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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069759
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240515BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240515BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240515BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 658F
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/78 652B
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179960
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】西村 武義
(57)【要約】
【課題】ゲート抵抗の増加を抑制することでスイッチング損失の増加を抑制しつつ、FBSOA耐量の低下を抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型のドリフト層2と、ドリフト層2の上部に設けられた第2導電型のベース領域3a~3cと、ベース領域3a~3cの上部に設けられた第1導電型の第1主電極領域4a~4dと、ベース領域3a~3cにゲート絶縁膜6a,6bを介して接する第1ゲート領域7a,7b、及び第1ゲート領域7a,7bに接し、第1ゲート領域7a,7bよりも低比抵抗の第2ゲート領域8a,8bを含むゲート電極(7a,8a),(7b,8b)と、ドリフト層2の下面側に設けられた第2主電極領域1と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上部に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の上部に設けられた第1導電型の第1主電極領域と、
前記ベース領域にゲート絶縁膜を介して接する第1ゲート領域、及び前記第1ゲート領域に接し、前記第1ゲート領域よりも低比抵抗の第2ゲート領域を含むゲート電極と、
前記ドリフト層の下面側に設けられた第2主電極領域と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1ゲート領域及び前記第2ゲート領域のそれぞれがポリシリコンからなる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1ゲート領域がポリシリコンからなり、
前記第2ゲート領域が高融点金属からなる、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ゲート領域の比抵抗が、前記第2ゲート領域の比抵抗の2倍以上である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1ゲート領域の厚さが、前記第2ゲート領域の厚さ以下である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ゲート領域の不純物濃度が、前記第2ゲート領域の不純物濃度の半分以下である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2ゲート領域の不純物濃度の前記第1ゲート領域の不純物濃度に対する比が、2以上、100以下である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1ゲート領域の不純物濃度が1.0×1019cm-3以上、1.0×1020cm-3以下であり、
前記第2ゲート領域の不純物濃度が1.5×1020cm-3以上、1.0×1021cm-3以下である、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート電極の単位面積当たりのゲート電荷とゲート抵抗との積が0.2以上である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート電極が前記ドリフト層の上面に設けられている、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1ゲート領域の厚さの前記第2ゲート領域の厚さに対する比が、0.25以上、1.0以下である、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極が前記ドリフト層の上部に設けられたトレンチに埋め込まれている、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1ゲート領域の厚さの前記第2ゲート領域の厚さに対する比が、0.15以上、0.5以下である、請求項12に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)等の半導体装置において、特性改善やコストダウンのために微細加工技術が求められている。また、半導体装置の低損失化の目的から、微細化によるオン抵抗の低減や、ゲート電極の低抵抗化によるスイッチング損失の低減が求められている。
【0003】
MOSFETの損失として、オンした後に一定の電流が流れている時の導通損失と、オン又はオフするまでの過渡時のスイッチング損失が存在する。微細加工技術の向上により、セル密度が増加しオン抵抗が低下することで導通損失は低下するが、セル密度が増加し容量成分が増加するためスイッチング損失は増加傾向にある。また、半導体装置の高精度化から高周波化が進み、スイッチング損失の割合は増加している。スイッチング損失の低減にはゲート容量の低減と共にゲート抵抗の低減が有効である。オン抵抗が低下したことでチップサイズを縮小しゲート容量を低減すると共に、ゲート抵抗も低減することでスイッチング損失の増加を抑制している。
【0004】
特許文献1は、トレンチゲートを有する縦型MOSFETにおいて、トレンチ内に第1ゲート領域と第2ゲート領域を備え、第1ゲート領域のp型不純物濃度は、第2ゲート領域のp型不純物濃度よりも低いことを開示する。更に、特許文献1は、プレーナゲートを有する縦型MOSFETにおいて、ゲート電極が第1ゲート領域と第2ゲート領域を備え、第1ゲート領域のp型不純物濃度は、第2ゲート領域のp型不純物濃度よりも低いことを開示する。更に、特許文献1は、半導体基板の材料としてSiを用いてよいことを開示する。
【0005】
