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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069790
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179992
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 大輝
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 隆浩
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA06
2H500CA17
2H500CA27
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを提供すること
【解決手段】結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有するトナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が、エチレングリコールを含むアルコール成分(A-al)と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分(A-ac)と、を含有する原料モノマー(a)の重縮合物であり、前記非晶性ポリエステル樹脂(B)が、2価以上のアルコールを含むアルコール成分(B-al)と、2価以上のカルボン酸を含むカルボン酸成分(B-ac)と、両末端変性シリコーンと、を含有する原料モノマー(b)の反応物であるシリコーン変性ポリエステル樹脂である、トナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有するトナーであって、
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が、エチレングリコールを含むアルコール成分(A-al)と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分(A-ac)と、を含有する原料モノマー(a)の重縮合物であり、
前記非晶性ポリエステル樹脂(B)が、2価以上のアルコールを含むアルコール成分(B-al)と、2価以上のカルボン酸を含むカルボン酸成分(B-ac)と、両末端変性シリコーンと、を含有する原料モノマー(b)の反応物であるシリコーン変性ポリエステル樹脂である、トナー。
【請求項2】
前記アルコール成分(A-al)中、エチレングリコールの含有量が80mol%以上である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記カルボン酸成分(A-ac)中、脂肪族モノカルボン酸の含有量が2mol%以上20mol%以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記両末端変性シリコーンが、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される構造を有する、請求項1~3のいずれかに記載のトナー。
【化1】

〔式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、*は結合部位である。〕
*-SiR3-a(R'-X) (2)
〔式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、R'はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、aは1以上3以下の整数であり、Xはそれぞれ独立にアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は結合部位である。〕
【請求項5】
前記原料モノマー(b)中、前記両末端変性シリコーンの仕込み量が前記アルコール成分(B-al)及び前記カルボン酸成分(B-ac)の合計100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、請求項1~4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
更にシリコーン変性されていない非晶性ポリエステル系樹脂(C)を含む、請求項1~5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(C)が、複合樹脂(C1)である、請求項6に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の開発が求められている。このような要求に対して、低温定着性に優れるトナー用結着樹脂としてポリエステル樹脂が提唱されている。
一般に最低定着温度は低温オフセット発生温度から高温オフセット発生温度までの温度範囲にあるため、トナーが含有する結着樹脂の使用可能温度領域は、最低定着温度から高温オフセット発生温度までの温度範囲となる。そのため、可能な限り、最低定着温度を下げ、高温オフセット発生温度を上げることにより、使用定着温度を下げることができると共に使用可能温度領域を広げることができ、省エネルギー化、高速定着化の要求を満たすことができる。そのため、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れるトナー用結着樹脂及びトナーへの要望は高い。
しかしながら、ポリエステル樹脂は低温定着性に優れるが、オフセット現象が発生し易いという問題がある。このような、問題を改善するために、トナーが含有する結着樹脂に特定の構造を持たせることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、結着樹脂(A)、着色剤及びワックスを含有するコアに、樹脂(B)を含有するシェル相を形成したコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、該トナー粒子が、該コア100.0質量部に対して、3.0質量部以上15.0質量部以下の該樹脂(B)を含有し、該結着樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP値)をSP(A)[(cal/cm1/2]、該樹脂(B)のSP値をSP(B)[(cal/cm1/2]、該樹脂(B)を構成する繰り返しユニットのうち最もSP値の小さい繰り返しユニットのSP値をSP(C)[(cal/cm1/2]、該ワックスのSP値をSP(W)[(cal/cm1/2]としたとき、SP(A)が9.00(cal/cm1/2以上12.00(cal/cm1/2以下であり、SP(W)が7.50(cal/cm1/2以上9.50(cal/cm1/2以下であり、SP(A)、SP(B)、SP(C)及びSP(W)が特定の関係を満たすことを特徴とするトナーについて記載されている。
また、特許文献2には、結着樹脂、着色剤、第一のワックス及び第二のワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂は、結晶構造をとりうるポリエステル構造部を有する樹脂Aを含有し、前記結晶構造をとりうるポリエステル構造部の含有量は、前記結着樹脂の30.0質量%以上であり、前記第一のワックス及び第二のワックスが、4官能以上のエステルワックスであり、示差走査熱量測定で測定される1回目昇温時の最大吸熱ピークのピーク温度に関し、前記結着樹脂、前記第一のワックス及び前記第二のワックスの最大吸熱ピークのピーク温度をそれぞれT(℃)、Tw1(℃)及びTw2(℃)としたとき、これらが特定の関係を満たし、前記結着樹脂100質量部に対する前記第一のワックス及び前記第二のワックスの含有量をそれぞれW1(質量部)、W2(質量部)としたとき、これらが特定の関係を満たすことを特徴とするトナーが記載されている。
