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特開2024-69877コンクリート吹付けシステム及びコンクリートの吹付け方法
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  • 特開-コンクリート吹付けシステム及びコンクリートの吹付け方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069877
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】コンクリート吹付けシステム及びコンクリートの吹付け方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240515BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20240515BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240515BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240515BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C04B28/02
E21D11/10 D
C04B22/14 A
C04B22/08 Z
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180146
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】八田 建次
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
【テーマコード(参考)】
2D155
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155CA01
2D155DB00
2D155KA04
2D155KA08
4G056AA06
4G056CB32
4G112MB00
4G112MB13
4G112PB05
4G112PB10
4G112PC06
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】吹付け時のリバウンドを低減し、コンクリートと急結剤との混合性が良好なコンクリート吹付けシステムを提供する。
【解決手段】コンクリートを搬送するコンクリート搬送流路と、水溶性金属塩を含む急結剤Aを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Aと、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Bと、前記コンクリートに前記急結剤A及び前記急結剤Bが混合された急結コンクリートを対象物に吹付ける吹付け部と、を含み、前記コンクリート搬送流路は、前記急結剤Aが前記コンクリートに混合される混合部Aと、前記混合部Aと前記吹付け部との間に、前記急結剤Bが前記コンクリートに混合される混合部Bと、を含み、前記急結剤Bが前記混合部Bに到達する前に、前記急結剤Aが前記混合部Aに到達する、コンクリート吹付けシステム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを搬送するコンクリート搬送流路と、
水溶性金属塩を含む急結剤Aを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Aと、
ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Bと、
前記コンクリートに前記急結剤A及び前記急結剤Bが混合された急結コンクリートを対象物に吹付ける吹付け部と、を含み、
前記コンクリート搬送流路は、前記急結剤Aが前記コンクリートに混合される混合部Aと、前記混合部Aと前記吹付け部との間に、前記急結剤Bが前記コンクリートに混合される混合部Bと、を含み、
前記急結剤Bが前記混合部Bに到達する前に、前記急結剤Aが前記混合部Aに到達する、コンクリート吹付けシステム。
【請求項2】
前記混合部Aに前記急結剤Aが到達してから2秒以上後に前記混合部Bに前記急結剤Bが到達する、請求項1に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項3】
前記水溶性金属塩が、硫酸塩である、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項4】
前記硫酸塩が、硫酸アルミニウムまたは硫酸チタンである、請求項3に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項5】
前記急結剤Aが、液状急結剤である、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項6】
前記液状急結剤のpHが7未満である、請求項5に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項7】
前記急結剤Bが、カルシウムアルミネートを含有する、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項8】
