(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069789
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20240515BHJP
G03F 1/32 20120101ALI20240515BHJP
G03F 1/82 20120101ALI20240515BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/32
G03F1/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179991
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】中野 秀亮
(72)【発明者】
【氏名】山形 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 大輔
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB03
2H195BB20
2H195BB31
2H195BB35
2H195BC04
2H195BC05
2H195BC11
2H195BC19
2H195CA01
2H195CA22
2H195CA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い転写性(特に解像性)を有し、且つ水素ラジカル耐性を十分に有する反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10は、極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスク20を作製するための反射型フォトマスクブランク10であって、基板1と、基板1上に形成された多層膜を含む反射層2と、反射層2の上に形成された吸収層4と、を有し、吸収層4は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、吸収層4は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、吸収層4の総膜厚は、60nm以下であり、吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクを作製するための反射型フォトマスクブランクであって、
基板と、
前記基板上に形成された多層膜を含む反射層と、
前記反射層の上に形成された吸収層と、を有し、
前記吸収層は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、
前記吸収層は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、
前記吸収層の総膜厚は、60nm以下であり、
前記吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されていることを特徴とする反射型フォトマスクブランク。
【請求項2】
前記吸収層は、202度以上265度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項3】
前記吸収層は、216度以上261度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項4】
前記吸収層は、EUV光に対する反射率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項5】
前記位相制御膜は、EUV光に対する屈折率nが0.94より小さいことを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項6】
前記位相制御膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)のうち少なくとも1種類の元素を含む材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項7】
前記吸収制御膜は、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうち少なくとも1種類の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項8】
前記反射層と前記吸収層との間にキャッピング層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜を含む反射層と、
前記反射層の上に形成された吸収パターン層と、を有し、
前記吸収パターン層は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、
前記吸収パターン層は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、
前記吸収パターン層の総膜厚は、60nm以下であり、
前記吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されていることを特徴とする反射型フォトマスク。
【請求項10】
前記吸収パターン層は、202度以上265度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【請求項11】
前記吸収パターン層は、216度以上261度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【請求項12】
前記吸収パターン層は、EUV光に対する反射率が20%以下であることを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【請求項13】
前記位相制御膜は、EUV光に対する屈折率nが0.94より小さいことを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【請求項14】
前記位相制御膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)のうち少なくとも1種類の元素を含む材料から構成されることを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【請求項15】
前記吸収制御膜は、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうち少なくとも1種類の元素をさらに含有することを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【請求項16】
前記反射層と前記吸収パターン層との間にキャッピング層が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の反射型フォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外領域の光を光源としたリソグラフィで使用する反射型フォトマスク及びこれを作製するための反射型フォトマスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体デバイスの微細化に伴い、フォトリソグラフィ技術の微細化に対する要求が高まっている。フォトリソグラフィにおける転写パターンの最小解像寸法は、露光光源の波長に大きく依存し、波長が短いほど最小解像寸法を小さくできる。このため、露光光源は、従来の波長193nmのArFエキシマレーザー光から、波長13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)領域の光に置き換わってきている。
EUV領域の光は、ほとんどの物質で高い割合で吸収されるため、従来の光の透過を利用する屈折光学系が使用できないことから、露光機の光学系部材もレンズではなく、反射型(ミラー)となる。このため、反射型フォトマスク(EUVマスク)への入射光と反射型フォトマスク(EUVマスク)で反射した反射光とが同軸上に設計できない問題があり、通常、EUVリソグラフィでは、光軸をEUVマスクの垂直方向から6度傾けて入射し、マイナス6度の角度で反射する反射光を半導体基板に導く手法が採用されている。
【0003】
このように、EUVリソグラフィではミラーを介し光軸を傾斜することから、EUVマスクに入射するEUV光がEUVマスクのマスクパターン(パターン化された光吸収層)の影をつくる、いわゆる「射影効果(シャドウイング効果)」と呼ばれる問題が発生することがある。
現在のEUVマスクブランクでは、光吸収層として膜厚60~90nmのタンタル(Ta)を主成分とした膜が用いられている。このマスクブランクを用いて作製したEUVマスクでパターン転写の露光を行った場合、EUV光の入射方向とマスクパターンの向きとの関係によっては、マスクパターンの影となるエッジ部分で、コントラストの低下を引き起こす恐れがある。これに伴い、半導体基板上の転写パターンのラインエッジラフネスの増加や、線幅が狙った寸法に形成できないなどの問題が生じ、転写性能が悪化することがある。
【0004】
この課題に対し、吸収層に消衰係数kが高い材料を用いてEUV反射率を抑える手法[例えば、特許文献1を参照]や、位相シフト効果を用いた手法[例えば、特許文献2を参照]が提案されている。
反射型位相シフトマスクでは、吸収層を通り減光した反射光は、吸収層が形成されていない開口部で反射される光と位相差を持つ。このような反射型位相シフトマスクは、透過型位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果を用いることにより、ウェハ上の光学像のコントラストが向上し、転写パターンの解像性を向上させることができる。