更に、特許文献3には、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、該結着樹脂は、50質量%以上のポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は、特定の構造を有するポリエステル樹脂Aを含有し、X線光電子分光装置を用いた該トナー粒子の分析において、ポリエステル樹脂Aの構造中の-(Si(RO)-Si(R-で表されるシリコーン部位に帰属されるケイ素原子数の、計測された全原子数に対する割合(ケイ素原子数/全原子数×100)をXとし、該トナー粒子の表面における該Xの値をX1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Xの値をX2とし、X線光電子分光装置を用いた該トナー粒子の分析において、該ポリエステル樹脂のエステル結合に帰属される炭素原子数の、計測された全原子数に対する割合(炭素原子数/全原子数×100)をZとし、該トナー粒子の表面における該Zの値をZ1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Zの値をZ2としたとき、該X1が、0.5原子%以上20.0原子%以下であり、X1、X2、Z1、及びZ2が特定の関係を満たすことを特徴とするトナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-11884号公報
【特許文献2】特開2014-109704号公報
【特許文献3】特開2021-60582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載のトナーは、低温定着性及び/又は耐ホットオフセット性に優れるものの、依然として高温保管後の低温定着性に改善の余地があった。
そこで、本発明は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、高温保管後のトナーの低温定着性に影響する要因が、結着樹脂の運動性にあると考えて検討を行った。その結果、エチレングリコールを含むアルコール成分と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分と、を含有する原料モノマーの重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂、及び2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸を含むカルボン酸成分と、両末端変性シリコーンと、を含有する原料モノマーの反応物である非晶性ポリエステル樹脂を結着樹脂として含有するトナーが、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有するトナーであって、
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が、エチレングリコールを含むアルコール成分(A-al)と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分(A-ac)と、を含有する原料モノマー(a)の重縮合物であり、
前記非晶性ポリエステル樹脂(B)が、2価以上のアルコールを含むアルコール成分(B-al)と、2価以上のカルボン酸を含むカルボン酸成分(B-ac)と、両末端変性シリコーンと、を含有する原料モノマー(b)の反応物であるシリコーン変性ポリエステル樹脂である、トナーに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れたトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[トナー]
本発明の一実施態様に係るトナーは、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有するトナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が、エチレングリコールを含むアルコール成分(A-al)と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分(A-ac)と、を含有する原料モノマー(a)の重縮合物であり、前記非晶性ポリエステル樹脂(B)が、2価以上のアルコールを含むアルコール成分(B-al)と、2価以上のカルボン酸を含むカルボン酸成分(B-ac)と、両末端変性シリコーンと、を含有する原料モノマー(b)の反応物であるシリコーン変性ポリエステル樹脂である。
以上の構成によれば、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れたトナーを提供することができる。
【0010】
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明のトナーは、結着樹脂としてエチレングリコールを含むアルコール成分(A-al)と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分(A-ac)と、を含有する原料モノマー(a)の重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂(A)(以下、「樹脂(A)」ともいう)を含む。エチレングリコール由来の構造を含むことで樹脂(A)は、非晶性ポリエステル樹脂(B)(以下、「樹脂(B)」ともいう)との極性が近くなることで親和性が高まるため、樹脂(A)と樹脂(B)との相溶性が高く、樹脂(B)の軟化点が比較的高い温度であってもトナーは低温で軟化することができ、トナーの低温定着性が向上する。
また、本発明者は、特許文献1及び2に記載されるような、水酸基又はカルボキシ基と反応性を有する基(以下、「反応性基」ともいう。)を片末端に有するシリコーンで変性したポリエステル樹脂を結着樹脂として含むトナーを高温保管した場合に、トナーの低温定着性が悪化することを見出した。これは、反応性基を片末端に有するシリコーンで変性したポリエステル樹脂では、シリコーン部位が高運動性であるため、低極性である結晶性ポリエステル樹脂が同じく低極性であるシリコーン部位を起点に凝集及び/又は結晶化することで粗大粒子を生成するためと考えられる。一方、本発明のトナーが結着樹脂として含有する樹脂(B)は、反応性基を両末端に有するシリコーンで変性された非晶性ポリエステル樹脂である。シリコーン部位が樹脂(B)の主鎖中に含まれることから、シリコーン部位がポリエステル樹脂の末端に存在する場合に比べ低運動性であり、シリコーン部位と樹脂(A)との接触頻度が減るため、樹脂(A)の結晶化に伴う粗大粒子の生成がより抑制される。そのため、高温保管後でもトナーの低温定着性は良好であり、さらに疎水性のシリコーン部位が離型効果を発現するため耐ホットオフセット性が向上する。
このように、結着樹脂として樹脂(A)と、樹脂(B)と、を含有する本発明のトナーは、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れると考えられる。
なお、本発明の効果に関する上記のメカニズムは推定であり、これに限定されるものではない。
【0011】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
「ビスフェノールA」とは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0012】
本発明のトナーは、結着樹脂として、以下の結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有する。また、トナーは着色剤を含有し、これに加え、離型剤、荷電制御剤等の他の成分を含有していてもよい。また、本発明のトナーは、トナー母粒子(以下、「トナー粒子」ともいう)と、該トナー母粒子に外添された外添剤とを含むことが好ましい。
【0013】
〔結晶性ポリエステル樹脂(A)〕
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、エチレングリコールを含むアルコール成分(A-al)と、脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸成分(A-ac)と、を含有する原料モノマー(a)の重縮合物である。
【0014】
<アルコール成分(A-al)>
原料モノマー(a)は、アルコール成分(A-al)として、エチレングリコールを含む。
【0015】
アルコール成分(A-al)は、エチレングリコールの他に脂肪族ジオールを含んでもよい。
脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールなどのα,ω-脂肪族ジオール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールなどのα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0016】
アルコール成分(A-al)中のエチレングリコールの含有量は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは100mol%である。
【0017】
アルコール成分(A-al)は、脂肪族ジオールとは異なる他のアルコールを含有していてもよい。他のアルコールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール、ステアリルアルコール等の長鎖の1価のアルコールが挙げられる。これらのアルコールは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0018】
<カルボン酸成分(A-ac)>
カルボン酸成分(A-ac)は、脂肪族ジカルボン酸を含む。
【0019】
カルボン酸成分(A-ac)に含まれる脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは8以上であり、そして、好ましくは16以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好ましく挙げられる。これらの中でも、テトラデカン二酸がより好ましい。
【0020】
カルボン酸成分(A-ac)中の脂肪族ジカルボン酸の含有量は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは75mol%以上、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは85mol%以上であり、そして、好ましくは98mol%以下、より好ましくは95mol%以下、更に好ましくは93mol%以下である。
【0021】
カルボン酸成分(A-ac)は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸を含有していてもよい。他のカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸、脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
脂肪族モノカルボン酸としては、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、炭素数16以上22以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、炭素数16以上22以下の直鎖脂肪族モノカルボン酸がより好ましい。
炭素数16以上22以下の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸(ベヘン酸)が好ましく挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸がより好ましい。
【0023】
カルボン酸成分(A-ac)中の脂肪族モノカルボン酸の含有量は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは2mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは7mol%以上であり、そして、好ましくは25mol%以下、より好ましくは20mol%以下、更に好ましくは15mol%以下である。
【0024】
原料モノマー(a)におけるアルコール成分(A-al)の水酸基に対するカルボン酸成分(A-ac)のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
【0025】
(樹脂(A)の製造方法)
樹脂(A)は、例えば、原料モノマー(a)を重縮合させる方法により製造される。
重縮合反応においては、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒を脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族モノアルコール、及び脂肪族モノカルボン酸の合計量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒を脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族モノアルコール、及び脂肪族モノカルボン酸の合計量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて反応させてもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分(A-al)とカルボン酸成分(A-ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。
なお、反応は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0026】
(樹脂(A)の物性)
樹脂(A)の酸価は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。
【0027】
樹脂(A)の融点は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
樹脂(A)の軟化点は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
【0028】
樹脂(A)の酸価、融点、及び軟化点は、原料モノマー(a)の種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた樹脂(A)の酸価、融点、及び軟化点がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0029】
トナー中、結着樹脂における樹脂(A)の含有量は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である
【0030】
〔非晶性ポリエステル樹脂(B)〕
非晶性ポリエステル樹脂(B)は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分(B-al)と、2価以上のカルボン酸を含むカルボン酸成分(B-ac)と、両末端変性シリコーンと、を含有する原料モノマー(b)の反応物であるシリコーン変性ポリエステル樹脂である。
【0031】
<アルコール成分(B-al)>
アルコール成分(B-al)は、2価以上のアルコールを含む。
2価以上のアルコールの含有量は、アルコール成分(B-al)中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
2価以上のアルコールとしては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、又は、直鎖若しくは分岐の脂肪族ジオールが好ましく、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物がより好ましい。
【0032】
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは式(I):
【0033】
【化1】

(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、及びビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物との組合せが好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物との組合せがより好ましい。
アルコール成分(B-al)がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む場合、その量は、アルコール成分(B-al)中、好ましくは70mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0034】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。
