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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069815
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】連続鋳造用ノズルの予熱装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B22D11/10 320A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180034
(22)【出願日】2022-11-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】山内 智玲
(72)【発明者】
【氏名】階戸 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 星亜
(57)【要約】
【課題】連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができ、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる連続鋳造用ノズルの予熱装置を提供する。
【解決手段】本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、扉部2を有し開閉可能に構成された筒状部3を備えた連続鋳造用ノズル40の予熱装置であって、筒状部3内には、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉部を有し開閉可能に構成された筒状部を備えた連続鋳造用ノズルの予熱装置であって、前記筒状部内には、予熱に際して前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルを囲繞すると共に、前記連続鋳造用ノズルの下部開口から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体が配置されていることを特徴とする連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項2】
前記炎漏出防止用筒状体は、少なくとも前記筒状部の底部から、前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルの前記下部開口の位置より上方まで延在した筒状体である請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項3】
前記炎漏出防止用筒状体は、前記筒状部の前記底部に載置され交換可能に構成されている請求項1または2に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項4】
前記扉部は、両開き扉または片開き扉である請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項5】
前記炎漏出防止用筒状体は、有底筒状体である請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用ノズルを使用前に予熱する連続鋳造用ノズルの予熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、およそ1500~1550℃の溶鋼を連続鋳造用ノズルを介して注湯している。その際、連続鋳造用ノズルには過酷な熱負荷がかかり亀裂や折損等が発生するおそれがあるため、連続鋳造用ノズルを予熱装置により予め加熱しておくことで、溶湯の熱負荷を抑制し連続鋳造用ノズルの耐久性を向上させている。また、溶湯自体の温度低下による鋳造品の品質劣化を抑制している。
【0003】
この予熱装置による加熱は、連続鋳造用ノズルを予熱装置の筒状部内に配し、上部の注湯口からバーナーで加熱して行われるが、予熱装置の扉の隙間から、連続鋳造用ノズルの下部開口から外方に向かって放出されるバーナーの炎(フレーム)が漏出して、連続鋳造用ノズル自体の温度上昇を阻害する一方で、予熱装置自体の温度上昇を招き損傷させることがあった。この予熱装置の損傷は、さらなる炎(フレーム)の漏出を発生させ悪循環を招くことがあった。
【0004】
この問題を解決するために、応急処置として、予熱装置の扉の隙間をセラミックシート等で埋めることが行われているが完全に炎(フレーム)の漏出を防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5937645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができ、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる連続鋳造用ノズルの予熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものは、扉部を有し開閉可能に構成された筒状部を備えた連続鋳造用ノズルの予熱装置であって、前記筒状部内には、予熱に際して前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルを囲繞すると共に、前記連続鋳造用ノズルの下部開口から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体が配置されていることを特徴とする連続鋳造用ノズルの予熱装置である(請求項1)。
【0008】
前記炎漏出防止用筒状体は、少なくとも前記筒状部の底部から、前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルの前記下部開口の位置より上方まで延在した筒状体であることが好ましい(請求項2)。前記炎漏出防止用筒状体は、前記筒状部の前記底部に載置され交換可能に構成されていることが好ましい(請求項3)。前記扉部は、両開き扉または片開き扉のいずれであってもよい(請求項4)。前記炎漏出防止用筒状体は、有底筒状体であってもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができ、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる。
