厚さは特に限定されるものではなく、例えば均一であっても良いが、下部の厚さd1が上部の厚さd2よりも厚くなることにより、防潮堤パネル10の下部の剛性を上げることができ、耐波抵抗力を向上させることができる。また、後述するように、防潮堤パネル10の内部には、上記フーチング部5から上方に向かって突出した複数の鉄筋がスリーブ式継手などの接続手段を介して内包され、フーチング部5と防潮堤パネル10が連結する構成となっている。
【0019】
本発明の第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1aは以上のように構成されている。このようなハーフプレキャスト構造防潮堤1aにおいて、基礎部20を構成する鋼管杭2、均しコンクリート3、フーチング部5はいずれも現場での施工によって構築される。一方で、防潮堤パネル10としては、予め工場などで製作されたプレキャスト部材を用いており、現場で組み立てのみを行う構成としている。これにより、鋼管杭2の打ち込み時などの現場施工時に生じる恐れのある施工誤差を、フーチング部5の構築時に吸収し、ハーフプレキャスト構造防潮堤1aを高精度で施工し構築することができる。
【0020】
加えて、防潮堤パネル10としてプレキャスト部材を用いていることで、工事の効率化、工期の短縮化などが図られる。特に、防潮堤パネル10のような高さの高い部材においては、現場で製作する場合には施工足場を組んで施工することが求められ、足場の組み立てや解体といった種々の工程が必要となることから、防潮堤パネル10をプレキャスト部材とすることのメリットは大きい。
【0021】
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1aの構築方法)
本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1aの構築方法は以下の通りである。以下で参照する
図2~
図8は、第1の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1aの構築方法を示す概略説明図であり、以下ではこれら
図2~
図8を参照して構築方法について説明する。
【0022】
(基礎工事)
先ず、
図2に示すように、ハーフプレキャスト構造防潮堤1aを設置する海岸の基礎工事として、所定の位置(例えば海岸線に沿った位置)に基礎杭としての複数の鋼管が地中に打ち込まれることで複数の鋼管杭2として略一列に等間隔で地中に配置される。この時の鋼管杭2の地中への打ち込み方法が特に限定されない。ここで打ち込まれた鋼管杭2の一部は地表面に突出した状態とされる。
【0023】
(均しコンクリート3の打設)
次に、
図3に示すように、打ち込まれた複数の鋼管杭2の周辺の所定範囲に、地表面の凹凸を均すための均しコンクリート3が打設される。なお、均しコンクリート3打設後においても、複数の鋼管杭2は当該均しコンクリート3の表面から上方に突出した状態とされる。
【0024】
(フーチング部5の構築)
続いて、
図4に示すように、均しコンクリート3の上面において複数の鋼管杭2を囲むように鉄筋群22が組み立てられる。鉄筋群22は、略一列に配列された複数の鋼管杭2を覆うように配筋される第1鉄筋群22aと、当該第1鉄筋群22aの上方に突出するように配筋される第2鉄筋群22bからなる。そして、鉄筋群22が組み立てられた状態で、
図5に示すように、均しコンクリート3の上面において鉄筋群22の四方側面を囲むように型枠25が組み立てられる。そして、
図6に示すように、型枠25で囲まれた空間内にコンクリートを打設することでフーチング部5が構築される。なお、図示のように、フーチング部5の構築にあたり第2鉄筋群22bの上端部は当該フーチング部5の上面から突出したままの状態とされる。
【0025】
上記のように施工された鋼管杭2、均しコンクリート3、及び、フーチング部5でもってハーフプレキャスト構造防潮堤1aの基礎部20は構成される。これら鋼管杭2、均しコンクリート3、及び、フーチング部5がいずれも現場施工により構築されるものである。
【0026】
(防潮堤パネル10の設置)
続いて、
図7に示すように、型枠25が取り外され、フーチング部5の上部において複数の防潮堤パネル10が壁体を構成するように配列される。各防潮堤パネル10の下部には、例えばスリーブ式継手といった図示しない鉄筋受容部が複数設けられており、当該鉄筋受容部は、フーチング部5の上面から突出した状態の第2鉄筋群22bの上端部を受容可能に構成されている。この鉄筋受容部に第2鉄筋群22bの上端部を受容させた状態でモルタル等の経時性硬化材料を内部に充填させることでフーチング部5の上面の所定位置に防潮堤パネル10が据え付けられ固定される。このようにして最終的に
図8に示すように壁体が構成され、ハーフプレキャスト構造防潮堤1aが構築される。
【0027】
<第2の実施の形態>
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1bの構成)
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1bの概略説明図である。
図9に示すように、ハーフプレキャスト構造防潮堤1bは、海岸線に沿って設置される基礎部としての複数の鋼管杭2、均しコンクリート3、及び、均しコンクリート3の上方に設けられるフーチング部5と、を備えている。また、フーチング部5と一体化するように複数配列される防潮堤パネル10が備えられている。
