(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069860
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】電力需給制御システム、及び電力需給制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20240515BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240515BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/32
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180113
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊豆野 泰道
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA03
5G066AA02
5G066AE09
5G066DA03
5G066DA06
5G066HA17
5G066HB09
5G066JB03
5G066KA01
5G066KA04
5G066KA06
5G066KD01
(57)【要約】
【課題】需要家に存在する消費電力の制御が難しい設備を電力系統の需給バランスの調整のためのリソースとして利用できるようにする。
【解決手段】電力需給制御システムは、需要家に存在する設備により電力系統の需給バランスを調整する。上記設備は、電力系統に接続する、一般負荷設備及び蓄電池と、上記蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置と、を含む。一般負荷設備及び充放電制御装置と通信可能に接続する負荷監視制御装置は、電力系統の需給調整サーバから需要家の負荷の調整指令を受信し、需要家の受給点における負荷の計測値を取得し、負荷が調整指令の目標負荷になるように、一般負荷設備の動作を制御する。また、負荷監視制御装置は、充放電制御装置を制御することにより、一般負荷設備の制御では解消することができない負荷と目標負荷との差分が解消するように蓄電池を充電又は放電させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続する需要家に存在する設備により前記電力系統の需給バランスを調整する電力需給制御システムであって、
前記設備には、前記電力系統に接続する、一般負荷設備及び蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置と、が含まれ、
前記一般負荷設備及び前記充放電制御装置と通信可能に接続し、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置である負荷監視制御装置を備え、
前記負荷監視制御装置は、
前記電力系統の需給調整を行う需給調整サーバと通信可能に接続し、
前記需給調整サーバから前記需要家の負荷の調整指令を受信し、
前記需要家の受給点における負荷の計測値を取得し、
前記負荷が前記調整指令の目標負荷になるように、前記一般負荷設備の動作を制御し、
前記充放電制御装置を制御することにより、前記一般負荷設備の制御では解消することができない、前記負荷と前記目標負荷との差分を解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させる、
電力需給制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記調整指令は、下げDR(Demand Response)であり、
前記負荷監視制御装置は、
前記需要家の受給点における負荷を下げるように、前記一般負荷設備の動作を制御し、
前記差分が解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させる、
電力需給制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記調整指令は、上げDR(Demand Response)であり、
前記負荷監視制御装置は、
前記需要家の受給点における負荷を上げるように、前記一般負荷設備の動作を制御し、
前記差分が解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させる、
電力需給制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記一般負荷設備は、エアーコンディショナ、ヒートポンプ式給湯器、電気温水器、電気ストーブ、ホットカーペット、電気式乾燥機、電気床暖房、及び生ゴミ処理機のうちの少なくともいずれかである、
電力需給制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記一般負荷設備は、オン又はオフの2値制御が行われる設備であり、
