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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069817
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B62D55/253 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180037
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田(林) 優希
(57)【要約】
【課題】芯金18が容易に得られ、この芯金18が横ずれを起こしにくく、かつ振動が少ない弾性クローラの提供。
【解決手段】弾性クローラは、メインベルトと、このメインベルトに埋設されており前後方向に沿って並ぶ複数の芯金18とを有する。それぞれの芯金18は、主部38、この主部38から内向きに突出するガイド突起40、その一部が主部38から前向き又は後向きに突出しておりその内側表面にリセスを有する転輪走行レール42、及び主部38から前向き又は後向きに突出する横ずれ防止ストッパー44(46)を有する。この芯金18が内側から見られたとき、横ずれ防止ストッパー44(46)の輪郭は、ガイド突起40の輪郭とオーバーラップしておらず、転輪走行レール42の輪郭とオーバーラップしていない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端形状であって弾性を有するメインベルト
及び
上記メインベルトに埋設されており前後方向に沿って並ぶ複数の芯金
を備えており、
それぞれの芯金が、
主部、
上記主部から内向きに突出するガイド突起、
その内側表面にリセスを有する転輪走行レール
及び
上記主部から前向き又は後向きに突出する横ずれ防止ストッパー
を有しており、
上記芯金が内側から見られたときに、上記横ずれ防止ストッパーの輪郭が、上記ガイド突起の輪郭とオーバーラップしておらず、上記転輪走行レールの輪郭とオーバーラップしていない、弾性クローラ。
【請求項2】
上記横ずれ防止ストッパーが、上記主部に連続するバットと、このバットに連続するティップとを有しており、
上記バットの側面が、前後方向に対して傾斜しており、
上記側面の傾斜によって、上記横ずれ防止ストッパーの輪郭の、上記ガイド突起の輪郭、又は上記転輪走行レールの輪郭とのオーバーラップが、回避されている、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
上記横ずれ防止ストッパーの高さHsに対する、上記バットの高さHbの比(Hb/Hs)が、0.70以下である、請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
上記横ずれ防止ストッパーの幅Wsに対する、上記側面の左右方向距離Lbの比(Lb/Ws)が、0.40以下である、請求項2又は3に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
上記芯金が上記主部と上記側面との境界に丸めを有しており、この丸めの曲率半径R1が1.0mm以上である、請求項2又は3に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
主部、
上記主部から内向きに突出するガイド突起、
その内側表面にリセスを有する転輪走行レール
及び
上記主部から前向き又は後向きに突出する横ずれ防止ストッパー
を有しており、
内側から見られたときに、上記横ずれ防止ストッパーの輪郭が、上記ガイド突起の輪郭とオーバーラップしておらず、上記転輪走行レールの輪郭とオーバーラップしていない、弾性クローラ用の芯金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、弾性クローラを開示する。詳細には、本明細書は、主車輪及び転輪を有する走行装置の、弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性クローラを有する走行装置は、主車輪と転輪とを有している。この走行装置は、主車輪として、駆動輪と、1又は2の従動輪とを有している。通常、主車輪は、転輪の外径よりも大きい外径を有する。転輪は、駆動輪と従動輪との間、又は従動輪同士の間に位置している。弾性クローラは、主車輪間に巻き架けられる。
【0003】
この弾性クローラは、ゴム等からなり無端形状を有するメインベルトと、このメインベルトの外周面から突出するラグと、このメインベルトの内周面から突出する転輪ガイドとを有している。クローラの走行時には、転輪及び転輪ガイドにより、クローラが案内される。
【0004】
特開2003-146257公報には、芯金を有するクローラが開示されている。この芯金は、転輪ガイドのための突起を有する。この芯金はさらに、転輪と接触する箇所に、リセス(凹み)を有している。このリセスは、クローラの走行に起因する振動を抑制しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-146257公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リセスを有する芯金(又はそのマスター型)の鋳造のための鋳型では、リセスがアンダーカットとならないように、パーティング面が設定される必要がある。具体的には、鋳型の分割方向が、リセスの深さ方向と概ね一致する必要がある。