【0028】
ハーフプレキャスト構造防潮堤1bの基礎部20を構成するにあたり、基礎杭である複数の鋼管杭2が互いに平行に略二列構成でもって打ち込まれている。鋼管杭2は、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる。また、鋼管杭2の周辺においては、複数の鋼管杭2を囲む所定範囲の地表面を均すように均しコンクリート3が設けられている。
【0029】
均しコンクリート3の上方には、現場打ちコンクリートからなるフーチング部5が設けられている。フーチング部5の形状や構成は任意であるが、例えば、所定の高さを有し、矩形断面である略直方体に構成され、後述する防潮堤パネル10の下端部を挟むように一体化させられるように構成されても良い。また、フーチング部5の内部には、上記鋼管杭2の上端部や、配力筋としての複数の鉄筋(鉄筋群)が内包されている。
【0030】
これら、鋼管杭2、均しコンクリート3、フーチング部5の施工により、ハーフプレキャスト構造防潮堤1bの基礎部20が構築される。これらの構造体は、いずれも現場施工によって構築される。
【0031】
また、本実施の形態では、平行に略二列構成で打ち込まれた鋼管杭2の二列配列中間位置にプレキャスト部材である複数(
図9では5つ)の防潮堤パネル10が配列されている。これら防潮堤パネル10は、その下端部がフーチング部5に挟まれるように支持され、一体化して構成される。後述するように、フーチング部5の内部には、鋼管杭2の上端に固着された鉄筋群(後述する鉄筋群30)と、防潮堤パネル10の下部側方に突出した複数の鉄筋(後述する鉄筋群35)が内包され、鋼管杭2、フーチング部5、防潮堤パネル10が連結する構成となっている。
【0032】
本発明の第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1bは以上のように構成されている。このようなハーフプレキャスト構造防潮堤1bにおいて、基礎部20を構成する鋼管杭2、均しコンクリート3、フーチング部5はいずれも現場での施工によって構築される。一方で、防潮堤パネル10としては、予め工場などで製作されたプレキャスト部材を用いており、現場で組み立てのみを行う構成としている。これにより、鋼管杭2の打ち込み時などの現場施工時に生じる恐れのある施工誤差を、フーチング部5の構築時に吸収し、ハーフプレキャスト構造防潮堤1bを高精度で施工し構築することができる。また、上記第1の実施の形態と同様に、防潮堤パネル10としてプレキャスト部材を用いていることで、工事の効率化、工期の短縮化などが図られる。
【0033】
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1bの構築方法)
本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1bの構築方法は以下の通りである。以下で参照する
図10~
図18は、第2の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1bの構築方法を示す概略説明図であり、以下ではこれら
図10~
図18を参照して構築方法について説明する。
【0034】
(基礎工事)
先ず、
図10に示すように、ハーフプレキャスト構造防潮堤1bを設置する海岸の基礎工事として、所定の位置(例えば海岸線に沿った位置)に基礎杭としての複数の鋼管杭2が互いに平行に略二列構成となるように地中に打ち込む。この時の鋼管杭2の地中への打ち込み方法が特に限定されない。ここで打ち込まれた鋼管杭2の一部は地表面に突出した状態とされる。
【0035】
(均しコンクリート3の打設)
次に、
図11に示すように、打ち込まれた複数の鋼管杭2の周辺の所定範囲に、地表面の凹凸を均すための均しコンクリート3が打設される。なお、均しコンクリート3打設後においても、複数の鋼管杭2は当該均しコンクリート3の表面から上方に突出した状態とされる。
【0036】
(防潮堤パネル10の設置ならびにフーチング部5の構築)
続いて、
図12に示すように、鋼管杭2の上端部において、上方に向けて突出する鉄筋群30を固着させる。鉄筋群30の固着は例えば溶接などの手段により行われる。なお、鉄筋群30は、現場において固着させても良く、あるいは、予め鋼管杭2の端部に固着させておいても良い。そして、
図13に示すように、均しコンクリート3の上面において、平行な略二列構成で配置された鋼管杭2の二列配列中間位置に複数(図では5つ)の防潮堤パネル10が壁体を構成するように配列される。ここで、防潮堤パネル10には、その下部側方に突出する鉄筋群35が予め備えられており、防潮堤パネル10の配列時において上記鉄筋群30と鉄筋群35とは干渉しないように構成されている。
【0037】
続いて、
図14、
図15に示すように、防潮堤パネル10の表面に対して垂直方向に伸びる主鉄筋と、当該主鉄筋に対し水平方向に交差するように伸びる配力筋と、からなる鉄筋群40が均しコンクリート3の上面の所定位置に設置される。この鉄筋群40は、上記鉄筋群30と接続するように設置されても良い。このような各鉄筋群の設置により、
図15に示すように、鉄筋群30、鉄筋群35、及び、鉄筋群40が均しコンクリート3の上面において一体的に配筋され、鉄筋構造42が構成される。