前記負荷監視制御装置は、前記一般負荷設備の消費電力の時間的な積算値に基づき、前記負荷が前記調整指令の目標負荷になるように、前記一般負荷設備の動作を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電力需給制御システムであって、
前記一般負荷設備は電気温水器である、
電力需給制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記一般負荷設備は、前記電力系統を構成するVPP(Virtual Power Plant)の需給バランスの調整のためのリソースとして機能する、
電力需給制御システム。
【請求項8】
電力系統に接続する需要家に存在する設備により前記電力系統の需給バランスを調整する電力需給制御方法であって、
前記設備には、前記電力系統に接続する、一般負荷設備及び蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置と、が含まれ、
前記一般負荷設備及び前記充放電制御装置と通信可能に接続し、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置である負荷監視制御装置が、
前記電力系統の需給調整を行う需給調整サーバから前記需要家の負荷の調整指令を受信するステップ、
前記需要家の受給点における負荷の計測値を取得するステップ、
前記負荷が前記調整指令の目標負荷になるように、前記一般負荷設備の動作を制御するステップ、及び、
前記充放電制御装置を制御することにより、前記一般負荷設備の制御では解消することができない、前記負荷と前記目標負荷との差分を解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させるステップ、
を実行する、電力需給制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電力需給制御方法であって、
前記調整指令は、下げDR(Demand Response)であり、
前記負荷監視制御装置が、
前記需要家の受給点における負荷を下げるように、前記一般負荷設備の動作を制御するステップ、及び、
前記差分が解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させるステップ、
を実行する、電力需給制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の電力需給制御方法であって、
前記調整指令は、上げDR(Demand Response)であり、
前記負荷監視制御装置が、
前記需要家の受給点における負荷を上げるように、前記一般負荷設備の動作を制御するステップ、及び、
前記差分が解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させるステップ、
を実行する、電力需給制御方法。
【請求項11】
請求項8に記載の電力需給制御方法であって、
前記一般負荷設備は、オン又はオフの2値制御が行われる設備であり、
前記負荷監視制御装置が、前記一般負荷設備の消費電力の時間的な積算値に基づき、前記負荷が前記調整指令の目標負荷になるように、前記一般負荷設備の動作を制御するステップ、
を実行する、電力需給制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給制御システム、及び電力需給制御方法に関し、とくに電力系統の需給バランスを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電や風力発電等の自然の状況によって発電量が左右され易い再生可能エネルギーの導入、コージェネレーションや蓄電池等の需要家側への分散型エネルギーリソース(以下、「リソース」と称する。)の普及により、電力の需給バランスを意識したエネルギーマネージメントの重要性に対する認識が高まっている。こうした状況を背景として、工場や家庭等の需要家側に存在する分散型のリソースをIoTを活用し束ねて遠隔/統合制御(アグリゲーション)することにより電力の需給バランスの調整を行う、いわゆるVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の検討/構築が進められており、様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、需要家に受け入れられ易いリソースの制御を行うことを目的として構成された電力制御システムについて記載されている。電力制御システムは、特定指令に基づき施設に設置されたリソースを制御し、電力需給に関する調整力又は卸電力を提供する。電力制御システムは、特定指令を取得し、施設における受電電力に関する受電情報を取得し、特定指令と受電情報とから施設のリソースに対する制御の方向性が上げ方向に該当するか否かを判定し、上げ方向に該当すると判定した場合、リソースに対する制御を実施すべきか否かを判定する。
【0004】
