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特開2024-69868液体特性推定方法および液体特性推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069868
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】液体特性推定方法および液体特性推定装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/195 20060101AFI20240515BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240515BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B41J2/195
B05C11/10
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180121
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】片倉 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】四十物 孝憲
【テーマコード(参考)】
2C056
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB32
2C056EB35
2C056EB52
2C056EC37
2C056EC41
4F041AA02
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA34
4F042AA02
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA12
4F042BA15
4F042BA21
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】液体のせん断速度と粘度との関係を推定する。
【解決手段】液体特性推定方法は、ノズル内の液体のメニスカスを初期位置に停止させた初期タイミングで駆動信号を圧電素子に供給した場合の吐出特性を初期吐出特性として測定し、初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、駆動信号を圧電素子に供給した場合の吐出特性を第1吐出特性として測定し、初期タイミングから第1期間とは長さの異なる第2期間を経過した後の第2タイミングで駆動信号を圧電素子に供給した場合の吐出特性を第2吐出特性として測定し、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性とに基づいて、ノズルから吐出される液体のせん断速度と粘度との関係を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号により駆動されることにより前記圧力室内の液体に圧力変動を与える圧電素子と、を有するヘッドを用いた液体特性推定方法であって、
前記ノズル内の液体のメニスカスが初期位置に実質的に停止している初期タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を初期吐出特性として測定し、
前記初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を第1吐出特性として測定し、
前記初期タイミングから前記第1期間とは長さの異なる第2期間を経過した後の第2タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を第2吐出特性として測定し、
前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性とに基づいて、前記ノズルから吐出される液体のせん断速度と粘度との関係を推定する、
ことを特徴とする液体特性推定方法。
【請求項2】
前記初期タイミングから前記第1期間および前記第2期間とは長さの異なる第3期間を経過した第3タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を第3吐出特性として測定し、
前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性と前記第3吐出特性とに基づいて、前記ノズルから吐出される液体のせん断速度と粘度との関係を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体特性推定方法。
【請求項3】
前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性とのそれぞれは、前記ノズルから吐出される液体の質量および飛翔速度のうちの一方または両方である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体特性推定方法。
【請求項4】
前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性とのそれぞれは、前記ノズルから吐出される液体の質量である、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体特性推定方法。
【請求項5】
前記第2期間の長さは前記第1期間の長さよりも長く、
前記第1期間の長さは50μ秒以上100μ秒以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体特性推定方法。
【請求項6】
前記初期吐出特性および前記第1吐出特性に基づいて、前記第2期間の長さを決定した後、前記第2吐出特性を測定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体特性推定方法。
【請求項7】
前記初期吐出特性の特性値と前記第1吐出特性の特性値との差が所定値未満である場合、前記第2期間の長さを前記第1期間の長さよりも短くし、前記初期吐出特性の特性値と前記第1吐出特性の特性値との差が前記所定値以上である場合、前記第2期間の長さを前記第1期間の長さよりも長くする、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体特性推定方法。
【請求項8】
液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号により駆動されることにより前記圧力室内の液体に圧力変動を与える圧電素子と、を有するヘッドに用いる液体の特性を推定する液体特性推定装置であって、
前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を取得する取得部と、
前記取得部で取得した測定結果に基づいて、前記ノズルから吐出される液体の特性を推定する推定部と、を備え、
前記取得部は、
前記ノズル内の液体のメニスカスが初期位置に実質的に停止している初期タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を初期吐出特性として取得し、
前記初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を第1吐出特性として取得し、
前記初期タイミングから前記第1期間とは長さの異なる第2期間を経過した後の第2タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を第2吐出特性として取得し、
前記推定部は、前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性とに基づいて、前記ノズルから吐出される液体のせん断速度と粘度との関係を推定する、
ことを特徴とする液体特性推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体特性推定方法および液体特性推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピエゾ方式のインクジェットプリンター等の液体吐出装置では、一般に、圧電素子が圧力室内のインク等の液体に圧力変動を与えることにより、圧力室に連通するノズルから液体が吐出される。
【0003】
液体の粘度変化がノズルからの液体の吐出特性に影響を与えることから、例えば、特許文献1に開示されるように、液体の粘度を検出する場合がある。特許文献1には、圧電素子の駆動後に圧力室内に残留する振動に基づいて液体の粘度を検出する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-299341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、せん断速度に応じて粘度の変化する非ニュートン流体を用いる場合、ノズル内のせん断速度が比較的高い吐出時と同等程度の特定の状態における液体の粘度を検出することができるものの、せん断速度が低い状態、例えば吐出動作後に液体の圧力振動が減衰しノズルの毛管力によって液体が充填される時における液体の粘度を検出することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る液体特性推定方法は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号により駆動されることにより前記圧力室内の液体に圧力変動を与える圧電素子と、を有するヘッドを用いた液体特性推定方法であって、前記ノズル内の液体のメニスカスが初期位置に実質的に停止している初期タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を初期吐出特性として測定し、前記初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を第1吐出特性として測定し、前記初期タイミングから前記第1期間とは長さの異なる第2期間を経過した後の第2タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性を第2吐出特性として測定し、前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性とに基づいて、前記ノズルから吐出される液体のせん断速度と粘度との関係を推定する。
