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特開2024-69812内燃機関の排気還流制御方法および装置
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  • 特開-内燃機関の排気還流制御方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069812
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】内燃機関の排気還流制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20240515BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20240515BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240515BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F02D9/02 S
F02M26/22
F02D43/00 301K
F02D43/00 301N
F02D43/00 301Z
F02D29/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180028
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】赤木 三泰
(72)【発明者】
【氏名】土田 博文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克仁
【テーマコード(参考)】
3G062
3G065
3G093
3G384
【Fターム(参考)】
3G062BA06
3G062ED08
3G062FA05
3G062GA01
3G062GA02
3G062GA08
3G062GA09
3G062GA13
3G062GA17
3G062GA25
3G065BA06
3G065CA23
3G065FA06
3G065FA07
3G065GA01
3G065GA05
3G065GA08
3G065GA09
3G065GA10
3G065GA11
3G065GA14
3G065GA15
3G065GA26
3G065GA41
3G093AA07
3G093DA01
3G093DA03
3G093DA05
3G093DA06
3G093DA07
3G093DA09
3G093DA11
3G093DB05
3G093DB08
3G093EA09
3G093EA15
3G093FB01
3G093FB02
3G384AA01
3G384AA28
3G384BA05
3G384BA26
3G384BA27
3G384EB01
3G384EB02
3G384FA01
3G384FA04
3G384FA08
3G384FA28
3G384FA37
3G384FA45
3G384FA56
3G384FA58
3G384FA79
3G384FA85
(57)【要約】
【課題】単純な開閉型EGRバルブを使用してコスト低減を図るとともに、EGR率を目標EGR率に制御できるようにする。
【解決手段】発電用モータジェネレータを駆動する内燃機関は、排気還流装置として、単純な開閉型EGRバルブを備える。内燃機関の運転状態を検出し(S1)、排気還流を行うべき条件であれば(S2)、機関回転速度に基づいて目標EGR率を設定する(S5)。EGRバルブの開時の流量特性と機関回転速度とから、目標EGR率が達成される目標コレクタ圧力を求める(S6)。この目標コレクタ圧力を得るのに必要なEGR時目標スロットルバルブ開度を求め(S7)、スロットルバルブの開度をこのEGR時目標スロットルバルブ開度に制御し(S8)、EGRバルブ43を開とする(S9)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された負荷側の制御によって回転速度が目標回転速度に保たれる内燃機関であって、開閉型EGRバルブを介して排気還流を行う内燃機関において、
排気還流を行うべき条件下では、上記EGRバルブを開とし、
内燃機関の回転速度に基づいて目標EGR率を設定し、
上記EGRバルブの開時の流量特性と上記目標EGR率とに基づいてEGR時目標スロットルバルブ開度を求め、
スロットルバルブ開度をこのEGR時目標スロットルバルブ開度に制御する、
内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項2】
上記EGRバルブの開時の流量特性と内燃機関の回転速度とから上記目標EGR率が達成される目標コレクタ圧力を求め、
この目標コレクタ圧力に基づいて上記EGR時目標スロットルバルブ開度を求める、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項3】