例えば、特許文献2に記載の位相シフト効果を用いた反射型マスクは、位相差の最適値を175~185度としている。これは従来の透過型位相シフトマスクの位相差の最適値である180度を含んだ値である。
【0005】
しかし、反射型位相シフトマスクの場合、EUV光が傾いて入射するため、反射光の一部は吸収層パターン(パターン化された吸収層)のエッジ部分を通る。エッジ部分に当たった反射光はパターン中心部の反射光と位相がずれてしまうため、吸収層の最適な位相差は180度と異なる。
また、特許文献3に記載の位相シフト効果を用いた反射型マスクブランクは、反射率と、コントラストを向上させる位相差とから、位相シフト層の膜厚や材料組成の組み合わせを限定している。これにより、特許文献3に記載の技術であれば、位相シフト層を膜厚60nm以下に薄膜化し、シャドウイング効果を低減しつつ位相シフト効果が得られる。
【0006】
しかし、特許文献3では、材料と、目的とする反射率・位相とから位相シフト層の膜厚を導出しており、その膜厚が従来よりも薄いことを主張しているが、実際の転写性については言及されていない。仮に、NiやCoなど、EUV光の吸収が大きい材料で位相シフト層を構成した場合、従来膜より膜厚が薄くても、斜入射されたEUV光の強い妨げとなり、転写性は向上しない場合がある。
このように、従来技術に係る反射型の位相シフトマスクでは、位相シフト効果を十分に活用(利用)できておらず、その転写性(特に解像性)は十分でなかった。
更に、EUV露光装置では、コンタミ(不純物の混入)によるチャンバー内の汚染を防ぐため、水素ラジカルによるクリーニングが行われる。つまり、反射型位相シフトマスクは、水素ラジカル還元に対して耐性を有する材料を用いて形成する必要がある。
【0007】
しかし、反射型位相シフトマスクの中には水素ラジカル耐性が低い材料もあり、水素ラジカル耐性が低い材料により形成された反射型位相シフトマスクは長期間の使用に耐えられないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/159785号
【特許文献2】特許第6287099号
【特許文献3】国際公開第2019/225737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、EUV光を吸収する吸収制御膜と、位相を制御する位相制御膜とを組み合わせた吸収層を形成することにより、位相シフト効果を最大限に活用し、高い転写性(特に解像性)を有し、且つ水素ラジカル耐性を十分に有する反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを提供することを目的とする。
より具体的には、本発明は、吸収層に消衰係数kの大きい吸収制御膜と、屈折率の小さな位相制御膜とを設けることで吸収層の薄膜化を可能にし、且つ吸収制御膜及び位相制御膜の各膜の組み合わせやそれぞれの膜厚を変更することで所望の位相差を有し、更に水素ラジカル耐性を付与することで、転写性の向上を可能にする反射型フォトマスク及びそれを作製するための反射型フォトマスクブランクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクは、極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクを作製するための反射型フォトマスクブランクであって、基板と、前記基板上に形成された多層膜を含む反射層と、前記反射層の上に形成された吸収層と、を有し、前記吸収層は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、前記吸収層は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、前記吸収層の総膜厚は、60nm以下であり、前記吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されている。
【0011】
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける吸収層は、202度以上265度以下の範囲内の位相差を有してもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける吸収層は、216度以上261度以下の範囲内の位相差を有してもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける吸収層は、EUV光に対する反射率が20%以下であってもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける位相制御膜は、EUV光に対する屈折率nが0.94より小さくてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける位相制御膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)のうち少なくとも1種類の元素を含む材料から構成されてもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける吸収制御膜は、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうち少なくとも1種類の元素をさらに含有してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクにおける反射層と吸収層との間にキャッピング層が形成されていてもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクは、基板と、前記基板上に形成された多層膜を含む反射層と、前記反射層の上に形成された吸収パターン層と、を有し、前記吸収パターン層は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、前記吸収パターン層は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、前記吸収パターン層の総膜厚は、60nm以下であり、前記吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されている。
【0014】
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける吸収パターン層は、202度以上265度以下の範囲内の位相差を有してもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける吸収パターン層は、216度以上261度以下の範囲内の位相差を有してもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける吸収パターン層は、EUV光に対する反射率が20%以下であってもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける位相制御膜は、EUV光に対する屈折率nが0.94より小さくてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける位相制御膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)のうち少なくとも1種類の元素を含む材料から構成されてもよい。
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける吸収制御膜は、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうち少なくとも1種類の元素をさらに含有してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクにおける反射層と吸収パターン層との間にキャッピング層が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、高い転写性(特に解像性)を有し、且つ水素ラジカル耐性を十分に有する反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを提供することができる。より詳しくは、本発明の一態様によれば、極端紫外領域の波長の光を光源としたパターニングにおいて十分な位相シフト効果が得られ、ウェハ転写性能(特に解像性)を向上することが可能になり、射影効果を抑制または軽減でき、且つ水素ラジカル環境下でも使用可能な反射型フォトマスクが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランクの構造を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクの構造を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクの位相差とNILSとの関係を示すグラフである
【
図4】EUV光の波長における各金属材料の光学定数を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクの位相差と膜厚との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクブランクの構造を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの製造工程を示す概略断面図である。
【
図8】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの製造工程を示す概略断面図である。
【
