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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069867
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20240515BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240515BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L23/02 Z
H01L23/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180120
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】水垣 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 知之
(72)【発明者】
【氏名】松澤 勇介
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF09
5J108FF13
5J108GG03
5J108GG14
(57)【要約】
【課題】振動素子の振動特性の劣化を抑えることが可能な振動デバイスを提供する。
【解決手段】ベース10は、貫通孔63と、貫通孔63の側面63aに配置された側面絶縁層31と、を有し、蓋体は、ベース10の第1面10aの側に配置され、ベース10の第2面10bの側において、貫通孔63と平面視で重なる領域にパッド64が配置された、振動デバイスであって、側面絶縁層31の上からパッド64の上に亘って配置された第1導電層32と、第1導電層32の材質と異なる第2導電層33と、を備え、第2導電層33は、貫通孔63に配置された第1導電層32の上である第1部分33Aと、第1部分33Aに連続し、ベース10の第1面10aにおいて振動素子とパッド64とを電気的に接続する第2部分33Bと、第1部分33A及び第2部分33Bと離間する領域であって、平面視で振動素子を囲む形状である第3部分と、に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、蓋体と、振動素子と、を含み、
前記ベースは、第1面と、前記第1面と表裏関係にある第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する貫通孔と、前記貫通孔の側面に配置された側面絶縁層と、を有し、
前記蓋体は、前記ベースの前記第1面の側に配置され、
前記ベースの前記第2面の側において、前記貫通孔と平面視で重なる領域にパッドが配置された、振動デバイスであって、
前記側面絶縁層の上から前記パッドの上に亘って配置された第1導電層と、
前記第1導電層の材質と異なる第2導電層と、
を備え、
前記第2導電層は、
前記貫通孔に配置された前記第1導電層の上である第1部分と、
前記第1部分に連続し、前記ベースの前記第1面において前記振動素子と前記パッドとを電気的に接続する第2部分と、
前記第1部分及び前記第2部分と離間する領域であって、平面視で前記振動素子を囲む形状である第3部分と、
に配置されている、振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の振動デバイスであって、
前記第3部分に配置された前記第2導電層が前記蓋体と接合され、
前記ベースと前記蓋体とによって囲まれた空間に、前記振動素子が収容されている、振動デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の振動デバイスであって、
前記ベースは、半導体基板を含み、
前記半導体基板の前記第1面に、前記第2導電層の前記第3部分が配置されている、振動デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスであって、
前記第1導電層は、Cu及びAlのうち少なくとも一方を含む、振動デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスであって、
前記第2導電層は、Auを含む、振動デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスであって、
前記第1導電層は、Cu及びAlのうち少なくとも一方を含み、
前記第2導電層は、Auを含む、振動デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスであって、
前記第2導電層の前記第2部分と前記第1面との間に、前記第1導電層が配置されている、振動デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスであって、
前記側面絶縁層は、前記第1面側の開口幅より、前記第2面側の開口幅の方が狭くなっているテーパー形状の樹脂である、振動デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスであって、