また例えば、特許文献2には、高精度のデマンドレスポンスを実現することを目的として構成されたデマンドレスポンスシステムについて記載されている。デマンドレスポンスシステムは、第1ヒートポンプ機器を含む第1機器群のデマンドレスポンス関連制御を行う第1アグリゲータ装置と、第1機器群とは異なる第2機器群のデマンドレスポンス関連制御を行う第2アグリゲータ装置と、第1アグリゲータ装置及び第2アグリゲータ装置にエネルギー調整要求を送信する第1上位アグリゲータ装置と、を備える。第1アグリゲータ装置は、エネルギー調整要求に応じ、第1機器群用の第1専用コマンドを用いて、複数の建物に設置されている第1機器群のデマンドレスポンス関連制御を行う。第2アグリゲータ装置は、エネルギー調整要求に応じ、第1専用コマンドとは異なる、第2機器群用の第2専用コマンドを用いて、複数の建物に設置されている第2機器群のデマンドレスポンス関連制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/261797号
【特許文献2】特開2014-236580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現状、VPPにおいてリソースとして主に用いられる設備は、蓄電池や自家発電設備のように発電出力や消費電力の制御が可能な設備となっている。一方、需要家側に存在する、例えば、エアーコンディショナ(以下、「エアコン」と称する。)やヒートポンプ式給湯器、電気温水器(電気給湯器)等の設備も消費電力が比較的大きく、VPPのリソースとしての活用が期待されるが、以下のような課題がある。例えば、エアコンやヒートポンプ式給湯器は、室温設定やシフト機能等により消費電力をある程度制御することが可能であるが、ユーザの利用の自由度を確保する必要があるため、VPPのリソースとしての厳密な制御が難しい。また、電気温水器は、オンオフ制御により消費電力の上げ下げが可能であるが、通常はオンオフの2値制御(100%負荷又は0%負荷)となるためDR指令等の調整指令に応じた消費電力の厳密な制御は難しい。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、消費電力の制御(設定、制御)や消費電力の予測が難しい設備を電力系統の需給バランスの調整のためのリソースとして利用することが可能な、電力需給制御システム、及び電力需給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、電力系統に接続する需要家に存在する設備により前記電力系統の需給バランスを調整する電力需給制御システムであって、前記設備には、前記電力系統に接続する、一般負荷設備及び蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置と、が含まれ、前記一般負荷設備及び前記充放電制御装置と通信可能に接続し、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置である負荷監視制御装置を備え、前記負荷監視制御装置は、前記電力系統の需給調整を行う需給調整サーバと通信可能に接続し、前記需給調整サーバから前記需要家の負荷の調整指令を受信し、前記需要家の受給点における負荷の計測値を取得し、前記負荷が前記調整指令の目標負荷になるように、前記一般負荷設備の動作を制御し、前記充放電制御装置を制御することにより、前記一般負荷設備の制御では解消することができない、前記負荷と前記目標負荷との差分を解消するように、前記蓄電池を充電又は放電させる。
【0009】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消費電力の指定(設定、制御)や消費電力の予測が難しい設備を電力系統の需給バランスの調整のためのリソースとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電力需給制御システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】需要家における主な設備構成を示す図である。
【
図3A】需給調整サーバから調整指令として「下げDR」を受信した場合における負荷の制御の一例である。
【
図3B】需給調整サーバから調整指令として「上げDR」を受信した場合における負荷の制御の一例である。
【
図4】一般負荷設備が電気温水器である場合における負荷の制御の一例である。
【
図5】需給調整サーバが備える主な機能を説明する図である。
【
図6】負荷監視制御装置が備える主な機能を説明する図である。
【
図7】負荷制御処理を説明するフローチャートである。
【
図8】需給調整サーバや負荷監視制御装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、符号の前に付している「S」の文字は処理ステップを意味する。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態として示す電力需給制御システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、電力需給制御システム1は、一つ以上の需要家2、電力系統3、及び需給調整サーバ100を含む。
【0014】