請求項2に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、上記請求項1の効果を奏する予熱装置をより簡素な構造で構成できる。
請求項3に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、上記請求項1の効果に加え、炎漏出防止用筒状体のみを容易に交換できる。
請求項4に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、上記請求項1の効果を奏する予熱装置を両開き扉または片開き扉のいずれかで構成できる。
請求項5に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、上記請求項1の効果に加え、筒状部の底部と炎漏出防止用筒状体との間隙から炎(フレーム)が漏出することを防止でき、連続鋳造用ノズルの温度上昇をより阻害することなく、予熱装置自体の損傷もより防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の一実施例の平面概略図である。
図2図1に示した連続鋳造用ノズルの予熱装置において両開き扉を開いた状態を示した平面概略図である。
図3図1に示した連続鋳造用ノズルの予熱装置の右側面概略図である。
図4図3の一部拡大縦断面図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6】本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の他の実施例の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、筒状部3内に、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されていることで、連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口43から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができると共に、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる連続鋳造用ノズルの予熱装置1を実現した。
【実施例0012】
本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置を図1から図5に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、扉部2を有し開閉可能に構成された筒状部3を備えた連続鋳造用ノズル40の予熱装置であって、筒状部3内には、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されている。以下、各構成について順次詳述する。
【0013】
この実施例の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、図4に示すように、連続鋳造用ノズル40に溶鋼を注湯する前に連続鋳造用ノズル40を予熱する装置であって、筒状部(耐火材製)3の上部開口部12から連続鋳造用ノズル40を挿入し連続鋳造用ノズル40の注湯口41の上部に予熱バーナー13を設置した後、連続鋳造用ノズル40の注湯口41より燃焼高温ガスを供給して連続鋳造用ノズル40の内管部42を加熱すると共に、内管部42を通過した燃焼高温ガスを連続鋳造用ノズル40の下方に設けられた下部開口43より連続鋳造用ノズル収容部14に排出させた後、筒状部3内の連続鋳造用ノズル収容部14に設けられた連通口と排気管15を介して筒状部3の外側へ排出させて予熱する装置である。図1または図3に示すように、予熱バーナー13へは隣設された燃焼ユニット13Aから燃焼ガスが供給され、連続鋳造用ノズル40のスポーリングを防止する上で、連続鋳造用ノズル40は一般的に1000℃程度まで加熱される。
【0014】
この実施例の扉部2は、図2中、蝶番2a,2bを介して左右の扉が中央から両側へ開く両開き扉2A,2Bで構成されており、これらの開閉によって予熱対象である連続鋳造用ノズル40を筒状部3内の連続鋳造用ノズル収容部14に収容可能に構成されている。ただし、本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置における扉部は両開き扉に限定されるものではなく、例えば片開き扉のものも本発明の範疇に包含される。また、筒状部3の外周部は、図1または図4に示すように、金属製缶体16により被覆されており、筒状部3の扉部2を被覆する金属製缶体16には開閉時に把持する把持部17が設けられている。
【0015】
筒状部3内の下部付近には、図4または図5に示すように、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口(この実施例では一対の吐出口)43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されている。本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1では、この炎漏出防止用筒状体4により、連続鋳造用ノズル40を予熱する際に下部開口43から放出される炎(フレーム)を遮断(制止)して機外への漏出を防止することができるため、連続鋳造用ノズル40の温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止される。なお、炎漏出防止用筒状体4は、図4または図5に示すように、連続鋳造用ノズル40の下部開口43を閉塞することなく、連続鋳造用ノズル40と離隔して配されており、これにより、燃焼高温ガスの機外への排気が阻害されることが防止される。
