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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069819
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】雄コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/26 20060101AFI20240515BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61M39/26
A61M39/10 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180042
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】工藤 辰也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 一樹
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC03
4C066JJ05
(57)【要約】
【課題】雌コネクタに対する挿抜に際して、カバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間の隙間の発生を抑えて、薬液等の漏出をより確実に防止することのできる、新規な構造の雄コネクタを提供する。
【解決手段】サイドホールニードル14に対してサイドホールニードル14を覆う弾性のカバー弁体54が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタ10であって、カバー弁体54における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面62とされており、突状面62では半径方向の中央Cよりも内周側部分の勾配αが外周側部分の勾配β以上とされていると共に、サイドホールニードル14における先端部分74が先端に向かって小径となる先細形状とされており、先端部分74において軸方向寸法Aが先端部分74の基端部77の半径寸法Bよりも大きくされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、
前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面では半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされていると共に、
前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分において軸方向寸法が該先端部分の基端部の半径寸法よりも大きくされている雄コネクタ。
【請求項2】
前記カバー弁体の前記先端面の頂点部分が先端に向かって凸となる湾曲状先端面とされている一方、
該頂点部分から外周に向けて広がる領域が先端に向かって凹となる逆湾曲状傾斜面とされている請求項1に記載の雄コネクタ。
【請求項3】
前記サイドホールニードルにおける前記先端部分が、先端側に向かって外径寸法が次第に小さくなる円錐形状の部分を有している請求項1又は2に記載の雄コネクタ。
【請求項4】
前記サイドホールニードルの突出先端が半球状の湾曲面とされている請求項1又は2に記載の雄コネクタ。
【請求項5】
前記カバー弁体における前記突状面の傾斜角度に比べて、前記サイドホールニードルにおける前記先端部分の傾斜角度の方が大きくされている請求項1又は2に記載の雄コネクタ。
【請求項6】
サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、
前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面では半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされていると共に、
前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分が一定のテーパ角度とされたテーパ部を有している雄コネクタ。
【請求項7】
サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、
前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面の中間部分が、頂点を含む円弧状の先端部と裾側基端部とに接する仮想的な接触直線に対して同じか内方に位置していると共に、
前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分が、頂点を含む円弧状の先端部から次第に拡径して基端側に向かう外周面において該サイドホールニードルの該先端部の曲率半径よりも大きな曲率半径の傾斜面を有している雄コネクタ。
【請求項8】
サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、
前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分において軸方向寸法が該先端部分の基端部の半径寸法よりも大きくされている一方、
前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされていると共に、
前記サイドホールニードルの外周面の延長線の領域内では、該カバー弁体の該先端面が頂点を含む円弧状の先端部から外周側に向かって母線が外方に膨らまない円錐形状をもって広がっている雄コネクタ。
【請求項9】
サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、
前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面では半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされていると共に、
前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分が、頂点を含む円弧状の先端部から次第に拡径して基端側に向かう外周面において、該先端部に接して該先端部分の基端部に至る仮想的な直線に対して該直線と同じか内方に位置する傾斜面を有している雄コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に用いられる流体流路において雌コネクタに接続される雄コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野では、水分や電解質、抗がん剤などの薬液、栄養素、血液、造影剤などの液体を投与または採取するために、輸液ラインや輸血ラインなどの流体流路が用いられている。かかる流体流路では、必要に応じて別の流体流路を接続するために、一方の流路の端部に雄コネクタを設けると共に、他方の流路の端部に雌コネクタを設けて、これら雄コネクタと雌コネクタとが相互に接続するようにされる。
【0003】
具体的には、例えば抗がん剤などの薬液が封入されたシリンジなどの容器から延びる流路の端部に中空針や雄ルアーを備える雄コネクタを設ける一方、患者に挿入されたカテーテルなどからなる流路の端部に雌コネクタを設けることで、雄コネクタの雌コネクタへの着脱により流体流路の接続と遮断が実現可能とされる。
【0004】
ところで、雄コネクタでは、雌コネクタへの非接続時に薬液などの外部への暴露や漏出を防止するために、流路の開口が閉鎖されることが好ましい。このような雄コネクタが、例えば特許第6962923号公報(特許文献1)に示されている。特許文献1に記載の雄コネクタは、サイドホールニードルと、軸方向で移動可能に設けられてサイドホールニードルを覆うことができる弾性のカバー弁体とを備えている。
【0005】
そして、特許文献1の雄コネクタでは、サイドホールニードルを、貫通性能を重視して先鋭形状とする一方、カバー弁体の先端面の全体を外方に膨らんだ湾曲面として、雌コネクタのディスク弁に対して強く押し付けることができるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6962923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載の如き従来の雄コネクタでは、薬液等の外部への漏出防止効果が未だ充分でないことが判った。即ち、雄コネクタを雌コネクタへ接続するに際して、サイドホールニードルをカバー弁体からディスク弁に挿し入れる時に、カバー弁体とディスク弁の重ね合わせ面に隙間ができやすく、この隙間に滞留した薬液が、雄コネクタにおける雌コネクタからの離脱時に外部へ漏れるおそれのあることが新たに判った。