特許文献2は、SiCにおいて、ゲート絶縁膜上にN型の第2ゲート領域を設け、第2ゲート領域上に第1ゲート領域を備えることを開示する。更に、特許文献2は、溝内にN型の第1ゲート領域とN型の第2ゲート領域が配置され、第2ゲート領域が溝内に形成されたゲート絶縁膜に接していることを開示する。更に、特許文献2は、第2ゲート領域が第1ゲート領域より低濃度の半導体材料であることを開示する。
【0006】
特許文献3は、MOSFETが、ゲート電極にゲート酸化膜に接して配置された厚さ2000Å程度のポリシリコン層と、ポリシリコン層の内側にタングステン(高融点金属)で形成された低抵抗層を備えることを開示する。更に、特許文献3は、トレンチ幅0.5μm、トレンチ深さ1.5μm、ポリシリコン層の厚さ2000Å、低抵抗層の厚さはトレンチ外で20000Åであり、ポリシリコン層と低抵抗層の界面近傍にシリサイドが形成されることを開示する。
【0007】
特許文献4は、MOSFETにおいて、ゲート電極が厚さ0.2μmの多結晶シリコンからなるゲート電極第一層と厚さ0.8μmの高融点金属からなるゲート電極第二層を備えてゲート抵抗を低減することを開示する。
【0008】
特許文献5は、SiCのMOSFETにおいて、ドープポリシリコン膜とドープポリシリコン膜上に形成された第2金属シリサイド膜(WSix膜)との積層膜からなるゲート電極が形成されていることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-229382号公報
【特許文献2】特開2016-72319号公報
【特許文献3】特開2003-324197号公報
【特許文献4】特開平3-203379号公報
【特許文献5】特開2013-55214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
MOSFET等の半導体装置において、微細加工技術の向上によりチャネル長が短くなり、電界強度が増すことで安全動作領域(SOA)耐量が低下している。SOAとは、半導体装置が破壊や劣化することなく安全に動作できる電流と電圧の領域である。微細化によるセル密度の向上で流せる電流が増加しており、ゲート抵抗を低減すると半導体装置のオンし易い箇所に電流が集中しやすくなり、順バイアスSOA(FBSOA)耐量が低下する。FBSOAとは、半導体装置がオン状態において安全に動作できる電流と電圧の領域である。一方、FBSOA耐量を確保するためにはゲート抵抗を低減できずスイッチング損失が増加する。即ち、スイッチング損失の増加とFBSOA耐量の低下はトレードオフの関係にある。
【0011】
本発明は、ゲート抵抗の増加を抑制することでスイッチング損失の増加を抑制しつつ、FBSOA耐量の低下を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(a)第1導電型のドリフト層と、(b)ドリフト層の上部に設けられた第2導電型のベース領域と、(c)ベース領域の上部に設けられた第1導電型の第1主電極領域と、(d)ベース領域にゲート絶縁膜を介して接する第1ゲート領域、及び第1ゲート領域に接し、第1ゲート領域よりも低比抵抗の第2ゲート領域を含むゲート電極と、(e)ドリフト層2の下面側に設けられた第2主電極領域とを備える半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲート抵抗の増加を抑制することでスイッチング損失の増加を抑制しつつ、FBSOA耐量の低下を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の一例の断面図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の一例の平面図である。
図3】第1実施形態に係る半導体装置の一例の等価回路図である。
図4】単位面積当たりのゲート電荷量とゲート抵抗の積と、FBSOA比との関係を示すグラフである。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の断面図である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図5に引き続く断面図である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図6に引き続く断面図である。
図8】第2実施形態に係る半導体装置の一例の断面図である。
図9】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の断面図である。
図10】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図9に引き続く断面図である。
図11】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図10に引き続く断面図である。
図12】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図11に引き続く断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、図面を参照して本発明の第1及び第2実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
以下の説明では、「第1主電極領域」及び「第2主電極領域」は、主電流が流入若しくは流出する半導体素子の主電極領域である。「第1主電極領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)であれば、ソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)であれば、エミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)やゲートターンオフサイリスタ(GTO)であれば、アノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。また、「第2主電極領域」とは、FETやSITであれば、上記第1主電極領域とはならないソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。IGBTであれば、上記第1主電極領域とはならないエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる領域を意味する。SIサイリスタやGTOであれば、上記第1主電極領域とはならないアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる領域を意味する。即ち、「第1主電極領域」がソース領域であれば、「第2主電極領域」はドレイン領域を意味する。「第1主電極領域」がエミッタ領域であれば、「第2主電極領域」はコレクタ領域を意味する。「第1主電極領域」がアノード領域であれば、「第2主電極領域」はカソード領域を意味する。なお、単に「主電極領域」と記載する場合は、技術的及び文脈的に妥当な第1主電極領域又は第2主電極領域のいずれか一方を包括的に意味する。