【0038】
続いて、
図16に示すように、均しコンクリート3の上面において鉄筋構造42の四方側面を囲むように型枠45が組み立てられる。そして、
図17に示すように、型枠45で囲まれた空間内において、鉄筋構造42を埋設させるようにコンクリートを打設することでフーチング部5が構築される。そして、型枠45が外され、最終的に
図18に示すように防潮堤パネル10とフーチング部5とが一体化されて壁体が構成され、ハーフプレキャスト構造防潮堤1bが構築される。
なお、本実施の形態では、基礎杭として複数の鋼管杭2が互いに平行に略二列構成に打ち込まれる場合を図示して説明したが、この鋼管杭2に代えて、複数の鋼管矢板が連続的に密着して配列された構成される鋼管矢板杭を基礎杭としても良い。
【0039】
<第3の実施の形態>
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1cの構成)
図19は、本発明の第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1cの概略説明図である。
図19に示すように、ハーフプレキャスト構造防潮堤1cは、海岸線に沿って設置される基礎部としての鋼管矢板杭2a、均しコンクリート3、及び、均しコンクリート3の上方に設けられるフーチング部5と、を備えている。また、フーチング部5の上方には、複数配列される防潮堤パネル10が備えられている。
【0040】
ハーフプレキャスト構造防潮堤1cの基礎部20を構成するにあたり、基礎杭としての複数の鋼管矢板が地中に打ち込まれることで鋼管矢板杭2aとして略直線状に配置される。鋼管矢板杭2aの地中への打ち込み方法は特に限定されない。鋼管矢板杭2aは複数の鋼管杭が連続的に密着して配列された構成であり、その形状や鋼管杭の本数は任意である。鋼管矢板杭2aは、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる。また、鋼管矢板杭2aの周辺においては、鋼管矢板杭2aを囲む所定範囲の地表面を均すように均しコンクリート3が設けられている。
【0041】
均しコンクリート3の上方には、現場打ちコンクリートからなるフーチング部5が設けられている。フーチング部5の形状や構成は任意であるが、例えば、図示のように、所定の高さを有し、矩形断面である略直方体に構成されても良い。これら、鋼管矢板杭2a、均しコンクリート3、フーチング部5の施工によりハーフプレキャスト構造防潮堤1cの基礎部20が構築される。これらの構造体は、いずれも現場施工によって構築される。
【0042】
また、フーチング部5の上部には、プレキャスト部材である複数(
図19では4つ)の防潮堤パネル10が支持され、配列されている。上記第1の実施の形態と同様に、防潮堤パネル10の内部には、フーチング部5から上方に向かって突出した複数の鉄筋がスリーブ式継手などの接続手段を介して内包され、フーチング部5と防潮堤パネル10が連結する構成となっている。
【0043】
本発明の第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1cは以上のように構成されている。このようなハーフプレキャスト構造防潮堤1cにおいて、基礎部20を構成する鋼管矢板杭2a、均しコンクリート3、フーチング部5はいずれも現場での施工によって構築される。一方で、防潮堤パネル10としては、予め工場などで製作されたプレキャスト部材を用いており、現場で組み立てのみを行う構成としている。これにより、鋼管矢板杭2aの打ち込み時などの現場施工時に生じる恐れのある施工誤差を、フーチング部5の構築時に吸収し、ハーフプレキャスト構造防潮堤1cを高精度で施工し構築することができる。また、上記第1、第2の実施の形態と同様に、防潮堤パネル10としてプレキャスト部材を用いていることで、工事の効率化、工期の短縮化などが図られる。
【0044】
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1cの構築方法)
本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1cの構築方法は概ね上記第1の実施の形態と同じ方法である。
図20~
図26は、第3の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1cの構築方法を示す概略説明図である。
図20~
図26に示すように、本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1cの構築方法は、鋼管杭2に代えて鋼管矢板杭2aを用いることを除き、上記第1の実施の形態と同じ方法であるため、詳細な説明については省略する。
【0045】
<第4の実施の形態>
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1dの構成)
図27は、本発明の第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1dの概略説明図である。
図27に示すように、ハーフプレキャスト構造防潮堤1dは、海岸線に沿って設置される基礎部としての鋼管杭2、均しコンクリート3、及び、均しコンクリート3の上方に設けられるフーチング部5と、を備えている。また、フーチング部5の上方には、複数配列される防潮堤パネル10が備えられている。