【0007】
ストッパーを有する芯金が、存在する。芯金が隣接する芯金から横ずれを起こすことを、ストッパーは防止する。転輪ガイドのための突起とストッパーとの両方を有する芯金(又はそのマスター型)の成形のための型において、アンダーカットを避けるには、中子が必要となりうる。中子が用いられた成形は、複雑である。
【0008】
本出願人の意図するところは、芯金が容易に得られ、芯金が横ずれを起こしにくく、かつ振動が少ない弾性クローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書が開示する弾性クローラは、
無端形状であって弾性を有するメインベルト
及び
このメインベルトに埋設されており前後方向に沿って並ぶ複数の芯金
を有する。それぞれの芯金は、
主部、
この主部から内向きに突出するガイド突起、
その内側表面にリセスを有する転輪走行レール
及び
この主部から前向き又は後向きに突出する横ずれ防止ストッパー
を有する。この芯金が内側から見られたときに、横ずれ防止ストッパーの輪郭は、ガイド突起の輪郭とオーバーラップしておらず、転輪走行レールの輪郭とオーバーラップしていない。
【発明の効果】
【0010】
この弾性クローラでは、転輪走行レールがリセスを有するので、振動が抑制されうる。このクローラでは、ストッパーが芯金の横ずれを抑制しうる。横ずれ防止ストッパーの輪郭が、ガイド突起の輪郭とオーバーラップしておらず、かつ転輪走行レールの輪郭ともオーバーラップしていないので、この芯金又はそのマスター型は、容易に製造されうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る弾性クローラを含む走行装置が示された概略図である。
図2図2は、図1の弾性クローラの一部が示された拡大図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、図3の弾性クローラの芯金が示された正面図である。
図5図5は、図4の芯金が示された平面図である。
図6図6は、図4の芯金が示された底面図である。
図7図7は、図4の芯金が示された左側面図である。
図8図8は、図5の芯金の一部が拡大されて示された平面図である。
図9図9は、図8の芯金の一部がさらに拡大されて示された平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0013】
図1に、走行装置2が示されている。この走行装置2は、駆動輪4、従動輪6、複数の転輪8及び弾性クローラ10を有している。本実施形態では、駆動輪4は、スプロケットである。この走行装置2は、図示されない駆動手段(エンジン等)を有している。この駆動手段により、スプロケット4が回転させられる。クローラ10はスプロケット4と従動輪6との間に巻き掛けられている。スプロケット4の回転により、クローラ10が回転する。クローラ10が回転するとき、転輪8はクローラ10を案内する。この案内により、クローラ10の蛇行が阻止される。クローラ10の回転により、装置2が走行する。典型的な走行装置2として、土木機器、建設機器及び農業用機器が挙げられる。走行装置2が、複数の従動輪6を有してもよい。走行装置2が、従動輪6と他の従動輪6との間に位置する転輪8を有してもよい。
【0014】
図2及び3に、弾性クローラ10が示されている。各図面において、矢印Xは左右方向を表し、矢印Yは前後方向を表し、矢印Zは厚み方向を表す。左右方向Xは、駆動輪4の軸方向でもある。前後方向は、クローラ10の周方向でもある。図1-3に示されるように、このクローラ10は、メインベルト14、複数のラグ16、複数の芯金18、複数の転輪ガイド20及び一対の抗張体22を有している。
【0015】
メインベルト14は、無端形状を有する。このメインベルト14は、内周面24及び外周面26を有している。メインベルト14はさらに、一対の外縁28を有している。図2において矢印Wmで示されているのは、メインベルト14の幅である。幅Wmは、左側の外縁28から右側の外縁28までの距離である。メインベルト14の幅Wmは、クローラ10の幅でもある。一般的な弾性クローラ10の幅Wmは、100mm以上600mm以下である。
【0016】
メインベルト14は、複数の係合孔30を有している。それぞれの係合孔30は、内周面24から外周面26にまで至っている。クローラ10が走行するとき、この係合孔30にスプロケット4の爪32(図1を参照)が入り込む。この爪32により、スプロケット4から芯金18を介してメインベルト14へと、駆動力が伝達される。メインベルト14が、係合孔30に代えて凹み有してもよい。凹み有するメインベルト14では、爪32がこの凹みを押圧する。クローラ10が、係合孔30に代えて突起を有してもよい。突起を有するクローラ10では、爪32がこの突起を押圧する。
