(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069800
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】直線スリーブ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/20 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H01R4/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180013
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 諒
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085CC03
5E085CC08
5E085DD16
5E085DD19
5E085EE11
5E085FF01
5E085HH09
5E085JJ32
5E085JJ38
5E085JJ39
5E085JJ46
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造でありながら中空管体に挿入された電線の端部を仮固定しておくことができる直線スリーブを提供する。
【解決手段】単線31からなる電線30の接続に用いられ、金属製で直管状の中空管体2aからなるスリーブであって、中空管体2aは、その中心軸方向中央Mを基準にして左右それぞれの開口端4側に向かって形成され、中空管体2aの中心軸方向中央Mに向かって中空管体2aの中空部3の内径が縮径する縮径領域Yaを備え、この縮径領域Yaにおいて、中空管体2aの中心軸Cに対する中空管体2aの内側面5aのなす角度θ
1は0.25°~1.15°の範囲内であり、縮径領域Yaは、中空管体2aの開口端4から単線31(電線30)を挿入した際に、中空管体2aの中空部の内径と、単線31の直径が一致する単線接触部Xを有している直線スリーブ1Aによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線からなる電線の接続に用いられ、金属製で直管状の中空管体からなるスリーブであって、
前記中空管体は、その中心軸方向中央を基準にして左右それぞれの開口端側に向かって形成され、前記中空管体の前記中心軸方向中央に向かって前記中空管体の中空部の内径が縮径する縮径領域を備え、
前記縮径領域において、前記中空管体の中心軸に対する前記中空管体の内側面のなす角度θは0.25°~1.15°の範囲内であり、
前記縮径領域は、前記開口端から前記単線を挿入した際に、前記中空部の前記内径と、前記単線の直径が一致する単線接触部Xを有していることを特徴とする直線スリーブ。
【請求項2】
前記中空管体は、左右それぞれの前記開口端と前記縮径領域の間に形成される他の領域を備え、
前記他の領域における前記中空部の前記内径は一様であることを特徴とする請求項1に記載の直線スリーブ。
【請求項3】
前記単線接触部Xは、前記中空管体において前記開口端から前記中心軸方向中央までの距離を100とした場合に、前記中心軸方向中央を基準にして0<X≦25の範囲内に存在することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直線スリーブ。
【請求項4】
前記中空管体の外側面は、前記単線接触部Xの位置を示す目印を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直線スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に引込線等の電線の接続に用いられる直線スリーブに関する。
【0002】
はじめに、
図5乃至
図8を参照しながら、従来公知の直線スリーブを用いて電線の端部同士を接続する際の手順について説明する。
図5(a)従来技術に係る直線スリーブの中心軸方向断面図であり、(b)同直線スリーブに電線を挿入した状態を示す断面図である。また、
図6は従来技術に係る直線スリーブと電線を圧縮工具により圧縮して一体化する様子を示す斜視図である。さらに、
図7は従来技術に係る直線スリーブと電線を圧縮して一体化した状態を示す断面図である。加えて、
図8は従来技術に係る直線スリーブを用いて電線を接続した場合の失敗例を示す断面図である。
図5に示すように、従来技術に係る直線スリーブ20は、例えば銅等の導電性を有する比較的柔らかい金属製の直管状の中空管体21からなる。また、この中空管体21の中空部22の内径は通常一様である。