【0016】
この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、スリーブ状であり、図4に示すように、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40の全周を囲繞する(取り囲む)ように配されている。
【0017】
より具体的には、この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、少なくとも筒状部3の底部(炉底部)5から、筒状部3内に配された連続鋳造用ノズル40の下部開口43の位置より上方まで延在して設けられている。これにより、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から放出される炎の機外(筒状部外)への漏出を抑制することができる。ただし、本発明における炎漏出防止用筒状体4は、これに限定されるものではなく、連続鋳造用ノズル40の中間部や上部付近まで延在して設けられたものも本発明の範疇に包含される。
【0018】
また、この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、図5に示すように円筒体に形成されているが、これに限定されるものではなく、筒状体であって、筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞(取り囲むことが)できる形態のものを広く包含し、例えば楕円筒状体や多角筒状体等であってもよい。
【0019】
炎漏出防止用筒状体4の形成材料としては、耐火性を有し、高い断熱性を有するものが使用されるが、例えばアルミナファイバー、ムライトファイバー(RCF規制に抵触しないもの)、耐火性ブロック、あるいは高断熱材などが好適に使用できる。
【0020】
筒状部3は、扉部2(両開き扉2A,2B)と固定側本体部18を有し、固定側本体部18は、図4に示すように、底部(炉底部)5と一体に成形されている。
【0021】
この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、固定側本体部18あるいは底部5とは別体に構成され、図4または図5に示すように、底部5の上方に配置されて交換可能に構成されている。これにより、炎漏出防止用筒状体4のみを容易に交換することができる。ただし、本発明における炎漏出防止用筒状体4が、固定側本体部18あるいは底部(炉底部)5と一体に成形されたものも本発明の範疇に包含される。
【0022】
(実験)
実施例として、図4に示した炎漏出防止用筒状体4を、筒状部内3の下部の扉と扉の隙間や炉体と扉の隙間付近に配した連続鋳造用ノズルの予熱装置1を作製した。
比較例として、炎漏出防止用筒状体4を、筒状部3の下部の扉と扉の隙間や炉体と扉の隙間付近に配しない点のみ異なる連続鋳造用ノズルの予熱装置を作製した。
実施例と比較例それぞれについて、筒状部3の上部開口部12から連続鋳造用ノズル40を挿入し連続鋳造用ノズル40の注湯口41の上部に予熱バーナー13を設置した後、連続鋳造用ノズル40の注湯口41より燃焼高温ガスを供給して連続鋳造用ノズル40の内管部42を加熱し、120分後、予熱装置の筒状部3内の温度(実施例、比較例共に筒状部3の上方内部の温度)と筒状部3の下部の温度(実施例では炎漏出防止用筒状体4の外方の温度、比較例では炎漏出防止用筒状体4は存在しないが同様の位置の温度)を測定した。
【0023】
(実験結果)
実施例では、筒状部3内の温度は1191℃で、筒状部3の下部の温度は834℃であった。他方、比較例では、筒状部3内の温度は1187℃で、筒状部3の下部の温度は1052℃であった。
【0024】
(考察)
実施例の方が筒状部3内の温度が高く、筒状部3の下部の温度上昇が著しく低減していることから、炎漏出防止用筒状体4を筒状部3内に配した本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置(筒状部)自体の損傷も防止できることが確認された。
【0025】
つぎに、図6に示した本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の他の実施例について説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズルの予熱装置50と前述した連続鋳造用ノズルの予熱装置1との相違は、連続鋳造用ノズルの予熱装置50の炎漏出防止用筒状体51が有底筒状体である点のみであり他は同様である。連続鋳造用ノズルの予熱装置1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0026】
このように、炎漏出防止用筒状体がスリーブ状ではなく、底部を有する有底筒状体であるものも本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の範疇に包含される。これにより、筒状部3の底部5と炎漏出防止用筒状体51との間隙から炎(フレーム)が漏出することを防止でき、連続鋳造用ノズルの温度上昇をより阻害することなく、予熱装置自体の損傷もより防止することができる。
【0027】
以上のように、本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1,50は、筒状部3内に、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4,51が配置されていることで、連続鋳造用ノズル40を予熱する際に下部開口43から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を防止することができ、連続鋳造用ノズル40の温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止される。
【0028】