前記ベースには、前記振動素子を発振させる発振回路が配置されている、振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン基板と蓋体とを接合して、振動素子を気密に収容した振動デバイスにおいて、振動素子の配線を外部に引き出すために、シリコン基板の貫通孔の側面及び底面に電極を形成する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-195116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、貫通孔に形成された電極の膜厚が薄くなりやすく、電極の電気的な抵抗が高くなることから、振動素子の振動特性が劣化する恐れがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動デバイスは、ベースと、蓋体と、振動素子と、を含み、前記ベースは、第1面と、前記第1面と表裏関係にある第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する貫通孔と、前記貫通孔の側面に配置された側面絶縁層と、を有し、前記蓋体は、前記ベースの前記第1面の側に配置され、前記ベースの前記第2面の側において、前記貫通孔と平面視で重なる領域にパッドが配置された、振動デバイスであって、前記側面絶縁層の上から前記パッドの上に亘って配置された第1導電層と、前記第1導電層の材質と異なる第2導電層と、を備え、前記第2導電層は、前記貫通孔に配置された前記第1導電層の上である第1部分と、前記第1部分に連続し、前記ベースの前記第1面において前記振動素子と前記パッドとを電気的に接続する第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分と離間する領域であって、平面視で前記振動素子を囲む形状である第3部分と、に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】振動デバイスの構成を示す斜視図。
図2】振動デバイスの構成を示す平面図。
図3図2に示す振動デバイスのA-A線に沿う断面図。
図4図3に示す振動デバイスのB部を拡大して示す断面図。
図5図3に示す振動デバイスのB部を上方から見た平面図。
図6】振動デバイスの接合領域周辺の構成を示す断面図。
図7】振動デバイスの一部の製造方法を示す断面図。
図8】振動デバイスの一部の製造方法を示す断面図。
図9】振動デバイスの一部の製造方法を示す断面図。
図10】振動デバイスの一部の製造方法を示す断面図。
図11】振動デバイスの一部の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸を、X軸、Y軸、及びZ軸として説明する。また、X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」又は「表側」、-Z方向を「下」又は「下方」又は「裏側」ということもあり、+Z方向及び-Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を「上面」又は「表面」、これと反対側となるZ方向-側の面を「下面」又は「裏面」として説明する。
【0008】
まず、図1図3を参照しながら、振動デバイス100の構成について説明する。なお、図2に示す振動デバイス100は、内部の構成を説明する便宜上、蓋体20を外した状態を図示している。
【0009】
図1に示すように、振動デバイス100は、ベース10と、ベース10の上に配置された蓋体20と、ベース10と蓋体20とを接合する接合層30と、ベース10に搭載された振動素子40(図3参照)と、を備えている。
【0010】
図2及び図3に示すように、振動素子40は、ベース10の第1面10aに固定されている。振動素子40は、例えば、水晶基板からなる素子基板41と、素子基板41の蓋体20側に配置された第1励振電極42と、素子基板41のベース10側に配置された第2励振電極43と、を備えている。
【0011】
第1励振電極42や第2励振電極43の構成材料としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、Ti(チタン)、タングステン(W)等の金属材料、これら金属材料を含む合金を用いることができる。
【0012】
ベース10は、第1面10aと、第1面10aと表裏関係にある第2面10bと、第1面10aから第2面10bに貫通する貫通孔63と、貫通孔63の側面63aに配置された側面絶縁層31(図4参照)と、を有する。ベース10の第2面10bの側には、貫通孔63と平面視で重なる領域にパッド64が配置されている。
【0013】
ベース10は、例えば、半導体基板で構成されている。ベース10における振動素子40が配置された側と反対側には、振動素子40を発振させる発振回路60が形成されている。発振回路60を備えることにより、振動デバイス100を、水晶発振器として用いることができる。なお、発振回路60を設けることなく、水晶振動子として用いるようにしてもよい。
【0014】
蓋体20は、ベース10の第1面10aの側に配置されている。蓋体20は、例えば、シリコン基板で構成されており、キャビティーSを形成するための凹部21を有する箱状の容器である。接合層30を介して、ベース10と蓋体20とを接合することにより、蓋体20の凹部21内に振動素子40が収容される。即ち、振動素子40は、ベース10と蓋体20とによって囲まれた空間に気密に封止される。気密に封止された空間を、キャビティーSと称する。