【0003】
そして、このような直線スリーブ20を用いて電線30の単線31同士を接続するには、例えば
図5(b)に示すように、直線スリーブ20の紙面左右それぞれの開口端23から、絶縁外皮32を剥離した電線30(単線31)を、直線スリーブ20の中心軸方向中央M付近まで挿入する。なお、
図5(b)に示すように、直線スリーブ20の中空部22の内径は、この中空部22内に電線30(単線31)を挿入した際にクリアランスDが形成されるように設定されている。
この後、直線スリーブ20の中心軸方向中央M付近を避けながら中空管体21の胴部の4ヶ所を、より詳細には例えば
図5(b)において符号Pを付している部分を、例えば
図6に示すような圧縮工具40を用いて圧縮することで、
図7に示すような状態になる。
つまり、従来技術に係る直線スリーブ20と、その中空部22内に挿入される電線30(単線31)が圧着されて一体化した(連結された)状態になる。
【0004】
この場合、例えば
図7に示すように、従来技術に係る直線スリーブ20の中空部22内の中央M近傍にまでしっかりと電線30(単線31)が挿入されている状態で、直線スリーブ20と電線30(単線31)が
図6に示すような圧縮工具40により圧着されるのであれば何ら問題はない。
しかしながら、従来技術に係る直線スリーブ20を用いて電線30の端部同士を接続する場合は通常、直線スリーブ20内への電線30の挿入量(挿入長)を中空管体21の外から目視により確認することができないので、意図せず
図8に示すような状態になってしまうことがある。
つまり、
図8に示すように、従来技術に係る直線スリーブ20の開口端23から挿入される電線30の端部が中央Mを超えて進入してしまう、あるいは直線スリーブ20の開口端23から挿入される電線30の挿入量が不十分であるせいで、中空管体21と電線30との圧着箇所が一箇所になってしまう、等の不具合が起きる場合があった。
特に後者の場合は、電線30同士の接続後に接触不良が起こる、あるいは従来技術に係る直線スリーブ20から電線30が容易に抜けて外れてしまう、等の不具合が起きる懸念があるものの、このような不具合が起きていることを作業者が知ることも難しい状況であった。
【0005】
よって、直線スリーブ20を用いて電線30(単線31)の端部同士を接続する際に、中空管体21の開口端23から挿入される電線30の端部の挿入量や挿入位置を、適切にコントロールできるような構造や仕組みが必要とされていた。
本件発明と同一の解決すべき課題を有する先願は現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先願としては以下に示すようなものが知られている。
【0006】
特許文献1には「電線接続スリーブ、電線接続スリーブの製造方法、電線接続スリーブが予め圧着されたリペア電線、および電線の接続方法」という名称で、電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ等に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明である電線接続スリーブは、同文献の
図1に記載される符号を用いて説明すると、パイプ状の外筒(20)と、この外筒(20)の内側に挿入された内筒(30)とを有し、この内筒(30)は、凸部または凹部(33)が形成されたシート状の金属材(P)を、両端が開口した筒状に巻いたものであり、この内筒(30)の軸方向の中間部は、その開口寸法が軸方向の両端の開口寸法に比べて小さくなるように潰された内筒縮径部(32)とされている、ことを特徴とする。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、内筒の中間部は内筒縮径部とされているから、この部分が仕切りとなり、電線の導体同士が内筒の内部で重なった状態で圧着することを防ぐことができるので、電線の導体と内筒との接触面積を確保することができる。
したがって、特許文献1に開示される発明によれば、電線の接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に開示される発明では、電線接続スリーブがその中央部分に縮径部を有していることで、電線接続スリーブの開口端から挿入された電線の端部が、縮径部を超えて反対側の開口端側に進入するのを防ぐことができる。
これにより、特許文献1に開示される発明の構造を転用する場合は、先の
図8に示すような不具合が生じる懸念はないが、電線接続スリーブの中空部内に挿入された電線の端部を仮止めしておくことはできない。