第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは3以上4以下である。
第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられる。
【0035】
その他の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0036】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらアルコールは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0037】
<カルボン酸成分(B-ac)>
カルボン酸成分(B-ac)としては、2価以上のカルボン酸を含み、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
2価以上のカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
2価以上のカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0038】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは55mol%以上、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは65mol%以上であり、そして、好ましくは85mol%以下、より好ましくは80mol%以下、更に好ましくは75mol%以下である。
【0039】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは16以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、ドデセニルコハク酸が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸を含む場合、その量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは5mol%以上であり、そして、好ましくは15mol%以下、より好ましくは10mol%以下である。
【0040】
3価以上の多価カルボン酸としては、好ましくは3価のカルボン酸であり、例えばトリメリット酸が挙げられる。これらの中でもトリメリット酸が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、更に好ましくは20mol%以上であり、そして、好ましくは40mol%以下、より好ましくは35mol%以下、更に好ましくは30mol%以下である。
これらのカルボン酸は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0041】
アルコール成分(B-al)のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分(B-ac)のカルボキシ基の比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
【0042】
<両末端変性シリコーン>
樹脂(B)に用いられる両末端変性シリコーンは、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、水酸基又はカルボキシ基と反応性を有する基を両末端に有する変性シリコーンであり、好ましくはアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びヒドロキシ基を含む基から選ばれる少なくとも1種の基を両末端に有する変性シリコーンである。なお、水酸基又はカルボキシ基と反応性を有する基は同じであっても、異なっていてもよい。
【0043】
両末端変性シリコーンは、好ましくは、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される構造を有する。
【0044】
【化2】

〔式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、*は結合部位である。〕
【0045】
*-SiR3-a(R'-X) (2)
〔式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、R'はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、aは1以上3以下の整数であり、Xはそれぞれ独立にアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は式(1)で表される繰り返し単位との結合部位である。〕
【0046】
式(1)及び式(2)中、Rの炭化水素基の炭素数は、6以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
Rの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0047】
式(2)中、R’のアルキレン基の炭素数は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、更に好ましくは3以下であり、そして、好ましくは1以上である。
R’のアルキレン基としては、例えば、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-1,2-ジイル基が挙げられる。これらの中でも、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-1,2-ジイル基が好ましい。
【0048】
Xは、それぞれ独立に、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキルオキシ基、カルボキシ基、カルボキシアルキルオキシ基、エポキシ基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、又は脂環式エポキシ基であることが好ましい。ヒドロキシアルキルオキシ基は複数のヒドロキシ基を有していてもよく、カルボキシアルキルオキシ基は複数のカルボキシ基を有していてもよい。なかでも、2価以上のカルボン酸のカルボキシ基との反応性の観点から、Xは、好ましくはアミノ基を含む基である。
【0049】
両末端変性シリコーンの官能基当量は、好ましくは300g/mol以上、より好ましくは500g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上であり、そして、好ましくは10,000g/mol以下、より好ましくは8,000g/mol以下、更に好ましくは6,000g/mol以下、更に好ましくは4,000g/mol以下である。
なお、官能基当量とは、官能基1molあたりの両末端変性シリコーンの質量を意味する。
【0050】
両末端変性シリコーンの動粘度は、25℃において、好ましくは10mm/s以上、より好ましくは30mm/s以上、更に好ましくは40mm/s以上であり、そして、好ましくは1,000mm/s以下、より好ましくは800mm/s以下、更に好ましくは600mm/s以下である。
両末端変性シリコーンの動粘度は、例えば、全自動微量動粘度計(ビスコテック株式会社製)を用いて測定することができる。
【0051】
上述の両末端変性シリコーンとしては、例えばアミノ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「KF-8008」、「KF-8010」、「KF-8012」、「X-22-161A」、「X-22-161B」(信越化学工業株式会社製))、カルボキシ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「X-22-162C」(信越化学工業株式会社製))、エポキシ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-163A」、「X-22-163B」、「X-22-163C」、「X-22-169AS」、「X-22-169B」(信越化学工業株式会社製))、ヒドロキシ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、「KF-6001」、「KF-6002」、「KF-6003」(信越化学工業株式会社製))が挙げられる。