なお、図4または図6は浸漬ノズルを予熱する場合を例に示した図であるが、例えば下部開口がノズルの下端に設けられたロングノズルなどの他の連続鋳造用ノズルの予熱装置としても使用可能である。すなわち、本願における「下部開口」とは、連続鋳造用ノズルの下部に設けられた溶鋼の出口となる部位であり、例えば浸漬ノズルにおける吐出口の他、ロングノズルにおける下端開口なども含む概念である。
【符号の説明】
【0029】
1 連続鋳造用ノズルの予熱装置
2 扉部
2A 両開き扉
2B 両開き扉
2a 蝶番
2b 蝶番
3 筒状部
4 炎漏出防止用筒状体
5 底部
12 上部開口部
13 予熱バーナー
13A 燃焼ユニット
14 連続鋳造用ノズル収容部
15 排気管
16 金属製缶体
17 把持部
18 固定側本体部
40 連続鋳造用ノズル
41 注湯口
42 内管部
43 下部開口
50 連続鋳造用ノズルの予熱装置
51 炎漏出防止用筒状体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉部を有し開閉可能に構成された筒状部を備えた連続鋳造用ノズルの予熱装置であって、
前記筒状部内には、予熱に際して前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルを囲繞すると共に、前記連続鋳造用ノズルの下部開口から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体が配置され、
該炎漏出防止用筒状体は、前記扉部の内面付近に該扉部の内面に沿って配置され前記連続鋳造用ノズルの前記下部開口から外方に放出される炎を遮断すると共に、
前記筒状部とは別体にて構成され前記筒状部内の底部上に交換可能に載置され、
さらに、前記炎漏出防止用筒状体は、少なくとも前記筒状部内の底部から、前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルの前記下部開口の位置より上方まで延在した筒状体であることを特徴とする連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項2】
前記炎漏出防止用筒状体は、アルミナファイバーまたはムライトファイバーにて構成されている請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項3】
前記扉部は、両開き扉または片開き扉である請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【請求項4】
前記炎漏出防止用筒状体は、有底筒状体である請求項1に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用ノズルを使用前に予熱する連続鋳造用ノズルの予熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、およそ1500~1550℃の溶鋼を連続鋳造用ノズルを介して注湯している。その際、連続鋳造用ノズルには過酷な熱負荷がかかり亀裂や折損等が発生するおそれがあるため、連続鋳造用ノズルを予熱装置により予め加熱しておくことで、溶湯の熱負荷を抑制し連続鋳造用ノズルの耐久性を向上させている。また、溶湯自体の温度低下による鋳造品の品質劣化を抑制している。
【0003】
この予熱装置による加熱は、連続鋳造用ノズルを予熱装置の筒状部内に配し、上部の注湯口からバーナーで加熱して行われるが、予熱装置の扉の隙間から、連続鋳造用ノズルの下部開口から外方に向かって放出されるバーナーの炎(フレーム)が漏出して、連続鋳造用ノズル自体の温度上昇を阻害する一方で、予熱装置自体の温度上昇を招き損傷させることがあった。この予熱装置の損傷は、さらなる炎(フレーム)の漏出を発生させ悪循環を招くことがあった。
【0004】
この問題を解決するために、応急処置として、予熱装置の扉の隙間をセラミックシート等で埋めることが行われているが完全に炎(フレーム)の漏出を防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5937645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができ、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる連続鋳造用ノズルの予熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものは、扉部を有し開閉可能に構成された筒状部を備えた連続鋳造用ノズルの予熱装置であって、前記筒状部内には、予熱に際して前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルを囲繞すると共に、前記連続鋳造用ノズルの下部開口から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体が配置され、該炎漏出防止用筒状体は、前記扉部の内面付近に該扉部の内面に沿って配置され前記連続鋳造用ノズルの前記下部開口から外方に放出される炎を遮断すると共に、前記筒状部とは別体にて構成され前記筒状部内の底部上に交換可能に載置され、さらに、前記炎漏出防止用筒状体は、少なくとも前記筒状部内の底部から、前記筒状部内に配される前記連続鋳造用ノズルの前記下部開口の位置より上方まで延在した筒状体であることを特徴とする連続鋳造用ノズルの予熱装置である(請求項1)。
【0008】
前記炎漏出防止用筒状体は、アルミナファイバーまたはムライトファイバーにて構成されていてもよい(請求項2)。前記扉部は、両開き扉または片開き扉のいずれであってもよい(請求項)。前記炎漏出防止用筒状体は、有底筒状体であってもよい(請求項)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1または2に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができ、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる。また、前記効果を奏する予熱装置をより簡素な構造で構成できると共に、炎漏出防止用筒状体のみを容易に交換できる。