【0008】
本発明の解決課題は、雌コネクタに対する挿抜に際して、カバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間の隙間の発生を抑えて、薬液等の漏出をより確実に防止することのできる、新規な構造の雄コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第1の態様は、サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面では半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされていると共に、前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分において軸方向寸法が該先端部分の基端部の半径寸法よりも大きくされているものである。
【0011】
本態様の雄コネクタは、(i)特定形状の先端面を有するカバー弁体と、(ii)特定形状の先端部分を有するサイドホールニードルとを組み合わせた構成を有している。そして、上記(ii)のサイドホールニードルにおける特定形状の先端部分により、サイドホールニードルがカバー弁体を貫通して突出する際におけるカバー弁体の大きな変形を抑えつつ、上記(i)においてカバー弁体における先端面を特定形状とすることにより、サイドホールニードルがディスク弁を貫通してディスク弁が変形する際に、カバー弁体における先端面形状とディスク弁の変形形状とが相互に近似して重ね合わされるようにした。その結果、雄コネクタと雌コネクタとを接続する場合に、カバー弁体及びディスク弁にサイドホールニードルを挿入するに際して、カバー弁体及びディスク弁の重ね合わせ面間の隙間、ひいては当該隙間における薬液の滞留を抑えることができて、雄コネクタを雌コネクタから離脱させる際の薬液等の漏れを効果的に防止することができる。
【0012】
特に、前記特許文献1では、雄コネクタのカバー弁体における先端面の略全体を凸状の湾曲面として、雄コネクタと雌コネクタとの接続時に、カバー弁体の先端面をディスク弁に積極的に押し付けることによって、カバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間における隙間の発生防止を図っていたが、本態様では、基本的な考え方を異にし、上記(ii)によってカバー弁体の変形を抑えつつ、サイドホールニードルの挿通時におけるディスク弁の変形を予想して、上記(i)によってカバー弁体の先端面をディスク弁の変形形状に対応する形状とした。このように、カバー弁体の先端面をディスク弁の変形形状に対応させることで、雄コネクタと雌コネクタとの接続時に、ディスク弁が部分的に強く押圧されてカバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間で意図しない隙間が生じることが防止されると共に、カバー弁体とディスク弁とを比較的小さい押圧力によって相互の面を沿わせるように重ね合わせることができて、カバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間における隙間の発生を効果的に防止することができる。
【0013】
第2の態様は、前記第1の態様に係る雄コネクタにおいて、前記カバー弁体の前記先端面の頂点部分が先端に向かって凸となる湾曲状先端面とされている一方、該頂点部分から外周に向けて広がる領域が先端に向かって凹となる逆湾曲状傾斜面とされているものである。
【0014】
本態様の雄コネクタによれば、カバー弁体の先端面のうち頂点部分から外周に向けて広がる領域が逆湾曲状傾斜面とされていることにより、雌コネクタへの接続状態において、変形した雌コネクタ側のディスク弁表面に一層近似した形状となる。その結果、サイドホールニードル挿通時におけるカバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間に生じる隙間を小さくして密着性を向上することができて、例えばかかる隙間に起因する薬液等の漏れをより効果的に抑えることができる。
【0015】
第3の態様は、前記第1又は2の態様に係る雄コネクタにおいて、前記サイドホールニードルにおける前記先端部分が、先端側に向かって外径寸法が次第に小さくなる円錐形状の部分を有しているものである。
【0016】
本態様の雄コネクタによれば、サイドホールニードルの先端部分が傾斜角度が略一定とされた円錐形状の部分を有することで、サイドホールニードルの先端部分が雄コネクタのカバー弁体や雌コネクタのディスク弁を押し開く際に、スムーズに押し開くことができる。
【0017】
第4の態様は、前記第1~3の何れかの態様に係る雄コネクタにおいて、前記サイドホールニードルの突出先端が半球状の湾曲面とされているものである。
【0018】
本態様の雄コネクタによれば、例えば意図せず雄コネクタのカバー弁体を基端側へ押し込んでサイドホールニードルの先端がカバー弁体を貫通して露出する際にも、サイドホールニードルの先端が作業者の手指等に穿刺されることが防止される。また、前記特許文献1のようにサイドホールニードルの突出先端が先鋭形状とされた場合に比べて、サイドホールニードルを押し込んで雄コネクタのカバー弁体を押し広げる際に、カバー弁体の先端面における変形領域を分散させることができることから、サイドホールニードルの押込時におけるカバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間における局所的な隙間の発生と、それに起因する薬液漏れも回避することができる。
【0019】
第5の態様は、前記第1~4の何れかの態様に係る雄コネクタにおいて、前記カバー弁体における前記突状面の傾斜角度に比べて、前記サイドホールニードルにおける前記先端部分の傾斜角度の方が大きくされているものである。
【0020】
本態様の雄コネクタによれば、カバー弁体における突状面の傾斜角度よりもサイドホールニードルの先端部分の傾斜角度を大きくすることで、サイドホールニードルの挿通に伴うカバー弁体及びディスク弁の変形を一層抑えることができて、予定されるディスク弁の変形を考慮したカバー弁体の突出部分と変形したディスク弁との重ね合わせ面間における隙間の発生、ひいてはそれに起因する薬液等の漏れを、想定通りに一層精度良く防止することが可能になる。
【0021】
第6の態様は、サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面では半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされていると共に、前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分が一定のテーパ角度とされたテーパ部を有しているものである。
【0022】
本態様の雄コネクタによれば、サイドホールニードルにおける先端部分が一定のテーパ角度とされたテーパ部を有していることから、サイドホールニードルがカバー弁体及びディスク弁に挿通されて、これらカバー弁体及びディスク弁を押し開く際にカバー弁体及びディスク弁をスムーズに変形させることができる。特に、サイドホールニードルの先端部分が先細で且つテーパ部を備える形状とされることで、ディスク弁においてサイドホールニードルの挿通時に、挿通方向へ押し込まれるように変形する変形量を小さく抑えることもできて、これにより、カバー弁体とディスク弁との間における隙間の発生を抑制することができる。
【0023】
第7の態様は、サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面の中間部分が、頂点を含む円弧状の先端部と裾側基端部とに接する仮想的な接触直線に対して同じか内方に位置していると共に、前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分が、頂点を含む円弧状の先端部から次第に拡径して基端側に向かう外周面において該サイドホールニードルの該先端部の曲率半径よりも大きな曲率半径の傾斜面を有しているものである。