電力系統3を構成する各種設備、需要家2、及び需給調整サーバ100は、通信ネットワーク5を介して通信可能に接続している。通信ネットワーク5は、有線方式又は無線方式による通信を実現する通信基盤であり、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、無線LAN、電力線通信網(Power Line Communication Network)、各種公衆通信網、専用線等である。
【0015】
電力系統3は、例えば、火力発電設備等の従来型の発電設備、風力発電設備や太陽光発電設備(PV:PhotoVoltaic)等の再生可能エネルギー利用型の発電設備等を含む。電力系統3は、VPP(Virtual Power Plant)としての機能を含み、需要家2の設備をVPPのリソースとして利用する。
【0016】
需給調整サーバ100は、送配電事業者等の電力系統3の運用主体(一般送配電事業者、アグリゲーション事業者等)によって運用される情報処理装置である。需給調整サーバ100は、電力系統3に接続する各種発電設備の電力のリアルタイムな供給量と、電力系統3に接続する各需要家2に設置されているスマートメータ等の計測値に基づく電力のリアルタイムな使用量を取得し、取得した供給量及び使用量に基づき、電力系統3における電力需給バランスの調整(負荷平準化、再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時における必要電力の供給等)を行う。例えば、運用主体が一般送配電事業者である場合、需給調整サーバ100は、例えば、変電所単位のリアルタイムな需給情報を用いて上記調整を行う。また、例えば、運用主体がアグリゲーション事業者である場合、需給調整サーバ100は、例えば、スマートメータ等から取得される計測値等用いて上記調整を行う。上記調整は、例えば、過去に蓄積されている情報(需給情報、気象情報等)や気象予測情報もしくは需要予測情報等に基づく予測(発電計画)、観測値(実測値)に基づく上記予想の補完(出力調整や市場からの調達等)、周波数に応じた発電機の出力調整(ガバナフリー等の高速出力調整等により行われる。需給調整サーバ100は、例えば、EMS(Energy Management System)として機能するものであってもよい。
【0017】
需給調整サーバ100は、例えば、DR(Demand Response)により電力系統3における電力の需給バランスの調整を行う。需給調整サーバ100は、VPPにおけるアグリゲーターサーバ(Aggregator Server)として機能し、例えば、再生可能エネルギーの過剰出力分を消費させるために蓄電池31の充電を促す指令(以下、「上げDR」と称する。)を需要家2に送信する。また例えば、需給調整サーバ100は、電気のピーク需要の時間体等の電力の供給量の不足時に、蓄電池31の放電(電力系統3への供給)を促す指令(以下、「下げDR」と称する。)を需要家2に送信する。
【0018】
図2に、需要家2における主な設備構成を示している。同図に示すように、需要家2には、スマートメータ20、負荷監視制御装置200、蓄電池31、充放電制御装置30、及び一般負荷設備40が設置されている。スマートメータ20は、電力系統3と接続する。一般負荷設備40、充放電制御装置30、及び負荷監視制御装置200は、宅内配線7を介して電力系統3等からの電力の供給を受ける。
【0019】
スマートメータ20及び負荷監視制御装置200は、通信ネットワーク5を介して需給調整サーバ100や電力系統3と直接的又は間接的に通信可能に接続している。尚、スマートメータ20及び負荷監視制御装置200と需給調整サーバ100や電力系統3との間の通信の形態は必ずしも限定されない。負荷監視制御装置200は、宅内通信ネットワーク6を介して、スマートメータ20、充放電制御装置30、及び一般負荷設備40と通信可能に接続する。宅内通信ネットワーク6は、有線方式又は無線方式による通信を実現する通信基盤であり、例えば、LAN、WAN、無線LAN、電力線通信網等である。宅内通信ネットワーク6では、例えば、ECHONET(登録商標)等の規格に準拠した通信が行われる。負荷監視制御装置200は、いわゆるHEMS(Home Energy Management System)サーバ等(HEMSゲートウェイ等を含む)として機能するものであってもよい。
【0020】
スマートメータ20は、計時装置、電圧計、電流計等の各種計測装置を備え、需要家2における負荷(消費電力)の計測、電力系統3から需要家2に供給される電力の計測、需要家2から電力系統3に提供される電力の計測等を行い、それらの時系列の計測値を負荷監視制御装置200にリアルタイムに通知(送信)する。尚、本実施形態では、こうした機能を備える装置の一例としてスマートメータ20を示すが、例示するスマートメータ20と同等以上の機能を備えるものであれば、スマートメータ20以外の他の種類の装置(更に他の種類のセンサを備えるもの等)としてもよい。
【0021】
充放電制御装置30は、宅内配線7を介して供給される電力により蓄電池31を充電する。また、充放電制御装置30は、宅内配線7に蓄電池31の電力(放電電力)を供給する。蓄電池31は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の二次電池である。
【0022】