このため、作業者は電線接続スリーブと電線の端部の重なり部分の圧縮(圧着)が完了するまで、電線の端部を自らの手で保持しておく必要があり、その際に電線の端部が最適な位置からズレてしまって、意図せず先の
図8に示すような不具合が生じる懸念があった。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、電線の同士を接続する際に、直線スリーブの開口端から挿入された電線の端部を、直線スリーブ内の適切な位置に配置するとともに、直線スリーブと電線の重なり部分を圧着して固定するまでの間、直線スリーブ内に電線の端部を仮固定しておくことができる直線スリーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明である直線スリーブは、単線からなる電線の接続に用いられ、金属製で直管状の中空管体からなるスリーブであって、中空管体は、その中心軸方向中央を基準にして左右それぞれの開口端側に向かって形成され、中空管体の中心軸方向中央に向かって中空管体の中空部の内径が縮径する縮径領域を備え、この縮径領域において、中空管体の中心軸に対する中空管体の内側面のなす角度θは0.25°~1.15°の範囲内であり、上記縮径領域は、中空管体の開口端から単線(電線)を挿入した際に、中空管体の中空部の内径と、単線(電線)の直径が一致する単線接触部Xを有していることを特徴とする。
上記構成の第1の発明において、中空管体は接続対象である電線(単線)同士を物理的にかつ電気的につなぐという作用を有する。
また、中空管体の中空部の一部をなす縮径領域は、中空管体の中心軸に対する中空管体の内側面のなす角度θが0.25°~1.15°の範囲内に設定されることで、中空管体の開口端から電線(単線)を挿入した際に、単線接触部Xよりも奥側電線(単線)の端部が進入するのを防ぐとともに、この縮径領域に電線(単線)の端部が嵌め込まれた状態にする、つまり中空管体の中空部内に電線(単線)の端部が仮固定された状態にする、という作用を有する。
【0011】
第2の発明は、上述の第1の発明であって、中空管体は、左右それぞれの開口端と縮径領域の間に形成される他の領域を備え、この他の領域における中空部の内径は一様であることを特徴とする。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第2の発明において、縮径領域以外の領域である「他の領域」の中空部の内径を一様にすることで「他の領域」の加工が容易になる。
【0012】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明であって、単線接触部Xは、中空管体において開口端から中心軸方向中央までの距離を100とした場合に、中心軸方向中央を基準にして0<X≦25の範囲内に存在することを特徴とする。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第3の発明において、単線接触部Xの位置を上記の通り特定することで、中空管体の開口端から挿入されて、中空管体の中空部内に仮固定される電線(単線)の端部の位置を、常に中空管体の中心軸方向中央寄りにすることができる。
この場合、圧縮工具を用いて電線(単線)が挿設された中空管体を圧縮する場合に、先の
図8の紙面右側に示すように、直線スリーブの中空部内への電線(単線)の端部の挿入量が不足しているせいで、中空管体と電線(単線)が重ならない部分を意図せず圧縮工具により圧縮してしまうという不具合が起きるのを防ぐという作用を有する。
【0013】
第4の発明は、上述の第1又は第2の発明であって、中空管体の外側面は、単線接触部Xの位置を示す目印を備えていることを特徴とする。
上記構成の第4の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第4の発明において、中空管体の外側面が単線接触部Xの位置を示す目印を備えていることで、作業者は中空管体の開口端から挿入した電線(単線)の端部がどこにあるのかを、中空管体の外側面を目視により確認するだけで容易に知ることができる。
この場合、作業者はこの目印を基準にして中空管体の開口端寄りの所望の2箇所を圧縮工具で圧縮するだけで、中空管体と電線(単線)の重なり部を確実に圧着することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述のような第1の発明によれば、直線スリーブを用いて電線(単線)の端部同士を接続(連結)する際に、直線スリーブの中空部内に挿入される電線(単線)の端部を、縮径領域において仮固定することができる。