【0024】
本態様の雄コネクタによれば、サイドホールニードルの先端部分が、円弧状とされた先端部よりも大きな曲率半径の傾斜面を有していることから、サイドホールニードルの先端部分は、先端形状が略半球状とされる場合に比して、より大きい軸方向寸法を有して先端側に突出している。そして、かかるサイドホールニードルと上記の如き特定の形状とされた突状面を有するカバー弁体とが組み合わされて採用されることで、カバー弁体及びディスク弁にサイドホールニードルが挿通された際において、カバー弁体とディスク弁との間に隙間が発生することが防止され得る。なお、サイドホールニードルの先端部分において、先端部から次第に拡径して基端側に向かう外周面の曲率半径は非常に大きくされて実質的に略直線状であってもよく、当該略直線状とされた外周面は、先端部の円弧における外周端(基端)から接線方向に延びていることが好ましい。
【0025】
第8の態様は、サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分において軸方向寸法が該先端部分の基端部の半径寸法よりも大きくされている一方、前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされていると共に、前記サイドホールニードルの外周面の延長線の領域内では、該カバー弁体の該先端面が頂点を含む円弧状の先端部から外周側に向かって母線が外方に膨らまない円錐形状をもって広がっているものである。
【0026】
本発明者は、カバー弁体における先端面において、特に、サイドホールニードルの外周面の延長線の領域内が、サイドホールニードルの挿通時における隙間の発生の抑制に寄与することを見出し、当該領域を、母線が外方に膨らまない円錐形状とした。この結果、本態様の雄コネクタによれば、上記の特定形状の先端面を有するカバー弁体と、上記の特定形状のサイドホールニードルとを組み合わせて採用することで、カバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間における隙間の発生が効果的に抑制される。なお、カバー弁体における上記領域においては母線が外方に膨らまない円錐形状であればよく、例えば中心軸を含む縦断面において、母線は直線状であってもよいし、又は外方に凹となる湾曲形状であってもよい。
【0027】
第9の態様は、サイドホールニードルに対して該サイドホールニードルを覆う弾性のカバー弁体が軸方向で移動可能に設けられた雄コネクタであって、前記カバー弁体における先端面が軸方向外方に向かって突出する略山形の突状面とされており、該突状面では半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされていると共に、前記サイドホールニードルにおける先端部分が先端に向かって小径となる先細形状とされており、該先端部分が、頂点を含む円弧状の先端部から次第に拡径して基端側に向かう外周面において、該先端部に接して該先端部分の基端部に至る仮想的な直線に対して該直線と同じか内方に位置する傾斜面を有しているである。
【0028】
本態様の雄コネクタによれば、サイドホールニードルの先端部が円弧状とされることで、サイドホールニードルの挿通時においてカバー弁体及びディスク弁がスムーズに押し開かれ得る。特に、サイドホールニードルの先端部分における外周面が、中心軸を含む縦断面において、仮想的な直線と同じか内方に位置する傾斜面を有していることから、サイドホールニードルの先端部分の形状は、例えば半球状のような外方へ膨らむような形状ではなく、比較的先鋭な形状とされる。この結果、サイドホールニードルの挿通時において、ディスク弁の挿通方向への押込みが可及的に抑制されて、ディスク弁とカバー弁体との重ね合わせ面間における隙間の発生が防止される。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る雄コネクタによれば、雌コネクタに対する挿抜に際して、カバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間の隙間の発生を抑えて、薬液等の漏出をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の1実施形態としての雄コネクタを示す斜視図
図2図1に示された雄コネクタにおける縦断面斜視図
図3】(a)は図1に示された雄コネクタにおける縦断面図であって、(b)~(d)は何れも(a)における要部を拡大して示す縦断面図
図4図1に示された雄コネクタを構成するサイドホールニードルの要部を拡大して示す図であって、(a)が平面図、(b)が縦断面図
図5図1に示された雄コネクタと接続し得る雌コネクタの具体的一例を示す縦断面図
図6図1に示された雄コネクタと図5に示された雌コネクタとの接続状態を示す縦断面図であって、接続途中の状態の図
図7図1に示された雄コネクタと図5に示された雌コネクタとの接続状態を示す縦断面図であって、接続完了の状態の図
図8】実施例として図1に示された雄コネクタの試作品による雌コネクタとの接続操作状態を示す縦断面のX線写真であって、接続途中の状態を示す図6に対応する図
図9】実施例として図1に示された雄コネクタの試作品による雌コネクタと接続操作状態を示す縦断面のX線写真であって、接続完了の状態を示す図7に対応する図
図10】比較例としての雄コネクタ製品について図8,9と同じ雌コネクタへの接続操作状態を示す縦断面のX線写真であって、接続途中の状態を示す図8に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
先ず、図1~3には、本発明の1実施形態としての雄コネクタ10が示されている。この雄コネクタ10は、側方に開口部12を有するサイドホールニードル14を備えており、当該サイドホールニードル14が接続相手方である雌コネクタ16(後述する図5参照)に挿入されることで、雄コネクタ10と雌コネクタ16とが接続されて流体流路が連通状態とされるようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、サイドホールニードル14の中心軸方向となる図3中の左右方向をいう。また、先端側とは、サイドホールニードル14において開口部12が設けられる側である図3中の左側をいう一方、基端側とは、サイドホールニードル14が固定される側である図3中の右側をいう。
【0033】
より詳細には、雄コネクタ10は、サイドホールニードル14を支持すると共に外側から覆う雄コネクタハウジング18を有している。本実施形態の雄コネクタハウジング18は、何れも硬質の合成樹脂により形成された、先端側の筒状周壁部20と、基端側の針ハブ22とが、相互に連結された構造となっている。
【0034】
筒状周壁部20は全体として略筒形状を有しており、基端部分において、針ハブ22の先端部分に外挿状態で連結される連結筒部を備えている。この連結筒部の周壁には、針ハブ22に対する周方向位置決め用の位置決め凹部26と、針ハブ22に対する連結用の連結孔である貫通窓24が形成されている。なお、本実施形態では、これら位置決め凹部26と貫通窓24の各一対が、相互に直交する径方向で対向位置して設けられている。
【0035】
また、筒状周壁部20の外周面には、手指での操作感を考慮して、長さ方向に延びる凹みが周上で複数箇所に設けられて、指先の不用意な滑りを抑える凹凸が付されている。更に、筒状周壁部20の内周面には、針ハブ22から先端側に延びる長さ方向の中間部分に位置して、略矩形断面をもって長さ方向に延びる内周溝部28が形成されている。かかる内周溝部28は、周方向に所定間隔を隔てて複数本(本実施形態では周方向に等間隔で4本)形成されている。
【0036】
さらに、筒状周壁部20の先端部分には、内周面に雌ねじ部32が形成されている。この雌ねじ部32は、接続相手方である雌コネクタ16における後述する雄ねじ部100と螺合可能とされている。なお、雌ねじ部32と前記内周溝部28との軸方向間には、筒状周壁部20の内周面に突出して周方向に延びる環状の内周突部30が設けられている。
【0037】
一方、針ハブ22は、外部流路の雄ルアーロック等が接続される雌ルアー部34とサイドホールニードル14の基端側に外挿固着された針ハブ部36とを一体的に備える形状とされている。これら雌ルアー部34と針ハブ部36とは何れも略筒状とされており、大径の雌ルアー部34の先端から小径の針ハブ部36が、同一中心軸上に延び出している。なお、針ハブ部36の基端側には、先端側に向かって開口する環状凹部38が、針ハブ部36の周囲に形成されている。また、雌ルアー部34には、雄ルアーが差し入れられる雌ルアー孔(基端側開口部)40があり、雌ルアー孔40の先端側は小径化されて、針ハブ部36においてサイドホールニードル14が挿し入れられる内孔につながっている。
