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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069857
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】歩行型斜面草刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/86 20060101AFI20240515BHJP
   A01D 34/67 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A01D34/86
A01D34/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180108
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】井上 正典
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌大
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA01
2B083BA01
2B083BA12
2B083DA02
2B083GA02
2B083HA12
2B083HA24
2B083HA32
2B083HA52
2B083HA59
(57)【要約】
【課題】全車輪に設けた各々のトルクリミッタと、全車輪の駆動を一括で遮断できるトルクリミッタを設け、走破性を犠牲にすることなく車輪への駆動伝動系路の部品の破損を防ぐことができる草刈機を提供することを課題とする。
【解決手段】原動機4の駆動力を、伝動部18を介して前輪2,2及び後輪3,3の全ての車輪Aを駆動する4輪駆動形態に構成し、車輪Aに掛かる過負荷による破損を防ぐ第一トルクリミッタT1を各々の全車輪Aに設けるとともに、全車輪Aへの伝動を一括で遮断可能な伝動系路に、各々の第一トルクリミッタT1の作動トルク値よりも大きなトルクが掛かった際に伝動を遮断する第二トルクリミッタT2を設けた歩行型斜面草刈機の構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機(4)と、該原動機(4)の駆動力を伝達する伝動部(18)と、車体(1)の前部、及び、後部に左右一対の前輪(2),(2)、及び、後輪(3),(3)と、車体(1)から立設し後方へ向け延設するハンドル杆(8)を設け、該ハンドル杆(8)を車体(1)に対して旋回、及び上下回動可能に設けた歩行型斜面草刈機において、原動機(4)の駆動力を、伝動部(18)を介して前輪(2),(2)及び後輪(3),(3)の全ての車輪(A)を駆動する4輪駆動形態に構成し、車輪(A)に掛かる過負荷による破損を防ぐ第一トルクリミッタ(T1)を各々の全車輪(A)に設けるとともに、全車輪(A)への伝動を一括で遮断可能な伝動系路に、各々の第一トルクリミッタ(T1)の作動トルク値よりも大きなトルクが掛かった際に伝動を遮断する第二トルクリミッタ(T2)を設けたことを特徴とする歩行型斜面草刈機。
【請求項2】
後輪(3),(3)の左右中間部に、原動機(4)を取着したギヤボックス(G)を設け、ギヤボックス(G)の後輪(3),(3)の左右駆動軸(7),(7)の一方から前輪駆動軸(14)を駆動するチェーン(15)を備えた伝動ケース(16)を設け、車体(1)左右一側方を前記伝動ケース(16)で構成し、他方をフレームパイプ(17)で構成して平面視井桁状のフレーム(1a)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の歩行型斜面草刈機。
【請求項3】
各々の車輪(A)の第一トルクリミッタ(T1)をボール式とし、第二トルクリミッタ(T2)を摩擦板式とし、該第二トルクリミッタ(T2)をギヤボックス(G)内の駆動軸(7)に設けたことを特徴とする請求項2に記載の歩行型斜面草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型斜面草刈機の伝動部に関するものであり、詳しくは、4輪駆動形態の歩行型斜面草刈機の走行伝動系路におけるトルクリミッタの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された草刈機(作業機)が知られており、この草刈機は、左右一対の前輪と後輪の全ての車輪を駆動可能の4輪駆動