【0007】
本開示の一態様に係る液体特性推定装置は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号により駆動されることにより前記圧力室内の液体に圧力変動を与える圧電素子と、を有するヘッドに用いる液体の特性を推定する液体特性推定装置であって、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を取得する取得部と、前記取得部で取得した測定結果に基づいて、前記ノズルから吐出される液体の特性を推定する推定部と、を備え、前記取得部は、前記ノズル内の液体のメニスカスが初期位置に実質的に停止している初期タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を初期吐出特性として取得し、前記初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を第1吐出特性として取得し、前記初期タイミングから前記第1期間とは長さの異なる第2期間を経過した後の第2タイミングで、前記駆動信号を前記圧電素子に供給した場合に、前記ノズルから吐出された液体の吐出特性の測定結果を第2吐出特性として取得し、前記推定部は、前記初期吐出特性と前記第1吐出特性と前記第2吐出特性とに基づいて、前記ノズルから吐出される液体のせん断速度と粘度との関係を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る液体特性推定装置を含むシステムの構成例を示す概略図である。
図2】ヘッドの構成例を示す断面図である。
図3】駆動パルスの波形の一例を示す図である。
図4】吐出特性の測定を説明するための図である。
図5】実施形態に係る液体特性推定装置を示す図である。
図6】実施形態に係る液体特性推定方法を示す図である。
図7】非ニュートン性流体の一種である擬塑性液体のせん断速度と粘度との関係の一例を示す図である。
図8】吐出時および吐出直後のノズル内の液体のせん断速度の経時的変化を示す図である。
図9】液体の粘度とノズルからの吐出量および吐出速度との関係を示す図である。
図10】メニスカスが後退した状態からノズルに液体がリフィルされる場合のノズル内の液体のせん断速度の経時的変化を示す図である。
図11】ノズルからの吐出直後にノズル内の液体のせん断速度の経時的変化を示す図である。
図12】ノズルからの吐出後に残留振動の収束した状態におけるノズル内の液体のせん断速度の経時的変化を説明するための図である。
図13】互いに擬塑性の異なる2種の液体について吐出後のノズル内の液体のメニスカスの位置の経時的変化を示す図である。
図14】メニスカスの位置の相違によるノズルからの液体の吐出特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0010】
1.実施形態
1-1.液体特性推定装置を含むシステム
図1は、実施形態に係る液体特性推定装置400を含むシステム100の構成例を示す概略図である。システム100は、「液体」の一例であるインクを吐出する機能と、その吐出特性を測定する機能と、その測定結果に基づいてインクの特性を推定する機能と、を有する。
【0011】
インクとしては、特に限定されず、例えば、染料または顔料等の色材を水系溶媒に溶解させた水系インクでもよいし、色材を有機溶剤に溶解させた溶剤系インクでもよいし、紫外線硬化型インクでもよい。ここで、インクは、せん断応力とせん断速度とが比例関係にあるニュートン流体であってもよいし、せん断応力とせん断速度とが比例関係にない非ニュートン流体であってもよい。ただし、後述するように、システム100がインクの特性としてせん断速度と粘度との関係を推定可能であることから、インクとして非ニュートン流体を用いる際にシステム100により液体特性を推定することが好適である。インクとして用いる非ニュートン流体は、特に限定されず、例えば、擬塑性流体、ダイラタント流体、ビンガム流体、チキソトロピー流体等のいずれでもよい。以下では、インクとして擬塑性流体を用いる場合について代表的に説明する。
【0012】
図1に示すように、システム100は、液体吐出装置200と、測定装置300と、液体特性推定装置400と、を有する。
【0013】
システム100では、液体特性推定装置400が、測定装置300による測定結果に基づいて、液体吐出装置200に用いるインクの特性として、インクのせん断速度と粘度との関係を推定する。
【0014】
以下、図1に基づいて、液体吐出装置200の構成を説明するとともにシステム100の液体吐出装置200以外の各部の概略を説明する。
【0015】
液体吐出装置200は、インクジェット方式により記録媒体に印刷するプリンターである。当該記録媒体は、液体吐出装置200が印刷可能な媒体であればよく、特に限定されず、例えば、各種紙、各種布または各種フィルム等である。なお、液体吐出装置200は、シリアル型のプリンターでもよいし、ライン型のプリンターでもよい。
【0016】
図1に示すように、液体吐出装置200は、ヘッド210と移動機構220と電源回路230と駆動信号生成回路240と駆動回路250と通信回路260と記憶回路270と処理回路280とを有する。
【0017】
ヘッド210は、インクを記録媒体に向けて吐出する。図1では、ヘッド210の構成要素のうち、複数の圧電素子216が代表的に図示される。ヘッド210の構成例については、後に図2に基づいて説明する。
【0018】
なお、図1に示す例では、液体吐出装置200の有するヘッド210の数が1個であるが、当該数は、2個以上でもよい。この場合、例えば、2個以上のヘッド210がユニット化される。液体吐出装置200がシリアル型である場合、記録媒体の幅方向の一部にわたり複数のノズルが分布するように、ヘッド210またはこれを2個以上含むユニットが用いられる。また、液体吐出装置200がライン型である場合、記録媒体の幅方向での全域にわたり複数のノズルが分布するように、2個以上のヘッド210を含むユニットが用いられる。
【0019】
移動機構220は、ヘッド210と記録媒体との相対的な位置を変化させる。より具体的には、液体吐出装置200がシリアル型である場合、移動機構220は、記録媒体を所定方向に搬送する搬送機構と、ヘッド210を当該記録媒体の搬送方向に直交する軸に沿って反復的に移動させる移動機構と、を有する。また、液体吐出装置200がライン型である場合、移動機構220は、2個以上のヘッド210を含むユニットの長手方向に交差する方向に記録媒体を搬送する搬送機構を有する。
【0020】
電源回路230は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、液体吐出装置200の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路230は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッド210等に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路240等に供給される。
【0021】
駆動信号生成回路240は、ヘッド210の有する各圧電素子216を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路240は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路240では、当該DA変換回路が処理回路280からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路230からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することにより駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子216に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。なお、駆動パルスPDの具体例については、後に図3に基づいて説明する。
【0022】
駆動回路250は、後述の制御信号SIに基づいて、複数の圧電素子216のそれぞれについて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。駆動回路250は、例えば、トランスミッションゲート等のスイッチング素子を含む回路である。
【0023】
通信回路260は、液体特性推定装置400に通信可能に接続される通信装置である。通信回路260は、例えば、USB(Universal Serial Bus)およびLAN(Local Area Network)等のインターフェイスを含む。なお、通信回路260は、例えば、Wi-FiまたはBluetooth等により液体特性推定装置400に無線接続されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等を介して液体特性推定装置400に接続されてもよい。なお、Wi-FiおよびBluetoothは、それぞれ、登録商標である。
【0024】
記憶回路270は、処理回路280が実行する各種プログラムと、処理回路280が処理する印刷データ等の各種データと、を記憶する。記憶回路270は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。印刷データは、例えば、液体特性推定装置400から供給される。なお、記憶回路270は、処理回路280の一部として構成されてもよい。
【0025】
処理回路280は、液体吐出装置200の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。処理回路280は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路280は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0026】