より具体的には、第1の発明によれば、中空管体の中空部内に電線(単線)の端部を挿入した際に、それ以上電線の端部を挿入することができないと作業者が触覚として知覚した状態が、電線(単線)の端部が中空管体の中空部内の最奥(中心軸方向中央寄り)に位置している状態であり、この状態からさらに電線(単線)を中空管体の奥側に押し込むことで、電線(単線)の端部を中空管体の中空部内に嵌め込んで仮固定することができる。
この場合、直線スリーブと電線(単線)の重なり部分を圧縮工具により圧縮して固定(圧着)するまでの間、作業者は直線スリーブに挿入された電線を、自らの手でその挿入量を加減しながら保持しておく必要がない。
この結果、作業者は直線スリーブと電線(単線)の重なり部分を圧縮工具により圧縮(圧着)する作業にのみ注力することができる。
これにより、電線(単線)の端部同士を、直線スリーブを用いて連結する作業を正確にかつ効率的に行うことができる。
【0015】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。
また、一般に中空管体を形成する場合、中空部の内径を一様にする場合に比べて、縮径(又は拡径)させる場合の方が製造時の技術的困難性が高い。
したがって、第2の発明において、「他の領域」の内径を一様にすることで、中空部の中心軸方向の全域の内径を縮径(又は拡径)させる場合に比べて、第2の発明である直線スリーブの製造コストを廉価にすることができる。
【0016】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明によれば、中空管体において単線接触部Xの位置を、すなわち中空管体の開口端から挿入される電線(単線)の端部の到達位置を、中空管体の中心軸方向中央寄りにすることができる。
この場合、中空管体とその中空部内に挿入される電線(単線)が重なる領域を長くすることができるので、圧縮工具を用いて中空管体の外側面側から圧縮する際に、誤って電線(単線)が挿入されていない領域を圧縮してしまうリスクを低減することができる。
この結果、第3の発明である直線スリーブと電線(単線)の接続不良が起こる、あるいは第3の発明である直線スリーブから電線(単線)が抜け易くなるといった不具合が起こるのを好適に防ぐことができる。
したがって、第3の発明によれば、第3の発明である直線スリーブを用いて接続された電線の接続部分の信頼性を高めることができる。
【0017】
第4の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第4の発明によれば作業者は、第4の発明である直線スリーブ(中空管体)の中空部内に挿入された電線(単線)の端部が、直線スリーブ内のどの位置に到達しているのかを容易に把握することができる。
この場合、作業者は、第4の発明である直線スリーブとそれに挿設される電線とが重なる部分を圧縮工具で確実に圧縮することができるので、電線の端部同士を接続する作業を正確にかつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)本発明の実施例1に係る直線スリーブの中心軸方向断面図であり、(b)同直線スリーブに電線を挿入した状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る直線スリーブと電線を圧縮して一体化した状態を示す断面図である。
【
図3】(a)本発明の実施例2に係る直線スリーブの中心軸方向断面図であり、(b)同直線スリーブに電線を挿入した状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る直線スリーブと電線を圧縮して一体化した状態を示す断面図である。
【
図5】(a)従来技術に係る直線スリーブの中心軸方向断面図であり、(b)同直線スリーブに電線を挿入した状態を示す断面図である。
【
図6】従来技術に係る直線スリーブと電線を圧縮工具により圧縮して一体化する様子を示す斜視図である。
【
図7】従来技術に係る直線スリーブと電線を圧縮して一体化した状態を示す断面図である。
【
図8】従来技術に係る直線スリーブを用いて電線を接続した場合の失敗例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る直線スリーブについて実施例1及び実施例2を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
[1-1;実施例1に係る直線スリーブの基本構成について]
はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の実施例1に係る直線スリーブの基本構成について説明する。