前記急結剤B中のカルシウムアルミネートの配合率が、30質量%以上である、請求項7に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項9】
前記カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比が、1.7~3.0である、請求項7に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項10】
前記急結剤搬送流路Aにおける前記急結剤Aの搬送条件が、エア流量0.5~5m/min、エア圧力0.1~0.7MPaである、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項11】
前記急結剤搬送流路Bにおける前記急結剤Bの搬送条件が、エア流量2~5m/min、エア圧力0.2~0.5MPaである、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項12】
前記混合部Aから前記混合部Bまでの距離が、0.05~5mである、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項13】
前記混合部Bから前記吹付け部までの距離が、0.5~5mである、請求項1または2に記載のコンクリート吹付けシステム。
【請求項14】
コンクリートと、水溶性金属塩を含む急結剤Aと、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bとを混合した急結コンクリートを対象物に吹付けるコンクリートの吹付け方法であって、
前記コンクリートに、前記急結剤Aを混合してから前記急結剤Bをさらに混合する、コンクリートの吹付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路、鉄道、導水路等のトンネル、及びトンネル掘削や地下空洞建設において露出した地山面へコンクリートを吹付けるコンクリート吹付けシステム及びコンクリート吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道、導水路等のトンネル、及びトンネル掘削や地下空洞建設において露出した地山面の補強及び安定化のために、コンクリートの吹付け工法が行われている。コンクリートの吹付け工法としては、乾式吹付け工法と湿式吹付け工法とがある。乾式吹付け工法は、水を含まないドライミックスのコンクリートを空気圧送する途中で水を添加し、合流部の枝管に急結剤供給設備より空気輸送される急結剤を供給してコンクリートと急結剤を混合した後、ノズルよりコンクリートを吹付ける工法である。湿式吹付け工法は、セメントと骨材と水とを予め撹拌混合したフレッシュコンクリートを調製しておき、フレッシュコンクリートを空気圧送するとともに、合流部の枝管に急結剤供給設備より空気輸送される急結剤を供給してコンクリートと急結剤とを混合した後、ノズルよりコンクリートを吹付ける工法である。現状では、粉じんや跳ね返りが少ないことから、湿式吹付け工法が主流になっている。
【0003】
湿式吹付け工法において、上記急結剤としては、粉体急結剤と液状急結剤との2種類が用いられる。粉体急結剤としては、例えば、ブレーン比表面積7800cm/g以上の無水石膏及び/又はブレーン比表面積1500cm/g以上の半水石膏40重量%以上、カルシウムアルミネート類及びアルカリ金属アルミン酸塩を含有してなる吹付けコンクリート用急結剤が開示されている(特許文献1参照)。液状急結剤としては、例えば、硫酸アルミニウムとフッ素化水素酸との反応で得られるフッ化物含有水溶性アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、および水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウムからなる群から選択される1種または2種以上のリチウム塩を配合してなる液状急結剤が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-210552号公報
【特許文献2】特開2005-89276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような液状急結剤を用いた吹付けコンクリートは、凝結促進作用が粉体急結剤と比較して小さく、軟弱な地山や湧水部等への吹付けには適さない等の課題がある。一方で、粉体急結剤を用いた吹付けコンクリートは、液状急結剤と比較して凝結促進作用が大きく湧水部等への吹付けには適しているものの、吹付け時の粉じん量や跳ね返り(リバウンド)量が液状急結剤と比較して多いという課題がある。
【0006】
また、粉体急結剤と液状急結剤とを併用してコンクリートに混合させる工法も考えられるが、当該工法では、混合方法によってはコンクリートと急結剤との混合性が低下し、コンクリートの強度にムラが発生するという課題がある。
【0007】