【0017】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」を「おもて面」と読み替えてもよく、「下面」を「裏面」と読み替えてもよい。
【0018】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じ「n」と「n」とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0019】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置として、図1に示すように、プレーナゲート構造の縦型MOSFETを一例に説明する。第1実施形態に係る半導体装置は、単位セルC1,C2を含むマルチチャネル構造を有する。単位セルC1は、ゲート電極(7a,8a)及び第1主電極領域(ソース領域)4a,4bを含み、単位セルC2は、ゲート電極(7b,8b)及び第1主電極領域(ソース領域)4c,4dを含む。図1では、2つの単位セルC1,C2を例示するが、単位セルC1,C2の並列方向に、単位セルC1,C2と同様の構造の単位セルが更に設けられていてよい。
【0020】
第1実施形態に係る半導体装置は、図1に示すように、第1導電型(n型)のドレイン領域1と、ドレイン領域1の上面側に設けられ、ドレイン領域1よりも低不純物濃度のn型のドリフト層2を備える。
【0021】
ドレイン領域1は、シリコン(Si)基板等の半導体基板で構成されている。ドレイン領域1を構成する半導体基板は、Si基板に限定されず、例えば炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンド(C)又は窒化アルミニウム(AlN)等のSiよりも禁制帯幅が広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)からなる半導体基板であってもよい。
【0022】
ドリフト層2は、Siからなるエピタキシャル成長層で構成されている。なお、ドリフト層2をn型の半導体基板で構成してもよく、半導体基板の裏面側にイオン注入や熱拡散によりn型のドレイン領域1を形成してもよい。
【0023】
ドリフト層2の上部には、ドリフト層2に接して、第2導電型(p型)のベース領域3a~3cが設けられている。ベース領域3aの上部には、ベース領域3aに接して、n型のソース領域4a及びp型のコンタクト領域9aが設けられている。ソース領域4a及びコンタクト領域9aは互いに接する。ベース領域3bの上部には、ベース領域3bに接して、n型のソース領域4b,4c及びp型のコンタクト領域9bが設けられている。ソース領域4b,4cはコンタクト領域9bに接し、コンタクト領域9bを挟んで互いに離間する。ベース領域3cの上部には、ベース領域3cに接して、n型のソース領域4d及びp型のコンタクト領域9cが設けられている。ソース領域4c及びコンタクト領域9cは互いに接する。ソース領域4a~4dの不純物濃度は、ドリフト層2の不純物濃度よりも高い。コンタクト領域9a~9cの不純物濃度は、ベース領域3a~3cの不純物濃度よりも高い。
【0024】
ソース領域4a、ベース領域3a、ベース領域3a,3bに挟まれたドリフト層2、ベース領域3b及びソース領域4bの上面に亘って、ゲート絶縁膜6aを介してゲート電極(7a,8a)が設けられている。ゲート絶縁膜6a及びゲート電極(7a,8a)により絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a)が構成されている。また、ソース領域4c、ベース領域3b、ベース領域3b,3cに挟まれたドリフト層2、ベース領域3c及びソース領域4dの上面に亘って、ゲート絶縁膜6bを介してゲート電極(7b,8b)が設けられている。ゲート絶縁膜6b及びゲート電極(7b,8b)により絶縁ゲート型電極構造(6b,7b,8b)が構成されている。
【0025】
ゲート絶縁膜6a,6bとしては、例えば二酸化珪素膜(SiO膜)、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si)膜、アルミニウム酸化物(Al)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y)膜、ハフニウム酸化物(HfO)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO)膜、タンタル酸化物(Ta)膜、ビスマス酸化物(Bi)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。
【0026】
ゲート電極(7a,8a)は、ゲート絶縁膜6aに接する第1ゲート領域7aと、第1ゲート領域7a上に設けられ、第1ゲート領域7aよりも低比抵抗の第2ゲート領域8aを備える2層構造からなる。また、ゲート電極(7b,8b)は、ゲート絶縁膜6bに接する第1ゲート領域7bと、第1ゲート領域7b上に設けられ、第1ゲート領域7bよりも低比抵抗の第2ゲート領域8bを備える2層構造からなる。
【0027】
ここで、従来のようにゲート電極がポリシリコンからなる単層構造である場合には、半導体チップが大きくなると、半導体チップ内の位置でゲート抵抗のばらつきが生じ、ゲート抵抗の小さい箇所に局所的に電流が集中するため、FBSOA耐量が低下する。
【0028】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置では、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)を高比抵抗の第1ゲート領域7a,7b及び低比抵抗の第2ゲート領域8a,8bの2層構造としている。例えば、第1ゲート領域7a,7bの比抵抗を、従来の単層構造のゲート電極の比抵抗よりも高くし、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗を、従来の単層構造のゲート電極の比抵抗と同等とする。これにより、第1ゲート領域7a,7bがバラスト抵抗として働くことで、単位セルC1,C2内及び単位セルC1,C2毎のゲート抵抗のばらつきを抑制することができ、局所的な電流集中を防止することができる。このため、単位セルC1,C2内及び単位セルC1,C2毎にゲート駆動を均一化することができ、FBSOA耐量の低下を抑制することができる。
【0029】
