(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069855
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】超音波加振設備
(51)【国際特許分類】
F16L 55/24 20060101AFI20240515BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F16L55/24 Z
F04B37/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180105
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】513070082
【氏名又は名称】株式会社テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100149836
【弁理士】
【氏名又は名称】森定 勇二
(72)【発明者】
【氏名】上田 実
(72)【発明者】
【氏名】松下 泰廣
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA21
3H076BB50
3H076CC92
(57)【要約】
【課題】上下層階レイアウトの真空設備を構成する円筒配管に装着し、前記円筒配管の内周面に堆積又は固化した粉体を剥離・除去し適切に、落下させることが可能な超音波加振設備を提供すること。
【解決手段】超音波加振設備1は、10キロヘルツから100キロヘルツの超音波周波数を出力可能な超音波発信器3と、超音波発信器3の電気的信号を受信して振動する振動子21を少なくとも包含する超音波変換ユニット2と、真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿って装着可能な輪形状を形成する配管取付機構5と、配管取付機構5に振動子21の振動を伝達する所定の振動伝達棒体4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空設備を構成する円筒配管に装着する超音波加振設備であって、
10キロヘルツ以上の超音波周波数を発生する超音波発信器と、
前記超音波発信器の電気的信号を受信して振動する振動子を少なくとも包含する超音波変換ユニットと、
真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿って装着可能な輪形状を形成する配管取付機構と、
前記振動子と前記配管取付機構との間を接続し前記振動子が振動を発生させている間その振動を伝達する振動伝達棒体と、
で構成する超音波加振設備。
【請求項2】
前記超音波変換ユニットを、前記超音波発信器からの電気的信号を受信して振動する振動子と、前記振動子の周囲を覆う保護カバーと、前記超音波発信器と電気的に接続する電気接栓と、で構成する請求項1の超音波加振設備。
【請求項3】
前記配管取付機構を、当該真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿った輪形状を形成する配管周接帯部と、前記配管周接帯部を前記真空設備を構成する円筒配管に沿って取り付けた状態で装着固定又は取外し開放に作動するクランプ部と、で構成した請求項1又は請求項2の超音波加振設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、半導体等を製造する真空設備を構成する配管に装着する超音波加振設備である。
【背景技術】
【0002】
半導体等を製造する真空設備のレイアウトに関して、真空チャンバー、ドライ真空ポンプ等の真空設備を同層階に設置するいわゆる同層階レイアウトが従来は多かったが、近年は、真空チャンバーを上層階(例えば、2階。)に設置をして、ドライ真空ポンプをその下層階(例えば、1階)に設置するといったいわゆる上下層階レイアウトが増えている。
【0003】
前述した上下層階レイアウトの場合、真空チャンバーとドライ真空ポンプとの間に介在する配管は垂直方向に配設されるため、真空チャンバーから放出された粉体の一部が配管の内周面にいったん付着し一定程度堆積(粉体が固化する場合もある。)をした後に、その自重等でまとまって多量に落下しドライ真空ポンプ内に到達することによって、当該真空ポンプを停止(ロック)あるいは故障させてしまったと想定する事例が存在した。
【0004】
前述の様な事象を一定程度回避するための対策として、前記配管にヒータージャケットを装着あるいは加振装置を装着することが行われている(特許文献1など)。
【0005】