【0052】
両末端変性シリコーンがアミノ基を含む基を両末端に有する変性シリコーンである場合、式(2)で表される構造において、-(R'-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1a-1~1a-3が挙げられる。
【0053】
【化3】
【0054】
両末端変性シリコーンがヒドロキシ基含む基を両末端に有する変性シリコーンである場合、式(2)で表される構造において、-(R'-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1b-1~1b-3が挙げられる。これらの中でも、置換基1b-1又は置換基1b-2が好ましく、置換基1b-1がより好ましい。
【0055】
【化4】
【0056】
両末端変性シリコーンがエポキシ基を含む基を両末端に有する変性シリコーンである場合、式(2)で表される構造において、Xがグリシジル基、グリシジルオキシ基、及び脂環式エポキシ基であることが好ましく、-(R'-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1c-1~1c-3が挙げられる。これらの中でも、置換基1c-1が好ましい。
【0057】
【化5】
【0058】
両末端変性シリコーンがカルボキシ基を含む基を両末端に有する変性シリコーンである場合、式(2)で表される構造において、Xが、カルボキシ基、又はカルボキシアルキルオキシ基であることが好ましく、-(R'-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1d-1が挙げられる。
【0059】
【化6】
【0060】
(樹脂(B)の製造方法)
樹脂(B)は、例えば、アルコール成分(B-al)、カルボン酸成分(B-ac)、及び両末端変性シリコーンを重縮合させる方法により製造される。なお、アルコール成分(B-al)、カルボン酸成分(B-ac)、及び両末端変性シリコーンを一括で反応させてもよく、アルコール成分(B-al)とカルボン酸成分(B-ac)とを反応させた後、両末端変性シリコーンと反応させてもよく、特に限定されない。
反応に用いられるエステル化触媒、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤は、樹脂(A)の製造方法で示したものと同様のものを用いることができる。また、反応条件等も樹脂(A)の製造方法で示したものと同様の条件を用いることができる。
【0061】
樹脂(B)における両末端変性シリコーンの仕込み量は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、原料モノマー(b)中のアルコール成分(B-al)及びカルボン酸成分(B-ac)の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更により好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは14質量部以下である。
【0062】
なお、両末端変性シリコーンが、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有する場合、アルコール成分(B-al)又はカルボン酸成分(B-ac)とも理解し得るが、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を両末端に有する化合物が、シリコーン骨格を含む場合には、両末端変性シリコーンとする。例えば、アルコール成分(B-al)及びカルボン酸成分(B-ac)の合計量を算出する際には、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を両末端に有する変性シリコーンは、これらの合計量に含めない。
【0063】
(樹脂(B)の物性)
樹脂(B)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0064】
樹脂(B)のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
樹脂(B)の軟化点は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
【0065】
樹脂(B)の酸価、ガラス転移温度、及び軟化点は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(B)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた樹脂(B)の酸価、ガラス転移温度、及び軟化点がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0066】
トナー中、結着樹脂における樹脂(B)の含有量は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
【0067】
本発明のトナーは、結着樹脂として、結晶性ポリエステル系樹脂及び非結晶性ポリエステル系樹脂等の他の樹脂を更に含有してもよい。結晶性ポリエステル系樹脂としては、樹脂(A)以外の結晶性ポリエステル系樹脂が挙げられる。また、非晶性ポリエステル系樹脂としては、樹脂(B)以外の非晶性ポリエステル系樹脂(C)が挙げられる。
【0068】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(C)〕
本発明のトナーは、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、結着樹脂として非晶性ポリエステル系樹脂(C)(以下、「樹脂(C)」ともいう)を含むことが好ましい。
樹脂Cは、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、樹脂Bとは軟化点の異なる樹脂であることが好ましく、高軟化点を有する樹脂Bと、樹脂Bよりも5℃以上軟化点の低い、低軟化点を有する樹脂Cとを併用することがより好ましい。
樹脂Bと樹脂Cとの軟化点の差は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
樹脂Bと樹脂Cとを併用する場合、樹脂Bに対する樹脂Cの質量比(樹脂C/樹脂B)は、耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは1/99以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは70/30以下、より好ましくは60/40以下、更に好ましくは50/50以下、更に好ましくは40/60以下である。
【0069】
樹脂(C)としては、例えば、樹脂(B)よりも5℃以上軟化点の低いポリエステル樹脂、変性されたポリエステル系樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、樹脂(B)で挙げたアルコール成分(B-al)と、カルボン酸成分(B-ac)との重縮合物であるポリエステル樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂(C1)が好ましい。
【0070】
(複合樹脂(C1))
複合樹脂(C1)のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
【0071】
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物としては、上述した樹脂(B)における式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が例示され、好ましい範囲も同様である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、より好ましくは100mol%である。
