(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069725
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】シート保持部材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A01G9/14 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061841
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2019218639の分割
【原出願日】2019-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】窪田 亮
(57)【要約】
【課題】
本発明では、ビスによって取付けられても、ビニールハウス内に結露水が侵入するのを防止できるシート保持部材の提供を目的とする。
【解決手段】
前記課題を解決するための手段は、シートS1,S2を保持するシート保持部材1において、底部2と、底部2の一端から起立する側壁部3と、底部2の他端から起立して側壁部3と対向するとともにシートS1,S2を取付可能なシート取付部4と、底部2の一端と他端の間から起立する隔壁部7とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを保持するシート保持部材において、
底部と、
前記底部の一端から起立する側壁部と、
前記底部の他端から起立して前記側壁部と対向するとともに前記シートを取付可能なシート取付部と、
前記底部の一端と他端の間から起立する隔壁部とを備える
ことを特徴とするシート保持部材。
【請求項2】
前記底部は、前記側壁部と前記隔壁部との間に形成されビスをガイド可能な第一ガイド溝と、前記シート取付部と前記隔壁部との間に形成されビスをガイド可能な第二ガイド溝とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のシート保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート保持部材としては、例えば、ビニールハウスの骨組にシートを定着するために利用されるものがある。具体的には、シート保持部材は、ビニールハウスの骨組に連結される底部と、底部の一端から起立する側壁部と、底部の他端から起立し上端に向けて開口するねじ溝を有する断面U字状のシート支持部とを備える。そして、シート支持部にシートを載置し、このシート支持部に押え材を被せた状態で、ビスを押え材とシートを貫通してシート支持部のねじ溝に螺合させることで、骨組にシートを定着する。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシート保持部材では、ビスでシート保持部材を骨組に取付けする場合、ビスによる孔が開いてビニールハウス内に結露水が侵入する恐れがあったため、ビスによる取付手段を採用しづらかった。
【0005】
そこで、本発明では、ビスによって取付けられても、ビニールハウス内に結露水が侵入するのを防止できるシート保持部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるため、本発明のシート保持部材は、シートを保持するシート保持部材において、底部と、前記底部の一端から起立する側壁部と、前記底部の他端から起立して前記側壁部と対向するとともに前記シートを取付可能なシート取付部と、前記底部の一端と他端の間から起立する隔壁部とを備えることを特徴とする。この構成によると、シート保持部材をビニールハウスの奥行方向に沿うように配置して、シート保持部材の底部にビスを貫通させて、シート保持部材をビニールハウスのアーチパイプに連結したとしても、シートに生じてシート取付部を伝って底部に流れる結露水は、隔壁部によって堰き止められ、隔壁部とシート取付部との間に溜まる。したがって、底部の隔壁部と側壁部との間には結露水が溜まらないため、ビスを底部の側壁部と隔壁部の間に貫通させれば、結露水がビスを貫通させた孔を通じてビニールハウス内に侵入するのを防止できる。
【0007】