ゲート抵抗により変化するスイッチング損失とFBSOA耐量はトレードオフの関係にある。第1実施形態に係る半導体装置におけるゲート抵抗は、第1ゲート領域7a,7bによる高抵抗の第1ゲート抵抗と第2ゲート領域8a,8bによる低抵抗の第2ゲート抵抗の合成であり、スイッチング損失はこれに依存するが、同じゲート抵抗でもFBSOA耐量は高抵抗の第1ゲート抵抗と低抵抗の第2ゲート抵抗の比が大きいほど、低抵抗の第2ゲート抵抗により半導体素子内のセルが均一に動作し易く、高抵抗の第1ゲート抵抗がバラスト抵抗として働くことで向上する。
【0030】
第1ゲート領域7a,7bの比抵抗は、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗よりも高い。第1ゲート領域7a,7bの比抵抗は、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗に対して例えば2倍以上程度であり、3倍以上程度であることがより好ましい。第1ゲート領域7a,7bの比抵抗を、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗に対して2倍以上とすることで、第1ゲート領域7a,7bをバラスト抵抗として有効に機能させ、ゲート抵抗のばらつきを抑制することができる。更に、第1ゲート領域7a,7bの比抵抗を、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗に対して、3倍以上とすることで、第1ゲート領域7a,7bをバラスト抵抗としてより有効に機能させ、ゲート抵抗のばらつきをより抑制することができる。
【0031】
第1ゲート領域7a,7bの比抵抗は、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗に対して例えば10倍以下程度であり、5倍以下程度であることがより好ましい。第1ゲート領域7a,7bの比抵抗を、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗に対して10倍以下とすることで、従来の単層構造のゲート電極と比較して第1ゲート領域7a,7bによるゲート抵抗の増加は僅かであり、ゲート抵抗が大幅に増加しないため、スイッチング損失の増加を抑制することができる。更に、第1ゲート領域7a,7bの比抵抗を、第2ゲート領域8a,8bの比抵抗に対して、5倍以下とすることで、ゲート抵抗の増加をより抑制することができ、スイッチング損失の増加をより抑制することができる。
【0032】
第1ゲート領域7a,7b及び第2ゲート領域8a,8bの材料としては、例えば燐(P)や砒素(As)のn型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン膜(ドープドポリシリコン膜)が使用可能である。なお、第1ゲート領域7a,7b及び第2ゲート領域8a,8bの材料として、ボロン(B)等のp型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン膜(ドープドポリシリコン膜)を使用してもよい。
【0033】
また、第2ゲート領域8a,8bとして、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)等の高融点金属や、Ti/窒化チタン(TiN)等の高融点金属を含む積層膜を使用可能である。第2ゲート領域8a,8bとして高融点金属を使用する場合には、第2ゲート領域8a,8bと第1ゲート領域7a,7bを構成するポリシリコン膜とのシリサイドは形成しなくてよい。シリサイド形成には700℃以上の熱処理が必要であり、シリサイド化による体積膨張に伴う応力や熱履歴による特性変動、ゲート絶縁膜6a,6bのダメージが懸念され、ポリシリコン膜全部がシリサイド化するとゲート絶縁膜6a,6bの劣化が考えられる。また、ポリシリコン膜の一部のシリサイド化でもゲート抵抗が極端に低下することでFBSOA耐量が低下する可能性がある。
【0034】
例えば、第1ゲート領域7a,7bの材料としてn型のドープドポリシリコン膜を使用し、第2ゲート領域8a,8bの材料として高融点金属であるTiを使用すれば、Tiとn型半導体とのコンタクト抵抗が低いため、シリサイド化のための高温の熱処理は不要である。
【0035】
第1ゲート領域7a,7bの厚さt1及び第2ゲート領域8a,8bの厚さt2は、半導体装置の設計に応じて適宜調整可能である。例えば、第1ゲート領域7a,7bの厚さt1は、第2ゲート領域8a,8bの厚さt2以下であってよい。第1実施形態に係る半導体装置のようにプレーナゲート構造の場合には、第1ゲート領域7a,7bの厚さt1の第2ゲート領域8a,8bの厚さt2に対する比(t1/t2)は、例えば0.15以上、1.0以下程度であり、0.25以上、1.0以下程度が好ましい。第1ゲート領域7a,7bの厚さt1及び第2ゲート領域8a,8bの厚さt2の合計値は、例えば0.2μm以上、1.0μm以下程度である。
【0036】
例えば、第1ゲート領域7a,7bの不純物濃度は、第2ゲート領域8a,8bの不純物濃度の半分以下である。第1ゲート領域7a,7bの不純物濃度は、例えば1.0×1019cm-3以上、1.0×1020cm-3以下程度である。第2ゲート領域8a,8bの不純物濃度は、例えば1.5×1020cm-3以上、1.0×1021cm-3以下程度である。
【0037】
第1ゲート領域7a,7bの不純物濃度をN1、第2ゲート領域8a,8bの不純物濃度をN2として、不純物濃度N2の不純物濃度N1に対する比N2/N1は、例えば2以上、100以下程度であり、2以上、10以下程度であることがより好ましい。不純物濃度比N2/N1を100以下とすることにより、ゲート閾値電圧の増加やゲート抵抗増加によるスイッチング遅れを抑制することができ、オン損失及びスイッチング損失を抑制することができる。更に、不純物濃度N2の不純物濃度N1に対する比N2/N1を10以下とすることにより、ゲート閾値電圧の増加やゲート抵抗増加によるスイッチング遅れをより抑制することができ、オン損失及びスイッチング損失をより抑制することができる。
【0038】
図2は、第2ゲート領域8a,8b、ソース領域4a~4d及びコンタクト領域9a~9を上面側から見た平面図である。図2に示すように、第2ゲート領域8a,8bは、一方向(図1の上下方向)に互いに平行に延伸する直線状(ストライプ状)の平面パターンを有する。第2ゲート領域8a,8bの下に隠れた第1ゲート領域7a,7bも、第2ゲート領域8a,8bと同様の平面パターンを有する。即ち、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)は、一方向に互いに平行に延伸する直線状(ストライプ状)の平面パターンを有する。
【0039】