形態であり、この4輪全ての車輪への走行伝動を一括で遮断できる伝動系路にトルクリミッタを設けた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-11882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の伝動系路に設けたトルクリミッタは、各々の4輪の車輪に掛かる負荷を合計したトルクがトルクリミッタの設定トルク以上になると作動する構成のため、例えば4つの車輪の内、2つの車輪には過負荷が加わっていない状態であっても、他の2つの車輪に大きな負荷が加わることにより全4輪の車輪の合計トルクがトルクリミッタの設定トルクを超えるとトルクリミッタが作動し、4輪全ての車輪の駆動が遮断されることとなる。従って、負荷的に余裕のある車輪が駆動していれば継続して走行できる場合であっても全4輪の駆動が遮断されてしまい走行不能になる可能性がある。本発明は、全車輪に設けた各々のトルクリミッタと、全車輪の駆動を一括で遮断できるトルクリミッタを設け、走破性を犠牲にすることなく車輪への駆動伝動系路の部品の破損を防ぐことができる草刈機を提供することを課題とする。
【0005】
原動機4と、該原動機4の駆動力を伝達する伝動部18と、車体1の前部、及び、後部に左右一対の前輪2,2、及び、後輪3,3と、車体1から立設し後方へ向け延設するハンドル杆8を設け、該ハンドル杆8を車体1に対して旋回、及び上下回動可能に設けた歩行型斜面草刈機において、原動機4の駆動力を、伝動部18を介して前輪2,2及び後輪3,3の全ての車輪Aを駆動する4輪駆動形態に構成し、車輪Aに掛かる過負荷による破損を防ぐ第一トルクリミッタT1を各々の全車輪Aに設けるとともに、全車輪Aへの伝動を一括で遮断可能な伝動系路に、各々の第一トルクリミッタT1の作動トルク値よりも大きなトルクが掛かった際に伝動を遮断する第二トルクリミッタT2を設けた歩行型斜面草刈機の構成とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
又、後輪3,3の左右中間部に、原動機4を取着したギヤボックスGを設け、ギヤボックスGの後輪3,3の左右駆動軸7,7の一方から前輪駆動軸14を駆動するチェーン15を備えた伝動ケース16を設け、車体1左右一側方を前記伝動ケース16で構成し、他方をフレームパイプ17で構成して平面視井桁状のフレーム1aを形成した歩行型斜面草刈機の構成とする。
【0007】
又、各々の全車輪Aの第一トルクリミッタT1をボール式とし、第二トルクリミッタT2を摩擦板式とし、該第二トルクリミッタT2をギヤボックスG内の駆動軸7に設けた歩行型斜面草刈機の構成とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、4輪駆動形態の歩行型斜面草刈機において、全車輪Aの各々に第一トルクリミッタT1を設け、更に、第一トルクリミッタT1の作動トルク値よりも大きなトルクが掛かった際に全車輪Aへの伝動を一括で遮断する第二トルクリミッタT2を設けているので、各々の車輪Aの内、過負荷が掛かった車輪Aの第一トルクリミッタT1が作動しても、他の車輪Aに掛かる負荷が第一トルクリミッタT1の作動トルク未満の場合は、この車輪Aが継続して駆動されるので走破性が良く、各車輪Aの強度や耐久性に応じた第一トルクリミッタT1の作動トルク設定が可能である。又、全車輪Aに大きな過負荷が掛かった際には第二トルクリミッタT2が作動し、全車輪Aの駆動を一括で遮断するので、伝動系路の部品の破損、折損等を確実に防ぐことができ、耐久性も向上させることができる。特に容易に想定できるチェーン15切断時に伝動ケース16内で噛み込んでロックした場合や第一トルクリミッタT1が固着し伝動系路に過大な駆動トルクが掛かった場合には第二トルクリミッタT2が作動し、ギヤボックスGのケース自体やギヤボックスG内のギヤ等の破損を防止することができるので、伝動系路の部品強度や耐久性を上げる必要がなく重量を軽くすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、後輪3,3の左右中間部に、原動機4を取着したギヤボックスGを設け、ギヤボックスGの後輪3,3の左右駆動軸7,7の一方から前輪駆動軸14を駆動するチェーン15を備えた伝動ケース16を設け、車体1の左右一側方の伝動ケース16をフレーム1aの一部として構成し、他方をフレームパイプ17で構成して平面視井桁状のフレーム1aを形成してあるので、伝動ケース16側には別途フレーム