【0038】
また、雌ルアー部34において、雌ルアー部34と針ハブ部36との間に位置する軸方向中間部分は、外径寸法が大きな大径部とされており、この大径部に対して、上述の筒状周壁部20の基端側連結筒部が、先端側から外挿されて連結されている。なお、雌ルアー部34の外周面には、基端側の外周面に位置して外部流路の雄ルアーロックが螺合される雄ねじ部42が形成されていると共に、軸方向中間の大径部の外周面には、上述の筒状周壁部20の基端側連結筒部における貫通窓24と位置決め凹部26に各対応する位置に、係合突部44と位置決め凸部46が形成されている。そして、これら係合突部44と位置決め凸部46が貫通窓24と位置決め凹部26に嵌まり合うことで、筒状周壁部20と針ハブ22とが相互に固定的に連結されるようになっている。
【0039】
さらに、サイドホールニードル14を保持する針ハブ部36は、その内径寸法がサイドホールニードル14の外径寸法と略等しいか僅かに大きくされている。これにより、針ハブ部36の先端側開口部からサイドホールニードル14の基端部分が挿入されて、必要に応じて接着や溶着により固着されることで、サイドホールニードル14の基端部分が、針ハブ部36、ひいては雄コネクタハウジング18によって固定支持されるようになっている。このようにサイドホールニードル14が針ハブ部36によって固定支持されることで、雌ルアー部34の内孔が、サイドホールニードル14における後述する内孔72に連通されるようになっている。
【0040】
また、本実施形態の雄コネクタハウジング18における筒状周壁部20には、後述するカバー弁体54がサイドホールニードル14における開口部12を覆った状態において、カバー弁体54を拘束して開き方向の変形を抑制する拘束部材48が組み付けられている。拘束部材48は全体として略筒状とされており、硬質の合成樹脂により形成されている。拘束部材48の先端には、内周側に突出する環状の押え突部50が設けられていると共に、基端には、外周側に突出する外周突部52が設けられている。この外周突部52は、内周溝部28と略対応する大きさの矩形ブロック状の突部とされている。本実施形態では、4つの外周突部52が設けられており、各外周突部52が、各内周溝部28と周方向で対向する位置、即ち周方向で略等間隔(略90度毎)に形成されている。かかる拘束部材48における内部空間の特に先端部分が、サイドホールニードル14を覆って開口部12を閉塞可能なカバー弁体54の収容空間56とされている。
【0041】
かかる拘束部材48は、各外周突部52と各内周溝部28とが周方向で位置合わせされた状態で筒状周壁部20の基端側開口部から挿入されており、各内周溝部28に沿って拘束部材48が軸方向で移動可能とされている。拘束部材48の先端側への移動端は、各外周突部52と筒状周壁部20における内周突部30とが相互に当接することによって規定される。即ち、拘束部材48及びカバー弁体54は、サイドホールニードル14に対して、雄コネクタハウジング18(筒状周壁部20及び針ハブ22)を介して軸方向で移動可能に設けられている。
【0042】
本実施形態のカバー弁体54は、全体として中実の円柱形状又は円板形状(ディスク状)とされており、ゴムやエラストマ等の弾性体から構成されている。このカバー弁体54における基端側端面の略中央には、先端側に延びる挿入凹部58が形成されている。この挿入凹部58は、後述するサイドホールニードル14の先端側においてある程度の軸方向寸法を有する領域の形状に略対応してサイドホールニードル14の外径よりも小さな内径で延びる円形穴形状とされており、基端側の開口部から軸方向に直線状に延びている。また、挿入凹部58の先端側はテーパ状に小径化されており、カバー弁体54を貫通せずに、挿入凹部58の先端(底面)が、カバー弁体54の軸方向の中間部分に位置している。
【0043】
さらに、カバー弁体54において、挿入凹部58の底面(最深部)からは、先端側に延びて軸方向で貫通するスリット60が形成されている。このスリット60の形状は、一文字状スリットや放射状スリット、ピン孔状スリットなど具体的に限定されるものではないが、雄コネクタ10と雌コネクタ16との非接続状態には、カバー弁体54の弾性で閉鎖状態に保持されるようになっている。
【0044】
ここにおいて、カバー弁体54における先端面は、軸方向外方(先端側)に向かって突出する略山形の突状面62を含んで構成されている。この突状面62は、サイドホールニードル14が挿通されて変形させられた後の雌コネクタ16における後述するディスク弁94の形状を考慮して、外周部分よりも中央部分において先端側に突出する中央突出形状とされており、全体として中心軸回りの略回転対称形状となる略山形の突状面62とされている。
【0045】
具体的には、突状面62において半径方向の中央よりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされている。なお、突状面62の勾配は、平均の傾斜角度(即ち、図3に示される中心軸を含む縦断面において、中心軸の直交平面に対する斜面の交角)として解釈することもできる。要するに、突状面62において半径方向の中央C(図3(b)参照)よりも内周側部分の勾配は、突状面62における頂点63と半径方向の中央C上の点P1とを繋ぐ直線を想定した場合、当該直線が軸直角方向に対する傾斜角度αを有している。また、突状面62において半径方向の中央Cよりも外周側部分の勾配は、突状面62における半径方向の中央C上の点P1と外周端部P2とを繋ぐ直線を想定した場合、当該直線が軸直角方向に対する傾斜角度βを有している。そして、突状面62における内周側部分の傾斜角度αが、外周側部分の傾斜角度β以上とされている。
【0046】
突状面62における内周側部分の傾斜角度αは、15度~45度の範囲内で設定されることが好適であり、より好適には、25度~35度の範囲内で設定される。また、突状面62における外周側部分の傾斜角度βは、5度~30度の範囲内で設定されることが好適であり、より好適には、15度~25度の範囲内で設定される。なお、突状面62における内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上であることから、α≧βである。突状面62における内周側部分の傾斜角度α及び外周側部分の傾斜角度βが上記範囲内に設定されることにより、後述するように、サイドホールニードル14の挿抜時に、突状面62の形状をディスク弁94の変形形状に、より対応するものとすることができる。なお、突状面62における内周側部分の勾配(傾斜角度α)と外周側部分の勾配(傾斜角度β)とは同一とされて突状面62が裾部から頂部まで略直線状の傾斜面とされてもよいが、突状面62は、好ましくは外方に向かって凹となる(即ち、曲率中心が突状面62よりも先端側に位置する)ように湾曲した傾斜面とされる。なお、突状面62の頂点部分61(頂点63を突出先端としたある程度の軸方向寸法にわたる領域)は、成形上の理由や部材の耐久性や形状安定性等の理由から小さな曲率半径の略半球形状とされた湾曲頂点とされてもよい。この場合には、湾曲頂点の部分を除いて、突状面62における内周側部分の勾配(傾斜角度α)が、外周側部分の勾配(傾斜角度β)以上に設定される。本実施形態では、後述するように、突状面62の頂点部分61が湾曲頂点とされて湾曲状先端面64が設けられることから、突状面62における内周側部分の勾配(傾斜角度α)は、湾曲頂点を除いた突状面62の内周端部(即ち、湾曲状先端面64の外周端部)P3と半径方向の中央C上の点P1とを繋ぐ直線を想定した際における当該直線の軸直角方向に対する傾斜角度である。
【0047】
本実施形態では、図3に示されているように、カバー弁体54における山形の先端面(突状面62)の頂点部分61となる中央部分には、曲率中心が突状面62よりも基端側に設定されることで先端側に向かって凸となる湾曲状先端面64が設けられている。また、かかる頂点部分61から外周に向けて広がる領域には、曲率中心が突状面62によりも先端側に設定されることで先端側に向かって凹となる逆湾曲状傾斜面66が設けられている。なお、これら湾曲状先端面64及び逆湾曲状傾斜面66の曲率は一定とされる必要はなく、これらの曲率は、軸方向で次第に変化するようになっていてもよい。また、山形の突状面62は、全体にわたって折れ点がなく滑らかに繋がった表面形状とされることが望ましく、湾曲状先端面64と逆湾曲状傾斜面66の両湾曲面も共通接線をもって滑らかに接続されていることが望ましい。特に、本実施形態では、上述の突状面62における半径方向の中央Cが、逆湾曲状傾斜面66上に位置している。