第1実施形態に係る半導体装置はプレーナゲート構造であり、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)がストライプ状に延伸するため、第1ゲート領域7a,7bのシート抵抗をRs1、第2ゲート領域8a,8bのシート抵抗をRs2、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)の平面パターンがなすストライプの長さをL、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のストライプの長さ方向(図1の奥行方向)に直交する方向(図1の左右方向)の幅をW、単位セルC1,C2を含む単位セルの本数をNとすると、第1ゲート領域7a,7bのみのゲート抵抗Rg1及び第2ゲート領域8a,8bのみのゲート抵抗Rg2は、以下の式(1)及び(2)でそれぞれ求められる。
【0040】
Rg1=Rs1*L/((W*t1)*N) …(1)
Rg2=Rs2*L/((W*t2)*N) …(2)
【0041】
なお、式(1)及び(2)のLは、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のストライプの一端でコンタクトをとる場合である。ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のストライプの両端でコンタクトをとる場合には、式(1)及び(2)のLは半分となる。第1ゲート領域7a,7bのみのゲート抵抗Rg1及び第2ゲート領域8a,8bのみのゲート抵抗Rg2は並列接続されているため、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)の全体のゲート抵抗Rgは、以下の式(3)で求められる。
【0042】
Rg=Rg1*Rg2/(Rg1+Rg2) …(3)
【0043】
ドリフト層2及び絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a),(6b,7b,8b)の上面には層間絶縁膜13a,13bが設けられている。層間絶縁膜13a,13bは、例えば、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜(SiO膜)、高温酸化膜(HTO膜)、シリコン窒化物膜(Si膜)、燐を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、硼素を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、硼素及び燐を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)等の単層膜や、これらの積層膜で構成されている。
【0044】
層間絶縁膜13a,13b上には、表面電極(ソース電極)15が設けられている。表面電極15は、層間絶縁膜13a,13bを貫通するコンタクトホールを介してソース領域4a~4d及びコンタクト領域9a~9cに電気的に接続されている。表面電極15は、アルミニウム(Al)やAl合金、銅(Cu)等の金属が使用可能である。Al合金としては、Al-シリコン(Si)、Al-銅(Cu)-Si、Al-Cu等が挙げられる。
【0045】
ドレイン領域1の下面には、裏面電極(ドレイン電極)16が設けられている。裏面電極16は、例えば金(Au)からなる単層膜や、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)の順で積層された金属膜で構成できる。
【0046】
第1実施形態に係る半導体装置の動作時は、表面電極15を接地電位として、裏面電極16に正電圧を印加し、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)に閾値以上の正電圧を印加すると、ベース領域3a~3cに反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、裏面電極16からドレイン領域1、ドリフト層2、ベース領域3a~3cの反転層及びソース領域4a~4dを経由して表面電極15へ電流が流れる。一方、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)に印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域3a~3cに反転層が形成されないため、オフ状態となり、裏面電極16から表面電極15へ電流が流れない。
【0047】
図3は、第1実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。トランジスタT1には、還流ダイオードD1が逆並列接続されている。図3に示したトランジスタT1及び還流ダイオードD1が、図1に示したMOSFETに対応する。図3に示したトランジスタT1のゲートには、図1に示したゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のゲート抵抗Rgが接続されている。
【0048】
図4は、ゲート電荷量Qgs、ゲート電極の単位面積をA、ゲート抵抗をRgとして、ゲート電極の単位面積当たりのゲート電荷量Qgs/Aとゲート抵抗Rgの積(Qgs/A)*Rgと、FBSOA比との関係を示すグラフである。ゲート電極の単位面積当たりのゲート電荷量Qgs/Aは、半導体装置の設計により異なるが、活性面積に比例する。例えば、プレーナゲート構造であれば単位セルのピッチが20μm以下程度、トレンチゲート構造であればトレンチ間が4μm以下程度の微細な半導体装置では、ゲート電極の単位面積当たりのゲート電荷量Qgs/Aが大きく、チャネル密度が高い。チャネル密度が高い半導体装置は、電流を流し易く電流集中で破壊し易いため、ゲート抵抗を低減せずに高くすることで電流集中を緩和し、FBSOA耐量の低下を抑制する。
【0049】
FBSOA比は0に近づくにつれてFBSOA耐量が低下する。よって、図4に示すように、FBSOA比が0になることを避けるため、ゲート電極の単位面積当たりのゲート電荷量(Qgs/A)とゲート抵抗Rgの積(Qgs/A)*Rgは0.2以上が好ましい。よって、以下の式を満たすことが好ましい。
【0050】
(Qgs/A)*Rg≧0.2 …(4)
【0051】
<半導体装置の製造方法>
次に、図5図7を参照して、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0052】
本例ではp型のベース領域3a~3c、n型のソース領域4a~4d及びp型のコンタクト領域9a~9cを形成した後にゲート絶縁膜6a,6bおよび第2ゲート領域8a,8bを形成しているが、ゲート電極間の間隔を微細化するため、ゲート絶縁膜6a,6bおよび第2ゲート領域8a,8bを形成後にp型のベース領域3a~3c、n型のソース領域4a~4d及びp型のコンタクト領域9a~9cを形成してもよい。