上記課題を鑑みて、本発明は、吹付け時のリバウンドを低減し、コンクリートと急結剤との混合性が良好なコンクリート吹付けシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] コンクリートを搬送するコンクリート搬送流路と、水溶性金属塩を含む急結剤Aを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Aと、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Bと、前記コンクリートに前記急結剤A及び前記急結剤Bが混合された急結コンクリートを対象物に吹付ける吹付け部と、を含み、前記コンクリート搬送流路は、前記急結剤Aが前記コンクリートに混合される混合部Aと、前記混合部Aと前記吹付け部との間に、前記急結剤Bが前記コンクリートに混合される混合部Bと、を含み、前記急結剤Bが前記混合部Bに到達する前に、前記急結剤Aが前記混合部Aに到達する、コンクリート吹付けシステム。
[2] 前記混合部Aに前記急結剤Aが到達してから2秒以上後に前記混合部Bに前記急結剤Bが到達する、上記[1]に記載のコンクリート吹付けシステム。
[3] 前記水溶性金属塩が、硫酸塩である、上記[1]または[2]に記載のコンクリート吹付けシステム。
[4] 前記硫酸塩が、硫酸アルミニウムまたは硫酸チタンである、上記[3]に記載のコンクリート吹付けシステム。
[5] 前記急結剤Aが、液状急結剤である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のコンクリート吹付けシステム。
[6] 前記液状急結剤のpHが7未満である、上記[5]に記載のコンクリート吹付けシステム。
[7] 前記急結剤Bが、カルシウムアルミネートを含有する、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のコンクリート吹付けシステム。
[8] 前記急結剤B中のカルシウムアルミネートの配合率が、30質量%以上である、上記[7]に記載のコンクリート吹付けシステム。
[9] 前記カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比が、1.7~3.0である、上記[7]または[8]に記載のコンクリート吹付けシステム。
[10] 前記急結剤搬送流路Aにおける前記急結剤Aの搬送条件が、エア流量0.5~5m/min、エア圧力0.1~0.7MPaである、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載のコンクリート吹付けシステム。
[11] 前記急結剤搬送流路Bにおける前記急結剤Bの搬送条件が、エア流量2~5m/min、エア圧力0.2~0.5MPaである、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載のコンクリート吹付けシステム。
[12] 前記混合部Aから前記混合部Bまでの距離が、0.05~5mである、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載のコンクリート吹付けシステム。
[13] 前記混合部Bから前記吹付け部までの距離が、0.5~5mである、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載のコンクリート吹付けシステム。
[14] コンクリートと、水溶性金属塩を含む急結剤Aと、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bとを混合した急結コンクリートを対象物に吹付けるコンクリートの吹付け方法であって、前記コンクリートに、前記急結剤Aを混合してから前記急結剤Bをさらに混合する、コンクリートの吹付け方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吹付け時のリバウンドを低減し、コンクリートと急結剤との混合性が良好なコンクリート吹付けシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のコンクリート吹付けシステムの一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)を詳細に説明するが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書における「%」及び「部」は特に規定しない限り質量基準とする。
【0013】
[コンクリート吹付けシステム]
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、コンクリートを搬送するコンクリート搬送流路と、水溶性金属塩を含む急結剤Aを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Aと、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bを前記コンクリート搬送流路へ搬送する急結剤搬送流路Bと、上記コンクリートに上記急結剤A及び上記急結剤Bが混合された急結コンクリートを対象物に吹付ける吹付け部と、を含み、上記コンクリート搬送流路は、上記急結剤Aが上記コンクリートに混合される混合部Aと、上記混合部Aと上記吹付け部との間に、上記急結剤Bが上記コンクリートに混合される混合部Bと、を含み、上記急結剤Bが上記混合部Bに到達する前に、上記急結剤Aが上記混合部Aに到達することを要する。
【0014】
すなわち、例えば図1に示すように、急結剤搬送流路1(本実施形態に係る急結剤搬送流路Aに相当)と、急結剤搬送流路2(本実施形態に係る急結剤搬送流路Bに相当)と、コンクリート搬送流路3と、混合部4A(本実施形態に係る混合部Aに相当)と、混合部4B(本実施形態に係る混合部Bに相当)と、吹付け部6とを含む。