部材を設ける必要がなく、他側のフレームパイプ17とともに強固で安価な車体1を構成することが可能である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、各々の車輪Aの第一トルクリミッタT1をボール式とし、第二トルクリミッタT2を摩擦板式とし、該第二トルクリミッタT2をギヤボックスG内の駆動軸7に設けているので、正、逆転が繰り返され作動頻度も多く、高い精度の作動トルク設定が要求される車輪Aにボール式の第一トルクリミッタT1により、確実な過負荷保護が可能であり、作動頻度が少なく、ボール式に比べて安価、コンパクトに構成できる摩擦板式の第二トルクリミッタT2は、ギヤボックスG内への配置が容易な上に、コスト削減が可能である。更に、第二トルクリミッタT2をギヤボックスG内に設けているので、刈草や草屑、塵埃等が第二トルクリミッタT2に悪影響を与えることがなく、第一トルクリミッタT1と第二トルクリミッタT2とにより、伝動経路の部品の破損、折損等を確実に防ぐことができ、耐久性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】全体側面図。
図2】全体平面図。
図3】刈取装置の揺動操作を示す側面図及び一部平面図。
図4】刈取装置の揺動操作を示す側面図。
図5】車体部分を示す一部断平面図。
図6】刈取装置の伝動部を示す側面図。
図7】トルクリミッタの配置を示す一部断平面図。
図8】伝動ケースと刈取装置を示す一部断側面図。
図9】トルクリミッタの断面図。
図10】草刈機の起立状態を示す側面図。
図11】ハンドル伸縮を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照に説明する。本発明の草刈機は車体1の前後に左右一対の前輪2,2と後輪3,3を設け、前輪2,2間を前輪駆動軸14で連結し、後輪3,3の左右中間部に、上部に原動機4を搭載したギヤボックスGを設け、該ギヤボックスGの駆動軸7,7に後輪3,3を取着してある。ギヤボックスGの上側には原動機4を取着し、原動機4の駆動力を、伝動部18を介して前輪2,2及び後輪3,3の全ての車輪を駆動する4輪駆動形態の草刈機である。原動機4の前部には燃料タンク47を配置し、右側にマフラーMが設けられ排気ガスは排気口65から車体1左側へ向け排出Jさせている。原動機4の前部に配置した燃料タンク47は、右側が後方へ向け屈曲する平面視L字状に形成してあり、屈曲部上方には給油口60を設け、キャップ60aを取着してある。
【0013】
ギヤボックスG前側には、横方向の刈刃軸5を枢支するハンマーナイフ形式の刈取装置6を設け、これら刈取装置6とギヤボックスG及び原動機4は、駆動軸7,7を中心に一体的に揺動可能に構成してある。駆動軸7と前輪駆動軸14との間の車体1左側は側面視門型形状のフレームパイプ17で連結し、右側は内部にチェーン15を備えた側面視門型形状の伝動ケース16で連結している。原動機4前方には、フレームパイプ17と伝動ケース16との間を左右に連結する連結ベース20を設け、該連結べース20中央部から上方へ向けハンドルベース21を立設し、ハンドルベース21上端部には、車体1後方上方へ向け延設するハンドル杆8を設けてある。ハンドル杆8は、図1図2に示すように、適宜の角度で上下回動が可能で、又、平面視車体1後方向きから左右各々に約120度(計240度)の旋回が可能、且つ、図11に示すように伸縮させることによる長さ調整が可能で、使用状態に応じてハンドル杆8を任意の位置と長さに上下回動、旋回、伸縮調整することができる。ハンドル杆8の伸縮構成は、ハンドルベース21上端部に溶着した外パイプ8sに内パイプ8uを挿入し、外パイプ8s内で内パイプ8uを摺動させることで伸縮することができる。Vはハンドルロック機構であり、ロックを解除すれば内パイプ8uが伸縮可能となり、ロックされると内パイプ8uの摺動が固定される。
【0014】
ハンドル杆8の内パイプ8uは、ハンドル杆8を最も縮めて短かくした状態において、外パイプ8s前端部から前方へ突出するよう構成し、図10に示すように、車体1を起立させることができる。尚、燃料満タン時に車体1を起立させると燃料タンク47の給油口60のキャップ60aから燃料が漏出する可能性があるが、起立時には給油口60が燃料タンク47の上部に位置しているので、燃料レベルEが給油口60よりも低い場合には燃料が漏出することがない。燃料タンク47の形状は、本実施例のL字状に限定するものではなく、車体1を起立させた際に燃料タンク47の上端部に給油口60を配置した形状であれば良い。