【0046】
ハーフプレキャスト構造防潮堤1dの基礎部20を構成するにあたり、基礎杭である複数の鋼管杭2が互いに平行に略二列構成でもって打ち込まれている。鋼管杭2は、その一部が地中に打ち込まれ、上端部が地表面上に突出した状態で設けられる。また、鋼管杭2の周辺においては、複数の鋼管杭2を囲む所定範囲の地表面を均すように均しコンクリート3が設けられている。
【0047】
均しコンクリート3の上方には、現場打ちコンクリートからなるフーチング部5が設けられている。フーチング部5の形状や構成は任意であるが、例えば、図示のように、所定の高さを有し、矩形断面である略直方体に構成されても良い。これら、鋼管矢板杭2a、均しコンクリート3、フーチング部5の施工によりハーフプレキャスト構造防潮堤1cの基礎部20が構築される。これらの構造体は、いずれも現場施工によって構築される。
【0048】
また、フーチング部5の上部には、プレキャスト部材である複数(
図27では5つ)の防潮堤パネル10が支持され、配列されている。上記第1、第3の実施の形態と同様に、防潮堤パネル10の内部には、フーチング部5から上方に向かって突出した複数の鉄筋がスリーブ式継手などの接続手段を介して内包され、フーチング部5と防潮堤パネル10が連結する構成となっている。
【0049】
本発明の第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1dは以上のように構成されている。このようなハーフプレキャスト構造防潮堤1dにおいて、基礎部20を構成する鋼管杭2、均しコンクリート3、フーチング部5はいずれも現場での施工によって構築される。一方で、防潮堤パネル10としては、予め工場などで製作されたプレキャスト部材を用いており、現場で組み立てのみを行う構成としている。これにより、鋼管杭2の打ち込み時などの現場施工時に生じる恐れのある施工誤差を、フーチング部5の構築時に吸収し、ハーフプレキャスト構造防潮堤1dを高精度で施工し構築することができる。また、上記第1~第3の実施の形態と同様に、防潮堤パネル10としてプレキャスト部材を用いていることで、工事の効率化、工期の短縮化などが図られる。
【0050】
(ハーフプレキャスト構造防潮堤1dの構築方法)
本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1dの構築方法は概ね上記第1の実施の形態と同じ方法である。
図28~
図35は、第4の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1dの構築方法を示す概略説明図である。
図28~
図35に示すように、本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造防潮堤1dの構築方法は、鋼管杭2の構成を互いに平行な略二列構成としていることを除き、上記第1の実施の形態と同じ方法であるため、詳細な説明については省略する。
なお、本実施の形態では、基礎杭として複数の鋼管杭2が互いに平行に略二列構成に打ち込まれる場合を図示して説明したが、この鋼管杭2に代えて、鋼管矢板が地中に打ち込まれる鋼管矢板杭を基礎杭としても良い。
【0051】
(作用効果)
以上説明したように構成されるハーフプレキャスト構造防潮堤1a~1dによれば、ハーフプレキャスト構造である防潮堤の構築時に、施工現場における基礎杭(鋼管杭2や鋼管矢板杭2a)の施工誤差を、フーチング部5構築時ならびに防潮堤パネル10配列時に十分に吸収することができる。これにより、ハーフプレキャスト構造防潮堤1a~1dの構築時に高精度での施工が実現される。
【0052】
また、ハーフプレキャスト構造防潮堤1a~1dの構築において、基礎部20を構成する基礎杭(鋼管杭2、鋼管矢板杭2a)、均しコンクリート3、フーチング部5は、現場での施工によって構築される。一方で、防潮堤パネル10は、予め工場などで製作されたプレキャスト部材を用いており、現場で組み立てのみを行う構成としている。即ち、現場打ちコンクリートといった現場での施工と、プレキャスト部材を併用することで、工事の効率化、工期の短縮化などが図られる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
上記実施の形態では、基礎杭として鋼管杭2あるいは鋼管矢板杭2aを用いて基礎部20を構成する場合を挙げて図示・説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、基礎杭として、鋼矢板又はハット形鋼矢板などを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、海岸線に沿って設置され、地震発生時の津波や台風の来襲時の高波に対する護岸や海水の陸地への浸水を抑制するハーフプレキャスト構造防潮堤に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1(1a~1d)…ハーフプレキャスト構造防潮堤
2…鋼管杭
2a…鋼管矢板杭
3…均しコンクリート
5…フーチング部
10…防潮堤パネル
20…基礎部
22…鉄筋群
25…型枠
30…(鋼管杭上端の)鉄筋群
35…(防潮堤パネルの下部側方の)鉄筋群
40…(主鉄筋と配力筋からなる)鉄筋群
42…鉄筋構造
45…型枠