【0048】
また、突状面62において、別の観点からの特徴を、図3(c),(d)を示して説明する。本実施形態では、図3(c)に示されるようにカバー弁体54の挿入凹部58にサイドホールニードル14が挿入されてカバー弁体54とサイドホールニードル14とが同軸的に配置される状態で、中心軸を含む縦断面において、突状面62のうち、サイドホールニードル14の外周面、特に軸方向に延びる後述するストレート部76の延長線Dの領域内は、母線が外方に膨らまない略円錐形状とされている。換言すれば、カバー弁体54において図3(c)における上下の直線D,Dで挟まれた領域Tが略円錐形状とされており、突状面62のうち当該領域Tの先端面に相当する部分が、先端側に向かって次第に縮径する先細面67とされている。
【0049】
なお、本実施形態では、カバー弁体54の頂点部分61に湾曲状先端面64が設けられており、略円錐形状とされた先細面67の母線が、頂点63を含む円弧状の先端部(即ち、湾曲状先端面64を有する頂点部分61)から外周側に向かって広がっている。なお、先細面67の母線は外方に膨らまないことが好適であり、例えば外方に凹となる湾曲面であってもよいし、折れ点(屈曲点)を含んで構成されてもよいし、直線状の傾斜面により構成されていてもよい。更に、カバー弁体54において、領域Tより外周側の外周部分Oの形状は限定されるものではなく、例えば突状面62のうち外周部分Oの先端面に相当する環状の部分は、図3(c)の縦断面において外方に凸や凹となる湾曲形状であってもよいし、直線状であってもよいが、突状面62は、全体として先端側に突出する略山形とされる。
【0050】
また、突状面62は、頂点63を含む円弧状の先端部(頂点部分61)と裾側基端部とに接する仮想的な接触直線L1に対して同じか内方に位置する中間部分Mを有している。特に、本実施形態では、図3(d)に示されるように、突状面62が、仮想的な接触直線L1に対して内方に位置する中間部分Mを有している。また、本実施形態では、突状面62の裾側基端部において面取り状の曲面が設けられており、接触直線L1は、湾曲状先端面64上の点Q1と裾側基端部における曲面上の点Q2とに接触している。なお、突状面62の中間部分Mは接触直線L1上に位置していてもよく、即ちカバー弁体54は、中心軸を含む縦断面において、湾曲状先端面64上の点Q1と裾側基端部における曲面上の点Q2とを直線状に繋ぐような先端面(突状面62)を有していてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態のカバー弁体54の外周面は、突状面62の外周端部から基端側に向かって延びる略円筒形状とされている。特に、本実施形態では、カバー弁体54の先端部分において径方向に広がる環状の段差面68が形成されており、段差面68よりも先端側が小径の先端側外周面とされていると共に、段差面68よりも基端側が大径の基端側外周面とされている。これにより、カバー弁体54の外周面は、略段付きの円筒形状とされている。
【0052】
かかるカバー弁体54の外径寸法(基端側外周面における外径寸法)は、拘束部材48の内径寸法と略等しいか僅かに大きくされることが好適であり、カバー弁体54と拘束部材48とが組み付けられた際に、カバー弁体54が拘束部材48の内周面により径方向で僅かに圧縮されることが好ましい。また、前述のように、カバー弁体54における挿入凹部58の内径寸法は、サイドホールニードル14の外径寸法と略等しいか僅かに小さくされることが好適であり、サイドホールニードル14がカバー弁体54に挿入された際に、サイドホールニードル14の先端側においてある程度の軸方向寸法を有する領域に対して挿入凹部58の内周面が押し付けられるようになっている。なお、カバー弁体54の外周面に環状の凸部を設けて、拘束部材48の内周面により径方向で僅かに圧縮されるようになっていてもよい。かかる環状の圧縮は、例えばサイドホールニードル14における開口部12よりも先端側と基端側で特に強く生じるようになっていてもよい。
【0053】
そして、このカバー弁体54が拘束部材48における基端側開口部から挿入されて収容空間56内に配置されることにより、カバー弁体54と拘束部材48とが組み付けられている。なお、拘束部材48に対するカバー弁体54の軸方向位置は、拘束部材48の先端部において内周側に突出する押え突部50とカバー弁体54の外周面における段差面68とが相互に当接することで規定される。図1~3に示されるように、カバー弁体54が収容空間56内に配置されて押え突部50と段差面68とが当接した状態では、カバー弁体54において突状面62を有して山形に突出する部分が、拘束部材48よりも先端側に突出している。
【0054】
さらに、かかる拘束部材48とカバー弁体54との組付体が、付勢部材であるコイルスプリング70により、針ハブ22に対して先端側に付勢されている。このコイルスプリング70はサイドホールニードル14に外挿されており、具体的には、サイドホールニードル14を固定支持する針ハブ部36に外挿されている。そして、コイルスプリング70の基端部分が針ハブ22における環状凹部38に収容されており、コイルスプリング70の基端が環状凹部38の底面に固着されている。また、コイルスプリング70の先端は、カバー弁体54の基端面における外周部分に固着されている。図1~3に示される、雌コネクタ16に接続される前の初期状態では、コイルスプリング70が略自然長か圧縮された状態とされており、拘束部材48及びカバー弁体54が、コイルスプリング70により針ハブ22に対して先端側に付勢されている。そして、かかるコイルスプリング70における付勢力に抗してコイルスプリング70を軸方向で圧縮することで、拘束部材48及びカバー弁体54が、筒状周壁部20に沿って針ハブ22に対して接近して基端側に変位可能とされている。
【0055】
そして、上記のような雄コネクタハウジング18において固定支持されるサイドホールニードル14は、ステンレス鋼などの金属や硬質の合成樹脂により形成された中空針であり、中心軸方向に延びる内孔72を有している。このサイドホールニードル14の先端は閉塞されており、サイドホールニードル14の先端側の部分において、軸直角方向(側方)に開口する開口部12が設けられている。かかる開口部12を通じて、サイドホールニードル14の内孔72が外部空間に連通されている。本実施形態では、サイドホールニードル14における先端側の部分において径方向の両側(図3中の上下方向両側)に、一対の開口部12,12が設けられている。
【0056】
ここにおいて、図4に示されるように、本実施形態のサイドホールニードル14は全体としてペンシル形状とされており、サイドホールニードル14の先端部分74が、先端に向かって次第に小径となる先細形状とされている。そして、サイドホールニードル14において先細形状とされた先端部分74よりも基端側の部分は軸方向に略ストレートに延びるストレート部76とされており、ストレート部76の先端部に上述の一対の開口部12,12が設けられている。換言すれば、先細形状とされた先端部分74に対して基端側に略隣接して、一対の開口部12,12が設けられている。また、ストレート部76における各開口部12が設けられている側の端部から、先端に向かって次第に小径となる先細形状の先端部分74が突出して設けられている。
【0057】
この先端部分74の軸方向寸法A(図4(a)参照)は、先端部分74において最も外径寸法が大きくされた基端部77における半径寸法B(図4(a)参照)よりも大きくされている。即ち、先端部分74は、図4(a)中に二点鎖線で図示するようにストレート部76の先端に略半球状の突出部(当該突出部の軸方向寸法は半径寸法であるB)が設けられる場合に比して、より先端側に突出している。
【0058】
特に、本実施形態の先端部分74は、先端側に向かって外径寸法が次第に小さくなる略円錐形状のテーパ部78と、サイドホールニードル14の突出先端を閉塞する先端部としての半球状部80とを含んで構成されている。即ち、テーパ部78の先端側に半球状部80が連続して設けられており、サイドホールニードル14の突出先端が半球状の湾曲面82により構成されている。そして、これらテーパ部78におけるテーパ状の外周面83と半球状部80の外周面である湾曲面82とは、段差や折れ点等がなく相互に接線方向で滑らかに連続してつながっていることが望ましい。このテーパ部78は、軸方向に対して略一定のテーパ角度を有している。