図9】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの製造工程を示す概略断面図である。
【
図10】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
また、図面に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造などが下記のものに限定されるものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10の構造を示す概略断面図である。また、
図2は、本発明の実施形態に係る反射型フォトマスク20の構造を示す概略断面図である。ここで、
図2に示す本発明の実施形態に係る反射型フォトマスク20は、
図1に示す本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10の吸収層4をパターニングして形成したものである。
(全体構造)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10は、基板1と、基板1上に形成された反射層2と、反射層2の上に形成されたキャッピング層3と、キャッピング層3の上に形成された吸収層4とを備え、吸収層4は、互いに機能が異なる少なくとも2層以上で構成されている。
図1には、互いに機能が異なる二層で構成された吸収層4が例示されており、そのうちの一層を吸収層4a(下層4a)とし、吸収層4aの上に形成された他の層を吸収層4b(上層4b)としている。
【0021】
なお、吸収層4a、4bは、吸収制御膜、位相制御膜のどちらかであり、どちらが上層、下層でもよい。つまり、本実施形態では、吸収層4a(下層4a)を吸収制御膜とし、吸収層4b(上層4b)を位相制御膜としてもよいし、吸収層4a(下層4a)を位相制御膜とし、吸収層4b(上層4b)を吸収制御膜としてもよい。
また、吸収制御膜及び位相制御膜の少なくとも一方を構成する成分のうち、少なくとも一成分は、表層側から基板1側に向かって段階的に変化する傾斜構造でもよい、即ち濃度勾配を有していてもよい。
(基板)
本発明の実施形態に係る基板1には、例えば、平坦なSi基板や合成石英基板等を用いることができる。また、基板1には、チタンを添加した低熱膨張ガラスを用いることができるが、熱膨張率の小さい材料であれば、本発明はこれらに限定されるものではない。
(反射層)
本発明の実施形態に係る反射層2は、露光光であるEUV光(極端紫外光)を反射するものであればよく、EUV光に対する屈折率の大きく異なる材料の組み合わせによる多層反射膜であってもよい。多層反射膜を含む反射層2は、例えば、Mo(モリブデン)とSi(シリコン)、またはMo(モリブデン)とBe(ベリリウム)といった組み合わせの層を40周期程度繰り返し積層することにより形成したものであってもよい。
(キャッピング層)
本発明の実施形態に係るキャッピング層3は、吸収層4に転写パターン(マスクパターン)を形成する際に行われるドライエッチングに対して耐性を有する材質で形成されており、吸収層4をエッチングする際に、反射層2へのダメージを防ぐエッチングストッパとして機能するものである。キャッピング層3は、例えば、Ru(ルテニウム)で形成されている。ここで、反射層2の材質やエッチング条件により、キャッピング層3は形成されていなくてもかまわない。また、図示しないが、基板1の反射層2を形成していない面に裏面導電膜を形成することができる。裏面導電膜は、反射型フォトマスク20を露光機に設置するときに静電チャックの原理を利用して固定するための膜である。
(吸収層)
図1に示すように、吸収層4は、保護層であるキャッピング層3上に形成される層であり、露光光であるEUV光を吸収する層である。また、吸収層4は、転写するための微細パターンである吸収パターン層4cを形成する層である。つまり、反射型フォトマスクブランク10の吸収層4の一部を除去することにより、即ち吸収層4をパターニングすることにより、
図2に示す反射型フォトマスク20の吸収パターン層4cが形成される。
【0022】
吸収パターン層4cでは、EUV光がパターン開口部を通り吸収層4を経由せずに入射、及び反射をする際、その反射光は保護層であるキャッピング層3及び反射層2の影響を受けて、元の入射光と位相を変化させる。一方、EUV光が吸収層4を経由して入射、及び(あるいは)反射をする際、その反射光は保護層であるキャッピング層3及び反射層2の影響に加え、吸収層4の影響を受けて元の入射光と位相を変化させる。即ち、EUV光が吸収層4を経由して生じた反射光は、パターン開口部のみを経由して生じた反射光との間で、吸収層4の膜特性に基づく所望の位相差を生じる。
一般に、吸収層4の、反射率及びパターニングした結果生じる開口部との位相差は、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの各層の光学定数(屈折率n、消衰係数k)と膜厚、使用する光の波長が決まれば、一意に定まり、光学理論により計算で求めることができる(詳細は、例えば、応用物理工学選書3、吉田貞史「薄膜」、培風館、1990を参照)。つまり、本実施形態における「位相差」とは、吸収層4の反射光の位相と、反射層2の(開口部での)反射光の位相と、の差を意味する。なお、本実施形態では、上記反射率及び上記位相差の算出に用いた屈折率n及び消衰係数kの各値は、EUV光を用いた実測値を用いた。
【0023】
NILS(規格化空間像対数傾斜)は、
NILS=w×dln(I)/dx ・・・式(1)
で求められるコントラストの値であり、反射型フォトマスク20を用いてウェハパターンを形成した際のウェハパターンの解像性の指標になる。ここで「w」は線幅を表し、「I」はエネルギー潜像の強度を表す。なお、NILSの値が大きい程、転写パターンの解像性が高いことを意味する。
反射型フォトマスク20を用いてウェハ転写した際のウェハパターンのNILS(規格化空間像対数傾斜)は、反射型フォトマスク20の位相差に依存する。
図3は、吸収制御膜(下層4a)を、消衰係数kが0.066である錫(Sn)と酸素(O)を合計で85原子%含み、且つタンタル(Ta)を15原子%含む混合材料で成膜し、吸収制御膜(下層4a)の上に屈折率nが0.89であるルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層4b)を成膜した2層構造の吸収層4について、開口数NAが0.33の露光条件で、ウェハ上の19nmのホールパターンを露光した場合のNILSを、吸収制御膜(下層4a)と位相制御膜(上層4b)の総膜厚が42nm、43nm、44nm、45nm、46nmとなる5水準で示した図である。なお、吸収制御膜(下層4a)及び位相制御膜(上層4b)は、膜厚をそれぞれ0~26nm、0~47nmまで変化させることで意図的に位相差が異なる条件を作った。
【0024】
図3より、吸収制御膜(下層4a)と位相制御膜(上層4b)の総膜厚が42nm~46nmの範囲内であれば、その総膜厚に依存することなく、位相差が216度から261度近傍の範囲内でNILSの値は最大になることが分かる。
また、
図3より、膜厚43nmにおいて位相差が180度である場合、NILSの値は2.43であることが分かる。
これに対し、位相差が188度である場合、膜厚43nmにおいてNILSの値は2.50であり、位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約2%高くなっている。
【0025】
また、位相差が268度である場合、膜厚46nmにおいてNILSの値は2.50であり、膜厚43nmにおいて位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約2%高くなっている。
また、位相差が202度である場合、膜厚43nmにおいてNILSの値は2.60であり、位相差が265度である場合、膜厚43nmにおいてNILSの値は2.60であり、膜厚43nmにおいて位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約6%高くなっている。
また、位相差が216度である場合、膜厚43nmにおいてNILSの値は2.70であり、位相差が261度である場合、膜厚43nmにおいてNILSの値は2.70であり、膜厚43nmにおいて位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約11%高くなっている。
【0026】
また、
図3に示すように、膜厚44nmにおいて位相差が180度である場合、NILSの値は2.40であることが分かる。
これに対し、位相差が188度である場合、膜厚44nmにおいてNILSの値は2.47であり、位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約2%高くなっている。
また、位相差が202度である場合、膜厚44nmにおいてNILSの値は2.58であり、位相差が265度である場合、膜厚44nmにおいてNILSの値は2.58であり、膜厚44nmにおいて位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約6%高くなっている。
【0027】
また、位相差が216度である場合、膜厚44nmにおいてNILSの値は2.78であり、膜厚44nmにおいて位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約15%高くなっており、位相差が261度である場合、膜厚44nmにおいてNILSの値は2.66であり、膜厚44nmにおいて位相差が180度である場合に比べてNILSの値は約11%高くなっている。