【0015】
ギヤボックスG前部から右側に向け突設する刈刃伝動軸22先端に伝動プーリ23を取着し、該刈刃伝動軸22と平行に配置した刈刃軸5右側先端に取着した刈刃プーリ24と、前記伝動プーリ23との間をVベルト25で伝動している。図6に示す通り、Vベルト25は、伝動プーリ23と刈刃プーリ24との間に設けたテンションプーリ26をVベルト25の内側から回動させて、外側へ向けVベルト25を張る、又は内側へ回動させて緩めることによって刈刃伝動軸22から刈刃軸5への伝動を入り、切りすることができる。
【0016】
刈刃軸5は刈刃カバー27の左右の側板に枢支し、刈刃軸5に設けた複数の刈刃ベース28に刈刃Kを取着している。刈取装置6の刈刃カバー27の前側、及び、後側には刈草や石礫等が飛散するのを防止する飛散カバー38を設けている。本実施例の歩行型斜面草刈機では、前後走行方向に係わらず、刈刃Kの回転域前側がアッパー方向に回転するよう構成しているが、前進走行時は刈刃Kの回転域前側をアッパー方向へ回転させ、後進走行時には、刈刃Kの回転域後側をアッパー方向に逆回転させるよう構成しても良い。
【0017】
ハンドル杆8の先端部には操作部9を設け、作業者が手元で刈高さの変更やハンドル杆8の上下、旋回調整、ハンドル杆8の伸縮調整、走行の前後進切替え、走行速度変更、刈刃クラッチの入り、切り、原動機4のアクセル操作等を行うことができる。29はハンドルレバーで、握り込むと、旋回ケーブル62と上下ケーブル63を介してハンドル杆8の上下回動、及び、旋回のロックが解除され、作業者が自由にハンドル杆8操作部9の上下高さ、及び、旋回位置を調整することができる。30はハンドル杆8の伸縮レバーで、握り込むとハンドルロック機構Vのロックを解除し、ハンドル杆8を伸縮して長さ調整をすることができる。31は前後進切替えレバーで、中央はニュートラル位置、操作部9の後方から見て、右側へ向け操作すると前進に、左側へ向け操作すると後進に走行するようギヤボックスG内のクラッチ31kを切替えることができる。
【0018】
32は走行速度を変速できる変速レバーで、前後方向に操作することでギヤボックスG内のチェンジアーム32cを高速、又は低速へ切り替えることができる。33は刈刃Kへの伝動を入り、切りする刈刃クラッチレバーで、この刈刃クラッチレバー33を前後方向に操作することでケーブル330、テンションアーム260を介してテンションプーリ26を回動させてVベルト25を張る、又は緩めることによって刈刃伝動軸22から刈刃軸5への伝動を入り、切りすることができる。34は原動機4のアクセルレバーであり、このアクセルレバー34をグリップ8g側へ向け握り込み回動させると原動機4の回転数が上がり、所定回転数以上に上昇すると遠心クラッチ35が接続され、原動機4の駆動がギヤボックスG内の伝動系路へ伝達される。
【0019】
図3図4は、刈取装置6がギヤボックスG、及び原動機4とともに、駆動軸7を中心として一体的に上下揺動する機構を示したものである。操作部9の操作パネル36には、揺動レバー10を摺動させる摺動ガイド37を形成し、揺動レバー10を摺動ガイド37に沿って前後に摺動回動させることで、揺動ケーブル13を介して刈取装置6を上下揺動させることができる。揺動ガイド37には、揺動レバー10を係止する複数の係止部37aを形成しており、揺動レバー10を各係止部37aに係止することにより、刈取装置6の刈高さを上下段階的に揺動させることができる。
【0020】
Lは、揺動レバー10を最も前位置に回動させ刈取装置6の刈高さを最も低くした状態であり、Hは、揺動レバー10を最も後位置に回動し係止部37aに係止させ刈取装置6の刈高さを最も高くした状態である。揺動レバー10は、前後揺動軸40を中心に前後回動可能で、又、解除回動軸41を中心に左右回動が可能である。従って、揺動レバー10を固定位置Yから解除位置Xへ解除揺動軸41中心に回動させると固定ケーブル12が引かれ、刈取装置6と車体1とを固定している揺動固定機構11が解除され、この状態で揺動レバー10を前後揺動軸40を中心に前後方向へ回動させると揺動ケーブル13を介して刈取装置6が原動機4とギヤボックスGとともに一体的に、駆動軸7を中心に上下揺動し、揺動レバー10を解除位置Xから固定位置Y、及び適宜の係止部37aへ向け回動し係止させることで、揺動固定機構11が刈取装置6と車体1との揺動を固定する。
【0021】