【0017】
図2に示されるように、内周面24は、第一転輪走行ゾーン34a、第二転輪走行ゾーン34b、第一サイドゾーン36a及び第二サイドゾーン36bを有している。第一転輪走行ゾーン34aは、転輪ガイド20の左側に位置している。第二転輪走行ゾーン34bは、転輪ガイド20の右側に位置している。換言すれば、それぞれの転輪走行ゾーン34は、転輪ガイド20の軸方向外側に位置している。第一サイドゾーン36aは、第一転輪走行ゾーン34aの左側に位置している。第二サイドゾーン36bは、第二転輪走行ゾーン34bの右側に位置している。換言すれば、それぞれのサイドゾーン36は、転輪走行ゾーン34の軸方向外側に位置している。それぞれの転輪走行ゾーン34は、周方向に延在している。それぞれのサイドゾーン36は、周方向に延在している。図3に示されるように、走行装置2が進行するとき、転輪8の外周面が転輪走行ゾーン34と当接する。
【0018】
メインベルト14は、弾性材料から形成されている。ゴム、合成樹脂、エラストマー等が、メインベルト14に用いられうる。メインベルト14の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。
【0019】
図1に示されるように、複数のラグ16が、周方向に沿って並んでいる。これらのラグ16は、等ピッチで並んでいる。図1及び3に示されるように、それぞれのラグ16は、メインベルト14の外周面26から突出している。このラグ16の材質は、メインベルト14の材質とは異なっている。ラグ16の材質が、メインベルト14の材質と同じであってもよい。ラグ16の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。
【0020】
図2に示されるように、複数の芯金18が、前後方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの芯金18は、等ピッチで並んでいる。それぞれの芯金18は、幅方向中心に位置している。芯金18は、概してメインベルト14に埋設されている。芯金18の一部は、メインベルト14から露出している。芯金18の一部がメインベルト14から露出する場合も含め、本明細書では、「埋設」と称される。芯金18は、硬質である。芯金18の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。
【0021】
図4-7に示されるように、この芯金18は、主部38、一対のガイド突起40、一対の転輪走行レール42、一対の第一ストッパー44及び一対の第二ストッパー46を有している。主部38は、センター48及び一対のウイング50を有している。それぞれのウイング50は、センター48から左右方向に突出している。
【0022】
図4に示されるように、それぞれのガイド突起40は、主部38から内向き(図4の上向き)に突出している。図5から明らかなように、芯金18が内側から見られたとき、ガイド突起40の輪郭の一部は、主部38の輪郭からはみ出している。図5において左側に位置するガイド突起40は、前側(図5において上側)の輪郭が、主部38の輪郭よりも前側に位置している。図5において右側に位置するガイド突起40は、後側(図5において下側)の輪郭が、主部38の輪郭よりも後側に位置している。本実施形態では、右側のガイド突起40の形状は、左側のガイド突起40の形状と、回転対称である。左側のガイド突起40の形状と対称ではない形状を、右側のガイド突起40が有してもよい。ガイド突起40の左右方向位置は、走行装置2の仕様(特には転輪8の仕様)に応じて決定される。
【0023】
それぞれのレール42は、転輪走行ゾーン34(図2参照)の直下に位置している。本実施形態では、図5から明らかなように、芯金18が内側から見られたとき、レール42の一部は、主部38から突出している。図5において左側に位置するレール42は、後側(図5において下側)の輪郭が、主部38の輪郭よりも後向きに突出している。図5において右側に位置するレール42は、前側(図5において上側)の輪郭が、主部38の輪郭よりも前向きに突出している。本実施形態では、右側のレール42の形状は、左側のレール42の形状と、回転対称である。左側のレール42の形状と対称ではない形状を、右側のレール42が有してもよい。レール42の左右方向位置は、走行装置2の仕様(特には転輪8の仕様)に応じて決定される。
【0024】
図3及び7に示されるように、レール42は、リセス52(凹み)を有している。このリセス52においてレール42の表面は、外向き(図7における下向き)に凸に湾曲している。装置2が走行するとき、転輪8がこのリセス52(又はこのリセス52を覆うゴムの上)に入り込む。このリセス52は、転輪8の回転の円滑に寄与する。このリセス52は、走行装置2の振動を抑制しうる。振動抑制の観点から、リセス52の深さは0.2mm以上2.0mm以下が好ましい。
【0025】