図1(a)は本発明の実施例1に係る直線スリーブの中心軸方向断面図であり、(b)は同直線スリーブに電線を挿入した状態を示す断面図である。また、
図2は本発明の実施例1に係る直線スリーブと電線を圧縮して一体化した状態を示す断面図である。なお、先の
図5乃至
図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1に係る直線スリーブ1Aは、単線31からなる電線30同士の接続に用いられ、例えば銅等の比較的柔らかい金属からなる直管状の中空管体2aからなるスリーブである。
【0021】
より詳細には、実施例1に係る直線スリーブ1Aの中空管体2aは、例えば
図1(a)、(b)に示すように、その中心軸方向中央Mを基準にして左右それぞれの開口端4側に向かって形成され、中空管体2aの中心軸方向中央Mに向かって中空部3の内径が極めて緩やかに縮径する縮径領域Yaを備えてなるものである。
また、上述のような中空管体2aの縮径領域Yaでは、
図1(a)、(b)に示すように、中空管体2aの中心軸Cに対する中空管体2aの内側面5aのなす角度θ
1が0.25°に設定されるとともに、この縮径領域Yaは、中空管体2aの開口端4から単線31の端部を挿入した際に、中空部3の内径と単線31の直径が一致する単線接触部Xを有している。
つまり、実施例1に係る直線スリーブ1Aでは、
図1(b)に示すように、中空管体2aの開口端4から電線30である単線31の端部を中空部3内に挿入した際に、単線31の端部が縮径領域Yaにおける単線接触部Xを超えて奥に(中央Mに向かって)進入させることができないことを意味している。
【0022】
また、ここでは実施例1に係る直線スリーブ1Aにおけるθ1が0.25°に設定される場合を例に挙げて説明しているが、縮径領域Yaを有する中空管体2aに電線30を挿入した際に、電線30(単線31)の外側面と、中空管体2aの開口端4における内側面5aとの間に必要なクリアランスDを設けることができるのであれば、θ1の値は0.25°よりも小さくてもよい(ただし、0<θ1)。
【0023】
[1-2;実施例1に係る直線スリーブの使用方法について]
次に、先の
図6、
図1及び
図2を参照しながら実施例1に係る直線スリーブ1Aの使用方法について説明する。
実施例1に係る直線スリーブ1Aを用いて電線30の端部同士を接続(連結)するには、まず、
図1(a)に示すような直線スリーブ1Aを準備し、絶縁外皮32(先の
図5及び
図6を参照)を剥離した電線30(単線31)の端部を、中空管体2aの左右それぞれの開口端4から中空部3内に挿入する。
そして、電線30(単線31)の端部が、中空管体2aの中空部中央M寄りに形成される縮径領域Yaにおける単線接触部Xに到達すると、電線30の端部の進入が止まる。
この後、作業者が電線30(単線31)の端部を中空部3の奥側に向かってさらに押し込むことで、中空管体2aの中空部3における縮径領域Yaに電線30(単線31)の端部が嵌め込まれて、そこに電線30(単線31)の端部が係止される。
そして、この状態が中空管体2aの縮径領域Yaに電線30(単線31)が仮固定されている状態である。
この後、
図1(b)において符号Pで示す位置を、例えば先の
図6に示すような圧縮工具40等を用いて圧縮することで、
図2に示すように、中空管体2aと電線30(単線31)の重なり部が圧着される。
つまり、電線30(単線31)の端部同士を実施例1に係る直線スリーブ1Aを介して連結することができる。また、電線30(単線31)の端部同士は、実施例1に係る直線スリーブ1Aを介して電気的に接続されている。
【0024】
[1-3;実施例1に係る直線スリーブによる作用・効果について]
上述のような実施例1に係る直線スリーブ1Aによれば、電線30(単線31)の端部同士を、直線スリーブ1Aを介して接続(連結)する際に、中空管体2aの中空部3内に挿入される電線30(単線31)の端部を、縮径領域Yaにおいて仮固定しておくことができる。
つまり、中空管体2aの中空部3内に電線30(単線31)の端部を挿入した際に、それ以上電線30の端部を挿入することができないと作業者が触覚として知覚した状態が、電線30(単線31)の端部が中空管体2aの中空部3内の最奥(中心軸方向中央M寄り)に位置している状態である。
そして、この状態からさらに作業者が電線30(単線31)を中空管体2aの奥側に押し込む動作を行うことにより、電線30(単線31)の端部を中空管体2aの縮径領域Yaに嵌め込んで仮固定することができる。
この場合、作業者は実施例1に係る直線スリーブ1Aと電線30(単線31)の重なり部分を例えば先の