【0072】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、及び3価以上の多価アルコールとしては、上述した樹脂(B)における直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び3価以上の多価アルコールが例示され、好ましい範囲も同様である。
【0073】
複合樹脂(C1)のポリエステル樹脂セグメントのカルボン酸成分としては、上述した樹脂(B)で例示したカルボン酸成分(B-ac)が同様に例示され、具体的には、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上のカルボン酸化合物が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは35mol%以上、より好ましくは40mol%以上、更に好ましくは45mol%以上であり、そして、好ましくは70mol%以下、より好ましくは65mol%以下、更に好ましくは60mol%以下である。
【0074】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、更に好ましくは15mol%以上であり、そして、好ましくは35mol%以下、より好ましくは30mol%以下、更に好ましくは25mol%以下である。
【0075】
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、更に好ましくは20mol%以上であり、そして、好ましくは40mol%以下、より好ましくは35mol%以下、更に好ましくは30mol%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0076】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
【0077】
複合樹脂(C1)の付加重合樹脂セグメントとしては、例えば、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、無置換又は置換スチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは88質量%以下である。
【0078】
スチレン系化合物以外の原料モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸ステアリル、より好ましくは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、更に好ましくはアクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0079】
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中における、スチレン系化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0080】
複合樹脂(C1)は、好ましくは、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有する。
「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーの官能基、付加重合性基が反応した単位を意味する。
付加重合性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合(エチレン性不飽和結合)が挙げられる。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーがカルボキシ基を有する付加重合性モノマーである場合、両反応性モノマー由来の構成単位の量は、樹脂B1のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100mol部に対して、好ましくは1mol部以上、より好ましくは1.5mol部以上、更に好ましくは2mol部以上であり、そして、好ましくは10mol部以下、より好ましくは8mol部以下、更に好ましくは5mol部以下である。
【0081】
複合樹脂(C1)中のポリエステル樹脂セグメントの含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは88質量%以下である。
【0082】
複合樹脂(C1)中の付加重合樹脂セグメントの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0083】
複合樹脂(C1)中の両反応性モノマー由来の構成単位の量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0084】
複合樹脂(C1)中の、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントと両反応性モノマー由来の構成単位の総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下、更に好ましくは100質量%である。
【0085】
複合樹脂(C1)において、付加重合樹脂セグメントに対するポリエステル樹脂セグメントの質量比(ポリエステル樹脂セグメント/付加重合樹脂セグメント)は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは7以下である。
【0086】
上記量は、ポリエステル樹脂セグメント、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー、ラジカル重合開始剤の量の比率を基準に算出し、ポリエステル樹脂セグメント等の質量は、重縮合により生じた水の質量を除いた質量を基準とする。なお、ラジカル重合開始剤を用いた場合、ラジカル重合開始剤の質量は、付加重合樹脂セグメントに含めて計算する。
【0087】
(複合樹脂(C1)の製造方法)
複合樹脂(C1)は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程Aと、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合させる工程Bとを含む方法により製造してもよい。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び両反応性モノマー又は両反応性モノマーに由来する構成部位が有するカルボキシ基との重縮合反応を更に進める方法が好ましい。
【0088】
工程Aでは、必要に応じて、上記樹脂(B)の製造方法に記載したエステル化触媒及びエステル化助触媒を、同様の使用量で用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じて、上記樹脂(B)の製造方法に記載した重合禁止剤を、同様の使用量で用いてもよい。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0089】
工程Bの付加重合のラジカル重合開始剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
【0090】
(複合樹脂(C1)の物性)
複合樹脂(C1)の軟化点は、樹脂(B)の軟化点よりも5℃以上低い温度であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
複合樹脂(C1)のガラス転移温度及び酸価は、樹脂(B)のガラス転移温度及び酸価と同様の範囲であればよい。
【0091】
複合樹脂(C1)の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、複合樹脂(C1)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度、及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0092】
<着色剤>
着色剤としては、トナー用の着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾイエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、その他のカラートナーのいずれであってもよい。