請求項に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、上記請求項1の効果を奏する予熱装置を両開き扉または片開き扉のいずれかで構成できる。
請求項に記載の連続鋳造用ノズルの予熱装置によれば、上記請求項1の効果に加え、筒状部の底部と炎漏出防止用筒状体との間隙から炎(フレーム)が漏出することを防止でき、連続鋳造用ノズルの温度上昇をより阻害することなく、予熱装置自体の損傷もより防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の一実施例の平面概略図である。
図2図1に示した連続鋳造用ノズルの予熱装置において両開き扉を開いた状態を示した平面概略図である。
図3図1に示した連続鋳造用ノズルの予熱装置の右側面概略図である。
図4図3の一部拡大縦断面図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6】本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の他の実施例の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、筒状部3内に、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されていることで、連続鋳造用ノズルを予熱する際に下部開口43から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を抑制することができると共に、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止することができる連続鋳造用ノズルの予熱装置1を実現した。
【実施例0012】
本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置を図1から図5に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、扉部2を有し開閉可能に構成された筒状部3を備えた連続鋳造用ノズル40の予熱装置であって、筒状部3内には、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されている。以下、各構成について順次詳述する。
【0013】
この実施例の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、図4に示すように、連続鋳造用ノズル40に溶鋼を注湯する前に連続鋳造用ノズル40を予熱する装置であって、筒状部(耐火材製)3の上部開口部12から連続鋳造用ノズル40を挿入し連続鋳造用ノズル40の注湯口41の上部に予熱バーナー13を設置した後、連続鋳造用ノズル40の注湯口41より燃焼高温ガスを供給して連続鋳造用ノズル40の内管部42を加熱すると共に、内管部42を通過した燃焼高温ガスを連続鋳造用ノズル40の下方に設けられた下部開口43より連続鋳造用ノズル収容部14に排出させた後、筒状部3内の連続鋳造用ノズル収容部14に設けられた連通口と排気管15を介して筒状部3の外側へ排出させて予熱する装置である。図1または図3に示すように、予熱バーナー13へは隣設された燃焼ユニット13Aから燃焼ガスが供給され、連続鋳造用ノズル40のスポーリングを防止する上で、連続鋳造用ノズル40は一般的に1000℃程度まで加熱される。
【0014】
この実施例の扉部2は、図2中、蝶番2a,2bを介して左右の扉が中央から両側へ開く両開き扉2A,2Bで構成されており、これらの開閉によって予熱対象である連続鋳造用ノズル40を筒状部3内の連続鋳造用ノズル収容部14に収容可能に構成されている。ただし、本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置における扉部は両開き扉に限定されるものではなく、例えば片開き扉のものも本発明の範疇に包含される。また、筒状部3の外周部は、図1または図4に示すように、金属製缶体16により被覆されており、筒状部3の扉部2を被覆する金属製缶体16には開閉時に把持する把持部17が設けられている。
【0015】
筒状部3内の下部付近には、図4または図5に示すように、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口(この実施例では一対の吐出口)43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4が配置されている。本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1では、この炎漏出防止用筒状体4により、連続鋳造用ノズル40を予熱する際に下部開口43から放出される炎(フレーム)を遮断(制止)して機外への漏出を防止することができるため、連続鋳造用ノズル40の温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止される。なお、炎漏出防止用筒状体4は、図4または図5に示すように、連続鋳造用ノズル40の下部開口43を閉塞することなく、連続鋳造用ノズル40と離隔して配されており、これにより、燃焼高温ガスの機外への排気が阻害されることが防止される。
【0016】
この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、スリーブ状であり、図4に示すように、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40の全周を囲繞する(取り囲む)ように配されている。
【0017】