このように位相差が180度である場合よりも、位相差が188度以上268度以下の範囲内であれば2%以上、位相差が202度以上265度以下の範囲内であれば6%以上、位相差が216度以上261度以下の範囲内であれば11%以上、NILSの値が向上し得る。
【0028】
これらのことから、解像性を向上させるためには、吸収層4の位相差は、188度以上268度以下の範囲内が好ましく、202度以上265度以下の範囲内がさらに好ましく、216度以上261度以下の範囲内が最も好ましいことが分かる。
EUVリソグラフィにおいて、EUV光は斜めに入射し、反射層2で反射されるが、吸収パターン(転写パターン)が形成された吸収層4が光路の妨げとなる射影効果により、ウェハ(半導体基板)上への転写性能が悪化することがある。この転写性能の悪化は、EUV光を吸収する吸収層4の厚さを薄くすることで低減できる。
吸収層4の膜厚は、60nm以下であることが好ましい。吸収層4の膜厚が60nm以下である場合、従来のTa系吸収層よりも膜厚が薄くなるため、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。
【0029】
図4は、各金属材料のEUV光の波長13.5nmに対する光学定数を示すグラフである。
図4の横軸は屈折率nを表し、縦軸は消衰係数kを示している。従来の吸収層の主材料であるタンタル(Ta)の膜厚は、60~90nmである。そのため、吸収層4の膜厚を60nm以下とすることができれば、従来の反射型フォトマスクに比べて、転写性能を向上させることができる。本実施形態の吸収層4の膜厚は、50nm以下であると好ましく、40nm以下であるとさらに好ましい。なお、本実施形態の吸収層4において、その下限値は特に制限されないが、20nm以上であると好ましく、25nm以上であるとさらに好ましい。
【0030】
吸収制御膜(下層4a)を薄膜化するには、吸収制御膜(下層4a)を構成する材料として、既存のTa膜が有する消衰係数k(0.041)よりも消衰係数kが大きい材料(高消衰係数材料)を用いることが必要である。
上記のような消衰係数kを満たす材料としては、
図4に示すように、例えば、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、インジウム(In)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、テルル(Te)がある。しかしながら、これらの金属材料の一部は、元素のハロゲン化物の揮発性が低くドライエッチング性が悪いという問題を有している。このため、これらの金属材料で形成された吸収層を備える反射型フォトマスクブランクを作製したとしても、この吸収層に吸収パターンをパターニングできず、その結果、この反射型フォトマスクブランクを反射型フォトマスクに加工が出来ないという問題が生じる。あるいは、これらの金属材料の融点が低いために反射型フォトマスク作製時やEUV露光時の熱に耐えられず、実用性に乏しい反射型フォトマスクとなってしまうという問題が生じる。
【0031】
上述の欠点を回避するため、本実施形態の反射型フォトマスクブランク10または本実施形態の反射型フォトマスク20の吸収制御膜(下層4a)は、錫(Sn)及び酸素(O)を含む材料で形成されたものとする。Sn単体では、融点が230℃付近であり、反射型フォトマスク作製時やEUV露光時の熱の温度よりも低く、熱的安定性に問題があるが、酸化錫(SnO2)にすることで、それぞれの融点を大幅に高くできる。実際に反応性スパッタリングにより酸化錫(SnO2)膜を複数作製し、熱分析装置によりその融点を測定したところ、融点が1630℃と単体より高く、露光環境下で必要とされる熱耐性を有すると考えられる。
【0032】
また、反射型フォトマスク20は、水素ラジカル環境下に曝されるため、水素ラジカル耐性の高い光吸収材料でなければ、反射型フォトマスク20は長期の使用に耐えられない。本実施形態においては、マイクロ波プラズマを使って、電力1kWで水素圧力が0.36ミリバール(mbar)以下の水素ラジカル環境下で、膜減り速さ0.01nm/s以下の材料を、水素ラジカル耐性の高い材料とする。
錫(Sn)は単体では水素ラジカルへの耐性が低いことが知られているが、酸素を追加することによって水素ラジカル耐性が高くなる。更にタンタル(Ta)を混合することで耐性が大幅に上昇し、上述水素ラジカル耐性の基準を満たすことが可能となる。これは、水素ラジカルへの耐性を有するタンタル(Ta)を混ぜることによって強度が高まり、化合物としての安定性の向上に寄与するためと考えられる。
【0033】
吸収制御膜(下層4a)を構成する材料は、錫(Sn)及び酸素(O)を合計で70原子%以上含有することが好ましい。更に、吸収制御膜(下層4a)にはタンタル(Ta)が5原子%以上20原子%以下の範囲内で添加されていることが好ましい。つまり、吸収層4は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上95原子%未満の範囲内で含有し、且つタンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されていることが好ましい。これは、吸収層4に錫(Sn)と酸素(O)以外の成分が含まれていると、EUV光吸収性が低下する可能性があるものの、錫(Sn)と酸素(O)以外の成分が30原子%未満であれば、EUV光吸収性の低下はごく僅かであり、EUVマスクの吸収層4としての性能の低下はほとんどないためである。更に、酸化錫(SnO2)は、塩素系ガスを用いたドライエッチングが可能であるため、反射型フォトマスクブランクを反射型フォトマスクに加工することが出来るものの、タンタル(Ta)を混合させることによって加工性が低下する。吸収制御膜(下層4a)に混合されるタンタル(Ta)が5原子%以上20原子%であれば、ドライエッチングによる加工性の低下はごく僅かであり、水素ラジカル耐性も向上する。
【0034】
なお、タンタル(Ta)の含有量が5原子%未満であると水素ラジカル耐性の向上が得られない。また、タンタル(Ta)の含有量が20原子%を超えるとドライエッチングによる加工性が低下し、ラインエッジラフネス(LER)が大きくなることでウェハ転写性に悪影響を与えることが予想される。更に、タンタル(Ta)の含有量が20原子%を超えると波長190~260nmのDUV(Deep Ultra Violet)光におけるコントラストが低下するため、検査性が悪くなる。したがって、タンタル(Ta)の含有量は5原子%以上20原子%以下であることが好ましく、8原子%以上15原子%以下であることがより好ましい。
【0035】
吸収制御膜(下層4a)を構成する材料の上記組成比は、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出しており、分析手法によっては含有量が変動する可能性がある。例えば、タンタル(Ta)の含有量がRBS分析で5原子%~20原子%の材料を、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した結果、4原子%~13原子%となってもよい。更に、例えば、タンタル(Ta)の含有量がRBS分析で5原子%~20原子%の材料を、エネルギー分散型X線分析法(EDX)を用いて分析した結果、8原子%~34原子%となってもよい。
前述の通り、吸収制御膜(下層4a)を構成する材料は、錫(Sn)及び酸素(O)を合計で70原子%以上含有し、且つタンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましいが、錫(Sn)と酸素(O)とタンタル(Ta)以外の材料として、例えば、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうちいずれか1種が混合されていてもよい。つまり、吸収層4は、錫(Sn)と酸素(O)とタンタル(Ta)以外に、Pt、Te、In、Zr、Hf、Ti、W、Si、Cr、Mo、B、Pd、Ni、P、F、N、C、及びHのうち少なくとも1種類の元素をさらに含有していてもよい。即ち、吸収層4は、錫(Sn)と酸素(O)とタンタル(Ta)以外に、Pt、Te、In、Zr、Hf、Ti、W、Si、Cr、Mo、B、Pd、Ni、P、F、N、C、及びHのうち少なくとも1種類の元素を、吸収制御膜(下層4a)を構成する全原子数に対して25原子%未満であれば、さらに含有していてもよい。
【0036】
例えば、吸収制御膜(下層4a)にPt、Te、In、Pd、またはNiを混合することで、EUV光に対する高吸収性を確保しながら、吸収層4に導電性を付与することが可能となる。このため、電子線を用いたマスクパターン検査において、チャージアップを抑制可能な為、検査性を高くすることが可能となる。
また、吸収制御膜(下層4a)にNやHf、あるいはZr、Mo、Cr、B、またはFを混合した場合、膜質をよりアモルファスにすることが可能となる。このため、ドライエッチング後の吸収層パターン(マスクパターン)のラフネスや面内寸法均一性、あるいは転写像の面内均一性を向上させることが可能となる。
【0037】
また、吸収制御膜(下層4a)にTi、W、またはSiを混合した場合、吸収層4(吸収パターン層4c)の洗浄に対する耐性を高めることが可能となる。
本実施形態では、吸収制御膜(下層4a)の膜厚は、1nm以上40nm以下の範囲内であれば好ましく、3nm以上30nm以下の範囲内であればより好ましく、3nm以上25nm以下の範囲内であればさらに好ましい。吸収制御膜(下層4a)の膜厚が上記数値範囲内であれば、EUV光の吸収率を容易に調整することができる。
図5は、吸収制御膜(下層4a)を1nm未満で成膜し、その上に消衰係数kが0.03、EUV光に対する屈折率nが0.90、0.91、0.92、0.93、0.94の各位相制御膜(上層4b)を成膜した際の吸収層4の膜厚と、位相差との関係をシミュレーションで算出したグラフである。なお、上述した「吸収層4の膜厚」とは、吸収制御膜(下層4a)の膜厚が位相制御膜(上層4b)の厚さに比べて無視できる程度に薄いため、実質的に位相制御膜(上層4b)自体の厚さを意味する。