最良燃費点となる回転速度とトルクとを基準として、このトルクに対応したコレクタ圧力の下で上記目標EGR率が得られるように上記EGRバルブの開時の流量特性が設定されている、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項4】
排気還流を行わない条件下では、上記EGRバルブを閉とし、目標とするトルクに対応した通常時目標スロットルバルブ開度に制御する、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項5】
吸気弁および排気弁の少なくとも一方のバルブタイミングが可変制御される内燃機関に適用され、
上記EGRバルブの開時の流量特性と内燃機関の回転速度と上記バルブタイミングとから上記目標EGR率が達成される目標コレクタ圧力を求める、
請求項2に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項6】
排気還流通路に設けられたEGRクーラの出口ガス温度を求め、
この出口ガス温度が高いほど上記EGR時目標スロットルバルブ開度が減少するように上記EGR時目標スロットルバルブ開度を補正する、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項7】
標高を求め、
この標高が高いほど上記EGR時目標スロットルバルブ開度が増加するように上記EGR時目標スロットルバルブ開度を補正する、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項8】
排気還流を行うべき条件の1つとして、目標EGR率が達成された場合のコレクタ圧力が所定の上限値および下限値の範囲内にあることを含む、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項9】
上記内燃機関は、シリーズハイブリッド車両における発電用内燃機関であり、上記負荷は、上記内燃機関によって駆動される発電機である、
請求項1に記載の内燃機関の排気還流制御方法。
【請求項10】
接続された負荷側の制御によって回転速度が目標回転速度に保たれる内燃機関と、
開閉型EGRバルブを介して排気還流を行う排気還流装置と、
コントローラと、
を備え、
上記コントローラは、
排気還流を行うべき条件下では、上記EGRバルブを開とし、
内燃機関の回転速度に基づいて目標EGR率を設定し、
上記EGRバルブの開時の流量特性と上記目標EGR率とに基づいてEGR時目標スロットルバルブ開度を求め、
スロットルバルブ開度をこのEGR時目標スロットルバルブ開度に制御する、
内燃機関の排気還流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばシリーズハイブリッド車両における発電用内燃機関等に好適な内燃機関の排気還流制御方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃費低減技術として排気ガスの一部を吸気側に還流する排気還流装置(EGR)が知られている。この排気還流装置にあっては、例えばDCモータにより開度を連続的に可変できるEGRバルブを用い、内燃機関の運転条件(回転速度および負荷)をパラメータとして設定される目標EGR率に沿うように排気還流量を可変的に制御している。
【0003】
このような開度を可変としたEGRバルブは一般に高価であり、従って、単純な開閉型のバルブをEGRバルブとして用いることができれば、コストの削減が図れる。
【0004】
特許文献1には、複数のON-OFFバルブと複数のEGR率調量用バルブとを組み合わせ、ステップ的に増減変化するEGR率を実現するようにした排気還流装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-247911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、多数のON-OFFバルブが多数のEGR率調量用バルブとともに必要であり、コスト的に決して有利なものではない。また、目標EGR率を実現するために排気還流量を調整する、という点ではEGRバルブの開度を可変とする一般的な排気還流制御と本質的な違いはない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る内燃機関の排気還流制御方法は、
接続された負荷側の制御によって回転速度が目標回転速度に保たれる内燃機関であって、開閉型EGRバルブを介して排気還流を行う内燃機関において、
排気還流を行うべき条件下では、上記EGRバルブを開とし、
内燃機関の回転速度に基づいて目標EGR率を設定し、
上記EGRバルブの開時の流量特性と上記目標EGR率とに基づいてEGR時目標スロットルバルブ開度を求め、
スロットルバルブ開度をこのEGR時目標スロットルバルブ開度に制御する。
【0008】
この発明の排気還流制御方法においては、排気還流を行うべき条件下では、開閉型のEGRバルブが開となり、排気の一部が吸気側に還流する。このとき、目標EGR率を実現するために必要なスロットルバルブ開度つまりEGR時目標スロットルバルブ開度にスロットルバルブ開度が制御される。換言すれば、吸気系の負圧ならびに新気量を変化させることで、目標EGR率を実現する。そのため、内燃機関が実際に発生するトルクは、厳密には制御されない。内燃機関の回転速度は、内燃機関が接続されている発電機等の負荷側によって、目標回転速度に制御され、この回転速度に応じて目標EGR率が定まる。