また、本発明のシート保持部材は、前記底部が、前記側壁部と前記隔壁部との間に形成されビスをガイド可能な第一ガイド溝と、前記シート取付部と前記隔壁部との間に形成されビスをガイド可能な第二ガイド溝とを有するようにしてもよい。この構成によると、シート保持部材をビニールハウスの奥行方向に沿うように配置する場合には、第一ガイド溝にビスを挿入すれば、結露水がビニールハウス内に侵入することを防止しつつ、シート保持部材をアーチパイプに容易に固定できる。他方、シート保持部材をビニールハウスのアーチパイプに沿うように配置する場合には、第二ガイド溝にビスを挿入すれば、シートが取付けられるシート取付部とシート保持部材をアーチパイプに固定する箇所の距離が近くなるため、シートが風に煽られるなどしても、ビスに作用する力が小さくなり、シート保持部材がアーチパイプから外れ難くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート保持部材によれば、ビスによって取付けられても、ビニールハウス内に結露水が侵入するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るシート保持部材が取付けた状態を示すビニールハウスの一部拡大斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係るシート保持部材の横断面図である。
【
図3】本実施の形態に係るシート保持部材をアーチパイプに沿わせて配置する場合の使用状態において、妻面側のシートを弾性部材で仮止めした状態を示す横断面図である。
【
図4】本実施の形態に係るシート保持部材をアーチパイプに沿うように配置する場合の使用状態において、シート保持部材が、妻面側のシートと屋根面側又は側面側のシートを保持した状態を示す横断面図である。
【
図6】本実施の形態に係るシート保持部材をアーチパイプに沿うように配置する場合の使用状態において、シート保持部材を連結金具によってアーチパイプに連結した状態を示す横断面図である。
【
図7】本実施の形態に係るシート保持部材をビニールハウスの奥行方向に沿うように配置する場合の使用状態において、シート保持部材が、屋根面側のシートを保持した状態を示す横断面図である。
【
図8】本実施の形態に係るシート保持部材をビニールハウスの奥行方向に沿うように配置する場合の使用状態において、シート保持部材を連結金具によってアーチパイプに連結した状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0011】
本実施の形態に係るシート保持部材1は、
図1から
図6に示すように、底部2と、底部2の一端から起立する側壁部3と、底部2の他端から起立して側壁部3と対向するとともにシートS1,S2を取付可能なシート取付部4と、シート取付部4の側壁部3側から突出する突起部6とを備える断面形状を有しており、当該断面形状が奥行方向に連続するフレーム材とされている。そして、このシート保持部材1は、必要に応じて任意の長さに切断されて使用され、本実施の形態では、ビニールハウスHのシートS1,S2を定着させる際に利用される。
【0012】
ビニールハウスHは、
図1に示すように、奥行方向に並べて配置される複数のアーチパイプPと、アーチパイプP間に架け渡される複数の母屋パイプMと、アーチパイプPと母屋パイプMに展張される透明のシートS1,S2とを備えて略蒲鉾型に形成される。なお、母屋パイプMは、複数設けられているが、図中ではシート保持部材1の背面側に設けてあるので記載を省略している。
【0013】
本実施の形態に係るシート保持部材1は、例えば、
図1に示すように、ビニールハウスHの妻側のアーチパイプPに沿うように配置されて、ビニールハウスHの妻面側と屋根面側又は側面側に展張される各シートS1,S2の保持に利用されたり(例えば、
図1中のAで示す部分)、隣り合うアーチパイプP,P間に架け渡されてビニールハウスHの奥行方向に沿うように配置され、ビニールハウスHの屋根面側に展張されるシートS2の保持に利用される(例えば、
図1中のBで示す部分)。なお、本実施の形態では、シート保持部材1は、アーチパイプPに取付けられているが、母屋パイプMに沿うように取付けてもよい。
【0014】
つづいて、本実施の形態に係るシート保持部材1の各部について以下詳細に説明する。底部2は、平板状であって、
図2中左右中央から垂直に起立し、底部2の奥行方向に沿って連続する隔壁部7を備える。なお、隔壁部7は、底部2の中央に設けられていなくてもよいし、また、底部2に対して斜めに起立してもよい。さらに、底部2の隔壁部7を挟んだ両側には、それぞれ奥行方向に沿ってガイド溝2a,2bが形成される。
【0015】
側壁部3は、
図2に示すように、底部2の図中左右方向である幅方向の一端(図中右端)から反シート取付部側に向けて膨らむ湾曲部3aと、湾曲部3aの上端からシート取付部4側に向けて傾斜する抜け止め部3bとを有する。
【0016】
シート取付部4は、