充放電制御装置30は、負荷監視制御装置200から送られてくる、充電又は放電の制御指令に応じて、蓄電池31の充電又は放電の制御を行う。充放電制御装置30は、蓄電池31の状態に関するリアルタイムな情報(蓄電池31の充電電圧や放電電圧、SOC(State Of Charge)等)を負荷監視制御装置200に通知(送信)する。
【0023】
一般負荷設備40は、需要家2に存在する、単独では負荷と目標負荷との差分を解消することができない負荷設備であり、例えば、低圧設備や一般家庭用設備等(エアーコンディショナ(以下、「エアコン」と称する。)、ヒートポンプ式給湯器(所謂「Air To Water」と称されるものを含む。)、電気温水器(電気給湯器)等)である。一般負荷設備40は、負荷監視制御装置200からの指示に応じて自身の動作(例えば、エアコンやヒートポンプ式給湯器であれば設定温度や風量等、電気温水器であれば電源のオンオフ等)を制御する。
【0024】
負荷監視制御装置200は、スマートメータ20から、需要家2の負荷(電力系統3との受給点における負荷(需要家2全体の負荷))を取得する。また、負荷監視制御装置200は、需給調整サーバ100から通信ネットワーク5を介して送られてくる、電力系統3の需給バランスの調整指令を受信する。負荷監視制御装置200は、需給調整サーバ100から受信した調整指令に応じて、一般負荷設備40の消費電力や蓄電池31の充放電を制御する。負荷監視制御装置200は、上記調整指令に応じて次のように動作する。
【0025】
例えば、
図3Aは、需給調整サーバ100から調整指令として「下げDR」を受信した場合の負荷監視制御装置200の動作の一例である。例示するグラフの横軸は時間であり、縦軸は需要家2の受給点(スマートメータ20と電力系統3の接続点)における負荷である。同図において、グラフ311は、「下げDR」が無い場合における受給点の負荷を示し、グラフ312は、受信した「下げDR」の目標負荷になるように一般負荷設備40の消費電力を制御した場合における負荷(グラフ311から低下した負荷)を示し、グラフ313は、受信した「下げDR」が指示する受給点の目標負荷を示す。この場合、負荷監視制御装置200は、受給点の負荷が目標負荷(グラフ313)に近づくように充放電制御装置30の充電又は放電を制御し、一般負荷設備40の制御のみでは解消することができない、受給点の負荷と目標負荷との差分の解消を図る。
【0026】
図3Bは、需給調整サーバ100から調整指令として「上げDR」を受信した場合の負荷監視制御装置200の動作の一例である。例示するグラフの横軸は時間であり、縦軸は需要家2の受給点における負荷である。同図において、グラフ311は、受信した「上げDR」が無い場合における受給点の負荷を示し、グラフ312は、受信した「上げDR」の目標負荷になるように一般負荷設備40の消費電力を制御した場合における負荷(グラフ311から上昇した負荷)を示し、グラフ313は、受信した「上げDR」が指示する受給点の目標負荷を示す。この場合、負荷監視制御装置200は、受給点の負荷が目標負荷(グラフ313)に近づくように充放電制御装置30による蓄電池31の充電又は放電を制御し、一般負荷設備40の制御のみでは解消することができない、受給点の負荷と目標負荷との差分の解消を図る。
【0027】
尚、一般負荷設備40が、例えば、電気温水器のようにオン又はオフの2値(100%負荷又は0%負荷)制御しか行うことができないものである場合には、例えば、負荷監視制御装置200が、消費電力の時間的な積算値に基づき、受給点の負荷が目標負荷になるように、一般負荷設備40のオン又はオフを制御するようにする。
【0028】
図4に、一般負荷設備40が電気温水器である場合におけるオンオフ制御の一例を示す。同図は需給調整サーバ100から調整指令として「下げDR」を受信した場合の例である。同図に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は需要家2の受給点における負荷である。
【0029】
同図において、グラフ411は、「下げDR」が無い場合における受給点の負荷の例であり、グラフ412は、一般負荷設備40(同図では電気温水器)をオンオフ制御した場合における一般負荷設備40の消費電力の例である。また、グラフ413は、受信した「下げDR」における受給点の目標負荷を示し、グラフ414は、需要家2の受給点負荷と目標負荷との差分を解消するための蓄電池31の充電又は放電の制御の例を示す。負荷監視制御装置200は、例えば、同図に例示する評価期間における消費電力の時間的な積算値により受給点の負荷と目標負荷との差分が解消されるように、蓄電池31の充電又は放電(グラフ414)を制御する。
【0030】
以上のように、負荷監視制御装置200は、需給調整サーバ100から調整指令(例えばDR指令)を受信した場合、一般負荷設備40を制御することにより、(即ち、一般負荷設備40を需給バランスの調整に利用することにより)、需要家2の受給点の負荷が、受信した調整指令の目標負荷に近づくようにする。また、一般負荷設備40の制御では解消することができない受給点の負荷と目標負荷との差分については、負荷監視制御装置200は、充放電制御装置30により蓄電池31の充電又は放電を制御することにより解消を図る。このように、本実施形態の電力需給制御システム1によれば、一般負荷設備40を電力系統3やVPPの受給調整を行うためのリソースとして活用することができるとともに、需給調整サーバ100からの調整指令に精度良く対応することができる。