【0009】
例えば十分な排気還流が許容されて燃費が良好なものとなる中速域に比較して、相対的に回転速度が低い低速域では、燃焼の不安定化等に制限されて、一般に目標EGR率が低くなる。このような場合に、開度が固定である開閉型のEGRバルブでは、EGRバルブ開度を調整することで排気還流量を目標EGR率に応じて少なくすることができない。本発明では、目標EGR率を実現するようにスロットルバルブ開度ひいては吸気系の負圧ならびに新気量が与えられるので、過剰なEGR率とならず、目標EGR率に沿ったEGR率となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、EGRバルブとして単純な開閉型のバルブを利用することが可能となり、コスト低減が図れる。そして、このような開閉型のEGRバルブであっても、EGR率を目標EGR率に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シリーズハイブリッド車両の構成を示す説明図。
図2】内燃機関の構成を示す説明図。
図3】第1実施例の排気還流制御の処理の流れを示すフローチャート。
図4】第2実施例の排気還流制御の処理の流れを示すフローチャート。
図5】第3実施例の排気還流制御の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、一実施例の内燃機関が用いられるシリーズハイブリッド車両の構成を概略的に示している。このシリーズハイブリッド車両は、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータ1と、この発電用モータジェネレータ1を電力要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられる内燃機関2と、主にモータとして動作して駆動輪3を駆動する走行用モータジェネレータ4と、発電した電力を一時的に蓄えるバッテリ5と、バッテリ5とモータジェネレータ1,4との間で電力変換を行うインバータ装置6と、を備えて構成されている。内燃機関2が発電用モータジェネレータ1を駆動することによって得られた電力は、インバータ装置6を介してバッテリ5に蓄えられる。走行用モータジェネレータ4は、発電用モータジェネレータ1が発電した電力およびバッテリ5の電力を用いてインバータ装置6を介して駆動制御される。走行用モータジェネレータ4の回生時の電力は、やはりインバータ装置6を介してバッテリ5に蓄えられる。
【0013】
一実施例においては、内燃機関2の出力軸と発電用モータジェネレータ1の回転軸とが直列に連結されており、内燃機関2の回転速度と発電用モータジェネレータ1の回転速度とが等しい。他の例として、ギア列を介して内燃機関2と発電用モータジェネレータ1とを連結し、両者が一定のギア比でもって回転するように構成してもよい。
【0014】
モータジェネレータ1,4は、車両の走行制御を司る車両側コントローラ7の指令に基づき、モータコントローラ9を介して、その動作が制御される。車両側コントローラ7には、車両のアクセルペダル開度や車速、ブレーキ操作量等の信号が入力され、かつバッテリ5の充電状態(いわゆるSOC)を示す信号が入力されている。なお、充電状態(SOC)は、バッテリ5の端子電圧等に基づいて検出される。
【0015】
また、内燃機関2は、エンジンコントローラ8によって制御される。このエンジンコントローラ8と車両側コントローラ7とモータコントローラ9とは車両内ネットワーク10を介して接続されており、互いに信号の授受を行っている。発電用モータジェネレータ1を駆動する内燃機関2は、このエンジンコントローラ8を介して、バッテリ5の充電状態(SOC)等を含む車両側からの電力要求に応じて運転される。つまり、車両のアクセルペダル開度や車速等に応じて車両側コントローラ7からエンジンコントローラ8が電力要求を受けると、その電力要求に応じて内燃機関2が制御される。なお、車両側コントローラ7とエンジンコントローラ8とモータコントローラ9とが一つのコントローラとして統合された構成であってもよい。
【0016】
図2は、内燃機関2のシステム構成を示している。この内燃機関2は、例えば4ストロークサイクルの火花点火式内燃機関であって、燃焼室13の天井壁面に、一対の吸気弁14および一対の排気弁15が配置されているとともに、これらの吸気弁14および排気弁15に囲まれた中央部に点火プラグ16が配置されている。図示はしていないが、吸気弁14および排気弁15の動弁機構が、バルブタイミングを可変制御し得る可変バルブタイミング機構を備えた構成であってもよい。
【0017】
上記吸気弁14によって開閉される吸気ポート25には、吸気弁14側へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁26が配置されている。なお、燃焼室13内に燃料を直接に噴射する筒内噴射式の構成であってもよい。