図2に示すように、底部2の幅方向の他端(図中左端)から図中上方へ向けて起立する基部4aと、基部4aの上端から二又に分かれて延びる図中左右一対の支持部4b,4bとを備え、各支持部4bの互いに対向する内側面には、ねじ溝5が形成されている。また、各支持部4bの上端には、共に外側に向けて突出するシート受部4cが設けられている。
【0017】
さらに、シート取付部4は、シート取付部4の
図2中下端の反側壁部側から延びる突出部4dを有する。また、
図2に示すように、突出部4dと底部2の間には、凹部4eが形成される。これにより、凹部4eの分だけシート保持部材1の材料を削減できる。
【0018】
また、
図2に示すように、シート取付部4の側壁部3側(図中右側)に配置される支持部4bの側壁部3側には、側壁部3側に向けて突出する突起部6が設けられている。この突起部6の反底部側面である
図2中上面は、底部2側に向けて傾斜しており、突起部6の底部2側面である
図2中下面は、底部2に対して平行になっている。
【0019】
つづいて、シート保持部材1の利用方法について、シート保持部材1をアーチパイプPに沿うように配置してビニールハウスHの妻面側と屋根面側又は側面側に展張される各シートS1,S2の保持に利用する場合と、シート保持部材1を隣り合うアーチパイプP,P間に架け渡すようにしてビニールハウスHの奥行方向に沿うように配置して、ビニールハウスHの屋根面側に展張されるシートS2の保持に利用する場合に分けて説明する。
【0020】
シート保持部材1をアーチパイプPに沿うように配置して利用する場合は、まず、
図3に示すように、シート取付部4側をビニールハウスHの妻面側に向けるようにしてシート保持部材1をアーチパイプPに沿わせた状態で、底部2のシート取付部4と隔壁部7との間に形成された第二ガイド溝2bがアーチパイプPに対向するように配置する。そうしておいてからビス10の先端を第二ガイド溝2b内に挿入して、ビス10を底部2に押し当てつつねじ込んでいくと、ビス10が底部2とアーチパイプPを貫通して、シート保持部材1がアーチパイプPに固定される。なお、ビス10による固定は、底部2の奥行方向に間隔を空けて複数箇所にて行われる。
【0021】
次に、
図3に示すように、ビニールハウスHの妻面側のシートS1の一端側をシート保持部材1に被せ、シートS1の他端側がビニールハウスHの妻面側に垂れ下がるようにする。
【0022】
そして、シート保持部材1に被せたシートS1の上から、波形のばねである弾性部材11の
図3中右端を底部2と抜け止め部3bの間の空間に収容し、弾性部材11を収縮させながら底部2へ向けて押し込むと、弾性部材11が、突起部6の下面と側壁部3の下端である湾曲部3aの間に装着される。
【0023】
すると、妻面側のシートS1は、弾性部材11の弾発力によって、シート取付部4の上端に形成されるシート受部4c上に載置された状態で、シート保持部材1に仮止めされる。
【0024】
ここで、隔壁部7は、弾性部材11が突起部6と湾曲部3aの間に装着されると、上端が弾性部材11に当接する高さに設定されている。そのため、
図3に示すように、突起部6と湾曲部3aの間に弾性部材11を装着すると、隔壁部7の先端部がシートS1を介して弾性部材11に当接して弾性部材11を支持する。これにより、弾性部材11は、装着時に隔壁部7によって位置決めがなされるため、弾性部材11を容易に装着できる。また、隔壁部7が、弾性部材11が底部2側へ入り込み過ぎないようにするストッパとしても機能するため、弾性部材11が底部2側へ入り込み過ぎて突起部6から離間する不安定な姿勢でシート保持部材1に装着される恐れがない。そのため、シート保持部材1は、シートS1を安定して保持できる。ただし、隔壁部7は、突起部6と湾曲部3aの間に装着される弾性部材11を邪魔しない高さであれば、任意の高さに設定されてよい。
【0025】
なお、本実施の形態では、弾性部材11として、波形のばねを利用しているが、例えば、ゴムやコイルスプリングを利用してもよい。また、側壁部3が、
図3に示すように、シート取付部4側に向けて傾斜する抜け止め部3bを有しているため、突起部6と湾曲部3aの間に装着される弾性部材11は、突起部6と側壁部3によって抜け止めされ、弾性部材11の脱落が防止される。なお、図示するところでは、抜け止め部3bは、底部2に対して約45度の角度で傾斜しているが、弾性部材11の抜け止めとして機能する限りにおいては、抜け止め部3bの傾斜角度は特に限定されない。
【0026】
そして、
図4、
図5に示すように、ビニールハウスHの屋根面側又は側面側のシートS2を妻面側のシートS1に重ねるようにして、シート取付部4のシート受部4cに載置した状態で、シート受部4cに断面コ字状の押え材12を被せ、ビス13を押え材12と各シートS1,S2を貫通させて支持部4b,4bの内側面に形成されるねじ溝5に螺合する。この際、本実施の形態に係る押え材12は、