処理回路280は、記憶回路270に記憶されるプログラムを実行することにより、液体吐出装置200の各部の動作を制御する。ここで、処理回路280は、液体吐出装置200の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk、SIおよび波形指定信号dCom等の信号を生成する。
【0027】
制御信号Skは、移動機構220の駆動を制御するための信号である。制御信号SIは、駆動回路250の駆動を制御するための信号である。具体的には、制御信号SIは、駆動回路250が駆動信号生成回路240からの駆動信号Comを駆動パルスPDとしてヘッド210に対して供給するか否かを所定の単位期間ごとに指定する。この指定により、ヘッド210から吐出されるインク量等が指定される。波形指定信号dComは、駆動信号生成回路240で生成される駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0028】
測定装置300は、ヘッド210からのインクの吐出特性を測定するための装置である。当該吐出特性としては、例えば、吐出速度、吐出角度、吐出量、サテライトの数および安定性等が挙げられる。なお、以下では、ヘッド210からのインクの吐出特性を単に「吐出特性」という場合がある。
【0029】
本実施形態の測定装置300は、ヘッド210から吐出された飛翔中のインクを撮像する撮像装置である。具体的には、測定装置300は、例えば撮像光学系および撮像素子を有する。撮像光学系は、少なくとも1つの撮像レンズを含む光学系であり、プリズム等の各種の光学素子を含んでもよいし、ズームレンズまたはフォーカスレンズ等を含んでもよい。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等である。当該撮像素子の撮像結果は、液体特性推定装置400に入力され、液体特性推定装置400では、当該撮像結果を用いた演算処理により各吐出特性が算出される。なお、測定装置300を用いた吐出特性の測定の詳細については、後に図4に基づいて説明する。
【0030】
なお、前述の吐出特性のうちインク量は、測定装置300を用いずに、記録媒体等に着弾したインクを撮像する装置を用いたり、ヘッド210から吐出されたインクの質量を測定する電子天秤を用いたりすることによっても測定可能である。また、吐出特性は、ヘッド210からのインクの吐出状態に関する特性であればよく、前述の特性のほか、ヘッド210の駆動周波数または残留振動等も含む概念である。当該残留振動は、圧電素子216の駆動後にヘッド210におけるインクの流路に残留する振動であり、例えば、圧電素子216からの電圧信号として検出される。
【0031】
液体特性推定装置400は、液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御するコンピューターである。ここで、液体特性推定装置400が液体吐出装置200および測定装置300のそれぞれに無線または有線により互いに通信可能に接続される。なお、この接続には、LANまたはインターネットを含む通信網が介在してもよい。
【0032】
特に、液体特性推定装置400は、液体吐出装置200で用いるインクの特性を推定する機能を有する。液体特性推定装置400の構成については、後に図5に基づいて説明する。
【0033】
1-2.ヘッド
図2は、ヘッド210の構成例を示す断面図である。以下、図2に基づいて、ヘッド210の構成を説明する。以下の説明は、位置または方向等を特定するための便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0034】
ヘッド210は、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNを有する。当該複数のノズルNは、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1列L1と第2列L2とに区分される。第1列L1および第2列L2のそれぞれは、Y軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0035】
ヘッド210は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、第1列L1の複数のノズルNと第2列L2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。図2では、第1列L1の複数のノズルNと第2列L2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0036】
図2に示すように、ヘッド210は、流路基板211と、圧力室基板212と、ノズル基板213と、吸振体214と、振動板215と、複数の圧電素子216と、保護基板217と、ケース218と、配線基板219と、を有する。
【0037】
流路基板211および圧力室基板212は、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板211および圧力室基板212からなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板215と複数の圧電素子216と保護基板217とケース218と配線基板219と駆動回路250とが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズル基板213と吸振体214とが設置される。ヘッド210の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッド210の各要素を順に説明する。
【0038】
ノズル基板213は、第1列L1および第2列L2のそれぞれの複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる貫通孔である。ここで、ノズル基板213のZ2方向を向く面がノズル面FNである。ノズル基板213は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル基板213の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。また、ノズルの断面形状は、典型的には円形状であるが、これに限定されず、例えば、多角形または楕円形等の非円形状であってもよい。
【0039】
流路基板211には、第1列L1および第2列L2のそれぞれについて、空間R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。空間R1は、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。供給流路Raおよび連通流路Naのそれぞれは、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各供給流路Raは、空間R1に連通する。
【0040】
圧力室基板212は、第1列L1および第2列L2のそれぞれについて、キャビティと称される複数の圧力室Cが設けられた板状部材である。複数の圧力室Cは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。
【0041】
流路基板211および圧力室基板212それぞれは、前述のノズル基板213と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板211および圧力室基板212のそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0042】
圧力室Cは、流路基板211と振動板215との間に位置する。第1列L1および第2列L2のそれぞれについて、複数の圧力室CがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室Cは、連通流路Naおよび供給流路Raのそれぞれに連通する。したがって、圧力室Cは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、供給流路Raを介して空間R1に連通する。
【0043】
圧力室基板212のZ1方向を向く面には、振動板215が配置される。振動板215は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板215は、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成される弾性膜と、酸化ジルコニウム(ZrO)で構成される絶縁膜と、を有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。当該弾性膜は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。当該絶縁膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。なお、振動板215は、前述の弾性膜および絶縁膜の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0044】
振動板215のZ1方向を向く面には、第1列L1および第2列L2のそれぞれについて、互いにノズルNに対応する複数の圧電素子216が配置される。各圧電素子216は、駆動信号Comの供給により変形する受動素子であり、圧力室C内のインクに圧力変動を生じさせる。各圧電素子216は、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子216は、複数の圧力室Cに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。圧電素子216は、平面視で圧力室Cに重なる。
【0045】