【0038】
図5に示すように、吸収層4を構成する位相制御膜(上層4b)の屈折率nが小さければ小さいほど、所望の位相差を得るための膜厚を薄くすることができる。
このように、射影効果の低減には、吸収制御膜(下層4a)を構成する材料の消衰係数kを大きくすることによる吸収制御膜(下層4a)の薄膜化の他に、位相制御膜(上層4b)を構成する材料の屈折率nを小さくすることによる位相制御膜(上層4b)の薄膜化も有効である。
図5に示すように、吸収層4を構成する位相制御膜(上層4b)の屈折率nが0.93の場合、216度以上261度以下の範囲内の位相差を得るための吸収層4の最低膜厚は約60nmであり、従来のTa系吸収層の膜厚と同程度である。そのため、吸収層4を構成する位相制御膜(上層4b)の屈折率nは0.93より小さければ、吸収層4の膜厚を60nmより薄くすることができるため好ましい。また、吸収層4を構成する位相制御膜(上層4b)の屈折率nが0.92より小さければ、216度以上261度以下の範囲内の位相差を得るための吸収層4の最低膜厚が50nm以下になるため、さらに好ましい。
【0039】
ただし、吸収制御膜(下層4a)の膜厚によっては、吸収層4を構成する位相制御膜(上層4b)の屈折率nが0.94より小さい場合、吸収層4の膜厚が60nm以下で216度以上261度以下の範囲内の位相差を得ることが可能である。
したがって、吸収層4を構成する位相制御膜(上層4b)の屈折率nは0.94より小さいことが好ましく、0.93よりも小さいことがより好ましく、0.92より小さいことがさらに好ましい。
本実施形態では、位相制御膜(上層4b)の膜厚は、1nm以上50nm以下の範囲内であれば好ましく、5nm以上40nm以下の範囲内であればより好ましく、10nm以上35nm以下の範囲内であればさらに好ましい。位相制御膜(上層4b)の膜厚が上記数値範囲内であれば、位相差を容易に制御(調整)することができる。
【0040】
位相制御膜(上層4b)を構成する材料に、屈折率nが0.94より小さな低屈折率材料を用いることで、位相制御膜(上層4b)は十分に薄膜化し、射影効果の低減が可能となる。具体的には、屈折率nが0.94より小さい材料としては、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉛(Pb)、インジウム(In)、コバルト(Co)などが挙げられ、屈折率nが0.93より小さい材料としては、モリブデン(Mo)などが挙げられ、屈折率nが0.92より小さい材料としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)などが挙げられる。位相制御膜(上層4b)を構成する材料は、これらの元素のうち、少なくとも1種以上を含んだ材料とすることが望ましい。
【0041】
なお、位相制御膜(上層4b)を構成する材料は、屈折率nが0.94より小さければ、上述した低屈折率材料以外が混合されていてもよい。例えば、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)、または水素(H)が混合されていてもよい。
例えば、位相制御膜(上層4b)にNやHf、あるいはAl、Zr、Cr、B、またはFを混合した場合、膜質をよりアモルファスにすることが可能となる。このため、ドライエッチング後の吸収層パターン(マスクパターン)のラフネスや面内寸法均一性、あるいは転写像の面内均一性を向上させることが可能となる。
【0042】
また、位相制御膜(上層4b)にSi、Ta、またはOを混合した場合、吸収層4(吸収パターン層4c)の洗浄に対する耐性を高めることが可能となる。
以上、吸収層4に含有可能な材料の効果の一例を記述したが、各材料の効果は上記の例に限定されず、複数に該当してもよい。
なお、位相制御膜(上層4b)の構成する材料全体のうち、上述した低屈折率材料が50質量%以上含まれていれば好ましく、70質量%以上含まれていればより好ましく、90質量%以上含まれていればさらに好ましい。低屈折率材料の含有量が上記数値範囲内であれば、位相制御膜(上層4b)として確実に機能し、水素ラジカルへの耐性も十分に有する。
【0043】
また、十分な位相シフト効果(十分な解像性)を得るためには、吸収層4の反射率は絶対反射率で20%以下が好ましく、15%以下であるとさらに好ましい。なお、本実施形態の吸収層4において、その下限値は特に制限されないが、1%以上が好ましく、2%以上であるとさらに好ましい。ここで、「絶対反射率」とは、光源からの光を直接測定した光の量に対する実試料で反射した光の量の比率で計算された値をいう。つまり、入射光の強度を100%としたときの反射率を意味する。なお、本実施形態において「絶対反射率」の用語を用いたのは、多層反射膜(反射層2)の反射率(約66%)と吸収層4の反射率との比を意味する「相対反射率」と区別するためである。このように、本実施形態における「絶対反射率」は、「相対反射率」とは異なる概念である。
【0044】
また、吸収層4の上には、ハードマスク層を備えていても良い。ハードマスク層には、Cr系膜またはSi系膜など、ドライエッチングに耐性がある材料が用いられる。
以上のように、本実施形態では、下層4aを吸収制御膜とし、上層4bを位相制御膜とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述したように、本実施形態において吸収制御膜と位相制御膜とはその積層順を問わないため、下層4aを位相制御膜とし、上層4bを吸収制御膜とした場合であっても上述した効果を得ることができる。
以下、本発明に係る反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの実施例について説明する。
【0045】
[実施例1]
最初に、反射型フォトマスクブランク100の作製方法について
図6を用いて説明する。
まず、
図6に示すように、低熱膨張特性を有する合成石英の基板11の上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)とを一対とする積層膜が40枚積層されて形成された反射層12を形成する。反射層12の膜厚は280nmとした。
【0046】
次に、反射層12上に、中間膜としてルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング層13を、膜厚が3.5nmになるように成膜した。
次に、キャッピング層13の上に、錫(Sn)と酸素(O)とタンタル(Ta)を含む吸収制御膜(下層14a)を膜厚14nmになるように成膜した。錫(Sn)の価数は、XAFS(エックス線吸収微細構造)で測定したところ、3.7であった。また、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)を用いて組成分析を行ったところ、吸収制御膜(下層14a)における錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量は85原子%、また、タンタル(Ta)の含有量は15原子%であった。
【0047】
次に、吸収制御膜(下層14a)の上に、ルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚19nmになるように成膜した。
また、吸収層14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、僅かに結晶性が見られるものの、アモルファスであった。
次に、基板11の反射層12が形成されていない側の面に窒化クロム(CrN)で形成された裏面導電膜15を100nmの厚さで成膜し、反射型フォトマスクブランク100を作成した。
基板11上へのそれぞれの膜の成膜は、スパッタリング装置を用いた。また、各々の膜の膜厚は、スパッタリング時間で制御した。吸収制御膜(下層14a)は、反応性スパッタリング法により、スパッタリング中にチャンバーに導入する酸素の量を制御することで、錫(Sn)の価数が3.7となるように成膜した。
【0048】
次に、反射型フォトマスク200の作製方法について
図7から
図10を用いて説明する。
まず、
図7に示すように、反射型フォトマスクブランク100の吸収層14の上に、ポジ型化学増幅型レジスト(SEBP9012:信越化学社製)を120nmの膜厚にスピンコートで塗布し、110℃で10分ベークし、レジスト膜16を形成した。
次に、電子線描画機(JBX3030:日本電子社製)によってレジスト膜16に所定のパターンを描画した。その後、110℃、10分間のプリベーク処理を行い、次いでスプレー現像機(SFG3000:シグマメルテック社製)を用いて現像処理をした。これにより、
図8に示すように、レジストパターン16aを形成した。
【0049】
次に、レジストパターン16aをエッチングマスクとして、Ruで形成された位相制御膜(上層14b)はフッ素系ガス、SnOで形成された吸収制御膜(下層14a)は塩素系ガスを主体としたドライエッチングにより、吸収層14のパターニングを行った。これにより、
図9に示すように、吸収パターンを備えた吸収層14(吸収パターン層14c)を形成した。
次に、レジストパターン16aの剥離を行い、
図10に示す本実施例に係る反射型フォトマスク200を作製した。
なお、本実施例において、吸収パターンを備えた吸収層14(吸収パターン層14c)は、転写評価用の反射型フォトマスク200上で、76nmのホールパターンとした。