【0015】
図2及び図3に示すように、接合層30は、振動素子40を囲む、ベース10と蓋体20とを接合する接合領域70において、枠状に形成されている。接合層30は、例えば、厚さが100nm程度の金(Au)を用いて、表面活性化接合により接合されている。なお、金(Au)に限定されることなく、銅(Cu)やアルミニウム(Al)などを用いるようにしてもよい。また、これらの材料を用いることなく、シリコン基板同士を活性化させて接合するようにしてもよい。
【0016】
活性化接合は、アルゴンガスなどのエネルギービームを接合層30に照射することにより、接合層30の表面を活性化させた後に、ベース10と蓋体20とを接触させて接合を行う方法である。このような活性化接合によれば、金(Au)原子が接触面において拡散、再組織化を生じて接合が行われるため、接合界面のない強固な接合となる。また、接合層30の表面を平滑にすることにより、接合層30の表面の自由表面エネルギーのみで接合を行うことができるので、常温でかつ積極的な加圧をせずに接合を行うことができる。
【0017】
ベース10の第1面10aには、マウント電極61が設けられている。マウント電極61は、導電性接合部材62を介して、振動素子40と電気的に接続されている。また、振動素子40は、導電性接合部材62によって接合されることにより、ベース10の第1面10aに固定される。
【0018】
マウント電極61は、例えば、貫通孔63を介して発振回路60と電気的に接続されている。発振回路60は、発振回路60の下面に配置された外部接続端子71,72,73と電気的に接続されている。具体的には、外部接続端子71,72,73は、発振回路60と電気的に接続された電源外部端子、グランド外部端子、発振出力外部端子を含む。このように構成されることにより、発振回路60は、電源外部端子を介して外部から供給された電源により駆動し、振動素子40を発振させて発振信号を生成し、発振出力外部端子を介して外部へ発振信号を出力する。
【0019】
導電性接合部材62としては、例えば、金バンプやはんだバンプなどの金属バンプや、導電性フィラーを分散させた樹脂接着剤などが挙げられる。
【0020】
発振回路60は、例えば、図示しない複数のトランジスターなどの能動素子が配線により電気的に接続された回路である。発振回路60は、例えば、振動素子40を発振させてクロック信号等の基準信号の周波数を生成する。なお、発振回路60に限定されることなく、振動素子40の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路などであってもよい。
【0021】
次に、図4図6を参照しながら、貫通孔63及びマウント電極61の構成について説明する。
【0022】
図4に示すように、ベース10の上には、酸化シリコン(SiO2)などからなる絶縁層65が形成されている。ベース10及び絶縁層65には、上記したように、平面視でパッド64と重なるように貫通孔63が配置されている。
【0023】
貫通孔63の側面63aには、側面絶縁層31が配置されている。側面絶縁層31は、例えば、樹脂などの有機絶縁層である。また、酸化シリコンなどであってもよい。なお、側面絶縁層31に有機絶縁層を用いることにより、ベース10の第1面10a側の開口幅より、第2面10b側の開口幅の方が狭くなるように、側面絶縁層31を形成することができる。
【0024】
このように、側面絶縁層31が、第1面10a側の開口幅の方が広いテーパー形状になっているので、後述する、側面絶縁層31の上に配置される第1導電層32及び第2導電層33のカバレッジ性を向上させることが可能となり、導電層の電気的な抵抗を下げることができる。
【0025】
側面絶縁層31の上、言い換えれば、側面絶縁層31の表面には、パッド64に亘って、第1導電層32が形成されている。第1導電層32は、例えば、TiW(チタン・タングステン)/Cu(銅)からなる積層膜である。なお、Cu(銅)に代えて、例えば、Cu(銅)及びAl(アルミニウム)の少なくとも一方を含むようにしてもよい。なお、第1導電層32は、貫通孔63から導電性接合部材62と重なる領域に亘って形成されている。
【0026】
図4及び図5に示すように、第1導電層32の上には、第1導電層32の全体を覆うように、第2導電層33が形成されている。第2導電層33は、例えば、TiW(チタン・タングステン)/Au(金)からなる積層膜である。
【0027】
このように、第1導電層32にCu(銅)、第2導電層33にAu(金)の材料を用いるので、電気的な抵抗を低くすることが可能となり、振動素子40の振動特性が劣化することを抑えることができる。また、導電層を、第1導電層32と第2導電層33との2層構造にするので、振動素子40とパッド64とを電気的に接続する導電層32,33の抵抗を下げることができる。
【0028】
更に、第2導電層33の下層にCu(銅)などからなる第1導電層32を形成するため、抵抗の低いAu(金)のみで導電層を形成する場合と比較して、かかるコストを抑えることができる。
【0029】
また、図2図4及び図6に示すように、第2導電層33は、貫通孔63に配置された第1導電層32の上である第1部分33Aと、第1部分33Aに連続し、ベース10の第1面10aにおいて振動素子40とパッド64とを電気的に接続する第2部分33Bと、第1部分33A及び第2部分33Bと離間する領域であって、平面視で振動素子40を囲む形状である第3部分33Cと、を有する。