【0053】
まず、図5に示すように、第1導電型(n型)のシリコン(Si)ウェハ等からなり、ドレイン領域1となる半導体基板上に、n型のドリフト層2をエピタキシャル成長させる。
【0054】
次に、フォトリソグラフィ技術等により形成したイオン注入用マスクを用いて、ドリフト層2の上部に、ボロン(B)等のp型不純物や、燐(P)又は砒素(As)等のn型不純物を順次イオン注入する。その後、熱処理により、ドリフト層2に注入された不純物イオンを活性化させる。この結果、図6に示すように、ドリフト層2の上部に、p型のベース領域3a~3c、n型のソース領域4a~4d及びp型のコンタクト領域9a~9cが形成される。
【0055】
次に、熱酸化法又は化学気相成長(CVD)法等により、ドリフト層2の上面にゲート絶縁膜を形成する。次に、CVD法等により、ゲート絶縁膜を介して、燐(P)等のn型不純物等を高濃度で添加した第1ポリシリコン膜を堆積する。更に、CVD法等により、第1ポリシリコン膜上に、燐(P)等のn型不純物等を高濃度で添加した第2ポリシリコン膜を第2ゲート領域として堆積する。ここで、第1ポリシリコン膜の不純物濃度は1.0×1019cm-3以上、1.0×1020cm-3以下程度であり、第2ポリシリコン膜の不純物濃度は1.5×1020cm-3以上、1.0×1021cm-3以下程度であり、第1ポリシリコン膜及び第2ポリシリコン膜の不純物濃度差が僅かであるため、第1ポリシリコン膜及び第2ポリシリコン膜は同一の成膜装置において連続して形成可能である。
【0056】
その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、ドリフト層2上のゲート絶縁膜、第1ポリシリコン膜及び第2ポリシリコン膜を選択的に除去する。この結果、図7に示すように、ゲート絶縁膜6a,6b、第1ポリシリコン膜からなる第1ゲート領域7a,7b、及び第2ポリシリコン膜からなる第2ゲート領域8a,8bが形成され、絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a),(6b,7b,8b)が形成される。
【0057】
次に、CVD法等により、ドリフト層2及び絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a),(6b,7b,8b)の上面に層間絶縁膜を成膜する。次に、層間絶縁膜の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いて、ドライエッチングにより、層間絶縁膜の一部を選択的に除去する。この結果、層間絶縁膜に、ソース領域4a~4d及びコンタクト領域9a~9cの一部を露出するコンタクトホールが開口される。その後、フォトレジスト膜を除去する。
【0058】
次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、層間絶縁膜13a,13bのコンタクトホールを埋め込むように、層間絶縁膜13a,13bの上面に表面電極15を堆積する(図1参照)。次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、ドレイン領域1を下面側から研削し、製品厚さに調整する。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域1の下面の全面に金(Au)等からなる裏面電極16を形成する(図1参照)。その後、半導体ウェハを切断(ダイシング)して個片化することにより、図1に示した第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0059】
以上説明したように、第1実施形態に係る半導体装置によれば、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)を、高比抵抗の第1ゲート領域7a,7b及び低比抵抗の第2ゲート領域8a,8bの2層構造とする。これにより、ゲート抵抗の大幅な増加を抑制し、スイッチング損失の大幅な増加を抑制しつつ、第1ゲート領域7a,7bがバラスト抵抗として働くことで、単位セルC1,C2内及び単位セルC1,C2毎のゲート駆動を均一化することができるため、FBSOA耐量の低下を抑制することができる。
【0060】
なお、第1実施形態に係る半導体装置の第1ゲート領域7a,7bおよび第2ゲート領域8a,8bはストライプ状であるが、第1ゲート領域7a,7bおよび第2ゲート領域8a,8bは平面視で格子状に設けてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
<半導体装置の構成>
第2実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、トレンチゲート構造の縦型MOSFETである点が、図1に示したプレーナゲート型の縦型MOSFETである第1実施形態に係る半導体装置と異なる。第2実施形態に係る半導体装置は、単位セルC1,C2を含むマルチチャネル構造を有する。単位セルC1は、ゲート電極(7a,8a)及び第1主電極領域(ソース領域)4a,4bを含み、単位セルC2は、ゲート電極(7b,8b)及び第1主電極領域(ソース領域)4c,4dを含む。図8では、2つの単位セルC1,C2を例示するが、単位セルC1,C2の並列方向に、単位セルC1,C2と同様の構造の単位セルが更に設けられていてよい。
【0062】
ドリフト層2の上部には、複数のトレンチ(ゲートトレンチ)5a,5bが互いに離間して並列して設けられている。ゲートトレンチ5a,5bは、ドリフト層2の上面から、ドリフト層2の上面に対して垂直方向である深さ方向に設けられている。ゲートトレンチ5aの側面(側壁)には、ソース領域4a,4b及びベース領域3a,3bの側面が接している。ゲートトレンチ5bの側面(側壁)には、ソース領域4c,4d及びベース領域3b,3cの側面が接している。ゲートトレンチ5a,5bの底部はドリフト層2に接している。図示を省略するが、ゲートトレンチ5a,5bは、(図8の奥行方向)に互いに平行に延伸する直線状(ストライプ状)の平面パターンを有する。
【0063】
隣り合うゲートトレンチ5a,5bの間隔は、例えば0.4μm以上、4μm以下程度である。隣り合うゲートトレンチ5a,5bの間には、ドリフト層2の上部で構成されるメサ部が設けられている。メサ部は、隣り合うゲートトレンチ5a,5bに挟まれたドリフト層2の領域であり、ゲートトレンチ5a,5bの最も深い位置よりも上方の領域である。
【0064】