【0015】
当該コンクリート吹付けシステムは、コンクリートを搬送するコンクリート搬送流路3を含む。コンクリート搬送流路3が搬送するコンクリートは、セメントと骨材と水とを予め撹拌混合して調製されたものである。予め調製されたコンクリートは、例えば図1に示すように、アジテータ車30で吹付け施工の現場に運搬され、コンクリートポンプ31へ供給される。コンクリートポンプ31は、供給されたコンクリートを、コンクリート搬送流路3を通じて混合部4A及び混合部4Bを経由し、吹付け部6へと圧送する。
【0016】
コンクリート搬送流路3としては、耐圧性の金属メッシュ入りホース(耐圧ホース)や金属製の配管が使用可能である。通常は、耐圧ホースが使用され、その前後は金属管を使用することが好ましい。耐圧ホースの直径は、コンクリートの圧送性や、耐圧ホースの取扱いなどの作業性の面から2.5~3.5インチのものが通常使用される。
【0017】
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、及び石灰石微粉末を混合したフィラーセメント、並びに都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等の混合セメントが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。これらの混合セメントにおける混合物とセメントの割合は特に限定されるものではなく、JISで規定する以上に混合したものも使用可能である。
セメントは、必要に応じて、さらに、減水剤、空気連行剤、ポリマーエマルジョン、増粘剤、収縮低減剤、防錆剤、防凍剤、粘土鉱物、シリカフュームなどの一般に市販されているセメント混和剤(材)を性能に支障のない範囲で使用してもよい。
【0018】
本発明で使用する骨材は、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。
骨材としては、吹付けコンクリートに使用できれば特に限定されるものではなく、細骨材及び粗骨材を使用することができる。細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能であり、砕砂、砕石の使用も可能である。
全骨材中の細骨材の割合は、細骨材の容積(s)と全骨材容積(a)の比で表すことができ、s/aは60~70容積%が好ましい。
【0019】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、図1に示すように、水溶性金属塩を含む急結剤Aをコンクリート搬送流路3へ搬送する急結剤搬送流路1を含む。急結剤搬送流路1によって急結剤Aはコンクリート搬送流路3へ搬送され、後述するコンクリート搬送流路3中の混合部4Aにおいてコンクリートに混合される。急結剤搬送流路1としては、耐圧性の糸入りホースや金属メッシュ入りホース(耐圧ホース)、金属製の配管など耐圧性に優れるものであれば、いずれのものも使用可能である。通常は、耐圧ホースが使用され、その前後は金属管を使用することが好ましい。耐圧ホースの直径は、急結剤Aの圧送性や、耐圧ホースの取扱いなどの作業性の面から0.5~1.5インチのものが通常使用される。
【0020】
本実施形態の好ましい態様としては、例えば図1に示すように、急結剤搬送流路1が、急結剤Aを貯蔵及び圧送する急結剤ユニット10に接続され、急結剤ユニット10に接続された制御部7によって急結剤Aの供給が制御される。上記急結剤ユニット10は、急結剤Aを貯蔵する急結剤タンク11と、急結剤供給機12とを含む。急結剤タンク11から供給される急結剤Aは、急結剤供給機12により、コンプレッサ50から供給される圧縮空気によって、急結剤搬送流路1を通じて混合部4Aへ圧送される。
【0021】
急結剤搬送流路1における急結剤Aの搬送条件は、エア流量が0.5~5m/minであることが好ましく、2~4m/minであることがより好ましく、2.2~3.8m/minであることがさらに好ましい。また、エア圧力が0.1~0.7MPaであることが好ましく、0.2~0.65MPaであることがより好ましく、0.3~0.5MPaであることがさらに好ましい。急結剤搬送流路1における急結剤Aの搬送条件として、エア流量及びエア圧力が上記範囲内であることで、混合部4Aへの急結剤Aの供給を制御することが容易となる。
【0022】
急結剤搬送流路1が搬送する急結剤Aは、水溶性金属塩を含む。水溶性金属塩としては、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を用いることができ、中でも硫酸塩が好ましく、硫酸アルミニウム、硫酸チタンがより好ましい。なお、急結剤Aは、水溶性金属塩としてを1種または2種以上含んでいてもよい。
【0023】
急結剤Aにおける水溶性金属塩の含有割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。急結剤Aにおける水溶性金属塩の含有割合が上記範囲内であると、優れた急結性状を得やすい。上限は特に規定されないが、50質量%以下であることが好ましい。
【0024】