より具体的には、この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、少なくとも筒状部3の底部(炉底部)5から、筒状部3内に配された連続鋳造用ノズル40の下部開口43の位置より上方まで延在して設けられている。これにより、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から放出される炎の機外(筒状部外)への漏出を抑制することができる。ただし、本発明における炎漏出防止用筒状体4は、これに限定されるものではなく、連続鋳造用ノズル40の中間部や上部付近まで延在して設けられたものも本発明の範疇に包含される。
【0018】
また、この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、図5に示すように円筒体に形成されているが、これに限定されるものではなく、筒状体であって、筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞(取り囲むことが)できる形態のものを広く包含し、例えば楕円筒状体や多角筒状体等であってもよい。
【0019】
炎漏出防止用筒状体4の形成材料としては、耐火性を有し、高い断熱性を有するものが使用されるが、例えばアルミナファイバー、ムライトファイバー(RCF規制に抵触しないもの)、耐火性ブロック、あるいは高断熱材などが好適に使用できる。
【0020】
筒状部3は、扉部2(両開き扉2A,2B)と固定側本体部18を有し、固定側本体部18は、図4に示すように、底部(炉底部)5と一体に成形されている。
【0021】
この実施例の炎漏出防止用筒状体4は、固定側本体部18あるいは底部5とは別体に構成され、図4または図5に示すように、底部5の上方に配置されて交換可能に構成されている。これにより、炎漏出防止用筒状体4のみを容易に交換することができる。ただし、本発明における炎漏出防止用筒状体4が、固定側本体部18あるいは底部(炉底部)5と一体に成形されたものも本発明の範疇に包含される。
【0022】
(実験)
実施例として、図4に示した炎漏出防止用筒状体4を、筒状部内3の下部の扉と扉の隙間や炉体と扉の隙間付近に配した連続鋳造用ノズルの予熱装置1を作製した。
比較例として、炎漏出防止用筒状体4を、筒状部3の下部の扉と扉の隙間や炉体と扉の隙間付近に配しない点のみ異なる連続鋳造用ノズルの予熱装置を作製した。
実施例と比較例それぞれについて、筒状部3の上部開口部12から連続鋳造用ノズル40を挿入し連続鋳造用ノズル40の注湯口41の上部に予熱バーナー13を設置した後、連続鋳造用ノズル40の注湯口41より燃焼高温ガスを供給して連続鋳造用ノズル40の内管部42を加熱し、120分後、予熱装置の筒状部3内の温度(実施例、比較例共に筒状部3の上方内部の温度)と筒状部3の下部の温度(実施例では炎漏出防止用筒状体4の外方の温度、比較例では炎漏出防止用筒状体4は存在しないが同様の位置の温度)を測定した。
【0023】
(実験結果)
実施例では、筒状部3内の温度は1191℃で、筒状部3の下部の温度は834℃であった。他方、比較例では、筒状部3内の温度は1187℃で、筒状部3の下部の温度は1052℃であった。
【0024】
(考察)
実施例の方が筒状部3内の温度が高く、筒状部3の下部の温度上昇が著しく低減していることから、炎漏出防止用筒状体4を筒状部3内に配した本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1は、連続鋳造用ノズルの温度上昇を阻害することなく、予熱装置(筒状部)自体の損傷も防止できることが確認された。
【0025】
つぎに、図6に示した本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の他の実施例について説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズルの予熱装置50と前述した連続鋳造用ノズルの予熱装置1との相違は、連続鋳造用ノズルの予熱装置50の炎漏出防止用筒状体51が有底筒状体である点のみであり他は同様である。連続鋳造用ノズルの予熱装置1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0026】
このように、炎漏出防止用筒状体がスリーブ状ではなく、底部を有する有底筒状体であるものも本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置の範疇に包含される。これにより、筒状部3の底部5と炎漏出防止用筒状体51との間隙から炎(フレーム)が漏出することを防止でき、連続鋳造用ノズルの温度上昇をより阻害することなく、予熱装置自体の損傷もより防止することができる。
【0027】
以上のように、本発明の連続鋳造用ノズルの予熱装置1,50は、筒状部3内に、予熱に際して筒状部3内に配される連続鋳造用ノズル40を囲繞すると共に、連続鋳造用ノズル40の下部開口43から外方に向かって放出される炎の漏出を抑制するための炎漏出防止用筒状体4,51が配置されていることで、連続鋳造用ノズル40を予熱する際に下部開口43から外方に向かって放出される炎(フレーム)の漏出を防止することができ、連続鋳造用ノズル40の温度上昇を阻害することなく、予熱装置自体の損傷も防止される。
【0028】
なお、図4または図6は浸漬ノズルを予熱する場合を例に示した図であるが、例えば下部開口がノズルの下端に設けられたロングノズルなどの他の連続鋳造用ノズルの予熱装置としても使用可能である。すなわち、本願における「下部開口」とは、連続鋳造用ノズルの下部に設けられた溶鋼の出口となる部位であり、例えば浸漬ノズルにおける吐出口の他、ロングノズルにおける下端開口なども含む概念である。
【符号の説明】
【0029】
1 連続鋳造用ノズルの予熱装置
2 扉部
2A 両開き扉
2B 両開き扉
2a 蝶番
2b 蝶番
3 筒状部
4 炎漏出防止用筒状体
5 底部
12 上部開口部
13 予熱バーナー
13A 燃焼ユニット
14 連続鋳造用ノズル収容部
15 排気管
16 金属製缶体
17 把持部
18 固定側本体部
40 連続鋳造用ノズル
41 注湯口
42 内管部
43 下部開口
50 連続鋳造用ノズルの予熱装置
51 炎漏出防止用筒状体