ゲートトレンチ5aの底面及び側面を覆うようにゲート絶縁膜6aが設けられている。ゲートトレンチ5aの内側には、ゲート絶縁膜6aを介してゲート電極(7a,8a)が埋め込まれている。ゲート絶縁膜6a及びゲート電極(7a,8a)により絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a)が構成される。また、ゲートトレンチ5bの底面及び側面を覆うようにゲート絶縁膜6bが設けられている。ゲートトレンチ5bの内側には、ゲート絶縁膜6bを介してゲート電極(7b,8b)が埋め込まれている。ゲート絶縁膜6b及びゲート電極(7b,8b)により絶縁ゲート型電極構造(6b,7b,8b)が構成される。
【0065】
ゲート電極(7a,8a)は、ゲート絶縁膜6aに接する第1ゲート領域7aと、第1ゲート領域7aの内側にゲート絶縁膜6aから離間して設けられ、第1ゲート領域7aよりも低比抵抗の第2ゲート領域8aを備える2層構造からなる。また、ゲート電極(7b,8b)は、ゲート絶縁膜6bに接する第1ゲート領域7bと、第1ゲート領域7bの内側にゲート絶縁膜6aから離間して設けられ、第1ゲート領域7bよりも低比抵抗の第2ゲート領域8bを備える2層構造からなる。
【0066】
第1ゲート領域7a,7bの厚さt1は、ゲートトレンチ5a,5bの側面に接する部分及びゲートトレンチ5a,5bの底面に接する部分で略一定である。ゲートトレンチ5a,5bの深さ方向(図8の上下方向)に直交する方向(図8の左右方向)における第2ゲート領域8a,8bの厚さt2は、ゲートトレンチ5a,5bの深さ方向において略一定である。
【0067】
第1ゲート領域7a,7b及び第2ゲート領域8a,8bのそれぞれの材料、不純物濃度、抵抗値については、第1実施形態に係る半導体装置の第1ゲート領域7a,7b及び第2ゲート領域8a,8bと同様であるので、重複した説明を省略する。
【0068】
第2実施形態に係る半導体装置はトレンチゲート構造であるため、第1ゲート領域7a,7bの厚さt1と第2ゲート領域8a,8bの厚さt2の合計値は、例えば0.2μm以上、1.2μm以下程度である。第1ゲート領域7a,7bの厚さt1の第2ゲート領域8a,8bの厚さt2に対する比(t1/t2)は、例えば0.15以上、1.0以下程度であり、0.15以上、0.5以下程度が好ましい。
【0069】
第2実施形態に係る半導体装置はトレンチゲート構造であり、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)がストライプ状に延伸するため、第1ゲート領域7a,7bのシート抵抗をRs1、第2ゲート領域8a,8bのシート抵抗をRs2、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のストライプの長さ(奥行)をL、単位セルC1,C2を含む単位セルの本数をN、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)の深さをDとすると、第1ゲート領域7a,7bのみのゲート抵抗Rg1及び第2ゲート領域8a,8bのみのゲート抵抗Rg2は、以下の式(5)及び(6)でそれぞれ求められる。
【0070】
Rg1=Rs1*L/((D*2*t1)*N) …(5)
Rg2=Rs2*L/((D*t2)*N) …(6)
【0071】
なお、式(5)及び(6)のLは、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のストライプの一端でコンタクトをとる場合である。ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)のストライプの両端でコンタクトをとる場合には、式(5)及び(6)のLは半分となる。第1ゲート領域7a,7bのみのゲート抵抗Rg1及び第2ゲート領域8a,8bのみのゲート抵抗Rg2は並列接続されているため、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)の全体のゲート抵抗Rgは、以下の式(7)で求められる。
【0072】
Rg=Rg1*Rg2/(Rg1+Rg2) …(7)
【0073】
ドリフト層2のメサ部及び絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a),(6b,7b,8b)の上面には層間絶縁膜13a,13bが設けられている。ドリフト層2のメサ部上に位置する層間絶縁膜13a,13bには、層間絶縁膜13a,13bを貫通するコンタクトホールが設けられている。ドリフト層2のメサ部には、コンタクトホールに連続するようにトレンチ(コンタクトトレンチ)10a~10cが設けられている。コンタクトトレンチ10a~10cは、ドリフト層2のメサ部の上面から、メサ部の上面に対して垂直方向である深さ方向に設けられている。
【0074】
コンタクトトレンチ10aの側面はソース領域4aに接している。コンタクトトレンチ10aの底部は、p型のコンタクト領域9aに接している。コンタクトトレンチ10aには、バリアメタル膜11a及びコンタクトプラグ12aが埋め込まれている。コンタクトトレンチ10bの側面はソース領域4b,4cに接している。コンタクトトレンチ10bの底部は、p型のコンタクト領域9bに接している。コンタクトトレンチ10bには、バリアメタル膜11b及びコンタクトプラグ12bが埋め込まれている。コンタクトトレンチ10cの側面はソース領域4dに接している。コンタクトトレンチ10cの底部は、p型のコンタクト領域9cに接している。コンタクトトレンチ10cには、バリアメタル膜11c及びコンタクトプラグ12cが埋め込まれている。
【0075】
バリアメタル膜11a~11cとしては、例えば、チタン(Ti)又は窒化チタン(TiN)等の単層膜、或いは、Ti及びTiNの積層膜等が使用可能である。コンタクトプラグ12a~12cとしては、タングステン(W)等の金属が使用可能である。
【0076】
層間絶縁膜13a,13b上には、表面電極(ソース電極)15が設けられている。表面電極15は、バリアメタル膜11a~11c及びコンタクトプラグ12a~12cを介してソース領域4a~4d及びコンタクト領域9a~9cに電気的に接続されている。
【0077】
ドリフト層2の下面側には、ドリフト層2よりも高不純物濃度のn型のドレイン領域1が設けられている。ドレイン領域1の下面には、裏面電極(ドレイン電極)16が設けられている。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0078】
<半導体装置の製造方法>
次に、図5図9図12を参照して、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0079】
本例ではp型のベース領域3a~3c及びn型のソース領域4を形成した後にゲートトレンチ5a,5bを形成しているが、ゲートトレンチ間のピッチを微細化するため、ゲートトレンチ5a,5bを形成後にp型のベース領域3a~3c及びn型のソース領域4を形成してもよい。
【0080】