急結剤Aは、上記水溶性金属塩以外の成分を含んでいてもよく、その他成分としては、例えば、硫酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸、及びこれらの塩(ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム)やモノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、オキシカルボン酸、アミノ酸等の有機酸、及びこれらの塩(ナトリウム、カリウム、リチウム)等が使用できる。これらの中でも、取扱いの面から、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩が好ましい。
【0025】
急結剤Aの使用量は、コンクリート搬送流路3が搬送するコンクリート中のセメント100質量部に対して、2~14質量部であることが好ましく、3~13質量部であることがより好ましく、4~12質量部であることがさらに好ましい。急結剤Aの使用量が上記下限値以上であると、優れた急結性としやすく、急結剤Aの使用量が上記上限値以下であると、長期強度発現性を良好としやすい。
【0026】
急結剤Aは、液状急結剤であることが好ましい。急結剤Aは、水等を溶媒とし、水溶性金属塩を含む液状急結剤とすることができる。本発明において、液状急結剤とは、溶質が溶媒に完全に溶解した溶液の他、溶質が一部溶け残っている溶液や懸濁液、ゲル状の態様を含む。
【0027】
急結剤Aが液状急結剤である場合、pHは7未満であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1.6~3.8であることがさらに好ましい。急結剤AのpHが上記範囲であることで、コンクリートとの合流混合をより良好とすることができ、強度発現性を高めることができる。急結剤AのpHは、硫酸等の酸性成分によって、適宜調整することができる。なお、本発明において急結剤AのpHは、pHメータ等によって測定することができる。
【0028】
急結剤Aが液状急結剤である場合、加熱して20~60℃の範囲の温度でコンクリートに混合させることにより、急結性を向上させることが可能である。しかし、急結剤Aに硫酸等の酸成分を用いる場合、急結剤A自体の粘度が上昇するため、5~40℃の範囲で使用することがより好ましい。
【0029】
急結剤Aが液状急結剤である場合、急結剤A中の固形分濃度は、10~50質量%であることが好ましく、20~45質量%であることがより好ましく、25~35質量%であることがさらに好ましい。急結剤Aの固形分濃度が上記範囲内であると、急結剤Aの圧送性が良好となり、また、優れた急結性状を得やすい。
【0030】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、図1に示すように、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bをコンクリート搬送流路3へ搬送する急結剤搬送流路2を含む。急結剤搬送流路2によって急結剤Bはコンクリート搬送流路3へ搬送され、後述するコンクリート搬送流路3中の混合部4Bにおいてコンクリートに混合される。急結剤搬送流路2としては、耐圧性の金属メッシュ入りホース(耐圧ホース)や金属製の配管が使用可能である。通常は、耐圧ホースが使用され、その前後は金属管を使用することが好ましい。耐圧ホースの直径は、急結剤Bの圧送性や、耐圧ホースの取扱いなどの作業性の面から0.5~1.5インチのものが通常使用される。
【0031】
本実施形態の好ましい態様としては、例えば図1に示すように、急結剤搬送流路2が、急結剤Bを貯蔵及び圧送する急結剤ユニット20に接続され、急結剤ユニット20に接続された制御部7によって急結剤Bの供給が制御される。上記急結剤ユニット20は、急結剤Bを貯蔵する急結剤タンク21と、急結剤供給機22とを含む。急結剤タンク21から供給される急結剤Bは、急結剤供給機22により、コンプレッサ50から供給される圧縮空気によって、急結剤搬送流路2を通じて混合部4Bへ圧送される。
【0032】
急結剤搬送流路2における急結剤Bの搬送条件は、エア流量が2~5m/minであることが好ましく、2.2~4.5m/minであることがより好ましく、2.4~4m/minであることがさらに好ましい。また、エア圧力が0.2~0.5MPaであることが好ましく、0.25~0.45MPaであることがより好ましく、0.3~0.4MPaであることがさらに好ましい。急結剤搬送流路2における急結剤Bの搬送条件として、エア流量及びエア圧力が上記範囲内であることで、混合部Bへの急結剤Bの供給を制御することが容易となる。
【0033】
急結剤搬送路2が搬送する急結剤Bは、カルシウムアルミネートを含有することが好ましい。カルシウムアルミネートは、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料、シリカを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られ、CaOとAlとを主たる成分とする。また、カルシウムアルミネートのCaO及び/又はAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化合物、アルカリ土類金属ハロゲン化合物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいはCaOとAlとを主たる成分とするものに、これらが少量固溶した物質でも使用可能である。鉱物形態としては、結晶質、非晶質いずれであってもよい。