【0059】
また、本実施形態では、カバー弁体54において山形に突出する部分(即ち、突状面62)における軸直角方向に対する傾斜角度γに比して、サイドホールニードル14において先端側に突出する先端部分74における軸直角方向に対する傾斜角度δの方が大きくされている。なお、突状面62における軸直角方向に対する傾斜角度γとは、突状面62の外周端部P2と頂点63とを繋ぐ直線との平均の傾斜角度のことをいう。なお、本実施形態では、突状面62の中央に湾曲頂点(湾曲状先端面64)が設けられていることから、突状面62における傾斜角度γとは、外周端部P2と突状面62から湾曲頂点(湾曲状先端面64)を除いた部分の内周端部(即ち、湾曲状先端面64の外周端部)P3とを繋ぐ直線の平均の傾斜角度のことをいう。同様に、サイドホールニードル14の先端部分74における軸直角方向に対する傾斜角度δとは、先端部分74(テーパ部78)の外周端部P4と頂点84とを繋ぐ直線の平均の傾斜角度のことをいう。なお、本実施形態では、先端部分74の突出先端(頂点部分)に半球状部80(湾曲面82)が設けられていることから、先端部分74における傾斜角度δとは、外周端部P4と半球状部80(湾曲面82)を除いた部分の内周端部(即ち、湾曲面82の外周端部又はテーパ部78の内周端部)P5とを繋ぐ直線の平均の傾斜角度のことをいう。
【0060】
具体的には、カバー弁体54における突出部分の傾斜角度γは、10度~40度の範囲内で設定されることが好適であり、より好適には、22度~28度の範囲内で設定される。また、サイドホールニードル14における先端部分74の傾斜角度δは、70度~80度の範囲内で設定されることが好適であり、より好適には、74度~78度の範囲内で設定される。カバー弁体54における突出部分の傾斜角度γ及びサイドホールニードル14における先端部分74の傾斜角度δが上記範囲内に設定されることにより、後述するように、サイドホールニードル14の挿抜時に、突状面62の形状をディスク弁94の変形形状に、より対応するものとすることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、先端部分74にテーパ部78が設けられており、図3に示す中心軸を含む縦断面においてテーパ部78の外周面83が直線状に傾斜していたが、例えば先端部分の外周面は軸方向で傾斜角度が、次第に又は段階的に異ならされてもよい。或いは、先端部分の外周面は、図3に示す縦断面において全体的に又は部分的に湾曲していてもよく、外周面が湾曲する場合にも、外方に向かって凸形状(曲率中心が先端部分の内部に位置する)とされてもよいし、外方に向かって凹形状(曲率中心が先端部分の外部に位置する)とされてもよい。
【0062】
また、サイドホールニードル14の先端部分74において、別の観点からの特徴を以下に説明する。本実施形態では、サイドホールニードル14の先端部分74が、頂点84を含む円弧状の先端部(半球状部80)から次第に拡径して基端側に向かう外周面において、先端部(半球状部80)の曲率半径よりも大きな曲率半径の傾斜面を有しており、特に本実施形態では、図4(b)にも示されるように、中心軸を含む縦断面において、先端部分74におけるテーパ部78の外周面83が、非常に大きな曲率半径を有する略直線状とされている。そして、かかる略直線状とされたテーパ部78の外周面83が、先端部(半球状部80)の外周端部(基端部)から円弧(湾曲面82)における接線方向に延出している。なお、前述のように、テーパ部78の外周面83は、外方に向かって凸、又は外方に向かって凹となる湾曲面であってもよいが、何れの場合であっても、テーパ部の外周面が、先端部(半球状部80)の曲率半径よりも大きな曲率半径を有することが好ましい。
【0063】
なお、図4(b)に示されるように、かかる先端部分74の外周面は、中心軸を含む縦断面において、頂点84を含む円弧状の先端部(半球状部80)から基端部77に至る仮想的な直線L2に対して、当該直線L2と同じか内方に位置する傾斜面を有している。具体的には、先端部分74の外周面は、湾曲面82の外周端部P5と先端部分74の基端部77(先端部分74の外周端部)P4とを繋ぐ仮想的な直線L2と同じか内方に位置する傾斜面を有しており、本実施形態では、テーパ部78の外周面83が直線L2上に位置している。即ち、前述のように、先端部分の外周面は、軸方向で傾斜角度が次第に又は段階的に異ならされていてもよいが、例えば先端部分の外周面における軸方向中間部分に屈曲点を設けて屈曲点の先端側と基端側とで傾斜角度を異ならせた場合、屈曲点の先端側における軸直角方向に対する傾斜角度が屈曲点の基端側における軸直角方向に対する傾斜角度よりも大きくされていることが好ましい。また、先端部分の外周面が、軸方向で傾斜角度が次第に変化する湾曲面とされる場合、外方に向かって凹となる湾曲面であることが好ましい。
【0064】
上記の如き構造とされた本実施形態の雄コネクタ10は、接続相手方である雌コネクタにサイドホールニードル14を挿し入れて接続することで流体流路が連通状態とされるようになっている。本実施形態の雄コネクタ10に接続され得る雌コネクタは何等限定されるものではないが、雌コネクタの具体的な一例を図5に示す。
【0065】
本実施形態の雌コネクタ16は、ベース部材86と下カバー部材88と上カバー部材90を含んで構成される雌コネクタハウジング92に対して、弁部材としてのディスク弁94が組み付けられて構成されている。即ち、ディスク弁94を間に挟んだ状態で上下のカバー部材90,88がベース部材86に固着されており、上下のカバー部材90,88により構成される雌コネクタハウジング92の開口部にディスク弁94が配されている。ディスク弁94の先端面(図5中の右側の端面)95は平坦面とされている。
【0066】
かかるディスク弁94とその雌コネクタハウジング92による保持構造は、例えば特開2013-198755号公報や特開2019-72648号公報などで公知のものが適宜に採用可能である。即ち、例えばディスク弁94は、略一定の厚さ寸法で軸直角方向に広がる円板形状の中央部分において、厚さ方向で貫通するスリット96が設けられており、初期状態では、当該スリット96が閉塞状態とされている。なお、スリット96の形状は限定されるものではなく、一文字状、十文字状、放射状等、各種形状が採用され得るが、本実施形態では、中央から周方向の三方に略等間隔に延びる三又状とされている。なお、スリット96を三又状といった複数のスリットで構成したり、幅を大きくすることでディスク弁94の変形性が大きくなり、挿入抵抗が少なく操作性が向上できる。一方、スリット96の幅をサイドホールニードル14が挿入され得る程度に小さくすることで、操作性は低減するが、暴露リスクを抑制することができる。暴露リスクを抑制するため、スリットではなくピンホールとすることも可能である。
【0067】
また、上カバー部材90は軸方向中間部分に環状の段差面98を有しており、段差面98よりも先端側(図5中の右側)が、段差面98よりも基端側(図5中の左側)に比して、小径とされている。そして、上カバー部材90において、段差面98よりも先端側の外周面に、雄コネクタ10における雌ねじ部32と螺合する雄ねじ部100が形成されている。
【0068】
以下、本実施形態の雄コネクタ10の組立方法の具体的な一例について説明する。なお、雄コネクタ10の組立方法は、以下の記載に限定されるものではない。
【0069】
先ず、針ハブ22における針ハブ部36に対して、先端側からサイドホールニードル14の基端部分を挿入して、接着剤等により接着する。また、針ハブ22における環状凹部38にコイルスプリング70の基端部分を挿入して、環状凹部38の底面とコイルスプリング70の基端とを接着や溶着等により固着する。更に、カバー弁体54と拘束部材48とを組み付けて、サイドホールニードル14の先端を、カバー弁体54の基端面に設けられた挿入凹部58に挿し入れる。その後、コイルスプリング70の先端とカバー弁体54の基端面における外周部分とを接着や溶着等により固着する。
【0070】