各圧電素子216は、図示しないが、第1電極と圧電体層と第2電極とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。第1電極および第2電極のうちの一方の電極は、圧電素子216ごとに互いに離間して配置される個別電極であり、当該一方の電極には、駆動信号Comが供給される。第1電極および第2電極のうちの他方の電極は、複数の圧電素子216にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極であり、当該他方の電極には、例えば、オフセット電位VBSまたはこれに基づく定電位が供給される。これらの電極の金属材料としては、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銅(Cu)等の金属材料が挙げられ、これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を合金または積層等の態様で組み合わせて用いることができる。圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)等の圧電材料で構成されており、例えば、複数の圧電素子216にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。ここで、圧電体層には、互いに隣り合う各圧力室Cの間隙に平面視で対応する領域に、当該圧電体層を貫通する貫通孔がX軸に沿う方向に延びて設けられる。以上の圧電素子216の変形に連動して振動板215が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、インクがノズルNから吐出される。なお、圧電体層が圧電素子216ごとに個別に設けられてもよい。
【0046】
保護基板217は、振動板215のZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子216を保護するとともに振動板215の機械的な強度を補強する。ここで、保護基板217と振動板215との間の空間Sには、複数の圧電素子216が収容される。保護基板217は、例えば、樹脂材料で構成される。
【0047】
ケース218は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するための空間R2を形成する部材である。ケース218は、例えば、樹脂材料で構成される。ケース218には、第1列L1および第2列L2のそれぞれについて、空間R2が設けられる。空間R2は、前述の空間R1に連通する空間であり、空間R1とともに、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース218には、各リザーバーRにインクを供給するための導入口IOが設けられる。各リザーバーR内のインクは、各供給流路Raを介して圧力室Cに供給される。
【0048】
吸振体214は、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体214は、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体214のZ1方向を向く面は、流路基板211に接着剤等により接合される。
【0049】
配線基板219は、振動板215のZ1方向を向く面に接合されており、制御モジュール120とヘッド210とを電気的に接続するための部品である。配線基板219は、例えば、COF(Chip On Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。本実施形態の配線基板219には、前述の駆動回路250が実装される。なお、配線基板219は、リジッド基板でもよい。この場合、当該リジッド基板上または当該リジッド基板に接続されるフレキシブル基板上に駆動回路250が実装される。
【0050】
1-3.駆動パルス
図3は、駆動パルスPDの波形の一例を示す図である。図3中、横軸は時間tであり、縦軸は電位Vである。図3では、駆動信号Comの電位の経時的変化が示される。図3に示すように、駆動信号Comは、所定周期の単位期間Tuごとに、駆動パルスPDとして駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbを含む。なお、駆動パルスPDの波形は、図3に示す例に限定されない。
【0051】
駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのそれぞれは、ヘッド210のノズルからインクを吐出させる強さの圧力変動をヘッド210の圧力室Cに生じさせるように圧電素子216を駆動させる。ここで、単位期間Tuは、駆動パルスPDaを含む期間Tu1と、駆動パルスPDbを含む期間Tu2と、に区分される。なお、以下では、駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのそれぞれを駆動パルスPDという場合がある。
【0052】
図3に示す例では、駆動パルスPDaの波形は、期間Tu1において、中間電位Vcaから、第1電位VLa、第2電位VHaの順に、これらの電位を経由した後に中間電位Vcaに戻る波形である。第1電位VLaは、中間電位Vcaよりも低い電位である。これに対し、第2電位VHaは、中間電位Vcaよりも高い電位である。なお、中間電位Vcaは、前述のオフセット電位VBAまたはこれに所定バイアスを印加した基準電位である。
【0053】
以上の駆動パルスPDaは、中間電位Vcaから第1電位VLaに変化させることによりヘッド210の圧力室Cの容積を増大させ、第1電位VLaから第2電位VHaに変化させることにより圧力室Cの容積を急激に減少させる。このような圧力室Cの容積の変化により、圧力室C内のインクの一部がノズルNから液滴として吐出される。
【0054】
一方、駆動パルスPDbの波形は、期間Tu2において、中間電位Vcbから、第1電位VLb、第2電位VHbの順に、これらの電位を経由した後に中間電位Vcbに戻る波形である。第1電位VLbは、中間電位Vcbよりも低い電位である。これに対し、第2電位VHbは、中間電位Vcbよりも高い電位である。ただし、第1電位VLbと第2電位VHbとの電位差は、第1電位VLaと第2電位VHaとの電位差よりも大きい。図3に示す例では、第1電位VLbが第1電位VLaに等しい電位であるが、第2電位VHbが第2電位VHaよりも高い電位である。中間電位Vcbは、中間電位Vcaに等しい電位である。なお、駆動パルスPDbの各部の電位は、図3に示す例に限定されない。例えば、第1電位VLbが第1電位VLaと異なってもよいし、中間電位Vcbが中間電位Vcaと異なってもよい。
【0055】
以上の駆動パルスPDbは、中間電位Vcbから第1電位VLbに変化させることによりヘッド210の圧力室Cの容積を増大させ、第1電位VLbから第2電位VHbに変化させることにより圧力室Cの容積を急激に減少させる。このような圧力室Cの容積の変化により、圧力室C内のインクの一部がノズルNから液滴として吐出される。
【0056】
ここで、前述のように、第1電位VLbと第2電位VHbとの電位差が第1電位VLaと第2電位VHaとの電位差よりも大きいので、駆動パルスPDbを用いる場合、駆動パルスPDaを用いる場合に比べて、ノズルから吐出される液体の量が多い。
【0057】
以上のような駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのそれぞれでは、前述の各電位または各期間を変更することにより、ヘッド210からのインクの吐出特性を調整することができる。なお、駆動信号Comは、駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのうちの一方を含んでいなくてもよいし、駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDb以外の他の駆動パルスを含んでもよい。当該他の駆動パルスは、ノズルNからインクを吐出させずに圧力室C内のインクに圧力変動を生じさせてもよい。
【0058】
1-4.吐出特性の測定
図4は、吐出特性の測定を説明するための図である。図4に示すように、測定装置300は、ヘッド210のノズルNから吐出されたインクの液滴DRの飛翔中の状態を吐出方向に対して直交または交差する方向から撮像する。
【0059】
図4に示す例では、ヘッド210には、ノズルNが開口するノズル面FNが設けられる。ノズル面FNは、通常、記録媒体Mの印刷面に平行となるように設置される。
【0060】
液滴DRは、ノズルNから吐出されるメインの液滴である。図4に示す例では、液滴DRのほか、液滴DRの発生に伴って副次的に液滴DRに後続して発生するサテライトと呼ばれる複数の液滴DRaがノズルNから吐出される。液滴DRaは、液滴DRよりも小径であり、液滴DRaの発生の有無、数または大きさ等は、インクの種類、または、駆動パルスPDの波形等に応じて異なる。
【0061】
測定装置300は、飛翔中の液滴DRを連続的または微小な時間間隔で間欠的に撮像を行う。この撮像の結果に基づいて、記録媒体Mに対する液滴DRの到達タイミングを測定することができる。また、測定装置300の測定結果に基づいて、所定のタイミングごとの液滴DRの位置を測定したり、複数のタイミングでの当該位置に基づいて液滴DRの吐出方向、吐出速度または着弾位置を測定したりすることもできる。さらに、ノズルNから複数の液滴DRを連続して吐出させる場合、測定装置300の測定結果に基づいて、複数の液滴DRが合体するか否かを測定したり、その合体順を測定したりすることもできる。
【0062】
ヘッド210からの液滴DRの飛翔距離が所定距離に到達するタイミングは、実際に液滴DRの飛翔距離が当該所定距離に達した時刻に基づいて算出してもよいし、液滴DRの吐出速度および当該所定距離に基づいて算出してもよい。ここで、当該所定距離がノズル面FNと記録媒体Mとの間の距離PGである場合、液滴DRが記録媒体Mに到達するタイミングが測定される。
【0063】
ヘッド210からの液滴DRの量である吐出量は、例えば、測定装置300の撮像画像を用いて、液滴DRの直径LBに基づいて液滴DRの体積として算出される。また、ヘッド210からの液滴DRの吐出速度は、例えば、飛翔中の液滴DRの任意の2つの位置間の距離LCと時間とに基づいて算出される。図4では、当該所定時間後の液滴DRが二点鎖線で示される。また、ヘッド210からのインクのアスペクト比(LA/LB)をインクの吐出特性として算出することもできる。当該所定時間前後の液滴DRの位置関係により、ヘッド210からのインクの吐出角度を求めることもできる。なお、ヘッド210からの液滴DRの量は、液滴DRの直径LBと液滴DRの密度とに基づいて液滴DRの質量として算出されてもよい。
【0064】
1-5.液体特性推定装置