尚、図3図4には、揺動レバー10を解除位置Xに向け回動させた際に、固定ケーブル12を介しスプリング46の付勢力に抗して、回動軸43を中心に回動する回動プレート44の固定穴45と固定ピン42との係合を解除でき、揺動レバー10を固定位置Y方向へ戻すと固定穴45と固定ピン42が再び係合する揺動固定機構11の構成に限定するものではなく、刈取装置6を任意の刈高さに調整した後、車体1に対し刈取装置6の上下揺動が固定される状態にできれば良い。
【0022】
左右駆動軸7の先端部には後輪3,3を設け、駆動軸7と平行に設けた前輪駆動軸14の左右先端部に前輪2,2を設けてある。駆動軸7と前輪駆動軸14との間には、側面視刈取装置6上方を覆う門型形状の伝動ケース16を設け、伝動ケース16内のチェーン15を介して右側の駆動軸7から前輪駆動軸14への伝動を行う4輪駆動形態の走行方式である。車体1のフレーム1aは、ギヤボックスGの後輪3,3の左右駆動軸7,7の一方から前輪駆動軸14を駆動するチェーン15を備えた伝動ケース16と、他方をフレームパイプ17で構成して平面視井桁状のフレーム1aを形成してあり、伝動ケース16をフレーム1aの一部として構成し、別途フレーム部材を設ける必要がなく、他側のフレームパイプ17とともに平面視井桁状のフレーム1aを形成しているので、強固で安価な車体1を構成することが可能である。又、伝動ケース16とフレームパイプ17の上部を連結ベース20で連結してあるので、更に頑強なフレーム1aを構成することができる。
【0023】
全車輪Aには、各々の車輪Aに、所定以上の過大トルクが加わると車輪Aと駆動軸7、又は、前輪駆動軸14とのトルク伝達を遮断する第一トルクリミッタT1を設けている。第9図は本発明の第一トルクリミッタT1(ボール式)を示すもので、車輪Aは第一トルクリミッタT1を介して駆動軸7、又は、前輪駆動軸14に枢支され、駆動軸側ボス51にはスプリング53、及び、スチールボール52を嵌め込むスプリング溝54を形成し、駆動軸7、又は、前輪駆動軸14に差し込みC型止め輪55で抜け止めしてある。車輪側フランジ50の内周にはボールポケット50aが設けてあり、スプリング53の付勢力によりスチールボール52をボールポケット50aへ嵌合させている。駆動している車輪Aに過大なトルクが加わると、スチールボール52の車輪側フランジ50のボールポケット50aへの嵌合状態が解除され、駆動軸7、及び、前輪駆動軸14が破損するに至るような過大トルクを遮断できる構成である。更に、ギヤボックスG内の駆動軸7には、摩擦板式の第2トルクリミッタT2を設け、全車輪Aに掛かるトルクの総和が第2トルクリミッタT2の設定トルク以上になると第2トルクリミッタT2が作動し、車輪Aへの伝動を一括で遮断できるよう構成してある。
【0024】
本実施例において、第一トルクリミッタT1の作動トルクは7kg/mに設定してあり、第二トルクリミッタT2の作動トルクは18kg/mに設定してある。すなわち各々の車輪Aに設けた第一トルクリミッタT1の作動トルクよりも第二トルクリミッタT2の作動トルクを高く設定し、各々の車輪Aに加わる負荷が7kg/m未満、且つ、各々の車輪Aに加わる負荷の総和が18kg/m以上になると第二トルクリミッタT2が作動し、車輪Aへの伝動を一括で遮断できる構成である。各々の車輪Aの第一トルクリミッタT1の作動トルクが7kg/mで、第二トルクリミッタT2を有さない場合、各々の車輪Aに加わるトルクの最大値は7kg/m未満であり、伝動経路に掛かるトルクの総和は約28kg/mとなり、少なくともギヤボックスG内の伝動経路はこの最大トルクに耐えうる強度を有さなければならなくなる。又、伝動ケース16内のチェーン15が切れ、伝動ケース16内でスプロケットSがロック状態になると、原動機4からの過大な出力トルクが伝動経路に直接掛かり、伝動経路が破損するという不都合がある。又、第二トルクリミッタT2の作動トルクを18kg/mに設定し、第一トルクリミッタT1を有さない場合には、一旦第二トルクリミッタT2が作動すると全ての車輪Aの伝動が遮断され走行不能になることから走破性が悪くなるという不都合がある。従って、第一トルクリミッタT1と第二トルクリミッタT2の両方を設けていることで、どちらの不都合も解決できるものである。
【符号の説明】
【0025】
1 車体
1a フレーム
2 前輪
3 後輪
4 原動機
7 駆動軸
8 ハンドル杆
14 前輪駆動軸
15 チェーン
16 伝動ケース
17 フレームパイプ
18 伝動部
A 車輪
G ギヤボックス
T1 第一トルクリミッタ
T2 第二トルクリミッタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11