【0018】
上記吸気ポート25に接続された吸気通路24のコレクタ部28上流側には、エンジンコントローラ8からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットルバルブ29が介装されている。スロットルバルブ29の上流側に、吸入空気量を検出するエアフロメータ30が配設されており、さらに上流側に、エアクリーナ31が配設されている。コレクタ部28には、当該コレクタ部28内の吸気圧力つまりコレクタ圧力を検出する吸気圧センサ32が配設されている。
【0019】
排気ポート27に接続された排気通路35には、三元触媒からなる触媒装置36が介装されており、その上流側に、空燃比を検出する空燃比センサ38と、排気ガス温度を検出する排気温度センサ39と、が配置されている。
【0020】
内燃機関2は、排気ガスの一部を吸気側に還流する排気還流装置41を備えている。排気還流装置41は、例えば触媒装置36の下流側からコレクタ部28に至るEGR通路42と、EGR通路42の経路中にあって排気を通流させるか遮断するかを切り換えるEGRバルブ43と、このEGRバルブ43よりも上流側(排気通路35側)にあって排気ガスと冷却水との熱交換により排気ガスを冷却する水冷式のEGRクーラ44と、を含んで構成されている。
【0021】
ここで、EGRバルブ43は、エンジンコントローラ8からの駆動信号によりON-OFF動作して単純に流路の開閉を行う構成となっている。換言すれば、EGRバルブ43は、開度ないし流量の可変調整を行わない単純な構成となっている。なお、この開閉型EGRバルブ43は、いわゆるデューティ制御に対応したものでもなく、後述するように、排気還流を行う間は、一定の開状態が継続する。
【0022】
上記エンジンコントローラ8には、上記のエアフロメータ30、吸気圧センサ32、空燃比センサ38、排気温度センサ39、のほか、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ52、冷却水温を検出する水温センサ53、大気圧を検出する大気圧センサ54、等のセンサ類の検出信号が入力されており、さらに、上述した車両側コントローラ7から車速信号やアクセルペダル開度信号、発電要求信号などが入力されている。エンジンコントローラ8は、これらの入力信号に基づき、燃料噴射弁26による燃料噴射量および噴射時期、点火プラグ16による点火時期、スロットルバルブ29の開度、EGRバルブ43のON-OFF、等を最適に制御している。特に、発電用モータジェネレータ1の発電効率を含め、内燃機関2の燃費が最良となるように、特定の運転点にできるだけ近付くように内燃機関2の運転が制御される。
【0023】
次に、上記実施例における排気還流制御の基本原理について説明する。排気還流を行うためにEGRバルブ43が開となると、EGR通路42を通して排気通路35側から吸気通路24(コレクタ部28)側へ排気ガス(EGRガス)が流れる。このとき、EGRバルブ43は流量調整機能を具備しないので、EGR通路42の入口(排気通路35のEGRガス取り出し部)とEGR通路42の出口(コレクタ部28のEGRガス吹き出し部)との圧力差(これをEGRシステム差圧という)によってEGRガス流量が定まる。
【0024】
スロットルバルブ29によって新気量が制御される火花点火式内燃機関にあっては、一般に、より多くのEGRガスを導入することが燃費向上の上で有利であるが、EGR率に関する燃焼限界は、中速域に比較して低速域では低くなる。つまり、低速域での目標EGR率は、相対的に低い。
【0025】
このような機関回転速度に応じた目標EGR率を実現するために、上記実施例では、スロットルバルブ29の開度を制御する。例えば、スロットルバルブ29の開度を増加すると、負圧であるコレクタ部28内のコレクタ圧力が大気圧に近付き、EGRシステム差圧が縮小するので、導入されるEGRガス量が減少する。同時にスロットルバルブ29を通過する新気量が増加するため、「EGRガス量/(新気量+EGRガス量)」として定義されるEGR率が小さくなる。
【0026】
逆にスロットルバルブ29の開度を減少すると、コレクタ圧力が低下し、EGRシステム差圧が増大するので、導入されるEGRガス量が増加する。同時にスロットルバルブ29を通過する新気量が減少するため、EGR率は大きくなる。
【0027】
なお、排気還流を行うときには、EGR率制御を優先してスロットルバルブ29の開度制御がなされるので、内燃機関2が出力するトルクはスロットルバルブ29によっては制御されない。
【0028】
シリーズハイブリッド車両における発電用の内燃機関2である上記実施例では、内燃機関2は、基本的に、最良燃費点を含む複数の運転点を目標として運転される。最良燃費点は、発電用モータジェネレータ1の発電効率を含め内燃機関2の燃費が最良となる機関回転速度とトルクの組み合わせである。内燃機関2の運転点としては、この最良燃費点のほか、低車速時等の静粛性が要求されるときに選択される最良燃費点よりも低い回転速度となる運転点(便宜上、これを第2の運転点という)、車両の要求駆動力(換言すれば発電要求)が大きいときに積極的な発電を行うために選択される最良燃費点よりも高い回転速度となる運転点(便宜上、これを第3の運転点という)、を少なくとも含む。例えば、通常の走行時には最良燃費点で内燃機関8の運転および発電がなされ、登坂時や加速時には第3の運転点で内燃機関8の運転および発電がなされ、車両の低速走行時には、第1の運転点で内燃機関8の運転および発電がなされる。実際には、他の条件に応じて、さらに回転速度が異なるいくつかの運転点で運転され得る。