これらの中では、反応活性とポンプ圧送性の点で、非晶質のカルシウムアルミネートが好ましく、C12組成に酸化ケイ素が一部固溶した熱処理物を急冷した非晶質のカルシウムアルミネートを含むことがより好ましい。
【0034】
カルシウムアルミネートは、カルシウムアルミネート100質量部中、酸化物換算でSiOを1~7質量部含有することが好ましく、2~6質量部含有することがより好ましい。1質量部以上含有することで、混合性に優れ、凝結特性を良好に発揮しやすく、7質量部以下であることで、初期強度が得られやすい。
【0035】
カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比は、1.7~3.0の範囲であることが好ましく、2.1~2.9の範囲であることがより好ましく、2.2~2.8の範囲であることがさらに好ましく、2.3~2.7の範囲であることがよりさらに好ましい。CaO/Alモル比が上記範囲内であると、硬化時間の短縮、及び初期強度発現性を高めることが容易となる。なお、結晶質、非晶質等の形態に関係なく、モル比が範囲で混在しても、使用可能である。
【0036】
カルシウムアルミネートのブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)は、吹付けたコンクリートの急結性や初期強度発現性を向上させる観点から、4,000cm/g以上であることが好ましく、4,500cm/g以上であることがより好ましく、5,000cm/g以上であることがさらに好ましい。上限は特に規定されないが、コンクリートに過度の粘性が生じさせ、圧送性を損なう可能性を抑制する観点から、9,000cm/g以下であることが好ましい。
【0037】
急結剤B中のカルシウムアルミネートの配合率は、吹付けたコンクリートの急結性及び初期強度発現性を向上させる観点から、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることがよりさらに好ましい。上限は特に規定されないが、吹付けたコンクリートの急結性及び初期強度発現性を好適に発揮する観点から、70%質量以下とすることが好ましい。
【0038】
急結剤Bの使用量は、コンクリート搬送流路3が搬送するコンクリート中のセメント100質量部に対して、2~18質量部であることが好ましく、3~17質量部であることがより好ましく、4~16質量部であることがさらに好ましい。急結剤Bの使用量が上記下限値以上であると、優れた急結性を得られやすく、上記上限値以下であると、長期強度発現性が得られやすい。
【0039】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、図1に示すように、コンクリートに急結剤A及び急結剤Bが混合された急結コンクリートを対象物に吹付ける吹付け部6を含む。吹付け部6としては、連続的に縮径しているものや、縮径後にコンクリートを整流する直管をつけたものが使用可能である。吹付け部は、金属製のものやセラミック製のものが使用可能であり、ゴム素材でできたノズルの配管内面に、セラミックスや金属でライニングされたものやこれらをチップ状のものを埋め込んだものが使用可能である。
【0040】
吹付け部6による吹付け圧力は、特に限定されるものではなく、吹付けコンクリートの吐出量は、通常、1.5~20m/hであり、吹付け空気量は特に限定されるものではない。
【0041】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、図1に示すように、コンクリート搬送流路3は、急結剤Aがコンクリートに混合される混合部4Aと、混合部4Aと吹付け部6との間に、急結剤Bがコンクリートに混合される混合部4Bとを含む。
【0042】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、急結剤Bが混合部B(図1の符号4Bに相当)に到達する前に、急結剤Aが混合部A(図1の符号4Aに相当)に到達することを要する。
【0043】
なお、通常、各急結剤が各混合部に到達すると同時にコンクリートが各混合部に到達するものとする。コンクリート搬送流路3によって搬送されたコンクリートが混合部4Aに到達する際に、急結剤搬送流路1によって搬送された急結剤Aがコンクリートに混合され、急結剤Aが混合されたコンクリートが混合部4Bに到達する際に、急結剤搬送流路2によって搬送された急結剤Bがさらにコンクリートに混合されることにより急結コンクリートが得られる。
【0044】
混合部Aから混合部Bまでの距離は、0.05~5mであることが好ましく、0.1~4mであることがより好ましく、0.2~2mであることがさらに好ましい。混合部Aから混合部Bまでの距離が上記範囲内であると、コンクリートと急結剤Aとの混合性を良好としやすく、また、混合部及び搬送流路等での材料の固結を良好に抑制しやすい。
【0045】
混合部Bから吹付け部までの距離は、0.5~5mであることが好ましく、1~3mであることがより好ましく、1.5~3.5mであることがより好ましい。混合部Bから吹付け部までの距離が上記範囲内であると、コンクリートと急結剤Bとの混合性を良好としやすく、また、搬送流路等での材料の固結を良好に抑制しやすい。
【0046】
本実施形態の好ましい態様としては、例えば図1において図示しないが、混合部4Aは急結剤導入口を有し、混合部B5は急結剤導入口を有する。急結剤搬送流路1によって搬送された急結剤Aは、急結剤導入口から混合部4Aに導入される。急結剤搬送流路2によって搬送された急結剤Bは、急結剤導入口から混合部4Bに導入される。