図5に示されるように、それぞれの第一ストッパー44は、主部38から突出している。図5において左側に位置する第一ストッパー44は、主部38から前向きに突出している。図5において右側に位置する第一ストッパー44は、主部38から後向きに突出している。本実施形態では、右側の第一ストッパー44の形状は、左側の第一ストッパー44の形状と、回転対称である。左側の第一ストッパー44の形状と対称ではない形状を、右側の第一ストッパー44が有してもよい。
【0026】
それぞれの第二ストッパー46は、主部38から突出している。図5において左側に位置する第二ストッパー46は、主部38から後向きに突出している。図5において右側に位置する第二ストッパー46は、主部38から前向きに突出している。本実施形態では、右側の第二ストッパー46の形状は、左側の第二ストッパー46の形状と、回転対称である。左側の第二ストッパー46の形状と対称ではない形状を、右側の第二ストッパー46が有してもよい。
【0027】
図2から明らかなように、芯金18の第一ストッパー44は、この芯金18に隣接する芯金18の第二ストッパー46と当接している。芯金18の第二ストッパー46は、この芯金18に隣接する芯金18の第一ストッパー44と当接している。第一ストッパー44と第二ストッパー46との当接により、芯金18とこの芯金18に隣接する芯金18との、左右方向へのずれが抑制されうる。本明細書では、第一ストッパー44及び第二ストッパー46のそれぞれは、「横ずれ防止ストッパー」と称される。
【0028】
図1及び2に示されるように、複数の転輪ガイド20が、前後方向に沿って並んでいる。これらの転輪ガイド20は、等ピッチで並んでいる。それぞれの転輪ガイド20は、左右方向中心に位置している。図3に示されるように、この転輪ガイド20は、メインベルト14の内周面24から突出している。この転輪ガイド20は、一対のノブ54を有している。図3に示されるように、それぞれのノブ54は、芯金18のガイド突起40を含んでいる。このノブ54はさらに、メインベルト14の一部を含んでいる。転輪ガイド20が、メインベルト14を含まないノブ54を有してもよい。換言すれば、ノブ54において、ガイド突起40が完全に露出してもよい。
【0029】
図3に示されるように、それぞれの抗張体22は、複数のコード56を有している。それぞれのコード56は、前後方向に延在している。このコード56は、メインベルト14の過剰な伸張を抑制しうる。コード56の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。コード56が、有機繊維から形成されてもよい。
【0030】
図5から明らかなように、内側から見られたときの第一ストッパー44の輪郭は、ガイド突起40の輪郭とオーバーラップしておらず、転輪走行レール42の輪郭ともオーバーラップしていない。内側から見られたときの第二ストッパー46の輪郭も、ガイド突起40の輪郭とオーバーラップしておらず、転輪走行レール42の輪郭ともオーバーラップしていない。この芯金18(又はマスター型)は、厚さ方向(Z方向)に分割される型で、成形されうる。図4に、この型のパーティングラインPLが示されている。この型では、リセス52はアンダーカットではない。この型による成形では、リセス52のための中子は不要である。この芯金18は、容易かつ低コストで得られうる。
【0031】
図8に、芯金18の一部が拡大されて示されている。図8に示されるように、第一ストッパー44は、バット58(手元部)とティップ60(先端部)とを有している。バット58は主部38と連続しており、主部38から概して前向きに延びている。ティップ60はバット58に連続しており、このバット58から概して前向きに延びている。バット58は、第一側面62と第二側面64とを有している。第一側面62は、前後方向に対して傾斜している。具体的には、第一側面62は、後側(図5の下側)に向かうに従って、左側に向かっている。換言すれば、第一側面62は、前後方向において主部38に近づくに従って、左右方向においてガイド突起40から遠ざかっている。
【0032】
本実施形態では、第二側面64も前後方向に対して傾斜している。具体的には、第二側面64は、後側(図5の下側)に向かうに従って、左側に向かっている。換言すれば、第二側面64は、前後方向において主部38に近づくに従って、左右方向においてガイド突起40から遠ざかっている。
【0033】
図8において符号Sbは、バット58のうち最も右側の箇所Pbを通過する線分を表す。線分Sbは、前後方向に延びている。符号Stは、ティップ60のうち最も右側の箇所Ptを通過する線分を表す。線分Stは、前後方向に延びている。線分Stは、線分Sbよりも右側に位置している。符号Pcは、線分Stと主部38の輪郭との交点を表す。もし第一側面62が、傾斜することなく、線分Stに沿って前後方向に延在した場合、第一側面62は交点Pcに至る。この場合、第一ストッパー44の輪郭は、ガイド突起40の輪郭とオーバーラップする。本実施形態では、第一側面62の傾斜により、このオーバーラップが回避されている。
【0034】
このオーバーラップが回避されているので、ティップ60の左右方向位置の自由度は、高い。横ずれ抑制に対して適正な位置に、ティップ60が配置されうる。このクローラ10では、芯金18が横ずれを起こしにくい。
【0035】