【0030】
つまり、蓋体20は、第3部分33Cに配置された第2導電層33と接合される。また、半導体基板であるベース10の第1面10aに、第2導電層33の第3部分33Cが配置されている。また、第2導電層33の第2部分33Bと第1面10aとの間に、第1導電層32が配置されている。
【0031】
このように、ベース10と蓋体20との接合用の導電層である第2導電層33の第3部分33Cが、他の導電層や絶縁層65を介さずに直接半導体基板に配置されているので、第2導電層33の平坦性を高めることが可能となり、ベース10と蓋体20との接合の信頼性を向上することができる。
【0032】
なお、ベース10の表面の表面粗さは、算術平均粗さRaでみると、例えば、0.3nmである。また、ベース10の上に、絶縁層65や第1導電層32がある場合、算術平均粗さRaでみると、例えば、2nmである。また、ベース10の上に、第1導電層32のみがある場合、算術平均粗さRaでみると、例えば、1nmである。
【0033】
以上のように、貫通孔63の側面絶縁層31の上に第1導電層32が配置され、第1導電層32の上に第2導電層33が配置されるので、特に、貫通孔63の側壁に配置された第1導電層32及び第2導電層33からなる電極の層厚が薄くなることを抑えることができる。よって、電極の電気的な抵抗が高くなることが抑えられ、振動素子40の振動特性が劣化することを抑えることができる。
【0034】
次に、図7図11を参照しながら、振動デバイス100の製造方法、特に、第1導電層32及び第2導電層33の製造方法について説明する。
【0035】
まず、図7に示す工程では、半導体基板からなるベース10の上に、酸化シリコンなどからなる絶縁層65を成膜する。ベース10の厚みは、例えば、80μm程度である。次に、絶縁層65の上に、第1導電層32を構成するTiW膜32aを、スパッタ法などを用いて成膜する。TiW膜32aの厚みは、例えば、150nmである。次に、TiW膜32aの上に、第1導電層32を構成するCu膜32bを、スパッタ法などを用いて成膜する。Cu膜32bの厚みは、例えば、1500nmである。
【0036】
次に、図8に示す工程では、第1導電層32をパターニングする。具体的には、貫通孔63の底部及び側面63a(図4参照)から、平面視で、導電性接合部材62(図3図4参照)と重なる領域の第1導電層32を残し、その他の第1導電層32を、例えば、エッチングして除去する。
【0037】
次に、図9に示す工程では、第2導電層33を成膜する。具体的には、ベース10の全体に、第2導電層33を構成するTiW膜33aを、例えば、スパッタ法を用いて成膜する。TiW膜33aの厚みは、例えば、50nmである。次に、TiW膜33aの上に、第2導電層33を構成するAu膜33bを、例えば、スパッタ法を用いて成膜する。Au膜33bの厚みは、例えば、100nmである。
【0038】
次に、図10に示す工程では、第2導電層33を構成するAu膜33bをパターニングする。具体的には、第1導電層32の全体を覆うAu膜33bと、接合領域70のAu膜33bと、を残して、それ以外の領域のAu膜33bを、例えば、エッチングによって除去する。
【0039】
次に、図11に示す工程では、第2導電層33を構成するTiW膜33aをパターニングする。具体的には、Au膜33bの形状と同様にパターニングする。即ち、不要の領域のTiW膜33aを、例えば、エッチングによって除去する。以上により、ベース10の上に、第1導電層32及び第2導電層33を形成することができる。
【0040】
次に、図示はしないが、第2導電層33の上に、導電性接合部材62を形成し、導電性接合部材62に振動素子40を接合させる(図3図4参照)。導電性接合部材62は、例えば、直径が30μmであり、高さが15μmである、Auバンプである。
【0041】
次に、図6に示すように、接合領域70の第2導電層33、即ち、第3部分33Cを用いて、ベース10と蓋体20とを、上記した活性化接合により接合する。なお、図6に示すように、蓋体20におけるベース10側にも、第2導電層33と同様の蓋体側接合層34を形成するようにしてもよい。また、接合層30は、第2導電層33と蓋体側接合層34とによって構成されている。
【0042】
以上述べたように、本実施形態の振動デバイス100は、ベース10と、蓋体20と、振動素子40と、を含み、ベース10は、第1面10aと、第1面10aと表裏関係にある第2面10bと、第1面10aから第2面10bに貫通する貫通孔63と、貫通孔63の側面63aに配置された側面絶縁層31と、を有し、蓋体20は、ベース10の第1面10aの側に配置され、ベース10の第2面10bの側において、貫通孔63と平面視で重なる領域にパッド64が配置された、振動デバイス100であって、側面絶縁層31の上からパッド64の上に亘って配置された第1導電層32と、第1導電層32の材質と異なる第2導電層33と、を備え、第2導電層33は、貫通孔63に配置された第1導電層32の上である第1部分33Aと、第1部分33Aに連続し、ベース10の第1面10aにおいて振動素子40とパッド64とを電気的に接続する第2部分33Bと、第1部分33A及び第2部分33Bと離間する領域であって、平面視で振動素子40を囲む形状である第3部分33Cと、に配置されている。