なお、同層階レイアウトの場合でも、粉体の堆積又は固化は生じるが、真空チャンバーとドライ真空ポンプとの間に介在する配管は水平方向に配設されるため、粉体は、重力の影響を受けながら配管内を水平方向に移動するため、微量ずつしかドライ真空ポンプに到達しないため、上述のような不具合は発生し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した加振装置は、粉体の堆積又は固化抑制目的としては一定の成果が見込める優れた装置であるものの、既に配管の内部に大量の粉体が堆積及び固化している状態で作動を行った場合には、大量の粉体をまとめて落下させてしまうおそれもあった。
【0008】
なお、真空設備を構成する配管にヒータージャケットを装着する方法に関しては、装着コストやヒーターを稼働させるためのコストなどといったコスト問題が生じていた。
【0009】
そこで、上下層階レイアウトの真空設備を構成する配管に装着し、前記配管の内周面に堆積又は固化した粉体を、適切に剥離・除去し落下させることが可能な設備を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、真空設備を構成する円筒配管に装着する超音波加振設備であって、10キロヘルツ以上の超音波周波数を発生する超音波発信器と、前記超音波発信器の電気的信号を受信して振動する振動子を少なくとも包含する超音波変換ユニットと、真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿って装着可能な輪形状を形成する配管取付機構と、前記振動子と前記配管取付機構との間を接続し前記振動子が振動(超音波振動)を発生させている間その振動を伝達する振動伝達棒体と、で構成する超音波加振設備を提供する。
【0011】
本願発明は、前記超音波変換ユニットを、前記超音波発信器からの電気的信号を受信して振動する振動子と、前記振動子の周囲を覆う保護カバーと、前記超音波発信器と電気的に接続する電気接栓と、で構成する超音波加振設備を提供する。
【0012】
本願発明は、前記配管取付機構を、当該真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿った輪形状を形成する配管周接帯部と、前記配管周接帯部を前記真空設備を構成する円筒配管に沿って取り付けた状態で装着固定又は取外し開放に作動するクランプ部と、で構成した超音波加振設備を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の超音波加振設備は、真空設備を構成する円筒配管に装着する超音波加振設備であって、10キロヘルツ以上の超音波周波数を発生する超音波発信器と、前記超音波発信器の電気的信号を受信して振動する振動子を少なくとも包含する超音波変換ユニットと、真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿って装着可能な輪形状を形成する配管取付機構と、前記振動子と前記配管取付機構との間を接続し前記振動子が振動(超音波振動)を発生させている間その振動を伝達する振動伝達棒体と、で構成するため、上下層階レイアウトの真空設備を構成する配管の内周面に堆積又は固化した粉体を剥離・除去し、適切に落下させることが可能となる。
【0014】
本願発明の超音波加振設備は、前記超音波変換ユニットを、前記超音波発信器からの電気的信号を受信して振動する振動子と、前記振動子の周囲を覆う保護カバーと、前記超音波発信器と電気的に接続する電気接栓と、で構成するため、超音波振動をしている振動子に人や物が直接接触することを防止できる。
【0015】
本願発明の超音波加振設備は、前記配管取付機構を、当該真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿った輪形状を形成する配管周接帯部と、前記配管周接帯部を前記真空設備を構成する円筒配管に沿って取り付けた状態で装着固定又は取外し開放に作動するクランプ部と、で構成したため、真空設備を構成する円筒配管への装着及び脱着を容易とするとともに効率的な加振にも資する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は超音波加振設備の全体構成を示す外観図である。
【
図3】
図3は上下層階レイアウトの真空設備を構成する垂直配管に超音波加振設備を装着する様子(装着初期)を示した使用状態図である。
【
図4】
図4は上下層階レイアウトの真空設備を構成する垂直配管に超音波加振設備を装着する様子(装着後期)を示した使用状態図である。
【
図5】
図5は配管を超音波加振した状態(加振初期)を示したイメージ図である。
【
図6】
図6は配管を超音波加振した状態(加振後期)を示したイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上下層階レイアウトの真空設備を構成する配管に超音波加振設備を装着して使用する。