図5は、実施形態に係る液体特性推定装置400を示す図である。図5に示すように、液体特性推定装置400は、表示装置410と、入力装置420と、通信回路430と、記憶回路440と、処理回路450と、を有する。これらは、互いに通信可能に接続される。
【0065】
表示装置410は、処理回路450による制御のもとで各種の画像を表示する。ここで、表示装置410は、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルを有する。なお、表示装置410は、液体特性推定装置400の外部に設けられてもよい。また、表示装置410は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0066】
入力装置420は、ユーザーからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置420は、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイスを有する。ここで、入力装置420は、タッチパネルを有する場合、表示装置410を兼ねてもよい。なお、入力装置420は、液体特性推定装置400の外部に設けられてもよい。また、入力装置420は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0067】
通信回路430は、液体吐出装置200および測定装置300のそれぞれに通信可能に接続される通信装置である。通信回路430は、例えば、USBおよびLAN等のインターフェイスを含む。なお、通信回路430は、例えば、Wi-FiまたはBluetooth等により液体吐出装置200または測定装置300に無線接続されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等を介して液体吐出装置200または測定装置300に接続されてもよい。
【0068】
記憶回路440は、処理回路450が実行する各種プログラム、および処理回路450が処理する各種データを記憶する装置である。記憶回路440は、例えば、ハードディスクドライブまたは半導体メモリーを有する。なお、記憶回路440の一部または全部は、液体特性推定装置400の外部の記憶装置またはサーバー等に設けてもよい。
【0069】
本実施形態の記憶回路440には、プログラムPRと、測定情報DMと、液体特性情報DLと、波形情報DPと、が記憶される。なお、記憶回路440には、これらの情報およびプログラム以外の情報、例えば、測定装置300による測定に用いた波形、温度等の測定条件に関する情報等が適宜に含まれてもよい。
【0070】
測定情報DMは、測定装置300の測定結果に基づく吐出特性に関する情報であり、例えば、吐出速度または吐出量等の特性値を示す。なお、測定情報DMには、測定装置300の測定結果に関する情報のほか、測定装置300の測定条件に関する情報、例えば、測定に用いた駆動パルスPDの波形に関する情報等の情報が含まれてもよい。
【0071】
測定情報DMは、初期吐出特性情報DM0と第1吐出特性情報DM1と第2吐出特性情報DM2と第3吐出特性情報DM3とを含む。初期吐出特性情報DM0と第1吐出特性情報DM1と第2吐出特性情報DM2と第3吐出特性情報DM3とは、互いに測定タイミングの異なる吐出特性に関する情報である。
【0072】
初期吐出特性情報DM0は、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に実質的に停止している初期タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に、ノズルNから吐出されたインクの吐出特性である初期吐出特性を示す情報である。ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に実質的に停止しているとは、ノズルN内のインクの圧力と大気圧力とが均衡している状態である。第1吐出特性情報DM1は、初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に、ノズルNから吐出されたインクの吐出特性である第1吐出特性を示す情報である。第2吐出特性情報DM2は、初期タイミングから第1期間とは異なる第2期間を経過した後の第2タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に、ノズルNから吐出されたインクの吐出特性である第2吐出特性を示す情報である。第3吐出特性情報DM3は、初期タイミングから第1期間および第2期間とは異なる第3期間を経過した後の第3タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に、ノズルNから吐出されたインクの吐出特性である第3吐出特性を示す情報である。
【0073】
このように、初期タイミング、第1タイミング、第2タイミング、第3タイミングは、互いに異なるタイミングである。すなわち、第1期間、第2期間および第3期間の長さは、互いに異なる。なお、測定情報DMは、第3吐出特性情報DM3を含まなくてもよいし、第4吐出特性情報等の他の1以上の吐出特性情報をさらに含んでもよい。
【0074】
液体特性情報DLは、ヘッド210に用いるインクの特性、より具体的にはインクのせん断速度と粘度との関係を示す情報である。
【0075】
波形情報DPは、駆動パルスPDの波形を規定する電圧、電位、電位変化の傾き等のパラメーターに関する情報である。
【0076】
プログラムPRは、インク特性の推定のための各種機能を処理回路450に提供する。
【0077】
処理回路450は、液体特性推定装置400の各部、液体吐出装置200および測定装置300を制御する機能、および各種データを処理する機能を有する装置である。処理回路450は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有する。なお、処理回路450は、単一のプロセッサーで構成されてもよいし、複数のプロセッサーで構成されてもよい。また、処理回路450の機能の一部または全部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現してもよい。
【0078】
処理回路450は、記憶回路440からプログラムPRを読み込んで実行することにより、取得部451および推定部452として機能する。
【0079】
取得部451は、測定装置300の測定結果を測定情報DMとして取得する。本実施形態では、取得部451は、初期タイミングで駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に初期吐出特性を初期吐出特性情報DM0として取得し、第1タイミングで駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に第1吐出特性を第1吐出特性情報DM1として取得し、第2タイミングで駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に第2吐出特性を第2吐出特性情報DM2として取得し、第3タイミングで駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合に第3吐出特性を第3吐出特性情報DM3として取得する。また、取得部451は、取得した初期吐出特性情報DM0、第1吐出特性情報DM1、第2吐出特性情報DM2および第3吐出特性情報DM3を記憶回路440に記憶させる。
【0080】
推定部452は、測定情報DMに基づいて、インクの特性として、インクのせん断速度と粘度との関係を推定する。そして、推定部452は、その推定結果を示す液体特性情報DLを生成する。本実施形態では、推定部452は、初期吐出特性情報DM0の示す初期吐出特性と第1吐出特性情報DM1の示す第1吐出特性と第2吐出特性情報DM2の示す第2吐出特性と第3吐出特性情報DM3の示す第3吐出特性とに基づいて、ノズルNから吐出されるインクのせん断速度と粘度との関係を推定する。
【0081】
推定部452の推定結果を示す液体特性情報DLは、例えば、駆動パルスPDの波形の補正、ヘッド210内の圧力(背圧)の調整、ヘッドの駆動周波数の調整等に用いられる。このような補正または調整は、自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。また、液体特性情報DLは、表示装置410等に表示されたり、外部装置に出力されたりしてもよい。
【0082】
1-6.液体特性推定方法
図6は、実施形態に係る液体特性推定方法を示す図である。当該液体特性推定方法は、前述のシステム100を用いて実行される。まず、ステップS1において、測定装置300が初期吐出特性を測定する。この測定は、取得部451が液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御することにより行われる。ここで、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に実質的に停止している状態の初期タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクが吐出される。そして、その吐出特性が初期吐出特性として測定装置300により測定される。この測定結果は、初期吐出特性情報DM0として取得部451により取得された後、記憶回路440に記憶される。
【0083】
次に、ステップS2において、測定装置300が第1吐出特性を測定する。この測定は、取得部451が液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御することにより行われる。ここで、初期タイミングから第1期間を経過した後の第1タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクが吐出される。そして、その吐出特性が第1吐出特性として測定装置300により測定される。この測定結果は、第1吐出特性情報DM1として取得部451により取得された後、記憶回路440に記憶される。
【0084】