なお、実施例1の吸収層14について、屈折率n及び消衰係数k、並びに反射率を、EUV光による反射率測定装置で測定した。その結果、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は5.8%であり、位相差は193度であった。
【0050】
[実施例2]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が29nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が10nmになるように成膜した。
なお、実施例2の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は2.6%であり、位相差は208度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0051】
[実施例3]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が14nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が30nmになるように成膜した。
なお、実施例3の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は4.5%であり、位相差は228度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0052】
[実施例4]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が11nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にニオブ(Nb)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が44nmになるように成膜した。
なお、実施例4の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(下層14b)の屈折率nが0.934、消衰係数kが0.005に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は6.7%であり、位相差は199度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0053】
[実施例5]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が15nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にニオブ(Nb)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が40nmになるように成膜した。
なお、実施例5の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.934、消衰係数kが0.005に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は5.2%であり、位相差は210度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0054】
[実施例6]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が36nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にチタン(Ti)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が16nmになるように成膜した。
なお、実施例6の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.952、消衰係数kが0.014に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は1.3%であり、位相差は190度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0055】
[実施例7]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が30nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にチタン(Ti)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が23nmになるように成膜した。
なお、実施例7の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.952、消衰係数kが0.014に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は1.1%であり、位相差は204度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0056】
[実施例8]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が5nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が40nmになるように成膜した。
なお、実施例8の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は11.6%であり、位相差は255度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例8の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0057】
[実施例9]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が12nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が39nmになるように成膜した。
なお、実施例9の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は3.3%であり、位相差は268度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例9の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0058】
[実施例10]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が23nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にモリブデン(Mo)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が24nmになるように成膜した。
なお、実施例10の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.923、消衰係数kが0.006に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は2.1%であり、位相差は215度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例10の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0059】
[実施例11]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の80原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の20原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が2nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が43nmになるように成膜した。
なお、実施例11の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.929、消衰係数kが0.065に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は11.9%であり、位相差は259度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例11の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0060】
[実施例12]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の95原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の5原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が36nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が9nmになるように成膜した。
なお、実施例12の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.926、消衰係数kが0.069に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は2.1%であり、位相差は211度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例12の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0061】