図4に示すように、シート受部4cにシートS1,S2を介して対向する平板部12aと、平板部12aの両端に設けられ互いに対向する脚部12b,12bと、平板部12aの各脚部12b,12b間から垂直に起立する突部12cとを備えており、脚部12bと突部12cが屋根面側又は側面側のシートS2を押さえつけることで、シートS2が支持部4b,4b間及び支持部4b,4bの両側へ押し付けられて、シートS2に張力が付与されるため、シートS2にシワがよらず、シートS2をビニールハウスHに張った状態で展張できる。
【0027】
さらに、弾性部材11が突起部6と湾曲部3aの間に装着されているため、押え材12をシート受部4cに被せる際に、突起部6が弾性部材11の浮き上がりを防止しているので、押え材12の脚部12bが弾性部材11に干渉するようなことがなく、シートS1,S2をシート取付部4に容易に取り付けることができる。
【0028】
このようにすることで、シート保持部材1は、
図4、
図5に示すように、ビニールハウスHの妻面側と屋根面側又は側面側に展張されるシートS1,S2を保持できる。
【0029】
また、
図3から
図5に示す実施例においては、シート保持部材1は、ビス10によってアーチパイプPに連結されているが、
図6に示すように、ビス10に代えて連結金具15を利用してもよい。具体的には、連結金具15は、
図6に示すように、平板状の底板15aと、底板15aの図中左右両端からそれぞれ図中上方に突出するフック状の一対の引掛け部15b,15bと、底板15aの図中左右両端から図中下方に向けて垂直に延び互いに対向する一対の垂直片15c,15cと、各垂直片15cの下方に設けられ互いに対向する楔孔15d,15dを有する。そして、各引掛け部15bをシート保持部材1の突出部4dと側壁部3にそれぞれ引掛けるとともに、垂直片15c,15c間にアーチパイプPを配置した状態で、各垂直片15cに設けられた楔孔15dに楔Kを挿入することで、アーチパイプPが底板15aと楔Kによって挟持され、連結金具15は、シート保持部材1をアーチパイプPに固定する。この際、楔KをアーチパイプPに対して交差する方向から楔孔15dに挿入できるため、楔Kの挿入時にアーチパイプPが邪魔にならず、アーチパイプPに沿う方向から楔Kを挿入するよりも、楔Kを楔孔15dに容易に挿入できる。なお、連結金具15の構成は上述した構成には限定されず、シート保持部材1をアーチパイプPに固定できるものであればよい。
【0030】
このように連結金具15でシート保持部材1をアーチパイプPに連結した場合、ビス10によって連結する場合に比べて、連結強度に優れる。しかしながら、ビス10で連結する方が連結金具15で連結する場合に比べて施工が容易である上、ビス10の方が連結金具15に比べて安価であるため、作業性と経済性に優れる。そこで、連結金具15による連結とビス10による連結を交互に行うようにしてもよい。このようにすると、施工の作業性と経済性を高めつつ連結強度を確保できる。なお、シート保持部材1をアーチパイプPにビス10のみで固定する場合には、シート保持部材1は、突出部4dを省略して形成されてもよく、その場合、材料を削減できる。
【0031】
つづいて、シート保持部材1を隣り合うアーチパイプP,P間に架け渡してビニールハウスHの奥行方向に沿うように配置する場合について説明する。まず、
図7に示すように、シート保持部材1を、側壁部3がビニールハウスHの棟側に配置される向きで、アーチパイプP,P間に架け渡す。そして、アーチパイプPと対向する底部2の側壁部3と隔壁部7の間に形成される第一ガイド溝2a内にビス14の先端を挿入して、ビス14を底部2に押し当てつつねじ込んでいくと、ビス14が底部2とアーチパイプPを貫通して、シート保持部材1がアーチパイプPに固定される。なお、ビス14による固定は、底部2のアーチパイプPと対向する箇所ごとに行われる。
【0032】
次に、ビニールハウスHの屋根面側のシートS2をシート取付部4のシート受部4cに載置した状態で、シート受部4cに押え材12を被せ、ビス13を押え材12とシートS2に貫通させて支持部4b,4bの内側面に形成されるねじ溝5に螺合する。この場合においても、押え材12の各脚部12bと突部12cがシートS2を押さえつけることで、シートS2が支持部4b,4b間及び支持部4b,4bの両側へ押し付けられて、シートS2に張力が付与されるため、シートS2にシワがよらず、シートS2をビニールハウスHに張った状態で展張できる。
【0033】
このようにすることで、シート保持部材1は、
図7に示すように、ビニールハウスHの屋根面側に展張されるシートS2を保持できる。さらに、