次に、ステップS3において、取得部451が初期吐出特性および第1吐出特性に基づいて第2期間の長さを決定する。具体的には、ステップS3において、初期吐出特性の特性値と第1吐出特性の特性値との差が所定値未満である場合、取得部451は、第2期間の長さを第1期間の長さよりも短くする。一方、初期吐出特性の特性値と第1吐出特性の特性値との差が当該所定値以上である場合、取得部451は、第2期間の長さを第1期間の長さよりも長くする。
【0085】
次に、ステップS4において、測定装置300が第2吐出特性を測定する。この測定は、取得部451が液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御することにより行われる。再び、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に実質的に停止している状態の初期タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクを吐出させ、初期タイミングから第2期間を経過した後の第2タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクが吐出される。そして、その吐出特性が第2吐出特性として測定装置300により測定される。この測定結果は、第2吐出特性情報DM2として取得部451により取得された後、記憶回路440に記憶される。
【0086】
次に、ステップS5において、取得部451が初期吐出特性および第2吐出特性に基づいて第3期間の長さを決定する。具体的には、ステップS5において、初期吐出特性の特性値と第2吐出特性の特性値との差が所定値未満である場合、取得部451は、第3期間の長さを第2期間の長さよりも短くする。一方、初期吐出特性の特性値と第2吐出特性の特性値との差が当該所定値以上である場合、取得部451は、第3期間の長さを第2期間の長さよりも長くする。なお、ステップS5は、必要に応じて実行され、省略されてもよい。
【0087】
次に、ステップS6において、測定装置300が第3吐出特性を測定する。この測定は、取得部451が液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御することにより行われる。再び、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に実質的に停止している状態の初期タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクを吐出させ、初期タイミングから第3期間を経過した後の第3タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクが吐出される。そして、その吐出特性が第3吐出特性として測定装置300により測定される。この測定結果は、第3吐出特性情報DM3として取得部451により取得された後、記憶回路440に記憶される。なお、ステップS6は、必要に応じて実行され、省略されてもよい。
【0088】
次に、ステップS7において、推定部452が、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性と第3吐出特性とに基づいて、ノズルNから吐出されるインクのせん断速度と粘度との関係を推定する。この推定の詳細については、後に図7から図14に基づいて説明する。
【0089】
次に、ステップS8において、補正処理が行われる。この補正処理は、例えば、駆動パルスPDの波形の補正、ヘッド210内の圧力(背圧)の調整、ヘッドの駆動周波数の調整等を実行する処理である。なお、ステップS8は、必要に応じて実行され、省略されてもよい。
【0090】
1-7.液体の特性の推定原理
図7は、非ニュートン性流体の一種である擬塑性液体のせん断速度と粘度との関係の一例を示す図である。図7中、横軸はせん断速度[1/s]であり、縦軸は粘度[Pas]である。図7に示すように、擬塑性液体の粘度は、せん断速度が速くなるほど低くなる。
【0091】
図7に示す例では、せん断速度がゼロに近い状態である静止状態の擬塑性液体の粘度が1Pasすなわち1000mPas程度である。これに対し、一般にインクジェットに適用される液体の粘度は、1mPas以上20mPas以下程度である。このように、静止状態の擬塑性液体の粘度は、一般にインクジェットに適用される液体の粘度に対して、100倍程度である。ただし、インクジェットによる吐出時のせん断速度域である1×10/s以上における擬塑性液体の粘度は、20mPas程度である。このため、一般にインクジェットに適用される液体と同様、擬塑性液体をインクジェットにより吐出することができる。
【0092】
図8は、吐出時および吐出直後のノズルN内のインクのせん断速度の経時的変化を示す図である。図8では、前述の図3に示す駆動パルスPDaまたは駆動パルスPDbを用いてインクを吐出した場合の当該経時的変化をシミュレーションにより求めた結果が示される。
【0093】
図8に示す例では、ノズルNからのインクが吐出されるタイミングでは、ノズルNでのインクのせん断速度が吐出方向(前進方向)に6×10/sに達する。その後、ノズルN内のインクのメニスカスが後退するのに伴って、ノズルNでのインクのせん断速度が後退方向に4×10/sとなる。次いで、ノズルN内にインクがリフィルされるのに伴って、ノズルNでのインクのせん断速度が再び吐出方向に2×10/sとなる。そして、ノズルN内のインクのメニスカスの残留振動が減衰しながら、ノズルNでのインクのせん断速度が徐々に遅くなる。このとき、ノズルNでのインクの粘度が前述の図7に示すようにせん断速度の低下に伴って高くなるので、当該残留振動が急速に減衰する。
【0094】
このように、インクが擬塑性流体である場合、ノズルNにインクがリフィルされる過程では、インクのせん断速度の低下に伴う粘度の上昇が生じるため、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に戻るまでに要する時間が極めて長時間となる。また、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に戻る前に、ノズルNからインクを吐出しようとしても、ノズルN内に気泡を巻き込んでしまうことにより不吐出となるリスクが高まる。
【0095】
上述のように、ノズルNからインクを吐出させてかノズルN内にインクがリフィルされるまでの間、ノズルN内のインクのせん断速度は変化するため、インクのせん断速度と粘度との関係が不明である場合、ヘッド210の駆動を適切に設定することが難しい。具体的には、せん断速度が低下して粘度が上昇したインクの粘度を低下させるためにノズルから吐出しない程度にメニスカスを微振動させるための条件、吐出間隔に関する駆動周波数、および駆動パルスPDの波形等を適切に設定することが難しく、この結果、所望の吐出特性が得られないことがある。
【0096】
そこで、システム100では、液体特性推定装置400がインクのせん断速度と粘度との関係を推定する。この推定結果を用いることにより、ヘッド210の駆動周波数、駆動パルスPDの波形、および、ノズルN内のインクのメニスカスを微振動させるための条件等を適切に設定することができる。以下、この推定の原理を説明する。
【0097】
図9は、インクの粘度とノズルNからの吐出量および吐出速度との関係を示す図である。図9では、前回の吐出タイミングから十分な期間をあけてノズルN内にインクがリフィルされメニスカスの位置が初期位置まで戻った後に圧電素子216に駆動信号Comを供給した場合の当該関係が示される。
【0098】
図9に示すように、インクの粘度に応じてノズルNからの吐出量および吐出速度が変化する。このため、このような粘度と吐出量または吐出速度との関係を用いることにより、吐出量または吐出速度の測定結果から、初期タイミングで吐出した際の高せん断速度でのインクの粘度を推定することができる。当該関係は、実験またはシミュレーション等により取得した結果を予め液体特性推定装置400に記憶させておいてもよいし、液体特性推定装置400にインストールされたプログラムを用いたシミュレーションにより求めてもよい。ニュートン流体であれば、せん断速度に関わらずインクの粘度は一定であるため、初期タイミングで吐出した際の吐出量または吐出速度から推定される粘度を用いて、ノズルN内のインクのメニスカスを微振動させる微振動パルスや駆動パルスPDを含む駆動波形、駆動周波数、およびヘッド210内の圧力(背圧)の設定を適切に行うことができる。しかし非ニュートン流体の場合、せん断速度に応じてインクの粘度が変化するため、初期タイミングで吐出した際の吐出量または吐出速度から推定される粘度のみで、ノズルN内のインクのメニスカスを微振動させる微振動パルスや駆動パルスPDを含む駆動波形、駆動周波数、およびヘッド210内の圧力(背圧)の設定を適切に行うことができない。
【0099】
なお、図9に示す例では、ノズルNの直径が40μmであり、ノズルN内でのインクの移動速度が10m/s以上13m/s以下であることから、このインクでの吐出動作時のせん断速度は5×10/s以上7×10/s以下である。
【0100】
ノズルNからインクが吐出されたことによりノズルN内のメニスカスがノズルN内に後退した後、ノズルN内のインクがメニスカスの毛管力によりリフィルされる。このリフィルの速度v(t)は、インク粘度一定のもとで次の式(1)で表される。
【数1】
【0101】
式(1)中、rは、ノズルNの半径であり、σは、インクの表面張力であり、θは、ノズルNの内壁におけるインクの接触角であり、R(t)は、1つのノズルNに対応する流路におけるインクの粘性抵抗であり、ノズルNにインクが充填されるのに従い大きくなる変数である。ただし、R(t)は、厳密には、R(t)=Rn(t)+Rsで表される。ここで、Rn(t)は、ノズルNにおけるインクの粘性抵抗であり、時間tの変化に伴ってノズルN内にインクが充填されるのに伴って増加する。Rsは、1つのノズルNに対応する流路のノズルN以外の部分におけるインクの粘性抵抗であり、時間tによらず一定である。
【0102】
図10は、ノズルNからインクが吐出されたことによりメニスカスが後退した状態からのノズルNのインクのリフィルに着目したノズル内のインクのせん断速度の経時的変化を示す図である。図10では、前述の式(1)に基づく毛管力でノズルNにインクがリフィルされる場合のせん断速度(≒平均速度/ノズル半径)の計算例が示される。
【0103】