【0093】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0094】
<離型剤>
離型剤としては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
【0095】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
なお、離型剤を2種以上組み合わせて使用する場合は、それぞれの離型剤の融点が、前述の範囲内であることが好ましい。
【0096】
離型剤の含有量は、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0097】
<荷電制御剤>
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤、負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」、「ボントロンN-79」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0098】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
使用する荷電制御剤は、トナーを使用する印刷機の特性及び着色剤の種類等に応じて、適宜選択すればよい。
【0099】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0100】
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性等の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、樹脂(A)及び樹脂(B)、必要に応じて着色剤、離型剤、及び荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、及び分級して製造することができる。
トナーの製造方法は、好ましくは、樹脂(A)及び樹脂(B)、並びに着色剤等を含有する混合物を80℃以上200℃以下の範囲内の温度で溶融混練する工程を含む。溶融混練温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
トナーの製造方法は、好ましくは、溶融混練により得られた混合物を、粉砕及び分級しトナー粒子を得る工程を含む。当該粉砕及び分級は、公知の方法により行うことができる。
【0101】
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、低温定着性の観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7.5μm以下である。
【0102】
トナーは、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理されていることが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機材料微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0103】
トナーは、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例0104】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
なお、「アルキレンオキシド(X)」等の標記において、かっこ内の数値Xは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を意味する。
【0105】
[測定方法]
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出しした。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0106】
〔樹脂の吸熱最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持した。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。なお、結晶性ポリエステル樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度が融点となる。
【0107】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0108】
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070:1992規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶性樹脂の場合はアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に、結晶性樹脂の場合はクロロホルムとジメチルホルムアミドの混合溶媒〔クロロホルム:ジメチルホルムアミド=1:1(容量比)〕に、それぞれ変更した。
【0109】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0110】
〔外添剤の平均粒子径〕
外添剤の平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とした。
【0111】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
・測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製)
・アパチャー径:100μm
・解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)
・分散液:電解液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(グリフィン)=13.6〕を溶解して5質量%に調整した。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名「US-1」:株式会社エスエヌディー製、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0112】
[トナー評価]
〔耐ホットオフセット性〕
未定着画像を取れるように改造した、プリンター「B432dnw」(沖電気工業株式会社製)にトナーを充填し、印刷媒体「J紙A4サイズ、上質紙」(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製)に2cm角のベタ画像の未定着画像(転写され、定着ロールを通過する前の印刷媒体上の画像)を印刷した。「B432dnw」(沖電気工業株式会社製)を改造した外部定着装置を使用して、定着ロールの回転速度を調整し18枚機相当の速度にて、定着ロールの温度を100℃から225℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。
印刷した未定着画像を外部定着装置に通し、各定着温度で得られた画像を目視で観察し、定着ロールにトナーが付着し、印刷媒体上の未定着画像が形成されていない箇所にトナーが付着した場合に、ホットオフセットが発生したと判断した。ホットオフセットが発生する最低の定着温度より5℃低い温度を、耐ホットオフセット性の指標とした。値が大きいほど耐ホットオフセット性に優れる。
【0113】
〔高温保管後の低温定着性〕
220mL容の容器にトナー40gを入れ、高温(温度60℃)環境下で48時間放置した。その後、上記〔耐ホットオフセット性〕と同様に定着画像を得た。但し、定着ロールの回転速度を40枚機相当の速度に調整した。
各定着温度で得られた画像を、400gの荷重をかけた砂消しゴム「ER-502R」(株式会社ライオン事務器製)で5往復擦り、擦り前後の画像濃度を反射濃度計「exact」(x-rite社製)を用いて測定し、擦り前後の画像濃度比率([擦り後の画像濃度/擦り前の画像濃度]×100)が最初に90%を超える温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。値が小さいほど低温定着性に優れる。