【0029】
これらの各運転点に対応して、内燃機関2の回転速度は、負荷側である発電用モータジェネレータ1の制御によって、各々の運転点における目標回転速度に制御される。
【0030】
ここで、上述したように、排気還流を行っているときは、内燃機関2のトルクはスロットルバルブ29によっては制御されないので、各々の運転点で運転されているときに、機関回転速度は目標回転速度付近に保たれるものの、トルクは必ずしも各運転点の目標トルクには一致しない。
【0031】
但し、好ましい一実施例においては、EGRバルブ43の開時の流量特性が最良燃費点となる回転速度とトルクとを基準として設定されており、そのため、最良燃費点では、スロットルバルブ29の開度が目標EGR率を実現するように制御されたときに、回転速度およびトルクが最良燃費点の目標回転速度および目標トルク付近に得られる。つまり、EGRバルブ43の開時の流量特性は、最良燃費点となる回転速度とトルクとを基準として、このトルクに対応したコレクタ圧力の下で当該最良燃費点における目標EGR率が得られるように設定されている。
【0032】
目標EGR率は、機関回転速度をパラメータとして設定されている。好ましい一実施例においては、上述したように、内燃機関2の複数の運転点は、目標回転速度がそれぞれ異なるように設定されているので、換言すれば、各運転点毎に目標EGR率が定められているとも言える。通常は、最良燃費点における目標EGR率が最も高く、低回転速度である第2の運転点における目標EGR率は相対的に低い。そのため、第2の運転点では、このように低い目標EGR率を実現するために、スロットルバルブ29の開度は、第2の運転点における目標トルクに対応したスロットルバルブ開度よりも大きくなる。ここで目標トルクを上回って生じたトルクは、発電用モータジェネレータ1によって吸収される。
【0033】
このようにして、上記実施例では、単純な開閉型のEGRバルブ43を利用しつつ目標EGR率を実現することが可能となる。
【0034】
燃料噴射量は、エアフロメータ30が検出する新気量および空燃比センサ38が検出する排気空燃比に基づいて制御される。つまり一般的な手法の空燃比制御と特に変わりはない。
【0035】
なお、仮に、EGRバルブ43の固定的な流量を、目標EGR率が小さくなる低回転速度に適当なように設定すると、最良燃費点において目標EGR率を達成することができなくなる。
【0036】
図3は、第1実施例の排気還流制御の処理の流れを示すフローチャートであり、以下、これに従って、排気還流制御をより具体的に説明する。
【0037】
このフローチャートに示すルーチンは、エンジンコントローラ8によって繰り返し実行されるもので、最初のステップ1では、内燃機関2の運転状態に関する種々の情報(指令されている運転点、機関回転速度、コレクタ圧力、スロットルバルブ開度、吸入空気量、冷却水温、、排気ガス温度、等)を読み込む。
【0038】
次にステップ2において、排気還流を行うべき条件であるか否かを判定する。例えば、冷却水温があるレベルよりも低い場合は、燃焼安定度が低くなることから、排気還流を禁止する。また、排気還流を許可する条件の一つとして、目標EGR率が達成された場合のコレクタ圧力が所定の上限値および下限値の範囲内にあることが定められている。ステップ2では、そのときの機関回転速度に対応した目標EGR率が達成された場合のコレクタ圧力を見積もり、これを所定の上限値および下限値と比較する。コレクタ圧力が過度に高いとクランクケースのベンチレーションが困難になる等の不具合が生じるので、上限値は、このようなベンチレーション等を考慮して適当に設定される。また、コレクタ圧力が過度に低いと燃焼限界以上にEGRガスが導入される恐れがあるので、これを考慮して下限値が設定される。見積もったコレクタ圧力が上限値および下限値の範囲外であれば、排気還流は行わない。
【0039】
ステップ2の判定がNOであれば、ステップ2からステップ3へ進み、EGRバルブ43を閉(OFF)とし、排気還流を行わない。そして、この場合は、ステップ4において、スロットルバルブ開度を通常制御する。つまり、目標トルクに応じて通常時目標スロットルバルブ開度を設定し、スロットルバルブ29の開度をこの通常時目標スロットルバルブ開度に制御する。
【0040】
ステップ2の判定がYESであれば、ステップ2からステップ5へ進み、そのときの機関回転速度に基づいて目標EGR率を設定する。機関回転速度をパラメータとして対応する目標EGR率を割り付けたテーブルが予め作成されており、これを検索することで目標EGR率が設定される。
【0041】