図10に示すように、ノズルNへのインクのリフィルが進行するに従い、ノズルNにおけるインクの粘性抵抗が増加するので、せん断速度が低下する。図10に示す例では、ノズルNからインクが吐出された時点でのリフィルによるせん断速度が約6000/sであり、せん断速度が約3000/sに達した後に速度変化は直線的となる。
【0104】
図11は、駆動信号COMを圧電素子216に供給した際に生じた圧力振動とその残留振動に着目したノズルN内のインクのせん断速度の経時的変化を示す図である。実際にノズルNからインクを吐出した場合、図11に示すように、ノズルN内のインクのせん断速度が圧電素子216の駆動後の残留振動に伴って増減しながら減衰する。図11に示す例では、ノズルNからインクが吐出する際のせん断速度が1×10/s程度であり、その後のせん断速度は、インクの粘性抵抗により減衰していく。
【0105】
実際には、ノズルN内からインクが吐出された直後からの一定期間は、残留振動によるせん断速度とリフィルによるせん断速度が合成されたせん断速度によりノズルN内のメニスカスは移動し、残留振動が消失した後はリフィルによるせん断速度でノズルN内のメニスカスは移動する。図12は、ノズルNからインクが吐出した後の残留振動によるせん断速度とリフィルによるせん断速度を重畳させた状態におけるノズルN内のインクのせん断速度の経時的変化を説明するための図である。図12に示すように、残留振動によるせん断速度の変動は、概ね90μ秒程度で収束する。その後、ほぼ直線的に変化するせん断速度の状態で、ノズルNへのインクのリフィルが進行する。ここで、インクが擬塑性流体である場合、残留振動が生じている間は、せん断速度の変動に応じて粘度も変動し、残留振動が収束した後は、ほぼ直線的に変化するせん断速度に応じた粘度の状態で、ノズルNへのインクのリフィルが進行する。
【0106】
図13は、互いに擬塑性の異なる2種の液体LQ1、LQ2について吐出後のノズルN内のインクのメニスカスの位置の経時的変化を示す図である。図13中、横軸は時間[秒]であり、縦軸はメニスカスの位置[pL]である。メニスカスの位置[pL]とは、メニスカスの位置をノズルN内のインク体積を用いて示している。具体的には、メニスカスの初期位置P0[pL]は、メニスカスの初期位置を示し、メニスカスの位置P22[pL]からメニスカスの位置P11に向かうにつれ、ノズルN内のインクの体積が減少しメニスカスの位置が初期位置から圧力室側に後退した位置であることを示す。図13では、液体LQ1のメニスカスの位置の経時的変化が実線で示され、液体LQ2のメニスカスの位置の経時的変化が破線で示される。ここで、液体LQ1の擬塑性は、液体LQ2の擬塑性よりも大きい、すなわち、せん断速度が遅い時の粘度が高い。
【0107】
液体LQ1、LQ2の擬塑性が互いに異なるが、駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合の吐出時のノズルN内の1×10/s以上のせん断速での粘度はともに20mPas程度である。したがって、メニスカスの位置が初期位置に実質的に停止している状態で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合の液体LQ1、LQ2の吐出特性は互いに同程度となる。しかし、吐出後のせん断速度の低下に対する粘度増加の程度が異なるため、図13に示すように、液体LQ1、LQ2のメニスカスの位置の経時的変化が互いに異なる。ここで、初期タイミングt0で駆動信号Comを圧電素子216に供給した後第1期間T1が経過した第1タイミングt1で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合、液体LQ2のメニスカスの位置P21は、液体LQ1のメニスカスの位置P11よりも初期位置P0に近い。また、初期タイミングt0で駆動信号Comを圧電素子216に供給した後第1期間より長い第2期間が経過した第2タイミングt2で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合、液体LQ2のメニスカスの位置P22は、液体LQ1のメニスカスの位置P12よりも初期位置P0に近い。
【0108】
このように、初期タイミングt0での液体LQ1、LQ2の吐出特性が互いに同一であっても、液体LQ1、LQ2の擬塑性の相違に起因して、吐出後のノズルNのインクのせん断速度の低下に伴う粘度変化が異なるため、第1タイミングt1および第2タイミングt2のそれぞれでの液体LQ1、LQ2のノズルNへのリフィル状態が互いに異なる。このため、第1タイミングt1および第2タイミングt2のそれぞれでの液体LQ1、LQ2の吐出特性が互いに異なる。
【0109】
図14は、メニスカスMN_P0、MN_P1の位置の相違によるノズルNからのインクの吐出特性を説明するための図である。図14では、メニスカスMN_P0とメニスカスMN_P0の状態でノズルNから吐出された液滴DR_P0とのそれぞれが実線で示され、メニスカスMN_P1とメニスカスMN_P1の状態でノズルNから吐出された液滴DR_P1とのそれぞれが二点鎖線で示される。メニスカスMN_P0は、初期位置P0に位置するメニスカスである。メニスカスMN_P1は、初期位置P0よりも後退した位置P1に位置するメニスカスである。
【0110】
液滴DR_P1の幅LB_P1は、液滴DR_P0の幅LB_P0よりも小さい。このように、メニスカスMN_P1の状態でノズルNからインクを吐出した場合の吐出量は、メニスカスMN_P0の状態でノズルNからインクを吐出した場合の吐出量よりも小さい。これは、メニスカスMN_P1の状態は、メニスカスMN_P0の状態と比較してノズルN内へのインクの充填量が少ないためである。このように、駆動信号Comを圧電素子216に供給する時点でのメニスカスMNの位置が後退しているほど、吐出量が小さくなる。
【0111】
したがって、前述の第1タイミングt1での液体LQ1の吐出量は、第2タイミングt2での液体LQ1の吐出量よりも小さい。第1タイミングt1での液体LQ2の吐出量は、第1タイミングt1での液体LQ1の吐出量よりも大きく、かつ、第2タイミングt2での液体LQ2の吐出量よりも小さい。
【0112】
このような関係において、吐出量からメニスカスの位置を推測することができる。例えば、予め実験等で、吐出量とメニスカス位置の相対関係を解析し、相関関係テーブルを作成し、記憶回路440に記憶することもできるし、吐出量からメニスカスの位置を算出する計算式を記憶回路440に記憶することもできる。
【0113】
例えば、液体LQ1のせん断速度と粘度との関係を推定する場合を説明する。ステップS1において、初期タイミングt0での吐出量を測定し、測定値を初期吐出特性情報DM0として記憶回路440に記憶する。ステップS2において、初期タイミングt0から第1期間経過後の第1タイミングt1での吐出量を測定し、測定値を第1吐出特性情報DM1として記憶回路440に記憶する。ステップS3において、第2期間T2を第1期間T1より長く設定する。ステップS4において、再び、ノズルN内のインクのメニスカスが初期位置に実質的に停止している状態の初期タイミングで、駆動信号Comを圧電素子216に供給することにより、ノズルNからインクを吐出させた後、第2期間経過後の第2タイミングt2での吐出量を測定し、測定値を第2吐出特性情報DM2として記憶回路440に記憶する。ステップS5およびS6は省略することとする。ステップS7において、推定部452は、初期吐出特性情報DM0と第1吐出特性情報DM1との差に基づいて、第1タイミングt1でのメニスカスの位置P11を特定し、初期吐出特性情報DM0と第2吐出特性情報DM2との差に基づいて、第2タイミングt2でのメニスカスの位置P12を特定する。第1タイミングt1でのメニスカスの位置P11と第2タイミングでのメニスカスの位置P12との差分の距離と、第1タイミングt1と第2タイミングt2との差分の期間とから、リフィルの速度v(t)を算出し、前述の式(1)の関係からインクの粘性抵抗を算出する。これらの値からせん断速度と粘度の関係が求められる。第1タイミングt1と第2タイミングt2とが、せん断速度がほぼ直線的に速度変化しリフィルが進行する状態であれば、第2タイミングt2後のメニスカスの位置および粘度を推測することもできる。
【0114】
液体LQ2は、第1タイミングt1での吐出量から特定されるメニスカスの位置は、液体LQ1の場合のP11より初期位置に近いP21であり、第2タイミングt2での吐出量から特定されるメニスカスの位置は、液体LQ1の場合のP12より初期位置に近いP22である。また、液体LQ2の第1タイミングt1でのメニスカスの位置P21と第2タイミングt2でのメニスカスの位置P22との差分は、液体LQ1の第1タイミングt1でのメニスカスの位置P11と第2タイミングt2でのメニスカスの位置P12との差分より長い。よって、せん断速度と粘度の関係は、液体LQ1の方がせん断速度の低下に対する粘度の上昇量が、液体LQ2より大きいことを推定することができる。
なお、初期タイミングt0の後の測定タイミングを多くするほど、図7に示すような擬塑性液体のせん断速度と粘度との関係のグラフに近似した結果を得ることができる。また、初期タイミングt0の後の測定タイミングを多くするほど、図13に示すような初期タイミングt0からの経過時間に対するメニスカスの位置の関係のグラフに近似した結果を得ることができる。
【0115】
また、図14に示すように、液滴DR_P1の位置は、同一タイミングでみて、液滴DR_P0の位置よりもノズルNに近い。このため、メニスカスMN_P1の状態でノズルNからインクを吐出した場合の吐出速度は、メニスカスMN_P0の状態でノズルNからインクを吐出した場合の吐出速度よりも小さい。このように、メニスカスMNの位置が後退するほど、吐出速度が小さくなる。
【0116】
したがって、前述の第1タイミングt1での液体LQ1の吐出速度は、第2タイミングt2での液体LQ1の吐出速度よりも小さい。第1タイミングt1での液体LQ2の吐出速度は、第1タイミングt1での液体LQ1の吐出速度よりも大きく、かつ、第2タイミングt2での液体LQ2の吐出速度よりも小さい。
【0117】