まず、図5に示すように、第1導電型(n型)のシリコン(Si)ウェハ等からなり、ドレイン領域1となる半導体基板上に、n型のドリフト層2をエピタキシャル成長させる。
【0081】
次に、フォトリソグラフィ技術等により形成したイオン注入用マスクを用いて、ドリフト層2の上部に、ボロン(B)等のp型不純物や、燐(P)又は砒素(As)等のn型不純物を順次イオン注入する。その後、熱処理により、ドリフト層2に注入された不純物イオンを活性化させる。この結果、ドリフト層2の上部に、p型のベース領域3a~3c及びn型のソース領域4が形成される(図9参照)。
【0082】
次に、フォトリソグラフィ技術等によりエッチング用マスクを形成し、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングにより、図9に示すように、ゲートトレンチ5a,5bを形成する。
【0083】
次に、熱酸化法又は化学気相成長(CVD)法等により、ゲートトレンチ5a,5bの内側にゲート絶縁膜を形成する。更に、CVD法等により、ゲートトレンチ5a,5bの内側に、ゲート絶縁膜を介して、燐(P)等のn型不純物等を高濃度で添加した第1ポリシリコン膜を埋め込む。更に、CVD法等により、ゲートトレンチ5a,5bの内側に、ゲート絶縁膜及び第1ポリシリコン膜を介して、燐(P)等のn型不純物等を高濃度で添加した第2ポリシリコン膜を埋め込む。
【0084】
その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、ゲート絶縁膜、第1ポリシリコン膜及び第2ポリシリコン膜の一部を選択的に除去する。この結果、図10に示すように、ゲートトレンチ5a,5bの内側に、ゲート絶縁膜6a,6b、第1ポリシリコン膜からなる第1ゲート領域7a,7b、及び第2ポリシリコン膜からなる第2ゲート領域8a,8bが埋め込まれ、絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a),(6b,7b,8b)が形成される。
【0085】
次に、CVD法等により、絶縁ゲート型電極構造(6a,7a,8a),(6b,7b,8b)の上面に層間絶縁膜を成膜する。次に、層間絶縁膜の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いて、ドライエッチングにより、層間絶縁膜の一部を選択的に除去する。この結果、層間絶縁膜に、ソース領域4の一部を露出するコンタクトホールが開口される。その後、フォトレジスト膜を除去する。
【0086】
次に、RIE等のドライエッチングにより、層間絶縁膜のコンタクトホールに連続するように、ソース領域4の一部を選択的に除去して、ソース領域4を貫通するコンタクトトレンチ10a~10cを形成する(図11参照)。次に、コンタクトトレンチ10a~10cの底部のベース領域3a~3cにボロン(B)等のp型不純物をイオン注入する。その後、熱処理により、ベース領域3a~3cに注入された不純物イオンを活性化させる。この結果、図11に示すように、コンタクトトレンチ10a~10cの底部にp型のコンタクト領域9a~9cが形成される。
【0087】
次に、CVD法及びフォトリソグラフィ技術等により、図12に示すように、コンタクトトレンチ10a~10c及び層間絶縁膜13a,13bのコンタクトホールに、バリアメタル膜11a~11c及びコンタクトプラグ12a~12cを順次埋め込む。
【0088】
次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、層間絶縁膜13a,13bの上面に表面電極15を堆積する(図8参照)。次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、ドレイン領域1を下面側から研削し、製品厚さに調整する。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域1の下面の全面に金(Au)等からなる裏面電極16(図8参照)を形成する。その後、半導体ウェハを切断(ダイシング)して個片化することにより、図8に示した第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0089】
以上説明したように、第2実施形態に係る半導体装置によれば、ゲート電極(7a,8a),(7b,8b)を、高比抵抗の第1ゲート領域7a,7b及び低比抵抗の第2ゲート領域8a,8bの2層構造とする。これにより、ゲート抵抗の大幅な増加を抑制し、スイッチング損失の大幅な増加を抑制しつつ、第1ゲート領域7a,7bがバラスト抵抗として働くことで、単位セルC1,C2内及び単位セルC1,C2毎のゲート駆動を均一化することができるため、FBSOA耐量の低下を抑制することができる。
【0090】
ゲート抵抗により変化するスイッチング損失とFBSOA耐量はトレードオフの関係にある。第2実施形態に係る半導体装置におけるゲート抵抗は、高抵抗の第1ゲート抵抗と低抵抗の第2ゲート抵抗の合成であり、スイッチング損失はこれに依存するが、同じゲート抵抗でもFBSOA耐量は高抵抗の第1ゲート抵抗と低抵抗の第2ゲート抵抗の比が大きいほど低抵抗の第2ゲート抵抗により半導体素子内のセルが均一に動作し易く高抵抗の第1ゲート抵抗がバラスト抵抗として働くことで向上する。
【0091】
(その他の実施形態)
上記のように第1及び第2実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0092】
例えば、第1及び第2実施形態に係る半導体装置としてMOSFETを例示したが、図1及び図5に示したMOSFETのn型のドレイン領域をp型のコレクタ領域とした構成の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)にも適用可能である。IGBTとしては、IGBT単体の他、逆導通型IGBT(RC-IGBT)や逆阻止絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RB-IGBT)にも適用可能である。
【0093】
また、第1及び第2実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0094】
1…ドレイン領域
2…ドリフト層
3a~3c…ベース領域
4a~4d…ソース領域
5a,5b…トレンチ(ゲートトレンチ)
6a,6b…ゲート絶縁膜
9a~9c…コンタクト領域
10a~10c…トレンチ(コンタクトトレンチ)
11a~11c…バリアメタル膜
12a~12c…コンタクトプラグ
13a,13b…層間絶縁膜
15…表面電極(ソース電極)
16…裏面電極(ドレイン電極)
C1,C2…単位セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12