図6に示すような圧縮工具40等により圧縮して固定(圧着)する際に、作業者は直線スリーブ1Aに挿入された電線30(単線31)の挿入量を加減しつつ、自らの手で電線30(単線31)を保持しておく必要がない。
この結果、作業者は実施例1に係る直線スリーブ1Aと電線30(単線31)の重なり部分を、圧縮工具40等を用いて圧着する作業に注力することができる。
【0025】
つまり、実施例1に係る直線スリーブ1Aに電線30(単線31)の端部が仮固定されているということが、電線30(単線31)の端部が直線スリーブ1Aの中空部3内に形成される縮径領域Yaの単線接触部Xに到達していることを意味しているので、作業者は直線スリーブ1Aへの電線30(単線31)の端部の挿入量が適切であるか否か、あるいは直線スリーブ1Aと電線30(単線31)の端部の重なり部分の長さが適切であるか否かについて注意を払う必要がなくなる。
したがって、実施例1に係る直線スリーブ1Aによれば、電線30(単線31)の端部同士を、直線スリーブ1Aを用いて連結する作業を正確にかつ効率的に行うことができる。
【0026】
[2-1;実施例2に係る直線スリーブの基本構成について]
次に、
図3及び
図4を参照しながら本発明の実施例2に係る直線スリーブの基本構成について説明する。
図3(a)は本発明の実施例2に係る直線スリーブの中心軸方向断面図であり、(b)は同直線スリーブに電線を挿入した状態を示す断面図である。また、
図4は本発明の実施例2に係る直線スリーブと電線を圧縮して一体化した状態を示す断面図である。なお、先の
図5乃至
図8、並びに
図1及び
図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係る直線スリーブ1Bも、先の実施例1に係る直線スリーブ1Aと同様に単線31からなる電線30同士の接続に用いられ、例えば銅等の比較的柔らかい金属からなる直管状の中空管体2bからなるスリーブである。
【0027】
より詳細には、実施例2に係る直線スリーブ1Bの中空管体2bは、例えば
図3(a)、(b)に示すように、その中心軸方向中央Mを基準にして左右それぞれの開口端4側に向かって形成され、中空管体2bの中心軸方向中央Mに向かって中空部3の内径が極めて緩やかに縮径する縮径領域Ybと、この縮径領域Yb以外の領域である「他の領域Z」を備えてなるものである。
また、上記「他の領域Z」は、中空管体2bの左右それぞれの開口端4と縮径領域Ybの間に形成され、中空部3の内径が一様である領域である。
さらに、実施例に2に係る直線スリーブ1Bでは、縮径領域Ybと他の領域Zの間に段差はなく、これらの領域における内側面は連続している。
【0028】
また、上述のような中空管体2bの縮径領域Ybでは、例えば
図3(a)、(b)に示すように、中空管体2bの中心軸Cに対する中空管体2bの内側面5bのなす角度θ
2が1.15°に設定されるとともに、この縮径領域Ybは、中空管体2bの開口端4から単線31の端部を挿入した際に、中空部3の内径と単線31の直径が一致する単線接触部Xを有している。
つまり、実施例2に係る直線スリーブ1Bにおいても、
図3(b)に示すように、中空管体2bの開口端4から電線30である単線31の端部を中空部3内に挿入した際に、単線31の端部が縮径領域Ybにおける単線接触部Xを超えて奥に(中心軸中央Mに向かって)進入させることができないことを意味している。
【0029】
[2-2;実施例2に係る直線スリーブの使用方法について]
次に、先の
図6、
図3及び
図4を参照しながら実施例2に係る直線スリーブ1Bの使用方法について説明する。
実施例2に係る直線スリーブ1Bの使用方法は、先の実施例1に係る直線スリーブ1Aの使用方法と同じであるが、ここで簡単に説明する。
まず、
図3(a)に示すような直線スリーブ1Bを準備し、絶縁外皮32(先の
図5及び
図6を参照)を剥離した電線30(単線31)の端部を、中空管体2bの左右それぞれの開口端4から中空部3内に挿入する。
そして、電線30(単線31)の端部が、中空管体2bの中空部中央M寄りに形成される縮径領域Ybにおける単線接触部Xに到達すると、電線30の端部の進入が止まる。
この後、作業者が電線30(単線31)の端部を中空部3の奥側に向かってさらに押し込むことで、中空管体2bの中空部3における縮径領域Ybに電線30(単線31)の端部が嵌め込まれて、そこに電線30(単線31)の端部が係止される。
そして、この状態が中空管体2bの縮径領域Ybに電線30(単線31)が仮固定されている状態である。
この後、
図3(b)において符号Pで示す位置を、例えば先の
図6に示すような圧縮工具40等を用いて圧縮することで、
図4に示すように、中空管体2bと電線30(単線31)の重なり部が圧着される。