図7に示すように、アーチパイプP,P間に架け渡されたシート保持部材1は、側壁部3が上方側に配置され、シート取付部4が下方側に配置されるようにアーチパイプPに沿って傾斜しており、シートS2のシート保持部材1よりも
図6中左上方のビニールハウスHの側面に結露水が生じても、この結露水は、シートS2の上方側から下方側に向けてシートS2を伝って流れて行き、押え材12を介してシートS2が取付けられるシート取付部4を伝って底部2の隔壁部7とシート取付部4との間に溜まる。したがって、ビス14によって孔が開いた底部2の隔壁部7と側壁部3との間には結露水が溜まらないので、底部2の隔壁部7と側壁部3との間に形成されたビス14による前記孔を通じてビニールハウスH内に結露水が侵入するのを防止できる。なお、本実施の形態では、ビニールハウスHに展張されるシートS1,S2は全て硬質のシートであるが、軟質のシートであってもよい。
【0034】
また、
図7に示す実施例においては、シート保持部材1は、ビス14によってアーチパイプPに連結されているが、
図8に示すように、ビス14に代えて連結金具16を利用してもよい。具体的には、連結金具16は、互いに対向する一対のU字片16a,16aと、各U字片16a,16aの互いに対向する先端間に架け渡される接続片16b,16bと、各接続片16bから内向きに突出する爪部16cと、各U字片16a,16aの下方に設けられ互いに対向する楔孔16dを有する。そして、各爪部16cをシート保持部材1の突出部4dと側壁部3にそれぞれ引掛けるとともに、U字片16a,16a間にアーチパイプPを配置した状態で、楔孔16dに楔17を挿入することで、アーチパイプPが爪部16cと楔17によって挟持され、連結金具16は、シート保持部材1をアーチパイプPに固定する。この際、楔17をアーチパイプPに対して交差する方向から楔孔16dに挿入できるため、楔17の挿入時にアーチパイプPが邪魔にならず、アーチパイプPに沿う方向から楔17を挿入するよりも、楔17を楔孔16dに容易に挿入できる。なお、連結金具16の構成は上述した構成には限定されず、シート保持部材1をアーチパイプPに固定できるものであればよい。
【0035】
このように連結金具16でシート保持部材1をアーチパイプPに連結した場合、ビス14によって連結する場合に比べて、連結強度に優れる。また、連結金具16でシート保持部材1をアーチパイプPに連結する場合、底部2に孔を開ける必要が無いため、結露水が底部2の孔を介してビニールハウスH内に侵入する恐れがない。しかしながら、ビス14で連結する方が連結金具16で連結する場合に比べて施工が容易である上、ビス14の方が連結金具16に比べて安価であるため、作業性と経済性に優れる。そこで、連結金具16による連結とビス14による連結を交互に行うようにしてもよい。このようにすると、施工の作業性と経済性を高めつつ連結強度を確保できる。なお、シート保持部材1をアーチパイプにビス14のみで固定する場合には、シート保持部材1は、突出部4dを省略して形成されてもよく、その場合、材料を削減できる。
【0036】
また、本実施の形態においては、アーチパイプPは、丸パイプで形成されているが、角パイプで形成されていてもよい。あるいは、アーチパイプPに沿うように補強用のH鋼を設ける場合には、H鋼にシート保持部材1を連結するようにしてもよい。
【0037】
前述したように、本実施の形態に係るシート保持部材1は、底部2と、底部2の一端から起立する側壁部3と、底部2の他端から起立して側壁部3と対向するとともにシートS1,S2を取付可能なシート取付部4と、シート取付部4の側壁部3側から突出し側壁部3の下端との間に弾性部材11を装着可能な突起部6とを備える。
【0038】
この構成によると、シートS1を弾性部材11で仮止めする際に、弾性部材11が突起部6と側壁部3の下端に形成される湾曲部3aの間に装着される。これにより、シート取付部4に押え材12を被せる際に、押え材12が弾性部材11に干渉して浮き上がってしまうようなことがなく、シートS1,S2をシート取付部4に容易に固定することができるので、シートS1,S2の取付作業性が向上する。なお、図示するところでは、突起部6の形状は弾性部材の脱落を防止できる形状であればよく、適宜設計変更可能である。
【0039】
また、本実施の形態に係るシート保持部材1は、側壁部3が、先端にシート取付部4側に向けて傾斜する抜け止め部3bを有している。この構成によると、側壁部3の下端と突起部6との間に弾性部材11を装着する際に、弾性部材11が側壁部3の抜け止め部3bによって抜け止めされるため、装着した弾性部材11が脱落するのを防止できる。
【0040】