そして、拘束部材48における各外周突部52と筒状周壁部20における各内周溝部28とを周方向で位置合わせした状態で、筒状周壁部20の基端側開口部から拘束部材48を挿し入れる。かかる筒状周壁部20を針ハブ22に対して接近させて、筒状周壁部20における各位置決め凹部26に針ハブ22における各位置決め凸部46を挿入すると共に、針ハブ22における各係合突部44を筒状周壁部20における各貫通窓24に係止させることで、筒状周壁部20と針ハブ22とが組み付けられて雄コネクタ10が完成する。なお、筒状周壁部20と針ハブ22とは、必要に応じて、接着や溶着等が施されてもよい。
【0071】
以上のようにして組み付けられた本実施形態の雄コネクタ10では、図1~3に示す初期状態において、コイルスプリング70の付勢力によって、拘束部材48及びカバー弁体54が筒状周壁部20の先端部に位置している。これにより、サイドホールニードル14の各開口部12がカバー弁体54で覆われていると共に、カバー弁体54の変形が拘束部材48によって制限されて、各開口部12の閉鎖状態が維持されている。
【0072】
以下、本実施形態の雄コネクタ10と雌コネクタ16との接続方法の具体的な一例について説明する。なお、雄コネクタ10と雌コネクタ16との接続方法は、以下の記載に限定されるものではない。
【0073】
先ず、雄コネクタ10における先端側(図3中の左側)と雌コネクタ16における先端側(図5中の右側)とを軸方向で向かい合わせて、カバー弁体54とディスク弁94とを対向させる。その後、雄コネクタ10と雌コネクタ16とを相互に接近させて、図6に示されるように、雄コネクタ10における雌ねじ部32と雌コネクタ16における雄ねじ部100とを螺合させる。これにより、雌コネクタ16の先端面(即ち、雌コネクタハウジング92における上カバー部材90の先端面であって、図5中の右端面)が、雄コネクタ10の拘束部材48の先端(押え突部50)に当接する。尤も、本実施形態では、カバー弁体54において突状面62を有する突出先端部分が拘束部材48よりも先端側に突出していることから、最初にカバー弁体54における頂点部分の湾曲状先端面64とディスク弁94における先端面95の中央部分が当接する。これにより、突状面62と先端面95とが重ね合わせられつつ、更に雌ねじ部32と雄ねじ部100とのねじ作用によって雌コネクタ16が雄コネクタ10に対してねじ送りされることで、拘束部材48及びカバー弁体54がコイルスプリング70の付勢力に抗して基端側(図6中の右側)へ押し込まれる。この結果、サイドホールニードル14の先端部分74がカバー弁体54のスリット60を貫通して、ディスク弁94のスリット96に挿し入れられる。
【0074】
その後、図6に示される状態から更に雌コネクタ16を雄コネクタ10に対してねじ送りすることで、図7に示されるように、サイドホールニードル14の先端部分74がディスク弁94を貫通して、サイドホールニードル14における各開口部12が雌コネクタ16内で開口状態となる。これにより、雄コネクタ10の雌ルアー部34に接続されるシリンジ等からサイドホールニードル14を経て雌コネクタ16のベース部材86に接続されるチューブやカテーテル等に至る流体流路102が構成される。なお、雄コネクタ10の雌ルアー部34へのシリンジ等の接続や、雌コネクタ16のベース部材86へのチューブやカテーテル等の接続は、それぞれ適切なタイミングで行われ得る。
【0075】
流体流路102を通じて人体へ薬液等を投与した後は、上記と逆の手順により雄コネクタ10が雌コネクタ16から取り外される。即ち、雌ねじ部32と雄ねじ部100との螺合を解除することで、雄コネクタ10と雌コネクタ16とが相互に離隔する方向に変位して、再び図6の状態を経て、サイドホールニードル14がディスク弁94から引き抜かれる。これにより、ディスク弁94の弾性的な復元力により雌コネクタ16が、図5に示される初期状態に復帰する。また、コイルスプリング70の付勢力に従って、拘束部材48及びカバー弁体54が筒状周壁部20の先端側へ変位することで、サイドホールニードル14の先端部分74がカバー弁体54に覆われて、雄コネクタ10が、図1~3に示される初期状態に復帰する。
【0076】
このような構造とされた本実施形態の雄コネクタ10では、カバー弁体54における突出先端部分の突状面62が、半径方向の中央Cよりも内周側の部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされる特定形状を有しているとともに、サイドホールニードル14の先端部分74が、先細形状とされると共に軸方向寸法Aが基端部77の半径寸法Bよりも大きくされる特定形状を有している。これは、ディスク弁94に対してサイドホールニードル14が挿抜される際のディスク弁94の変形形状を考慮して、突状面62を上記の如き特定形状に設定したものであって、例えば雄コネクタと雌コネクタの接続時に突状面によりディスク弁が局所的に強く押圧されることも回避される。このように、雄コネクタ10において特定形状の突状面62と特定形状の先端部分74が組み合わされて採用されることにより、図6,7にも示されるように、サイドホールニードル14の挿抜時において、カバー弁体54とディスク弁94との重ね合わせ面(突状面62及び先端面95)間に隙間が発生することが抑制される。この結果、当該隙間を通じての薬液等の漏出も防止され得る。
【0077】
また、本実施形態では、カバー弁体54の頂点部分に湾曲状先端面64が設けられていると共に、カバー弁体54の外周部分には、逆湾曲状傾斜面66が設けられている。これにより、カバー弁体54における突状面62の形状を、サイドホールニードル14の挿抜時におけるディスク弁94の形状に一層合わせることができて、カバー弁体54とディスク弁94との重ね合わせ面(突状面62及び先端面95)間における隙間の発生がより確実に防止され得る。
【0078】
さらに、本実施形態では、サイドホールニードル14の先端部分74がテーパ部78を有している。このテーパ部78は、傾斜角度が軸方向で略一定であり、図3に示す縦断面において略直線状に延びている。この結果、サイドホールニードル14の先端部分74がカバー弁体54及びディスク弁94を貫通して各スリット60,96を押し開く際にも、カバー弁体54及びディスク弁94がテーパ部78に沿って変形することができて、カバー弁体54及びディスク弁94とサイドホールニードル14との間の隙間の発生を抑制しつつ、カバー弁体54及びディスク弁94のスムーズな変形が実現され得る。
【0079】
更にまた、本実施形態では、サイドホールニードル14の突出先端において半球状の湾曲面82が設けられている。これにより、例えば使用者が誤って雄コネクタ10における拘束部材48及びカバー弁体54を基端側に押し込んでサイドホールニードル14がカバー弁体54を貫通した際にも、サイドホールニードル14の先端が使用者の手指に穿刺されてしまうことが回避される。また、サイドホールニードル14の突出先端において湾曲面82が設けられていない場合、サイドホールニードルの突出先端(頂点)とカバー弁体におけるスリットとが軸方向の投影でずれて位置していると、サイドホールニードルがカバー弁体を貫通してスリットを押し開くことが困難となるおそれがあるが、突出先端において湾曲面82を設けることでカバー弁体54を湾曲面82に沿って変形させることができて、仮にサイドホールニードル14の頂点84がカバー弁体54のスリット60と軸方向の投影でずれている場合でも、カバー弁体54のスリット60を安定して押し開くことができる。
【0080】
また、本実施形態では、カバー弁体54における突出部分(突状面62)の傾斜角度γに比べて、サイドホールニードル14の先端部分74における傾斜角度δの方が大きくされている。これにより、サイドホールニードル14の挿通に伴うカバー弁体54の突状面62における変形形状と、ディスク弁94における変形形状とを合わせることができて、カバー弁体54における突状面62とディスク弁94における先端面95との間に隙間が発生することがより確実に防止され得る。特に、サイドホールニードル14の先端部分74における傾斜角度δを比較的大きく設定することで、ディスク弁94にサイドホールニードル14が挿通された際にディスク弁94の基端側(図5中の左側)への変形量を比較的小さくすることができて、この結果、サイドホールニードル14の挿通時にカバー弁体54とディスク弁94との間に隙間が発生することが効果的に防止され得る。
【0081】
本発明の別の態様として、雄コネクタ10は、カバー弁体54の突状面62において半径方向の中央Cよりも内周側部分の勾配が外周側部分の勾配以上とされると共に、サイドホールニードル14の先端部分74が先細形状とされて、一定のテーパ角度とされたテーパ部78を有していることが好ましい。これにより、サイドホールニードル14の挿通時に、ディスク弁94及びカバー弁体54をスムーズに押し開くことができると共に、ディスク弁94の基端側(図5中の左側)への変形量を比較的小さくすることができる。この結果、サイドホールニードル14の挿通時において、カバー弁体54とディスク弁94との間に隙間が発生することが防止され得る。