ステップ6では、目標EGR率に基づき目標コレクタ圧力を算出する。EGRバルブ43の開時の流量特性と機関回転速度とから、目標EGR率が達成される目標コレクタ圧力を求めることができる。EGRバルブ43の開時の流量特性は、一定値である。例えば、機関回転速度と目標EGR率とをパラメータとして対応する目標コレクタ圧力を割り付けたマップが予め作成されており、これを検索することで目標コレクタ圧力が求められる。
【0042】
ステップ7では、ステップ6で求めた目標コレクタ圧力に基づき、この目標コレクタ圧力を得るのに必要なスロットルバルブ開度つまりEGR時目標スロットルバルブ開度を設定する。例えば、目標コレクタ圧力と目標EGR率とをパラメータとして対応するEGR時目標スロットルバルブ開度を割り付けたマップが予め作成されており、これを検索することでEGR時目標スロットルバルブ開度が求められる。
【0043】
そして、ステップ8において、スロットルバルブ29の開度をこのEGR時目標スロットルバルブ開度に制御する。さらにステップ9に進み、EGRバルブ43を開(ON)とする。
【0044】
このような制御により、単純なON-OFF型のEGRバルブ43であっても、EGR率を目標EGR率に制御することができ、例えば過剰な排気還流による燃焼不安定化を生じることがない。
【0045】
次に、図4は、第2実施例の排気還流制御の処理の流れを示すフローチャートであり、以下、主に第1実施例と異なる点を説明する。第2実施例は、コレクタ部28に流入するEGRガスの温度を考慮してスロットルバルブ29の開度を補正するようにしたものである。
【0046】
ステップ7においてEGR時目標スロットルバルブ開度を設定した後、ステップ11へ進み、EGRクーラ44の出口部におけるEGRガス温度を求める。一実施例においては、排気温度センサ39が検出する排気通路35における排気ガス温度と、水温センサ53が検出する冷却水温と、に基づいてEGRクーラ44の出口部におけるEGRガス温度が推定される。そして、ステップ11からステップ12へ進み、EGRクーラ44の出口部におけるEGRガス温度に基づいて、EGR時目標スロットルバルブ開度を補正する。具体的には、出口ガス温度が高いほどEGR時目標スロットルバルブ開度が減少するようにEGR時目標スロットルバルブ開度を補正する。
【0047】
例えば、車両の低車速高負荷運転が続いてEGRクーラ44の冷却性能が悪化しEGRクーラ44の出口におけるEGRガス温度が高くなることがある。この場合は、EGRバルブ43を通過するガス密度が低下しEGRガス流量(質量流量)が減少することになるので、スロットルバルブ29の開度を閉じ側に補正する。これにより、EGRガス温度が高い場合でも、実際のEGR率が目標EGR率付近に得られる。
【0048】
次に、図5は、第3実施例の排気還流制御の処理の流れを示すフローチャートであり、以下、主に第1実施例と異なる点を説明する。第3実施例は、車両が走行する場所の標高を考慮してスロットルバルブ29の開度を補正するようにしたものである。
【0049】
ステップ7においてEGR時目標スロットルバルブ開度を設定した後、ステップ21へ進み、大気圧センサ54が検出する大気圧やカーナビゲーションシステムの情報から標高を求める。そして、ステップ21からステップ22へ進み、標高に基づいて、EGR時目標スロットルバルブ開度を補正する。具体的には、標高が高いほどEGR時目標スロットルバルブ開度が増加するようにEGR時目標スロットルバルブ開度を補正する。
【0050】
例えば、標高が高い場合は、吸入空気量が減少しEGR率が増加することになるので、スロットルバルブ29の開度を開き側に補正する。これにより、標高が高い場合でも、実際のEGR率が目標EGR率付近に得られる。
【0051】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、吸気弁および排気弁の少なくとも一方のバルブタイミングが可変制御される内燃機関の場合には、EGRバルブ43の開時の流量特性と内燃機関の回転速度とバルブタイミングとから、目標EGR率が達成される目標コレクタ圧力を求めることが望ましい。
【0053】
また上記実施例では目標コレクタ圧力を求めた後に必要なEGR時目標スロットルバルブ開度を求めるようにしているが、制御の簡略化のために、中間的なパラメータとしての目標コレクタ圧力を求めずに、例えば予め作成したテーブルを用いて目標コレクタ圧力から直ちにEGR時目標スロットルバルブ開度を定めるようにしてもよい。
【0054】
また、本発明は、内燃機関の出力が発電機の駆動のみに利用されるシリーズハイブリッド車両に限らず、例えば無段変速機によって内燃機関の回転速度を目標回転速度に保つとともに内燃機関のトルクを発電等で吸収する構成のハイブリッド車両など他の形式のものにも適用され得る。
【符号の説明】
【0055】
1…発電用モータジェネレータ
2…内燃機関
8…エンジンコントローラ
9…モータコントローラ
28…コレクタ部
29…スロットルバルブ
32…吸気圧センサ
39…排気温度センサ
41…排気還流装置
42…EGR通路
43…EGRバルブ
44…EGRクーラ
53…水温センサ
54…大気圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5