このような関係において、吐出速度からメニスカスの位置を推測することができる。図13において、縦軸をメニスカスの位置[m/μs]として図13と同様のグラフとして示すことができる。例えば、予め実験等で、吐出速度とメニスカス位置の相対関係を解析し、相関関係テーブルを作成し、記憶回路440に記憶することもできるし、吐出速度からメニスカスの位置を算出する計算式を記憶回路440に記憶することもできる。なお、測定値からせん断速度と粘度との関係を推定するステップは、上述の吐出量の場合と同様のため詳細な説明は省略する。
【0118】
以上のようなノズルN内のメニスカスの位置と初期タイミングt0からの経過時間との関係を用いることにより、初期タイミングt0からの経過時間から、第1タイミングt1、第2タイミングt2および第3タイミングt3のそれぞれの間のせん断速度を推定することができる。この推定結果と前述のインクの粘度の推定結果とを対応付けることにより、第1タイミングt1、第2タイミングt2および第3タイミングt3のそれぞれのインクのせん断速度と粘度との関係を得ることができる。そして、必要に応じて、二次関数等によりフィッティングを行うことにより、前述の図7に示すようにインクのせん断速度と粘度との関係を連続的に示す情報を得ることもできる。
【0119】
以上のように、液体特性推定装置400は、ヘッド210に用いる液体の特性を推定する。ヘッド210は、「液体」の一例であるインクを吐出するノズルNと、ノズルNに連通する圧力室Cと、駆動信号Comにより駆動されることにより圧力室C内のインクに圧力変動を与える圧電素子216と、を有する。
【0120】
ここで、液体特性推定装置400は、ノズルNから吐出されたインクの吐出特性の測定結果を取得する取得部451と、取得部451で取得した測定結果に基づいて、ノズルNから吐出されるインクの特性を推定する推定部452と、を備える。
【0121】
取得部451は、初期タイミングt0で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出されたインクの吐出特性の測定結果を初期吐出特性として取得する。また、取得部451は、第1タイミングt1で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出されたインクの吐出特性の測定結果を第1吐出特性として取得する。さらに、取得部451は、第2タイミングt2で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出されたインクの吐出特性の測定結果を第2吐出特性として取得する。
【0122】
ここで、初期タイミングt0は、ノズルN内のインクのメニスカスMNが初期位置P0に実質的に停止しているタイミングである。第1タイミングt1は、初期タイミングt0から第1期間T1を経過した後のタイミングである。第2タイミングt2は、初期タイミングt0から第1期間T1とは長さの異なる第2期間T2を経過した後のタイミングである。
【0123】
推定部452は、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性とに基づいて、ノズルNから吐出されるインクのせん断速度と粘度との関係を推定する。
【0124】
以上の液体特性推定装置400では、ヘッド210に用いるインクの特性として、インクのせん断速度と粘度との関係を推定可能な液体特性推定方法を実現することができる。
【0125】
当該液体特性推定方法は、前述のように、ヘッド210を用いており、初期タイミングt0で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出されたインクの吐出特性を初期吐出特性として測定し、第1タイミングt1で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出されたインクの吐出特性を第1吐出特性として測定し、第2タイミングt2で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出されたインクの吐出特性を第2吐出特性として測定し、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性とに基づいて、ノズルNから吐出されるインクのせん断速度と粘度との関係を推定する。
【0126】
以上の液体特性推定方法では、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性とに基づいて、ノズルNから吐出されるインクのせん断速度と粘度との関係が推定される。このため、インクが非ニュートン性流体であっても、この推定結果を用いて、所望の吐出特性が得られるように、吐出条件を適切に設定することができる。
【0127】
本実施形態の液体特性推定方法は、前述のように、第3タイミングt3で駆動信号Comを圧電素子216に供給した場合にノズルNから吐出された液体の吐出特性を第3吐出特性として測定し、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性と第3吐出特性とに基づいて、ノズルNから吐出されるインクのせん断速度と粘度との関係を推定する。ここで、第3タイミングt3は、初期タイミングt0から第1期間T1および第2期間T2とは長さの異なる第3期間T3を経過したタイミングである。このように、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性と第3吐出特性とを用いることにより、第3吐出特性を用いない場合に比べて、インクのせん断速度と粘度との関係を高精度に推定することができる。
【0128】
また、前述のように、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性とのそれぞれは、ノズルNから吐出されるインクの質量および飛翔速度のうちの一方または両方である。このため、他の吐出特性を用いる場合に比べて、インクのせん断速度と粘度との関係を簡単に推定することができる。ここで、初期吐出特性と第1吐出特性と第2吐出特性とのそれぞれは、ノズルNから吐出されるインクの質量であることが好ましい。この場合、インクのせん断速度と粘度との関係をより簡単に推定することができる。
【0129】
さらに、前述のように、第2期間T2の長さは第1期間T1の長さよりも長い。そして、第1期間T1の長さは50μ秒以上100μ秒以下であることが好ましい。この場合、インクが擬塑性液体である場合、第1タイミングt1および第2タイミングt2を適切に設定することができる。この結果、擬塑性液体のせん断速度と粘度との関係を効率的に推定することができる。
【0130】
また、前述のように、本実施形態の液体特性推定方法は、初期吐出特性および第1吐出特性に基づいて、第2期間T2の長さを決定した後、第2吐出特性を測定する。このため、インクの種類に応じて第2期間T2を適切に設定することができる。この結果、擬塑性液体のせん断速度と粘度との関係を効率的に推定することができる。
【0131】
さらに、前述のように、初期吐出特性の特性値と前記第1吐出特性の特性値との差が所定値未満である場合、本実施形態の液体特性推定方法は、第2期間T2の長さを第1期間T1の長さよりも短くする。一方、初期吐出特性の特性値と第1吐出特性の特性値との差が当該所定値以上である場合、本実施形態の液体特性推定方法は、第2期間T2の長さを第1期間T1の長さよりも長くする。このように第2期間T2の長さを決定することにより、インクの種類に応じて第2期間T2を適切に設定することができる。
【0132】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0133】
2-1.変形例1
前述の実施形態では、プログラムPRは、インストールされる記憶回路と同一の装置に設けられる処理回路により実行される構成が例示されるが、当該構成に限定されず、インストールされる記憶回路と異なる装置に設けられる処理回路により実行されてもよい。例えば、液体特性推定装置400の記憶回路440に記憶されるプログラムPRを液体吐出装置200の処理回路280により実行してもよい。
【符号の説明】
【0134】
100…システム、120…制御モジュール、200…液体吐出装置、210…ヘッド、211…流路基板、212…圧力室基板、213…ノズル基板、214…吸振体、215…振動板、216…圧電素子、217…保護基板、218…ケース、219…配線基板、220…移動機構、230…電源回路、240…駆動信号生成回路、250…駆動回路、260…通信回路、270…記憶回路、280…処理回路、300…測定装置、400…液体特性推定装置、410…表示装置、420…入力装置、430…通信回路、440…記憶回路、450…処理回路、451…取得部、452…推定部、C…圧力室、Com…駆動信号、DL…液体特性情報、DM…測定情報、DM0…初期吐出特性情報、DM1…第1吐出特性情報、DM2…第2吐出特性情報、DM3…第3吐出特性情報、DP…波形情報、DR…液滴、DR_P0…液滴、DR_P1…液滴、DRa…液滴、FN…ノズル面、IO…導入口、L1…第1列、L2…第2列、LB…直径、LB_P0…幅、LB_P1…幅、LC…距離、LQ1…液体、LQ2…液体、M…記録媒体、MN…メニスカス、MN_P0…メニスカス、MN_P1…メニスカス、N…ノズル、Na…連通流路、P0…初期位置、P1…位置、P11…位置、P12…位置、P21…位置、P22…位置、PD…駆動パルス、PDa…駆動パルス、PDb…駆動パルス、PG…距離、PR…プログラム、R…リザーバー、R1…空間、R2…空間、Ra…供給流路、S…空間、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、S6…ステップ、S7…ステップ、S8…ステップ、SI…制御信号、Sk…制御信号、T1…第1期間、T2…第2期間、T3…第3期間、Tu…単位期間、Tu1…期間、Tu2…期間、V…電位、VBA…オフセット電位、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、VHa…第2電位、VHb…第2電位、VLa…第1電位、VLb…第1電位、Vca…中間電位、Vcb…中間電位、dCom…波形指定信号、t…時間、t0…初期タイミング、t1…第1タイミング、t2…第2タイミング、t3…第3タイミング、v…速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14