【0082】
本発明の更に別の態様として、雄コネクタ10は、カバー弁体54の突状面62が、中心軸を含む縦断面において、頂点63を含む円弧状の先端部(頂点部分61)における湾曲状先端面64上の点Q1と裾側基端部における曲面上の点Q2とに接触する仮想的な接触直線L1に対して内方に位置する中間部分Mを有していると共に、サイドホールニードル14の先端部分74が、先端部(半球状部80)の曲率半径よりも大きな曲率半径の傾斜面(テーパ部78の外周面83)を有していることが好ましい。これにより、サイドホールニードル14の先端部分74において比較的大きな軸方向寸法Aが確保できると共に、かかるサイドホールニードル14と上記の如き形状とされたカバー弁体54の突状面62とを組み合わせて採用することで、サイドホールニードル14の挿通時において、カバー弁体54とディスク弁94との間に隙間が発生することが防止され得る。
【0083】
本発明の更に別の態様として、雄コネクタ10は、サイドホールニードル14の先端部分74における軸方向寸法Aが基端部77の半径寸法Bより大きくされていると共に、略山形の突状面62においてサイドホールニードル14の外周面の延長線Dの内部の領域Tが、母線が外方に膨らまない円錐形状であることが好ましい。サイドホールニードル14の挿通時におけるカバー弁体54とディスク弁94との間の隙間の発生の抑制には、上記領域Tにおける形状を適切に設定することが望ましく、かかる形状とされたカバー弁体54と先細形状とされたサイドホールニードル14とを組み合わせて採用することで、サイドホールニードル14の挿通時において、カバー弁体54とディスク弁94との間に隙間が発生することが防止され得る。
【0084】
本発明の更に別の態様として、雄コネクタ10は、サイドホールニードル14の先端部分74における外周面が、中心軸を含む縦断面において、頂点84を含む円弧状の先端部(半球状部80)における湾曲面82の外周端部P5から先端部分74の基端部77(先端部分74の外周端部P4)に至る仮想的な直線L2と同じか内方に位置していることが好ましい。かかる形状とされたサイドホールニードル14と、略山形の突状面62を有するカバー弁体54とを組み合わせて採用することで、サイドホールニードル14の挿通時において、カバー弁体54とディスク弁94との間に隙間が発生することが防止され得る。
【0085】
なお、本発明者は、本実施形態に係る雄コネクタ10を試作し、雌コネクタ16と接続して、サイドホールニードル14の挿通時にカバー弁体54とディスク弁94との重ね合わせ面(突状面62及び先端面95)間に隙間が形成されるか否かを確認した。その結果を、図8,9に示す。図8,9は、それぞれ図6,7に対応する状態をX線の透過画像で示すものであって、図8は、サイドホールニードル14がディスク弁94に対して挿入される途中の状態又はディスク弁94から引き抜かれる途中の状態であって、図9は、ディスク弁94に対するサイドホールニードル14の挿入が完了した状態を示すものである。図8,9からも明らかなように、本実施形態に係る雄コネクタ10を採用することで、カバー弁体54とディスク弁94との重ね合わせ面(突状面62及び先端面95)間には隙間が形成されないことが確認できた。
【0086】
また、本発明者は、サイドホールニードルの挿通時におけるカバー弁体とディスク弁との重ね合わせ面間の隙間の減少を目的として、カバー弁体をディスク弁に対してより積極的に押圧するために、サイドホールニードルの先端面を図4(a)に二点鎖線で示すような半円形状とすることを検討し、先端面が半円形状とされたサイドホールニードル14’を有する雄コネクタ10’を試作して、上述の図8と同様に雌コネクタ16と接続し、カバー弁体54’とディスク弁94との重ね合わせ面間に隙間が形成されるか否かを確認した。その結果を、比較例として図10に示す。図10は、上述の図8に対応するものである。なお、図10に示される雄コネクタ10’において、前記実施形態における雄コネクタ10と実質的に同一の部材及び部位には、図中に、雄コネクタ10における符号に「’」を付して示す。この結果、図10にも示されるように、比較例の雄コネクタ10’を採用した場合、カバー弁体54’とディスク弁94との間に隙間104が形成される場合があることが確認できた。
【0087】
このことから、サイドホールニードル14の先端形状を少なくとも半円形状よりも先細状にすることで、カバー弁体54におけるディスク弁94への押付力の寄与はある程度に抑えることが有効であり、それによって、ディスク弁94の変形形状に合わせて設定したカバー弁体54の突状面62によるディスク弁94とカバー弁体54との重ね合わせ面(突状面62及び先端面95)間における隙間抑制効果をより効果的に享受し得る。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0089】
カバー弁体における突状面の形状は、半径方向の中央よりも内周側部分の勾配(傾斜角度α)が外周側部分の勾配(傾斜角度β)以上であることが好ましいが、その形状は限定されるものではない。例えば、本発明に係るカバー弁体の突状面において、逆湾曲状傾斜面は必須なものではない。また、本発明に係るカバー弁体の突状面において、頂点部分における湾曲状先端面も必須なものではなく、突状面は点状の頂点を有していてもよい。
【0090】
また、サイドホールニードルにおける先端部分の形状は、先端に向かって先細形状とされて、先端部分における軸方向寸法Aが基端部の半径寸法Bより大きくされていることが好ましいが、その形状は限定されるものではない。例えば、本発明に係るサイドホールニードルの先端部分においてテーパ部は必須なものではない。また、本発明に係るサイドホールニードルの先端部分において頂点部分における湾曲面も必須なものではなく、サイドホールニードルの先端部分は点状の頂点を有していてもよい。
【0091】
なお、前記実施形態では、サイドホールニードル14において先細形状とされた先端部分74よりも基端側の部分が軸方向に略ストレートに延びるストレート部76とされていたが、例えばサイドホールニードルにおいて先端部分よりも基端側の部分の半径寸法(外径寸法)は軸方向で変化していてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 雄コネクタ
12 開口部
14 サイドホールニードル
16 雌コネクタ
18 雄コネクタハウジング
20 筒状周壁部
22 針ハブ
24 貫通窓
26 位置決め凹部
28 内周溝部
30 内周突部
32 雌ねじ部
34 雌ルアー部
36 針ハブ部
38 環状凹部
40 雌ルアー孔
42 雄ねじ部
44 係合突部
46 位置決め凸部
48 拘束部材
50 押え突部
52 外周突部
54 カバー弁体
56 収容空間
58 挿入凹部
60 スリット
61 頂点部分(頂点を含む円弧状の先端部)
62 突状面
63 頂点
64 湾曲状先端面
66 逆湾曲状傾斜面
67 先細面
68 段差面
70 コイルスプリング
72 内孔
74 先端部分
76 ストレート部
77 基端部
78 テーパ部
80 半球状部(先端部)
82 湾曲面
83 外周面
84 頂点
86 ベース部材
88 下カバー部材
90 上カバー部材
92 雌コネクタハウジング
94 ディスク弁
95 先端面
96 スリット
98 段差面
100 雄ねじ部
102 流体流路
104 隙間
C 突状面における半径方向の中央
D サイドホールニードルの外周面の延長線
L1 頂点を含む円弧状の先端部と裾側基端部とに接する仮想的な接触直線
L2 先端部に接して先端部分の基端部に至る仮想的な直線
M 突状面において直線L1より内方に位置する中間部分
O 突状面における領域Tよりも外周部分
P1 突状面における半径方向の中央上の点
P2 突状面における外周端部
P3 湾曲頂点を除いた突状面の内周端部(湾曲状先端面の外周端部)
P4 サイドホールニードルの先端部分における外周端部
P5 湾曲面を除いた先端部分の内周端部(湾曲面の外周端部)
Q1 接触直線L1に接する湾曲先端面上の点
Q2 接触直線L1に接する裾側基端部の曲面上の点
T 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10