つまり、電線30(単線31)の端部同士を実施例2に係る直線スリーブ1Bを介して連結することができる。また、電線30(単線31)の端部同士は、実施例2に係る直線スリーブ1Bを介して電気的に接続されている。
【0030】
[2-3;実施例2に係る直線スリーブによる作用・効果について]
上述のような実施例2に係る直線スリーブ1Bは、先の実施例1に係る直線スリーブ1Aと同じ作用・効果を奏する。
また、実施例2に係る直線スリーブ1Bは、中空管体2bの中空部3が縮径領域Ybに加えて、中空部3の内径が一様である「他の領域Z」を備えていることで、中空部3の全域に縮径領域を形成する場合に比べて、直線スリーブ1Bの製造コストを廉価にできる。
より具体的には、実施例1に係る直線スリーブ1A及び実施例2に係る直線スリーブ1Bのいずれにおいても、縮径領域(縮径領域Ya又は縮径領域Yb)を形成するには、例えばコンピュータ制御される高精度な加工設備が必要になる。したがって、縮径領域(縮径領域Ya又は縮径領域Yb)が狭い(短い)ほど、その製造コストは安価になる。
その一方で、実施例2に係る直線スリーブ1Bにおいて縮径領域Ybの範囲が過度に狭いと、そのせいでより高い加工精度が求められることになり、それによってかえって製造コストが嵩むことが予想される。このため、製造時に生じる不可避な誤差を許容しつつ、縮径領域Ybが目的とする機能を十分に発揮するには、縮径領域Ybの中心軸方向長さの最小値を5mmに設定することがより望ましい。
なお、縮径領域Ybの中心軸方向長さの最小値が5mm以下でも、実施例2に係る直線スリーブ1Bによる有利な作用・効果が喪失されるわけではない。
【0031】
[3;本発明に係る直線スリーブの細部構造等について]
<3-1;単線接触部Xの位置について>
本発明の実施形態(以下、単に「本実施形態」という。)では、中空管体2a又は中空管体2bにおいて中心軸方向中央Mから左右いずれかの開口端4までの距離を100とした場合に、中心軸方向中央Mを基準(=0)にして0<X≦25の範囲内に単線接触部Xが存在するよう構成してもよい。
この場合、中空管体2a又は中空管体2bの中心軸方向中央Mの近傍に常に単線接触部Xを存在させることができる。
つまり、中空管体2a又は中空管体2bの中空部3内に電線30(単線31)の端部を仮固定した際に、中空管体2a又は中空管体2bの中心軸方向中央Mの近傍に電線30(単線31)の端部を配置することができる。
【0032】
この場合、先の
図6に示すような圧縮工具40等を用いて中空管体2a又は中空管体2bと電線30(単線31)の重なり部分を圧縮した際に、先の
図8の紙面右側に示すような不具合、すなわち電線30(単線31)と中空管体2a又は中空管体2bが圧着されていない箇所が生じるという不具合、が生じるのを好適に防ぐことができる。
よって、本実施形態に係る直線スリーブ(直線スリーブ1A又は直線スリーブ1B)が、単線接触部Xの存在位置に関して上述のような特定を有する場合は、直線スリーブ1A又は直線スリーブ1Bと電線30(単線31)との接続部分における圧着作業の作業精度を高めることができる。
【0033】
<3-2;単線接触部Xの位置を示す目印について>
本実施形態に係る中空管体2a又は中空管体2bは、その外側面に単線接触部Xの位置を示す目印(図示せず)を備えていてもよい。
この場合、作業者は、中空管体2a又は中空管体2bの中空部3内に挿入されて仮固定されている電線30(単線31)の端部が、中空管体2a又は中空管体2bのどの位置に存在しているのかを、直線スリーブ1A又は直線スリーブ1Bの外観を目視により確認するだけで、容易に把握することができる。
この場合、作業者は、直線スリーブ1A又は直線スリーブ1Bの外側面に設けられる目印と開口端4の間を、圧縮工具40等を用いて圧縮すればよいので、目印が記されていない場合に比べて、中空管体2a又は中空管体2bと電線30(単線31)を圧着して一体化する作業を、より正確にかつ効率的に行うことができる。
【0034】
<3-3;実施例1に係る直線スリーブの具体例について>
ここで、先の
図1を参照しながら実施例1に係る直線スリーブ1Aの具体例について説明する。
実施例1に係る直線スリーブ1Aとして例えば銅製で、中心軸方向中央Mから左右それぞれの開口端4までの距離が22.5mmであり、かつ開口端4における開口直径(=中空部3の入口直径)が3.4mmである中空管体2aを用いて、絶縁外皮32を剥離してなる単線31(銅製)の直径が3.2mmである電線30の端部同士を接続する場合、この中空管体2aの内側面5aと中心軸Cのなす角度θ
1を0.25°に設定することで、開口端4における単線31の外側面と内側面5aとの間のクリアランスDを法的基準に適合した0.1mmすることができる。