また、本実施の形態に係るシート保持部材1は、底部2の一端と他端の間から起立する隔壁部7を有している。この構成によると、シート保持部材1をビニールハウスHの奥行方向に沿うように配置して、シート保持部材1の底部2にビス14を貫通させて、シート保持部材1をビニールハウスHのアーチパイプPに連結したとしても、シートS2からシート取付部4を伝って底部2に流れる結露水は、隔壁部7によって堰き止められ、隔壁部7とシート取付部4との間に溜まる。したがって、底部2の隔壁部7と側壁部3の間には結露水が溜まらないため、ビス14を底部2の側壁部3と隔壁部7の間に貫通させれば、結露水がビス14を貫通させたことにより生じた孔を通じてビニールハウスH内に侵入するのを防止できる。
【0041】
つまり、連結金具16のような底部2に孔が開かない取付手段に比べて、ビス14でシート保持部材1をアーチパイプPに取付けをする場合、ビス14による孔が開いてビニールハウスH内に結露水が侵入する恐れがあったため、ビス14による取付手段を採用しづらかったが、隔壁部7を設けたことで、ビニールハウスH内に結露水が侵入するのを防止できるため、ビス14による取付手段の採用が可能となった。
【0042】
したがって、上記構成によると、シート保持部材1をビニールハウスHの奥行方向に沿うように配置する場合に、シート保持部材1を連結金具16を用いず、結露水がビニールハウスH内に侵入する心配がなく、ビス14によってビニールハウスHのアーチパイプPに連結することができる。
【0043】
ただし、シート保持部材1をアーチパイプPに沿うように配置する場合にしか利用しない場合には、隔壁部7は省略されてもよい。シート保持部材1をアーチパイプPに沿うように配置する場合には、シート保持部材1が、底部2の奥行方向でアーチパイプPの形状に沿って傾斜するため、シートS2に生じた結露水がシート保持部材1の底部2上に入っても、結露水は底部2上を流れてビニールハウスHの外に排水されるためである。
【0044】
あるいは、シート保持部材1をビニールハウスHの奥行方向に配置する場合であっても、連結金具16を利用してアーチパイプPに連結する場合には、隔壁部7を省略できる。
【0045】
また、本実施の形態に係るシート保持部材1は、隔壁部7が、突起部6と側壁部3の下端との間に装着される弾性部材11を支持している。この構成によると、弾性部材11の装着時に隔壁部7によって弾性部材11が位置決めされるため、弾性部材11の装着作業が容易になる。なお、隔壁部7は、弾性部材11の装着を邪魔しない高さであれば、任意の高さに設定されてよいが、隔壁部7の高さが高いほど堰き止められる水量も増える。そのため、隔壁部7を、突起部6と側壁部3の下端との間に装着される弾性部材11を支持する高さに設定すれば、弾性部材11を支持できる上、弾性部材11の装着を邪魔することなく、堰き止められる水量を最大にできる。
【0046】
また、本実施の形態に係るシート保持部材1は、底部2が、側壁部3と隔壁部7との間に形成されビス14をガイド可能な第一ガイド溝2aと、シート取付部4と隔壁部7との間に形成されビス10をガイド可能な第二ガイド溝2bとを有している。この構成によると、シート保持部材1をビニールハウスHの奥行方向に沿うように配置する場合には、第一ガイド溝2aにビス14を挿入すれば、結露水がビニールハウスH内に侵入することを防止しつつ、シート保持部材1をアーチパイプPに容易に固定できる。また、シート保持部材1をアーチパイプPに沿うように配置する場合には、第二ガイド溝2bにビス10を挿入すれば、シートS1,S2を固定する箇所であるシート取付部4とシート保持部材1をアーチパイプPに固定する箇所の距離が近くなるため、シートS1,S2が風に煽られるなどしても、ビス10に作用する力が小さくなり、シート保持部材1がアーチパイプPから外れ難くなる。また、底部2にビス10,14をガイド可能なガイド溝2a,2bを設けているため、ビス10,14を容易に挿入できるようになっている。ただし、ガイド溝2a,2bを設けなくともビス10,14は挿入可能であるため、ガイド溝2a,2bは省略されてもよい。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。例えば、本実施の形態では、シート保持部材1は、ビニールハウスHに利用されているが、シートが展張されるものであれば、ビニールハウスへの利用には限定されない。
【符号の説明】
【0048】
1・・・シート保持部材、2・・・底部、2a・・・第一ガイド溝、2b・・・第二ガイド溝、3・・・側壁部、3b・・・抜け止め部、4・・・シート取付部、6・・・突起部、7・・・隔壁部、10,13,14・・・ビス、11・・・弾性部材、S1,S2・・・シート