[実施例13]
キャッピング層13の上に、ルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(下層14a)を膜厚が40nmになるように成膜した。位相制御膜(下層14a)の上に、吸収制御膜(上層14b)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(上層14b)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(上層14b)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(上層14b)の膜厚が4nmになるように成膜した。
なお、実施例13の吸収層14は、吸収制御膜(上層14b)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(下層14a)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は13.3%であり、位相差は256度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例13の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0062】
[実施例14]
キャッピング層13の上に、ルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(下層14a)を膜厚が26nmになるように成膜した。位相制御膜(下層14a)の上に、吸収制御膜(上層14b)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(上層14b)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(上層14b)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(上層14b)の膜厚が13nmになるように成膜した。
なお、実施例14の吸収層14は、吸収制御膜(上層14b)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(下層14a)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は7.2%であり、位相差は226度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例14の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0063】
[実施例15]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の80原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように、また、タングステン(W)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の5原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が20nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が19nmになるように成膜した。
なお、実施例12の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.065に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は5.4%であり、位相差は207度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例15の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0064】
[比較例1]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の100原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が19nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が20nmになるように成膜した。
【0065】
なお、比較例1の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.925、消衰係数kが0.070に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は4.7%であり、位相差は206度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
[比較例2]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が26nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が18nmになるように成膜した。
なお、比較例2の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は2.9%であり、位相差は184度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0066】
[比較例3]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が8nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が39nmになるように成膜した。
なお、比較例2の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は8.4%であり、位相差は281度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0067】
[比較例4]
吸収制御膜(下層14a)の組成が、錫(Sn)と酸素(O)の合計含有量が吸収制御膜(下層14a)の85原子%となるように、また、タンタル(Ta)の含有量が吸収制御膜(下層14a)の15原子%となるように成膜した。また、吸収制御膜(下層14a)の膜厚が32nmになるように成膜した。吸収制御膜(下層14a)の上にルテニウム(Ru)からなる位相制御膜(上層14b)を膜厚が33nmになるように成膜した。
なお、比較例2の吸収層14は、吸収制御膜(下層14a)の屈折率nが0.928、消衰係数kが0.066に、位相制御膜(上層14b)の屈折率nが0.886、消衰係数kが0.017に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は0.3%であり、位相差は233度であった。
なお、吸収層14以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製し、吸収層14の分析も実施例1と同様の方法で実施した。
【0068】
[参考]
前述の実施例及び比較例とは別に、従来のタンタル(Ta)系吸収層を有する反射型フォトマスクも参考例として比較した。反射型フォトマスクブランクは、前述の実施例及び比較例と同様に、低熱膨張特性を有する合成石英の基板上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)とを一対とする積層膜が40枚積層されて形成された反射層と、膜厚3.5nmのルテニウム(Ru)キャッピング層13とを有し、キャッピング層13上に形成された吸収層14は、膜厚58nmのTaN上に膜厚2nmのTaOを成膜したものである。また、前述の実施例及び比較例と同様に、吸収層14がパターニングされたものを評価に用いた。
なお、TaNの屈折率nが0.953、消衰係数kが0.044に、TaOの屈折率nが0.90、消衰係数kが0.027に、それぞれ作製されていることが分かった。また、吸収層14の波長13.5nmにおける絶対反射率は1.3%であり、位相差は160度であった。
【0069】
[評価]
上述した実施例1~15、比較例1~4、及び参考例で得られた反射型フォトマスクについて、以下の方法で転写性能及び水素ラジカル耐性の評価を行った。なお、転写性能はウェハ露光評価により確認した。また、ウェハ露光評価は、NILS(Normalized Image Log-Slope:規格化空間像対数傾斜)値により、その解像性を評価した。
[ウェハ露光評価]
EUV露光装置(NXE3300B:ASML社製)を用いて、EUVポジ型化学増幅型レジストを塗布した半導体ウェハ上に、各実施例、各比較例、及び参考例で作製した反射型フォトマスク200の吸収パターンを転写露光した。このとき、露光量は、ホールパターンが設計通りの19nmに転写するように調節した。その後、電子線寸法測定機により転写されたレジストパターンの観察及び線幅測定を実施し、解像性を確認し、以下の「◎」、「○」、「×」の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:NILS値が2.70以上である場合
○:NILS値が2.50以上であり、2.70未満である場合
×:NILS値が2.50未満である場合
以上の評価結果を表1に示す。
なお、NILS値については、「○」以上の評価であれば、転写性能に問題はないため、合格とした。
〔水素ラジカル耐性〕