この場合、実施例1に係る直線スリーブ1Aを法的基準に適合した態様にすることができる。
したがって、上述のような外形寸法及び開口直径を有する銅製の中空管体2aを用いて、中空部3の全域に縮径領域Yaを形成する場合のθ
1の数値範囲は、0°<θ
1≦0.25°となる。
なお、θ
1が0.25°を下回ると、中空管体2aの開口端4における単線31の外側面と内側面5aとの間のクリアランスDが0.1mmを下回り、単線31(銅製)の直径の誤差を吸収できなくなる懸念があるため、θ
1は0.25°に近い値に設定することが望ましい。
【0035】
<3-4;実施例2に係る直線スリーブの具体例について>
ここで、先の
図3を参照しながら実施例2に係る直線スリーブ1Bの具体例について説明する。
実施例2に係る直線スリーブ1Bとして例えば銅製で、中心軸方向中央Mから左右それぞれの開口端4までの距離が22.5mmであり、かつ開口端4における開口直径(=中空部3の入口直径)が3.4mmである中空管体2bを用いて、絶縁外皮32を剥離してなる単線31(銅製)の直径が3.2mmである電線30の端部同士を接続する場合でかつ、
図3(a)、(b)に示すように、中空管体2bの中心軸方向中央Mを基準としてこのMから開口端4に向かって5mmまでの領域を縮径領域Ybとし、この縮径領域Ybと最寄りの開口端4までの領域を「他の領域Z」にする場合、この中空管体2bの内側面5bと中心軸Cのなす角度θ
2を1.15°に設定することで、縮径領域Ybにおいて単線31(銅製)を仮固定することができる。
なお、上述のような実施例2に係る直線スリーブ1Bの「他の領域Z」では、中空部3の内径が開口端4における開口直径(=中空部3の入口直径=3.4mm)と同じになる。このため、中空管体2bの開口端4における単線31の外側面と、中空管体2b内側面5bとの間のクリアランスDは0.1mmになる。
また、上述のような実施例2に係る直線スリーブ1Bでは、上述の<3-3>の記載に基づきθ
2の数値範囲を0.25°≦θ
1≦1.15°に設定することができる。
そして、実施例2に係る直線スリーブ1B(及び電線30)の材質及び各部分の寸法等を上述のように特定する場合も、法的基準に適合した直線スリーブにすることができる。
【0036】
<3-5;本発明に係る直線スリーブに挿入される電線について>
本実施形態に係る直線スリーブ(実施例1、2に係る直線スリーブ1A、1B)に挿入する電線30として特に単線31を想定している。
この理由として、本発明に係る直線スリーブに挿入する電線として複数の素線からなる撚線を用いる場合は、その端部が単線接触部Xに到達する前に電線30の端部がほぐれてしまって、電線の端部を仮固定することができないとった事態が起こる懸念があるためである。
【0037】
<3-6;本発明に係る直線スリーブの形態について>
本実施形態に係る直線スリーブ(実施例1、2に係る直線スリーブ1A、1B)は、先の
図1及び
図2、並びに
図3及び
図4に示すように、中心軸方向中央Mを基準にした線対称(略線対称の概念を含む)を成すように構成してもよい。
この場合、本実施形態に係る直線スリーブの左右それぞれの開口端4から挿入される電線30(単線31)の直径が同じである場合に、中空管体2a又は中空管体2bの中心軸方向中央Mから、左右それぞれ中心軸C方向における単線接触部Xまでの距離を同じ(略同じの概念も含む)にすることができる。
この場合、中空管体2a又は中空管体2bがその外側面に単線接触部Xを示す目印を有しない場合でも、開口端4からの電線30(単線31)の端部の挿入量を作業者は容易に予測することができる。
よって、本実施形態に係る直線スリーブ(実施例1、2に係る直線スリーブ1A、1B)を用いた電線30(単線31)の連結作業を正確にかつ効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように本発明は、シンプルな構造でありながら中空管体に挿入された電線の端部を仮固定しておくことができる直線スリーブであり、電力供給設備に関する技術分野の特に縁線スリーブ、電線ヒューズ圧縮部等において利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B…直線スリーブ 2a,2b…中空管体 3…中空部 4…開口端 5a,5b…内側面 20…直線スリーブ 21…中空管体 22…中空部 23…開口端 24…内側面 30…電線 31…単線 32…絶縁外皮 40…圧縮工具 C…中心軸 D…クリアランス M…中心軸方向中央 X…単線接触部 Ya,Yb…縮径領域 Z…他の領域 P…圧縮位置