【0047】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムは、混合部及び搬送流路等での材料の固結を良好に抑制する観点から、混合部Aに急結剤Aが到達してから2秒以上後に混合部Bに急結剤Bが到達することが好ましく、5秒以上後に混合部Bに急結剤が到達することがより好ましく、10秒以上後に混合部Bに急結剤Bが到達することがさらに好ましい。また、混合部Aと混合部Bとの間での材料の固結を良好に抑制する観点から、混合部Aに急結剤Aが到達してから20秒以内に混合部Bに急結剤Bが到達することが好ましい。上記のように混合部Aに急結剤Aが到達してから混合部Bに急結剤Bが到達するようにするためには、例えば図1に示すように、制御部7によって急結剤A及びBの供給を制御することによって可能となる。制御部7は、急結剤ユニット10、急結剤ユニット20及びコンプレッサ50に接続され、混合部4Aに急結剤Aが到達してから所定の時間経過後に、混合部4Bに急結剤Bが到達するように制御することができる。
【0048】
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付けシステムによれば、水溶性金属塩を含む急結剤Aが混合部4Aに到達してから、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bが混合部4Bへの到達するようにすることにより、吹付け時のリバウンドを低減し、コンクリートと急結剤との混合性を良好にすることができる。
【0049】
[コンクリートの吹付け方法]
本実施形態に係るコンクリートの吹付け方法は、コンクリートと、水溶性金属塩を含む急結剤Aと、ブレーン値が2,000cm/g以上である急結剤Bとを混合した急結コンクリートを対象物に吹付けるコンクリートの吹付け方法であって、上記コンクリートに、上記急結剤Aを混合してから上記急結剤Bをさらに混合する、コンクリートの吹付け方法である。急結剤A及びBとしては、既述の急結剤A及びBを用いることができる。
【0050】
コンクリートと急結剤A及びBの混合方法は特に規定されないが、コンプレッサ等により急結剤を搬送し、コンクリートを搬送する管に急結剤との合流部を設ける等によって混合する、通常の吹付け方法における混合方法により混合することができる。
【実施例0051】
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<使用材料>
・急結剤A1:試薬特級の硫酸アルミニウムを純水に混合し、濃度27%に調整、pH2.0。
・急結剤B1:ブレーン値5,000cm/g、カルシウムアルミネート含有率45%、硫酸カルシウム含有率40%、消石灰含有率15%。
・カルシウムアルミネート:CaO/Alモル比が2.5に相当する熱処理物を急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン値5,900cm/g、酸化物換算で3質量部のSiOを含有。
・普通セメント:市販品、ブレーン値3,200cm/g、密度3.15g/cm
・細骨材:新潟県糸魚川市姫川水系砂、最大寸法5mm以下、密度2.62g/cm
・粗骨材:新潟県糸魚川6号砕石、最大寸法15mm、密度2.67g/cm
・水:上水道水。
・減水剤:市販品、高性能減水剤。
【0053】
[実験例1]
表1に記載のコンクリート配合条件で調製したコンクリートをコンクリートポンプ「MKW-25SMT」(シンテック社製)を用いて定量搬送し、急結剤A1がコンクリート中のセメント100質量部に対して6質量部の割合となるように、急結剤搬送流路Aから混合部Aに定量搬送してコンクリートと合流混合し、急結剤B1がコンクリート中のセメント100質量部に対して6質量部の割合となるように、急結剤搬送流路Bから混合部Bに定量搬送してコンクリートと合流混合して急結コンクリートを調製し、吹付け部より対象物にコンクリートを吹付けた。その際、急結剤の搬送条件は、表2に記載の急結剤搬送結果となるように、各急結剤の各混合部への到達時間を調整し、コンクリートと各急結剤が、それぞれの混合部に同時に到達するようにした。なお、混合部Bは、混合部Aと吹付け部との間にあり、混合部Aから混合部Bまでの距離は1mとし、吹付け部から対象物までの距離は2mとした。
【0054】
<評価方法>
・固結物量:コンクリートを定量搬送しながら、各混合部に指定の到達順となるように各急結剤を連続的に定量搬送する。10分経過後搬送を停止してコンクリート搬送流路を洗浄し、混合部Aと混合部Bの固結物量をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
・混合性:吹付けコンクリートを1m×1m×厚み20cmの木枠に吹付けて、10分経過後にプロクター貫入抵抗値を10回素早く測定し、その貫入抵抗値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表2に示す。