【0114】
[樹脂の製造]
〔結晶性ポリエステル樹脂(A)の製造〕
製造例A1(結晶性ポリエステル樹脂A1)
表1に示すアルコール成分(A-al)、カルボン酸成分(A-ac)、及びエステル化触媒を、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、8.0kPaにて軟化点が表1に示す温度に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂A1を得た。物性を表1に示す。
【0115】
比較製造例A1及びA2(結晶性ポリエステル樹脂A11及びA12)
アルコール成分(A-al)及びカルボン酸成分(A-ac)、並びにそれらの配合量を表1に示すように変更した以外は、製造例A1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂A11及びA12を得た。物性を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
〔非晶性ポリエステル樹脂(B)の製造〕
製造例B1(非晶性ポリエステル樹脂B1)
表2に示すアルコール成分(B-al)と無水トリメリット酸を除くカルボン酸成分(B-ac)、エステル化触媒、及び変性シリコーンを、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にてマントルヒーター中で235℃まで昇温し、6時間保持した。その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間反応させた後、220℃まで降温し、無水トリメリット酸を添加した後、軟化点が表2に示す温度に到達するまで反応させて、非晶性ポリエステルB1を得た。物性を表2に示す。
【0118】
製造例B2~B6及び比較製造例B1(非晶性ポリエステル樹脂B2~B6及びB11)
変性シリコーンの量又は種類を表2に示すように変更した以外は、製造例B1と同様にして、非晶性ポリエステル樹脂B2~B6及びB11を得た。物性を表2に示す。
【0119】
比較製造例B2(非晶性ポリエステル樹脂B12)
変性シリコーンを用いなかった他は製造例B1と同様にして、非晶性ポリエステル樹脂B12を得た。物性を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
なお、製造例B1~B6及び比較製造例1において使用した変性シリコーンは、以下の通りである。
・KF-8012:変性シリコーンオイル「KF-8012」(式(1)及び(2)においてRがメチル基であり両末端にアミノ基を有するシリコーン、動粘度(25℃)=90mm/s、官能基当量=2,200g/mol、信越化学工業株式会社製)
・KF-6001:変性シリコーン「KF-6001」(式(1)及び(2)においてRがメチル基であり両末端にヒドロキシ基を有するシリコーン、動粘度(25℃)=110mm/s、官能基当量=903g/mol、信越化学工業株式会社製)
・X-22-162C:変性シリコーンオイル「X-22-162C」(式(1)及び(2)においてRがメチル基であり両末端にカルボキシ基を有するシリコーン、動粘度(25℃)220mm/s、官能基当量2,300g/mol、信越化学工業株式会社製)
・X-22-170BX:変性シリコーン「X-22-170BX」(式(1)及び(2)においてRがメチル基であり片末端にカルビノール基を有するシリコーン、動粘度(25℃)=40mm/s、官能基当量=2800g/mol、信越化学工業株式会社製)
【0122】
〔複合樹脂(C1)の製造〕
製造例C1(複合樹脂C1)
表3に示す無水トリメリット酸を除くポリエステル樹脂セグメントの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にてマントルヒーター中で160℃まで昇温した。その後、表3に示す両反応性モノマー及び付加重合樹脂セグメントの原料モノマーと重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下し重合反応を行った。その後、200℃まで昇温し1時間熟成反応させることで、反応系中に付加重合樹脂を生成させた。その後、1時間かけて230℃まで昇温し、8.0kPaまで減圧し1時間脱水縮合させた後、無水トリメリット酸を加え、さらに230℃で脱水縮合反応を継続させ、軟化点が表3に示す温度に到達するまで反応させて、複合樹脂C1を得た。物性を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
[トナーの製造]
実施例1(トナー1)
表4に示す量の樹脂(A)、樹脂(B)、及び樹脂(C)からなる結着樹脂100質量部、着色剤「シアニンブルー4927」(大日精化工業株式会社製)0.2質量部及び着色剤「Mogul-L」(Cabot Corporation製)4質量部、荷電制御剤「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)1質量部、並びに離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行株式会社製、融点:83℃)1質量部を、ヘンシェルミキサーでよく撹拌した後、同方向回転二軸押出し機「PCM-30」(株式会社池貝製)を使用し、同方向回転二軸押出機の運転条件は、バレル設定温度100℃、軸回転数200r/min(軸の回転の周速0.30m/sec)、混合物供給速度10kg/hであった。
得られた溶融混練物を冷却し、IDS粉砕・分級機(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて体積中位粒径(D50)が7.0μmになるように粉砕・分級を行い、トナー粒子を得た。
【0125】
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤として、「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1質量部及び「RY-50」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)2質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで2300r/min、3分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナー1を得た。上記[トナー評価]に記載の方法で耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0126】
実施例2~8及び比較例1~4(トナー2~12)
樹脂(A)、樹脂(B)、及び樹脂(C)を表4に記載の樹脂及び量に変更した他は実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~4のトナー2~12を得た。耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着温度の評価結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4に示す通り、実施例及び比較例の結果から、本発明のトナー1~8は、優れた耐ホットオフセット性及び高温保管後の低温定着性を示した。
一方、樹脂(B)の代わりに、変性シリコーンとして反応性基を片末端に有する変性シリコーンを用いた樹脂B11を含有する比較例1のトナー9は、耐ホットオフセット性に優れるものの、高温保管後のトナーの定着には高い温度が必要であった。また、樹脂(B)の代わりに、シリコーン変性樹脂ではない非晶性ポリエステル樹脂B12を用いた比較例2のトナー10は、高温保管後の低温定着性に優れるものの、耐ホットオフセット性に改善はみられなかった。
更に、樹脂(A)の代わりに、アルコール成分(A-al)として、エチレングリコールに代えて1,4-ブタンジオールを用いた樹脂A11を含有する比較例3のトナー11、及びエチレングリコールに代えて1,6-ヘキサンジオールを用いた樹脂A12を含有する比較例4のトナー12は、耐ホットオフセット性に優れるものの、高温保管後のトナーの定着には高い温度が必要であった。