図9に、芯金18の一部がさらに拡大されて示されている。図9において、矢印Hsは第一ストッパー44の高さを表し、矢印Hbはバット58の高さを表す。高さHsに対する高さHbの比(Hb/Hs)は、0.70以下が好ましい。この比(Hb/Hs)が0.70以下である第一ストッパー44は、強度に優れる。この観点から、この比(Hb/Hs)は0.65以下がより好ましく、0.60以下が特に好ましい。オーバーラップの回避の観点から、この比(Hb/Hs)は0.40以上が好ましい。
【0036】
図9において、矢印Wsは第一ストッパー44の幅を表し、矢印Lbは第一側面62の左右方向距離を表す。幅Wsは、後述される丸め(R2)を除いて測定される。幅Wsに対する距離Lbの比(Lb/Ws)は、0.40以下が好ましい。この比(Lb/Ws)が0.40以下である第一ストッパー44は、強度に優れる。この観点から、この比(Lb/Ws)は0.35以下がより好ましく、0.30以下が特に好ましい。オーバーラップの回避の観点から、この比(Lb/Ws)は0.10以上が好ましい。
【0037】
この芯金18は、主部38と第一側面62との間に丸めを有している。図9において矢印R1は、この丸めの曲率半径を表す。この曲率半径R1は、1.0mm以上が好ましい。曲率半径R1が1.0mm以上である芯金18は、強度に優れる。この観点から、曲率半径R1は2.0mm以上が好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。オーバーラップの回避の観点から、曲率半径R1は6.0mm以下が好ましい。
【0038】
この芯金18は、主部38と第二側面64との間に丸めを有している。図9において矢印R2は、この丸めの曲率半径を表す。この曲率半径R2は、2.0mm以上が好ましい。曲率半径R2が2.0mm以上である芯金18は、強度に優れる。この観点から、曲率半径R2は4.0mm以上が好ましく、5.0mm以上が特に好ましい。芯金18の軽量の観点から、曲率半径R2は10.0mm以下が好ましい。
【0039】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0040】
[項目1]
無端形状であって弾性を有するメインベルト
及び
上記メインベルトに埋設されており前後方向に沿って並ぶ複数の芯金
を備えており、
それぞれの芯金が、
主部、
上記主部から内向きに突出するガイド突起、
その内側表面にリセスを有する転輪走行レール
及び
上記主部から前向き又は後向きに突出する横ずれ防止ストッパー
を有しており、
上記芯金が内側から見られたときに、上記横ずれ防止ストッパーの輪郭が、上記ガイド突起の輪郭とオーバーラップしておらず、上記転輪走行レールの輪郭とオーバーラップしていない、弾性クローラ。
【0041】
[項目2]
上記横ずれ防止ストッパーが、上記主部に連続するバットと、このバットに連続するティップとを有しており、
上記バットの側面が、前後方向に対して傾斜しており、
上記側面の傾斜によって、上記横ずれ防止ストッパーの輪郭の、上記ガイド突起の輪郭、又は上記転輪走行レールの輪郭とのオーバーラップが、回避されている、項目1に記載の弾性クローラ。
【0042】
[項目3]
上記横ずれ防止ストッパーの高さHsに対する、上記バットの高さHbの比(Hb/Hs)が、0.70以下である、項目2に記載の弾性クローラ。
【0043】
[項目4]
上記横ずれ防止ストッパーの幅Wsに対する、上記側面の左右方向距離Lbの比(Lb/Ws)が、0.40以下である、項目2又は3に記載の弾性クローラ。
【0044】
[項目5]
上記芯金が上記主部と上記側面との境界に丸めを有しており、この丸めの曲率半径R1が1.0mm以上である、項目2から4のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0045】
[項目6]
主部、
上記主部から内向きに突出するガイド突起、
その内側表面にリセスを有する転輪走行レール
及び
上記主部から前向き又は後向きに突出する横ずれ防止ストッパー
を有しており、
内側から見られたときに、上記横ずれ防止ストッパーの輪郭が、上記ガイド突起の輪郭とオーバーラップしておらず、上記転輪走行レールの輪郭とオーバーラップしていない、弾性クローラ用の芯金。
【産業上の利用可能性】
【0046】
前述の弾性クローラは、種々の走行装置に適している。このクローラは特に、土木機械及び建設機械に適している。
【符号の説明】
【0047】
2・・・走行装置
4・・・駆動輪(スプロケット)
6・・・従動輪
8・・・転輪
10・・・弾性クローラ
14・・・メインベルト
16・・・ラグ
18・・・芯金
20・・・転輪ガイド
22・・・抗張体
24・・・内周面
26・・・外周面
28・・・外縁
30・・・係合孔
34a・・・第一転輪走行ゾーン
34b・・・第二転輪走行ゾーン
38・・・主部
40・・・ガイド突起
42・・・レール
44・・・第一ストッパー
46・・・第二ストッパー
52・・・リセス
54・・・54
56・・・コード
58・・・バット
60・・・ティップ
62・・・第一側面
64・・・第二側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9