・リバウンド率:模擬トンネルで上半部に1mのコンクリートを吹付けたときのリバウンド量を測定し、吹付け量全体に対するリバウンド量をリバウンド率として算出した。結果を表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表2の結果より、急結剤A1と急結剤B1の各混合部への到達時間によって、固結物量、プロクター貫入抵抗値及びリバウンド率に違いが生じた。なお、No.1-8は、一定時間急結剤Aが混合されていないコンクリートが吹付けられたため、プロクター貫入抵抗値の平均値が低く、リバウンド率が高くなったと推定される。
【0058】
[実験例2]
混合部Aと混合部Bとの位置を入れ替え、表3に記載の急結剤搬送結果となるように、各急結剤の各混合部への到達時間を調整したこと以外は、実験例1と同様にして、吹付け部より対象物にコンクリートを吹付けた。結果を表3に示す。なお、比較のため、実験例1のNo.1-3及びNo.1-8を併記する。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の結果より、混合部Aと混合部Bの位置を入れ替えた場合は、コンクリートへの急結剤の添加順が異なり、固結物量、プロクター貫入抵抗値及びリバウンド率に違いが生じた。
【0061】
[実験例3]
急結剤A1に代えて下記に示す急結剤A2~5を用いたこと以外は、実験例1のNo.1-4と同様にして、吹付け部より対象物にコンクリートを吹付けた。結果を表4に示す。なお、比較のため、実験例1のNo.1-4を併記する。
【0062】
<使用材料>
・急結剤A2:試薬特級の硫酸アルミニウム粉末。無水物。
・急結剤A3:工業試薬の硫酸チタン(IV)を純水に混合し、濃度30%に調整、pH2.0。
・急結剤A4:工業試薬の重リン酸アルミニウム液、濃度50%に調整、pH2.4。
・急結剤A5:塩基性乳酸アルミニウム液、濃度24%に調整、pH5.4。
・急結剤A6:ポリ塩化アルミニウム溶液、濃度10%、pH4.0。
・急結剤A7:試薬特級の硫酸ナトリウムを純水に混合し、濃度18%
【0063】
【表4】
【0064】
表4の結果より、急結剤Aとして種々の急結剤を用いた場合は、固結物量、プロテクター貫入抵抗値、リバウンド率に違いが生じた。
【0065】
[実験例4]
急結剤A1に代えて下記に示す急結剤A7~10を用いたこと以外は、実験例1のNo.1-4と同様にして、吹付け部より対象物にコンクリートを吹付けた。結果を表5に示す。なお、比較のため、実験例1のNo.1-4を併記する。
【0066】
<使用材料>
・急結剤A7:硫酸と酸化アルミニウムとを、pH0.8になるように純水に混合し、濃度27%に調整。
・急結剤A8:硫酸と酸化アルミニウムとを、pH1.0になるように純水に混合し、濃度27%に調整。
・急結剤A9:硫酸と酸化アルミニウムとを、pH6.0になるように純水に混合し、濃度27%に調整。
・急結剤A10:硫酸と酸化アルミニウムとを、pH7.0になるように純水に混合し、濃度27%に調整。
【0067】
【表5】
【0068】
表5の結果より、pH1.0以下では固結物量は少ないものの、プロクター貫入抵抗値の平均値が低くなり、pHが7.0に近づくと、プロクター貫入抵抗値の平均値は高くなるが、標準偏差が大きくなる傾向を確認した。
【0069】
[実験例5]
急結剤B1に代えて、急結剤Bが含有するカルシウムアルミネートのCaO/Alモル比を表6に示す値に調整した急結剤B2~8を用いたこと以外は、実験例1のNo.1-4と同様にして、吹付け部より対象物にコンクリートを吹付けた。結果を表6に併記する。なお、比較のため、実験例1のNo.1-4を併記する。
【0070】
【表6】
【0071】
表6の結果より、カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比別に評価した結果、モル比が1.7未満である場合、標準偏差は小さいがプロクター貫入抵抗値の平均値が低く、リバウンド率が高くなり、また、モル比が3.0を超えると、固結物量が高まり、プロテクター貫入抵抗値の標準偏差及びリバウンド率が高くなる傾向を確認した。
【0072】
[実験例6]
表7に記載の急結剤搬送結果に対応する実験例1及び2における急結剤搬送結果となるように、各急結剤の各混合部への到達時間を調整し、評価方法において、下記に示すように湧水部への吹付けを行ったこと以外は、実験例1のNo.1-4と同様にして、吹付け部より対象物にコンクリートを吹付けた。
【0073】
・リバウンド率及び混合性:縦2m×横1mの板上部に毎分5リットルの水量条件で水を出して湧水環境とし、実験例1と同様に吹付けコンクリートを板全体に吹付けて、吹付け量全体に対するリバウンド量をリバウンド率として算出した。また、混合性評価として、吹付けから10分経過後にプロクター貫入抵抗値を10回素早く測定し、その貫入抵抗値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表7に示す。なお、比較のため、実験例1のNo.1-4を併記する。
【0074】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、特に土木・建築分野等で用いられるコンクリート吹付けシステムとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…急結剤搬送流路
2…急結剤搬送流路
3…コンクリート搬送流路
4A、4B…混合部
6…吹付け部
7…制御部
10…急結剤ユニット
11…急結剤タンク
12…急結剤供給機
20…急結剤ユニット
21…急結剤タンク
22…急結剤供給機
30…アジテータ車
31…コンクリートポンプ
50…コンプレッサ
図1