【0031】
図5は、需給調整サーバ100が備える主な機能の一例を説明するブロック図である。同図に示すように、需給調整サーバ100は、記憶部110及び需給バランス調整部125の各機能を備える。
【0032】
上記機能のうち、記憶部110は、電力需給状況情報111を記憶する。電力需給状況情報111は、電力系統3に接続する各種発電設備からの電力の供給量の時系列情報や、需要家のスマートメータから送られてくる計測値に基づく電力の使用量の時系列情報を含む。
【0033】
需給バランス調整部125は、電力需給状況情報111に基づき、需給バランスの調整が必要か否かを判定する。需給バランスの調整が必要と判定した場合、需給バランス調整部125は、電力需給状況情報111に基づき需給バランスの調製方法(制御方法)を立案し、立案した調製方法に基づく調整指令(例えばDR指令)を生成して負荷監視制御装置200に送信する。尚、需給バランスの調製方法の立案は、例えば、公知の手法(例えば、過去の需給実績や気象条件に基づき需給予測を行うアルゴリズム等)を用いて行われる。
【0034】
図6は、負荷監視制御装置200が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、負荷監視制御装置200は、記憶部210、調整指令受信部220、一般負荷設備制御部225、受給点負荷取得部230、差分算出部235、充放電制御部240、蓄電池SOC管理部245、及び機器情報取得部250の各機能を備える。
【0035】
上記機能のうち、記憶部210は、調整指令211、受給点負荷212、差分情報213、蓄電池SOC214、及び機器情報215の各情報(データ)を記憶する。
【0036】
調整指令受信部220は、需給調整サーバ100から送られてくる調整指令(例えばDR指令)を受信し、受信した調整指令を調整指令211として管理する。調整指令は、目標負荷を特定可能な情報を含む。
【0037】
一般負荷設備制御部225は、一般負荷設備40の消費電力を制御する。例えば、一般負荷設備制御部225は、一般負荷設備40に対し、冷房動作中のエアコンの設定温度を上げるもしくは下げる、電気温水器の加熱動作を開始(オン)するもしくは停止(オフ)する等の制御指示を送信することにより、直接的に一般負荷設備40の消費電力を制御する。尚、一般負荷設備制御部225が、例えば、一般負荷設備40の利用者(ユーザ)に対し、一般負荷設備40の消費電力を変化させるように促す指示(メッセージ)を提示することにより、一般負荷設備制御部225が間接的に一般負荷設備40の消費電力を制御する構成としてもよい。
【0038】
受給点負荷取得部230は、需要家2の受給点におけるリアルタイムな負荷(需要家2全体の負荷)をスマートメータ20等から取得し、取得した負荷を受給点負荷212として管理する。
【0039】
差分算出部235は、調整指令における需給点の目標負荷と現在の需要家2の受給点の負荷との差分を求め、求めた差分を差分情報213として管理する。
【0040】
充放電制御部240は、差分情報213に応じて(需給点の目標負荷と現在の需要家2の受給点の負荷との差分が解消するように)蓄電池31の充電又は放電を制御する。
【0041】
機器情報取得部250は、宅内通信ネットワーク6を介して一般負荷設備40に関する情報(各機器の負荷や稼働状況等)を取得し、取得した情報を機器情報215として管理する。
【0042】
蓄電池SOC管理部245は、充放電制御部240から蓄電池31のSOC(State Of Charge)を取得し、取得したSOCを蓄電池SOC214として管理する。また、蓄電池SOC管理部245は、調整指令を受信していない期間(調整指令に応じた制御を行っていない期間)において、蓄電池SOC214のSOCが予め設定した適正値になるように充放電制御装置30による充電又は放電を制御する。尚、上記適正値は、充放電制御装置30からの充電又は放電のいずれの制御指令についても対応可能な値(例えば、50%)に設定される。
【0043】
図7は、負荷監視制御装置200が行う処理(以下、「負荷制御処理S700」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに負荷制御処理S700について説明する。
【0044】
負荷監視制御装置200は、需給調整サーバ100から送られてくる調整指令(例えば、下げDR、上げDR)の受信をリアルタイムに監視(待機)している(S711:NO)。負荷監視制御装置200は、需給調整サーバ100から調整指令を受信すると(S711:YES)、受信した調整指令に応じて一般負荷設備40の消費電力の制御を開始する(S712)。
【0045】