2.45GHzのMWP(Micro Wave Plasma:マイクロ波プラズマ)を使って、電力1kWで水素圧力が0.36ミリバール(mbar)以下の水素ラジカル環境下に、各実施例、各比較例、及び参考例で作製した反射型フォトマスク200を設置した。
水素ラジカル処理後での膜厚変化Δd(Δd=処理前の膜厚-処理後の膜厚)を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認し、以下の「◎」、「〇」、「×」の3段階で評価した。なお、測定は線幅200nmLSパターンで行った。
【0070】
<評価基準>
◎:Δd≦1nmであった場合
○:1nm<Δd≦1.5nmであった場合
×:1.5nm<Δdであった場合
以上の評価結果を表1に示す。
なお、水素ラジカル耐性評価については、「○」以上の評価であれば、十分に耐性があるため、合格とした。
【0071】
【0072】
表1において、各実施例及び各比較例におけるNILS値の比較結果を示す。前述の評価基準は、既存のタンタル(Ta)マスクを用いた場合と比較したときに十分にNILS値が高いかを基準としている。
従来の膜厚60nmのタンタル(Ta)系吸収パターンを備えた反射型フォトマスクを用いた場合のNILS値は2.37であった。これに対し実施例1のNILS値は2.51であり、実施例2のNILS値は2.68であり、実施例3のNILS値は2.77であり、実施例4のNILS値は2.54であり、実施例5のNILS値は2.68であり、実施例6のNILS値は2.57であり、実施例7のNILS値は2.64であり、実施例8のNILS値は2.60であり、実施例9のNILS値は2.72であり、実施例10のNILS値は2.70であり、実施例11のNILS値は2.59であり、実施例12のNILS値は2.67であり、実施例13のNILS値は2.51であり、実施例14のNILS値は2.69であり、実施例15のNILS値は2.59であった。また比較例においても、比較例1のNILS値は2.61と「合格」の基準を満たした。
【0073】
これに対し、比較例2のNILS値は2.38であり、比較例3のNILS値は2.44であり、比較例4のNILS値は2.38と、基準値2.50を満たさなかったため「不合格」とした。
表1において、各実施例及び各比較例の水素ラジカル耐性の結果を示す。比較例1以外の実施例及び比較例、即ち実施例1~15及び比較例2~4の反射型フォトマスク200については、「合格」の基準を満たし、比較例1は「不合格」であった。
表1において、NILS値と水素ラジカル耐性の総合的評価を示す。波長13.5nmの光を光源としたパターニングにおいて十分な位相シフト効果が得られ、ウェハ転写性能(特に解像性)を向上することが可能になり、射影効果を抑制または軽減でき、且つ水素ラジカル耐性を有する反射型フォトマスク200については、「判定」の欄に「○」と記した。一方、射影効果を十分に抑制または軽減できなかった、あるいは解像性を十分に向上することができなかった、又は水素ラジカル耐性を有さない反射型フォトマスク200については、「判定」の欄に「×」と記した。
【0074】
これにより、吸収層14が吸収制御膜と位相制御膜の少なくとも2層以上の積層構造からなり、位相差が188度以上268度以下度であり、総膜厚が60nm以下であり、吸収制御膜が錫(Sn)と酸素(〇)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成された反射型フォトマスクであれば、解像性、水素ラジカル耐性が共に良好であることから、射影効果を低減でき、長寿命であり、且つ転写性能が高くなるという結果となった。
なお、本開示の反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【0075】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクを作製するための反射型フォトマスクブランクであって、
基板と、
前記基板上に形成された多層膜を含む反射層と、
前記反射層の上に形成された吸収層と、を有し、
前記吸収層は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、
前記吸収層は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、
前記吸収層の総膜厚は、60nm以下であり、
前記吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されていることを特徴とする反射型フォトマスクブランク。
(2)
前記吸収層は、202度以上265度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする上記(1)に記載の反射型フォトマスクブランク。
(3)
前記吸収層は、216度以上261度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする上記(1)に記載の反射型フォトマスクブランク。
(4)
前記吸収層は、EUV光に対する反射率が20%以下であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランク。
【0076】
(5)
前記位相制御膜は、EUV光に対する屈折率nが0.94より小さいことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランク。
(6)
前記位相制御膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)のうち少なくとも1種類の元素を含む材料から構成されることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランク。
(7)
前記吸収制御膜は、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうち少なくとも1種類の元素をさらに含有することを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランク。
(8)
前記反射層と前記吸収層との間にキャッピング層が形成されていることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランク。
【0077】
(9)
基板と、
前記基板上に形成された多層膜を含む反射層と、
前記反射層の上に形成された吸収パターン層と、を有し、
前記吸収パターン層は、吸収制御膜と位相制御膜とが積層された積層構造体であり、
前記吸収パターン層は、188度以上268度以下の範囲内の位相差を有し、
前記吸収パターン層の総膜厚は、60nm以下であり、
前記吸収制御膜は、錫(Sn)と酸素(O)とを合計で70原子%以上含有し、且つ、タンタル(Ta)を5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有する材料で形成されていることを特徴とする反射型フォトマスク。
(10)
前記吸収パターン層は、202度以上265度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする上記(9)に記載の反射型フォトマスク。
(11)
前記吸収パターン層は、216度以上261度以下の範囲内の位相差を有することを特徴とする上記(9)に記載の反射型フォトマスク。
(12)
前記吸収パターン層は、EUV光に対する反射率が20%以下であることを特徴とする上記(9)から(11)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスク。
【0078】
(13)
前記位相制御膜は、EUV光に対する屈折率nが0.94より小さいことを特徴とする上記(9)から(12)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスク。
(14)
前記位相制御膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)のうち少なくとも1種類の元素を含む材料から構成されることを特徴とする上記(9)から(13)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスク。
(15)
前記吸収制御膜は、白金(Pt)、テルル(Te)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、リン(P)、フッ素(F)、窒素(N)、炭素(C)、及び水素(H)のうち少なくとも1種類の元素をさらに含有することを特徴とする上記(9)から(14)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスク。
(16)
前記反射層と前記吸収パターン層との間にキャッピング層が形成されていることを特徴とする上記(9)から(15)のいずれか1項に記載の反射型フォトマスク。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る反射型フォトマスクは、半導体集積回路などの製造工程において、EUV露光によって微細なパターンを形成するために好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…基板
2…反射層
3…キャッピング層
4…吸収層
4a…下層
4b…上層
4c…吸収パターン層
10…反射型フォトマスクブランク
20…反射型フォトマスク
11…基板
12…反射層
13…キャッピング層
14…吸収層
14a…下層
14b…上層
14c…吸収パターン層
15…裏面導電膜
16…レジスト膜
16a…レジストパターン
100…反射型フォトマスクブランク
200…反射型フォトマスク