【0043】
この構成によれば、貫通孔63の側面絶縁層31の上に第1導電層32が配置され、第1導電層32の上に第2導電層33が配置されるので、特に、貫通孔63の側面63aに配置された第1導電層32及び第2導電層33からなる電極の層厚が薄くなることを抑えることができる。よって、電極の電気的な抵抗が高くなることが抑えられ、振動素子40の振動特性が劣化することを抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態の振動デバイス100において、第3部分33Cに配置された第2導電層33が蓋体20と接合され、ベース10と蓋体20とによって囲まれた空間に、振動素子40が収容されることが好ましい。この構成によれば、第2導電層33によってベース10と蓋体20とが接合されるので、ベース10と蓋体20とによって、振動素子40を気密に封止することができる。
【0045】
また、本実施形態の振動デバイス100において、ベース10は、半導体基板を含み、半導体基板の第1面10aに、第2導電層33の第3部分33Cが配置されていることが好ましい。この構成によれば、ベース10と蓋体20との接合用の導電層である第2導電層33の第3部分33Cが、他の導電層を介さずに直接半導体基板に配置されているので、第2導電層33の平坦性を高めることが可能となり、ベース10と蓋体20との接合の信頼性を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態の振動デバイス100において、第1導電層32は、Cu及びAlのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。この構成によれば、第1導電層32に上記の材料を用いるので、例えば、抵抗の低いAuで全ての電極を形成する場合と比較して、かかるコストを抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態の振動デバイス100において、第2導電層33は、Auを含むことが好ましい。この構成によれば、第2導電層33にAuを用いるので、電気的な抵抗を低くすることが可能となり、振動素子40の振動特性が劣化することを抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態の振動デバイス100において、第1導電層32は、Cu及びAlのうち少なくとも一方を含み、第2導電層33は、Auを含むことが好ましい。この構成によれば、第1導電層32及び第2導電層33に、上記のような電気的な抵抗の低い材料を用いるので、振動素子40の振動特性が劣化することを抑えることができる。更に、第2導電層33と第1導電層32とを併用することにより、第2導電層33のみで電極を形成する場合と比較して、かかるコストを抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態の振動デバイス100において、第2導電層33の第2部分33Bと第1面10aとの間に、第1導電層32が配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1導電層32と第2導電層33との2層構造にするので、ベース10の第1面10a上において、振動素子40とパッド64とを電気的に接続する配線の抵抗を下げることができる。
【0050】
また、本実施形態の振動デバイス100において、側面絶縁層31は、第1面10a側の開口幅より、第2面10b側の開口幅の方が狭くなっているテーパー形状の樹脂であることが好ましい。この構成によれば、第1面10a側の開口幅の方が広いテーパー形状になっているので、側面絶縁層31の上に配置される第1導電層32及び第2導電層33のカバレッジ性を向上させることが可能となり、電極の電気的な抵抗を下げることができる。
【0051】
また、本実施形態の振動デバイス100において、ベース10には、振動素子40を発振させる発振回路60が配置されていることが好ましい。この構成によれば、発振回路60が形成された発振器として用いることができる。
【0052】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0053】
図6に示すように、接合領域70のベース10上に、第2導電層33のみを形成することに限定されず、例えば、第2導電層33の下に、第1導電層32が残っていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…ベース、10a…第1面、10b…第2面、20…蓋体、21…凹部、30…接合層、31…側面絶縁層、32…第1導電層、32a…TiW膜、32b…Cu膜、33…第2導電層、33a…TiW膜、33A…第1部分、33b…Au膜、33B…第2部分、33C…第3部分、34…蓋体側接合層、40…振動素子、41…素子基板、42…第1励振電極、43…第2励振電極、60…発振回路、61…マウント電極、62…導電性接合部材、63…貫通孔、63a…側面、64…パッド、65…絶縁層、70…接合領域、71,72,73…外部接続端子、100…振動デバイス。
図1
図2
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図11