例えば、受信した調整指令が「下げDR」であれば、負荷監視制御装置200は、一般負荷設備40の消費電力が下がるように、一般負荷設備40を制御する(例えば、冷房動作中のエアコンの設定温度を上げる、電気温水器の加熱動作を停止(オフ)する等)。また、例えば、受信した調整指令が「上げDR」であれば、負荷監視制御装置200は、一般負荷設備40の消費電力が上がるように、一般負荷設備40を制御する(例えば、冷房動作中のエアコンの設定温度を下げる、電気温水器の加熱動作を開始(オン)する等)。
【0046】
負荷監視制御装置200は、需要家2の受給点の負荷(全体負荷)をリアルタイムに計測するとともに(S713)、計測した負荷と受信した調整指令の目標負荷との差分を算出する(S714)。そして、負荷監視制御装置200は、算出した差分が解消されるように、蓄電池31の充電又は放電の制御量を決定し(S715)、決定した制御量で蓄電池31の充電又は放電を制御する(S716)。尚、差分の解消は、例えば、評価期間(差分の解消の状況を評価する期間)内で実行するように(評価期間全体として差分が解消されるように)してもよい。
【0047】
続いて、負荷監視制御装置200は、調整指令の対象期間が経過しているか否か(調整指令が解除されたか否か)を判定する(S717)。調整指令の対象期間が経過していなければ(S717:NO)、処理はS713に戻る。調整指令の対象期間が経過していれば(S717:YES)、処理はS711に戻る。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態の電力需給制御システム1によれば、一般負荷設備40の動作を制御することにより、需要家2の受給点における負荷を需給調整サーバ100から送られてくる調整指令の目標負荷に近づける。また、一般負荷設備40の制御では解消することができない、受給点における負荷と調整指令の目標負荷との差分については、蓄電池31を充電又は放電させることにより解消を図る。このように、本実施形態の電力需給制御システム1によれば、需要家2の一般負荷設備40を電力系統3の需給バランスの調整に用いることができるとともに、蓄電池31の充電又は放電させることにより調整指令に厳密に(精度良く)対応することができる。
【0049】
<情報処理装置の例>
図8は、需給調整サーバ100や負荷監視制御装置200の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。需給調整サーバ100や負荷監視制御装置200は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0050】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0051】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0052】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0053】
入力装置14は、外部から各種情報(機器情報等)の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0054】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報や各種制御情報、制御指令等を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0055】
入力装置14および出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0056】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0057】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0058】
需給調整サーバ100や負荷監視制御装置200が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、需給調整サーバ100や負荷監視制御装置200を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。需給調整サーバ100や負荷監視制御装置200は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0060】
例えば、一般負荷設備40は、前述したものに限られず、例えば、他の種類の設備(電気ストーブ、ホットカーペット、電気式乾燥機、電気床暖房、生ゴミ処理機等)でもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 電力需給制御システム、2 需要家、3 電力系統、5 通信ネットワーク、6 宅内通信ネットワーク、7 宅内配線、20 スマートメータ、30 充放電制御装置、31 蓄電池、40 一般負荷設備、100 需給調整サーバ、111 電力需給状況情報、110 記憶部、125 需給バランス調整部、200 負荷監視制御装置、210 記憶部、211 調整指令、212 受給点負荷、213 差分情報、214 蓄電池SOC、220 調整指令受信部、225 一般負荷設備制御部、230 受給点負荷取得部、235 差分算出部、240 充放電制御部、245 蓄電池SOC管理部、S700 負荷制御処理