【実施例0018】
まずは、超音波加振設備の構成について、
図1及び
図2に従い説明する。
【0019】
超音波加振設備(1)は、所定範囲の周波数を発生する超音波発信器(3)と、前記超音波発信器の電気的信号を受信して振動する振動子(22)を包含する所定の超音波変換ユニット(2)と、真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿って装着可能な輪形状を形成する配管取付機構(5)と、前記振動子と前記配管取付機構との間を接続し前記振動子が振動(超音波振動)を発生させている間その振動を伝達する振動伝達棒体と(4)で構成する(
図1及び
図2)。
【0020】
前記超音波発生器(3)に関して、少なくとも10キロヘルツ以上の周波数の超音波信号を発生するものであることを有する。
【0021】
前記超音波発生器(3)に関して、10キロヘルツから100キロヘルツの範囲の周波数の超音波信号を発生するものが好ましい。
【0022】
なお、配管の種類や構造並びに付着する粉体の質量や粒子形状に応じて、100キロヘルツを超える周波数を利用する可能性もあり得る。
【0023】
前記超音波変換ユニット(2)は、前記超音波発生器から出力される電気的信号を受けて超音波振動する振動子(21)と、前記振動子の外周を覆う保護カバー(23)と
前記超音波発生器と電気的に接続する電気接栓(22)と、で構成する(
図2)。
【0024】
前記保護カバー(23)に関して、前記振動子(21)を物理的な外的衝撃から保護するとともに、振動面(
図2で示す左側端面)以外からは超音波振動が伝搬しない構造としている(
図2)。
【0025】
前記配管取付機構(5)は、真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿った輪形状を形成する配管周接帯部(51)と、前記配管周接帯部当該真空設備を構成する円筒配管に沿って取り付けた状態で装着固定又は取外し開放に作動するクランプ部(52)とで構成する(
図1)。
【0026】
前記配管周接帯部(51)の形状及びサイズについて、真空設備を構成する円筒配管の筒周に沿って取り付けた際に隙間なく当該円筒配管の全周囲にわたって接するような輪形状及びサイズとしている(
図1)。
【0027】
前記振動伝達棒体(4)の材質、形状及び長さ(L)に関して、本実施例では金属製の円柱形状としているが、超音波振動を効率よく伝達できる材質及び形状であれば許容し得る。なお、振動周波数に対応する長さとするのが好ましい。
【0028】
前記振動伝達棒体(4)と、前記超音波変換ユニット(3)との接続(接合)について、超音波振動の伝達を考慮し、前記振動伝達棒体の端部を、前記超音波変換ユニットを構成する振動子(21)に螺着する方法により接合している(
図2)。
【0029】
前記振動伝達棒体(4)と前記配管周接帯部(51)との接続位置について、前記クランプ部(52)と対向する位置としている(
図1)。
【0030】
次に、超音波加振設備を、真空設備を構成するΦ100(外径114.3ミリメートル、肉厚6ミリメートル)の円筒配管に装着して稼働させた際の作動について
図3から
図6に従い説明する。
【0031】
2階に設置した真空チャンバー(6)と1階に設置したドライ真空ポンプ(7)との間に介在する垂直方向に配設される円筒配管(8)の相当箇所の筒周に、配管周接帯部(51)を取り付けた後にクランプ部(52)を装着固定に作動をして装着を完了する(
図3)。
【0032】
なお、前記配管取付機構(5)の端部には、あらかじめ振動伝達棒体(4)の一方側端部が接続されており、前記振動伝達棒体の他方側端部は振動子(21)に螺着されている(
図3)。
【0033】
次に、超音波発生器(3)を電気接栓(22)に接続する(
図4)。
【0034】
なお、本作動例では、前記真空チャンバー(6)の底部には、真空の程度をあげるためのターボ分子ポンプを設けている。
【0035】
その後、前記超音波発生器(3)から、所定周波数(10キロヘルツから100キロヘルツの範囲を想定。)の電気的信号を出力する(
図5)。
【0036】
前記超音波発生器(3)の電気的信号を受信して前記振動子(21)は、超音波振動を始める(
図5)。
【0037】
前記超音波振動は、前記振動伝達棒体(4)を介して前記配管取付機構(5)に伝わる(
図5)。
【0038】
前記配管取付機構(5)に伝わった超音波振動は、当該円筒配管(8)と接している箇所から加振され円筒配管の一定範囲まで伝わり、当該円筒配管の内周面に堆積又は固化した粉体を剥離・除去し、適切に落下させる(
図6)。
本願発明の超音波加振設備は、真空設備を構成する円筒配管の内周面に堆積又は固化した粉体を剥離・除去し、適切に落下させる優れた設備であるから産業上の利用可能性を有する。